JP2019009331A - 有機el素子、および、有機el素子を用いた有機el表示パネル - Google Patents

有機el素子、および、有機el素子を用いた有機el表示パネル Download PDF

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Abstract

【課題】有機EL素子において電子と正孔の再結合による有機材料の局所的な劣化を抑制し、長寿命化を図る。【解決手段】陽極と、前記陽極に対向する陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配された発光層とを備える有機EL素子において、前記発光層には誘電体微粒子が分散されている。【選択図】図1

Description

本発明は、有機EL素子、特にその主要部である発光層の構造の改良に関する。
近年、表示装置に有機EL素子を利用したものが普及しつつある。
有機EL素子は、陽極および陰極の間に、少なくとも発光層が挟まれた構成を有している。そして、有機EL素子は、多くの場合、発光層に正孔(ホール)を供給するための正孔輸送層が陽極と発光層との間に挟まれ、発光層に電子を供給するための電子輸送層が発光層と陰極との間にさらに挟まれた構成を有している。
陽極と陰極との間に電圧が印加されると、電子輸送層から発光層の最低空軌道(LUMO:Lowest Unoccupied Molecular Orbital)に電子が注入され、正孔輸送層から発光層の最高被占有軌道(HOMO:Highest Occupied Molecular Orbital)に正孔が注入される。
また、発光層内には、陽極と陰極との間に印加された電圧により電界が発生している。発光層のLUMOに注入された電子は、電界の影響を受けて発光層内を陽極に向けて移動する。一方、発光層のHOMOに注入された正孔は、電界の影響を受けて発光層内を陰極に向けて移動する。
こうして発光層内を移動した電子と正孔とが再結合すると励起子が生成される。この励起子が励起状態から基底状態に戻る際に発光が生じる(特許文献1)。
特表2004−514257公報 特開2009−147276公報
有機EL素子の寿命に影響する因子は種々存在する。その中に発光層を形成する有機材料の劣化がある。有機材料の劣化は、発光により促進されることが知られている。
また、発光層内の膜厚方向における励起子分布が鋭いピークを持つ場合があることが知られている(以下、「分布」は、特に指定のない限り、膜厚方向の分布を指すこととする)。励起子分布が鋭いピークを持つと、そのピークを示す位置での有機材料の劣化が特に促進される。
このような有機材料の局所的な劣化は発光層の寿命を律速すると考えられるので、励起子分布のピークが鋭いことは、有機EL素子の長寿命化の阻害要因になるという問題がある。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、発光層内における励起子分布を平均化し、それにより寿命を向上させた有機EL素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る有機EL素子は、陽極と、前記陽極に対向する陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配された発光層とを備え、前記発光層には誘電体微粒子が分散されていることを特徴とする。
上記態様の有機EL素子においては、発光層内において、誘電体微粒子の表面近傍で電子および/または正孔の密度が高まり、これにより、電子と正孔の再結合の起きる場所を発光層内に分散させることができる。したがって、励起子は発光層全体に広く広がり、励起子分布の鋭いピークを抑制できるため、有機材料の局所的な劣化を抑止することができる。その結果、有機EL素子の長寿命化を図ることが可能となる。
実施の形態に係る有機EL素子1の構成を模式的に示す断面図である。 実施例と比較例に係る、膜厚方向における位置と励起子密度との関係を説明する図である。 実施例と比較例に係る、正孔輸送層、発光層、電子輸送層に係るバンドダイアグラムと電子と正孔の再結合位置との関係を示す簡略模式図である。 実施例に係る、発光層17の誘電体微粒子17b表面近傍における電子および正孔の動きと再結合を示す模式図である。 実施例と比較例に係る、膜厚方向における位置と正孔と電子の再結合レートとの関係を示す図である。 実施例と比較例に係る、膜厚方向における位置と励起子密度との関係を示す図である。 実施例と比較例に係る、電流量と発光効率との関係を示す図である。 実施例と比較例に係る、印加電圧と電流量との関係を示す図である。 