JP2019017281A - タンパク質−rna相互作用の検出 - Google Patents

タンパク質−rna相互作用の検出 Download PDF

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章男 増田
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Abstract

【課題】より簡便かつ短時間で、しかも少量の試料であっても生体内タンパク質−RNA相互作用の解析を可能にする、新たな手法を提供することを課題とする。
【解決手段】(1)供試細胞内のタンパク質−RNA結合を架橋するステップ、(2)ステップ(1)後の供試細胞を溶解し、細胞溶解液を調製するステップ、(3)細胞溶解液中の標的タンパク質−RNA複合体を、標的特異的抗体を介してビーズ上に捕捉するステップ、(4)ビーズを回収し、捕捉された標的タンパク質−RNA複合体をエンドヌクレアーゼで処理するステップ、(5)ステップ(4)後のビーズ上の標的タンパク質−RNA複合体を5'→3'エキソヌクレアーゼで処理するステップ、(6)ステップ(5)後のビーズ上の標的タンパク質−RNA複合体をプロテアーゼで処理するステップ、(7)ステップ(6)の処理液からRNAを回収し、シーケンシング解析するステップを含む、タンパク質−RNA相互作用を検出する方法が提要される。
【選択図】図1

Description

本発明はタンパク質−RNA相互作用の検出に関する。詳しくは、タンパク質−RNA相互作用を検出ないし解析するための方法及びキット、並びにその利用・応用に関する。
タンパク質−RNA相互作用は、RNAのプロセシング、翻訳、及び輸送といったRNA代謝にとって根幹的な役割を果たしている。様々なタンパク質が、RNA内のシスエレメントに結合してRNA代謝を制御する。現在、タンパク質−RNA相互作用解析は、CLIP(cross-linking immunoprecipitation)法により解析することが主流となっている。CLIP法により生体内RNA上のタンパク結合部位を網羅的に同定することができる。CLIP法は以下のステップで行われる。(i) 生細胞にUV照射による細胞内タンパク質−RNA結合の化学的架橋、(ii) 目的タンパク質に対する特異的抗体による免疫沈降、(iii) 結合RNAの精製、(iv) 逆転写によるcDNA合成からcDNAライブラリー作製、(v) ハイスループットシークエンシング解析。
標準的手法として利用されるiCLIP法(例えば非特許文献1、2を参照)の他、改良法であるeCLIP法(例えば非特許文献3を参照)、irCLIP(例えば非特許文献4を参照)、HITS-CLIP法(例えば非特許文献5を参照)等が開発されている。
Huppertz, I. et al. iCLIP: protein-RNA interactions at nucleotide resolution. Methods. 65, 274-87 (2014). Yao C., Weng L., Shi Y. Global protein-RNA interaction mapping at single nucleotide resolution by iCLIP-seq. Methods Mol. Biol., 2014, 1126: 399-410. Van Nostrand E.L., Pratt G.A., Shishkin A.A., Gelboin-Burkhart C., Fang M.Y., Sundararaman B., Blue S.M., Nguyen T.B., Surka C., Elkins K., Stanton R., Rigo F., Guttman M., Yeo G.W. Robust transcriptome-wide discovery of RNA-binding protein binding sites with enhanced CLIP (eCLIP). Nat. Methods, 2016, 13: 508-14. Zarnegar, B.J. et al. irCLIP platform for efficient characterization of protein-RNA interactions. Nat. Methods. 13, 489-92 (2016). Wang, Z., Tollervey, J., Briese, M., Turner, D. & Ule, J. CLIP: construction of cDNA libraries for high-throughput sequencing from RNAs cross-linked to proteins in vivo. Methods. 48, 287-93 (2009).
様々な改良にもかかわらず、CLIP法は未だに技術的な難易度が高い。具体的には、標識されたタンパク質−RNA複合体のSDS-PAGE、メンブレンへの転写、フェノール/クロロホルムによるRNA抽出、といったステップがあることに加え、微量RNA/DNA精製を複数回行う必要がある。結果として多量の試料が必要であり、CLIP法では通常、数千万個の細胞が解析に必要となる。従って、細胞内の様々な分画レベルでのタンパク質−RNA相互作用の解析はCLIP法では事実上不可能な状況である。
CLIP法の他、RNA結合タンパク質と抗体の相互作用を利用したRNA免疫沈降法(RIP; RNA immunoprecipitation)法が知られている。しかし、当該手法は、操作中のRNAの損失が多く、非特異的に結合したRNAの混入も問題となる。
そこで本発明は、より簡便かつ短時間で、しかも少量の試料であっても生体内タンパク質−RNA相互作用の解析を可能にする、新たな手法を提供することを課題とする。
本発明者らは、CLIP法に必須であり、且つ高度な技量を要するタンパク質−RNA複合体の精製ステップ(SDS-PAGE、メンブレンへの転写、フェノール/クロロホルムによるRNA抽出)をエキソヌクレアーゼ処理に置き換えるという発想を軸に大幅な改良を加え、新たな手法(本明細書において「tRIP(targeted RNA immunoprecipitation)法」と呼称することがある)の開発に成功した。tRIP法の実効性を詳細に検証した結果、(i) CLIP法の特異性を維持しつつ最新のeCLIP法の約100倍の効率での解析が可能になること、(ii) 極めて少量の試料(細胞)での解析が可能になること(高感度の検出・解析が可能)、(iii) 所要時間が大幅に短縮されること、(iv) 細胞内の様々な分画レベルでのタンパク質−RNA相互作用の解析が可能になること、(v) タンパク質−RNA相互作用のみならず、タンパク質−タンパク質−RNA相互作用(三次相互作用)の解析も可能になること、(vi) RNA修飾の検出にも応用できること、等が判明し、実効性に加え実用性にも極めて優れた手法であることが裏づけられた。
以上の成果及び考察に基づき、以下の発明が提供される。
[1]以下のステップ(1)〜(7)を含む、タンパク質−RNA相互作用を検出する方法:
(1)供試細胞内のタンパク質−RNA結合を架橋するステップ、
(2)ステップ(1)後の供試細胞を溶解し、細胞溶解液を調製するステップ、
(3)細胞溶解液中の標的タンパク質−RNA複合体を、標的特異的抗体を介してビーズ上に捕捉するステップ、
(4)ビーズを回収し、捕捉された標的タンパク質−RNA複合体をエンドヌクレアーゼで処理するステップ、
(5)ステップ(4)後のビーズ上の標的タンパク質−RNA複合体を5'→3'エキソヌクレアーゼで処理するステップ、
(6)ステップ(5)後のビーズ上の標的タンパク質−RNA複合体をプロテアーゼで処理するステップ、
(7)ステップ(6)の処理液からRNAを回収し、シーケンシング解析するステップ。
[2]エンドヌクレアーゼがRNase IIIである、[1]に記載の検出方法。
[3]5'→3'エキソヌクレアーゼが5'-リン酸依存性エキソヌクレアーゼである、[1]又は[2]に記載の検出方法。
[4]ステップ(3)の前に細胞溶解液中の標的タンパク質−RNA複合体をエンドヌクレアーゼで処理する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の検出方法。
[5]エンドヌクレアーゼがベンゾナーゼである、[4]に記載の検出方法。
[6]ステップ(5)の前に、ビーズ上に捕捉された標的タンパク質−RNA複合体を構成するRNAの3'末端にリンカーを付加する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の検出方法。
[7]リンカーが5'プレアデニル化リンカーであり、リンカーを付加した後、5'デアデニラーゼ処理を行う、[6]に記載の検出方法。
[8]シーケンシング解析によって、標的タンパク質−RNA複合体におけるタンパク質結合部位を同定する、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の検出方法。
[9]ステップ(4)の際、ビーズとは別に処理後の溶液も回収し、以下のステップ(3−1)〜(7−1)を行う、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の検出方法:
(3−1)回収した溶液中の第2標的タンパク質−RNA複合体を、第2標的タンパク質特異的抗体を介して第2ビーズ上に捕捉するステップ、
(4−1)第2ビーズを回収し、捕捉された第2標的タンパク質−RNA複合体をエンドヌクレアーゼで処理するステップ、
(5−1)ステップ(4−1)後の第2ビーズ上の第2標的タンパク質−RNA複合体を5'→3'エキソヌクレアーゼで処理するステップ、
(6−1)ステップ(5−1)後の第2ビーズ上の第2標的タンパク質−RNA複合体をプロテアーゼで処理するステップ、
(7−1)ステップ(6−1)の処理液からRNAを回収し、シーケンシング解析するステップ。
[10]以下のステップ(I)〜(VI)を含む、RNA修飾又はRNA構造を検出する方法:
(I)供試細胞を溶解し、細胞溶解液を調製するステップ、
(II)細胞溶解液中の標的RNAを、特定のRNA修飾又はRNA構造特異的抗体を介してビーズ上に捕捉するステップ、
(III)ビーズを回収し、捕捉された標的RNAをエンドヌクレアーゼで処理するステップ、
(IV)ステップ(III)後のビーズ上の標的RNAを5'→3'エキソヌクレアーゼで処理するステップ、
(V)ステップ(IV)後のビーズ上の標的RNAをプロテアーゼで処理するステップ、
(VI)ステップ(V)の処理液からRNAを回収し、シーケンシング解析するステップ。
[11]抗体結合性タンパク質が表面にコートされた磁気ビーズと、
エンドヌクレアーゼと、
5'→3'エキソヌクレアーゼと、
を含む、タンパク質−RNA相互作用、RNA修飾又はRNA構造を検出するためのキット。
[12]エンドヌクレアーゼが、5'断端はモノリン酸化され、3'断端はOH基の切断RNAを生成するエンドヌクレアーゼである、[11]に記載のキット。
[13]エンドヌクレアーゼがベンゾナーゼとRNase IIIの二種類である、[11]に記載のキット。
[14]以下の(a)〜(f)からなる群より選択される一以上の要素を更に含む、[11]〜[13]のいずれか一項に記載のキット:
(a)細胞溶解試薬、
(b)DNase I、
(c)標的特異的抗体、
(d)3'リンカー及びRNAリガーゼ
(e)プロテアーゼ、
(f)RNA精製用の試薬及び器具。
[15]3'リンカーが5'プレアデニル化リンカーであり、5'デアデニラーゼが更に含まれる、[14]に記載のキット。
