本発明に係る車両用制御システムの実施形態を、図面を参照しつつ説明する。以下に説明する実施形態では、車両の走行駆動源として、エンジンと電動モータ(モータジェネレータ)とを有するハイブリッド車両に搭載される各種の車載装備に対して、本発明による車両用制御システムを適用した例について説明する。しかしながら、本発明による車両用制御システムは、ハイブリッド車両における車載装備の制御に適用されるばかりでなく、エンジンのみを有する通常の車両や、電動モータのみを有する電動車両の各種の車載装備の制御に適用されても良い。また、ドメイン分けに関して説明しているが、このドメイン分けは制御システムの制御構造に密接に関係するため、必ずしも以下に説明する例と同一のドメイン分けを行う必要なく、適宜、最適なドメイン分けを行えば良い。
図1は、上述したハイブリッド車両における各種の車載装備のための車両用制御システム100の全体構成の一例をブロック図として表したものである。本実施形態に係る車両用制御システム100は、制御対象とする複数の車載装備のそれぞれの機能(役割)に応じて、複数のドメインに区分けされている。そして、それら複数のドメインにおいて、それぞれ、対応するドメインに属する車載装備の制御を統括するドメイン制御部11〜14、21〜24、31〜34が設けられている。各々のドメイン制御部11〜14、21〜24、31〜34は、同じドメインに属する装備制御部16〜19、26〜29、36〜39に対して、目標制御状態を実現するための制御目標値を出力する。装備制御部16〜19、26〜29、36〜39は、ドメイン制御部11〜14、21〜24、31〜34から出力された制御目標値に従って、対応する車載装備を制御する。
さらに、車両用制御システム100は、車両の状態、周囲環境、運転者の操作などに基づき、制御システム全体の制御目的を定めるとともに、その制御目的を達成するための目標制御状態を設定する統合制御部15を有している。統合制御部15は、設定した目標制御状態を、該当する制御目的を達成するため及び設定した目標制御状態を実現するために用いられるドメイン制御部11〜14に出力する。そして、ドメイン制御部11〜14、21〜24、31〜34は、目標制御状態に基づいて、自身のドメインに属する装備制御部16〜19、26〜29、36〜39に出力する制御目標値を算出する。このように、本実施形態では、統合制御部15が目的設定部及び目標状態設定部に相当し、ドメイン制御部11〜14、21〜24、31〜34が制御目標値算出部に相当する。
ただし、統合制御部15は、目的設定部としての機能だけを担い、ドメイン制御部11〜14が、目標状態設定部及び制御目標値算出部としての機能を担うように構成しても良い。この場合、統合制御部15が制御目的を設定すると、その制御目的を達成するために用いられるドメイン制御部11〜14に対して設定した制御目的を与える。すると、ドメイン制御部11〜14は、車両の状態、周囲環境、運転者の操作などに基づき、与えられた制御目的を達成するための目標制御状態を設定する。このとき、制御目的が複数のドメインに属する車載装備の協働した制御によって達成されるものである場合には、制御目的を与えられた複数のドメイン制御部11〜14が、相互に通信して、各ドメインでの制御の実行の有無、制御タイミング、目標制御量の分担などを調整する。
このように、本実施形態による車両用制御システム100は、制御論理構造として、統合制御部15、ドメイン制御部11〜14、21〜24,31〜34、及び装備制御部16〜19、26〜29、36〜39からなる階層化された構造を有している。
また、本実施形態に係る車両用制御システム100では、詳しくは後述するが、ドメイン制御部11〜14、21〜24,31〜34は、統合制御部15から与えられた目標制御状態を、いずれのエリアに属する車載装備の制御によって達成するかを判別し、該当するエリアに目標制御状態として振り分けるマスタドメイン制御部11〜14と、エリア目標制御状態が実現されるように、対応する装備制御部16〜19、26〜29、36〜39に制御目標値を与える、各エリアに配置されたエリアドメイン制御部21〜24、31〜34とを有している。これらの各ドメイン制御部11〜14、21〜24,31〜34は、相互に通信可能に接続されている。ただし、必ずしもエリアドメイン制御部21〜24、31〜34を設ける必要はなく、1つのドメイン制御部にて、該当するドメインに属する装備制御部の制御目標値を算出するように構成しても良い。
具体的なドメイン分けの例を、図1を参照して説明する。図1に示す例では、車両用制御システム100は、シャシドメイン、パワートレインドメイン、ボデードメイン、監視ドメインの4つのドメインに区分けされている。このように定めたドメインにより、ハイブリッド車両に搭載された多数の車載装備は、機能面で類似、関連するもの同士がグループ化される。
例えば、シャシドメインには、各車輪に設けられた油圧ブレーキを作動させるため、油圧ポンプや電磁バルブなどの油圧ブレーキ装置の構成部品を駆動するブレーキアクチュエータ、各車輪に設けられた減衰力調整可能なダンパ、電動パワーステアリング、エンジンや電動モータの回転を適切な変速比で変速して駆動軸に伝えるトランスミッション、運転者によるブレーキペダルの踏力を増幅してマスタシリンダに伝えるための負圧を発生する負圧ポンプなどの車載装備が属する。
そして、シャシドメインには、上述した車載装備を制御するためのシャシ装備制御部16、26、36が設けられている。例えば、シャシドメインには、シャシ装備制御部16、26、36として、ブレーキアクチュエータ制御部、ダンパ制御部、電動パワーステアリング制御部、トランスミッション制御部、負圧ポンプ制御部などが設けられる。なお、油圧ブレーキ装置は、前輪側と後輪側とで、それぞれ独立して、油圧を調整できるように構成されており、ブレーキアクチュエータは、左右前輪のブレーキ油圧を個別に調節可能な前輪側ブレーキアクチュエータと、左右後輪のブレーキ油圧を個別に調節可能な後輪側ブレーキアクチュエータとに分けられている。このため、ブレーキアクチュエータ制御部としても、前輪側ブレーキアクチュエータ制御部と、後輪側ブレーキアクチュエータ制御部とが設けられる。同様に、ダンパ制御部として、前輪側ダンパ制御部と、後輪側ダンパ制御部とが設けられる。
これらのシャシ装備制御部16、26、36は、原則として、シャシドメインに属する車載装備に対応して個別に設けられるが、複数の車載装備に対して共通のシャシ装備制御部を設けることも可能である。さらに、シャシ装備制御部16、26、36は、それぞれ電子制御装置(ECU)によって構成される。その際、それぞれのシャシ装備制御部16、26、36を、個別のECUによって構成しても良いし、複数のシャシ装備制御部16、26、36を共通のECUによって構成しても良い。さらに、装備制御部を構成するECUを、他のドメインの装備制御部と共用しても良い。
そして、シャシ装備制御部16、26、36は、対応するシャシドメイン制御部11、21、31から与えられた制御目標値に従って、対応する車載装備を制御する。
シャシドメイン制御部11、21、31は、マスタドメイン制御部としてのマスタシャシドメイン制御部11と、エリアドメイン制御部としてのエリアシャシドメイン制御部21、31とから構成されている。マスタシャシドメイン制御部11及びエリアシャシドメイン制御部21,31は、後述するように、車両を3つのエリアに区画した際、3つのエリアに分散して配置される。マスタシャシドメイン制御部11は、マスタドメイン制御部としての機能と、エリアドメイン制御部としての機能とを兼ね備えたものである。