実施の形態に係る有機EL素子の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、基板上にTFT層が形成された状態、(b)は、基板上に層間絶縁層が形成された状態、(c)は、層間絶縁層上に画素電極材料が形成された状態、(d)は、画素電極材料上に正孔注入層材料が形成された状態、(e)は、画素電極層と正孔注入層が形成された状態を示す。 実施の形態に係る有機EL素子の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、層間絶縁層および画素電極、正孔注入層上に隔壁材料層が形成された状態、(b)は、隔壁層が形成された状態、(c)は、正孔注入層上に正孔輸送層が形成された状態、(d)は、正孔注入層上に発光層が形成された状態を示す。 実施の形態に係る有機EL素子の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、発光層および隔壁層上に電子輸送層が形成された状態、(b)は電子輸送層上に電子注入層が形成された状態、(c)は、電子注入層上に対向電極が形成された状態、(d)は、対向電極上に封止層が形成された状態を示す。 実施の形態に係る有機EL素子の製造過程を示すフローチャートである。 実施の形態に係る有機EL素子を備えた有機EL表示装置の構成を示すブロック図である。
<本開示の一態様に至った経緯>
有機EL素子を発光素子として使用するためには、発光の始状態となる励起子の生成が不可欠である。したがって、従来、正孔輸送層から発光層への正孔注入性と電子輸送層から発光層への電子注入性を高め、発光層内のキャリア密度を向上させて電子と正孔の再結合確率を高めている。また、発光層内のキャリア密度をさらに向上させる構成として、発光層から電子輸送層への正孔漏出と発光層から正孔輸送層への電子漏出を抑制することができるように、電子輸送層のHOMO準位、および/または、正孔輸送層のLUMO準位を調整した機能層を選定する。このような構成により、発光層内のキャリア密度を向上させて電子と正孔の再結合確率を高めることができるからである。
一方で、励起子は発光層等を形成する有機材料の劣化の原因となる。励起子のエネルギーが全て光に変換されるわけではなく、その一部が有機材料の格子振動や熱に変換され、これらが有機材料を劣化させるからである。また、励起子は、発光層の外部には生成されないことが好ましい。励起子が正孔輸送層や電子輸送層等の機能層中に生成されると、そのエネルギーの殆どが格子振動と熱に変換されるため、発光効率が低下するばかりか、機能層の劣化の原因となるからである。
しかしながら、上述したような発光層内のキャリア密度を向上させる構成においては、発光層内のキャリアは、発光層の正孔輸送層との界面と発光層の電子輸送層との界面に偏在している。そのため、電子と正孔の再結合は、キャリア密度の高い、発光層の正孔輸送層との界面と発光層の電子輸送層との界面とで起きやすくなり、励起子も、発光層と正孔輸送層との界面、および、発光層と電子輸送層との界面を中心とした領域に分布することとなる。そのため、発光層における界面近傍の領域では励起子密度が極端に高くなり、これにより、発光層を形成する有機材料の劣化が促進されることになる。また、電子と正孔の再結合が正孔輸送層や電子輸送層等の機能層の近傍で起きる結果、励起子が機能層中に生成されやすくなる。これにより、発光効率が低下するとともに機能層を構成する材料の劣化が進み、有機EL素子の寿命を縮める結果となる。
そこで、発明者は、有機EL素子内に生成される励起子の量を削減することなく、発光層内に均等に励起子を発生させる技術について検討し、発光層内に誘電体微粒子を分散させることで、発光層内の誘電体微粒子の近傍における再結合を促進させることができるという知見を得た。これにより、発光層内の電子と正孔の再結合レートが空間的に平均化され、励起子が発光層全体に広く分布するようになる。したがって、機能層と発光層との界面近傍で励起子密度が極端に高くなることによる発光層の局所的な劣化を抑止するとともに、励起子による機能層の劣化を抑止し、かつ、発光効率を向上させることができる。結果、有機EL素子を長寿命化することが可能となる。
<開示の態様>
本開示の一態様に係る有機EL素子は、陽極と、前記陽極に対向する陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配された発光層とを備え、前記発光層には誘電体微粒子が分散されている。
上記態様の有機EL素子においては、発光層内において、誘電体微粒子の表面近傍で電子および/または正孔の密度が高まり、これにより、電子と正孔の再結合の起きる場所を発光層内に分散させることができる。したがって、励起子分布は発光層全体に広く広がるため、機能層と発光層との界面近傍で励起子密度が極端に高くなることを抑止し、有機材料の局所的な劣化を抑止することができる。その結果、有機EL素子の長寿命化を図ることが可能となる。