(a) tRIP実験の流れ。UVによるRNA結合タンパク質(RBP)−RNA相互作用部位の架橋後、RNAは結合するタンパク質とともに免疫沈降され、RNase IIIによりビーズ上で部分消化される。強力にビーズを洗浄した後、ビーズ上のRNA断片の3'端に3'リンカーがライゲーションされる。非特異的にビーズ上に残存しているRNAと3'リンカーを除くため、エキソヌクレアーゼ処理を行う。エキソヌクレアーゼによるRNA消化は、RBP-RNA複合体では、RBPが結合している場所で止まる。RBP-RNA複合体をプロテイナーゼKで処理し、遊離したRNAをカラムで精製する。逆転写反応により生成された第1鎖の3'端にポリA配列を付加する。ポリT鎖を持ったプライマーを用いて相補鎖の合成を行う。得られた二本鎖DNAをPCR増幅した後、ハイスループットシーケンシング解析を行う。(b) tRIPと代表的なCLIP法で必要な細胞数と実験時間。tRIPでは、SDS-PAGEとメンブレンへの転写のステップの代わりにエキソヌクレアーゼ処理を行う。これによって実験が大幅に簡便化され、実験時間も減少した。 (a) RBFOX2-iCLIP(GSM2055496)、RBFOX2-eCLIP(GSM2055432とGSM2055434の統合データ)、RBFOX2-tRIPのマッピング効率。すべて同じパイプラインを使用して、ヒトゲノムへのマッピングを行った。(b) eCLIPライブラリーと2つのtRIPライブラリーのリード分布の一例。CAMK2G遺伝子の領域を示す。MACSアルゴリズムにより検出されたピーク領域を灰色の四角で示す。横軸は、GRCh38の塩基位置座標を示す。(c) 2つのRBFOX2-tRIPライブラリー間での、リード分布の相関。ライブラリー1(Rep1)で検出されたピーク領域について、ライブラリー1及びライブラリー2(Rep2)それぞれのリード量(RPM、100万リードあたりのリード数)を解析し、それらの値をグラフ上に点として示している。(d) 2つのRBFOX2-tRIPライブラリー(Rep1、Rep2)のピーク領域に検出されたモチーフ。HOMERアルゴリズムによる解析。判明したp-valueを示す。(e) RBFOX2-tRIPとRBFOX-eCLIP間での、リード分布の相関。eCLIPで検出されたピーク領域について、tRIP及びeCLIPそれぞれのリード量を解析し、それらの値をグラフ上に点として示している。Pearson相関係数(R)を示す。 (a) Sfxn3及びPtprs遺伝子領域における、PTBP1リードの分布。表記された細胞数のC2C12細胞を用いたHITS-CLIPもしくはtRIPの結果を示す。MACSアルゴリズムにより検出されたピーク領域を灰色の四角で示す。横軸は、GRCh38の塩基位置座標を示す。(b) 1×107個の細胞を使用したPTBP1 HITS-CLIPと4×105個を使用したPTBP1-tRIP間での、リード分布の相関。HITS-CLIPで検出されたピーク領域について、tRIP及びHITS-CLIPそれぞれのリード量を解析し、それらの値をグラフ上に点として示している。Pearson相関係数(R)を示す。(c) 4×104個(左パネル)もしくは4×103個(右パネル)の細胞を使用したPTBP1-tRIPで検出されたピーク領域における、4×105個を使用したPTBP1-tRIPのリード分布を、ヒートマップで示す。 (a) ゲノム上の複数個所に同じ配列がある重複領域にマッピングされたリードのうち、tRNAやrRNA領域にマッピングされたリードの割合。(b) m1A-tRIPとm6A-tRIPの全遺伝子上の相対位置におけるリード分布の解析。ngs.plot toolにより解析を行った。縦軸は、平均のリード量(RPM、100万リード当たりのリード量)を示す。(c) m6A-tRIPのピーク領域に検出されたモチーフ。HOMERアルゴリズムによる解析。判明したp-valueを示す。 (a) タンパク質−タンパク質−RNA相互作用を解析するtRIP実験の流れ。UVによるRNA結合タンパク質(RBP)−RNA相互作用部位の架橋後、抗RNAP II抗体もしくは抗U1A抗体を用いてタンパク質−RNA複合体の免疫沈降を行う。強力にビーズを洗浄した後、免疫沈降されたタンパク質−RNA複合体のRNAをRNase IIIにより部分消化する。複合体上に残存しているRNAから、U1 snRNPもしくはRNAP II-tRIPライブラリーを作製する。上清は別に回収して、遊離したFUS-RNA複合体の免疫沈降を抗FUS抗体で行い、U1 snRNP-FUS-tRIPあるいはRNAP II-FUS-tRIPライブラリーの作製を行う。免疫沈降されたいずれのRNAも、エキソヌクレアーゼ処理を行ってからtRIPライブラリー作製を行う。(b)全遺伝子上の相対位置におけるtRIPリード分布。ngs.plot toolにより解析を行った。縦軸は、平均のリード量(RPM、100万リード当たりのリード量)を示す。左側のパネルはU1-tRIP及びU1-FUS-tRIPの結果を、右側のパネルはRNAP II-tRIP及びRNAP II-FUS-tRIPの結果を示す。下中のパネルは、全細胞溶解液を用いて作られたFUS-tRIPの結果を示す。(c) 選択的TSS(Alt TSSs)、スプライスサイト(Alt SS)及びTTS(Alt TTSs)周囲のリード分布。2回のtRIP実験(Rep1及びRep2)の結果を示す。以前にCAGE-seqとPolyA-seqにより確定されたTSSとTTSの位置(参考文献10){Masuda, 2016 #33}を使用した。Alt SSについては、MISOアルゴリズムで利用する位置情報を使用した。U1(Rep1)とU1-FUS(Rep1)間もしくはRNAP II(Rep1)とRNAP II-FUS(Rep1)間の統計学的有意差を、Welch's testにより計算し、その-log10(P)値を、ヒートマップとして横軸上に示した。(d) 選択的TTS(Alt TSSs)周囲でのRNAP II-FUS-tRIP(RNAP IIが転写中のRNA上のFUS結合部位)とFUS-tRIP(細胞内全RNA上のFUS結合部位)のリード分布の比較。ポリアデニル化シグナル(PAS)及び、GもしくはU塩基からなる連続した4塩基配列の出現頻度をヒートマップとして横軸の上に示す。 (a) ベンゾナーゼ(Benzonase)処理による全細胞溶解液内RNAの断片化。C2C12細胞(4×105個)を200μlの溶解バッファーで溶解した後、表記されている希釈率のベンゾナーゼを1μl ライセートに加え、37℃で5分間放置した。その後、RNAを抽出し、Bioanalyzer解析を行った。(b) RNase IIIによる、タンパク質−RNA複合体の、ビーズ上でのRNA断片化。UV照射を施行した(+)もしくは、施行しなかった(-)N2A細胞(7×106個)の全細胞溶解液からFUS-RNA複合体を免疫沈降した。ただし、ベンゾナーゼ処理は行っていない。RNase III(1 unit)もしくはRNase A/T1(A/T1, 0.25 unitのRNase A及び10 unitのRNase T1)を加え、37℃で表記された時間、静置した。しっかりビーズを洗浄した後、プロテイナーゼK処理を行い、遊離したRNAをカラムで抽出し、Bioanalyzer解析を行った。 (a) エキソヌクレアーゼ処理による残存3'リンカーの除去。7×106個のN2A細胞からマウスコントロールIgG(cont)を用いて免疫沈降を行い、tRIPライブラリーを作製した。エキソヌクレアーゼ処理の有(+)、無(-)で比較した。tRIPライブラリーは、表記されたPCRサイクル数で増幅を行っており、4% NuSieveアガロースゲルに泳動した。エキソヌクレアーゼ処理により、残存3'リンカーから合成される126bpのバンドの消失が認められる。(b) エキソヌクレアーゼ処理によるFUSと共免疫沈降されるRNAの部分消化。表記された細胞数のN2A細胞にUV照射後を行い、抗FUS抗体でRNA-FUS複合体を免疫沈降した。tRIPのプロトコルに従ってビーズ上でエキソヌクレアーゼ処理を行ったサンプル(+)と行わなかったサンプル(-)に分けて実験を行った。プロテイナーゼK処理を行い、ビーズから遊離したRNAをカラムで抽出し、Bioanalyzer解析を行った。(c) エキソヌクレアーゼ処理によるRNA消化が、RNAへのストレプトアビジン結合で障害されることをin vitro実験で確認した。中央の塩基がビオチン化されたRNAプローブ(5'-phosphate-GCGACCACCGAGA/iBiodT/UCUACACUCUUUCCCU-3'(配列番号1)、iBiodTはビオチン化されたT塩基を表す)は、Integrated DNA Technologyで合成された。30μgのリコンビナントストレプトアビジン(Sigma)と3μgのRNAプローブをRNase IIIバッファーに加え、4℃で一晩静置し、ストレプトアビジンをRNAプローブに結合させた。翌日、RNAプローブをOligo Clean & Concentrator(Zymo research)で精製した。0.6μgのRNAプローブを0.4 unitのエキソヌクレアーゼと混合し、30℃で1時間反応させた後、ポリアクリルアミドゲルで泳動した。RNAプローブへのUV照射(400 mJ/cm2)の有(+)、無(-)、RNAプローブへのストレプトアビジン結合(St)の有(+)、無(-)、エキソヌクレアーゼ処理(Exo)の有(+)、無(-)を比較検討した。(d) tRIPライブラリー構築にUV照射は必須である。FUSのtRIPライブラリー構築を、UV照射したN2A細胞(+)あるいは、しなかったN2A細胞(-)を使用して行った。表記したサイクル数のPCRにより増幅したtRIPライブラリーを4% NuSieveアガロースゲルに泳動した。(e) tRIPライブラリー構築に、特異的な免疫沈降は必須である。表記されている細胞数の細胞にUV照射を行い、抗RBFOX2抗体(FOX2)、抗FUS抗体(FUS)、抗PTBP1抗体(PTBP1)、コントロール抗体(cont)のいずれかを用いてtRIPライブラリー構築を行った。表記したサイクル数のPCRにより増幅したtRIPライブラリーを4% NuSieveアガロースゲルに泳動した。 (a) ユニークマッピングされたRBFOX2-tRIP(実験1、Rep1)リードの表記された領域への分布量。(b) RBFOX2-tRIP(実験1、Rep1)リードがユニークマッピングされたゲノム領域での、RBFOX2結合モチーフの出現数(上グラフ)。これらリードの5'端前後10塩基内でHOMERアルゴリズムにより検出されたモチーフ(挿入図)。それぞれの位置での塩基の出現頻度(インフォメーションコンテンツ(information contents)、下グラフ)。 (a) 表記された領域でのPTBP1リードの分布。表記された細胞数のC2C12細胞を用いてHITS-CLIP及びtRIPを行った。MACSアルゴリズムで検出されたピーク領域を、横軸下に灰色の四角で示した。(b) PTBP1 HIST-CLIP及びPTBP1-tRIPリードのマッピング効率。右のパネルは、HOMER解析で検出されたピーク領域に高頻度に出現するPTBP1結合モチーフを示す。 (a) マッピングされたPTBP1-, m1A-, m6A-tRIPの全リードの分類。(b) m1A-tRIPリードのtRNA上での分布の一例(Leu-tRNA CAAを示す)。左下パネルは、Leu-tRNA CAAの塩基配列と構造を示す。上の灰色の棒は各位置におけるリード数を、下の黒い棒は代表的なm1A-tRIP(400,000細胞数、実験1、Rep1)のリードを示す。変異塩基を太文字で、欠失塩基を細線で示す。既知のm1A修飾を受ける塩基の場所を黄色い線で示す。(c) 28S及び18S rRNAにおけるm6A-RIPリードの分布。既知のm6A修飾を受ける塩基の場所を赤線で示す。m6A-tRIP(400,000細胞数、実験1、Rep1)のリードを、45S rRNA(NR_046233)にマッピングした。縦軸は、各位置におけるリード数を示す。(d) m1A-tRIPライブラリーのDNAサイズ分布。横軸は、ライブラリーに挿入されているcDNAの長さを示す。縦軸は、バイオアナライザー解析による蛍光強度を示す。(e) リードがユニークマッピングされたゲノム領域での、m6Aモチーフ(GGACU)の出現頻度。 (a) FUS-tRIPとFUS-HITS-CLIP間での、リード分布の相関。