以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mは、図1に示すように、2つの窓(サイドウィンド)W1,W2を有した二列シートタイプの車両Vに搭載されている。なお、実施形態では、右ハンドル車において、運転席DSの右側(車外側O)の窓W1,W2の上縁側に搭載される頭部保護エアバッグ装置Mについて、説明をする。実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mは、図1に示すように、エアバッグ20と、インフレーター14と、取付ブラケット11,16と、エアバッグカバー9と、を備えている。エアバッグ20は、図1に示すように、車両Vの車内側における窓W1,W2の上縁側において、フロントピラー部FPの下縁側から、ルーフサイドレール部RRの下縁側を経て、リヤピラー部RPの上方の領域まで、折り畳まれて収納されている。
エアバッグカバー9は、図1,8,9に示すように、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラーガーニッシュ4と、ルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング5と、のそれぞれの下縁から、構成されている。フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5とは、合成樹脂製として、フロントピラー部FPとルーフサイドレール部RRとにおいて、それぞれ、ボディ1(車体)側のインナパネル2における車内側Iに、取付固定されている。また、エアバッグカバー9は、折り畳まれて収納されるエアバッグ20の車内側を覆って、展開膨張時のエアバッグ20を車内側下方へ突出可能とするために、エアバッグ20に押されて車内側Iに開き可能に、構成されている(図8,9参照)。
インフレーター14は、エアバッグ20に膨張用ガスを供給するもので、図1に示すように、略円柱状のシリンダタイプとして、先端側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を、配設させている。インフレーター14は、ガス吐出口付近を含めた先端側を、エアバッグ20の後述する接続口部26に挿入させ、接続口部26の外周側に配置されるクランプ15を用いて、エアバッグ20に対して連結されている。また、インフレーター14は、インフレーター14を保持する取付ブラケット16と、取付ブラケット16をボディ1側のインナパネル2に固定するためのボルト17と、を利用して、インナパネル2において窓W2の上方となる位置に、取り付けられている(図1参照)。インフレーター14は、図示しないリード線を介して、車両Vの図示しない制御装置と電気的に接続されており、制御装置が、車両Vの側面衝突や斜突やオフセット衝突、ロールオーバー等を検知した際に、制御装置からの作動信号を入力させて、作動するように構成されている。
各取付ブラケット11は、2枚の板金製のプレートから構成されるもので、エアバッグ20の後述する各取付部62,68を、表裏から挟むようにして、各取付部62,68に取り付けられ、ボルト12を利用して、各取付部62,68を、ボディ1側のインナパネル2に取付固定している(図1,7,9参照)。
エアバッグ20は、実施形態の場合、図2〜5に示すように、バッグ本体21と、バッグ本体21の前端21c側から延びる連結ベルト65と、を備えている。
バッグ本体21は、可撓性を有した袋状として、図1の二点鎖線及び図6に示すように、インフレーター14からの膨張用ガスを内部に流入させて、折畳状態から展開して、窓W1,W2や、センターピラー部CP及びリヤピラー部RPのピラーガーニッシュ6,7の車内側Iを覆うように構成されるもので、外形形状を、膨張完了時に、窓W1からセンターピラー部CP,窓W2を経て、リヤピラー部RPの前側にかけての車内側を覆い可能に、長手方向を前後方向に略沿わせた略長方形板状とされている(図2参照)。また、バッグ本体21は、実施形態の場合、図6に示すように、膨張完了時の下縁21bを、窓W1,W2の下縁から構成されるベルトラインBLより下方に位置させるように、上下の幅寸法を設定されている。
実施形態の場合、バッグ本体21は、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した袋織りによって、製造されている。バッグ本体21は、図2に示すように、膨張完了時に車内側Iに位置する車内側壁部22aと車外側Oに位置する車外側壁部22bとを離隔させるように内部に膨張用ガスを流入させて膨張する膨張部22と、車内側壁部22aと車外側壁部22bとを結合させて構成されて膨張用ガスを流入させない非膨張部45と、を有している。
