JP2019019119A - Rageアプタマーを含む癌を治療するための医薬組成物 - Google Patents

Rageアプタマーを含む癌を治療するための医薬組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】「RAGE」は、膜貫通型の細胞表面タンパク質であり、CMLを含む終末糖化産物(AGEs)の受容体として機能している。本開示は、RAGEアプタマーの新規治療用途を提供することを目的とする。【解決手段】本開示は、メラノーマ、膵臓癌、乳癌、肺癌、腎細胞癌、大腸癌、および肝癌からなる群から選択される癌を治療するための、RAGEアプタマーを含む医薬組成物に関する。【選択図】図2

Description

本開示は、RAGEアプタマーの治療用途に関する。
終末糖化産物(Advanced Glycation End-products;AGEs)は、グルコースなどの還元糖のカルボニル基と、タンパク質のアミノ基との非酵素的な反応(メイラード反応)により生じる高分子物質である。糖尿病などで慢性的に高血糖が続くと、循環血液中や組織でAGEsの生成が促進される。AGEsは、その受容体であるRAGE(Receptor for AGEs)を介して、様々な糖尿病関連疾患や加齢関連疾患に関与することが示唆されている。
アプタマーは、一本鎖の短いDNAまたはRNAオリゴヌクレオチドであり、様々な標的に高い親和性および特異性で結合することができる。これまでに、RAGEに結合してRAGEとそのリガンドとの結合を阻害するアプタマーが、糖尿病合併症や高血圧性腎障害の治療に有効であることが報告されている(特許文献1)。
特開2016−079184号公報
本開示は、RAGEアプタマーの新規治療用途を提供することを目的とする。
本開示は、ある態様において、RAGEアプタマーを含む癌を治療するための医薬組成物に関する。
本開示により、RAGEアプタマーを有効成分とする癌の治療薬が提供される。
[γ−32P]ATP標識RAGEアプタマーの生体内分布と経時的動態。8週齢Balb/c−nu/nuマウスの腹腔内に、[γ−32P]ATP標識RAGEアプタマーを7日間持続注入した。その後、血液、尿、および各臓器を、図中に示す時点で採取した。[γ−32P]ATP標識RAGEアプタマーを検出し、チェレンコフ光測定により測定した。結果は、各組織1gあたりのpmol量として示す。各群につき、N=4。 ヌードマウスにおけるRAGEアプタマーの腫瘍増殖(AおよびB)および体重(C)に対する効果。2×10個のG361細胞を、6週齢雌無胸腺ヌードマウスの上位側腹部に皮内投与した(n=14)。マウス腹腔内に、RAGEアプタマー(n=6)またはビヒクル(n=8)を、浸透圧ミニポンプにより持続注入した。その後、腫瘍体積および体重を、1週間に2回測定した。Aは、投与後42日目のG361腫瘍の典型写真である。矢頭は腫瘍を示す。*および**は、ビヒクル処理マウスの値と比較してそれぞれp<0.05およびp<0.01であることを示す。 G361腫瘍における、8−OHdG(A)、AGEs(B)、およびRAGE(C)の免疫染色に対する、RAGEアプタマーの効果。左の写真は免疫染色の代表的写真を示し、右のグラフは定量的データを示す。 G361腫瘍における、PCNA(A)、サイクリンD1(B)、p27(C)、VEGF(D)、CD31(E)、MCP−1(F)、およびMac−3(G)の免疫染色に対する、RAGEアプタマーの効果。左の写真は免疫染色の代表的写真であり、中央のグラフは定量的データを示す。右のグラフは、G361腫瘍における、サイクリンD1(B)、p27(C)、VEGF(D)、およびMCP−1(F)のmRNAレベルを示す。 ヌードマウスにおける、AST(A)、ALT(B)、およびmelanAの肝臓免疫染色(C)に対する、RAGEアプタマーの効果。Cの上の写真は免疫染色の代表的写真であり、下のグラフは定量的データを示す。*および**は、ビヒクル処理マウスの値と比較してそれぞれp<0.05およびp<0.01であることを示す。 AGE−BSAに暴露したG361メラノーマ細胞における、ROS産生(A)および細胞増殖(BおよびC)に対する、RAGEアプタマーまたはNACの効果。A:各群につきN=6。BおよびC:各群につきN=3。**は、非糖化BSA単独による対照の値と比較してp<0.01であることを示す。##は、AGE−BSA単独と比較してp<0.01であることを示す。 AGE−BSAに暴露したG361メラノーマ細胞における、サイクリンD1およびp27のタンパク質レベル(DおよびE)に対する、RAGEアプタマーまたはNACの効果。DおよびEの上の図は、サイクリンD1、p27およびβアクチンのウェスタンブロット解析のバンドを示す。定量的データを下のグラフに示す。データは、βアクチン由来シグナルの強度で標準化し、非糖化BSA単独で得られた値に対する比で示した。D:各群につきN=5。E:各群につきN=3。#および##は、AGE−BSA単独と比較してそれぞれp<0.05およびp<0.01であることを示す。 AGE−BSAに暴露したG361メラノーマ細胞における、VEGF(FおよびG)およびMCP−1(HおよびI)のmRNAレベルに対する、RAGEアプタマーまたはNACの効果。F−I:各群につきN=9。#は、AGE−BSA単独と比較してp<0.05であることを示す。 AGE−BSAに暴露したHUVECにおける、ROS産生(A)、細胞増殖(B)、およびVEGF(C)、MCP−1(D)、およびVCAM−1(E)のmRNAレベル、並びに前記HUVECへのTHP−1細胞の接着(F)に対する、RAGEアプタマーの効果。