JP2019041030A - ウェハーリングの製造方法 - Google Patents

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秀男 竹下
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雅明 松村
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将史 竹下
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Abstract

【課題】 非常に硬度が高く耐食性にも優れたSUS301−H板材からレーザー加工で切り出すという方法を採用しながらも、製造コストやランニングコストの低減に優れたウェハーリングの製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体ウェハーの搬送用に用いるウェハーリングの製造方法であって、圧延方向を所定方向に向けた状態で配置された所定ロットのSUS301−H板材から板状リングを切り出すレーザー加工工程と、切り出された板状リングの板面を押圧するレベリング工程と、板状リングの反り量を評価する反り評価工程とを備え、評価された反り量が基準値を下回るまで、レーザー加工工程での板材の表裏、及び/又は、照射パターンの角度姿勢からなる加工パターンを変更して、所定ロットのSUS301−H板材に対するレーザー加工工程、レベリング工程、反り評価工程を繰り返す製造方法とした。
【選択図】図11

Description

本発明は、半導体製造工程において半導体ウェハーの搬送用又は保持用に用いるウェハーリングの製造方法に関する。
従来、半導体製造工程の例えばダイシング工程では、ウェハーリングと呼ばれる板状リングを覆う態様で貼付された樹脂製などの粘着シート上で、しかもウェハーリングの内周の内側に半導体ウェハーが貼着された状態で半導体ウェハーが運搬され、ダイシング加工がおこなわれる場合が多い。
このウェハーリングの材料としては、SUS420J2が現在の主流の材料として広く知られている。SUS420J2は、硬度が略247HVとやわらかいため、金型で板状のリング形状に抜くことが可能という利点があるが、抜いた後で焼入れ・焼き戻しをして硬度を向上させる必要がある。また、SUS420J2をウェハーリングとして用いる際に、腐食防止のためのメッキ処理を必要としている。この様に、SUS420J2のウェハーリングの製造では、焼入れ・焼き戻し並びにメッキ等の加工工程を必要とするため、製造コストを下げづらいという問題があった。
また、上述した様に、SUS420J2を焼入れ・焼き戻しを行ったとしても、ウェハーリングとして使用している間にシートの張力等を受けて変形しやすく、再利用可能な回数が低いという問題があった。
しかしながら、半導体IC業界において、あらゆる工程における製造コスト低減の要請が強く、ウェハーリングの製造コストの低減も例外ではない。
そこで、発明者は、これまでウェハーリングの材料としては不適とされて来たSUS301−H材に着目した。
オーステナイト系ステンレス鋼の一種であるSUS301−Hは、バネ用ステンレス鋼体として広く知られており、焼入れ・焼き戻しをしなくても硬度が略430HVと高く、また、耐食性に優れているため、腐食防止のためのメッキが必要ない等、製造コストの低減が期待される。また、SUS301−Hは、硬度が高いため変形し難いことから再利用回数が延びることが期待でき、ウェハーリングのランニングコスト低減が期待できる。
しかし、SUS301−Hは、硬度が高いためプレス打ち抜きには非常に高いプレス圧力を必要とするという問題や、また、プレス加工によって、バネ材としての特性が劣化する等の問題がある。他方、これらの問題を回避するために、レーザー光を照射して切り出す方法が知られているものの、切り出し後の反り発生により、ウェハーリングとして求められる高い平坦性が出せないという問題があった。
この様な、ウェハーリングをレーザー光の照射によって切り出す製造技術に関する特許文献は殆ど見当たらず、ほぼ唯一の関連する特許文献といえる特許文献1には、半導体製造工程のうち、シリコンウェハーのラッピング加工の際に使用するキャリアに関する技術について開示されている。このラッピング加工では、ウェハーリングまたはキャリアと呼ばれる板状リングの内部に半導体ウェハーを保持させ、板状リングを上下から挟み込む定盤を回転させることでラッピングが実施される。
