以下、本発明の建設機械の実施の形態を図面を用いて説明する。本実施の形態においては、建設機械の一例として油圧ショベルを例に挙げて説明する。
まず、本発明の建設機械の第1の実施の形態を適用した油圧ショベルの構成を図1及び図2を用いて説明する。図1は本発明の建設機械の第1の実施の形態を適用した油圧ショベルを示す側面図、図2は図1に示す油圧ショベルの上部旋回体を示す斜視図である。ここでは、運転席に着座したオペレータから見た方向を用いて説明する。
図1において、油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前端部に俯仰動可能に設けられた作業フロント4とで大略構成されている。
下部走行体2は、トラックフレーム6と、トラックフレーム6の後端部(図1の右端部)に回転可能に支持され、油圧モータ(図示せず)により駆動される左右の駆動輪7と、トラックフレーム6の前端部(図1の左端部)に回転可能に支持された左右の遊動輪8と、駆動輪7と遊動輪8とに掛け回された履帯9とを備えている。
作業フロント4は、掘削作業等を行うための多関節型の作動装置であり、ブーム11、アーム12、バケット13を備えている。ブーム11の基端側は、上部旋回体3の前端部に回動可能に連結されている。ブーム11の先端部には、アーム12の基端部が回動可能に連結されている。アーム12の先端部には、バケット13の基端部が回動可能に連結されている。ブーム11、アーム12、バケット13は、それぞれブームシリンダ11a、アームシリンダ12a、バケットシリンダ13aによって回動される。
上部旋回体3は、図1及び図2に示すように、下部走行体2上に旋回可能に搭載された旋回フレーム15と、旋回フレーム15上の左前側に設置されたキャブ16と、旋回フレーム15上の右側前端部、すなわち、作業フロント4のブーム11を挟んでキャブ16の反対側に配設された工具箱(図示ぜず)と、旋回フレーム15上の右側で工具箱の後方に配設された燃料タンク17及び作動油タンク18と、旋回フレーム15の後側に配置された機械室19とを含んで構成されている。旋回フレーム15の後端部には、作業フロント4との重量バランスをとるために、カウンタウェイト20が取り付けられている。キャブ16には、オペレータの座席(図示せず)や作業フロント4等を操作するための各種の操作装置(図示せず)が配置されている。機械室19は、後述の各種装置を収容するものである。
次に、本発明の建設機械の第1の実施の形態を適用した油圧ショベルの機械室内に収容された各種装置及び機械室の外郭の構成を図3及び図4を用いて説明する。図3は図2に示す上部旋回体の機械室の内部を左側端部及び右側端部を省略した状態で示す斜視図、図4は図1に示す上部旋回体をIV−IV矢視から見た断面図である。なお、図3及び図4において、図1及び図2に示す符号と同符合のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図3及び図4において、機械室19には、エンジン22、排ガス後処理装置23、油圧ポンプ24、冷却ファン25、熱交換装置26等の多数の装置が収容されている。これらの装置は、機械室19の下端部に位置する旋回フレーム15上に搭載されている。
旋回フレーム15は、複数のフレームにより構成された支持構造体である。具体的には、左右方向(水平方向)に一定の間隔をあけて並置され、前後方向に延びる断面I型の左テールフレーム31及び右テールフレーム32と、左テールフレーム31及び右テールフレーム32を挟んで左右両側に配置され、前後方向に延びる断面D型の左サイドフレーム33及び右サイドフレーム34と、左テールフレーム31及び右テールフレーム32からそれぞれ左側方及び右側方に張り出し、先端部に左サイドフレーム33及び右サイドフレーム34が取り付けられた複数の張出しビーム(図示せず)とを含んで構成されている。左テールフレーム31の右側面には、前後方向に離間した一対の左側エンジンブラケット37(後側のみ図示)が設けられている。右テールフレーム32の左側面には、前後方向に離間した一対の右側エンジンブラケット38(後側のみ図示)が設けられている。左側エンジンブラケット37及び右側エンジンブラケット38上には、防振マウント39が取り付けられている。
