JP2019031486A - 新規ポリペプチド及びその用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】 強い細胞保護作用を有し、かつ血液抗凝固作用が十分に軽減されたポリペプチド又はその塩を提供する【解決手段】 X1CPEGYILDDGX2ICTDIDEで表されるポリペプチド(式中、アミノ酸残基は一文字表記により示し、ただし、N末端から2番目のシステイン残基(C)とN末端から14番目のシステイン残基(C)はS−S結合を形成して互いに結合しており、該S−S結合はCHR1−CHR2(R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示す)で表される基で置き換えられていてもよく;X1は存在しないか、又はグルタミン酸残基(E)若しくはアスパラギン酸残基(D)を示し;X2はフェニルアラニン残基、アラニン残基、又はチロシン残基を示す)又はその塩。【選択図】 なし
Description
本発明は新規なポリペプチド及びその用途に関する。
敗血症、虚血/再灌流障害、卒中、虚血性発作、急性心筋梗塞、急性神経変性疾患、アルツハイマー病、ダウン症症候群、ハンチントン病、筋委縮性側索硬化症、パーキンソン病、褥瘡、創傷、閉塞性動脈疾患、動脈硬化症、高脂血症、糖尿病、肥満、臓器移植、化学療法、免疫抑制薬、及び放射線障害等、種々の疾患や処置により細胞は傷害を受ける。これらの疾患や処置による傷害の治療においては抗アポトーシス活性を一つの機序とする細胞保護活性を有する物質が有効である。細胞保護活性を有する蛋白質の一つとして、トロンボモジュリンが知られている。
本来トロンボモジュリンは、トロンビンと特異的に結合しトロンビンの血液凝固活性を阻害すると同時にトロンビンのプロテインC活性化能を著しく促進する作用を有する物質として知られ、強力な血液凝固阻害作用を有することが知られている。トロンビンによる凝固時間を延長することや、トロンビンによる血小板凝集を抑制することも知られている。プロテインCは、血液凝固線溶系において重要な役割を演じているビタミンK依存性の蛋白質であり、トロンビンの作用により活性化され、活性化プロテインCとなる。この活性化プロテインCは、生体内で血液凝固系因子の活性型第V因子、及び活性型第VIII因子を失活させ、また血栓溶解作用を有するプラスミノゲンアクチベータの産生に関与していることが知られている(非特許文献1)。
シグナルペプチドが切断されたマチュアなトロンボモジュリンは、そのマチュアなポリペプチドのN末端側よりN末端領域(D1、1−226番目:シグナルペプチドが18アミノ酸残基であると考えた場合の位置表示、以下同じ)、6つのEGF様構造をもつ領域(D2、227−462番目)、O型糖鎖付加領域(D3、463−498番目)、膜貫通領域(D4、499−521番目)、そして細胞質内領域(D5、522−557番目)の5つの領域から構成されている。全長のトロンボモジュリンと同じプロテインC活性化促進活性を有する部分は、6つのEGF様構造を持つ領域のうち、主としてN末端側から4、5、6番目のEGF様構造からなる部分(E456)であることが知られている(非特許文献2)。また、6つのEGF様構造を持つ領域のうち、N末端側から4、5番目のEGF様構造からなる部分(E45)では、全長のトロンボモジュリンよりは低下しているが、プロテインC活性化促進活性を有していることが知られている(非特許文献3)。
N末端領域と6つのEGF様構造をもつ領域とO型糖鎖付加領域の3つの領域のみからなる可溶性トロンボモジュリン(D123)は、造血器悪性腫瘍ならびに感染症DIC患者を対象とした第三相臨床試験が実施され、未分画ヘパリン治療に対して、有効性と安全性の点で勝ることが示され、汎発性血管内血液凝固症(DIC)治療薬として臨床応用されている。D123は細胞保護活性を有することが知られている(非特許文献4)。
D123やE45は、細胞保護作用を有するとともに、トロンビンと結合しプロテインC活性化を促進する抗凝固作用も有することが知られていたが、抗凝固作用を有する物質を生体内へ投与した場合、出血の副作用のリスクがあることが知られている。例えば、活性化プロテインC(APC)は、高い出血リスクを有しており、市場からの撤退を余儀なくされている(非特許文献5)。この出血の副作用のリスクを回避し、細胞保護作用を有すると同時に抗凝固作用を軽減すべく、E45の部分ポリペプチドとして40アミノ酸残基からなるE5ポリペプチドが提供された(特許文献1)。このポリペプチド(E5)はE45と同等以上の細胞保護作用を有し、かつ非常に少ないプロテインC活性化を促進する作用、すなわち非常に少ない抗凝固作用を有している。
鈴木宏治、医学のあゆみ 1983;125:901
Zushi M et al.J Biol Chem 1989;264:10351−10353
Hayashi T et al.J Biol Chem 1990;265:20156−20159
Ikezoe T et al.Arterioscler Thromb Vasc Biol 2012;32:2259−2270
Marti-Carvajal AJ et.al Cochrane Database Syst Rev.2012 ; (12):CD004388
E5は以下の配列を有する40アミノ酸残基からなるポリペプチドであり、それぞれループ構造を有する3つの部分構造、すなわち11アミノ酸残基からなるE5−A(本明細書において「KAF04」と呼ぶ場合がある)、11アミノ酸残基からなるE5−B(本明細書において「KAF05」と呼ぶ場合もある)、及び19アミノ酸残基からなるE5−C(本明細書において「KAF06」と呼ばれる場合もある)からなることが明らかにされている。
しかしながら、従来、E5の活性発現を担う部分構造は特定されていない。E5の活性発現を担う部分構造を特定することができれば、強い細胞保護作用を有し、かつプロテインC活性化促進作用が十分に軽減されたポリペプチドを提供できる可能性がある。
従って、本発明の課題は、E5の活性発現を担う部分構造を特定し、E5の部分ポリペプチドであって、強い細胞保護作用を有し、かつプロテインC活性化促進作用が十分に軽減されたポリペプチドを提供することにある。
また、本発明の別の課題は、上記の特徴を有するE5の部分ポリペプチドにおいて、活性に寄与するアミノ酸残基を特定し、同様の活性を有する変異E5部分ポリペプチドを提供することにある。
従って、本発明の課題は、E5の活性発現を担う部分構造を特定し、E5の部分ポリペプチドであって、強い細胞保護作用を有し、かつプロテインC活性化促進作用が十分に軽減されたポリペプチドを提供することにある。
また、本発明の別の課題は、上記の特徴を有するE5の部分ポリペプチドにおいて、活性に寄与するアミノ酸残基を特定し、同様の活性を有する変異E5部分ポリペプチドを提供することにある。
本発明者らは、E5の活性発現を担う部分構造を特定するためにE5の構造と活性との相間を研究し、E5−C(KAF06、TME5Cと呼ばれる場合もある)がE5の活性に寄与する部分構造であることを突き止めた。本発明者らはさらに研究を行い、E5−CのN末端のグルタミン酸酸残基(E)を除いた18アミノ酸残基からなるポリペプチド(本明細書においてこのポリペプチドを「KAF12と呼ぶ場合がある」がE5に含まれる最小の活性単位であることを見いだした。さらに、このKAF12においてアミノ酸残基やループ構造を変化させた特定の変異ポリペプチドにおいて所望の活性が保存されており、かつ血液抗凝固作用を十分に低減できることを見いだした。本発明は上記の知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明により、X1CPEGYILDDGX2ICTDIDEで表されるポリペプチド(式中、アミノ酸残基は一文字表記により示し、ただし、N末端から2番目のシステイン残基(C)とN末端から14番目のシステイン残基(C)はS−S結合を形成して互いに結合しており、該S−S結合はCHR1−CHR2(R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示す)で表される基で置き換えられていてもよく;X1は存在しないか、又はグルタミン酸残基(E)若しくはアスパラギン酸残基(D)を示し;X2はフェニルアラニン残基、アラニン残基、又はチロシン残基を示す)又はその塩が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、N末端から2番目のシステイン残基(C)とN末端から14番目のシステイン残基(C)はS−S結合を形成して互いに結合している上記のポリペプチド又はその塩が提供される。また、ECPEGYILDDGFICTDIDEで表されるポリペプチド(KAF06:式中、アミノ酸残基は一文字表記により示し、ただし、N末端から2番目のシステイン残基(C)とN末端から14番目のシステイン残基(C)はS−S結合を形成して互いに結合している)又はその塩、及びCPEGYILDDGFICTDIDEで表されるポリペプチド(KAF12:式中、アミノ酸残基は一文字表記により示し、ただし、N末端のシステイン残基(C)とN末端から13番目のシステイン残基(C)はS−S結合により互いに結合している)又はその塩が提供される。
本発明の別の好ましい態様により、ECPEGYILDDGAICTDIDEで表されるポリペプチド(KAF24)又はその塩、ECPEGYILDDGYICTDIDEで表されるポリペプチド(KAF37)又はその塩、CPEGYILDDGAICTDIDEで表されるポリペプチド(KAF124)又はその塩、及びCPEGYILDDGYICTDIDEで表されるポリペプチド(KAF137)又はその塩が提供される(式中、アミノ酸残基は一文字表記により示し、2個のシステイン残基(C)はS−S−結合を形成して互いに結合している)。