膨張部22は、実施形態の場合、車両Vのロールオーバー時にも乗員の頭部を保護可能なように、インフレーター14から吐出される膨張用ガスを流入させて膨張する主膨張部24(一次膨張部)と、主膨張部24と連通されて主膨張部24の膨張完了後に膨張を完了させる前側副膨張部30,中央側副膨張部31,後側副膨張部32(二次膨張部)と、を備える構成とされて、主膨張部24と前側副膨張部30,中央側副膨張部31,後側副膨張部32とをそれぞれ連通させる連通部33,34,35,36も、有する構成とされている。そして、実施形態の場合、バッグ本体21は、図2に示すように、主膨張部24,前側副膨張部30,中央側副膨張部31,後側副膨張部32を区画する端側区画部47,一般区画部53,58,厚さ規制部60の僅かな領域を除いて、略全面にわたって内部に膨張用ガスGを流入させて膨張するように、構成されている。
主膨張部24は、ガス案内流路25、接続口部26、前席用保護部27、及び、後席用保護部28を、備えている。
ガス案内流路25は、バッグ本体21の上縁21a側において、前後方向に略沿って延びるように、主膨張部24の領域の前後の略全域にわたって配設されるもので、インフレーター14から吐出される膨張用ガスGを、ガス案内流路25の下方に配置される前席用保護部27及び後席用保護部28に案内するように、構成されている。ガス案内流路25の前後の略中央(バッグ本体21の前後の中央よりやや後方となる位置)には、インフレーター14と接続される接続口部26が、ガス案内流路25と連通されて、ガス案内流路25から上方に突出するように、配設されている。実施形態の場合、接続口部26は、ガス案内流路25に対して後上がりに傾斜して形成されて、後端26a側を、インフレーター14を挿入可能に開口させている。この接続口部26は、内部にインフレーター14を挿入させた状態で、外周側にクランプ15を嵌めることにより、インフレーター14に接続されることとなる。なお、実施形態のエアバッグ20では、接続口部26から、ガス案内流路25における接続口部26の直下にかけての部位に、耐熱性を高めるための別体のインナチューブ(図符号省略)が、配設されている(図2参照)。
前席用保護部27は、膨張完了時に前席(運転席DS)の側方に配置されるもので、側面衝突時においてエアバッグ20が膨張を完了させた際に、前席(運転席DS)に着座した乗員P(運転者)の頭部Hを保護するための部位である。後席用保護部28は、膨張完了時に後席の側方に配置されるもので、側面衝突時においてエアバッグ20が膨張を完了させた際に、後席に着座した乗員の頭部を保護するための部位である。
前側副膨張部30は、主膨張部24(前席用保護部27)の前側に隣接するように、バッグ本体21の前端21c側に配置されるもので、実施形態のエアバッグ20(バッグ本体21)では、前端21c側に配置されるこの前側副膨張部30が、端側膨張部38を構成している。前側副膨張部30は、後側に配置される後述する端側区画部47によって、後側に隣接される前席用保護部27と区画されるもので、膨張完了形状を、上下方向に略沿った略棒状とされている。実施形態の場合、前側副膨張部30は、膨張完了時に、ベルトラインBLよりも下方に延びて、下端側を、前席用保護部27よりも下方に位置させるように、構成されている。また、この前側副膨張部30は、後上端側に開口される連通部33と、後下端側に開口される連通部34と、により、前席用保護部27と連通されている。これらの連通部33,34は、開口幅寸法を小さく設定されて、前側副膨張部30内への膨張用ガスの流入開始を、前席用保護部27よりも遅らせるように、構成されている。
中央側副膨張部31は、実施形態の場合、主膨張部24における前席用保護部27と後席用保護部28との間であって、ガス案内流路25の下側の領域に配置されるように、主膨張部24における前席用保護部27に隣接して配置されている。この中央側副膨張部31は、前席用保護部27の後端側に開口される連通部35により、前席用保護部27と連通されている。この連通部35も、開口幅寸法を小さく設定されており、中央側副膨張部31内への膨張用ガスの流入開始を、前席用保護部27よりも遅らせるように、構成されている。後側副膨張部32は、後席用保護部28の前端側において、中央側副膨張部31の後下縁側の領域に配置されるもので、主膨張部24における後席用保護部28に隣接して配置されている。後側副膨張部32は、後席用保護部28の前下端側に開口される連通部36により、後席用保護部28と連通されている。この連通部36も、開口幅寸法を小さく設定されており、後側副膨張部32内への膨張用ガスの流入開始を、後席用保護部28よりも遅らせるように、構成されている。
実施形態のバッグ本体21では、前側副膨張部30が、バッグ本体21の前端21c側に配置される端側膨張部38を構成し、膨張部22においてこの端側膨張部38(前側副膨張部30)以外の部位が、一般膨張部43を構成している。端側膨張部38は、端側区画部47により、一般膨張部43を構成する前席用保護部27と区画されている。この端側区画部47は、実施形態の場合、後述するごとく、周縁部46から分離して形成されるとともに、端側膨張部38と一般膨張部43とを区画するように上下方向に略沿って配置される縦棒部48と、縦棒部48の上端48aから後上方に向かって延びる横棒部49と、を備える構成とされている。そして、端側膨張部38は、上端38a側と下端38b側とを、それぞれ、横棒部49の先端(後端49a)と周縁部46との間に形成される連通部33と、縦棒部48の下端48bと周縁部46との間に形成される連通部34と、を介して、前席用保護部27と連通されている。