マスタシャシドメイン制御部11は、マスタドメイン制御部として、統合制御部15によって設定された制御目的の下、その制御目的を達成するための目標制御状態が与えられる。マスタシャシドメイン制御部11は、与えられた目標制御状態を、いずれのエリアにて達成するかを判別し、該当するエリアにエリア目標制御状態として振り分ける。マスタシャシドメイン制御部11によって定められたエリア目標制御状態は、エリアシャシドメイン制御部21、31に与えられる。
エリアシャシドメイン制御部21、31は、与えられたエリア目標制御状態に基づき、シャシ装備制御部26、36を制御するための制御目標値を算出して、シャシ装備制御部26、36に出力する。この際、マスタシャシドメイン制御部11も、エリアドメイン制御部として、自身が属するエリアにおけるエリア目標制御状態に基づき、シャシ装備制御部16を制御するための制御目標値を算出し、シャシ装備制御部16に出力する。
例えば、マスタシャシドメイン制御部11が、統合制御部15から目標制御状態として、「自動運転での減速」の指示を受けた場合、マスタシャシドメイン制御部11は、フロントエリアのエリア目標制御状態として、「前輪側ブレーキアクチュエータ作動、前輪ダンパ減衰力増加、及びトランスミッションを低速ギヤへ切替」を定めることができる。また、リヤエリアのエリア目標制御状態として、「後輪側ブレーキアクチュエータ作動、後輪ダンパ減衰力増加」を定めることができる。このようなエリア目標制御状態に基づき、フロントエリアシャシドメイン制御部21は、前輪側ブレーキアクチュエータ制御部に対して、自動ブレーキによる減速を行うための所定の油圧を制御目標値として出力する。また、前輪ダンパ制御部に対して、減速によるノーズダイブを防止するため、所定の高減衰力を制御目標値として出力する。さらに、トランスミッション制御部に対して、減速による車速低下に見合ったギヤ比となるように、車速に対応した低速ギヤを制御目標値として出力する。
同様に、リヤエリアシャシドメイン制御部31は、後輪側ブレーキアクチュエータ制御部に対して、自動ブレーキによる減速を行うための所定の油圧を制御目標値として出力する。また、後輪ダンパ制御部に対して、減速によるノーズダイブを防止するため、後輪ダンパ制御部に対して所定の高減衰力を制御目標値として出力する。
統合制御部15が、「自動運転での減速」を目標制御状態とする場合、併せて、達成すべき減速度を指示するようにしても良いし、マスタシャシドメイン制御部11が、車両の状態や周囲環境に基づき、適切な減速度を算出しても良い。この場合、マスタシャシドメイン制御部11は、指示もしくは算出された減速度が得られるように、前輪側ブレーキアクチュエータの目標油圧と後輪側ブレーキアクチュエータの目標油圧をそれぞれ定めて、エリア目標制御状態の一部として、エリアシャシドメイン制御部21、31に与えることができる。この場合、各エリアシャシドメイン制御部21、31は、それぞれの目標油圧を前輪側及び後輪側ブレーキアクチュエータに制御目標値として与えることができる。
さらに、例えば、後述するパワートレインドメインのモータジェネレータによる回生ブレーキも併用することが目標制御状態として指示された場合、すなわち、目標制御状態が、「自動運転での減速、減速度α、回生ブレーキ併用」である場合、マスタシャシドメイン制御部11は、マスタパワートレインドメイン制御部12と通信を行い、回生ブレーキにより発生可能な減速トルクを考慮して、必要な減速度αを得るために油圧ブレーキによって発生することが必要な減速トルクを定めることができる。そして、マスタシャシドメイン制御部11は、定めた減速トルクが得られるように、前輪側及び後輪側ブレーキの目標油圧を算出して、フロント及びリヤエリアのエリア目標制御状態の一部とすることができる。
パワートレインドメインには、例えば、車両を加速させたり、減速させたり、あるいは速度を一定に保つための動力を車両に作用させる役割を担うエンジン及びモータジェネレータ(MG)、エンジン及び/又はMGが発生したトルク(駆動力)を4輪各輪に配分する役割を担う駆動力配分機構、モータジェネレータに駆動電力を供給したり、モータジェネレータが発電した電力を蓄電したりする役割を担う高圧バッテリ、低電圧バッテリの充電のために高圧バッテリが発生する高電圧を降圧して低電圧バッテリに供給するDCDCコンバータ、外部充電設備により高圧バッテリを充電するための充電器インターフェース(IF)などの車載装備が属する。さらに、パワートレインドメインには、低圧バッテリや、この低圧バッテリから各種の車載装備への給電のオン、オフを切り換えるジャンクションボックス(JB)などの車載装備が属しても良い。
なお、低圧バッテリは、車両のエンジンルーム内に設置される主低圧バッテリ、車両のラゲッジスペース(又はトランクルーム)の床下などに設置される副低圧バッテリなど複数のバッテリを含む。また、ジャンクションボックスは、エンジンルール内及びその付近に搭載された車載装備への給電のオン、オフを切り換えるためのフロントジャンクションボックス(JB)と、主として車室内及びその付近に搭載された車載装備への給電のオン、オフを切り換えるセンターJBと、ラゲッジスペース内又はその付近に搭載された車載装備への給電のオン、オフを切り換えるリヤJBとを含む。これらのジャンクションボックスは、いずれも、各車載装備へ給電するための電源として、主低圧バッテリと副低圧バッテリとのいずれかを選択することができるように構成されている。
パワートレインドメインには、上述した車載装備を制御するためのパワートレイン装備制御部17、27、37が設けられている。例えば、パワートレインドメインには、パワートレイン装備制御部17、27、37として、エンジン制御部、MG制御部、駆動力配分機構制御部、高圧バッテリ制御部、DCDCコンバータ制御部、充電器IF制御部、主低圧バッテリ制御部、副低圧バッテリ制御部、フロントJB制御部、センターJB制御部、リヤJB制御部などが設けられる。そして、パワートレイン装備制御部17、27、37は、対応するパワートレインドメイン制御部12、22、32から与えられた制御目標に従って、対応する車載装備を制御する。
パワートレインドメイン制御部12、22、32は、マスタドメイン制御部としてのマスタパワートレインドメイン制御部12と、エリアドメイン制御部としてのエリアパワートレインドメイン制御部22、32とから構成されている。マスタパワートレインドメイン制御部12及びエリアパワートレインドメイン制御部22、32は、車両を3つのエリアに区画した際、3つのエリアに分散して配置される。マスタパワートレインドメイン制御部12は、マスタドメイン制御部としての機能と、エリアドメイン制御部としての機能とを兼ね備えている。
マスタパワートレインドメイン制御部12は、マスタドメイン制御部として、統合制御部15によって設定された制御目的の下、その制御目的を達成するための目標制御状態が与えられる。マスタパワートレインドメイン制御部12は、与えられた目標制御状態を、いずれのエリアにて達成するかを判別し、該当するエリアにエリア目標制御状態として振り分ける。マスタパワートレインドメイン制御部12によって定められたエリア目標制御状態は、エリアパワートレインドメイン制御部22、32に与えられる。
エリアパワートレインドメイン制御部22、32は、与えられたエリア目標制御状態に基づき、パワートレイン装備制御部27、37を制御するための制御目標値を算出して、パワートレイン装備制御部27、37に出力する。この際、マスタパワートレインドメイン制御部12も、エリアドメイン制御部として、自身が属するエリアにおけるエリア目標制御状態に基づき、パワートレイン装備制御部17を制御するための制御目標値を算出し、パワートレイン装備制御部17に出力する。
