JP2015063498A - 新規なポリペプチド及びその用途 - Google Patents

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隆之 池添
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彰仁 横山
剛一 本田
Koichi Honda
剛一 本田
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Abstract

【課題】少なくとも細胞保護作用を有しかつ抗凝固作用が少ない新規なポリペプチド及び該ポリペプチドを有効成分として含む医薬を提供する。
【解決手段】ポリペプチドは、E5活性を有するものであれば特に限定されないが、特定の配列で示されるアミノ酸配列からなり、(I)細胞保護活性を有し、かつ(II)プロテインCの活性化を促進する。ポリペプチドをコードするDNAを発現ベクターに組み込み、これを宿主細胞にトランスフェクトして調製された形質転換細胞より取得する。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規なポリペプチド及びその用途に関する。
敗血症、虚血/再灌流障害、卒中、虚血性発作、急性心筋梗塞、急性神経変性疾患、アルツハイマー病、ダウン症症候群、ハンチントン病、筋委縮性側索硬化症、パーキンソン病、褥瘡、創傷、閉塞性動脈疾患、動脈硬化症、高脂血症、糖尿病、肥満、臓器移植、化学療法、免疫抑制薬、及び放射線障害等、種々の疾患や処置により細胞は傷害を受ける。これらの疾患や処置による傷害の治療においては抗アポトーシス活性を一つの機序とする細胞保護活性を有する物質が有効である。細胞保護活性を有する蛋白質の一つとして、トロンボモジュリンが知られている。
本来トロンボモジュリンは、トロンビンと特異的に結合しトロンビンの血液凝固活性を阻害すると同時にトロンビンのプロテインC活性化能を著しく促進する作用を有する物質として知られ、強力な血液凝固阻害作用を有することが知られている。トロンビンによる凝固時間を延長することや、トロンビンによる血小板凝集を抑制することも知られている。プロテインCは、血液凝固線溶系において重要な役割を演じているビタミンK依存性の蛋白質であり、トロンビンの作用により活性化され、活性化プロテインCとなる。この活性化プロテインCは、生体内で血液凝固系因子の活性型第V因子、及び活性型第VIII因子を失活させ、また血栓溶解作用を有するプラスミノゲンアクチベータの産生に関与していることが知られている(非特許文献1)。
シグナルペプチドが切断されたマチュアなトロンボモジュリンは、そのマチュアなペプチドのN末端側よりN末端領域(D1、1−226番目:シグナルペプチドが18アミノ酸残基であると考えた場合の位置表示、以下同じ)、6つのEGF様構造をもつ領域(D2、227−462番目)、O型糖鎖付加領域(D3、463−498番目)、膜貫通領域(D4、499−521番目)、そして細胞質内領域(D5、522−557番目)の5つの領域から構成されている。全長のトロンボモジュリンと同じプロテインC活性化促進活性を有する部分は、6つのEGF様構造を持つ領域のうち、主としてN末端側から4、5、6番目のEGF様構造からなる部分(E456)であることが知られている(非特許文献2)。また、6つのEGF様構造を持つ領域のうち、N末端側から4、5番目のEGF様構造からなる部分(E45)では、全長のトロンボモジュリンよりは低下しているが、プロテインC活性化促進活性を有していることが知られている(非特許文献3)。
N末端領域と6つのEGF様構造をもつ領域とO型糖鎖付加領域の3つの領域のみからなる可溶性トロンボモジュリン(D123)は、造血器悪性腫瘍ならびに感染症DIC患者を対象とした第三相臨床試験が実施され、未分画ヘパリン治療に対して、有効性と安全性の点で勝ることが示され、汎発性血管内血液凝固症(DIC)治療薬として臨床応用されている。D123は細胞保護活性を有することが知られている(非特許文献4)。
鈴木宏治、医学のあゆみ 1983;125:901 Zushi M et al.J Biol Chem 1989;264:10351−10353 Hayashi T et al.J Biol Chem 1990;265:20156−20159 Ikezoe T et al.Arterioscler Thromb Vasc Biol 2012;32:2259−2270
本発明の課題は、少なくとも細胞保護作用を有しかつ抗凝固作用が少ない新規なポリペプチド及び該ポリペプチドを有効成分として含む医薬を提供することにある。
従来、D123やE45は、細胞保護作用を有するとともに、トロンビンと結合しプロテインC活性化を促進する抗凝固作用も有することが知られていた。ところが、抗凝固作用を有する物質を生体内へ投与した場合、出血の副作用のリスクがあることが知られている。例えば、活性化プロテインC(APC)は、高い出血リスクを有しており、市場からの撤退を余儀なくされている(Marti-Carvajal AJ et.al Cochrane Database Syst Rev. 2012 ; (12):CD004388)。本発明者らは、出血の副作用のリスクを大きな問題点ととらえ、細胞保護作用を有すると同時に抗凝固作用が少ない、好ましくは抗凝固作用が無い物質を見出すべく鋭意検討を行った結果、配列番号1で示されるポリペプチド(以下、E5と呼ぶことがある)が、E45と同等以上の細胞保護作用を有し、かつ非常に少ないプロテインC活性化を促進する作用、すなわち非常に少ない抗凝固作用を有していることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明としては以下のものが挙げられる。
〔1〕配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる単離されたポリペプチド。
〔2〕前記〔1〕に記載のポリペプチドを有効成分として含む医薬組成物。
