JP2019020177A - 希薄アンモニア濃度測定方法及びこのセンサシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】測定対象ガス中に極めて低濃度に含まれるアンモニアの測定を可能とする希薄アンモニア濃度測定方法及びそのためのセンサの提供。【解決手段】一般式:AxM[M’(CN)6]y・zH2Oで示される金属シアノ錯体を主たる組成に有する多孔性配位高分子を少なくとも含む吸着膜に測定対象ガスを接触させ、赤外線吸収測定し、平衡状態にある測定対象ガスを起源とする赤外線吸収値からアンモニアの濃度を算出する。但し、上記した一般式において、M,M’:所定の金属原子、A:所定の陽イオン、x=0〜3、y=0.1〜1.5、z=0〜6の数値である。【選択図】図1
Description
本発明は、大気などの測定対象ガス中に含まれる希薄アンモニアガスの濃度を測定するためのアンモニア濃度測定方法及びこの濃度測定に用いられるセンサシステムに関し、特に、測定対象ガス中のアンモニアを試薬と反応させて該試薬の光学的な変化を測定しアンモニア濃度を測定する希薄アンモニア濃度測定方法及びこのためのセンサシステムに関する。
濃度測定すべき成分を含む測定対象ガスを試薬に導き該成分と試薬との反応による該試薬の光学的な変化から該成分の濃度を算出する方法が知られている。例えば、特許文献1では、半導体工業などに使用されるシランガスの漏洩検知のためのシラン濃度測定方法について述べている。ガス吸着材を含有させた多孔性テープ状担体に、呈色剤として過塩素酸銀を、溶剤としてグリコールを担持させ、グリコールによる感度増進効果により他の水素化物ガスに比較して呈色反応力の小さなシランを実用的な感度で検出することができると述べている。
また、吸着材によって対象ガスを吸着しその重量変化や電気伝導度変化で検出ガスの濃度を算出する方法も提案されている。このような吸着材として、例えば、特許文献2では活性炭を、特許文献3ではアザフラーレンを内包したカーボンナノチューブを用いることを開示している。かかる方法において、吸着材の選び方によっては、特定の物質の吸着に対する選択性と感度とを調整できるとされるが、一般的には、活性炭は吸着物質の選択性を有しない。
例えば、特許文献4では、アンモニアの選択性を有する吸着材であって、アンモニア吸着前後で光吸収スペクトル等の光学応答の変化する金属シアノ錯体からなる吸着材を開示している。かかる吸着材は、AxM[M’(CN)6]y・zH2Oで示される金属シアノ錯体であって、M:V,Cr,Mn,Fe,Ru,Co,Rh,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Zn,La,Eu,Gd,Lu,Ba,Sr,Caからなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属原子、M’:V,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Ru,Co,Ni,Pt,Cuからなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属原子、A:H,Li,Na,K,Rb,Csからなる群より選ばれる1種又は22種以上の陽イオン、x=0〜3,y=0.1〜1.5,z=0〜6の数値である。かかる吸着材は、アンモニア及び/又はアンモニウムイオンを吸着しても大きな体積変化を生じさせず、しかもその吸着容量が十分に大きく、アンモニア吸着センサとして利用し得ることを記載されている。
ところで、大気などの測定対象ガス中に含まれる希薄アンモニアガスの濃度を測定することが求められる。例えば、悪臭防止法によると、アンモニアは1〜5ppmを規制基準範囲とすることが適当とされている。また、燃料電池車用水素ガスにおける不純物として、アンモニア濃度がppmオーダー以下で規定され得る。そこで、大気などの測定対象ガス中に含まれる希薄アンモニア濃度を測定するためのアンモニア濃度測定方法及びこのためのセンサシステムが求められた。
一方で、上記した特許文献に開示したような活性炭などの炭素系材料の物質の吸着は分子間力による物理吸着であるため、低濃度での平衡吸着量が少なく、希薄物質の量を測定するための吸着材としては適当ではない。更に、特許文献4に開示のような吸着材において、一般的には、吸着材に吸着した物質が吸着材全体の状態を変化させるためには、相応の物質量を吸着させる必要があり、低濃度の物質の吸着量を測定するのには不向きである。そこで、測定対象の吸着物質、ここではアンモニアに対して低濃度で高い平衡吸着容量を有する吸着材と、その吸着した吸着材を用いて測定対象ガス中のアンモニアの濃度を評価する方法が求められた。
本発明は、上記したような状況を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、測定対象ガス中に含まれるアンモニアガスが希薄であってもその濃度を測定可能とする希薄アンモニア濃度測定方法及びそのためのセンサシステムを提供することにある。
発明者らは、様々な検討の結果、吸着材として多孔性配位高分子を利用し対象ガス(物質)を高濃度に吸着濃縮させ、その濃縮によって増幅される信号としての光学応答を利用することで、雰囲気内の対象物質濃度が極めて低濃度であってもその評価が可能であることを見出したものである。
すなわち、本発明による希薄アンモニア濃度測定方法は、測定対象ガス中に含まれるアンモニアの濃度を算出する方法であって、一般式:AxM[M’(CN)6]y・zH2Oで示される金属シアノ錯体を主たる組成に有する多孔性配位高分子を少なくとも含む吸着膜に前記測定対象ガスを接触させた後、前記吸着膜を赤外線吸収測定し、平衡状態にある前記測定対象ガスを起源とする赤外線吸収値からアンモニアの濃度を算出することを特徴とする。但し、上記した一般式において、M:原子番号3から83(但し、V,Cr,Mn,Fe,Ru,Co,Rh,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Zn,La,Eu,Gd,Lu,Ba,Sr,Caを除く)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属原子、M’:V,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Ru,Co,Ni,Pt,Cuからなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属原子、A:水素,リチウム,アンモニウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上の陽イオン、x=0〜3、y=0.1〜1.5、z=0〜6の数値である。
上記した発明において、前記多孔性配位高分子はビスマス(Bi)の混合体を含み、赤外吸収ピークが1000cm−1以上1460cm−1以下に位置する1つのピークから算出される値、もしくは複数のピークから算出される値を合算した値によりアンモニアの濃度を算出することを特徴としてもよい。また、測定対象ガスは少なくとも2ppmを超えるアンモニアを含むことを特徴としてもよい。
また、上記した発明において、前記多孔性配位高分子はインジウム(In)を含み、赤外吸収ピークが1400cm−1以上1460cm−1以下に位置する1つのピークから算出される値によりアンモニアの濃度を算出することを特徴としてもよい。
更に、本発明による方法は、前記測定対象ガス中に含まれるアンモニアの濃度を算出する方法であって、一般式:AxM[M’(CN)6]y・zH2Oで示される金属シアノ錯体を主たる組成に有する多孔性配位高分子を少なくとも含む吸着膜に前記測定対象ガスを接触させた後、前記吸着膜を赤外線吸収測定し、赤外線吸収ピークから算出される値の時間に対する変化からアンモニアの濃度を算出することを特徴とする。但し、上記した一般式において、M:原子番号3から83からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属原子、M’:V,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Ru,Co,Ni,Pt,Cuからなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属原子、A:水素,リチウム,アンモニウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上の陽イオン、x=0〜3、y=0.1〜1.5、z=0〜6の数値である。