また、本開示の一態様に係る有機EL表示パネルは、上述の有機EL素子を基板上に複数備える有機EL表示パネルである。
この有機EL表示パネルにおいても上記と同様の効果が得られる。
また、本開示の一態様に係る有機EL素子の製造方法は、基板を準備し、前記基板の上方に画素電極を形成し、前記画素電極の上方に、有機発光材料と誘電体微粒子とを含むインクを塗布することにより発光層を形成し、前記発光層の上方に共通電極を形成する。
この製造方法によって形成した有機EL素子においても上記と同様の効果が得られる。
上記態様の有機EL素子、および製造方法にして、以下のようにしてもよい。
前記誘電体微粒子は、前記発光層において、その膜厚方法において均一に分散されている、としてもよい。
これにより、発光層内における励起子の分布が膜厚方向に平均化され、発光層を構成する有機材料の不均質な劣化を抑止することができる。
また、前記誘電体微粒子の粒径は、1nm以上30nm以下である、としてもよい。
これにより、誘電体微粒子の光拡散による光取り出し効率の低下を防ぐことができ、かつ、発光層を均一に生成することができる。
また、前記誘電体微粒子の材料のバンドギャップは、3eV以上である、としてもよい。
これにより、誘電体微粒子の光吸収による光取り出し効率の低下を抑止することができる。
また、前記発光層は、電子輸送性材料を含み、前記誘電体微粒子の材料の伝導帯下端(CBM)と、前記電子輸送材料における最低空軌道(LUMO)準位との差は0.1eV以上である、としてもよい。
これにより、電子輸送性材料と誘電体微粒子との界面近傍で電子密度を向上させることができ、発光層内における励起子の分布を膜厚方向に平均化することができる。
また、前記発光層は、正孔輸送材料を含み、前記誘電体微粒子の材料の価電子帯上端(VBM)と、前記正孔輸送材料における最高被占有軌道(HOMO)準位との差は0.1eV以上である、としてもよい。
これにより、正孔輸送性材料と誘電体微粒子との界面近傍で正孔密度を向上させることができ、発光層内における励起子の分布を膜厚方向に平均化することができる。
また、本開示の一態様に係る有機EL素子は、前記誘電体微粒子の材料は、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化シリコン(SiO2)、酸化アルミニウム(Al23)からなるグループから選択される、としてもよい。
また、本開示の一態様に係る有機EL素子は、前記誘電体微粒子の表面は、分散剤で修飾されている、としてもよい。
また、本開示の一態様に係る有機EL素子は、前記分散剤は、リン酸、カルボン酸、スルホン酸、またはその塩類のうち1以上を含む、としてもよい。
上記態様の有機EL素子においては、誘電体微粒子が凝集することを抑止し、発光層内における励起子の分布を膜厚方向に平均化することができる。
<実施の形態>
以下、実施の形態に係る有機EL素子について説明する。なお、以下の説明は、本発明の一態様に係る構成及び作用・効果を説明するための例示であって、本発明の本質的部分以外は以下の形態に限定されない。
1.有機EL素子の構成
図1は、実施の形態1に係る有機EL表示パネル100(図13参照)の部分断面図である。有機EL表示パネル100は、3つの色(赤色、緑色、青色)を発光する有機EL素子1(R)、1(G)、1(B)で構成される画素を複数備えている。図1では、その1つの画素の断面を示している。
有機EL表示パネル100において、各有機EL素子1は、前方(図1における紙面上方)に光を出射するいわゆるトップエミッション型である。
有機EL素子1(R)と、有機EL素子1(G)と、有機EL素子1(B)は、ほぼ同様の構成を有するので、区別しないときは、有機EL素子1として説明する。
図1に示すように、有機EL素子1は、基板11、層間絶縁層12、画素電極13、隔壁層14、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、電子輸送層18、電子注入層19、対向電極20、および、封止層21を備える。
なお、基板11、層間絶縁層12、電子輸送層18、電子注入層19、対向電極20、および、封止層21は、画素ごとに形成されているのではなく、有機EL表示パネル100が備える複数の有機EL素子1に共通して形成されている。
<基板>