詳細に説明すれば、端側膨張部38は、上端38a側に配置されて端側区画部47の上側の領域から構成される上側部位39と、下端38b側に配置されて端側区画部47における縦棒部48の前側の領域から構成される下側部位40と、を備える構成とされて、上側部位39は、下側部位40と比較して、前後に幅広に構成されることとなる。そして、実施形態では、この上側部位39は、バッグ本体21の膨張完了時には、維持手段としての連結ベルト65に牽引されて、下側部位40よりも車内側Iに突出して配置される構成である。詳細に説明すれば、端側膨張部38は、膨張完了時の上端38a側に、上側部位39と、下側部位40における上側領域40a(縦棒部48の前側に配置される領域)と、を車内外方向側で重ならせるようにして構成される車内側突出部41を、有することとなる。バッグ本体21の膨張完了時に、車内側Iに突出するように配置される上側部位39は、縦棒部48から前後に延びる領域に、配設される構成であり、すなわち、上側部位39(車内側突出部41)は、バッグ本体21の膨張完了時において、端側区画部47における縦棒部48の後側上方から、縦棒部48の前側下方にかける領域を膨らませるようにして、配置されることとなる(図7参照)。また、車内側突出部41は、縦棒部48に形成される後述するスリット51よりも上側に、形成されることとなる。具体的には、上側部位39は、バッグ本体21の膨張完了時に、後端付近の部位(連通部33の部位)を起点XPとして、下側部位40に対して屈曲させるようにして、端側膨張部38におけるスリット51よりも上側の領域を、車内側突出部41を構成するように、車内側Iに突出させるように配置されることとなる。
具体的には、実施形態のエアバッグ20(バッグ本体21)では、図5に示すように、端側区画部47における横棒部49の後端49aと周縁部46における上縁側部位との離隔距離D1は、端側区画部47における縦棒部48の上端48aと周縁部46における上縁側部位との離隔距離D2の1/2程度に設定され、また、この離隔距離D2は、端側区画部47における縦棒部48の上端48aと周縁部46における前縁側部位との離隔距離D3より小さく、この離隔距離D3の4/7程度に設定されている。さらに、この離隔距離D3は、実施形態の場合、端側区画部47における横棒部49の前後方向側の長さ寸法Lより小さく、この長さ寸法Lの5/7程度に設定されている。
また、端側膨張部38は、エアバッグ20の膨張完了時には、下端38b側を、ベルトラインBLより下方に突出させて、配置されることとなる(図6〜8参照)。さらに、運転席DSの前方のステアリングホイール75に搭載されるステアリングホイール用のエアバッグ77が膨張を完了させた状態では、端側膨張部38は、下端38b側となる下側部位40を、このステアリングホイール用のエアバッグ77と、左右方向側(車内外方向側)で重ならせるように、膨張することとなる(図6,7,9参照)。
非膨張部45は、膨張部22の外周縁を構成する周縁部46と、膨張部22の領域内に配置される端側区画部47,一般区画部53,58,厚さ規制部60と、バッグ本体21の上縁21a側を車両Vのボディ1側に取り付けるための取付部62と、を備えている。
周縁部46は、接続口部26の後端26a側を除いて、膨張部22の周囲を全周にわたって囲むように、配置されている。
端側区画部47は、前側副膨張部30と前席用保護部27と(端側膨張部38と一般膨張部43と)を区画しているもので、実施形態の場合、上下両端側を、周縁部46から分離させて構成されている。端側区画部47は、上述した如く、上下方向に略沿って配置される縦棒部48と、縦棒部48の上端48aから後上方に向かって延びるように前後方向に略沿って配置される横棒部49と、を備える構成とされている。縦棒部48は、実施形態の場合、下端48bを上端48aよりもわずかに前側に位置させるように、上下方向に対して僅かに傾斜して略直線状に構成され、横棒部49は、略直線状として先端(後端49a)を縦棒部48の上端48aよりも上方に位置させるように、前後方向に対して後上がりに傾斜して構成されている。この横棒部49は、後端49aを、一般区画部53の上横棒部56よりも上方に突出させるように、構成されている。端側区画部47の縦棒部48には、連結ベルト65を挿通可能なスリット51が、形成されている。このスリット51は、バッグ本体21の上下の中央よりやや上方となる位置において、上下方向に略沿った切目を入れるようにして、形成されている。また、このスリット51は、長さ寸法を、連結ベルト65の本体部66のみを挿通可能で、本体部66の元部66a側の結合片67を挿通不能な寸法に、設定されている。