特開平11−347924号公報(0005〜0007段落)
特許文献1には、SUS板材からのラッピング用キャリアの切り出しにレーザー光線を使用することや、SUS420系以外のSUS430系やSUS301系などの鋼材からレーザー光線で切り出した板状リングもラッピング用キャリアとして適用可能であること、レーザー加工時に生じる反りは、一定の加圧下で、特定の温度で特定の時間加熱して矯正すること、等は開示されているものの、レーザー加工の具体的な方法については記されていない。そこで、発明者は、SUS301−Hを用いたウェハーリングの具体的な製造方法の研究に鋭意取り組んだ。
そこで、本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、非常に硬度が高く耐食性にも優れたSUS301−H板材からレーザー加工工程で切り出すという方法を採用しながらも、製造コストの低減やランニングコストの低減に対して効果的なウェハーリングの製造方法を提供することにある。
SUS301−Hを用いたウェハーリングの具体的な製造方法を鋭意研究した結果、発明者は、以下の様な本質的かつ重要な知見を得た。
(1)少なくとも、板材がSUS301−Hで、かつ、厚さが1mm前後の板材からレーザー加工によってウェハーリングを切り出す場合には、レーザー加工で発生する反りは、加圧下での加熱処理などでの矯正が困難なほど顕著になる場合があること。
(2)レーザー加工によって発生する反りの強さや傾向は、レーザー加工でのレーザー光の照射時の板材の表裏、及び/又は、リング状の照射パターンの中心を回転中心とした照射パターンの角度姿勢からなる加工パターンによって変化し、しかも、鋼材メーカーから出荷される板材の同一ロット内では、反りの強さや傾向が一致すること。
(3)レーザー加工での加工パターンとして、事前に所定数の加工パターンを用意しておけば、その中の少なくとも一つの加工パターンでは、レーザー加工によって発生する反りの強さや傾向が、例えば一対のローラ間での押圧といった比較的簡便なレベリング加工によって矯正できる程度に小さくなること。
そこで、請求項1の発明は、半導体ウェハーの搬送用に用いるウェハーリングの製造方法であって、圧延方向を所定方向に向けた状態で配置された所定ロットのSUS301−H板材に、略リング状の照射パターンに沿ってレーザー光を照射することで、前記板材から板状リングを切り出すレーザー加工工程と、前記レーザー加工工程で切り出された前記板状リングの板面を押圧して前記板状リングの平坦性を向上させるレベリング工程と、前記レベリング工程後に、前記板状リングを平坦面に重ね合わせ状に配置し、前記板状リングの反り量を評価する反り評価工程と、を備え、前記反り評価工程によって評価された反り量が基準値を下回るまで、前記レーザー加工工程での前記レーザー光の照射時の前記板材の表裏、及び/又は、前記照射パターンの中心を回転中心とした前記照射パターンの角度姿勢からなる加工パターンを変更して、前記所定ロットのSUS301−H板材に対する前記レーザー加工工程と、その後の前記レベリング工程及び前記反り評価工程とを繰り返す、ウェハーリングの製造方法である。
請求項2の発明は、請求項1記載のウェハーリングの製造方法において、前記反り評価工程では、前記板状リングの所定箇所Aを平坦面に倣わせた状態で、前記板状リングの中心Mを介して前記所定箇所Aに対向する前記板状リングの測定箇所Bの反り量Wbの評価、及び、前記測定箇所Bを起点として前記板状リングの円周方向に沿って一方向に所定距離移動した測定箇所Cの反り量Wcと、前記中心Mと前記測定箇所Bとを結ぶ直線Yを中心線として前記測定箇所Cと略線対称の測定箇所Dの反り量Wdとの差Δ又は比Rの評価が実施されることを特徴とする。