原動機としてのエンジン22は、出力軸が左右方向に延びた横置き状態で配置されている。エンジン22は、左テールフレーム31及び右テールフレーム32より上側に位置し、その左側の部分(一方側の部分)が左側エンジンブラケット37を介して第1支持部材としての左テールフレーム31により支持されていると共に、その右側の部分(他方側の部分)が右側エンジンブラケット38を介して第2支持部材としての右テールフレーム32により支持されている。左テールフレーム31及び右テールフレーム32は、エンジン22以外に、カウンタウェイト20(図1及び図2参照)を支持する機能も有している。エンジン22は、その下端部の中央部にオイルパン22aを備えている。オイルパン22aは、左テールフレーム31と右テールフレーム32との間に配置されている。
エンジン22には、排ガスを排出するための排気管28が接続されている。排気管28の下流側には、エンジン22の排ガスを浄化する排ガス後処理装置23が接続されている。排ガス後処理装置23は、エンジン22の右側(他方側)の上側部分に隣接して配置されており、右テールフレーム32の略真上に位置している。排ガス後処理装置23は、例えば、エンジン22内の燃焼により生じた粒子状物質を捕集するPM捕集装置41と、PM捕集装置41の下流側に配置され、排ガス中に含まれるNOxを浄化するNOx浄化装置51とで構成されている。PM捕集装置41とNOx浄化装置51は上下方向に並置されており、PM捕集装置41がNOx浄化装置51の下側に配置されている。
PM捕集装置41は、例えば、排気管28の下流端に接続され、前後方向に延びる筒状の第1収容体42と、第1収容体42内に配置されたPM捕集フィルタ及びPM捕集フィルタの上流側の酸化触媒(DOC)(ともに図示せず)とを備えている。PM捕集フィルタは排ガス中に含まれるPMを捕集するものであり、DOCは排ガス中の一酸化窒素(NO)、一酸化炭化(CO)、炭化水素(HC)等を酸化する触媒である。PM捕集装置41は、また、排ガスの温度を検知する温度センサやPM捕集フィルタの前後の差圧を検知する圧力センサ等の計測機器46を備えている。
PM捕集装置41においては、エンジン22内に燃料を噴射した後(メイン噴射後)にエンジン22内に燃料を再度噴射すること(ポスト噴射)により、大量の未燃燃料(HC)が第1収容体42に排出される。この未燃燃料はDOCにより酸化されるので、DOCにおいて酸化熱が発生して排ガスが昇温する。この昇温した排ガスによりPM捕集フィルタに堆積した粒子状物質が焼却除去され、PM捕集フィルタが再生される。PM捕集装置41の動作は、温度センサや圧力センサ等の計測機器46を用いることで制御されている。
NOx浄化装置51は、例えば、液体還元剤としての尿素水溶液(以下、尿素水という)を用いて排ガス中の窒素酸化物(NOx)を浄化するものである。NOx浄化装置51は、PM捕集装置41の下流側に接続され、前後方向に延びる筒状の第2収容体52と、第2収容体52内に配置された尿素選択還元触媒及び尿素選択還元触媒の下流側の酸化触媒(ともに図示せず)とを備えている。尿素選択還元触媒の上流側には、尿素水噴射弁55が設けられている。第2収容体52の下流側には、流出管56が設けられている。NOx浄化装置51は、また、排ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度センサ等の計測機器58を備えている。
NOx浄化装置51においては、尿素水噴射弁55により尿素水を排ガス中に霧状に噴射することで、尿素水が加水分解され、アンモニアが生成される。生成されたアンモニアは、尿素選択還元触媒に吸着され、排ガス中の窒素酸化物と反応して水と窒素とに分解される。この反応において窒素酸化物と反応しきれずに余ったアンモニアは、酸化触媒により酸化・分解される。NOx浄化装置51の動作は、NOx濃度センサ等の計測機器58や尿素水噴射弁55を用いることで制御される。
