JP2019027798A - フライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定方法及び測定装置 - Google Patents

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忠孝 松浦
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Abstract

【課題】フライアッシュのメチレンブルー吸着量を高い精度で、低コストかつ簡易的に測定できる、測定方法及び測定装置を提供すること。
【解決手段】既知の濃度のメチレンブルーを含む複数の溶液の第1の画像を取得する工程と、第1の画像の第1の色値を測定する工程と、既知の濃度のメチレンブルーと第1の色値との関係を表す検量線を作成する工程と、第1の溶液を準備する工程と、第1の溶液にフライアッシュを添加しフライアッシュにメチレンブルーを吸着させた後、第1の溶液からメチレンブルーが吸着したフライアッシュを除去して第2の溶液を得る工程と、第2の溶液の第2の画像を取得する工程と、第2の画像の第2の色値を測定する工程と、検量線に第2の色値を適用することにより第2の溶液中のメチレンブルーの濃度を算出する工程と、フライアッシュのメチレンブルー吸着量を得る工程と、を有するフライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、フライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定方法及び測定装置に関する。
従来から、重要な電力源として石炭火力発電所が利用されている。石炭火力発電所では、石炭を燃焼させることで発生する熱を利用して、発電を行う。このため、石炭の燃焼時に副産物として大量のフライアッシュ(石炭灰)が発生する。そこで、このフライアッシュは、コンクリート用混和材として有効利用されている。
コンクリートは、微細な空気泡を内包することで、ワーカビリティーを改善したり、ブリーディングを減少させたりする。このため、通常、コンクリート中へ空気泡を連行させることを目的として、空気連行剤(AEA;Air Entraining Agent)が使用される。
しかし、フライアッシュ中に含まれる未燃焼炭素は空気連行剤に吸着する性質を有する。該未燃焼炭素が吸着した空気連行剤は、空気を連行する機能が著しく低下する。このため、未燃焼炭素を多く含むフライアッシュを添加したコンクリート中に所定量の空気を連行するためには、より多くの空気連行剤が必要となる。
このように、フライアッシュ中の未燃焼炭素量は、空気連行剤の必要量と関係する。従って、フライアッシュ中の未燃焼炭素含量を測定により把握する必要があった。従来から、フライアッシュ中の未燃焼炭素含量と、フライアッシュのメチレンブルーの吸着量との間には一定の関係があることが知られている。そこで、現在は、フライアッシュ中の未燃焼炭素量を知るために、フライアッシュにメチレンブルーを吸着させ、該メチレンブルー吸着量を測定する方法が用いられている。
非特許文献1(「石炭灰ハンドブック(第6版)」、日本フライアッシュ協会、平成27年11月、IV−48〜52頁)には、フライアッシュに吸着したメチレンブルー吸着量の測定方法として、セメント協会標準試験方法(JCAS I−61:2008)及び電発試験方法を開示する。これらの方法により、メチレンブルー吸着量を測定することで、フライアッシュ中の未燃焼炭素含量を知ることができる。これにより、フライアッシュを利用してコンクリートを作製する際に必要となる空気連行剤の必要量を知ることが可能となる。
「石炭灰ハンドブック(第6版)」、日本フライアッシュ協会、平成27年11月、IV−48〜52頁
上記セメント協会標準試験方法及び電発試験方法では何れも、フライアッシュにメチレンブルーを吸着させて該メチレンブルーが吸着したフライアッシュを含む溶液を得る。次に、この溶液からメチレンブルーが吸着したフライアッシュを除いた後、吸光光度計により、メチレンブルー溶液の特定波長における吸光度を測ることで、メチレンブルー吸着量を得る。しかし、上記の測定法を使用するためには吸光光度計が必要となり、高コストかつ測定手順が煩雑であった。