〔3〕細胞障害の予防及び/又は治療のための前記〔2〕に記載の医薬組成物。
〔4〕血管内皮細胞障害の予防及び/又は治療のための前記〔2〕又は〔3〕に記載の医薬組成物。
〔5〕消化管上皮細胞障害、気管上皮細胞障害、又は肺胞上皮細胞障害の予防及び/又は治療のための前記〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔6〕表皮細胞障害の予防及び/又は治療のための前記〔2〕〜〔5〕に記載の医薬組成物。
本発明により、優れた細胞保護活性を有しかつ抗凝固作用が少ないポリペプチド及び該ポリペプチドを有効成分として含む医薬組成物が提供される。これにより、医薬としての使用時の出血のリスクの低減が期待される。
図1は、ポリペプチドの細胞死抑制活性を示す。縦軸はMcl-1発現誘導活性のコントロールに対する強度を示す。 図2は、E5ポリペプチドの細胞死抑制活性を示す。縦軸は免疫抑制剤により誘発されたアポトーシス細胞の割合を示す。 図3aは、サイクロスポリン(CsA)による血管内皮細胞障害に対するE5ポリペプチドの血管内皮保護効果を示す。また図3bは、IL−1βによる血管内皮細胞障害に対するE5ポリペプチドの血管内皮保護効果を示す。縦軸はCsA又はIL-1βによる細胞障害活性をコントロールに対する割合(蛍光相対単位:RFU, relative fluorescence units)で示した。 図4a及び図4bは、in vitroにおける内皮細胞管腔形成能(管腔構造の長さ)に対する血管新生促進効果を示す。図4aにおける縦軸は管腔の長さのコントロールに対する割合(Relative tube length)を、図4bにおける縦軸は血管新生インデックス示す。図4cは、in vivoにおけるマウスマトリゲル皮下移植法での血管新生促進効果を示す。縦軸は、ゲル内のヘモグロビン含量を示す。 図5aは、ポリペプチドのNO産生促進活性を示す。縦軸は、コントロールに対するNO産生の相対量を示す。図5bは、ポリペプチドのeNOSリン酸化誘導活性を示す。 図6は、ポリペプチドの血管内皮細胞増殖促進活性を示す。縦軸はブロモデオキシウリジン(BrdU)取り込み量を示す。 図7は、血管内皮細胞に対してポリペプチドを作用させた場合の細胞内シグナル伝達にかかわる各種タンパク質のリン酸化の亢進を示す。 図8は、ポリペプチドの抗凝固活性を示す。合成基質S-2366を用いポリペプチドによって産生された活性化プロテインC(APC)のアミド溶解活性から求めた活性値を蛋白質濃度で除して算出した比活性を示す。
以下、本発明をいくつかの好ましい態様(本発明を実施するための好ましい形態:以下、本明細書において「本実施の形態」と略すことがある)について具体的に説明するが、本発明の範囲は下記に説明する特定の態様に限定されることはない。
本実施の形態における単離されたポリペプチド(本明細書において、単に「ポリペプチド」ともいう。)は、(I)細胞保護活性を有し、かつ(II)プロテインCの活性化を促進する作用、すなわち一定以下の抗凝固作用を有する。これらの作用をE5ペプチド活性と呼ぶことがある。E5ペプチド活性としては、上記(I)及び(II)の作用を有していれば特に限定されない。
E5ペプチド活性における(I)細胞保護活性としては、1)細胞死抑制活性、2)細胞透過性亢進抑制活性、3)血管新生促進活性、4)細胞増殖促進活性、又は5)細胞機能維持活性が例示される。(I)細胞保護活性としては、1)〜5)のうちの少なくとも一つを有していれば特に限定されないが、1)を有していることが好ましく、1)〜5)の全てを有していることが好ましい。
1)細胞死抑制活性は、細胞の抗アポトーシス活性を測定することにより確認することができる。アポトーシスとは生理的、病理的要因により生じた不要な細胞や障害細胞などを積極的に除去する能動的細胞死とされてきたが、種々の病態に伴う細胞死にも関与しており、アポトーシスにより細胞障害が引き起こされることが明らかとなってきている。従ってアポトーシスを抑制することは細胞死を抑制し細胞障害の進展を阻害する治療薬として有効とされる。アポトーシスに関わるシグナル伝達経路は、アポトーシス促進分子や抑制分子等多くの分子からなることから、一度に全てのアポトーシス活性を抑制できるわけではない。抗アポトーシス活性とは、アポトーシスを惹起する物質で細胞等を処理したときに誘導されるアポトーシスを抑制する活性のことであり、アポトーシス促進分子の阻害活性やアポトーシス抑制分子の上昇活性を示す。例えば、後述の実施例(2.)に記載のように、非特許文献4に記載された試験方法によりヒト臍帯静脈内皮に対するアポトーシス抑制分子、すなわち抗アポトーシス蛋白質の一種であるMcl-1の発現誘導の程度を調べることにより、又は後述の実施例(3.)に記載のように、非特許文献4に記載された試験方法によりヒト臍帯静脈内皮細胞における免疫抑制剤誘発性アポトーシスの阻害の程度を調べることにより、抗アポトーシス活性を確認することができる。
抗アポトーシス活性としては、細胞死を妨げる効果を示すものであれば特に限定されないが、Mcl-1の発現誘導が無刺激の状態の細胞での発現に比して2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、8倍以上であることがさらに好ましい。
2)細胞透過性亢進抑制活性は種々の惹起物質にて特定の細胞を刺激することで引き起こされた細胞透過性亢進に対する抑制活性を測定することにより確認することができる。細胞透過性亢進とは、外界からの様々な刺激によって引き起こされる組織障害に対して生体防御反応として炎症が惹起され、機械的原因に加えて組織障害及び炎症反応により誘導されるサイトカインやケミカルメディエーター等によって細胞間のバリア機構が破たんし、細胞同士の接合部が開くことにより物質が細胞間を通過しやすくなることを示す。透過性が亢進すると、細胞成分の一つである白血球が細胞に接着し、その形を扁平化させて細胞の間隙から浸潤する。白血球は、組織内に侵入してきた細菌や異物などを食作用によって細胞内に取り込み、消化分解して無毒化し、さらには壊死した細胞を除去させる。その結果、炎症が終焉に向かうとともに細胞透過性亢進も見られなくなり、同時に細胞修復も始まり元の正常な状態に戻る。しかしながら、組織障害が繰り返して生じる場合や、自己免疫異常による炎症の場合は、組織修復と同時に新たな炎症が始まるため、炎症が恒常的に続き、慢性炎症となり機能障害が引き起こされる。
