JP2019032275A - アミロイド凝集体の検出方法、アミロイド凝集体検出装置、及びアミロイド凝集体検出プログラム - Google Patents

アミロイド凝集体の検出方法、アミロイド凝集体検出装置、及びアミロイド凝集体検出プログラム Download PDF

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【課題】アミロイド凝集体を簡便かつ精度よく検出できるアミロイド凝集体の検出方法を提供すること。【解決手段】チオフラビンTと接触させた被験試料の時間分解蛍光を測定するステップと、測定された時間分解蛍光からチオフラビンTエキシマーとアミロイド凝集体との結合体に由来する蛍光を検出するステップと、を含む、アミロイド凝集体の検出方法。【選択図】図3

Description

本発明は、アミロイド凝集体の検出方法、アミロイド凝集体検出装置、及びアミロイド凝集体検出プログラムに関する。
社会的問題となっている認知症の半数以上がアルツハイマー型認知症(以下、「AD」と略すこともある。)と言われている。AD患者の脳内には、アミロイドβ(以下、「Aβ」と略すこともある。)の凝集体が蓄積した老人斑が認められることがある。Aβは様々な凝集体を形成して神経細胞に悪影響を与えるため、診断及び治療の研究では、Aβの凝集メカニズム、Aβ凝集体の構造及び機能を解析することが重要である。そのため、Aβの凝集を確認する手法が必要となる。
Aβの凝集を確認するために、原子間力顕微鏡による観察、チオフラビンT(以下、「ThT」と略すこともある。)等の蛍光色素を用いた蛍光測定が行われている。ThTは、波長400〜440nmの光を照射すると、波長480nm付近をピークとする微弱な蛍光(自家蛍光)を放出する。また、Aβ凝集体に結合したThTは、同波長の強い蛍光を放出する。この現象に基づいて、蛍光分光光度計による蛍光強度測定法が、Aβの凝集進行のモニタリング、Aβ凝集体の検出に利用されている(例えば、非特許文献1)。
エキシマー蛍光は、エキシマー(励起二量体)と呼ばれる励起状態で結合した2分子の蛍光色素による蛍光現象である。ThTエキシマーは、高濃度ThT水溶液中で検出されることが報告されている(非特許文献2)。一方、Aβ凝集体中でのThTエキシマー形成については、形成を示唆するシミュレーション結果は存在するものの(非特許文献3)、形成を決定付ける報告は存在しない。
Methods in Enzymology,大学出版(Academic Press),1999年,第309巻,pp.274−287、304−305 Anna I. Sulatskayaら,Thioflavin T fluoresces as excimer in highly concentrated aqueous solutions and as monomer being incorporated in amyloid fibrils.,Nature scientificreports.7,Article number2146,2017年 Raimon Sabateら,Thioflavin−T excimer formation upon interaction with amyloid fibers.,Chem.Comm.,2013年,49巻,pp.5745−5747
従来行われているThTを用いた蛍光強度測定は、操作が簡便である一方、測定の対象とすべきでないThTの自家蛍光(未結合ThT蛍光)及び不純物由来の蛍光も積算してしまうため、正確な値を測定できないという問題を有する。
本発明は、アミロイド凝集体を簡便かつ精度よく検出できるアミロイド凝集体の検出方法を提供することを目的とする。本発明はまた、アミロイド凝集体の検出方法に用いられるアミロイド凝集体検出装置及びアミロイド凝集体検出プログラムを提供することも目的とする。
本発明者らは、実施例において説明するとおり、アミロイド凝集体の一種であるAβ線維とThTエキシマーが結合体を形成すること、及び当該結合体が、従来の蛍光波長(480nm)よりも長波長(570nm)にピークを有する蛍光を発することを見出した。本発明はこの新規な知見に基づくものである。
