JP2019037197A - ロースト様香料素材のスクリーニング方法 - Google Patents

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Chiori Ijichi
千織 伊地知
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Yasuko Nogi
康子 野木
悠介 井原
Yusuke Ihara
悠介 井原
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Hidehiko Wakabayashi
秀彦 若林
石渡 裕
Yutaka Ishiwatari
裕 石渡
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Abstract

【課題】ロースト様香料素材をスクリーニングする方法を提供する。【解決手段】OR5K1タンパク質を利用して試験物質がロースト様香料素材であるかを同定する。【選択図】なし

Description

本発明は、ロースト様香料素材のスクリーニング方法に関する。
香気は、食品や香粧品等の嗜好性を左右する重要な要素である。そのため、目的の香気を再現するために必要な香気成分をスクリーニングする技術や香気成分を組み合わせて目的の香気を再現する技術は、食品や香粧品等を開発するために産業上重要な技術である。
「ロースト様」と表現される香気は、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−3,6−ジメチルピラジン、4−メチルチアゾール、2,4−ジメチルチアゾール等のいくつかのピラジン化合物やチアゾール化合物などに共通に感じられる香気として知られている(非特許文献1)。ロースト様な香気は、ビーフ、チーズ、コーヒー、チョコレート、ナッツ、加熱調理食品等の香気を再現するために重要な要素となり得る。
従来、香気成分のスクリーニングは、ヒトが官能試験によって試験物質の香気を評価することによって実施されてきた。しかし、官能試験には、香気を評価できる専門家の育成が必要なことや、スループット性が低いこと等の問題がある。
ヒト等の哺乳動物においては、香気は、鼻腔上部の嗅上皮に存在する嗅神経細胞上の嗅覚受容体に香気成分の分子が結合し、当該分子に対する当該受容体の応答が中枢神経系へと伝達されることにより認識されている。近年、嗅覚受容体を用いて香気に関連する物質をスクリーニングする方法が開発されている。例えば、ミューゲの香気に応答する嗅覚受容体を用いて、ミューゲの香気を呈する物質をスクリーニングする方法が報告されている(特許文献1)。また、尿臭に応答する嗅覚受容体を用いて、尿臭を抑制する物質をスクリーニングする方法が報告されている(特許文献2)。
しかし、ロースト様な香気に応答する嗅覚受容体に関しては、報告がない。
特開2013−158266 特開2015−211667
フレーバー・クリエーション,ジョン・ライト著,藤森嶺ら訳,講談社(2014年)346頁,228頁,236頁,244頁,248頁
本発明は、ロースト様香料素材のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、嗅覚受容体の一つであるOR5K1タンパク質がロースト様な香気を有する成分に対して選択的に応答することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通り例示できる。
[1]
ロースト様香料素材をスクリーニングする方法であって、
下記工程(A)〜(C)を含む、方法:
(A)OR5K1タンパク質と試験物質を接触させる工程;
(B)前記試験物質に対する前記OR5K1タンパク質の応答を測定する工程;および
(C)前記応答に基づいて前記試験物質をロースト様香料素材として同定する工程。
[2]
前記応答が認められた場合に、前記試験物質をロースト様香料素材として同定する、前記方法。
[3]
前記応答が、前記OR5K1タンパク質と前記試験物質との結合、または前記試験物質による前記OR5K1タンパク質の活性化である、前記方法。
[4]
前記OR5K1タンパク質が、細胞、細胞膜、人工脂質二重膜小胞、または人工脂質二重膜に担持された形態で使用される、前記方法。
[5]
前記OR5K1タンパク質が、細胞に担持された形態で使用される、前記方法。
[6]
前記細胞が、動物細胞である、前記方法。
[7]
前記工程(B)および(C)が、それぞれ、下記工程(B1)および(C1)により実施される、前記方法:
(B1)前記工程(A)を実施した際の前記OR5K1タンパク質の活性化の程度D1を測定する工程;
(C1)前記活性化の程度D1に基づいて前記試験物質をロースト様香料素材として同定する工程。
[8]
前記工程(C1)が、下記工程(C2)により実施される、前記性化の程度D2との差に基づいて前記試験物質をロースト様香料素材として同定する工程。
[9]
前記対照条件が、下記条件(C2−1)または(C2−2)である、前記方法:
(C2−1)前記OR5K1タンパク質と前記試験物質を接触させない条件;
(C2−2)前記OR5K1タンパク質と前記試験物質を接触させる条件であって、該試験物質の濃度が前記工程(A)における該試験物質の濃度よりも低い濃度である条件。
[10]
さらに、前記活性化の程度D2を測定する工程を含む、前記方法。
[11]
前記活性化の程度D1が前記活性化の程度D2よりも高い場合に、前記試験物質をロースト様香料素材として同定する、前記方法。
[12]
前記活性化の程度D2に対する前記活性化の程度D1の比率が3以上である場合に、前記試験物質をロースト様香料素材として同定する、前記方法。
[13]
前記応答が、細胞内cAMP量を指標として測定される、前記方法。
[14]
細胞内cAMP量が、レポーターアッセイによって測定される、前記方法。
[15]
さらに、前記工程(C)で同定されたロースト様香料素材の香気を評価する工程を含む、前記方法。
[16]
前記評価が、官能評価によって実施される、前記方法。
[17]
前記試験物質が、単一の成分である、前記方法。
[18]
前記試験物質が、2種またはそれ以上の成分の組み合わせである、前記方法。
[19]
前記OR5K1タンパク質が、下記(A)または(B)に記載のタンパク質である、前記方法:
(A)哺乳類のOR5K1タンパク質;
(B)2種またはそれ以上の哺乳類のOR5K1タンパク質のキメラタンパク質。
[20]
前記OR5K1タンパク質が、下記(a)、(b)、または(c)に記載のタンパク質である、前記方法:
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、ロースト様な香気に対する応答性を有するタンパク質;
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、ロースト様な香気に対する応答性を有するタンパク質。
[21]
前記ロースト様香料素材が、ナッツ香、コーヒー香、ココア香、ロースト香、トースト香、ブラウン香、および焦げ香から選択される1種またはそれ以上の香気を呈する、前記方法。
本発明によれば、ロースト様香料素材を効率的にスクリーニングすることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の方法は、OR5K1タンパク質を利用したロースト様香料素材のスクリーニング方法である。本発明の方法においては、OR5K1タンパク質を利用して、ロースト様香料素材を同定する(すなわち試験物質がロースト様香料素材であるかを同定する)ことができる。本発明の方法においては、具体的には、試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答に基づいて、ロースト様香料素材を同定する(すなわち当該試験物質がロースト様香料素材であるかを同定する)ことができる。本発明の方法は、具体的には、(A)OR5K1タンパク質と試験物質を接触させる工程;(B)前記試験物質に対する前記OR5K1タンパク質の応答を測定する工程;及び、(C)前記応答に基づいて前記試験物質をロースト様香料素材として同定する工程、を含む、ロースト様香料素材のスクリーニング方法であってよい。
<1>ロースト様香料素材
「ロースト様香料素材」とは、ロースト様な香気を有する(呈する)物質をいう。「ロースト様な香気」とは、ローストした食品に特徴的な香気をいう。ロースト様な香気としては、例えば、いくつかのピラジン化合物やチアゾール化合物に共通に感じられる香気が挙げられる。そのような化合物としては、例えば、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−3,6−ジメチルピラジン、4−メチルチアゾール、2,4−ジメチルチアゾールが挙げられる。ロースト様な香気として、具体的には、例えば、ナッツ香(nutty;例えば、ピーナッツやヘーゼルナッツ)、コーヒー香(coffee)、ココア香(cocoa)、ロースト香(roasted)、トースト香(toasted)、ブラウン香(brown)、
焦げ香(burnt)が挙げられる。すなわち、ロースト様香料素材としては、特に、ナッツ香(nutty;例えば、ピーナッツやヘーゼルナッツ)を有する物質が挙げられる。また、ロースト様香料素材としては、特に、コーヒー香(coffee)を有する物質も挙げられる。また、ロースト様香料素材としては、特に、ココア香(cocoa)を有する物質も挙げられる。また、ロースト様香料素材としては、特に、ロースト香(roasted)を有する物質も挙げられる。また、ロースト様香料素材としては、特に、トースト香(toasted)を有する物質も挙げられる。また、ロースト様香料素材としては、特に、ブラウン香(brown)を有する物質も挙げられる。また、ロースト様香料素材としては、特に、焦げ香(burnt)を有する物質も挙げられる。ロースト様香料素材は、例えば、これらのロースト様な香気の例から選択される、1種の香気を有していてもよく、2種またはそれ以上の香気を有していてもよい。ロースト様香料素材は、単一の成分からなるもの(すなわち純物質)であってもよく、2種またはそれ以上の成分の組み合わせからなるもの(すなわち混合物)であってもよい。「混合物」を「組成物」ともいう。ロースト様香料素材が混合物である場合、当該混合物がロースト様な香気を有する限り、当該混合物を構成する各成分は、単独で、ロースト様な香気を有していてもよく、有していなくてもよい。
<2>試験物質