別の観点からは、本発明により、上記のいずれかのポリペプチド又はその塩を有効成分として含む医薬組成物;細胞障害の予防及び/又は治療のための上記医薬組成物;血管内皮細胞障害の予防及び/又は治療のための上記医薬組成物;消化管上皮細胞障害、気管上皮細胞障害、又は肺胞上皮細胞障害の予防及び/又は治療のための上記医薬組成物;表皮細胞障害の予防及び/又は治療のための上記医薬組成物が提供される。
さらに別の観点からは、上記の医薬組成物の製造のための上記のいずれかのポリペプチド又はその塩の使用;細胞障害の予防及び/又は治療方法であって、上記のいずれかのポリペプチド又はその塩をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;血管内皮細胞障害の予防及び/又は治療方法であって、上記のいずれかのポリペプチド又はその塩をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;消化管上皮細胞障害、気管上皮細胞障害、又は肺胞上皮細胞障害の予防及び/又は治療方法であって、上記のいずれかのポリペプチド又はその塩をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;及び表皮細胞障害の予防及び/又は治療方法であって、上記のいずれかのポリペプチド又はその塩をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が提供される。
本発明としては、具体的には以下のものが挙げられる。もちろん、これらに限定されるものではない。
〔1〕X1CPEGYILDDGX2ICTDIDEで表されるポリペプチド(式中、アミノ酸残基は一文字表記により示し、ただし、N末端から2番目のシステイン残基(C)とN末端から14番目のシステイン残基(C)はS−S結合を形成して互いに結合しており、該S−S結合はCHR1−CHR2(R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示す)で表される基で置き換えられていてもよく;X1は存在しないか、又はグルタミン酸残基(E)若しくはアスパラギン酸残基(D)を示し;X2はフェニルアラニン残基、アラニン残基、又はチロシン残基を示す)又はその塩。
〔1−2〕R1及びR2がいずれも水素原子である前記〔1〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔1〕X1CPEGYILDDGX2ICTDIDEで表されるポリペプチド(式中、アミノ酸残基は一文字表記により示し、ただし、N末端から2番目のシステイン残基(C)とN末端から14番目のシステイン残基(C)はS−S結合を形成して互いに結合しており、該S−S結合はCHR1−CHR2(R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示す)で表される基で置き換えられていてもよく;X1は存在しないか、又はグルタミン酸残基(E)若しくはアスパラギン酸残基(D)を示し;X2はフェニルアラニン残基、アラニン残基、又はチロシン残基を示す)又はその塩。
〔1−2〕R1及びR2がいずれも水素原子である前記〔1〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔2〕ECPEGYILDDGFICTDIDEで表されるポリペプチド(式中、アミノ酸残基は一文字表記により示し、ただし、N末端から2番目のシステイン残基(C)とN末端から14番目のシステイン残基(C)はS−S結合を形成して互いに結合しており、該S−S結合はCHR1−CHR2(R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示す)で表される基で置き換えられていてもよい)又はその塩。
〔3〕CPEGYILDDGFICTDIDEで表されるポリペプチド(式中、アミノ酸残基は一文字表記により示し、ただし、N末端のシステイン残基(C)とN末端から13番目のシステイン残基(C)はS−S結合により互いに結合しており、該S−S結合はCHR1−CHR2(R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示す)で表される基で置き換えられていてもよい)又はその塩。
〔4〕下記のいずれかのポリペプチド:
ECPEGYILDDGAICTDIDEで表されるポリペプチド、ECPEGYILDDGYICTDIDEで表されるポリペプチド、CPEGYILDDGAICTDIDEで表されるポリペプチド、又はCPEGYILDDGYICTDIDEで表されるポリペプチド(式中、アミノ酸残基は一文字表記により示し、2個のシステイン残基(C)はS−S−結合を形成して互いに結合しており、該S−S結合はCHR1−CHR2(R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示す)で表される基で置き換えられていてもよい)あるいはその塩。
ECPEGYILDDGAICTDIDEで表されるポリペプチド、ECPEGYILDDGYICTDIDEで表されるポリペプチド、CPEGYILDDGAICTDIDEで表されるポリペプチド、又はCPEGYILDDGYICTDIDEで表されるポリペプチド(式中、アミノ酸残基は一文字表記により示し、2個のシステイン残基(C)はS−S−結合を形成して互いに結合しており、該S−S結合はCHR1−CHR2(R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示す)で表される基で置き換えられていてもよい)あるいはその塩。
〔5〕該S−S結合がCHR1−CHR2で表される基で置き換えられていない前記〔1〕ないし〔4〕のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6〕該S−S結合がCHR1−CHR2で表される基で置き換えられている前記〔1〕ないし〔4〕のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−2〕該S−S結合がCH2−CH2で表される基で置き換えられている前記〔1〕ないし〔4〕のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−3〕該S−S結合がCH2−CH2で表される基で置き換えられている前記〔1〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−4〕該S−S結合がCH2−CH2で表される基で置き換えられている前記〔2〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−5〕該S−S結合がCH2−CH2で表される基で置き換えられている前記〔3〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6〕該S−S結合がCHR1−CHR2で表される基で置き換えられている前記〔1〕ないし〔4〕のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−2〕該S−S結合がCH2−CH2で表される基で置き換えられている前記〔1〕ないし〔4〕のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−3〕該S−S結合がCH2−CH2で表される基で置き換えられている前記〔1〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−4〕該S−S結合がCH2−CH2で表される基で置き換えられている前記〔2〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−5〕該S−S結合がCH2−CH2で表される基で置き換えられている前記〔3〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−6〕該S−S結合がCH2−CH2で表される基で置き換えられている前記〔4〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−7〕ECPEGYILDDGAICTDIDEで表されるポリペプチドである前記〔6−6〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−8〕ECPEGYILDDGYICTDIDEで表されるポリペプチドである前記〔6−6〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−9〕CPEGYILDDGAICTDIDEで表されるポリペプチドである前記〔6−6〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−10〕CPEGYILDDGYICTDIDEで表されるポリペプチドである前記〔6−6〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−7〕ECPEGYILDDGAICTDIDEで表されるポリペプチドである前記〔6−6〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−8〕ECPEGYILDDGYICTDIDEで表されるポリペプチドである前記〔6−6〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−9〕CPEGYILDDGAICTDIDEで表されるポリペプチドである前記〔6−6〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔6−10〕CPEGYILDDGYICTDIDEで表されるポリペプチドである前記〔6−6〕に記載のポリペプチド又はその塩。