例えば、マスタパワートレインドメイン制御部12が、統合制御部15から目標制御状態として、「自動運転での加速、加速度β」の指示を受けた場合、マスタパワートレインドメイン制御部12は、フロントエリアのエリア目標制御状態として、「エンジン駆動(駆動トルクa)、MG駆動(駆動トルクb)」を定めることができる。すなわち、マスタパワートレインドメイン制御部12は、目標とする加速度βが達成できるように、エンジンにて分担すべき駆動トルクaと、MGにて分担すべき駆動トルクbとを設定して、エリア目標制御状態に含めることができる。
なお、加速度βは、マスタパワートレインドメイン制御部12にて算出しても良い。また、マスタパワートレインドメイン制御部12は、車両の速度域が低速域であったり、高圧バッテリの充電量が不足していたりする場合には、エンジン駆動とMG駆動とのいずれかのみをエリア目標制御状態として設定しても良い。さらに、マスタパワートレインドメイン制御部12は、車両加速時の車両挙動の安定化や、効率的な車両の加速のために、ミドルエリアのエリア目標制御状態として、「後輪への配分駆動トルク増加」を定めても良い。マスタパワートレインドメイン制御部12は、モータジェネレータに駆動トルクを発生させる場合には、リヤエリアのエリア目標制御状態として、「高圧バッテリからモータジェネレータへの給電」を定める。
このようなエリア目標制御状態に基づき、例えば、フロントエリアパワートレインドメイン制御部22は、エンジン制御部に対して、制御目標値として駆動トルクaを出力し、MG制御部に対して、制御目標値として駆動トルクbを出力する。また、ミドルエリアパワートレインドメイン制御部でもあるマスタパワートレインドメイン制御部12は、目標とする加速度に応じて、後輪へ配分する駆動トルクの割合を定め、駆動力配分機構制御部に対して制御目標値として出力する。さらに、リヤエリアパワートレインドメイン制御部32は、高圧バッテリ制御部に対して、MGへの給電を許可する状態とすることを制御目標値として出力する。
ボデードメインには、例えば、ヘッドライトやポジションランプなどの前方灯火、歩行者等を保護するためにボンネットに設けられた外部エアバッグ、エンジンルームへの外気導入孔を開閉するシャッター、ドアのロック、アンロックを切り換えるモータや窓を開閉するモータ、シートポジションを調節するモータ、車室内の空調を行うエアコン、車両の乗員を保護するための乗員エアバッグ、リヤゲートを自動開閉するためのモータ、ブレーキランプなどの後方灯火などの車載装備が属する。従って、このボデードメインには、ボデー装備制御部18、28、38として、前方灯火制御部、外部エアバッグ制御部、シャッター制御部、ドア制御部、シート制御部、エアコン制御部、乗員エアバッグ制御部、リヤゲート制御部、後方灯火制御部などが設けられる。そして、ボデー装備制御部18、28、38は、対応するボデードメイン制御部13、23、33から与えられた制御目標値に従って、対応する車載装備を制御する。
ボデードメイン制御部13、23、33は、マスタドメイン制御部としてのマスタボデードメイン制御部13と、エリアドメイン制御部としてのエリアボデードメイン制御部23、33とから構成されている。マスタボデードメイン制御部13及びエリアボデードメイン制御部23、33は、車両を3つのエリアに区画した際、3つのエリアに分散して配置される。マスタボデードメイン制御部13は、マスタドメイン制御部としての機能と、エリアドメイン制御部としての機能とを兼ね備えている。マスタボデードメイン制御部13は、マスタドメイン制御部として、統合制御部15によって設定された制御目的の下、その制御目的を達成するための目標制御状態が与えられる。マスタボデードメイン制御部13は、与えられた目標制御状態を、いずれのエリアにて達成するかを判別し、該当するエリアにエリア目標制御状態として振り分ける。マスタボデードメイン制御部13によって定められたエリア目標制御状態は、エリアボデードメイン制御部23、33に与えられる。
エリアボデードメイン制御部23、33は、与えられたエリア目標制御状態に基づき、ボデー装備制御部28、38を制御するための制御目標値を算出して、ボデー装備制御部28、38に出力する。この際、マスタボデードメイン制御部13も、エリアドメイン制御部として、自身が属するエリアにおけるエリア目標制御状態に基づき、ボデー装備制御部18を制御するための制御目標値を算出し、ボデー装備制御部18に出力する。
統合制御部15からの目標制御状態に基づくボデードメインにおける制御例は、基本的に、上述したシャシドメインにおける制御例やパワートレインドメインにおける制御例と同様であるため、説明を省略する。
監視ドメインには、例えば、車両前方の障害物を検出するためにフロントグリルやフロントバンパに設置されるレーザレーダ及びミリ波レーダ、外気温度を検出する外気温度センサ、車両後方の映像を撮影するためにリアガラスの室内側に設置されるリヤカメラ、車両後方の障害物を検出するためにリヤバンパなどに設置されるミリ波レーダ、乗員が保持する携帯型キーが正規のものであるか否かを認証するために、携帯型キーと通信する通信装置などの車載装備が属する。従って、監視ドメインには、監視装備制御部19、29、39として、レーザレーダ制御部、フロントミリ波レーダ制御部、温度センサ制御部、リヤカメラ制御部、リヤミリ波レーダ制御部、通信装置制御部(認証装置)などが設けられる。そして、監視装備制御部19、29、39は、対応する監視ドメイン制御部14、24、34から与えられた制御目標に従って、対応する車載装備を制御する。
監視ドメイン制御部14、24、34は、マスタドメイン制御部としてのマスタ監視ドメイン制御部14と、エリアドメイン制御部としてのエリア監視ドメイン制御部24、34とから構成されている。マスタ監視ドメイン制御部14及びエリア監視ドメイン制御部24、34は、車両を3つのエリアに区画した際、3つのエリアに分散して配置される。マスタ監視ドメイン制御部14は、マスタドメイン制御部としての機能と、エリアドメイン制御部としての機能とを兼ね備えている。マスタ監視ドメイン制御部14は、マスタドメイン制御部として、統合制御部15によって設定された制御目的の下、その制御目的を達成するための目標制御状態が与えられる。マスタ監視ドメイン制御部14は、与えられた目標制御状態を、いずれのエリアにて達成するかを判別し、該当するエリアにエリア目標制御状態として振り分ける。マスタ監視ドメイン制御部14によって定められたエリア目標制御状態は、エリア監視ドメイン制御部24、34に与えられる。
エリア監視ドメイン制御部24、34は、与えられたエリア目標制御状態に基づき、監視装備制御部29、39を制御するための制御目標値を算出して、監視装備制御部29、39に出力する。この際、マスタ監視ドメイン制御部14も、エリアドメイン制御部として、自身が属するエリアにおけるエリア目標制御状態に基づき、監視装備制御部19を制御するための制御目標値を算出し、監視装備制御部19に出力する。
統合制御部15からの目標制御状態に基づく監視ドメインにおける制御例も、基本的に、上述したシャシドメインにおける制御例やパワートレインドメインにおける制御例と同様であるため、説明を省略する。
次に、上述した車載装備、装備制御部16〜19,26〜29,36〜39及びドメイン制御部11〜14、21〜24、31〜34の車両への配置例について説明する。
