以下、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更が可能であり、そのような変更を伴うシートの製造方法およびシートもまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
(実施形態1)
本実施形態に係るシートの製造方法およびシートについて、使用済の古紙を乾式で解繊処理して再生するシートの製造方法、およびそのシートを例に挙げて説明する。
<シート製造装置>
まず、本実施形態に係るシート製造装置について、図1を参照して説明する。図1は、実施形態1に係るシート製造装置を示す模式図である。なお、以下の図においては、各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。また、説明の便宜上、図1の上方向を上方、下方向を下方とし、使用済古紙が投入(供給)される側を上流側、製造されたシートが排出される側を下流側として説明する。
図1に示すシート製造装置100は、使用済古紙などを乾式で解繊処理し、得られた繊維を用いてシートを製造する装置である。シート製造装置100は、供給部10、解繊部20、選別部40、混合部50、堆積部60、シート形成部80などを備えている。
供給部10は、粗砕部12へ、本実施形態のシートの原料を供給する。シートの原料としては、例えば、紙、パルプ、パルプシート、布帛(不織布や織物)などの繊維を含む物品が挙げられる。本実施形態では、原料として古紙(紙)を用いる。供給部10は、古紙を重ねて蓄積するスタッカーと、スタッカーから古紙を粗砕部12へ送り出す自動投入装置とを備えていてもよい。
粗砕部12は、供給部10から供給された古紙を、粗砕刃14によって裁断(粗砕)して粗砕片とする。粗砕部12は、例えば、古紙を挟んで裁断する一対の粗砕刃14と、粗砕刃14を回転させる駆動部(図示せず)とを備えている。これらは、所謂シュレッダーと同様の構成であってもよい。粗砕刃14における裁断は、乾式にて行われる。ここで、乾式とは、大気などの気相中にて行う方式を指す。粗砕片は、後述する解繊部20における解繊処理に適した形状や大きさであればよく、特に限定されないが、例えば、数10mm四方以下のサイズである。
粗砕部12は、粗砕刃14によって裁断された粗砕片を受けるシュート9(ホッパー)を備えている。シュート9は、例えば、粗砕片が裁断後に移動(進行)する方向に向かって、徐々に幅が小さくなるテーパー形状を有している。シュート9には、解繊部20に連通する管2が連結されている。管2は、粗砕片をシュート9から解繊部20へ搬送する。
粗砕部12のシュート9、またはその近傍には、加湿部202によって加湿された空気(加湿空気)が供給される。そのため、粗砕片が、静電力によってシュート9や管2の内面に吸着することが抑えられる。また、粗砕片は加湿空気と共に管2を介して解繊部20へ搬送される。そのため、解繊部20の解繊処理にて、粗砕片から作製された解繊物が、解繊部20の内部に吸着することを抑制する効果もある。なお、加湿部202は、粗砕刃14に加湿空気を供給して、供給部10から供給される古紙を除電する構成としてもよい。また、加湿部202と共に、イオナイザー(静電気除去装置)を用いてもよい。
解繊部20では、粗砕部12で裁断された粗砕片に解繊処理を施す。解繊処理とは、複数の繊維が折り重ねられて成る被解繊物(古紙)から、繊維を解きほぐす処理をいう。また、解繊部20は、古紙に含まれる、インクやトナー由来の色材、樹脂粒子、添加剤などを、繊維から分離する機能も有している。
解繊部20にて解繊処理を施して作製したものを解繊物と呼ぶ。解繊物には、解きほぐされた繊維の他に、色材、樹脂粒子、添加剤などが含まれている場合がある。解繊物の形状は、紐(String)状や平紐(Ribbon)状である。解繊物に含まれる繊維は、繊維同士が絡み合っていない状態であってもよいし、繊維同士が絡み合って塊状となった状態であってもよい。
本実施形態の解繊処理は、乾式にて解繊が行われる。解繊部20は、例えば、高速回転するローターおよびローターの外周に位置するライナーを有するインペラーミル(図示せず)を備えている。ローターの回転によって気流が発生し、この気流によって、管2から解繊部20へ粗砕片が吸引される。解繊部20に搬送された粗砕片は、インペラーミルのローターとライナーとの間に挟まれて解繊されて解繊物となる。さらに、上記気流によって、解繊物は排出口24へ搬送される。これにより、解繊物は、排出口24から管3に送り出され、管3を介して選別部40へ搬送される。
解繊部20で作製された解繊物は、解繊部20が発生させる気流によって、解繊部20から選別部40に搬送される。シート製造装置100では、さらに、気流発生装置として解繊部ブロアー26を備えている。解繊部ブロアー26は、管3に取り付けられている。解繊部ブロアー26は、解繊部20から空気と共に解繊物を吸引し、選別部40へ放出する。これにより、解繊部20が発生させる気流に加えて、解繊部ブロアー26が発生させる気流によって、解繊物が選別部40へ搬送される。
選別部40は、解繊物が気流に乗って流入する導入口42を備えている。選別部40は、導入口42から導入した解繊物を、繊維の長さに応じて選別する。詳しくは、選別部40は、解繊物のうち、所定のサイズ以下の解繊物を第1選別物とし、第1選別物より大きなサイズの解繊物を第2選別物として、選別する機能を有している。第1選別物は、繊維の他に粒子などを含み、第2選別物は、例えば、大きな繊維、未解繊片(十分に解繊されていない粗砕片)、解繊された繊維の凝集物や繊維が絡まったりした塊などを含んでいる。
