以下、図面を参照しながら本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置を説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。図1に示すように、第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、架台10とコンソール100とを有する。例えば、架台10は検査室に設置され、コンソール100は検査室に隣接する制御室に設置される。架台10とコンソール100とは互いに通信可能に接続されている。架台10は、患者等の被検体PをX線でCT撮影するための撮影機構を装備する。コンソール100は、架台10を制御するコンピュータである。
図1に示すように、架台10は、開口が形成された略円筒形状の回転フレーム11を有する。回転フレーム11は、回転部とも呼ばれている。図1に示すように、回転フレーム11には、開口を挟んで対向するように配置されたX線管13とX線検出器15とが取付けられている。回転フレーム11は、アルミ等の金属により円環形状に形成された金属枠である。後述するが、架台10は、アルミ等の金属により形成されたメインフレームを有する。メインフレームは、固定部とも呼ばれている。回転フレーム11は、当該メインフレームにより回転可能に支持されている。
X線管13は、X線を発生する。X線管13は、熱電子を発生する陰極、陰極から飛翔する熱電子を受けてX線を発生する陽極を保持する真空管である。X線管13は、高圧ケーブルを介してX線高電圧装置17に接続されている。
X線高電圧装置17は、変圧式X線高電圧装置、定電圧型X線高電圧装置、コンデンサ式X線高電圧装置、インバータ式X線高電圧装置等の如何なる形式にも適用可能である。X線高電圧装置17は、例えば、回転フレーム11に取付けられている。X線高電圧装置17は、架台制御回路33による制御に従いX線管13に印加される管電圧、管電流及びX線の焦点サイズを調節する。
図1に示すように、回転フレーム11は、回転駆動装置21からの動力を受けて中心軸Z回りに一定の角速度で回転する。回転駆動装置21としてダイレクトドライブモータやサーボモータ等の任意のモータが用いられる。回転駆動装置21は、例えば、架台10に収容されている。回転駆動装置21は、架台制御回路33からの駆動信号を受けて回転フレーム11を回転させるための動力を発生する。
回転フレーム11の開口にはCT撮影範囲(FOV:Field Of View)が設定される。回転フレーム11の開口内には寝台23に支持された天板が挿入される。天板には被検体Pが載置される。寝台23は、天板を移動可能に支持する。寝台23には寝台駆動装置25が収容されている。寝台駆動装置25は、架台制御回路33からの駆動信号を受けて天板を前後、昇降及び左右に移動させるための動力を発生する。寝台23は、被検体Pの撮影部位がCT撮影範囲内に含まれるように天板を位置決めする。
X線検出器15は、X線管13から発生されたX線を検出する。具体的には、X線検出器15は、2次元湾曲面上に配列された複数の検出素子を有している。各検出素子は、シンチレータと光電変換素子とを有する。シンチレータは、X線を光子に変換する物質により形成される。シンチレータは、入射X線を、当該入射X線の強度に応じた個数の光子に変換する。光電変換素子は、シンチレータから受けた光子を増幅して電気信号に変換する回路素子である。光電変換素子としては、例えば、光電子増倍管やフォトダイオード等が用いられる。なお、検出素子は、上記の通りX線を光子に変換してから検出する間接変換型でも良いし、X線を直接的に電気信号に変換する直接変換型であっても良い。
X線検出器15にはデータ収集回路19が接続されている。データ収集回路19は、架台制御回路33からの指示に従い、X線検出器15により検出されたX線の強度に応じた電気信号をX線検出器15から読み出し、読み出した電気信号を、ビュー期間に亘るX線の線量に応じたデジタル値を有する生データを収集する。データ収集回路19は、例えば、生データを生成可能な回路素子を搭載したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により実現される。
投光器27は、回転フレーム11に設けられている。投光器27は、架台制御回路33からの指示に従い、CT撮影範囲の基準線を示す可視光線(投光レーザ)を、開口内に挿入された天板又は当該天板に載置された被検体Pに投光する。可視光線は、被検体Pの位置合わせのために投光される。
光学カメラ29は、投光器27からの可視光線が照射された被検体Pを被写体とする光学画像を生成する光学撮影部である。光学カメラ29は、投光器27からの可視光線が照射された被検体Pを撮影可能な位置であれば、如何なる位置に設置されても良い。光学画像は、コンソール100に伝送される。
入力回路31は、寝台23や投光器27の位置決めに関するユーザからの各種指令を入力する。具体的には、入力回路31は、入力機器と入力インタフェースとを有する。入力機器は、ハードウェア又はソフトウェアのスイッチボタン等を含む。入力インタフェースは、架台制御回路33に接続されている。入力インタフェースは、ユーザによる当該入力機器を介した入力操作を電気信号へ変換し、架台制御回路33に出力する。
架台制御回路33は、コンソール100の演算回路101から伝送された撮影条件に従いX線CT撮影を実行するために、X線高電圧装置17、データ収集回路19、回転駆動装置21及び寝台駆動装置25等を同期的に制御する。また、架台制御回路33は、被検体Pの位置決め等のため回転駆動装置21や投光器27を制御する。ハードウェア資源として、架台制御回路33は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の処理装置(プロセッサ)とROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置(メモリ)とを有する。また、架台制御回路33は、ASICやフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されても良い。本実施形態に係る架台制御回路33は、投光器27の制御プログラムを実行することにより投光器設定機能291を実現する。
投光器設定機能291において架台制御回路33は、ユーザによる入力回路31を介した指示に従い、投光器27による可視光線の照射位置を規定する設定パラメータを設定する。当該設定パラメータを投光パラメータと呼ぶことにする。可視光線の照射位置を規定する投光パラメータとしては、投光器27による可視光線の照射角度や投光器27の光源の位置等が挙げられる。
図1に示すように、コンソール100は、演算回路101、ディスプレイ103、入力回路105及び記憶回路107を有する。