上記した発明において、前記赤外吸収ピークが1000cm−1以上1460cm−1以下の範囲内にある1つのピークから算出される値、もしくは複数のピークから算出される値を合算した値の時間に対する変化からアンモニアの濃度を算出することを特徴としてもよい。また、M:Ni、M’:Feであって、前記赤外吸収ピークが1400cm−1以上1460cm−1以下の範囲内にある1つのピークから算出される値、もしくは複数のピークから算出される強度又は面積の時間に対する変化からアンモニアの濃度を算出することを特徴としてもよい。
上記した発明において、前記赤外吸収ピークが1240cm−1以上1360cm−1以下の範囲内にある1つのピークから算出される値、及び、1400cm−1以上1460cm−1以下の範囲内にある1つのピークから算出される値を合算した値の時間に対する変化からアンモニアの濃度を算出することを特徴としてもよい。
更に、本発明による希薄アンモニア濃度測定のためのセンサシステムは、上記した発明の希薄アンモニア濃度測定方法に用いられ、前記多孔性配位高分子を少なくとも含む吸着膜を含みアンモニアの濃度を算出することを特徴とする。
以下、本発明によるいくつかの実施例及び参考例について詳細を説明する。
なお、ここで「対象気体」とは、濃度評価を目的とする温度において気体であればよく、複数の異なった物質を含むものであってもよい。例えば、大気や工場等から排出される排気ガスのように複数の気体を含むものであってもよい。
「低濃度ガス」とは、濃度評価の対象ガスであって、濃度評価を目的とする温度において対象気体中に気体の状態で存在する。具体的にはアンモニアであるが、参考例として、炭化水素、アルコ−ル、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素などが上げられる。
「多孔性配位高分子」とは、金属原子と配位子とからなる分子であり、金属原子と配位子の間の結合が主として配位結合であり、さらにその内部に対象ガスを取り込むことができる空隙構造を有するものである。この金属原子と配位子は、かかる空隙構造を形成することができれば制限はないが、例えば、金属原子としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、亜鉛、ガリウム、カドミウム、インジウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、ユーロピウム、ガドリニウム、ルテチウム、バリウム、ストロンチウム、及びカルシウムが挙げられる。配位子としては、シアノ基またはその錯イオン、イミダゾールおよびその誘導体、シュウ酸、テレフタル酸、マロン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸などが挙げられる。
また、多孔性配位高分子には水以外の溶媒や、不純物として他のイオン等、組成に陽に現れていない材料が含まれていてもよい。更には、実際に濃度評価に使用するための加工に必要な材料などが含まれていてもよい。例えば、基材に塗布して使用する際には、基材に固着させるためのバインダとして、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの高分子素材などが含まれていてもよい。
多孔性配位高分子の中で、特に配位子としてヘキサシアノ金属イオンを有するものを金属シアノ錯体という。金属シアノ錯体とは、その組成がAxM[M’(CN)6]y・zH2Oで表されるものをいう。また、M、M’が同定されている場合、M−M’シアノ錯体と呼ぶ。例えば、M=銅、M’=鉄の場合、銅−鉄シアノ錯体という。
ここで、金属原子Mは、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、亜鉛、ガリウム、カドミウム、インジウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、ユーロピウム、ガドリニウム、ルテチウム、バリウム、ストロンチウム、及びカルシウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属原子が好ましく、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛からなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属原子がより好ましく、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛からなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属原子が特に好ましい。
金属原子M’は、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、白金、インジウム、ガリウム及び銅からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属原子が好ましく、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、白金からなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属原子がより好ましく、鉄、コバルトからなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属原子がより好ましい。
Aは水素、リチウム、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上の陽イオンである。
金属シアノ錯体の結晶構造は、面心立方構造が一般的であるが、必ずしもこれに制限されない。例えば、K0.67Zn[Fe(CN)6]0.67・zH2Oは六方晶である。また、M’に配位するシアノ基は6個が一般的であるが、その一部がニトロ基などに置換されていてもよいし、4から8個以内であることが好ましい。
金属シアノ錯体は特にアンモニアを吸着することができ、アンモニアの濃度評価に使用することが好適である。金属シアノ錯体の組成の上記した式において、xは0〜3が好ましく、0〜2.5がより好ましく、0〜2が特に好ましい。yは0.1〜1.5が好ましく、0.4〜1.3がより好ましく、0.5〜1が特に好ましい。zは0〜6が好ましく、0.5〜5.5がより好ましく、1〜5が特に好ましい。ただし、x、y、zは不純物として塩が含まれている場合、プルシアンブルー型錯体の内部構造に取り込まれていない水分を材料が有する場合などは、その効果を除去して評価されなければならない。
また、金属シアノ錯体(一般式:AxM[M’(CN)6]y・zH2O)を調製する際に用いる金属原子Mの種類を各種変えることで、濃度評価対象となる低濃度ガス、例えばアンモニアガスの吸着量をその濃度に応じて制御できる。後述する実施例2〜5および図9に示すように、金属原子Mの種類を各種変化させることで、例えば、金属原子MをNiとしてアンモニアガスの吸着量を増強させたり、金属原子MをMnとしてアンモニアガスの吸着量を抑制させたりすることができる。さらに、金属原子MがBiの場合、2ppmを超えた場合にアンモニアの吸着を測定でき、比較的高濃度の測定に好適である。一方、金属原子MがInの場合、極低濃度のppbから高濃度の%のオーダーまで、幅広いアンモニア濃度のレンジにおける吸着測定が可能な多孔性配位高分子膜とできる。このように金属原子Mの種類を、さまざまに変えることで、アンモニア濃度を測定できる範囲を制御できる。後述する図9に示すような各金属原子Mに対応する吸着の標準グラフを用いることで、測定したいアンモニア濃度のニ−ズに応じて対応できる。
また、配位子を変更することにより他の希薄ガスの評価へも適用が可能である。例えば、非特許文献(「Adsorption of Ethane, Ethylene, Propane, and Propylene on a Magnesium−Based Metal−Organic Framework」、Zongbi Bao他、Langmuir誌、27巻22号、13554-13562頁、2011年)によると、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸を配位子として利用した通称MOF−74では、エチレン、プロパン、プロピレンなどを吸着することが知られており、このような材料を利用することにより、炭化水素の濃度評価が可能になる。更には、非特許文献(「Hydrogen sulfide Adsorption on MOFs and MOF/Graphite Oxide Composites」、Camille Petit,Barbara Mendoza,Teresa J.Bandosz、Chem.Phys.Chem誌、11巻、17号、3678頁、2010年)によると、配位子として1,3,5−ベンゼントリカルボン酸を利用した通称HKUST−1は、H2Sなどを吸着することが知られている。このように、適切な金属と配位子の組み合わせを選択することにより、様々な希薄ガスの濃度を同定することが可能になる。
