JP2019042705A - 脱水素触媒、水素の製造システム、及び水素の製造方法 - Google Patents

脱水素触媒、水素の製造システム、及び水素の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】有機化合物の脱水素に伴う炭素‐炭素結合の切断を抑制することができる脱水素触媒を提供する。【解決手段】脱水素触媒は、担体と、担体に担持されている白金族元素と、を備え、透過型電子顕微鏡により測定される白金族元素の平均粒子径がTと表され、COパルス法に基づいて算出される白金族元素の平均粒子径がCと表され、T/Cが0.2以上1.0以下であり、有機化合物の脱水素に用いられる。【選択図】図1

Description

本発明は、脱水素触媒、水素の製造システム、及び水素の製造方法に関する。
近年、環境負荷の小さい水素を燃料とする燃料電池を、自動車等の動力源に用いることが期待されている。水素の輸送、貯蔵及び供給の過程では、例えば、ナフテン系炭化水素(環状炭化水素)が利用される。例えば、水素の製造施設において、芳香族炭化水素の水素化により、ナフテン系炭化水素を生成させる。このナフテン系炭化水素を、水素の消費地へ輸送したり、消費地で貯蔵したりする。消費地において、ナフテン系炭化水素の脱水素により、水素と芳香族炭化水素とを生成させる。この水素を燃料電池へ供給する。ナフテン系炭化水素は、常温において液体であり、水素ガスよりも体積が小さく、水素ガスよりも反応性が低く安全である。そのため、ナフテン系炭化水素は水素ガスよりも輸送及び貯蔵に適している。
ナフテン系炭化水素用の脱水素触媒としては、白金‐レニウムのバイメタルをアルミナ担体に担持させた触媒が知られている(下記非特許文献1参照。)。
R.W.Coughlin, K.Kawakami, Akram Hasan, Journal of Catalysis, Vol. 88, 150‐162 (1984).
しかしながら、従来の脱水素触媒を用いた場合、有機化合物の脱水素に伴って、有機化合物が有する炭素‐炭素結合が切断され易く、有機化合物からメタン等の望まれない副生物が生成し易い。その結果、水素の純度又は収率が低下し易い。
本発明は、有機化合物の脱水素に伴う炭素‐炭素結合の切断を抑制することができる脱水素触媒、当該脱水素触媒を用いた水素の製造システム、及び水素の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面に係る脱水素触媒は、担体と、担体に担持されている白金族元素と、を備え、透過型電子顕微鏡により測定される白金族元素の平均粒子径がTと表され、COパルス法に基づいて算出される白金族元素の平均粒子径がCと表され、T/Cが0.2以上1.0以下であり、有機化合物の脱水素に用いられる。
本発明の一側面に係る上記脱水素触媒では、白金族元素が白金であってよい。
本発明の一側面に係る上記脱水素触媒では、担体が、アルミナ、シリカ、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも一種を含んでよい。
本発明の一側面に係る上記脱水素触媒では、担体が、第3族元素及び第4族元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素の酸化物を含んでよい。
本発明の一側面に係る上記脱水素触媒では、担体が、セリウムの酸化物を含んでよい。
本発明の一側面に係る上記脱水素触媒では、担体が、チタンの酸化物を含んでよい。
本発明の一側面に係る上記脱水素触媒では、有機化合物が、炭化水素であってよい。
本発明の一側面に係る上記脱水素触媒では、炭化水素が、アルキル基を有する環状飽和炭化水素であってよい。
本発明の一側面に係る上記脱水素触媒では、アルキル基がメチル基であってよい。
本発明の一側面に係る水素の製造システムは、上記脱水素触媒を有し、上記脱水素触媒を用いた有機化合物の脱水素により、水素を生成させる脱水素反応器を備える。
本発明の一側面に係る水素の製造方法は、上記脱水素触媒を用いた有機化合物の脱水素により、水素を生成させる工程を備える。
本発明によれば、有機化合物の脱水素に伴う炭素‐炭素結合の切断を抑制することができる脱水素触媒、当該脱水素触媒を用いた水素の製造システム、及び水素の製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る脱水素触媒の表面の一部を示す模式図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る水素の製造システムを示す模式図である。 図3は、実施例1〜6及び比較例1それぞれのT/Cと生成水素中の初期メタン濃度(モルppm)との関係を示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。図面において、同等の構成要素には同一の符号を付す。
(脱水素触媒)
本実施形態に係る脱水素触媒は、担体と、担体に担持されている白金族元素とを備える。透過型電子顕微鏡(TEM)により測定される白金族元素の平均粒子径は、Tと表される。COパルス法に基づいて算出される白金族元素の平均粒子径は、Cと表される。T/Cは0.2以上1.0以下である。脱水素触媒は、有機化合物の脱水素に用いられる。担体には、白金族元素から構成された活性金属粒子が担持されていてよい。活性金属粒子は、白金族元素のみからなっていてよい。活性金属粒子は、白金族元素に加えて、さらに別の元素を含んでもよい。平均粒子径Tは、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定される、白金族元素を含む活性金属粒子の平均粒子径と言い換えてよい。平均粒子径Cは、COパルス法に基づいて算出される、白金族元素を含む活性金属粒子の平均粒子径と言い換えてよい。有機化合物は、炭化水素であってよい。炭化水素は、炭素及び水素のみからなる化合物に限られない。炭化水素は、炭素及び水素に加えて、さらにヘテロ元素を有してよい。
COパルス法は、例えば、脱水素触媒を水素で還元するステップと、還元後の脱水素触媒を容器に容れて、COガスを容器内の脱水素触媒へパルス状に繰り返し供給して、COガスを脱水素触媒へ吸着させるステップと、脱水素触媒に吸着せずに容器から排出されるCOガスを定量するステップと、脱水素触媒へのCOガスの供給量(積分値)と、容器からのCOガスの排出量との差分から、脱水素触媒の単位質量当たりの、脱水素触媒におけるCOガスの吸着量を特定するステップと、を備えていてよい。
以下では、T/Cの技術的意義について詳しく説明する。
TEMの分解能のために、TEMにより測定することができる活性金属粒子の大きさには限界がある。平均粒子径Tの算出過程では、TEMにより、粒子径が1nm以上である活性金属粒子の粒子径を測定する。測定された粒子径と、粒子径を測定した活性金属粒子の数とから、測定された粒子径の平均値を算出する。この平均値が、平均粒子径T(単位:nm)である。
COパルス法では、脱水素触媒に含まれる活性金属粒子の表面にCOを吸着させる。平均粒子径Cは、脱水素触媒におけるCOの吸着量に基づいて算出される。ここで、Cは、脱水素触媒に含まれる全ての活性金属粒子の大きさが均一であり、各粒子の表面の全体にCOが吸着したと仮定して算出される。したがって、Cは、脱水素触媒に含まれる全ての活性金属粒子の見かけの平均粒子径といえる。
平均粒子径Cは、例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製の金属分散度測定装置の取扱説明書に記載されている手順に沿って算出できる。平均粒子径Cの算出過程では、COの吸着量に基づいて、活性金属粒子の表面積Sが算出される。活性金属粒子の体積Vは、脱水素触媒の単位質量当りの活性金属粒子の含有量Wを、脱水素触媒に含まれる活性金属粒子の密度ρで除することによって算出される。3×V/Sは、活性金属粒子の見かけの半径r(単位:nm)に等しい。2rは、平均粒子径C(単位:nm)に等しい。
