JP2019026856A - 水分散型粘着剤組成物および粘着シート - Google Patents

水分散型粘着剤組成物および粘着シート Download PDF

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綱樹 北原
裕 戸崎
Yutaka Tozaki
裕 戸崎
ジャンナ ビンティ アブドゥラ ヌルリ
Janna Binti Abdullah Nurul
ジャンナ ビンティ アブドゥラ ヌルリ
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Abstract

【課題】粘着力と凝集力とをバランスよく両立する粘着剤を形成し得る水分散型粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】アクリル系ポリマー(A)とアクリル系ポリマー(B)とを含む水分散型粘着剤組成物が提供される。上記アクリル系ポリマー(B)のTgは0℃以上であり、Mwは0.3×10より大きく5×10以下である。上記アクリル系ポリマー(A)のMwは、上記アクリル系ポリマー(B)のMwよりも高い。
【選択図】なし

Description

本発明は、水分散型粘着剤組成物および粘着シートに関する。
一般に、粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。このような性質を活かして、粘着剤は、例えばフィルム状に形成された粘着剤(粘着剤層)を有する粘着シートの形態で、様々な分野において広く利用されている。粘着剤層の代表的な形成方法として、液状媒体中に粘着成分を含む粘着剤組成物を適当な表面に塗付して乾燥させる方法が例示される。近年では、環境衛生等の観点から、粘着成分が有機溶剤に溶解した形態の溶剤型粘着剤組成物に比べて、粘着剤粒子が水性溶媒に分散した水分散型粘着剤組成物が好まれる傾向にある。水分散型粘着剤組成物に関する技術文献として特許文献1および2が挙げられる。
特開2006−176781号公報 特開2012−188512号公報
しかしながら、水分散型粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有する粘着シートは、溶剤型粘着剤組成物を用いた粘着シートと比べて、被着体に対する粘着力が不足しがちであった。また、粘着力と凝集力とは概してトレードオフの関係にあり、これらの特性をバランスよく両立することは困難であった。
アクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤(アクリル系粘着剤)の粘着力を向上させる手法として、ロジン等の粘着付与樹脂を粘着剤組成物に配合することが知られている。凝集力の低下を抑える観点からは、比較的軟化点の高い粘着付与樹脂を用いることが好ましい。しかし、一般に水分散型粘着剤組成物に粘着付与樹脂を配合する場合には該粘着付与樹脂のエマルションが用いられるところ、軟化点の高い粘着付与樹脂はエマルション化が困難であるという不便があった。
特許文献1には、低分子量の水性アクリルエマルションポリマーを含むポリマー添加剤を粘着付与剤として機能させることが記載されている。しかし、この特許文献1を参照してもなお、水分散型粘着剤組成物を用いて粘着力と凝集力とを高レベルで両立する粘着剤を実現することは困難であった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、その一つの目的は、粘着力と凝集力とをバランスよく両立する粘着剤を形成し得る水分散型粘着剤組成物を提供することである。関連する他の目的は、そのような水分散型粘着剤組成物を用いて形成された粘着シートを提供することである。
ここに開示される水分散型粘着剤組成物は、モノマー原料(A)の重合物であるアクリル系ポリマー(A)と、モノマー原料(B)の重合物であるアクリル系ポリマー(B)とを含む。上記アクリル系ポリマー(B)のガラス転移温度は0℃以上である。また、上記アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量は、0.3×10より大きく5×10以下である。上記アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、上記アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量よりも高い。かかる構成の粘着剤組成物によると、粘着力と凝集力とを好適に両立する粘着剤が形成され得る。また、この粘着剤組成物は水分散型であるので、環境衛生等の観点から好ましい。
なお、ここでいう粘着力は、被着体に貼り付けられている粘着剤を該被着体から引き剥がすときに要する力、すなわち剥離強度により評価することができる。剥離強度は、例えば、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。また、ここでいう凝集力は、例えば、後述する実施例に記載の保持力試験により評価することができる。
上記モノマー原料(B)は、環状構造を有する(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。このようなモノマー組成のアクリル系ポリマー(B)を含む粘着剤組成物によると、より良好な粘着力を示す粘着剤が形成され得る。例えば、環状構造を有する(メタ)アクリレートの含有量は、モノマー原料(B)の50重量%超とすることが好ましい。
上記モノマー原料(B)は、カルボキシル基含有モノマーを含むことが好ましい。このようなモノマー組成のアクリル系ポリマー(B)を含む粘着剤組成物によると、より良好な粘着力を示す粘着剤が形成され得る。モノマー原料(B)におけるカルボキシル基含有モノマーの含有量は、耐反撥性等の観点から、20重量%以下とすることが好ましい。
好ましい一態様に係る粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、上記アクリル系ポリマー(B)5〜50重量部を含む。このような組成の粘着剤組成物は、粘着力と凝集力とを好適に両立する粘着剤を形成しやすいので好ましい。
上記アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量は、2×10未満であることが好ましい。このようなアクリル系ポリマー(B)を含む粘着剤組成物によると、粘着力と凝集力とをより高いレベルで両立する粘着剤が形成され得る。
上記アクリル系ポリマー(B)のガラス転移温度は、50℃以上120℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が上記範囲にあるアクリル系ポリマー(B)を含む粘着剤組成物によると、粘着力と凝集力とをより高いレベルで両立する粘着剤が形成され得る。
上記モノマー原料(A)は、アルキル基の炭素原子数が4〜12であるアルキル(メタ)アクリレートを50重量%超の割合で含むことが好ましい。このようなモノマー組成のアクリル系ポリマー(A)を含む粘着剤組成物によると、種々の被着体に対して良好な粘着力を示す粘着剤が好適に形成され得る。
上記モノマー原料(A)は、カルボキシル基含有モノマーを含むことが好ましい。このようなモノマー組成のアクリル系ポリマー(A)を含む粘着剤組成物によると、粘着力と凝集力とをより高いレベルで両立する粘着剤が形成され得る。モノマー原料(A)におけるカルボキシル基含有モノマーの含有量は、粘着剤組成物の保存安定性等の観点から、10重量%以下とすることが好ましい。
上記アクリル系ポリマー(A)のガラス転移温度は、典型的には0℃未満であり、−20℃以下であることが好ましい。このようなガラス転移温度を有するアクリル系ポリマー(A)を含む粘着剤組成物によると、より良好な粘着力を示す粘着剤が形成され得る。
上記粘着剤組成物は、上記アクリル系ポリマー(A)のSP値をSPとし、上記アクリル系ポリマー(B)のSP値をSPとしたとき、SPとSPとの差(SP−SP)として定義される溶解度差ΔSPが−2.0(cal/cm1/2より大きく2.0(cal/cm1/2未満であることが好ましい。このことによって、アクリル系ポリマー(A)とアクリル系ポリマー(B)とを組み合わせて含むことによる粘着性能向上効果がより好適に発揮され得る。
この明細書によると、また、ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有する粘着シートが提供される。かかる粘着シートは、粘着力と凝集力とを好適に両立するものとなり得る。
粘着シートの一構成例を模式的に示す断面図である。 粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。 粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。 粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。 粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。 粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。 フォーム耐反撥性試験の実施方法を示す説明図である。 フォーム耐反撥性試験の実施方法を示す説明図である。 図9(a)および図9(b)は、アルミニウム耐反撥性試験の実施方法を示す説明図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートのサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
この明細書において、範囲を示す「A〜B」は、「A以上B以下」を意味する。また、この明細書において、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」および「重量部」と「質量部」は、それぞれ同義語として扱う。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E(1Hz)<10dyne/cmを満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)である。
この明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
この明細書において「アクリル系ポリマー」とは、該ポリマーを構成するモノマー単位として、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマー単位を含む重合物をいう。以下、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを「アクリル系モノマー」ともいう。したがって、この明細書におけるアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含むポリマーとして定義される。アクリル系ポリマーの典型例として、該アクリル系ポリマーの合成に用いられる全モノマー成分のうちアクリル系モノマーの割合が50重量%より多いアクリル系ポリマーが挙げられる。