また、上記の測定法以外に低コストかつ簡易的な方法として、メチレンブルー溶液と色見本とを目視で比較することにより、フライアッシュのメチレンブルー吸着量を評価する方法が考えられる。しかし、この方法ではメチレンブルー吸着量を定量的に測定することができないという問題があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、フライアッシュのメチレンブルー吸着量を高い精度で、低コストかつ簡易的に測定できる、測定方法及び測定装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、以下の各実施態様を有する。
[1]既知の濃度のメチレンブルーを含む、複数の溶液の第1の画像を取得する工程と、
前記第1の画像の、RGB色空間におけるB値及びG値の少なくとも一方からなる第1の色値を測定する工程と、
前記既知の濃度のメチレンブルーと、前記第1の色値との関係を表す検量線を作成する工程と、
既知の濃度C(mg/l)のメチレンブルーを含む、第1の溶液を準備する工程と、
(ml)の前記第1の溶液にフライアッシュ f(g)を添加し、フライアッシュにメチレンブルーを吸着させた後、前記第1の溶液からメチレンブルーが吸着したフライアッシュを除去して第2の溶液を得る工程と、
前記第2の溶液の第2の画像を取得する工程と、
前記第2の画像の、RGB色空間におけるB値及びG値の少なくとも一方からなる色値であって前記第1の色値と同じ種類の色値である、第2の色値を測定する工程と、
前記検量線に前記第2の色値を適用することにより前記第2の溶液中のメチレンブルーの濃度C(mg/l)を算出する工程と、
下記式によりフライアッシュ1g当たりのメチレンブルー吸着量d(mg/g)を得る工程と、
d(mg/g)=(C×y/1000−C×y/1000)/f
を有する、フライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定方法。
[2]前記第1及び第2の色値はRGB色空間におけるG値である、上記[1]に記載のフライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定方法。
[3]前記第1及び第2の画像を取得する方法において、デジタルカメラにより第1及び第2の画像を取得する、上記[1]又は[2]に記載のフライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定方法。
[4]0mg/gよりも大きく2.0mg/g以下の前記メチレンブルー吸着量dを測定する、上記[1]から[3]までの何れか1項に記載のフライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定方法。
[5]メチレンブルーを含む溶液の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像の、RGB色空間におけるB値及びG値の少なくとも一方からなる色値を測定する測色手段と、
既知の濃度のメチレンブルーと、前記既知の濃度のメチレンブルーを含む溶液の画像の前記色値である第1の色値との関係を表す検量線を作成する検量線作成手段と、
前記検量線を記憶する記憶手段と、
既知の濃度C(mg/l)のメチレンブルーを含む、y(ml)の第1の溶液にフライアッシュ f(g)を添加し、フライアッシュにメチレンブルーを吸着させた後、前記第1の溶液からメチレンブルーが吸着したフライアッシュを除去して第2の溶液を得る、溶液取得手段と、
前記検量線に、前記第2の溶液の画像の前記色値である第2の色値を適用することにより前記第2の溶液中のメチレンブルーの濃度C(mg/l)を算出すると共に、下記式によりフライアッシュ1g当たりのメチレンブルー吸着量d(mg/g)を得る、算出手段と、
d(mg/g)=(C×y/1000−C×y/1000)/f
を有する、フライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定装置。