「試験物質」とは、ロースト様香料素材の候補として本発明の方法に用いられる物質をいう。試験物質は、特に制限されない。試験物質は、単一の成分からなるもの(すなわち純物質)であってもよく、2種またはそれ以上の成分の組み合わせからなるもの(すなわち混合物)であってもよい。試験物質が混合物である場合、当該混合物を構成する成分の種類数や構成比率は、特に制限されない。試験物質は、公知物質であってもよく、新規物質であってもよい。試験物質は、天然物であってもよく、人工物であってもよい。試験物質は、フェノール化合物であってもよく、そうでなくてもよい。試験物質は、例えば、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリーであってもよい。試験物質としては、例えば、アルコール、ケトン、アルデヒド、エーテル、エステル、炭化水素、糖、有機酸、核酸、アミノ酸、ペプチド、脂質、その他の有機または無機の各種成分が挙げられる。また、試験物質としては、特に、既存の食品添加物が挙げられる。「既存の食品添加物」とは、食品添加物としての使用が認められている物質をいう。試験物質としては、1種の試験物質を用いてもよく、2種またはそれ以上の試験物質を組み合わせて用いてもよい。2種またはそれ以上の成分をまとめてOR5K1タンパク質に接触させて本発明の方法を実施することにより、それらの成分の組み合わせが全体としてロースト様香料素材であるかを同定することができる。「2種またはそれ以上の成分をまとめてOR5K1タンパク質に接触させる」場合としては、混合物である試験物質をOR5K1タンパク質に接触させる場合や、2種またはそれ以上の試験物質をまとめてOR5K1タンパク質に接触させる場合が挙げられる。
試験物質は、例えば、既存の食品添加物等の、上記例示したような物質を含むように選択されてよい。すなわち、試験物質としては、例えば、1種の既存の食品添加物を用いてもよく、2種またはそれ以上の食品添加物を組み合わせて用いてもよく、1種またはそれ以上の食品添加物と1種またはそれ以上の他の成分とを組み合わせて用いてもよい。
また、試験物質は、例えば、既知のロースト様香料素材以外の物質を含むように選択されてよい。「既知のロースト様香料素材」とは、ロースト様な香気を呈することが既知である物質をいう。すなわち、本発明の方法からは、試験物質が既知のロースト様香料素材からなる場合が除かれてもよい。既知のロースト様香料素材としては、例えば、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−3,6−ジメチルピラジン、4−メチルチアゾール、2,4−ジメチルチアゾールが挙げられる。すなわち、本発明の方法からは、例えば、試験物質が2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−3,6−ジメチルピラジン、4−メチルチアゾール、2,4−ジメチルチアゾール、
またはそれらの組み合わせからなる場合が除かれてもよい。また、本発明の方法からは、試験物質が既知のロースト様香料素材を含む場合が除かれてもよい。
<3>OR5K1タンパク質
「OR5K1タンパク質」とは、Olfactory Receptor Family 5 Subfamily K Member 1に分類される嗅覚受容体タンパク質をいう。OR5K1タンパク質を単に「OR5K1」ともいう。OR5K1タンパク質をコードする遺伝子を「OR5K1遺伝子」ともいう。OR5K1タンパク質は、ロースト様な香気に対する応答性(すなわちロースト様香料素材に対する応答性)を有する。OR5K1タンパク質としては、1種のOR5K1タンパク質を用いてもよく、2種またはそれ以上のOR5K1タンパク質を組み合わせて用いてもよい。
OR5K1遺伝子およびOR5K1タンパク質としては、各種生物のOR5K1遺伝子およびOR5K1タンパク質が挙げられる。生物としては、例えば、哺乳類等の動物が挙げられる。哺乳類等の動物として、具体的には、例えば、表1に示すものが挙げられる。哺乳類等の動物としては、特に、ヒトが挙げられる。各種生物のOR5K1遺伝子の塩基配列およびOR5K1タンパク質のアミノ酸配列は、例えば、NCBIやEnsembl等の公開データベースから取得できる。ヒトのOR5K1遺伝子の塩基配列およびOR5K1タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号1および2に示す。OR5K1タンパク質の一例を表1に示す。表中、「Identity」は、ClustalWを用いて算出したヒトのOR5K1タンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)に対する各生物のOR5K1タンパク質のアミノ酸配列の同一性を示す。
すなわち、OR5K1遺伝子は、例えば、上記例示したOR5K1タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列(例えば表1のEnsembl Translation IDで登録されているアミノ酸配列をコードする塩基配列)を有する遺伝子であってよい。また、OR5K1タンパク質は、例えば、上記例示したOR5K1タンパク質のアミノ酸配列(例えば表1のEnsembl Translation IDで登録されているアミノ酸配列)を有するタンパク質であってよい。なお、「(アミノ酸または塩基)配列を有する」という表現は、当該「(アミノ酸または塩基)配列を含む」場合および当該「(アミノ酸または塩基)配列からなる」場合を包含する。
また、OR5K1タンパク質としては、キメラOR5K1タンパク質も挙げられる。「キメラOR5K1タンパク質」とは、OR5K1タンパク質のキメラタンパク質(すなわち、2種またはそれ以上のOR5K1タンパク質のキメラタンパク質)をいう。また、言い換えると、「キメラOR5K1タンパク質」とは、OR5K1タンパク質のキメラ配列を有するタンパク質(すなわち、2種またはそれ以上のOR5K1タンパク質のキメラ配列を有するタンパク質)をいう。「OR5K1タンパク質のキメラ配列」とは、OR5K1タンパク質のアミノ酸配列のキメラ配列(すなわち、2種またはそれ以上のOR5K1タンパク質のアミノ酸配列のキメラ配列)をいう。「OR5K1タンパク質のキメラ配列」とは、具体的には、OR5K1タンパク質のアミノ酸配列であって、その部分配列が、1種またはそれ以上の他のOR5K1タンパク質のアミノ酸配列の部分配列で置換されたアミノ酸配列をいう。キメラOR5K1タンパク質の構築におけるアミノ酸配
列の置換は、OR5K1タンパク質のアミノ酸配列中の対応する部位間で実施することができる。「OR5K1タンパク質のアミノ酸配列中の対応する部位」とは、それらOR5K1タンパク質のアミノ酸配列のアラインメントにおいて対応する位置に配列される部位をいう。キメラOR5K1タンパク質としては、例えば、上記例示したOR5K1タンパク質のキメラタンパク質(具体的には、上記例示したOR5K1タンパク質から選択される2種またはそれ以上のOR5K1タンパク質のキメラタンパク質)が挙げられる。キメラOR5K1タンパク質として、具体的には、例えば、哺乳類のキメラOR5K1タンパク質(具体的には、哺乳類のOR5K1タンパク質から選択される2種またはそれ以上のOR5K1タンパク質のキメラタンパク質)が挙げられる。すなわち、OR5K1タンパク質は、例えば、上記例示したOR5K1タンパク質のアミノ酸配列のキメラ配列(具体的には、上記例示したOR5K1タンパク質のアミノ酸配列から選択される2種またはそれ以上のアミノ酸配列のキメラ配列)を有するタンパク質であってもよい。キメラOR5K1タンパク質としては、ロースト様な香気に対する応答性を有するものを選択することができる。
キメラOR5K1タンパク質を構成するOR5K1タンパク質の種類数は、特に制限されない。キメラOR5K1タンパク質を構成するOR5K1タンパク質の種類数は、2種であってもよく、3種またはそれ以上であってもよい。
キメラOR5K1タンパク質における各OR5K1タンパク質の構成比率は特に制限されない。各OR5K1タンパク質の構成比率は、キメラOR5K1タンパク質を構成するOR5K1タンパク質の構成比率の合計が100%を超えない範囲で適宜設定することができる。各OR5K1タンパク質の構成比率は、例えば、1%以上、3%以上、5%以上、10%以上、20%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、または99%以上であってもよく、99%以下、97%以下、95%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、3%以下、または1%以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。「各OR5K1タンパク質の構成比率」とは、キメラOR5K1タンパク質を構成するアミノ酸残基の総数に対する各OR5K1タンパク質に由来するアミノ酸残基の個数の比率をいう。なお、キメラOR5K1タンパク質を構成するアミノ酸残基が当該キメラOR5K1タンパク質を構成するOR5K1タンパク質の保存配列に該当する場合、当該アミノ酸残基はそれらOR5K1タンパク質のいずれに由来するとみなしてもよい。
キメラOR5K1タンパク質における各OR5K1タンパク質に由来する部位の分布態様は特に制限されない。キメラOR5K1タンパク質において、各OR5K1タンパク質に由来する部位は、1ヶ所に固まって存在していてもよく、2ヶ所またはそれ以上に分散して存在していてもよい。例えば、或るOR5K1タンパク質(OR5K1タンパク質A)の内部のアミノ酸配列を別のOR5K1タンパク質(OR5K1タンパク質B)のアミノ酸配列で置換してキメラOR5K1タンパク質をデザインした場合、OR5K1タンパク質Aのアミノ酸配列は当該キメラOR5K1タンパク質のN末側とC末側に分散して残存する。
同様に、OR5K1遺伝子としては、キメラOR5K1遺伝子が挙げられる。キメラOR5K1タンパク質についての記載は、キメラOR5K1遺伝子にも準用できる。
OR5K1遺伝子は、元の機能が維持されている限り、上記例示したOR5K1遺伝子、例えば表1のEnsembl Translation IDで登録されているアミノ酸配列をコードする塩基配列またはそれらのキメラ配列を有する遺伝子、のバリアントであってもよい。同様に、OR5K1タンパク質は、元の機能が維持されている限り、上記例示したOR5K1タンパク質、例えば表1のEnsembl Translation IDで登録されているアミノ酸配列またはそれらのキメラ配列を有するタンパク質、のバリアントであってもよい。なお、そのような元の機能が維持された
バリアントを「保存的バリアント」という場合がある。「OR5K1遺伝子」という用語は、上記例示したOR5K1遺伝子に加えて、それらの保存的バリアントを包含するものとする。同様に、「OR5K1タンパク質」という用語は、上記例示したOR5K1タンパク質に加えて、それらの保存的バリアントを包含するものとする。保存的バリアントとしては、例えば、上記例示したOR5K1遺伝子やOR5K1タンパク質のホモログや人為的な改変体が挙げられる。