以下では、T/Cが0.2以上1.0以下であることによって、炭化水素の脱水素に伴う炭素‐炭素結合の切断が抑制されるメカニズムについて説明する。
上述のとおり、脱水素触媒に含まれる活性金属粒子のうち、TEMでは測定が困難な微小粒子の粒子径は、TEMにより測定される平均粒子径Tに反映されない。一方、COパルス法に基づいて算出される平均粒子径Cは、脱水素触媒に含まれる全ての活性金属粒子の見かけの平均粒子径である。したがって、一般的に、平均粒子径Cは平均粒子径Tよりも小さい傾向があり、T/Cは1よりも大きい傾向がある。そして、微小粒子が多いほど、平均粒子径Cは減少し易く、T/Cは1よりも大きくなり易い。一方、微小粒子が脱水素触媒中に存在しない場合、理論上、CはTと等しく、T/Cは1である。
ただし、TEMでは測定が困難な微小粒子が脱水素触媒中に存在する場合であっても、COパルス法に基づいて算出される平均粒子径Cは、TEMにより測定される平均粒子径Tよりも大きくなり得て、T/Cは1よりも小さくなり得る。その理由を、図1に示される脱水素触媒10の表面の模式図に基づいて以下に説明する。
図1に示されるように、脱水素触媒10の担体2に担持された活性金属粒子4の表面の少なくとも一部は、担体2の一部分によって被覆されていることがある。例えば、活性金属粒子4は、当該粒子4の表面にせり上がった担体2の一部分により被覆される。つまり、活性金属粒子4は、当該粒子4の表面へ隆起した担体2の一部分により被覆される。また活性金属粒子4の少なくとも一部分が担体2の内部に埋もれる場合も、活性金属粒子4の表面の一部は担体2の一部分によって被覆される。このように、活性金属粒子4の表面のうち、担体2の一部分によって覆われている部分を、以下では「被覆部」と表記する。活性金属粒子4が被覆部を有する場合、COは被覆部に吸着できないので、COが吸着可能な白金族元素の数は、被覆部がない場合(活性金属粒子4の表面全体が露出している場合)よりも減少する。COが吸着可能な白金族元素の数の減少により、COが吸着し得る実効的な活性金属粒子の表面積Sも、活性金属粒子の実際の全表面積(被覆部を含む表面積)よりも減少する。活性金属粒子の実効的な表面積Sの減少により、COパルス法に基づく活性金属粒子の計算上の見かけの平均粒子径Cは、活性金属粒子の実際の平均粒子径よりも増加する。その結果、T/Cは減少する。したがって、TEMで測定が困難な微小粒子(活性金属粒子)が存在する場合でも、活性金属粒子の表面が担体の一部分で覆われることにより、計算上の平均粒子径Cが実際の平均粒子径よりも大きくなり、T/Cが1よりも小さくなり得る。そして、活性金属粒子の表面において担体2の一部分に覆われる面積(被覆部の面積)が大きいほど、T/Cは1よりも小さくなり易い。
以上を踏まえて、T/Cが0.2以上1.0以下であることにより、有機化合物の脱水素に伴う炭素‐炭素結合の切断が抑制されるメカニズムを以下に説明する。
白金族元素を含む活性金属粒子は脱水素活性を有するが、活性金属粒子のうち、微小粒子は、安定な結晶面を形成し難く、不飽和な結晶面を形成し易い。不飽和な結晶面を形成し易い微小粒子とは、例えば、TEMで測定が困難な微小粒子である。この不飽和な結晶面が、有機化合物の炭素‐炭素結合を切断する反応の活性点として作用する。つまり、微小粒子は脱水素活性に加えて、炭素‐炭素結合を切断する活性をも有する。T/Cが1.0よりも大きい場合(TがCよりも大きい場合)、上述の通り、微小粒子が脱水素触媒中に存在するため、炭素‐炭素結合を切断する多数の活性点が存在し、有機化合物の脱水素反応に伴って炭化水素の炭素‐炭素結合が切断され易い。T/Cが1.0である場合(TがCと等しい場合)、上述の通り、微小粒子が存在し難いため、炭素‐炭素結合の切断の活性点が存在し難く、炭素‐炭素結合の切断が抑制される。T/Cが1.0よりも小さい場合(CがTよりも大きい場合)、微小粒子が存在するが、微小粒子の表面の一部は担体の一部分によって被覆されている。つまり、炭素‐炭素結合を切断する活性点の一部は、担体の一部分によって覆われているため、炭化水素と直接接触することができず、活性点として作用しない。その結果、微小粒子による炭素‐炭素結合の切断が抑制される。ただし、T/Cが0.2よりも小さい場合、活性金属粒子の表面において担体2の一部分に覆われる面積(被覆部の面積)の合計が大き過ぎる。つまりT/Cが0.2よりも小さい場合、微小粒子の表面のみならず、脱水素活性を有する活性金属粒子の表面が担体の一部分によって過剰に被覆されてしまい、脱水素活性が損なわれる。つまりT/Cが0.2よりも小さい場合、下記式1(アレニウスの式)で表される脱水素反応の頻度因子Aが小さい。頻度因子Aが小さいほど、脱水素反応が起こり難い。一方、T/Cが0.2以上である場合、活性金属粒子の被覆部の表面積の合計は、炭素‐炭素結合の切断の活性点を不活化させる程度に抑えられている。その結果、脱水素触媒の十分な脱水素活性が維持されながら、炭素‐炭素結合の切断が抑制される。
k=A×exp(−E/RT) (1)
上記式(1)中、kは、速度定数である。Aは、頻度因子である。Eは、脱水素反応の活性化エネルギーである。Rは、気体定数である。Tは、反応温度である。
以上のことから、脱水触媒のT/Cが0.2以上1.0以下であることにより、有機化合物の脱水素に伴う炭素‐炭素結合の切断を抑制することができる。ただし、本発明の作用効果は上記事項に限定されない。
T/Cは、未使用の脱水素触媒を用いて測定された平均粒子径Tと、未使用の脱水素触媒を用いて算出された平均粒子径Cとから算出されてよい。T/Cは、0.2以上0.7以下、0.2以上0.6以下、0.2以上0.5以下、0.4以上1.0以下、0.4以上0.7以下、0.4以上0.6以下、又は0.4以上0.5以下であってもよい。T/Cが上記範囲内であると、脱水素に伴う炭素‐炭素結合の切断が抑制され易い。
平均粒子径Tは、例えば、1.0〜2.5nm、又は1.4〜1.7nmであってよい。
平均粒子径Cは、例えば、1.0〜6.3nm、又は1.5〜3.5nmであってよい。
脱水素される有機化合物は、炭素‐炭素結合を介して結合している2以上の炭素原子と、水素原子とを有する化合物であればよい。有機化合物は炭化水素であってよい。炭化水素は、炭素原子と水素原子のみからなる化合物であってよい。炭化水素は、酸素、窒素、ハロゲン、硫黄等のヘテロ原子を含む官能基又は置換基を有していてもよい。炭化水素は、例えば、アルキル基を有する環状飽和炭化水素であってよい。アルキル基がメチル基であってよい。つまり、炭化水素は、メチル基を有する環状飽和炭化水素であってよい。
還元雰囲気において、有機化合物が脱水素触媒に接触すると、活性点である白金族元素が、有機化合物から少なくとも一対の水素原子を引き抜いて、水素分子と不飽和炭化水素とが生成する。例えば、有機化合物がアルキル基(例えばメチル基)を有する環状飽和炭化水素である場合、水素分子と、アルキル基を有する不飽和炭化水素とが生成する。従来の脱水素触媒を用いた場合、不飽和炭化水素が有する炭素‐炭素結合が切断されることにより、不飽和炭化水素からさらにアルキル基が脱離し、アルカン(例えばメタン)が生成する。一方、本実施形態に係る脱水素触媒を用いた場合、従来の脱水素触媒を用いた場合に比べて、炭素‐炭素結合の切断が抑制されるため、不飽和炭化水素からのアルキル基(例えばメチル基)の脱離が抑制される。その結果、脱水素反応に伴うアルカン(例えばメタン)の生成が抑制される。環状飽和炭化水素が有するアルキル基がメチル基である場合、本実施形態に係る脱水素触媒によれば、メチル基を有する環状飽和炭化水素の脱水素に伴う脱メチル化が抑制される。「脱メチル化」とは、環状飽和炭化水素からのメチル基の脱離、及びメタンの生成である。例えば、メチル基を有する環状飽和炭化水素であるメチルシクロヘキサンを従来の脱水素触媒によって脱水素した場合、水素及びトルエンが生成するのみならず、さらに炭素‐炭素結合切断反応が進行して、トルエンからメチル基が脱離し、副生成物のベンゼンとメタンとが生成する。一方、本実施形態によれば、メチルシクロヘキサンの脱水素(水素及びトルエンの生成)に伴うメタンの生成が抑制される。