フライアッシュのメチレンブルー吸着量を高い精度で、低コストかつ簡易的に測定できる、測定方法及び測定装置を提供することができる。
一実施形態におけるフライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定方法を表すフローチャートである。 一実施形態におけるフライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定装置を示す概略図である。 実施例1で作成した検量線を表す図である。 実施例1における本発明の方法(簡易法)と電発試験方法で測定したフライアッシュのメチレンブルー吸着量の関係を表す図である。
1.フライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定方法
一実施形態の測定方法は、第1の画像を取得する工程(S1)と、第1の色値を測定する工程(S2)と、検量線を作成する工程(S3)と、第1の溶液を準備する工程(S4)と、第2の溶液を得る工程(S5)と、第2の画像を取得する工程(S6)と、第2の色値を測定する工程(S7)と、第2の溶液中のメチレンブルーの濃度C(mg/l)を算出する工程(S8)と、フライアッシュ1g当たりのメチレンブルー吸着量d(mg/g)を得る工程(S9)と、を有する。
以下では、図1を参照して一実施形態の測定方法の各工程を詳細に説明する。
(S1)第1の画像を取得する工程
最初に、既知量のメチレンブルーが溶媒中に溶解した、既知の濃度のメチレンブルーを含む溶液を準備する。メチレンブルーは、3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジニウムクロリドの名称の色素である。後の工程S3で検量線の作成に供するため、この既知の濃度のメチレンブルーを含む溶液として、複数種の溶液(複数の異なるメチレンブルー濃度の溶液)を準備する。この溶液は市販のものでも良いし、既知量のメチレンブルーを量り取り溶媒中に添加することで準備しても良い。なお、メチレンブルー吸着量の測定に悪影響を与えないものであれば、溶媒の種類は特に限定されない。安価・安全で取り扱いが容易であることから、溶媒として水を使用することが好ましい。次に、このメチレンブルーを含む溶液に対して、後述する工程S5で行うメチレンブルーが吸着したフライアッシュの除去処理と同じ除去処理を行う。このように検量線作成用の溶液と、試料溶液の両方に同じ除去処理を行うことにより、フライアッシュのメチレンブルー吸着量に対する除去処理の影響を排除することができる。除去処理の条件は、工程S5におけるフライアッシュの除去処理と同じ条件とする。除去処理の条件としては例えば、除去処理に供する溶液の体積量、除去処理手段の種類及び操作条件などを挙げることができる。
次に、画像取得手段により、メチレンブルーを含む溶液の第1の画像を取得する。この際、複数種の溶液のそれぞれに対して第1の画像を取得する。また、各溶液について第1の画像を取得する取得条件は同じものとする。この取得条件としては例えば、以下の条件を挙げることができる。
・溶液が入った容器と、画像取得手段との距離・角度、
・溶液が入った容器における第1の画像の測定位置・測定範囲、
・溶液に照射する光源の種類・光量、
・溶液周囲の照度。
画像取得手段としてはカラー画像を取得できるものであれば特に限定されないが、簡易且つ高精細な画像が得られることから、デジタルカメラ(画像取得を目的とする単独の機能を有するカメラ、スマートフォン・携帯電話の内蔵カメラ)を用いることが好ましい。
(S2)第1の色値を測定する工程
この後、測色手段により、第1の画像の、RGB色空間におけるB値及びG値の少なくとも一方からなる第1の色値を測定する。RGB色空間とは、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の三色で表される色の空間である。また、B値及びG値は0〜255(256階調)の値をとることができる。この際、第1の色値は、RGB色空間におけるB値、G値、及びB値とG値を組み合わせたものの何れであっても良い。第1の色値としてB値とG値を組み合わせたものを用いる場合、B値とG値を所定の関数式に代入することにより得られる色値を用いることができる。第1の色値として、RGB色空間におけるG値を測定することが好ましい。第1の色値としてG値を測定することにより、後述する工程S3では、より高精度な検量線を作成することができる。