基板11は、絶縁材料である基材111と、TFT(Thin Film Transistor)層112とを含む。TFT層112には、画素ごとに駆動回路が形成されている。基材111は、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属基板、ガリウム砒素などの半導体基板、プラスチック基板等を採用することができる。プラスチック材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうち1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。
<層間絶縁層>
層間絶縁層12は、基板11上に形成されている。層間絶縁層12は、樹脂材料からなり、TFT層112の上面の段差を平坦化するためのものである。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。また、図1の断面図には示されていないが、層間絶縁層12には、画素ごとにコンタクトホールが形成されている。
<画素電極>
画素電極13は、光反射性の金属材料からなる金属層を含み、層間絶縁層12上に形成されている。画素電極13は、画素ごとに設けられ、コンタクトホールを通じてTFT層112と電気的に接続されている。
本実施形態においては、画素電極13は、陽極として機能する。
光反射性を具備する金属材料の具体例としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などが挙げられる。
画素電極13は、金属層単独で構成してもよいが、金属層の上に、ITO(酸化インジウム錫)やIZO(酸化インジウム亜鉛)のような金属酸化物からなる層を積層した積層構造としてもよい。
<隔壁層>
隔壁層14は、画素電極13と正孔注入層15の上面の一部の領域を露出させ、その周辺の領域を被覆した状態で正孔注入層15上に形成されている。正孔注入層15上面において隔壁層14で被覆されていない領域(以下、「開口部」という)は、サブピクセルに対応している。すなわち、隔壁層14は、サブピクセルごとに設けられた開口部14aを有する。
本実施の形態においては、隔壁層14は、画素電極13が形成されていない部分においては、層間絶縁層12上に形成されている。すなわち、画素電極13が形成されていない部分においては、隔壁層14の底面は層間絶縁層12の上面と接している。
隔壁層14は、例えば、絶縁性の有機材料(例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂等)からなる。隔壁層14は、発光層17を塗布法で形成する場合には塗布されたインクがあふれ出ないようにするための構造物として機能し、発光層17を蒸着法で形成する場合には蒸着マスクを載置するための構造物として機能する。本実施の形態では、隔壁層14は、樹脂材料からなり、隔壁層14の材料としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。本実施の形態においては、フェノール系樹脂が用いられている。
<正孔注入層>
正孔注入層15は、画素電極13から発光層17への正孔の注入を促進させる目的で、画素電極13上に設けられている。正孔注入層15は、例えば、Ag(銀)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、W(タングステン)、Ni(ニッケル)、Ir(イリジウム)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。上記のうち、酸化金属からなる正孔注入層15は、正孔を安定的に、または、正孔の生成を補助して、発光層17に対し正孔を注入する機能を有し、大きな仕事関数を有する。本実施の形態では、正孔注入層15は、酸化タングステンからなる。正孔注入層15を遷移金属の酸化物で形成すると、複数の酸化数を取るため、複数の準位を取ることができ、その結果、正孔注入が容易になり、駆動電圧の低減に寄与する。
<正孔輸送層>
正孔輸送層16は、親水基を備えない高分子化合物を用い開口部14a内に形成されている。例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいは、ポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物であって、親水基を備えないものなどを用いることができる。
正孔輸送層16は、正孔注入層15から注入された正孔を発光層17へ輸送する機能を有する。
<発光層>
発光層17は、開口部14a内に形成されている。発光層17は、有機発光材料を含む有機発光部17aと、有機発光部17a中に分散している誘電体微粒子17bとで構成される。