選別部40は、ドラム部41と、ドラム部41を収容するハウジング部43と、を備えている。ドラム部41は、円筒部(図示せず)を有し、モーターなどよって円筒部が回転駆動される。ドラム部41は、円筒部に網(フィルター、スクリーン)が設けられ、篩としての機能を有している。この網によって、解繊物は、網の目開き(開口)の大きさに対して、同等以下のサイズの第1選別物と、大きいサイズの第2選別物とに選別される。すなわち、上述した所定のサイズとは、ドラム部41の網の目開きによって決められる。ドラム部41の網には、例えば、金網、切れ目を有する金属板を引き延ばしたエキスパンドメタル、金属板にプレス機などで孔を形成したパンチングメタルなどが採用可能である。
以上により、導入口42から導入された解繊物は、ドラム部41の内部に至り、ドラム部41(円筒部)の回転運動により、第1選別物と第2選別物とに選別される。つまり、第1選別物は、ドラム部41の網の目を通過してドラム部41の外側に放出される。第2選別物は、ドラム部41の網の目を通過しないため、ドラム部41の内側(円筒部の内部)に残る。
第1選別物は、ドラム部41の外側の空気中に放出された後、重力によって下方へ向かう。ドラム部41の下方には、第1ウェブ形成部45のメッシュベルト46が設けられているため、第1選別物はメッシュベルト46上に降下する。
第2選別物は、導入口42からドラム部41に流入する気流によって、排出口44へ搬送され管8へ搬送される。管8は、ドラム部41の内側と管2とを連結している。そのため、第2選別物は、管8から管2へ導入される。次いで、第2選別物は、粗砕部12にて裁断された粗砕片と共に管2を通って搬送され、解繊部20の導入口22に至る。すなわち、第2選別物は、解繊部20に戻されて、再び解繊処理が施される。
第1ウェブ形成部45(分離部)は、メッシュベルト46(分離ベルト)、ローラー47、吸引部48を備えている。メッシュベルト46は、無端形状のベルトであって、3個のローラー47に懸架されている。そのため、メッシュベルト46は、ローラー47の回転運動によって、図1の選別部40に矢印で示した方向(選別部40の矢印方向)に駆動され、搬送経路が形成されている。メッシュベルト46の表面には、所定のサイズの開口が配列された網が設けられている。そのため、メッシュベルト46に降下した第1選別物は、網の目によってサイズが選別される。
第1選別物のうち、網の目を通過するサイズの微粒子は、メッシュベルト46を通り抜けて下方へ落下する。このメッシュベルト46を通過する微粒子は、解繊物の中で比較的に小さいものや、樹脂粒子、色材または添加剤などの密度が小さいものを含んでいる。これらは、シート製造装置100におけるシートの製造に用いない除去物となる。
第1選別物のうち、網の目を通過しないサイズの繊維は、メッシュベルト46上に残ってメッシュベルト46と共に選別部40の矢印方向に搬送される。メッシュベルト46は、シート製造装置100における通常動作中には、一定の速度V1で駆動(搬送)される。ここで、通常動作とは、シート製造装置100の始動制御(立ち上げ)および停止制御(立ち下げ)以外の動作を指し、具体的にはシートを製造している間の動作をいう。
以上により、解繊部20で解繊処理された解繊物は、選別部40にて第1選別物と第2選別物とに選別され、第2選別物は解繊部20へ戻される。第1選別物は、第1ウェブ形成部45(メッシュベルト46)によって除去物が取り除かれる。除去物が取り除かれた第1選別物は、シートの製造に適した材料(繊維)である。
メッシュベルト46の下方には、吸引部48が設けられている。吸引部48は、メッシュベルト46の下方から空気を吸引する。そのため、除去物は、メッシュベルト46を速やかに通過する。吸引部48は、管23を介して集塵部27(集塵装置)に連結されている。集塵部27の下流側には、捕集ブロアー28が設けられている。捕集ブロアー28は、集塵部27から空気を吸引する集塵用の吸引部として機能する。捕集ブロアー28の吸引によって、除去物は管23から集塵部27に導入される。
集塵部27は、吸引された気流中から微粒子(除去物)を捕捉して取り除く。微粒子が除去された空気は捕集ブロアー28へ進む。捕集ブロアー28のさらに下流側は、管29に連結されている。そのため、該空気は、管29を介してシート製造装置100の外部に放出される。
これらによって、第1選別物から除去物が速やかに取り除かれ、メッシュベルト46上に除去物が取り除かれた第1選別物(繊維)が堆積して、第1ウェブW1が形成される。第1ウェブW1は、繊維が緩く堆積してウェブ形状となった柔軟な形態である。
ドラム部41を含む空間には、加湿部204によって加湿空気が供給される。この加湿空気によって、選別部40の内部にて第1選別物が加湿される。そのため、静電力によって、繊維がメッシュベルト46へ付着することが低減されて、メッシュベルト46から剥離されやすくなる。また、静電力に起因して、第1選別物がハウジング部43の内面に付着することを抑えられる。