A:スーパーオキシド産生は、DHE染色の蛍光強度により評価した。B:細胞増殖は、HUVECへの[H]チミジン取り込みにより評価した。C−E:全RNAを転写し、リアルタイムPCRにより増幅した。データは、βアクチン由来シグナルの強度で標準化し、非糖化BSA単独で得られた値に対する比で示した。A:各群につきN=3。B:各群につきN=4。C:各群につきN=6。DおよびE:各群につきN=3。F:各群につきN=6。*および**は、AGE−BSA単独の値と比較してそれぞれp<0.05およびp<0.01であることを示す。 ヌードマウスへの、G361メラノーマ細胞およびRAGEアプタマーの投与スケジュール。RAGEアプタマーは、1週間投与後、3日間ごとに非投与と投与を繰り返した。RAGEアプタマーの投与期間を網掛けで示す。 G361メラノーマ細胞を移植したヌードマウスにおける、RAGEアプタマーの腫瘍増殖(AおよびB)および体重(C)に対する効果。2×10個のG361細胞を、6週齢雌無胸腺ヌードマウスの上位側腹部に皮下投与した(n=14)。2週間後に、腫瘍付近に、RAGEアプタマー(n=6)またはビヒクル(n=7)を、投与開始し、図8の投与スケジュールに従い投与した。その後、腫瘍体積および体重を、1週間に2回測定した。Aは、G361皮下注射後113日目、すなわちRAGEアプタマー継続投与99日目のG361腫瘍の典型写真である。矢頭は腫瘍を示す。*および**は、ビヒクル処理マウスの値と比較してそれぞれp<0.05およびp<0.01であることを示す。 G361腫瘍における、CML(A)、RAGE(B)、ニトロチロシン(C)、VEGF(D)、CD31(E)、およびVWF(F)の免疫染色に対する、RAGEアプタマーの効果。左の写真は免疫染色の代表的写真を示し、右のグラフは定量的データを示す。ビヒクル投与群はN=6、RAGEアプタマー投与群はN=5。 QCMを用いたCMLとRAGEの結合親和性に対するRAGEアプタマーの影響。あらかじめ固定したRAGEに、CMLのみ(A)、またはRAGEアプタマーを添加後にCML(B)を添加した。A、B:各群につきN=3。 CMLに暴露したG361メラノーマ細胞における、ROS産生に対するRAGEアプタマーの効果。ROS産生は、G361細胞をカルボキシ−HDFFDAで1時間処理した後、CMLにより刺激を開始して40分後に蛍光強度を測定して評価した。各群につきN=6(1μg/mlCMLのみN=9)。*は、ビヒクル単独による対照の値と比較してp<0.05であることを示す。#および##は、CML単独と比較してそれぞれp<0.05およびp<0.01であることを示す。
特に具体的な定めのない限り、本明細書で使用される用語は、有機化学、医学、薬学、分子生物学、微生物学等の分野における当業者に一般に理解されるとおりの意味を有する。以下にいくつかの本明細書で使用される用語についての定義を記載するが、これらの定義は、本明細書において、一般的な理解に優先する。
「RAGE」(Receptor for AGEs)は、膜貫通型の細胞表面タンパク質であり、CML(Nε-(carboxymethyl) lysine)を含む終末糖化産物(AGEs)の受容体として機能する。RAGEのリガンドとしては、グリセルアルデヒド由来のAGE−2を含む各種AGEsの他、HMGB−1(High Mobility Group Box 1)およびLPSなどが知られている。
「アプタマー」は、特異的に標的物質に結合する能力を持った一本鎖DNAまたはRNAであり、種々の立体構造をとりタンパク質や化合物に結合して抗体のような機能を発揮する。本明細書において「RAGEアプタマー」とは、RAGEに結合してRAGEとそのリガンドとの結合を阻害する、一本鎖DNAまたはRNAを意味する。
RAGEアプタマーは、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)法によって調製することができる。一本鎖DNAをライブラリー源とするSELEX法の概要を以下に説明する。まず、任意の2つのプライマー配列で挟まれた適当な長さのランダム配列を含むテンプレートDNAを合成する。本発明においては、ランダム配列の長さは、35塩基〜120塩基が適切である。このテンプレートDNAをPCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)で増幅して、ランダムDNAアプタマープールを得る。次いで、このランダムDNAアプタマープールを標的物質と会合させ、結合しなかったDNAを除去し、そして結合したDNAアプタマーを抽出する。得られたDNAアプタマーを、上記プライマー配列を用いるPCRによって増幅する。このとき、5〜8mMのMg2+存在下でPCRを行って、複製の正確性を低下させて変異を導入しやすくすることにより、標的物質との会合前のDNAアプタマープールに存在しない新たなDNAアプタマーを含むDNAアプタマープールが得られる。新たなDNAアプタマーは、結合力がより強い可能性があり、すなわち、DNAアプタマーが進化する可能性が生じる。この進化したDNAアプタマープールについて、上記の一連の操作を5〜15ラウンド繰り返すことによって、標的物質に結合するDNAアプタマーが得られる。最終ラウンドの後、得られたDNAアプタマープールは、当業者が通常行う操作によってクローニングされ、次いで配列決定される。このSELEX法における、テンプレートDNAの合成、PCRなどの操作、ならびにクローニングおよび配列決定は、当業者が通常用いる方法によって行われる。RAGEアプタマーは、このようにして決定された配列に基づいて、当業者が通常用いる方法によって化学合成することができる。