FUS-HITS-CLIPで検出されたピーク領域について、tRIP及びHITS-CLIPそれぞれのリード量を解析し、それらの値をグラフ上に点として示している。(b) U1 snRNAP-FUS-RNA複合体(左)及びRNAP II-FUS-RNA複合体(右)から作製されたFUS-tRIPライブラリーのPCRによる増幅。図5aに示した方法で、抗U1A抗体(U1)あるいは、抗RNAP II抗体で免疫沈降されたタンパク質−RNA複合体を、さらに抗FUS抗体で免疫沈降してtRIPライブラリーを作製した。表記したサイクル数のPCRにより増幅したtRIPライブラリーを4% NuSieveアガロースゲルに泳動した。(c) 全遺伝子上の相対位置におけるtRIPのリード分布。図5bで示したtRIPの生物学的リプリケート(実験2、Rep2)の結果を示す。ngs.plot toolにより解析を行った。縦軸は、平均のリード量(RPM、100万リード当たりのリード量)を示す。左側のパネルはU1-tRIP及びU1-FUS-tRIPの結果を、右側のパネルはRNAP II-tRIP及びRNAP II-FUS-tRIPの結果を示す。下中のパネルは、全細胞溶解液を用いて作られたFUS-tRIPの結果を示す。(d) 全てのTSS(ALL TSSs)、スプライスサイト(ALL SS)及びTTS(ALL TTSs)周囲のリード分布。2回のtRIP実験(Rep1及びRep2)の結果を示す。U1(Rep1)とU1-FUS(Rep1)間もしくはRNAP II(Rep1)とRNAP II-FUS(Rep1)間の統計学的有意差を、Welch's testにより計算し、その-log10(P)値を、ヒートマップとして横軸上に示した。図5cは同様の解析だが、選択的サイトに対して行っている。(e) 選択的SS(Alt TSSs)及び全SS(ALL SS)周囲でのU1-FUS-tRIP(U1snRNP複合体中のRNAのFUS結合部位)とFUS-tRIP(細胞内全RNA上のFUS結合部位)のリード分布の比較。Alt SSとALL SS間のU1-FUS-tRIPリード分布の統計学的有意差を、Welch's testにより計算し、その-log10(P)値を、ヒートマップとして横軸上に示した。(f) U1 snRNP-FUS-RNA相互作用及びRNAPII-FUS-RNA相互作用の概念図。 tRIP法とCLIP法(eCLIP; 参考文献3、irCLIP; 参考文献4、HITS-CLIP; 参考文献5、iCLIP; 参考文献6)のプロトコルの比較。 各tRIPライブラリー構築に要した試料の量。
1.タンパク質−RNA相互作用の検出
本発明の第1の局面はタンパク質−RNA相互作用を検出する方法に関する。本発明の検出方法は、生体内におけるタンパク質−RNA相互作用の簡便な検出を実現するものであり、現在の標準的な手法(CLIP法)の抱える問題点を解消する。
本発明の検出方法はタンパク質−RNA相互作用の解析に有用な手段であり、例えば、特定のタンパク質−RNA相互作用の有無の判定、特定のタンパク質−RNA相互作用の発現態様(発現の有無、発現の時期等)の同定、特定のタンパク質−RNA複合体の結合部位(RNA上の領域)の同定等に利用可能である。また、タンパク質−タンパク質−RNAの三次相互作用の解析にも利用可能である。本発明は、その簡便性及び高効率性から、細胞内のタンパク質−RNA相互作用を網羅的に解析する手段として特に有用である。
本発明の検出方法では以下のステップ(1)〜(7)を行う。以下、各ステップの詳細を説明する。尚、各ステップにおける反応において、反応を停止するための処理(例えば洗浄操作、反応液の除去、酵素の不活化/失活)を行ってもよいが、後続のステップに影響するような処理は避けることが望まれ、また、検出結果に実質的な影響がないのであれば、操作の簡便化や所要時間の短縮化等の観点から、当該処理は最小限に留めることが好ましい。
(1)供試細胞内のタンパク質−RNA結合を架橋するステップ
(2)ステップ(1)後の供試細胞を溶解し、細胞溶解液を調製するステップ
(3)細胞溶解液中の標的タンパク質−RNA複合体を、標的特異的抗体を介してビーズ上に捕捉するステップ
(4)ビーズを回収し、捕捉された標的タンパク質−RNA複合体をエンドヌクレアーゼで処理するステップ
(5)ステップ(4)後のビーズ上の標的タンパク質−RNA複合体を5'→3'エキソヌクレアーゼで処理するステップ
(6)ステップ(5)後のビーズ上の標的タンパク質−RNA複合体をプロテアーゼで処理するステップ
(7)ステップ(6)の処理液からRNAを回収し、シーケンシング解析するステップ
<ステップ(1)>
ステップ(1)では、供試細胞を用意し、供試細胞内のタンパク質−RNA結合を架橋する。例えば、生体から単離した細胞、それを培養した細胞(培養細胞)、株化細胞等を供試細胞として用いることができる。また、細胞の存在状態も特に限定されず、分散状態の細胞の他、2次元又は3次元構造体を形成した細胞(例えば、生体から単離した組織片またはその培養物、生体から単離した細胞を培養して構築した細胞層)を供試細胞としてもよい。本発明の検出方法は汎用的な方法であり、細胞内においてタンパク質−RNA相互作用が生じる各種細胞を供試細胞として用いることができる。
典型的には、タンパク質−RNA結合の架橋は紫外線(UV)の照射によって行われる。この点、従来のCLIP法と同様であり、UV照射の操作、条件(例えば波長254nm〜365nmのUVを強度100〜450 mJ/cm2で照射する)等は従来のCLIP法に準じればよい。UV照射の前に、供試細胞に4-チオウリジン(4-SU)を曝露し、4-SUをウリジンの代わりにRNAに取り込ませることにしてもよい。4-SUを含むRNAは、UV照射によってタンパク質と強力に架橋することが知られている。但し、細胞によって4-SUに対する感受性(取り込む効率)が異なり、4-SUを使用する利点が得られないこともある。そのような場合に4-SUによる処理を行うことは簡便性及び効率性に影響する。従って、特別の事情がある場合(例えば、標的とするタンパク質−RNA結合が極めて弱いものであることが知られている又は予想される場合)を除き、4-SUによる前処理は省略するとよい。尚、UV照射に代えてホルムアルデヒド固定等の方法によってタンパク質−RNA結合を架橋することにしてもよい。
<ステップ(2)>
ステップ(1)に続くステップ(2)では、供試細胞を溶解し、細胞溶解液を調製する。細胞の溶解は常法で行えばよい。例えば、界面活性剤を含有する溶解バッファーに細胞を懸濁し、溶解させる。細胞溶解用の各種試薬(例えばThermo Fisher Scientific社のRIPA Lysis and Extraction BufferやGEヘルスケア社のMammalian Protein Extraction Buffer)が市販されており、それらを用いれば簡便に細胞溶解液を調製することができる。細胞構造を効率的且つ効果的に破壊し、タンパク質−RNA複合体の抽出を促すために、超音波破砕処理(ソニケーション)等を併用するとよい。また、次のステップ(3)の前に、細胞溶解液をDNase Iで処理し、細胞溶解液中に存在するDNAを消化することが好ましい。当該処理を加えることは、特に検出感度及び検出精度の向上に有効である。DNase IはRNaseが混在していなもの(即ちRNase-free)が好ましい。例えばQiagen社のRNase-free DNase I、Promega社のRQ1 RNase-Free DNase等を用いることができる。
一方、次のステップ(3)の前に、細胞溶解液中の標的タンパク質−RNA複合体をエンドヌクレアーゼで処理し、タンパク質と結合したRNA(即ち、標的タンパク質−RNA複合体を構成するRNA)を部分消化するとよい。この好ましい一態様では、標的タンパク質−RNA複合体を構成するRNAの部分消化を2段階(当該エンドヌクレアーゼ処理と、ステップ(4)のエンドヌクレアーゼ処理)で行うことになり、検出効率の向上がもたらされる。ここでのエンドヌクレアーゼ処理には、一本鎖RNAに対する分解活性を示すエンドヌクレアーゼを使用し、RNAを500〜2000塩基程度の長さに部分消化(断片化)するとよい。好ましいエンドヌクレアーゼとしてベンゾナーゼ(Benzonase、Merk Millipore社)を例示することができる。ベンゾナーゼは、RNA及びDNAを塩基選択性無く分解できる強力なエンドヌクレアーゼである。ベンゾナーゼを低濃度、例えば0.001 U/mL〜0.3 U/mLで使用することにより、所望のRNA断片化を達成可能である。ベンゾナーゼでエンドヌクレアーゼ処理を実施すれば、切断RNAの5'断端はモノリン酸化され、3'断端はOH基となる。このため、後述のステップ(5)の5'→3'エキソヌクレアーゼ処理の前や、シーケンシング解析のために必要な3'リンカーの付加の際に、5'末端のリン酸化やRNAの3'末端の脱リン酸化のステップを省略でき、操作の更なる簡便化が達成される。このように、5'断端はモノリン酸化され、3'断端はOH基の切断RNAを生成する、ベンゾナーゼのごときエンドヌクレアーゼを使用することは、簡便化/効率化の点から極めて有効である。エンドヌクレアーゼ処理後は、通常、エンドヌクレアーゼを不活化/失活させておく(例えばEDTAを使用する)。
<ステップ(3)>
このステップでは、細胞溶解液中の標的タンパク質−RNA複合体を、標的特異的抗体を介してビーズ上に捕捉する。例えば、ステップ(2)後の細胞溶解液を遠心処理に供し(不要成分を沈渣として除去する)、得られた上清に対して、標的特異的抗体と、当該抗体をその表面に結合可能なビーズを添加する。このようにして、細胞溶解液上清中の標的タンパク質−RNA複合体、標的特異的抗体、ビーズの三者が接触する状態を形成する。これによって、標的タンパク質−RNA複合体と標的特異的抗体間の連結、及び標的特異的抗体とビーズ間の連結が生じ、結果として、標的タンパク質−RNA複合体が標的特異的抗体を介してビーズ上に捕捉される。尚、この操作はいわゆる免疫沈降に相当する。
標的特異的抗体としては、標的タンパク質−RNA複合体を構成するタンパク質に対して特異的な結合性を示すものが用いられる。また、標的タンパク質−RNA複合体を構成するタンパク質(標的タンパク質)にタグを付加しておけば、抗タグ抗体を標的特異的抗体として利用することができる。FLAG(登録商標)タグ、HAタグ、Hisタグ、Mycタグ、V5タグ、蛍光タンパク質(GFP、RFP等)タグ等、各種タグを利用することができる。標的タンパク質へのタグの付加は、例えば、タグ配列を付加した標的タンパク質遺伝子の遺伝子導入や、ゲノム編集技術(CRISPR/Casシステム、Transcription Activator-Like Effector Nucleases(TALEN)等)によるタグ配列の挿入などによって行うことができる。
一方、ビーズは、標的特異的抗体をその表面に補足可能な限り、特に限定されない。例えば、抗体結合性タンパク質(具体例はプロテインG、プロテインA)が表面にコートされたビーズを用いることができる。ビーズとは粒子状の不溶性担体であり、その平均粒径は例えば10nm〜100μmである。ビーズの材質は特に限定されない。材質の例を挙げると、磁性体(フェライトやマグネタイトなどの酸化鉄、酸化クロム、コバルトなどの磁性材料)、シリカ、アガロース、セファロースである。磁性体からなるビーズ(「磁気ビーズ」と呼ぶ)を採用すれば、回収、精製などが容易となり、再現性の向上も期待できる。抗体結合性タンパク質が表面にコートされた磁気ビーズは市販されており、本発明において当該市販品を用いることもできる。市販の磁気ビーズの例はDynabeadsTM(株式会社ベリタス)である。DynabeadsTMは磁性体(γFe2O3とFe3O4)が分散した高分子ポリマーのコアを親水性ポリマーで覆った磁気ビーズであり、表面にプロテインGがコートされたもの(Dynabeads Protein G)、表面にプロテインGがコートされたもの(Dynabeads Protein A)等が提供されている。
<ステップ(4)>
