以下、本発明の一実施の形態について、図1乃至図5を参照して説明する。なお、以下の各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。
熱交換器の構成
まず、図1により、本実施の形態による熱交換器の概略について説明する。図1は、本実施の形態による熱交換器を示す分解斜視図である。
図1に示すように、本実施の形態による熱交換器(プレート型熱交換器)10は、一方の固定板11と、一方の固定板11から離間して設けられた他方の固定板12と、一方の固定板11と他方の固定板12との間に互いに積層して配置された複数(図1では4枚)の熱交換器用金属プレート(金属薄板状プレート)20A〜20Dとを備えている。
このうち、複数の金属プレート20A〜20Dは、第1の流体F1用の金属プレート20A、20Bと、第2の流体F2用の金属プレート20C、20Dとからなっている。
一対の熱交換器用金属プレート20A、20B(以下、金属プレート20A、20Bともいう)の間には、所定のパターンが形成されたシート状ロウ材(パターン状ロウ材)30Aが配置されている。このシート状ロウ材30Aによって一対の金属プレート20A、20Bが互いに接合されている。同様に、一対の熱交換器用金属プレート20C、20D(以下、金属プレート20C、20Dともいう)の間には、所定のパターンが形成されたシート状ロウ材(パターン状ロウ材)30Bが配置されている。このシート状ロウ材30Bによって一対の金属プレート20C、20Dが互いに接合されている。
シート状ロウ材30A、30Bは、それぞれロウ材外周領域31と、ロウ材外周領域31の内側に形成された貫通領域32と、貫通領域32内に配置された複数の被覆領域35およびブリッジ(繋ぎ部)36とを有している。なお、シート状ロウ材30A、30Bの構成については後述する。
図1において、シート状ロウ材30A、30Bとしては、接合前の状態を示しており、貫通領域32内に被覆領域35およびブリッジ36が配置されている。一方、完成後の熱交換器10において、被覆領域35およびブリッジ36のうち、伝熱フィン25に接合される部分を除いて溶融されている。
一方の固定板11と金属プレート20Aとの間には、パターンが形成されていないシート状ロウ材(非パターン状ロウ材)30Cが配置されている。このシート状ロウ材30Cによって一方の固定板11と金属プレート20Aとが互いに接合されている。また、一対の金属プレート20B、20Cの間には、パターンが形成されていないシート状ロウ材(非パターン状ロウ材)30Dが配置されている。このシート状ロウ材30Dによって一対の金属プレート20B、20Cが互いに接合されている。さらに、他方の固定板12と金属プレート20Dとの間には、パターンが形成されていないシート状ロウ材(非パターン状ロウ材)30Eが配置されている。このシート状ロウ材30Eによって他方の固定板12と金属プレート20Dとが互いに接合されている。
シート状ロウ材30C〜30Eは、シート状ロウ材30A、30Bとは異なり、ロウ材外周領域31、貫通領域32、被覆領域35およびブリッジ36を有していない。すなわち、シート状ロウ材30C〜30Eは、流体が通過する入口側開口33A、33B、出口側開口34A、34Bが貫通形成されている点を除き、開口等を有することなく、一面に広がっている。また、シート状ロウ材30C〜30Eは、互いに略同一の平面形状を有している。
このように、金属プレート20A〜20D同士、または金属プレート20A〜20Dと固定板11、12とは、シート状ロウ材30A〜30Eを用いて互いに接合されている。これにより、金属プレート20A〜20Dの平坦度にわずかな差が生じていたり、金属プレート20A〜20Dの積層枚数が増えたりした場合であっても、金属プレート20A〜20Dの接合不良が発生せず、生産効率が低下するおそれがない。
一方の固定板11および他方の固定板12は、それぞれ平面略矩形状を有している。このうち一方の固定板11には、流入管13A、13Bおよび流出管14A、14Bが接続されている。これに対して他方の固定板12は、開口等が形成されることなく、平坦な形状を有している。