この明細書において、アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)とは、該ポリマーを構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの重量分率(重量基準の共重合割合)に基づいてフォックス(Fox)の式から求められる値をいう。ホモポリマーのTgとしては、公知資料に記載の値を採用するものとする。
ここに開示される技術では、モノマーのホモポリマーのTgとして、具体的には以下の値を用いるものとする。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
n−ブチルアクリレート −55℃
メチルメタクリレート 105℃
n−ブチルメタクリレート 20℃
t−ブチルメタクリレート 107℃
シクロヘキシルアクリレート 15℃
シクロヘキシルメタクリレート 66℃
イソボルニルアクリレート 94℃
イソボルニルメタクリレート 180℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
上記で例示した以外のモノマーのホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第4版、JohnWiley&Sons,Inc、1999年)に記載の数値を用いるものとする。なお、この文献中に複数のTgの値が記載されている場合には、「conventional」の値を採用する。
上記文献にも記載されていない場合には、溶液重合により合成したホモポリマーをシート状に成形し、粘弾性試験機を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域−70℃〜150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、せん断損失弾性率G”のピークトップ温度に相当する温度(G”カーブが極大となる温度)を該ホモポリマーのTgとすることができる。
この明細書においてSP値とは、フェドーズ(Fedors)が提案した方法で化合物の基本構造から計算される溶解度パラメータ(solubility parameter)の値を指す。具体的には、25℃における各原子または原子団の蒸発エネルギーΔe[cal]と、同温度における各原子または原子団のモル容積Δv[cm]とから、以下の式(2):
SP値=(ΣΔe/ΣΔv1/2 (2);
に従ってSP値が計算される。ΔeおよびΔvの値は、例えば、日本接着学会誌、Vol.22、No.10(1986)p.566から得ることができる。なお、本明細書中においてSP値を表す数値の単位は、特に断りのない限り「(cal/cm1/2」である。
この明細書において水性溶媒とは、水または水を主成分(50重量%を超えて含まれる成分)とする混合溶媒を指す。この混合溶媒を構成する水以外の溶媒は、水と均一に混合し得る各種の有機溶媒(低級アルコール等)から選択される1種または2種以上であり得る。この明細書における水性溶媒は、典型的には、水の割合が90重量%以上であり、好ましくは95〜100重量%である。
<アクリル系ポリマー(A)>
ここに開示される粘着剤組成物は、モノマー原料(A)の重合物であるアクリル系ポリマー(A)を含む。以下、アクリル系ポリマー(A)を「ポリマー(A)」と略記することがある。
上記ポリマー(A)は、典型的には、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料(A)の重合物である。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料(A)におけるモノマー組成の50重量%超を占める成分をいう。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1〜20のアルキル基である。以下、このような炭素原子数の範囲を「C1−20」と表すことがある。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、RがC1−14(例えばC2−14)のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートを好ましく使用し得る。例えば、RがC4−12のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含むモノマー原料(A)が好ましい。Rが水素原子であってRがC4−10のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレート(以下、単にC4−10アルキルアクリレートともいう。)がより好ましい。
がC1−14のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。このようなアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n−ブチルアクリレート(BA)および2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。
ポリマー(A)の合成に用いられる全モノマー成分に占めるアルキル(メタ)アクリレートの割合は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。アルキル(メタ)アクリレートの割合の上限は特に限定されないが、通常は99.5重量%以下(例えば99重量%以下)とすることが好ましい。あるいは、アクリル系ポリマーは実質的にアルキル(メタ)アクリレートのみを重合したものであってもよい。また、モノマー成分としてC4−10アルキルアクリレートを使用する場合、該モノマー成分中に含まれるアルキル(メタ)アクリレートのうちC4−10アルキルアクリレートの割合は、通常、50重量%超とすることが適当であり、70重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上(典型的には99〜100重量%)であることがさらに好ましい。
ポリマー(A)の一好適例として、モノマー原料(A)の50重量%超(例えば60重量%以上)がBAであるアクリル系ポリマーが挙げられる。モノマー原料(A)は、BAより少ない割合で2EHAをさらに含んでもよい。ポリマー(A)の他の一好適例として、モノマー原料(A)の50重量%超(例えば60重量%以上)が2EHAであるアクリル系ポリマーが挙げられる。モノマー原料(A)は、2EHAより少ない割合でBAをさらに含んでもよい。
モノマー原料(A)は、任意成分として、主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な副モノマーを含み得る。副モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリマー(A)に架橋基点となり得る官能基を導入し、あるいは粘着力の向上に寄与し得る副モノマーとして、カルボキシル基含有モノマー、水酸基(OH基)含有モノマー、アミド基含有モノマー、イミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー等の官能基含有モノマーが挙げられる。
このような官能基含有モノマーのうち、カルボキシル基を有するモノマーまたはその酸無水物から選択されるモノマー(以下、まとめて「カルボキシル基含有モノマー」ともいう。)を好ましく用いることができる。カルボキシル基含有モノマーの例としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられる。なかでも好ましいカルボキシル基含有モノマーとして、AAおよびMAAが挙げられる。これらの一方を単独で用いてもよく、AAとMAAとを任意の割合で組み合わせて用いてもよい。カルボキシル基含有モノマーを使用する場合、モノマー原料(A)に占めるカルボキシル基含有モノマーの割合は、通常は15重量%以下とすることが適当であり、粘着剤組成物の保存安定性等の観点から10重量%以下(例えば5重量%以下)とすることが好ましい。また、カルボキシル基含有モノマーの使用による効果を好適に発揮させる観点から、上記割合は、0.2重量%以上とすることが適当であり、0.5重量%以上(例えば1重量%以上)とすることが好ましい。
好ましく使用し得る官能基含有モノマーの他の例として、アルコキシシリル基を有するモノマーが挙げられる。アルコキシシリル基含有モノマーの例としては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。このようなアルコキシシリル基含有モノマーを共重合させることは、粘着力と保持力とをより高レベルで両立可能な粘着シートを実現する上で有利な手法となり得る。アルコキシシリル基含有モノマーを共重合させる場合、モノマー原料(A)に占めるアルコキシシリル基含有モノマーの割合は、通常、0.005〜1重量%(例えば0.01〜0.1重量%)程度が好ましい。
このような官能基含有モノマーは、合計で、モノマー原料(A)のうち15重量%以下(例えば0.2〜15重量%、好ましくは1〜10重量%)の範囲で用いることが好ましい。官能基含有モノマーの使用量を上記の範囲とすることにより、粘着力と凝集力とを高レベルで両立させやすくなる傾向にある。
また、ポリマー(A)の凝集力の向上や後述するTgの調整等の目的で、上述した官能基含有モノマー以外の他の共重合成分を副モノマーとして用いることができる。かかる共重合成分として、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂肪族性環状(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレートやアリールアルキル(メタ)アクリレート等の芳香族性環状(メタ)アクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環を有するモノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;等が挙げられる。かかる他の共重合成分の量は、目的および用途に応じて適宜選択すればよく特に限定されない。例えば、モノマー原料(A)の10重量%以下とすることが好ましい。