(S3)検量線を作成する工程
次に、複数の溶液中のメチレンブルー濃度と、得られた複数の第1の色値(B値及びG値の少なくとも一方の値)との関係を表す検量線を取得する。検量線の種類はメチレンブルー濃度と第1の色値が高い相関性(相関係数)を示すものであれば特に限定されない。検量線は例えば、直線、下に凸な曲線、上に凸な曲線等であっても良く、一次直線、二次曲線等の多次曲線、指数関数、対数関数、又はこれらの関数を組み合わせた関数などを挙げることができる。
なお、第1の色値は、画像取得手段及び測色手段の種類、画像取得手段の画像取得条件、測色手段の測色条件などによって変わり得る。しかし、第1の色値が変わった場合であってもそれに応じて検量線の形も変わるだけであり、得られた検量線は、溶液中のメチレンブルー濃度と第1の色値との間で高い相関性を表すことが確認されている。
このようにして作成された検量線は、後の工程でメチレンブルー吸着量の測定を迅速に行うために、記憶手段に記憶されても良い。
(S4)第1の溶液を準備する工程
次いで、フライアッシュのメチレンブルー吸着量を測定するために使用する溶液として、第1の溶液を準備する。第1の溶液は、既知の濃度C(mg/l)のメチレンブルーを含むものである。この溶液は市販のものでも良いし、既知量のメチレンブルーを量り取り溶媒中に添加することで準備しても良い。なお、溶媒の種類は特に限定されないが、工程S1で準備した溶液中に含まれる溶媒と同じ溶媒とする。安価・安全で取り扱いが容易であることから、溶媒として水を使用することが好ましい。
(S5)第2の溶液を得る工程
この後、工程S4で準備した第1の溶液y(ml)にフライアッシュ f(g)を添加し、フライアッシュにメチレンブルーを吸着させる。このフライアッシュは石炭を燃焼する際に生じる石炭灰の微粒子であり、例えば、石炭火力発電所での発電時に発生する。フライアッシュにメチレンブルーを吸着させる方法は特に限定されず、溶液を入れた容器を静置したり、該容器を振とう器により振とうさせる方法や、撹拌器により溶液を撹拌させる方法を挙げることができる。フライアッシュにメチレンブルーを吸着させるための時間は特に限定されないが、比較的早くフライアッシュにメチレンブルーは吸着するため、10秒〜10分の時間であっても良い。
メチレンブルーが吸着したフライアッシュは固体状であり、第1の溶液からメチレンブルーが吸着したフライアッシュを除去して第2の溶液を得る。第1の溶液から該フライアッシュを除去する方法は固液分離法であれば特に限定されないが、例えば、ろ過や遠心分離等を挙げることができる。
(S6)第2の画像を取得する工程
この後、第2の溶液の第2の画像を取得する。この際、第1の画像を取得した際の画像取得条件と同じ条件で第2の画像を取得する。第2の画像を取得するための画像取得手段としてはカラー画像を取得できるものであれば特に限定されないが、簡易且つ高精細な画像が得られることから、デジタルカメラを用いることが好ましい。また、第2の画像を取得するための画像取得手段は、第1の画像を取得するための画像取得手段と同じものを用いる。
(S7)第2の色値を測定する工程
次に、第2の画像の、RGB色空間におけるB値及びG値の少なくとも一方からなる色値である第2の色値を測定する。この第2の色値は、第1の色値と同じ種類の色値として測定する。すなわち、第1の色値としてB値を測定した場合、第2の色値としてB値を測定する。第1の色値としてG値を測定した場合、第2の色値としてG値を測定する。また、第1の色値としてB値及びG値を測定した場合、第2の色値としてB値及びG値を測定する。また、第2の色値を測定する条件は、第1の色値を測定した条件と同じ条件とする。なお、第1の色値と同様、第2の色値(B値、G値)は、0〜255の値をとることができる。
(S8)第2の溶液中のメチレンブルーの濃度C(mg/l)を算出する工程
