最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の実施の形態に係る光トランシーバは、温度センサと、前記温度センサの検出温度を用いた演算処理を行なうことが可能な集積回路と、発光素子および受光素子を含む光モジュールと、前記発光素子を駆動する送信ドライバと、前記温度センサ、前記集積回路、前記光モジュールおよび前記送信ドライバを収容し、熱伝導性を有する筐体とを備え、前記発光素子による光信号の送信オン状態における前記温度センサの検出温度と前記光信号の送信オフ状態における前記温度センサの検出温度との差が2℃より大きく、前記送信ドライバの消費電力は、前記集積回路の消費電力および前記光モジュールの消費電力より大きい。
このように、光トランシーバは、熱伝導性を有する筐体内で送信ドライバの消費電力すなわち発熱が支配的であり、この発熱が集積回路および光モジュールの温度上昇を引き起こすような構成である。つまり、光トランシーバでは、大量の消費電力を送信ドライバに与えている状況であり、換言すれば、高い強度の光信号を出力したり、また、高速な光信号を出力したりすることができる。光トランシーバは、バイアス電圧の複数の目標値を用いた線形演算によってバイアス電圧を調整する下記(5)の光通信装置の使用に適した構成を有している。すなわち、光トランシーバおよび下記(5)の光通信装置は、組み合わせた使用に好適であり、同一のまたは対応する特別な技術的特徴を有している。したがって、本発明の実施の形態に係る光トランシーバでは、受光素子へのバイアス電圧を良好に調整することができる。
(2)好ましくは、前記送信ドライバは、前記温度センサと前記光モジュールとの間に配置されている。
このように、温度センサが送信ドライバの影響を受けやすく、かつ光モジュールの正確な温度を温度センサにおいて測定することが困難な配置の光トランシーバにおいて、受光素子へのバイアス電圧を良好に調整することができる。
(3)好ましくは、前記温度センサおよび前記光モジュール間の距離が前記送信ドライバおよび前記光モジュール間の距離以下である。
このように、温度センサと光モジュールとを近づけ、温度センサが光モジュールの温度をより正確に模擬できる構成において、送信ドライバによる光モジュールの影響を正確に把握するとともに、受光素子へのバイアス電圧を、受光素子の温度に応じて良好に調整することができる。
(4)本発明の実施の形態に係る光トランシーバは、第1の温度センサと、第2の温度センサと、発光素子および受光素子を含む光モジュールと、前記第2の温度センサが熱的に結合され、前記発光素子を駆動する送信ドライバと、前記第1の温度センサ、前記第2の温度センサ、前記光モジュールおよび前記送信ドライバを収納し、熱伝導性を有する筐体とを備え、前記送信ドライバの駆動率をaとし、前記第1の温度センサの検出温度をT1とし、前記第2の温度センサの検出温度をT2とし、前記光モジュールの受光部の温度をTrとし、前記光モジュールにおける受光部の制御のために許容される温度誤差をTerrとすると、前記発光素子による光信号の送信オン状態における前記筐体の周囲温度が所定温度である状態において、aが最小値であるときのT1およびT2から推定できるTrの値をTminとし、aが最大値であるときのT1およびT2から推定できるTrの値をTmaxとすると、aが前記最小値および前記最大値の中間値であるときにTminおよびTmaxをaで内分することによって求まるTrの推定値に対する、Trの実測値の誤差がTerr以下である。
このように、光トランシーバでは、熱伝導性を有する筐体が設けられ、発熱部分すなわち送信ドライバと、第1の温度センサおよび第2の温度センサとの熱結合状態が的確に実現されていることにより、光モジュールにおける受光部の温度Trの誤差がTerr以下となるような良好な熱結合状態を実現することができる。そして、正確に推定した受光部の温度Trに対応するバイアス電圧を受光素子に印加することにより、受光素子の温度に応じて増倍率を調整し、最適値を維持することができる。すなわち、光トランシーバは、バイアス電圧の複数の目標値を用いた線形演算によってバイアス電圧を調整する下記(5)の光通信装置の使用に適した構成を有している。すなわち、光トランシーバおよび下記(5)の光通信装置は、組み合わせた使用に好適であり、同一のまたは対応する特別な技術的特徴を有している。したがって、本発明の実施の形態に係る光トランシーバでは、受光素子へのバイアス電圧を良好に調整することができる。
(5)本発明の実施の形態に係る光通信装置は、発光素子と、前記発光素子を駆動する送信ドライバと、バイアス電圧による増倍率の変更が可能な受光素子と、温度センサと、前記送信ドライバの駆動率を算出する演算部と、前記受光素子への前記バイアス電圧を調整する調整部とを備え、前記調整部は、前記温度センサの検出温度および前記駆動率の算出結果に基づいて、複数の温度かつ複数の前記駆動率の組み合わせにおける、前記バイアス電圧の複数の目標値を用いた線形演算によって前記バイアス電圧を調整する。
このような構成により、光トランシーバが通信状態に応じて異なる動作、具体的には、たとえばバースト光信号のバーストのデューティ比が異なるような動作を行い、これに伴って消費電力が変動し、発熱量が変動する場合であっても、温度センサの検出温度の変動に応じた制御を行なうことができる。具体的には、たとえば、温度センサの検出温度およびデューティ比に応じてルックアップテーブルを用いたフィードフォワード制御を行なうことにより、受光素子へのバイアス電圧を、受光素子の温度に応じて良好に調整することができる。したがって、本発明の実施の形態に係る光通信装置では、受光素子へのバイアス電圧を良好に調整することができる。
(6)本発明の実施の形態に係る受光素子の制御方法は、発光素子と、前記発光素子を駆動する送信ドライバと、バイアス電圧による増倍率の変更が可能な受光素子と、温度センサとを備える光通信装置における受光素子の制御方法であって、前記送信ドライバの駆動率を算出するステップと、前記受光素子への前記バイアス電圧を調整するステップとを含み、前記バイアス電圧を調整するステップにおいて、前記温度センサの検出温度および前記駆動率の算出結果に基づいて、複数の温度かつ複数の前記駆動率の組み合わせにおける、前記バイアス電圧の複数の目標値を用いた線形演算によって前記バイアス電圧を調整する。
これにより、光トランシーバが通信状態に応じて異なる動作、具体的には、たとえばバースト光信号のバーストのデューティ比が異なるような動作を行い、これに伴って消費電力が変動し、発熱量が変動する場合であっても、温度センサの検出温度の変動に応じた制御を行なうことができる。具体的には、たとえば、温度センサの検出温度およびデューティ比に応じてルックアップテーブルを用いたフィードフォワード制御を行なうことにより、受光素子へのバイアス電圧を、受光素子の温度に応じて良好に調整することができる。したがって、本発明の実施の形態に係る受光素子の制御方法では、受光素子へのバイアス電圧を良好に調整することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムの構成を示す図である。
図1を参照して、PONシステム301は、たとえば10G−EPONであり、ONU202A,202B,202Cと、上位ネットワークに接続された局側装置201と、スプリッタSPとを備える。ONU202A,202B,202Cと局側装置201とは、スプリッタSPおよび光ファイバOPTFを介して接続され、互いに光信号を送受信する。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るPONシステムにおけるONUの構成を示す図である。
図2を参照して、ONU202は、光トランシーバ101と、PON受信処理部92と、バッファメモリ93と、UN送信処理部94と、UNI(User Network Interface)ポート95と、UN受信処理部96と、バッファメモリ97と、PON送信処理部98と、制御部99とを備える。
光トランシーバ101は、たとえばONU202に対して脱着可能である。光トランシーバ101は、局側装置201から送信される下り光信号を受信し、電気信号に変換して出力する。
PON受信処理部92は、光トランシーバ101から受けた電気信号からフレームを再構成するとともに、フレームの種別に応じて制御部99またはUN送信処理部94にフレームを振り分ける。具体的には、PON受信処理部92は、データフレームをバッファメモリ93経由でUN送信処理部94へ出力し、制御フレームを制御部99へ出力する。