演算回路101は、ハードウェア資源として、CPUあるいはMPU、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。演算回路101は、各種プログラムの実行により前処理機能111、再構成機能113、画像処理機能115、断面形状推定機能117−1、SSDE計算機能119、補正パラメータ決定機能121、撮影パラメータ決定機能123及びシステム制御機能125を実現する。なお、前処理機能111、再構成機能113、画像処理機能115、断面形状推定機能117−1、SSDE計算機能119、補正パラメータ決定機能121、撮影パラメータ決定機能123及びシステム制御機能125は、演算回路101が有する一の基板により実装されても良いし、演算回路101が有する複数の基板に分散して実装されても良い。
前処理機能111において演算回路101は、架台10から伝送された生データに対数変換等の前処理を施す。前処理後の生データは、投影データとも呼ばれる。
再構成機能113において演算回路101は、前処理後の生データに基づいて被検体Pに関するCT値の空間分布を表現するCT画像を発生する。画像再構成アルゴリズムとしては、FBP(filtered back projection)法や逐次近似再構成法等の既存の画像再構成アルゴリズムが用いられれば良い。
画像処理機能115において演算回路101は、再構成機能113により再構成されたCT画像に種々の画像処理を施す。例えば、演算回路101は、当該CT画像にボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画素値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して表示画像を生成する。
断面形状推定機能117−1において演算回路101は、投光器27により被検体Pに照射された可視光線の位置に基づいて、CT撮影範囲に含まれる被検体Pの撮影断面に関する形状指標値を推定する。当該形状指標値を断面形状指標値と呼ぶことにする。例えば、演算回路101は、被検体Pへの可視光線の照射位置を、人体の3次元的な形状を模した人体モデルに当て嵌めることにより、当該可視光線の照射位置に対応する撮影断面に関する断面形状指標値を推定する。
SSDE計算機能119において演算回路101は、断面形状推定機能117−1により推定された断面形状指標値と、予め計測されたCTDI(Computed Tomography Dose index)値とに基づいてSSDE(Size-Specific Dose Estimates)値を計算する。
補正パラメータ決定機能121において演算回路101は、被検体Pの撮影断面の形状や当該断面の断面形状指標値、SSDE値を補正するための補正パラメータを決定する。第1実施形態に係る補正パラメータとしては、天板の高さに応じた補正パラメータ(以下、寝台高さ補正パラメータと呼ぶ)と、SSDE計算機能119により計算されたSSDE値と実測の線量値とのズレに応じた補正パラメータ(ズレ補正パラメータと呼ぶ)とがある。
撮影パラメータ決定機能123において演算回路101は、CT撮影の撮影条件を構成する複数の撮影パラメータを決定する。撮影パラメータとしては、管電圧値や管電流値の他に、管電流の方向性変調に関わる変調パラメータが挙げられる。演算回路101は、断面形状推定機能117−1により推定された断面形状指標値に基づいて変調パラメータを決定する。
システム制御機能125において演算回路101は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の統括的に制御する。具体的には、演算回路101は、記憶回路107に記憶されている制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線コンピュータ断層撮影装置の各部を制御する。
ディスプレイ103は、CT画像等の種々のデータを表示する。ディスプレイ103としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
入力回路105は、ユーザからの各種指令を入力する。具体的には、入力回路105は、入力機器と入力インタフェースとを有する。入力機器は、ユーザからの各種指令を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ、タッチパッド、タッチパネルディスプレイ等が利用可能である。入力インタフェースは、入力機器からの出力信号をバスを介して演算回路101に供給する。なお、入力回路105の入力機器としては、コンソール100に有線又は無線を介して接続された、上記入力機器を備えるコンピュータ機器であっても良い。
記憶回路107は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、記憶回路107は、CD−ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。例えば、記憶回路107は、本実施形態に係るCT撮影に関する制御プログラム等を記憶する。
図2は、第1実施形態に係る架台10の外観を示す図である。図3は、図2の架台10の、Z軸を含む切断面を示す図である。なお、回転フレーム11の中心軸をZ軸、Z軸に鉛直に直交する軸をY軸、Z軸に水平に直交する軸をX軸とする。図2及び図3に示すように、架台10は、略円筒形状を有する開口41が形成された架台筐体40を有する。架台筐体40には、固定部として機能するメインフレーム43と、回転部として機能する回転フレーム11とが収容されている。メインフレーム43は、軸受けを介してZ軸回りに連続回転可能に回転フレーム11を支持する。回転フレーム11には、図2及び図3に図示しないX線管13、X線検出器15及びデータ収集回路19が取り付けられている。また、回転フレーム11には、投光器27が出射した可視光線が開口41に向かう向きに投光器27が取り付けられる。投光器27は、CT撮影範囲の基準線を直接的に視認するための可視光線を出射する。CT撮影範囲の基準線は、CT撮影範囲のX、Y及びZ軸方向に関する中心線とCT撮影範囲の外枠を構成する枠線とを含む。なお、CT撮影範囲の基準線は、上記に限定されず、被検体Pの撮影部位のCT撮影範囲への位置決めに有用な如何なる線であっても良い。
図2及び図3に示すように、架台筐体40のうちの開口41に面する内壁のうちの、投光器27から出射された可視光線と図示しないX線管13から発生されたX線とが通過するための間隙47が設けられている。投光器27とX線管13とが回転フレーム11に取り付けられているので、間隙47は、内壁のZ軸の全周に亘り形成されている。間隙47を覆うように透過膜45が取り付けられている。投光器27から出射された可視光線とX線管13から発生されたX線とは透過膜45を透過する。例えば、透過膜45は、ポリエステルを素材とする透明又は半透明のフィルムにより形成される。
以下、本実施形態を具体的に説明するため、投光器27が出射する可視光線は、CT撮影範囲の外枠を構成する枠線を示すものであるとする。