上述した各種の車載装備は、各車載装備に求められる役割や搭載上のスペースの関係から、車両の前部、中央部、後部などの各部に配置される。このため、ドメイン制御部11〜14、21〜24、31〜34を車両の所定の場所に集中的に配置すると、全体として、各車載装備までの通信配線の長さが長くなってしまい、車両内における取り回しが煩雑になってしまうことが懸念される。
そこで、本実施形態による車両用制御システム100では、車両を少なくとも2つのエリアに分割する。例えば、図2には、車両を、フロントエリア50、ミドルエリア60、及びリヤエリア70の3つのエリアに分割した例を示している。ただし、分割数は、図2の例のように3つに限定される訳ではない。例えば、車両を前方エリアと後方エリアのように2つのエリアに分割しても良い。また、前方右側エリア、前方左側エリア、後方右側エリア、後方左側エリアのように、4つのエリアに分割しても良い。4つのエリアに分割する場合、図2に示す分割例において、フロントエリアをさらに左右2つのエリアに分割しても良い。さらに、車両のサイズに応じて、5つのエリアや6つのエリアに分割しても良い。
このようにして、車両を少なくとも2つのエリアに分割することにより、複数の車載装備は、その配置場所に応じて、分割されたいずれかのエリアに振り分けられる。その車載装備の振り分けに応じて、該当する車載装備を制御する装備制御部16〜19、26〜29、36〜39も同じエリアに属するように分散して配置される。さらに、各ドメイン制御部11〜14、21〜24、31〜34の構成要素である、マスタドメイン制御部11〜14、及びエリアドメイン制御部21〜24、31〜34も、制御目標値を出力すべき対応する装備制御部16〜19、26〜29、36〜39と同じエリアに属するように分散して配置される。
この結果、関連するエリアドメイン制御部(エリアドメイン制御部の機能を備えたマスタドメイン制御部含む)11〜14、21〜24、31〜34と、装備制御部16〜19、26〜29、36〜39と、車載装備とを同じエリアに配置することができる。従って、配線数の多いエリアドメイン制御部−装備制御部−車載装備を接続する通信配線の長さを短縮することが可能となる。その結果、車両における通信配線の取り回しの煩雑さを軽減することができる。
図1に示す例では、各ドメインのマスタドメイン制御部11〜14は、車両のミドルエリア60に配置された共通のマスタECU10内に構築され、相互に通信が可能に構成されている。さらに、マスタECU10内には、統合制御部15も構築され、各マスタドメイン制御部11〜14と通信可能に構成されている。また、各ドメインのエリアドメイン制御部21〜24は、車両のフロントエリア50に配置された共通のフロントエリアECU20内に構築され、相互に通信が可能に構成されている。同様に、各ドメインのエリアドメイン制御部31〜34は、車両のリヤエリア70に配置された共通のリヤエリアECU30内に構築され、相互に通信が可能に構成されている。しかしながら、統合制御部15及び各ドメイン制御部11〜14、21〜24、31〜34は、それぞれ独立したECUによって構成されても良い。また、マスタドメイン制御部11〜14は、フロントエリアもしくはリヤエリアに配置されても良い。さらに、それぞれのドメインのマスタドメイン制御部11〜14が異なるエリアに配置されても良い。
図3に、装備制御部16〜19、26〜29、36〜39の各エリア50、60、70への配置例を示す。
図3に示す例では、シャシドメインにおいて、フロントエリア50に、装備制御部26として、前輪側ブレーキアクチュエータ制御部、左右前輪のダンパの減衰力を制御する前輪ダンパ制御部、電動パワーステアリング制御部、トランスミッション制御部などが配置されている。シャシドメインのミドルエリア60には、装備制御部16として、負圧ポンプ制御部が配置されている。この負圧ポンプ制御部は、例えば、車両の運転車が手動にて車両の運転操作を行っている場合に、他車両等との衝突の虞が生じた緊急時に、運転者によるブレーキペダルの踏込力が弱くても、より強い制動力を作用させることができるように、負圧ポンプを用いて運転者のブレーキペダルの踏込を補助する制御を実行する。また、シャシドメインのリヤエリア70には、装備制御部36として、後輪側ブレーキアクチュエータ制御部、後輪ダンパ制御部が配置されている。
パワートレインドメインにおいては、フロントエリア50に、装備制御部27として、エンジン制御部、MG制御部、主低圧バッテリ制御部、及びフロントJB制御部が配置されている。ミドルエリア60には、装備制御部17として、駆動力配分機構制御部及びセンターJB制御部が配置されている。また、リヤエリア70には、装備制御部37として、高圧バッテリ制御部、DCDCコンバータ制御部、充電器IF制御部、副低圧バッテリ制御部、及びリヤJB制御部が配置されている。
ボデードメインでは、フロントエリア50に、装備制御部28として、前方灯火制御部、前方外部エアバッグ制御部、及びシャッター制御部が配置されている。ミドルエリア60には、装備制御部18として、ドア制御部、シート制御部、エアコン制御部、乗員エアバッグ制御部が配置されている。また、リヤエリア70には、装備制御部38として、リヤゲート制御部、後方灯火制御部、後方外部エアバッグ制御部が配置されている。
監視ドメインでは、フロントエリア50に、装備制御部29として、レーザレーダ制御部、フロントミリ波レーダ制御部が配置されている。ミドルエリア60には、装備制御部19として、温度センサ制御部、通信装置制御部が配置されている。リヤエリア70には、装備制御部39として、リヤカメラ制御部、リヤミリ波レーダ制御部が配置されている。
また、本実施形態に係る車両用制御システム100には、図1に示すように、バックアップECU100が設けられている。このバックアップECU40は、通信線を介して、マスタECU10、フロントエリアECU20、及びリヤエリアECU30と接続されており、相互に通信可能となっている。また、バックアップECU40は、不揮発性メモリ41を有しており、その不揮発性メモリ41に、各ドメインにおける、アプリケーションやデータなどのソフトウエアを含む初期制御情報をそれぞれ記憶している。このバックアップECU40が保有する初期制御情報は、各々のドメインにて制御機能の変更や追加のためにソフトウエアの更新などが行われても書き換えられることはなく、車両用制御システム100の初期状態に対応した制御情報(初期制御情報)のまま維持される。
ここで、統合制御部15が設定する制御目的、及びその制御目的を実現するための目標制御状態について、具体例に基づき説明する。
統合制御部15が定める制御目的としては、例えば、「自動運転にて、一般道で前走車に追従」、「自動運転にて、一般道で前方交差点を右折」、「自動運転にて、高速道で一定速走行」、「自動運転にて、高速道で前走車に追従」、「自動運転にて、高速道で右側車線に車線変更」、「運転支援として、前方車及び/又は後方車との車間警告」、「運転支援として、自動ブレーキ作動」などが挙げられる。
そして、この制御目的を達成するための目標制御状態として、統合制御部15は、例えば、「自動運転での減速」、「自動運転での加速」、「自動運転での車速維持」、「自動運転での停止」、「自動運転での発進」、「自動運転による交差点での右折準備」、「自動運転による交差点での右折実行」、「自動運転での車線変更準備」、「自動運転での車線変更実行」、「運転支援による自動ブレーキでの減速」などを設定する。