制御部99は、各種制御情報を含む制御フレームを生成し、UN送信処理部94へ出力する。
UN送信処理部94は、PON受信処理部92から受けたデータフレームおよび制御部99から受けた制御フレームをUNIポート95経由で図示しないパーソナルコンピュータ等のユーザ端末へ送信する。
UN受信処理部96は、UNIポート95経由でユーザ端末から受信したデータフレームをバッファメモリ97経由でPON送信処理部98へ出力し、UNIポート95経由でユーザ端末から受信した制御フレームを制御部99へ出力する。
制御部99は、MPCPおよびOAM等、局側装置201およびONU202間のPON回線の制御および管理に関する宅側処理を行なう。すなわち、PON回線に接続されている局側装置201とMPCPメッセージおよびOAMメッセージをやりとりすることによって、アクセス制御等の各種制御を行なう。制御部99は、各種制御情報を含む制御フレームを生成し、PON送信処理部98へ出力する。また、制御部99は、ONU202における各ユニットの各種設定処理を行なう。
PON送信処理部98は、UN受信処理部96から受けたデータフレームおよび制御部99から受けた制御フレームを光トランシーバ101へ出力する。
光トランシーバ101は、PON送信処理部98から受けた電気信号であるデータフレームおよび制御フレームを光信号に変換し、局側装置201へ送信する。
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るONUにおける光トランシーバの構成を示す図である。
図3を参照して、光トランシーバ101は、バースト送信部151と、受信部152と、積分回路(演算部)84とを含む。バースト送信部151は、プリアンプ86と、出力バッファ回路(変調電流供給回路)87と、バイアス電流供給回路88と、発光回路89とを含む。発光回路89は、発光素子LDと、インダクタL1,L2とを含む。受信部152は、受光素子PDと、TIA(トランスインピーダンスアンプ)81と、LIA(制限アンプ)82と、バイアス制御部(調整部)83と、出力バッファ85とを含む。
バースト送信部151において、プリアンプ86は、UN受信処理部96からのデータフレームおよび制御部99からの制御フレームである送信データを受けて、当該送信データを増幅して出力する。たとえば、プリアンプ86は、当該送信データを、信号線INP,INNから差動信号として受ける。
出力バッファ回路87は、プリアンプ86から受けた送信データに基づいて、発光回路89に変調電流を供給する。この変調電流は、局側装置201へ送信すべきデータの論理値に応じた大きさの電流である。
発光回路89は、上り光信号を局側装置201へ送信する。発光回路89において、発光素子LDは、固定電圧たとえば電源電圧Vccの供給される電源ノードにインダクタL1を介して接続され、また、バイアス電流供給回路88にインダクタL2を介して接続されている。発光素子LDは、バイアス電流供給回路88から供給されたバイアス電流、および出力バッファ回路87から供給された変調電流に基づいて発光し、かつ発光強度を変更する。
バースト送信部151では、制御部99から受けたバースト制御信号に基づいて、プリアンプ86および出力バッファ回路87に電力を供給するか否かが切り替えられる。具体的には、バースト制御信号が活性化されている場合にプリアンプ86および出力バッファ回路87への電力供給がそれぞれ行なわれ、バースト制御信号が非活性化されている場合に当該電力供給が停止される。
バイアス電流供給回路88は、バースト光信号を送信するためのバースト制御信号が活性化されるとバイアス電流の供給を開始する。すなわち、バイアス電流供給回路88は、制御部99から受けたバースト制御信号に基づいて、発光回路89にバイアス電流を供給するか否かを切り替える。ここで、光トランシーバ101では、たとえば、発光素子LDへの変調電流の大きさがゼロの状態において、バイアス電流が発光素子LDに供給されると発光素子LDが発光するように、バイアス電流の値が設定される。
積分回路84は、バースト光信号のバーストのデューティ比を算出する。具体的には、積分回路84は、たとえば、制御部99から受けたバースト制御信号を積分し、積分値に応じたレベルを有する電圧Viをバイアス制御部83へ出力する。
受信部152において、受光素子PDは、たとえばアバランシェフォトダイオードである。受光素子PDは、局側装置201から受信した光信号を電気信号たとえば電流に変換して出力する。
TIA81は、受光素子PDから受けた電流を電圧に変換してLIA82へ出力する。
LIA82は、TIA81から受けた電圧のレベルを2値化し、受信データとして出力する。
出力バッファ85は、LIA82から受けた受信データを増幅してPON受信処理部92へ出力する。たとえば、出力バッファ85は、当該受信データを、差動信号として信号線OUTP,OUTNから出力する。
バイアス制御部83は、固定電圧たとえば電源電圧Vccの供給される電源ノードに接続され、受光素子PDにバイアス電圧を供給する。バイアス制御部83は、バイアス電圧の調整機能を有する。
また、たとえば、発光素子LDは、アセンブリされた発光モジュール(以下、TOSA:Transmitter Optical Sub−Assemblyとも称する。)に内蔵されている。また、たとえば、受光素子PDおよびTIA81は、アセンブリされた受光モジュール(以下、ROSA:Receiver Optical Sub−Assemblyとも称する。)に内蔵されている。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバにおけるバイアス制御部の構成を示す図である。
図4を参照して、バイアス制御部83は、CPU11と、抵抗14と、DC/DCコンバータ15とを含む。CPU11は、温度センサ21と、記憶部23とを含む。抵抗14の抵抗値はRaである。
受光素子PDは、DC/DCコンバータ15に接続されたカソードと、TIA81の入力端に接続されたアノードとを有する。抵抗14は、CPU11の出力端およびDC/DCコンバータ15の入力端に接続された第1端と、接地ノードに接続された第2端とを有する。DC/DCコンバータ15およびTIA81に電源電圧Vccが供給されている。
受光素子PDは、局側装置201から光ファイバOPTF経由で受信した光信号Pin1の強度に応じた電流IapdをTIA81へ出力する。また、受光素子PDは、逆バイアス電圧Vapdによる増倍率Mの変更が可能である。
CPU11は、受光素子PDへの逆バイアス電圧Vapdを調整する。CPU11は、後述するように温度センサ21の検出温度を用いた演算処理を行なうことが可能である。
DC/DCコンバータ15は、CPU11による逆バイアス電圧Vapdの調整に従って、受光素子PDに逆バイアス電圧Vapdを供給する。
より詳細には、CPU11は、電流Ictrlを生成して出力する。電流Ictrlは、抵抗14によって電圧Vctrlに変換され、DC/DCコンバータ15に供給される。
DC/DCコンバータ15は、CPU11から受けた電圧Vctrlに基づいて、受光素子PDに逆バイアス電圧Vapdを供給する。
具体的には、逆バイアス電圧Vapdは、DC/DCコンバータ15の回路構成で定まる係数K1,K2、および電圧Vctrlを用いて、以下の式(B1)で表される。
Vapd=K1×Vctrl+K2 ・・・(B1)
また、抵抗14の抵抗値をRaとすると、電圧Vctrlは、CPU11の出力電流Ictrlを用いて、以下の式(B2)で表される。
Vctrl=Ictrl×Ra ・・・(B2)
式(B1)および式(B2)より、受光素子PDへの逆バイアス電圧Vapdは、CPU11の出力電流Ictrlによって変更されることが分かる。
たとえば、CPU11は、内蔵するD/Aコンバータによって制御デジタル値から電流Ictrlへの変換を行なう。このように、CPU11の内蔵部品を利用することにより、光トランシーバ101における部品点数を削減することができる。この場合、D/Aコンバータに与える制御デジタル値と逆バイアス電圧Vapdとの関係は線形関係となる。
また、受光素子PDの増倍率をMとし、受光素子PDの受光感度をRS1[A/W]とし、受光素子PDの受光強度をPin1[W]とすると、受光素子PDの出力電流Iapd[A]は、以下の式(C1)で表される。