なお、シート製造装置100において、第1選別物と第2選別物とを選別して分離する構成は、ドラム部41を備えた選別部40に限定されない。例えば、分級機を用いて解繊物を分級する構成であってもよい。分級機としては、例えば、サイクロン分級機、エルボージェット分級機、エディクラシファイヤーなどが挙げられる。これらの分級機によれば、第1選別物と第2選別物とを選別して分別することが可能である。また、解繊物中で比較的に小さいものや、樹脂粒子、色材、添加剤などの密度が小さいものを含む除去物(微粒子)を取り除くことが可能となる。そのため、第1選別物に含まれる微粒子を、分級機によって第1選別物から除去する構成としてもよい。この場合には、第2選別物は解繊部20に戻され、第1選別物から除去物が取り除かれ、除去物は集塵部27にて捕捉される。
メッシュベルト46の搬送経路の途中には、加湿部210が設けられている。加湿部210によって、ミスト(水の微粒子)を含む空気が供給される。加湿部210が製造する水の微粒子は、メッシュベルト46上に載って搬送されてきた第1ウェブW1に向かって降下して、第1ウェブW1に水分を供給する。そのため、第1ウェブW1に含まれる水分量が調整され、静電力によってメッシュベルト46へ第1ウェブW1の繊維が付着することが抑えられる。
メッシュベルト46の搬送経路の端部には、回転体49が設けられている。回転体49は、搬送されてきた第1ウェブW1を、メッシュベルト46から剥離すると共に、分断する。回転体49は、第1ウェブW1の繊維を解して、後述する混合部50にて樹脂などと混合しやすい状態へ加工する。
回転体49の構成は、特に限定されないが、板状の羽根を有し、回転する回転羽根形状である。回転体49は、メッシュベルト46から剥離される第1ウェブW1と羽根とが接触するように配置されている。回転体49の回転(例えば、図1中で矢印Rにて示す方向への回転)によって、メッシュベルト46から剥離した第1ウェブW1に羽根が衝突する。そのため、回転体49の羽根により、第1ウェブW1は分断されて、細分体Pに加工される。細分体Pは、回転体49の下方の管7の内部を降下して、管7内の気流によって、管7に続いて設けられた管54へ搬送される。
ここで、回転体49は、回転体49の羽根がメッシュベルト46と接触しない位置に設置することが好ましい。例えば、該羽根の先端部とメッシュベルト46との間隔は、0.05mm以上、0.5mm以下である。これにより、メッシュベルト46と回転体49との接触による損傷を防ぎつつ、第1ウェブW1の加工を行うことができる。
回転体49および管7を含む空間には、加湿部206によって加湿空気が供給される。そのため、回転体49(羽根)や管7の内面に、静電力によって繊維や細分体Pが付着することが抑えられる。さらに、管7の下流側の管54へ加湿空気が供給されるため、管54においても静電力の影響を低減することができる。
管54の途中には、混合部50が設けられている。混合部50は、添加物供給部52と混合ブロアー56とを備えている。混合ブロアー56に対して、添加物供給部52は上流側(管7に近い側)に設けられている。混合部50は、管7から細分体Pを吸引し、添加物供給部52にて複合材を供給して、複合材と細分体Pとを混合して管54の下流側へと、気流によって搬送する機能を有している。
添加物供給部52は、添加物を収納する添加物カートリッジ(図示せず)に接続され、添加物カートリッジ内部の複合材を、管54を気流によって搬送されてくる細分体Pに供給する。複合材は、樹脂、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMCナトリウム塩)などの紛体を含んでいる。複合材の詳細については後述する。
添加物カートリッジは、添加物供給部52に着脱可能な構成であってもよい。また、添加物カートリッジに複合材を補充可能な構成であってもよい。添加物供給部52は、複合材を一時的に貯留し、管54へ送り出す排出部52aを備えている。
排出部52aは、添加物供給部52に貯留された複合材を、管54に送り出すフィーダー(図示せず)、およびフィーダーと管54とを接続する管路を開閉するシャッター(図示せず)を備えている。シャッターが閉じられると、排出部52aから管54への複合材の供給が停止される。このシャッターによって、フィーダーが動作していない場合に、管54の負圧による複合材の管54への流出が抑えられる。また、フィーダーは、管54へ送り出す複合材の供給量(質量)を、調節する機能を有している。
混合ブロアー56は羽根を有し、気流を発生させて、管7および管54の上流側から空気を吸引する。この気流によって、管7を降下する細分体Pは管54側へ吸引されて、混合ブロアー56側へ気流にて搬送される。また、添加物供給部52から供給された複合材も、上記気流にて搬送される。そのため、細分体Pおよび複合材は、管54内の気流や混合ブロアー56の羽根などの作用によって混合されて混合物となる。上記気流によって、細分体Pと複合材との混合物(以降、単に「混合物」ともいう。)は、管54から、下流側の堆積部60へ搬送される。
ここで、細分体Pと複合材とを混合する機構は、上記に限定されない。例えば、高速回転する羽根によって撹拌するものや、V型ミキサーのように容器の回転を利用したものであってもよい。また、これらの機構を、混合ブロアー56の上流側または下流側に追加して設けてもよい。
堆積部60は、管54と接続された導入口62から、混合物を導入し、空気中に放出して細分体Pの絡み合った繊維を解す。また、同様にして、複合材が塊状になっている場合に、これらを紛体に戻す。
堆積部60は、ドラム部61と、ドラム部61を収容する覆いであるハウジング部63と、を備えている。ドラム部61は、円筒部(図示せず)を有し、モーターなどによって円筒部が回転駆動される。ドラム部61は、円筒部に網(フィルター、スクリーン)が設けられ、篩としての機能を有している。この網によって、ドラム部61は、網の目開き(開口)の大きさに対して、小さいサイズの繊維や粒子を通過させ、ドラム部61の外側に放出する。ドラム部61の構成は、例えば、上述したドラム部41の構成と同様である。