また、由来する生物種で特定されるOR5K1遺伝子は、当該生物種において見出されるOR5K1遺伝子そのものに限られず、当該生物種において見出されるOR5K1遺伝子の塩基配列を有する遺伝子およびそれらの保存的バリアントを包含するものとする。同様に、由来する生物種で特定されるOR5K1タンパク質は、当該生物種において見出されるOR5K1タンパク質そのものに限られず、当該生物種において見出されるOR5K1タンパク質のアミノ酸配列を有するタンパク質およびそれらの保存的バリアントを包含するものとする。それら保存的バリアントは、当該生物種において見出されてもよく、見出されなくてもよい。例えば、「哺乳類のOR5K1タンパク質」という用語は、哺乳類において見出されるOR5K1タンパク質のアミノ酸配列を有するタンパク質およびそれらの保存的バリアントを包含するものとする。また、例えば、「哺乳類のキメラOR5K1タンパク質」という用語は、哺乳類において見出されるOR5K1タンパク質のアミノ酸配列のキメラ配列を有するタンパク質およびそれらの保存的バリアントを包含するものとする。言い換えると、「哺乳類のキメラOR5K1タンパク質」を構成するOR5K1タンパク質は、哺乳類において見出されるOR5K1タンパク質そのものに限られず、それらの保存的バリアントであってもよい。
「元の機能が維持されている」とは、遺伝子またはタンパク質のバリアントが、元の遺伝子またはタンパク質の機能(活性や性質)に対応する機能(活性や性質)を有することをいう。遺伝子についての「元の機能が維持されている」とは、遺伝子のバリアントが、元の機能が維持されたタンパク質をコードすることをいう。すなわち、OR5K1遺伝子についての「元の機能が維持されている」とは、遺伝子のバリアントがロースト様な香気に対する応答性を有するタンパク質をコードすることをいう。また、OR5K1タンパク質についての「元の機能が維持されている」とは、タンパク質のバリアントがロースト様な香気に対する応答性を有することをいう。
タンパク質がロースト様な香気に対する応答性を有することは、例えば、当該タンパク質をロースト様香料素材と接触させた際の当該タンパク質の応答を測定することにより、確認できる。ロースト様香料素材としては、既知のものを用いてもよいし、本発明の方法によりスクリーニングされたものを用いてもよい。ロースト様香料素材としては、例えば、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−3,6−ジメチルピラジン、4−メチルチアゾール、2,4−ジメチルチアゾール、またはそれらの組み合わせを用いてもよい。すなわち、タンパク質が2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2−エチル−3,6−ジメチルピラジン、4−メチルチアゾール、2,4−ジメチルチアゾール、またはそれらの組み合わせ、例えばそれら全て、に応答した場合に、当該タンパク質がロースト様な香気に対する応答性を有すると判断できる。
以下、保存的バリアントについて例示する。
OR5K1遺伝子のホモログまたはOR5K1タンパク質のホモログは、例えば、上記例示したOR5K1遺伝子の塩基配列または上記例示したOR5K1タンパク質のアミノ酸配列を問い合わせ配列として用いたBLAST検索やFASTA検索によって公開データベースから容易に取得することができる。また、OR5K1遺伝子のホモログは、例えば、各種生物の染色体を鋳型にして、これら公知のOR5K1遺伝子の塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより取得することができる。
OR5K1遺伝子は、元の機能が維持されている限り、上記アミノ酸配列(例えば表1のEnsembl Translation IDで登録されているアミノ酸配列またはそれらのキメラ配列)において、1若しくは数個の位置での1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。例えば、コードされるタンパク質は、そのN末端および/またはC末端が、延長または短縮されていてもよい。なお上記「1又は数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、具体的には、例えば、1〜50個、1〜40個、1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個を意味する。
上記の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、および/または付加は、タンパク質の機能が正常に維持される保存的変異である。保存的変異の代表的なものは、保存的置換である。保存的置換とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、または逆位等には、遺伝子が由来する生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。
また、OR5K1遺伝子は、元の機能が維持されている限り、上記アミノ酸配列全体に対して、例えば、50%以上、65%以上、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。尚、本明細書において、「相同性」(homology)は、「同一性」(identity)を意味する。
また、OR5K1遺伝子は、元の機能が維持されている限り、上記塩基配列(例えば表1のEnsembl Translation IDで登録されているアミノ酸配列をコードする塩基配列またはそれらのキメラ配列)から調製され得るプローブ、例えば上記塩基配列の全体または一部に対する相補配列、とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子、例えばDNA、であってもよい。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば、50%以上、65%以上、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、好ましくは60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、より好ましくは68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度および温度で、1回、好ましくは2〜3回洗浄する条件を挙げることができる。
上述の通り、上記ハイブリダイゼーションに用いるプローブは、遺伝子の相補配列の一部であってもよい。そのようなプローブは、公知の遺伝子配列に基づいて作製したオリゴ
ヌクレオチドをプライマーとし、上述の遺伝子を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製することができる。例えば、プローブとしては、300 bp程度の長さのDNA断片を用いることができる。プローブとして300 bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には、ハイブリダイゼーションの洗いの条件としては、50℃、2×SSC、0.1% SDSが挙げられる。
また、宿主によってコドンの縮重性が異なるので、OR5K1遺伝子は、任意のコドンをそれと等価のコドンに置換したものであってもよい。すなわち、OR5K1遺伝子は、例えば、遺伝コードの縮重による上記例示したOR5K1遺伝子のバリアントであってもよい。例えば、OR5K1遺伝子は、使用する宿主のコドン使用頻度に応じて最適なコドンを有するように改変されてよい。
なお、本発明において、「遺伝子」という用語は、目的のタンパク質をコードする限り、DNAに限られず、任意のポリヌクレオチドを包含してよい。すなわち、「OR5K1遺伝子」とは、OR5K1タンパク質をコードする任意のポリヌクレオチドを意味してよい。OR5K1遺伝子は、DNAであってもよく、RNAであってもよく、その組み合わせであってもよい。OR5K1遺伝子は、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。OR5K1遺伝子は、一本鎖DNAであってもよく、一本鎖RNAであってもよい。OR5K1遺伝子は、二本鎖DNAであってもよく、二本鎖RNAであってもよく、DNA鎖とRNA鎖からなるハイブリッド鎖であってもよい。OR5K1遺伝子は、単一のポリヌクレオチド鎖中に、DNA残基とRNA残基の両方を含んでいてもよい。OR5K1遺伝子がRNAを含む場合、上記例示した塩基配列等のDNAに関する記載は、RNAに合わせて適宜読み替えてよい。OR5K1遺伝子は、イントロンを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。OR5K1遺伝子の態様は、その利用態様等の諸条件に応じて適宜選択できる。
2つの配列間の配列同一性のパーセンテージは、例えば、数学的アルゴリズムを用いて決定できる。このような数学的アルゴリズムの限定されない例としては、Myers and Miller (1988) CABIOS 4:11-17のアルゴリズム、Smith et al (1981) Adv. Appl. Math. 2:482の局所ホモロジーアルゴリズム、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443-453のホモロジーアライメントアルゴリズム、Pearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85:2444-2448の類似性を検索する方法、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877に記載されているような、改良された、Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264のアルゴリズムが挙げられる。
これらの数学的アルゴリズムに基づくプログラムを利用して、配列同一性を決定するための配列比較(アラインメント)を行うことができる。プログラムは、適宜、コンピュータにより実行することができる。このようなプログラムとしては、特に限定されないが、PC/GeneプログラムのCLUSTAL(Intelligenetics, Mountain View, Calif.から入手可能)、ALIGNプログラム(Version 2.0)、並びにWisconsin Genetics Software Package, Version 8(Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Drive, Madison, Wis., USAから入手可能)のGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、及びTFASTAが挙げられる。これらのプログラムを用いたアライメントは、例えば、初期パラメーターを用いて行うことができる。CLUSTALプログラムについては、Higgins et al. (1988) Gene 73:237-244、Higgins et al. (1989) CABIOS 5:151-153、Corpet et al. (1988) Nucleic Acids Res. 16:10881-90、Huang et al. (1992) CABIOS 8:155-65、及びPearson et al. (1994) Meth. Mol. Biol. 24:307-331によく記載されている。