標的タンパク質−RNA複合体を捕捉したビーズは回収され、捕捉された標的タンパク質−RNA複合体はエンドヌクレアーゼ処理に供される。即ち、回収したビーズを含有する溶液中でビーズとエンドヌクレアーゼが接触する状態を形成し、標的タンパク質−RNA複合体を構成するRNAの部分消化を行う。20〜200塩基程度の長さに部分消化(断片化)するとよい。
例えば、磁気ビーズを採用した場合には、磁力の作用によってビーズを回収すればよい。磁気ビーズ以外のビーズの場合には、例えば遠心分離処理によってビーズを回収することができる(磁気ビーズの場合にも、当該処理を採用し得る)。
一本鎖RNAに対する分解活性を示す様々なエンドヌクレアーゼ、例えばRNase III、RNase A、RNase I等、を採用し得るが、中でもRNase III(例えば、New England Biolabs社が提供する)はこのステップの目的である、標的タンパク質−RNA複合体を構成するRNAの部分消化に適する。RNase IIIは通常、二本鎖RNAを認識し切断するが、低塩濃度条件で一本鎖RNAを切断することが知られている。RNase IIIの活性は弱いが、ビーズ上に捕捉された微量なRNAの断片化には適切な活性を示す。また、RNase IIIを用いた場合、上記のベンゾナーゼと同様に、切断RNAの5'断端はモノリン酸化され、3'断端はOH基となり、エキソヌクレアーゼ処理の際、及び3'リンカーの付加の際の操作が簡便化する。尚、エンドヌクレアーゼ反応を停止するため、例えば、洗浄操作(エンドヌクレアーゼの除去)や不活化/失活処理を行うことが好ましい。
<ステップ(5)>
このステップでは、ステップ(4)後のビーズ上の標的タンパク質−RNA複合体を5'→3'エキソヌクレアーゼで処理する。ステップ(4)までの操作によって、ビーズ上に捕捉された標的タンパク質−RNA複合体を構成するRNAは部分消化されている。このステップでの処理によって、当該RNAにおける、タンパク質との結合部位の5'末端側に残存する部分を消化する。5'→3'エキソヌクレアーゼとして、好ましくは5'-リン酸依存性エキソヌクレアーゼが用いられる。5'-リン酸依存性エキソヌクレアーゼの具体例は、TerminatorTM 5'-リン酸依存性エキソヌクレアーゼ(epicentre社)である。TerminatorTM 5'-リン酸依存性エキソヌクレアーゼは5'-モノリン酸化末端を有する一本鎖のRNAもしくはDNAを消化する5'→3'エキソヌクレアーゼである。従って、標的タンパク質−RNA複合体を構成するRNAの5'末端がモノリン酸化されていれば(例えばステップ(4)のエンドヌクレアーゼ処理にRNase IIIを用いた場合)、事前に特別の操作を行うことなく、エキソヌクレアーゼ処理を実施することができる。標的タンパク質−RNA複合体を構成するRNAの5'末端がモノリン酸化されていない場合には、エキソヌクレアーゼ処理に先だって、標的タンパク質−RNA複合体を構成するRNAの5'末端をモノリン酸に変換する処理を行えばよい。尚、エキソヌクレアーゼ反応を停止するため、例えば、洗浄操作(エキソヌクレアーゼの除去)や不活化/失活処理を行うことが好ましい。
本発明の一態様では、ステップ(5)の前に、ビーズ上に捕捉された標的タンパク質−RNA複合体を構成するRNAの3'末端にリンカー(3'リンカー)を付加する。3'リンカーはシーケンシング解析の際(より具体的には、ライブラリー構築等のためのRNAの増幅)に利用される。リンカーが付加されるRNAの状態に対応した3'リンカーを用意すればよい。ステップ(4)のエンドヌクレアーゼとして、5'断端はモノリン酸化され、3'断端はOH基の切断RNAを生じるものを採用した場合、ライゲーション反応の前に特別の処理(即ち、従来のCLIP法に必要な、RNAの3'末端の脱リン酸化)をすることなく、3'リンカーの付加反応を行うことができる。3'リンカーとして5'プレアデニル化リンカーを用いるとよい。換言すれば、標的タンパク質−RNA複合体を構成するRNAのモノリン酸化5'末端が3’OH末端に付加することを防ぐため、にプレアデニル化末端特異的な反応系をも採用するとよい。また、セルフライゲーション防止のため、3'リンカーの3'末端はアミノ基にしておくことが好ましい。また、ライゲーション反応の前にビーズをよく洗浄し、非特異的残存RNA(標的タンパク質との架橋を介することなく、非特異的にビーズ表面に付着したRNAや溶液中の遊離RNAなど)を低減させておくことが好ましい。
ビーズ上の標的タンパク質−RNA複合体を構成するRNAの3'末端に3'リンカーを付加できるものであれば、ライゲーション反応に使用するRNAリガーゼは特に限定されず、T4 RNA Ligase 1、T4 RNA ligase 2、RtcB Ligase(いずれもNew England Biolabs社製)等を用いることができる。リンカーを付加するRNAの3'末端がOH基のRNAに対して5'プレアデニル化リンカーを付加する場合には、T4 RNA Ligase 2 truncated KQ、T4 RNA Ligase 2 (dsRNA Ligase)、T4 RNA Ligase 2, truncated、T4 RNA Ligase 2, truncated K227Q、T4 RNA Ligase 2, truncated KQ(以上、いずれもNew England Biolabs社製)、T4 RNA Ligase 2, Deletion Mutant(ARB-LS エア・ブラウン ライフサイエンス社製)等を用いることができる。3'リンカーとして5'プレアデニル化リンカーを用いた場合、ライゲーション反応後に5'デアデニラーゼ処理を行い、ライゲーションされずに残存している3'リンカーの5'プレアデニル化末端を5'モノリン酸化末端に変換しておく。これによって、次の5'→3'エキソヌクレアーゼ処理(ステップ(5))の際に残存3'リンカーを消化・除去することができる。
<ステップ(6)>
5'→3'エキソヌクレアーゼ処理の後、ビーズ上の標的タンパク質−RNA複合体をプロテアーゼで処理し、標的タンパク質−RNA複合体からRNAを遊離させる。この目的を達成可能な限りにおいて、使用するプロテアーゼは特に限定されない。例えば、プロテイナーゼK、トリプシン、キモトリプシン等を用いることができる。この中でもプロテイナーゼKは特に好ましいプロテアーゼの1つである。プロテイナーゼKは広い基質特異性を有し、また、pH安定性も高く、汎用性に優れる。
<ステップ(7)>
ステップ(6)によって遊離したRNAは回収され、シーケンシング解析に供される。ステップ(6)後の処理液からのRNAの回収は常法(例えばカラム精製、SPRI磁性ビーズ精製(例えばAmpureXP)、フェノール抽出/エタノール沈殿)で行えばよい。RNA精製用の試薬・キットは各種市販されており(例えばZymo Research社のQuick-RNA MicroPrep、Qiagen社のRNeasy MinElute Cleanup Kit)、それらを利用すれば簡便にRNAの回収が可能である。
シーケンシング解析には様々な手法を適用可能であるが、好ましい解析手法の1つは次世代シーケンサーによる解析である。次世代シーケンサーを利用すれば効率的に精度の高い結果を得ることができる。次世代シーケンサーとは、並列処理によって解析スピードを飛躍的に向上させた塩基配列解析(解読)装置であり、サンガー・シーケンシング法を利用した蛍光キャピラリーシーケンサー(「第1世代シーケンサー」と呼ばれる)と対照をなす。Illumina社(例えば、HiSeqシリーズ(2500、3000、4000等)、HiSeqシリーズ(X Five、X Ten等)、NextSeqシリーズ(500、550等))、Roche(454)社(例えばGS FLX+ システム)、Life Technologies社(例えば5500xl SOLiD)、Ion Torrent社(例えばProton Sequencer)等のメーカーから各種次世代シーケンサーが販売されている。既存の超並列型次世代シーケンサーに限らず、今後開発・発売される次世代シーケンサーを利用することにしてもよい。
次世代シーケンサーでは解読した断片配列をリードと呼ばれる単位で出力し、リードの解析によって配列を決定する。一般にリード数が多い程、精度ないし信頼性の高い解析結果が得られる。リード数を、例えば500万リード〜1500万リード、好ましくは5000万リード〜5億リードに設定する。
シーケンシング解析によって、例えば、標的タンパク質−RNA複合体におけるタンパク質結合部位を同定する。即ち、本発明の検出方法を標的タンパク質−RNA複合体におけるタンパク質結合部位の同定に用いる。或いは、シーケンシング解析をRNA修飾部位の同定、2本鎖RNA部位の同定、RNA/DNAハイブリッド形成部位の同定、microRNAのターゲットRNAの同定等の目的に利用することもできる。
シーケンシング解析のため、通常、回収したRNAからcDNAライブラリーを構築する。例えば、以下のステップ(i)〜(v)を行い、シーケンシング解析用のcDNAライブラリーを得る。
(i)回収したRNAを鋳型にして逆転写反応を行い、第一鎖cDNAを合成するステップ
(ii)ステップ(i)後の反応液をエキソヌクレアーゼIで処理し、プライマーを消化するステップ
(iii)第1鎖cDNAの3'末端にポリAテールを付加するステップ
(iv)ポリTテールを有するプライマーを用い、第二鎖cDNAを合成するステップ
(v)得られた二本鎖cDNAを増幅させるステップ
各ステップは標準的な条件、操作で行うことができる。条件の設定や具体的な操作については、後述の実施例や過去の報告(例えばHuppertz, I., et al. (2014). "iCLIP: protein-RNA interactions at nucleotide resolution." Methods 65(3): 274-287.を参照するとよい)を参考にすることができる。尚、ステップ(v)の増幅反応には例えばPCR法を利用すればよい。
本発明は二種類以上のタンパク質が関与する、タンパク質とRNAの相互作用、即ち、タンパク質−タンパク質−RNA相互作用(三次相互作用)の検出にも有用である。そこで本発明の一態様では、三次相互作用の検出のため、上記のステップ(4)の際、ビーズとは別に処理後の溶液も回収し、以下のステップ(3−1)〜(7−1)を行う。
(3−1)回収した溶液中の第2標的タンパク質−RNA複合体を、第2標的タンパク質特異的抗体を介して第2ビーズ上に捕捉するステップ
(4−1)第2ビーズを回収し、捕捉された第2標的タンパク質−RNA複合体をエンドヌクレアーゼで処理するステップ
(5−1)ステップ(4−1)後の第2ビーズ上の第2標的タンパク質−RNA複合体を5'→3'エキソヌクレアーゼで処理するステップ
(6−1)ステップ(5−1)後の第2ビーズ上の第2標的タンパク質−RNA複合体をプロテアーゼで処理するステップ
(7−1)ステップ(6−1)の処理液からRNAを回収し、シーケンシング解析するステップ
ステップ(3−1)、(4−1)、(5−1)、(6−1)及び(7−1)は、それぞれ、上記のステップ(3)、(4)、(5)、(6)及び(7)に対応するため、重複する説明は省略する。ステップ(3−1)における第2標的タンパク質は、上記ステップ(3)の標的タンパク質と異なるタンパク質である。また、ステップ(3−1)では第2標的タンパク質特異的抗体が用いられるが、上記ステップ(3)の場合と同様に、第2標的タンパク質にタグを付加しておき、抗タグ抗体を介して第2ビーズ上に第2標的タンパク質−RNA複合体を捕捉することにしてもよい。一方、第2ビーズは、上記ステップ(3)のビーズと同様の構成からなる。この態様においても、好ましくは、シーケンシング解析のため、ステップ(5)の前に、3'リンカーを付加する処理を行う。
ステップ(4−1)の際、第2ビーズとは別に処理後の溶液も回収し、その後、ステップ(3−1)〜(7−1)に準じた操作を行えば、3種類のタンパク質が関与するタンパク質とRNAの相互作用の検出も可能となる。同様の繰り返しにより、4種類以上のタンパク質が関与する、タンパク質とRNAの相互作用の検出へも本発明を応用可能である。