光の波数は、多孔性配位高分子が低濃度ガスを吸着した際にその濃度に応じて吸収などの応答性が変化するものを使用する。例えばアンモニアの場合、アンモニア分子自体が、1100cm−1以上1500cm−1以下、3000cm−1以上3500cm−1以下、4000cm−1以上5300cm−1以下の波数領域に吸収などの応答を有することが知られており、これらの波数を利用することが想定される。ただし、物質によっては物質に吸着した際に、吸着による応答波数のシフトが起こり、また、他の物質への変換が生じることによる波数の変化が生じることがあり、これらの場合は適切に評価する波数を設定することが必要である。
また、低濃度ガスを吸着することにより、多孔性配位高分子自体の状態が変化し、光学応答に変化が生じる場合は、その変化に応じた波数を選択することも可能である。
多孔性配位高分子の粒子径に特に制限はなく、必要な吸着速度が実現でき、望ましい形態への加工が可能であればそれでよい。一般的には吸着速度は材料の比表面積が高いほど速いことが多く、その観点から言うと、一次平均粒径が500nm以下であることが好ましく、300nm以下がより好ましく、100nm以下が特に好ましい。粒径の下限に特に制限はないが、4nm以上であることが実際的である。本明細書において、一次粒径とは、一次粒子の直径をいい、その円相当直径を粉末X線構造解析のピークの半値幅より導出したものでもよい。また、配位子などが粒子表面に吸着している場合もあるが、その場合も一次粒径としては、配位子を除いた粒径を指すものとする。
ただし、多孔性配位高分子の中には、その内部でのガス分子の拡散が十分に早く、粒径が大きくとも速やかにガス分子が内部で移動できる場合があり、そのような場合は特に粒径に制限はない。また、例えば基材に塗布して薄膜状にして利用する場合は、目的とする薄膜の厚みより小さい粒径であることが望ましい。
多孔性配位高分子の合成法に特に制限はないが、目的とした組成を均一に実現できる方法が好ましい。また、加工の都合上、錯体表面が各種材料で修飾されていてもよい。具体的な方法としては、例えば金属シアノ錯体の場合、特開2006−256954号公報、特開2013−173077号公報などに開示の方法が利用可能である。
また、他の材料との複合化がなされていても、金属シアノ錯体が含有されており、それがアンモニア吸着材として機能していれば制限を受けない。例えば、線維、線維から作成された織布又は不織布上に担持したり、高分子などのバインダと混合して粒状体にしていたりしてもよい。ただし、光学的な評価を行うことに適した構造を有することが望ましく、基材上に担持、薄膜化されていることなどが挙げられる。
基材上に担持、薄膜化する場合の基材としては、評価に必要な光学特性を有していること、多孔性配位高分子をその上部に担持することができることがその条件として挙げられる。入射光に対してその反射光を評価する場合、特定波長の光を反射することが条件となり、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス、ニッケルなどの金属体が上げられる。ただし、目的は特定波長の光を反射することであるため、基材のすべてが上記金属体である必要はなく、さらにプラスティックなどの基材に反射体が含まれる構造なども考えられる。また、測定法として透過光を使用する場合は、特定波長の光を透過する必要がある。特定波長として可視光を使用する場合はプラスティック、ガラス、石英などの透明な基材を使用することができる。また、特定波長として赤外光を使用する場合は、フッ化カルシウム、ゲルマニウム、シリコンなどが使用できる。さらには、必要なことは特定波長に対する応答性だけであるので、上記の幅広い波長に対する透過もしくは反射の特徴を有する材料に制限されない。
多孔性配位高分子がガス分子を吸着する反応は一般的には平衡反応であり、対象気体中のガス分子濃度が低減すると自動的に吸着したガス分子は脱離し、再利用可能となる。しかしながら、脱離に時間を要する反応が生じる場合や、高濃度のガス分子を吸着させた場合はガス分子の脱離に時間を要するため、別途多孔性配位高分子からガス分子を脱離させる手法を講じることができる。脱離させる手法としては、多孔性配位高分子および基材等が劣化しなければ特に問題はないが、例えば加熱による蒸発促進、酸洗浄による脱離などが挙げられる。
また、多孔性配位高分子の、ガス吸着する速度は、フーリエ変換赤外分光測定(FTIR)により測定できる。後述する実施例6,7に示すように、例えばアンモニアガス吸着に由来するピークの、時間に対する強度(高さ)や面積の変化を測定することで、アンモニアガスを吸着する速度を測定できる。測定の際、時間変化を計測するが、後述する図12に示す初期の変化が好ましく、特に10分以内での測定が好ましい。警報の観点からは、より短い3分以内での測定が最も好ましい。
以上述べてきたように、多孔性配位高分子を吸着材として用いることで、対象ガスを選択的かつ低濃度であっても吸着、濃縮することができ、結果として、高感度な濃度分析法を実現することができる。また、多孔性配位高分子の種類を変更することにより、様々なガス種に対応することができる。すなわち、濃縮された対象ガス分子起源の光学応答を評価することで、きわめて低濃度であっても濃度評価が可能となる。かかる方法は、適切な材料を選択することにより、様々な気体中の微量ガスの分析が可能になるから、例えばアンモニア対象では、臭気度に応じた大気中の濃度測定や、クリーンルーム中の濃度測定、燃料用水素中の不純物濃度評価が可能である。また、エチレン対象では、農業用コンテナ内の濃度評価などへの適用が可能である。
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
(調製例1)
<鉄−鉄シアノ錯体の調製>
鉄−鉄シアノ錯体(K0.23Fe[Fe(CN)6]0.74、別名プルシアンブルー(PB))を以下のように調製した。0.16mol/Lの濃度に調製した硝酸鉄(III)水溶液と、0.12mol/Lの濃度に調整したフェロシアン化カリウム水溶液を準備した。流量を100mL/分に調整しフロー方式により合成した。ここでは、Y字型のマイクロミキサーであって、VICI社製 マイクロボリュームコネクタ「1/16 Y PEEK,製品番号 MY1XCPK」の流路部分と「1/16 Y SUS、製品番号MY1XCS6」の接続部分をつなぎあわせたものを用いた。
<鉄−鉄シアノ錯体の調製>
鉄−鉄シアノ錯体(K0.23Fe[Fe(CN)6]0.74、別名プルシアンブルー(PB))を以下のように調製した。0.16mol/Lの濃度に調製した硝酸鉄(III)水溶液と、0.12mol/Lの濃度に調整したフェロシアン化カリウム水溶液を準備した。流量を100mL/分に調整しフロー方式により合成した。ここでは、Y字型のマイクロミキサーであって、VICI社製 マイクロボリュームコネクタ「1/16 Y PEEK,製品番号 MY1XCPK」の流路部分と「1/16 Y SUS、製品番号MY1XCS6」の接続部分をつなぎあわせたものを用いた。
懸濁液中の鉄−鉄シアノ錯体は遠心分離により上澄み液と分離し、これを超純水で6回洗浄し、懸濁態試料S−PB1を得た。洗浄後に沈殿物を2日間真空乾燥した後、乾燥物を粉砕し、粉末試料P−PB1を得た。
得られたP−PB1について、X線回折装置で評価したところ、データベース中のFe[Fe(CN)6]0.75ピーク位置と一致した。さらに、粉末P−PB1の組成を次の方法で評価した。粉末P−PB1 50mgを塩酸4mL、硝酸2mLに添加し、マイクロ波分解装置(パーキンエルマー社製、Multiwave3000)によってマイクロ波分解を行った後、ICP−MS(パーキンエルマー社製、NEXION300D)によってK、Feの定量を行った。C及びNは軽元素分析法により定量した。結果として、P−PB1の組成はK0.23Fe[Fe(CN)6]0.74と決定できた。
(調製例2)
<鉄−鉄シアノ錯体薄膜の調製>
鉄−鉄シアノ錯体の薄膜を以下のように調製した。懸濁態試料S−PB1をホモジナイザーで攪拌し、ITOガラス基板上にスピンコート法にて塗布し、薄膜試料TF−PB1を得た。スピンコート法は回転数1500rpm、20秒の条件で5回重ね塗りを実施した。
<鉄−鉄シアノ錯体薄膜の調製>
鉄−鉄シアノ錯体の薄膜を以下のように調製した。懸濁態試料S−PB1をホモジナイザーで攪拌し、ITOガラス基板上にスピンコート法にて塗布し、薄膜試料TF−PB1を得た。スピンコート法は回転数1500rpm、20秒の条件で5回重ね塗りを実施した。