なお、ドラム部61の篩(ふるい)は、特定の対象物を選別する機能を有していなくてもよい。つまり、ドラム部61の円筒部として用いられる篩とは、網を備えたという意味であり、ドラム部61は、ドラム部61に導入された上記の混合物を全て通過させてもよい。
ドラム部61の下方には、第2ウェブ形成部70が設けられている。第2ウェブ形成部70では、堆積部60(ドラム部61)から降下した混合物によって、第2ウェブW2が形成される。第2ウェブ形成部70は、例えば、メッシュベルト72、ローラー74、サクション機構76を備えている。
メッシュベルト72は、無端形状のベルトであって、複数のローラー74に懸架されている。そのため、メッシュベルト72は、ローラー74の回転運動によって、図1の堆積部60に矢印で示した方向(堆積部60の矢印方向)に駆動され、搬送経路が形成されている。メッシュベルト72の形成材料は、例えば、金属、樹脂、布(不織布を含む)である。メッシュベルト72の表面には、所定のサイズの開口が配列された網が設けられている。そのため、メッシュベルト72に降下した混合物のうち、メッシュベルト72の網の目を通過するサイズの微粒子は、メッシュベルト72を通り抜けてさらに下方に降下する。これに対し、上記網の目を通過しないサイズの繊維および複合材は、メッシュベルト72上に堆積する。なお、メッシュベルト72の網の目は微細であって、ドラム部61から降下する繊維や複合材などの大半を通過させないサイズである。
メッシュベルト72上に堆積した混合物は、メッシュベルト72と共に堆積部60の矢印方向に搬送される。メッシュベルト72は、シートを製造する通常動作中には、一定の速度V2で搬送方向に移動する。
メッシュベルト72の下方には、サクション機構76が設けられている。サクション機構76は、サクションブロアー77を備え、サクションブロアー77の吸引力によって、下方(堆積部60からメッシュベルト72)へ向かう気流を発生させる。
堆積部60から放出された混合物は、サクション機構76が発生させる気流によって降下の速度が増大されて、メッシュベルト72上に吸引される。そのため、メッシュベルト72上における第2ウェブW2の形成が促進され、堆積部60からの放出速度も増大される。さらに、混合物の降下方向にダウンフローが形成されるため、複合材の降下中に繊維などにおける絡み合いの発生が抑えられる。絡み合いの発生が抑えられるため、第2ウェブW2は、空気を含んで嵩高い状態でメッシュベルト72上に形成される。
サクションブロアー77(堆積吸引部)は、サクション機構76から吸引した空気を、シート製造装置100の外部に放出する。このとき、サクションブロアー77が吸引した空気を、捕集フィルター(図示せず)を通してから放出してもよい。あるいは、サクションブロアー77の空気の放出側を、上述した管23と連結し、上記空気を集塵部27へ導入して集塵してもよい。
ドラム部61を含む空間には、加湿部208によって加湿空気が供給される。そのため、堆積部60の内部の空気が加湿されて、静電力によってハウジング部63に繊維や複合材が付着することが抑えられる。これにより、混合物がメッシュベルト72へと速やかに降下し、混合物の損失を抑えて第2ウェブW2を形成することができる。
以上のように、堆積部60および第2ウェブ形成部70を経て、第2ウェブW2が形成される。
メッシュベルト72の搬送経路における、堆積部60の下流側には、加湿部212が設けられ、ミスト(水の微粒子)を含む空気が供給される。そのため、加湿部212が製造する水の微粒子は、第2ウェブW2に降下して、第2ウェブW2に水分を供給する。これにより、第2ウェブW2に含まれる水分量が調整され、静電力によってメッシュベルト72に第2ウェブW2の繊維や複合材が付着することが抑えられる。
上記搬送経路の加湿部212の下流側には、搬送部79が設けられている。搬送部79は、メッシュベルト72上の第2ウェブW2を、シート形成部80に搬送する。搬送部79は、例えば、メッシュベルト79a、ローラー79b、サクション機構79cを備えている。メッシュベルト79aは、メッシュベルト72の上方に、メッシュベルト72と対向して配置されている。すなわち、搬送部79においては、メッシュベルト72上に第2ウェブW2が載置され、さらに第2ウェブW2と隙間を空けてメッシュベルト79aが設けられている。
サクション機構79cは、ブロアー(図示せず)を有し、ブロアーの吸引力によってメッシュベルト79aの周辺に上方向きの気流を発生させる。この気流は、メッシュベルト79aと対向する第2ウェブW2に作用して、第2ウェブW2を上方へ吸引する。そのため、第2ウェブW2は、メッシュベルト72から剥離されて、メッシュベルト79a側に吸引されてメッシュベルト79aに吸着される。これにより、搬送部79では、メッシュベルト72からメッシュベルト79aへの第2ウェブW2の受け渡しが行われる。
メッシュベルト79aは、ローラー79bの回転により駆動されて移動し、吸着した第2ウェブW2を下流側のシート形成部80へと搬送する。メッシュベルト72の移動速度(搬送速度)と、メッシュベルト79aの移動速度(搬送速度)とは、例えば同等であってもよい。