2.RNA修飾/RNA構造の検出
後述の実施例に示した通り、本発明者らが開発に成功した手法(tRIP)はRNA修飾の検出にも応用できる。また、特定のRNA構造の検出にも応用可能といえる。そこで、本発明の第2の局面はRNA修飾又はRNA構造を検出する方法を提供する。本発明の検出方法では、以下のステップ(I)〜(VI)を行い、RNA修飾又はRNA構造を検出する。
(I)供試細胞を溶解し、細胞溶解液を調製するステップ
(II)細胞溶解液中の標的RNAを、特定のRNA修飾又はRNA構造特異的抗体を介してビーズ上に捕捉するステップ
(III)ビーズを回収し、捕捉された標的RNAをエンドヌクレアーゼで処理するステップ
(IV)ステップ(III)後のビーズ上の標的RNAを5'→3'エキソヌクレアーゼで処理するステップ
(V)ステップ(IV)後のビーズ上の標的RNAをプロテアーゼで処理するステップ
(VI)ステップ(V)の処理液からRNAを回収し、シーケンシング解析するステップ
ステップ(I)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)は、それぞれ、本発明の第1の局面におけるステップ(2)、(4)、(5)、(6)及び(7)に対応する。尚、この局面の検出方法においても、好ましくは、シーケンシング解析のため、ステップ(IV)の前に、3'リンカーを付加する処理を行う。
この局面の検出方法では、検出対象が「RNA修飾」又は「RNA構造」であるため、第1の局面とは異なり、タンパク質−RNA結合の架橋は必要ではなく、用意した供試細胞をそのまま溶解処理に供すればよい(ステップ(I))。検出対象のRNA修飾の例は、1-メチルアデノシン(m1A)、N6-メチルアデノシン(m6A)、7-メチルグアノシンキャップ(m7G-Cap)、7-メチルグアノシン(m7G)、2,2,2-トリメチルグアノシン(m3G)、5-メチルシチジン(m5C)である。同様に、検出対象のRNA構造の例は、RNA-DNA hybrid形成領域、double stranded RNA領域である。
ステップ(II)では、特異的抗体を用い、細胞溶解液中の標的RNAをビーズ上に捕捉する。特異的抗体には、特定のRNA修飾又は特定のRNA構造を特異的に認識するものが用いられる。例えば、m1Aに対しては抗m1A抗体、m6A修飾に対しては抗m6A抗体を用いればよい。RNA修飾特異的抗体、RNA構造特異的抗体は常法で調製しても、或いは市販品(例えば、株式会社医学生物学研究所、Abcam社、Active motif社等が各種抗RNA修飾抗体を提供している)を利用することにしてもよい。
ステップ(III)以降の操作は本発明の第1の局面のステップ(4)以降の操作に準ずる。
3.検出用キット
本発明の更なる局面は、本発明の検出方法(タンパク質−RNA相互作用の検出、RNA修飾又はRNA構造の検出)に利用可能なキットに関する。本発明のキットは、必須の構成要素として、抗体結合性タンパク質(具体例はプロテインG、プロテインA)が表面にコートされた磁気ビーズ、エンドヌクレアーゼ、5'→3'エキソヌクレアーゼを含む。
プロテインG又はプロテインAが表面にコートされた磁気ビーズの具体例はDynabeads Protein G、Dynabeads Protein Aである。エンドヌクレアーゼは、5'断端はモノリン酸化され、3'断端はOH基の切断RNAを生成するエンドヌクレアーゼが好ましく、該当するものはベンゾナーゼ及びRNase IIIである。好ましい態様では、これら2つのエンドヌクレアーゼの両方をキットの要素とする。5'→3'エキソヌクレアーゼには5'-リン酸依存性エキソヌクレアーゼ(具体例はTerminatorTM 5'-リン酸依存性エキソヌクレアーゼ)が好適である。
本発明の検出方法をより簡便に実施できるように、以下の(a)〜(f)からなる群より選択される一以上の要素を更に含むようにキットを構成するとよい。
(a)細胞溶解試薬
(b)DNase I
(c)標的特異的抗体
(d)3'リンカー及びRNAリガーゼ
(e)プロテアーゼ
(f)RNA精製用の試薬及び器具
細胞溶解試薬には各種界面活性剤、それを主成分とする溶液、二種類以上の界面活性剤、それらを主成分とする溶液等を採用することができる。DNase Iは、RNaseが混在していなもの(即ちRNase-free)が好ましく、例えばQiagen社のRNase-free DNase I、Promega社のRQ1 RNase-Free DNase等を用いることができる。標的特異的抗体は、特定のタンパク質に特異的な抗体(標的タンパク質特異的抗体)、特定のタグに特異的な抗体(タグ特異的抗体)、特定のRNA修飾に特異的な抗体(RNA修飾特異的抗体)又は特定のRNA構造に特異的な抗体(RNA構造特異的抗体)である。2種類の標的特異的抗体をキットの要素にしてもよい。3'リンカーには5'プレアデニル化リンカーが好ましく、この場合には5'デアデニラーゼもキットに含めるとよい。RNAリガーゼの例は、T4 RNA Ligase 1、T4 RNA ligase 2、RtcB Ligase、T4 RNA Ligase 2 truncated KQ、T4 RNA Ligase 2 (dsRNA Ligase)、T4 RNA Ligase 2, truncated、T4 RNA Ligase 2, truncated K227Q、T4 RNA Ligase 2, truncated KQ(以上、いずれもNew England Biolabs社製)、T4 RNA Ligase 2, Deletion Mutant(ARB-LS エア・ブラウン ライフサイエンス社製)である。プロテアーゼにはプロテイナーゼKが好適である。RNA精製用の試薬及び器具としては、RNAの精製用に構成された各種カラム及びそれに使用される試薬が該当する。
その他、各反応に必要なその他の試薬、バッファー(反応用、希釈用、洗浄用など)、反応容器等を本発明のキットに含めても良い。また、本発明のキットには通常、取扱い説明書が添付される。
<効率的な細胞内タンパク質−RNA相互作用同定法の開発>
従来のCLIP法を改良し、極めて効率的にタンパク質−RNA間相互作用部位を検出する新手法を開発した。tRIP(targeted RNA immunoprecipitation:標的RNA免疫沈降)法と名付けたこの手法のプロトコルの概要を以下に示す。
tRIP法では、CLIP法と同様に、まず、生細胞にUV照射を行うことで細胞内タンパク質−RNA結合を化学的に架橋し、その後、タンパク質−RNA複合体のRNA部分消化をRNaseにより行う(図1a)。部分消化によってできるRNA断片の長さは、最終的なタンパク質−RNA相互作用部位の同定効率の決定的な要因であるため、RNase処理は、ベンゾナーゼ処理とRNase III処理の2段階のステップにより慎重に行う。まず、全細胞抽出液に少量のベンゾナーゼを加え、大まかな部分消化を行う。ベンゾナーゼは、RNA及びDNAを塩基選択性無く分解できる強力なエンドヌクレアーゼであり、本法では低濃度のベンゾナーゼ処理で、RNAを500〜2000塩基程度に断片化する(図6a)。処理後にEDTAを加え、ベンゾナーゼを不活化する。
続いて、特異抗体とプロテインGビーズによるタンパク質−RNA複合体の免疫沈降を行い、ビーズ上に集められたRNAに対し、RNase IIIによる部分消化を行う。RNase IIIは通常、二本鎖RNAを認識切断するが、低塩濃度条件で一本鎖RNAを切断することが知られている。この条件はRNA-seqライブラリーの調製時に、RNAを60〜100 ntに断片化するために汎用されてきた実績がある。CLIPで通常使用されているRNase AやRNase Iは、強いエンドヌクレアーゼ活性があり、細胞抽出液中のRNAでも効率的に切断するが、過剰な断片化を防ぐことが難しい。対照的に、RNase IIIの活性は弱く、細胞抽出液中では、ほとんどRNAを切断できないが、ビーズ上の極めて微量なRNAの断片化には、適切な活性を持っている(図6b)。また、ベンゾナーゼ・RNase IIIともに、切断RNAの5'断端はモノリン酸化、3'断端はOH基となる。このおかげで、通常は3'リンカーライゲーションやエキソヌクレアーゼ処理前に必要となる、3'末端の脱リン酸化や5'末端のリン酸化のステップが省略可能となり、プロトコルの簡略化に貢献している。
続いて、ビーズを強力に洗浄して非特異的残存RNAを低減させた後、T4 RNA ligase 2を用いて、ビーズ上のRNA断片の3'末端に5'プレアデニル化リンカーをライゲーションする。セルフライゲーション防止のためにリンカーの3'末端はアミノ基になっている。一晩の反応後、5'デアデニラーゼ処理により、ライゲーションされずにビーズ上に非特異的に残存しているリンカーの5'プレアデニル化末端を5'モノリン酸化末端に変換する。この反応は、次のエキソヌクレアーゼ処理に必要な工程である。
ビーズの洗浄後、TerminatorTM 5'-phosphate-dependent exonuclease(TerminatorTM 5'-リン酸依存性エキソヌクレアーゼ)処理を行う。TerminatorTM 5'-phosphate-dependent exonucleaseは、5'-モノリン酸化末端を有する一本鎖のRNAもしくはDNAを消化する、5'→3'エキソヌクレアーゼである。このエキソヌクレアーゼ処理はビーズ上に非特異的に残存しているリンカー及びRNAを効果的に除去する(図7a)。しかし、タンパク質が架橋されている標的RNAの場合、エキソヌクレアーゼ消化は架橋部位を越えることができないため、ビーズ上には標的RNAのタンパク質結合部位から3'端までが残存することになる(図7b、d及びe)。
本発明者らは、ビオチン化塩基を介して1本鎖RNAの中央にストレプトアビジンを結合することにより、タンパク質−RNA複合体のシミュレーションを行い、エキソヌクレアーゼ消化の進展を観察した(図7c)。これらRNAにエキソヌクレアーゼ処理を行うと、ストレプトアビジン結合が無ければ、RNAは完全に消化されてしまう(図7c、レーン4-6)。しかし、ストレプトアビジンが結合したRNAでは、一部RNAが消化されるものの消失はしない(これは、バンド強度の減少及びバンド移動度の増加によって示されている。図7c、レーン1-3)。以上の結果は、エキソヌクレアーゼによるRNA消化は、RNAへの大きな分子の強固な結合により阻害されることを示している。
次に、ビーズ上に残存しているタンパク質−RNA複合体をプロテイナーゼK処理することで、複合体から標的RNAを遊離させる。遊離RNAはカラム精製により回収し、そこからcDNAライブラリーを構築する。RNAの損失を最小限に抑えるために、ライブラリー構築を1本のチューブ内で行う。これは、シングルセルRNA-seqで行われた方法(参考文献1)に改変を加えたライブラリー構築法である。まず、回収したRNAを逆転写して第一鎖cDNAを生成する。続いて、エキソヌクレアーゼI処理を行うことにより、使用したプライマーを消化する。次に、第一鎖cDNAの3'末端にポリAテールを付加し、これを利用してポリTテールを持ったプライマーを用いて第二鎖合成を行う。得られた二本鎖DNAをPCR増幅して、ハイスループットシーケンシング解析に十分な量のライブラリーDNAを確保する。
tRIP法は、実験開始からcDNAライブラリー生成まで、わずか1.5日で終了する。実験の総ステップ数はCLIPの19ステップに対しtRIPでは13ステップと減少している。RNA精製は1回のみであり、技術的に難易度の高かったRNA精製ステップの簡略化に成功している(図1b及び図12)。
<tRIP法による解析実験>
tRIP法の有用性及び利点などを検証するため、以下の実験を行った。
1.材料と方法
(1)抗体
抗PTBP1(N-20)抗体、抗FUS(4H11)抗体、抗RNAP II(N20)抗体、コントロールウサギIgG抗体、コントロールマウスIgG抗体はSanta Cruz Biotechnology社から購入した。抗RBFOX2(A300-864A)抗体はBethyl Laboratories社から購入した。抗m1A(AMA-2)抗体は、株式会社医学生物学研究所から購入した。抗m6A(ab151230)はAbcam社から購入した。