メチル基を有する環状飽和炭化水素は、例えば、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、1−メチルデカリン、及び2−メチルデカリンからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。これらの化合物は、有機ハイドライドと呼ばれる。メチル基を有する環状飽和炭化水素としては、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
脱水素触媒が備える担体は、多孔性無機酸化物を含んでいてよい。多孔性無機酸化物の含有により、脱水素触媒の比表面積が増加する。多孔性無機酸化物は、例えば、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、及びチタニア(TiO)からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。多孔性無機酸化物は、例えば、Al、Ti及びSiからなる群より選択される少なくとも一種を含む複合酸化物を含んでもよい。複合酸化物は、AlとTiとの複合酸化物、AlとSiとの複合酸化物、TiとSiとの複合酸化物、又はAlとTiとSiとの複合酸化物等であってよい。
担体は、多孔性無機酸化物のみからなっていてよい。担体は、例えば、Alのみからなっていてよい。担体に含まれるAlは、例えば、α‐アルミナ、δ‐アルミナ、θ‐アルミナ、γ‐アルミナ又はアルマイトであってよい。Alの比表面積は、特に限定されないが、例えば、1〜500m/gであってよい。
担体における多孔性無機酸化物の含有量は、担体の全質量を基準として、50〜98質量%、又は80〜98質量%であってよい。多孔性無機酸化物の含有量が上記範囲である場合、脱水素活性が向上し易い。
脱水素触媒は、添加元素の酸化物を含んでよい。添加元素の酸化物は、担体に含まれていてよい。添加元素の酸化物は、多孔性無機酸化物と混ざっていてよく、多孔性無機酸化物の表面に担持されていてもよい。添加元素の酸化物が多孔性無機酸化物の表面に担持されている場合、添加元素の酸化物が担持された多孔性無機酸化物を「担体」という。添加元素の酸化物は、第3族元素及び第4族元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素の酸化物であってよい。第3族元素とは、長周期表第3族に属する元素である。第4族元素とは、長周期表第4族に属する元素である。添加元素の酸化物は、第3族元素の酸化物のみであってよい。添加元素の酸化物は、第4族元素の酸化物のみであってよい。脱水素触媒が第3族元素の酸化物を含む場合、T/Cを1.0以下に調整し易く、炭素‐炭素結合の切断が抑制され易い。
第3族元素は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド及びアクチノイドからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。ランタノイドとしては、例えば、ランタン(La)又はセリウム(Ce)が挙げられる。担体は、上記のうち一種の第3族元素の酸化物を含んでよく、上記のうち複数種の第3族元素の酸化物を含んでもよい。上記の第3族元素のうち、Ceが最も好ましい。脱水素触媒は、セリウムの酸化物(例えば、CeO又はCe)を含んでよい。脱水素触媒が備える担体が、セリウムの酸化物(例えば、CeO又はCe)を含んでよい。脱水素触媒は、セリウムの酸化物を含む場合、T/Cを1.0以下に調整し易く、炭素‐炭素結合の切断が抑制され易い。また第3族元素が担体に付着したり、担体の内部に含まれたりしている場合、担体又は第3族元素の酸化物を構成する酸素の一部が還元雰囲気において担体から脱離して、担体に多数の格子欠陥が形成される。この格子欠陥に白金族元素が嵌り込むことにより、活性金属粒子が担体に固定される。脱水素触媒の表面において活性金属粒子が分散し易く、また活性金属粒子の担体表面における移動及び凝集が抑制される。つまり、脱水素触媒が第3族元素を含有することによりに比べて、活性金属粒子の表面積が増大し、白金の凝集が抑制され、脱水素活性及び耐久性が向上する。このような効果は、脱水素触媒が、ランタン、セリウム及びチタンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む場合に得られ易く、脱水素触媒が第3族元素としてセリウム(Ce)を含む場合に顕著である。
担体における第3族元素の含有量は、特に限定されないが、第3族元素の酸化物換算で、担体全体の質量に対して、0.1〜5.0質量%、1.0〜5.0質量%、又は1.0〜2.0質量%であってよい。担体全体の質量とは、添加元素(第3族元素)の酸化物の質量を含む。第3族元素の含有量が上記の下限値以上であることにより、活性金属粒子の表面積がより増加して、脱水素活性が向上し易い。第3族元素の含有量が上記の上限値以下であることにより、脱水素触媒の機械的強度を維持しつつ、活性金属粒子の表面積を増加させ易い。また、第3族金属の含有量が上記の上限値以下であることにより、製造過程における担体の成形が容易になる。第3族金属の含有量が上記の上限値を大きく超えた場合、担体の性能が低下して、活性金属粒子の表面積が減少する傾向がある。しかし、第3族金属の含有量が上記数値範囲を外れる場合であっても、本発明の効果は達成される。
第4族元素は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、及びラザホージウム(Rf)からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。第4族元素は、Ti及びZrからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。第4族元素は、Tiであってよい。担体は、上記のうち一種の第4族元素の酸化物を含んでよく、上記のうち複数種の第4族元素の酸化物を含んでもよい。脱水素触媒は、チタンの酸化物(例えば、TiO)を含んでよい。脱水素触媒が備える担体が、チタンの酸化物(例えば、TiO)を含んでよい。
担体における第4族元素の含有量は、特に限定されないが、第4族元素の酸化物換算で、担体全体の質量に対して、1〜40質量%、又は1〜20質量%であってよい。担体全体の質量とは、添加元素(第4族元素)の酸化物の質量を含む。
白金族元素は、担体の表面に担持されていてよい。白金族元素は、多数の原子、クラスター又は微粒子として、担体に担持されていてよい。白金族元素は、Ru(ルテニウム)、Os(オスミウム)、Rh(ロジウム)、Ir(イリジウム)、Pd(パラジウム)、及びPt(白金)からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。白金族元素は、Ru、Rh、Ir、Pd、及びPtからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。白金族元素は、Ptであってよい。白金族元素がPtである場合、脱水素触媒の脱水素活性が向上し易い。担体には、上記のうち一種の白金族元素が担持されていてよく、上記のうち複数種の白金族元素が担持されていてもよい。
脱水素触媒における白金族元素の担持量は、特に限定されないが、脱水素触媒の全質量を基準として、0.1〜1質量%であってよい。白金族元素の担持量が上記の下限値以上であると、脱水素活性が向上し易い。白金族元素の担持量が上記の上限値を超える場合、白金族元素の担持量の増加に伴う触媒活性の向上の程度が緩やかになる。また、白金族元素としてPtを用いる場合には、Ptの価格は非常に高いため、脱水素触媒の実用化のためにはPtの担持量が限られる。