(調製例2)
<鉄−鉄シアノ錯体中のアンモニア濃度の検量>
P−PB1中のアンモニア濃度の評価はフーリエ変換赤外分光測定(FTIR)で測定される吸収ピーク強度から行った。アンモニウムイオン水溶液を利用し、1410cm−1における吸収ピークと、2060cm−1における吸収ピーク強度の比から検量線を作成した。1410cm−1、2060cm−1はそれぞれ吸着したアンモニウムイオンを起源とする吸収、鉄−鉄シアノ錯体中のシアノ基を起源とする吸収である。
<鉄−鉄シアノ錯体中のアンモニア濃度の検量>
P−PB1中のアンモニア濃度の評価はフーリエ変換赤外分光測定(FTIR)で測定される吸収ピーク強度から行った。アンモニウムイオン水溶液を利用し、1410cm−1における吸収ピークと、2060cm−1における吸収ピーク強度の比から検量線を作成した。1410cm−1、2060cm−1はそれぞれ吸着したアンモニウムイオンを起源とする吸収、鉄−鉄シアノ錯体中のシアノ基を起源とする吸収である。
図1に検量線を示す。ここで、検量線の作成法は以下の通りとした。40mgのP−PB1を0.08〜12mmol/Lの塩化アンモニウム水溶液に浸漬し、シェイキングインキュベ−タ(SI−300C、アズワン)を利用し、600rpmの速度、25℃の温度で18時間振動させた。0.45μmのフィルタを用いて固液分離した後真空乾燥を行い、FTIR(サーモフィッシャー社製、Nicolet iS5)により1410cm−1、2060cm−1の吸収ピークを評価した。別途、吸着したアンモニウムイオン量は水溶液に残留したアンモニウムイオン濃度をイオンクロマトグラフィ(メトロームAG社製、IC833Basic Plus)によって評価した。図1から判るように、FTIRにおける1410cm−1と2060cm−1の強度比によりP−PB1中のアンモニア濃度が評価できることが明らかとなった。
(調製例3)
<大気中アンモニアの定量>
濃度評価対象として、実験室の大気中アンモニアの濃度を事前に以下の通り評価した。5g/Lの濃度のホウ酸水溶液20mLを2つのインピンジャーにそれぞれ入れ、大気を直列に繋いだその2つのインピンジャーに通気した。その後、ホウ酸水溶液中のアンモニア濃度をイオンクロマトグラフィ(メトロームAG社製、IC833Basic Plus)で評価した。その結果、大気中のアンモニア濃度は約15ppbであった。
<大気中アンモニアの定量>
濃度評価対象として、実験室の大気中アンモニアの濃度を事前に以下の通り評価した。5g/Lの濃度のホウ酸水溶液20mLを2つのインピンジャーにそれぞれ入れ、大気を直列に繋いだその2つのインピンジャーに通気した。その後、ホウ酸水溶液中のアンモニア濃度をイオンクロマトグラフィ(メトロームAG社製、IC833Basic Plus)で評価した。その結果、大気中のアンモニア濃度は約15ppbであった。
(実施例1)
<鉄−鉄シアノ錯体の大気中アンモニアの吸着>
図2及び図3では、薄膜試料TF−PB1を利用し大気中アンモニアの吸着挙動を確認したもので、TF−PB1を大気中に静置し、適宜FTIR測定により、FT−PB1中のアンモニア濃度を確認した結果である。1410cm−1のアンモニウムイオンに帰属されるピークが大気中静置後に成長し、約24時間後に一定の値に達した。この強度と、事前に作成した検量線との比較から、TF−PB1中のアンモニア濃度は約0.3mmol/Lと評価された。このときの大気中アンモニア濃度は前述の通り15ppbであり、このような低濃度でもTF−PB1はアンモニアを吸着し、その光学応答から濃度を評価できるレベルで吸着可能であることが示された。鉄−鉄シアノ錯体のアンモニア吸着は平衡反応であり、大気中アンモニア濃度に応じて錯体中濃度も変化するため、逆に錯体中のアンモニア濃度を調べることで大気中濃度を同定できる。
<鉄−鉄シアノ錯体の大気中アンモニアの吸着>
図2及び図3では、薄膜試料TF−PB1を利用し大気中アンモニアの吸着挙動を確認したもので、TF−PB1を大気中に静置し、適宜FTIR測定により、FT−PB1中のアンモニア濃度を確認した結果である。1410cm−1のアンモニウムイオンに帰属されるピークが大気中静置後に成長し、約24時間後に一定の値に達した。この強度と、事前に作成した検量線との比較から、TF−PB1中のアンモニア濃度は約0.3mmol/Lと評価された。このときの大気中アンモニア濃度は前述の通り15ppbであり、このような低濃度でもTF−PB1はアンモニアを吸着し、その光学応答から濃度を評価できるレベルで吸着可能であることが示された。鉄−鉄シアノ錯体のアンモニア吸着は平衡反応であり、大気中アンモニア濃度に応じて錯体中濃度も変化するため、逆に錯体中のアンモニア濃度を調べることで大気中濃度を同定できる。
(調製例4)
<銅(II)−鉄シアノ錯体の調製>
銅(II)−鉄シアノ錯体は以下のように調製した。0.5mol/Lの濃度に調製した硝酸銅(II)水溶液20mLと、0.1mol/Lの濃度に調整したフェロシアン化カリウム水溶液20mLを準備し、両溶液を一気に混合した。得られた懸濁液中の銅(II)−鉄シアノ錯体は遠心分離により上澄み液と分離し、これを超純水で6回洗浄し、懸濁態試料S−Cu1を得た。洗浄後に沈殿物を乾燥した後、乾燥物を粉砕し、粉末試料P−Cu1を得た。得られたP−Cu1について、X線回折装置で評価したところ、17.5度、25度、36度付近等にメインピークを持つデータベース中のFe[Fe(CN)6]0.75ピーク位置とほぼ一致するピークを有し、P−PB1と同等な結晶構造を有することがわかった(図4)。さらに、粉末P−Cu1の組成を次の方法で評価した。粉末P−Cu1約50mgを塩酸、硝酸に添加し、マイクロ波分解装置(パーキンエルマー社製、Multiwave3000)によってマイクロ波分解を行った後、金属イオンの含有量を測定できる発光分光分析装置(Agilent Technologies社製、4100 MP−AES)によってK、Cu、Feの定量を行った。K含有量のばらつきはあるものの、P−Cu1の組成は、上記したP−PB1と同様にKを含んだK0.11Cu1.88[Fe(CN)6]と決定できた。
<銅(II)−鉄シアノ錯体の調製>
銅(II)−鉄シアノ錯体は以下のように調製した。0.5mol/Lの濃度に調製した硝酸銅(II)水溶液20mLと、0.1mol/Lの濃度に調整したフェロシアン化カリウム水溶液20mLを準備し、両溶液を一気に混合した。得られた懸濁液中の銅(II)−鉄シアノ錯体は遠心分離により上澄み液と分離し、これを超純水で6回洗浄し、懸濁態試料S−Cu1を得た。洗浄後に沈殿物を乾燥した後、乾燥物を粉砕し、粉末試料P−Cu1を得た。得られたP−Cu1について、X線回折装置で評価したところ、17.5度、25度、36度付近等にメインピークを持つデータベース中のFe[Fe(CN)6]0.75ピーク位置とほぼ一致するピークを有し、P−PB1と同等な結晶構造を有することがわかった(図4)。さらに、粉末P−Cu1の組成を次の方法で評価した。粉末P−Cu1約50mgを塩酸、硝酸に添加し、マイクロ波分解装置(パーキンエルマー社製、Multiwave3000)によってマイクロ波分解を行った後、金属イオンの含有量を測定できる発光分光分析装置(Agilent Technologies社製、4100 MP−AES)によってK、Cu、Feの定量を行った。K含有量のばらつきはあるものの、P−Cu1の組成は、上記したP−PB1と同様にKを含んだK0.11Cu1.88[Fe(CN)6]と決定できた。
(調製例5)
<ニッケル(II)−鉄シアノ錯体の調製>
ニッケル(II)−鉄シアノ錯体は以下のように調製した。0.5mol/Lの濃度に調製した硝酸ニッケル(II)水溶液20mLと、0.1mol/Lの濃度に調整したフェロシアン化カリウム水溶液20mLを準備し、両溶液を一気に混合した。得られた懸濁液中のニッケル(II)−鉄シアノ錯体は遠心分離により上澄み液と分離し、これを超純水で6回洗浄し、懸濁態試料S−Ni1を得た。洗浄後に沈殿物を乾燥した後、乾燥物を粉砕し、粉末試料P−Ni1を得た。得られたP−Ni1について、X線回折装置で評価したところ、17.5度、25度、36度付近等にメインピークを持つデータベース中のFe[Fe(CN)6]0.75ピーク位置とほぼ一致するピークを有し、P−PB1と同等な結晶構造を有することがわかった(図5)。
<ニッケル(II)−鉄シアノ錯体の調製>