アクリル系ポリマー(A)のモノマー組成は、該ポリマー(A)のTgがアクリル系ポリマー(B)のTgよりも低くなるように設定されていることが好ましい。ポリマー(A)のTgは、粘着力等の観点から、通常は0℃以下であることが適当であり、−10℃以下が好ましく、−20℃以下がより好ましく、−30℃以下(例えば−40℃以下)とすることがさらに好ましい。ポリマー(A)のTgの下限は特に制限されないが、通常は−70℃以上が好ましく、−65℃以上がより好ましい。ポリマー(A)のTgは、モノマー原料(A)の組成(すなわち、モノマー原料(A)に含まれるモノマーの種類や重量比)により調節することができる。
アクリル系ポリマー(A)のSP値(SP)は、後述するアクリル系ポリマー(B)のSP値(SP)との差(SP−SP)として定義される溶解度差ΔSPが−2.0より大きく2.0未満となるように設定されていることが好ましい。このことによって、アクリル系ポリマー(A)とアクリル系ポリマー(B)とを組み合わせて含むことによる粘着性能向上効果がより好適に発揮され得る。特に限定するものではないが、SPは、典型的には9.0〜12.0であり、好ましくは9.5〜11.5、より好ましくは9.5〜11.0、例えば9.5〜10.5である。SPは、モノマー原料(A)の組成により調節することができる。
なお、アクリル系ポリマー(A)のSP値(SP)は、該アクリル系ポリマー(A)が共重合体である場合、モノマー原料(A)に含まれる各モノマーについて、該モノマーのSP値と該モノマーがモノマー原料(A)に占めるモル分率(モル基準の共重合割合)との積を求め、それらを合計することにより算出することができる。アクリル系ポリマー(A)が単独重合体である場合には、モノマーのSP値をアクリル系ポリマー(A)のSP値として採用することができる。アクリル系ポリマー(B)のSP値(SP)についても同様である。
モノマー原料(A)を重合させてポリマー(A)を形成する方法としては、公知または慣用の重合方法を採用することができ、なかでもエマルション重合法を好ましく用いることができる。かかる方法によって得られるポリマー(A)の水性エマルションは、そのまま水分散型粘着剤組成物の調製に使用することができる。エマルション重合を行う際のモノマー供給方法としては、モノマー原料(A)の全量を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。モノマー原料(A)の一部または全部をあらかじめ水と混合して乳化し、その乳化液(モノマーエマルション)を反応容器内に一括、連続あるいは分割して供給してもよい。重合温度は、使用するモノマーの種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃〜100℃(典型的には40℃〜80℃)程度とすることができる。
モノマー原料(A)の重合に用いる開始剤は、従来公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、モノマー原料(A)100重量部に対して0.005〜1重量部(典型的には0.01〜1重量部)程度の範囲から選択することができる。
乳化剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系のいずれも使用可能である。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。通常は、アニオン系またはノニオン系の乳化剤の使用が好ましい。アニオン系乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が例示される。ノニオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が例示される。上述したようなアニオン系またはノニオン系乳化剤にプロペニル基等のラジカル重合性基が導入された構造のラジカル重合性乳化剤(反応性乳化剤)を使用してもよい。特に限定するものではないが、ポリマー(A)の合成時における重合安定性や粘着剤組成物の保存安定性等の観点から、ラジカル重合性基を有しない乳化剤のみを使用する態様を好ましく採用し得る。
上記重合には、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用することができる。かかる連鎖移動剤は、例えば、n−ラウリルメルカプタン、tert−ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類から選択される一種または二種以上であり得る。なかでも好ましい連鎖移動剤として、n−ラウリルメルカプタンおよびtert−ラウリルメルカプタンが挙げられる。モノマー原料(A)の重合において連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は特に制限されない。例えば、モノマー原料(A)100重量部に対して0.001〜0.5重量部程度とすることができ、通常は0.01〜0.1重量部とすることが好ましい。
ポリマー(A)のMwは、典型的には10×10以上であり、通常は20×10以上が適当である。粘着力と凝集力とを好適に両立する観点から、アクリル系ポリマー(A)のMwは、30×10以上であることが好ましく、40×10以上(例えば50×10以上)であることがより好ましい。アクリル系ポリマー(A)のMwの上限は特に制限されず、例えば500×10以下、典型的には200×10以下、好ましくは150×10以下であり得る。アクリル系ポリマー(A)のMwは、例えば、重合開始剤の種類と使用量、重合温度、乳化剤の種類と使用量、連鎖移動剤の使用の有無および使用する場合における種類と使用量、モノマー原料(A)の組成、架橋の種類および程度(ゲル分率)等により調節することができる。
ここで、アクリル系ポリマー(A)のMwは以下の方法により測定することができる。すなわち、測定対象たるアクリル系ポリマー(A)のサンプルを室温(例えば23℃)にてテトラヒドロフラン(THF)中に7日間浸漬してTHF可溶分を溶出させる。THF不溶分を濾過によって除去し、得られた濾液を必要に応じて濃縮または希釈して、THF可溶分を0.1〜0.3重量%程度の濃度で含むTHF溶液を調製する。このTHF溶液につきゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行うことにより、標準ポリスチレン基準の重量平均分子量(Mw)を求める。より具体的には、後述する実施例に記載の方法に従ってMwを測定することができる。
<アクリル系ポリマー(B)>
次に、アクリル系ポリマー(B)についてより詳しく説明する。ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマー(B)は、モノマー原料(B)の重合物であって、Mwが0.3×10より大きく5×10以下という比較的低分子量のポリマーである。以下、アクリル系ポリマー(B)を「ポリマー(B)」と略記することがある。ポリマー(B)のMwは、ポリマー(A)と同様に、GPC測定に基づく標準ポリスチレン基準の重量平均分子量(Mw)として求めることができる。より具体的には、後述する実施例に記載の方法に従ってMwを測定することができる。
ポリマー(B)は、典型的には、該ポリマー(B)のTgが0℃以上となるように設定されたモノマー組成を有する。換言すれば、モノマー原料(B)の組成は、アクリル系ポリマー(B)のTgが0℃以上となるように設定することができ、その限りにおいて、該モノマー原料(B)に含まれ得る各モノマーのホモポリマーのTgは特に制限されない。モノマー原料(B)を構成するモノマーは、例えば、モノマー原料(A)に使用し得るモノマーとして上記で例示した材料のなかから適宜選択することができる。
好ましい一態様において、モノマー原料(B)は、ホモポリマーのTgが0℃未満のモノマーを実質的に含まない組成であり得る。例えば、モノマー原料(B)の実質的に全部が、ホモポリマーのTgが0℃以上のモノマーであってもよい。また、好ましい他の一態様において、モノマー原料(B)は、ポリマー(B)のTgが0℃以上となる限度で、ホモポリマーのTgが0℃未満のモノマーを含んでいてもよい。
ポリマー(B)のTgは、典型的には5℃以上、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上である。ポリマー(B)のTgの上昇により、粘着剤の凝集力が向上する傾向にある。かかる観点から、好ましい一態様において、ポリマー(B)のTgは、25℃以上とすることができ、50℃以上としてもよく、さらに55℃以上(例えば65℃以上)としてもよい。
ポリマー(B)のTgの上限は特に限定されず、例えば200℃以下であり得る。好ましい一態様において、ポリマー(B)のTgは、180℃以下とすることができ、150℃以下とすることが好ましく、120℃以下とすることがより好ましい。ポリマー(B)のTgが低くなると、粗面接着性が向上する傾向にある。
なお、本明細書中において粗面接着性とは、表面に微細な凹凸を有する被着体に対する接着性をいい、特に、主として気泡に起因する微細な凹凸を表面に有するプラスチック発泡体(例えば、軟質ウレタンフォーム等のような弾性発泡体)に対する接着性をいう。
特に限定するものではないが、ポリマー(B)の使用による効果をよりよく発揮させる観点から、ポリマー(B)のTgとポリマー(A)のTgとの差(以下「ΔTg」ともいう。)は、通常、50℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。好ましい一態様において、ΔTgを100℃以上(例えば120℃以上)とすることができる。ΔTgの上限は特に制限されないが、通常は220℃以下であり、好ましくは200℃以下、例えば180℃以下である。ΔTgを上記の範囲とすることにより、粘着力と凝集力とのバランスをとりやすくなる傾向にある。
好ましい一態様に係るポリマー(B)は、(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料(B)の重合物である。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料(B)におけるモノマー組成の50重量%超を占める成分をいう。
モノマー原料(B)の構成成分として使用し得る(メタ)アクリレートとしては、例えばアルキル(メタ)アクリレート、脂肪族性環状アルキル(メタ)アクリレート、芳香族性環状(メタ)アクリレート、窒素原子含有環を有する(メタ)アクリレート(例えば、モノマー原料(A)に使用し得る副モノマーとして例示した窒素原子含有環を有するモノマーのうち、(メタ)アクリル酸エステルに該当するもの)、カルボキシル基や水酸基等の官能基を有する(メタ)アクリレート(例えば、モノマー原料(A)に使用し得る副モノマーとして例示した官能基含有モノマーのうち、(メタ)アクリル酸エステルに該当するもの)、等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような(メタ)アクリレートがモノマー原料(B)に占める割合は、典型的には60重量%以上であり、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。好ましい一態様において、モノマー原料(B)の例えば90重量%以上が(メタ)アクリレートであってもよく、モノマー原料(B)の実質的に全部が(メタ)アクリレートであってもよい。