本発明によれば、半導体ウェハーの搬送用に用いるウェハーリングの製造方法であって、圧延方向を所定方向に向けた状態で配置された所定ロットのSUS301−H板材に、略リング状の照射パターンに沿ってレーザー光を照射することで、前記板材から板状リングを切り出すレーザー加工工程と、前記レーザー加工工程で切り出された前記板状リングの板面を押圧して前記板状リングの平坦性を向上させるレベリング工程と、前記レベリング工程後に、前記板状リングを平坦面に重ね合わせ状に配置し、前記板状リングの反り量を評価する反り評価工程と、を備え、前記反り評価工程によって評価された反り量が基準値を下回るまで、前記レーザー加工工程での前記レーザー光の照射時の前記板材の表裏、及び/又は、前記照射パターンの中心を回転中心とした前記照射パターンの角度姿勢からなる加工パターンを変更して、前記所定ロットのSUS301−H板材に対する前記レーザー加工工程と、その後の前記レベリング工程及び前記反り評価工程とを繰り返すことを特徴とする構成である。
したがって、仮に、最初に或る加工パターンでレーザー加工を試みて得られた板状リングの反り量が基準値を下回らなくても、加工パターンを順次変更しながら、レーザー加工工程とレベリング工程と反り評価工程を実施するルーチンを繰り返すことで、最終的には必ず反り評価工程によって評価された反り量が基準値を下回る適正な加工パターンが見つかる。そうして、適正な加工パターンが見つかれば、同ロットの残りのSUS301−H板材については、全てその適正な加工パターンでレーザー加工工程を行い、レベリング工程を行なえば、ほぼ全数が反り量で基準値を下回る合格品となる。その結果、非常に硬度が高く耐食性にも優れたSUS301−H板材からレーザー加工工程で切り出すという製造方法を採用しながらも、充分に製品歩留まりがよく、その結果、製造コストの低減やランニングコストの低減に対して有効なウェハーリングの製造方法となる。
また、前記反り評価工程では、前記板状リングの所定箇所Aを平坦面に倣わせた状態で、前記板状リングの中心Mを介して前記所定箇所Aに対向する前記板状リングの測定箇所Bの反り量Wbの評価、及び、前記測定箇所Bを起点として前記板状リングの円周方向に沿って一方向に所定距離移動した測定箇所Cの反り量Wcと、前記中心Mと前記測定箇所Bとを結ぶ直線Yを中心線として前記測定箇所Cと略線対称の測定箇所Dの反り量Wdとの差Δ又は比Rの評価が実施される構成とすれば、レーザー加工工程とレベリング工程を終えた板状リングが示す反り具合(反りの位置や向きなど)が、ロットによって多種多様であっても、反り量を客観的に数値化し、容易に評価することが可能となるため、反り評価工程に対して過剰に高度な熟練度が要求されず、製造効率も良くなり有利である。
本発明の実施形態に係るウェハーリングを示す平面図である。 ウェハーリングの使用方法を示す斜視図(a)及び断面図(b)である。 SUS301−H板材の製造行程の一部を示す斜視図である。 納入形態のSUS301−H板材とレーザー照射パターンの例を示す斜視図である。 納入形態のSUS301−H板材の表裏両面を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る加工パターンを示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る加工パターンを示す斜視図である。 本発明の実施形態に係るレベリング工程を示す斜視図である。 切り出された板状リングの二種類の反り具合を示す側面図である。 切り出された板状リングの反り評価工程を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る製造工程において実施されるルーチンを説明するフロー図である。 本発明の実施形態に係る製造工程において実施されるルーチンを説明する斜視図である。
以下、本発明の実施形態について図を用いて説明する。
図1は、本発明に係る製造方法の対象であるウェハーリングの一例を示す。ウェハーリングは、半導体装置製造工程における半導体ウェハーの搬送用などに用いられる。図1に示すウェハーリング20は、厚さが1mm前後のSUS301−H板材からレーザー加工で切り出して得られたものである。
ウェハーリング20の内周縁28は概して円形を呈している。他方、外周縁22には、半導体装置製造工程にあるウェハーリング固定装置(図示せず)に対するウェハーリング20の位置や角度姿勢を制御するための複数のガイド部が設けられている。
これらのガイド部は、4つの直線状ガイド部24a,24b,24c,24d、及び、第1の直線状ガイド部24aの両端に形成された2つのV字状溝26a、26bからなる。第1のV字状溝26aが鈍角なのに対して、第2のV字状溝26bは鋭角である。