ニッケル(II)−鉄シアノ錯体は以下のように調製した。0.5mol/Lの濃度に調製した硝酸ニッケル(II)水溶液20mLと、0.1mol/Lの濃度に調整したフェロシアン化カリウム水溶液20mLを準備し、両溶液を一気に混合した。得られた懸濁液中のニッケル(II)−鉄シアノ錯体は遠心分離により上澄み液と分離し、これを超純水で6回洗浄し、懸濁態試料S−Ni1を得た。洗浄後に沈殿物を乾燥した後、乾燥物を粉砕し、粉末試料P−Ni1を得た。得られたP−Ni1について、X線回折装置で評価したところ、17.5度、25度、36度付近等にメインピークを持つデータベース中のFe[Fe(CN)6]0.75ピーク位置とほぼ一致するピークを有し、P−PB1と同等な結晶構造を有することがわかった(図5)。
さらに、粉末P−Ni1の組成を次の方法で評価した。粉末P−Ni1約50mgを塩酸、硝酸に添加し、マイクロ波分解装置(パーキンエルマー社製、Multiwave3000)によってマイクロ波分解を行った後、金属イオンの含有量を測定できる発光分光分析装置(Agilent Technologies社製、4100 MP−AES)によってK、Ni、Feの定量を行った。K含有量のばらつきはあるものの、P−Ni1の組成は、上記したP−PB1と同様にKを含んだK0.77Ni1.55[Fe(CN)6]と決定できた。
(調製例6)
<マンガン(II)−鉄シアノ錯体の調製>
マンガン(II)−鉄シアノ錯体は以下のように調製した。0.5mol/Lの濃度に調製した硝酸マンガン(II)水溶液20mLと、0.1mol/Lの濃度に調整したフェロシアン化カリウム水溶液20mLを準備し、両溶液を一気に混合した。得られた懸濁液中のマンガン(II)−鉄シアノ錯体は遠心分離により上澄み液と分離し、これを超純水で6回洗浄し、懸濁態試料S−Mn1を得た。洗浄後に沈殿物を乾燥した後、乾燥物を粉砕し、粉末試料P−Mn1を得た。得られたP−Mn1について、X線回折装置で評価したところ、17.5度、25度、36度付近等にメインピークを持つデータベース中のFe[Fe(CN)6]0.75ピークと一致する強いピーク、及びそれ以外の弱いピークから成っており、上記したP−PB1より対称性が下がった結晶構造を有することがわかった(図6)。さらに、粉末P−Mn1の組成を次の方法で評価した。粉末P−Mn1約50mgを塩酸、硝酸に添加し、マイクロ波分解装置(パーキンエルマー社製、Multiwave3000)によってマイクロ波分解を行った後、金属イオンの含有量を測定できる発光分光分析装置(Agilent Technologies社製、4100 MP−AES)によってK、Mn、Feの定量を行ったところ、K含有量のばらつきはあるものの、P−Mn1の組成は、上記したP−PB1と同様にKを含んだK1.55Mn1.19[Fe(CN)6]と決定できた。
<マンガン(II)−鉄シアノ錯体の調製>
マンガン(II)−鉄シアノ錯体は以下のように調製した。0.5mol/Lの濃度に調製した硝酸マンガン(II)水溶液20mLと、0.1mol/Lの濃度に調整したフェロシアン化カリウム水溶液20mLを準備し、両溶液を一気に混合した。得られた懸濁液中のマンガン(II)−鉄シアノ錯体は遠心分離により上澄み液と分離し、これを超純水で6回洗浄し、懸濁態試料S−Mn1を得た。洗浄後に沈殿物を乾燥した後、乾燥物を粉砕し、粉末試料P−Mn1を得た。得られたP−Mn1について、X線回折装置で評価したところ、17.5度、25度、36度付近等にメインピークを持つデータベース中のFe[Fe(CN)6]0.75ピークと一致する強いピーク、及びそれ以外の弱いピークから成っており、上記したP−PB1より対称性が下がった結晶構造を有することがわかった(図6)。さらに、粉末P−Mn1の組成を次の方法で評価した。粉末P−Mn1約50mgを塩酸、硝酸に添加し、マイクロ波分解装置(パーキンエルマー社製、Multiwave3000)によってマイクロ波分解を行った後、金属イオンの含有量を測定できる発光分光分析装置(Agilent Technologies社製、4100 MP−AES)によってK、Mn、Feの定量を行ったところ、K含有量のばらつきはあるものの、P−Mn1の組成は、上記したP−PB1と同様にKを含んだK1.55Mn1.19[Fe(CN)6]と決定できた。
(調製例7)
<ビスマス−鉄シアノ混合体の調製>
ビスマス−鉄シアノ混合体は以下のように調製した。0.33mol/Lの濃度になるよう調製した塩化ビスマス(III)と水のサスペンション20mLと、0.1mol/Lの濃度に調整したフェロシアン化カリウム水溶液20mLを準備し、両液を一気に混ぜた後、バイブレーター(試験管ミキサー)により十分に混合した。得られた懸濁液は遠心分離により上澄み液と分離し、これを超純水で6回洗浄し、懸濁態試料S−Bi1を得た。洗浄後に沈殿物を乾燥した後、乾燥物を粉砕し、粉末試料P−Bi1を得た。得られたP−Bi1について、X線回折装置で評価したところ、17.5度、25度、36度付近等にメインピークを持つデータベース中のFe[Fe(CN)6]0.75ピークと一致する部分の回折強度は小さく、上記したP−PB1と一致する結晶構造をほとんど有さないことがわかった(図7)。また得られたX線回折の回折パターンは、原料の塩化ビスマスの回折パターンと一致している部分がある。本調製例におけるビスマス−鉄シアノ混合体は、P−PB1と一致する錯体構造を有するものは極わずかにしか存在せず、P−PB1と異なる結晶構造の錯体である多孔性配位高分子および原料の塩化ビスマス由来のビスマス化合物から成る混合体である。
<ビスマス−鉄シアノ混合体の調製>
ビスマス−鉄シアノ混合体は以下のように調製した。0.33mol/Lの濃度になるよう調製した塩化ビスマス(III)と水のサスペンション20mLと、0.1mol/Lの濃度に調整したフェロシアン化カリウム水溶液20mLを準備し、両液を一気に混ぜた後、バイブレーター(試験管ミキサー)により十分に混合した。得られた懸濁液は遠心分離により上澄み液と分離し、これを超純水で6回洗浄し、懸濁態試料S−Bi1を得た。洗浄後に沈殿物を乾燥した後、乾燥物を粉砕し、粉末試料P−Bi1を得た。得られたP−Bi1について、X線回折装置で評価したところ、17.5度、25度、36度付近等にメインピークを持つデータベース中のFe[Fe(CN)6]0.75ピークと一致する部分の回折強度は小さく、上記したP−PB1と一致する結晶構造をほとんど有さないことがわかった(図7)。また得られたX線回折の回折パターンは、原料の塩化ビスマスの回折パターンと一致している部分がある。本調製例におけるビスマス−鉄シアノ混合体は、P−PB1と一致する錯体構造を有するものは極わずかにしか存在せず、P−PB1と異なる結晶構造の錯体である多孔性配位高分子および原料の塩化ビスマス由来のビスマス化合物から成る混合体である。
(調製例8)
<インジウム−鉄シアノ錯体の調製>
インジウム−鉄シアノ錯体は以下のように調製した。0.33mol/Lの濃度に調製した塩化インジウム(III)水溶液20mLと、0.1mol/Lの濃度に調整したフェロシアン化カリウム水溶液20mLを準備し、両溶液を一気に混合した。得られた懸濁液中のインジウム−鉄シアノ錯体は遠心分離により上澄み液と分離し、これを超純水で6回洗浄し、懸濁態試料S−In1を得た。洗浄後に沈殿物を乾燥した後、乾燥物を粉砕し、粉末試料P−In1を得た。得られたP−In1について、X線回折装置で評価したところ(このX線回折の場合ピークがブロードであるため、内部標準としてSi結晶をP−In1に加え測定した。)、インジウム−鉄シアノ錯体は、17.5度、25度、36度付近等にメインピークを持つデータベース中のFe[Fe(CN)6]0.75ピーク位置とほぼ一致する強いピークが存在し、それ以外の弱いピークがあるものの、上記したP−PB1と同等な結晶構造を有する(図8)。
<インジウム−鉄シアノ錯体の調製>
インジウム−鉄シアノ錯体は以下のように調製した。0.33mol/Lの濃度に調製した塩化インジウム(III)水溶液20mLと、0.1mol/Lの濃度に調整したフェロシアン化カリウム水溶液20mLを準備し、両溶液を一気に混合した。得られた懸濁液中のインジウム−鉄シアノ錯体は遠心分離により上澄み液と分離し、これを超純水で6回洗浄し、懸濁態試料S−In1を得た。洗浄後に沈殿物を乾燥した後、乾燥物を粉砕し、粉末試料P−In1を得た。得られたP−In1について、X線回折装置で評価したところ(このX線回折の場合ピークがブロードであるため、内部標準としてSi結晶をP−In1に加え測定した。)、インジウム−鉄シアノ錯体は、17.5度、25度、36度付近等にメインピークを持つデータベース中のFe[Fe(CN)6]0.75ピーク位置とほぼ一致する強いピークが存在し、それ以外の弱いピークがあるものの、上記したP−PB1と同等な結晶構造を有する(図8)。
(調製例9)
<鉄−鉄シアノ錯体以外の多孔性配位高分子膜の調製>