対象のタンパク質をコードするヌクレオチド配列と相同性があるヌクレオチド配列を得るために、具体的には、例えば、BLASTヌクレオチド検索を、BLASTNプログラム、スコア=100、ワード長=12にて行うことができる。対象のタンパク質と相同性があるアミノ酸配列を得るために、具体的には、例えば、BLASTタンパク質検索を、BLASTXプログラム、
スコア=50、ワード長=3にて行うことができる。BLASTヌクレオチド検索やBLASTタンパク質検索については、http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。また、比較を目的としてギャップを加えたアライメントを得るために、Gapped BLAST(BLAST 2.0)を利用できる。また、PSI-BLAST(BLAST 2.0)を、配列間の離間した関係を検出する反復検索を行うのに利用できる。Gapped BLASTおよびPSI-BLASTについては、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389を参照されたい。BLAST、Gapped BLAST、またはPSI-BLASTを利用する場合、例えば、各プログラム(例えば、ヌクレオチド配列に対してBLASTN、アミノ酸配列に対してBLASTX)の初期パラメーターが用いられ得る。アライメントは、手動にて行われてもよい。
2つの配列間の配列同一性は、2つの配列を最大一致となるように整列したときに2つの配列間で一致する残基の比率として算出される。
また、OR5K1タンパク質は、OR5K1タンパク質の保存配列(すなわち、2種またはそれ以上のOR5K1タンパク質のアミノ酸配列の保存配列)の一部または全部を有していてもよい。OR5K1タンパク質は、例えば、上記例示したOR5K1タンパク質の保存配列(具体的には、上記例示したOR5K1タンパク質から選択される2種またはそれ以上のOR5K1タンパク質のアミノ酸配列の保存配列)の一部または全部を有していてもよい。OR5K1タンパク質は、具体的には、例えば、哺乳類のキメラOR5K1タンパク質の保存配列(具体的には、哺乳類のOR5K1タンパク質から選択される2種またはそれ以上のOR5K1タンパク質のアミノ酸配列の保存配列)の一部または全部を有していてもよい。また、OR5K1タンパク質は、例えば、表1のEnsembl Translation IDで登録されているアミノ酸配列(計91個)のアラインメントにおいて、10個以上、20個以上、または30個以上のアミノ酸配列において保存されているアミノ酸配列の一部または全部を有していてもよい。保存配列は対象のアミノ酸配列のアラインメントにより決定できる。
また、OR5K1タンパク質は、上述したようなOR5K1タンパク質のアミノ酸配列に加えて、その他のアミノ酸配列を含んでいてもよい。すなわち、OR5K1タンパク質は、上述したようなOR5K1タンパク質のアミノ酸配列とその他のアミノ酸配列との融合タンパク質であってもよい。その他のアミノ酸配列は、OR5K1タンパク質がロースト様な香気に対する応答性を損なわない限り、特に制限されない。その他のアミノ酸配列としては、例えば、HisタグやV5エピトープタグ等のタグ配列が挙げられる。その他のアミノ酸配列は、例えば、OR5K1タンパク質のN末端、若しくはC末端、又はその両方に連結されていてよい。
OR5K1タンパク質は、ロースト様香料素材のスクリーニングに利用可能な任意の形態で使用することができる。すなわち、具体的には、OR5K1タンパク質は、試験物質と接触でき、且つロースト様な香気に対する応答性を失わない限り、任意の形態で使用することができる。OR5K1タンパク質の使用形態は、本発明の方法の実施態様等の諸条件に応じて適宜設定できる。
OR5K1タンパク質は、例えば、精製物や粗精製物等の所望の程度に単離された形態で使用されてもよく、素材に含有された形態で使用されてもよい。OR5K1タンパク質は、具体的には、例えば、構造物に担持された形態で使用されてもよい。構造物としては、例えば、細胞、細胞膜、人工脂質二重膜小胞、人工脂質二重膜が挙げられる。構造物としては、特に、細胞が挙げられる。言い換えると、OR5K1タンパク質は、例えば、OR5K1タンパク質を有する細胞、OR5K1タンパク質を有する細胞膜、OR5K1タンパク質を有する人工脂質二重膜小胞、またはOR5K1タンパク質を有する人工脂質二重膜等のOR5K1タンパク質を有する(担持する)構造物の形態で使用することができる。これらOR5K1タンパク質を有する構造物も、例えば、所望の程度に単離された形態で使用されてもよく、素材に含有された形態で使用されてもよい。また、OR5K1タンパク質は、器具の一部を構成していてもよい。す
なわち、OR5K1タンパク質は、例えば、OR5K1タンパク質を備える器具の形態で使用することもできる。OR5K1タンパク質を備える器具としては、例えば、OR5K1タンパク質が固定化された器具や、OR5K1タンパク質を有する構造物(脂質二重膜等)を備える器具が挙げられる。脂質二重膜を備える器具としては、例えば、脂質二重膜を配列したチップが挙げられる(WO2005/000558;Watanabe R. et al., Arrayed lipid bilayer chambers allow single-molecule analysis of membrane transporter activity. Nat Commun. 2014 Jul 24;5:4519.;Kamiya K. et al., 人工細胞膜作製とシングルイオンチャネル計測, Electrochemistry, 83, 1096-1100 (2015))。これらの形態のOR5K1タンパク質は、いずれも、本発明の方法で使用されるOR5K1タンパク質の範囲に含まれる。
OR5K1タンパク質は、例えば、OR5K1遺伝子を発現させることにより製造できる。OR5K1遺伝子の発現は、例えば、細胞を用いて実施してもよいし、無細胞タンパク質合成系を用いて実施してもよい。細胞を用いたOR5K1遺伝子の発現については、後述するOR5K1タンパク質を有する細胞の説明を参照できる。発現したOR5K1タンパク質は、適宜、上述したような形態で取得し、本発明の方法に利用できる。
OR5K1タンパク質を有する細胞を「本発明の細胞」ともいう。OR5K1タンパク質は、例えば、細胞膜に局在して機能し得る。よって、本発明の細胞は、OR5K1タンパク質を、例えば、細胞膜に有していてよい。
OR5K1タンパク質は、OR5K1遺伝子から発現する。よって、本発明の細胞は、OR5K1遺伝子を有する。本発明の細胞は、具体的には、OR5K1遺伝子を発現可能に有する。なお、本発明の細胞は、OR5K1タンパク質を発現するまでOR5K1遺伝子を有していれば足りる。すなわち、本発明の細胞は、OR5K1タンパク質の発現後には、OR5K1遺伝子を有していてもよく、いなくてもよい。また、本発明の細胞は、言い換えると、OR5K1遺伝子を発現した細胞であり、また、OR5K1タンパク質を発現した細胞である。なお、「OR5K1遺伝子の発現」と「OR5K1タンパク質の発現」とは同義に用いられ得る。
本発明の細胞は、1コピーのOR5K1遺伝子を有していてもよく、2コピーまたはそれ以上のOR5K1遺伝子を有していてもよい。また、本発明の細胞は、1種のOR5K1遺伝子を有していてもよく、2種またはそれ以上のOR5K1遺伝子を有していてもよい。また、本発明の細胞は、1種のOR5K1タンパク質を有していてもよく、2種またはそれ以上のOR5K1タンパク質を有していてもよい。
本発明の細胞は、本来的にOR5K1遺伝子を有するものであってもよく、OR5K1遺伝子を有するように改変されたものであってもよい。
本来的にOR5K1遺伝子を有する細胞としては、上記のようなOR5K1遺伝子が由来する生物の細胞、例えば、ヒト等の哺乳類の嗅細胞、が挙げられる。本来的にOR5K1遺伝子を有する細胞は、例えば、当該細胞を含む生物体や組織から取得することができる。
OR5K1遺伝子を有するように改変された細胞としては、OR5K1遺伝子が導入された細胞が挙げられる。
なお、本発明の細胞およびそれを取得するために用いられる細胞(例えば、OR5K1遺伝子が導入される又は導入された細胞)を総称して「宿主細胞」ともいう。
宿主細胞は、機能するOR5K1タンパク質を発現でき、以てロースト様香料素材のスクリーニングに利用可能なものであれば特に制限されない。宿主細胞としては、例えば、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、および動物細胞が挙げられる。好ましい宿主細胞
としては、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、および動物細胞等の真核細胞が挙げられる。より好ましい宿主細胞としては、動物細胞が挙げられる。動物としては、例えば、哺乳類、鳥類、両生類が挙げられる。哺乳類としては、例えば、げっ歯類や霊長類が挙げられる。げっ歯類としては、例えば、チャイニーズハムスター、ハムスター、マウス、ラット、モルモットが挙げられる。霊長類としては、例えば、ヒト、サル、チンパンジーが挙げられる。鳥類としては、例えば、ニワトリが挙げられる。両生類としては、例えば、アフリカツメガエルが挙げられる。また、宿主細胞が由来する組織または細胞は特に制限されない。宿主細胞が由来する組織または細胞としては、例えば、卵巣、腎臓、副腎、舌上皮、嗅上皮、松果体、甲状腺、メラノサイトが挙げられる。チャイニーズハムスターの細胞としては、例えば、チャイニーズハムスター卵巣由来細胞株(CHO)が挙げられる。CHOとして、具体的には、例えば、CHO-DG44やCHO-K1が挙げられる。ヒトの細胞としては、例えば、ヒト胎児腎細胞由来細胞株(HEK)が挙げられる。HEKとして、具体的には、例えば、HEK293やHEK293Tが挙げられる。サルの細胞としては、例えば、アフリカミドリザル腎細胞由来細胞株(COS)が挙げられる。COSとして、具体的には、例えば、COS-1が挙げられる。アフリカツメガエルの細胞としては、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞が挙げられる。昆虫細胞としては、例えば、Sf9、Sf21、SF+等のSpodoptera frugiperda由来細胞や、High-Five等のTrichoplusia ni由来細胞が挙げられる。宿主細胞は、個々の独立した細胞(例えば遊離の細胞)であってもよいし、組織等の集合体を形成していてもよい。
OR5K1遺伝子は、OR5K1遺伝子を有する生物からのクローニングにより取得できる。クローニングには、同遺伝子を含むゲノムDNAやcDNA等の核酸を利用できる。また、OR5K1遺伝子は、化学合成によっても取得できる(Gene, 60(1), 115-127 (1987))。