なお、本明細書において「モノマー組成の実質的に全部」とは、モノマー組成の98重量%以上(典型的には99重量%以上)を占めることをいう。
好ましい一態様に係るモノマー原料(B)は、ホモポリマーのTgが0℃以上である(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み得る。かかる(メタ)アクリレートがモノマー原料(B)に占める割合は、典型的には60重量%以上であり、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。好ましい一態様において、ホモポリマーのTgが0℃以上である(メタ)アクリレートがモノマー原料(B)に占める割合は、90重量%以上であってもよく、実質的に全部であってもよい。
ホモポリマーのTgが0℃以上である(メタ)アクリレートの具体例には、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等の脂肪族性環状(メタ)アクリレート;フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート等の芳香族性環状(メタ)アクリレート;等が含まれ得る。なかでも、炭素原子数2以上(例えば、炭素原子数5以上12以下)の鎖状アルコールまたは環状アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである(メタ)アクリレートを主モノマーとして含むモノマー原料(B)が好ましい。このようなモノマー原料(B)の重合物であるポリマー(B)を含むことにより、低極性の被着体に対する粘着力が向上する傾向にある。
好ましい他の一態様に係るモノマー原料(B)は、環状構造を有する(メタ)アクリレート(以下「環状(メタ)アクリレート」ともいう。)を含む。環状(メタ)アクリレートの好適例として、ホモポリマーのTgが0℃以上である(メタ)アクリレートのうち環状構造を有するもの、すなわち脂肪族性環状(メタ)アクリレートや芳香族性環状(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも脂肪族性環状(メタ)アクリレートが好ましい。好ましい具体例として、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレートおよびイソボルニルメタクリレートが挙げられる。
環状(メタ)アクリレートがモノマー原料(B)に占める割合は、例えば5重量%以上とすることができ、15重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。環状(メタ)アクリレートの使用により、粘着力と凝集力とが好適に両立される傾向にある。また、環状(メタ)アクリレートの使用により、耐反撥性が向上する傾向にある。その理由は必ずしも明らかではないが、例えば、立体障害の大きい環状構造を有する(メタ)アクリレートをモノマー原料(B)の構成成分として使用し、そのモノマー原料(B)のエマルション重合により得られたポリマー(B)を別途重合されたポリマー(A)に配合することにより、粘着剤中においてポリマー(B)中の上記環状構造が凝集力や耐反撥性の向上に効果的に寄与し得るものと考えられる。環状(メタ)アクリレートがモノマー原料(B)に占める割合を50重量%超とすることにより、より良好な結果が実現され得る。上記割合を70重量%以上としてもよく、80重量%以上としてもよく、90重量%以上としてもよい。モノマー原料(B)の実質的に全部が環状(メタ)アクリレートであってもよい。ホモポリマーのTgが0℃以上である環状(メタ)アクリレートを上記の割合で含むモノマー原料(B)が好ましい。
ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物において、モノマー原料(B)の主モノマーのTgは、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、50℃以上(例えば55℃以上)であることがさらに好ましい。上記主モノマーのTgが高くなると、粘着剤の凝集力や耐反撥性が向上する傾向にある。また、モノマー原料(B)の主モノマーのTgは、典型的には200℃以下であり、通常は150℃以下であることが好ましく、120℃以下(例えば100℃以下)であることがより好ましい。上記主モノマーのTgが高すぎないことは、粗面接着性等の観点から有利となり得る。
モノマー原料(B)は、任意成分として、上記(メタ)アクリレートと共重合可能な副モノマーを含み得る。モノマー原料(B)における副モノマーの例としては、モノマー原料(A)において使用し得る副モノマーとして例示した化合物のうち、(メタ)アクリレートに該当しないものが挙げられる。このような副モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
モノマー原料(B)における副モノマーの一好適例として、カルボキシル基含有モノマーが挙げられる。使用し得るカルボキシル基含有モノマーの例としては、モノマー原料(A)と同様のものが挙げられる。なかでも好ましいカルボキシル基含有モノマーとして、AAおよびMAAが挙げられる。これらの一方を単独で用いてもよく、AAとMAAとを任意の割合で組み合わせて用いてもよい。カルボキシル基含有モノマーを使用する場合、モノマー原料(B)に占めるカルボキシル基含有モノマーの割合は、通常は30重量%以下とすることが適当であり、粘着剤組成物の保存安定性等の観点から20重量%以下(例えば15重量%以下)とすることが好ましい。また、カルボキシル基含有モノマーの使用による効果を好適に発揮させる観点から、上記割合は、0.2重量%以上とすることが適当であり、0.5重量%以上(例えば1重量%以上)とすることが好ましい。
モノマー原料(B)に占める副モノマー(すなわち、(メタ)アクリレートに該当しないモノマー)の割合は、典型的には40重量%以下であり、通常は30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。上記副モノマーの割合が10重量%以下であってもよく、副モノマーを実質的に含まないモノマー原料(B)であってもよい。
ポリマー(B)のSP値(SP)は特に限定されず、典型的には12.0以下、好ましくは11.5以下、より好ましくは11.0以下であり、例えば10.5以下であり得る。ポリマー(B)のSP値が低くなると、該ポリマー(B)を含む粘着剤において、ポリエチレンやポリプロピレン等のような低極性の被着体に対する粘着力が向上する傾向にある。また、金属等のような高極性の被着体に対する粘着力や、粘着剤の凝集力等の観点から、ポリマー(B)のSP値は、通常、8.5以上であることが適当であり、好ましくは9.0以上、より好ましくは9.5以上、例えば9.8以上である。ポリマー(B)のSP値は、モノマー原料(B)の組成により調節することができる。
モノマー原料(B)を重合させてポリマー(B)を形成する方法としては、公知または慣用の重合方法を採用することができ、なかでもエマルション重合法を好ましく用いることができる。かかる方法によって得られるポリマー(B)の水性エマルションは、そのまま水分散型粘着剤組成物の調製に使用することができる。モノマー原料(B)のエマルション重合は、モノマー原料(A)と概ね同様の条件で、同様の材料を用いて行い得るため、重複する説明は省略する。例えば、モノマー原料(B)のエマルション重合において採用し得るモノマー供給方法や重合温度等、あるいは選択し得る重合開始剤、乳化剤、連鎖移動剤等は、モノマー原料(A)のエマルション重合と同様であり得る。
ポリマー(B)のMwは、典型的には0.3×10より大きく、通常は0.35×10以上が適当である。ポリマー(B)のMwが大きくなると、粘着剤の凝集力が向上する傾向にある。かかる観点から、ポリマー(B)のMwは、0.4×10以上が好ましく、0.45×10以上(例えば0.5×10以上)がより好ましい。好ましい一態様において、アクリル系ポリマー(B)のMwを0.6×10以上とすることができ、0.7×10以上としてもよい。また、ポリマー(B)のMwは、典型的には5×10以下であり、4×10以下であることがより好ましい。ポリマー(B)のMwが小さくなると、粘着力や粗面接着性が向上する傾向にある。Mwが3×10未満、さらには2×10未満、例えば1.5×10未満のポリマー(B)によると、より好適な結果が実現され得る。好ましい一態様において、ポリマー(B)のMwを1×10未満とすることができ、0.8×10未満としてもよい。ポリマー(B)のMwは、例えば重合開始剤の種類と使用量、重合温度、乳化剤の種類と使用量、連鎖移動剤の使用の有無および使用する場合における種類と使用量、モノマー原料(B)の組成、架橋の種類および程度(ゲル分率)等により調節することができる。
好ましい一態様において、モノマー原料(B)のエマルション重合において使用する連鎖移動剤の使用量は、例えば、モノマー原料(B)100重量部に対して0.5重量部以上とすることができ、通常は1重量部以上とすることが適当であり、2重量部以上とすることが好ましく、3重量部以上とすることがより好ましい。かかる分量の連鎖移動剤を用いたエマルション重合において、ここに開示される好ましいMwを有するポリマー(B)が好適に製造され得る。モノマー原料(B)100重量部に対する連鎖移動剤の使用量は、4重量部以上としてもよく、5重量部以上としてもよい。連鎖移動剤の使用量の上限は特に制限されないが、通常は、モノマー原料(B)100重量部に対して30重量部以下とすることが適当であり、25重量部以下とすることが好ましく、20重量部以下とすることがより好ましい。
上記連鎖移動剤の使用量は、例えば、n−ラウリルメルカプタンやtert−ラウリルメルカプタン等のアルキルメルカプタンから選択される連鎖移動剤に対して好ましく適用され得る。
ポリマー(B)のエマルション重合において使用する重合開始剤の量は、Mw調節の観点から、モノマー原料(B)100重量部に対して0.01重量部以上とすることが適当であり、0.05重量部以上とすることが好ましい。重合開始剤の使用量は、重合安定性の観点から、通常、モノマー原料(B)100重量部に対して2重量部以下とすることが適当であり、1重量部以下とすることが好ましく、0.5重量部以下(例えば0.3重量部以下)とすることがより好ましい。
<粘着剤組成物>