次いで、工程S3で得た検量線に第2の色値を適用することにより、第2の溶液中のメチレンブルーの濃度C(mg/l)を算出する。この際、予め記憶手段に記憶させた検量線を読み込み、該検量線に第2の色値を適用することによりメチレンブルーの濃度Cを得ても良い。
(S9)フライアッシュ1g当たりのメチレンブルー吸着量d(mg/g)を得る工程
次に、下記式によりフライアッシュ1g当たりのメチレンブルー吸着量d(mg/g)を得る。
d(mg/g)=(C×y/1000−C×y/1000)/f
第1の溶液中に含まれるメチレンブルー量から、工程S5で除去されたフライアッシュに吸着したメチレンブルー量を差し引いた残りのメチレンブルーが、第2の溶液中に存在する。このため、上式では、第1の溶液中に含まれるメチレンブルー量であるC×y/1000から、第2の溶液中に含まれるメチレンブルー量であるC×y/1000を差し引くことにより、フライアッシュに吸着したメチレンブルー量を算出する。また、算出されたメチレンブルー量をfで除することによって、フライアッシュ1g当たりのメチレンブルー吸着量dが算出される。
このように一実施形態の方法では、工程S1及びS6で簡易かつ低コストで、メチレンブルーを含む溶液の画像(第1及び第2の画像)を取得することができる。工程S2及びS7における第1及び2の色値の測定も簡易かつ低コストである。また、工程S3では、溶液中のメチレンブルー濃度と色値とが高い相関性を表す検量線を得ることができる。従って、一実施形態の方法によれば、最終的に工程S9で、簡易かつ低コストな方法で高精度に、フライアッシュのメチレンブルー吸着量を測定できる。
一実施形態の方法で測定する、フライアッシュ1g当たりのメチレンブルー吸着量d(mg/g)は特に限定されないが、フライアッシュ1g当たり0mgより大きく2.0mg以下であることが好ましい。これらの吸着量の範囲内では特に、溶液中のメチレンブルー濃度と第1の色値が高い相関性を示し(高い相関係数を有し)、メチレンブルー吸着量の測定精度を向上させることができる。
2.フライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定装置
図2は一実施形態の測定装置を表す模式図である。図2の測定装置は、画像取得手段11と、測色手段12と、検量線作成手段13と、記憶手段14と、溶液取得手段15と、算出手段16とを有する。以下では、一実施形態の測定装置を構成する各手段を詳細に説明する。
(画像取得手段)
画像取得手段11は、メチレンブルーを含む溶液のカラー画像を取得できる撮像装置であれば特に限定されない。この画像取得手段は同じ条件で、第1及び第2の画像を取得できるように設置され、画像取得条件が設定されている。簡易に高精細なカラー画像を取得できることから、画像取得手段11としてデジタルカメラが好ましい。なお、「デジタルカメラ」とは、画像取得を目的とする単独機能を有するカメラ、スマートフォン及び携帯電話の内蔵カメラを意味する。また、デジタルビデオカメラにより撮影した動画から一画像のみを取り出しても良い。また、カメラは照明具を備えていても良い。
(測色手段)
測色手段12は、第1及び第2の画像の、RGB色空間におけるB値及びG値である第1の色値及び第2の色値を測定できるものであれば特に限定されない。測色手段12としては例えば、市販の色彩色差計や、コンピュータやスマートフォン等の情報処理装置を挙げることができる。情報処理装置を用いる場合、情報処理装置内で画像を読みこみ、情報処理装置内にインストールしたソフトウェア等によって該画像中のB値及びG値を測定しても良い。測色手段12は、第1及び第2の色値としてRGB色空間におけるG値を測定するものであることが好ましい。測色手段12は、G値を測定することにより、より高精度で、溶液中のメチレンブルー濃度を測定することができる。
(検量線作成手段)
検量線作成手段13は、演算処理を行うことにより、溶液中のメチレンブルー濃度と第1の色値との関係を、高い相関性で表す検量線を作成することができるものであれば特に限定されない。検量線作成手段13としては、上記の検量線を作成するソフトウェアをインストールしたコンピュータを挙げることができる。
(記憶手段)