RAGEアプタマーは、その安定性を増加させるため、修飾ヌクレオチドにより構成されていてもよい。例えば、RAGEアプタマーは、ヌクレオチド間の結合部位にあるリン酸基の一部または全部において酸素原子が硫黄原子に置換された、ホスホロチオエート型(S化)オリゴヌクレオチドであってよい。
RAGEアプタマーは、一本鎖DNAまたは一本鎖RNAのいずれであってもよいが、好ましくは一本鎖DNAである。RAGEアプタマーは、少なくとも35塩基からなり、好ましくは35塩基〜120塩基、より好ましくは35塩基〜70塩基である、さらにより好ましくは35塩基〜50塩基である。
ある態様において、RAGEアプタマーは、以下の配列番号1〜10のいずれかの配列を含む一本鎖DNAである。

CCTGATATGGTGTCACCGCCGCCTTAGTATTGGTGTCTAC (配列番号1)
TCTGTTCAGGTTGGTACGGTGGAAGGTGTGATTCACGAGG (配列番号2)
CTTGGGTTGTTTATGTCGACCGCCAGTTTTGTGTTCAGCA (配列番号3)
CATTCTTAGATTTTTGTCTCACTTAGGTGTAGATGGTGAT (配列番号4)
TTGGTTCTCTTGCCCTCTTCTATTTTGTACGATGTTTCCT (配列番号5)
TTCCACTGAGTGCCGCGGACTGTTGTTGGGAGGTGGTGTG (配列番号6)
ATGGGGAGGAGGGGTGTCGTGGGGGGTGGGGGAGTGGGGA (配列番号7)
CTGGGGATGACTCGGATAGGATGTACGAGTTTGATGTGTA (配列番号8)
TTTGATCGAGCTGCGCCCTCCTCGCCGTAGAAGAGTGTGT (配列番号9)
TTTGGGGTGGAGTTAGGGGTGGATCAAGCGGGATTGTGTA (配列番号10)
RAGEアプタマーは、配列番号1〜10のいずれかの配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列同一性を有する配列を含み、RAGEに結合してRAGEとそのリガンドとの結合を阻害する、一本鎖DNAであってよい。また、RAGEアプタマーは、配列番号1〜10のいずれかの配列において1、2、または3個の塩基が欠失、置換、または付加された配列を含み、RAGEに結合してRAGEとそのリガンドとの結合を阻害する、一本鎖DNAであってもよい。
「配列同一性」とは、2つのオリゴヌクレオチド間の配列の類似の程度を意味し、比較対象の塩基配列の領域にわたって最適な状態(配列の一致が最大となる状態)にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。配列同一性の数値(%)は両方の配列に存在する同一の塩基を決定して、適合部位の数を決定し、次いでこの適合部位の数を比較対象の配列領域内の塩基の総数で割り、得られた数値に100をかけることにより算出される。最適なアラインメントおよび配列同一性を得るためのアルゴリズムとしては、当業者が通常利用可能な種々のアルゴリズム(例えば、BLASTアルゴリズム、FASTAアルゴリズムなど)が挙げられる。塩基配列の配列同一性は、例えばBLAST、FASTAなどの配列解析ソフトウェアを用いて決定される。
RAGEアプタマーがRAGEに結合してRAGEとそのリガンドとの結合を阻害するか否かは、例えば、ELISAまたはQCM(quartz crystal microbalance)法により調べることができる。ELISAの場合、AGEと結合するRAGEのVドメイン(v−RAGE)とRAGEアプタマーとを前反応させ、この反応混合物をRAGEのリガンド(例えばAGEまたはHMGB1)を固定化したELISAプレートに添加して、プレート中のリガンドに結合したRAGEを抗RAGE抗体で検出する。あるいは、v−RAGEをELISAプレートに固定化し、RAGEアプタマーとそのリガンドとを添加して、v−RAGEに結合したリガンドを抗体により検出してもよい。QCM法では、QCMセンサープレートにv−RAGEを固定化し、RAGEアプタマーの存在下または非存在下にRAGEのリガンドを添加して、v−RAGEに対するリガンドの結合をモニタリングすればよい。
好ましい態様において、RAGEアプタマーは、配列番号1〜10のいずれかの配列を含む一本鎖DNAであり、より好ましくは、配列番号1〜10のいずれかの配列からなる一本鎖DNAである。別の好ましい態様において、RAGEアプタマーは、CCTGATATGGTGTCACCGCCGCCTTAGTATTGGTGTCTAC(配列番号1)の配列を含む一本鎖DNAであり、より好ましくは、配列番号1の配列からなる一本鎖DNAである。
さらなる態様において、RAGEアプタマーは、配列番号1〜10のいずれかの配列を含むか、前記いずれかの配列からなり、当該配列において表1に示す位置でホスホロチオエート結合を含む一本鎖DNAである。

Figure 2019019119
RAGEアプタマーは、癌の治療に用いることができる。癌としては、メラノーマ、膵臓癌、乳癌、肺癌、腎細胞癌、大腸癌、肝癌などが例示される。好ましい態様において、癌はメラノーマである。癌の治療には、癌の増殖抑制、転移抑制、および再発抑制が含まれる。ある態様において、RAGEアプタマーは、癌転移抑制薬として、または血管新生阻害薬として、癌の治療に用いられる。