(脱水素触媒の製造方法)
本実施形態に係る脱水素触媒の製造方法は、例えば、担体を作製する第1工程と、担体に白金族元素を担持する第2工程と、白金族元素が担持された担体に水素還元処理を施す第3工程と、を備える。
[第1工程]
担体の形成方法は、例えば、混練法、ゾルゲル法、又は共沈法であってよい。例えば、担体が上記の添加元素を含有する場合、安定な多孔質構造を有する前の無機酸化物(例えばAl)又はその前駆体と、添加元素化合物と、を混合してよい。得られた混合物から、多孔質構造を有する担体を作製してよい。添加元素化合物は、第3族元素化合物及び第4族元素化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であってよい。添加元素化合物は、第3族元素化合物のみであってよい。添加元素化合物は、第4族元素化合物のみであってもよい。
第3族元素化合物は、例えば、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩、塩化物、アルコキシド、アセチルアセトナート等であってよい。
第4族元素化合物は、例えば、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩、塩化物、アルコキシド、アセチルアセトナート等であってよい。
多孔性無機酸化物と、添加元素の酸化物とを物理的に混合して、担体を作製してもよい。
多孔性無機酸化物の原料粉末と、添加元素化合物との混合物を成型して、成型体を得る。この成型体を焼成することにより、担体を作製してもよい。多孔性無機酸化物の原料粉末は、例えば、γ‐アルミナの原料であるベーマイト(Boehmite)であってよい。この場合の焼成温度は、添加元素化合物の熱分解が進行し、且つベーマイトの焼結によりγ‐アルミナが生成する温度であればよい。このような焼成温度は、例えば300〜600℃程度である。
擬ベーマイト状態のアルミニウムの水酸化物、添加元素の硝酸塩の水溶液、及び稀硝酸を混練して、混練物を調製する。混練物の押出し成形によってペレットを作製する。このペレットを焼成することにより、担体を作製してもよい。このような方法によって担体を作製することにより、担体において添加元素が分散し易い。このような担体を用いて作製された脱水素触媒では、活性金属粒子の表面積が大きくなり易く、高い脱水素活性が得られ易い。擬ベーマイト状態のアルミニウムの水酸化物は、例えば、AlOOH又はAl・HOという組成式で表される。混練物は、ドウ(dough)とも呼ばれる。混練物のpHは、3〜7に調整すればよい。pHの調整により、混練物が適度な粘度を有し、混練物を成形し易くなる。混練物のpHは、硝酸の添加量によって変動する。混練物にアンモニア水を添加することにより、混練物のpHを調整してもよい。
添加元素を含む溶液(例えば水溶液)を多孔性無機酸化物に担持する方法により、担体を作製してもよい。添加元素を含む溶液は、例えば、添加元素化合物を溶媒に溶解させることにより調製することができる。担持方法は、例えば、incipient wetness法、pore filling法、吸着法、浸漬法、蒸発乾固法、噴霧法、イオン交換法、液相還元法等であってよい。これらの方法により、多孔性無機酸化物の表面に添加元素の塩を付着させる。脱水素触媒における添加元素の担持量は、添加元素を含む溶液における添加元素化合物の濃度又は量によって調整すればよい。
添加元素の塩が付着した多孔性無機酸化物を焼成して塩を分解することにより、添加元素が多孔性無機酸化物に担持される。焼成温度は、塩の熱分解が進行する温度であればよく、例えば300〜600℃程度であればよい。
また、担体は、以下のように、担体の原料となるスラリーを調製する工程αと、得られたスラリーを用いて担体を作製する工程βと、を備える方法によって製造されてもよい。
(工程α)
工程αでは、酸性の水溶液である、チタニウム鉱酸塩及び酸性アルミニウム塩の混合水溶液(以下、「水溶液A」ともいう。)と、アルカリ性の水溶液である、塩基性アルミニウム塩水溶液とを、珪酸イオンの存在下で混合することにより、Al、TiO及びSiOを含む水和物のスラリーを得る。
チタニウム鉱酸塩は、四塩化チタン、三塩化チタン、硫酸チタン及び硝酸チタンからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。これらの中でも、硫酸チタンは安価であるため、好適に使用される。酸性アルミニウム塩は、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム及び硝酸アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。塩基性アルミニウム塩は、アルミン酸ナトリウム及びアルミン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
工程αでは、塩基性アルミニウム塩水溶液に珪酸イオンを含有させた水溶液(以下、「水溶液B」ともいう。)に、水溶液Aを添加してよい。この場合、珪酸イオンのイオン源(珪酸イオン源)は、塩基性又は中性であってよい。珪酸イオン源は、水中で珪酸イオンを生じる珪酸化合物であってよい。塩基性の珪酸イオン源は、例えば、珪酸ナトリウムであってよい。
また、工程αでは、水溶液Aに珪酸イオンを含有させた水溶液に、塩基性アルミニウム塩水溶液を添加してもよい。この場合、珪酸イオン源は、酸性又は中性であってよい。酸性の珪酸イオン源は、例えば、珪酸であってよい。
より詳細には、例えば、以下の手順によりAl、TiO及びSiOを含む水和物のスラリーを得ることができる。まず、所定量の塩基性の珪酸イオン源を、塩基性アルミニウム塩水溶液に添加し、水溶液Bを得る。得られた水溶液Bを攪拌機付きタンクに張り込み、通常40〜90℃、好ましくは50〜70℃に加温して保持する。この水溶液Bの温度±5℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃に加温した水溶液Aを水溶液Bに添加する。水溶液Aの添加は、添加後の水溶液のpHが6.5〜9.5、好ましくは6.5〜8.5、より好ましくは6.5〜7.5になるように行う。また、水溶液Aの添加は、通常5〜20分、好ましくは7〜15分かけて、連続的に行う。以上の操作により、Al、TiO及びSiOを含む水和物のスラリーを沈殿物として得る。ここで、水溶液Bへの水溶液Aの添加では、添加時間が長くなると、擬ベーマイトの他に、バイヤライト、ギブサイト等の好ましくない結晶物が生成することがある。得られたスラリーが、バイヤライト、ギブサイト等の結晶物を含有する場合、焼成後に得られる脱水素触媒の比表面積が低下する傾向がある。そのため、添加時間は15分以下が望ましく、13分以下が更に望ましい。
担体におけるAl、TiO、SiOの含有量は、水溶液Aにおけるチタニウムイオンの濃度及びアルミニウムイオンの濃度、塩基性アルミニウム塩水溶液におけるアルミニウムイオンの濃度、水溶液A又はBに含有させる珪酸イオンの量を調整することにより調整することができる。なお、上記方法では、塩基性の水溶液中に酸性の水溶液を添加し中和することによりスラリーを生成させる。または、酸性の水溶液中に塩基性の水溶液を添加し中和することによりスラリーを生成させてもよい。中和を行う場合、Tiの含有量を、担体の全質量を基準として、50mol%以上に調整し難い。
(工程β)
工程βでは、工程αで得られたスラリーから、Al、TiO及びSiOを含む担体を得る。具体的には、まず、第1工程で得られたスラリーを所望により熟成した後、得られたスラリーを洗浄して副生塩を除く。次いで、洗浄後のスラリーを、所望により更に加熱熟成し、所望の形状に成型する。例えば、スラリーを加熱捏和して成型可能な捏和物とした後、得られた捏和物を押出成型等により成型してよい。次に、得られた成型物を、通常70〜150℃、好ましくは90〜130℃で乾燥する。乾燥後の成型物を、更に400〜800℃、好ましくは450〜600℃で、0.5〜10時間、好ましくは2〜5時間焼成する。以上の手順により、Al、TiO及びSiOを含む担体を得ることができる。