Iapd=M×RS1×Pin1 ・・・(C1)
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバにおける受光素子の電流増倍特性の一例を示す図である。図5において、横軸は逆バイアス電圧Vapdであり、縦軸は出力電流Iapdである。
図5を参照して、受光素子PDへの逆バイアス電圧Vapdを大きくするほど、出力電流Iapdは大きくなる。すなわち、増倍率Mは大きくなる。
より詳細には、受光素子PDの増倍率Mは、逆バイアス電圧Vapdが小さいとき、逆バイアス電圧Vapdをある一定の範囲で変化させてもアバランシェ増倍が発生せず、一定となる。このときの増倍率Mを1とする。
そして、逆バイアス電圧Vapdが、上記範囲に含まれるV1から上昇してV2になると、逆バイアス電圧VapdがV1のときと比べて出力電流Iapdは10倍となる。すなわち、逆バイアス電圧VapdがV2のとき、増倍率Mは10である。
また、受光素子PDの増倍率Mは強い温度特性を有し、図5に示すように、受光素子PDの温度が上昇すると出力電流Iapdが小さくなり、受光素子PDの温度が下降すると出力電流Iapdが大きくなる。すなわち、受光素子PDの温度が上昇すると、逆バイアス電圧Vapdに対する増倍率Mが小さくなり、受光素子PDの温度が下降すると、逆バイアス電圧Vapdに対する増倍率Mが大きくなる。
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバにおける受光素子への逆バイアス電圧および通信品質の関係の一例を示す図である。図6において、横軸は逆バイアス電圧Vapdであり、縦軸はビットエラーレートである。
図6を参照して、増倍率Mが10となるような逆バイアス電圧Vapdを設定した状態から、逆バイアス電圧Vapdを大きくして増倍率Mを大きくすると、受光素子PDの周波数帯域が低下し、また、ノイズが増大することにより、S/N(Signal to Noise Ratio)比が劣化し、ビットエラーレートが上昇する。
一方、増倍率Mが10となるような逆バイアス電圧Vapdを設定した状態から、逆バイアス電圧Vapdを小さくして増倍率Mを小さくすると、受光素子PDの受光感度が小さくなり、より強度の小さい光信号を受信することが困難となるため、S/N(Signal to Noise Ratio)比が劣化し、ビットエラーレートが上昇する。
このように、増倍率Mには最適値が存在し、たとえば、10前後が最適値である。また、図5で説明したように増倍率Mは温度特性を有することから、受光素子PDの温度に応じて増倍率Mを調整し、最適値を維持する必要がある。
再び図4を参照して、そこで、光トランシーバ101では、バイアス制御部83におけるCPU11は、増倍率Mが目標値となるように出力電流Ictrlを調整する。
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバにおける受光素子への逆バイアス電圧の調整方法の一例を示す図である。図7において、横軸は温度センサ21の検出温度であり、縦軸は逆バイアス電圧Vapdである。
たとえば、低温、常温および高温の3つの温度、具体的には0℃、28℃および74℃において、増倍率Mが最適値となるような逆バイアス電圧Vapdを実測する。ここでは、たとえば、発光素子LDによる光信号の送信オン状態、具体的にはバースト制御信号が活性化されて発光素子LDがバイアス電流および変調電流に基づいて発光している状態において測定を行なう。なお、光トランシーバ101は、バイアス電流が発光素子LDに供給されている状態において発光素子LDが発光しない構成であってもよい。この場合、光信号の送信オン状態および送信オフ状態は、それぞれ発光素子LDのオン状態およびオフ状態に相当する。
ここで、たとえばアバランシェフォトダイオードでは、一定の増倍率Mに対して、受光素子PDの温度と逆バイアス電圧Vapdとの関係が直線近似可能であることが、実験則から得られている。
これを利用して、測定温度の間を直線で補間することにより、図7に示すような直線の関係を示すルックアップテーブルを作成し、これを用いて逆バイアス電圧Vapdを制御する。
具体的には、温度センサ21の検出温度とCPU11に内蔵されたD/Aコンバータの制御デジタル値との対応関係をたとえば2℃ステップで示すルックアップテーブルを作成し、光トランシーバ101における記憶部23に保存する。
そして、CPU11は、温度センサ21による検出温度に対応する制御デジタル値をルックアップテーブルから取得してD/Aコンバータに与える。
これにより、受光素子PDの増倍率Mのフィードフォワード制御を行なうことが可能となる。
図8は、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバにおける各部品の配置の一例を概略的に示す図である。
図8を参照して、光トランシーバ101は、筐体Kと、子基板B1と、BOSA(Bidirectional Optical Sub−Assemblies)光モジュール13とを備える。
光トランシーバ101では、たとえば、図示しない親基板に、図2に示す各ユニットが実装されている。また、子基板B1は、コネクタ16を介して親基板に接続されている。
子基板B1には、集積回路であるCPU11と、集積回路であるTRX−IC(Integrated Circuit)12と、コネクタ16とが実装されている。
親基板および子基板B1間で送受信される主信号および制御信号等は、コネクタ16を介して伝送される。また、図8では、送信側の主信号ライン(TX)および受信側の主信号ライン(RX)が代表的に示されている。
TRX−IC12は、たとえば、プリアンプ86と、出力バッファ回路87と、バイアス電流供給回路88と、LIA82と、出力バッファ85とを含む。また、TRX−IC12は、たとえば温度センサ22を含む。
BOSA光モジュール13は、発光部であるTOSAおよび受光部であるROSAが一体化された光モジュールである。以下、BOSA光モジュール13におけるTOSA部分を単にTOSAとも称し、BOSA光モジュール13におけるROSA部分を単にROSAとも称する。
筐体Kは、親基板に実装されており、子基板B1およびBOSA光モジュール13を収容している。筐体Kは、細長形状を有する。TRX−IC12は、温度センサ21とBOSA光モジュール13との間に配置されている。より詳細には、筐体Kにおいて、コネクタ16、CPU11、TRX−IC12およびBOSA光モジュール13がこの順番に並んで配置されており、この配列方向が筐体Kの長手方向に沿っている。また、たとえば、CPU11およびTRX−IC12間の距離が、BOSA光モジュール13およびTRX−IC12間の距離より小さい。
筐体Kは、熱伝導性を有し、たとえば金属により形成されている。すなわち、筐体Kの周囲温度が、筐体Kに収容された各部材に均等に影響するように、各部材が熱伝導部材で覆われている。
ここで、TRX−IC12の消費電力は、CPU11およびBOSA光モジュール13の消費電力より大きい。より詳細には、筐体Kに収容された送信側の回路において、TRX−IC12における、発光素子LDを駆動する送信ドライバDVの消費電力が最も大きい。
このため、光信号の送信オン状態および送信オフ状態で筐体Kの内部温度が大きく変化する。
たとえば、筐体Kでは、CPU11の方がBOSA光モジュール13よりもTRX−IC12に近いため、CPU11における温度センサ21の検出温度の変化が、BOSA光モジュール13における受光素子PDの周囲温度の変化よりも大きくなる。
ここで、送信ドライバDVは、プリアンプ86、出力バッファ回路87およびバイアス電流供給回路88のうちの少なくともいずれか1つに相当する。温度センサ22は、送信ドライバDVに熱的に結合されている。
前述のような、光信号の送信オン状態における温度センサ21の検出温度と逆バイアス電圧Vapdとの対応関係を示すルックアップテーブルを用いる構成では、光信号の送信オフ状態すなわちバースト制御信号が非活性化された状態において送信ドライバDVの消費電力が小さくなり、筐体Kの内部温度も小さくなることから、当該ルックアップテーブルの前提とする温度関係が崩れてしまう。すなわち、温度に応じて逆バイアス電圧Vapdを良好に調整することが困難となる。