RAGEアプタマーを含む医薬組成物は、RAGEアプタマーを医薬上許容される担体と混合し、固形製剤(例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤など)、または液状製剤(例えば、シロップ剤、注射剤など)として製造することができる。医薬組成物は、用時溶解して用いられる凍結乾燥製剤であってもよい。医薬上許容される担体としては、例えば、賦形剤(例えば、乳糖、ショ糖、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等)、溶剤(例えば、水、食塩水、大豆油等)、保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エステル等)などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
医薬組成物の投与方法は、投与対象の年齢、体重、健康状態等によって適宜選択される。医薬組成物は、全身投与によっても、局所投与によっても投与しうる。例えば、メラノーマの場合、局所投与によることが好ましい。投与方法としては、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経皮投与などが挙げられる。本発明の組成物の投与量もまた、投与方法、投与対象の年齢、体重、健康状態等によって適宜選択される。例えば、成人1日当たり、RAGEアプタマーの量として、例えば、0.2〜100mgを投与することができるが、これに限定されない。
本開示は、癌を治療する方法であって、それを必要とする患者に有効量のRAGEアプタマーを投与することを含む方法、および、癌を治療するための医薬の製造のための、RAGEアプタマーの使用を提供する。前記方法および使用は、医薬組成物に関する記載に準じて実施することができる。
アプタマーは、抗体と比較して免疫原性が低く、製造も容易であり、熱安定性が高く化学修飾も可能であるという利点を有する。また、受容体であるRAGEを阻害すれば、AGEs以外のRAGEリガンドの作用も阻害することができ、高い治療効果が期待できる。よって、RAGEアプタマーは癌の治療薬として有益である。
本開示の例示的態様を以下に記載する。

1.RAGEアプタマーを含む、癌を治療するための医薬組成物。
2.癌が、メラノーマ、膵臓癌、乳癌、肺癌、腎細胞癌、大腸癌、および肝癌からなる群から選択される、前記1に記載の医薬組成物。
3.癌がメラノーマである、前記2に記載の医薬組成物。
4.癌転移抑制薬である、前記1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
5.血管新生阻害薬である、前記1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
6.RAGEアプタマーが、以下からなる群から選択される、前記1〜5のいずれかに記載の医薬組成物:
(1)配列番号1〜10のいずれかの配列を含む、一本鎖DNA;
(2)配列番号1〜10のいずれかの配列と90%以上の配列同一性を有する配列を含み、RAGEに結合してRAGEとそのリガンドとの結合を阻害する、一本鎖DNA;および、
(3)配列番号1〜10のいずれかの配列において1、2、または3個の塩基が欠失、置換、または付加された配列を含み、RAGEに結合してRAGEとそのリガンドとの結合を阻害する、一本鎖DNA。
7.RAGEアプタマーが配列番号1〜10のいずれかの配列を含む、前記1〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
8.RAGEアプタマーが配列番号1の配列を含む、前記1〜7のいずれかに記載の医薬組成物。
9.RAGEアプタマーが配列番号1〜10のいずれかの配列からなる、前記1〜8のいずれかに記載の医薬組成物。
10.RAGEアプタマーが配列番号1の配列からなる、前記1〜9のいずれかに記載の医薬組成物。
11.RAGEアプタマーがホスホロチオエート型オリゴヌクレオチドである、前記1〜10のいずれかに記載の医薬組成物。
12.癌を治療する方法であって、それを必要とする患者に有効量のRAGEアプタマーを投与することを含む方法。
13.癌を治療するための医薬の製造のための、RAGEアプタマーの使用。
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.方法
試薬
ウシ血清アルブミン(BSA)(脂肪酸およびグロブリンフリー、凍結乾燥粉末)、D−グリセルアルデヒド、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、およびN−アセチルシステイン(NAC)はSigma-Aldrich (St. Louis, MO, USA)より購入した。モノクロ−ナル抗8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)抗体(Ab)は、Japan Institute for the Control of Aging, NIKKEN SEIL Co., Ltd. (Shizuoka, Japan)より入手した。RAGE、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、CD31、およびβアクチンに対するポリクローナル抗体は、Santa Cruz Biotechnology (Santa Cruz, CA, USA)より購入した。サイクリンD1およびp27に対するマウスモノクローナル抗体およびウサギポリクローナル抗体は、Cell Signaling Technology (Beverly, MA, USA)より得た。PCNA(proliferation cell nuclear antigen)、MCP−1(monocyte chemoattractant protein-1)、およびCD107b(Mac−3)に対するウサギポリクローナル抗体、およびmelanAに対するウサギモノクローナル抗体は、Abcam Ltd (Cambridge, United Kingdom)より得た。カルボキシ−HDFFDA (5-(and-6)-carboxy-2',7'-dihydrofluorescein diacetate)は、Thermo Fisher Scientific (Sab Jose, CA, USA)から購入した。