(2)細胞
HEK293T細胞、C2C12細胞は、37℃、5% CO2の条件でDMEM含10%牛胎児血清培養液により培養した。N2Aマウス神経芽細胞種由来セルラインはMEM含10%牛胎児血清培養液により培養した。
(3)3'リンカーの作製
3'リンカーの塩基配列は、以下の通りである。
5'-phosphate-AGATCGGAAGAGCACACGTCTGAACTCCAGTCACxxxxxxATCTCGTATGCCGTCTTCTGCTTG-3'-biotin(配列番号2)。但し、xxxxxxは6塩基のIllumina TruSeq LTインデックス配列。
5'のリン酸基は、NEB社の5'DNA adenylation kitを使用して、5'プレアデニル基に変換後、Zymo Research社のOligo Clean & Concentratorを用いて、カラム精製した。
(4)プライマー配列
tRIPライブラリーの作製に使用したプライマーの配列は以下の通りである。
1st-RT-プライマー, 5'-CAAGCAGAAGACGGCAT-3'(配列番号3)
2nd-str-プライマー, 5'-CGACACGTCGCGTTTTTTTTTTVN-3'(配列番号4)
PCR-P5-fullプライマー, 5'-AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACGCACGCTGTCCCGACACGTCGCGTTTT-3'(配列番号5)
PCR-P7-fullプライマー, 5'-CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATxxxxxxGTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCT-3'(配列番号6)。但し、xxxxxxは6塩基のIllumina TruSeq LTインデックス配列(001, CGTGAT; 002, ACATCG; 003, GCCTAA; 004, TGGTCA; 005, CACTGT; 006, ATTGGC; 007, GATCTG; 008, TCAAGT; 009, CTGATC; 010, AAGCTA; 011, GTAGCC; 012, TACAAG; 013, TTGACT; 014, GGAACT; 015, TGACAT; 016, GGACGG; 018, GCGGAC; 019, TTTCAC; 020, GGCCAC; 021, CGAAAC; 及び022, CGTACG)。
Illumina high-throughput sequencerでのシーケンス解析に用いたプライマー配列は以下の通りである。
シーケンシングプライマー, 5'-GCACGCTGTCCCGACACGTCGCGTTTTTTTTTT-3'(配列番号7)
Index1 Seqプライマー, 5'-GATCGGAAGAGCACACGTCTGAACTCCAGTCAC-3'(配列番号8)
tRIPでは、カスタムシーケンシングプライマーを使用する。
(5)タンパク質に結合しているRNAの精製
2×107個のHEK293T細胞を使用したRBFOX2-tRIPライブラリー作製の方法を示す。個々のtRIPライブラリー作製に使用した試薬の量は図13に示してある。HEK293T細胞を氷冷PBSで洗った後、254 nmのUV-Cを400 mJ/cm2の強度で細胞に照射する。細胞を培養皿からはがし、遠心で集めた後、1 mlの溶解バッファー(50 mM Tris-HCl pH 7.4, 100 mM NaCl, 1 mM MgCl2, 0.1 mM CaCl2, 1% NP-40, 0.5% sodium deoxycholate及び0.1% SDS)を細胞ペレットに加え、細胞を溶解する。5分氷上に静置した後、ソニケーションを行う(MySonic, 出力30, 10秒間のソニケーションと30秒間の静置を氷上で4回繰り返す)。ライセートに30μlのRNase-free DNase I (Qiagen)を加え、37℃で5分間静置する。さらに10 unitsのベンゾナーゼ(Merck Millipore)を加え、37℃で5分間静置する。0.5 M EDTAを10μl加え、ベンゾナーゼを不活化する。14,000 rpmで5分間4℃で遠心した後、上清に10μgの特異抗体と100μlのDynabeads protein Gを加え、4℃で5時間放置する。
ビーズを洗浄バッファー(1×PBS, 0.1% SDS, 0.5% deoxycholate及び0.5% NP-40)で2回、1×RNase IIIバッファー(10 mM Tris-HCl pH 7.9, 50 mM NaCl, 10 mM MgCl2及び1 mM DTT)で2回洗浄する。ビーズに200μlの1×RNase IIIバッファーと2 unitsのRNase III(New England Biolabs)を加え、37℃に4分間静置する。素早く洗浄バッファーでビーズを洗浄した後、高塩濃度バッファー(50 mM Tris-Cl pH 7.4, 1 M NaCl, 1% NP-40, 0.1% SDS及び0.5% deoxycholate)による洗浄を室温で10分間2回、PNKバッファー(50 mM Tris-Cl pH 7.4, 10 mM MgCl2及び0.5% NP-40)による洗浄を室温で5分間2回、行う。続いて、ビーズに30μlの1×反応バッファー(New England Biolabs)(10% PEG 8000を含有する)と100 unitsのT4 RNA ligase 2 truncated KQ(New England Biolabs)を加え、15℃に一晩放置する。翌日、ビーズを洗浄バッファーで2回、PNKバッファーで1回洗浄した後、20μlの1×Buffer 1(New England Biolabs)と50 unitsの5'デアデニラーゼ(New England Biolabs)を加え、30℃に45分間放置する。ビーズを洗浄バッファーで1回、PNKバッファーで2回洗浄した後、20μlのBuffer A (Epicentre)と0.5 unitのTerminator exonuclease(Epicentre)を加え、30℃で60分間放置する。ビーズを洗浄バッファーで1回、高塩濃度バッファーで2回、洗浄バッファーでさらに1回洗浄した後、1×PKバッファー(100 mM Tris-Cl pH 7.5, 100 mM NaCl及び20 mMEDTA)中に5 mg/mlに調整したプロテイナーゼKを50μl加え、37℃で40分間放置する。上清中に遊離したRNAをQuick-RNA MicroPrep(Zymo Research)で精製し、6μlのH2Oに溶解する。
(6)tRIPライブラリーの構築
シングルセルRNA-seqで行われた方法(参考文献1)に改変を加えた方法でライブラリーを構築する。溶解したRNA(約5.8μl)を、0.2mlのPCRチューブに移し、そこに0.4μlの1st-RT-プライマー(0.5 pmol/μl)と0.4μlの10 mM dNTP mixを加える。70℃で5分間静置し、25℃で放置する。続いて、氷上で0.8μlの10×PCRバッファー(TaKaRa)、0.4μlのSuperScript IV(Thermo Fisher Scientific)、と0.4μlの100 mM DTTを加え、42℃で20分間、50℃で20分間の逆転写反応を行った後、70℃で10分間放置し酵素を不活化する。1.2μlのexonuclease I(TaKaRa)、0.4μlの10×Exonucleaseバッファー(TaKaRa)、0.4μlのH2Oを加え37℃で30分間静置しプライマーを分解した後、80℃で20分間静置して酵素を失活化する。6.5μlのpolyA-tailing mix[0.8μlの10×PCRバッファー、0.2μlの100 mM dATP、0.2μlのRNase H(TaKaRa)、0.6μlのterminal transferase(New England Biolabs)、4.7μl H2O]を氷上でチューブに加え、ポリAテール付加反応を37℃で50秒間行い、65℃で10分間静置することで酵素を失活化する。次に、28μlの2×MightyAmp Buffer v2 (TaKaRa)、0.7μlの10μM 2nd-str-プライマー、2μlのMightyAmp DNA polymerase(TaKaRa)、8.8μl H2Oをチューブに加え、98℃で130秒、40℃で1分、68℃で1分の反応で第二鎖合成を行う。25μlの2×MightyAmp Buffer v2(TaKaRa)、1μlの50μM PCR-P5-fullプライマー、1μlの50μM PCR-P7-fullプライマー、23μl H2Oをチューブに加え、よく混合する。7.5μlは96ウェルプレートの1ウェルに移し、H2Oで20倍希釈したEvaGreen(Biotium)0.5μlを加え、LightCycler480(Roche)を用いて以下のプログラムで増幅する。
98℃で10秒間、52℃で1分間、68℃で1分間、を2サイクル。
98℃で10秒間、65℃で15秒間、68℃で30秒間、を35サイクル。
増幅曲線が立ち上がるサイクル数(Ct)を確認し、残りの反応液は、同じプログラムを用いて(ただしCtから3サイクル少ないサイクル数で)増幅する。合成されたライブラリーは、PCR purification column(Qiagen)かAMPure XP beads(Beckman Coulter)を用いて精製する。1μlのライブラリーを用いて、HS-DNA chipによるon the Bioanalyzer(Agilent Technologies)解析を行い、ライブラリーのサイズ分布を測定する。
(7)ハイスループットシーケンシングとデータ解析
作製されたtRIPライブラリーを用いて、Illumina HiSeq 4000での50 bp single-read解析もしくは、Miseqでの150 bp single-read解析でのシーケンシングを行った。得られたシーケンシングシードを、以前行われた方法(参考文献3)に若干の変更を加えてゲノムにマッピングした。以下に、その方法を示す。
標準法でマルチプレックス化されているリードをインデックスごとに振り分けた後、「-match-read-wildcards -times 1 -e 0.1 -O 1 -quality-cutoff 6 -m 18.」の設定でcutadapt(v1.10)を使用して、リードからアダプター配列を削除するとともに18塩基未満の配列を削除した。残ったリードを、まず、STAR(v 2.5.2b)を使ってRepBaseに登録されているヒトもしくはマウスのリピート配列にマッピングし、リピート配列をリードから分離した。残りのすべての配列を、ヒトゲノム(hg19)もしくはマウスゲノム(mm10)にSTAR(v 2.5.2b)を使ってマッピングした。複数個所にマッピングされた配列を除去した。Picardを(REMOVE_DUPLICATES=true VALIDATION_STRINGENCY=LENIENT)(https://www.biostars.org/p/156334/)の設定で使用して、重複配列を除いた。tRIP-tagのピーク検出には、MACS(v1.4.2)7を「-f BAM --nomodel --shiftsize 25」の設定で使用した。Information contentsを、seqLogo R package (http://works.bepress.com/bembom/11/)を使用して計算した。HOMER's findMotifsGenome program(-S 5 -rna -norevopp -len 4,5,6-p 6)を使用して、ピーク領域中のモチーフ配列を検索した。モチーフ検索時には、RepeatMasker(mm10 open 4.0.3, hg19 open 4.0.3)で重複エレメントとされている領域を、bedtools' intersect program(-a peaks.bed -b rmsk.bed -f 0.5 -v)を使用して解析対象から外した。