本発明は、チオフラビンTと接触させた被験試料の時間分解蛍光を測定するステップと、測定された時間分解蛍光からチオフラビンTエキシマーとアミロイド凝集体との結合体に由来する蛍光を検出するステップと、を含む、アミロイド凝集体の検出方法に関する。
本発明の検出方法は、ThTエキシマーとアミロイド凝集体との結合体に由来する蛍光(以下、「エキシマー蛍光」と略すこともある。)を検出するものである。エキシマー蛍光は、ThTの自家蛍光(未結合ThT蛍光)と蛍光波長が大きく異なるため、自家蛍光との識別が可能になる。これにより、アミロイド凝集体を簡便かつ精度よく検出できる。また、生体試料を測定する場合、生体由来の自家蛍光は、エキシマー蛍光の検出に利用可能な波長500nm以上の長波長領域では小さくなることから、より一層検出の精度を向上させることができる。
本発明はまた、チオフラビンTと接触させた被験試料の時間分解蛍光データを取得する取得手段と、取得した時間分解蛍光データからチオフラビンTエキシマーとアミロイド凝集体との結合体に由来する蛍光が存在するか否かを検出する検出手段と、検出結果に基づき、被験試料にアミロイド凝集体が存在するか否かを判定する判定手段と、を備える、アミロイド凝集体検出装置にも関する。
本発明は更に、コンピュータを、チオフラビンTと接触させた被験試料の時間分解蛍光データを取得する取得手段、取得した時間分解蛍光データからチオフラビンTエキシマーとアミロイド凝集体との結合体に由来する蛍光を検出する検出手段、及び検出結果に基づき、被験試料にアミロイド凝集体が存在するか否かを判定する判定手段、として機能させるためのアミロイド凝集体検出プログラム、並びに当該アミロイド凝集体検出プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体にも関する。
本発明によれば、簡便かつ精度よくアミロイド凝集体を検出できる。
アミロイド凝集体検出装置Dのハードウェア的構成を示す概要図である。 アミロイド凝集体検出装置Dの機能的構成を示す概要図である。 アミロイド凝集体検出方法のフローチャートである。 Aβ線維をThT染色した試料の蛍光減衰曲線である。 Aβ線維をThT染色した試料の蛍光減衰曲線から分離可能な3つの指数関数成分(成分A1、成分A2及び成分A3)の蛍光強度を、それぞれAβ線維とThTのモル濃度比([ThT]/[Aβ])に対してプロットしたグラフである。 Aβ線維のThT染色試料及びネガティブコントロール試料の時間10ns〜18nsにおける時間分解蛍光スペクトル及びその規格化スペクトルである。(A)ThT染色試料の時間分解蛍光スペクトルである。(B)(A)の規格化スペクトルである。(C)ネガティブコントロール試料の時間分解蛍光スペクトルである。(D)(C)の規格化スペクトルである。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
〔アミロイド凝集体の検出方法〕
本実施形態に係るアミロイド凝集体の検出方法は、チオフラビンTと接触させた被験試料の時間分解蛍光を測定するステップ(以下、「測定ステップ」ともいう。)と、測定された時間分解蛍光からチオフラビンTエキシマーとアミロイド凝集体との結合体に由来する蛍光を検出するステップ(以下、「検出ステップ」ともいう。)と、を含む。本実施形態に係る検出方法は、測定ステップの前に、被験試料とチオフラビンTとを接触させるステップ(以下、「接触ステップ」ともいう。)を更に含んでいてもよい。
(接触ステップ)
接触ステップでは、被験試料とチオフラビンTとを接触させる。接触させる方法には特に制限はなく、例えば、アミロイド凝集体をThTで蛍光染色する際に用いられる方法に準じて実施することができる。