一般区画部53,58は、一般膨張部43の領域内に配置されて、一般膨張部43を、ガス案内流路25と前席用保護部27と後席用保護部28と中央側副膨張部31と後側副膨張部32とに、区画している。詳細には、一般区画部53は、周縁部46の下縁側の部位から前後方向に沿うように後方に延びて中央側副膨張部31と後側副膨張部32とを区画する下横棒部54と、下横棒部54の後端から上下方向に沿うように上方に延びて中央側副膨張部31と後席用保護部28とを区画する縦棒部55と、縦棒部55の上端から前後方向に沿うように前方に延びてガス案内流路25と中央側副膨張部31とを区画する上横棒部56と、を備えている。一般区画部58は、上横棒部56の前端56aの下方となる領域において、周縁部46の下縁側の部位から後上方に向かって延びるとともに、先端を下方に向けるように屈曲されて、前席用保護部27と中央側副膨張部31との下縁側の領域を区画している。
厚さ規制部60は、後側副膨張部32と後席用保護部28との境界部位付近において、周縁部46の下縁側から上方に突出するように、形成されている。そして、実施形態のエアバッグ20では、端側区画部47における横棒部49の後端49aと周縁部46の上縁側との間の隙間が、連通部33を構成し、端側区画部47における縦棒部48の下端48bと周縁部46の下縁側との間の隙間が、連通部34を構成している。また、一般区画部53における上横棒部56の前端56aと一般区画部58との間の隙間が、連通部35を構成し、一般区画部53における下横棒部54の後端と厚さ規制部60との間の隙間が、連通部36を構成している。
取付部62は、バッグ本体21の上縁21a側において、前後方向に沿って複数個配設されるもので、実施形態の場合、4箇所に、形成されている。この取付部62は、取付ブラケット11と取付ボルト12とを利用して、ルーフサイドレール部RRの部位におけるボディ1側のインナパネル2に固定されるもので、具体的には、取付部62は、エアバッグ20の膨張完了時に、端側膨張部38の上端38a側の上側部位39の車内側への突出を妨げないように、端側膨張部38(前側副膨張部30)の領域には、配置されていない。すなわち、実施形態のエアバッグ20では、取付部62は、端側区画部47における横棒部49の後端49aよりも後側の領域に、配設されている。各取付部62には、取付ボルト12を挿通させるための取付孔62aが、形成されている。
連結ベルト65は、バッグ本体21の膨張完了時に、バッグ本体21の前端21c側から延びて、車両Vのボディ1側に固定されるものであり、実施形態の場合、バッグ本体21の膨張完了時に、上側部位39(車内側突出部41)の車内側への突出状態を維持する維持手段も、構成することとなる。連結ベルト65は、可撓性を有したシート体から構成されるもので、実施形態の場合、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる織布から形成されている。この連結ベルト65は、平らに展開した状態のエアバッグ20における端側膨張部38の前上端付近を車内側後下方に接近させるように配置させる配置状態を、バッグ本体21の膨張完了時にも、維持可能として、バッグ本体21の膨張完了時に、上側部位39(車内側突出部41)の車内側への突出状態を維持する維持手段を構成しているもので、具体的には、元部側をバッグ本体21に結合させ、先端側を窓W1の周縁における車両Vのボディ1側に固定させて、エアバッグ20の膨張完了時に、端側膨張部38における下側部位40の車外側Oにおいて、前後方向に略沿って配置される構成である。連結ベルト65は、スリット51に挿通される帯状の本体部66と、本体部66の元部66a側に形成されてバッグ本体21側に結合される結合片67と、本体部66の先端66b側に形成される取付部68と、を備えている。結合片67は、本体部66よりも幅広として、本体部66から上下に突出するように、形成されている。すなわち、結合片67は、スリット51よりも幅広として、スリット51を挿通不能に、構成されている。取付部68は、バッグ本体21に形成される取付部62と同様に、取付ブラケット11と取付ボルト12とを利用して、窓W1の周縁であるフロントピラー部FPの部位におけるボディ1側のインナパネル2に固定されるもので、取付ボルト12を挿通可能な取付孔68aを、備えている。