流入管13Aおよび流出管14Aは、それぞれ第1の流体F1が流入および流出するものである。第1の流体F1は、図示しないコンプレッサー又はポンプによって、流入管13Aから熱交換器10に流入し、金属プレート20A、20B内で循環しながら熱交換を行い、流出管14Aから流出するようになっている。また、流入管13Bおよび流出管14Bは、それぞれ第2の流体F2が流入および流出するものである。第2の流体F2は、図示しないコンプレッサー又はポンプによって、流入管13Bから熱交換器10に流入し、金属プレート20C、20D内で循環しながら熱交換を行って、流出管14Bから流出するようになっている。
第1の流体F1および第2の流体F2は、少なくとも流入管13A、13Bに流入する時点では、互いに温度が異なっている。第1の流体F1および第2の流体F2としては、二酸化炭素、空気等の気体であっても良く、水等の液体であっても良い。第1の流体F1および第2の流体F2は、同一種類の流体を用いても良く、互いに異なる種類の流体を用いても良い。
このように、熱交換器10においては、金属プレート20A、20Bの間を通過する第1の流体F1と、金属プレート20C、20Dの間を通過する第2の流体F2との間で、熱交換が行われるようになっている。なお、金属プレート20A〜20Dの枚数は、図1では便宜上4枚の場合を示しているが、これに限らず、例えば20枚以上200枚以下程度としても良い。
なお、このような熱交換器10は、例えば給湯器のヒートポンプユニット、空調設備、車載EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラー、化学プラント等に用いることができる。
金属プレートの構成
次に、図2(a)(c)を参照して、本実施の形態によるシート状ロウ材を用いて接合される金属プレートの構成について説明する。なお、以下においては、第1の流体F1用の一対の金属プレート20A、20Bの構成について説明するが、第2の流体F2用の一対の金属プレート20C、20Dについてもその構成は略同様である。
図2(a)(c)に示すように、一対の金属プレート20A、20Bは、それぞれ平面略矩形形状であり、長手方向と幅方向とを有している。図2(a)(c)において、長手方向はY方向に平行であり、幅方向はY方向に直交するX方向に平行である。
金属プレート20A、20Bは、それぞれ外周領域21と、外周領域21の内側に形成された薄肉領域(ハーフエッチング領域)22とを有している。このうち外周領域21は、各金属プレート20A、20Bの外周全域に沿って環状に形成されている。この外周領域21は、ハーフエッチングが施されておらず、金属プレート20A、20B全体の厚みと同一の厚みを有している。
また、薄肉領域22は、外周領域21よりも薄肉となっており、金属プレート20A、20Bの一面側のみに形成されている。この場合、薄肉領域22は、当該一面側から例えばハーフエッチング加工を施すことにより形成されている。なお、「ハーフエッチング」とは、被エッチング材料をその厚み方向に途中までエッチングすることをいう。薄肉領域22の深さは、例えば、外周領域21の厚みの40%以上60%以下程度とされても良い。
薄肉領域22のうち、金属プレート20A、20Bの一対の角部近傍には、それぞれ入口側開口23A、出口側開口24Aが形成されている。この入口側開口23A、出口側開口24Aは、第1の流体F1が通過するとともに、薄肉領域22に連通している。
また、外周領域21のうち、金属プレート20A、20Bの他の一対の角部近傍には、それぞれ入口側開口23B、出口側開口24Bが形成されている。この入口側開口23B、出口側開口24Bは、第2の流体F2が通過するとともに、金属プレート20A、20Bの薄肉領域22とは連通しないようになっており、他方、金属プレート20C、20Dの薄肉領域22に連通されるようになっている。
これらの入口側開口23A、23B、出口側開口24A、24Bは、金属プレート20A、20Bを貫通するように形成される。なお、入口側開口23A、23B、出口側開口24A、24Bは、薄肉領域22を片面側からハーフエッチングにより形成する際、薄肉領域22と同時に両面側からエッチングにより形成されても良い。