〔7〕前記〔1〕ないし〔6〕のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその塩を有効成分として含む医薬組成物。
〔8〕細胞障害、血管内皮細胞障害、消化管上皮細胞障害、気管上皮細胞障害、肺胞上皮細胞障害、及び表皮細胞障害からなる群から選ばれる1又は2以上の障害の予防及び/又は治療のため前記〔7〕に記載の医薬組成物。
〔8〕細胞障害、血管内皮細胞障害、消化管上皮細胞障害、気管上皮細胞障害、肺胞上皮細胞障害、及び表皮細胞障害からなる群から選ばれる1又は2以上の障害の予防及び/又は治療のため前記〔7〕に記載の医薬組成物。
本発明により提供されるポリペプチド又はその塩は、優れた細胞保護活性を有し、かつ抗凝固作用が十分に軽減されている。従って、上記ポリペプチドを有効成分として含む医薬組成物は、所望の薬効を十分に発揮しつつ、出血のリスクをほぼ完全に低減することができる。
本発明により、X1CPEGYILDDGX2ICTDIDEで表されるポリペプチド又はその塩が提供される。式中、アミノ酸残基は一般的に使用されている一文字表記により示してあり、Aはアラニン残基、Dはアスパラギン酸残基、Cはシステイン残基、Eはグルタミン酸残基、Gはグリシン残基、Iはイソロイシン残基、Lはロイシン残基、Pはフェニルアラニン残基、及びTはトレオニン残基を示す。
上記のポリペプチドにおいて、N末端から2番目のシステイン残基(C)とN末端から14番目のシステイン残基(C)はS−S結合を形成して互いに結合している。このS−S結合はCHR1−CHR2(R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示す)で表される基で置き換えられていてもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基などを挙げることができる。R1及びR2がともに水素原子であることが好ましい。X1は存在しないか、又はグルタミン酸残基(E)若しくはアスパラギン酸残基(D)を示し、X2はフェニルアラニン残基(P)、アラニン残基(A)、又はチロシン残基(Y)を示す。
本発明のポリペプチドのうち、好ましいポリペプチドとして、ECPEGYILDDGFICTDIDEで表されるポリペプチド(KAF06ポリペプチド:N末端から2番目のシステイン残基(C)とN末端から14番目のシステイン残基(C)はS−S結合を形成して互いに結合している)、及びCPEGYILDDGFICTDIDEで表されるポリペプチド(KAF12ポリペプチド:N末端のシステイン残基(C)とN末端から13番目のシステイン残基(C)はS−S結合を形成して互いに結合している)を挙げることができる。
KAF06ポリペプチドは、E5の部分構造であるE5−Cに相当するポリペプチドであり、KAF12ポリペプチドは、KAF06ポリペプチドのN末端のグルタミン酸残基(E)を除いたポリペプチドである。2個のシステイン残基(C)はS−S結合を形成して架橋により互いに結合している(下記に示すのはKAF06ポリペプチドであり、KAF12ポリペプチドではN末端のグルタミン酸残基(E)が存在しない)。
別の好ましいポリペプチドとして、ECPEGYILDDGAICTDIDEで表されるポリペプチド(KAF24ポリペプチド)、ECPEGYILDDGYICTDIDEで表されるポリペプチド(KAF37ポリペプチド)、CPEGYILDDGAICTDIDEで表されるポリペプチド(KAF124ポリペプチド)、及びCPEGYILDDGYICTDIDEで表されるポリペプチド(KAF137ポリペプチド)を挙げることができる。これらのポリペプチド中に存在する2個のシステイン残基はS−S結合を形成して架橋により互いに結合している。もっとも、本発明のポリペプチドは上記に説明した特定のポリペプチドに限定されることはない。
本発明のポリペプチドは塩の形態であってもよい。塩の形態は特に限定されず、酸付加塩又は塩基付加塩のいずれであってもよく、任意の塩の形態を選択することができる。医薬組成物の有効成分として本発明のポリペプチドを用いる場合には、生理的に許容される塩を選択することが望ましい。
本発明のポリペプチドは、細胞保護活性を有し、かつプロテインCの活性化促進作用が軽減されている。本発明のポリペプチドは、細胞保護活性を有しつつ、かつプロテインC活性化促進作用が十分に軽減されていることから、所望の薬理作用と副作用とがほぼ完全に分離されているという特徴がある。従って、本発明のポリペプチドでは、細胞死抑制活性などの細胞保護作用を強力に発揮しつつ、血液の抗凝固作用をほぼ完全に抑制できることから、出血性の副作用をほぼ完全に回避しつつ、所望の治療を行うことができる。
細胞保護活性としては、例えば、細胞死抑制活性、細胞透過性亢進抑制活性、血管新生促進活性、細胞増殖促進活性、及び細胞機能維持活性からなる群から選ばれる1又は2以上の活性を挙げることができるが、これらに限定されることはない。細胞保護活性としては、上記の少なくとも一つを有していれば特に限定されないが、2以上の活性を有していることが好ましく、全ての活性を有していることが好ましい。
細胞死抑制活性は、細胞の抗アポトーシス活性を測定することにより確認することができる。アポトーシスとは生理的、病理的要因により生じた不要な細胞や障害細胞などを積極的に除去する能動的細胞死とされてきたが、種々の病態に伴う細胞死にも関与しており、アポトーシスにより細胞障害が引き起こされることが明らかとなってきている。従って、アポトーシスを抑制することは、細胞死を抑制し、細胞障害の進展を阻害するために有効である。アポトーシスに関わるシグナル伝達経路は、アポトーシス促進分子や抑制分子等多くの分子からなることから、一般的には、一度に全てのアポトーシス活性を抑制できるわけではない。
抗アポトーシス活性とは、アポトーシスを惹起する物質で細胞等を処理したときに誘導されるアポトーシスを抑制する活性のことであり、アポトーシス促進分子の阻害活性やアポトーシス抑制分子の上昇活性を示す。例えば、特開2015−63498号公報の実施例(2)に記載されているように、非特許文献4に記載された試験方法によりヒト臍帯静脈内皮に対するアポトーシス抑制分子、すなわち抗アポトーシス蛋白質の一種であるMcl-1の発現誘導の程度を調べることにより、又は同公報の実施例(3)に記載されているように、非特許文献4に記載された試験方法に従ってヒト臍帯静脈内皮細胞における免疫抑制剤誘発性アポトーシスの阻害の程度を調べることにより、抗アポトーシス活性を確認することができる。
抗アポトーシス活性としては、細胞死を妨げる効果を示すものであれば特に限定されないが、Mcl-1の発現誘導が無刺激の状態の細胞での発現に比して2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、8倍以上であることがさらに好ましい。
細胞透過性亢進抑制活性は種々の惹起物質にて特定の細胞を刺激することで引き起こされた細胞透過性亢進に対する抑制活性を測定することにより確認することができる。細胞透過性亢進とは、外界からの様々な刺激によって引き起こされる組織障害に対して生体防御反応として炎症が惹起され、機械的原因に加えて組織障害及び炎症反応により誘導されるサイトカインやケミカルメディエーター等によって細胞間のバリア機構が破たんし、細胞同士の接合部が開くことにより物質が細胞間を通過しやすくなることを示す。透過性が亢進すると、細胞成分の一つである白血球が細胞に接着し、その形を扁平化させて細胞の間隙から浸潤する。白血球は、組織内に侵入してきた細菌や異物などを食作用によって細胞内に取り込み、消化分解して無毒化し、さらには壊死した細胞を除去させる。その結果、炎症が終焉に向かうとともに細胞透過性亢進も見られなくなり、同時に細胞修復も始まり元の正常な状態に戻る。しかしながら、組織障害が繰り返して生じる場合や、自己免疫異常による炎症の場合は、組織修復と同時に新たな炎症が始まるため、炎症が恒常的に続き、慢性炎症となり機能障害が引き起こされる。
細胞透過性亢進が特に問題となる細胞は内皮細胞及び上皮細胞である。内皮は内皮細胞の薄層からなる。内皮細胞の層は、とりわけ、静脈や毛細血管などの血管の内部表面、及び血液と血管の外壁の間のバリア(関門)を形成する。内皮細胞は、大血管から最も小さい毛細血管までの全血管系の内側を被う。上皮細胞は、ヒト及び動物器官のすべての内部及び外部体表面を被う単層又は多層の細胞層を形成する。上皮細胞は、互いに近接して、細胞接着に富む。上皮細胞は、外側、外部又は内腔に向かう頂側、及び基底側に区別することができる。さらに、上皮細胞は、閉鎖帯 (密着結合)、接着帯 (接着結合)、及びデスモソーム (接着斑)からなる接着複合体(結合複合体)を有し、これは一方で物理化学的バリアを示し、他方で隣り合った上皮細胞を相互に連結させる。
細胞透過性亢進抑制活性は、例えば、特開2015−63498号公報の実施例(4)に記載されているように、非特許文献4に記載された試験方法によりヒト臍帯静脈内皮細胞における免疫抑制剤や炎症性サイトカインにより誘導される細胞透過性の亢進の阻害の程度を調べることにより確認することができる。細胞透過性亢進抑制活性としては、透過性亢進を抑制する効果を示すものであれば透過性亢進惹起物質や細胞の種類は特に限定されない。
血管新生促進活性は、一般的な血管新生評価方法を用いて確認することができる。近年、心・脳などの血管障害が死因の過半を占めており、血管障害による死亡率の減少及び生存者のQOLの改善が医療の重要なテーマの一つとされている。特に重篤な疾患として閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans;ASO)などの重症慢性下肢虚血患者に対する血管新生療法が治療モデルとして盛んに行われている。血管新生促進活性は、例えば、特開2015−63498号公報の実施例(5)に記載されているように、非特許文献4に記載された試験方法によりin vitroやin vivoの両方で確認することができる。in vitroでは、培養血管内皮細胞の管腔形成の促進活性を管腔の長さや分岐点の数で評価できる。in vivoでは、マウスマトリゲル皮下移植法にてゲル内のヘモグロビン含量で評価できる。