記憶手段14は、検量線作成手段により作成された検量線を記憶可能であり、必要に応じて算出手段16により読みこみ可能なものであれば特に限定されない。記憶手段14としては例えば、ハードディスク装置や、CD、DVD、USB等の記録媒体を挙げることができる。また、記憶手段14は、検量線以外にも、検量線を取得する際に使用する溶液中のメチレンブルー濃度、第1及び第2の色値、第1及び第2の画像、第1及び第2の画像の取得条件、第1及び第2の色値の測定条件、算出手段16によって算出されたメチレンブルーの吸着量等を記憶するものであっても良い。
(溶液取得手段)
溶液取得手段15は、既知の濃度C(mg/l)のメチレンブルーを含む、y(ml)の第1の溶液にフライアッシュ f(g)を添加し、フライアッシュにメチレンブルーを吸着させた後、第1の溶液からメチレンブルーが吸着したフライアッシュを除去して第2の溶液を得るためのものである。溶液取得手段15は、第1の溶液にフライアッシュを添加する添加手段と、第1の溶液からメチレンブルーが吸着したフライアッシュを除去する除去手段とを備える。
添加手段は微粉末であるフライアッシュを定量的に供給できるものであれば特に限定されないが、例えば、市販の粉末供給装置等を挙げることができる。
第1の溶液から、メチレンブルーが吸着したフライアッシュを除去する手段は固液分離手段であれば特に限定されないが、例えば、ろ過器や遠心分離器を挙げることができる。ろ過器としては吸引ろ過器や加圧ろ過器などを挙げることができる。また、遠心分離器は例えば、1000rpm〜50000rpmなどの広範囲の条件で遠心分離できるものを挙げることができる。
(算出手段)
算出手段16は、記憶手段14から読みこんだ検量線に、第2の溶液の画像の色値である第2の色値を適用することにより第2の溶液中のメチレンブルーの濃度C(mg/l)を算出する。また、算出手段16は、下記式により、フライアッシュ1g当たりのメチレンブルー吸着量d(mg/g)を得る。
d(mg/g)=(C×y/1000−C×y/1000)/f
算出手段16としては、メチレンブルーの濃度Cの算出及びメチレンブルーの吸着量dの算出を行うための演算処理を行う、ソフトウェアをインストールしたコンピュータを挙げることができる。
なお、検量線作成手段13と算出手段16は一つの手段を構成していても良い。例えば、検量線作成手段13及び算出手段16として、検量線の作成、メチレンブルーの濃度Cの算出、及びメチレンブルーの吸着量dの算出を行う、ソフトウェアをインストールしたコンピュータを使用することができる。
以下では、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
(実施例1)
以下の手順に従って、フライアッシュのメチレンブルー吸着量を測定した。
(1)メチレンブルー溶液の調製
メチレンブルーの標準溶液として、メチレンブルー3水塩40mgを純水に溶かして1000mlとして、40mg/lのメチレンブルー濃度の溶液を調製した。メチレンブルーの標準溶液を様々な比率で、純水で希釈することにより、下記表1に示す様々な濃度のメチレンブルー溶液を調製した。
(2)第1の画像の取得
上記(1)に従って調製した各メチレンブルー溶液25mlを共栓付試験管に入れ、No.5Bのろ紙(125mm)で、試験管内の溶液を5分間、ろ過した。ろ過後のろ液を別途、用意した試験管内に入れた。該試験管を、JIS照明基準に定められた推奨照度750lxの環境下においた。
試験管を、該試験管から30cmの距離に設置したスマートフォン(サムスン電子株式会社製、GALAXY Note Edge)(画像取得手段)を用いて、正面から試験管を撮影することで第1の画像を取得した。第1の画像を取得する範囲は3264×2448ピクセルの大きさであり、解像度は72dpiとした。
(3)第1の色値の測定
上記(2)に従って取得した第1の画像のデータをパーソナルコンピュータ(東芝社製、dynabook)に記憶させた。そして、パーソナルコンピュータ内に予めインストールしたソフトウェア(マイクロソフト社製、ペイント)(測色手段)を用い、第1の画像の中心の位置のR値、G値及びB値を測定した。各メチレンブルー濃度の溶液のR値、G値及びB値を表1に示す。
なお、事前の予備試験により、均一な光が照射される条件下で取得された第1の画像は、画像内の位置によらずほぼ同じR値、G値及びB値を示すことを確認している。