薄肉領域22には、複数の伝熱フィン25がそれぞれZ方向(金属プレート20A、20Bの厚み方向)に突出して設けられている。各伝熱フィン25が設けられている箇所の厚みは、外周領域21の厚みと同一である。一方、各伝熱フィン25は、外周領域21および他の伝熱フィン25からそれぞれ平面方向(X方向およびY方向)に離間して配置されている。このため、各伝熱フィン25は島状に独立して配置されており、各伝熱フィン25の周囲には、第1の流体F1が通過するための流路26が形成されている。なお、図1および図2(a)(c)において、便宜上、一部の伝熱フィン25のみを示しているが、実際には、薄肉領域22の略全域に亘って伝熱フィン25が配置されている。
各伝熱フィン25は、平面略S字形状を有している。この伝熱フィン25は、第1の流体F1の主流方向D(Y方向)に沿って一定の間隔を隔てて多数配置されている。また、伝熱フィン25は、第1の流体F1の主流方向D(Y方向)に対して垂直な方向(X方向)にも一定の間隔で平行に配置されている。この伝熱フィン25は、その長手方向両端を渦や旋回流などの乱れが生じないような流線型にそれぞれ成形しており、流体抵抗を最小にするように構成されている。なお、各伝熱フィン25の形状は、平面円形状、平面長円形状、または平面多角形形状としても良い。
本実施の形態において、図2(a)(c)に示すように、外周領域21のうち薄肉領域22側には、長手方向縁部27と横方向縁部28とが形成されている。このうち長手方向縁部27は、第2の流体F2の主流方向D(Y方向)に沿って直線状に延びている。なお、長手方向縁部27は、伝熱フィン25の形状に沿って波形状又はジグザグ形状としても良い。また、横方向縁部28は、外周領域21のうち主流方向Dに直交する方向(X方向)に沿って屈曲して形成されている。
シート状ロウ材の構成
次に、図2(b)、図3および図4を参照して、本実施の形態によるシート状ロウ材の構成について説明する。なお、以下においては、金属プレート20A、20Bを接合するシート状ロウ材30Aの構成について説明するが、金属プレート20C、20Dを接合するシート状ロウ材30Bについてもその構成は略同様である。
図2(b)は、接合される前の状態におけるシート状ロウ材30Aを示している。このシート状ロウ材30Aは、平面略矩形形状であり、長手方向と幅方向とを有している。図2(b)において、長手方向はY方向に平行であり、幅方向はY方向に直交するX方向に平行である。またシート状ロウ材30Aは、ロウ材外周領域31と、ロウ材外周領域31の内側に形成された貫通領域(エッチング領域)32とを有している。このうちロウ材外周領域31は、金属プレート20A、20Bの外周領域21と略同一形状をもち、シート状ロウ材30Aの外周全域に沿って環状に形成されている。このロウ材外周領域31は、エッチングが施されていない領域となっている。
貫通領域32は、シート状ロウ材30Aの厚み方向を貫通して形成されている。この場合、貫通領域32は、例えばシート状ロウ材30Aの両面側からエッチング加工を施すことにより形成されている。
ロウ材外周領域31のうち、シート状ロウ材30Aの一対の角部近傍には、それぞれ入口側開口33B、出口側開口34Bが形成されている。この入口側開口33B、出口側開口34Bは、第2の流体F2が通過するとともに、シート状ロウ材30Aの貫通領域32とは連通しないようになっており、他方、金属プレート20C、20Dの薄肉領域22に連通されるようになっている。これら入口側開口33B、出口側開口34Bは、シート状ロウ材30Aを貫通するように形成されている。なお、入口側開口33B、出口側開口34Bは、貫通領域32をエッチングにより形成する際、貫通領域32と同時に両面側からエッチングされることにより形成されても良い。
貫通領域32の内部には、複数の被覆領域35が配置されている。各被覆領域35は、対応する伝熱フィン25の平面全体を覆う位置にそれぞれ配置されている。各被覆領域35の厚みは、ロウ材外周領域31の厚みと同一である。また、各被覆領域35は、ロウ材外周領域31および他の被覆領域35からそれぞれ平面方向(X方向およびY方向)に離間して配置されている。この被覆領域35は、貫通領域32を両面側からエッチングにより形成する際、エッチングされずに残存する領域の一部からなっている。