細胞透過性亢進が特に問題となる細胞は内皮細胞及び上皮細胞である。内皮は内皮細胞の薄層からなる。内皮細胞の層は、とりわけ、静脈や毛細血管などの血管の内部表面、及び血液と血管の外壁の間のバリア(関門)を形成する。内皮細胞は、大血管から最も小さい毛細血管までの全血管系の内側を被う。上皮細胞は、ヒト及び動物器官のすべての内部及び外部体表面を被う単層又は多層の細胞層を形成する。上皮細胞は、互いに近接して、細胞接着に富む。上皮細胞は、外側、外部又は内腔に向かう頂側、及び基底側に区別することができる。さらに、上皮細胞は、閉鎖帯 (密着結合)、接着帯 (接着結合)、及びデスモソーム (接着斑)からなる接着複合体(結合複合体)を有し、これは一方で物理化学的バリアを示し、他方で隣り合った上皮細胞を相互に連結させる。
細胞透過性亢進抑制活性は、例えば、後述の実施例(4.)に記載のように、非特許文献4に記載された試験方法によりヒト臍帯静脈内皮細胞における免疫抑制剤や炎症性サイトカインにより誘導される細胞透過性の亢進の阻害の程度を調べることにより確認することができる。細胞透過性亢進抑制活性としては、透過性亢進を抑制する効果を示すものであれば透過性亢進惹起物質や細胞の種類は特に限定されない。
3)血管新生促進活性は、一般的な血管新生評価方法を用いて確認することができる。近年、心・脳などの血管障害が死因の過半を占めており、血管障害による死亡率の減少及び生存者のQOLの改善が医療の重要なテーマの一つとされている。特に重篤な疾患として閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans;ASO)などの重症慢性下肢虚血患者に対する血管新生療法が治療モデルとして盛んに行われている。血管新生促進活性は、例えば、後述の実施例(5.)に記載のように、非特許文献4に記載された試験方法によりin vitoやin vivoの両方で確認することができる。in vitroでは、培養血管内皮細胞の管腔形成の促進活性を管腔の長さや分岐点の数で評価できる。in vivoでは、マウスマトリゲル皮下移植法にてゲル内のヘモグロビン含量で評価できる。
4)細胞増殖促進活性は、一般的な細胞増速活性を測定する方法にて確認することができる。評価する細胞としては、特に限定されないが、内皮細胞及び上皮細胞であることが好ましい。細胞増殖促進活性は、例えば、後述の実施例(7.)に記載のように、非特許文献4に記載された試験方法により確認することができる。
5)細胞機能維持活性は、特定の細胞機能が維持されていることを一般的な方法にて確認することができる。例えば、後述の実施例(6.)に記載のように、血管内皮細胞の機能の場合はNO産生促進活性によって評価することができる(非特許文献4)。
E5ペプチド活性における(II)プロテインCの活性化を促進する作用、すなわち抗凝固作用は、例えば、後述の実施例(9.)に記載のように、特開昭64−6219号公報を初めとする各種の公知文献に明確に記載された試験方法により、プロテインCの活性化を促進する作用の活性量やその有無を測定することにより容易に確認することができる。(II)プロテインCの活性化を促進する作用、すなわち抗凝固作用としては、D123が有する抗凝固活性の1/10以下であることが好ましく、1/100以下であることがより好ましく、1/1000以下であることがさらに好ましく、検出限界以下であることが特に好ましい。抗凝固作用が全く無いことが好ましい別の態様もある。
本実施の形態におけるポリペプチドは、E5活性を有するものであれば特に限定されないが、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが例示される。
本実施の形態におけるポリペプチドは、これらのポリペプチドをコードするDNA(具体的には、例えば配列番号2の塩基配列)を発現ベクターに組み込み、これを宿主細胞にトランスフェクトして調製された形質転換細胞より取得することができる。発現ベクターとは、プロモーター配列、mRNAにリボソーム結合部位を付与する配列、発現したい蛋白をコードするDNA配列、スプライシングシグナル、転写終結のターミネーター配列、複製起源配列などで構成されるDNA分子であり、好ましい発現ベクターの例としては、Mulligan RCら[Proc Natl Acad Sci USA 1981;78:2072-2076]が報告しているpSV2−Xや、Howley PMら[Methods in Emzymology 1983;101:387-402、Academic Press]が報告しているpBP69T(69−6)などが挙げられる。また、精製のし易さの観点から、発現ベクターとしてpcDNA3.1/V5−His(Wang H. and Kazanietz MG. J Biol Chem. 2002;277(6):4541-50)を用いることも好ましい。さらに、微生物において発現可能な発現ベクターに組み込む別の好ましい態様もある。
これらのポリペプチドを製造するに際して用いることのできる宿主細胞としては、動物細胞が挙げられる。動物細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS−1細胞、COS−7細胞、VERO(ATCC CCL−81)細胞、BHK細胞、イヌ腎由来MDCK細胞、ハムスターAV−12−664細胞等が、またヒト由来細胞としてHeLa細胞、WI38細胞、ヒト293細胞、PER.C6細胞が挙げられる。CHO細胞が極めて一般的であり好ましく、CHO細胞においては、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)欠損CHO細胞がさらに好ましい。