[第2工程]
担体に白金族元素化合物の溶液(例えば水溶液)を担持する。担持方法は、例えばincipient wetness法、pore filling法、吸着法、浸漬法、蒸発乾固法、噴霧法、イオン交換法、液相還元法等であってよい。これらの方法により、白金族元素化合物を担体の表面に付着させる。脱水素触媒における白金族元素の担持量は、白金族元素化合物の濃度又は量によって調整すればよい。
白金族元素化合物は、特に限定されないが、液体の溶媒に可溶であることが求められる。白金族元素化合物は、例えば、Ru(ルテニウム)、Os(オスミウム)、Rh(ロジウム)、Ir(イリジウム)、Pd(パラジウム)、及びPt(白金)からなる群より選択される少なくとも一種の元素の化合物であってよい。白金族元素化合物は、Ru、Rh、Ir、Pd、及びPtからなる群より選択される少なくとも一種の元素の化合物であってよい。白金族元素化合物は、例えば、白金化合物であってよい。白金化合物は、例えば、テトラクロロ白金酸、テトラクロロ白金酸カリウム、テトラクロロ白金酸アンモニウム、テトラクロロ白金酸ナトリウム、ビス(アセチルアセトナート)白金、ジアンミンジクロロ白金、ジニトロジアンミン白金、ジニトロジアンミン白金硝酸塩、ジニトロジアンミン白金アンモニア溶液、エタノールアミン白金、テトラアンミン白金ジクロライド、テトラアンミン白金水酸塩、テトラアンミン白金硝酸塩、テトラアンミン白金酢酸塩、テトラアンミン白金炭酸塩、テトラアンミン白金リン酸塩、ヘキサアンミン白金テトラクロライド、ヘキサアンミン白金水酸塩、ヘキサアンミン白金水酸塩、ビス(エタノールアンモニウム)ヘキサヒドロキソ白金(IV)、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸ナトリウム、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸カリウム、硝酸白金、硫酸白金等であってよい。白金化合物は、アミン又はアンモニアを含むことが好ましい。この場合、脱水素触媒における白金表面積が増大し易い。アミン又はアンモニアを含む白金化合物は、ジニトロジアンミン白金硝酸塩、ジニトロジアンミン白金アンモニア溶液、エタノールアミン白金、及びヘキサアンミン白金水酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。白金化合物がジニトロジアンミン白金硝酸塩又はジニトロジアンミン白金アンモニア溶液である場合、白金が担体に均一に分散し易く、白金表面積が増大し易い。白金化合物がエタノールアミン白金である場合、白金が担体の外殻部(外表面近傍)へ選択的に分布し易く、白金表面積が増大し易い。担体には、上記のうち一種の白金族元素化合物の溶液が担持されてよく、上記のうち複数種の白金族元素化合物の溶液が担持されてよい。
白金族元素化合物を担持した担体を焼成して白金族元素化合物を分解することにより、白金族元素が担体に担持される。焼成温度は、白金族元素化合物の分解が進行する温度であればよく、例えば200〜500℃程度であればよい。特に400℃以下又は360℃以下で焼成することにより、焼成中の白金族元素の凝集が起こり難く、脱水素触媒における白金族元素の表面積が増加し易くなる。
上記のように、添加元素を担体に担持する際には、添加元素化合物が分解する程度の高温で焼成を行うことが好ましい。一方、白金族元素を担体に担持する際には、白金族元素の凝集が起こり難い程度の低温で焼成を行うことが好ましい。これらの相反する条件を両立するために、本実施形態では、添加元素と白金族元素とを同時に担体に担持せず、焼成温度が異なる上記2つの工程において両元素を個別に担体に担持させてよい。
[第3工程]
白金族元素が担持された担体に水素還元処理を施す。水素還元処理では、担体を水素雰囲気下にて加熱することにより還元する。水素還元処理の温度は、例えば、450〜600℃である。水素還元処理の時間は、例えば、30〜120分間であってよい。450℃以上600℃以下での水素還元処理を実施することにより、脱水素触媒におけるT/Cを0.2以上1.0以下に調整することができる。水素還元処理の温度が低過ぎる場合、担体によって微小粒子の表面が十分に被覆され難いため、脱水素触媒におけるT/Cを0.2以上1.0以下に調整することは困難である。水素還元処理の温度が高過ぎる場合、微小粒子の表面のみならず、脱水素活性を有する活性金属粒子の表面が担体の一部分によって過剰に被覆されてしまうため、脱水素触媒におけるT/Cを0.2以上1.0以下に調整することは困難である。担体が第3属元素(例えばCe)を含む場合は、T/Cを0.2以上1.0以下に調整し易い。担体が第4属元素(例えばTi)を含む場合は、担体に必ずしも水素還元処理を施さなくても、T/Cを0.2以上1.0以下に調整することができる。ただし担体が第4属元素(例えばTi)を含む場合であっても、水素還元処理を施した場合は、水素還元処理を施さない場合に比べて、脱水素反応に伴う炭素‐炭素結合の切断が抑制され易い。
(水素の製造システム、及び水素の製造法)
本発明の一実施形態では、図2に示す水素の製造システム100を用いて、水素を製造する。なお、水素の製造システム100とは、例えば燃料電池車に燃料として水素ガスを供給するための水素ステーションである。
水素の製造システム100は、少なくとも脱水素反応器12、気液分離器14、水素精製装置16、及びタンク18を備える。製造システム100は、更に高圧コンプレッサー20を備えてもよい。脱水素反応器12は、上記実施形態に係る脱水素触媒を有する。脱水素反応器12は、上記実施形態に係る脱水素触媒を用いて、有機化合物を脱水素することにより、水素及び不飽和炭化水素を生成させる。つまり、上記実施形態に係る水素の製造方法は、上記実施形態に係る脱水素触媒を用いて、有機化合物を脱水素することにより、水素、及び、不飽和炭化水素を生成させる工程(脱水素工程)を備える。
上記実施形態に係る水素の製造システムによれば、従来の脱水素触媒を用いた水素の製造システムと比べて、脱水素に伴う炭素‐炭素結合の切断を抑制することができる。
脱水素工程では、有機化合物を脱水素反応器12内へ供給する。脱水素反応器12内には、上記実施形態に係る脱水素触媒が設置されている。脱水素反応器12内は還元雰囲気である。脱水素反応器12内において、有機化合物が脱水素触媒に接触すると、脱水素反応が起こり、少なくとも一対の水素原子が上記有機化合物から引き抜かれる。その結果、水素分子と、不飽和炭化水素と、が生成する。このように、脱水素反応は気相反応である。脱水素工程では、有機化合物と共に水素を脱水素反応器12内へ供給してもよい。これにより、脱水素活性がより長期間維持される傾向がある。
脱水素反応の条件は、特に限定されない。反応温度は、250〜420℃(523〜693K)であってよく、300〜400℃(573〜673K)であってもよい。反応温度を上記範囲に調整するためには、脱水素反応器12内の触媒層の中央部の温度を上記範囲に調整すればよい。液空間速度(LHSV)は、0.2〜4.0h−1であってよい。反応圧力は、0.1〜1.0MPaであってよい。また、有機化合物と共に水素を脱水素反応器12内へ供給する場合、脱水素反応器12内へ供給する水素のモル数nと、脱水素反応器12内へ供給する有機化合物のモル数nとの比n/nは0.05〜1.0であってよい。