細胞増殖促進活性は、一般的な細胞増速活性を測定する方法にて確認することができる。評価する細胞としては、特に限定されないが、内皮細胞及び上皮細胞であることが好ましい。細胞増殖促進活性は、例えば、特開2015−63498号公報の実施例(7)に記載されているように、非特許文献4に記載された試験方法により確認することができる。
細胞機能維持活性は、特定の細胞機能が維持されていることを一般的な方法にて確認することができる。例えば、特開2015−63498号公報の実施例(6)に記載のように、血管内皮細胞の機能の場合はNO産生促進活性によって評価することができる(非特許文献4)。
本発明のポリペプチドにおけるプロテインCの活性化を促進する作用、すなわち抗凝固作用は、例えば、特開2015−63498号公報の実施例(9)に記載のように、特開昭64−6219号公報を初めとする各種の公知文献に明確に記載された試験方法により、プロテインCの活性化を促進する作用の活性量やその有無を測定することにより容易に確認することができる。プロテインCの活性化を促進する作用、すなわち抗凝固作用としては、D123が有する抗凝固活性の1/10以下であることが好ましく、1/100以下であることがより好ましく、1/1000以下であることがさらに好ましく、検出限界以下であることが特に好ましい。抗凝固作用が全く無いことが好ましい別の態様もある。
本実施の形態におけるポリペプチドは、細胞保護活性として、細胞死抑制活性、細胞透過性亢進抑制活性、血管新生促進活性、細胞増殖促進活性、及び細胞機能維持活性からなる群から選ばれる1又は2以上の活性を有することが好ましく、2以上の活性を有していることがさらに好ましく、全ての活性を有していることが特に好ましい。
本発明のポリペプチドは化学合成により、又は大腸菌などの微生物を用いた遺伝子組み換え操作により製造することができる。遺伝子操作の過程やポリペプチドの製造過程において、大腸菌等の微生物に適した宿主−ベクター系を使用することが好ましい。
上記により取得された培養上清、又は培養物からのポリペプチドの単離精製方法は、公知の手法(例えば、堀尾武一編集、蛋白質・酵素の基礎実験法、1981)に準じて行うことができる。例えば、ポリペプチドと逆の電荷を持つ官能基を固定化したクロマトグラフィー担体と、ポリペプチドの間の相互作用を利用したイオン交換クロマトグラフィーや吸着クロマトグラフィーの使用も好ましい。また、ポリペプチドとの特異的親和性を利用したアフィニティークロマトグラフィーも好ましい例として挙げられる。
また、Hisタグを有する発現ベクターを使用した場合には、Hisタグ精製キット(例えばMBL社製)を用いてポリペプチドを精製することができる。
精製の程度は、使用目的等により選択でき、例えば電気泳動、好ましくはSDS−PAGEの結果が単一バンドとして得られるか、もしくは単離精製品のゲル濾過HPLC又は逆相HPLCの結果が単一のピークになるまで純粋化することが好ましいが、単一のバンドを得ることを求めるものではない。
精製の程度は、使用目的等により選択でき、例えば電気泳動、好ましくはSDS−PAGEの結果が単一バンドとして得られるか、もしくは単離精製品のゲル濾過HPLC又は逆相HPLCの結果が単一のピークになるまで純粋化することが好ましいが、単一のバンドを得ることを求めるものではない。
本実施の形態におけるポリペプチドは、細胞保護活性として、細胞死抑制活性、細胞透過性亢進抑制活性、血管新生促進活性、細胞増殖促進活性、及び細胞機能維持活性からなる群から選ばれる1又は2以上の活性を有するものであれば、糖鎖やポリエチレングリコール(PEG)鎖が付加していてもよい。また、ポリペプチドを構成するアミノ酸の少なくとも一部にD体アミノ酸が含まれていてもよい。これらは、生体内での安定性が高い点で好ましい場合がある。
ポリペプチドにおける糖鎖付加は、公知の方法により行うことができる(Sato M et.al. J Am Chem Soc. 2004 Nov 3;126(43):14013-22)。糖鎖はN末端、C末端又はそれらの間のアミノ酸に結合可能であるが、ポリペプチドの活性を阻害しないためにN末端又はC末端に結合することが好ましい。また、付加する糖鎖の個数は、1個又は2個が好ましく、1個が好ましい。糖鎖は、単糖から4糖が好ましく、さらには2糖又は3糖が好ましい。糖鎖は、ポリペプチドの遊離のアミノ基又はカルボキシル基に直接又は例えば炭素数1〜10程度のメチレン鎖等のスペーサー構造を介して結合することができる。
ポリペプチドにおけるPEG鎖付加は、公知の方法により行うことができる(Ulbricht K et.al. Clin Nephrol. 2006 Mar;65(3):180-90)。PEG鎖は、N末端、C末端又はそれらの間のアミノ酸に結合可能であり、通常、1個又は2個のPEG鎖が、ポリペプチド上の遊離のアミノ基やカルボキシル基に結合される。PEG鎖の分子量は、特に限定されないが、通常3000〜7000程度、好ましくは5000程度のものが用いられる。
ポリペプチドを構成するアミノ酸の少なくとも一部をD体とすることは、公知の方法により行うことができる(Brenneman DE et.al. J Pharmacol Exp Ther. 2004 Jun;309(3):1190-7)。ポリペプチドを構成するアミノ酸の一部をD体としてもよいが、ポリペプチドの活性をできるだけ阻害しないようにするため、ポリペプチドを構成するアミノ酸の全てをD体アミノ酸とすることが好ましい場合がある。
本実施の形態におけるポリペプチドは、市販のペプチド合成機を用いた化学合成等の常法によっても容易に製造することができる。また、上記安定化修飾も、上記各文献に記載されているような周知の方法により容易に行なうことができる。
本発明のポリペプチドにおける2個のシステイン残基が形成するS−S結合が、CHR1−CHR2で表される基で置き換えられた本発明の一態様のポリペプチドは、例えば下記式(I)化合物(又は式(I)中のアミノ基もしくはカルボキシル基が適宜保護された
化合物)を用い、本発明のポリペプチドとなるよう適宜必要なペプチドを化学合成により結合させることにより製造することができる。式(I)化合物は、公知の方法により又は
当業者の技術常識に基づき製造することができる。例えば、式(I)中、R1及びR2が
ともに水素原子である化合物(2,7−ジアミノスベリン酸)は、公知の方法(森寛、日本化学雑誌、82巻、10号、1961年)により製造することができる。
化合物)を用い、本発明のポリペプチドとなるよう適宜必要なペプチドを化学合成により結合させることにより製造することができる。式(I)化合物は、公知の方法により又は
当業者の技術常識に基づき製造することができる。例えば、式(I)中、R1及びR2が
ともに水素原子である化合物(2,7−ジアミノスベリン酸)は、公知の方法(森寛、日本化学雑誌、82巻、10号、1961年)により製造することができる。
本発明により、本発明の上記ポリペプチドを有効成分として含む医薬組成物が提供される。本実施の形態における医薬組成物は、細胞保護作用を有しており、低酸素、物理的因子(外傷、熱、放射線等)、感染、毒素、あるいは炎症反等によって惹起される細胞障害を改善するために用いることができる。
細胞障害とは、適応の限界(可逆性)を超えた外的因子あるいは内的因子にさらされ、細胞の死に至るものと定義される。すなわち、外界からの様々な刺激によって引き起こされる組織障害やそれに伴って出てくる自己由来の起炎性因子に対して生体防御反応として炎症が惹起され、組織障害及び炎症反応により誘導されるサイトカインやケミカルメディエーター等によって細胞間のバリア機構が破たんし細胞透過性が亢進し、細胞がアポトーシス等の細胞死が誘導され、細胞機能障害が引き起こされる状態ことを言う。
細胞障害としては、敗血症、虚血/再灌流障害、卒中、虚血性発作、急性心筋梗塞、急性神経変性疾患、アルツハイマー病、ダウン症症候群、ハンチントン病、筋委縮性側索硬化症、パーキンソン病、褥瘡、創傷、閉塞性動脈疾患、動脈硬化症、高脂血症、糖尿病、肥満、臓器移植、化学療法、免疫抑制薬、及び放射線障害等、種々の疾患や処置により細胞が受ける障害が挙げられる。本実施の形態による医薬組成物は、細胞保護作用を有することにより、これらの細胞障害を予防及び/又は治療することができる。なお、本明細書中において、細胞障害の予防及び/又は治療とは、細胞障害に起因する疾患の予防及び/又は治療も含む。
本実施の形態における細胞障害は、低酸素、物理的因子(外傷、熱、放射線等)、感染、毒素、あるいは炎症反等によって惹起される細胞障害であれば特に限定されないが、血管内皮細胞障害、表皮細胞障害、消化管上皮細胞障害、気管上皮細胞障害、又は肺胞上皮細胞障害が例示される。
血管内皮細胞障害は、高血圧、高血糖、脂質異常、喫煙、インスリン抵抗性、炎症性サイトカイン等の因子により血管内皮細胞が活性化され、それにより血管内皮細胞透過性が亢進し、血液中の有害物質が血管中に進入するのを防ぐことができなくなり、また、様々な細胞・組織・器官の情報伝達や免疫応答に関与することで血管の恒常性維持ができなくなる状態をいう。血管透過性が亢進し、血管が拡張するために発赤と浮腫による腫脹が起こり、それに伴い発熱物質や発痛物質による熱や痛みが生じる。
血管内皮細胞障害に起因する疾患としては、敗血症、虚血/再灌流障害、卒中、虚血性発作、急性心筋梗塞、閉塞性動脈疾患、動脈硬化症、高脂血症、糖尿病、類洞閉塞症候群、溶血性尿毒症症候群、血栓性微小血管障害症、播種性血管内血液凝固症候群、全身性毛細管漏出症候群が例示される。本実施の形態における医薬組成物はこれら疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。