有機発光部17aは、正孔と電子の再結合により、R、G、Bの各色の光を出射する機能を有する。有機発光部17aの材料としては、公知の材料を利用することができる。具体的には、例えば、特許公開公報(特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
誘電体微粒子17bは、正孔、電子のうち少なくとも一方に対して障壁として作用することで、近傍の有機発光部17aにおける正孔密度および/または電子密度を高め、電子と正孔の再結合を促進する機能を有する。誘電体微粒子17bは、凝集せず、有機発光部17a中に均等に分散していることが好ましい。これは、有機発光部17aにおける電子密度および/または正孔密度を一様にするとともに、絶縁体である誘電体微粒子17bが凝集することで発光層17の電気抵抗が局所的に上昇することを抑止するためである。なお、誘電体微粒子17bの凝集を防ぐため、誘電体微粒子17bの表面を分散剤で修飾してもよい。分散剤としては、例えば、リン酸、カルボン酸、スルホン酸、または、その塩類を含む分散剤を用いることができる。また、発光層17を均質に形成するため、誘電体微粒子17bの平均粒径は、1nm〜30nm程度であることが好ましい。また、誘電体微粒子17bは、有機発光部17aの誘電体微粒子17bとの界面における正孔密度および/または電子密度を高めるものであるため、表面積が大きいことが好ましい。また、光取り出し効率を低下させないため、誘電体微粒子17bの材料は可視光を吸収しないことが好ましく、バンドギャップが3eV以上の誘電体であることが好ましい。さらに、誘電体微粒子17bは、電子に対して障壁として作用するために、誘電体の伝導帯最低エネルギー(CBM:Conduction Band Minimum)と有機発光部17aに含まれる電子輸送性材料のLUMO準位との差が0.1eV以上であることが好ましい。また、誘電体微粒子17bは、正孔に対して障壁として作用するために、有機発光部17aに含まれる正孔輸送性材料のHOMO準位と誘電体の価電子帯最高エネルギー(VBM:Valence Band Maximum)との差が0.1eV以上であることが好ましい。具体的には、誘電体微粒子17bは、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化シリコン(SiO2)、酸化アルミニウム(Al23)等から構成される。
<電子輸送層>
電子輸送層18は、対向電極20からの電子を発光層17へ輸送する機能を有する。電子輸送層18は、電子輸送性が高い有機材料からなり、アルカリ金属、および、アルカリ土類金属を含まない。
電子輸送層18に用いられる有機材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
<電子注入層>
電子注入層19は、対向電極20から供給される電子を発光層17側へと注入する機能を有する。電子注入層19は、例えば、電子輸送性が高い有機材料に、アルカリ金属、または、アルカリ土類金属から選択されるドープ金属がドープされて形成されている。実施の形態では、Baがドープされている。Baのドープ濃度は40wt%以下であり、20wt%以下が好ましく、15wt%以下がより好ましい。
アルカリ金属に該当する金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)であり、アルカリ土類金属に該当する金属は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)である。
電子注入層19に用いられる有機材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
<対向電極>
対向電極20は、透光性の導電性材料からなり、電子注入層19上に形成されている。対向電極20は、陰極として機能する。
対向電極20の材料としては、例えば、ITOやIZOなどを用いることができる。あるいは、対向電極20の材料として、銀、銀合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属を用いてもよい。この場合、対向電極20は透光性を有する必要があるため、膜厚は約20nm以下の薄膜として形成される。
<封止層>
封止層21は、正孔輸送層16、発光層17、電子輸送層18、電子注入層19などの有機層が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を用い形成される。また、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
本実施の形態においては、有機EL表示パネル100がトップエミッション型であるため、封止層21は光透過性の材料で形成されることが必要となる。
<その他>
