JP2019044254A - 金型 - Google Patents

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Abstract

【課題】十分に硬く、室温から500℃までの平均熱膨張係数が1.30〜1.45×10-5(1/K)という極めて狭い範囲内であるため、超ハイテン材を冷間加工する場合やホットスタンプ工法を適用する場合のように被加工材が発熱しても、高精度な加工を行うことができる金型の提供。【解決手段】特定範囲でC、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V、Alを含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、Ni当量−Cr当量が特定範囲内であり、残留オーステナイト体積率が8%以下であり、室温から500℃までの平均熱膨張係数が1.30〜1.45×10-5(1/K)であり、室温での硬さが54HRC以上である、金型。【選択図】図1

Description

本発明は金型に関し、特に、冷間加工(冷間プレス、転造、圧造、鍛造、ファインブランキング)、ホットスタンプに用いる金型に関する。
一般的に冷間加工で作られる部品は、面精度、寸法精度ともに、ダイカスト法や熱間鍛造に比べて、高い精度が要求される。
その一方、自動車の構造部品に代表される高強度部品は、近年、ますます軽量化が進み、部品の強度が高くなっている。多くは、冷間加工でハイテン材が使用されていたが、980MPaを超える超ハイテン材が使用されたり、冷間加工ではなく、被加工材をプレスすると同時に、焼入れするダイクエンチ・ホットスタンプ工法で高強度な部品が製造されるようになった。
超ハイテン材の冷間加工では、従来よりも加工発熱量が増え、金型表面温度が高くなる。ホットスタンプ工法では、被加工材が800〜900℃程度に加熱されたものを金型で挟み込むため被加工材による加工発熱は無いが、被加工材から熱移動によって金型表面温度が高くなる。
従来の冷間加工では、金型表面温度が100℃を超えることはほぼ無く、金型に使用される様々な工具鋼(熱処理条件も様々)の熱膨張量を考慮する必要がなかった。
しかし、上記のような超ハイテン材の冷間加工用金型やホットスタンプ工法用の金型では、150〜600℃になるため、工具鋼の熱膨張係数が、金型寸法精度に与える影響が非常に大きくなっている。
冷間加工用金型には、冷間ダイス鋼や高速度工具鋼が用いられ、ホットスタンプ工法の金型には、熱間ダイス鋼や冷間ダイス鋼が使用されている。また、これらの工具鋼は、金型として必要な硬さを得るために、焼入れ焼戻しを実施しているが、必ずしも決まった熱処理条件ではない。このため、色々な工具鋼や熱処理条件で作成した、複数の部品を組み合わせて作られる金型セットは、室温では問題ない寸法精度を保持しているものの、量産が始まると、それぞれの金型に使われている工具鋼の熱膨張係数と、金型温度に応じて、金型が膨張し、被加工材を成形するクリアランス(金型と被加工材との隙間)に多大な影響を及ぼす。
上記に関連する従来法として、例えば特許文献1〜5に記載の方法が提案されている。
特許文献1、2では線膨張率が記載されているが、熱処理前の寸法に比べて、焼入れ焼戻し後にどの程度材料が寸法変化するか(組織変化による膨張収縮)を記載しているものであり、熱膨張に関するものでは無い。
特許文献3,4は低熱膨張に関するものであるが、金型として必要な室温硬さ54HRC以上を焼入れ焼戻しによって得ることができず、金型として使用することができない。また、冷間ダイス鋼SKD11の熱膨張係数が記載されているが、熱処理条件の記載がなく、どのようにして、この熱膨張係数が得られるようにすれば良いのか、わからない。
特許文献5には焼入れ後の残留γ量が示されているものの、焼戻し後の残留γ量は示されていない。また、組成や焼入れ焼戻し条件から、焼戻し後の残留γ量を推定することは困難である。さらに、特許文献5に記載のものでは所望の熱膨張係数を得ることはできない。