(4)検量線の作成
パーソナルコンピュータ内に予めインストールしたソフトウェア(エクセル、マイクロソフト社製)(検量線作成手段)により、上記に従って測定したR値、G値及びB値のそれぞれと、メチレンブルー濃度との関係を表す2次の近似曲線を、検量線として作成した。この結果、R値とメチレンブルー濃度、G値とメチレンブルー濃度、及びB値とメチレンブルー濃度を表す検量線の相関係数はそれぞれ、0.523、0.941、及び0.878であった。R値、G値及びB値と、メチレンブルー濃度との関係を、図3に示す。図3に示す3つの検量線の中で、G値とメチレンブルー濃度及びB値とメチレンブルー濃度を表す検量線は相関係数が高く、メチレンブルー濃度の算出に有用なものであった。また、3つの検量線の中で最も相関係数の高かったものは、G値とメチレンブルー濃度の関係を表す検量線であったため、以後の測定過程では、この検量線を元にメチレンブルー濃度を算出することとした。そして、G値とメチレンブルー濃度の関係を表す検量線を、パーソナルコンピュータ内に内蔵されたハードディスク(記憶手段)に記憶させた。
(5)第2の溶液の調製
フライアッシュ0.5gを量り取り、共栓付試験管に入れた。次に、共栓付試験管に、上記(1)に従って調製したメチレンブルー標準溶液(第1の溶液;メチレンブルー濃度C=40mg/l)25ml(yに相当)を入れ、試験管を1分間、十分に振とうし、フライアッシュにメチレンブルーを吸着させた。次いで、No.5Bのろ紙(125mm)で、試験管内の溶液を5分間、ろ過し、メチレンブルーが吸着したフライアッシュを除去した。ろ過後のろ液(第2の溶液)を別途、用意した試験管内に入れた。次に、ろ液が入った試験管を比色試験管立てに設置した。そして、該試験管をJIS照明基準に定められた推奨照度750lxの環境下に置いた。
(6)第2の画像の取得
上記(2)の第1の画像の取得と同じ条件下で、上記(5)で得た第2の溶液の第2の画像を取得した。
(7)第2の色値の測定
上記(3)の第1の色値の取得と同じ条件下で、第2の溶液の第2の色値を測定した。
(8)第2の溶液中のメチレンブルーの濃度C(mg/l)の算出
上記(4)でパーソナルコンピュータ内のハードディスクに予め記憶させた検量線に対して上記第2の色値を適用することにより、第2の溶液中のメチレンブルーの濃度Cを算出した。
(9)メチレンブルー吸着量d(mg/g)の算出
パーソナルコンピュータ(算出手段)内のハードディスクに予め記憶させた下記式に、上記C、y、及び(8)で算出したCを入力することにより、フライアッシュ1g当たりのメチレンブルー吸着量d(mg/g)を算出した。
d(mg/g)=(C×y/1000−C×y/1000)/f
ただし、fは試料として使用したフライアッシュの重量(g)を表し、本例ではf=0.5gである。
また、上記(5)で使用したフライアッシュの、メチレンブルー吸着量を電発試験方法により測定した。すなわち、上記(5)と同様の方法により、フライアッシュをメチレンブルー溶液に添加することによりフライアッシュにメチレンブルーを吸着させた後、該メチレンブルー溶液のろ過を行うことにより、ろ液を得た。吸光光度計により、このろ液の560nmにおける吸光度を測定し、予め準備した検量線にこの吸光度を適用することにより、フライアッシュのメチレンブルー吸着量を測定した。
上記(1)〜(9)の方法(簡易法)により測定したメチレンブルー吸着量と、電発試験方法(電発法)により測定したメチレンブルー吸着量との関係を図4に示す。図4に示されるように、電発試験方法と簡易法で測定したメチレンブルー吸着量の差は最大で13%であった。上記の両方法で測定したデータの約80%のメチレンブルー吸着量の差は±10%未満であり、上記(1)〜(9)の方法(簡易法;本発明の方法)により測定したメチレンブルー吸着量は電発試験方法と同様に、高精度でフライアッシュのメチレンブルー吸着量を測定できることが確認できた。また、簡易法の方が電発試験方法よりも簡易かつ低コストであった。
(比較例1)