また、遺伝子操作の過程やポリペプチドの製造過程において、大腸菌等の微生物も多く使われ、それぞれに適した宿主−ベクター系を使用することが好ましく、上述の宿主細胞においても、適宜のベクター系を選択することができる。
上記の形質転換細胞を培養するにあたっては、通常の細胞培養に用いられる培地を使用することが可能であり、その形質転換細胞を各種の培地にて事前に培養して、最適の培地を選択することが好ましい。例えば、MEM培地、DMEM培地、199培地などの公知の培地を基本培地とし、さらに改良あるいは各種培地用のサプリメントを添加した培地を使用すればよい。培養方法としては、血清を添加した培地で培養する血清培養、又は血清を添加しない培地で培養する無血清培養が挙げられる。培養方法は特に限定されることはないが、無血清培養が好ましい。
上記により取得された培養上清、又は培養物からのポリペプチドの単離精製方法は、公知の手法(例えば、堀尾武一編集、蛋白質・酵素の基礎実験法、1981)に準じて行うことができる。例えば、ポリペプチドと逆の電荷を持つ官能基を固定化したクロマトグラフィー担体と、ポリペプチドの間の相互作用を利用したイオン交換クロマトグラフィーや吸着クロマトグラフィーの使用も好ましい。また、ポリペプチドとの特異的親和性を利用したアフィニティークロマトグラフィーも好ましい例として挙げられる。
また、Hisタグを有する発現ベクターを使用した場合には、Hisタグ精製キット(例えばMBL社製)を用いてポリペプチドを精製することができる。
精製の程度は、使用目的等により選択でき、例えば電気泳動、好ましくはSDS−PAGEの結果が単一バンドとして得られるか、もしくは単離精製品のゲル濾過HPLC又は逆相HPLCの結果が単一のピークになるまで純粋化することが好ましいが、単一のバンドを得ることを求めるものではない。
本実施の形態におけるポリペプチドは、E5ペプチド活性を有するものであれば、糖鎖やポリエチレングリコール(PEG)鎖が付加していてもよい。また、ポリペプチドを構成するアミノ酸の少なくとも一部にD体アミノ酸が含まれていてもよい。これらは、生体内での安定性が高い点で好ましい場合がある。
ポリペプチドにおける糖鎖付加は、公知の方法により行うことができる(Sato M et.al. J Am Chem Soc. 2004 Nov 3;126(43):14013-22)。糖鎖はN末端、C末端又はそれらの間のアミノ酸に結合可能であるが、ポリペプチドの活性を阻害しないためにN末端又はC末端に結合することが好ましい。また、付加する糖鎖の個数は、1個又は2個が好ましく、1個が好ましい。糖鎖は、単糖から4糖が好ましく、さらには2糖又は3糖が好ましい。糖鎖は、ポリペプチドの遊離のアミノ基又はカルボキシル基に直接又は例えば炭素数1〜10程度のメチレン鎖等のスペーサー構造を介して結合することができる。
ポリペプチドにおけるPEG鎖付加は、公知の方法により行うことができる(Ulbricht K et.al. Clin Nephrol. 2006 Mar;65(3):180-90)。PEG鎖は、N末端、C末端又はそれらの間のアミノ酸に結合可能であり、通常、1個又は2個のPEG鎖が、ポリペプチド上の遊離のアミノ基やカルボキシル基に結合される。PEG鎖の分子量は、特に限定されないが、通常3000〜7000程度、好ましくは5000程度のものが用いられる。
ポリペプチドを構成するアミノ酸の少なくとも一部をD体とすることは、公知の方法により行うことができる(Brenneman DE et.al. J Pharmacol Exp Ther. 2004 Jun;309(3):1190-7)。ポリペプチドを構成するアミノ酸の一部をD体としてもよいが、ポリペプチドの活性をできるだけ阻害しないようにするため、ポリペプチドを構成するアミノ酸の全てをD体アミノ酸とすることが好ましい場合がある。
本実施の形態におけるポリペプチドは、市販のペプチド合成機を用いた化学合成等の常法によっても容易に製造することができる。また、上記安定化修飾も、上記各文献に記載されているような周知の方法により容易に行なうことができる。
本発明により、E5ペプチド活性を有するポリペプチドを有効成分として含む医薬組成物が提供される。本実施の形態における医薬組成物は、細胞保護作用を有しており、低酸素、物理的因子(外傷、熱、放射線等)、感染、毒素、あるいは炎症反等によって惹起される細胞障害を改善するために用いることができる。
細胞障害とは、適応の限界(可逆性)を超えた外的因子あるいは内的因子にさらされ、細胞の死に至るものと定義される。すなわち、外界からの様々な刺激によって引き起こされる組織障害やそれに伴って出てくる自己由来の起炎性因子に対して生体防御反応として炎症が惹起され、組織障害及び炎症反応により誘導されるサイトカインやケミカルメディエーター等によって細胞間のバリア機構が破たんし細胞透過性が亢進し、細胞がアポトーシス等の細胞死が誘導され、細胞機能障害が引き起こされる状態ことを言う。
細胞障害としては、敗血症、虚血/再灌流障害、卒中、虚血性発作、急性心筋梗塞、急性神経変性疾患、アルツハイマー病、ダウン症症候群、ハンチントン病、筋委縮性側索硬化症、パーキンソン病、褥瘡、創傷、閉塞性動脈疾患、動脈硬化症、高脂血症、糖尿病、肥満、臓器移植、化学療法、免疫抑制薬、及び放射線障害等、種々の疾患や処置により細胞が受ける障害が挙げられる。本実施の形態による医薬組成物は、細胞保護作用を有することにより、これらの細胞障害を予防及び/又は治療することができる。なお、本明細書中において、細胞障害の予防及び/又は治療とは、細胞障害に起因する疾患の予防及び/又は治療も含む。
本実施の形態における細胞障害は、低酸素、物理的因子(外傷、熱、放射線等)、感染、毒素、あるいは炎症反等によって惹起される細胞障害であれば特に限定されないが、血管内皮細胞障害、表皮細胞障害、消化管上皮細胞障害、気管上皮細胞障害、又は肺胞上皮細胞障害が例示される。