特開2007−197746号公報 特開2009−132990号公報 特開昭62−125636号公報 特開平04−180542号公報 特開2016−074968号公報
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。
すなわち、本発明の目的は、十分に硬く、室温から500℃までの平均熱膨張係数が1.30〜1.45×10-5(1/K)という極めて狭い範囲内であるため、超ハイテン材を冷間加工する場合やホットスタンプ工法を適用する場合のように被加工材が発熱しても、高精度な加工を行うことができる金型を提供することである。
上記のように、従来、工具鋼の熱膨張係数に及ぼす組成の影響や熱処理条件の影響は調べられていなかった。そこで、本願発明者は鋭意検討し、これらの影響を明確化することで、従来、1.0〜1.5×10-5(1/K)の熱膨張係数を、室温から500℃までの平均熱膨張係数を1.30〜1.45×10-5(1/K)に調整することができ、熱膨張量を見込んだ金型寸法を設計することで、高精度な部品製造を可能にした。また、金型として必要な室温硬さ54HRC以上が得られつつ、熱膨張係数を一定(1.30〜1.45×10-5(1/K))にするには、鋼材組成と熱処理条件を一定範囲内にすることが必要であることを見出した。
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明の鋼材を完成させた。
本発明の鋼材は、質量%で、C:0.60〜0.90%、Si:0.40〜1.20%、Mn:0.30〜1.0%、Ni:0.10〜0.40%、Cr:5.7〜6.8%、Mo:1.40〜2.80%、V:0.05〜1.0%、Al:0.010〜0.030%含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、Ni当量=Ni含有率(質量%)+30×C含有率(質量%)+0.5×Mn含有率(質量%)と定義し、Cr当量=Cr含有率(質量%)+Mo含有率(質量%)+1.5×Si含有率(質量%)+10×Al含有率(質量%)と定義した場合に、9.8≦Ni当量−Cr当量≦16.4を満たし、残留オーステナイト体積率が8%以下であり、室温から500℃までの平均熱膨張係数が1.30〜1.45×10-5(1/K)であり、室温での硬さが54HRC以上である、金型である。
このような金型を、以下では「本発明の金型」ともいう。
本発明の金型は、さらに、質量%で、Nb:0.03〜1.0%、Ti:0.03〜1.0%含有することが好ましい。
すなわち、本発明の金型は、質量%で、C:0.60〜0.90%、Si:0.40〜1.20%、Mn:0.30〜1.0%、Ni:0.10〜0.40%、Cr:5.7〜6.8%、Mo:1.40〜2.80%、V:0.05〜1.0%、Al:0.010〜0.030%、Nb:0.03〜1.0%、Ti:0.03〜1.0%含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなることが好ましい。
本発明の金型は、質量%で、C:0.80〜0.90%、Mo:2.5〜2.8%含有することが好ましい。
すなわち、本発明の金型は、質量%で、C:0.80〜0.90%、Si:0.40〜1.20%、Mn:0.30〜1.0%、Ni:0.10〜0.40%、Cr:5.7〜6.8%、Mo:2.5〜2.80%、V:0.05〜1.0%、Al:0.010〜0.030%以下含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなることが好ましい。
本発明の金型は、さらに、質量%で、Nb:0.03〜1.0%、Ti:0.03〜1.0%、C:0.80〜0.90%、Mo:2.5〜2.8%含有することが好ましい。