また各被覆領域35は、それぞれブリッジ36を介してロウ材外周領域31に保持されている。すなわち、各被覆領域35には少なくとも1本のブリッジ36が連結されており、このブリッジ36は、他の被覆領域35及び/又はロウ材外周領域31に連結されている。これにより、全ての被覆領域35が、ブリッジ36を介してロウ材外周領域31に保持され、ロウ材外周領域31から脱落しないようになっている。なお、ブリッジ36は、貫通領域32を両面側からエッチングにより形成する際、エッチングされずに残存する領域の一部からなっている。なお、図1および図2(b)において、便宜上、一部の被覆領域35およびブリッジ36のみを示しているが、実際には、貫通領域32の略全域に亘って被覆領域35およびブリッジ36が配置されている。
図3は、シート状ロウ材30Aの幅方向(X方向)に沿う断面図(図2(b)のIII−III線断面図)であって、ブリッジ36がシート状ロウ材30Aの幅方向全体にわたって延びている箇所における断面図である。なお、図3において、シート状ロウ材30Aは厚み方向(Z方向)に誇張して描かれている。
図3に示すように、シート状ロウ材30Aは、一対の幅方向端部30b、30bと、一対の幅方向端部30b、30bの中間に位置する幅方向中央部30aとを有している。本実施の形態において、シート状ロウ材30Aの幅方向中央部30aは、幅方向端部30bよりも厚く盛り上がっており、幅方向中央部30aの厚みtaは、幅方向端部30bの厚みtbよりも厚くなっている。この場合、シート状ロウ材30Aは、幅方向中央部30aにおいて最も厚くなっており、幅方向端部30bにおいて最も薄くなっている。また、シート状ロウ材30Aは、表面及び裏面の両方において、幅方向中央部30aから各々の幅方向端部30bに向けてなだらかに傾斜している。なお、シート状ロウ材30Aの長手方向(Y方向)の全域にわたり、幅方向中央部30aが幅方向端部30bよりも厚くなっている。
本実施の形態において、幅方向中央部30aの厚みtaは、20μm以上500μm以下としても良い。また、シート状ロウ材30Aの幅方向中央部30aの厚みtaと幅方向端部30bの厚みtbとの差(ta−tb)は、幅方向中央部30aの厚みtaの1%以上20%以下となっている。さらに、幅方向中央部30aの厚みtaと幅方向端部30bの厚みtbとの差(ta−tb)は、2μm以上50μm以下となっている。幅方向中央部30aの厚みtaと幅方向端部30bの厚みtbとの差を上記範囲とすることにより、シート状ロウ材30Aによって金属プレート20A、20Bの幅方向中央部における反りを吸収し、金属プレート20A、20B同士を容易に接合することができる。
なお、シート状ロウ材30Aの最も厚い箇所は、幅方向中央部30aに限らず、幅方向中央部30aから幅方向にずれていても良い。また、シート状ロウ材30Aは、必ずしも幅方向中央部30aから幅方向端部30bに向けて厚みが単調に減少しなくてもよい。例えば、シート状ロウ材30Aは、幅方向中央部30aから幅方向端部30bに向けて、厚みが増減しつつ、全体として幅方向に沿って厚みが減少しても良い。
図示していないが、他のシート状ロウ材30B〜30Eについても同様に、幅方向中央部30aの厚みtaが幅方向端部30bの厚みtbよりも厚くなっている。
次に、図4を参照して、被覆領域35およびブリッジ36の構成について説明する。図4は図2(b)のIV部拡大図であり、対応する伝熱フィン25の位置を仮想線(二点鎖線)で示している。
図4に示すように、各被覆領域35は、伝熱フィン25に沿うように平面略S字形状を有している。図4において、領域Sは、被覆領域35の外周縁を示している。この被覆領域35は、伝熱フィン25の平面全体を覆っている。この場合、各被覆領域35は、対応する伝熱フィン25の形状よりもわずかに大きくなっており、例えば10μm以上200μm以下程度側方に広く形成されていても良い。これにより、接合時に被覆領域35と伝熱フィン25との間にわずかな位置ずれが生じた場合であっても、伝熱フィン25同士を確実に接合することができる。なお、各伝熱フィン25の形状が平面円形状、平面長円形状、または平面多角形形状である場合、各被覆領域35の形状は、各伝熱フィン25の形状に合わせて平面円形状、平面長円形状、または平面多角形形状としても良い。