図4は、CT撮影範囲の外枠を構成する枠線を示す可視光線Lz及びLxの一例を示す図である。図4に示すように、可視光線Lzは、Z方向の撮影範囲の外枠を示す。より詳細には、可視光線Lzは、Z軸の前方側(例えば、患者Pの頭側)の光線Lz1と後方側(例えば、患者Pの足側)の光線Lz2とを含む。なお、患者Pの向きとZ軸の向きとの関係は、これに限定されず、Z軸の前方側が患者Pの足側、後方側が患者Pの頭側であっても良い。光線Lz1の照射位置と光線Lz2の照射位置とは、Z軸に沿って互いに独立に調節可能である。可視光線Lxは、X軸の左方側の光線Lx1と右方側の光線Lx2とを含む。光線Lx1の照射位置と光線Lx2の照射位置とは、X軸に沿って互いに独立に調節可能である。例えば、ユーザは、入力回路31又は105を操作して可視光線Lz1、Lz2、Lx1及びLx2各々の照射位置の調節操作をする。架台制御回路33は、調節操作に応じた照射位置に可視光線Lz1、Lz2、Lx1及びLx2が照射させるための投光パラメータを設定する。すなわち、調節操作に応じた照射位置に可視光線Lz1、Lz2、Lx1及びLx2を照射可能な投光器27の光源の位置又は可視光線の照射角度を設定する。次に、架台制御回路33は、設定された位置に投光器27の光源を移動する、又は照射角度に投光器27の光源を傾ける。これにより投光パラメータに応じた照射位置に可視光線Lz1、Lz2、Lx1及びLx2が照射される。
なお、図2及び図3は、2個の投光器271が回転フレーム11に取り付けられている態様を例示しているが、第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置はこれに限定されない。すなわち、回転フレーム11に取り付けられる投光器27の個数は幾つであっても良い。また、投光器27が回転軸Z回りに回転する必要がないのであれば、架台10の構成部品のうちの、回転フレーム11以外の構成物品、例えば、メインフレーム43や架台筐体40に取り付けられても良い。
図5は、第1実施形態に係る演算回路101のシステム制御機能125の実行により行われる、X線コンピュータ断層撮影装置の典型的な動作の流れを示す図である。図5に示すように、まず、演算回路101は、架台制御回路33に可視光線の照射を行わせる(ステップSA1)。ステップSA1において架台制御回路33は、投光器27から、CT撮影範囲の基準線を示す可視光線を患者Pに照射させる。例えば、患者Pの撮影部位がCT撮影範囲に含まれるように、医療従事者等のユーザによる入力回路31を介した操作により、寝台23の天板231の高さ(以下、寝台高さと呼ぶ)や水平方向の位置が調節される。この際、投光器27は、CT撮影範囲の基準線を示す可視光線として、CT撮影範囲の外枠を示す可視光線を照射する。可視光線の照射位置は、ユーザにより入力回路31又は105を介して任意に調節される。可視光線の照射位置に対応する投光パラメータは、架台制御回路33からコンソール100に伝送され、記憶回路107に記憶される。
ステップSA1が行われると演算回路101は、光学カメラ29に光学撮影を行わせる(ステップSA2)。ステップSA2において光学カメラ29は、可視光線が照射されている患者Pを光学撮影し、光学画像を生成する(ステップSA2)。光学画像は、例えば、各画素にRGB値が割り当てられている。光学撮影時においては、患者Pの撮影範囲における高さ中心がアイソセンタ高さに一致している必要はない。生成された光学画像は、コンソール100に伝送され、記憶回路107に記憶される。この際、光学画像に寝台高さ値が関連付けて記憶される。
図6は、光学カメラ29の配置を示す図である。図6に示すように、位置決め時において、CT撮影範囲の外枠を示す可視光線Lが投光器27から、寝台23の天板231に載置された患者Pに向けて照射される。光学カメラ29は、天板231の架台筐体40とは反対側の端部に、支持棒49を介して取り付けられている。光学カメラ29は、投光器27からの可視光線Lが照射された患者Pを光学撮影範囲に含むような高さ及び傾き角度で取り付けられる。例えば、光学カメラ29は、天板231に支持棒49を介して取り付けられる場合に限定されず、検査室の天井や側壁、床又は架台10等に取り付けられても良い。
ステップSA2が行われると演算回路101は、断面形状推定機能117−1を実行する。断面形状推定機能117−1において演算回路101は、まず、光学カメラ29により生成された光学画像を画像処理し、可視光線が照射されている解剖学的位置を特定する(ステップSA3)。本実施形態において解剖学的位置とは、光学画像の座標そのものではなく、可視光線が照射されている解剖学的部位内での位置を意味する。例えば、解剖学的位置は、撮影部位の基準点からの相対位置により規定される。以下、特定された解剖学的位置を画像側位置と呼ぶことにする。
図7は、光学カメラ29により生成された光学画像I1の一例を示す図である。図7に示すように、光学画像I1は、患者Pに関する画像領域(以下、患者領域と呼ぶ)R1と、可視光線に関する画像領域(以下、可視光線領域と呼ぶ)R2とを含む。演算回路101は、光学画像I1に閾値処理等を行い可視光線領域R2を特定する。そして演算回路101は、可視光線領域R2が存在する患者領域R1上の解剖学的位置を画像認識処理等により、画像側位置として特定する。例えば、図7の場合、撮影部位は胸部である。この場合、胸部領域の一部領域が画像側位置R2として上記画像処理により特定される。画像側位置は、ユーザにより入力回路105を介して指定された位置に特定されても良い。なお、撮影部位の情報は、光学画像I1の画像認識処理により特定しても良いし、撮影条件から取得しても良い。
ステップSA3が行われると演算回路101は、ステップSA3において特定された画像側位置に対応する、人体モデルにおける解剖学的位置を特定する(ステップSA4)。特定された解剖学的位置をモデル側位置と呼ぶことにする。人体モデルのデータは、記憶回路107に記憶される。
図8は、人体モデルMDの一例を示す図である。人体モデルMDは、人体の3次元的な形状を模したモデルのデータである。人体モデルMDは、人体の外形だけでなく臓器等の内部構造も反映している。例えば、図7のように胸部領域の一部領域R2が画像側位置として特定された場合、当該胸部領域R2に解剖学的に対応する一部領域がモデル側位置R2’として特定される。なお、人体モデルMDの座標系と光学画像I1の座標系とは予め対応付けられているものとする。
ステップSA4が行われると演算回路101は、ステップSA4において特定されたモデル側位置の断面に関する断面形状指標値を推定する(ステップSA5)。ステップSA5において演算回路101は、まず、モデル側位置に含まれる推定対象断面を設定する。推定対象断面は、例えば、モデル側位置に含まれる複数の撮影断面の中から任意に決定される。当該撮影断面は、患者PのCT撮影範囲の断面であると推定される。
推定対象断面が設定されると演算回路101は、当該断面における断面形状指標値を推定する。断面形状指標値は、具体的には、人体モデルのAP(Anterior-Posterior)方向の長さ(以下、AP長と呼ぶ)、LR(Left-Right)方向の長さ(以下、LR長と呼ぶ)、AP長とLR長との合計長、実効径、水等価直径等により規定される。