すなわち、本発明の金型は、質量%で、C:0.80〜0.90%、Si:0.40〜1.20%、Mn:0.30〜1.0%、Ni:0.10〜0.40%、Cr:5.7〜6.8%、Mo:2.5〜2.8%、V:0.05〜1.0%、Al:0.010〜0.030%、Nb:0.03〜1.0%、Ti:0.03〜1.0%含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなることが好ましい。
本発明の金型は、さらに、質量%で、C:0.60〜0.70%、Mo:1.40〜1.60%含有することが好ましい。
すなわち、本発明の金型は、質量%で、C:0.60〜0.70%、Si:0.40〜1.20%、Mn:0.30〜1.0%、Ni:0.10〜0.40%、Cr:5.7〜6.8%、Mo:1.40〜1.60%、V:0.05〜1.0%、Al:0.010〜0.030%以下含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなることが好ましい。
本発明の金型は、さらに、質量%で、Nb:0.03〜1.0%、Ti:0.03〜1.0%、C:0.60〜0.70%、Mo:1.40〜1.60%含有することが好ましい。
すなわち、本発明の金型は、質量%で、C:0.60〜0.70%、Si:0.40〜1.20%、Mn:0.30〜1.0%、Ni:0.10〜0.40%、Cr:5.7〜6.8%、Mo:1.40〜1.60%、V:0.05〜1.0%、Al:0.010〜0.030%、Nb:0.03〜1.0%、Ti:0.03〜1.0%含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなることが好ましい。
本発明によれば、十分に硬く、室温から500℃までの平均熱膨張係数が1.30〜1.45×10-5(1/K)という極めて狭い範囲内であるため、超ハイテン材を冷間加工する場合やホットスタンプ工法を適用する場合のように被加工材が発熱しても、高精度な加工を行うことができる金型を提供することができる。
実施例にて得られた試験片の残留オーステナイト量と熱膨張係数の関係図である。
本発明の金型の組成について説明する。以下において、単に「%」と記した場合「質量%」を意味する。
C:0.60〜0.90%
Cは焼入れによって生じるマルテンサイトの硬さを向上させる。所定の焼入れ焼戻しによって、室温硬さ54HRC以上を得るために、0.60%以上含有することが必要である。
一方、必要以上に添加すると、晶出炭化物を生じ、焼入れ硬さの向上効果がなくなるため、0.90%以下の含有率とする。
また、焼入れ温度が高いほどC固溶量が増えるため、焼入れ温度が1060〜1100℃と高めである場合(好ましくは、合わせて、焼戻し温度が520〜570℃である場合)、C含有率を0.80〜0.90%とすることが好ましく、合わせてMoの含有率を2.5〜2.8%とすることが好ましい。一方、焼入れ温度が1010〜1050℃と低めの場合(好ましくは、合わせて、焼戻し温度が490〜540℃である場合)、C含有率を0.60〜0.70%とすることが好ましく、合わせてMoの含有率を1.40〜1.60%とすることが好ましい。
Si:0.40〜1.20%
SiはCr、Mo、Alと同様に、フェライトが形成されやすくなる元素である。Si量が多いほど焼入れ温度でのC固溶量が減少し、焼入れ焼戻し硬さが低下する。よって、この焼入れ焼戻し硬さの低下を抑制するため、Si含有率は1.20%以下とする。一方、成分調整上、脱酸目的での添加や原料からの配合分があるため、0.40%以上の含有率となる添加は、通常製造コストの観点では避けられない。
Mn:0.30〜1.0%
MnはNiやCと同様に、オーステナイトが形成されやすくなる元素である。Mn量が多いほど焼入れ性が大きく向上する。冷間成形やホットスタンプで使用される金型サイズで焼入れ可能な焼入れ性が必要となるので、0.3%以上の含有率とする。一方、1.0%を超える含有率とすると、Ms点が必要以上に下がりすぎ、焼入れ時に残留オーステナイトが多量に発生してしまい、熱膨張係数が大きくなりすぎる可能性がある。