ここに開示される粘着剤組成物は、ポリマー(A)とポリマー(B)とを組み合わせて含むことによって特徴づけられる。特に限定するものではないが、通常、モノマー原料(A)とモノマー原料(B)とは、それぞれ独立に重合されることが好ましい。ここに開示される粘着剤組成物は、それぞれ独立に製造(合成)されたポリマー(A)とポリマー(B)とを用意し、それらを混合して得られたものであり得る。例えば、ポリマー(A)を含む水性エマルションと、ポリマー(B)を含む水性エマルションとを用意し、これらを混合することを含む方法により、ここに開示される粘着剤組成物は好適に製造され得る。
ポリマー(A)とポリマー(B)とのブレンド比は特に限定されない。例えば、ポリマー(A)100重量部に対して、ポリマー(B)3重量部以上を配合することができる。ポリマー(B)の使用による効果をよりよく発揮させる観点から、ポリマー(A)100重量部に対するポリマー(B)の配合量は、通常、5重量部以上とすることが適当であり、10重量部以上とすることが好ましい。ポリマー(A)100重量部に対するポリマー(B)の配合量を20重量部以上(例えば25重量部以上)とすることにより、より良好な結果が実現され得る。また、粘着力と凝集力とのバランスをとりやすくする観点から、ポリマー(A)100重量部に対するポリマー(B)の配合量は、通常、100重量部以下とすることが適当であり、70重量部以下とすることが好ましい。ポリマー(B)の配合量を50重量部以下としてもよく、40重量部以下としてもよい。
ここに開示される粘着剤組成物において、ポリマー(A)とポリマー(B)との溶解度差ΔSPは、典型的には−2.0より大きく2.0未満であり、より好ましくは−1.5〜1.5、さらに好ましくは−1.0〜1.0、特に好ましくは−0.5〜0.5である。ΔSPがゼロに近づくにつれて、ポリマー(A)とポリマー(B)との相溶性が向上し、水分散型粘着剤組成物においてポリマー(A)とポリマー(B)とを混合して使用することによる効果がより好適に発揮される傾向にある。ΔSPを上記範囲内とすることは、上記粘着剤組成物から形成される粘着剤の透明性の観点からも好ましい。
ここに開示される粘着剤組成物は、ポリマー(A)およびポリマー(B)の他に、必要に応じて、一般的な架橋剤、例えばカルボジイミド系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、シランカップリング剤等から選択される架橋剤が添加されたものであってもよい。かかる架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の使用量は特に限定されず、所望の特性を示す粘着剤が形成されるように適宜設定することができる。例えば、ポリマー(A)とポリマー(B)との合計量100重量部に対する架橋剤含有量を0.001〜1重量部程度とすることができる。あるいは、実質的に架橋剤を含まない粘着剤組成物であってもよい。
ここに開示される粘着剤組成物は、従来の一般的な粘着付与樹脂エマルションを実質的に含まない態様で好ましく実施することができ、かかる態様において良好な粘着力と凝集力とを両立する粘着シートを実現するものであり得る。このことによって、粘着付与樹脂のエマルション化に伴うコストアップや、粘着付与樹脂エマルションの使用に起因する有機溶剤の混入等の懸念を回避することができる。もっとも、本発明の効果を大きく損なわない範囲で、必要に応じて従来公知の粘着付与樹脂またはそのエマルションの1種または2種以上を補助的に使用することは許容され得る。従来公知の粘着付与樹脂の例としては、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、石油系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、ケトン系樹脂等が挙げられる。
このような粘着付与樹脂を使用する場合、その使用量は、ポリマー(A)とポリマー(B)との合計量100重量部に対して20重量部以下とすることが適当であり、15重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましく、5重量部以下がさらに好ましい。また、粘着付与樹脂の使用量は、重量基準で、ポリマー(B)の使用量よりも少ない量とすることが好ましい。特に、軟化点が140℃以上(より好ましくは120℃以上、例えば100℃以上)の粘着付与樹脂の使用量を上記範囲に抑えることが好ましい。ここに開示される粘着剤組成物は、このような高軟化点の粘着付与樹脂を実質的に含有しない態様(例えば、ポリマー(A)とポリマー(B)との合計量100重量部に対する含有量が1重量部または検出限界以下である態様)で好ましく実施され得る。
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、pH調整等の目的で使用される酸または塩基(アンモニア水等)を含有し得る。上記粘着剤組成物に含有させ得る他の任意成分としては、粘度調整剤、レベリング剤、可塑剤、充填剤、顔料や染料等の着色剤、安定剤、防腐剤、老化防止剤等の、水分散型粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤が例示される。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
<粘着シート>
この明細書によると、ここに開示されるいずれかの水分散型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える粘着シートが提供される。かかる粘着剤層を基材(支持体)の片面または両面に有する形態の基材付き粘着シートであってもよく、上記粘着剤層が剥離ライナー(剥離面を備える基材としても把握され得る。)に保持された形態等の基材レスの粘着シートであってもよい。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、上記粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。また、本発明により提供される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
ここに開示される粘着シートは、例えば、図1〜図6に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。このうち図1,図2は、両面粘着タイプの基材付き粘着シートの構成例である。図1に示す粘着シート1は、基材10の各面(いずれも非剥離性)に粘着剤層21,22がそれぞれ設けられ、それらの粘着剤層が、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー31,32によってそれぞれ保護された構成を有している。図2に示す粘着シート2は、基材10の各面(いずれも非剥離性)にそれぞれ粘着剤層21,22が設けられ、それらのうち一方の粘着剤層21が、両面が剥離面となっている剥離ライナー31により保護された構成を有している。この種の粘着シート2は、該粘着シートを巻回して他方の粘着剤層22を剥離ライナー31の裏面に当接させることにより、粘着剤層22もまた剥離ライナー31によって保護された構成とすることができる。
図3,図4は、基材レスの両面粘着シートの構成例である。図3に示す粘着シート3は、基材レスの粘着剤層21の両面21A,21Bが、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー31,32によってそれぞれ保護された構成を有する。図4に示す粘着シート4は、基材レスの粘着剤層21の一方の表面(粘着面)21Aが、両面が剥離面となっている剥離ライナー31により保護された構成を有し、これを巻回すると、粘着剤層21の他方の表面(粘着面)21Bが剥離ライナー31の背面に当接することにより、他面21Bもまた剥離ライナー31で保護された構成とできるようになっている。
図5,図6は、片面粘着タイプの基材付き粘着シートの構成例である。図5に示す粘着シート5は、基材10の一面10A(非剥離性)に粘着剤層21が設けられ、その粘着剤層21の表面(粘着面)21Aが、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー31で保護された構成を有する。図6に示す粘着シート6は、基材10の一面10A(非剥離性)に粘着剤層21が設けられた構成を有する。基材10の他面10Bは剥離面となっており、粘着シート6を巻回すると該他面10Bに粘着剤層21が当接して、該粘着剤層の表面(粘着面)21Bが基材の他面10Bで保護されるようになっている。
片面粘着タイプまたは両面粘着タイプの基材付き粘着シートにおいて、粘着剤層を支持(裏打ち)する基材としては、樹脂フィルム、紙、布、ゴムシート、発泡体シート、金属箔、これらの複合体等を用いることができる。樹脂フィルムの例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン製フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム;塩化ビニル樹脂フィルム;酢酸ビニル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;ポリアミド樹脂フィルム;フッ素樹脂フィルム;セロハン等が挙げられる。紙の例としては、和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等が挙げられる。布の例としては、各種繊維状物質の単独または混紡等による織布や不織布等が挙げられる。上記繊維状物質としては、綿、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等が例示される。ゴムシートの例としては、天然ゴムシート、ブチルゴムシート等が挙げられる。発泡体シートの例としては、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリクロロプレンゴムシート等が挙げられる。金属箔の例としては、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。
なお、ここでいう不織布は、主として粘着テープその他の粘着シートの分野において使用される粘着シート用不織布を指す概念であって、典型的には一般的な抄紙機を用いて作製されるような不織布(いわゆる「紙」と称されることもある。)をいう。また、ここでいう樹脂フィルムとは、典型的には非多孔質の樹脂シートであって、例えば不織布とは区別される(すなわち、不織布を含まない)概念である。上記樹脂フィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。また、該基材の粘着剤層が設けられる面には、下塗り剤の塗付、コロナ放電処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
基材の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択できるが、一般的には10μm〜500μmであり、好ましくは10μm〜200μmである。耐反撥性の観点から、例えば厚さ10μm〜50μmの基材を好ましく採用することができる。