この連結ベルト65は、バッグ本体21を平らに展開した状態で、図2に示すように、結合片67を、バッグ本体21における周縁部46の前上角部46a(端側膨張部38における上側部位39の前縁39a側)に縫着(結合)させて、本体部66を、結合片67から上方に延ばすように、上下方向に略沿わせて、配置される構成である。詳細には、結合片67は、バッグ本体21の車外側O(車外側壁部22b側)に重ねられている。そして、この連結ベルト65は、図3及び図4のAに示すように、バッグ本体21の上前縁側を車内側に折り返し、本体部66を、スリット51を経て車内側Iから車外側Oへ挿通させて、端側膨張部38における下側部位40の車外側Oを覆うように配置させた状態で、バッグ本体21とともに折り畳まれることとなる。このとき、バッグ本体21は、図2に示すように、端側膨張部38の前上端付近(上側部位39の前縁39a側)の領域を、車内側後下方に接近させるように、後上がりに傾斜している折り返し線CLで車内側壁部22a側に重ねるように折り返されることとなる。詳細には、端側膨張部38の上縁側(周縁部46の上縁46b)は、スリット51と略一致した位置において、スリット51に略沿って上下方向に略沿うように、配置されることとなる(図3参照)。また、このとき、連結ベルト65自体は、図4のAに示すように、結合片67を車内側Iに露出させ、本体部66における結合片67近傍となる元部側の部位で、スリット51に挿通され、反転されるようにして、取付部68を前方に向けるように、本体部66における端側膨張部38の車外側Oに配置される部位を、前後方向に略沿わせるようにして、配置されることとなる。連結ベルト65の長さ寸法(本体部66の長さ寸法)は、車両搭載時におけるバッグ本体21の膨張完了時に、本体部66に略沿ってテンションを発生させつつ、端側膨張部38の前上端付近(上側部位39の前縁39a側)を車内側後下方に変位させる配置状態を維持して、結合片67を結合させている端側膨張部38の前上端側(上側部位39の前縁39a側)の領域を、端側膨張部38における下側部位40の車内側の面に圧接可能な寸法に、設定されている。
バッグ本体21の膨張完了時には、連結ベルト65は、端側膨張部38の上端38a側の上側部位39を車内側に向かって突出させつつ、本体部66において、端側膨張部38の下側部位40の車外側に配置される部位を、前後方向に略沿わせるように、配置されることとなる。実施形態のバッグ本体21では、端側膨張部38と一般膨張部43とを区画している端側区画部47において、横棒部49が、後上がりに傾斜して配置されて、後端49a側の部位を、周縁部46との離隔距離D1を最も小さくするように、構成されている。換言すれば、端側膨張部38における上側部位39の後端側の部位が、最も狭幅とされている。そのため、このとき、端側膨張部38は、折畳収納時の折り返し線CLよりも後方となるこの横棒部49の後端49a付近(連通部33付近、すなわち、端側膨張部38における上側部位39の後端付近)を起点XPとして屈曲されるような態様となって、上側部位39を前後の全域にわたって、車内側に突出させるように、配置されることとなる(図7参照)。また、連結ベルト65は、元部側の結合片67を、バッグ本体21における非膨張部45を構成する周縁部46に結合させている構成であり、バッグ本体21の膨張完了時には、本体部66に沿って発生するテンションにより、この結合片67を結合させている周縁部46の前上角部46aが、端側膨張部38(上側部位39)に対して屈曲されて、上側部位39の車外側Oに折り込まれて配置されることとなる(図4のB参照)。すなわち、連結ベルト65は、元部側の結合片67も、車内側を端側膨張部38の上側部位39に覆われるような態様となり(図7参照)、上下方向側から見た状態で、前後方向に略沿った直線状に配置されることとなる(図4のB及び図9参照)。このとき、端側膨張部38は、厳密には、折畳収納時における折り返し線CLの折目を解消されて、上側部位39と下側部位40の上側領域40aとで、一室の大きなチャンバを構成するような態様となり(図8参照)、上縁側を構成している周縁部46の上縁46bを反転させつつ、その車内側に膨張領域を配置させるようにして、車内側突出部41を車内側に突出させるように、配置されることとなる。
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mを搭載させた車両Vにおいて、運転席DSの前方に配置されるステアリングホイール75には、車両Vの前方側からの衝撃力作用時に作動するステアリングホイール用のエアバッグ装置76が、搭載されている(図1参照)。このエアバッグ装置76は、ステアリングホイール75のボス部75a内に折り畳まれて収納されるエアバッグ77と、エアバッグ77に膨張用ガスを供給する図示しないインフレーターと、を備え、エアバッグ77は、斜突時やオフセット衝突時も含めて前方からの衝撃力の作用時に、内部に膨張用ガスを流入させて、ステアリングホイール75のリング部75bの上面側を全面にわたって覆うように膨張することとなる(図6,7の二点鎖線及び図8,9参照)。