特に、バースト状の光信号を送信するONU202では、バーストのデューティ比すなわちバーストオンの比率によって当該ルックアップテーブルの関係が崩れることになる。
なお、BOSA光モジュール13に温度センサを搭載する方法も考えられるが、温度センサと子基板B1との接続用の端子をBOSA光モジュール13に新たに設ける必要があり、また、このような温度センサおよび端子を実装するとBOSA光モジュール13の小型化が困難となることから、通常は、子基板B1におけるCPU11等に内蔵された温度センサを使用する方が容易であり、望ましい。
本願発明者は、このような課題を発見し、当該課題の検証を行なった。以下、本願発明者による当該課題の検証内容を詳細に説明する。
本検証では、一例として、TOSAに放熱シートが設けられており、ROSA、CPU11およびTRX−IC12には放熱シートが設けられていない光トランシーバ101を使用した。
図9は、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバにおける筐体の温度とCPUにおける温度センサの検出温度との関係の測定結果を示す図である。図9において、横軸は筐体の温度であり、縦軸はCPU11における温度センサ21の検出温度である。グラフG1は、送信オン状態を示し、グラフG2は、送信オフ状態を示す。ここでは、筐体Kの温度は、TOSA付近の位置の温度である。
図9を参照して、温度センサ21は、筐体Kの温度を示すものとして使用される。より詳細には、温度センサ21の出力信号をA/Dコンバータによって変換したデジタル値を所定の変換式に代入し、温度センサ21の検出温度を算出する。この変換式における係数は、光信号の送信オン状態における低温時および高温時のA/Dコンバータのデジタル値を用いて算出される。
グラフG1およびG2より、送信オフ状態では、送信オン状態で調整された変換式が成立しなくなり、送信オン状態と比べて検出温度が低い方向に約10℃ずれていることが分かる。
図10は、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバにおける2つの温度センサの出力値の関係の測定結果を示す図である。図10において、横軸はCPU11における温度センサ21の出力デジタル値であり、縦軸はTRX−IC12における温度センサ22の出力デジタル値である。グラフG3は、送信オン状態を示し、グラフG4は、送信オフ状態を示す。
図10を参照して、送信オン状態および送信オフ状態のいずれにおいても、温度センサ21の出力値および温度センサ22の出力値には相関があることが分かる。また、図9と同様に、送信オン状態および送信オフ状態でずれがあることが分かる。
図11は、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバにおける環境温度とROSAの温度との関係の測定結果を示す図である。図11において、横軸は環境温度であり、縦軸はROSAの温度である。グラフG5は、送信オン状態を示し、グラフG6は、送信オフ状態を示す。
図11を参照して、グラフG5およびG6より、送信オフ状態では、送信オン状態と比べて測定温度が低い方向に約3℃〜4℃ずれていることが分かる。また、低温時と比べて高温時の方がずれが大きいことが分かる。
図12は、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバにおける環境温度とTOSAの温度との関係の測定結果を示す図である。図12において、横軸は環境温度であり、縦軸はTOSAの温度である。グラフG7は、送信オン状態を示し、グラフG8は、送信オフ状態を示す。
図12を参照して、グラフG7およびG8より、送信オフ状態では、送信オン状態と比べて測定温度が低い方向に約4℃〜6℃ずれていることが分かる。また、低温時と比べて高温時の方がずれが大きいことが分かる。
図13は、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバにおける環境温度とTRX−ICの表面温度との関係の測定結果を示す図である。図13において、横軸は環境温度であり、縦軸はTRX−IC12の表面温度である。グラフG9は、送信オン状態を示し、グラフG10は、送信オフ状態を示す。
図13を参照して、グラフG9およびG10より、送信オフ状態では、送信オン状態と比べて測定温度が低い方向に約14℃ずれていることが分かる。また、低温時から高温時にわたって、ずれがほぼ一定であることが分かる。
図14は、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバにおける環境温度とCPUの表面温度との関係の測定結果を示す図である。図14において、横軸は環境温度であり、縦軸はCPU11の表面温度である。グラフG11は、送信オン状態を示し、グラフG12は、送信オフ状態を示す。
図14を参照して、グラフG11およびG12より、送信オフ状態では、送信オン状態と比べて測定温度が低い方向に約10℃〜12℃ずれていることが分かる。また、低温時と比べて高温時の方がずれが大きいことが分かる。
図15は、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバにおける環境温度と筐体の温度との関係の測定結果を示す図である。図15において、横軸は環境温度であり、縦軸は筐体の温度である。グラフG13は、送信オン状態を示し、グラフG14は、送信オフ状態を示す。ここでは、筐体Kの温度は、TOSA付近の位置の温度である。
図15を参照して、グラフG11およびG12より、送信オフ状態では、送信オン状態と比べて測定温度が低い方向に約3℃〜4℃ずれていることが分かる。
図13〜図15より、送信オン状態および送信オフ状態間の温度のずれは、筐体Kの方がCPU11およびTRX−IC12と比べて小さいことが分かる。すなわち、TOSA自体の消費電力は比較的小さいことが分かる。
図13〜図15より、送信オン状態および送信オフ状態間の温度のずれは、TRX−IC12の表面が最も大きくなっている。これは、TRX−IC12の消費電力が、他の回路と比べて大きいことを示している。
図11および図14より、送信オン状態および送信オフ状態間の温度のずれは、ROSAでは小さいのに対して、CPU11の表面では大きくなっている。CPU11は、本来、送信オン状態および送信オフ状態で処理量は大きく変わらないので消費電力の差は小さいはずであり、また、TRX−IC12と比べて消費電力が小さい。
図9および図15でも同様の現象が見られる。すなわち、送信オン状態および送信オフ状態間の温度のずれが筐体Kでは小さいのに対して、筐体Kの温度を示すはずの温度センサ21の検出温度が大きくずれている。
すなわち、光トランシーバ101において、前述のようなルックアップテーブルを用いる構成では、当該ルックアップテーブルの前提とする温度関係が崩れてしまうことから、温度に応じて逆バイアス電圧Vapdを良好に調整することが困難であることが確認された。
また、図12〜図14より、送信オン状態および送信オフ状態間の温度のずれは、TOSAでは小さいのに対して、CPU11およびTRX−IC12の表面では大きくなっている。
これは、消費電力の差、および筐体K内における熱伝導の差等の影響と考えられる。より詳細には、CPU11における温度センサ21に直接的に伝わる熱は、送信ドライバDVからの熱がほとんどであり、筐体Kにおいて、送信ドライバDV以外の熱発生および熱伝導は全体として拡散し、また、環境温度が各部材に均等に影響すると考えられる。
図16は、本発明の第1の実施の形態に係る光信号の送信オン状態における環境温度の変化に対する各部位の温度推移の測定結果を示す図である。図16において、横軸は時間であり、縦軸は温度である。グラフG81は、TRX−IC12の温度を示し、グラフG82は、CPU11の表面温度を示し、グラフG83は、ROSAの温度を示し、グラフG84は、TOSAの温度を示し、グラフG85は、筐体Kの温度を示し、グラフG86は、温度センサ21の検出温度を示す。
図16を参照して、グラフG81〜G86より、環境温度の変化によって筐体Kの温度が変化しており、筐体Kにおける各部位の温度は、筐体Kの温度に追随して同様に変化していることが分かる。