脱水素反応の生成物(水素分子及び不飽和炭化水素)は、脱水素反応器12から気液分離器14内へ供給される。気液分離器14内の温度は、不飽和炭化水素の融点以上、不飽和炭化水素の沸点未満である。したがって、気液分離器14内の水素分子は気体であり、気液分離器14内の不飽和炭化水素は液体である。つまり、気液分離器14内において、脱水素反応の生成物は、水素ガス(気相、気層)と、不飽和炭化水素の液体(液相、液層)と、に分離する。気液分離器14内の気相(水素含有ガス)は、水素精製装置16へ供給される。気液分離器14内の液相(不飽和炭化水素の液体)は、タンク18へ供給される。なお、気相には、不飽和炭化水素の蒸気が混入している場合がある。気相における不飽和炭化水素の分圧は最大で不飽和炭化水素の飽和蒸気圧程度である。なお、上記実施形態に係る水素の製造方法においては、上記実施形態に係る脱水素触媒を用いていることから、脱水素に伴う炭素‐炭素結合の切断を抑制することができる。一方、液相には、脱水素されなかった有機ハイドライドが残存する場合がある。
気液分離器14から水素精製装置16へ供給された水素含有ガスは、水素精製装置16において精製される。水素精製装置16は、例えば、水素ガス及び不飽和炭化水素のうち水素ガスのみが選択的に透過する分離膜を備えてよい。分離膜は、例えば、金属膜(PbAg系膜、PdCu系膜、若しくはNb系膜など)、無機膜(シリカ膜、ゼオライト膜、若しくは炭素膜など)、又は高分子膜(フッ素樹脂膜、若しくはポリイミド膜など)であってよい。水素ガスが分離膜を透過することにより、水素ガスの純度が高まる。一方、水素含有ガス中の不飽和炭化水素(未反応の有機ハイドライド等)は、分離膜を透過することができない。したがって、不飽和炭化水素が水素含有ガスから分離され、高純度の水素ガスが精製される。精製された高純度の水素ガスは、高圧コンプレッサー20を経ることなく、燃料電池の燃料として用いられてもよく、高圧コンプレッサー20において圧縮された後、燃料電池の燃料として用いられてもよい。なお、不飽和炭化水素のみならず、微量の水素ガスも分離膜を透過しない場合がある。分離膜を透過しなかった水素ガスを、有機ハイドライドと共に回収して、オフガスとして、脱水素反応器12内へ供給してもよい。または、分離膜を透過しなかった不飽和炭化水素を、タンク18内へ回収してもよい。水素精製装置16は、分離膜を備える装置に限定されない。水素精製装置16は、例えば、圧力スイング吸着(PSA)法、熱スイング吸着(TSA)法(温度スイング吸着法)、温度圧力スイング吸着(TPSA)法、及び深冷分離法からなる群より選ばれる少なくとも一種の方法を実施する装置であってもよい。これらの装置を用いて、水素含有ガスを精製し、精製に伴って生じたオフガスを脱水素反応器12内へ供給し、水素含有ガスから分離された不飽和炭化水素をタンク18へ供給してよい。精製された水素ガスの一部を、有機ハイドライドと共に脱水素反応器12へ供給してよい。これにより、脱水素反応器12内の脱水素触媒の脱水素活性が維持され易くなる。
以上、本発明の態様について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
本実施形態に係る脱水素触媒は、不飽和炭化水素の製造方法に適用されてもよい。つまり、有機化合物を脱水素触媒で脱水素することにより、新たに炭素‐炭素不飽和結合を有する炭化水素を生成させてよい。本実施形態に係る脱水素触媒を用いて有機化合物を脱水素することにより、脱水素に伴う炭素‐炭素結合の切断が抑制される。その結果、望まない副生物の生成が抑制され、高い収率で純度の高い不飽和炭化水素を製造することができる。
有機化合物は、炭化水素であってよい。炭化水素の炭素数は、目的とする不飽和炭化水素の炭素数と同じであってよい。すなわち、生成物として想定される不飽和炭化水素中に存在する二重結合を水素化した場合に得られる炭化水素であればよい。炭化水素の炭素数は3〜10であってよく、4〜10であってよく、4〜6であってよい。
炭化水素は、例えば、鎖状の飽和脂肪族炭化水素又はその構造異性体であってよい。炭化水素は、例えば、鎖状の不飽和脂肪族炭化水素又はその構造異性体であってもよい。炭化水素は、例えば、環状炭化水素又はその構造異性体であってもよい。鎖状の飽和脂肪族炭化水素は、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びデカンからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。鎖状の不飽和脂肪族炭化水素は、例えば、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン及びデセンからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。環状炭化水素は、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン及びシクロデカンからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。さらに具体的には、直鎖状の炭化水素は、n−ブタン、n−ブテン、n−ペンタン、n−ペンテン、n−ヘキサン、n−ヘキセン、n−ヘプタン、n−ヘプテン、n−オクタン、n−オクテン、n−デカン及びn−デセンからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。分岐状の炭化水素は、イソブタン、イソブテン、イソペンタン、イソペンテン、2−メチルペンタン、2−メチルペンテン、3−メチルペンタン、3−メチルペンテン、2、3−ジメチルペンタン、2、3−ジメチルペンテン、イソヘプタン、イソオクタン、イソオクテン、イソデカン及びイソデセンからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
炭化水素は、酸素、窒素、ハロゲン、硫黄等のヘテロ原子を含む置換基を有していてよい。このような置換基は、例えば、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br、−I)、水酸基(−OH)、アルコキシ基(−OR)、カルボキシル基(−COOH)、エステル基(−COOR)、アルデヒド基(−CHO)又はアシル基(−C(=O)R)であってよい。
不飽和炭化水素の製造方法においては、上記有機化合物の一種を単独で用いてもよく、二種以上の有機化合物を任意の分量で混合して用いてもよい。例えば、ナフサ熱分解炉又はナフサ接触分解炉で得られるC4留分からブタジエンとブテンを分離した後に得られる、ブタンを含む留分であってよい。C4留分からブタジエンを分離した後に得られる、ブタンとブテンを含む留分であってよい。ナフサ熱分解炉又はナフサ接触分解炉で得られるC5留分からイソプレンとペンテンを分離した後に得られる、ペンタンを含む留分であってよい。C5留分からイソプレンを分離した後に得られる、ペンタンとペンテンを含む留分であってよい。燃料として容易に入手することができるLPGガスであってもよい。LPGガスはプロパン、n−ブタン及びイソブタンの混合物である。複数種類の有機化合物を含む混合物を使用する場合、脱水素後に目的とする不飽和炭化水素を分離し、精製することができる。分離及び精製は公知の方法により行えばよい。
不飽和炭化水素の原料は、上記有機化合物に加えて他の成分を含有してもよい。他の成分は、例えば、アルコール類、エーテル類及びバイオ燃料からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
不飽和炭化水素の原料は、上記有機化合物に加えて不純物を含んでいてよい。不純物は、水素、一酸化炭素、炭酸ガス、メタン及びジエン類からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
上記有機化合物の脱水素によって生成する不飽和炭化水素は、例えば、1,3−ブタジエン、ピペリレン、イソプレン、1,5−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン及び1,9−デカジエンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。具体的には、有機化合物としてブタン及びブテンの少なくともいずれかを用いた場合にはブタジエンが得られやすい。有機化合物としてペンタン及びペンテンの少なくともいずれかを用いた場合にはピペリレンが得られやすい。有機化合物としてイソペンタン及びイソペンテンの少なくともいずれかを用いた場合にはイソプレンが得られやすい。ブタジエン、ピペリレン、イソプレン等のジエンは、工業的に有用である。