ThTエキシマーを効率よく形成させる観点から、被験試料とチオフラビンTとを接触させた後の被験試料中のチオフラビンTの濃度が、所定量以上あることが好ましい。例えば、被験試料が液体である場合、チオフラビンTの濃度が4μmol/L以上であることが好ましく、5μmol/L以上であることがより好ましい。上限は特に制限はないが、例えば、10μmol/L以下であってよい。被験試料が固体である場合、チオフラビンTの濃度が1μg/g以上であることが好ましく、1.5μg/g以上であることがより好ましい。上限は特に制限はないが、例えば、3μg/g以下であってよい。
同じくThTエキシマーを効率よく形成させる観点から、被験試料とチオフラビンTとを接触させた後の被験試料中のチオフラビンTのモル濃度とアミロイド凝集体を形成するタンパク質のモル濃度の比([ThT]/[アミロイド凝集体を形成するタンパク質])は、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることが更に好ましく、40以上であることが更により好ましい。モル濃度比の上限は特に制限はないが、例えば、100以下であってよい。アミロイド凝集体を形成するタンパク質のモル濃度は、検出対象であるアミロイド凝集体を形成し得るタンパク質(例えば、アミロイドβ)に換算したモル濃度である。
被験試料は、アミロイド凝集体の有無を調べたい試料であれば特に制限されるものではない。被験試料の具体例としては、脳切片、脳脊髄液、血液、粘膜が挙げられる。被験試料は、これらの試料を適当な媒体(例えば、水、緩衝液、培地等)に懸濁又は溶解させた溶液であってもよく、懸濁又は溶解させた後、不溶物を濾過した溶液であってもよい(被験試料溶液)。
チオフラビンT(ThT)は、下記式で表され、4−(3,6−ジメチル−1,3−ベンゾチアゾール−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリドとも称される公知の化合物である。ThTは、アミロイドの染色(ThT染色)に汎用されている蛍光色素である。
本実施形態に係る検出方法には、例えば、市販されているThT試薬を特に制限なく使用することができる。
ThTは、480nm付近にピーク波長を有する蛍光(励起波長は、例えば、405nm)を発する。一方、ThTは、光照射により、440nm付近にピーク波長を有する蛍光(励起波長は、例えば、350nm)を発する光反応物(蛍光性不純物)を生じる。市販されているThT試薬は、この蛍光性不純物を含むものである。本実施形態に係る検出方法は、ThTエキシマーとアミロイド凝集体との結合体からの長波長(例えば、570nm付近)の蛍光を検出するものであるため、蛍光性不純物による影響を受けにくいという利点もある。
アミロイド凝集体は、βシート構造が特徴的なタンパク質の特殊な凝集体である。アミロイド凝集体を形成するタンパク質は、インスリン、β2ミクログロブリン及びアミロイドβ等の様々な種類が存在する。体内での特定のアミロイド凝集体の蓄積は、病気の原因にもなる。例えば、β2ミクログロブリン凝集体の蓄積は透析アミロイドーシス、アミロイドβ凝集体の蓄積はアルツハイマー病に関連がある。
(測定ステップ)
測定ステップでは、チオフラビンTと接触させた被験試料の時間分解蛍光を測定する。
時間分解蛍光の測定は、公知の手法により行うことができる。具体的には、例えば、蛍光寿命測定装置により、ThTと接触させた被験試料に波長400〜420nm(好ましくは405nm)の光を照射し、これに応じた波長500〜620nmの発光(蛍光)を測定する。時間分解蛍光の測定は、所定の波長領域(例えば、上述の500〜620nm)におけるスペクトルとして測定してもよく、また特定の波長(例えば、エキシマー蛍光のピークがある570nm)の発光(蛍光)のみを測定してもよい。
より具体的には、例えば、被験試料とThTとを含む溶液を測定サンプルとし、蛍光寿命測定装置(例えば、小型蛍光寿命測定装置:Quantaurus−Tau型、浜松ホトニクス株式会社製)を用いて、時間相関単光子係数法により、励起波長405nmにおける蛍光減衰曲線を波長500nmから620nmまで5nmおきに測定し、所定の時間(例えば、測定開始から10〜20ns等)の蛍光減衰曲線の値を積算し、これを波長別にプロットすることで時間分解蛍光スペクトルを得ることができる。また、励起波長405nmにおける蛍光減衰曲線を特定の波長(例えば、570nm)で測定し、所定の時間(例えば、測定開始から10〜20ns等)の蛍光減衰曲線の値を積算することで、特定の波長における時間分解蛍光の測定データを得ることができる。