例えば、自車両が直線道路を走行している状況において、「一般道で前走車に追従」との制御目的が設定されている場合、統合制御部15では、道路地図や、前走車との相対的な位置関係から、前走車が自車両と同じ走行車線を走行しているか否かを判定する。この際、同一走行車線に前走車が存在しないと判定すると、統合制御部15は、目標制御状態を「自動運転での車速維持」に設定する。一方、前走車が同一の走行車線を走行していると判定した場合には、追従対象となる前走車との車間距離の変化や相対速度の変化に応じて、当該前走車に追従するためには、加速が必要であるか、減速が必要であるか、車速を一定に維持することが必要であるかを判定する。統合制御部15は、その判定結果に基づいて、目標制御状態を「自動運転での減速」、「自動運転での加速」、「自動運転での車速維持」のいずれかに設定する。
そして、例えば、「自動運転での減速」との目標制御状態は、マスタシャシドメイン制御部11、マスタパワートレインドメイン制御部12、マスタボデードメイン制御部13、及びマスタ監視ドメイン制御部14へ与えられる。マスタシャシドメイン制御部11は、この目標制御状態を受けて、上述したように、フロント及びリヤエリアのエリア目標制御状態を定める。このエリア目標制御状態に基づき、各々のエリアシャシドメイン制御部21、31が、前輪側ブレーキアクチュエータ、前輪ダンパ、電動パワーステアリング、トランスミッション、後輪側ブレーキアクチュエータ、後輪ダンパの制御目標値を算出して、それぞれの装備制御部へ出力する。
また、マスタパワートレインドメイン制御部12は、「自動運転での減速」との目標制御状態を受けた場合、フロントエリアのエリア目標制御状態として、例えば「エンジン燃料カット、回生ブレーキ作動」を定める。このエリア目標制御状態に基づき、エリアパワートレインドメイン制御部22は、エンジン制御部及びMG制御部に対する制御目標値(例えば、燃料噴射停止、目標回生エネルギー)を算出する。さらに、マスタボデードメイン制御部13は、「自動運転での減速」との目標制御状態を受けたとき、自車両の減速度が所定値以上である場合には、リヤドメインのエリア目標制御状態として、「ブレーキランプ点灯」を定める。このエリア目標制御状態に基づき、エリアボデードメイン制御部33は、後方灯火制御部に対する制御目標値(例えば、ブレーキランプオン)を算出する。そして、マスタ監視ドメイン制御部14は、「自動運転での減速」との目標制御状態を受けると、前走車の継続的な監視のために、フロントエリアのエリア目標制御状態を「前走車の追跡」に定める。このエリア目標制御状態に基づき、エリア監視ドメイン制御部24は、レーザレーダ制御部及びフロントミリ波レーダ制御部に対する制御目標値(例えば、所定時間毎の前走車の検出)を算出する。
一方、統合制御部15が、「自動運転での加速」を目標制御状態として設定した場合には、その目標制御状態は、例えば、マスタシャシドメイン制御部11、マスタパワートレインドメイン制御部12、及びマスタ監視ドメイン制御部14へ与えられる。マスタシャシドメイン制御部11は、この目標制御状態を受けて、例えば、フロントエリアのエリア目標制御状態として、「トランスミッションの高速ギヤへの切替」を設定する。このエリア目標制御状態に基づき、フロントエリアシャシドメイン制御部21は、車速の上昇に見合った高速ギヤを、トランスミッション制御部に対する制御目標値として出力する。また、マスタパワートレインドメイン制御部12は、「自動運転での加速」との目標制御状態を受けた場合、上述したように、フロントエリアのエリア目標制御状態を定める。このエリア目標制御状態に基づき、フロントエリアパワートレインドメイン制御部22が、エンジン及びモータジェネレータの制御目標値を算出して、それぞれの装備制御部へ出力する。そして、マスタ監視ドメイン制御部14は、「自動運転での加速」との目標制御状態を受けると、「自動運転での減速」と同様に、前走車の継続的な監視のために、フロントエリアのエリア目標制御状態を「前走車の追跡」に定める。このエリア目標制御状態に基づき、エリア監視ドメイン制御部24は、レーザレーダ制御部及びフロントミリ波レーダ制御部に対する制御目標値(例えば、所定時間毎の前走車の検出)を算出する。
また、統合制御部15が、「自動運転での車速維持」を目標制御状態として設定した場合には、その目標制御状態は、例えばマスタパワートレインドメイン制御部12、及びマスタ監視ドメイン制御部14へ与えられる。マスタパワートレインドメイン制御部12は、この目標制御状態を受けて、フロントエリアのエリア目標制御状態として、例えば「エンジントルク維持、モータジェネレータトルク維持」を設定する。マスタ監視ドメイン制御部14は、「自動運転での車速維持」との目標制御状態を受けて、フロントエリアのエリア目標制御状態として、「前走車の追跡」を設定する。
なお、車両が上り坂を走行しているときには、「自動運転での減速」や「自動運転での車速維持」が目標制御状態として設定された場合であっても、フロントエリアマスタパワートレインドメイン制御部22は、制御目標値としてエンジン及び/又はMGの駆動トルクを算出する場合があり得る。逆に、車両が下り坂を走行している場合には、「自動運転での加速」や「自動運転での車速維持」が目標制御状態に設定された場合であっても、エリアシャシドメイン制御部21、31は、制御目標値として前輪側及び後輪側ブレーキアクチュエータの作動油圧を算出する場合があり得る。
次に、図4のフローチャートを参照しつつ、車両用制御システム100における制御処理の一例について説明する。この図4のフローチャートに示す処理は、所定時間毎に繰り返し実行される。
図4のフローチャートのステップS100では、各種のセンサや操作スイッチからの信号に基づき、車両の状態(速度、エンジン稼働状態、モータジェネレータ稼働状態など)、周囲環境(道路形状、道路勾配、車線数、前方及び後方の他車両を含む障害物など)、及び乗員(運転者)による操作状態が検出される。続くステップS110において、ステップS100での検出結果に基づいて、統合制御部15が、制御システム全体としての制御目的を設定する。さらに、統合制御部15は、設定した制御目的を達成するための目標制御状態を設定する。
ステップS120では、統合制御部15から目標制御状態を与えられたマスタドメイン制御部11〜14が、その目標制御状態に基づき、各エリアのエリア目標制御状態を設定する。そして、ステップS130において、各エリアドメイン制御部11〜14、21〜24、31〜34が、各々のエリア目標制御状態に基づき、各装備制御部16〜19、26〜29、36〜39に対する制御目標値を算出する。このようにして算出された制御目標値が、ステップS140において、各エリアドメイン制御部11〜14、21〜24、31〜34から、対応する各装備制御部16〜19、26〜29、36〜39へと出力される。そして、ステップS150において、各装備制御部16〜19、26〜29、36〜39は、制御目標値に従って、対応する車載装備を制御する。
ところで、近年では、車両が市場に投入された後に、点検等のためにディーラーに持ち込まれたとき、ソフトウエアの更新により装備制御部の制御機能をより高度なものとしたり、新たな制御目的の下、装備制御部に新たな制御機能を追加したり、その制御機能を実現するための必要となる車載装備を追加したりすることがある。装備制御部や車載装備の追加が必要なく、単に、既存の装備制御部の制御機能の高度化だけを行う場合には、例えば、オンラインでソフトウエアを更新することも行われている。