粘着剤層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。通常は、粘着剤層の厚さとして5μm〜200μm程度が適当であり、10μm〜150μm程度が好ましく、15μm〜100μm(例えば20μm〜80μm)とすることがより好ましい。ここで粘着剤層の厚さとは、両面粘着シートの場合には、基材の両面に設けられる各々の粘着剤層の厚さをいう。
粘着剤層を形成する方法は特に限定されず、公知または慣用の方法を用いることができる。例えば、粘着剤組成物を剥離性または非剥離性の基材に直接塗付して乾燥させる方法(直接法);剥離性を有する表面に粘着剤組成物を塗付して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成した後、その粘着剤層を非剥離性の基材に貼り合わせて転写する方法(転写法);等を適宜採用することができる。粘着剤組成物の塗付は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて行うことができる。
剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙等を使用することができ、特に限定されない。例えば、プラスチックフィルムや紙等の基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)のような低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤により上記基材を表面処理して形成されたものであり得る。
特に限定するものではないが、ここに開示される水分散型粘着剤組成物から形成される粘着剤のゲル分率は、凝集力等の観点から、例えば20%以上とすることができ、通常は25%以上が適当であり、27%以上(例えば30%以上)が好ましい。ゲル分率の上限は特に制限されないが、通常は95%以下、典型的には90%以下である。より良好な粘着力を得る観点から、粘着剤のゲル分率は、60%以下であることが好ましく、40%以下(例えば35%以下)であることがより好ましい。ゲル分率は、例えば、架橋剤の使用の有無、架橋剤の種類や量、連鎖移動剤の使用の有無、連鎖移動剤の種類や量等により調節することができる。
粘着剤のゲル分率は、重さW1の測定サンプルをテトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートに包んで室温で1週間酢酸エチルに浸漬した後、その測定サンプルを乾燥させて酢酸エチル不溶解分の重さW2を計測し、W1およびW2を次式:ゲル分率[%]=W2/W1×100;に代入することにより求められる。上記テトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートとしては、日東電工社製の商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」(平均孔径0.2μm、気孔率75%、厚さ85μm)またはその相当品を使用することが望ましい。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。また、以下の説明中の各特性は、それぞれ次のようにして測定または評価した。
(1)重量平均分子量(Mw)
アクリル系ポリマーの水性エマルションを130℃で2時間乾燥させて得られたサンプルを、室温にてTHFに7日間浸漬してTHF可溶分を溶出させた。その後、THF不溶分を濾過によって除去し、得られた濾液を必要に応じて濃縮または希釈して、THF可溶分を0.1〜0.3重量%程度の濃度で含むTHF溶液を調製した。そのTHF溶液につき下記の条件にてGPC測定を行って、標準ポリスチレン基準の重量平均分子量(Mw)を求めた。
〔GPC条件〕
装置:TOSOH製 HLC−8320GPC
カラム:TSKgel GMH−H(S)、2本連結
カラム温度:40℃
流量:0.5mL/分
(2)剥離強度測定(対SUS)
23℃の環境下において、両面粘着シートの一方の粘着面に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り付けて裏打ちし、幅20mm、長さ100mmのサイズにカットして試料片を作製した。その試料片の他方の粘着面を被着体としてのステンレス鋼板(SUS304BA板)に、2kgのローラを1往復させて圧着した。これを23℃に30分間放置した後、JIS Z 0237(2004)に準じて、23℃、50%RHの測定環境下、引張試験機を使用して、引張速度300mm/分の条件で、ステンレス鋼板に対する180°引き剥がし粘着力(対SUS剥離強度)(N/20mm)を測定した。
(3)剥離強度測定(対PP)
被着体としてポリプロピレン板を用いた他は上記対SUS剥離強度の測定と同様にして、ポリプロピレン板に対する180°引き剥がし粘着力(対PP剥離強度)(N/20mm)を測定した。
(4)保持力試験
JIS Z 0237(2004)に準拠して保持力試験を行った。すなわち、23℃の環境下において、両面粘着シートの一方の粘着面に厚さ25μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちし、幅10mmにカットして試料片を作製した。その試料片の他方の粘着面を、被着体としてのフェノール樹脂板に、幅10mm、長さ20mmの接着面積にて貼り付けた。これを40℃の環境下に30分間放置した後、フェノール樹脂板を垂下し、試料片の自由端(下端)に500gの荷重を付与した。上記荷重が付与された状態で40℃の環境下に1時間放置した。1時間後に試料片が落下していた場合には、保持力試験の結果を「落下」と表示した。それ以外の場合には、保持力試験の結果を「保持」と表示するとともに、最初の貼り付け位置からの試料片のズレ距離(mm)を測定し、その値をカッコ内に示した。
(5)剥離強度測定(対ウレタンフォーム)
被着体として、厚さ10mmの軟質ウレタンフォーム(株式会社イノアックコーポレーション製、商品名「ECS」(灰色))を幅30mm、長さ100mmのサイズにカットしたものを用意した。
23℃の環境下において、両面粘着シートの一方の粘着面に厚さ25μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちし、幅20mm、長さ100mmのサイズにカットして試料片を作製した。この試料片の他方の粘着面を上記被着体に、厚さ1mmのスペーサーを介して、ラミネータを用いて0.2m/分の速度で圧着した。これを23℃に30分間保持した後、JIS Z 0237(2004)に準拠し、引張試験機を用いて、23℃、50%RHの測定環境にて引張速度300mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力(粗面接着力)測定した。測定長さは少なくとも10mm以上とした。
(6)耐反撥性試験(フォーム耐反撥性試験)
23℃の環境下において、両面粘着シートの一方の粘着面を、厚さ10mmの軟質ウレタンフォーム(株式会社イノアックコーポレーションの商品名「ECS」(灰色))に、1kgのローラを一往復させて圧着した。これを23℃に1日間保持した後、幅10mm、長さ50mmのサイズにカットして試料片を作製した。
図7に示すように、この試料片50の他方の粘着面の長手方向の一端50Aから10mmまでの部分(すなわち、幅10mm、長さ10mmの接着面積)を、厚さ2mmのABS板52の一方の面52Aにおける外縁部に、2kgのローラを一往復させて圧着した。このとき、試料片50の一端50Aから10mmの位置をABS板52の外周端に合わせ、試料片50の残りの部分がABS板52から外方向に垂直に延びるように試料片50を配置した。次いで、図8に示すように、試料片50の残りの部分(幅10mm、長さ40mm)をABS板52の端から他方の面52Bに折り返して貼り合わせた。なお、図8において、符号502は粘着シートを、符号504は該粘着シートの一方の粘着面に圧着されたウレタンフォームを示している。これを23℃、50%RHの環境下に24時間放置した後、試料片50の一端50Aの浮き距離を測定した。なお、試料片50が面52Aから完全に剥離した場合には、評価結果を「剥離」と表示した。
(7)耐反撥性試験(アルミニウム耐反撥性試験)
両面粘着シートを幅10mm、長さ90mmのサイズにカットした。幅10mm、長さ90mm、厚さ0.3mmのアルミニウム板の表面をトルエンで洗浄し、上記両面粘着シートの一方の粘着面を上記アルミニウム板の表面に貼り合わせて、粘着剤層がアルミニウム板で裏打ちされた試料片を作製した。この試料片を23℃で1日間静置した後、図9(a)に示すように、試料片8のアルミニウム板85側を内側として、直径40mmの円柱状のガラス管9の外周に試料片8の長手方向を10秒間沿わせて反らせた。次いで、試料片8の粘着剤層82から剥離ライナー84を剥がし、図9(b)に示すように、あらかじめ洗浄したアクリル板(被着体)86の表面に、ラミネーターを用いて貼付圧力0.25MPa、貼付速度0.3m/minの条件で圧着した。23℃で24時間経過後、図9(b)に仮想線で示すように、試料片8の両端が被着体86の表面から浮き上がった高さh1,h2を測定し、両端の平均値を試料片8の浮き高さとして算出した。
<実験例1>
〔実施例1〕
(アクリル系ポリマーA1の合成)
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌装置を備えた反応容器にイオン交換水30部を入れ、窒素ガスを導入しながら室温にて1時間以上攪拌した。次いで、系を60℃に昇温し、この反応容器に2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(重合開始剤)(和光純薬工業株式会社、商品名「VA−057」)0.1部を投入し、系を60℃に保ちつつ、ここにモノマーエマルションを4時間かけて徐々に滴下した。モノマーエマルションとしては、n−ブチルアクリレート(BA)70部、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)30部、アクリル酸(AA)3部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社、商品名「KBM−503」)0.03部、n−ラウリルメルカプタン(連鎖移動剤)0.05部およびポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(花王株式会社、商品名「ラテムルE118B」)2部をイオン交換水40部に添加して乳化したものを使用した。モノマーエマルションの滴下終了後、得られた反応混合物をさらに2時間60℃に保持した。系を常温まで冷却した後、10%アンモニウム水の添加によりpH7.5に調整して、アクリル系ポリマーA1の水性エマルション(A1e)を得た。