シート形成部80は、第2ウェブW2からシートSを形成する。具体的には、シート形成部80は、メッシュベルト79aによって搬送された第2ウェブW2に対して、加圧処理および加熱処理を施してシートSを成形する。
シート形成部80は、加圧処理のための加圧部82と、加熱処理のための加熱部84とを備えている。加圧部82は、一対のカレンダーローラー85を備えている。第2ウェブW2は、カレンダーローラー85によって、所定のニップ圧で挟まれて加圧処理を施される。これにより、第2ウェブW2は、厚さ(上下方向の寸法)が小さく圧縮され、密度が大きくなる。一対のカレンダーローラー85は、一方がモーター(図示せず)に駆動される駆動ローラーであり、他方が従動ローラーである。カレンダーローラー85は、モーター駆動によって回転し、第2ウェブW2に加圧処理を施しながら加熱部84へ搬送する。
加熱部84としては、例えば、加熱ローラー(ヒーターローラー)、熱プレス成形機、ホットプレート、温風ブロアー、赤外線加熱器、フラッシュ定着器などの加熱装置が挙げられる。シート製造装置100では、加熱部84として、一対の加熱ローラー86を用いている。加熱ローラー86は、内部または外部に設けられたヒーターによって、予め設定された温度に加温される。一対の加熱ローラー86は、一方がモーター(図示せず)に駆動される駆動ローラーであり、他方が従動ローラーである。加熱ローラー86は、モーター駆動によって回転しながら、第2ウェブW2を挟んで加熱処理を施す。これにより、第2ウェブW2中の樹脂によって、複数の繊維などが結着され、帯状のシートSが成形される。
なお、加圧部82におけるカレンダーローラー85の数、および加熱部84における加熱ローラー86の数は、上記に限定されない。
帯状のシートSは、加熱ローラー86によって送り出されて、切断部90に搬送される。切断部90は、帯状のシートSを所定のサイズに切断する。切断部90は、例えば、第1切断部92と、第2切断部94とを備えている。第1切断部92は、帯状のシートSの搬送方向と交差する方向に配置され、帯状のシートSの長さ方向(搬送方向)に対して切断を行う。第2切断部94は、帯状のシートSの搬送方向に略平行な方向に配置され、帯状のシートSの幅方向に対して切断を行う。第1切断部92および第2切断部94の配置および機能は、上記に限定されない。
切断部90によって、帯状のシートSは、所定サイズの単票のシートSに加工される。次いで、単票のシートS(以降、単に「シートS」ということもある。)は、切断部90から排出部96へ送り出される。排出部96は、シートSを載置して蓄積するトレイ、あるいはスタッカーを備えていてもよい。
以上に述べたように、シート製造装置100によって、乾式で使用済古紙からシートSが製造される。
<シートの製造方法>
次に、本実施形態のシートの製造方法について、図2を参照して説明する。図2は、シートの製造方法を示す工程フロー図である。図2に示した工程フローは一例であって、これに限定されるものではない。なお、本実施形態では、上述したシート製造装置100を用いることから、以降は図1も参照して説明する。
本実施形態に係るシートの製造方法は、使用済古紙に解繊処理を施す工程S1と、解繊処理で得られた解繊物を選別処理して、繊維を取り出す工程S2と、樹脂および分子量200000以上のCMCナトリウム塩を含む添加物を調製して複合化する工程(複合材の作製工程)S3と、繊維および複合材を混合して、繊維、樹脂、および分子量200000以上のCMCナトリウム塩を含む混合物を作製する工程S4と、混合物からシートSを形成する工程として、工程S5(加圧処理)および工程S6(加熱処理)と、を備えている。
図2に示した工程S1(解繊処理)では、使用済古紙に乾式の解繊処理を施す。具体的には、粗砕部12にて使用済古紙を粗砕片とした後に、解繊部20にて粗砕片に解繊処理を施して解繊物を作製する。そして、工程S2へ進む。
工程S2(選別処理)では、解繊物からシートSの製造に用いる繊維を選別する。具体的には、解繊物には、充分に解繊されなかった粗砕片や、使用済古紙に含有または付着していた、繊維以外の成分が含まれていることがある。そのため、まず、選別部40にて、所定のサイズ以下の繊維などを第1選別物として取り出す。所定のサイズを超える第2選別物には、大きな繊維、未解繊片、繊維の凝集物などが含まれている。そのため、第2選別物は、解繊部20に戻されて解繊処理を行った後に、再び選別処理が施される。
解繊物から取り出された第1選別物には、繊維以外の成分として、色材、樹脂粒子、添加剤などの微粒子が含まれていることがある。これらは、シートSの形成材料として不要な成分である。そこで、第1ウェブ形成部45のメッシュベルト46の網によって、上記微粒子を除去物として取り除く。これらによって、乾式で解繊処理された繊維(第1ウェブW1)が得られる。そして、工程S3へ進む。
工程S3(複合材の作製)では、シートSの形成材料として用いる、添加物を調製して複合化し、複合材とする。複合材には、樹脂、分子量200000以上のCMCナトリウム塩が複合化された材料が含まれる。これらは、後工程(工程S4)にて乾式で繊維と混合されることから、繊維との混合を良好とするために固体として用いることが好ましい。なお、工程S3は、シート製造装置100内で行わずに、別途実施してもよい。
[樹脂]