このようなソフトウエアの更新や、装備制御部の追加などにより、制御機能の高度化のための変更や新規機能の追加が行われた場合、例えば、更新されたソフトウエアの不具合によって、あるいは更新されたソフトウエアにより既存のソフトウエアの実行が阻害されるなどして、実際に制御を実行する際になんらかの異常が発生する可能性も否定できない。また、ソフトウエアの追加や更新が行われなくとも、車両が予期しなかった特殊な状況に置かれた場合、車両用制御システム100による制御に異常が生じる可能性もゼロではない。
特に、本実施形態に係る車両用制御システム100のように、階層化された制御構造を採用する場合には、一旦、異常が生じてしまうと、その異常原因の特定が困難になりやすい。
そこで、本実施形態による車両用制御システム100では、統合制御部15によって定められる制御目的に関する情報の経時的変化、統合制御部15によって設定される目標制御状態に関する情報の経時的変化、及び車載装備の作動状態に関する情報の経時的変化を記録する記録部を設けた。従って、記録部に記録された情報の経時的変化を対比することにより、いずれの箇所で不具合が生じたのかの特定が容易に行い得る。
図5は、上述した記録部の具体的な態様を説明するための図である。なお、図5においては、統合制御部15やドメイン制御部12が備える機能をブロックとして示しているが、説明の便宜のため、パワートレインドメインのドメイン制御部だけを図示し、他のドメイン制御部は図示を省略している。しかしながら、他のドメインのドメイン制御部にも、パワートレインドメイン制御部と同様の記録部が設けられる。さらに、図5においては、パワートレインドメインのドメイン制御部を、マスタドメイン制御部とエリアドメイン制御部とを区分けせずに、1つのドメイン制御部12として示している。
統合制御部15は、車両の状態、周囲環境、運転者の操作などに基づき、制御システム全体の制御目的を定める制御目的設定部15aと、その制御目的を達成するための目標制御状態を設定する目標制御状態設定部15bとを備えている。制御目的設定部15aによって設定された制御目的は、目標制御状態設定部15bに加えて、バックアップECU40のシナリオ記録部40aに与えられる。また、目標制御状態設定部15bによって設定された目標制御状態は、パワートレインドメイン制御部12に与えられ、目標制御状態保持部12aに保持される。
バックアップECU40は、シナリオ記録部40a、目的−制御実施ドメイン関係記憶部40b、及び制御実施ドメイン記録部40cを備えている。シナリオ記録部40aは、統合制御部15の制御目的設定部15aによって設定される制御目的が変化する毎に、その変化した制御目的を記録する。これにより、シナリオ記録部40aには、制御目的の経時的変化が、シナリオとして記録される。さらに、シナリオ記録部40aは、変化後の制御目的を記録するとき、併せて時間情報も記録する。この時間情報としては、例えば、他の記録部が使用するカウンタと同期されたカウンタのカウント値を用いることができる。
目的−制御実施ドメイン関係記憶部40bには、制御目的別に、それぞれの制御目的を達成するために、制御が行われる制御実施ドメインが記憶されている。この制御実施ドメインとして、単なるドメイン名を記憶しても良いが、実際に装備制御部に対して制御目標値を出力するドメイン制御部(フロントエリアドメイン制御部、マスタドメイン制御部、リヤエリアドメイン制御部のいずれか)を記憶するようにしても良い。制御実施ドメイン記録部40cは、制御目的が変化したとき、目的−制御実施ドメイン関係記憶部40bの記憶内容を参照して、変化後の制御目的に対応する制御実施ドメインを決定し、その決定した制御実施ドメインを記録する。
これらシナリオ記録部40a及び制御実施ドメイン記録部40cが、制御目的に関する情報の経時的変化を記録する記録部に該当する。
パワートレインドメイン制御部12は、目標制御状態保持部12a、状態移行記録部12b、目的候補移行記録部12c、状態−目的関係記憶部12d、使用装備決定部12e、使用装備記録部12f、及び制御目標値算出部12gを備えている。目標制御状態保持部12aが保持する目標制御状態は、統合制御部15の目標制御状態設定部15bが新たな目標制御状態を設定するごとに更新される。すなわち、目標制御状態保持部12aは、常に、目標制御状態設定部15bによって設定される最新の目標制御状態を保持している。
状態移行記録部12bは、目標制御状態保持部12aに保持される目標制御状態が更新される毎に、その更新後の目標制御状態を記録する。これにより、状態移行記録部12bには、目標制御状態の経時的変化が記録される。さらに、状態移行記録部12bは、更新された目標制御状態を記録するとき、併せて時間情報も記録する。
状態−目的関係記憶部12dには、種々の目標制御状態の変化のパターンに対して、その際に設定される可能性がある制御目的が記憶されている。目的候補移行記録部12cは、目標制御状態が更新されると、状態移行記録部12bに記憶されている目標制御状態の経時的変化から、目標制御状態の変化パターンを抽出する。この変化パターンの抽出では、例えば一定期間の目標制御状態の経時的変化から変化パターンを抽出しても良いし、目標制御状態が所定回数変化する分の経時的変化から変化パターンを抽出しても良い。そして、目的候補移行記録部12cは、目標制御状態の変化パターンを抽出すると、状態−目的関係記憶部12dを参照して、目標制御状態の変化パターンに対応する制御目的の候補を選択して、記録する。この際、複数の制御目的の候補が選択された場合には、選択された複数の制御目的の候補を記録する。ただし、複数の制御目的の候補が選択された場合、他のドメイン制御部における目的候補移行記録部での選択結果を参照して、可能性が低い制御目的の候補は記録対象から除外するようにしても良い。さらに、目的候補移行記録部12cは、制御目的の候補を記録したとき、併せて時間情報も記録する。
使用装備決定部12eは、目標制御状態保持部12aに保持されている目標制御状態を実現するために使用する車載装備を決定する。使用装備決定部12eにより決定された車載装備は、使用装備記録部12fに与えられ、記録される。使用装備記録部12fは、車載装備の記録を行うとき、併せて時間情報も記録する。
これら状態移行記録部12b、目的候補移行記録部12c及び使用装備記録部12fが、目標制御状態に関する情報の経時的変化を記録する記録部に該当する。
また、使用装備決定部12eにより決定された車載装備は、制御目標値算出部12gにも与えられる。制御目標値算出部12gは、目標制御状態や車両の状態などに基づいて、決定された車載装備を制御する装備制御部に対する制御目標値を算出する。制御目標値算出部12gによって算出された制御目標値は、それぞれの装備制御部へ与えられる。
制御目標値が与えられた装備制御部は、その制御目標値に従って、対応する車載装備を制御する。その際、それぞれの装備制御部は、制御した結果としての車載装備の動作状態を、各種のセンサなどを用いて検出して記録する記録部を備えている。例えば、図5に示す例では、装備制御部であるMG制御部27aは、車載装備としてのモータジェネレータを制御目標値に従って制御しつつ、モータジェネレータの動作状態として、回転数、通電電流、温度を検出して記憶する記録部27a1を有している。そして、MG制御部27aは、この動作状態の検出、記録を行う毎に、記録部27a1に、そのときの時間情報も併せて記録する。また、図1に示す例では、エンジン制御部27bは、エンジンの動作状態として、回転数、吸入空気量、冷却水温度などを検出して記録する記録部27b1を有する。バッテリ制御部37aは、高圧バッテリの動作状態として、SOC、SOH、温度などを検出して記録する記録部37a1を有する。なお、装備制御部は、自身の記録部に、与えられた制御目標値も記録しておくようにしても良い。