時間分解蛍光は、バックグラウンド値を補正することが好ましい。バックグラウンド値は、例えば、ThTを含まない測定サンプルに対して同様の測定を行ったときの測定値とすることができる。例えば、被験試料の測定値からバックグラウンド値を引くことによって、被験試料とは無関係の発光成分(例えば、ラマン散乱光)を除去することができ、より精度高くアミロイド凝集体を検出することができる。
(検出ステップ)
検出ステップでは、測定された時間分解蛍光からチオフラビンTエキシマーとアミロイド凝集体との結合体に由来する蛍光(エキシマー蛍光)を検出する。
エキシマー蛍光は、波長570nm付近にピークを有する蛍光である。したがって、例えば、波長500〜620nmの領域内の特定の波長について、好ましくは波長550〜600nmの領域内の特定の波長について、より好ましくは波長570nmについて、エキシマー蛍光の有無を検出すればよい。
エキシマー蛍光の有無は、例えば、ThTを接触させていない被験試料について時間分解蛍光を測定したデータと比べて、蛍光強度が増加したか否かにより検出することができる。
〔アミロイド凝集体検出装置〕
アミロイド凝集体検出装置の構成について説明する。
図1は、一実施形態に係るアミロイド凝集体検出装置Dのハードウェア的構成を示す概要図である。図1に示すように、アミロイド凝集体検出装置Dは、物理的には、CPU D11、ROM D12及びRAM D13等の主記憶装置、キーボード及びマウス等の入力デバイスD14、ディスプレイ等の出力デバイスD15、蛍光測定装置等の他の装置との間でデータの送受信を行うためのネットワークカード等の通信モジュールD16、ハードディスク等の補助記憶装置D17等を含む、通常のコンピュータとして構成される。後述するアミロイド凝集体検出装置Dの各機能は、CPU D11、ROM D12、RAM D13等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU D11の制御の下で入力デバイスD14、出力デバイスD15、通信モジュールD16を動作させるとともに、主記憶装置D12及びD13、並びに補助記憶装置D17におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
図2は、一実施形態に係るアミロイド凝集体検出装置Dの機能的構成を示す概要図である。図2に示すように、アミロイド凝集体検出装置Dは、機能的構成要素として、取得手段D1、検出手段D2、判定手段D3、及び表示手段D4を備える。
取得手段D1は、蛍光寿命測定装置等(図示せず)で得た時間分解蛍光測定データを取得するものである。検出手段D2は、時間分解蛍光測定データからチオフラビンTエキシマーとアミロイド凝集体との結合体に由来する蛍光が存在するか否かを検出するものである。判定手段D3は、検出結果に基づき、(被験試料に)アミロイド凝集体が存在するか否かを判定するものである。表示手段D4は、判定した結果を表示するものである。
〔アミロイド凝集体検出プログラム〕
アミロイド凝集体検出プログラムは、コンピュータを、上述した取得手段D1、検出手段D2、判定手段D3、及び表示手段D4として機能させるものである。コンピュータにアミロイド凝集体検出プログラムを読み込ませることにより、コンピュータはアミロイド凝集体検出装置Dとして動作する。アミロイド凝集体検出プログラムは、例えば、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。記録媒体は、非一時的記録媒体であってもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク、CD、DVD等の記録媒体、ROM等の記録媒体、半導体メモリ等が例示される。
(アミロイド凝集体検出方法)