添加物(複合材)に用いる樹脂は、後工程の工程S6(加熱処理)で溶融し、シートSに含まれる繊維やCMCナトリウム塩などを結着させる。樹脂は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であり、例えば、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独または複数種を組み合せて用いてもよい。これらの樹脂を使い分けることによって、工程S6における樹脂の溶融温度や、シートSの柔軟性、引張強度などの物性を調節することができる。これらの樹脂は、繊維状であってもよく、粉末状であってもよい。
樹脂の含有量は、シートSの全質量に対して1質量%以上、30質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以上、25質量%以下である。樹脂の含有量が上記の範囲であることにより、繊維などの結着が強化され、シートSにおける引張強度などの物性がさらに向上する。また、樹脂の含有量を30質量%以下とすることによって、シートS全体の疎水性が過剰に上昇することを抑えて、印刷品質を良好にすることができる。
[CMCナトリウム塩]
CMCナトリウム塩をシートSに含有させることにより、シートSを印刷に用いると、印刷物における色材の発色性を向上させることができる。CMCナトリウム塩は、セルロースの一部のヒドロキシ基の水素が、カルボキシメチル基で置換され、さらにそのカルボキシメチル基がナトリウム塩となった構造を有している。これにより、CMCナトリウム塩は、疎水部と親水部とを備えている。そのため、CMCナトリウム塩は、疎水性または親水性のいずれの樹脂ともなじみやすく、樹脂が有する親水性などの特性を調節することができる。特に、樹脂とCMCナトリウム塩とが複合化された状態であれば、シートS全体にばらつきの発生を抑えて親水性が付与される。
CMCナトリウム塩は、分子量が200000以上のものを用いる。CMCナトリウム塩は、カルボキシメチル基に由来して水溶性(アニオン性)を示すが、分子量が200000以上であると、そうでない場合と比べて疎水性が高くなる。そのため、このようなCMCナトリウム塩をシートSに含有させることにより、水などのインクの溶媒の浸透を抑え、インク中の色材をシートSの表面に留まりやすくするといった、サイズ剤としての効果を高めることができる。
CMCナトリウム塩の分子量は、好ましくは200000以上、400000以下であり、より好ましくは200000以上、350000以下である。CMCナトリウム塩の分子量を上記の範囲とすることによって、印刷物の発色性がさらに向上すると共に、シートSの柔軟性を維持することができる。
ここで、本明細書における分子量とは、質量平均分子量を指す。CMCナトリウム塩の質量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法を用いて測定することができる。具体的には、例えば、GPC測定装置として、HLC−8320GPC(商品名、東ソー社)、カラムとして、TSKgel(登録商標) Super Multipore PW−H(6.0mmI.D.×15cm、東ソー社)×2、溶離液として、100mmol(ミリモル)/LのNaNO3水溶液、検出器として、RI(Refractive Index:示差屈折率)検出器、をそれぞれ用いて、ポリエチレンオキシドを標準ポリマーとして測定してもよい。
分子量が200000以上のCMCナトリウム塩としては、市販品を用いてもよく、例えば、サンローズ(登録商標)F350HC、F800HC、F600MC、F1400MC、MAC200HC、MAC350HC(以上商品名、日本製紙社)、セロゲン(登録商標)3H、4H、F−3H、HE−1500F、BSH−6、BSH−12、EP、MP−60、P−815C(以上商品名、第一工業製薬社)などが挙げられる。
分子量が200000以上のCMCナトリウム塩の含有量は、シートSの全質量に対して5質量%以上であり、好ましくは6質量%以上、30質量%以下であり、より好ましくは8質量%以上、20質量%以下である。これによれば、上記CMCナトリウム塩のサイズ剤としての効果をより高めることができる。そのため、印刷物の発色性をさらに向上させることができる。シートSの全質量に対する上記CMCナトリウム塩の含有量は、複合材中の添加量などによって調整することが可能である。また、複合材へのCMCナトリウム塩の添加量は、好ましくは5質量%以上、70質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上、60質量%以下である。これによれば、複合材における紛体としての供給特性が維持され、次工程(工程S4)における繊維と複合材との混合比を良好に調節することができる。
[その他の成分]
添加物(複合材)には、その他の成分として、シートSを着色するための着色剤、繊維や樹脂などの凝集を抑制するための凝集抑制剤、シートSに難燃性を付与するための難燃剤などを用いてもよい。
[複合材]
上述した成分を、予め混合して添加物を調製して複合材とし、添加物カートリッジに収納する。
複合材は、最大粒子径が25μm以下である。好ましい最大粒子径は、1μm以上、25μm以下であり、より好ましくは、5μm以上、10μm以下である。最大粒子径を上記の範囲とすることによって、複合材における各成分、および混合物における繊維と複合材との混和性を向上させて、シートSの表面および内部における分散性が向上する。これにより、上記CMCナトリウム塩のサイズ剤としての効果がより発現されやすくなり、印刷物の発色性をさらに向上させることができる。