エンジン22には、油圧ポンプ24が動力伝達装置29を介して接続されており、油圧ポンプ24はエンジン22によって支持されている。油圧ポンプ24は、エンジン22の右側(他方側)で、かつ、排ガス後処理装置23よりも下方に配置されており、その左側端部が右テールフレーム32の真上に位置している。油圧ポンプ24は、エンジン22により駆動されることで、作動油タンク18(図1参照)内の作動油を吸い込み、作業フロント4の各シリンダ11a、12a、13a(図1参照)や下部走行体2(図1参照)の走行用油圧モータ等の油圧アクチュエータに圧油を供給するものである。
エンジン22の左側(一方側)には、冷却装置としての冷却ファン25及び熱交換装置26が配置されている。冷却装置は、エンジン22、排ガス後処理装置23、油圧ポンプ24や作業フロント4の各シリンダ11a、12a、13aを含む油圧システムで発生した熱を機械室19の外部へ放出するためのものである。
冷却ファン25は、エンジン22を挟んで油圧ポンプ24及び排ガス後処理装置23とは反対側に配置されており、左テールフレーム31よりも左側に位置している。冷却ファン25は、例えば、周方向に配列された複数の翼部25aを有する軸流ファンであり、回転軸線Lが左右方向(左テールフレーム31及び右テールフレーム32の並び方向)に延びている。冷却ファン25は、エンジン22により回転駆動されることで、機械室19内に外気C1を取り込み、機械室19の左側(一方側)から右側(他方側)へ向かって流れる冷却風C2、C3を生起する。
冷却ファン25の吸込側(左側)には、冷却ファン25に対面するように熱交換装置26が配置されている。熱交換装置26は、例えば、ラジエータやオイルクーラ(ともに図示せず)等で構成されるものであり、冷却ファン25により機械室19内に取り込んだ外気C1(冷却風)で、エンジン22を冷却する冷却水や油圧システムに流れる作動油等の流体を冷却する。
機械室19は、エンジン22、排ガス後処理装置23、油圧ポンプ24、冷却ファン25、熱交換装置26等の各種装置を取り囲む機械室カバー70により外郭が形成されている。機械室カバー70は、例えば、後方に開口した略箱状に形成されており、左サイドフレーム33に沿って前後方向に延在する左側方外郭としての左側面カバー71と、右サイドフレーム34に沿って前後方向に延在する右側方外郭としての右側面カバー72と、エンジン22の前方に立設され、左側面カバー71の前端部と右側面カバー72の前端部の間に亘って左右方向に延在する前側外郭としての前面カバー73と、左右の側面カバー71、72及び前面カバー73の上側を覆う上側外郭としての上面カバー74と、左右の側面カバー71、72及び前面カバー73の下側を覆う下側外郭としての下面カバー75とで構成されている。機械室カバー70の後方開口は、カウンタウェイト20の前面部により閉塞される。
左側面カバー71及び右側面カバー72はそれぞれ、熱交換装置26及び油圧ポンプ24に対面している。左側面カバー71及び右側面カバー72は開閉可能な構造となっており、左側面カバー71及び右側面カバー72からそれぞれ、熱交換装置26及び油圧ポンプ24へアクセス可能となっている、左側面カバー71には、機械室19内に外気C1を取り込む吸込口71aが設けられている。
上面カバー74は、例えば、左側面カバー71と右側面カバー72の間に亘って左右方向に延在し、排ガス後処理装置23の位置に対応する部分に開口部77aを有する第1上カバー77と、第1上カバー77よりも上方に膨出し、第1上カバー77の開口部77aを取り囲んで開閉可能に覆う第2上カバー78とで構成されている。第1上カバー77の右側端部には、機械室19外へ冷却風を排出する第1排出口77bが設けられている。第2上カバー78は、下側に開口する箱状に形成されており、閉状態において排ガス後処理装置23の一部(NOx浄化装置51の大部分)を収容可能に構成されている。第2上カバー78の上面部には、排ガス後処理装置23の流出管56から流出した排ガスを機械室19外へ排出するための排ガス排出口78aが設けられている。排ガス排出口78aには、排ガスを外部へ排出するための尾管78bが設けられている。第2上カバー78の右側面部には、機械室19外へ冷却風を排出する第2排出口78cが設けられている。
