JP2019038470A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】凍結路面での走行性能が向上した空気入りタイヤを提供する。【解決手段】トレッド部に複数の陸部20が設けられ、陸部20に、複数のサイプ30と、隣り合う2つのサイプ30の間に配置された少なくとも1つの凹部32とが設けられた空気入りタイヤにおいて、凹部32の両側のサイプ30の間の距離をW1、凹部32と一方のサイプ30との間の距離をW2、凹部32と他方のサイプ30との間の距離をW3とすると、W2/W1及びW3/W1が0.1以上0.3以下であることを特徴とする。【選択図】図2
Description
本発明は空気入りタイヤに関する。
特許文献1〜3に記載されているように、トレッド部にサイプが形成された空気入りタイヤが知られている。このような空気入りタイヤではサイプによるエッジ効果が発揮されるため、凍結路面での走行性能が優れている。
また、特許文献1〜3に記載されているように、トレッド部にサイプが形成された空気入りタイヤにおいて、さらに凹部が形成されたものが知られている。この凹部は、内部に水を取り込むことによってトレッド部の接地面と路面との間に水膜を発生しにくくするために設けられている。水膜が発生しにくくなれば凍結路面での走行性能が優れたものとなる。
ところで、凍結路面での走行性能をさらに向上させることが望まれているが、トレッド部にサイプ及び凹部が形成されているという特徴を変更することは望ましくない。
そこで本発明は、サイプ及び凹部が形成されているというトレッド部の構造を維持しつつ、凍結路面での走行性能がさらに向上した空気入りタイヤを提供することを課題とする。
実施形態の空気入りタイヤは、トレッド部に複数の陸部が設けられ、前記陸部に、複数のサイプと、隣り合う2つの前記サイプの間に配置された少なくとも1つの凹部とが設けられた空気入りタイヤにおいて、前記凹部の両側の前記サイプの間の距離をW1、前記凹部と一方の前記サイプとの間の距離をW2、前記凹部と他方の前記サイプとの間の距離をW3とすると、W2/W1及びW3/W1が0.1以上0.3以下であることを特徴とする。
実施形態では、W2/W1及びW3/W1がそれぞれ0.1以上0.3以下であることにより、サイプ及び凹部によるエッジ効果が向上するため、凍結路面での走行性能がさらに向上する。
実施形態の空気入りタイヤについて図面に基づき説明する。なお以下の説明における空気入りタイヤの特徴は、特に記載が無い場合は、正規リムに装着され正規内圧が充填された空気入りタイヤの無負荷状態での特徴である。ここで、正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」のことである。また、正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」のことである。ただし空気入りタイヤが乗用車用である場合は、正規内圧は180kPaである。
ちなみに、後述する正規荷重とは、JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「LOAD CAPACITY」のことである。ただし空気入りタイヤが乗用車用である場合は、正規荷重は、内圧180kPaの対応荷重の85%である。
実施形態の空気入りタイヤは、トレッド部の構造を除き一般的なラジアルタイヤと同様の構造を有する。実施形態の空気入りタイヤの大まかな構造を例示すると、次の通りである。
まず、タイヤ幅方向両側にビード部が設けられている。ビード部は、円形に巻かれた鋼線からなるビードコアと、ビードコアの径方向外側に設けられたゴム製のビードフィラーとからなる。タイヤ幅方向両側のビード部にはカーカスプライが架け渡されている。カーカスプライはタイヤ周方向に直交する方向に並べられた多数のプライコードがゴムで被覆されたシート状の部材である。カーカスプライは、タイヤ幅方向両側のビード部の間で空気入りタイヤの骨格形状を形成するとともに、ビード部の周りでタイヤ幅方向内側から外側に折り返されることによりビード部を包んでいる。カーカスプライの内側には空気の透過性の低いゴムからなるシート状のインナーライナーが貼り付けられている。