このアクリル系ポリマーA1は、モノマー組成から算出されるTgが−56℃であり、SP値が10.20であり、GPC測定に基づくMwは70×10であった。
(アクリル系ポリマーB1の合成)
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器にイオン交換水40部を入れ、窒素ガスを導入しながら室温にて1時間以上攪拌した。次いで、系を60℃に昇温し、この反応容器に2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物(重合開始剤)(和光純薬工業株式会社製、商品名「VA−057」)0.1部を投入し、系を60℃に保ちつつ、ここにモノマーエマルションを4時間かけて徐々に滴下した。モノマーエマルションとしては、シクロヘキシルアクリレート(CHA)95部、AA5部、tert−ラウリルメルカプタン(連鎖移動剤)8部およびポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)(花王株式会社、商品名「ラテムルE118B」)2部をイオン交換水40部に添加して乳化したものを使用した。モノマーエマルションの滴下終了後、得られた反応混合物をさらに2時間60℃に保持した。系を常温まで冷却した後、10%アンモニウム水の添加によりpH7.5に調整して、アクリル系ポリマーB1の水性エマルション(B1e)を得た。
このアクリル系ポリマーB1は、モノマー組成から算出されるTgが18℃であり、SP値が10.78であり、GPC測定に基づくMwは0.49×10であった。
(粘着剤組成物の調製)
水性エマルションA1eの固形分100部に対して、水性エマルションB1eを固形分で30部加えて混合した。次いで、この混合物に含まれるアクリル系ポリマーA1とアクリル系ポリマーB1との合計量100部に対して、架橋剤としてn−デシルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社、商品名「Z−6210」)0.1部を配合した。さらに、増粘剤(東亞合成株式会社のポリアクリル酸、商品名「アロンB−500」)および10%アンモニウム水を用いて粘度を調節して、本例に係る水分散型粘着剤組成物を得た。
(粘着シートの作製)
上記で得られた粘着剤組成物を、両面がシリコーン系剥離剤で処理された剥離ライナー(カイト化学工業株式会社製、商品名「SLB−80WD(V2)」)に、乾燥後の厚さが60μmとなるように塗付し、乾燥させて粘着剤層を形成した。この粘着剤層付き剥離ライナーを2枚用意し、それらの粘着剤層を不織布基材(大福製紙株式会社、商品名「SP−14K」)の両面にそれぞれ貼り合わせて、本例に係る両面粘着シートを作製した。
上記粘着剤層から採取した粘着剤を測定サンプルとして、上述した方法によりゲル分率を測定した。テトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートとしては、日東電工社製の商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」を使用した。測定の結果、上記測定サンプルのゲル分率は28.8%であった。
〔実施例2〕
アクリル系ポリマーB1の合成において、CHAに代えてシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)を使用し、重合条件(重合温度、連鎖移動剤量、開始剤量および乳化剤量)を表1に示すとおりとして、アクリル系ポリマーB2の水性エマルション(B2e)を得た。この水性エマルションB2eを用いた他は実施例1と同様にして、本例に係る水分散型粘着剤組成物を得た。すなわち、水性エマルションA1eの固形分100部に対して、水性エマルションB2eを固形分で30部を加えて混合した。次いで、アクリル系ポリマーA1とアクリル系ポリマーB2との合計量100部に対して、n−デシルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社、商品名「Z−6210」)0.1部を配合した。さらに、増粘剤(東亞合成株式会社のポリアクリル酸、商品名「アロンB−500」)および10%アンモニウム水を用いて粘度を調節して、本例に係る水分散型粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を用いた他は実施例1と同様にして両面粘着シートを作製した。実施例1と同様にして測定したゲル分率は30.9%であった。
〔実施例3〕
アクリル系ポリマーB1の合成において、CHAに代えてイソボルニルアクリレート(IBXA)を使用し、重合温度、連鎖移動剤量、開始剤量および乳化剤量をそれぞれ表1に示すとおりとして、アクリル系ポリマーB3の水性エマルション(B3e)を得た。この水性エマルションB3eを用いた他は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、両面粘着シートを作製した。実施例1と同様にして測定したゲル分率は31.5%であった。
〔実施例4〕
アクリル系ポリマーB1の合成において、CHAに代えてイソボルニルメタクリレート(IBXMA)を使用し、重合条件を表1に示すとおりとして、アクリル系ポリマーB4の水性エマルション(B4e)を得た。この水性エマルションB4eを用いた他は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、両面粘着シートを作製した。実施例1と同様にして測定したゲル分率は31.5%であった。
〔実施例5〕
アクリル系ポリマーB1の合成において、CHAに代えてtert−ブチルメタクリレート(t−BMA)を使用し、重合条件を表1に示すとおりとして、アクリル系ポリマーB5の水性エマルション(B5e)を得た。この水性エマルションB5eを用いた他は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、両面粘着シートを作製した。
〔実施例6〕
アクリル系ポリマーB1の合成において、CHAに代えてメチルメタクリレート(MMA)を使用し、重合温度、連鎖移動剤量、開始剤量および乳化剤量をそれぞれ表1に示すとおりとして、アクリル系ポリマーB6の水性エマルション(B6e)を得た。この水性エマルションB6eを用いた他は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、両面粘着シートを作製した。
〔比較例1〕
水性エマルションB1eを使用しない点を除いては実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製した。すなわち、水性エマルションA1eの固形分100部に対してn−デシルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社、商品名「Z−6210」)0.1部を配合し、さらに増粘剤(東亞合成株式会社のポリアクリル酸、商品名「アロンB−500」)および10%アンモニウム水を用いて粘度を調節した。この粘着剤組成物を用いた他は実施例1と同様にして両面粘着シートを作製した。実施例1と同様にして測定したゲル分率は40.7%であった。
〔比較例2〕
アクリル系ポリマーB1の合成において、CHAに代えてn−ブチルアクリレート(BA)を使用し、重合条件を表1に示すとおりとして、アクリル系ポリマーB7の水性エマルション(B7e)を得た。この水性エマルションB7eを用いた他は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、両面粘着シートを作製した。
上記で得られた各両面粘着シートについて、上述した方法で粘着特性を評価した結果を表1に示す。この表1には、各例において使用したアクリル系ポリマー(B)のMw、Tg、SP値およびアクリル系ポリマーA1との溶解度差ΔSP(すなわち、SP−SP)の値を併せて示している。
Figure 2019026856
表1に示されるように、アクリル系ポリマーA1を単独で含む比較例1に比べて、アクリル系ポリマーA1にアクリル系ポリマーB1〜B6をそれぞれ配合した実施例1〜6では対SUS剥離強度が向上し、実施例1〜5では対SUS剥離強度および対PP剥離強度がいずれも向上した。実施例1〜4では特に良好な結果が得られた。また、実施例1〜6はいずれも保持力試験において良好な結果を示した。保持力試験におけるズレ幅からわかるように、使用するアクリル系ポリマー(B)のTgが高くなると保持力は向上する傾向であった。これに対して、Tgが0℃より低いアクリル系ポリマーB7を使用した比較例2は、保持力試験において落下する結果となり、粘着力と保持力とを両立させることができなかった。
<実験例2>
〔比較例3〕
アクリル系ポリマーB2の合成において、重合条件を表2に示すとおりとして、アクリル系ポリマーB8の水性エマルション(B8e)を得た。この水性エマルションB8eを用いた他は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、両面粘着シートを作製した。
〔実施例7〜11〕
アクリル系ポリマーB2の合成において、重合条件を表2に示すとおりとして、アクリル系ポリマーB9〜13の水性エマルション(B9e〜B13e)を得た。これらの水性エマルションB9e〜B13eをそれぞれ使用した他は実施例1と同様にして、実施例7〜11に係る粘着剤組成物を調製し、両面粘着シートを作製した。
〔実施例12〕
アクリル系ポリマーB3の合成において、重合条件を表2に示すとおりとして、アクリル系ポリマーB14の水性エマルション(B14e)を得た。この水性エマルションB14eを使用した他は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、両面粘着シートを作製した。
〔実施例13〕
アクリル系ポリマーB3の合成において、モノマーエマルションに含まれるモノマーの組成をIBXA100部に変更し(すなわち、AAを使用せず)、重合条件を表3に示すとおりとして、アクリル系ポリマーB15の水性エマルション(B15e)を得た。この水性エマルションB15eを用いた他は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、両面粘着シートを作製した。
〔実施例14〕
アクリル系ポリマーB3の合成において、モノマーエマルションに含まれるモノマーの組成をIBXA97部およびAA3部に変更し、重合条件を表3に示すとおりとして、アクリル系ポリマーB16の水性エマルション(B16e)を得た。この水性エマルションB16eを用いた他は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、両面粘着シートを作製した。
〔実施例15〕