機械室19の下側外郭を形成する下面カバー75は、旋回フレーム15を構成する左テールフレーム31、右テールフレーム32、左サイドフレーム33、右サイドフレーム34を含む複数の支持構造部材の間に形成されている間隙(空間)を閉塞している。下面カバー75は、左テールフレーム31よりも冷却ファン25側の位置から左テールフレーム31と右テールフレーム32との間の位置までの領域に亘って、左テールフレーム31よりも下方に空間を形成するように下方へ突出する突出部(後述の第2下カバー82)を有している。
下面カバー75は、例えば、左サイドフレーム33(一方側の端部)から右サイドフレーム34(他方側の端部)に亘って延在する第1下カバー81と、第1下カバー81の下側に着脱可能に取り付けられた突出部としての第2下カバー82とで構成されている。
第1下カバー81は、その左端部及び右端部がそれぞれ左サイドフレーム33及び右サイドフレーム34に当接しており、その中央部が左テールフレーム31及び右テールフレーム32に当接している。第1下カバー81における冷却ファン25の翼部25aと左テールフレーム31との間に位置する部分には、第1開口部81aが設けられている。第1下カバー81における左テールフレーム31と右テールフレーム32との間に位置する部分には、第2開口部81bが設けられている。第1下カバー81は、例えば、複数の板状部材を組み合わせた板体である。
第2下カバー82は、左テールフレーム31よりも冷却ファン25側の位置から左テールフレーム31と右テールフレーム32との間の位置までの領域に亘って、左テールフレーム31よりも下方に空間を形成するように下方へ突出している。第2下カバー82は、例えば、上方に開口した箱状に形成され、概略水平面からなる底面部83と、底面部83の周縁部から立ち上がる周壁部84と、周壁部84の上端部から外側に突出する取付部85とで構成されている。周壁部84の左側部分(上流側部分)及び右側部分(下流側部分)は、底面部83から外側に拡がるように傾斜している。第2下カバー82は、第1下カバー81における第1開口部81a及び第2開口部81bを含む領域を下側から取り囲んで覆うように第1下カバー81に取り付けられている。
このように構成された下面カバー75においては、第1下カバー81の下面と第2下カバー82の底面部83及び周壁部84の内面とにより形成された空間が、第1下カバー81の第1開口部81a及び第2開口部81bを介して第1下カバー81の上方の空間、すなわち、冷却ファン25やエンジン22、排ガス後処理装置23等を収容している空間に連通している。したがって、下面カバー75の第1下カバー81と第2下カバー82とで形成される空間が左テールフレーム31の下方を冷却風が通過可能な通風路Pとして機能している。また、第1下カバー81の第1開口部81a及び第2開口部81bがそれぞれ通風路Pの流入口及び流出口として機能する。つまり、下面カバー75は、左テールフレーム31の下方を冷却風が通過可能で、流入口が左テールフレーム31よりも冷却ファン25側に位置すると共に、流出口が左テールフレーム31と右テールフレーム32との間の位置する通風路Pを形成するように構成されている。
機械室19内には、仕切り板87が熱交換装置26の外周部に設けられている。仕切り板87は、冷却ファン25の吐出した冷却風が吸込側へ逆流することを防止するものである。この仕切り板87には、冷却ファン25の翼部25aの外周側に向かって延びるシュラウド88が取り付けられている。シュラウド88は、機械室19に取り込んだ外気C1を冷却ファン25へ円滑に導入するためのものである。
機械室19内には、また、エンジン22及び排ガス後処理装置23を油圧ポンプ24から隔離する隔壁90が設けられている。隔壁90は、油圧ポンプ24から作動油が漏れ出た場合に、作動油がエンジン22及び排ガス後処理装置23の高温部に付着して発火することを防ぐものである。隔壁90は、右テールフレーム32の上側から立ち上がり、エンジン22側と油圧ポンプ24側とを左右方向に区切る下側縦板部91と、下側縦板部91の上端部から右側へ折れ曲がり、排ガス後処理装置23側と油圧ポンプ24側とを上下方向に区切る横板部92と、横板部92の右端部から立ち上がり、排ガス後処理装置23側と油圧ポンプ24側とを左右方向に区切る上側縦板部93とで構成されており、機械室19の下部から上部に亘って延在している。下側縦板部91には、油圧ポンプ24を貫通させるための貫通孔部91aが設けられている。