アミロイド凝集体検出装置Dにより行われるアミロイド凝集体検出方法について説明する。図3は、アミロイド凝集体検出方法のフローチャートである。アミロイド凝集体検出装置Dにより行われるアミロイド凝集体検出方法により、被験試料がアミロイド凝集体を含むか否かを自動的に精度高く検出することができる。
[取得ステップS1]
最初に、取得手段D1が、蛍光寿命測定装置等から時間分解蛍光測定データを取得する。
[検出ステップS2]
次に、検出手段D2が、取得した時間分解蛍光測定データからチオフラビンTエキシマーとアミロイド凝集体との結合体に由来する蛍光が存在するか否かを検出する。当該結合体に由来する蛍光は、上述した波長領域に出現する蛍光である。
[判定ステップS3]
次に、判定手段D3が、検出ステップS2にて検出した結果に基づき、被験試料にアミロイド凝集体が存在するか否かを判定する。例えば、結合体に由来する蛍光が検出された場合は、被験試料にアミロイド凝集体が存在すると判定する。
[表示ステップS4]
次に、表示手段D4が、判定ステップS3にて判定した結果を表示する。例えば、被験試料にアミロイド凝集体が存在するか否かが表示手段D4によって表示される。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[参考例:蛍光減衰曲線の解析]
(Aβ線維を含む試料の調製)
非特許文献(J.Biol.Chem.,2003年,278巻(13号),pp.11612−11622)に記載された方法に基づき、下記手順でAβ線維を含む試料を調製した。まず、Aβ1−42(商品名:Amyloid β−prоtein Human,1−42、株式会社ペプチド研究所製)をジメチルスルホキシドに5mmol/Lとなるように溶解し、さらに10mmol/L HCl水溶液を用いて、Aβ1−42の濃度が100μmol/Lとなるように希釈した。得られたAβの調製液は、インキュベータを用いて37℃で24時間インキュベートした。上記インキュベートを行うことによって、Aβ線維(Aβ凝集体)を含む試料を調製した。
(ThT水溶液の調製)
ThT(ウルトラピュアグレード,AAT Bioquest Inc.社製)を蒸留水に溶解し、100μmol/LのThT水溶液を得た。
(Aβ線維を含む試料のThT染色)
Aβ線維を含む試料を10μL分取したものを6試料分用意し、これらに対して、100μmol/LのThT水溶液及び蒸留水を、それぞれ2.5μL及び77.5μL、5μL及び75μL、10μL及び70μL、20μL及び60μL、40μL及び40μL、又は80μL及び0μL添加した。さらに、50mmol/Lグリシン−水酸化ナトリウム溶液(pH9.0)410μLをそれぞれに添加した後、混合してThT染色試料とした。各ThT染色試料中のAβ線維の濃度は2μmol/L(6試料共通)であり、ThTの濃度は、それぞれ0.5μmol/L、1μmol/L、2μmol/L、4μmol/L、8μmol/L及び16μmol/Lである。なお、モル濃度比([ThT]/[Aβ])は、それぞれ0.25、0.5、1、2、4及び8である。
(ネガティブコントロール試料)
Aβ線維を含む試料を10μLに蒸留水を80μL添加した。さらに、50mmol/Lグリシン−水酸化ナトリウム溶液(pH9.0)410μLを添加した後、混合して、ThTを含まないネガティブコントロール試料とした。
(蛍光減衰曲線の測定)
各ThT染色試料及びネガティブコントロール試料を、内径3mmの石英セルに分注し、小型蛍光寿命測定装置(Quantaurus−Tau型、浜松ホトニクス製)を用い、時間相関単光子係数法を用いて、励起波長405nmにおける蛍光減衰曲線I(t)を測定波長500nmで測定した。図4に蛍光減衰曲線を示す。図4に示す蛍光減衰曲線は、励起した時点から起算した時間に対する蛍光強度をプロットしたものである。また、図4中、「IRF」は、装置応答関数を示す。
(蛍光寿命値の解析)
得られた各蛍光減衰曲線I(t)は、以下に示す手順で、固有の蛍光寿命と重み因子を有する複数の成分に分離した。まず、数式1で示される関数G(t)を、数式2にしたがってコンボリューション積分し、曲線F(t)を得た。数式2において、E(t)は蛍光寿命測定装置の装置応答関数(IRF)、Cはバックグラウンドで、ネガティブコントロールの平均値から算出される定数である。