皮膚の表面には主に表皮細胞から形成される表皮があり、体内の水分保持や外界の細菌や刺激からからだを守るバリアの役割を果たしている。表皮細胞障害は、物理的因子(外傷、熱、外力、放射線等)やストレス、神経ペプチド、ヒスタミン、感染等により障害を受け、皮膚の透過性の亢進、感染防御能の低下といったいわゆるバリア機能が障害され、角質層における水分の保持機能が損なわれ、外界からの刺激物や細菌、アレルゲンが入りやすくなりさらに炎症が誘導され、皮膚の機能異常をきたした状態をいう。皮膚組織の微小循環不全から細胞壊死に至る場合もある。
表皮細胞障害に起因する疾患としては、褥瘡、アトピー性皮膚炎が例示される。本実施の形態における医薬組成物はこれら疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。
消化管の場合、消化管の内側は消化管上皮細胞によって覆われており、消化管上皮細胞の内側には、マクロファージや樹状細胞、リンパ球といった免疫担当細胞が多数存在している。消化管上皮細胞障害とは、免疫反応、薬物、毒素、放射線照射により消化管上皮細胞透過性が亢進し消化管バリアが損傷すると、それによって侵入する外来異物や腸内細菌に対して、これらの免疫系細胞が反応し炎症を起こした状態をいう。
消化管上皮細胞障害に起因する疾患としては、放射線障害、炎症性腸疾患が例示される。炎症性腸疾患の患者の消化管上皮において、細胞同士の接合に重要な蛋白質の発現異常が認められており、消化管バリアがルーズになって透過性が亢進することと炎症性腸疾患の重症度と相関することが報告されている。本実施の形態における医薬組成物はこれら疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。
気道上皮細胞は管腔側近傍に存在するタイトジャンクションで相互に結合することにより選択的透過障壁として機能し、気道上皮透過性の恒常性の維持に寄与している。気道上皮透過性の亢進は、多くの肺疾患における組織傷害モデルにおいて見られる。気道上皮細胞障害に起因する疾患としては、気管支喘息等アレルギー疾患が例示される。
喘息は好酸球、マスト細胞、リンパ球などの活性化と気道粘膜障害を伴う気道の慢性炎症とされている。本実施の形態における医薬組成生物はこれらの疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。
肺の場合、肺胞の内側は肺胞上皮細胞によって覆われている。肺胞上皮細胞障害とは、細菌やウィルス感染、化学物質、薬物、高酸素や炎症反応により肺胞上皮細胞がダメージを受け透過性が亢進すると、タンパク成分に富む浮腫液がそのまま肺胞の中に漏出し肺胞の壁を覆って硝子膜を作り、硝子膜に覆われた肺胞は、酸素と炭酸ガスのやりとりをうまくできなくなってしまう状態をいう。肺の広い範囲で肺胞が硝子膜に覆われてしまう状態をびまん性肺胞傷害と呼ぶ。
肺胞上皮細胞障害に起因する疾患としては、急性肺損傷、急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)、肺炎が例示される。本実施の形態における医薬組成物はこれら疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。
本実施の形態における医薬組成物は、担体を含有することができる。用いることのできる担体としては、水溶性の担体が好ましく、通常は、医薬品の添加剤として許容できる、等張化剤、緩衝化剤、増粘剤、界面活性剤、保存剤、防腐剤、無痛化剤、pH調整剤などが好ましい。例えば、ショ糖、グリセリン等や、その他の無機塩のpH調整剤等を添加剤として加えて調製することができる。さらに必要に応じて、特開平1−6219号公報及び特開平6−321805号公報に開示される通り、アミノ酸、塩類、糖質、界面活性剤、アルブミン、ゼラチン等を添加してもよい。本実施の形態における医薬組成物は、本実施の形態のポリペプチドに加えて、他の医薬成分を組み合わせて含んでもよい。他の医薬成分としては、例えば、免疫抑制剤、造血器悪性腫瘍治療薬等が挙げられる。
担体及び他の医薬成分の添加方法は特に限定されないが、一態様において、免疫抑制剤及び造血器悪性腫瘍治療薬から選ばれる少なくとも1つを含有する本実施の形態の医薬組成物を、凍結乾燥製剤として製造する方法としては、通常行われるように、例えば、免疫抑制剤及び造血器悪性腫瘍治療薬から選ばれる少なくとも1つを含有する溶液とポリペプチド含有溶液を混合した後、担体等の添加物を添加混合し、凍結乾燥する方法や、あらかじめ担体等の添加物を水、注射用蒸留水あるいは適当な緩衝液に溶解した免疫抑制剤又は造血器悪性腫瘍治療薬から選ばれる少なくとも1つに混合した後、ポリペプチド含有溶液を添加混合にする方法にて溶液を調製し、凍結乾燥する方法が挙げられる。本実施の形態における医薬組成物が各医薬成分を組み合わせてなる場合には、各医薬は、適宜の製造方法により担体を添加して製造することが好ましい。本実施の形態における医薬組成物としては、注射液の形態で提供されても、また凍結乾燥製剤を使用時に溶解して使用する形態で提供されてもよい。
製剤化工程においては、アンプル又はバイアルに、0.01〜10mgの本実施の形態におけるポリペプチド、注射用水、さらには、添加剤を含有する溶液を、例えば0.5〜10mL充填して水溶液注射用製剤として調製できる。また、凍結し減圧下のもとで乾燥して凍結乾燥製剤として調製する方法が例示される。
本実施の形態における医薬組成物は、非経口投与法、例えば静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与などによって投与することが望ましい。また経口投与、直腸内投与、鼻内投与、舌下投与、経肺投与、経皮投与により投与することも可能である。
本実施の形態における医薬組成物が各医薬成分を組み合わせてなる場合には、それぞれの医薬成分は、適宜の投与方法により投与することが好ましい。
静脈内投与の場合、一度に所望の量を投与する方法(静脈内急速投与)又は点滴静脈内投与が挙げられる。一度に所望の量を投与する方法(静脈内急速投与)は投与時間が短い点で好ましい。
本実施の形態における医薬組成物の投与量は、患者の年齢、体重、疾患の程度、投与経路などによっても異なるが、一般的には成人1日当たり0.01〜100mgを1〜3回に分けて投与することが例示される。投与期間は数日〜2カ月の連日投与が一般的であるが、患者の症状により1日投与量、投与期間共に増減することができる。また、投与間隔は、2日から14日に1回、好ましくは2日から7日に1回、さらに好ましくは3日から5日に1回にとすることも可能である。
なお、特開2015−63498号公報には、E5ポリペプチドに関して、細胞保護活性及びプロテインCの活性化促進作用の確認方法、並びにE5ポリペプチドを有効成分とする医薬組成物の用途及び製造方法などが開示されており、本発明のポリペプチドを実施するにあたり参酌することができる。特開2015−63498号公報の開示の全てを参照により本明細書の開示として含める。
以下、実施例及び試験例により本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらによって限定されるものではない。以下の実施例の各方法は、特開2015−63498号公報の実施例に準じて行うことができる。
1.ポリペプチドの作製
KAF06、KAF12、KAF24、及びKAF37は化学合成にて取得した。
KAF06、KAF12、KAF24、及びKAF37は化学合成にて取得した。
2.ポリペプチドの細胞死抑制活性
本発明のポリペプチドKAF06、KAF12、KAF24、及びKAF37の血管内皮保護活性を、細胞死抑制活性を測定することで調べた。
具体的には、免疫抑制剤であるFK506(10μg/mL)により誘導されるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の細胞死に対して、各ポリペプチドを添加し細胞死抑制活性を測定した。
本発明のポリペプチドKAF06、KAF12、KAF24、及びKAF37の血管内皮保護活性を、細胞死抑制活性を測定することで調べた。
具体的には、免疫抑制剤であるFK506(10μg/mL)により誘導されるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の細胞死に対して、各ポリペプチドを添加し細胞死抑制活性を測定した。
HUVECを専用培地(2%ウシ胎児血清含有EGM(endothelial cell growth medium)、Lonza)で培養後、トリプシン/EDTAで剥離し専用培地に懸濁し、5×103細胞づつ96ウェルプレートに播種した。最終濃度500nMになるように各ポリペプチドを添加後、培養は37℃、5%CO2インキュベーターにて行った。最終濃度10μg/mLとなるようにFK506を添加し、さらに24時間培養した。ブロモデオキシウリジン(10μmol/L/well)を添加し4時間培養後、細胞内に取り込まれたブロモデオキシウリジンを測定した。測定は、細胞増殖ELISA,BrdU発色キット(Roche)を用いて、添付のプロトコールに準じて実施した。
その結果、FK506無添加時の対照を1、FK506のみ添加時を0とした場合、本発明のポリペプチドKAF06、KAF12、KAF24、及びKAF37はそれぞれ、0.34、0.89、0.28、0.26と細胞死抑制作用が認められた。結果を図1に示す。
3.ポリペプチドの細胞増殖促進活性
本発明のポリペプチドKAF06、KAF12、KAF24、及びKAF37による細胞増殖促進活性の測定を行った。
具体的には、HUVEC(5×103細胞)を、各ポリペプチド最終濃度500nM存在下で、上記2.と同様の専用培地を用いて96ウェルプレートにて24時間培養した。さらに、ブロモデオキシウリジン(10μmol/L/well)を添加し4時間培養後、細胞内に取り込まれたブロモデオキシウリジンを測定した。測定は、細胞増殖ELISA,BrdU発色キット(Roche)を用いて、添付のプロトコールに準じて実施した。