次に、本発明の建設機械の第1の実施の形態の作用・機能を図4を用いて説明する。図4において、太線矢印は冷却風の流れを示している。
図4において、エンジン22を駆動させると、排気管28や排ガス後処理装置23の内部には高温の排ガスが流れ、排気管28や排ガス後処理装置23の表面から周囲環境に熱が放出される。このような熱を機械室19の外部に効率的に排出することができなければ、排ガス後処理装置23の温度センサ、圧力センサ、NOx濃度センサなどの計測機器46、58や尿素水噴射弁55等の各種機器が過度に高温となってしまい、各種機器が故障してしまう虞がある。
エンジン22の駆動により、油圧ポンプ24が駆動されると共に、冷却ファン25も回転駆動される。冷却ファン25の回転駆動により、機械室19の左側面カバー71の吸込口71aから機械室19内に外気C1が吸い込まれ、機械室19内に冷却風が生起される。機械室19内の冷却風は、先ず、熱交換装置26を通過し、熱交換装置26内を流れる高温となったエンジン冷却水や作動油を冷却する。その後、熱交換装置26右側のシュラウド88内を通過して冷却ファン25に導入され、エンジン22側へ吐出される。冷却ファン25から吐出される冷却風には、冷却ファン25の翼部25aの回転によって強い旋回が生じており、遠心力が作用するので、半径方向の速度成分が誘起されている。
冷却ファン25から吐出された冷却風のうち、機械室19の上側へ吐出された冷却風C2は、エンジン22の上部周辺を通過して排気管28や排ガス後処理装置23の表面から熱を受け取った後、上面カバー74の第2排出口78cや上面カバー74の隙間などから機械室19の外部へ流出する。これにより、排ガス後処理装置23等から周囲に放出された熱の一部が機械室19の外部へ排出される。
冷却ファン25は、機械室19の下側にも冷却風C3を吐出する。機械室19の下端部には、前後方向(冷却ファン25の回転軸線Lに対して直交する方向)に延びる左テールフレーム31及び右テールフレーム32がエンジン22の下側に配置されているので、左テールフレーム31及び右テールフレーム32が機械室19の下側を流れる冷却風の抵抗体として作用する。そのため、冷却風の風量の低下を招く虞があった。
本実施の形態においては、機械室19の下側外郭を形成する下面カバー75により、左テールフレーム31の下方を冷却風が流通可能な通風路Pを形成している。そのため、機械室19の下側に吐出された冷却風は、通風路Pを流れることで、左テールフレーム31を迂回することができる。したがって、機械室19下側の冷却風に対する抵抗が低下するので、機械室19の下側の冷却風の風量を増加させることができる。
機械室19の下側に吐出された冷却風の具体的な流れは、次のとおりである。機械室19の下側の冷却風は、上述したように、半径方向の速度成分を有しているので、案内板を設置しなくとも、下面カバー75の第1下カバー81における冷却ファン25と左テールフレーム31との間に位置に設けた第1開口部81a(通風路Pの流入口)へ導かれ、下面カバー75の突出部としての第2下カバー82内(通風路P)に流入する。第2下カバー82内(通風路P)に流入した冷却風は、第2下カバー82の左側(第1開口部81a側)の周壁部84及び底面部83によって右斜め下方向から右方向へ転向し、第1下カバー81及び第2下カバー82の底面部83に沿って流通する。この冷却風は、第2下カバー82の右側(第2開口部81b側)の周壁部84により右向きから右斜め上方向へ転向し、第1下カバー81の第2開口部81b(通風路Pの流出口)を介して第2下カバー82内(通風路P)から流出する。
本実施の形態においては、第2下カバー82の周壁部84における第1開口部81a側の部分(通風路Pの上流側部分)及び第2開口部81b側の部分(通風路Pの下流側部分)を底面部83から外側に拡がるように傾斜させている。そのため、冷却風の通風路Pへの流入時及び通風路Pからの流出時の転向が緩やかとなり、流れの急激な転向に伴う剥離を抑制することができる。