なお図1には示されないが、封止層21の上に、封止樹脂を介してカラーフィルタや上部基板を貼り合せてもよい。上部基板を貼り合せることによって、正孔輸送層16、発光層17、電子輸送層18、電子注入層19を水分および空気などから保護できる。
2.発光層17における誘電体微粒子17bによる効果
図2は、実施例および比較例に係る、膜厚方向の位置と励起子密度との関係を示す図である。図2の横軸は膜厚方向(Z方向)を示しており、図1におけるA−B断面に対応する。また、図2の縦軸は励起子密度ρを対数軸で示している。
実施例に係る発光層17は、電子輸送性が正孔輸送性に比べて高い有機発光部17aと、誘電体微粒子17bを含む。これに対し、比較例に係る発光層17cは、有機発光部17aのみを含み、誘電体微粒子17bを含まない。なお、それ以外の構成については、実施例と比較例は同じ構成である。
図3(a)、(b)は、それぞれ、実施例および比較例に係る、正孔輸送層16、発光層17/17c、電子輸送層18のバンドダイアグラム及び電子と正孔の再結合を示した簡易模式図である。
比較例に係る発光層では、図3(b)の模式図に示すように、電子輸送層18のLUMO準位と発光層17cのLUMO準位との差が小さく、発光層17cのLUMO準位と正孔輸送層16のLUMO準位との差Δe1が大きく設計されている。そのため、発光層17cに注入された電子は正孔輸送層16に漏れ出しにくく、発光層17cの正孔輸送層16との界面付近で密度が高くなる。そのため、電子密度が発光層17cの正孔輸送層16との界面付近で高くなり、電子と正孔の再結合も発光層17cの正孔輸送層16との界面付近で起きやすくなる。結果として、図2のデータ301に示すように、励起子も発光層17cと正孔輸送層16との界面を中心として多く分布することとなる。そのため、発光中心が発光層17cにおける正孔輸送層16との界面近傍に偏る、励起子が正孔輸送層16内にも多数発生する、といった課題が発生する。
これに対し、実施例に係る発光層17では、以下のようになる。図3(a)の模式図に示すように、実施例に係る発光層17においても、電子輸送層18のLUMO準位と有機発光部17aのLUMO準位との差が小さく、有機発光部17aのLUMO準位と正孔輸送層16のLUMO準位との差Δe1が大きく設計されている。一方で、実施例に係る発光層17には、誘電体微粒子17bが分散されており、誘電体微粒子17bのCBMと有機発光部17aのLUMO準位との差Δeが0.1eV以上に設計されている。そのため、図4(a)の模式図に示すように、有機発光部17aにおける誘電体微粒子17bとの界面において、電子がトラップされ、これにより電子の移動が妨げられる。結果として、有機発光部17aにおける誘電体微粒子17bとの界面にも電子密度が高くなる。また、これにより、有機発光部17aの正孔輸送層16との界面における電子密度の上昇を小さくすることができる。そのため、有機発光部17aにおける誘電体微粒子17bとの界面においては、トラップされた電子に正孔が再結合し、電子と正孔の再結合確率が上昇する。一方で、有機発光部17aの正孔輸送層16との界面付近では、電子密度が低下する結果、電子と正孔の再結合確率が比較例と比べて小さくなる。結果として、図2のデータ302に示すように、励起子が有機発光部17aの正孔輸送層16との界面に極端に集中することを抑止することができ、励起子が発光層17全体に広く分布する。そのため、発光層17全体が広く均一に発光することとなり、発光層17の劣化、特に正孔輸送層との近傍における局所的な劣化を抑えることができる。
なお、上述の実施例と比較例では、有機発光部17aの電子輸送性が正孔輸送性に比べて高いとしたが、有機発光部17aの正孔輸送性が電子輸送性に比べて高いとした場合には以下のようになる。この場合、正孔輸送層16のHOMO準位と発光層/有機発光部17aのHOMO準位との差が小さく、発光層/有機発光部17aのHOMO準位と電子輸送層18のHOMO準位との差Δh1が大きく設計される。そのため、発光層/有機発光部17aに注入された正孔は電子輸送層18に漏れ出しにくく、発光層/有機発光部17aの電子輸送層18との界面付近で密度が高くなる。そのため、発光層が誘電体微粒子17bを含まない場合には、電子と正孔の再結合も発光層17cの電子輸送層18との界面付近で起きやすくなる。結果として、発光中心が発光層17cにおける電子輸送層18との界面近傍に偏る、励起子が電子輸送層18内にも多数発生する、といった課題が発生する。一方、発光層が誘電体微粒子17bを含む場合には、図3(c)の模式図に示すように、誘電体微粒子17bのVBMと有機発光部17aのHOMO準位との差Δhが0.1eV以上に設計されている。