本発明のポリペプチドKAF06、KAF12、KAF24、及びKAF37による細胞増殖促進活性の測定を行った。
具体的には、HUVEC(5×103細胞)を、各ポリペプチド最終濃度500nM存在下で、上記2.と同様の専用培地を用いて96ウェルプレートにて24時間培養した。さらに、ブロモデオキシウリジン(10μmol/L/well)を添加し4時間培養後、細胞内に取り込まれたブロモデオキシウリジンを測定した。測定は、細胞増殖ELISA,BrdU発色キット(Roche)を用いて、添付のプロトコールに準じて実施した。
その結果、無添加時の対照を1とした場合、本発明のポリペプチドKAF06、KAF12、KAF24、及びKAF37はそれぞれ、1.46、1.20、1.43、1.49といずれも細胞増殖促進作用が認められた。結果を図2に示す。
4.ポリペプチドの細胞死抑制活性(抗アポトーシス活性)
本発明のポリペプチドKAF06の細胞保護活性を、抗アポトーシス活性を測定することで調べた。
具体的には、FK506により誘発されるHUVECのアポトーシス反応に対して、最終濃度を500nMになるようにKAF06を添加し抗アポトーシス活性を測定した。
HUVECを上記2.と同様の専用培地にて培養後、トリプシン/EDTAで剥離し、PBSに懸濁した。細胞懸濁液を2×105細胞/mLになるように12ウェル培養プレート(Sumilon社)に1mLずつ分注した。FK506(10μg/mL)、あるいはFK506+KAF06(500nM)を添加し、36時間曝露させた。アポトーシス細胞の測定は、アネキシンVアポトーシス検出キット(BioVision)を用いて、付属のプロトコールに準じて実施した。
本発明のポリペプチドKAF06の細胞保護活性を、抗アポトーシス活性を測定することで調べた。
具体的には、FK506により誘発されるHUVECのアポトーシス反応に対して、最終濃度を500nMになるようにKAF06を添加し抗アポトーシス活性を測定した。
HUVECを上記2.と同様の専用培地にて培養後、トリプシン/EDTAで剥離し、PBSに懸濁した。細胞懸濁液を2×105細胞/mLになるように12ウェル培養プレート(Sumilon社)に1mLずつ分注した。FK506(10μg/mL)、あるいはFK506+KAF06(500nM)を添加し、36時間曝露させた。アポトーシス細胞の測定は、アネキシンVアポトーシス検出キット(BioVision)を用いて、付属のプロトコールに準じて実施した。
アポトーシス細胞は、アネキシンVとPI(プロピジウムアイオダイド)染色後、FACSにて検出した。アネキシンV陽性細胞を初期アポトーシス細胞(early apoptosis)、アネキシンVとPIの両者が陽性である細胞を後期アポトーシス細胞(late apoptosis)と表し、その両方を合わせてアポトーシス細胞とした。
その結果、本発明のポリペプチドKAF06は、FK506によって誘導される初期アポトーシス細胞割合7.8%、後期アポトーシス細胞割合28.5%に対して、それぞれ3.1%、12.1%とアポトーシス抑制作用を有することがわかった。結果を図3に示す。
その結果、本発明のポリペプチドKAF06は、FK506によって誘導される初期アポトーシス細胞割合7.8%、後期アポトーシス細胞割合28.5%に対して、それぞれ3.1%、12.1%とアポトーシス抑制作用を有することがわかった。結果を図3に示す。
5.ポリペプチドの細胞死抑制活性(抗アポトーシス蛋白質誘導活性)
本発明のポリペプチドKAF06の細胞保護活性を細胞死抑制活性にて評価した。細胞死抑制活性は、血管内皮細胞を用いた抗アポトーシス蛋白質Mcl−1発現誘導の測定にて評価した。HUVECを上記2.と同様の専用培地を用いて培養し、培地中へKAF06を500nMの濃度になるように添加して培養した。陰性対照として、ブランク(ペプチド無し)を用いた。添加後、48時間後に培地を除き、細胞溶解液にてHUVECを溶解し、細胞抽出液を得た。細胞抽出液を5−15% SDS−PAGE後、イモビロン−Pメンブレン (Millipore)に転写し、抗Mcl−1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-819)、及び抗GAPDH抗体(Abcam)によるウエスタンブロットを実施し、以下の手順に従いMcl−1量を定量した。
本発明のポリペプチドKAF06の細胞保護活性を細胞死抑制活性にて評価した。細胞死抑制活性は、血管内皮細胞を用いた抗アポトーシス蛋白質Mcl−1発現誘導の測定にて評価した。HUVECを上記2.と同様の専用培地を用いて培養し、培地中へKAF06を500nMの濃度になるように添加して培養した。陰性対照として、ブランク(ペプチド無し)を用いた。添加後、48時間後に培地を除き、細胞溶解液にてHUVECを溶解し、細胞抽出液を得た。細胞抽出液を5−15% SDS−PAGE後、イモビロン−Pメンブレン (Millipore)に転写し、抗Mcl−1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-819)、及び抗GAPDH抗体(Abcam)によるウエスタンブロットを実施し、以下の手順に従いMcl−1量を定量した。
転写したイモビロン−Pメンブレンを室温にて1%milkにて2分ブロッキングした。抗Mcl−1抗体を1%milk液で1000倍に希釈し、ナイロン膜と室温にて4℃にて終夜インキュベートした。インキュベート終了後、洗浄液(組成:PBS+0.1%tween20)で計3回洗浄した。
次いで、1%milk液で1000倍に希釈した2次抗体溶液を添加し、室温にて60分間インキュベートした後、洗浄液で計3回洗浄した。
ECLウェスタンブロッティング検出システム(GEヘルスケア・ジャパン)の添付のマニュアルに従い、基質溶液ECL液2種類を添加し、室温で通常1〜2分間インキュベートした後、LAS4000イメージアナライザー(FUJI FILM社)にて感光、現像を行った。Mcl−1蛋白質のバンドの強度をImageJソフトウェア(Wayne Rasband、NIH)にて定量化した。
次いで、1%milk液で1000倍に希釈した2次抗体溶液を添加し、室温にて60分間インキュベートした後、洗浄液で計3回洗浄した。
ECLウェスタンブロッティング検出システム(GEヘルスケア・ジャパン)の添付のマニュアルに従い、基質溶液ECL液2種類を添加し、室温で通常1〜2分間インキュベートした後、LAS4000イメージアナライザー(FUJI FILM社)にて感光、現像を行った。Mcl−1蛋白質のバンドの強度をImageJソフトウェア(Wayne Rasband、NIH)にて定量化した。
次いで、同じナイロン膜を用いて、抗GAPDH抗体にて同様の手順で染色後、GAPDH蛋白質のバンド強度を定量し、内部標準として用いた。
その結果、対照におけるMcl−1誘導活性を1とした場合のKAF06の相対Mcl−1誘導活性は2.6であった。本発明のポリペプチドKAF06は、Mcl−1誘導活性、すなわち細胞保護活性を有していることが確認された。結果を図4に示す。
その結果、対照におけるMcl−1誘導活性を1とした場合のKAF06の相対Mcl−1誘導活性は2.6であった。本発明のポリペプチドKAF06は、Mcl−1誘導活性、すなわち細胞保護活性を有していることが確認された。結果を図4に示す。
6.ポリペプチドの血管内皮保護活性
本発明のポリペプチドKAF06の血管内皮保護活性を血管透過性亢進抑制活性を測定することで調べた。血管透過性亢進に対するポリペプチドの影響は、vascular permeability assay kit(Millipore)を用いて、付属のプロトコールに準じて評価した。具体的には、HUVECをコラーゲンコートされたインサート上にコンフルエントになるまで培養し、24時間のスタベーション後、FK506(10μg/mL)、あるいはFK506+KAF06(500nM)を添加し12時間培養した。FITC標識デキストランを上室に添加し、下室に出てきたFITCの蛍光強度を測定し血管内皮細胞透過性亢進活性とした。
その結果、下室に出てきた蛍光強度は、無添加時の対照を1とした場合、FK506のみ添加した場合、3.38と血管透過性亢進が認められた。KAF06を同時に添加した場合、2.15と低下が認められ、KAF06はFK506による血管透過性亢進を抑制することが確認された。結果を図5に示す。
本発明のポリペプチドKAF06の血管内皮保護活性を血管透過性亢進抑制活性を測定することで調べた。血管透過性亢進に対するポリペプチドの影響は、vascular permeability assay kit(Millipore)を用いて、付属のプロトコールに準じて評価した。具体的には、HUVECをコラーゲンコートされたインサート上にコンフルエントになるまで培養し、24時間のスタベーション後、FK506(10μg/mL)、あるいはFK506+KAF06(500nM)を添加し12時間培養した。FITC標識デキストランを上室に添加し、下室に出てきたFITCの蛍光強度を測定し血管内皮細胞透過性亢進活性とした。
その結果、下室に出てきた蛍光強度は、無添加時の対照を1とした場合、FK506のみ添加した場合、3.38と血管透過性亢進が認められた。KAF06を同時に添加した場合、2.15と低下が認められ、KAF06はFK506による血管透過性亢進を抑制することが確認された。結果を図5に示す。
7.ポリペプチドの血管新生促進活性
本発明のポリペプチドKAF06、およびKAF12の血管新生促進活性を調べた。陽性対照としてVEGF(Pepro Tech Inc社)を、陰性対照としてバッファーを用いた。