また、本実施の形態においては、第1下カバー81における左テールフレーム31と右テールフレーム32との間に位置に、通風路Pの流出口としての第2開口部81bを設けている。このため、第2開口部81bよりも右側(冷却風下流側)の右テールフレーム32によって、第2開口部81b(通風路Pの流出口)から流出した冷却風の油圧ポンプ24の周辺部への流れ込みが抑制される。つまり、第2下カバー82内(通風路P)から流出した冷却風は、右テールフレーム32によって、エンジン22の右側下部近傍から右側上部近傍の排ガス後処理装置23側へ導かれる。この冷却風により、排ガス後処理装置23の第1収容体42や第2収容体52等の本体部が冷却されると共に、温度センサやNOx濃度センサ等の計測機器46、58や尿素水噴射弁55等の各種機器が冷却される。排ガス後処理装置23から熱を受け取った冷却風は、上面カバー74の第2排出口78cや上面カバー74の隙間などから機械室19の外部へ流出する。このように、排ガス後処理装置23は、冷却ファン25により機械室19の上側に吐出された冷却風C2に加えて下側に吐出された冷却風C3によっても冷却されるので、排ガス後処理装置23の各種機器の過度の温度上昇を防ぐことができる。
さらに、本実施の形態においては、機械室19内にエンジン22及び排ガス後処理装置23を油圧ポンプ24から隔離する隔壁90を設けている。このため、第2開口部81bから流出した冷却風の油圧ポンプ24の周辺部への流れ込みが隔壁90によって更に抑制される。したがって、隔壁90がない場合と比較すると、より多くの風量の冷却風を排ガス後処理装置23の周辺部に導くことができ、排ガス後処理装置23の各種機器を効率的に冷却することができる。
加えて、本実施の形態においては、隔壁90を機械室19の下側から上側に亘って延在するように設けている。このため、第2開口部81bから流出した冷却風の油圧ポンプ24の周辺部への流れ込みを隔壁90及び右テールフレーム32によってほぼ遮断することができる。その結果、第2下カバー82内(通風路P)から流出した冷却風のほぼ全量が排ガス後処理装置23の周辺部に導かれ、排ガス後処理装置23の各種機器をより効率的に冷却することができる。
なお、通風路Pから流出した冷却風のうち、一部のみが隔壁90の貫通孔部91aを通過して油圧ポンプ24の周辺部へ流れ込み、上面カバー74の第1排出口77bから機械室19の外部へ流出する。このように、隔壁90によりエンジン22側と隔離された油圧ポンプ24側の空間内でも、空気の流動性が確保されており、油圧ポンプ24側の空間内が過度に温度上昇することはない。
上述したように、本発明の建設機械の第1の実施の形態によれば、機械室カバー70の下側外郭を形成する部分である下面カバー75によって、冷却風が左テールフレーム(第1支持部材)31の下方を通過して左テールフレーム(第1支持部材)31と右テールフレーム(第2支持部材)32との間から流出可能な通風路Pが形成されているので、機械室19下部の冷却風の流動抵抗を低減することができると共に、通風路Pの流出口としての第2開口部81bから流出した冷却風を右テールフレーム(第2支持部材)32によって排ガス後処理装置23の周辺部に導くことができる。したがって、排ガス後処理装置23の周辺部に対する冷却風の風量を確保することができ、その結果、機械室19内に配置された排ガス後処理装置23の備えた各種機器の過度の温度上昇を防ぐことができる。
また、本実施の形態によれば、機械室19の下側外郭としての下面カバー75を、左右両端部に亘って延在し第1開口部81a及び第2開口部81bを有する第1下カバー81と、第1下カバー81における第1開口部81a及び第2開口部81bを含む領域を覆うように第1下カバー81の下側に着脱可能に取り付けた第2下カバー82とで構成したので、第1下カバー81を取り外さずに、第1下カバー81よりも小さい部材の第2下カバー82のみを取り外すことで、機械室19内に収容されたエンジン22の下部へのアクセスが可能となっている。したがって、エンジン22の下部へのアクセスが容易であるので、機械室19内のエンジン22等のメンテナンスの作業効率を向上することができる。