取得したOR5K1遺伝子は、そのまま、あるいは適宜改変して、利用することができる。すなわち、OR5K1遺伝子を改変することにより、そのバリアントを取得することができる。遺伝子の改変は公知の手法により行うことができる。例えば、部位特異的変異法により、DNAの目的部位に目的の変異を導入することができる。すなわち、例えば、部位特異的変異法により、コードされるタンパク質が特定の部位においてアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むように、遺伝子のコード領域を改変することができる。部位特異的変異法としては、PCRを用いる方法(Higuchi, R., 61, in PCR technology,
Erlich, H. A. Eds., Stockton press (1989);Carter, P., Meth. in Enzymol., 154, 382 (1987))や、ファージを用いる方法(Kramer,W. and Frits, H. J., Meth. in Enzymol., 154, 350 (1987);Kunkel, T. A. et al., Meth. in Enzymol., 154, 367 (1987))が挙げられる。また、OR5K1遺伝子のバリアントを化学合成によって直接取得してもよい。
OR5K1遺伝子を宿主細胞に導入する形態は特に制限されない。OR5K1遺伝子は、発現可能に宿主細胞に保持されていればよい。具体的には、例えば、OR5K1遺伝子をDNA等の転写を要する形態で導入する場合、宿主細胞において、OR5K1遺伝子は、当該宿主細胞で機能するプロモーターの制御下で発現可能に保持されていればよい。宿主細胞において、OR5K1遺伝子は、染色体外に存在していてもよく、染色体上に導入されていてもよい。2またはそれ以上の遺伝子を導入する場合、各遺伝子が、発現可能に宿主細胞に保持されていればよい。
OR5K1遺伝子を発現させるためのプロモーターは、宿主細胞において機能するものであれば特に制限されない。「宿主細胞において機能するプロモーター」とは、宿主細胞においてプロモーター活性を有するプロモーターをいう。プロモーターは、宿主細胞由来のプロモーターであってもよく、異種由来のプロモーターであってもよい。プロモーターは、OR5K1遺伝子の固有のプロモーターであってもよく、他の遺伝子のプロモーターであってもよい。プロモーターは、OR5K1遺伝子の固有のプロモーターよりも強力なプロモーター
であってもよい。例えば、動物細胞において機能するプロモーターとしては、SV40プロモーター、EF1aプロモーター、RSVプロモーター、CMVプロモーター、SRalphaプロモーターが挙げられる。また、プロモーターとしては、各種レポーター遺伝子を用いることにより、在来のプロモーターの高活性型のものを取得し利用してもよい。プロモーターの強度の評価法および強力なプロモーターの例は、Goldsteinらの論文(Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu. Rev., 1, 105-128 (1995))等に記載されている。
OR5K1遺伝子は、例えば、同遺伝子を含むベクターを用いて宿主細胞に導入することができる。OR5K1遺伝子を含むベクターを、「OR5K1遺伝子の発現ベクター」ともいう。OR5K1遺伝子の発現ベクターは、例えば、OR5K1遺伝子を含むDNA断片をベクターと連結することにより、構築することができる。OR5K1遺伝子の発現ベクターを宿主細胞に導入することにより、同遺伝子を宿主細胞に導入することができる。ベクターは、薬剤耐性遺伝子などのマーカーを備えていてもよい。また、ベクターは、挿入された遺伝子を発現するためのプロモーター等の発現調節配列を備えていてもよい。ベクターは、宿主細胞の種類やOR5K1遺伝子の導入形態等の諸条件に応じて適宜選択できる。例えば、動物細胞への遺伝子導入に用いることができるベクターとしては、プラスミドベクターやウイルスベクターが挙げられる。ウイルスベクターとしては、例えば、レトロウイルスベクターやアデノウイルスベクターが挙げられる。プラスミドベクターとしては、例えば、pcDNAシリーズベクター(pcDNA3.1等;Thermo Fisher Scientific)、pBApo-CMVシリーズベクター(タカラバイオ)、pCI-neo(Promega)が挙げられる。なお、ベクターの種類や構成によっては、ベクターは、宿主細胞の染色体に組み込まれ得るし、宿主細胞の染色体外で自律複製し得るし、あるいは宿主細胞の染色体外に一時的に保持され得る。例えば、SV40複製起点等のウイルスの複製起点を有するベクターは、動物細胞の染色体外で自律複製し得る。具体的には、例えば、pcDNAシリーズベクターはSV40複製起点を有しており、SV40のラージT抗原を発現する宿主細胞(COS-1やHEK293T等)において染色体外で自律複製し得る。
また、OR5K1遺伝子は、例えば、同遺伝子を含む核酸断片を宿主細胞に導入することによっても、宿主細胞に導入することができる。OR5K1遺伝子を含む核酸断片を、「OR5K1遺伝子断片」ともいう。そのような断片としては、直鎖状DNAや直鎖状RNAが挙げられる。直鎖状RNAとしては、例えば、mRNAやcRNAが挙げられる。
ベクターや核酸断片等の核酸を宿主細胞に導入する方法は、宿主細胞の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。例えば、動物細胞等の宿主細胞にベクターや核酸断片等の核酸を導入する方法としては、DEAEデキストラン法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法が挙げられる。また、ベクターがウイルスベクターである場合は、同ベクター(ウイルス)を宿主細胞に感染させることにより、宿主細胞に同ベクターを導入することができる。
また、本来的にOR5K1遺伝子を有する細胞を、OR5K1遺伝子の発現が増大するよう改変して用いてもよい。「遺伝子の発現が増大する」とは、同遺伝子の細胞当たりの発現量が非改変細胞と比較して増大することを意味する。ここでいう「非改変細胞」とは、標的の遺伝子の発現が増大するように改変されていない対照細胞を意味する。非改変細胞としては、野生型の細胞や改変元の細胞が挙げられる。OR5K1遺伝子の発現を増大させる手法としては、OR5K1遺伝子のコピー数を増加させることやOR5K1遺伝子の転写効率や翻訳効率を向上させることが挙げられる。OR5K1遺伝子のコピー数の増加は、OR5K1遺伝子を宿主細胞に導入することにより達成できる。OR5K1遺伝子の導入は、上述したように実施できる。なお、導入されるOR5K1遺伝子は、宿主細胞由来であってもよく、異種由来であってもよい。OR5K1遺伝子の転写効率や翻訳効率の向上は、プロモーター等の遺伝子の発現調節配列の改変により達成できる。例えば、OR5K1遺伝子の転写効率の向上は、OR5K1遺伝子のプロモーターをより強力なプロモーターに置換することにより達成できる。
本発明の細胞は、ロースト様香料素材のスクリーニングに利用できる限り、その他の任意の性質を有していてよい。そのような性質としては、例えば、試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答を測定するために有用な性質が挙げられる。
本発明の細胞は、例えば、OR5K1タンパク質以外の嗅覚受容体(「他の嗅覚受容体」ともいう)を有していてもよく、有していなくてもよい。本発明の細胞は、他の嗅覚受容体を有さないのが好ましい場合があり得る。他の嗅覚受容体を有さない細胞としては、他の嗅覚受容体をコードする遺伝子を有さない細胞や、他の嗅覚受容体をコードする遺伝子を有するが同遺伝子を発現していない細胞が挙げられる。本発明の細胞は、例えば、本来的に他の嗅覚受容体を有さないものであってもよく、他の嗅覚受容体を有さないように改変されたものであってもよい。他の嗅覚受容体を有さないように細胞を改変することは、例えば、他の嗅覚受容体をコードする遺伝子をノックアウトすることにより達成できる。
また、本発明の細胞は、例えば、シグナル伝達に関与するタンパク質を有していてよい。言い換えると、本発明の細胞は、シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子を有していてよい。シグナル伝達に関与するタンパク質としては、例えば、Gタンパク質(Golf等)、Gタンパク質活性化因子(Ric8B等)、アデニル酸シクラーゼ、カルシウムチャネルが挙げられる。Golfとしては、例えば、ヒトGolf(GenBank accession No. NP_892023;配列番号3)等の動物のGolfが挙げられる。Ric8Bとしては、例えば、ラットRic8B(GenBank accession No. NP_783188;配列番号4)等の動物のRic8Bが挙げられる。また、本発明の細胞は、例えば、測定するパラメーターに応じた構成要素を有していてよい。そのような構成要素としては、カルシウム指示薬等のプローブや、ルシフェラーゼ遺伝子等のレポーター遺伝子が挙げられる。カルシウム指示薬等のプローブを遺伝子から発現する場合、本発明の細胞は、当該プローブをコードする遺伝子を有していてよい。
また、本発明の細胞は、例えば、嗅覚受容体の膜発現を促進するタンパク質を有していてよい。言い換えると、本発明の細胞は、そのようなタンパク質をコードする遺伝子を有していてよい。そのようなタンパク質としては、例えば、RTP1sが挙げられる(Zhuang H and Matsunami H, J Biol Chem 282, 15284-15293 (2007))。RTP1sとしては、例えば、ヒトRTP1s(GenBank accession No. AAT70680)、マウスRTP1s(GenBank accession No. ABU23737)、コウモリRTP1s(GenBank accession No. XP_006765914の37位のメチオニン残基からC末までのアミノ酸配列;配列番号5)等の動物のRTP1sが挙げられる。マウスRTP1sは、ヒトRTP1sのアミノ酸配列と93.3%の同一性を有する。コウモリRTP1s(配列番号5)は、ヒトRTP1sのアミノ酸配列と90.7%の同一性を有する。
本発明の細胞は、本来的に上記例示したような性質を有するものであってもよく、上記例示したような性質を有するように改変されたものであってもよい。細胞の改変については、OR5K1遺伝子の導入等のOR5K1遺伝子に関する細胞の改変の記載を準用できる。上記例示したような遺伝子は、宿主細胞由来の遺伝子であってもよく、異種由来の遺伝子であってもよい。また、上記例示したような遺伝子は、OR5K1遺伝子と、同一の由来であってもよく、そうでなくてもよい。2つまたはそれ以上の遺伝子を導入する場合、各遺伝子が、発現可能に宿主細胞に保持されていればよい。それらの遺伝子は、例えば、全てが単一の発現ベクター上に保持されていてもよく、全てが染色体上に保持されていてもよい。また、それらの遺伝子は、例えば、複数の発現ベクター上に別々に保持されていてもよく、単一または複数の発現ベクター上と染色体上とに別々に保持されていてもよい。上記例示したような遺伝子およびそれにコードされるタンパク質は、それぞれ、例えば、公知の遺伝子およびタンパク質の塩基配列およびアミノ酸配列を有していてよい。また、上記例示したような遺伝子およびそれにコードされるタンパク質は、それぞれ、例えば、公知の遺伝子およびタンパク質の保存的バリアントであってもよい。遺伝子およびタンパク質の保存