半導体装置製造工程では、図2(a)及び図2(b)に示す様に、ウェハー40は、ウェハーリング20の下面に貼着した粘着性樹脂シート30の上面に貼り付けられた形で搬送される。
次に、図3は、鋼材メーカーにおけるステンレス鋼板材の製造工程の一部を概念的に示す。図3(a)に示す様に、SUS301−Hなどのステンレス鋼のスラブ6が、熱間で圧延装置2によって所定の厚さの板材6´に圧延され、切断装置4によって所定の長さ:L1と幅:L2を備えた板材8となる。鋼材メーカーにおける圧延工程では、公知の様に、一つのスラブ或いは1つのスラブから切断された鋼材等のロット単位で加工が行われ、1ロットから例えば数百枚等のように複数の板材8を得ることができる。
さらに、図示していない切断装置によって幅方向で三等分することで、図3(b)に示す様に、1枚の板材8から長さ:L1と幅:L3を備えた長方形の板材10が3枚得られる。これらの板材10が製品として鋼材メーカーからウェハーリングの製造業者に納入される。
納入形態の板材10の表面には、圧延装置からの排出方向を示す情報と共に、同一ロットであれば共通のロットナンバーが記載される。ここでは便宜的に、圧延装置2のローラが東西方向に配置されており、板材6´は圧延装置2から南向きに排出されるものとする(圧延方向=南)。
なお、板材10の製造は、図3に示す例に限るものではなく、例えばスラブ6を切断して得られた矩形状鋼材を更に圧延して略L3の幅の長尺鋼材とし、この長尺鋼材をL1の長さにカットすることで、複数の板材10を製造しても良い。
図4に示す様に、納入形態の板材10は、圧延装置における東(E)、西(W)南(S)北(N)の各方向に対応した4つの辺、すなわち、東側辺10e、西側辺10w、南側辺10s、北側辺10nを有する。
板材10の外寸を長さ:L1=1100mm、幅:L3=400mmとした場合、レーザー加工工程によって切り出せば、図4に一点鎖線で示す様に、1枚の製品板材10から12インチ(呼び径)のウェハーリング20を3つ得ることができる。また、レーザー加工の場合、各12インチのウェハーリング20の内側領域から8インチのウェハーリングを取得し、さらに8インチのウェハーリングの内側領域から6インチのウェハーリングを取得することも可能となり、板材10を徹底的に有効活用できる。
図5(a)及び図5(b)に示す様に、納入形態の板材10は、圧延装置2から排出された時の上側面である第1面10Aと、第1面10Aの裏面に相当する第2面10Bとを有する。なお、図5(b)に示す様に、第2面10Bは網掛けで示されている。
板材10からレーザー加工工程によってウェハーリング20の元になる板状リング15を切り出す際には、図4に示す様に、先ずウェハーリング20のパターンの内周縁28に沿って切断し、次にウェハーリング20のパターンの外周縁22に沿って切断する。
より具体的には、図6(a)などに示す様に、内周縁28よりも少し内側に設定した第1開始点P1でレーザービームを板材10に貫通させた後で、ビームを外径方向に内周縁28まで移動させ、引き続き、内周縁28の予定線に沿って円形に移動させるという手順で、内周縁28の切断を実施すればよい。
同様に、外周縁22よりも少し外側に設定した第2開始点P2でレーザービームを板材10に貫通させた後、ビームを内径方向に外周縁22まで移動させ、引き続き、外周縁22の予定線に沿って移動させるという手順で、外周縁22の切断を実施すればよい。
この様にして切り出された板状リング15は、板状リング15の板面を押圧することで平坦性を向上させる(レベリング工程)。レベリング工程の具体的な方法としては、例えば図8に概念的に示す様なレベリング装置50に備えられた一対の押圧ローラの間を通せばよい。
次に、レベリング工程後の板状リング15に対して、反り量の評価が行なわれる(反り評価工程)。反り評価工程の具体的な方法としては、先ず、図9に示す様に、板状リング15を定盤60の平坦面の上に置いて観察することで、板状リング15の全体的な反りの傾向を判断する。図9(a)の様に、板状リング15の第1面10Aを上に向けた状態で、径方向外側部分が平坦面から浮き上がる様な反り方を「前反り」と呼び、逆に、図9(b)の様に、板状リング15の中央付近が浮き上がり、径方向外側部分が平坦面に接地する様な反り方を「後反り」と呼ぶ。