次に、本発明の建設機械の第1の実施の形態の変形例を図5及び図6を用いて説明する。図5は本発明の建設機械の第1の実施の形態の変形例における機械室の内部を左側端部及び右側端部を省略した状態で示す斜視図、図6は図5に示す本発明の建設機械の第1の実施の形態の変形例における機械室の内部を示す断面図である。なお、図5及び図6において、図1乃至図4に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図5及び図6に示す本発明の建設機械の第1の実施の形態の変形例が第1の実施の形態に対して相違する主な点は、機械室カバー70Aのうち下側外郭を形成する下面カバー75Aにおける第1下カバー81Aに開口部を1つのみ設けていることである。
具体的には、下面カバー75Aの第1下カバー81Aは、左テールフレーム31よりも冷却ファン25側の位置から左テールフレーム31と右テールフレーム32との間の位置までの領域に亘って設けられた開口部81cを有している。第2下カバー82は、第1実施の形態と同様な突出構造であり、下面カバー75Aの突出部に相当する部分である。第2下カバー82は、第1下カバー81Aにおける開口部81cを含む領域を下側から取り囲んで覆うように第1下カバー81Aの下側に取り付けられている。
このように構成された下面カバー75Aにおいては、第2下カバー82の底面部83及び周壁部84により形成された空間(下面カバー75Aの突出部内の空間)が第1下カバー81Aの開口部81cを介して第1下カバー81Aの上方の空間に連通している。したがって、第2下カバー82内の空間が左テールフレーム31の下方を冷却風が通過可能な通風路Pとして機能する。また、第1下カバー81Aの開口部81cが左テールフレーム31により左右方向に2つに分割された状態となっている。したがって、第1下カバー81Aの開口部81cのうち、左テールフレーム31よりも左側の領域が通風路Pの流入口として、左テールフレーム31よりも右側の領域が流出口として機能する。すなわち、下面カバー75Aは、左テールフレーム31の下方を冷却風が通過可能で、流入口が左テールフレーム31よりも冷却ファン25側に位置すると共に、流出口が左テールフレーム31と右テールフレーム32との間の位置する通風路Pを形成するように構成されている。
冷却ファン25から機械室19の下側へ吐出された冷却風は、第1下カバー81Aの開口部81cにおける左テールフレーム31よりも左側(冷却ファン25側)の部分(通風路Pの流入口)へ導かれ、下面カバー75Aの突出部としての第2下カバー82内(通風路P)に流入する。この冷却風は、第2下カバー82の底面部83に沿って流通し、第1下カバー81Aの開口部81cにおける左テールフレーム31よりも右側(右テールフレーム32側)の部分(通風路Pの流出口)を介して第2下カバー82内(通風路P)から流出する。
本実施の形態においては、第1下カバー81Aにおける通風路Pの流出口としての開口部81cの下流側部分が左テールフレーム31と右テールフレーム32との間に位置している。このため、第2下カバー82内(通風路P)から流出した冷却風は、第1の実施の形態の場合と同様に、右テールフレーム32によって油圧ポンプ24の周辺部への流れ込みが抑制される。つまり、第2下カバー82内(通風路P)から流出した冷却風は、右テールフレーム32によって、排ガス後処理装置23の周辺部へ導かれ、排ガス後処理装置23の温度センサやNOx濃度センサの計測機器46、48や尿素水噴射弁55等の各種機器を冷却する。このように、排ガス後処理装置23は、冷却ファン25により機械室19の上側に吐出された冷却風C2に加えて下側に吐出された冷却風C3によっても冷却されるので、排ガス後処理装置23の各種機器の過度の温度上昇を防ぐことができる。
上述した本発明の建設機械の第1の実施の形態の変形例によれば、前述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、第1下カバー81Aに対して、通風路P用の開口部81cを1つのみ設けているので、第1の実施の形態の場合よりも、第1下カバー81Aの製作工数を低減すことができる。
また、本実施の形態によれば、第1下カバー81Aの開口部81cが第1の実施の形態の第1下カバー81の第1開口部81aや第2開口部81bよりも大きいので、エンジン22の下部へのアクセスが第1の実施の形態の場合よりも容易となる。したがって、エンジン22等のメンテナンス時における作業効率をさらに向上させることができる。