血管新生促進活性は、in vitro血管内皮管腔形成、及びマウスを用いたin vivoマトリゲル皮下移植法にて評価した。具体的には、24ウェル培養プレート(Sumilon社)を用いて、ヒト臍帯内皮細胞(2.5×104細胞/well)を、増殖因子を減量したマトリゲル(BD Bioscience)に播種した。
本発明のポリペプチドKAF06、およびKAF12の血管新生促進活性を調べた。陽性対照としてVEGF(Pepro Tech Inc社)を、陰性対照としてバッファーを用いた。
血管新生促進活性は、in vitro血管内皮管腔形成、及びマウスを用いたin vivoマトリゲル皮下移植法にて評価した。具体的には、24ウェル培養プレート(Sumilon社)を用いて、ヒト臍帯内皮細胞(2.5×104細胞/well)を、増殖因子を減量したマトリゲル(BD Bioscience)に播種した。
各ポリペプチド(500nM)、又は陽性対照としてVEGF(0.5nM)を添加し、8時間培養した。バッファーを添加したものを陰性対照とした。管腔形成は40倍の倍率で光学倒立顕微鏡にて観察し、ランダムに選んだ5視野の管腔長さをNIH ImageJソフトウェア(Wayne Rasband)にて計測し、陰性対照に対する割合として示した。管腔の長さで定量化した結果、VEGFは、317%、KAF06およびKAF12はそれぞれ330%、169%と血管新生促進活性が認められた。結果を図6に示す。
in vivoでの血管新生促進活性は、マトリゲル皮下移植法にて評価した。40U/mLのヘパリンを含む、増殖因子を低減させたマトリゲル(0.3mL)に、KAF06(500nM)、又は陽性対照としてVEGF(0.5nM)を混合し、C57BL6マウス(6週齢雌)の背部皮下へ投与した。何も混合しないものを対照とした。4日後、マトリゲルを摘出してヘモグロビン含量を定量した。
その結果、本発明のポリペプチドKAF06、又はVEGFを混合した場合、マトリゲルはそれぞれ666g/dL、824g/dLと高いヘモグロビン含量を示し、顕著な血管新生を促進する活性が認められた。結果を図7に示す。
このように、VEGF同様、本発明のポリペプチドKAF06を混合した場合、マトリゲルは高いヘモグロビン含量を示し、顕著な血管新生を促進する活性が認められた。
その結果、本発明のポリペプチドKAF06、又はVEGFを混合した場合、マトリゲルはそれぞれ666g/dL、824g/dLと高いヘモグロビン含量を示し、顕著な血管新生を促進する活性が認められた。結果を図7に示す。
このように、VEGF同様、本発明のポリペプチドKAF06を混合した場合、マトリゲルは高いヘモグロビン含量を示し、顕著な血管新生を促進する活性が認められた。
8.ポリペプチドによるERK、Akt、及びp38のリン酸化促進活性
本発明のポリペプチドKAF06のERK、Akt、及びp38のリン酸化に対する作用を評価した。
具体的には、HUVECを専用培地で培養後、無血清培地で3時間starvationした後、KAF06(500nM)を添加した。陰性対照として、ブランク(ペプチド無し)を用いた。
本発明のポリペプチドKAF06のERK、Akt、及びp38のリン酸化に対する作用を評価した。
具体的には、HUVECを専用培地で培養後、無血清培地で3時間starvationした後、KAF06(500nM)を添加した。陰性対照として、ブランク(ペプチド無し)を用いた。
添加後、48時間後に培地を除き、細胞溶解液にてHUVECを溶解し、細胞抽出液を得た。細胞抽出液を5−15% SDS−PAGE後、イモビロン−Pメンブレン (Millipore)に転写し、上記5.と同様の方法にて各蛋白質のリン酸化を特異的抗体にて検出した。
用いた抗体を以下に示す:
抗リン酸化ERK抗体(Cell Signaling Technology, 9101);
抗リン酸化Akt抗体(Ser473)(Cell Signaling Technology, 9271);
抗リン酸化p38抗体(Tyr180/182)(Cell Signaling Technology, 9216);
抗ERK抗体(Cell Signaling Technology, 9102);
抗Akt抗体(Ser473)(Cell Signaling Technology, 9272);
抗p38抗体(Cell Signaling Technology, 9212);
その結果、対照における各リン酸化蛋白質のバンド強度を1とした場合のKAF06の相対バンド強度は、リン酸化ERKは3.9、リン酸化Aktは3.4、リン酸化p38は2.7と、本発明のポリペプチドKAF06にはERK、Akt、及びp38のリン酸化促進作用が認められた。結果を図8に示す。
抗リン酸化ERK抗体(Cell Signaling Technology, 9101);
抗リン酸化Akt抗体(Ser473)(Cell Signaling Technology, 9271);
抗リン酸化p38抗体(Tyr180/182)(Cell Signaling Technology, 9216);
抗ERK抗体(Cell Signaling Technology, 9102);
抗Akt抗体(Ser473)(Cell Signaling Technology, 9272);
抗p38抗体(Cell Signaling Technology, 9212);
その結果、対照における各リン酸化蛋白質のバンド強度を1とした場合のKAF06の相対バンド強度は、リン酸化ERKは3.9、リン酸化Aktは3.4、リン酸化p38は2.7と、本発明のポリペプチドKAF06にはERK、Akt、及びp38のリン酸化促進作用が認められた。結果を図8に示す。
9.ポリペプチドの抗凝固活性
本発明のポリペプチドKAF06、並びにE5(比較例1)の抗凝固活性を調べた。抗凝固活性は、プロテインC活性化促進活性とトロンビン添加凝固時間(TCT)によって評価した。
プロテインC活性化促進活性は、E5又はKAF06をプロテインC及びトロンビンと反応後、生成した活性化プロテインCを合成基質S−2366にて405nmの吸光度を測定することにより評価した。
本発明のポリペプチドKAF06、並びにE5(比較例1)の抗凝固活性を調べた。抗凝固活性は、プロテインC活性化促進活性とトロンビン添加凝固時間(TCT)によって評価した。
プロテインC活性化促進活性は、E5又はKAF06をプロテインC及びトロンビンと反応後、生成した活性化プロテインCを合成基質S−2366にて405nmの吸光度を測定することにより評価した。
20mM塩化カルシウム溶液75μLに、検量線用のコントロールD123、本発明のポリペプチドKAF06、並びにE5(比較例1)を25μL添加し混合後、40NIHU/mLトロンビン溶液25μL、次いで15μg/mLプロテインC溶液25μL添加、37℃10分インキュベートした。アンチトロンビンIIIを添加し37℃10分インキュベートし反応を停止させた後、基質溶液を添加し、37℃10分インキュベートした。反応を停止後、405nm吸光度を測定し、D123を用いた検量線から、本発明のポリペプチドKAF06、並びにE5のプロテインC活性化促進活性を求めた。
その結果、D123、E5並びに本発明のポリペプチドKAF06の比活性は、それぞれ2.8×1011U/mol、6.7×106U/mol、0U/molであった。本発明のポリペプチドKAF06にはプロテインC活性化促進活性が認められなかった。
TCTは、ヒト正常プール血漿に添加した時の凝固時間が約10秒となるようなトロンビン溶液を用いて測定した。TCTは、自動血液凝固測定装置KC10A(Heinrich Amelung GmbH社)にて添付のマニュアルに基づき測定した。被験物質非添加血漿のTCTに対するコントロールD123,E5又はKAF06添加血漿の凝固時間の延長率を算出した。
TCTは、ヒト正常プール血漿に添加した時の凝固時間が約10秒となるようなトロンビン溶液を用いて測定した。TCTは、自動血液凝固測定装置KC10A(Heinrich Amelung GmbH社)にて添付のマニュアルに基づき測定した。被験物質非添加血漿のTCTに対するコントロールD123,E5又はKAF06添加血漿の凝固時間の延長率を算出した。
具体的には、スチールボールを入れたサンプルカップをKC10Aにセットし、ヒト正常血漿を100μLずつ添加し、37℃で1分間保温する。サンプルカップに、バッファーのみ、D123(血漿中濃度50、500nM)、KAF06(血漿中濃度500、5000nM)、並びにE5(血漿中濃度500、5000nM)を20μL添加し、37℃でさらに2分間保温する。トロンビン溶液をサンプルカップに100μLずつ添加し凝固時間を測定する。
その結果、D123のTCT延長率は50nMが132.4%、500nMが554.7%に対して、E5のTCT延長率は500nMが113.4%、5000nMが206.4%、KAF06のTCT延長率は500nMが99.6%、5000nMが104.9%であった。本発明のKAF06にはTCT延長は全く認められなかった。
プロテインC活性化促進活性とTCT延長率において、KAF06は全く抗凝固作用が認められなかった。
プロテインC活性化促進活性とTCT延長率において、KAF06は全く抗凝固作用が認められなかった。
10.マウス肝類洞閉塞症候群(SOS)モデル
本発明のポリペプチドKAF06の細胞保護作用を、マウスSOSモデルで評価した。
レシピエントマウスとして、C57BL6マウスを、骨髄移植処置無し群(正常コントロール)、PBS投与有の骨髄移植処置群(BMT+PBS)、及び本ペプチドKAF06投与有の骨髄移植処置群(BMT+KAF06)の3群に無作為に振り分けた。骨髄移植前処置として、骨髄移植7日前から4日前までブスルファン(25mg/kg/日、4日間)腹腔内投与後、骨髄移植3日前から2日前までシクロフォスファミド(100mg/kg/日、2日間)腹腔内投与した。移植当日、BALB/Cドナーマウスから採取した骨髄細胞(5×106細胞/マウス)を各レシピエントマウスの静脈内へ投与した。移植当日をDay0とした。コントロールのPBSまたは本発明のポリペプチドKAF06(500μg/kg)は、骨髄移植7日前からDay13まで1日1回、隔日投与した。