反り評価工程では、板状リング15が前反りの場合は、図10(a)に示す様に、板状リング15をそのままの姿勢で、浮き上がった径方向外側部分の一箇所(図では所定箇所A)を、専用治具か指などで定盤60の平坦面に、所定箇所Aを平坦面に倣わせるのに十分な大きさの力Fで押し付けた状態で、測定箇所B,C,Dにおける各反り量Wb,Wc,Wdを測定する。ここで、反り量Wb,Wc,Wdは、測定箇所B,C,Dの平坦面60からの高さである。
他方、板状リング15が後反りの場合は、図10(b)に示す様に、板状リング15を裏返した姿勢で置き直し、浮き上がった径方向外側部分の一箇所(図では所定箇所Aが例示されている)を、専用治具か指などで定盤60の平坦面に、同じく所定箇所Aを平坦面に倣わせるのに十分な応力Fで押し付けた状態で、測定箇所B,C,Dにおける各反り量Wb,Wc,Wdを測定する。実際の測定は隙間ゲージなどを用いて行えばよい。
ここで、上記の測定箇所Bは、図1に示す様に、板状リング15の中心Mを介して所定箇所Aに対向する箇所と定義される。また、測定箇所Cは、図1に示す様に、測定箇所Bを起点として板状リング15の円周方向に沿って一方向に所定距離移動した箇所と定義される。さらに、測定箇所Dは、図1に示す様に、中心Mと測定箇所Bとを結ぶ直線Yを中心線として測定箇所Cと略線対称の箇所と定義される。
なお、ここでは、測定箇所Cを定義する際に用いる「所定距離」は、図1に示す様に、中心Mに関して中心線Yから外側に約45°開いた回転距離とされている。
反り評価工程では、図10に示す様に、測定箇所Bにおける反り量Wb、及び、測定箇所Cにおける反り量Wcと測定箇所Dにおける反り量Wdとが測定され、そり量Wcとそり量Wdとの差Δ(=|Wc−Wd|)が算出される。そして、測定されたそり量すなわち反り量Wb及び差Δが、予め決められた基準値以下であるか否かが判定される。なお、上述した差Δの替わりにそり量Wcとそり量Wdとの比R=Wc/Wdを算出し、比Rが、予め決められた基準値以下であるかを判定してもよい。
ところで、発明者は、SUS板材からレーザー加工で板状リングを切り出すという製造方法について鋭意研究した結果、以下の様な本質的かつ重要な知見を得た。
すなわち、同じSUS板材でも、従来から用いられてきたSUS420J2を用いた場合、上記のレーザー加工とレベリング工程によって、反り量が基準値を下回る板状リングが容易に得られる。しかし、SUS420J2を用いた場合、焼入れ・焼き戻し並びにメッキ等の加工工程を必要とするため製造コストが大きく増大する。また、焼入れ・焼き戻しを行った場合も反復使用は難しい。
(1)他方、板材がSUS301−Hで、かつ、厚さが1mm前後の板材10からレーザー加工で板状リング15切り出した場合には、硬度が十分に高いため、焼入れ・焼き戻し並びにメッキ等の加工工程が不要となり、反復使用もできるが、レーザー加工時に発生する反りがレベリング工程や加圧下での加熱処理などで矯正困難なほど顕著になる事例が頻繁に発生する。
(2)レーザー加工によって発生する反りの強さや傾向は、レーザー加工でのレーザー光の照射時の板材10の表裏、及び/又は、照射パターンの中心(板状リング15の中心Mと同一)を回転中心とした照射パターンの角度姿勢からなる加工パターンによって変化し、しかも、鋼材メーカーから出荷される板材の同一ロット内では、反りの強さや傾向が一致する。
(3)レーザー加工での加工パターンとして、事前に所定数の加工パターンを用意しておけば、その中の少なくとも一つの加工パターンでは、レーザー加工によって発生する反りの強さや傾向が、上述したレベリング加工によって矯正できる程度に小さくなる。
そこで、本実施形態による製造方法では、図11に示すように、適正な加工パターンを取得するためのルーチンを設けている。このルーチンでは、レーザー加工工程での加工パターンを変更しながら、具体的には、事前に用意した所定数の加工パターンの中から使用する加工パターンを順次変更しながら、所定ロットのSUS301−H板材に対するレーザー加工工程と、その後のレベリング工程及び反り評価工程とが繰り返され、反り評価工程によって評価された反り量(反り量Wb、反り量Wcと反り量Wdの間の差Δ又は比R)が基準値を下回ればルーチンは終了する。