鉄−鉄シアノ錯体以外の多孔性配位高分子膜を以下のように調製した。得られた懸濁態試料S−Cu1、S−Ni1、S−Mn1、S−Bi1、S−In1の各々をホモジナイザで攪拌し、マイクロピペットにて約40μLの懸濁液を、プラズマ親水化処理したITOガラス基板上にのせ、スピンコート法にて多孔性配位高分子膜である薄膜試料TF−Cu1、TF−Ni1、TF−Mn1、TF−Bi1、TF−In1をそれぞれ得た。スピンコートの条件は、始め回転数600rpmで30秒回転後、続けて回転数3000rpmで5秒回転にて実施した。基板としてSi基板を用いた場合、多孔性配位高分子膜の薄膜試料は、TF−[金属原子]2と表示する。例えば、銅(II)の場合TF−Cu2と表示し、ニッケル(II)の場合TF−Ni2と表示する。
<鉄−鉄シアノ錯体以外の多孔性配位高分子膜の調製>
鉄−鉄シアノ錯体以外の多孔性配位高分子膜を以下のように調製した。得られた懸濁態試料S−Cu1、S−Ni1、S−Mn1、S−Bi1、S−In1の各々をホモジナイザで攪拌し、マイクロピペットにて約40μLの懸濁液を、プラズマ親水化処理したITOガラス基板上にのせ、スピンコート法にて多孔性配位高分子膜である薄膜試料TF−Cu1、TF−Ni1、TF−Mn1、TF−Bi1、TF−In1をそれぞれ得た。スピンコートの条件は、始め回転数600rpmで30秒回転後、続けて回転数3000rpmで5秒回転にて実施した。基板としてSi基板を用いた場合、多孔性配位高分子膜の薄膜試料は、TF−[金属原子]2と表示する。例えば、銅(II)の場合TF−Cu2と表示し、ニッケル(II)の場合TF−Ni2と表示する。
(実施例2)
<ニッケル(II)−鉄シアノ錯体のアンモニア吸着>
多孔性配位高分子の1種であるニッケル(II)−鉄シアノ錯体が、ガス分子を吸着する反応は一般的に平衡反応であると考えられ、その平衡に達する挙動を、各濃度のアンモニアガスを含む空気を対象気体とし、薄膜試料TF−Ni1を利用して、FTIR測定により比較検討した。TF−Ni1を、濃度を大きく変化させたアンモニアガスを含む空気中に十分な時間静置し、FTIR測定により、アンモニアに由来するピークを測定した。本実施例において用いたアンモニアガスの濃度は、約10ppbおよび約67%である。対象気体に空気を用いたため幾分の水分を含んでおり、湿度は約20〜40%であった。アンモニアガスの濃度に応じて、1410〜1420cm−1付近のアンモニウムイオンに帰属されるFTIRによる吸収スペクトルのピークが現れ、アンモニアガス濃度約10ppbにおいて5ヶ月後、アンモニアガス濃度約67%において約22時間後にそのピーク強度を測定した。
<ニッケル(II)−鉄シアノ錯体のアンモニア吸着>
多孔性配位高分子の1種であるニッケル(II)−鉄シアノ錯体が、ガス分子を吸着する反応は一般的に平衡反応であると考えられ、その平衡に達する挙動を、各濃度のアンモニアガスを含む空気を対象気体とし、薄膜試料TF−Ni1を利用して、FTIR測定により比較検討した。TF−Ni1を、濃度を大きく変化させたアンモニアガスを含む空気中に十分な時間静置し、FTIR測定により、アンモニアに由来するピークを測定した。本実施例において用いたアンモニアガスの濃度は、約10ppbおよび約67%である。対象気体に空気を用いたため幾分の水分を含んでおり、湿度は約20〜40%であった。アンモニアガスの濃度に応じて、1410〜1420cm−1付近のアンモニウムイオンに帰属されるFTIRによる吸収スペクトルのピークが現れ、アンモニアガス濃度約10ppbにおいて5ヶ月後、アンモニアガス濃度約67%において約22時間後にそのピーク強度を測定した。
本実施例では、多孔性配位高分子である金属シアノ錯体に吸着したアンモニウムイオンの量を比較するため、金属シアノ錯体中のシアノ基を起源とする吸収である2060cm−1付近のピーク強度に対する、アンモニアガスを起源とするアンモニウムイオンに帰属される1410〜1420cm−1付近のピーク強度比を評価した。尚、ピーク面積の比を利用することでも同様な評価ができる。
その結果を図9(□印及び点線)に示す。図より、TF−Ni1は他の平衡反応と比べて、そのピーク強度比が大きく、アンモニアガスを効率よく吸着し、吸着量の多いことがわかった。このように金属原子MをNiに変えて調製された金属シアノ錯体の薄膜を用いることで、特徴的なアンモニアガスの吸着を行い得ることがわかった。
(実施例3)
<マンガン(II)−鉄シアノ錯体のアンモニア吸着>
多孔性配位高分子の1種であるマンガン(II)−鉄シアノ錯体について、ガス分子を吸着する反応は一般的に平衡反応であると考えられ、その平衡に達する挙動を、各濃度のアンモニアガスを含む空気を対象気体とし、薄膜試料TF−Mn1を利用して、FTIR測定により比較検討した。TF−Mn1を、濃度を大きく変化させたアンモニアガスを含む空気中に十分な時間静置し、FTIR測定により、アンモニアに由来するピークを測定した。
<マンガン(II)−鉄シアノ錯体のアンモニア吸着>
多孔性配位高分子の1種であるマンガン(II)−鉄シアノ錯体について、ガス分子を吸着する反応は一般的に平衡反応であると考えられ、その平衡に達する挙動を、各濃度のアンモニアガスを含む空気を対象気体とし、薄膜試料TF−Mn1を利用して、FTIR測定により比較検討した。TF−Mn1を、濃度を大きく変化させたアンモニアガスを含む空気中に十分な時間静置し、FTIR測定により、アンモニアに由来するピークを測定した。
本実施例において用いたアンモニアガスの濃度は、約10ppbおよび約67%である。対象気体に空気を用いたため幾分の水分を含んでおり、湿度は約20〜40%であった。アンモニアガスの濃度に応じて、1410〜1420cm−1付近のアンモニウムイオンに帰属されるFTIRによる吸収スペクトルのピークが現れ、アンモニアガス濃度約10ppbにおいて5ヶ月後、アンモニアガス濃度約67%において約22時間後にそのピーク強度を測定した。本実施例では、多孔性配位高分子である金属シアノ錯体に吸着したアンモニウムイオンの量を比較するため、金属シアノ錯体中のシアノ基を起源とする吸収である2060cm−1付近のピーク強度に対する、アンモニアガスを起源とするアンモニウムイオンに帰属される1410〜1420cm−1付近のピーク強度比を評価した。尚、ピーク面積の比を利用することでも同様な評価ができる。
その結果を図9(×印及び実線)に示す。図より、TF−Mn1は他の平衡反応と比べ、アンモニアガス濃度に対し比較的小さな増加率で吸着量の変化が起こることがわかった。このように、金属原子MをMnに変えて調製された金属シアノ錯体の薄膜を用いることで、特徴的なアンモニアガスの吸着を行えることがわかった。
(実施例4)
<ビスマス−鉄シアノ混合体のアンモニア吸着>
多孔性配位高分子の1種であるビスマス−鉄シアノ混合体が、ガス分子を吸着する反応は一般的に平衡反応であると考えられ、その平衡に達する挙動を、各濃度のアンモニアガスを含む空気を対象気体とし、薄膜試料TF−Bi1を利用して、FTIR測定により比較検討した。TF−Bi1を、濃度を大きく変化させたアンモニアガスを含む空気中に十分な時間静置し、FTIR測定により、アンモニアに由来するピークを測定した。本実施例において用いたアンモニアガスの濃度は、約10ppb、約2ppm、約270ppm、および約67%である。対象気体に空気を用いたため幾分の水分を含んでおり、湿度は約20〜40%であった。アンモニアガスの濃度に応じて、1410〜1420cm−1付近のアンモニウムイオンに帰属されるFTIRによる吸収スペクトルのピークが現れ、アンモニアガス濃度約10ppbにおいて5ヶ月後、アンモニアガス濃度約2ppmにおいて約23時間後、約270ppmにおいて約42時間後、約67%において約22時間後にそのピーク強度を測定した。
<ビスマス−鉄シアノ混合体のアンモニア吸着>
多孔性配位高分子の1種であるビスマス−鉄シアノ混合体が、ガス分子を吸着する反応は一般的に平衡反応であると考えられ、その平衡に達する挙動を、各濃度のアンモニアガスを含む空気を対象気体とし、薄膜試料TF−Bi1を利用して、FTIR測定により比較検討した。TF−Bi1を、濃度を大きく変化させたアンモニアガスを含む空気中に十分な時間静置し、FTIR測定により、アンモニアに由来するピークを測定した。本実施例において用いたアンモニアガスの濃度は、約10ppb、約2ppm、約270ppm、および約67%である。対象気体に空気を用いたため幾分の水分を含んでおり、湿度は約20〜40%であった。アンモニアガスの濃度に応じて、1410〜1420cm−1付近のアンモニウムイオンに帰属されるFTIRによる吸収スペクトルのピークが現れ、アンモニアガス濃度約10ppbにおいて5ヶ月後、アンモニアガス濃度約2ppmにおいて約23時間後、約270ppmにおいて約42時間後、約67%において約22時間後にそのピーク強度を測定した。