図17は、本発明の第1の実施の形態に係る光信号の送信オフ状態における環境温度の変化に対する各部位の温度推移の測定結果を示す図である。図17において、横軸は時間であり、縦軸は温度である。グラフG91は、TRX−IC12の温度を示し、グラフG92は、CPU11の表面温度を示し、グラフG93は、ROSAの温度を示し、グラフG94は、TOSAの温度を示し、グラフG95は、筐体Kの温度を示し、グラフG96は、温度センサ21の検出温度を示す。
図17を参照して、図16と同様に、グラフG91〜G96より、環境温度の変化によって筐体Kの温度が変化しており、筐体Kにおける各部位の温度は、筐体Kの温度に追随して同様に変化していることが分かる。
また、図9に示す測定結果と同様に、送信オフ状態における温度センサ21の検出温度は、筐体Kの温度に対して大きくずれていることが分かる。
図16および図17より、図9〜図15から得られた検証結果は、温度の過渡特性においても同様に成り立つことが分かる。
以上のような結果から、本願発明者は、以下のような光トランシーバ101における逆バイアス電圧Vapdの最適な制御方法を考案した。
具体的には、光トランシーバ101では、図9〜図15に示すいずれの関係も、送信オン状態および送信オフ状態の両方において、低温から高温にわたって線形性が保たれていることに着目し、以下の(1)〜(4)に示す方法で逆バイアス電圧Vapdを制御する。
(1)まず、送信オン状態において、増倍率Mが最適値となる逆バイアス電圧Vapdを生成するためにCPU11におけるD/Aコンバータに与える制御デジタル値を複数の温度で記録し、温度と制御デジタル値との関係を直線近似する。
(2)次に、送信オフ状態において、増倍率Mが最適値となる逆バイアス電圧Vapdを生成するためにCPU11におけるD/Aコンバータに与える制御デジタル値を複数の温度で記録し、温度と制御デジタル値との関係を直線近似する。
(3)次に、バースト光信号のバーストのデューティ比を計算する。具体的には、積分回路84を用いてバースト制御信号を積分する。
(4)次に、デューティ比を変数とする線形演算によって制御デジタル値を決定する。
図18は、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバにおける逆バイアス電圧の制御に用いられるルックアップテーブルの一例を示す図である。
図18を参照して、ルックアップテーブルta1は、上記(1)において作成され、たとえば、温度センサ21の検出温度が0℃、28℃および74℃の状態における測定結果を用いて直線近似を行なった結果を示している。
具体的には、ルックアップテーブルta1では、測定温度の間を直線で補間することにより、−30℃〜94℃にわたって、2℃ステップで制御デジタル値x1〜x63が登録されている。
図19は、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバにおける逆バイアス電圧の制御に用いられるルックアップテーブルの一例を示す図である。
図19を参照して、ルックアップテーブルta2は、上記(2)において作成され、たとえば、温度センサ21の検出温度が0℃、28℃および74℃の状態における測定結果を用いて直線近似を行なった結果を示している。
具体的には、ルックアップテーブルta2では、測定温度の間を直線で補間することにより、−30℃〜94℃にわたって、2℃ステップで制御デジタル値y1〜y63が登録されている。
上記(4)において、たとえば、温度が30℃の環境下において、バースト光信号のバーストのデューティ比が10%である場合、制御デジタル値は、以下の式で表わされる。
制御デジタル値=y31+(x31−y31)×0.1
また、たとえば、温度が−2℃の環境下において、バースト光信号のバーストのデューティ比が80%である場合、制御デジタル値は、以下の式で表わされる。
制御デジタル値=y15+(x15−y15)×0.8
光トランシーバ101において、送信オン状態における温度センサ21の検出温度と送信オフ状態における温度センサ21の検出温度との差が2℃より大きい場合、すなわちルックアップテーブルta1およびta2の制御ステップ幅より大きい場合、上記のような逆バイアス電圧Vapdの制御方法が有用となる。また、たとえば図9に示す測定結果より、送信オン状態および送信オフ状態における温度センサ21の検出温度の差が8℃以上の場合、上記のような逆バイアス電圧Vapdの制御方法がより有用となり、好ましい。
再び図4を参照して、バイアス制御部83は、温度センサ21の検出温度および積分回路84によるデューティ比の算出結果に基づいて、複数の温度かつ複数のデューティ比の組み合わせにおける、逆バイアス電圧Vapdの複数の目標値を用いた線形演算によって逆バイアス電圧Vapdを調整する。
CPU11における記憶部23は、逆バイアス電圧Vapdの目標値と温度とのデューティ比ごとの対応関係を記憶する。バイアス制御部83は、当該対応関係において温度センサ21の検出温度に対応する複数の目標値、およびデューティ比の算出結果に基づいて逆バイアス電圧Vapdを調整する。
具体的には、たとえば、記憶部23は、上記のようなルックアップテーブルta1およびta2を記憶する。
CPU11は、ルックアップテーブルta1およびta2を参照し、積分回路84から受けた電圧Vi、および温度センサ21による検出温度に基づいて制御デジタル値を取得し、取得した制御デジタル値に対応する大きさの電流Ictrlを生成して出力する。
図20は、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバにおける受光素子の制御方法の手順を示すフローチャートである。
光トランシーバ101における受光素子PDの制御方法では、まず、光信号のバーストのデューティ比aを算出する。
次に、受光素子PDへの逆バイアス電圧Vapdを調整する。この際、温度センサ21の検出温度およびデューティ比aの算出結果に基づいて、複数の温度かつ複数のデューティ比aの組み合わせにおける、逆バイアス電圧Vapdの複数の目標値を用いた線形演算によって逆バイアス電圧Vapdを調整する。
具体的には、図20を参照して、まず、CPU11は、温度センサ21の検出温度T1を取得する(ステップS1)。
次に、CPU11は、積分回路84から受けた電圧Viに基づいて、バースト光信号のバーストのデューティ比aを取得する(ステップS2)。
次に、CPU11は、記憶部23におけるルックアップテーブルta1を読み出し、送信オン状態の検出温度T1における逆バイアス電圧Vapdの目標値に相当する制御デジタル値Aをルックアップテーブルta1から取得する(ステップS3)。
次に、CPU11は、記憶部23におけるルックアップテーブルta2を読み出し、送信オフ状態の検出温度T1における逆バイアス電圧Vapdの目標値に相当する制御デジタル値Bをルックアップテーブルta2から取得する(ステップS4)。
次に、CPU11は、デューティ比a、制御デジタル値Aおよび制御デジタル値Bを用いた線形演算によって逆バイアス電圧Vapdを調整する。具体的には、CPU11は、たとえば以下の式に従い、内蔵するD/Aコンバータの制御デジタル値を算出する(ステップS5)。
制御デジタル値=B+(A−B)×a
なお、図20に示す手順において、ステップS1およびS2の順番を入れ替えてもよい。また、ステップS2〜S4の一部または全部の順番を入れ替えてもよい。
以下、光トランシーバ101における温度の近似モデルについて詳細に説明する。まず、環境温度をTaとし、また、送信オン状態における、ROSAの温度をTrとし、CPU11の温度をTcとし、TRX−IC12の温度をTlとする。
図9〜図15に示す送信オン状態の測定結果を直線近似すると、Tr、TlおよびTcは、それぞれ以下の式で表される。
Tr=1.0157×Ta+9.5013
Tl=0.9906×Ta+22.413
Tc=1.0289×Ta+17.701
ここで、Tr=A×Tc+B×Tlと置き、Ta=−5,75をそれぞれ代入すると、以下の式(1)が導出できる。
Tr=2.4163×Tc−1.4844×Tl ・・・(1)
次に、送信オフ状態における、ROSAの温度をTrdとし、CPU11の温度をTcdとし、TRX−IC12の温度をTldとする。
図9〜図15に示す送信オフ状態の測定結果を直線近似すると、Trd、TldおよびTcdは、それぞれ以下の式で表される。
Trd=0.9911×Ta+6.627
Tld=1.0027×Ta+8.3841
Tcd=0.9877×Ta+8.1261
ここで、Trd=Ad×Tcd+Bd×Tldと置き、Ta=−5,75をそれぞれ代入すると、以下の式(2)〜(4)が導出できる。