なお、最初に試みた加工パターンまたは数回目のルーチンで、反り量が基準値を下回る適正な加工パターンが見つかれば、同一ロットの板材10については、全てその適正な加工パターンでレーザー加工を行なえばよいので、残りの加工パターンによるレーザー加工などを試みる必要はない。
しかし、必要に応じて、最適な加工パターンを求めるために、全ての加工パターンによるレーザー加工を試みてもよい。
本実施形態では、事前に用意した所定数の加工パターンとは、図6及び図7に示す全部で8つの加工パターンである。
図6及び図7で左側に縦に並べられた4つの加工パターン、すなわち、図6(a)に示す加工パターンA、図6(c)に示す加工パターンC、図7(e)に示す加工パターンE及び図7(g)に示す加工パターンGは、板材10における圧延装置2から排出された時の上面である第1面10Aを上に向けた状態で、レーザー加工を行う際の加工パターンである。
これら4つの加工パターンでは、レーザー加工工程での切り出し方向は全て時計方向で一致しているが、切り出し開始位置(第1開始点P1及び第2開始点P2)は互いに異なっている。すなわち、切り出し開始位置は、加工パターンAでは板材10の南側辺10s寄りの位置、加工パターンCでは西側辺10w寄りの位置、加工パターンEでは北側辺10n寄りの位置、加工パターンGでは東側辺10e寄りの位置とされている。
他方、図6及び図7で右側に縦に並べられた4つの加工パターン、すなわち図6(b)に示す加工パターンB、図6(d)に示す加工パターンD、図7(f)に示す加工パターンF及び図7(h)に示す加工パターンHは、板材10における圧延装置2から排出された時の下側面である第2面10B(網掛けで表示)を上に向けた状態で、レーザー加工を行う際の加工パターンである。
これら4つの加工パターンでも、レーザー加工工程での切り出し方向は全て時計方向(第1面10Aから見れば反時計方向)で一致しているが、切り出し開始位置(第1開始点P1及び第2開始点P2)は互いに異なっており、加工パターンBでの切り出し開始位置は板材10の南側辺10s寄りの位置、加工パターンDでは東側辺10e寄りの位置、加工パターンFでは北側辺10n寄りの位置、加工パターンHでは西側辺10w寄りの位置とされている。
なお、左右で隣り合う加工パターンAと加工パターンBは、切り出し開始位置(第1開始点P1及び第2開始点P2)は実質的に同じだが、第1面10Aから見た切り出し方向が逆となる関係にある。同じく、左右で隣り合う加工パターンEと加工パターンFとの関係も同様である。
他方、加工パターンCに対して、切り出し開始位置が実質的に同じで、第1面10Aから見た切り出し方向が逆となる関係にあるのは、加工パターンHである。また、加工パターンGに対して、切り出し開始位置が実質的に同じで、第1面10Aから見た切り出し方向が逆となる関係にあるのは、加工パターンDである。
図6と図7から理解されるように、以上の8つの加工パターン、すなわち、加工パターンA、加工パターンB、加工パターンC、加工パターンD、加工パターンE、加工パターンF、加工パターンG、及び加工パターンHは、互いに、切り出し開始位置(第1開始点P1及び第2開始点P2)と切り出し方向(第1面10Aから見て時計方向または反時計方向)のいずれかが必ず異なる関係にある。
ここで、図11に示すルーチンに沿って、具体的な製造工程例を説明する。
先ず、最初に試みる加工パターンと、それに続く各加工パターンの適用順序を決めておいてもよい。ここでは、仮に加工パターンAで開始する場合を考える。
(1)工程#01において、図6(a)に示す様に、所定ロットの板材10から加工パターンAによって、1枚の板状リング15を切り出し(加工パターンnによるレーザー加工工程)、工程を工程#02に進める。
(2)工程#02において、工程#01において得られた板状リング15をレベリング装置50に通して平坦性を向上させ(レベリング工程)、工程を工程#03に進める。
(3)工程#03において、レベリング工程後の板状リング15の反り量を評価し(反り評価行程)工程を工程#04に進める。
(4)工程#04において、得られた反り量と基準値を比較する。具体的には、反り量が基準値を下回っているか比較判定する(反り量<基準値?)。例えば、Wbが基準値0.3mmを下回っているか否か、或いはΔが基準値1.2mmを下回っているか否かを判定する。