アクリル系ポリマーB3の合成において、モノマーエマルションに含まれるモノマーの組成をIBXA93部およびAA7部に変更し、重合条件を表3に示すとおりとして、アクリル系ポリマーB17の水性エマルション(B17e)を得た。この水性エマルションB17eを用いた他は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、両面粘着シートを作製した。
〔実施例16〕
アクリル系ポリマーB3の合成において、モノマーエマルションに含まれるモノマーの組成をIBXA90部およびAA10部に変更し、重合条件を表3に示すとおりとして、アクリル系ポリマーB18の水性エマルション(B18e)を得た。この水性エマルションB18eを用いた他は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、両面粘着シートを作製した。
〔比較例4〕
実施例1において、水性エマルションB1eに代えて粘着付与樹脂エマルションを使用した。具体的には、水性エマルションA1eの固形分100部に対して、軟化点150℃のロジンフェノール系樹脂の水性エマルション(荒川化学株式会社、商品名「タマノルE−200NT」)を固形分で30部配合した。その他の点は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、両面粘着シートを作製した。
上記で得られた各両面粘着シートおよび実験例1の実施例2,3に係る両面粘着シートにつき上述した方法で粘着特性を評価した結果を表2,3に示す。これらの表には、各例において使用したアクリル系ポリマー(B)のMw、Tg、SP値およびアクリル系ポリマーA1との溶解度差ΔSP(すなわち、SP−SP)の値を併せて示している。表2,3の粘着特性を示す欄において「−」は、その粘着特性が未評価であることを示す。
Figure 2019026856
Figure 2019026856
表2に示されるように、Mwが5×10以下のアクリル系ポリマー(B)を使用した実施例7〜12および実施例2は、Mwが6.1×10のアクリル系ポリマーB8を使用した比較例3に比べて明らかに高い粘着力を示し、耐反撥性も良好であった。Mwが2×10未満のアクリル系ポリマー(B)を用いた実施例9〜12および実施例2ではより良好な結果が得られ、Mwが1×10未満のアクリル系ポリマー(B)を用いた実施例10〜12および実施例2では特に良好な結果が得られた。また、表1,2からわかるように、環状(メタ)アクリレートを含むモノマー組成のアクリル系ポリマー(B)を用いることにより、対PP剥離強度は向上する傾向であった。また、アクリル系ポリマー(B)のMwが低くなると、対ウレタンフォーム剥離強度は向上する傾向であった。なお、実験例7〜12のいずれについても保持力試験において落下は認められなかった。
表3に示されるように、カルボキシル基含有モノマーを含むアクリル系ポリマー(B)を用いた実施例14〜16および実施例3は、カルボキシル基含有モノマーを含まないアクリル系ポリマーB15を用いた実施例13に比べて、より高い対SUS剥離強度を示した。カルボキシル基含有モノマーの含有割合が高くなると対SUS剥離強度は上昇する傾向であった。一方、アクリル系ポリマー(B)に代えて従来公知の粘着付与樹脂を使用した比較例4は、対ウレタンフォーム耐反撥性試験において、表3に示す各実施例に及ばない結果であった。
なお、表3に示す実施例15〜16および実施例3の粘着剤組成物を厚さ25μmのPETフィルムに乾燥後の厚さが60μmとなるように塗付し、乾燥させて形成した粘着剤層の透明性を目視で観察したところ、実施例13、実施例14、実施例3、実施例15、実施例16の順に透明性が高くなる傾向が認められた。この結果は、ΔSPがゼロに近づくにつれて相溶性が向上することを示している。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1,2,3,4,5,6 粘着シート
10 基材
21,22 粘着剤層
31,32 剥離ライナー
50 試料片
50A 一端
502 粘着シート
504 ウレタンフォーム
52 ABS板
52A 一方の表面
52B 他方の表面
8 試料片
82 粘着剤層(粘着シート)
84 剥離ライナー
85 アルミニウム板
86 アクリル板
9 ガラス管
参考例5〕
アクリル系ポリマーB1の合成において、CHAに代えてtert−ブチルメタクリレート(t−BMA)を使用し、重合条件を表1に示すとおりとして、アクリル系ポリマーB5の水性エマルション(B5e)を得た。この水性エマルションB5eを用いた他は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、両面粘着シートを作製した。
参考例6〕
アクリル系ポリマーB1の合成において、CHAに代えてメチルメタクリレート(MMA)を使用し、重合温度、連鎖移動剤量、開始剤量および乳化剤量をそれぞれ表1に示すとおりとして、アクリル系ポリマーB6の水性エマルション(B6e)を得た。この水性エマルションB6eを用いた他は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、両面粘着シートを作製した。
Figure 2019026856
表1に示されるように、アクリル系ポリマーA1を単独で含む比較例1に比べて、アクリル系ポリマーA1にアクリル系ポリマーB1〜B6をそれぞれ配合した実施例1〜4および参考例5,6では対SUS剥離強度が向上し、実施例1〜4および参考例5では対SUS剥離強度および対PP剥離強度がいずれも向上した。実施例1〜4では特に良好な結果が得られた。また、実施例1〜4および参考例5,6はいずれも保持力試験において良好な結果を示した。保持力試験におけるズレ幅からわかるように、使用するアクリル系ポリマー(B)のTgが高くなると保持力は向上する傾向であった。これに対して、Tgが0℃より低いアクリル系ポリマーB7を使用した比較例2は、保持力試験において落下する結果となり、粘着力と保持力とを両立させることができなかった。
参考例13〕
アクリル系ポリマーB3の合成において、モノマーエマルションに含まれるモノマーの組成をIBXA100部に変更し(すなわち、AAを使用せず)、重合条件を表3に示すとおりとして、アクリル系ポリマーB15の水性エマルション(B15e)を得た。この水性エマルションB15eを用いた他は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、両面粘着シートを作製した。
Figure 2019026856
表3に示されるように、カルボキシル基含有モノマーを含むアクリル系ポリマー(B)を用いた実施例14〜16および実施例3は、カルボキシル基含有モノマーを含まないアクリル系ポリマーB15を用いた参考例13に比べて、より高い対SUS剥離強度を示した。カルボキシル基含有モノマーの含有割合が高くなると対SUS剥離強度は上昇する傾向であった。一方、アクリル系ポリマー(B)に代えて従来公知の粘着付与樹脂を使用した比較例4は、対ウレタンフォーム耐反撥性試験において、表3に示す各実施例に及ばない結果であった。
なお、表3に示す実施例15〜16および実施例3の粘着剤組成物を厚さ25μmのPETフィルムに乾燥後の厚さが60μmとなるように塗付し、乾燥させて形成した粘着剤層の透明性を目視で観察したところ、参考例13、実施例14、実施例3、実施例15、実施例16の順に透明性が高くなる傾向が認められた。この結果は、ΔSPがゼロに近づくにつれて相溶性が向上することを示している。

Claims (11)

  1. モノマー原料(A)の重合物であるアクリル系ポリマー(A)と、
    モノマー原料(B)の重合物であるアクリル系ポリマー(B)と、
    を含み、
    前記アクリル系ポリマー(B)のガラス転移温度は0℃以上であり、
    前記アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量は0.3×10より大きく5×10以下であり、
    前記アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は前記アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量よりも高い、水分散型粘着剤組成物。
  2. 前記モノマー原料(B)は、環状構造を有する(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の水分散型粘着剤組成物。
  3. 前記モノマー原料(B)は、カルボキシル基含有モノマーを20重量%以下の割合で含む、請求項1または2に記載の水分散型粘着剤組成物。
  4. 前記アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して前記アクリル系ポリマー(B)5〜50重量部を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の水分散型粘着剤組成物。
  5. 前記アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量は2×10未満である、請求項1から4のいずれか一項に記載の水分散型粘着剤組成物。
  6. 前記アクリル系ポリマー(B)のガラス転移温度は50℃以上120℃以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の水分散型粘着剤組成物。
  7. 前記モノマー原料(A)は、アルキル基の炭素原子数が4〜12であるアルキル(メタ)アクリレートを50重量%超の割合で含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の水分散型粘着剤組成物。
  8. 前記モノマー原料(A)は、カルボキシル基含有モノマーを10重量%以下の割合で含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の水分散型粘着剤組成物。
  9. 前記アクリル系ポリマー(A)のガラス転移温度は−20℃以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載の水分散型粘着剤組成物。
  10. 前記アクリル系ポリマー(A)のSP値をSPとし、前記アクリル系ポリマー(B)のSP値をSPとしたとき、SPとSPとの差(SP−SP)として定義される溶解度差ΔSPが−2.0(cal/cm1/2より大きく2.0(cal/cm1/2未満である、請求項1から9のいずれか一項に記載の水分散型粘着剤組成物。
  11. 請求項1から10のいずれか一項に記載の水分散型粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有する、粘着シート。
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