AGEsの調製
BSA(25mg/ml)を、滅菌条件下で0.1MのD−グリセルアルデヒドと1週間インキュベートした。次いで、結合していない糖を、リン酸緩衝生理食塩水に対する透析により除去した。得られた糖化BSA(本明細書中、AGE−BSAとも記載する)を、以下の実験でAGEsとして使用した。対照の非糖化BSAは、D−グリセルアルデヒドを添加しない点を除き、同一の条件で調製した。また、AGE−BSAを抗原としてAGEsに対するマウスモノクローナル抗体を作製した。
RAGEアプタマーの調製
特開2016−079184号公報に記載のとおり、SELEX法により、RAGEに結合するアプタマーとして以下の配列番号1〜10の配列が選択された。これら配列に基づき、ヌクレオチド間の結合部位にあるリン酸基の酸素原子が硫黄原子に置換された表2の#1〜#10のアプタマーを合成した。以下の実験では、RAGE#1をRAGEアプタマーとして使用した。

CCTGATATGGTGTCACCGCCGCCTTAGTATTGGTGTCTAC (配列番号1)
TCTGTTCAGGTTGGTACGGTGGAAGGTGTGATTCACGAGG (配列番号2)
CTTGGGTTGTTTATGTCGACCGCCAGTTTTGTGTTCAGCA (配列番号3)
CATTCTTAGATTTTTGTCTCACTTAGGTGTAGATGGTGAT (配列番号4)
TTGGTTCTCTTGCCCTCTTCTATTTTGTACGATGTTTCCT (配列番号5)
TTCCACTGAGTGCCGCGGACTGTTGTTGGGAGGTGGTGTG (配列番号6)
ATGGGGAGGAGGGGTGTCGTGGGGGGTGGGGGAGTGGGGA (配列番号7)
CTGGGGATGACTCGGATAGGATGTACGAGTTTGATGTGTA (配列番号8)
TTTGATCGAGCTGCGCCCTCCTCGCCGTAGAAGAGTGTGT (配列番号9)
TTTGGGGTGGAGTTAGGGGTGGATCAAGCGGGATTGTGTA (配列番号10)

Figure 2019019119
動物実験
メラノーマ細胞であるG361細胞(American Type Culture Collection, Manassas, VA, USA)(2×10個)を、6週齢雌無胸腺ヌードマウス(Japan Clea, Tokyo, Japan)の上位側腹部に皮内注射した(n=14)。マウス腹腔内に、RAGEアプタマー(38.4pmol/day/g体重、n=6)またはビヒクル(n=8)を、浸透圧ミニポンプ(Alzet osmotic pumps, model 1004, Cupertino, CA, USA)により持続注入した。腫瘍の最小径と最大径および体重を1週間に2回測定し、腫瘍体積を以下の式により計算した:体積(mm)=((最小径)×(最大径))/2。RAGEアプタマーまたはビヒクルの42日間の持続注入後、マウスを殺し、肝臓障害のマーカーであるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルを化学分析装置(FUJI DRI-CHEM 4000V; Fujifilm Co., Tokyo, Japan)により測定した。G361メラノーマおよび肝臓を、免疫組織化学的解析のため採取した。
[γ−32P]ATP標識RAGEアプタマーの分布および動態
8週齢雌Balb/c−nu/nuマウスに、[γ−32P]ATP標識RAGEアプタマー(38.4pmol/day/g体重)を浸透圧ポンプにて持続注入し、注入開始前(0日目)、注入開始後1日目、3日目および7日目、および注入停止後3日目および7日目に、マウスを殺し、血液および臓器を採取した。RAGEアプタマーの半減期は、7日間注入後の皮膚におけるアプタマー量が半減するまでに要する時間とした。
免疫組織化学的解析
G361メラノーマの標本を、4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋し、4μM間隔で切片化した。内因性のペルオキシダーゼ活性を阻害し、切片を、8−OHdG、AGEs、RAGE、PCNA、サイクリンD1、p27、VEGF、CD31、MCP−1、CD107b(Mac−3)、およびmelanAに対する抗体と4℃で一晩インキュベートした。サイクリンD1以外の反応は、Histofine Simple Stain MAX-PO(MULTI) (Nichirei Co., Tokyo, Japan)で反応を可視化し、サイクリンD1の発現は、VECTOR M.O.M. immunodetection Kit (Vector Lab., Inc., Burlingame, CA, USA)により検出した。各サンプルについて5つの異なるフィールドの免疫反応を、マイクロコンピューター支援ImageJにより測定した。
G361メラノーマ細胞およびヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)
G361細胞は、10%ウシ胎児血清添加DMEMで維持した。細胞増殖、RT−PCR、およびウェスタンブロッティングの実験では、G361細胞を、1mg/mlの非糖化BSAまたはAGE−BSAにより、各種濃度のRAGEアプタマーまたはNACの存在下または非存在下で24時間処理した。G361細胞の実験は、1%ウシ胎児血清を含む培地において行った。