したがって、図4(b)の模式図に示すように、有機発光部17aにおける誘電体微粒子17bとの界面において、正孔がトラップされ、これにより正孔の移動が妨げられる。結果として、有機発光部17aにおける誘電体微粒子17bとの界面も正孔密度が高くなり、有機発光部17aの電子輸送層18との界面における正孔密度の上昇を小さくすることができる。そのため、有機発光部17aの誘電体微粒子17bとの界面においては、トラップされた正孔に電子が再結合し、電子と正孔の再結合確率が上昇する。一方で、有機発光部17aの電子輸送層18との界面付近では、正孔密度が低下する結果、電子と正孔の再結合確率が比較例と比べて小さくなる。結果として、励起子が有機発光部17aの正孔輸送層16との界面に極端に集中することを抑止することができ、励起子が発光層17全体に広く分布する。そのため、発光層17全体が広く均一に発光することとなり、発光層17の劣化、特に正孔輸送層との近傍における局所的な劣化を抑えることができる。
なお、有機発光部17aの電子輸送性と正孔輸送性とに顕著な差がない場合、発光層が誘電体微粒子17bを含まない場合には、上述した、有機発光部17aの電子輸送性が正孔輸送性に比べて高い場合と正孔輸送性が電子輸送性に比べて高い場合の双方の課題が発生する。すなわち、電子と正孔の再結合が、発光層17cの正孔輸送層16との界面付近、および、発光層17cの電子輸送層18との界面付近で起きやすくなる。結果、発光中心が、発光層17cの膜厚方向の両端に偏る、励起子が正孔輸送層16内および電子輸送層18内に発生する、といった課題が発生する。一方、発光層が誘電体微粒子17bを含む場合には、有機発光部17aにおける誘電体微粒子17bとの界面において、電子と正孔の両方がトラップされるため、電子密度も正孔密度も高くなり、再結合確率も高くなる。
なお、有機発光部17aが複数の有機半導体材料からなる場合は、以下のようになる。電子の輸送性に着目すると、有機発光部17aを構成する複数の有機半導体材料のうち、最も電子輸送性が高い材料(以下、「電子輸送性材料」と呼ぶ)が発光層17中の電子輸送を担うこととなる。したがって、誘電体微粒子17bのCBMと、有機発光部17aに含まれる電子輸送性材料のLUMO準位との差Δeが0.1eV以上であることが好ましい。同様に、正孔の輸送性に着目すると、有機発光部17aを構成する複数の有機半導体材料のうち、最も正孔輸送性が高い材料(以下、「正孔輸送性材料」と呼ぶ)が発光層17中の正孔輸送を担うこととなる。したがって、有機発光部17aに含まれる正孔輸送性材料のHOMO準位と、誘電体微粒子17bのVBMとの差Δhが0.1eV以上であることが好ましい。なお、有機発光部17aは、電子輸送性材料、正孔輸送性材料、有機発光材料のそれぞれを含んでもよいし、有機発光材料が、電子輸送性材料と正孔輸送性材料のうち少なくとも一方として機能してもよい。
3.実施の形態に係る有機EL素子の特性
図5は、実施例1、実施例2、比較例のそれぞれに係る、電子と正孔の再結合レートを示す図である。図5の横軸は膜厚方向(Z方向)を示しており、図2と同様である。また、図5の縦軸は再結合レートPを対数軸で示している。
なお、実施例1および実施例2の発光層17は、同一の有機発光部17aと誘電体微粒子17bからなり、実施例1は発光層17における誘電体微粒子17bの割合が高い点で実施例2と相違する。なお、比較例の発光層17cは、実施例1及び実施例2の有機発光部17aと同一の成分からなり、誘電体微粒子17bを含まない。それ以外の要素については、実施例1、実施例2、比較例のそれぞれで同一である。
図5に示すように、比較例の再結合レート313に比べて、実施例2の再結合レート312、実施例1の再結合レート311ではいずれも、発光層17のZ方向端面以外の領域における再結合レートが上昇する。一方で、発光層17と正孔輸送層16との界面では、比較例の再結合レート313のピーク316に対し、実施例2の再結合レート312のピーク315は弱く、さらに、実施例1の再結合レート311のピーク314はさらに弱い。これは、以下の理由が考えられる。有機発光部17aは正孔輸送性に比べて電子輸送性が高いため、比較例では、再結合の反応速度定数である再結合定数が実施例に比べて低く、電子が蓄積しやすく、これにより電子密度が高い、正孔輸送層16の近傍で極端に再結合レートが高くなる。一方、比較例では、正孔輸送層16との界面近傍で電子と正孔の再結合レートが高いため、正孔がこの領域で消費される結果、発光層17の内側(正孔輸送層16から離れた領域)では、再結合レートが低くなる。これに対して、実施例1および実施例2では、再結合定数が比較例と比べて高く、有機発光部17aの誘電体微粒子17bとの界面付近にトラップされた電子が、高い確率で正孔と再結合する。一方で、有機発光部17aの誘電体微粒子17bとの界面付近で電子がトラップされ消費される結果、正孔輸送層16との界面付近まで到達する電子が比較例より少なくなり、正孔輸送層16との界面近傍で電子密度が比較例と比べて低い。そのため正孔との再結合レートも比較例に比べて低く、比較例と比べて多くの正孔が発光層17の内側に到達する。結果、実施例1および実施例2では、正孔輸送層16との界面近傍における電子と正孔の再結合レートの上昇が抑止されるとともに、発光層17の内側の広い範囲で、再結合レートが高くなる。