血管内皮細胞障害は、高血圧、高血糖、脂質異常、喫煙、インスリン抵抗性、炎症性サイトカイン等の因子により血管内皮細胞が活性化され、それにより血管内皮細胞透過性が亢進し、血液中の有害物質が血管中に進入するのを防ぐことができなくなり、また、様々な細胞・組織・器官の情報伝達や免疫応答に関与することで血管の恒常性維持ができなくなる状態をいう。血管透過性が亢進し、血管が拡張するために発赤と浮腫による腫脹が起こり、それに伴い発熱物質や発痛物質による熱や痛みが生じる。
血管内皮細胞障害に起因する疾患としては、敗血症、虚血/再灌流障害、卒中、虚血性発作、急性心筋梗塞、閉塞性動脈疾患、動脈硬化症、高脂血症、糖尿病、類洞閉塞症候群、溶血性尿毒症症候群、血栓性微小血管障害症、播種性血管内血液凝固症候群、全身性毛細管漏出症候群が例示される。本実施の形態における医薬組成物はこれら疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。
皮膚の表面には主に表皮細胞から形成される表皮があり、体内の水分保持や外界の細菌や刺激からからだを守るバリアの役割を果たしている。表皮細胞障害は、物理的因子(外傷、熱、外力、放射線等)やストレス、神経ペプチド、ヒスタミン、感染等により障害を受け、皮膚の透過性の亢進、感染防御能の低下といったいわゆるバリア機能が障害され、角質層における水分の保持機能が損なわれ、外界からの刺激物や細菌、アレルゲンが入りやすくなりさらに炎症が誘導され、皮膚の機能異常をきたした状態をいう。皮膚組織の微小循環不全から細胞壊死に至る場合もある。
表皮細胞障害に起因する疾患としては、褥瘡、アトピー性皮膚炎が例示される。本実施の形態における医薬組成物はこれら疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。
消化管の場合、消化管の内側は消化管上皮細胞によって覆われており、消化管上皮細胞の内側には、マクロファージや樹状細胞、リンパ球といった免疫担当細胞が多数存在している。消化管上皮細胞障害とは、免疫反応、薬物、毒素、放射線照射により消化管上皮細胞透過性が亢進し消化管バリアが損傷すると、それによって侵入する外来異物や腸内細菌に対して、これらの免疫系細胞が反応し炎症を起こした状態をいう。
消化管上皮細胞障害に起因する疾患としては、放射線障害、炎症性腸疾患が例示される。炎症性腸疾患の患者の消化管上皮において、細胞同士の接合に重要な蛋白質の発現異常が認められており、消化管バリアがルーズになって透過性が亢進することと炎症性腸疾患の重症度と相関することが報告されている。本実施の形態における医薬組成物はこれら疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。
気道上皮細胞は管腔側近傍に存在するタイトジャンクションで相互に結合することにより選択的透過障壁として機能し、気道上皮透過性の恒常性の維持に寄与している。気道上皮透過性の亢進は、多くの肺疾患における組織傷害モデルにおいて見られる。気道上皮細胞障害に起因する疾患としては、気管支喘息等アレルギー疾患が例示される。
喘息は好酸球、マスト細胞、リンパ球などの活性化と気道粘膜障害を伴う気道の慢性炎症とされている。本実施の形態における医薬組成生物はこれらの疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。
肺の場合、肺胞の内側は肺胞上皮細胞によって覆われている。肺胞上皮細胞障害とは、細菌やウィルス感染、化学物質、薬物、高酸素や炎症反応により肺胞上皮細胞がダメージを受け透過性が亢進すると、タンパク成分に富む浮腫液がそのまま肺胞の中に漏出し肺胞の壁を覆って硝子膜を作り、硝子膜に覆われた肺胞は、酸素と炭酸ガスのやりとりをうまくできなくなってしまう状態をいう。肺の広い範囲で肺胞が硝子膜に覆われてしまう状態をびまん性肺胞傷害と呼ぶ。
肺胞上皮細胞障害に起因する疾患としては、急性肺損傷、急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)、肺炎が例示される。本実施の形態における医薬組成物はこれら疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。
本実施の形態における医薬組成物は、担体を含有することができる。用いることのできる担体としては、水溶性の担体が好ましく、通常は、医薬品の添加剤として許容できる、等張化剤、緩衝化剤、増粘剤、界面活性剤、保存剤、防腐剤、無痛化剤、pH調整剤などが好ましい。例えば、ショ糖、グリセリン等や、その他の無機塩のpH調整剤等を添加剤として加えて調製することができる。さらに必要に応じて、特開平1−6219号公報及び特開平6−321805号公報に開示される通り、アミノ酸、塩類、糖質、界面活性剤、アルブミン、ゼラチン等を添加してもよい。本実施の形態における医薬組成物は、本実施の形態のポリペプチドに加えて、他の医薬成分を組み合わせて含んでもよい。他の医薬成分としては、例えば、免疫抑制剤、造血器悪性腫瘍治療薬等が挙げられる。
担体及び他の医薬成分の添加方法は特に限定されないが、一態様において、免疫抑制剤及び造血器悪性腫瘍治療薬から選ばれる少なくとも1つを含有する本実施の形態の医薬組成物を、凍結乾燥製剤として製造する方法としては、通常行われるように、例えば、免疫抑制剤及び造血器悪性腫瘍治療薬から選ばれる少なくとも1つを含有する溶液とポリペプチド含有溶液を混合した後、担体等の添加物を添加混合し、凍結乾燥する方法や、あらかじめ担体等の添加物を水、注射用蒸留水あるいは適当な緩衝液に溶解した免疫抑制剤又は造血器悪性腫瘍治療薬から選ばれる少なくとも1つに混合した後、ポリペプチド含有溶液を添加混合にする方法にて溶液を調製し、凍結乾燥する方法が挙げられる。本実施の形態における医薬組成物が各医薬成分を組み合わせてなる場合には、各医薬は、適宜の製造方法により担体を添加して製造することが好ましい。本実施の形態における医薬組成物としては、注射液の形態で提供されても、また凍結乾燥製剤を使用時に溶解して使用する形態で提供されてもよい。