反り量が基準値を下回っている場合(yes)は、適正な加工パターンが取得された(工程#06)と見なし、ルーチンが終了する。従って、同じロットの全ての板材10から加工パターンAで板状リング15を切り出し、レベリング装置50を通せば、得られた板状リングの反り量Wb並びにΔを基準値以下に揃えることができる。
他方、工程#04において、反り量が基準値を下回っていない場合(no)は、適正な加工パターンではないと見なし、工程を工程#05に移す。工程#05において、加工パターンの変更を行い(n+1→n)、工程を工程#01に移す。具体的には、例えば、加工パターンを加工パターンAから、図12に示す様に、板材10の第2面10Bを上に向けた加工パターンBに変更し、再びレーザー加工工程(#01)を実施する。このような変更は、例えば「前反り」が発生し、しかもΔは基準値以下となっているものの、反り量Wbが基準値を超える場合に有効となる。なお図12における、板材10の北側辺10n寄りの開口14は、工程#1におけるレーザー加工により板状リング15が切り出された跡を示す。
この様に、加工パターンの変更(工程#05)、レーザー加工工程(工程#01)、レベリング工程(工程#02)、反り評価行程(工程#03)の4工程は、比較判定(工程#06、反り量<基準値?)の結果が「yes」になるまで繰り返される。そして、「yes」となった加工パターンが、当該ロットに対するレーザー加工工程における加工パターンとして採用されるのである。
以上、本発明の実施形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらはあくまでも例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
本発明は、半導体ウェハーの搬送用に用いるウェハーリングの製造方法に従来見られた課題を解決するための技術として利用可能な発明である。
10 所定ロットのSUS301−H板材
15 板状リング
20 ウェハーリング
40 半導体ウェハー
60 定盤(平坦面)
#01 レーザー加工工程
#02 レベリング工程
#03 反り評価工程
A 所定箇所
Wb 測定箇所Bでの反り量
Wc 測定箇所Cでの反り量
Wd 測定箇所Dでの反り量
Y 中心線
Δ WcとWdとの差
R WcとWdとの比

Claims (2)

  1. 半導体ウェハーの搬送用に用いるウェハーリングの製造方法であって、
    圧延方向を所定方向に向けた状態で配置された所定ロットのSUS301−H板材に、略リング状の照射パターンに沿ってレーザー光を照射することで、前記板材から板状リングを切り出すレーザー加工工程と、
    前記レーザー加工工程で切り出された前記板状リングの板面を押圧して前記板状リングの平坦性を向上させるレベリング工程と、
    前記レベリング工程後に、前記板状リングを平坦面に重ね合わせ状に配置し、前記板状リングの反り量を評価する反り評価工程と、を備え、
    前記反り評価工程によって評価された反り量が基準値を下回るまで、前記レーザー加工工程での前記レーザー光の照射時の前記板材の表裏、及び/又は、前記照射パターンの中心を回転中心とした前記照射パターンの角度姿勢からなる加工パターンを変更して、前記所定ロットのSUS301−H板材に対する前記レーザー加工工程と、その後の前記レベリング工程及び前記反り評価工程とを繰り返すことを特徴とするウェハーリングの製造方法。
  2. 前記反り評価工程では、前記板状リングの所定箇所Aを平坦面に倣わせた状態で、前記板状リングの中心Mを介して前記所定箇所Aに対向する前記板状リングの測定箇所Bの反り量Wbの評価、及び、前記測定箇所Bを起点として前記板状リングの円周方向に沿って一方向に所定距離移動した測定箇所Cの反り量Wcと、前記中心Mと前記測定箇所Bとを結ぶ直線Yを中心線として前記測定箇所Cと略線対称の測定箇所Dの反り量Wdとの差Δ又は比Rの評価が実施されることを特徴とする請求項1記載のウェハーリングの製造方法。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115781044A (zh) * 2022-11-16 2023-03-14 深圳锦邦达电子有限公司 保证pcb板激光切割平整度的方法及系统

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