次に、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明する。まず、車内側壁部22aと車外側壁部22bとを平らに展開した状態のバッグ本体21を、スリット51に連結ベルト65の本体部66を挿通させつつ、端側膨張部38の前上縁側(上側部位39の前縁39a側)の領域を、折り返し線CL(図2参照)の部位で車内側壁部22a側に重ねるように折り返して、換言すれば、端側膨張部38の前上端付近を車内側後下方に接近させるように配置させて、図3に示すように、予備折りする。その後、この予備折り状態を維持したまま、バッグ本体21を、下縁21b側を上縁21a側に接近させるように、折り畳んで、エアバッグ20を折り畳む。なお、実施形態では、詳細な図示は省略するが、バッグ本体21は、上縁21a側となるガス案内流路25の部位を、複数の前後方向に沿った折目を付けて蛇腹折りし、ガス案内流路25より下方の領域を、下縁21b側から車外側に向かって巻くようなロール折りにより、折り畳んでいる。エアバッグ20の折り畳み完了後には、破断可能な図示しない折り崩れ防止用のラッピング材により、折り畳まれたエアバッグ20の所定箇所をくるんでおく。
その後、取付ブラケット16を取付済みのインフレーター14を、クランプ15を利用して、エアバッグ20の接続口部26と接続させ、連結ベルト65の取付部68と、バッグ本体21の取付部62と、に、それぞれ、取付ブラケット11を固着させて、エアバッグ組付体を形成する。
次いで、取付ブラケット11,16を、ボディ1側のインナパネル2の所定位置に配置させて、ボルト12,17止めし、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を、インフレーター14に結線し、フロントピラーガーニッシュ4やルーフヘッドライニング5をボディ1側のインナパネル2に取り付け、さらに、ピラーガーニッシュ6,7をボディ1側のインナパネル2に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後において、車両Vの側面衝突時、斜突時、オフセット衝突時、若しくは、ロールオーバー時に、制御装置からの作動信号を受けてインフレーター14が作動されれば、インフレーター14から吐出される膨張用ガスが、バッグ本体21内に流入して、膨張するバッグ本体21が、図示しないラッピング材を破断させ、さらに、フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5との下縁から構成されるエアバッグカバー9を押し開いて、下方へ突出しつつ、図1の二点鎖線及び図6,7に示すごとく、窓W1,W2、センターピラー部CP、及び、リヤピラー部RPの車内側を覆うように、大きく膨張することとなる。また、斜突時やオフセット衝突時には、運転席DSの前方のステアリングホイール75に搭載されるステアリングホイール用のエアバッグ装置76も、図1,6,7の二点鎖線及び図8,9に示すように、エアバッグ77を膨張させるように作動されることとなる。なお、実施形態では、バッグ本体21は、下縁21b側から車外側に向かって巻くようなロール折りにより折り畳まれていることから、連結ベルト65の本体部66は、詳細な図示は省略するが、バッグ本体21の膨張完了時には、ねじれた状態で配置されることとなる。
そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ20の膨張完了時に、前端21c側に配置される端側膨張部38が、上端38a側の上側部位39を、下端38b側の下側部位40よりも車内側に突出させるように、配置されることとなり、また、この車内側に突出している上側部位39は、端側区画部47における縦棒部48の後側上方から縦棒部48の前側下方にかける領域を膨らませるようにして、配置される構成である。そのため、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、運転席DS(座席)の前方で膨張しているステアリングホイール用のエアバッグ77が、図8,9に示すように、車内側において近接して配置されていても、端側膨張部38における下端38b側の部位(下側部位40)が、このエアバッグ77と干渉することを抑制でき、かつ、上端38a側において車内側に突出している上側部位39(詳細には、上側部位39と下側部位40の上側領域40aとから構成される車内側突出部41)を、運転席DSの前方で膨張しているエアバッグ77と窓W1との間の隙間を埋めるように、配置させることができて、斜突時やオフセット衝突時等において、乗員としての運転者Pの頭部Hが車外側斜め前方に向かって移動する際に、この頭部Hを、上側部位39によって、受け止めることができる。また、この上側部位39(車内側突出部41)は、縦棒部48の後側上方から縦棒部48の前側下方にかける領域を膨らませるようにして、配置される構成とされ、かつ、維持手段としての連結ベルト65によって、膨張完了時の車内側Iへの突出状態を維持される構成であることから、車内側Iへの突出状態を安定して維持させることができ、かつ、前後に幅広に膨張している上側部位39(車内側突出部41)によって、車外側斜め前方に向かって移動する乗員Pの頭部Hを、的確に受け止めることができる。