(8)tRIP法によるタンパク質-タンパク質−RNAの三次相互作用の検出
上の記載と同様に、N2A細胞にUV照射してタンパク質−RNA架橋を行う。細胞質分画を捨てて核分画を回収するため、1 mlのBuffer A(10 mM HEPES-KOH pH 7.8、10 mM KCl、0.1 mM EDTA、0.1% NP-40)で細胞を溶解した後、4℃、2000 gで1分間遠心した。U1snRNP複合体の解析時には、核ペレットを、Buffer Aで1回洗浄した後、1 mlの溶解バッファーで溶解し、核分画抽出液を得た。RNAP II複合体の解析時には、下記に説明する方法に従って、クロマチン分画を核ペレットからさらに抽出した。まず、核ペレットを1 mlのNUCバッファー(20 mM HEPES pH 7.6, 150 mM NaCl, 2 mM EDTA及び1 mM DTT)に溶解した後、1 mlの2×NUNバッファー(50 mM HEPES pH 7.6, 2 M urea, 2% NP-40, 600 mM NaCl及び1 mM DTT)と混合する。氷上で20分間放置した後、4℃、14000 gで5分間遠心によりクロマチン分画を回収し、1 mlの溶解バッファーに溶解した。
得られた核分画もしくはクロマチン分画に対し、ソニケーション(Misonix, 出力30, 10秒間のソニケーションと30秒間の静置を氷上で4回繰り返す)を行った後、30μlのDNase Iを添加し37℃で5分間静置し、続いて100μlのDynabeads protein Gと10μgの抗U1A抗体もしくは抗RNAP II抗体を加え、4℃で一晩免疫沈降を行った。ビーズを洗浄バッファーで2回、1×RNase IIIバッファーで2回洗浄した。ビーズに200μlの1×RNase IIIバッファーとRNase III(U1snRNP複合体の解析なら6 units、RNAP II複合体の解析なら1 unit)を加え、37℃に静置した(U1snRNP複合体の解析なら20分間、RNAP II複合体の解析なら4分間)。ビーズは、U1snRNP-tRIPライブラリーもしくはRNAP II-tRIPライブラリー構築のために、上清はFUS-tRIPライブラリー構築のために別々に回収した。ビーズを、素早く洗浄バッファーで洗浄した後、高塩濃度バッファーによる洗浄を室温で10分間2回、PNKバッファーによる洗浄を室温で5分間2回行い、U1snRNP-tRIPライブラリーもしくはRNAP II-tRIPライブラリー構築のため、3'リンカーライゲーション反応を15℃で一晩行った。上清には、まず500μlの洗浄バッファーと500μlの高塩濃度バッファーと最終濃度50 mMになるようにEDTA(RNase IIIを不活化するため)を加えた。続いて、10μlのDynabeads protein Gビーズを加え、ペレットを確認しやすいようにして、残存ビーズを取り除いた。次に、1μgの抗FUS抗体と10μlのDynabeads protein Gを加え4℃で6時間免疫沈降を行った。ビーズを、洗浄バッファー1回、高塩濃度バッファーで2回、PNKバッファーで2回洗浄し、3'リンカーライゲーション反応を15℃で一晩行った。その後、上述と同じ方法で、U1 snRNP-FUS-tRIPライブラリーとRNAP II-FUS-tRIPライブラリーを構築した。
2.結果
(1)tRIP法による細胞内タンパク質−RNA相互作用同定の実際
tRIP法の有効性を探るため、CLIP法を用いて広く解析が行われてきたスプライシング因子RBFOX2に関し、2×107個のHEK293T細胞を用いて、tRIP(RBFOX2-tRIP)を実施した。ハイスループットシーケンシング解析では、全体の50%以上のリードがヒトゲノムにマッピングされた(図2a)。通常のcDNAライブラリー作製では、無駄なリードを減らすため、短すぎるcDNAを除くステップがある。プロトコルの効率化のため、tRIP法ではこのステップを省略しており、ハイスループットシーケンシングでは、相当数のマッピング不可能な短小リードが出現してくる。それにも関わらず、解析で最も重視されるユニークにゲノムにマッピングされるリード数はCLIPと同等であり、tRIP法の実効性の高さが示唆される。
以下は、ゲノムにユニークマッピングされたRBFOX2-tRIPリードの分析である。以前の報告(参考文献2)と同様に、80%程度がイントロン上に分布していた(図8a)。また、MACSアルゴリズムによりピーク検出を行うと、2つのRBFOX2-tRIPライブラリーから27,543及び17,903個のピークが検出され、ライブラリー間で対応するピークのサイズ(個々のピークを構成するリード量)を比較すると、相関係数0.79と良い相関を示した(図2b及びc)。HOMERアルゴリズムによるモチーフ解析では、ピーク内に、以前から知られているRBFOX2結合モチーフGCAUG(参考文献2)の集積が検出され、tRIPによりRBFOX2結合部位の検出に成功していることが示唆される(図2d)。RBFOX2結合モチーフは、ユニークマッピングされたリードの5'端付近に高頻度に出現する(図8b)が、これはiCLIPと同様に逆転写反応がRBP-RNA架橋部位で終結するため、と考えられる。また、これらのリードの上流領域は、Tヌクレオチドが比較的多く出現していた。これは、第2鎖cDNA合成(図8b、下のパネル)において、RNA中にもともと存在するポリAストレッチにオリゴdTプライマーがアニーリングして第2鎖が合成されることがあるため、と考えられる。
次に、tRIPのリード分布とeCLIP(GSM2055432とGSM2055434の統合データセット)のユニークマッピングリード分布の相同性を検討した(図2e)。eCLIPは近年開発された効率的なCLIP法で、同一細胞数から一定量のcDNAライブラリーを作成するのに必要なPCR増幅率は、iCLIPの1/1000である(参考文献3)。つまり、eCLIPはiCLIPの1000倍の効率を持つ。このeCLIPで検出されたRBFOX2のピークと、本発明者らのRBFOX2-tRIPで検出された対応するピークサイズを比較すると、0.75以上の相関係数を示しており、tRIPはeCLIPと相同性の高いリード分布を示すことが示唆された(図2e)。RBFOX2のeCLIPでは2×107個のHEK293T細胞から、16サイクルのPCR増幅で約70 fmolのライブラリーを生成しているが、同一条件でのtRIPライブラリー作製では、11サイクルのPCR増幅で302及び241 fmolのライブラリーが生成された。これは、tRIPがcDNAライブラリーのPCR増幅率をeCLIPの1/100程度に低減させることを意味する。つまり、tRIPはeCLIPの100倍の効率を持つ。
tRIPの高効率性が明らかとなったので、少量の細胞数を用いたtRIP解析に挑戦した。PTBP1は、RNA中のCUリッチ配列を認識するスプライシング因子であり、細胞内に高発現している。本発明者らは、4×105個、4×104個、及び4×103個のC2C12細胞を用いてPTBP1のtRIPを行い、1×107個のC2C12細胞を用いたPTBP1のHITS-CLIP解析(参考文献7)と比較した。マウスゲノムにマッピングされたリードは、4×105細胞数のtRIPと1×107細胞数のHITS-CLIPで、ほぼ同様の分布を示した(図3a、b及び図9a)。また、4×105細胞数のtRIPで検出されるピークは、1×107細胞数のHITS-CLIPのピークに比べ、平均4.07倍多いユニークマッピングリード数で構成されていた。これは、PCRによるリードの複製量がtRIPで激減したおかげで、より多くのユニークマッピングリードの検出が可能になったため、と考えられる。4×104個、4×103個と細胞数を減少させると、回収されるRNA量が減少するため、より多くのPCR増幅が必要となる。このため、ユニークマッピングリードの割合は、細胞数の減少につれて、低下していく(図9b)。しかし、4×105、4×104、4×103細胞数、いずれのtRIP解析でも、ピーク内には、PTBP1結合モチーフが高頻度に認められ(図9b)、また、4×105個のtRIPでピーク領域として検出されている領域は、4×104個、4×103個のtRIPでもピーク領域として検出されていた(図3c)。以上の結果は、4×103個の細胞数からPTBP1-RNA相互作用部位の検出が可能であることを示している。tRIPは数千個の細胞から実施可能であり、低いバックグラウンドで高い感度を有する鋭敏なタンパク質−RNA相互作用の検出法であることが明らかとなった。
(2)tRIPによるRNA修飾(m1A及びm6A)の検出
次に、tRIPがm1A及びm6AといったRNA修飾(参考文献8)の検出に応用できるかどうか検討した。UV照射は行わず、4×105〜4×103個のC2C12細胞から得られた全細胞抽出液に抗m1A抗体または抗m6A抗体を直接添加した。続いて、上述したタンパク質−RNA相互作用のtRIPと同様に、免疫沈降、エキソヌクレアーゼ処理を行った後、精製RNAからcDNAライブラリーを構築し、ハイスループットシーケンシング解析を行った。
m1A及びm6A-tRIPのいずれでも、PTBP1-tRIPと比較して、ユニークマッピングリードの割合が減少し、ゲノム上の複数個所に同じ配列が検出される重複エレメントへのマッピングリードの割合が増加していた(図10a)。これら重複リードの大半は、m1A-tRIPではtRNAに、m6A-tRIPではリボソームRNA(rRNA)にマッピングされていた(図4a)。m1A-tRIPの場合、既知であるtRNAのTループのm1A修飾部位周囲に、リードの集積が認められた(図10b)。また、m6A-tRIPでは、既知の18S及び28S rRNA上m6A修飾部位周囲にリードが集積していた(図10c)。興味深いことに、m1A-tRIPライブラリーのcDNA断片のサイズは、20bpと35bpにピークを持つ二峰性分布を示した(図10d)。20-bpの断片は、ほとんどがtRNAのm1A修飾塩基直後にマッピングされていた。35-bp断片はm1Aヌクレオチドを挟んでマッピングされており(図10b)、m1A修飾塩基部位は欠失するか、違う塩基に置換されていた。これは、逆転写反応がm1A塩基で阻害されるために生じたもの、と考えられる。
次に、ユニークマッピングされたm1A及びm6A-tRIPのゲノム上のリード分布を分析した。以前の報告(参考文献8)と同様に、リードの集積がm1Aでは転写開始部位(TSS)付近に、m6Aでは転写終結部位(TTS)付近に認められた(図4b)。また、いずれの細胞数のm6A-tRIPでもピーク内に、m6AモチーフGGACUと同様のモチーフの集積が認められ(図4c)、これらのモチーフはリードの5'端に高頻度に出現した(図10e)。m6Aは、タンパク質架橋やm1Aとは異なり、逆転写を阻害しない。5'端でのm6Aモチーフ高出現は、エキソヌクレアーゼによるRNA消化が、m6A抗体結合部位で終結するために生じている可能性が高い。これは、iCLIPの様に、逆転写反応阻害を利用しなくても、tRIP法で、1塩基単位の解像度でRNA修飾部位やタンパク質−RNA相互作用の検出が可能であることを、示唆する。
(3)tRIP法によるタンパク質-タンパク質−RNAの三次相互作用の検出
最後に、本発明者らは、この高感度なtRIP法を、タンパク質-タンパク質−RNAの三次相互作用の検出に応用した。
FUSは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭葉変性症(FTLD)などの神経変性疾患発症に関与するRNA結合タンパク質である。FUSは選択的スプライシングやポリアデニル化をはじめとする様々なRNAプロセシング制御に関与しており、スプライソソームの必須分子であるU1 snRNP、転写複合体の中核構成分子であるRNAポリメラーゼII(RNAP II)と結合することが知られている。