図9は、人体モデルMDの撮影断面の一例を示す図である。図9の「A」は、患者の正面側、「P」は背中側、「L」は患者の左側、「R」は患者の右側を示す。例えば、人体モデルの断面形状が、X線の透過経路長を水の透過経路長に換算した寸法、すなわち、水等価長に表現されている場合、人体モデルの断面における直径は水等価直径に等しい。この場合、演算回路101は、人体モデルの断面の直径を計測することにより患者Pの水等価直径を推定することが可能である。一方、人体モデルの断面形状が実経路長により表現されている場合、人体モデルの断面におけるAP方向の長さを計測することにより患者PのAP長が、LR方向の長さを計測することにより患者PのLR長を推定することが可能である。また、AP長とLR長とを加算することにより患者Pの合計長が、AP長とLR長との積の平方根により患者Pの実効径が推定可能である。
なお、演算回路101は、上記のように推定された断面形状指標値を寝台高さ補正パラメータに基づき補正することが可能である。寝台高さに応じた補正パラメータは、演算回路101の補正パラメータ決定機能121により決定される。
図10は、演算回路101の補正パラメータ決定機能121により決定される寝台高さ補正パラメータを説明するための図である。図10に示すように、図10のグラフの縦軸は寝台高さ補正パラメータに規定され、横軸は寝台高さに規定される。寝台高さIsoは、天板231に載置された患者PのY軸方向の中心がアイソセンタに位置するときの天板231の高さに規定される。寝台高さHLは高さIsoより低く、寝台高さHHは高さIsoより高いものとする。図10に示すように、寝台高さが高いほど患者Pが投光器27に近づくのでCT撮影範囲(FOV)に対する患者Pの大きさD、すなわち、幾何学的倍率が増加する。例えば、寝台高さHLの幾何学的倍率であるFOVに対する患者Pの大きさDHLの倍率DHL/FOVは、寝台高さHHの幾何学的倍率であるFOVに対する患者Pの大きさDHHの倍率DHH/FOVよりも小さい。換言すれば、寝台高さHLのときの被検体Pに投影される領域の広がり角θHLは、寝台高さHHのときの被検体Pに投影される領域の広がり角θHHよりも小さい。従って、患者Pの幾何学的倍率が増加するほど断面形状指標値はアイソセンタでの断面形状指標値に比して過大評価される。反対に、患者Pの幾何学的倍率が減少するほど断面形状指標値はアイソセンタでの断面形状指標値に比して過小評価される。従って、任意の寝台高さでの断面形状指標値をアイソセンタでの断面形状指標値に補正する必要がある。
図10に示すように、寝台高さ補正パラメータは、寝台高さとの間で線形性を有し、寝台高さが高くなるにつれ値が小さくなるように設定される。高さIsoの補正パラメータは「1」に設定される。演算回路101は、図10に示す寝台高さと寝台高さ補正パラメータとの関連を規定するテーブル(LUT:Look Up Table)を記憶している。以下、当該テーブルを寝台高さ補正テーブルと呼ぶことにする。演算回路101は、光学カメラ29による患者Pの光学撮影時の寝台高さ値を架台10から取得し、取得された寝台高さ値に基づき寝台高さ補正テーブルから寝台高さ補正パラメータを決定する。断面形状推定機能117−1において演算回路101は、決定された寝台高さ補正パラメータを、暫定的に決定された断面形状指標値に乗じることにより断面形状指標値を推定する。
ステップSA5が終了すると断面形状推定機能117−1が終了する。
次に、演算回路101は、SSDE計算機能119を実行する(ステップSA6)。ステップSA6において演算回路101は、水等価直径と予め計測されたCTDI値とに基づいてSSDE値とを計算する。より詳細には、演算回路101は、水等価直径から変換係数を決定し、決定された変換係数をCTDI値に乗じることによりSSDE値を計算する。例えば、演算回路101は、水等価直径と変換係数とを関連付けたテーブル(LUT:Look Up Table)を記憶している。このテーブルを水等価直径/変換係数テーブルと呼ぶことにする。演算回路101は、ステップSA5において計算された水等価直径を検索キーとして水等価直径/変換係数テーブルを検索し、当該水等価直径に関連付けられた変換係数を決定する。CTDI値は、CTDI計測用のファントムを、CTDI計測用のジオメトリにおいてCT撮影することにより計測される。CTDI値は、記憶回路107に記憶されている。
なお、SSDE値は、モデル側位置に含まれる全ての撮影断面毎に計算されても良い。この場合、演算回路101は、複数の撮影断面に関する複数のSSDE値の平均値や中央値、最大値、最小値を、CT撮影範囲全体のSSDE値として計算する。
ステップSA6が行われると演算回路101は、ステップSA6において計算されたSSDE値をディスプレイ103に表示する(ステップSA7)。具体的には、ディスプレイ103は、撮影断面毎のSSDE値を表示しても良いし、CT撮影範囲全体のSSDE値を表示しても良い。ユーザは、表示されたSSDE値を確認し、SSDE値が許容できないと判断した場合、撮影条件等を見直す。SSDE値が許容できると判断した場合、ユーザは、入力回路31又は105等を介して撮影指示を入力する。
ステップSA7が行われ、ユーザにより入力回路31又は105等を介して撮影指示が入力されると演算回路101は、架台制御回路33に撮影開始を指示する(ステップSA8)。撮影開始を指示された架台制御回路33は、撮影条件に従いX線高電圧装置17、データ収集回路19、回転駆動装置21及び寝台駆動装置25等を同期的に制御し、患者Pに対するCT撮影を実行する。
以上により、第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の動作の流れの説明を終了する。
なお、複数の体型の人体モデルが記憶回路107に記憶され、演算回路101は、当該複数の人体モデルの中から患者Pの体格に近似する人体モデルを選択しても良い。例えば、入力回路105を介したユーザの指示に従い人体モデルが選択されても良いし、患者Pの年齢や性別、身体測定値等の患者情報に基づき、患者Pの体型に最も近似する人体モデルが自動的に選択されても良い。なお、本実施形態に係る身体測定値は身長や体重、胸囲等の患者の体格に如何なる測定値を含むものとする。また、演算回路101は、患者Pの年齢や性別、身体測定値等の患者情報に基づき、患者Pの体格に合致するように人体モデルの形状を補正しても良い。このように、患者Pの体格に近似する人体モデルを用いることにより、推定対象断面がより患者Pの実際の断面に近似するため、断面形状の推定精度が向上し、ひいては断面形状指標値やSSDE値の精度が向上する。
また、断面形状指標値は、SSDE値の計算以外にも種々の目的に利用可能である。例えば、撮影パラメータ決定機能123において演算回路101は、管電流の方向性変調を規定するパラメータ(以下、管電流変調パラメータと呼ぶ)を、断面形状推定機能117−1において推定された断面形状指標値に基づき決定することができる。具体的には、演算回路101は、AP方向の水等価直径とLR方向の水等価直径との比率に応じて、管電流の基準値に対するAP方向の管電流値の比率とLR方向の管電流値の比率とを決定する。当該比率が管電流変調パラメータに設定される。なお、管電流変調パラメータは、AP方向の管電流値やLR方向の管電流値そのものであっても良い。
このように、第1実施形態によれば、位置決め画像に基づき推定された断面形状指標値ではなく、投光器27による可視光線の照射位置に基づき推定された断面形状指標値に基づき管電流変調パラメータを決定することができるので、患者Pの被曝を低減することができる。