カーカスプライのタイヤ径方向外側には1枚又は複数枚のベルトが設けられ、ベルトのタイヤ径方向外側にはベルト補強層が設けられている。ベルトはスチール製の多数のコードがゴムで被覆されて出来た部材である。ベルト補強層は有機繊維製の多数のコードがゴムで被覆されて出来た部材である。ベルト補強層のタイヤ径方向外側には接地面を有するトレッド部が設けられている。また、カーカスプライのタイヤ幅方向両側にはサイドウォールが設けられている。これらの部材の他にも、タイヤの機能上の必要に応じて、ベルト下パッドやチェーハー等の部材が設けられている。
次にトレッド部について説明する。トレッド部には複数の陸部及び複数の溝からなるトレッドパターンが形成されている。1つの陸部は、正規リムに装着され正規内圧が充填された空気入りタイヤに正規荷重が負荷されたときに、1つの連続する接地面を形成する。
陸部を有するトレッドパターンは、限定されないが、例えば図1に示すようなトレッドパターンである。図1のトレッドパターンでは、タイヤ周方向(図面において矢印Xで示す方向)に延びる4本の主溝10と、タイヤ幅方向(図面において矢印Yで示す方向)に延びる多数の横溝12とが設けられている。そして、主溝10及び横溝12によって分割された多数の陸部が形成されている。
図1の実施形態における陸部として、タイヤ中心線CLに近い2本の主溝10に挟まれた複数のセンターブロック20と、タイヤ幅方向Yの両側においてタイヤ接地端Eに近い主溝10とタイヤ接地端Eとに挟まれた複数のショルダーブロック22と、センターブロック20とショルダーブロック22との間の複数のメディエイトブロック24とが形成されている。いずれのブロックもタイヤ周方向Xに並んでブロック列を形成している。
なお、主溝は、図1の主溝10のようにタイヤ周方向Xに直線状に延びるものでなくても良く、例えば屈曲しながらタイヤ周方向Xに延びるジグザグ状のものや、湾曲しながらタイヤ周方向Xに延びる波形状のものや、タイヤ周方向Xに対して斜めに延びるものであっても良い。また、陸部は、タイヤ周方向Xに延びる主溝によって分割され横溝によって分割されない、タイヤ周方向Xに延びるリブであっても良い。
次に、陸部の構造について、センターブロック20を例に取って説明する。図2に示すように、センターブロック20にはタイヤ幅方向Yに延びるサイプ30が設けられている。サイプ30とは、幅の狭い溝のことであり、より正確には、正規リムに装着され正規内圧が充填された空気入りタイヤが接地し、そこへ正規荷重が負荷されたときに、接地面への開口部が閉じる溝のことである。図2に示すサイプ30はタイヤ幅方向Yに延びているが、サイプの延びる方向はこれに限定されず、例えばタイヤ周方向Xや、タイヤ周方向X及びタイヤ幅方向Yに対して斜めの方向であっても良い。サイプ30は、一般的には接地面に対して垂直な方向に深くなっているが、接地面に垂直な方向に対して若干斜めの方向に深くなっていても良い。サイプ30の深さは、限定されないが、一般的には主溝10の深さよりも浅い。1つのセンターブロック20には複数(図2の場合は4つ)のサイプ30が設けられている。
図2におけるサイプ30は接地面に垂直な方向から見て波形状となっている。ただし、サイプの形状はこれに限定されない。波形状のサイプ30の代わりに、例えば、図3(a)に示す直線状のサイプ30a、図3(b)に示す1つの曲線状のサイプ30b、又は図3(c)に示す波形状の部分と直線状の部分とからなるサイプ30cが設けられていても良い。
また、図2におけるサイプ30の両端部はセンターブロック20の幅方向両端部に達し主溝10に開口している。しかし、図3(d)に示すサイプ30dのように、少なくとも一方の端部がセンターブロック20内で閉塞し主溝10に開口していなくても良い。
図2〜図4に示すように、センターブロック20の隣り合う2つのサイプ30の間には凹部32が設けられている。サイプ30と凹部32とは接触せず離れている。本実施形態における凹部32は、接地面に垂直な方向から見て円形である(つまり接地面への開口端34が円形である)。ただし、凹部の接地面への開口端の形状はこれに限定されず、例えば四角形、五角形、六角形等の多角形であっても良い。凹部32は、開口端34の形状を保ったまま接地面に対して垂直な方向に延びていることが好ましい。ただし、凹部32が開口端34においてその下の部分(凹部32の内部)よりも広がっていても良い。また、凹部32の側壁38(図4参照)は、接地面に対して垂直であることが好ましいが、接地面に垂直な方向に対して若干傾斜していても良い。凹部32の深さは例えば0.05mm以上0.5mm以下である。
なお、図2〜図3では、センターブロック20のタイヤ周方向Xの端部とサイプとの間にも凹部32が設けられている。