的バリアントについては、OR5K1遺伝子およびOR5K1タンパク質の保存的バリアントに関する記載を準用できる。
OR5K1遺伝子を有する細胞は、そのまま、あるいは適宜OR5K1遺伝子を発現させて、OR5K1タンパク質を有する細胞(本発明の細胞)として使用することができる。すなわち、OR5K1遺伝子を有する細胞が既にOR5K1遺伝子を発現している場合、当該細胞は、そのまま、OR5K1タンパク質を有する細胞(本発明の細胞)として使用してもよい。また、OR5K1遺伝子を有する細胞にOR5K1遺伝子を発現させることにより、OR5K1タンパク質を有する細胞(本発明の細胞)が得られる。例えば、OR5K1遺伝子を有する細胞を培養することにより、OR5K1遺伝子を発現させることができ、以てOR5K1タンパク質を有する細胞(本発明の細胞)が得られる。具体的には、例えば、OR5K1遺伝子の導入(例えばトランスフェクション)後、宿主細胞の培養を継続し、OR5K1遺伝子を発現させることができる。培地組成や培養条件は、OR5K1遺伝子を有する細胞を維持する(例えば増殖させる)ことができ、OR5K1遺伝子が発現する限り、特に制限されない。培養の際に、OR5K1遺伝子を有する細胞は、増殖してもよく、しなくてもよい。培地組成や培養条件は、宿主細胞の種類等の諸条件に応じて適宜設定することができる。培養は、例えば、動物細胞等の細胞の培養に利用される通常の培地および通常の条件をそのまま、あるいは適宜改変して用いて実施することができる。例えば、動物細胞の培養に利用できる培地として、具体的には、Opti-MEM培地(Thermo Fisher Scientific)、DMEM培地、RPMI 1640培地、CD293培地が挙げられる。培養は、例えば、36℃〜38℃で、5%CO等のCO含有雰囲気下で静置培養により行うことができる。また、必要に応じて、選択薬剤や発現誘導剤を用いることができる。
OR5K1タンパク質が発現したことは、ロースト様香料素材に対するOR5K1タンパク質の応答を測定することにより確認できる。また、OR5K1タンパク質が発現したことは、OR5K1遺伝子から転写されるmRNAの量を測定することや、抗体を用いてウェスタンブロットによりOR5K1タンパク質を検出することでも確認できる。
本発明の細胞は、例えば、そのまま(培養物に含まれたまま)、あるいは培地から回収して、本発明の方法に使用することができる。また、培養物やそれから回収した細胞は、例えば、適宜、洗浄、濃縮、希釈等の処理をしてから、本発明の方法に使用してもよい。このように、本発明の細胞は、例えば、所望の程度に単離された形態で使用されてもよく、素材に含有された形態で使用されてもよい。OR5K1タンパク質を有する他の構造物についても同様である。
OR5K1タンパク質を有する細胞膜は、例えば、本発明の細胞から調製することができる。OR5K1タンパク質を有する細胞膜は、具体的には、例えば、本発明の細胞を破砕した際の膜画分として得られる。
また、OR5K1タンパク質を利用してOR5K1タンパク質を有する人工脂質二重膜小胞や人工脂質二重膜を製造することができる。人工脂質二重膜小胞や人工脂質二重膜は、例えば、公知の手段により製造できる。人工脂質二重膜小胞は、OR5K1タンパク質を、例えば、その膜に有していてよい。脂質二重膜小胞としては、リポソームが挙げられる。
<3>本発明の方法
まず、OR5K1タンパク質と試験物質を接触させることができる。
OR5K1タンパク質と試験物質との接触は、適当な液体中で実施することができる。OR5K1タンパク質と試験物質との接触が実施される液体を「反応液」ともいう。すなわち、例えば、適当な反応液中でOR5K1タンパク質と試験物質とを共存させることにより、OR5K1タンパク質と試験物質とを接触させることができる。具体的には、例えば、OR5K1タンパク質
(例えばOR5K1タンパク質を有する細胞等の上記例示したような形態のもの)および試験物質を適当な液体媒体中に溶解、懸濁、分散等して共存させることにより、OR5K1タンパク質と試験物質とを接触させることができる。液体媒体としては、水や水性緩衝液等の水性媒体が挙げられる。なお、2種またはそれ以上の成分をまとめてOR5K1タンパク質に接触させる場合、それらの成分とOR5K1タンパク質との接触は、同時に開始してもよく、そうでなくてもよい。すなわち、例えば、或る成分とOR5K1タンパク質との接触を開始した後、別の成分をさらに反応系に添加してもよい。反応条件(OR5K1タンパク質と試験物質との接触を実施する条件)は、ロースト様香料素材のスクリーニングが可能である限り、特に制限されない。反応条件は、OR5K1タンパク質の使用形態、試験物質の種類、OR5K1タンパク質の応答の測定手法等の諸条件に応じて適宜設定できる。反応条件としては、例えば、タンパク質とリガンド間の相互作用等の物質間の相互作用を測定する際の公知の反応条件をそのまま、あるいは適宜改変して利用してもよい。試験物質の濃度は、例えば、0.01 nM〜500 mM、10 nM〜100 mM、または1μM〜10 mMであってもよい。OR5K1タンパク質の濃度は、例えば、1 pg/mL〜10 mg/mLであってもよい。また、OR5K1タンパク質を有する細胞を用いる場合、OR5K1タンパク質を有する細胞の濃度は、例えば、10 cell/mL〜10,000,000 cell/mLであってもよい。OR5K1タンパク質と試験物質との接触は、適当な時点で終了してもよいし、しなくてもよい。OR5K1タンパク質と試験物質との接触は、通常、試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答の測定時まで継続されていてよい。OR5K1タンパク質と試験物質との接触の継続時間は、例えば、0.1秒以上、0.5秒以上、1秒以上、5秒以上、10秒以上、30秒以上、1分以上、5分以上、10分以上、30分以上、1時間以上、または2時間以上であってもよく、24時間以下、12時間以下、6時間以下、2時間以下、または1時間以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。OR5K1タンパク質と試験物質との接触の継続時間は、具体的には、例えば、1時間〜6時間であってもよい。反応系は、ロースト様香料素材のスクリーニングが可能である限り、OR5K1タンパク質(例えばOR5K1タンパク質を有する細胞等の上記例示したような形態のもの)および試験物質に加えて、その他の成分を含有していてよい。その他の成分は、OR5K1タンパク質の使用形態、試験物質の種類、OR5K1タンパク質の応答の測定手法等の諸条件に応じて適宜設定できる。その他の成分としては、培地成分やpH緩衝剤が挙げられる。
次いで、試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答を測定することができる。
試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答としては、OR5K1タンパク質と試験物質との結合や、試験物質によるOR5K1タンパク質の活性化が挙げられる。
試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答を測定するタイミングは、試験物質がロースト様香料素材であった場合に測定可能な程度に試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答が生じている時点であれば特に制限されない。試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答を測定するタイミングは、具体的には、OR5K1タンパク質と試験物質との接触が開始した時点から、試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答が消失する時点までの適当な時点であってよい。試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答を測定するタイミングは、例えば、試験物質に対するOR5K1タンパク質の最大の応答が得られる時点(例えば、試験物質のOR5K1タンパク質への結合量が最大となる時点や、試験物質によるOR5K1タンパク質の活性化の程度が最大となる時点)であってもよい。また、試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答を測定するタイミングは、例えば、OR5K1タンパク質と試験物質との接触が開始した時点の0.1秒後以降、0.5秒後以降、1秒後以降、5秒後以降、10秒後以降、30秒後以降、1分後以降、5分後以降、10分後以降、30分後以降、1時間後以降、または2時間後以降であってもよく、24時間後まで、12時間後まで、6時間後まで、2時間後まで、または1時間後までであってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答を測定するタイミングは、具体的に
は、例えば、OR5K1タンパク質と試験物質との接触が開始した時点の1時間後以降6時間後までであってもよい。
次いで、試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答に基づいて、当該試験物質がロースト様香料素材であるかを同定することができる。すなわち、試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答に基づいて、当該試験物質をロースト様香料素材として同定することができる。
具体的には、試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答が認められた場合に、当該試験物質をロースト様香料素材として同定することができる。すなわち、例えば、OR5K1タンパク質と試験物質との結合または試験物質によるOR5K1タンパク質の活性化が認められた場合に、当該試験物質をロースト様香料素材として同定することができる。
試験物質によるOR5K1タンパク質の活性化は、前記工程(A)を実施した際の(すなわちOR5K1タンパク質と試験物質を接触させる条件における)OR5K1タンパク質の活性化の程度(活性化の程度D1)を指標として決定することができる。すなわち、上記工程(B)は、例えば、(B1)活性化の程度D1を測定する工程であってよい。また、上記工程(C)は、例えば、(C1)活性化の程度D1に基づいて試験物質がロースト様香料素材であるかを同定する工程であってよい。
試験物質によるOR5K1タンパク質の活性化は、具体的には、前記工程(A)を実施した際の(すなわちOR5K1タンパク質と試験物質を接触させる条件における)OR5K1タンパク質の活性化の程度(活性化の程度D1)と対照条件におけるOR5K1タンパク質の活性化の程度(活性化の程度D2)とを比較することにより決定できる。すなわち、上記工程(C1)は、例えば、(C2)活性化の程度D1と活性化の程度D2との差に基づいて試験物質がロースト様香料素材であるかを同定する工程であってもよい。