各被覆領域35は、第1の流体F1の主流方向D(Y方向)に沿って一定の間隔を隔てて多数配置されている。また、被覆領域35は、第1の流体F1の主流方向D(Y方向)に対して垂直な方向(X方向)にも一定の間隔で平行に配置されている。
ブリッジ36は、平面略直線形状を有している。ブリッジ36は、各被覆領域35の端部と、当該被覆領域35に対してX方向に隣接する被覆領域35の途中部分とを互いに連結している。本実施の形態において、各ブリッジ36は、それぞれX方向に平行に延びている。この場合、伝熱フィン25の端部の周囲において、シート状ロウ材30の面積を広く確保することができるので、シート状ロウ材30A、30Bの伝熱フィン25の端部同士を確実に接合することができる。
次に、図5を参照して、シート状ロウ材30Aによって接合された状態の金属プレート20A、20Bについて説明する。図5は、金属プレート20A、20B同士の接合が完了した状態を示しており、図4のV−V線断面に対応している。
図5に示すように、金属プレート20A、20Bは、薄肉領域22が形成された面同士を互いに対向させるように配置されている。また、一対の金属プレート20A、20Bの薄肉領域22および複数の伝熱フィン25は、それぞれ互いに鏡面対称となるように形成されている。このため、金属プレート20A、20Bを互いに接合した際、薄肉領域22同士が一致し、対応する各伝熱フィン25同士が一致するように接合される。さらに、金属プレート20A、20Bの間にシート状ロウ材30Aが介在され、シート状ロウ材30Aによって金属プレート20A、20Bが互いに接合されている。このとき、金属プレート20A、20Bの薄肉領域22と、シート状ロウ材30Aの貫通領域32とによって第1の流体F1が流れる流路26が形成される。
このように接合が完了した状態で、シート状ロウ材30Aは、金属プレート20A、20Bの外周領域21および伝熱フィン25に対応する領域を除いて、溶融されて除去されている。すなわちシート状ロウ材30Aは、ロウ材外周領域31と、貫通領域32内に配置されるとともに、各伝熱フィン25の形状に対応する複数のフィン接合領域35aとを有する。フィン接合領域35aは、被覆領域35のうち伝熱フィン25に接合された部分からなる。
この場合、流路26には、シート状ロウ材30Aを構成する材料によって覆われていない領域が存在している。流路26には、シート状ロウ材30Aの微量な残渣38が残留していても良い。残渣38は、被覆領域35のうち伝熱フィン25に接合されなかった部分や、ブリッジ36が溶融することにより形成されたものである。なお、流路26のうち平面方向から見て面積で例えば40%以上90%以下の領域が残渣38によって覆われることなく、金属プレート20A、20Bの材料が露出していることが好ましい。流路26に占めるシート状ロウ材30Aの残渣38の量はごくわずかであり、流路26が残渣38によって閉塞されたり、第1の流体F1の流れに影響が生じたりするおそれはない。
ところで、金属プレート20A、20Bは、ハーフエッチングされているため、薄肉領域22が形成された面側が凹状となるように反りやすい。このため、対向する金属プレート20A、20Bを対向させた際、その幅方向中央部に隙間が生じる傾向がある。これに対して本実施の形態においては、シート状ロウ材30Aの幅方向中央部30aは、幅方向端部30bよりも厚いので、金属プレート20A、20B同士の隙間に、より多くのロウ材を配置することが可能となる。このため、シート状ロウ材30Aによって金属プレート20A、20Bを接合した際、金属プレート20A、20Bの幅方向中央部30aをより強固かつ確実に接合することができる。なお、シート状ロウ材30Aによって接合された後、金属プレート20A、20Bの反りはほぼ解消された状態となり、金属プレート20A、20Bは幅方向に沿って水平な形状となる。
金属プレート20A、20Bは、熱伝導性の良い金属が好ましく、例えばステンレス、鉄、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタンなど、種々選択可能である。また、金属プレート20A、20Bの厚みは、それぞれ例えば0.1mm以上2.0mm以下としても良い。このことは、上述した金属プレート20C、20Dについても同様である。