次に、本発明の建設機械の第2の実施の形態を図7を用いて説明する。図7は本発明の建設機械の第2の実施の形態における機械室の内部を示す断面図である。なお、図7において、図1乃至図6に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図7に示す本発明の建設機械の第2の実施の形態は、第1の実施の形態が下面カバー75の突出部を第2下カバー82で構成することにより着脱可能な構造としたものであるに対して(図4参照)、下面カバー95の突出部を下面カバー95の他の部分と一体構造としたものである。
具体的には、機械室カバー70Bのうち下側外郭を形成する下面カバー95は、左サイドフレーム33(一方側の端部)と右サイドフレーム34(他方側の端部)との間に亘って延在しており、例えば、平板状の部材である。下面カバー95における、左テールフレーム31よりも冷却ファン25側の位置から左テールフレーム31と右テールフレーム32との間の位置までの領域には、左テールフレーム31よりも下方に空間を形成するように下方へ突出する突出部97が設けられている。突出部97は、概略水平面からなる底面部98と、底面部98から斜め上方に拡がる周壁部99とで構成されており、その上端縁に開口部97aを有している。突出部97は、例えばプレス加工により成形することができる。
このように構成された下面カバー95においては、下面カバー95の突出部97内の空間が左テールフレーム31の下方を冷却風が通過可能な通風路Pとして機能する。また、突出部97の開口部97aが左テールフレーム31により左右方向に2つに分割された状態となっている。したがって、突出部97の開口部97aのうち、左テールフレーム31よりも左側の領域が通風路Pの流入口として、左テールフレーム31よりも右側の領域が流出口として機能する。つまり、下面カバー95は、左テールフレーム31の下方を冷却風が通過可能で、流入口が左テールフレーム31よりも冷却ファン25側に位置すると共に、流出口が左テールフレーム31と右テールフレーム32との間の位置する通風路Pを形成するように構成されている。
冷却ファン25から機械室19の下側へ吐出された冷却風は、下面カバー95の突出部97の開口部97aにおける左テールフレーム31よりも左側(冷却ファン25側)の部分(通風路Pの流入口)へ導かれ、下面カバー95の突出部97内(通風路P)に流入する。この冷却風は、突出部97の底面部83に沿って流通し、突出部97の開口部97aにおける左テールフレーム31よりも右側(右テールフレーム32側)の部分(通風路Pの流出口)を介して突出部97内(通風路P)から流出する。
本実施の形態においては、突出部97の開口部97aにおける通風路Pの流出口としての下流側部分が左テールフレーム31と右テールフレーム32の間に位置している。このため、突出部97内(通風路P)から流出した冷却風は、第1の実施の形態の場合と同様に、右テールフレーム32によって、排ガス後処理装置23の周辺部へ導かれ、排ガス後処理装置23の温度センサやNOx濃度センサの計測機器46、48や尿素水噴射弁55等の各種機器を冷却する。このように、排ガス後処理装置23は、冷却ファン25によって機械室19の上側に吐出された冷却風C2に加えて下側に吐出された冷却風C3によっても冷却される。
上述した本発明の建設機械の第2の実施の形態によれば、前述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、下面カバー95の形成する通風路Pの流出口の大きさが第1の実施の形態の下面カバー75の形成する通風路Pの流出口(第2開口部81b)よりも大きくなるので、第1の実施の形態の場合よりも通風路の抵抗を低減することができる。
なお、上述した本発明の建設機械の第1及び第2の実施の形態及びその変形例においては、本発明の建設機械を油圧ショベル1に適用した例を示したが、本発明は、エンジン22の排ガスを浄化する排ガス後処理装置23を備えた油圧クレーンやホイールローダ等の各種の建設機械に広く適用することができる。
また、本発明は本実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
例えば、上述した実施の形態においては、機械室19内に隔壁90を設けた例を示したが、隔壁のない構成も可能である。