本実施形態において、凹部32の両側のサイプの間の距離をW1、凹部32と一方のサイプとの間の距離をW2、凹部32と他方のサイプとの間の距離をW3とすると、W2/W1及びW3/W1がそれぞれ0.1以上0.3以下となっている。
ここで、凹部32の両側のサイプの間の距離W1とは、サイプが波形状の場合は、図2に示すように、その波形状の振幅における凹部32に近い方の頂点を結ぶ仮想直線Mを定め、凹部32の中心を通過するとともに凹部32の両側の仮想直線Mを最短距離で結ぶ直線L1の長さのことである。また、凹部32の両側のサイプの間の距離W1とは、サイプが直線状又は1つの曲線状の場合は、図3(a)に示すように、凹部32の中心を通過するとともに凹部32の両側のサイプを最短距離で結ぶ直線L2の長さのことである。
また、凹部32と一方のサイプとの間の距離W2とは、サイプが波形状の場合は、図2に示すように、上記の直線L1上での、凹部32と一方のサイプにおける仮想直線Mとの間の距離のことである。また、凹部32と一方のサイプとの間の距離W2とは、サイプが直線状又は1つの曲線状の場合は、図3(a)に示すように、上記の直線L2上での、凹部32と一方のサイプとの間の距離のことである。
また、凹部32と他方のサイプとの間の距離W3とは、サイプが波形状の場合は、図2に示すように、上記の直線L1上での、凹部32と他方のサイプにおける仮想直線Mとの間の距離のことである。また、凹部32と他方のサイプとの間の距離W3とは、サイプが直線状又は1つの曲線状の場合は、図3(a)に示すように、上記の直線L2上での、凹部32と他方のサイプとの間の距離のことである。
凹部32の開口端34の大きさや、2つのサイプ30の間での凹部32の配置位置は、上記のようにW2/W1及びW3/W1がそれぞれ0.1以上0.3以下となるように設定される。
本実施形態において、隣り合う2つのサイプ30に挟まれた部分を陸部片36とする。図3(d)に示すサイプ30dのように少なくとも一方の端部がセンターブロック20内で閉塞している場合は、その閉塞位置からセンターブロック20の端部までサイプ30dの延長方向と同方向に延びる延長線Nが規定され、サイプ30dと延長線Nとからなる仮想線Pが規定される。そして、隣り合う2つの仮想線Pに挟まれた部分を陸部片36とする。
1つの陸部片36に設けられる凹部32の数は限定されない。しかし、1つの陸部片36の接地面積に対する、その陸部片36に設けられた全ての凹部32の開口面積の合計の割合が、10%以上40%以下であることが望ましい。なお陸部片36の接地面積に凹部32の開口面積は含まれない。また接地面積とは、正規リムに装着され正規内圧が充填された空気入りタイヤが平面に接地し、そこへ正規荷重が負荷されたときの接地面積のことである。
ここまでセンターブロック20を例に取って説明したが、サイプ及び凹部に関する以上の特徴を有するブロックはセンターブロック20に限定されない。センターブロック20、ショルダーブロック22、及びメディエイトブロック24のうち少なくともいずれか1つがサイプ及び凹部に関する以上の特徴を有していれば良い。
つまり、センターブロック20、ショルダーブロック22、及びメディエイトブロック24のうちいずれか1つのみがサイプ及び凹部に関する以上の特徴を有していても良いし、センターブロック20、ショルダーブロック22、及びメディエイトブロック24の全てがサイプ及び凹部に関する以上の特徴を有していても良い。
また、センターブロック20、ショルダーブロック22、及びメディエイトブロック24のうちいずれか2つがサイプ及び凹部に関する以上の特徴を有していても良い。つまり、センターブロック20及びショルダーブロック22のみが以上の特徴を有している場合、センターブロック20及びメディエイトブロック24のみが以上の特徴を有している場合、ショルダーブロック22及びメディエイトブロック24のみが以上の特徴を有している場合があり得る。
本実施形態の空気入りタイヤは一般的なラジアルタイヤと同様の方法で製造することができるが、加硫成型時に上記の凹部32を形成するための凸部が、加硫成型のための金型の内面に設けられていることが必要である。この凸部は、金型内部の空気を外部に逃がすためのスプリングベントの金型内側の部分が金型内部に突出したものであっても良い。
次に本実施形態の効果について説明する。本実施形態の空気入りタイヤは、サイプ及び凹部32がそれぞれエッジ効果を発揮するために凍結路面での走行性能に優れている。