また、補正パラメータ決定機能121において演算回路101は、SSDE値と実測の線量値との差分に応じて、SSDE値の補正パラメータを決定しても良い。以下、この処理について具体的に説明する。ステップSA8においてCT撮影が行われた場合、演算回路101は、患者Pの実測の線量値を計測する。記憶回路107は、当該患者Pに関する実測の線量値とSSDE値とを関連付けて記憶する。記憶回路107は、複数の患者について実測の線量値とSSDE値とを関連付けて記憶する。補正パラメータ決定機能121において演算回路101は、記憶回路107に記憶された実測の線量値とSSDE値との差分値を計算し、計算された差分値を解析し、SSDE計算機能119により計算されるSSDE値を実測の線量値に近づけるための補正パラメータ(以下、SSDE補正パラメータと呼ぶ)を決定する。SSDE補正パラメータは、全ての患者Pに共通のパラメータであっても良いし、患者Pの体格等の区分毎に決定されるパラメータであっても良い。SSDE補正パラメータが決定された場合、演算回路101は、例えば、ステップSA6において断面形状指標値とCTDI値とSSDE補正パラメータとに基づいてSSDE値を推定する。これにより、SSDE値の推定精度をより向上させることが可能になる。
上記例において光学カメラ29は、一台のみ設置されるものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。すなわち、複数の光学カメラ29が設置されても良い。例えば、患者Pの正面を光学撮影するための光学カメラ29と患者Pの側面を光学撮影するための光学カメラ29とが設けられても良い。演算回路101は、複数方向の光学画像に基づきCT撮影範囲の解剖学的位置を決定することにより、解剖学的位置の推定精度、ひいては断面形状指標値及びSSDE値の推定精度を向上させることができる。
また、光学カメラ29が回転フレーム11に取り付けられても良い。回転フレーム11に取り付けることにより患者Pの全周囲に関する光学画像を一台の光学カメラ29で生成する事が可能になる。演算回路101は、全周囲に関する光学画像に基づきCT撮影範囲の解剖学的位置を決定することにより、解剖学的位置の推定精度、ひいては断面形状指標値及びSSDE値の推定精度を向上させることができる。
なお、体格が非常に大きい患者Pの場合、当該患者Pが投光器27に接近し過ぎるときがある。この場合、投光器27からの可視光線の照射位置をCT撮影範囲に合致させる事が困難である。例えば、ユーザによる入力回路31又は105を介した警告指示の入力を契機として演算回路101は、断面形状指標値を推定する事が出来ない旨の警告を発する。例えば、警告の発生態様としては、例えば、スピーカを介した警告音の出力やディスプレイ103への警告メッセージの表示等が挙げられる。これにより、ユーザは、位置決め画像に基づくSSDE値の推定に切り替えることができる。
上記構成により、第1実施形態によれば、患者P位置決め時において投光器27から可視光線が照射された患者Pを被写体とする光学画像と人体モデルとに基づいて断面形状指標値を推定することができる。すなわち、第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、断面形状指標値の推定に際し位置決め撮影が不要である。よって、第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、位置決め撮影を行う場合に比して、患者Pの被曝なく断面形状指標値を推定することができる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、光学カメラ29を装備するものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。第2実施形態は、光学カメラ29を使用せずに断面形状指標値の推定及びSSDE値の計算を行う。以下、第2実施形態について詳細に説明する。なお以下の説明において、第1実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図11は、第2実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。図11に示すように、第2実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、光学カメラを有しない。第2実施形態に係る演算回路101は、断面形状推定機能117−2において、投光器27から患者Pへの可視光線の照射位置を投光パラメータに基づき特定し、特定された照射位置に対応する断面の断面形状指標値を人体モデルを利用して推定する。
図12は、実施例2に係る演算回路101のシステム制御機能125の実行により行われる、X線コンピュータ断層撮影装置の典型的な動作の流れを示す図である。
図12に示すように、まず、演算回路101は、架台制御回路33に可視光線の照射を行わせる(ステップSB1)。ステップSB1において架台制御回路33は、第1実施形態のステップSA1と同様、投光器27から可視光線を患者Pに照射させる(ステップSB1)。可視光線の照射の前段において、ステップSA1と同様、可視光線の照射位置に関する投光パラメータが設定される。投光パラメータは、コンソール100に伝送され、記憶回路107に記憶される。
ステップSB1が行われると演算回路101は、断面形状推定機能117−2を実行する。断面形状推定機能117−2において演算回路101は、まず、ステップSB1において取得された投光パラメータに基づいて、可視光線が照射されている解剖学的位置を特定する(ステップSB2)。具体的には、演算回路101は、撮影条件に含まれる撮影部位と投光パラメータ(投光器27の光源の位置及び照射角度)とに基づいて、可視光線が照射されている解剖学的位置を特定する。なお、撮影部位と投光パラメータとに加え、天板231のZ軸座標及びY軸座標を利用して解剖学的位置を特定しても良い。
ステップSB2が行われると演算回路101は、ステップSB2において特定された実位置に対応する、人体モデルにおける解剖学的位置を特定する(ステップSB3)。具体的には、演算回路101は、第1実施形態のステップSA4と同様の方法により、人体モデルにおける解剖学的位置を特定する。
ステップSB3が行われると演算回路101は、ステップSB3において特定されたモデル側位置の断面での水等価直径を、人体モデルから推定する(ステップSB4)。具体的には、演算回路101は、第1実施形態のステップSA5と同様の方法により、水等価直径を推定する。
ステップSB4が行われると演算回路101は、ステップSB4において推定された水等価直径と予め計測されたCTDI値とに基づいてSSDE値を計算する(ステップSB5)。具体的には、演算回路101は、第1実施形態のステップSA6と同様の方法により、SSDE値を計算する。
ステップSB5が行われると演算回路101は、ステップSB5において計算されたSSDE値をディスプレイ103に表示する(ステップSB6)。具体的には、ディスプレイ103は、第1実施形態のステップSA7と同様の方法により、SSDE値を表示する。ユーザは、表示されたSSDE値を確認し、SSDE値が許容できないと判断した場合、撮影条件等を見直す。SSDE値が許容できると判断した場合、ユーザは、入力回路31又は105等を介して撮影指示を入力する。