HUVECは、Lonza Group Ltd. (Basel, Switzerland)より入手した。ジヒドロエチジウム(DHE)染色およびRT−PCR解析の実験では、HUVECを、50μg/mlの非糖化BSAまたはAGE−BSAにより、100nMのRAGEアプタマーの存在下または非存在下で4時間処理した。HUVECの実験は、2%ウシ胎児血清、ヒト線維芽細胞増殖因子、およびヘパリンを含む培地において行った。
G361細胞における細胞内活性酸素種(ROS)生成の測定
ROSの細胞内生成は、蛍光標識であるカルボキシ−HDFFDにより検出した。G361細胞を、10μMのカルボキシHDFFDAとともに、またはカルボキシHDFFDAを添加せず、1時間インキュベートした。その後、細胞を1mg/mlの非糖化BSAまたはAGE−BSAにより、1、10、100nMのRAGE−アプタマーの存在下または非存在下で処理した。24分後、細胞内のスーパーオキシド産生を測定した。ROS産生は、カルボキシHDFFDAを処理した細胞の蛍光から、カルボキシHDFFDAを処理しなかった細胞の蛍光を差し引いて算出した。
G361細胞増殖アッセイ
G361細胞の増殖は、WST−1に基づく比色分析により、製造元(Roche Applied Science, Indianapolis, IN, USA)の説明にしたがい測定した。
HUVECのROS産生
HUVECを、3MのDHE (Molecular Probes Inc., Eugene, OR, USA)を含有するフェノールレッドフリー最小必須培地でインキュベートした。30分後、画像を共焦点レーザー顕微鏡により得た。ROS産生は、各サンプルの5つの異なるフィールドにおける蛍光強度により評価し、マイクロコンピューター支援ImageJにより解析した。
HUVECへの[H]チミジン取り込み
HUVECを、50μg/mlの非糖化BSAまたはAGE−BSAにより、100nMのRAGEアプタマーの存在下または非存在下で20時間処理した。[H]チミジンとさらに4時間インキュベートした後、細胞内への[H]チミジンの取り込みを測定した。
ウェスタンブロット解析
サイクリンD、p27、およびβアクチンに対する抗体でメンブレンを染色し、次いで免疫複合体をECL検出システム(Amersham Bioscience, Buckinghamshire, United Kingdom)により可視化した。
リアルタイムRT−PCR
全RNAを、G361メラノーマ標本、培養G361細胞、またはHUVECから、NucleoSpin RNA XS kit (Takara Bio Inc., Shiga, Japan)により供給元の説明にしたがい抽出した。定量的リアルタイムRT−PCRは、TaqMan 5 fluorogenic nuclease chemistry (Applied Biosystems, San Francisco, CA, USA)により行った。
HUVECへのTHP−1細胞の接着の評価
HUVECを、50μg/mlの非糖化BSAまたはAGE−BSAにより、100nMのRAGEアプタマーの存在下または非存在下で24時間処理し、その後、BCECF−AM標識THP−1細胞と4時間インキュベートした。インキュベーション後、接着したTHP−1細胞の蛍光強度を測定した。
統計学的解析
いずれの値も平均±SDで示した。2つの動物群間の統計学的比較は、Student’s t-testにより行った。多重比較は、One-way ANOVAとTukey’s test、Dunnett’s test、Steel-Dwass test、またはStudent’s t-testとにより行った。
2.結果
RAGEアプタマーの生体内分布および動態
図1Aに示すように、RAGEアプタマーを7日間継続的に投与すると、主に脂肪組織、皮膚、筋肉および腎臓に分布した。注入を停止すると、RAGEアプタマーのレベルは徐々に減少したが、浸透圧ポンプの除去から7日後でも皮膚および肝臓で検出された(図1B)。皮膚におけるRAGEアプタマーの消失半減期は、約3.7±1.1日であった。
ヌードマウスにおけるRAGEアプタマーの腫瘍増殖および体重に対する効果
図2AおよびBに示すように、G361メラノーマ細胞はヌードマウスにおいて増殖の速い腫瘍を形成し、その大きさは42日後に400mmに達した。RAGEアプタマーの腹腔内への持続注入により、31日目から腫瘍体積の有意な減少がみられ、この腫瘍増殖阻害効果は42日目まで維持された。実験終了時点で、RAGEアプタマー処理マウスにおけるG361腫瘍の体積は、ビヒクル処理マウスの体積の1/3であった(図2B)。処理開始から17日目以降、RAGEアプタマー処理マウスの体重は、ビヒクル処理マウスの体重より有意に重かった(図2C)。
ヌードマウスのG361腫瘍におけるAGE−RAGE酸化ストレスに対するRAGEアプタマーの効果
図3A−Cに示すように、免疫組織化学的解析により、ヌードマウスのG361腫瘍において、酸化ストレスマーカーである8−OHdG、AGEs、およびRAGEの発現レベルが、RAGEアプタマーの処理により有意に減少したことが明らかとなった。
ヌードマウスにおける腫瘍増殖、血管新生、およびマクロファージ浸潤に対するRAGEアプタマーの効果