次に、I(t)とF(t)が最も良く一致するように、数式3におけるχを最小にする変数の組み合わせを非線形最小二乗法で探索し、数式1におけるτ〜τ、A〜Aの最良の組み合わせを得た。なお、数式3において、mは解析の時間範囲を示し、mは解析の開始時間、mは解析の終了時間を示す。この解析の結果得られたτ〜τが各蛍光又は発光成分の寿命、A〜Aが各蛍光又は発光成分の重み因子(すなわち発光成分の量)である。
n+1の値は、すなわち減衰曲線解析に必要な指数関数の数を示す成分数と呼ばれる数値であり、各成分は違う物理的機構および/もしくは発光種を起源とする。減衰曲線が複数ある場合は、試料間で各成分の寿命値がお互いに等しいと仮定する、非特許文献(Chem.Phys.Lett.,1983年,102巻,6号,pp.501)に記載のグローバル解析を行い、より信頼性の高い解析を実施した。
上記解析の結果、各蛍光減衰曲線は成分数n=0〜3、すなわち4つの成分で解析され、その寿命値はそれぞれ0.0071ns、0.26ns(成分A1)、0.89ns(成分A2)及び2.2ns(成分A3)であった。寿命値から、最も寿命の短い成分はAβ線維と結合していない未結合ThT、残りの3つの成分がAβと結合したThT由来の蛍光成分であると帰属した。
(各蛍光成分の蛍光強度の濃度依存性の解析方法)
成分iの蛍光強度Fは数式4で計算した。
各ThT濃度における成分別のThTの蛍光強度を数式4で求めた。図5(A)は、成分A1、成分A2及び成分A3それぞれの蛍光強度(F、F及びF)を、モル濃度比([ThT]/[Aβ])に対してプロットしたグラフである。成分A3は、モル濃度比が高くなるにつれて蛍光強度が飽和する傾向が認められたため、モル濃度比を更に高くしたThT染色試料に対して、上記と同様の解析を実施した。結果を図5(B)に示す。
図5において、Aβ線維と結合したThTの寿命成分A1〜A3は、独自の濃度依存性を示しており、これらの寿命成分が実在するAβ線維の結合サイトに由来することを示している。最も寿命の長い寿命成分A3に関して、高モル濃度比において、蛍光強度が低下する現象が観測された。高濃度の色素溶液で蛍光が消光する現象は、濃度消光と呼ばれ(例えば、坪村宏著、新物理化学(下)、化学同人、732頁)、色素が二量体を作ることが原因であることが知られている。さらに励起状態において形成される二量体はエキシマーと呼ばれ、単量体とは異なる蛍光特性を示すことも知られている。したがって、寿命成分A3における消光は、ThTが二量体、すなわちエキシマーを形成することに由来するものである。
[試験例:時間分解蛍光スペクトルの測定]
(Aβ線維を含む試料の調製)
参考例と同様の手順により、Aβ線維(Aβ凝集体)を含む試料を調製した。
(ThT水溶液の調製)
ThT(ウルトラピュアグレード,AAT Bioquest Inc.社製)を蒸留水に溶解し、400μmol/LのThT水溶液を得た。
(Aβ線維を含む試料のThT染色)
Aβ線維を含む試料を8μL分取したものを5試料分用意し、これらに対して、400μmol/LのThT水溶液及び蒸留水を、それぞれ5μL及び75μL、10μL及び70μL、20μL及び60μL、40μL及び40μL、又は80μL及び0μL添加した。さらに、50mmol/Lグリシン−水酸化ナトリウム溶液(pH9.0)912μLをそれぞれに添加した後、混合してThT染色試料とした。各ThT染色試料中のAβ線維の濃度は0.8μmol/L(5試料共通)であり、ThTの濃度は、それぞれ2μmol/L、4μmol/L、8μmol/L、16μmol/L、及び32μmol/Lである。なお、モル濃度比([ThT]/[Aβ])は、それぞれ2.5、5、10、20及び40である。
(ネガティブコントロール試料の調製)
Aβ線維を含む試料に代えて、ジメチルスルホキシドを10mmol/L HCl水溶液で2%(v/v)となるように希釈した溶液を用いたこと以外は、上記(Aβ線維を含む試料のThT染色)と同様の手順により、各ThT染色試料に対応するネガティブコントロール試料を調製した。