Ni:0.10〜0.40%
NiはMnやCと同様に、オーステナイトが形成されやすくなる元素である。Mnと同様に焼入れ性向上の観点から、0.1%以上の含有率とする。一方、0.4%を超える含有率とすると、焼入れ時に残留オーステナイトが増加し、熱膨張係数が大きくなる。
Cr:5.7〜6.8%
CrはSi、Mo、Alと同様に、フェライトが形成されやすくなる元素である。Crは焼入れ焼戻し硬さを向上させ、焼入れ性も向上させる。よって、5.7%以上の含有率とする。一方、6.8%を超える含有率とすると、焼入れ時に固溶しきれなかったCと結合し、炭化物を形成してしまい、熱膨張係数が小さくなりすぎる。
Mo:1.40〜2.80%
MoはSi、Cr、Alと同様に、フェライトが形成されやすくなる元素である。Moは特に焼入れ焼戻し硬さを大きく向上させるため、また、金型として必要な硬さ54HRCを得るため、1.4%以上の含有率とする。一方、2.8%以上添加しすぎると、焼入れ時に残留オーステナイトが増加し、熱膨張係数が大きくなる。
また、前述のように、焼入れ温度が高いほどC固溶量が増えるため、焼入れ温度が1060〜1100℃と高めである場合(好ましくは、合わせて、焼戻し温度が520〜570℃である場合)、C含有率を0.80〜0.90%とすることが好ましく、合わせてMoの含有率を2.5〜2.8%とすることが好ましい。一方、焼入れ温度が1010〜1050℃と低めの場合(好ましくは、合わせて、焼戻し温度が490〜540℃である場合)、C含有率を0.60〜0.70%とすることが好ましく、合わせてMoの含有率を1.40〜1.60%とすることが好ましい。
V:0.05〜1.0%
Vは焼入れ時に結晶粒粗大化を防止するために添加される。粗大化防止の効果を得るためには、0.05%以上の含有率とする。一方、1.0%を超える含有率とすると、粗大なV炭化物が形成されるようになり、粗大化防止の効果が小さくなってしまう。
Al:0.010〜0.030%
AlはSi、Cr、Moと同様に、フェライトが形成されやすくなる元素である。Alは結晶粒粗大化抑制効果もあるため、0.010%以上の含有率とする。一方、0.030%を超える含有率にするとCr当量が増加するので、フェライトが形成されやすくなり、焼入れ焼き戻し硬さが低下してしまう。
また、OやNがFe中に多く含まれると、Alは酸化物や窒化物を形成し、Fe中に固溶しているAlが極端に減少することで、Cr当量が低下し、Ni当量とのバランスが大きく変化することがある。よって、Alを必要以上に添加させないことに加えて、OやNも所定範囲内に抑制しておくことで、Cr当量とNi当量のバランスを保ちやすい。
Nb、Tiは、Vの代替として結晶粒粗大化抑制の効果がある。
粗大化抑制の効果を得るためには、所定下限以上の添加が必要であるし、所定上限を超えて添加すればVと同様に、粗大な炭化物、酸化物、窒化物を形成し、粗大化抑制の効果が得られなくなる。
本発明の金型は、上記のようにC、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、VおよびAlを含み、好ましくはさらにNb、Tiを含み、残部はFeおよび不可避不純物からなる。
不可避的不純物としてはP、S、Cu、O、Nが挙げられる。本発明の金型に含まれるこれらの成分の含有率は、P:0.030%以下、S:0.03%以下、Cu:0.3%以下、O:0.0100%以下、N:0.0300%以下とする。
本発明の金型は、上記のような成分を特定範囲にて含有し、さらに、Ni当量=Ni含有率(質量%)+30×C含有率(質量%)+0.5×Mn含有率(質量%)と定義し、Cr当量=Cr含有率(質量%)+Mo含有率(質量%)+1.5×Si含有率(質量%)+10×Al含有率(質量%)と定義した場合に、9.8≦Ni当量−Cr当量≦16.4を満たす。