ステップSB6が行われ、ユーザにより入力回路31又は105等を介して撮影指示が入力されると演算回路101は、架台制御回路33に撮影開始を指示する(ステップSB7)。撮影開始を指示された架台制御回路33は、撮影条件に従いX線高電圧装置17、データ収集回路19、回転駆動装置21及び寝台駆動装置25等を同期的に制御し、患者Pに対するCT撮影を実行する。
以上により、第2実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の動作の流れの説明を終了する。
上記構成により、第2実施形態によれば、患者P位置決め時において投光器27の投光パラメータと人体モデルとに基づいて断面形状指標値を推定することができる。すなわち、第2実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、断面形状指標値の推定に際し位置決め撮影が不要である。よって、第2実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、位置決め撮影を行う場合に比して、患者Pの被曝なく断面形状指標値を推定することができる。また、第1実施形態に比して光学カメラを使用しないので、第2実施形態は、第1実施形態に比してより簡易な装置設計により断面形状指標値を推定することが可能である。換言すれば、第1実施形態は、光学カメラを使用するので、第2実施形態に比して、より正確に断面位置ひいては断面形状指標値を推定することが可能である。
(第3実施形態)
上記第1及び第2実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、人体モデルを使用して断面形状指標値の推定及びSSDE値の計算を行うものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。第3実施形態は、人体モデルを使用せずに断面形状指標値の推定及びSSDE値の計算を行う。以下、第3実施形態について詳細に説明する。なお以下の説明において、第1及び第2実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図13は、第3実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。図に示すように、第3実施形態に係る演算回路101は、断面形状推定機能117−3を実行する。断面形状推定機能117−3において演算回路101は、2方向以上の投光器27の投光パラメータに基づき断面形状指標値を推定する。
図14は、第3実施形態に係る演算回路101のシステム制御機能125の実行により行われる、X線コンピュータ断層撮影装置の典型的な動作の流れを示す図である。図14に示すように、まず、演算回路101は、ステップSC1−SC4において断面形状推定機能117−3を実行する。
図15は、ステップSC1−SC4において演算回路101により行われる断面形状推定機能117−3の概要を模式的に示す図である。
図14及び図15に示すように、演算回路101は、架台制御回路33に回転フレーム11の回転を指示する。架台制御回路33は、まず、回転駆動装置21を制御し、投光器27を回転角0°又は180°に配置する(ステップSC1)。
ステップSC1が行われると演算回路101は、投光器27の投光パラメータに基づいて患者PのLR長を測定する(ステップSC2)。まず、ユーザは、入力回路31を介して投光開始指示を入力する。投光開始指示を受けて架台制御回路33は、投光器27から可視光線Lz1、Lz2、Lx1及びLx2を患者Pに照射する。次に架台制御回路33は、ユーザによる入力回路31を介した指示に従い、LR方向に関する可視光線Lx1と可視光線Lx2との間の距離が患者PのLR方向に関するCT撮影範囲に一致するように調節する。調節が終了した場合、ユーザは、入力回路31を介して調節終了指示を入力する。
演算回路101は、調節終了指示時の投光パラメータと、投光器27と患者P又は天板231との間のジオメトリとに基づいてLR長を推定する。具体的には、演算回路101は、回転角0°における可視光線Lx1の照射角度と可視光線Lx2の照射角度とに基づいて、可視光線Lx1と可視光線Lx2との間の角度(以下、光線間角度と呼ぶ)を測定し、光線間角度と寝台高さとに基づいて可視光線Lx1と可視光線Lx2との間の距離を推定する。当該距離がLR長に設定される。また、演算回路101は、回転角0°における可視光線Lx1の照射位置に対応する投光器27の光源位置と可視光線Lx2の照射位置に対応する投光器27の光源位置とに基づいて、可視光線Lx1と可視光線Lx2との間の距離(以下、光線間距離と呼ぶ)を測定し、光線間距離と寝台高さとに基づいてLR長を推定しても良い。なお、演算回路101は、光線間角度又は光線間距離と寝台高さとに加え、所定の患者PのLR長の予測値に基づいてLR長を推定しても良い。また、演算回路101は、寝台高さの代わりに、投光器27と患者P又は天板231との間の距離を用いて、LR長を推定しても良い。調節終了指示を受けて架台制御回路33は、LR長をコンソール100に伝送し、記憶回路107は、LR長を記憶する。
ステップSC2が行われると架台制御回路33は、回転駆動装置21を制御し、投光器27を回転角90°又は270°に配置する(ステップSC3)。
ステップSC3が行われると演算回路101は、投光器27の投光パラメータに基づいて患者PのAP長を測定する(ステップSC4)。まず、ユーザは、入力回路31を介して投光開始指示を入力する。投光開始指示を受けて架台制御回路33は、投光器27から可視光線Lz1、Lz2、Lx1及びLx2を患者Pに照射する。次に架台制御回路33は、ユーザによる入力回路31を介した指示に従い、AP方向に関する可視光線Lx1と可視光線Lx2との間の距離が患者PのAP方向に関するCT撮影範囲に一致するように調節する。調節が終了した場合、ユーザは、入力回路31を介して調節終了指示を入力する。
演算回路101は、調節終了指示時の投光パラメータと、投光器27と患者P又は天板231との間のジオメトリとに基づいてAP長を推定する。具体的には、演算回路101は、回転角90°における可視光線Lx1の照射角度と可視光線Lx2の照射角度とに基づいて、光線間角度を測定し、光線間角度と、投光器27と患者P又は天板231との間の距離とに基づいて可視光線Lx1と可視光線Lx2との間の距離を推定する。当該距離がAP長に設定される。また、演算回路101は、回転角90°における可視光線Lx1の照射位置に対応する投光器27の光源位置と可視光線Lx2の照射位置に対応する投光器27の光源位置とに基づいて、光線間距離を測定し、光線間距離と、投光器27と患者P又は天板231との間の距離とに基づいてAP長を推定しても良い。なお、演算回路101は、光線間角度又は光線間距離と寝台高さとに加え、所定の患者PのAP長の予測値に基づいてAP長を推定しても良い。調節終了指示を受けて架台制御回路33は、AP長をコンソール100に伝送し、記憶回路107は、AP長を記憶する。