製剤化工程においては、アンプル又はバイアルに、0.01〜10mgの本実施の形態におけるポリペプチド、注射用水、さらには、添加剤を含有する溶液を、例えば0.5〜10mL充填して水溶液注射用製剤として調製できる。また、凍結し減圧下のもとで乾燥して凍結乾燥製剤として調製する方法が例示される。
本実施の形態における医薬組成物は、非経口投与法、例えば静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与などによって投与することが望ましい。また経口投与、直腸内投与、鼻内投与、舌下投与、経肺投与、経皮投与により投与することも可能である。
本実施の形態における医薬組成物が各医薬成分を組み合わせてなる場合には、それぞれの医薬成分は、適宜の投与方法により投与することが好ましい。
静脈内投与の場合、一度に所望の量を投与する方法(静脈内急速投与)又は点滴静脈内投与が挙げられる。一度に所望の量を投与する方法(静脈内急速投与)は投与時間が短い点で好ましい。
本実施の形態における医薬組成物の投与量は、患者の年齢、体重、疾患の程度、投与経路などによっても異なるが、一般的には成人1日当たり0.01〜100mgを1〜3回に分けて投与することが例示される。投与期間は数日〜2カ月の連日投与が一般的であるが、患者の症状により1日投与量、投与期間共に増減することができる。また、投与間隔は、2日から14日に1回、好ましくは2日から7日に1回、さらに好ましくは3日から5日に1回にとすることも可能である。
以下、実施例及び試験例により本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらによって限定されるものではない。
1.ポリペプチドの作製
配列番号1のアミノ酸配列をコードするDNA(具体的には、配列番号2の塩基配列よりなる)の人工合成をタカラバイオ株式会社に依頼し、C末にV5タグ及びHisタグが付加するようにpcDNA3.1/V5−Hisプラスミド(インビトロジェン)に挿入した。本プラスミドをサル腎臓(COS)細胞にトランスフェクションして、この形質転換細胞の培養液より、Hisタグ精製キット(MBL社)によりポリペプチド精製品を取得した。精製品はSDS−PAGEにより純度を確認し、ブラッドフォード法(Bio−Rad Laboratories)により蛋白質濃度を定量した。COS細胞により作製した蛋白質及びポリペプチドは、E5(配列番号1、実施例1)及び、E45(比較例1:非特許文献4に記載の方法により取得)であった。
なお、各ポリペプチドのC末にV5タグ及びHisタグが付加されるが、このタグは細胞保護活性には影響を与えない(非特許文献4)。
D123(比較例2)は、WO2008/044631号公報の製造例1に記載の方法に従い、取得した。
また、別の方法として、株式会社 ペプチド研究所へ依頼することにより、化学合成によってもE5を取得した(実施例2)。
2.ポリペプチドの細胞死抑制活性(抗アポトーシス蛋白質誘導活性)
E45(比較例1)、D123(比較例2)、及びE5(実施例1)の細胞保護活性を細胞死抑制活性にて評価した。細胞死抑制活性は、血管内皮細胞を用いた抗アポトーシス蛋白質Mcl−1発現誘導の測定にて評価した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を専用培地(2%ウシ胎児血清含有EGM(endothelial cell growth medium)、Lonza)で培養し、培地中へ各ポリペプチドを17.45 fmolの濃度になるように添加して培養した。陰性対照として、ブランク(ペプチド無し)を用いた。培養は37℃、5%CO2インキュベーターにて行った。添加後、48時間後に培地を除き、細胞溶解液にてHUVECを溶解し、細胞抽出液を得た。細胞抽出液を5−15%SDS−PAGE後、イモビロン−Pメンブレン (Millipore)に転写し、抗Mcl−1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-819)、及び抗GAPDH抗体(Abcam)によるウエスタンブロットを実施し、以下の手順に従いMcl−1量を定量した。
転写したイモビロン−Pメンブレンを室温にて1%milkにて2分ブロッキングした。抗Mcl−1抗体を1%milk液で1000倍に希釈し、ナイロン膜と室温にて4℃にて終夜インキュベートした。インキュベート終了後、洗浄液(組成:PBS+0.1%tween20)で計3回洗浄した。
次いで、1%milk液で1000倍に希釈した2次抗体溶液を添加し、室温にて60分間インキュベートした後、洗浄液で計3回洗浄した。
ECLウェスタンブロッティング検出システム(GEヘルスケア・ジャパン)の添付のマニュアルに従い、基質溶液ECL液2種類を添加し、室温で通常1〜2分間インキュベートした後、LAS4000イメージアナライザー(FUJI FILM社)にて感光、現像を行った。Mcl−1蛋白質のバンドの強度をImageJソフトウェア(Wayne Rasband、NIH)にて定量化した。
次いで同じナイロン膜を用いて、抗GAPDH抗体にて同様の手順で染色後、GAPDH蛋白質のバンド強度を定量し、内部標準として用いた。
結果を、対照におけるMcl−1誘導活性を1とした場合の各ポリペプチドの相対Mcl−1誘導活性として、図1に示す。図1に示されるように、本発明のポリペプチドE5は、Mcl−1誘導活性、すなわち細胞保護活性を有しており、E45(比較例1)と同等以上、かつD123(比較例2)よりも高い細胞保護活性を有していた。
3.ポリペプチドの細胞死抑制活性(抗アポトーシス活性)
E5(実施例1)の細胞保護活性を、抗アポトーシス活性を測定することで調べた。
具体的には、免疫抑制剤であるサイクロスポリン(CsA)(Sigma Chemical)により誘発されるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)のアポトーシス反応に対して、最終濃度を3ng/mLになるようにE5を添加し抗アポトーシス活性を測定した。