フェライト形成元素であるCr、Mo、SiおよびAlと、オーステナイト形成元素であるC、Mn、Niは、Cr当量が多すぎれば、焼入れ焼戻し硬さが低下しすぎてしまうし、Ni当量が多すぎれば、残留オーステナイトが多量に発生してしまうため、Cr当量とNi当量は、バランスを保つ必要がある。すなわち、9.8≦Ni当量−Cr当量≦16.4を満たす必要がある。
本発明の金型は、上記と同様の組成を備える鋼材を焼入れ、焼戻しして得ることができる。
焼入れ温度が低すぎると、Fe中に固溶する元素量が減り、54HRC以上の焼入れ焼戻し硬さを得られなくなる。逆に、焼入れ温度が高すぎれば、固溶する元素量が増加して、硬さを得やすくなる一方、Ms点が固溶量の増加とともに低下し、残留オーステナイトが増加し始める。熱膨張係数を一定に保つためには、成分元素の添加量に応じた適正な温度範囲で焼入れする必要がある。
本発明の金型は、上記と同様の組成を備える鋼材を、例えば、1010〜1100℃で焼入れし、480〜580℃で焼戻して得ることができる。
上記のような焼入れ、焼戻しを行うと、残留オーステナイト体積率が8%以下となり得る。残留オーステナイトは少量であれば、焼入れ焼戻し硬さへの影響は小さいため、存在しても良い。ただし、焼入れ焼戻しされたマルテンサイト組織の熱膨張係数に比べて、残留オーステナイトのそれは、非常に大きいため、8%を超えて含まれている状態では、所定の熱膨張係数の範囲に収めることができない。上記の残留オーステナイト量を実現するためには、焼入れ温度を適正の範囲にしつつ、焼戻し温度を、例えば480℃以上にして、残留オーステナイトを分解させる必要がある。480℃以上であれば、温度が高いほど残留オーステナイトは多く分解するので望ましいが、逆に析出する炭化物が粗大化し始め、硬さが減少していく。金型の硬さとして54HRC以上に保つためには580℃以下で焼戻しを行うことが好ましい。
以下、本発明の実施例について説明する。
<実験1>
初めに、第1表に示す組成(残部はFe及び不可避不純物)の鋼材を、真空誘導溶解炉(130kg)を用いて溶解し、インゴットを鋳造した。
次に、1000〜1250℃の範囲でソーキングを行い、その後、鍛造し、断面が45mm×45mmの角材を得た。
そして、この角材を800〜1000℃の範囲で5h加熱保持した後、20℃/hの冷却速度で徐冷して、球状化焼鈍した。
次に、得られた材料を切断し、20×20×20mmの硬さ測定用試験片、10×10×2mmの残留オーステナイト量測定用試験片、断面直径が5mm、高さが20mmの円柱状の熱膨張係数測定用試験片を作成した。そして、これらの試験片について第2表に記載した焼入れ焼戻しを実施した。
ここで、焼入れは、第2表に記載の焼入れ温度にて2h保持した後、30℃/minの平均冷却速度で冷却する処理である。
また、焼戻しは、第2表に記載の焼入れ温度にて1h保持した後、空冷する処理である。
その後、硬さ、残留オーステナイト体積率、熱膨張係数を測定した。
各々の測定について以下に具体的に説明する。
<硬さ測定>
20×20×20mmの硬さ測定用試験片について、ロックウェル硬度計(Cスケール)を用いて硬さを測定した。
<残留オーステナイト体積率の測定>
10×10×2mmの残留オーステナイト量測定用試験片について、その測定面をJIS−R6001に規定される♯800まで研磨し、X線回折装置により測定を実施した。X線の測定により得られたフェライトの(200)(211)のピーク強度とオーステナイトの(200)(220)(311)のピーク強度を求め、そのピーク強度比から残留オーステナイト体積率(vol%)を算出した。
<熱膨張係数>
断面直径が5mm、高さが20mmの円柱状の熱膨張係数測定用試験片について、理学電気製熱機械分析装置(TMA)を用い、示差膨張方式によって、室温から500℃までの平均熱膨張係数を測定した。なお、標準試料に石英を用い、昇温速度は5℃/minとした。
Figure 2019044254
Figure 2019044254