このように、本実施形態に係る車両用制御システム100は、統合制御部15、ドメイン制御部12、及び装備制御部27a、27b、37aに階層化されているが、それぞれの階層で、種々の情報が記録されるように構成されている。このため、なんらかの異常が生じた場合には、それぞれの階層の記録部に記録された情報を対比することで、いずれの階層での処理に異常が生じたか、異常発生の原因となった箇所を容易に特定することができる。
なお、上述した例では、ドメイン制御部に設けた目的候補移行記録部が、目標制御状態の経時的変化に基づき、上位の統合制御部15において設定される制御目的の候補を推定して記録するように構成された。同様の主旨で、バックアップECU40や装備制御部27a、27b,37aにも、他の階層において設定、算出される制御内容を推定して、記記録する記録部を設けても良い。例えば、バックアップECU40において、設定された制御目的から、各ドメインの目標制御状態や使用される車載装備を推定して記録する記録部を設けても良い。その場合、バックアップECU40には、制御目的と目標制御状態および/または使用装備との対応関係を記憶した記憶部が設けられる。また装備制御部において、与えられた制御目標値から、ドメイン制御部の目標制御状態の候補を推定して記録する記録部を設けても良い。その場合、装備制御部には、制御目標値と目標制御状態との対応関係を記憶した記憶部が設けられる。
以下、車両用制御システム100において実行される、各階層での情報の記録、及び記録した情報に基づく異常の検出を行うための処理の一例を図6〜図8のフローチャートを用いて説明する。
図6のフローチャートは、バックアップECU40によって所定周期毎に繰り返し実行される処理を示している。まずステップS200において、統合制御部15において設定された制御目的を取得する。続くステップS210では、ステップS200で取得した制御目的が、以前の制御目的から変更されたか否かを判定する。制御目的が変更されたと判定した場合、ステップS220の処理に進み、制御目的が変更されていないと判定した場合、図6のフローチャートに示す処理を一旦終了する。
ステップS220では、時間情報を記録し、ステップS230では、変更された制御目的を記録する。このため、バックアップECU40には、制御目的の経時的変化と、制御目的が変化したタイミングを示す時間情報とが記録される。ステップS220とS230とが、図5におけるシナリオ記録部40aに相当する。
ステップS240では、予めバックアップECU40に記憶されている、制御目的と制御実施ドメインとの関係を参照して、変更された制御目的を達成するために、制御が行われる制御実施ドメインを特定する。そして、ステップS250において、特定した制御実施ドメインを記録する。ステップS240とS250とが、図5における制御実施ドメイン記録部40cに相当する。なお、制御実施ドメインを特定したタイミングを示す時間情報は、ステップS220で記録された時間情報が兼ねる。
ステップS260では、制御目的と制御結果が不整合であり、緊急に対処すべき異常が生じたか否かを判定する。例えば、制御目的が、「自動運転にて、高速道で前走車に追従」であるにも係わらず、車両が停止してしまった場合や、制御目的が、「自動運転にて、一般道で前走車に追従」である場合に、所定の基準時間を超えて自車の速度が変化しない場合などは、緊急に対処すべき異常が生じたと判定する。ステップS260にて制御目的と制御結果が不整合と判定した場合には、ステップS270の処理に進む。ステップS270では、異常時処理を実行する。この異常時処理として、バックアップECU40は、車両が置かれた状態に応じて、制御システム100をリセットしたり、制御システム100に退避走行を指示したりする。また、整合していないと判定された制御目的が、車上における制御機能の追加もしくは変更に関係するものである場合、バックアップECU40は、異常時処理として、自身が有する初期制御情報を用いて、制御システム100の制御情報を初期化したりする。
次に、図7のフローチャートを用いて、ドメイン制御部12で実行される処理について説明する。図7のフローチャートに示す処理も、ドメイン制御部12において、所定周期毎に繰り返し実行される。
最初のステップS300では、統合制御部15において設定された目標制御状態を受領して保持する。続くステップS310では、ステップS300で受領した目標制御状態が、以前の目標制御状態から変化したか否かを判定する。目標制御状態が変化したと判定した場合、ステップS320の処理に進み、目標制御状態が変化していないと判定した場合、ステップS350の処理に進む。
ステップS320では、変化した後の目標制御状態を記録し、さらにステップS330において、時間情報を記録する。これらステップS320とS330とが、図5における状態移行記録部12bに相当する。そして、ステップS340では、予めドメイン制御部12に記憶されている、目標制御状態の変化パターンと制御目的候補との関係を参照して、目標制御状態の変化パターンに対応する制御目的の候補を推定する。
一方、ステップS350では、目標制御状態は変化していないが、制御目的が変化した可能性が大きいか否かを、目標制御状態以外の各種の情報(車両の状態、周囲環境など)に基づいて判定する。目標制御状態は変化していないが、制御目的が変化するケースとしては、例えば、高速道路で前走車追従との目的が、一般道での前走車追従に変化しても、目標制御状態は車速維持で変化しない場合などが該当する。この場合、車両が走行する道路の種別や、目標車速に対する車速の変動の大きさなどから、制御目的が変化した可能性が大きいと判定することができる。制御目的が変化した可能性が大きいと判定した場合にはステップS360の処理に進み、その可能性は小さいと判定した場合にはステップS400の処理に進む。ステップS360では、車両状態などに基づき、変化後の制御目的の候補を推定する。
そして、ステップS370において、ステップS340又はS360にて推定した制御目的の候補を記録する。すなわち、ステップS340、S360、及びS370が、図5における目的候補移行記録部12cに相当する。この際、複数の制御目的の候補が推定された場合には、推定された制御目的のすべての候補を記録する。ステップS380では、制御目的の候補が記録されたタイミングを示す時間情報を記録する。さらに、ステップS390では、制御目的候補別に定められた中間データの記録を行う。この中間データは、各々の制御目的が定められた場合に、その制御目的の下で行われる制御の様子が容易に把握可能なデータとして予め定められたものである。例えば、制御目的が高速道路での前走車追従の場合、目標車速として演算されたデータが中間データとされ、制御目的が一般道での前走車追従の場合、目標加減速度として演算されたデータが中間データとされる。なお、複数の制御目的の候補が推定された場合には、それぞれの制御目的の候補に対応する中間データが記録される。また、中間データは、新たな制御目的の候補が推定されるまで、継続的に検出されて記録される。