Trd=12.52181×Tcd−11.3461×Tld ・・・(2)
Tcd=0.959957×Tc−8.866103 ・・・(3)
Tld=1.012215×Tl−14.30268 ・・・(4)
式(2)に式(3)および式(4)を代入すると、以下の式(5)が導出できる。
Trd=12.0204×Tc−11.48469×Tl+51.25998 ・・・(5)
式(1)および式(5)より、以下の式(6)が導出できる。
Tr−Trd=−9.6041×Tc+10.00029×Tl+51.25998 ・・・(6)
ここで、バースト光信号のバーストのデューティ比を(100×a)%とし、当該デューティ比のときのROSAの温度をTr_aとすると、Tr_aは以下の式(7)で表される。
Tr_a=Trd+a×(Tr−Trd) ・・・(7)
式(5)〜(7)より、以下の式が導出できる。
Tr_a=(12.0204−9.6041×a)×Tc+(−11.48469+10.00029×a)×Tl+(1−a)×51.25998
以上より、逆バイアス電圧Vapdの印加先である受光素子PDの温度に相当するROSAの温度Tr_aを、a、TcおよびTlを用いた近似モデルの式により表わすことができた。
なお、この近似モデルの導出では、測定の都合上、CPU11の表面温度をTcとして使用し、TRX−IC12の表面温度をTlとして使用しており、これらは、実際の逆バイアス電圧Vapdの制御に用いる温度センサ21および22の検出温度とそれぞれ対応するものである。
本願発明者は、さらに、温度遷移も含めた上記近似モデルの成立性について検討を行なった。
図21は、本発明の第1の実施の形態に係る光信号の送信オン状態および送信オフ状態間の遷移に対する各部位の温度推移の測定結果を示す図である。図21において、横軸は時間であり、縦軸は温度である。グラフG21は、TRX−IC12の温度を示し、グラフG22は、CPU11の表面温度を示し、グラフG23は、ROSAの温度を示し、グラフG24は、ROSAの温度の近似式による計算値を示し、グラフG25は、TOSAの温度を示し、グラフG26は、筐体Kの温度を示し、グラフG27は、環境温度を示し、グラフG28は、温度センサ21の検出温度を示す。図21は、−5℃の環境下における測定結果を示している。
図21を参照して、グラフG21〜G23,G25,G26より、送信オフ状態から送信オン状態へ切り替えられる時刻t1付近から各部位の温度が上昇していき、約6分で収束している。そして、送信オン状態から送信オフ状態へ切り替えられる時刻t2付近から各部位の温度が下降していき、約6分で収束している。
図22は、図21の一部を拡大した図である。図22において、横軸は時間であり、縦軸は温度である。グラフG31は、ROSAの温度を示し、グラフG32は、ROSAの温度の近似式による計算値を示し、グラフG33は、推定誤差を示す温度ペナルティ、すなわちグラフG31およびG32の差分を示す。
図22を参照して、グラフG31〜G33より、ROSAの温度の実測値と計算値との差分は、おおよそ、0℃〜+0.4℃である。
図23は、本発明の第1の実施の形態に係る光信号の送信オン状態および送信オフ状態間の変化に対する各部位の温度推移の測定結果を示す図である。図23において、横軸は時間であり、縦軸は温度である。グラフG41は、TRX−IC12の温度を示し、グラフG42は、CPU11の表面温度を示し、グラフG43は、ROSAの温度を示し、グラフG44は、ROSAの温度の近似式による計算値を示し、グラフG45は、TOSAの温度を示し、グラフG46は、筐体Kの温度を示し、グラフG47は、環境温度を示し、グラフG48は、温度センサ21の検出温度を示す。図23は、+25℃の環境下における測定結果を示している。
図23を参照して、グラフG41〜G43,G45,G46より、送信オフ状態から送信オン状態へ切り替えられる時刻t11付近から各部位の温度が上昇していき、約6分で収束している。そして、送信オン状態から送信オフ状態へ切り替えられる時刻t12付近から各部位の温度が下降していき、約6分で収束している。
図24は、図23の一部を拡大した図である。図24において、横軸は時間であり、縦軸は温度である。グラフG51は、ROSAの温度を示し、グラフG52は、ROSAの温度の近似式による計算値を示し、グラフG53は、推定誤差を示す温度ペナルティ、すなわちグラフG51およびG52の差分を示す。
図24を参照して、グラフG51〜G53より、ROSAの温度の実測値と計算値との差分は、おおよそ、−0.6℃〜+0℃である。
図25は、本発明の第1の実施の形態に係る光信号の送信オン状態および送信オフ状態間の変化に対する各部位の温度推移の測定結果を示す図である。図25において、横軸は時間であり、縦軸は温度である。グラフG61は、TRX−IC12の温度を示し、グラフG62は、CPU11の表面温度を示し、グラフG63は、ROSAの温度を示し、グラフG64は、ROSAの温度の近似式による計算値を示し、グラフG65は、TOSAの温度を示し、グラフG66は、筐体Kの温度を示し、グラフG67は、環境温度を示し、グラフG68は、温度センサ21の検出温度を示す。図25は、+70℃の環境下における測定結果を示している。
図25を参照して、グラフG61〜G63,G65,G66より、送信オフ状態から送信オン状態へ切り替えられる時刻t31付近から各部位の温度が上昇していき、約6分で収束している。そして、送信オン状態から送信オフ状態へ切り替えられる時刻t32付近から各部位の温度が下降していき、約6分で収束している。
図26は、図25の一部を拡大した図である。図26において、横軸は時間であり、縦軸は温度である。グラフG71は、ROSAの温度を示し、グラフG72は、ROSAの温度の近似式による計算値を示し、グラフG73は、推定誤差を示す温度ペナルティ、すなわちグラフG71およびG72の差分を示す。
図26を参照して、グラフG71〜G73より、ROSAの温度の実測値と計算値との差分は、おおよそ、−0.2℃〜+0.6℃である。
なお、図21〜図26では、ROSAの温度Tr_aを表す近似モデルとして、以下の式を用いている。この式は、前述した方法と同様の方法により導出可能である。また、状態の切り替えタイミングから温度の収束タイミングまでの時間的な到達率をデューティ比aとして、近似式による計算を行なっている。
Tr_a=(2.132436+0.618751×a)×Tc−(1.1555+0.6018×a)×Tl+(a−1)×6.793542
図21〜図26より、低温、常温および高温、具体的には、たとえば−5℃、25℃および70℃において、温度ペナルティは、プラス方向およびマイナス方向ともに0.7℃も無く、温度過渡時、特に高温において若干の変動が見られる程度である。
本願発明者は、以上のような検証結果から、ROSAの温度Tr_aは、温度遷移の途中を含めて、a、TcおよびTlを用いた近似モデルの式により推定可能であり、当該式において時定数を含む項は不要であるとの知見を得た。
すなわち、光トランシーバ101において、光信号のバーストのデューティ比をaとし、温度センサ21の検出温度をT1とし、温度センサ22の検出温度をT2とし、BOSA光モジュール13の受光部の温度をTrとし、BOSA光モジュール13における受光部の制御のために許容される温度誤差をTerrとする。
そして、送信オン状態における筐体Kの周囲温度が所定温度である状態において、aが最小値であるときのT1およびT2から推定できるTrの値をTminとし、aが最大値であるときのT1およびT2から推定できるTrの値をTmaxとすると、aが最小値および最大値の中間値であるときにTminおよびTmaxをaで内分することによって求まるTrの推定値に対する、Trの実測値の誤差がTerr以下である。
たとえば、温度誤差Terrは、ルックアップテーブルta1およびta2のステップ幅の2℃である。光トランシーバ101では、図21〜図26より、ROSAの温度Trの誤差、すなわち温度ペナルティの絶対値が0.7℃未満である。
光トランシーバ101では、このようにして推定したROSAの温度Tr_aに対応する逆バイアス電圧Vapdを受光素子PDに印加することにより、受光素子PDの温度に応じて増倍率Mを調整し、最適値を維持することができる。