比較鋼1は、成分が適正範囲から大きく外れており、炭化物が多量に形成されている。このため、硬さや残留オーステナイト量に問題がないにも関わらず、熱膨張係数が非常に小さくなってしまった。
比較鋼2、5は成分が適正範囲からはずれており、Cr当量が多すぎるため、焼入れ焼戻し硬さが足らなかった。
比較鋼3は、成分が適正範囲からずれており、Cr当量が多すぎるため、焼入れ焼戻し硬さが低く、かつ、熱膨張係数も小さくなった。
比較鋼4は、成分が適正範囲からずれ、かつ、焼入れ温度も高すぎるため、固溶量が増え、残留オーステナイトが多量に発生するとともに、残留オーステナイトが十分に分解しきれず、多量に残ってしまい熱膨張係数が大きくなってしまった。
比較鋼6は、成分が適正範囲からずれ、かつ、焼入れ温度や焼戻し温度が低すぎるため、残留オーステナイトが十分に分解しきれず、多量に残ってしまい熱膨張係数が大きくなってしまった。
比較鋼7は、成分が適正範囲であるものの、Cr当量が多すぎるため、焼入れ焼戻し硬さが足らなかった。
比較鋼8は、成分、成分バランスともに適正範囲であるものの、焼入れ温度が高すぎ、固溶量が増え、残留オーステナイトが多量に発生してしまい、熱膨張係数が大きくなってしまった。
比較鋼9は、成分が適正範囲であるものの、Ni当量が多すぎるため、適正な焼入れ焼戻し温度でも、残留オーステナイトが多量に残ってしまい、熱膨張係数が大きくなってしまった。
比較鋼10は、成分、成分バランスともに適正範囲であるものの、焼戻し温度が低すぎ、残留オーステナイトがほとんど分解されないため、熱膨張係数が大きくなってしまった。
<実験2>
発明鋼1〜17を用いて、第3表に記載の焼入れ温度で焼入れした材料を用いて残留オーステナイト量と熱膨張係数を測定した。これらの関係を図3に示す。
第2表と第3表の残留オーステナイト体積率に対して、熱膨張係数には高い相関が見られる。
残留オーステナイト量が多すぎれば、熱膨張係数が大きくなりすぎることがわかる。
組成が適正であっても、所定の焼入れ焼戻しにより、残留オーステナイト量を8%以下にしなければ、所望の熱膨張係数を得ることは出来ない。
Figure 2019044254

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.60〜0.90%、
    Si:0.40〜1.20%、
    Mn:0.30〜1.0%、
    Ni:0.10〜0.40%、
    Cr:5.7〜6.8%、
    Mo:1.40〜2.80%、
    V:0.05〜1.0%、
    Al:0.010〜0.030%、
    含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、
    Ni当量=Ni含有率(質量%)+30×C含有率(質量%)+0.5×Mn含有率(質量%)
    と定義し、
    Cr当量=Cr含有率(質量%)+Mo含有率(質量%)+1.5×Si含有率(質量%)+10×Al含有率(質量%)
    と定義した場合に、
    9.8≦Ni当量−Cr当量≦16.4を満たし、
    残留オーステナイト体積率が8%以下であり、室温から500℃までの平均熱膨張係数が1.30〜1.45×10-5(1/K)であり、室温での硬さが54HRC以上である、金型。
  2. さらに、質量%で、
    Nb:0.03〜1.0%、
    Ti:0.03〜1.0%
    含有する、請求項1に記載の金型。
  3. さらに、質量%で、
    C:0.80〜0.90%、
    Mo:2.5〜2.8%、
    含有する、請求項1または2に記載の金型。
  4. さらに
    質量%で、
    C:0.60〜0.70%、
    Mo:1.40〜1.60%、
    含有する、請求項1または2に記載の金型。
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