さらに、本実施形態の空気入りタイヤでは、上記のようにW2/W1及びW3/W1がそれぞれ0.1以上0.3以下であることにより、サイプ及び凹部32によるエッジ効果が向上するため、凍結路面での走行性能がさらに向上する。具体的には、W2/W1及びW3/W1がそれぞれ0.1以上であることにより、サイプと凹部32との間のゴムの部分が十分な厚みとなり、その部分が大きな弾性力を発揮できるため、エッジ効果が向上し凍結路面での走行性能がさらに向上する。また、W2/W1及びW3/W1がそれぞれ0.3以下であることにより、サイプと凹部32との間のゴムの部分が厚過ぎずに変形可能となり、その部分が大きな弾性力を発揮できるため、エッジ効果が向上し凍結路面での走行性能がさらに向上する。
また、本実施形態の空気入りタイヤにおいて、1つの陸部片36の接地面積に対する、その陸部片36に設けられた全ての凹部32の開口面積の合計の割合が、10%以上40%以下であれば、凹部32によるエッジ効果がさらに向上するため凍結路面での走行性能がさらに向上する。具体的には、上記の割合が10%以上であることにより、サイプと凹部32との間のゴムの部分が変形可能な厚みとなる上に、凹部32の開口端34が大きくなって開口端34の円周が長くなるため、凹部32によるエッジ効果がさらに向上して凍結路面での走行性能がさらに向上する。また、上記の割合が40%以下であることにより、陸部片36の剛性が確保されるため、凹部32によるエッジ効果がさらに向上して凍結路面での走行性能がさらに向上する。
以上の実施形態の効果を確認するため、表1及び図5に示す比較例及び実施例の空気入りタイヤのアイス路面での操縦安定性能を評価した。図5(a)に示す比較例1の空気入りタイヤは、全てのブロックに凹部32が設けられていない点で、上記実施形態の空気入りタイヤと異なる。図5(b)〜(e)に示す実施例1〜4の空気入りタイヤは、上記実施形態の空気入りタイヤと同じ特徴を備え、センターブロック20を含む全てのブロックに凹部32を備える。実施例1〜4の空気入りタイヤの違いは、陸部片36の接地面積に対する陸部片36に設けられた全ての凹部32の開口面積の合計の割合である。
比較例1及び実施例1〜4において、陸部片36の接地面積を84.4mm2とした。また、実施例1〜4における1つの凹部32の開口面積を3.14mm2とし、1つの陸部片36におけるこの凹部32の数を、実施例1で2つ、実施例2で3つ、実施例3で4つ、実施例4で5つとした。
アイス路面での操縦安定性能は次のように評価した。まず、ドライバーが各空気入りタイヤを装着した車両に乗り、アイス路面上で、加速、制動、旋回、及びレーンチェンジをする走行を実施した。そしてドライバーが操縦安定性能を官能評価した。評価は、比較例1の結果を100とし、指数が大きいほど操縦安定性能が優れていることを示す指数で行った。
評価結果は表1の通りであり、上記実施形態と同じ特徴を備える実施例1〜4の空気入りタイヤは、比較例1の空気入りタイヤと比べて、アイス路面での操縦安定性能に優れることが確認できた。また、陸部片36の接地面積に対する陸部片36に設けられた全ての凹部32の開口面積の合計の割合が、アイス路面での操縦安定性能に影響することが確認できた。
CL…タイヤ中心線、E…タイヤ接地端、L1…直線、L2…直線、M…仮想直線、N…延長線、P…仮想線、X…タイヤ周方向、Y…タイヤ幅方向、10…主溝、12…横溝、20…センターブロック、22…ショルダーブロック、24…メディエイトブロック、30…サイプ、30a…サイプ、30b…サイプ、30c…サイプ、32…凹部、34…開口端、36…陸部片、38…側壁
Claims (3)
- トレッド部に複数の陸部が設けられ、前記陸部に、複数のサイプと、隣り合う2つの前記サイプの間に配置された少なくとも1つの凹部とが設けられた空気入りタイヤにおいて、
前記凹部の両側の前記サイプの間の距離をW1、前記凹部と一方の前記サイプとの間の距離をW2、前記凹部と他方の前記サイプとの間の距離をW3とすると、W2/W1及びW3/W1が0.1以上0.3以下である、空気入りタイヤ。 - 前記凹部の深さが0.05mm以上0.5mm以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 隣り合う2つの前記サイプに挟まれた部分である陸部片の接地面積に対する、前記陸部片に設けられた全ての前記凹部の開口面積の合計の割合が、10%以上40%以下である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
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