ブタジエンは、代表的なジエンであり、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)等の合成ゴムの原料、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂等の原料として利用されている。
本実施形態に係る不飽和炭化水素の製造方法は、例えば、脱水素触媒が充填された反応器を用いて実施することができる。
脱水素反応の反応形式は、特に限定されない。脱水素反応の反応形式は、例えば、固定床式、移動床式又は流動床式であってよい。固定床式により、脱水素反応を行う場合、プロセス設計が容易となる。
また、本発明の効果を阻害しない限り、有機化合物及び脱水素触媒以外の成分の存在下で、有機化合物を脱水素触媒に接触させてよい。有機化合物及び脱水素触媒以外の成分は、例えば、水、メタン、水素、及び二酸化炭素からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。水又は水素存在下で脱水素反応が行われる場合、コーキング速度の上昇が抑制され、脱水素触媒の高い活性が長期にわたって維持される傾向がある。
有機化合物の脱水素の生成物は、目的の不飽和炭化水素以外の他の成分を含んでよい。他の成分は、例えば、水、水素、副生成物、未反応の有機化合物、脱水素触媒、又は原料に含まれていた不純物であってよい。副生成物は、炭素数が少なくなったパラフィン(エタン、プロパン等)であってよく、炭素数が少なくなったオレフィン(エチレン、プロピレン等)であってよい。これらの他の成分は、生成物から分離されてよい。他の成分の分離方法は、特に限定されない。
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[第1工程]
擬ベーマイト状態のアルミニウムの水酸化物の粉末に、所定量の水、硝酸セリウムの水溶液及び稀硝酸を添加して、これらを混練した。さらに、稀硝酸を添加することにより、混練物のpHを3〜7程度に調整した。混練物の押し出し成形により、成形体を作製した。成形体を100〜150℃で2時間乾燥した。乾燥後の成形体を550℃で2時間焼成することにより、γ‐アルミナ及び酸化セリウム(CeO)を含む担体を得た。担体におけるCeの含有量は、Ceの酸化物(CeO)換算で、CeOを含む担体全体の質量に対して、2質量%であった。担体におけるAlの含有量は、Alの酸化物(Al)換算で、CeOを含む担体全体の質量に対して、98質量%であった。
[第2工程]
第1工程で得られた担体に所定量の水を吸収させた。次に、ビス(エタノールアンモニウム)ヘキサヒドロキソ白金(IV)の水溶液を用意した。このPt溶液を容器内で激しく撹拌しながら、担体をPt溶液に浸漬した。
次いで、担体を120℃で一晩乾燥した。乾燥した担体を、空気中において330℃で2時間焼成して、ビス(エタノールアンモニウム)ヘキサヒドロキソ白金を分解した。焼成には、固定床式の炉を用いた。
[第3工程(水素還元処理)]
次いで、焼成した担体を、水素雰囲気中において450℃で30分間加熱することにより、白金が担持された担体を水素で還元した。
以上の工程により、実施例1の脱水素触媒を作製した。実施例1の脱水素触媒は、γ‐アルミナ及びCeOを含む多孔質の担体と、担体に担持されたPtとを備えていた。実施例1の脱水素触媒におけるPtの含有量は、脱水素触媒の全質量を基準として、0.50質量%であった。
[平均粒子径Tの算出]
実施例1の脱水素触媒をTEMにより撮影して、TEM画像を得た。得られたTEM画像を画像解析ソフトで処理して、脱水素触媒に担持されている、粒子径が1nm以上であるPt粒子の粒子径を測定した。粒子径が測定された679個のPt粒子(複数のPt粒子)の粒子径から、白金族元素の平均粒子径T(単位:nm)を求めた。実施例1のTを表1に示す。
[COパルス法に基づく平均粒子径Cの算出]
実施例1の脱水素触媒が設置された容器内に一酸化炭素(CO)を供給した。容器内に供給されたCOの体積と、容器内の脱水素触媒に吸着されることなく容器外へ排出されたCOの体積との差に基づいて、50℃における脱水素触媒の単位質量当たりのCO吸着量を算出した。このCO吸着量に基づいて、白金族元素の平均粒子径C(単位:nm)を算出した。実施例1のCを表1に示す。
[T/Cの算出]
上記で得られたTとCとからT/Cを算出した。実施例1のT/Cを表1に示す。
(実施例2〜4)
実施例2〜4では、第3工程において、それぞれ表1に示される水素還元温度(単位:℃)で、焼成後の担体の水素還元処理を実施した。この点を除いては実施例1と同様にして、実施例2〜4それぞれの脱水素触媒を得た。実施例2〜4それぞれの脱水素触媒におけるPtの含有量は、脱水素触媒の全質量を基準として、0.50質量%であった。
実施例1と同様の方法により、実施例2〜4それぞれのT/Cを算出した。実施例2〜4それぞれのT/Cを表1に示す。
(実施例5)
[第1工程]
(工程α)
塩基性の珪酸イオン源を塩基性アルミニウム塩水溶液に添加し、水溶液Bを得た。次いで、水溶液Bを、攪拌機付きタンクに張り込み、60℃に加温して保持した。この水溶液Bに、加温したチタニウム鉱酸塩及び酸性アルミニウム塩の混合水溶液(水溶液A)を、10分間かけて連続的に添加した。これにより、Al及びTiOを含む水和物のスラリーを沈殿物として得た。珪酸イオン源には、珪酸ナトリウムを用いた。塩基性アルミニウム塩には、アルミン酸ナトリウムを用いた。チタニウム鉱酸塩には、硫酸チタンを用いた。酸性アルミニウム塩には硫酸アルミニウムを用いた。
(工程β)
次に、上記で得られたスラリーを洗浄した。次に、洗浄後のスラリーを成型して成型物を得た。得られた成型物を乾燥した後、乾燥後の成型物を550℃で焼成して、γ‐アルミナ及び酸化チタン(TiO)を含む担体を得た。担体におけるTiの含有量は、Tiの酸化物(TiO)換算で、TiOを含む担体全体の質量に対して、20質量%であった。
実施例5では、実施例1と同様にして、第2工程を行った。実施例5では、第3工程を行わなかった。
以上の工程により、実施例5の脱水素触媒を作製した。実施例5の脱水素触媒は、γ‐アルミナ及びTiOを含む多孔質の担体と、担体に担持されたPtとを備えていた。実施例5の脱水素触媒におけるPtの含有量は、脱水素触媒の全質量を基準として、0.48質量%であった。
実施例1と同様の方法により、実施例5のT/Cを算出した。実施例5のT/Cを表1に示す。
(実施例6)
実施例6では、実施例5と同様にして、第1工程及び第2工程を行った。続く第3工程では、焼成した担体を、水素雰囲気中において600℃で120分間加熱することにより、白金が担持された担体を水素で還元した。
以上の工程により、実施例6の脱水素触媒を作製した。実施例6の脱水素触媒は、γ‐アルミナ及びTiOを含む多孔質の担体と、担体に担持されたPtとを備えていた。実施例6の脱水素触媒におけるPtの含有量は、脱水素触媒の全質量を基準として、0.48質量%であった。
実施例1と同様の方法により、実施例6のT/Cを算出した。実施例6のT/Cを表1に示す。
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同様にして、第1工程及び第2工程を行った。比較例1では、第3工程を行わなかった。
以上の工程により、比較例1の脱水素触媒を作製した。比較例1の脱水素触媒は、γ‐アルミナ及びCeを含む多孔質の担体と、担体に担持されたPtとを備えていた。比較例1の脱水素触媒におけるPtの含有量は、脱水素触媒の全質量を基準として、0.50質量%であった。