増殖細胞の免疫組織化学的検出により、PCNA陽性の細胞核の全細胞核に対する割合が、RAGEアプタマーを処理したヌードマウスのG361メラノーマにおいて有意に低いことが明らかとなった(図4A)。さらに、RAGEアプタマーの処理により、G1期の進行を促進するG1サイクリンの一つであるサイクリンD1、およびG1期の停止をもたらすサイクリン依存キナーゼ阻害因子であるp27の、腫瘍におけるmRNAおよびタンパク質のレベルが減少した(図4BおよびC)。また、図4D−Gに示すように、RAGEアプタマーの42日間の処理により、ヌードマウスにおけるVEGF、MCP−1、並びに、それぞれ内皮細胞およびマクロファージのマーカーであるCD31およびMac−3の腫瘍での発現レベルが減少した。これらの結果は、RAGEアプタマーがG361細胞の増殖を直接的に抑制したこと、およびRAGEアプタマーが血管新生および腫瘍へのマクロファージの浸潤を抑制したことを示す。
ヌードマウスにおけるG361腫瘍の肝転移に対するRAGEアプタマーの効果
RAGEアプタマーの処理により、ヌードマウスにおいて、ASTおよびALTの上昇が有意に阻害され、G361腫瘍の肝転移が減弱した(図5)。メラノーマのマーカーであるMelanAは、正常非担がんマウスでは検出されなかった。
AGE−BSAに暴露されたG361メラノーマ細胞における、ROS産生、細胞増殖、VEGFおよびMCP−1の遺伝子発現に対するRAGEアプタマーの効果
図6−1〜6−3に示すように、AGE−BSAは、G361メラノーマ細胞におけるROS産生、細胞増殖、サイクリンD1およびp27の発現、およびVEGFおよびMCP−1のmRNAレベルを有意に増加させ、これらはいずれも濃度依存的にRAGEアプタマーの処理により抑制された。抗酸化剤であるNACの作用は、RAGEアプタマーに類似し、3mMのNACはG361細胞に対するAGE−BSAのこれら効果を有意に減弱させた。これらの結果は、RAGEアプタマーによる腫瘍増殖の抑制がG361細胞におけるAGE−RAGE-酸化ストレス系の阻害によるものであることを示唆する。
AGE−BSAに暴露されたHUVECにおける、ROS産生、細胞増殖、および炎症反応に対するRAGEアプタマーの効果
G361細胞の場合と同様に、AGE−BSAは、HUVECにおけるスーパーオキシドの産生、[H]チミジン取り込みにより測定される細胞増殖、およびVEGF、VCAM−1およびMCP−1の遺伝子発現、並びにTHP−1マクロファージのHUVECへの接着を有意に刺激し、これらはいずれもRAGEアプタマーにより阻害された(図7)。100nMのRAGEアプタマーは、非糖化BSAに暴露されたHUVECにおけるROS産生、VEGF、MCP−1、またはVCAM−1のmRNAレベルには影響しなかった(データ非提示)。これらの結果は、RAGEアプタマーが血管内皮細胞においてAGE−RAGE系を阻害し、血管新生およびマクロファージ浸潤を抑制することを示唆する。
1.方法
試薬
CMLは、Iris(Trischenreuth, Bavaria, Germany)から購入した。他は、実施例1と同様の試薬を用いた。CMLに対するマウスモノクローナル抗体は、Trans Genic Inc(Fukuoka, Japan)より入手した。ニトロチロシンに対するマウスモノクローナル抗体は、Stress Marq Biosciences Inc(Victoria, British Columbia, Canada)より得た。VWFに対するマウスモノクローナル抗体は、Santa Cruz Biotechnology (Santa Cruz, CA, USA)より購入した。
RAGEアプタマーの調製
実施例1と同様に、以下の実験では、RAGE#1(表2)をRAGEアプタマーとして使用した。
動物実験
メラノーマ細胞であるG361細胞(American Type Culture Collection, Manassas, VA, USA)(2×10個)を、6週齢雌無胸腺ヌードマウス(Japan Clea, Tokyo, Japan)の上位側腹部に皮下注射した(n=14)。15日目から、RAGEアプタマー(RAGE#1)(38.5pmol/day/g体重、n=6)またはビヒクル(n=7)を、腫瘍付近に注射により直接投与した。実施例1と同様に、腫瘍体積および体重を測定した。G361メラノーマを、免疫組織化学的解析のために採取した。
免疫組織化学的解析
G361メラノーマの標本を、実施例1と同様に切片化し、切片を、CML、RAGE、ニトロチロシン、VEGF、CD31およびVWFに対する抗体と4℃で一晩インキュベートした。CML、ニトロチロシン、VEGFおよびVWFの発現は、VECTOR M.O.M. immunodetection Kit (Vector Lab., Inc., Burlingame, CA, USA)により検出し、その他はHistofine Simple Stain MAX-PO(MULTI) (Nichirei Co., Tokyo, Japan)で反応を可視化した。各サンプルについて5つの異なるフィールドの免疫反応を、マイクロコンピューター支援ImageJにより測定した。
結合解析
RAGEアプタマーがRAGEに結合してRAGEとそのリガンドとの結合を阻害するか否かを、QCM(quartz crystal microbalance)法により調べた。QCMセンサープレートにv−RAGEを固定化し、RAGEアプタマーの存在下または非存在下にCMLを添加して、v−RAGEに対するリガンドの結合をモニタリングした。
G361メラノーマ細胞
G361細胞は、10%ウシ胎児血清添加DMEMで維持した。RT−PCRの実験では、G361細胞を、0、0.1、1、5μg/mlのCMLにより、RAGEアプタマーの存在下または非存在下で4時間処理した。G361細胞の実験は、1%ウシ胎児血清を含む培地で行った。
G361細胞における細胞内活性酸素種(ROS)生成の測定