本実施例では、多孔性配位高分子であるビスマス−鉄シアノ混合体に吸着したアンモニウムイオンの量を比較するため、ビスマス−鉄シアノ混合体中のシアノ基を起源とする吸収2060cm−1付近のピーク強度に対する、アンモニアガスを起源とするアンモニウムイオンに帰属される1410〜1420cm−1付近のピーク強度比を評価した。尚、ピーク面積の比を利用することでも同様な評価ができる。
その結果を図9(△印及び破線)に示す。図より、TF−Bi1は他の薄膜による平衡反応と比べて、アンモニアガス濃度約2ppmまでは、アンモニアガスの吸着がほとんどないが、約2ppmを超えるとその吸着が現れることがわかった。このように金属原子をBiに変えて調製されたビスマス−鉄シアノ混合体の薄膜を用いることで、特徴的なアンモニアガスの吸着を行えることがわかった。
(実施例5)
<インジウム−鉄シアノ錯体のアンモニア吸着>
多孔性配位高分子の1種であるインジウム−鉄シアノ錯体が、ガス分子を吸着する反応は一般的に平衡反応であると考えられ、その平衡に達する挙動を、各濃度のアンモニアガスを含む空気を対象気体とし、薄膜試料TF−In1を利用して、FTIR測定により比較検討した。TF−In1を、濃度を大きく変化させたアンモニアガスを含む空気中に十分な時間静置し、FTIR測定により、アンモニアに由来するピークを測定した。
<インジウム−鉄シアノ錯体のアンモニア吸着>
多孔性配位高分子の1種であるインジウム−鉄シアノ錯体が、ガス分子を吸着する反応は一般的に平衡反応であると考えられ、その平衡に達する挙動を、各濃度のアンモニアガスを含む空気を対象気体とし、薄膜試料TF−In1を利用して、FTIR測定により比較検討した。TF−In1を、濃度を大きく変化させたアンモニアガスを含む空気中に十分な時間静置し、FTIR測定により、アンモニアに由来するピークを測定した。
本実施例において用いたアンモニアガスの濃度は、約10ppb、約2ppm、約270ppm、および約67%である。対象気体に空気を用いたため幾分の水分を含んでおり、湿度は約20〜40%であった。アンモニアガスの濃度に応じて、1410〜1420cm−1付近のアンモニウムイオンに帰属されるFTIRのピークが現れ、アンモニアガス濃度約10ppbにおいて5ヶ月後、アンモニアガス濃度約2ppmにおいて約23時間後、約270ppmにおいて約42時間後、約67%において約22時間後にそのピーク強度を測定した。
本実施例では、多孔性配位高分子である金属シアノ錯体に吸着したアンモニウムイオンの量を比較するため、金属シアノ錯体中のシアノ基を起源とする吸収2060cm−1付近のピーク強度に対する、アンモニアガスを起源とするアンモニウムイオンに帰属される1410〜1420cm−1付近のピーク強度比を評価した。尚、ピーク面積の比を利用することでも同様な評価ができる。
その結果を図9(○印及び太い実線)に示す。図より、TF−In1は他の薄膜による平衡反応と比べて、ピーク強度比を広範囲とするアンモニアガス濃度に対してスム−ズに、かつ比較的大きな吸着量の増加率で変化することがわかった。インジウム−鉄シアノ錯体の場合、アンモニアガスに由来する赤外吸収のピークは、1400cm−1以上1460cm−1以下に1つしかなく、解析が単純で容易である格別の効果がある。このように、金属原子MをInに変えて調製された金属シアノ錯体の薄膜を用いることで、特徴的なアンモニアガスの吸着を行えることがわかった。
(実施例6)
<銅(II)−鉄シアノ錯体の大気中アンモニアの吸着>
多孔性配位高分子膜である銅(II)−鉄シアノ錯体のSi基板による薄膜試料TF−Cu2を用い、大気中アンモニアの吸着挙動を確認した。本実施例で用いた室内大気には約7ppbのアンモニアが含まれており、湿度は20〜40%であった。TF−Cu2をFTIR用フッ化バリウム窓付きの気体流通型のセルに設置し、ポンプにより室内大気を連続的に流通させた。流速は600mL/分に調整した。適宜FTIR測定により、TF−Cu2中のアンモニア由来のシグナルを確認した。
<銅(II)−鉄シアノ錯体の大気中アンモニアの吸着>
多孔性配位高分子膜である銅(II)−鉄シアノ錯体のSi基板による薄膜試料TF−Cu2を用い、大気中アンモニアの吸着挙動を確認した。本実施例で用いた室内大気には約7ppbのアンモニアが含まれており、湿度は20〜40%であった。TF−Cu2をFTIR用フッ化バリウム窓付きの気体流通型のセルに設置し、ポンプにより室内大気を連続的に流通させた。流速は600mL/分に調整した。適宜FTIR測定により、TF−Cu2中のアンモニア由来のシグナルを確認した。
結果を図10に示す。2095cm−1の比較的大きなピークは該薄膜試料中のシアノ基を起源とする吸収である。1600cm−1付近のピークはTF−Cu2に含まれる水分子を起源とする吸収である。TF−Cu2において1410cm−1と1335cm−1にアンモニウムに由来するピークがあり、流通時間とともに成長することがわかる(図10、太実線)。
多孔性配位高分子膜であるTF−Cu2中のアンモニアの評価は、得られる赤外吸収スペクトル中に現れるピークから算出される値により行われるが、その値は対応するピークの強度(高さ)や面積、それらを比較するための比等から算出される。算出の方法や組み合わせは限定されることはなく、あらゆる数学的な処理を用いることができる。
ここでのアンモニアの評価はフーリエ変換赤外分光測定(FTIR)で測定されるピークの強度(高さ)の、基準となる2095cm−1のピーク強度に対する比を用いた。これらの値の内、2095cm−1のピーク強度に対する1410cm−1のピーク強度の比を縦軸にとり、その時間変化をグラフ化した(図11、三角印及び実線)。同様に、2095cm−1のピーク強度に対する1335cm−1の強度の比を縦軸にとり、その時間変化をグラフ化した(図11、丸印及び実線)。さらに、それらの比を合算した値をプロットした(図11、四角印実線)。
TF−Cu2において、1410cm−1のピークから算出された値は時間とともに直線的に増加することが示唆される。一方、1335cm−1のピークから算出された値は時間とともに曲線的な増加傾向を示した。
さらに図11から明らかなように、それらを合算した値を用いることで、全体の値を増強できる。
以上のように、これら各ピークの強度(高さ)から算出される値の時間に対する変化、すなわちアンモニアの吸着する速度や、値の変化する割合を観測することで、低濃度のアンモニアを測定することが可能である。特に、初期の時間変化を評価することで、低濃度のアンモニアを測定することが可能である。銅(II)−鉄シアノ錯体のアンモニア吸着は平衡反応であるが、大気中アンモニア濃度に応じて錯体中濃度や吸着する速度も変化するため、大気中のアンモニア濃度を測定できると考えられる。本実施例で用いた大気中アンモニア濃度は約7ppbであり、TF−Cu2を用いることで低濃度のアンモニアを吸着し、赤外吸収ピーク1000cm−1以上1460cm−1以下に位置する1つのピークから算出される値の時間に対する変化により、その測定が可能である。
また、複数のピークを解析することでアンモニア濃度を測定することも可能で、赤外吸収ピーク1240cm−1以上1360cm−1以下に位置するピークから算出される値と、吸収ピーク1400cm−1以上1460cm−1以下に位置するピークから算出される値の2つを合算した値の時間に対する変化により、その測定が可能である。
(実施例7)
<ニッケル(II)−鉄シアノ錯体のアンモニアの吸着速度>
多孔性配位高分子膜であるニッケル(II)−鉄シアノ錯体のSi基板による薄膜試料TF−Ni2を用い、アンモニア濃度を179〜3062ppbまで変化させ、各濃度におけるアンモニアの吸着挙動を確認した。対象気体の湿度は約20〜30%の範囲であった。低濃度のアンモニアを含む対象気体として、純空気をベースガスとしアンモニアを発生するパーミエータによる気体と加湿した純空気とを混合したものを用いて、アンモニアの吸着挙動を確認した。TF−Ni2をFTIR用フッ化バリウム窓付きの気体流通型のセルに設置し、各濃度の気体を連続的に流通させた。流速は600mL/分に調整した。適宜FTIR測定により、TF−Ni2中のアンモニア由来のシグナルを確認した。
<ニッケル(II)−鉄シアノ錯体のアンモニアの吸着速度>
多孔性配位高分子膜であるニッケル(II)−鉄シアノ錯体のSi基板による薄膜試料TF−Ni2を用い、アンモニア濃度を179〜3062ppbまで変化させ、各濃度におけるアンモニアの吸着挙動を確認した。対象気体の湿度は約20〜30%の範囲であった。低濃度のアンモニアを含む対象気体として、純空気をベースガスとしアンモニアを発生するパーミエータによる気体と加湿した純空気とを混合したものを用いて、アンモニアの吸着挙動を確認した。TF−Ni2をFTIR用フッ化バリウム窓付きの気体流通型のセルに設置し、各濃度の気体を連続的に流通させた。流速は600mL/分に調整した。適宜FTIR測定により、TF−Ni2中のアンモニア由来のシグナルを確認した。