すなわち、光トランシーバ101では、熱伝導性を有する筐体Kが設けられ、発熱部分すなわち送信ドライバDVと、温度センサ21,22との熱結合状態が的確に実現されていることにより、ROSAの温度Trの誤差がTerr以下となるような良好な熱結合状態を実現することができる。
なお、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバでは、CPU11は、温度センサ21の検出温度に基づいて逆バイアス電圧Vapdを調整する構成であるとしたが、これに限定するものではない。CPU11は、TRX−IC12における温度センサ22の検出温度に基づいて逆バイアス電圧Vapdを調整する構成であってもよい。この場合、たとえば、ルックアップテーブルta1およびta2を、温度センサ22の検出温度を用いて作成すればよい。
また、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバでは、温度センサ21は、CPU11に内蔵されている構成であるとしたが、これに限定するものではない。温度センサ21がCPU11の外部に設けられる構成であってもよい。
また、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバでは、温度センサ22は、TRX−IC12に内蔵されている構成であるとしたが、これに限定するものではない。温度センサ22は、TRX−IC12に熱的に結合されていればよく、TRX−IC12の外部に設けられる構成であってもよい。
また、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバでは、逆バイアス電圧Vapdの制御においてバースト光信号のバーストのデューティ比を用いる構成であるとしたが、これに限定するものではない。当該デューティ比に限らず、送信ドライバDVの駆動率を示すものであれば他の種類の値を用いてもよい。
また、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバは、バイアス制御部83および積分回路84を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。バイアス制御部83および積分回路84が、ONU202において、光トランシーバ101の外部に設けられる構成であってもよい。
また、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバは、温度センサ22を備える構成であるとしたが、これに限定するものではなく、温度センサ22を備えない構成であってもよい。
また、本発明の第1の実施の形態では、光トランシーバを備えるONUを例示したが、本発明は、光通信装置に広く適用可能である。また、本発明は、バースト状の光信号を送信する光通信装置に用いると好適である。特に、製造の際は同じ仕様に従って多数製造され、実使用の際は設置場所の環境に応じて個々に受光素子の増倍率が異なることとなる、PONシステムにおける宅側装置に用いるとより効果的である。
ところで、特許文献1に記載の光トランシーバでは、温度センサ、および光トランシーバ内の温度に関するルックアップテーブルを用いたフィードフォワード制御が行なわれる。
しかしながら、たとえば光トランシーバが通信状態に応じて異なる動作を行い、これに伴って消費電力が変動し、発熱量が変動する場合、上記温度センサの検出温度も変動してしまう。
このような場合、光トランシーバでは、上記のようなルックアップテーブルを用いたフィードフォワード制御を行なっても、APDへの逆バイアス電圧を、APDの温度に応じて良好に調整することが困難である。
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る光通信装置では、送信ドライバDVは、発光素子LDを駆動する。受光素子PDは、逆バイアス電圧Vapdによる増倍率の変更が可能である。積分回路84は、送信ドライバDVの駆動率a、たとえばバースト光信号のバーストのデューティ比aを算出する。バイアス制御部83は、受光素子PDへの逆バイアス電圧Vapdを調整する。バイアス制御部83は、温度センサ21の検出温度および駆動率aの算出結果に基づいて、複数の温度かつ複数の駆動率aの組み合わせにおける、逆バイアス電圧Vapdの複数の目標値を用いた線形演算によって逆バイアス電圧Vapdを調整する。
このような構成により、光通信装置が通信状態に応じて異なる動作、具体的には、たとえばバースト光信号のバーストのデューティ比が異なるような動作を行い、これに伴って消費電力が変動し、発熱量が変動する場合であっても、温度センサの検出温度の変動に応じた制御を行なうことができる。具体的には、たとえば、温度センサ21の検出温度およびデューティ比aに応じてルックアップテーブルta1,ta2を用いたフィードフォワード制御を行なうことにより、受光素子PDへの逆バイアス電圧Vapdを、受光素子PDの温度に応じて良好に調整することができる。
したがって、本発明の第1の実施の形態に係る光通信装置では、受光素子へのバイアス電圧を良好に調整することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバでは、CPU11は、温度センサ21の検出温度を用いた演算処理を行なうことが可能である。BOSA光モジュール13は、発光素子LDおよび受光素子PDを含む。送信ドライバDVは、発光素子LDを駆動する。筐体Kは、温度センサ21、CPU11、BOSA光モジュール13および送信ドライバDVを収容し、熱伝導性を有する。送信オン状態における温度センサ21の検出温度と送信オフ状態における温度センサ21の検出温度との差が2℃より大きい。送信ドライバDVの消費電力は、CPU11の消費電力およびBOSA光モジュール13の消費電力より大きい。
このように、光トランシーバ101は、熱伝導性を有する筐体K内で送信ドライバDVの消費電力すなわち発熱が支配的であり、この発熱が集積回路すなわちCPU11、およびBOSA光モジュール13の温度上昇を引き起こすような構成である。つまり、光トランシーバ101では、大量の消費電力を送信ドライバDVに与えている状況であり、換言すれば、高い強度の光信号を出力したり、また、高速な光信号を出力したりすることができる。
光トランシーバ101は、上述の逆バイアス電圧Vapdの複数の目標値を用いた線形演算によって逆バイアス電圧Vapdを調整する光通信装置の使用に適した構成を有している。すなわち、光トランシーバ101および光通信装置は、組み合わせた使用に好適であり、同一のまたは対応する特別な技術的特徴を有している。
したがって、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバ101では、受光素子へのバイアス電圧を良好に調整することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバ101では、送信ドライバDVは、温度センサ21とBOSA光モジュール13との間に配置されている。
このように、温度センサ21が送信ドライバDVの影響を受けやすく、かつBOSA光モジュール13の正確な温度を温度センサ21において測定することが困難な配置の光トランシーバ101において、受光素子PDへのバイアス電圧を良好に調整することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバでは、BOSA光モジュール13は、発光素子LDおよび受光素子PDを含む。送信ドライバDVは、温度センサ22が熱的に結合され、発光素子LDを駆動する。筐体Kは、温度センサ21、温度センサ22、BOSA光モジュール13および送信ドライバDVを収納し、熱伝導性を有する。送信ドライバDVの駆動率をaとし、温度センサ21の検出温度をT1とし、温度センサ22の検出温度をT2とし、BOSA光モジュール13の受光部の温度をTrとし、BOSA光モジュール13における受光部の制御のために許容される温度誤差をTerrとする。そして、送信オン状態における筐体Kの周囲温度が所定温度である状態において、aが最小値であるときのT1およびT2から推定できるTrの値をTminとし、aが最大値であるときのT1およびT2から推定できるTrの値をTmaxとすると、aが最小値および最大値の中間値であるときにTminおよびTmaxをaで内分することによって求まるTrの推定値に対する、Trの実測値の誤差がTerr以下である。