HUVECを上記2.と同様の専用培地にて培養後、トリプシン/EDTAで剥離し、PBSに懸濁した。細胞懸濁液を2×105細胞/mLになるように12ウェル培養プレート(Sumilon社)に1mLずつ分注した。CsA、あるいはCsA+E5を添加し、24時間曝露させた。アポトーシス細胞の測定は、アネキシン−FITCアポトーシス検出キット(Pharmingen)を用いて、付属のプロトコールに準じて実施した。
アポトーシス細胞は、アネキシンVとPI(プロピジウムアイオダイド)染色後、FACSにて検出した。アネキシンV陽性細胞を初期アポトーシス細胞(early apoptosis)、アネキシンVとPIの両者が陽性である細胞を後期アポトーシス細胞(late apoptosis)と表し、その両方を合わせてアポトーシス細胞とした。
この結果を、図2に示す。図2に示されるように、細胞保護活性を有することが知られているD123と同様にE5ペプチドは、CsAによって誘導されるアポトーシスに対して抑制作用を有することがわかる。
4.ポリペプチドの血管内皮保護活性
E5(実施例1)の血管内皮保護活性を血管透過性亢進抑制活性を測定することで調べた。血管透過性亢進に対するポリペプチドの影響は、vascular permeability assay kit(Millipore)を用いて、付属のプロトコールに準じて評価した。具体的には、HUVECをコラーゲンコートされたインサート上にコンフルエントになるまで培養し、24時間のスタベーション後、CsA、あるいはCsA+E5を添加し12時間培養した。FITC標識デキストランを上室に添加し、下室に出てきたFITCの蛍光強度を測定し血管内皮細胞透過性亢進活性とした。この結果を、図3に示す。
図3aに示されるように、血管透過性亢進を抑制することが知られているD123と同様に、E5はCsAによる血管透過性亢進を抑制した。図3bに示されるように、CsAの代わりにIL−1β(Sigma Chemical)を用いた場合も同様の結果であった。
5.ポリペプチドの血管新生促進活性
D123(比較例2)、及びE5(実施例1)の血管新生促進活性を調べた。陽性対照としてVEGF(Pepro Tech Inc社)を、陰性対照としてバッファーを用いた。
血管新生促進活性は、in vitro血管内皮管腔形成、及びマウスを用いたin vivoマトリゲル皮下移植法にて評価した。具体的には、24ウェル培養プレート(Sumilon社)を用いて、ヒト臍帯内皮細胞(2.5×104細胞/well)を、増殖因子を減量したマトリゲル(BD Bioscience)に播種した。
D123、E5、又はポジティブコントロールとしてVEGF(20ng/mL)を添加し、8時間培養した。何も添加しないものを対照とした。管腔形成は40倍の倍率で光学倒立顕微鏡にて観察し、ランダムに選んだ5視野の管腔長さをNIH ImageJソフトウェア(Wayne Rasband)にて計測し、コントロールに対する割合として示した。この結果を、図4aに示す。血管新生インデックスは視野における分岐部の数として計算し、平均値で示した。この結果を、図4bに示す。
図4a及び図4bに示されるように、管腔の長さ、及び血管新生インデックスの両方で濃度依存的にE5による血管新生促進活性が認められた。30ng/mL以上の濃度のE5では、その活性はD123及び強力な血管新生作用を有するVEGFより高かった。
in vivoでの血管新生促進活性は、マトリゲル皮下移植法にて評価した。40U/mLのヘパリンを含む、増殖因子を低減させたマトリゲル(0.5mL)に、評価したい検体(D123、E5又はVEGF)を混合し、C57BL6マウス(6週齢雌)の背部皮下へ投与した。何も混合しないものを対照とした。4日後、マトリゲルを摘出してヘモグロビン含量を定量した。この結果を図4cに示す。
図4cに示されるように、E5を混合した場合、マトリゲルは高いヘモグロビン含量を示し、100ng/mLではその活性はVEGFよりも高く、顕著な血管新生を促進する活性が認められた。また、その活性はD123より高かった。
6.ポリペプチドのNO産生促進活性及びeNOSリン酸化促進活性
D123(比較例2)及びE5(実施例1)のNO産生促進活性及びeNOSリン酸化促進活性を調べた。
NO産生は、Griess Reagent System(Promega)を用いて、添付プロトコールに準じて測定した。具体的には、HUVECをD123又はE5添加培地にて上記2.と同様の手法を用いて培養後、培地と等量のGriess試薬を添加し、NO2 -を測定した。この結果を、図5aに示す。
eNOSリン酸化誘導は、D123又はE5を添加して培養したHUVECの抽出物をSDS−PAGE後、抗eNOS抗体(Cell Signaling Technology)又は抗p−eNOS抗体(Ser1177)(Cell Signaling Technology)を用いたウエスタンブロット解析にて検討した。この結果を、図5bに示す。
図5aに示されるように、E5にはNO産生を促進する活性が認められ、その活性はD123より高かった。CsA添加によるNO産生低下をE5は抑制した。
また、図5bに示されるように、E5は未添加のコントロールに比べCsA添加によるeNOS蛋白質のリン酸化(図5bのp−eNOS)低下を抑制した。その活性はD123より高かった。
7.ポリペプチドの細胞増殖促進活性
D123(比較例2)及びE5(実施例1)のポリペプチドによる細胞増殖促進活性の測定を行った。
具体的には、HUVEC(5×103細胞)を、D123あるいはE5存在下で、上記2.と同様の専用培地を用いて96ウェルプレートにて24時間培養した。さらに、ブロモデオキシウリジン(10μmol/L/well)を添加し4時間培養後、細胞内に取り込まれたブロモデオキシウリジンを測定した。測定は、細胞増殖ELISA,BrdU発色キット(Roche)を用いて、添付のプロトコールに準じて実施した。