具体的には、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、維持手段としての連結ベルト65は、端側膨張部38の前上端側(上側部位39の前縁39a側)から延びて、バッグ本体21の端側区画部47に形成されるスリット51を、車内側Iから車外側Oへ挿通された状態で、端側膨張部38の車外側Oを覆うように配置されて、先端側を、ボディ側のインナパネル2に固定される構成である。そのため、バッグ本体21の膨張完了時に、連結ベルト65の本体部66に略沿って発生するテンションにより、結合片67を結合させている端側膨張部38の前上端側(上側部位39の前縁39a側)の領域を、端側膨張部38における下側部位40の車内側の面に圧接させて、上側部位39(車内側突出部41)の車内側Iへの突出状態(端側膨張部38の前上端側の車内側下方への変位状態)を維持可能な構成とされている。また、この実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、連結ベルト65における本体部66は、スリット51を経て、端側膨張部38における下側部位40の車外側Oに配置される構成であることから、端側膨張部38における下端38b側の領域(下側部位40におけるスリット51より下方の領域)が、連結ベルト65の影響を受け難く、車内側Iへの突出を抑制されることとなる。
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、膨張時に、車内側で近接して膨張しているエアバッグ77との干渉を抑制できて、かつ、斜突時やオフセット衝突時にも、乗員としての運転者Pの頭部Hを的確に保護することができる。
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、端側膨張部38が、膨張完了時の下端38b側を、ベルトラインBLより下方に位置させる構成とされていることから、上端38a側の部位(車内側突出部41)の部位によって、車外側斜め前方に向かって移動する乗員Pの頭部Hを受け止めた際に、下端38b側をベルトラインBLの下側において窓W1よりも車内側に突出して配置されるドアトリム等の部材によって支持させることができ、乗員Pの頭部Hを一層的確に拘束することができる。
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、車内側突出部41の膨張完了時の車内側への突出状態を維持する維持手段として、バッグ本体21の前端21c側を車両Vのボディ1側に連結させる連結ベルト65を使用し、端側膨張部38の前上端側(周縁部46における前上縁側)を、間接的に、バッグ本体21における後下側の領域(端側区画部47の縦棒部48)に連結させている構成であるが、維持手段としては、実施形態に限られるものではなく、図12に示すエアバッグ20Aのように、バッグ本体21の前端21c側をボディ側に連結させる連結ベルト79を別途配置させ、端側膨張部38の前上端側(周縁部46における前上縁側)を、直接、バッグ本体21における後下側の領域(端側区画部47の縦棒部48)に結合(縫着)させることにより、この結合部位80を維持手段として、膨張完了時の車内側への突出状態(端側膨張部38の前上端付近の車内側下方への変位状態)を維持させる構成としてもよい。
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、端側膨張部38と一般膨張部43とを区画している端側区画部47が、端側膨張部38と一般膨張部43とを区画するように上下方向に略沿って配置される縦棒部48と、縦棒部48の上端48aから後方に向かって延びる横棒部49と、を備える構成とされている。そのため、エアバッグ20の膨張完了時に、端側膨張部38の上側部位39は、横棒部49の先端(後端49a)近傍の部位(連通部33近傍)を起点として、車内側Iに突出するように屈曲されることとなり、端側膨張部38の上端38a側(上側部位39)を、円滑に車内側に突出させることができる。また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、この横棒部49の後端49aの前後の位置を調整することにより、車内側突出部41の前後方向側の幅寸法を、容易に設定することができる。具体的には、図10のAに示すように、端側区画部47Fとして、横棒部49Fの後端49aを、横棒部49と比較して前側にずらすように構成すれば(横棒部49Fの長さ寸法を短くすれば)、上側部位の前後方向側の幅寸法を小さくすることができ、逆に、図10のBに示すように、端側区画部47Rとして、横棒部49Rの後端49aを、横棒部49と比較して、後側にずらすように構成すれば(横棒部49Rの長さ寸法を長くすれば)、上側部位の前後方向側の幅寸法を大きくすることができる。このような調整は、車両に応じて適宜行うことができる。また、上側部位(車内側突出部)の配置位置や突出量、大きさ等は、端側区画部の周縁部からの離隔距離等を変更することにより、適宜変更することができる。例えば、縦棒部48の上端48aと周縁部46における上縁側部位との離隔距離D2や、縦棒部48の上端48aと周縁部46における前縁側部位との離隔距離D3を大きく設定すれば、膨張完了時に、上側部位(車内側突出部)の前側の領域を厚く膨張させることが可能となり、横棒部49の後端49aと周縁部46における上縁側部位との離隔距離D1を大きくすれば、膨張完了時に、上側部位(車内側突出部)の後側の領域を厚く膨張させることが可能となる。そして、横棒部49の前後方向側の長さ寸法を大きくすれば、膨張完了時に、上側部位(車内側突出部)の前後方向側の幅寸法を大きくすることができる。