このように、光トランシーバ101では、熱伝導性を有する筐体Kが設けられ、発熱部分すなわち送信ドライバDVと、温度センサ21,22との熱結合状態が的確に実現されていることにより、BOSA光モジュール13におけるROSAの温度Trの誤差がTerr以下となるような良好な熱結合状態を実現することができる。
そして、正確に推定したROSAの温度Trに対応する逆バイアス電圧Vapdを受光素子PDに印加することにより、受光素子PDの温度に応じて増倍率Mを調整し、最適値を維持することができる。
すなわち、光トランシーバ101は、上述の逆バイアス電圧Vapdの複数の目標値を用いた線形演算によって逆バイアス電圧Vapdを調整する光通信装置の使用に適した構成を有している。すなわち、光通信装置および光トランシーバ101は、組み合わせた使用に好適であり、同一のまたは対応する特別な技術的特徴を有している。
したがって、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバ101では、受光素子へのバイアス電圧を良好に調整することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係る受光素子PDの制御方法では、まず、送信ドライバDVの駆動率aを算出する。次に、受光素子PDへの逆バイアス電圧Vapdを調整する。逆バイアス電圧Vapdを調整する際、温度センサ21の検出温度および駆動率aの算出結果に基づいて、複数の温度かつ複数の駆動率aの組み合わせにおける、逆バイアス電圧Vapdの複数の目標値を用いた線形演算によって逆バイアス電圧Vapdを調整する。
これにより、光トランシーバ101が通信状態に応じて異なる動作、具体的には、たとえばバースト光信号のバーストのデューティ比が異なるような動作を行い、これに伴って消費電力が変動し、発熱量が変動する場合であっても、温度センサの検出温度の変動に応じた制御を行なうことができる。具体的には、たとえば、温度センサ21の検出温度およびデューティ比aに応じてルックアップテーブルta1,ta2を用いたフィードフォワード制御を行なうことにより、受光素子PDへの逆バイアス電圧Vapdを、受光素子PDの温度に応じて良好に調整することができる。
したがって、本発明の第1の実施の形態に係る受光素子PDの制御方法では、受光素子へのバイアス電圧を良好に調整することができる。
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係るONUと比べて配置を変更したONUに関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係るONUと同様である。
図27は、本発明の第2の実施の形態に係るONUにおける各部品の配置の一例を概略的に示す図である。
図27を参照して、ONU212は、親基板B11を備える。親基板B11には、光トランシーバ111と、MAC−IC31と、PHY−IC32と、LANコネクタ33と、電源回路34とが実装されている。
すなわち、ONU212は、子基板を備えない構成であり、光トランシーバ111が親基板B11に直接実装されている。
たとえば、MAC−IC31、PHY−IC32およびLANコネクタ33は、図2に示すONU202の各ユニットのうち、光トランシーバ101以外に相当する。電源回路34は、ONU212における各ユニットに電力を供給する。
図28は、本発明の第2の実施の形態に係る光トランシーバにおける各部品の配置の一例を概略的に示す図である。
図28を参照して、光トランシーバ111では、CPU11と、TRX−IC12と、BOSA光モジュール13とが、金属シールドSD1によって覆われている。
温度センサ21およびBOSA光モジュール13間の距離は、TRX−IC12およびBOSA光モジュール13間の距離以下である。
より詳細には、たとえば、CPU11は、BOSA光モジュール13の近傍に、かつTRX−IC12から離れた位置に配置されている。
また、TRX−IC12およびBOSA光モジュール13の配列方向とCPU11およびBOSA光モジュール13の配列方向とが交差している。
また、金属シールドSD1の長手方向の両端部付近にそれぞれTRX−IC12およびBOSA光モジュール13が配置されており、金属シールドSD1の長手方向の中間部かつ短手方向の一方の端部付近にCPU11が配置されている。
このような配置の光トランシーバ111についても、本発明の第1の実施の形態に係る光トランシーバ101と同様の逆バイアス電圧Vapdの制御を適用することが可能である。
以上のように、本発明の第2の実施の形態に係る光トランシーバでは、温度センサ21およびBOSA光モジュール13間の距離が送信ドライバDVおよびBOSA光モジュール13間の距離以下である。
このように、温度センサ21とBOSA光モジュール13とを近づけ、温度センサ21がBOSA光モジュール13の温度をより正確に模擬できる構成において、送信ドライバDVによるBOSA光モジュール13の影響を正確に把握するとともに、受光素子PDへの逆バイアス電圧Vapdを、受光素子PDの温度に応じて良好に調整することができる。
その他の構成および動作は第1の実施の形態に係るONUと同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
温度センサと、
前記温度センサの検出温度を用いた演算処理を行なうことが可能な集積回路と、
発光素子および受光素子を含む光モジュールと、
前記発光素子を駆動する送信ドライバと、
前記温度センサ、前記集積回路、前記光モジュールおよび前記送信ドライバを収容し、熱伝導性を有する筐体とを備え、
前記発光素子による光信号の送信オン状態における前記温度センサの検出温度と前記光信号の送信オフ状態における前記温度センサの検出温度との差が2℃より大きく、
前記送信ドライバの消費電力は、前記集積回路の消費電力および前記光モジュールの消費電力より大きく、
前記集積回路は、前記温度センサを含み、
前記受光素子は、バイアス電圧による増倍率の変更が可能であり、
前記光信号は、バースト状の光信号であり、
PONシステムにおける宅側装置に用いられる、光トランシーバ。
[付記2]
第1の温度センサと、
第2の温度センサと、
発光素子および受光素子を含む光モジュールと、
前記第2の温度センサが熱的に結合され、前記発光素子を駆動する送信ドライバと、
前記第1の温度センサ、前記第2の温度センサ、前記光モジュールおよび前記送信ドライバを収納し、熱伝導性を有する筐体とを備え、
前記送信ドライバの駆動率をaとし、
前記第1の温度センサの検出温度をT1とし、
前記第2の温度センサの検出温度をT2とし、
前記光モジュールの受光部の温度をTrとし、
前記光モジュールにおける受光部の制御のために許容される温度誤差をTerrとすると、
前記発光素子による光信号の送信オン状態における前記筐体の周囲温度が所定温度である状態において、
aが最小値であるときのT1およびT2から推定できるTrの値をTminとし、
aが最大値であるときのT1およびT2から推定できるTrの値をTmaxとすると、
aが前記最小値および前記最大値の中間値であるときにTminおよびTmaxをaで内分することによって求まるTrの推定値に対する、Trの実測値の誤差がTerr以下であり、
前記受光素子は、バイアス電圧による増倍率の変更が可能であり、
前記光信号は、バースト状の光信号であり、
PONシステムにおける宅側装置に用いられる、光トランシーバ。
[付記3]
発光素子と、
前記発光素子を駆動する送信ドライバと、
バイアス電圧による増倍率の変更が可能な受光素子と、
温度センサと、
前記送信ドライバの駆動率を算出する演算部と、
前記受光素子への前記バイアス電圧を調整する調整部とを備え、
前記調整部は、前記温度センサの検出温度および前記駆動率の算出結果に基づいて、複数の温度かつ複数の前記駆動率の組み合わせにおける、前記バイアス電圧の複数の目標値を用いた線形演算によって前記バイアス電圧を調整し、
前記光通信装置は、さらに、
前記バイアス電圧の目標値と温度との前記駆動率ごとの対応関係を記憶する記憶部を備え、
前記調整部は、前記対応関係において前記温度センサの検出温度に対応する複数の前記目標値、および前記駆動率の算出結果に基づいて前記バイアス電圧を調整し、
前記発光素子によりバースト状の光信号が送信され、
前記駆動率は、前記光信号のバーストのデューティ比であり、
PONシステムにおける宅側装置である、光通信装置。