FUS-RNA相互作用は、全細胞抽出液を用いたCLIP法によって解析されてきた(参考文献9〜12)。しかし、U1 snRNP複合体中のRNAやRNAP II転写複合体中のRNAといった、特定の分画RNAにおけるFUS-RNA相互作用は未解明である。
まず、N2A細胞の全細胞溶解物を用いてFUSのtRIP解析を行った。FUS-tRIPのユニークマッピングリードの分布は、以前行われたFUSのHITS-CLIP解析(参考文献10)と相同性の高い分布を示しており(図11a)、既報告(参考文献12)で示されていた通り、遺伝子の5'及び3'末端近くになるほど、FUS-RNA相互作用は高頻度に認められた(図5b及び図11c、下中パネル)。
次に、U1 snRNP-FUS-RNA複合体あるいはRNAP II-FUS-RNA複合体をtRIP法により単離して、U1 snRNPに結合している、あるいはRNAP IIが転写中の、RNA上のFUS結合部位を解析した。UV架橋後、細胞を溶解し、U1 snRNPあるいはRNAP IIを特異的抗体で免疫沈降させた。免疫沈降したタンパク質−RNA複合体に対し、RNase IIIによるRNAの部分消化処理をした後、ビーズから遊離したFUS-RNA複合体を抗FUS抗体でさらに免疫沈降させた(図6a)。この時、tRIPライブラリーは、抗FUS抗体による免疫沈降で生成され、コントロール抗体では、生成されないことを確認した(図11b)。
tRIPライブラリーは、以下の4種類を、すべて2つずつ作製し、ハイスループットシーケンシング解析を行った(図5b及び図11c)。(i)U1 snRNPのtRIP(U1-tRIP)、(ii)U1 snRNPに結合したRNA上のFUSのtRIP(U1-FUS-tRIP)、(iii)RNAP IIのtRIP(RNAP II-tRIP)、(iv)RNAP IIが転写中のRNAに結合しているFUSのtRIP(RNAP II-FUS-tRIP)。
これらライブラリーの全遺伝子上の相対位置におけるリード分布を解析すると、(i)U1-tRIPでは、リードは転写開始部位(TSS)に集積し、転写終結部位(TTS)に向かうにつれて急速に減少していた(図5b及び図11c、左上パネル)。(ii)U1-FUS-tRIPは、U1-tRIPと同様の分布を示した(図5b及び図11c、左下パネル)。(iii)RNAP II-tRIPもU1-tRIPと同様の分布を示した(図5b及び図11c、右上パネル)。RNAP IIのTSS近傍への集積は、既報告のとおりである(参考文献13)。(iv)しかし、RNAP II-FUS-tRIPでは、他と全く異なる傾向が見られ、リードはTTSの近傍に著明に集積しており、TSS近傍にはわずかしか認められなかった(図5b及び図11c、右下パネル)。
さらに、TSS、スプライスサイト(SS)及びTTS(図11d)周囲のリード分布の解析を行った。すべてのTSS、SS、TTSの解析結果を図11dに、選択的制御をうけるTSS、SS、TTSの解析結果を図5cに示す。U1-tRIPリードは、5'SS周囲に著明に集積していたが(図11d、図5c、中央上部パネル)、これはU1 snRNPの基本的機能である5'スプライスサイト認識を反映していると考えられる。U1-FUS-tRIPでは、5'SSへのリード集積は認められない。5'SS以外の領域では、U1-tRIPとU1-FUS-tRIPは同様のリード分布を示しており、これはU1 snRNPとFUS間の密接な連携を示唆している。また、U1-FUS-tRIPリードは選択的SS周囲に集積していた(図5c)。この集積は、全細胞抽出液から生成されたFUS-tRIPよりも顕著であり(図11e)、U1 snRNPとFUSとの相互作用が選択的スプライシングの調節に関与することを示している。
U1snRNPの解析とは対照的に、RNAP II-tRIP及びRNAP II-FUS-tRIPのリードは、SS周囲に集積していない。その代わり、RNAP II-FUS-tRIPリードはTTS周囲に著しく集積していた(図5c及び図11d、右下パネル)。このFUSリード集積は、ポリアデニル化シグナル(PAS)、TTS、及びその下流のG/Uリッチ領域など、転写終結に必須のエレメント全体に渡って認められ、RNAP II転写複合体中のFUSが転写終結に積極的に関与していることが示唆された。また、TTS周辺のFUS集積は、U1-FUS-tRIP(図5c)や全細胞抽出液から生成されたFUS-tRIP(図5d)では認められない。
本発明者らは、HITS-CLIP、ChIP-seq、RNA-seq、Nascent-seq、PolyA-seqの包括的な解析を通じて、転写終結におけるFUS-RNA相互作用の機能的重要性を見出してきた(参考文献10)。今回のtRIP分析の結果は、RNAP II転写中RNA上に出現したTTSをFUSが直接に認識して転写終結を制御している、という新事実を示している。tRIPは、全細胞を使用した分析では不明確にしか検出できなかった、U1 snRNP-FUS-RNA相互作用及びRNAP II-FUS RNA相互作用の個別のネットワーク(図11f)を明らかにすることができる。
3.考察
RNA代謝は細胞内で時間的にも空間的にも制御されているが、CLIPをはじめとする既存の方法では解析に大量の試料を必要とするため、事実上、細胞全体の、ある一時点のタンパク質−RNA相互作用の解析に限定されていた。本発明者らの開発したtRIP法は、従来法と同等の解像度を保ちながら、CLIPとは一線を画す効率性を持つ。わずか1.5日の実験期間で数千個の細胞からタンパク質−RNA相互作用の解析が可能であり、さらには、微量なタンパク質−RNA複合体を試料とする、タンパク質−タンパク質−RNA相互作用の同定をも可能である。
本発明は、CLIP法と比べ、格段に簡便且つ効率的に細胞内タンパク質−RNA相互作用の解析を可能にする。本発明の検出法は、CLIP法に必須で、高度な技量を要するタンパク質−RNA複合体の精製ステップ(即ちSDS-PAGE及びその後のメンブレン転写)を5'→3'エキソヌクレアーゼによる酵素処理に置き換えることにより、格段に少ない試料(細胞)でのタンパク質−RNA相互作用の解析やRNA修飾の検出などを実現する。高効率性が故に、タンパク質−タンパク質−RNA相互作用の同定にも本発明は利用され得る。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
<参考文献>
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配列番号1:人工配列の説明:RNAプローブ
配列番号2:人工配列の説明:3'リンカー
配列番号3:人工配列の説明:1st-RT-プライマー
配列番号4:人工配列の説明:2nd-str-プライマー
配列番号5:人工配列の説明:PCR-P5-fullプライマー
配列番号6:人工配列の説明:PCR-P7-fullプライマー
配列番号7:人工配列の説明:Illumina TruSeq LT インデックス配列
配列番号8:人工配列の説明:Index1 Seqプライマー

Claims (15)

  1. 以下のステップ(1)〜(7)を含む、タンパク質−RNA相互作用を検出する方法:
    (1)供試細胞内のタンパク質−RNA結合を架橋するステップ、
    (2)ステップ(1)後の供試細胞を溶解し、細胞溶解液を調製するステップ、
    (3)細胞溶解液中の標的タンパク質−RNA複合体を、標的特異的抗体を介してビーズ上に捕捉するステップ、
    (4)ビーズを回収し、捕捉された標的タンパク質−RNA複合体をエンドヌクレアーゼで処理するステップ、
    (5)ステップ(4)後のビーズ上の標的タンパク質−RNA複合体を5'→3'エキソヌクレアーゼで処理するステップ、
    (6)ステップ(5)後のビーズ上の標的タンパク質−RNA複合体をプロテアーゼで処理するステップ、
    (7)ステップ(6)の処理液からRNAを回収し、シーケンシング解析するステップ。
  2. エンドヌクレアーゼがRNase IIIである、請求項1に記載の検出方法。
  3. 5'→3'エキソヌクレアーゼが5'-リン酸依存性エキソヌクレアーゼである、請求項1又は2に記載の検出方法。
  4. ステップ(3)の前に細胞溶解液中の標的タンパク質−RNA複合体をエンドヌクレアーゼで処理する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の検出方法。
  5. エンドヌクレアーゼがベンゾナーゼである、請求項4に記載の検出方法。
  6. ステップ(5)の前に、ビーズ上に捕捉された標的タンパク質−RNA複合体を構成するRNAの3'末端にリンカーを付加する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の検出方法。
  7. リンカーが5'プレアデニル化リンカーであり、リンカーを付加した後、5'デアデニラーゼ処理を行う、請求項6に記載の検出方法。
  8. シーケンシング解析によって、標的タンパク質−RNA複合体におけるタンパク質結合部位を同定する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の検出方法。
  9. ステップ(4)の際、ビーズとは別に処理後の溶液も回収し、以下のステップ(3−1)〜(7−1)を行う、請求項1〜8のいずれか一項に記載の検出方法:
    (3−1)回収した溶液中の第2標的タンパク質−RNA複合体を、第2標的タンパク質特異的抗体を介して第2ビーズ上に捕捉するステップ、
    (4−1)第2ビーズを回収し、捕捉された第2標的タンパク質−RNA複合体をエンドヌクレアーゼで処理するステップ、
    (5−1)ステップ(4−1)後の第2ビーズ上の第2標的タンパク質−RNA複合体を5'→3'エキソヌクレアーゼで処理するステップ、
    (6−1)ステップ(5−1)後の第2ビーズ上の第2標的タンパク質−RNA複合体をプロテアーゼで処理するステップ、
    (7−1)ステップ(6−1)の処理液からRNAを回収し、シーケンシング解析するステップ。
  10. 以下のステップ(I)〜(VI)を含む、RNA修飾又はRNA構造を検出する方法:
    (I)供試細胞を溶解し、細胞溶解液を調製するステップ、
    (II)細胞溶解液中の標的RNAを、特定のRNA修飾又はRNA構造特異的抗体を介してビーズ上に捕捉するステップ、
    (III)ビーズを回収し、捕捉された標的RNAをエンドヌクレアーゼで処理するステップ、
    (IV)ステップ(III)後のビーズ上の標的RNAを5'→3'エキソヌクレアーゼで処理するステップ、
    (V)ステップ(IV)後のビーズ上の標的RNAをプロテアーゼで処理するステップ、
    (VI)ステップ(V)の処理液からRNAを回収し、シーケンシング解析するステップ。
  11. 抗体結合性タンパク質が表面にコートされた磁気ビーズと、
    エンドヌクレアーゼと、
    5'→3'エキソヌクレアーゼと、
    を含む、タンパク質−RNA相互作用、RNA修飾又はRNA構造を検出するためのキット。
  12. エンドヌクレアーゼが、5'断端はモノリン酸化され、3'断端はOH基の切断RNAを生成するエンドヌクレアーゼである、請求項11に記載のキット。
  13. エンドヌクレアーゼがベンゾナーゼとRNase IIIの二種類である、請求項11に記載のキット。
  14. 以下の(a)〜(f)からなる群より選択される一以上の要素を更に含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載のキット:
    (a)細胞溶解試薬、
    (b)DNase I、
    (c)標的特異的抗体、
    (d)3'リンカー及びRNAリガーゼ
    (e)プロテアーゼ、
    (f)RNA精製用の試薬及び器具。
  15. 3'リンカーが5'プレアデニル化リンカーであり、5'デアデニラーゼが更に含まれる、請求項14に記載のキット。
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