本発明のポリペプチドKAF06の細胞保護作用を、マウスSOSモデルで評価した。
レシピエントマウスとして、C57BL6マウスを、骨髄移植処置無し群(正常コントロール)、PBS投与有の骨髄移植処置群(BMT+PBS)、及び本ペプチドKAF06投与有の骨髄移植処置群(BMT+KAF06)の3群に無作為に振り分けた。骨髄移植前処置として、骨髄移植7日前から4日前までブスルファン(25mg/kg/日、4日間)腹腔内投与後、骨髄移植3日前から2日前までシクロフォスファミド(100mg/kg/日、2日間)腹腔内投与した。移植当日、BALB/Cドナーマウスから採取した骨髄細胞(5×106細胞/マウス)を各レシピエントマウスの静脈内へ投与した。移植当日をDay0とした。コントロールのPBSまたは本発明のポリペプチドKAF06(500μg/kg)は、骨髄移植7日前からDay13まで1日1回、隔日投与した。
Day7,14,20の血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)とアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)を測定した。
Day7,14,20のSOSスコアを算出した。SOSスコアは、肝臓スライス断片の組織染色結果(ヘマトキシリンーエオジン染色、pan-endothelial cell monoclonal antibody (MECA-32)を用いた免疫組織染色、マッソン染色)をブラインド下でDeLeveらの報告を改良した方法に基づき評価した。
Day7,14,20のSOSスコアを算出した。SOSスコアは、肝臓スライス断片の組織染色結果(ヘマトキシリンーエオジン染色、pan-endothelial cell monoclonal antibody (MECA-32)を用いた免疫組織染色、マッソン染色)をブラインド下でDeLeveらの報告を改良した方法に基づき評価した。
血管内皮細胞障害は、血漿中可溶性トロンボモジュリン濃度にて評価した。トロンボモジュリン濃度は、Cloud-Clone社ELISAキットを用いて測定した。
その結果、正常コントロール群に対してBMT+PBS群でSOSの発症が認められたが、BMT+KAF06群ではSOS発症が抑制された。
その結果、正常コントロール群に対してBMT+PBS群でSOSの発症が認められたが、BMT+KAF06群ではSOS発症が抑制された。
具体的には、BMT+PBS群では移植後30日目で16匹中9匹が死亡したのに対して、BMT+KAF06投与群では、16匹全例生存した。結果を図9に示す。
Day7,14,20のASTは、BMT+PBS群では214、123、74U/Lに対して、BMT+KF06投与群では78、75、64U/Lと低下していた。Day7,14,20のALTは、BMT+PBS群では127、41、30U/Lに対して、BMT+KF06投与群では38、24、23U/Lと低下していた。すなわち、BMT+PBS群で認められた肝機能障害はBMT+KF06投与群で抑制されていた。結果を図10に示す。
Day7,14,20のASTは、BMT+PBS群では214、123、74U/Lに対して、BMT+KF06投与群では78、75、64U/Lと低下していた。Day7,14,20のALTは、BMT+PBS群では127、41、30U/Lに対して、BMT+KF06投与群では38、24、23U/Lと低下していた。すなわち、BMT+PBS群で認められた肝機能障害はBMT+KF06投与群で抑制されていた。結果を図10に示す。
Day7、14、20のSOSスコアは、BMT+PBS群では12.7、9.0、9.3に対して、BMT+KAF06投与群では5.7、4.7、4.0と低下していた。結果を図11に示す。
Day7、14、20の血漿検体の可溶性トロンボモジュリン濃度は、BMT+PBS群では59.65、34.36、20.92ng/mLに対して、BMT+KAF06群では24.14、20.19、15.37ng/mLと低下が認められ、KAF06の血管内皮細胞障害抑制作用が確認できた。結果を図12に示す。
Day7、14、20の血漿検体の可溶性トロンボモジュリン濃度は、BMT+PBS群では59.65、34.36、20.92ng/mLに対して、BMT+KAF06群では24.14、20.19、15.37ng/mLと低下が認められ、KAF06の血管内皮細胞障害抑制作用が確認できた。結果を図12に示す。
11.プロトロンビン時間及び活性化部分トロンボプラスチン時間
プロトロンビン時間(PT)の測定では、E5、可溶性トロンボモジュリン(D123)、又はKAF06(各10μL)の存在下又は非存在下で200μLのPT試薬(Sysmex)を100μLのヒト血漿と混合した。活性化部分トロンボプラスチン時間(ATPP)の測定では、E5、D123、又はKAF06(各10μL)の存在下又は非存在下で100μLのAPTT試薬(Sysmex)を100μLのヒト血漿と混合した。混合物を120秒間インキュベートした後に100μLのCaCl2を加えた。凝固時間をKClデルタ凝固計(Tcoag,Bray)で測定した。
プロトロンビン時間(PT)の測定では、E5、可溶性トロンボモジュリン(D123)、又はKAF06(各10μL)の存在下又は非存在下で200μLのPT試薬(Sysmex)を100μLのヒト血漿と混合した。活性化部分トロンボプラスチン時間(ATPP)の測定では、E5、D123、又はKAF06(各10μL)の存在下又は非存在下で100μLのAPTT試薬(Sysmex)を100μLのヒト血漿と混合した。混合物を120秒間インキュベートした後に100μLのCaCl2を加えた。凝固時間をKClデルタ凝固計(Tcoag,Bray)で測定した。
D123は500nMでPT及びAPTTをそれぞれ約200%及び165%延長させた。かなり高濃度のD123(5000nM)ではPT及びAPTTがそれぞれ400%及び900%以上延長した。E5(5000nM)でもPT及びAPTTをそれぞれ137%及び225%延長したことは興味深い。KAF06の最高濃度(5000nM)ではPT又はAPTTのいずれも延長しなかったことは注目に値する。結果を図13に示す。
本発明により提供されるポリペプチドは、優れた細胞保護活性を有し、かつ実質的に抗凝固活性を示さないことから、副作用としての出血リスクを回避した医薬の有効成分として有用である。
Claims (8)
- X1CPEGYILDDGX2ICTDIDEで表されるポリペプチド(式中、アミノ酸残基は一文字表記により示し、ただし、N末端から2番目のシステイン残基(C)とN末端から14番目のシステイン残基(C)はS−S結合を形成して互いに結合しており、該S−S結合はCHR1−CHR2(R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示す)で表される基で置き換えられていてもよく;X1は存在しないか、又はグルタミン酸残基(E)若しくはアスパラギン酸残基(D)を示し;X2はフェニルアラニン残基、アラニン残基、又はチロシン残基を示す)又はその塩。
- ECPEGYILDDGFICTDIDEで表されるポリペプチド(式中、アミノ酸残基は一文字表記により示し、ただし、N末端から2番目のシステイン残基(C)とN末端から14番目のシステイン残基(C)はS−S結合を形成して互いに結合しており、該S−S結合はCHR1−CHR2(R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示す)で表される基で置き換えられていてもよい)又はその塩。
- CPEGYILDDGFICTDIDEで表されるポリペプチド(式中、アミノ酸残基は一文字表記により示し、ただし、N末端のシステイン残基(C)とN末端から13番目のシステイン残基(C)はS−S結合により互いに結合しており、該S−S結合はCHR1−CHR2(R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示す)で表される基で置き換えられていてもよい)又はその塩。
- 下記のいずれかのポリペプチド:
ECPEGYILDDGAICTDIDEで表されるポリペプチド、ECPEGYILDDGYICTDIDEで表されるポリペプチド、CPEGYILDDGAICTDIDEで表されるポリペプチド、又はCPEGYILDDGYICTDIDEで表されるポリペプチド(式中、アミノ酸残基は一文字表記により示し、2個のシステイン残基(C)はS−S−結合を形成して互いに結合しており、該S−S結合はCHR1−CHR2(R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示す)で表される基で置き換えられていてもよい)あるいはその塩。 - 該S−S結合がCHR1−CHR2で表される基で置き換えられていない請求項1ないし4のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその塩。
- 該S−S結合がCHR1−CHR2で表される基で置き換えられている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその塩。
- 請求項1ないし6のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその塩を有効成分として含む医薬組成物。
- 細胞障害、血管内皮細胞障害、消化管上皮細胞障害、気管上皮細胞障害、肺胞上皮細胞障害、及び表皮細胞障害からなる群から選ばれる1又は2以上の障害の予防及び/又は治療のため請求項7に記載の医薬組成物。
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