シート状ロウ材30Aは、例えばニッケル、銀、銅、又はこれらのいずれかを含む合金など、種々選択可能である。このことは、上述したシート状ロウ材30B〜30Eについても同様である。
本実施の形態において、流路26の高さh(Z方向の距離)(図5参照)は、金属プレート20A、20Bの薄肉領域22の深さと、接合後のシート状ロウ材30Aの厚みとの合計によって規定される。具体的には、流路26の高さhは、例えば0.1mm以上1.0mm以下とすることが好ましい。このように、流路26の高さhを抑えることにより、熱交換器10をコンパクトにすることができるとともに、熱交換の効率を高めることができる。
熱交換器の製造方法
次に、上述した熱交換器の製造方法について説明する。
まず、上述した金属プレート20A〜20Dをエッチングによりそれぞれ作製する。この場合、各金属プレート20A〜20Dに対応する平板状のプレート用金属板を準備し、このプレート用金属板をそれぞれハーフエッチング加工することにより、薄肉領域22を形成する。また、薄肉領域22を形成する際、プレート用金属板を両面からエッチング加工することにより、入口側開口23A、23B、出口側開口24A、24Bをそれぞれ形成する。このとき、外周領域21および伝熱フィン25に対応する領域は、エッチング加工されることなくプレート用金属板と同様の厚みを保持する。なお上述したように、エッチングにより作製された金属プレート20A〜20Dは、ハーフエッチングされた面である薄肉領域22側の面が凹状に反る傾向がある。
また、各シート状ロウ材30A、30Bに対応する平板状のロウ材用金属板を準備し、このロウ材用金属板をエッチング加工することにより、上述したシート状ロウ材30A、30Bを作製する。
この場合、まず図6に示すように、ロウ材用の溶融した金属30Qを、溶解炉91から回転する鋳造ロール92上に供給する。次に、鋳造ロール92上で金属30Qを冷却固化することによりシート状に形成し、これをロール93に巻き取ることにより、平板状のロウ材用金属板30Pを得る。
なお、図7に示すように、溶解炉91から鋳造ロール92上に金属30Qを供給する際、鋳造ロール92の上方にメッシュ状のフィルタ94を設け、このフィルタ94を通過させて金属30Qを鋳造ロール92に流す。この場合、フィルタ94によって、鋳造ロール92の幅方向中央部に金属30Qを多く供給することにより、ロウ材用金属板30Pの幅方向中央部の厚みを幅方向端部の厚みよりも厚くすることができる。
次に、このようにして得られたロウ材用金属板30Pを両面からエッチング加工することによりそれぞれ貫通領域32を形成する。また、貫通領域32を形成するのと同時に、入口側開口33A、33B、出口側開口34A、34Bも形成される。一方、ロウ材外周領域31、被覆領域35およびブリッジ36が同時に形成され、これらの領域はエッチング加工されることなく、加工前のロウ材用金属板30Pの厚みを保持する。このようにして、幅方向中央部30aの厚みが幅方向端部30bよりも厚いシート状ロウ材30A、30Bが得られる。
同様に、上述したシート状ロウ材30C〜30Eをエッチングによりそれぞれ作製する。これらシート状ロウ材30C〜30Eには、流体が通過する開口33A、33B、34A、34Bのみがエッチングにより貫通形成されている。
続いて、図1に示すように、一方の固定板11と他方の固定板12との間に、金属プレート20A〜20Dと、シート状ロウ材30A〜30Eとを挟持する。この場合、一方の固定板11側から順に、シート状ロウ材30C、金属プレート20A、シート状ロウ材30A、金属プレート20B、シート状ロウ材30D、金属プレート20C、シート状ロウ材30B、金属プレート20D、シート状ロウ材30E、および他方の固定板12が配置される。
なお、一方の固定板11と、金属プレート20A〜20Dと、シート状ロウ材30A〜30Eと、他方の固定板12とには、それぞれ予め所定の位置に図示しない位置決め孔が形成されている。この位置決め孔を用いて、一方の固定板11と、金属プレート20A〜20Dと、シート状ロウ材30A〜30Eと、他方の固定板12とを位置決めし、これらを抵抗溶接法により位置合せ固定しても良い。