この結果を、図6に示す。図6に示されるように、E5はHUVECに対して濃度依存的な増殖促進活性を示した。
8.ポリペプチドによるERK、Akt、及びJNKのリン酸化促進活性
D123(比較例2)、及びE5(実施例1)のERK、Akt、JNK、p38、STAT5、S6K、4E−BP1のリン酸化に対する作用を評価した。
具体的には、HUVECを専用培地で培養後、無血清培地で3時間starvationした後、各検体を添加した。
D123は100ng/mL、E5は10、30又は100ng/mLの濃度で添加し、24時間又は48時間インキュベートした後、20μlのライシスバッファー(組成:20mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、1mM Na2EDTA、1mM EGTA、1% Triton、2.5mM sodium pyrophosphate、1mM β−glycerophosphate、1mM Na3VO4、1μg/ml leupeptin、1mM PMSF)で細胞溶解液を調製した。この溶解液を5−15%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で蛋白を分離し、イモビロン−Pメンブレンにトランスファーした後、上記3.と同様の方法にて各蛋白質のリン酸化を特異的抗体にて検出した。用いた抗体を以下に示す:抗リン酸化ERK抗体(Cell Signaling Technology, 9101);
抗リン酸化Akt抗体(Ser473)(Cell Signaling Technology, 9271);
抗リン酸化JNK抗体(Tyr183/185)(Cell Signaling Technology, 9251);
抗リン酸化p38抗体(Tyr180/182)(Cell Signaling Technology, 9216);
抗リン酸化STAT5抗体(Tyr694)(Cell Signaling Technology, 9351);
抗リン酸化S6K(Ser235/236)(Cell Signaling Technology, 4856);
抗リン酸化4E−BP1抗体(Thr37/46)(Cell Signaling Technology, 2855);
抗ERK抗体(Cell Signaling Technology, 9102);
抗Akt抗体(Ser473)(Cell Signaling Technology, 9272);
抗JNK抗体(Santa Cruz Biotechnology, sc-474);
抗p38抗体(Santa Cruz Biotechnology, sc-535G);
抗STAT5抗体(C−17)(Santa Cruz Biotechnology);
抗S6K(Cell Signaling Technology, 2217);
抗4E−BP1抗体(Cell Signaling Technology, 9644);及び
抗Bcl−2抗体(Santa Cruz Biotechnology, sc-509)。
結果を図7に示した。
図7に示されるように、E5添加により24時間後から顕著なERKのリン酸化と弱いながらJNKのリン酸化が、48時間後にはAktのリン酸化が認められた。E5によるリン酸化の程度はD123より強かった。
9.ポリペプチドの抗凝固活性
E45(比較例1)及びE5(実施例1)の抗凝固活性を調べた。抗凝固活性は、プロテインC活性化促進活性によって評価した。具体的には、E45又はE5をプロテインC及びトロンビンと反応後、生成した活性化プロテインCを合成基質S−2366にて405nmの吸光度を測定することにより評価した。
20mM塩化カルシウム溶液75μLに、検量線用のコントロールD123、E45(14ng/μL)又はE5(10ng/μL)を25μL添加し混合後、40NIHU/mLトロンビン溶液25μL、次いで15μg/mLプロテインC溶液25μL添加、37℃10分インキュベートした。アンチトロンビンIIIを添加し37℃10分インキュベートし反応を停止させた後、基質溶液を添加し、37℃10分インキュベートした。反応を停止後、405nm吸光度を測定し、D123を用いた検量線から、E45及びE5のプロテインC活性化促進活性すなわち抗凝固活性を求めた。その結果、ポリペプチドE5の抗凝固活性は検出限界以下、E45の抗凝固活性は2.11U/mLであった。それぞれを蛋白質濃度で除して比活性を算出した結果を図8に示す。
図8に示されるように、D123が409,600U/molに対して、E45は1758.4U/molと弱いながらも抗凝固活性が認められたのに対して、本発明のポリペプチドE5には抗凝固活性が認められなかった。
本発明は、優れた細胞保護活性を有しかつ抗凝固作用が少ないポリペプチド及び該ポリペプチドを有効成分として含む医薬組成物を提供することができるという産業上の利用可能性を有する。これにより、医薬としての使用時の出血のリスクを低減することが期待できるという産業上の利用可能性も有する。
配列番号1:E5のアミノ酸配列
配列番号2:配列番号1のアミノ酸配列をコードする塩基配列

Claims (6)

  1. 配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる単離されたポリペプチド。
  2. 請求項1に記載のポリペプチドを有効成分として含む医薬組成物。
  3. 細胞障害の予防及び/又は治療のための請求項2に記載の医薬組成物。
  4. 血管内皮細胞障害の予防及び/又は治療のための請求項2又は3に記載の医薬組成物。
  5. 消化管上皮細胞障害、気管上皮細胞障害、又は肺胞上皮細胞障害の予防及び/又は治療のための請求項2又は3に記載の医薬組成物。
  6. 表皮細胞障害の予防及び/又は治療のための請求項2又は3に記載の医薬組成物。
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