なお、このような点を考慮しなければ、端側区画部として、縦棒部のみを有して、横棒部を備えない構成のものを使用することもでき、このような構成とする場合、エアバッグの折畳収納時の折り返し線の角度を変更することにより、膨張完了時の上側部位の前後方向側の幅寸法を、適宜変更することができる。
特に、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、端側区画部47が、横棒部49の先端(後端49a)を、縦棒部48の上端48aよりも上方に配置させていることから、エアバッグ20の膨張完了時に、横棒部49の後端49a近傍の部位を起点XPとして、前側に配置される縦棒部48の上端48a側に向かって車内側Iへの突出量を漸増させるように構成される上側部位49を、安定して形成することができる。すなわち、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ20の膨張完了時に、車内側突出部41は、前端側にかけて、車内側への突出量を大きくするように、構成されることとなる。また、このような構成とすることにより、横棒部49の後端49a近傍の部位を起点XPとして、上側部位39を車内側に突出させるように、確実に屈曲させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、端側区画部47´として、図11に示すように、横棒部49´を、前後方向に略沿うように構成し、後端49aを、縦棒部48´の上端48aに対して同等の位置に配置させる構成としてもよい。また、図11の二点鎖線で示すごとく、横棒部を前後方向に略沿うように構成して、後端49aのみを、幅広として縦棒部48´の上端48aよりも上方に突出させる構成としてもよい。
また、実施形態のエアバッグ20では、端側区画部47は、縦棒部48と横棒部49とを連続的に連ならせるように、構成されているが、図13に示すエアバッグ20Bのごとく、端側区画部47Bとして、縦棒部48Bと横棒部49Bとを分離させ、横棒部49Bを、縦棒部48Bの上方から後方に向かうように、前後方向に略沿って延ばす構成としてもよい。図13では、横棒部48は、後上方に向かって傾斜するように構成されているが、横棒部を、後端を前端と略同等の位置に配置させるように、前後方向に沿わせて配置させてもよい。
さらに、図14に示すエアバッグ20Cのごとく、端側区画部47Cを、端側膨張部38Cと一般膨張部43Cとを区画するように上下方向に略沿って配置される縦棒部48Cと、縦棒部48Cの後方に配置される分離部82と、を備える構成としてもよい。分離部82は、図14では、縦棒部48Cの上端48aよりも上方に配置される構成である。端側区画部47Cをこのように構成した場合にも、エアバッグ20Cの膨張完了時に、詳細な図示は省略するが、分離部82近傍の部位を起点XPとして、端側膨張部38Cの上端側の部位を、車内側に突出させるように屈曲させることができて、端側膨張部38Cの上端38a側(車内側突出部41C)を、円滑に車内側に突出させることができる。また、この分離部82の前後の位置を調整することにより、車内側突出部41Cの前後方向側の幅寸法を、容易に設定することが可能となる。なお、分離部の配置位置は、縦棒部の上端よりも上方に配置させなくともよく、縦棒部の上端と略同等となる位置に配置させる構成としてもよい。
さらにまた、図15に示すエアバッグ20Dのごとく、端側膨張部38Dと一般膨張部43Dとを区画する端側区画部85を、端側膨張部38Dの下端38b付近から、後上がりに湾曲して延ばすように配設させる構成としてもよい。詳細には、端側区画部85は、下端85bを、前述の端側区画部47における縦棒部48の下端48bと略同一の位置に配置させ、外形形状を略1/4円弧状として、先端(上端85a)を後上方に向けるように、湾曲している構成である。端側区画部85をこのように構成した場合にも、エアバッグ20Dの膨張完了時に、詳細な図示は省略するが、端側膨張部38Dの上端側の部位を、端側区画部85の上端85a(先端)近傍の部位を起点XPとして、車内側に突出させるように屈曲させることができて、端側膨張部38Dの上端38a側(車内側突出部41D)を、円滑に車内側に突出させることができる。また、この端側区画部85の上端85a(先端)の前後の位置を調整することにより、車内側突出部41Cの前後方向側の幅寸法を、容易に設定することが可能となる。