次に、このようにして位置決めされた一方の固定板11と、金属プレート20A〜20Dと、シート状ロウ材30A〜30Eと、他方の固定板12とを、図示しないロウ付け炉に投入する。このロウ付け炉内で、シート状ロウ材30A〜30Eは、900℃以上1200℃以下程度の温度に加熱溶融される。これにより、シート状ロウ材30A〜30Eによって一方の固定板11、金属プレート20A〜20Dおよび他方の固定板12がそれぞれ接合される。
この際、金属プレート20A、20Bは、シート状ロウ材30Aを介して互いに接合される。このとき、シート状ロウ材30Aのロウ材外周領域31により、金属プレート20A、20Bの外周領域21同士が密着して接合される。また、シート状ロウ材30Aの被覆領域35(フィン接合領域35a)により、金属プレート20A、20Bの伝熱フィン25同士が確実に密着して接合される。一方、被覆領域35の周囲には、空間(貫通領域32)が形成されている。このため、被覆領域35の周囲に存在するロウ材によって流路26が閉塞されるおそれがない。なお、シート状ロウ材30Aのうち、被覆領域35の一部(伝熱フィン25の外側に位置する部分)やブリッジ36は溶融し、これによりシート状ロウ材30Aの微量な残渣38が流路26に残留する。しかしながら、上述したように、流路26に占める残渣38の量はごくわずかであり、流路26が残渣38によって閉塞されたり、第1の流体F1の流れに影響が生じたりするおそれは低い。なお、金属プレート20C、20Dについても、同様にシート状ロウ材30Bを介して互いに接合される。
上述したように、金属プレート20A〜20Dに反りが生じ、金属プレート20A〜20Dの幅方向中央部の間に隙間が生じる場合がある。これに対して本実施の形態においては、シート状ロウ材30A、30Bの幅方向中央部30aは、幅方向端部30bよりも厚くなっている。このため、金属プレート20A〜20D同士の隙間に、より多くのロウ材を配置することができ、シート状ロウ材30A、30Bによって金属プレート20A〜20Dを接合した際、金属プレート20A〜20Dの幅方向中央部30aをより確実に接合することができる。この結果、接合後の金属プレート20A〜20Dの反りはほぼ解消され、金属プレート20A〜20Dを略水平にすることができる。
このようにして、一方の固定板11と、金属プレート20A〜20Dと、他方の固定板12とが密着接合され、本実施の形態による熱交換器10が得られる。
本実施の形態の作用
次に、このような構成からなる熱交換器の作用について述べる。
まず、図1に示す熱交換器10において、流入管13Aに第1の流体F1を導入するとともに、流入管13Bに第2の流体F2を導入する。この場合、第1の流体F1の温度と第2の流体F2の温度とは互いに異なっている。
次に、第1の流体F1は、金属プレート20A、20B間の薄肉領域22に形成された流路26を通過し、熱交換器10の流出管14Aから流出する。同様に、第2の流体F2は、金属プレート20C、20D間の薄肉領域22に形成された流路26を通過し、熱交換器10の流出管14Bから流出する。流出管14A、14Bから流出する時点で、第1の流体F1および第2の流体F2のうち一方の温度は流入時よりも上昇し、他方の温度は流入時よりも降下している。この場合、金属プレート20Bと金属プレート20Cとが互いに接合されているので、これら金属プレート20B、20Cを介して、第1の流体F1と第2の流体F2との間で熱交換が効率的に行なわれる。
このように本実施の形態によれば、シート状ロウ材30Aの幅方向中央部30aは、幅方向端部30bよりも厚くなっている。これにより、金属プレート20A、20B同士の隙間により多くのロウ材を配置し、金属プレート20A、20Bをより強固かつ確実に接合することができる。
また、本実施の形態によれば、金属プレート20A〜20Dの流路26がエッチングにより作製されるので、流路をプレスによって作製する場合と比べて、熱交換器10をコンパクトかつ高効率なものとすることができる。これにより、冷媒量の削減も含め、エネルギー効率を高めることができる。
上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。