ステップSC1からSC4が行われると演算回路101により行われる断面形状推定機能117−3を終了する。なお、ステップSC1・SC2とステップSC3・SC4との順番は逆に行われても良い。すなわち、AP長が先に推定され、LR長が後に推定されても良い。
ステップSC4が行われると演算回路101は、ステップSC2において推定されたLR長、ステップSC4において推定されたAP長及び予め計測されたCTDI値に基づいてSSDE値を計算する(ステップSC5)。ステップSC5において演算回路101は、LR長とAP長との組合せから変換係数を決定し、決定された変換係数をCTDI値に乗じることによりSSDE値を計算する。変換係数はLR長とAP長との組合せ毎に定められている。なお、LR長とAP長との組合せから直接的に変換係数を決定しなくても良い。例えば、演算回路101は、LR長とAP長との組合せと水等価直径とを関連付けたテーブル(LUT)を有し、当該LUTを利用してLR長とAP長との組合せから水等価直径を決定し、水等価直径/変換係数テーブルを利用して変換係数を決定しても良い。
ステップSC5が行われると演算回路101は、ステップSC5において計算されたSSDE値をディスプレイ103に表示する(ステップSC6)。ユーザは、表示されたSSDE値を確認し、SSDE値が許容できないと判断した場合、撮影条件等を見直す。SSDE値が許容できると判断した場合、ユーザは、入力回路31又は105等を介して撮影指示を入力する。
ステップSC6が行われ、ユーザにより入力回路31又は105等を介して撮影指示が入力されると演算回路101は、架台制御回路33に撮影開始を指示する(ステップSC7)。撮影開始を指示された架台制御回路33は、撮影条件に従いX線高電圧装置17、データ収集回路19、回転駆動装置21及び寝台駆動装置25等を同期的に制御し、患者Pに対するCT撮影を実行する。
以上により、第3実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の動作の流れの説明を終了する。
なお、上記例においてはAP長及びLR長の両方が測定されるものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、AP長及びLR長の一方のみから変換係数が求められる場合、AP長及びLR長の何れか一方の測定を省略しても良い。また、0°又は180°での可視光線Lx1と可視光線Lx2との間の距離がLR長に規定されるものとしたが本実施形態はこれに限定されない。例えば、天板231での患者Pの姿勢に応じた他の回転角での可視光線Lx1と可視光線Lx2との間の距離がLR長に規定されても良い。同様に、90°又は270°での可視光線Lx1と可視光線Lx2との間の距離がAP長に規定されるものとしたが本実施形態はこれに限定されない。例えば、天板231での患者Pの姿勢に応じた他の回転角での可視光線Lx1と可視光線Lx2との間の距離がAP長に規定されても良い。
上記構成により、第3実施形態によれば、複数の回転角における投光器27の投光パラメータに基づいて断面形状指標値を推定することができる。すなわち、第3実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、断面形状指標値の推定に際し位置決め撮影が不要である。よって、第3実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、位置決め撮影を行う場合に比して、患者Pの被曝なく断面形状指標値を推定することができる。また、第1実施形態に比して光学カメラを使用しないので、第3実施形態は、第1実施形態に比してより簡易な装置設計により断面形状指標値を推定することが可能である。また、第1及び第2実施形態とは異なり、ユーザによる可視光線の照射位置の調整により直接的にAP長及びLR長を推定(測定)するので、AP及びLR長等の断面形状指標値の推定精度が向上する。
(第4実施形態)
上記第1、第2及び第3実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、投光器から投光される可視光線を使用して断面形状指標値の推定及びSSDE値の計算を行うものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。第4実施形態は、赤外線を使用して断面形状指標値の推定及びSSDE値の計算を行う。以下、第4実施形態について詳細に説明する。なお以下の説明において、第1、第2及び第3実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図16は、第4実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。図16に示すように、第4実施形態に係る架台10は、赤外線照射器35と受光器37とを有する。赤外線照射器35は赤外線を、天板に載置された被検体等の患者Pに照射する。本実施形態に係わる赤外線は、近赤外線、狭義の赤外線及び遠赤外線を含むものとする。赤外線照射器35は、例えば、LED(Light-Emitting Diode)により実現される。受光器37は、患者Pに照射され反射された赤外線を受光し、受光された赤外線の電気信号を出力する。受光器37は、例えば、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の光センサが2次元状に配列された赤外線カメラにより実現される。
第4実施形態に係る架台制御回路33は赤外線情報計測機能293を実現する。赤外線情報計測機能293において架台制御回路33は、受光器37により受光された赤外線に係る情報を計測する。赤外線に係る情報は、例えば、飛行時間である。飛行時間は、赤外線照射器35から赤外線が出射された時刻から、患者Pにより反射され受光器37により受光される時刻までの経過時間により規定される。他の赤外線に係る情報として、例えば、受光した赤外線の強度等が利用されても良い。
第4実施形態に係る演算回路101は、断面形状推定機能117−4を実行する。断面形状推定機能117−4において演算回路101は、赤外線に係る情報に基づき撮影範囲における患者Pの断面に関する断面形状指標値を推定する。
図17は、第4実施形態に係る演算回路101のシステム制御機能125の実行により行われる、X線コンピュータ断層撮影装置の典型的な動作の流れを示す図である。図18は、赤外線を利用した断面形状指標値の推定の概要を模式的に示す図である。
図17及び図18に示すように、演算回路101は、まず、架台制御回路33に赤外線IRによる被検体Pの撮影を指示する。赤外線IRによる患者Pの撮影において赤外線照射器35は天板231に載置された患者に赤外線IRを照射し、反射された赤外線を受光器37により受光する(ステップSD1)。図18に示すように、検査室の天井200には赤外線照射器35と受光器37とが設けられる。赤外線照射器35と受光器37との組合せは任意の筐体39に設けられると良い。被検体Pは天板231に載置されている。赤外線照射器35と受光器37とを用いた被検体Pの撮影は、赤外線IRが架台筐体40により遮られることを防止するため、典型的には、天板231を開口41に挿入する前段階において行われる。赤外線IRにより患者Pの体厚(AP長)と横幅(LR長)とを計測するため、赤外線IRは、撮影範囲を含む患者Pの幅方向全体に照射されるとよい。