上記実施例1の(1)で調製した様々なメチレンブルー濃度のメチレンブルー溶液と色見本との比較を行い、メチレンブルー濃度と各色見本との関係を調査した。この調査結果をもとにして、メチレンブルー溶液の色を色見本と比較することにより、フライアッシュのメチレンブルー吸着量を測定した。しかし、色見本を用いて測定したメチレンブルー濃度は0.2mg/g以上の誤差範囲があり、これよりも小さな測定精度でフライアッシュのメチレンブルー吸着量を測定することができなかった。このため、色見本を用いた方法は簡易な方法であるものの、実施例1のような高精度なメチレンブルー吸着量の測定が困難であった。
11 画像取得手段
12 測色手段
13 検量線取得手段
14 記憶手段
15 溶液取得手段
16 算出手段

Claims (5)

  1. 既知の濃度のメチレンブルーを含む、複数の溶液の第1の画像を取得する工程と、
    前記第1の画像の、RGB色空間におけるB値及びG値の少なくとも一方からなる第1の色値を測定する工程と、
    前記既知の濃度のメチレンブルーと、前記第1の色値との関係を表す検量線を作成する工程と、
    既知の濃度C(mg/l)のメチレンブルーを含む、第1の溶液を準備する工程と、
    (ml)の前記第1の溶液にフライアッシュ f(g)を添加し、フライアッシュにメチレンブルーを吸着させた後、前記第1の溶液からメチレンブルーが吸着したフライアッシュを除去して第2の溶液を得る工程と、
    前記第2の溶液の第2の画像を取得する工程と、
    前記第2の画像の、RGB色空間におけるB値及びG値の少なくとも一方からなる色値であって前記第1の色値と同じ種類の色値である、第2の色値を測定する工程と、
    前記検量線に前記第2の色値を適用することにより前記第2の溶液中のメチレンブルーの濃度C(mg/l)を算出する工程と、
    下記式によりフライアッシュ1g当たりのメチレンブルー吸着量d(mg/g)を得る工程と、
    d(mg/g)=(C×y/1000−C×y/1000)/f
    を有する、フライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定方法。
  2. 前記第1及び第2の色値はRGB色空間におけるG値である、請求項1に記載のフライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定方法。
  3. 前記第1及び第2の画像を取得する方法において、デジタルカメラにより第1及び第2の画像を取得する、請求項1又は2に記載のフライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定方法。
  4. 0mg/gよりも大きく2.0mg/g以下の前記メチレンブルー吸着量dを測定する、請求項1から3までの何れか1項に記載のフライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定方法。
  5. メチレンブルーを含む溶液の画像を取得する画像取得手段と、
    前記画像の、RGB色空間におけるB値及びG値の少なくとも一方からなる色値を測定する測色手段と、
    既知の濃度のメチレンブルーと、前記既知の濃度のメチレンブルーを含む溶液の画像の前記色値である第1の色値との関係を表す検量線を作成する検量線作成手段と、
    前記検量線を記憶する記憶手段と、
    既知の濃度C(mg/l)のメチレンブルーを含む、y(ml)の第1の溶液にフライアッシュ f(g)を添加し、フライアッシュにメチレンブルーを吸着させた後、前記第1の溶液からメチレンブルーが吸着したフライアッシュを除去して第2の溶液を得る、溶液取得手段と、
    前記検量線に、前記第2の溶液の画像の前記色値である第2の色値を適用することにより前記第2の溶液中のメチレンブルーの濃度C(mg/l)を算出すると共に、下記式によりフライアッシュ1g当たりのメチレンブルー吸着量d(mg/g)を得る、算出手段と、
    d(mg/g)=(C×y/1000−C×y/1000)/f
    を有する、フライアッシュのメチレンブルー吸着量の測定装置。
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