「対照条件」とは、下記条件(C2−1)または(C2−2)をいう:
(C2−1)OR5K1タンパク質と試験物質を接触させない条件;
(C2−2)OR5K1タンパク質と試験物質を接触させる条件であって、当該試験物質の濃度が上記工程(A)における当該試験物質の濃度よりも低い濃度である条件。
言い換えると、試験物質によるOR5K1タンパク質の活性化は、例えば、試験物質の有無または濃度差によるOR5K1タンパク質の活性化の程度の差を指標として決定できる。
上記条件(C2−1)としては、OR5K1タンパク質と試験物質を接触させる前の条件が挙げられる。上記条件(C2−1)としては、OR5K1タンパク質と試験物質を接触させた後の条件であって、試験物質の一部または全部が反応系から除去され、且つOR5K1タンパク質の試験物質への応答の一部または全部が消失している条件も挙げられる。上記条件(C2−2)における試験物質の濃度は、活性化の程度D1と活性化の程度D2とで測定可能な程度に差が認められる濃度であれば特に制限されない。上記条件(C2−2)における試験物質の濃度は、例えば、上記工程(A)における試験物質の濃度の、90%以下、70%以下、50%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または1%以下の濃度であってよい。
本発明の方法は、活性化の程度D2を測定する工程を含んでいてもよい。活性化の程度D1と活性化の程度D2は、単一の反応系において時間差で測定されてもよいし、それぞれ別個の反応系において同時にあるいは時間差で測定されてもよい。活性化の程度D2は、活性化の程度D1よりも先に測定されてもよく、後に測定されてもよい。例えば、活性化の程度D2を測定した後、反応系に試験物質を添加して活性化の程度D1を測定しても
よい。
活性化の程度D1が高い場合に、試験物質によるOR5K1タンパク質の活性化が認められたと判断できる。具体的には、活性化の程度D1が活性化の程度D2よりも高い場合に、試験物質によるOR5K1タンパク質の活性化が認められたと判断できる。例えば、活性化の程度D2に対する活性化の程度D1の比率が3以上である場合に、試験物質によるOR5K1タンパク質の活性化が認められたと判断してもよい。活性化の程度D2に対する活性化の程度D1の比率として、具体的には、例えば、実施例に記載のnormalized response値が挙げられる。
試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答を測定する手法は特に制限されない。試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答を測定する手法は、OR5K1タンパク質の使用形態や測定する応答の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。すなわち、試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答は、例えば、OR5K1タンパク質と試験物質との結合または試験物質によるOR5K1タンパク質の活性化を測定できる適当な手法により測定することができる。
OR5K1タンパク質と試験物質の結合を測定する手法は特に制限されない。OR5K1タンパク質と試験物質の結合は、例えば、タンパク質とリガンド間の結合等の物質間の結合を測定する公知の手法により測定することができる。そのような手法としては、例えば、等温滴定型熱量測定(Isothermal Titration Calorimetry;ITC)、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance;SPR)、核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance;NMR)蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy;FCS)が挙げられる。
試験物質によるOR5K1タンパク質の活性化を測定する手法は特に制限されない。試験物質によるOR5K1タンパク質の活性化は、例えば、嗅覚受容体等の受容体の活動を測定する公知の手法により測定することができる。そのような手法としては、例えば、細胞内カルシウム量測定法や細胞内cAMP量測定法が挙げられる。すなわち、試験物質によるOR5K1タンパク質の活性化は、例えば、細胞内カルシウム量または細胞内cAMP量を指標として測定することができる。例えば、HEK293T細胞において、嗅覚受容体は、香気成分によって活性化されると、細胞内のGタンパク質(Golf等)と共役してアデニル酸シクラーゼを活性化し、以て細胞内cAMP量を増加させることが知られている(Kajiya K. et al., Molecular bases of odor discrimination: Reconstitution of olfactory receptors that recognize overlapping sets of odorants. Journal of Neuroscience, 2001, 21:6018-6025)。細胞内cAMP量を測定する手法としては、例えば、ELISAやレポーターアッセイが挙げられる。レポーターアッセイとしては、例えば、ルシフェラーゼアッセイが挙げられる。レポーターアッセイによれば、cAMP量に依存して発現するように構成されたレポーター遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子等)を利用して細胞内cAMP量を測定することができる。細胞内カルシウム量を測定する手法としては、例えば、カルシウムイメージングが挙げられる。カルシウムイメージングによれば、カルシウム指示薬を利用して細胞内カルシウム量を測定することができる。カルシウム指示薬としては、カルシウム感受性蛍光色素やカルシウム感受性蛍光タンパク質が挙げられる。カルシウム感受性蛍光色素としては、例えば、Fura 2、Fluo 4が挙げられる。また、カルシウム感受性蛍光タンパク質としては、例えば、Cameleon、TN-XL、GCaMP、G-GECOが挙げられる。なお、OR5K1タンパク質が人工脂質二重膜小胞等の内部空間を有する形態で使用され、且つ、当該人工脂質二重膜小胞等が細胞と同様にその内部空間のカルシウム量またはcAMP量が変動するように構成されている場合も、上記と同様の手法により試験物質によるOR5K1タンパク質の活性化を測定することができる。その場合、「細胞内カルシウム量」および「細胞内cAMP量」とは、それぞれ、内部空間におけるカルシウム量およびcAMP量と読み替えればよい。
なお、「或るパラメーターを測定し、試験物質に対するOR5K1タンパク質の応答を測定
するための指標として利用する」とは、当該応答を測定できる(すなわち、当該応答が認められるかを判定できる)限り、当該パラメーターを反映するデータを取得して利用することで足り、当該パラメーターの値自体を取得することは必要としない。すなわち、或るパラメーターを反映するデータを取得した場合、当該データから当該パラメーターの値自体を算出することは必要としない。具体的には、例えば、ルシフェラーゼアッセイにより細胞内cAMP量を測定し、試験物質によるOR5K1タンパク質の活性化を測定するための指標として利用する場合、当該活性化を測定できる(すなわち、当該活性化が認められるかを判定できる)限り、細胞内cAMP量を反映するデータ(例えば、蛍光強度)を取得して利用することで足り、当該データから細胞内cAMP量自体を算出することは必要としない。
このようにしてロースト様香料素材を同定することができる。本発明の方法は、さらに、同定されたロースト様香料素材の香気を評価する工程を含んでいてもよい。すなわち、同定されたロースト様香料素材の香気を評価することにより、当該ロースト様香料素材が実際にロースト様な香気を呈するかを確認することができる。同定されたロースト様香料素材の香気を評価する手法は特に制限されない。同定されたロースト様香料素材の香気は、例えば、物質の香気を評価する公知の手法により評価することができる。そのような手法としては、官能評価(官能試験による評価)が挙げられる。
従来の香料開発過程では、官能試験等によって膨大な数の物質の香気を1つ1つ確認して香料素材を選択していかなければならなかったため、香料開発までに多くの時間とコストが必要であった。しかし、本発明の方法によれば、OR5K1タンパク質を利用することにより、ロースト様香料素材を効率的にスクリーニングすることができる。よって、本発明の方法によれば、ロースト様香料の開発の効率を大きく向上させることができる。
スクリーニングされたロースト様香料素材の用途は、特に制限されない。ロースト様香料素材は、例えば、飲食品や香粧品に配合して使用することができる。ロースト様香料素材の配合により、飲食品や香粧品等の対象物にロースト様な香気を付与することができる。また、ロースト様香料素材は、例えば、新たなロースト様香料素材の開発のための原料として使用することもできる。
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
<1>ヒト嗅覚受容体OR5K1発現細胞の作製
<1−1>ヒト嗅覚受容体OR5K1の発現ベクターの作製
Flexi ORF Clone(Promega)から購入したヒト嗅覚受容体遺伝子OR5K1のクローン(FHC06233)を、EcoRIおよびXhoIサイトを利用して、Rho-pME18Sベクター(K. Kajiya et al., Journal of Neuroscience 15 August 2001, 21 (16) 6018-6025)のRhoタグ配列の下流にサブクローニングし、ヒト嗅覚受容体OR5K1の発現ベクターを得た。
<1−2>コウモリRTP1s発現ベクターの作製
コウモリのRTP1s遺伝子(GenBank accession No. XM_006765851の109位のAから3'末までの塩基配列)をユーロフィンジェノミクスの人工遺伝子合成サービスを用いて合成し、HindIIIおよびEcoRIサイトを利用してpcDNA3.1(+)ベクター(Thermo Fisher Scientific)にクローニングし、コウモリRTP1sの発現ベクターpcDNA3.1-microbat RTP1sを得た。
<1−3>ヒトGolf発現ベクターの作成
ヒトGolfタンパク質をコードする全長cDNAの配列は、NCBIのGenBankに登録されている(GenBank accession No. NM_182978)。ヒトmRNAを鋳型として、配列番号6と7のプライマーを用いて、RT-PCRを行った。増幅したDNA断片を、GENEART Seamless Cloning and
Assembly Kit(A13288、ライフテクノロジーズ社)を用いてプラスミドpcDNA3.1(+)(ライフテクノロジーズ社)のHindIII-EcoRIサイトにクローニングし、ヒトGolf発現ベクターpcDNA3.1-Golfを得た。