ステップSD1が行われると架台制御回路33は、赤外線情報計測機能293を実行し、受光器37により受光された赤外線の飛行時間を計測する(ステップSD2)。ステップSD2において架台制御回路33は、赤外線照射器35から赤外線が出射された時刻から、被検体Pにより反射され受光器37により赤外線が受光される時刻までの経過時間を飛行時間として計測する。
ステップSD2が行われると演算回路101は、断面形状推定機能117−4を実行し、赤外線の飛行時間と天板231の高さとに基づいて断面形状指標値を推定する(ステップSD3)。ステップSD3において演算回路101は、断面形状指標値として、患者PのAP長(厚み)とLR長(横幅)とを推定する。
AP長については、例えば、以下のように推定される。図18に示すように、赤外線IRの伝播速度と、被検体Pからの反射赤外線IRの飛行時間と、被検体Pの非存在下における天板231からの反射赤外線IRの飛行時間とに基づき患者PのAP長を推定可能である。天板231からの反射赤外線IRの飛行時間は、予め計測又は予測される。例えば、架台制御回路33は、天板231を複数の高さに設定し、各高さにおいて赤外線照射器35から赤外線IRを天板231の表面に照射し、天板231の表面により反射された赤外線を受光器37により受光する。架台制御回路33は、各天板高さについて、赤外線の照射時刻と受光時刻との差分を計算し、当該差分を飛行時間に設定する。架台制御回路33は、天板高さ毎に飛行時間を関連付けたテーブル(以下、飛行時間テーブルと呼ぶ)を作成し、自身のメモリ等に記憶する。患者Pの存在下における飛行時間が計測された場合、当該赤外線撮影時の天板高さに基づいて飛行時間テーブルから当該天板高さに関連付けられた飛行時間を読み出す。読み出した飛行時間と患者Pの存在下における飛行時間との差分を算出し、算出された差分と赤外線の伝播速度とに基づいてAP長を算出する。
LR長については、例えば、以下のように推定される。架台制御回路33は、天板231に載置された患者Pを横切るように赤外線IRを一定角度間隔で照射及び受光し、各赤外線照射について受光時刻又は飛行時間を記録する。患者存在部分と患者非存在部分との境において受光時刻又は飛行時間は急激に変化する。患者Pの右側部と左側部との各々について受光時刻又は飛行時間が急激に変化する位置を特定し、各位置の距離間隔をLR長として算出する。なお、LR長については、第1及び第2実施形態のように光学カメラ29を用いて推定されても良いし、第3実施形態のように投光器27を用いて推定されても良い。
ステップSD3が行われると演算回路101は、ステップSD3において推定されたLR長及びAP長と、予め計測されたCTDI値とに基づいてSSDE値を計算する(ステップSD4)。ステップSD4は、例えば、第3実施形態に係るステップSC5と同様である。
ステップSD4が行われると演算回路101は、ステップSD4において計算されたSSDE値をディスプレイ103に表示する(ステップSD5)。ステップSD5は、例えば、第3実施形態に係るステップSC6と同様である。
ステップSD5が行われ、ユーザにより入力回路31又は105等を介して撮影指示が入力されると演算回路101は、架台制御回路33に撮影開始を指示する(ステップSD6)。撮影開始を指示された架台制御回路33は、撮影条件に従いX線高電圧装置17、データ収集回路19、回転駆動装置21及び寝台駆動装置25等を同期的に制御し、患者Pに対するCT撮影を実行する。
以上により、第4実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の動作の流れの説明を終了する。
なお、上記第4実施形態については種々の変形が可能である。例えば、上記説明において、CT撮影時の天板231の移動の有無については特に限定していなかった。天板231の移動を行いながらスキャンを行うヘリカルスキャン、天板231の移動とスキャンとを間欠的に行う間欠移動スキャンの場合、CT撮影範囲は広範囲に亘る。一方、一度の赤外線撮影でカバーできる赤外線撮影範囲は、赤外線照射器35及び受光器37の仕様に応じて異なる。このため、CT撮影範囲が一度の赤外線撮影でカバーできない場合がある。この場合、天板231を長軸方向に移動させることにより、広範囲を赤外線撮影すると良い。例えば、CT撮影範囲を赤外線撮影範囲に応じて複数の小範囲に区分けし、小範囲毎に赤外線撮影及び断面形状指標値の推定が行われる。これにより、CT撮影範囲が広範に亘る場合においても断面形状指標値を推定することができる。
また、例えば、上記説明において赤外線照射器35と受光器37との組合せは検査室の天井200に設けられるとしたが、患者Pを赤外線撮影可能であれば、架台筐体40等の如何なる箇所に設けられても良い。また、赤外線照射器35と受光器37との組合せは、天井200に固定されることを前提としたが、検査室をZ軸又はX軸に沿ってスライド可能、又はZ軸及びX軸により規定される2次元平面上をスライド可能に設けられても良い。この構成により、赤外線IRを患者Pや天板231に対して略垂直に照射することができる。あるいは、赤外線照射器35と受光器37との複数の組合せが、Z軸又はX軸に沿って、又はZ軸及びX軸により規定される2次元平面上に配列されても良い。この構成によっても、赤外線IRを患者Pや天板231に対して略垂直に照射することができる。
上記構成により、第4実施形態によれば、赤外線を利用して断面形状指標値を推定することができる。すなわち、第4実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、断面形状指標値の推定に際し位置決め撮影が不要である。よって、第4実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、位置決め撮影を行う場合に比して、患者Pの被曝なく断面形状指標値を推定することができる。
以上、上記で述べた幾つかの実施形態によれば、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、架台10、寝台23、投光器27及び演算回路101を有する。架台10は、X線によるCT撮影を実行する。寝台23は、被検体Pが載置される天板231を移動可能に支持する。光照射器27又は35は、天板231に載置された被検体Pに光線を照射する。演算回路101は、被検体Pに照射された光線を利用して、撮影範囲における被検体Pの断面の形状指標値を推定する。
上記の構成によれば、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、位置決め撮影をせず、光照射器27又は35を用いて被検体の断面形状を精度良く推定することができる。従って断面形状の推定に要する被検体Pの被曝を低減することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。