ここで、本明細書における最大粒子径とは、体積基準粒度分布(100%)を指すものとする。最大粒子径の測定方法は、JIS Z8825に記載の動的光散乱法やレーザー回折光法で求めることができる。例えば、動的光散乱法を測定原理とする、ナノトラック(登録商標)UPA−EX250(商品名、日機装社)などの粒度分布計を用いてもよい。
添加物の混合方法としては、複合材が塊状とならずに作製されれば特に限定されず、公知の方法が採用可能である。なお、後工程S4(混合物の作製)では、乾式にて複合材と繊維とが混合されるため、複合材の作製も乾式で行われることが好ましい。そして、工程S4へ進む。
工程S4(混合物の作製)では、第1ウェブW1(細分体P)と複合材とを混合して混合物を作製する。具体的には、管54を搬送されてきた細分体Pと、添加物供給部52から供給された複合材とを、混合部50の混合ブロアー56の羽根、および混合ブロアー56が発生させた気流によって混合する。このとき、添加物供給部52のフィーダーを用いて、細分体P(繊維)に対する、複合材の供給量を所望の値に調整することが好ましい。作製された混合物は、堆積部60、第2ウェブ形成部70などを経て第2ウェブW2に加工され、シート形成部80に搬送される。そして工程S5へ進む。
工程S5(加圧処理)では、加圧部82の一対のカレンダーローラー85を用いて、混合物(第2ウェブW2)に加圧処理を施す。第2ウェブW2は空気を含み、綿状であるのに対し、加圧処理によって含まれる空気を低減し、密度を大きくする。これにより、シートSの表面および内部構造も密な状態となり、印刷物における色材の滲み、色抜けなどの発生が抑えられる。そして、工程S6へ進む。
工程S6(加熱処理)では、加熱部84の一対の加熱ローラー86を用いて、加圧処理が施された第2ウェブW2に加熱処理を施す。加熱処理における加熱温度は、複合材に用いる樹脂の種類、軟化温度や含有量などに応じて適宜調節する。例えば、加熱温度は、樹脂に流動性が発現する融点付近としてもよい。このような温度で加熱することによって、樹脂が流動しやすくなり、第2ウェブW2の表面および内部で、樹脂が隙間を埋めるように作用する。そのため、形成された帯状のシートSが、加熱処理後に冷却(放冷)されると、樹脂によって繊維およびCMCナトリウム塩が結着される。これにより、シートSにおける、柔軟性や引張強度などの物性を向上させることができる。また、シートSから、繊維やCMCナトリウム塩などの成分が脱落することが抑えられる。
工程S6の後工程として、帯状のシートSを任意の形状に裁断する、裁断工程を設けてもよい。以上の工程により、シートSが製造される。
なお、以上に述べたシートSの製造方法は、使用済古紙に含まれる繊維を原料とし、乾式で製造する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。
<シート>
本実施形態のシートSは、上述したように本実施形態のシートの製造方法によって製造される。すなわち、シートSは、使用済古紙(繊維)と、樹脂および分子量200000以上のCMCナトリウム塩と、を含み、乾式の製造装置であるシート製造装置100を用いて製造される。
シートSは、使用済古紙由来の繊維、および樹脂に加えて、分子量が200000以上のCMCナトリウム塩を含むことから、印刷物における発色性が向上する。そのため、電子写真用紙、インクジェット記録用紙、印刷用紙などに好適に用いることができる。特に、インクジェット記録方法では、色材を水などの溶媒に分散または溶解させたインク(インクジェットインク)を用いて、高精細な画像などを印刷する。したがって、記録用紙(シート)におけるインクの浸透や濡れ広がりなどの特性が印刷品質に影響しやすい。すなわち、発色性が向上するシートSは、インクジェット記録用紙に好適である。
以上に述べたように、本実施形態に係るシートの製造方法およびシートによれば、以下の効果を得ることができる。
CMCナトリウム塩は、疎水性または親水性のいずれの樹脂ともなじみやすく、樹脂が有する親水性などの特性を調節することができる。また、CMCナトリウム塩の分子量が200000以上であることから、疎水性が高くなり、サイズ剤としての効果を高めることができる。以上により、繊維および樹脂を含み、印刷物の発色性を向上させるシートSおよびその製造方法を提供することができる。
繊維と、樹脂およびCMCナトリウム塩を含む複合材とを用いてシートSを形成するため、シートを形成した後にCMCナトリウム塩をシートに付与する場合と比べて、シートSの製造工程が簡潔であり、シートSの製造に要する時間を短縮することができる。
樹脂およびCMCナトリウム塩を含む複合材の最大粒子径が25μm以下であることから、シートSの表面および内部における、樹脂およびCMCナトリウム塩の分散性が向上する。そのため、CMCナトリウム塩のサイズ剤としての効果がより発現されやすくなり、印刷物の発色性をさらに向上させることができる。
CMCナトリウム塩の含有量が5質量%以上であることから、サイズ剤としての効果をより高めることができる。そのため、印刷物の発色性をさらに向上させることができる。
シートSに用いる繊維は、乾式で解繊処理された繊維であることから、普通紙などを乾式プロセスで再生し、固体(紛体)のCMCナトリウム塩を複合材の形態で含有させることが容易になる。すなわち、乾式プロセスにおいて、印刷物の発色性を向上させるシートSを容易に製造することができる。また、湿式で解繊処理を行う場合と比べて、水の使用量が削減されると共に、使用した水の処理が不要となる。