<1−4>ラットRic8B発現ベクターの作成
ラットRic8Bタンパク質をコードする全長cDNAの配列は、NCBIのGenBankに登録されている(GenBank accession No. NM_175598)。ラットmRNAを鋳型として、配列番号8と9のプライマーを用いて、RT-PCRを行った。増幅したDNA断片を、GENEART Seamless Cloning and Assembly Kit(A13288、ライフテクノロジーズ社)を用いてプラスミドpcDNA3.1(+)(ライフテクノロジーズ社)のHindIII-XbaIサイトにクローニングし、ラットRic8B発現ベクターpcDNA3.1-Ric8Bを得た。
<1−5>嗅覚受容体OR5K1発現細胞の作製
嗅覚受容体OR5K1を発現させたHEK293T細胞を以下の手順で作製した。発現ベクターをCD293培地(Invitrogen)に溶解して表2に示す組成の発現ベクター混合液を調製し、クリーンベンチ内で20分静置した後、96ウェルプレート(BD)の各ウェルに50μLずつ添加した。次いで、HEK293T細胞(1.2×105細胞/ml)を100μlずつ各ウェルに播種し、37℃、5%COを保持したインキュベータ内で24時間培養した。このようにして、表2に示す発現ベクターがトランスフェクションされ、それら発現ベクターにコードされる遺伝子を適宜発現する細胞の培養物を得た。対照として、嗅覚受容体OR5K1の発現ベクターに替えて同量の空ベクターRho-pME18Sを導入した細胞の培養物を得た。
<2>ルシフェラーゼアッセイ
HEK293T細胞に発現させた嗅覚受容体OR5K1は、Golfと共役してアデニル酸シクラーゼを活性化し、以て細胞内cAMP量を増加させる。本実施例において、試験物質に対する嗅覚受容体OR5K1の応答の測定には、細胞内cAMP量の増加をホタルルシフェラーゼ由来の発光値の増加としてモニターするルシフェラーゼレポータージーンアッセイを用いた。「ルシフェラーゼレポータージーンアッセイ」を「ルシフェラーゼアッセイ」ともいう。ホタルルシフェラーゼは、pGL4.29[luc2P/CRE/Hygro] Vectorに搭載されたホタルルシフェラーゼ遺伝子から、細胞内cAMP量依存的に発現する。併せて、ウミシイタケルシフェラーゼ由来の発光値を、各ウェルの遺伝子導入効率や細胞数の誤差を補正するための内部標準として用いた。ウミシイタケルシフェラーゼは、pGL4.74[hRluc/TK] Vectorに搭載されたウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子から、CMVプロモーターの制御下で構成的に発現する。
上記<1−5>で得られた培養物から培地を取り除き、表3〜6に示す試験物質溶液(30μM、100μM、300μM、1000μM)を15μl添加し、反応液とした。各試験物質溶液は、各試験物質をCD293培地(Invitrogen)に溶解して調製した。細胞をCO2インキュベータ内で37℃、4時間培養し、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を細胞内で充分に発現させた。細胞内のホタルルシフェラーゼ由来の発光値を測定し、「Luc値」とした。また、細胞内の
ウミシイタケルシフェラーゼ由来の発光値を測定し、「hRLuc値」とした。各ルシフェラーゼ由来の発光値は、Dual-GloTM luciferase assay system(promega)を用い、製品の操作マニュアルに従って測定した。試験物質刺激により誘導されたホタルルシフェラーゼ由来の発光値(Luc値)を、同一ウェルのウミシイタケルシフェラーゼ由来の発光値(hRluc値)で割り、「Luc/hRluc値」とした。試験物質刺激を行った細胞でのLuc/hRluc値を、試験物質刺激を行わない細胞でのLuc/hRluc値で割り、「fold increase」とした。さらに、嗅覚受容体OR5K1の発現ベクターを導入した細胞でのfold increaseを、空ベクターRho-pME18Sを導入した細胞でのfold increaseで割り、「normalized response」とした。normalized responseを試験物質に対する嗅覚受容体OR5K1の応答強度の指標とした。
<3>結果
結果を表3〜6に示す。嗅覚受容体OR5K1は、ロースト様な香気を呈する化合物で主に構成されるNo.1〜25の化合物に応答した。一方、嗅覚受容体OR5K1は、ロースト様な香気を呈さない化合物で主に構成されるNo.26〜29の化合物には応答しなかった。したがって、嗅覚受容体OR5K1がロースト様な香気に対して選択的な応答性を有する嗅覚受容体であることが確認された。
<配列表の説明>
配列番号:
1:ヒトのOR5K1遺伝子の塩基配列
2:ヒトのOR5K1タンパク質のアミノ酸配列
3:ヒトのGolfタンパク質のアミノ酸配列
4:ラットのRic8Bタンパク質のアミノ酸配列
5:コウモリのRTP1sタンパク質のアミノ酸配列
6〜9:プライマー

Claims (21)

  1. ロースト様香料素材をスクリーニングする方法であって、
    下記工程(A)〜(C)を含む、方法:
    (A)OR5K1タンパク質と試験物質を接触させる工程;
    (B)前記試験物質に対する前記OR5K1タンパク質の応答を測定する工程;および
    (C)前記応答に基づいて前記試験物質をロースト様香料素材として同定する工程。
  2. 前記応答が認められた場合に、前記試験物質をロースト様香料素材として同定する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記応答が、前記OR5K1タンパク質と前記試験物質との結合、または前記試験物質による前記OR5K1タンパク質の活性化である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記OR5K1タンパク質が、細胞、細胞膜、人工脂質二重膜小胞、または人工脂質二重膜に担持された形態で使用される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記OR5K1タンパク質が、細胞に担持された形態で使用される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記細胞が、動物細胞である、請求項4または5記載の方法。
  7. 前記工程(B)および(C)が、それぞれ、下記工程(B1)および(C1)により実施される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法:
    (B1)前記工程(A)を実施した際の前記OR5K1タンパク質の活性化の程度D1を測定する工程;
    (C1)前記活性化の程度D1に基づいて前記試験物質をロースト様香料素材として同定する工程。
  8. 前記工程(C1)が、下記工程(C2)により実施される、請求項7に記載の方法:
    (C2)前記活性化の程度D1と対照条件における前記OR5K1タンパク質の活性化の程度D2との差に基づいて前記試験物質をロースト様香料素材として同定する工程。
  9. 前記対照条件が、下記条件(C2−1)または(C2−2)である、請求項8に記載の方法:
    (C2−1)前記OR5K1タンパク質と前記試験物質を接触させない条件;
    (C2−2)前記OR5K1タンパク質と前記試験物質を接触させる条件であって、該試験物質の濃度が前記工程(A)における該試験物質の濃度よりも低い濃度である条件。
  10. さらに、前記活性化の程度D2を測定する工程を含む、請求項8または9に記載の方法。
  11. 前記活性化の程度D1が前記活性化の程度D2よりも高い場合に、前記試験物質をロースト様香料素材として同定する、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記活性化の程度D2に対する前記活性化の程度D1の比率が3以上である場合に、前記試験物質をロースト様香料素材として同定する、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記応答が、細胞内cAMP量を指標として測定される、請求項4〜12のいずれか1
    項に記載の方法。
  14. 細胞内cAMP量が、レポーターアッセイによって測定される、請求項13に記載の方法。
  15. さらに、前記工程(C)で同定されたロースト様香料素材の香気を評価する工程を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 前記評価が、官能評価によって実施される、請求項15に記載の方法。
  17. 前記試験物質が、単一の成分である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記試験物質が、2種またはそれ以上の成分の組み合わせである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記OR5K1タンパク質が、下記(A)または(B)に記載のタンパク質である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法:
    (A)哺乳類のOR5K1タンパク質;
    (B)2種またはそれ以上の哺乳類のOR5K1タンパク質のキメラタンパク質。
  20. 前記OR5K1タンパク質が、下記(a)、(b)、または(c)に記載のタンパク質である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法:
    (a)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、ロースト様な香気に対する応答性を有するタンパク質;
    (c)配列番号2に示すアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、ロースト様な香気に対する応答性を有するタンパク質。
  21. 前記ロースト様香料素材が、ナッツ香、コーヒー香、ココア香、ロースト香、トースト香、ブラウン香、および焦げ香から選択される1種またはそれ以上の香気を呈する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2021200780A1 (ja) 2020-03-30 2021-10-07 味の素株式会社 物質における香気特性または嗅覚受容体活性化特性の有無を予測する方法
WO2023013792A1 (ja) * 2021-08-06 2023-02-09 味の素株式会社 目的の香気特性を有する物質のスクリーニング方法
WO2023013791A1 (ja) 2021-08-06 2023-02-09 味の素株式会社 物質に対する嗅覚受容体の応答を測定する方法

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