図12では、2096cm−1のピーク強度に対する1415cm−1のピーク強度の比に注目し、その時間変化をグラフ化した。この図中、丸印及び灰色実線はアンモニア濃度が179ppb、三角印及び黒破線はアンモニア濃度が326ppb、四角印及び黒実線はアンモニア濃度が973ppb、菱形印及び黒太実線はアンモニア濃度が3062ppb (約3ppm)、に対応している。各アンモニア濃度は、ホウ酸を用いた所定のイオンクロマト法により決定した。濃度に応じて、TF−Ni2の1415cm−1のピークから算出した値の時間に対する変化は相違していることがわかる。すなわち、アンモニア濃度が増加すると、時間に対する1415cm−1のピークから算出した値の増加する速度、割合は増加しているのがわかる。その速度を比較するためには時間的に初期のグラフの原点付近の立ち上がりをみるのがよいと考えられる。
図13では、図12の各濃度におけるデータ点の内、始めの3点から算出した傾きをプロットした。アンモニア濃度に応じて、1415cm−1のピークから算出した値の、特徴的な変化が観測された。今回用いた値は対応するピークの強度(高さ)を用いたが、その他、ピーク面積等からも算出できる。算出の方法や組み合わせは限定されることはなく、あらゆる数学的な処理を用いることができる。一例として本実施例に示したように、TF−Ni2がアンモニアを吸着した際に現れる1415cm−1のピーク強度(高さ)から算出される値の時間に対する初期の変化を用いて、アンモニアを吸着する速度や変化する割合を観測することで、低濃度のアンモニアを測定することが可能である。初期の変化としては、特に10分以内の変化が好ましい。
本実施例で用いた大気中アンモニア濃度は約3ppm又は1ppmを下回るppbレベルと希薄であるにもかかわらず、薄膜試料TF−Ni2を用いることで効率よく低濃度のアンモニアを吸着し、赤外吸収ピーク1000cm−1以上1460cm−1以下に位置する1つのピークから算出される値の時間に対する変化により、その測定が可能である。このように、多孔性配位高分子膜であるニッケル(II)−鉄シアノ錯体には格別の効果があることがわかる。また、TF−Ni2は、アンモニア吸着により1415cm−1のピークが現れるが、それ以外に約1310cm−1、1260cm−1、1070cm−1付近にピークが現れることがわかっており、赤外吸収ピーク1000cm−1以上1460cm−1以下に位置する1つのピークだけではなく、赤外吸収ピーク1000cm−1以上1460cm−1以下に位置するこれらの複数のピークから算出される値を合算した値の時間に対する初期の変化により、アンモニアガス濃度を測定することも可能である。
以上、本発明による実施例及びこれらに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
Claims (9)
- 測定対象ガス中に含まれるアンモニアの濃度を算出する方法であって、
一般式:AxM[M’(CN)6]y・zH2Oで示される金属シアノ錯体を主たる組成に有する多孔性配位高分子を少なくとも含む吸着膜に前記測定対象ガスを接触させた後、前記吸着膜を赤外線吸収測定し、平衡状態にある前記測定対象ガスを起源とする赤外線吸収値からアンモニアの濃度を算出することを特徴とする希薄アンモニア濃度測定方法。
但し、上記した一般式において、
M:原子番号3から83(但し、V,Cr,Mn,Fe,Ru,Co,Rh,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Zn,La,Eu,Gd,Lu,Ba,Sr,Caを除く)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属原子、
M’:V,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Ru,Co,Ni,Pt,Cuからなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属原子、
A:水素,リチウム,アンモニウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上の陽イオン、
x=0〜3、y=0.1〜1.5、z=0〜6の数値
である。 - 前記多孔性配位高分子はビスマス(Bi)の混合体を含み、赤外吸収ピークが1000cm−1以上1460cm−1以下に位置する1つのピークから算出される値、もしくは複数のピークから算出される値を合算した値によりアンモニアの濃度を算出することを特徴とする請求項1記載の希薄アンモニア濃度測定方法。
- 前記測定対象ガスは少なくとも2ppmを超えるアンモニアを含むことを特徴とする請求項2記載の希薄アンモニア濃度測定方法。
- 前記多孔性配位高分子はインジウム(In)を含み、赤外吸収ピークが1400cm−1以上1460cm−1以下に位置する1つのピークから算出される値によりアンモニアの濃度を算出することを特徴とする請求項1記載の希薄アンモニア濃度測定方法。
- 測定対象ガス中に含まれるアンモニアの濃度を算出する方法であって、
一般式:AxM[M’(CN)6]y・zH2Oで示される金属シアノ錯体を主たる組成に有する多孔性配位高分子を少なくとも含む吸着膜に前記測定対象ガスを接触させた後、前記吸着膜を赤外線吸収測定し、赤外線吸収ピークから算出される値の時間変化からアンモニアの濃度を算出することを特徴とする希薄アンモニア濃度測定方法。
但し、上記した一般式において、
M:原子番号3から83からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属原子、
M’:V,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Ru,Co,Ni,Pt,Cuからなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属原子、
A:水素,リチウム,アンモニウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上の陽イオン、
x=0〜3、y=0.1〜1.5、z=0〜6の数値
である。 - 前記赤外吸収ピークが1000cm−1以上1460cm−1以下の範囲内にある1つのピークから算出される値、もしくは複数のピークから算出される値を合算した値の時間変化からアンモニアの濃度を算出することを特徴とする請求項5記載の希薄アンモニア濃度測定方法。
- M:Ni、M’:Feであって、前記赤外吸収ピークが1400cm−1以上1460cm−1以下の範囲内にある1つのピークから算出される値、もしくは複数のピークから算出される強度又は面積の時間変化からアンモニアの濃度を算出することを特徴とする請求項6記載の希薄アンモニア濃度測定方法。
- 前記赤外吸収ピークが1240cm−1以上1360cm−1以下の範囲内にある1つのピークから算出される値、及び、1400cm−1以上1460cm−1以下の範囲内にある1つのピークから算出される値を合算した値の時間変化からアンモニアの濃度を算出することを特徴とする請求項5記載の希薄アンモニア濃度測定方法。
- 請求項1乃至7のうちの1つに記載の希薄アンモニア濃度測定方法に用いられ、前記多孔性配位高分子を少なくとも含む吸着膜を含みアンモニアの濃度を算出することを特徴とする希薄アンモニア濃度測定のためのセンサシステム。
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JP2020165958A (ja) * | 2019-03-26 | 2020-10-08 | Tdk株式会社 | アンモニア検知材及び検知器 |
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CN114414517A (zh) * | 2021-12-17 | 2022-04-29 | 山东微感光电子有限公司 | 一种低功耗本安型激光一氧化碳传感控制方法及系统 |
JP7426056B2 (ja) | 2019-02-28 | 2024-02-01 | 公立大学法人大阪 | 除去剤 |
-
2017
- 2017-07-13 JP JP2017136769A patent/JP2019020177A/ja active Pending
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