実施例1と同様の方法により、比較例1のT/Cを算出した。比較例1のT/Cを表1に示す。
[初期メタン濃度の測定]
上記の実施例1〜6及び比較例1それぞれの脱水素触媒を個別に用いて脱水素反応を行った。そして、脱水素反応に伴うメタン生成量を測定した。測定は、以下の方法により行った。脱水素触媒10mLを固定床流通式反応器の反応室内に配置して、脱水素反応器を得た。得られた脱水素反応器内に、メチルシクロヘキサン(MCH)とHとからなるガスを供給して、脱水素反応を行った。脱水素反応は、608Kの温度で行った。ガスに含まれるMCHとHとのモル比MCH:Hは、1:0.7であった。Hガスの流量は、31mL/minであった。反応開始から3時間及び5時間が経過した各時点で、それぞれ脱水素反応器から排出された生成物を個別に回収して冷却し、各生成物を液体生成物と気体生成物とに分離した。気体生成物を、ガスクロマトグラフ‐水素炎イオン化検出器(GC−FID)で分析した。気体生成物に含まれるメタンのGC面積(ピーク面積)から、生成水素中のメタン濃度(モルppm)を算出した。3時間経過時の生成水素中のメタン濃度と、5時間経過時の生成水素中のメタン濃度との平均値を、初期メタン濃度(モルppm)として算出した。実施例1〜6及び比較例1それぞれの初期メタン濃度を表1に示す。生成水素中の初期メタン濃度(モルppm)の値が小さいほど、脱水素反応に伴う脱メチル化がより抑制されている。
Figure 2019042705
実施例1〜6及び比較例1それぞれのT/Cと、生成水素中の初期メタン濃度(モルppm)との関係を図3に示す。図3に示される通り、実施例1〜6は、比較例1に比べて、脱水素反応に伴う脱メチル化を抑制することができることがわかった。つまり、実施例1〜6は、比較例1に比べて、脱水素反応に伴う炭素‐炭素結合の切断を抑制することができることがわかった。
[1000h耐久試験]
上記の実施例6及び比較例1それぞれの脱水素触媒を個別に用いて1000h耐久試験を行った。試験は、以下の方法により行った。まず、脱水素触媒5ccを固定床流通式の反応器内に充填した。次に、MCH及び水素の混合ガス(n/nは0.55)を反応器内へ供給しながら、触媒層の中央部の出口温度を335℃に維持して、反応器内でMCHの脱水素反応を継続させた。反応圧力は0.14MPaGであった。反応器内へ供給するメチルシクロヘキサンの液空間速度(LHSV)を1.5h−1に維持した。反応開始から1000時間が経過した時点で反応器から脱水素触媒を取り出した。
(1)炭素析出量の測定
上記の1000h耐久試験の実施例6及び比較例1それぞれの脱水素触媒における炭素析出量を個別に測定した。炭素析出量は、酸素気流中高周波加熱燃焼により測定した。実施例6の炭素析出量は、1000h耐久試験前の脱水素触媒の全質量を基準として、0.24質量%であった。比較例1の炭素析出量は、1000h耐久試験前の脱水素触媒の全質量を基準として、0.53質量%であった。実施例6及び比較例1それぞれの炭素析出量を表2に示す。
(2)MCHの反応速度の測定
上記の1000h耐久試験前の未使用の実施例6及び比較例1それぞれの脱水素触媒を個別に用いて脱水素反応を行った。脱水素反応は、以下の方法により行った。脱水素触媒0.5mLを固定床流通式の反応器内に充填した。次に、MCH及びHの混合ガスを反応器内へ供給しながら、触媒層の出口部の温度を310℃に維持した。これらの反応条件下で、反応器内でMCHの脱水素反応を継続させた。混合ガスにおける、水素のモル数nと、MCHのモル数nとの比n/nは0.7とした。反応圧力は0.19MPaGであった。反応器内へ供給するMCHの液空間速度(LHSV)を80h−1に維持した。反応開始から所定の時間が経過した時点で反応器から排出されたガスを回収して冷却し、生成油を得た。
生成油をガスクロマトグラフ‐水素炎イオン化検出器(GC−FID)で分析した。生成油に含まれるMCHのGC面積(ピーク面積)と、生成油に含まれるトルエンのGC面積との比率から、310℃でのMCHの反応速度rcを算出した。
続いて、上記の1000h耐久試験後の実施例6及び比較例1それぞれの脱水素触媒を個別に用いて、上記と同様の方法により反応速度rcを算出した。1000h耐久試験前の反応速度rcを1としたときの1000h耐久試験後の反応速度rcの相対値を求めた。1000h耐久試験後の反応速度rcの相対値を「残活性」と表記する。実施例6の残活性は、0.63であった。比較例1の残活性は0.57であった。実施例6及び比較例1それぞれの残活性を表2に示す。
Figure 2019042705
表2に示される通り、実施例6の脱水素触媒は、比較例1の脱水素触媒に比べて、1000h耐久試験後の炭素析出量が少なかった。つまり、実施例6の脱水素触媒は、比較例1の脱水素触媒に比べて、脱水素反応に伴う炭素‐炭素結合の切断を抑制することができることがわかった。また、表2に示される通り、実施例6の脱水素触媒は、比較例1の脱水素触媒に比べて、1000h耐久試験後の残活性が高かった。つまり、実施例6の脱水素触媒は、比較例1の脱水素触媒に比べて、長時間使用しても脱水素活性が低下し難いことがわかった。
本発明に係る脱水素触媒は、炭化水素の脱水素による水素ガス又は不飽和炭化水素の製造に利用される。
2…担体、4…活性金属粒子、10…脱水素触媒、12…脱水素反応器、14…気液分離器、16…水素精製装置、18…タンク、20…高圧コンプレッサー、100…水素の製造システム。

Claims (11)

  1. 担体と、
    前記担体に担持されている白金族元素と、
    を備え、
    透過型電子顕微鏡により測定される前記白金族元素の平均粒子径がTと表され、
    COパルス法に基づいて算出される前記白金族元素の平均粒子径がCと表され、
    T/Cが0.2以上1.0以下であり、
    有機化合物の脱水素に用いられる脱水素触媒。
  2. 前記白金族元素が白金である、
    請求項1に記載の脱水素触媒。
  3. 前記担体が、アルミナ、シリカ、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも一種を含む、
    請求項1又は2に記載の脱水素触媒。
  4. 前記担体が、第3族元素及び第4族元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素の酸化物を含む、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の脱水素触媒。
  5. 前記担体が、セリウムの酸化物を含む、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の脱水素触媒。
  6. 前記担体が、チタンの酸化物を含む、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載の脱水素触媒。
  7. 前記有機化合物が、炭化水素である、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の脱水素触媒。
  8. 前記炭化水素が、アルキル基を有する環状飽和炭化水素である、
    請求項7に記載の脱水素触媒。
  9. 前記アルキル基がメチル基である、
    請求項8に記載の脱水素触媒。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の脱水素触媒を有し、前記脱水素触媒を用いた前記有機化合物の脱水素により、水素を生成させる脱水素反応器を備える、
    水素の製造システム。
  11. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の脱水素触媒を用いた前記有機化合物の脱水素により、水素を生成させる工程を備える、
    水素の製造方法。
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