ROSの細胞内生成は、実施例1と同様、蛍光標識であるカルボキシ−HDFFDにより検出した。G361細胞を、10μMのカルボキシHDFFDAとともに、またはカルボキシHDFFDAを添加せず、1時間インキュベートした。その後、細胞を0、0.1、1、5μg/mlのCMLで処理した。あるいは、1μg/mlのCML存在下または非存在下で、0、1、10、100nMのRAGEアプタマーにより処理した。40分後、細胞内のスーパーオキシド産生を測定した。ROS産生は、カルボキシHDFFDAを処理した細胞の蛍光から、カルボキシHDFFDAを処理しなかった細胞の蛍光を差し引いて算出した。
リアルタイムRT−PCR
全RNAを、培養G361細胞から、NucleoSpin RNA Plus kit (Takara Bio Inc., Shiga, Japan)により供給元の説明にしたがい抽出した。定量的リアルタイムRT−PCRは、TaqMan 5 fluorogenic nuclease chemistry (Applied Biosystems, San Francisco, CA, USA)により行った。
2.結果
ヌードマウスに移植したヒトメラノーマの増殖に対するRAGEアプタマー直接投与の効果
G361細胞(2×10個)を、6週齢雌無胸腺ヌードマウスの上位側腹部に皮下注射した(n=14)。15日目から、RAGEアプタマー(RAGE#1)(38.5pmol/day/g体重、n=6)またはビヒクル(n=7)を、腫瘍付近に注射により直接投与した(図8)。その結果、RAGEアプタマー処理群では、ビヒクル処理群と比較して腫瘍体積が有意に減少した(図9A、B)。また、RAGEアプタマー投与により体重の減少を有意に抑制した(図9C)。
ヌードマウスのG361腫瘍におけるAGE−RAGE酸化ストレスおよび血管新生に対するRAGEアプタマー直接投与の効果
図10A−Fに示すように、免疫組織化学的解析により、ヌードマウスのG361腫瘍において、AGEsの一つであるCML、RAGE、酸化ストレスマーカーのニトロチロシン、血管新生因子のVEGF、新生血管のマーカーであるCD31およびVWF(von Willebrand factor)の発現レベルが、RAGEアプタマーの処理により、有意に減少したことが明らかとなった。これらの結果は、RAGEアプタマーがAGE−RAGE酸化ストレスおよび血管新生を抑制したことを示す。
CMLとRAGEの結合親和性に対するRAGEアプタマーの影響
QCM(Quarts Crystal Microbalance)を用いてCMLとRAGEの結合親和性に対するRAGEアプタマーの影響を検討した。あらかじめホスト分子として水晶板に固定したv−RAGEにCMLを添加した結果、振動周波数が減少し、RAGEとCMLの結合が確認された(図11A)。同様の実験系においてCML添加前にRAGEアプタマーを事前に投与したところRAGEアプタマーとRAGEが結合し、その後のCMLとの結合を阻害する傾向が見られた(図11B)。
CMLに暴露されたG361メラノーマ細胞における、ROS産生に対するRAGEアプタマーの効果
G361メラノーマ細胞にCMLを添加するとROS産生は有意に増加し、CML1μg/mlで最もROSが産生された(図12A)。CML1μg/mlを添加したG361メラノーマ細胞培養系にRAGEアプタマーを添加すると、そのROS産生量はCMLのみ投与した群と比較し有意に減少した(図12B)。これらの結果は、CMLが酸化ストレスを誘導し、RAGEアプタマーはそれを抑制したことを示す。
配列番号1:アプタマー
配列番号2:アプタマー
配列番号3:アプタマー
配列番号4:アプタマー
配列番号5:アプタマー
配列番号6:アプタマー
配列番号7:アプタマー
配列番号8:アプタマー
配列番号9:アプタマー
配列番号10:アプタマー

Claims (7)

  1. RAGEアプタマーを含む、癌を治療するための医薬組成物。
  2. 癌が、メラノーマ、膵臓癌、乳癌、肺癌、腎細胞癌、大腸癌、および肝癌からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 癌がメラノーマである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
  4. RAGEアプタマーが、以下からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物:
    (1)配列番号1〜10のいずれかの配列を含む、一本鎖DNA;
    (2)配列番号1〜10のいずれかの配列と90%以上の配列同一性を有する配列を含み、RAGEに結合してRAGEとそのリガンドとの結合を阻害する、一本鎖DNA;および、
    (3)配列番号1〜10のいずれかの配列において1、2、または3個の塩基が欠失、置換、または付加された配列を含み、RAGEに結合してRAGEとそのリガンドとの結合を阻害する、一本鎖DNA。
  5. RAGEアプタマーが配列番号1〜10のいずれかの配列を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
  6. RAGEアプタマーが配列番号1〜10のいずれかの配列からなる、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
  7. RAGEアプタマーがホスホロチオエート型オリゴヌクレオチドである、請求項1〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
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