(蛍光測定)
各ThT染色試料及びネガティブコントロール試料を、内径3mmの石英セルに分注し、小型蛍光寿命測定装置(Quantaurus−Tau型、浜松ホトニクス製)を用い、時間相関単光子係数法を用いて、励起波長405nmにおける蛍光減衰曲線を、420nmから620nmまで5nmおきに測定した。測定された蛍光減衰曲線のピーク値の5%の立ち上がり部分を時刻0とし、時間10ns〜18nsの蛍光減衰曲線の測定値をそれぞれ積算し、積算値を波長別にプロットすることで時間10ns〜18nsにおける時間分解蛍光スペクトルを得た。
(Aβ線維に結合したThTエキシマーの蛍光識別方法)
図6(A)〜(D)は、各ThT染色試料及びネガティブコントロール試料の時間10ns〜18nsにおける時間分解蛍光スペクトル及びその規格化スペクトルである。図6(A)は、各ThT染色試料の時間10ns〜18nsにおける時間分解蛍光スペクトルである。当該時間分解蛍光スペクトルは、試料とは無関係の発光成分を除去するため、対応するネガティブコントロール試料の測定値をバックグラウンド蛍光として差し引いている。図6(B)は、図6(A)に示した時間分解蛍光スペクトルの規格化スペクトルである。規格化スペクトルは、時間分解蛍光スペクトルにおける最大の蛍光強度で各波長の蛍光強度を除したものである。また、図6(C)及び(D)は、それぞれネガティブコントロール試料の時間10ns〜18nsにおける時間分解蛍光スペクトル及びその規格化スペクトルである。なお、図6(C)及び(D)中の「モル濃度比」は、当該「モル濃度比」のThT染色試料に対応するネガティブコントロール試料であることを意味する。
図6(A)及び(B)に示すとおり、モル濃度比([ThT]/[Aβ])の上昇に従って、480nm付近をピークとする蛍光が減少し、570nm付近をピークとする蛍光が出現することが分かる。出現する蛍光は、蛍光波長が水溶液中のThTエキシマーの蛍光波長(570nm付近。非特許文献2)と近く、Aβ線維(アミロイド凝集体)とThTエキシマーの結合体に由来する蛍光であると考えられる。したがって、本発明に基づいて、エキシマー蛍光を検出することにより、長波長蛍光にてAβ線維(アミロイド凝集体)を検出することができる。
D…アミロイド凝集体検出装置、D1…取得手段、D2…検出手段、D3…判定手段、D4…表示手段、D11…CPU、D12…ROM、D13…RAM、D14…入力デバイス、D15…出力デバイス、D16…通信モジュール、D17…補助記憶装置。

Claims (4)

  1. チオフラビンTと接触させた被験試料の時間分解蛍光を測定するステップと、
    測定された時間分解蛍光からチオフラビンTエキシマーとアミロイド凝集体との結合体に由来する蛍光を検出するステップと、を含む、アミロイド凝集体の検出方法。
  2. チオフラビンTと接触させた被験試料の時間分解蛍光データを取得する取得手段と、
    取得した時間分解蛍光データからチオフラビンTエキシマーとアミロイド凝集体との結合体に由来する蛍光が存在するか否かを検出する検出手段と、
    検出結果に基づき、前記被験試料にアミロイド凝集体が存在するか否かを判定する判定手段と、を備える、アミロイド凝集体検出装置。
  3. コンピュータを、
    チオフラビンTと接触させた被験試料の時間分解蛍光データを取得する取得手段、
    取得した時間分解蛍光データからチオフラビンTエキシマーとアミロイド凝集体との結合体に由来する蛍光を検出する検出手段、及び
    検出結果に基づき、前記被験試料にアミロイド凝集体が存在するか否かを判定する判定手段、
    として機能させるためのアミロイド凝集体検出プログラム。
  4. 請求項3に記載のアミロイド凝集体検出プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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