ステップS400では、ステップS300において受領し保持している目標制御状態を実現するために使用する車載装備を決定する。このステップS400が、図5における使用装備決定部12eに相当する。ステップS410では、ステップS400にて決定された使用装備が、以前の使用装備から変更されたか否かを判定する。以前の使用装備から変更されたと判定した場合にはステップS420の処理に進み、以前の使用装備から変更されていないと判定した場合には、図7のフローチャートに示す処理を終了する。
ステップS420では、使用することが決定された車載装備を記録する。ステップS430では、使用装備の変更が行われたタイミングを示す時間情報を記録する。ステップS420とS430とが、図5における使用装備記録部12fに相当する。
次に、記録した情報に基づいて、異常の検出を行うための処理を図8のフローチャートを用いて説明する。この図8のフローチャートに示す処理は、バックアップECU40において実行される。なお、図8の処理は、バックアップECU40ではなく、例えば統合制御部15において実行されても良い。
最初のステップS500では、バックアップECU40のシナリオ記録部40a、制御実施ドメイン記録部40c、ドメイン制御部12の状態移行記録部12b、目的候補移行記録部12c、使用装備記録部12f、装備制御部27a、27b、37aのそれぞれの記録部27a1、27b1、37a1に記憶されている各種の情報の経時的変化と、対応する時間情報とを取得する。そして、ステップS510において、時間情報を用いて、各種の情報の時間軸を揃えた上で、各種の情報の経時的変化を対比する。ステップS520では、各種の情報の経時的変化を対比した結果、それらの情報の経時的変化に不整合が生じているか否かを判定する。この判定処理において、不整合が生じていると判定した場合、ステップS540の処理に進み、不整合は生じていないと判定した場合、ステップS530の処理に進む。
ここで、本実施形態では、ドメイン制御部12の目的候補移行記録部12cに、目標制御状態の変化パターンから推定された制御目的の候補が記憶されているので、バックアップECU40のシナリオ記録部40aに記憶された制御目的との整合、不整合を容易に判定することができる。さらに、ドメイン制御部12以外の、他の階層のバックアップECU40や装備制御部においても、上記したように他の階層おいて設定、算出される制御内容を推定して記憶するように構成すれば、整合、不整合の判定や、異常箇所の特定をより容易に行うことができる。ただし、記憶する情報としては、自身の階層における制御情報に留め、各階層において記憶された情報を対比する際に、それぞれの階層で記憶された情報から他の階層の制御内容を推定する処理を行っても良い。
また、バックアップECU40の制御実施ドメイン記録部40cには、制御目的を達成するために制御が行われるべきドメインに関する情報が記録されている。そのため、制御がおこなわれるべきドメインで制御が行われたか、制御がおこなわれるべきではないドメインで制御はおこなわれなかったかといった観点での整合、不整合を容易に判断することができる。さらに、ドメイン制御部12の使用装備記録部12fには、目標制御状態を実現するために使用される車載装備に関する情報が記録されているので、ドメイン制御部からの制御目標値に従って、各車載装備が適切に制御されたか否かの判断も容易に行うことができる。
ステップS540では、対比した多数の情報を、整合している多数の情報と、整合していない少数の情報とに区分けし、その区分けされた整合していない少数の情報に基づき、異常の発生箇所を特定する。さらに、ステップS550では、特定された異常発生箇所が、制御目的であって、その制御目的が、車上における制御機能の追加もしくは変更に関係するものであるか否かを判定する。この判定処理において肯定的な判定がなされた場合には、ステップS560に進み、バックアップECU40が有する初期制御情報を用いて、制御システム100の制御情報を初期化する。一方、S550において、否定的な判断がなされた場合には、ステップS570に進み、異常箇所の分離処理を行う。この異常箇所分離処理では、異常が発生した箇所をその後の制御には使用しないようにする。例えば、制御目的や目標制御状態が異常であった場合には、その制御目的や目標制御状態を今後使用しないように設定する。装備制御部や車載装備に異常が見つかった場合には、その異常がみつかった車載装備を今後の制御対象から除外する。この場合、ウオーニング灯を点灯し、早期に点検を受けることを運転者に促すことが好ましい。
ステップS520で不整合が生じていないと判定した場合に実行されるステップS530では、制御システムにおける制御は正常に行われていると判断し、その判断結果を記録する。その後、図8のフローチャートに示す処理は終了される。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能なものである。
例えば、上述した実施形態では、制御目的に関する情報の経時的変化を記録する記録部として、バックアップECU40に、シナリオ記録部40aと、制御実施ドメイン記録部40cとを設けた。しかしながら、制御目的に関する情報の経時的変化を記録する記録部として、シナリオ記録部40aと制御実施ドメイン記録部40cとのいずれか一方のみを設けた構成であっても良い。同様に、上述した実施形態では、目標制御状態に関する情報の経時的変化を記録する記録部として、状態移行記録部12b、目的候補移行記録部12c、及び使用装備記録部12fを設けたが、この中の少なくとも1つの記録部を設けるように構成しても良い。
また、上述した実施形態では、車両用制御システム100が、統合制御部15、ドメイン制御部12、及び装備制御部27a、27b、37aに階層化されて、それぞれの階層で、種々の情報が記録されるように構成されていた。しかしながら、統合制御部15における情報と、ドメイン制御部12における情報と、装備制御部27a、27b、37aにおける情報の内、2つの情報があれば、その2つの情報を対比することによって異常の発生を判断可能である。そのため、記録部は、統合制御部15における制御目的に関する情報の経時的変化と、ドメイン制御部12における目標制御状態に関する情報の経時的変化と、装備制御部における車載装備の作動状態に関する情報の経時的変化の内、少なくとも2つの情報の経時的変化を記録するものであっても良い。ただし、3以上の情報があれば、上述した実施形態のように、多数決処理によって異常箇所を特定することが可能となるので、記録部は、3以上の情報の経時的変化を記録するものであることが好ましい。
また、上述した実施形態では、シナリオ記録部40a、制御実施ドメイン記録部40c等をバックアップECU40に設けたが、統合制御部15内に設けても良い。あるいは、ドメイン制御部12内に設けた状態移行記録部12b、目的候補移行記録部12c、使用装備記録部12f等をバックアップECU40内に設けても良い。
また、上述した実施形態では、常時、制御目的、目標制御状態、及び車載装備の作動状態に関する情報の経時的変化を記録したが、例えば、車両の異常挙動(前後方向加速度の異常や、横方向加速度の異常など)の発生や、いずれかの制御装置における異常発生の判断を異常トリガとして、その前後の所定時間に渡って制御目的等の経時的変化を記録するように構成しても良い。つまり、通常は、制御目的等の経時的変化を一時的に保持しておき、異常トリガが発生しなければ、一時的に保持された制御目的等の経時的変化は破棄する。その一方で、異常トリガが発生した場合には、一時的に保持されている制御目的等の経時的変化を、不揮発性メモリ等に保存する。このように構成することにより、制御目的等の経時的変化を記録するためのメモリ容量を削減しつつ、異常原因の解明などに必要な情報の記録を行うことができる。