シートSを形成する工程は、加圧処理(工程S5)および加熱処理(工程S6)を含むことから、加圧処理にてシートSの構造を密にし、印刷物におけるインクの滲みの発生を抑えて、印刷品質をさらに向上させることができる。また、加熱処理にて樹脂を溶融させ、シートSの構造をより密にすると共に、引張強度などのシートSの物性を高めることができる。
以下に、本実施形態のシートの製造方法およびシートについて、実施例と比較例とを示し、本実施形態の効果をより具体的に説明する。
<CMCナトリウム塩の粒径の調整>
異なる分子量を有するCMCナトリウム塩(日本製紙製または第一工業製薬製)AからFの粒子(紛体)を、ジェットミル(日本ニューマチック株式会社製、商品名「PJM−80SP」)を用いて粉砕を行い、ふるい分けによって分級した。なお、16μm以下の粒子に関しては、旋回気流式ふるい分け装置(セイシン企業製、商品名「スピンエアシーブSAR−200」)を用いて分級した。実施例および比較例について、用いたCMCナトリウム塩の種類(AからF)、分子量、シート中への添加量を、表1に示した。
<複合材の作製>
比較例8および比較例9を除く、実施例および比較例では、樹脂とCMCナトリウム塩AからFのいずれかと、を複合材として用いた。すなわち、樹脂として、ポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製、商品名「バイロン(登録商標)220」、ガラス転移点:54℃、軟化温度:96℃)1500部と、表1に示したシート中の添加量に応じたCMCナトリウム塩AからFの部数とを、高速ミキサー(日本コークス工業株式会社製、商品名「FM型ミキサーFM−10C」)により処理し、添加物を得た。この添加物を二軸混練押出機(東芝機械株式会社製、商品名「TEM−26SS」)のホッパーから供給して溶融混練を行い、ペレタイズして約3mm径のペレットを得た。
上記のようにして得られたペレットを室温(約20℃)付近まで冷却した後、ハンマーミル(株式会社ダルトン製、商品名「ラボミルLM−05」)にて、直径1mm以下の粒子になるまで粉砕を行った。次いで、この粉砕された粒子をジェットミル(日本ニューマチック株式会社製、商品名「PJM−80SP」)により、さらに粉砕を行い、最大粒子径が40μm以下の複合体を得た。この複合体(粉砕物)について、気流分級機(日本ニューマチック株式会社製、商品名「MDS−3」)を用いて、表1に示した最大粒子径の範囲となるように分級を行って複合材を作製した。
<シートの製造>
実施例および比較例のシート製造には、乾式のシート製造装置として、乾式オフィス製紙機 PaperLab(登録商標)A−8000(商品名、セイコーエプソン社)を用いた。使用済古紙として、A4の普通紙にレーザープリンターにてテキストを印刷した古紙を使用した。具体的には、上述のように作製した複合材を上記シート製造装置に適用し、上記シート製造装置の通常の稼働条件にて、乾式で解繊した繊維と複合材とを混合してA4サイズのシートを製造した。
表1に示すように、CMCナトリウム塩の種類において、Aは、分子量が230000、Bは、分子量が280000、Cは、分子量が340000、Dは、分子量が50000、Eは、分子量が100000、Fは、分子量が170000である。
また、シートの全質量に対するCMCナトリウム塩の添加量を、実施例1から実施例3、実施例7から9、比較例1から比較例4では10質量%とした。比較例5から比較例7では5質量%以下とした。なお、比較例8では、複合材を用いず、比較例9では、樹脂を用いずに、繊維と混合する添加物をCMCナトリウム塩(種類:A、添加量:10質量%)のみとしてシートを製造した。
<発色性評価用サンプルの評価>
発色性の指標として、印刷物のOD(Optical Density)値、C*を評価した。具体的には、インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、商品名「PX−205」)および作製したシートを用いて、普通紙 標準モードにて、1辺3cmのBk(ブラック)、B(ブルー)、G(グリーン)、R(レッド)パッチを印刷し、印刷物を作製した。この際、各パッチは、フォトショップ(登録商標)のRGBカラーモードにて、Bkは(R,G,B)=(0,0,0)、Bは(R,G,B)=(0,0,255)、Gは(R,G,B)=(0,255,0)、Rは(R,G,B)=(255,0,0)で作製した。
この各印刷物の各色を、グレタグ社製SpectroEyeを用いて、視野角2度、D50光源で測定し、BkはOD値測定、B、G、RはCIEで規定する、C*を得た。このようにして得られた値から、以下の基準で判定してその結果を表1に示した。
1.OD値およびC*評価
BkのOD値:Aは1.35以上、Bは1.30以上、1.35未満、Cは1.30未満。
BのC*:Aは37以上、Bは35以上、37未満、Cは35未満。
GのC*:Aは52以上、Bは50以上、52未満、Cは50未満。
RのC*:Aは65以上、Bは63以上、65未満、Cは63未満。
表1に示したように、実施例1から実施例9では、印刷物の発色性が向上することが示された。
一方、比較例1から比較例9では、ブラック(Bk)のOD値、ブルー(B)、グリーン(G)、レッド(R)の彩度(C*)の4つの項目のうち、1つ以上が「不適」レベルに相当するC評価となった。また、全ての比較例において、「好適」レベルに相当するA評価は得られなかった。以上から、比較例1から比較例9では、実施例と比べて発色性が劣ることが分かった。