図6は、実施例1、実施例2、比較例のそれぞれに係る、励起子の分布を示す図である。図6の横軸は膜厚方向(Z方向)を示しており、図2と同様である。
図6に示すように、比較例の励起子分布323に比べて、実施例2の励起子分布322、実施例1の励起子分布321ではいずれも、発光層17と正孔輸送層16との界面におけるピークが弱くなる一方で、発光層17のZ方向端面以外の領域全般について、励起子が増加している。これは、以下の理由が考えられる。比較例においては、再結合レートが発光層17cと正孔輸送層16との界面を中心とする領域で高いため、励起子が発光層17と正孔輸送層16との界面に局在する。一方、実施例1、実施例2では、有機発光部17aの誘電体微粒子17bとの界面で再結合レートが高いため、発光層17のZ方向端面以外の領域において励起子が多く分布するようになる。
図7は、有機EL素子を流れる電流Iと発光効率との関係を示す図である。上述したように、実施例1、2では、比較例と比べて励起子が発光層17と正孔輸送層16との界面に局在していない一方で、発光層17のZ方向端面以外の領域に広く分布している。したがって、実施例1、2では、発光に殆ど寄与しない、正孔輸送層16内の励起子が減少することで、比較例と比べて、電流量に対する発光効率が向上する。その結果、実施例1のデータ331、実施例2のデータ332は、比較例のデータ333と比べて電流量に対する発光効率が高い。すなわち、実施例1、2では、機能層内の励起子が減少し、発光層内の励起子が増加することにより、比較例より発光効率が高くなる。
図8は、有機EL素子に対して印加する電圧Vと流れる電流Iとの関係を示す図である。実施例1、実施例2に係る発光層17は絶縁体である誘電体微粒子17bを含んでいるため、電流は有機発光部17aのみを経由して流れる。そのため、実施例1、実施例2の発光層17は、比較例の発光層17cと比べて、単位面積当たりの電流量が小さくなるため、抵抗値が高い。その結果、実施例1のデータ341、実施例2のデータ342は、比較例のデータ343と比べてわずかだが抵抗値が高い。しかしながら、この抵抗値の上昇は、有機発光部17aの実質的な面積の減少によるものであり、また、発光効率の上昇により電圧あたりの発光強度の低下に直接結びつくものではないため、有機EL素子の特性に影響を及ぼすものではない。
以上説明したように、実施例では、比較例と比べて、励起子が発光層全体に広く分布するため、発光層の局所的な劣化を抑止することができる。また、実施例では、正孔注入層16および電子輸送層18における励起子が減少することにより、機能層の劣化も抑止することができる。このことは、電流量に対する発光強度の高さからも明確である。したがって、実施例に係る有機EL素子では、比較例に係る有機EL素子より、発光層の局所的な劣化、機能層の劣化を抑止することができ、長寿命化を図ることができる。
4.有機EL素子の製造方法
有機EL素子1の製造方法について、図面を用い説明する。図9(a)〜(e)、図10(a)〜(d)、図11(a)〜(d)は、有機EL素子1の製造における各工程での状態を示す模式断面図である。図12は、有機EL素子1の製造方法を示すフローチャートである。
(1)基板11の形成
まず、図9(a)に示すように、基材111上にTFT層112を成膜して基板11を形成する(図12のステップS1)。TFT層112は、公知のTFTの製造方法により成膜することができる。
次に、図9(b)に示すように、基板11上に層間絶縁層12を形成する(図12のステップS2)。層間絶縁層12は、例えば、プラズマCVD法、スパッタリング法などを用いて積層形成することができる。
次に、層間絶縁層12における、TFT層のソース電極上の個所にドライエッチング法を行い、コンタクトホールを形成する。コンタクトホールは、その底部にソース電極の表面が露出するように形成される。
次に、コンタクトホールの内壁に沿って接続電極層を形成する。接続電極層の上部は、その一部が層間絶縁層12上に配される。接続電極層の形成は、例えば、スパッタリング法を用いることができ、金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法およびウェットエッチング法を用いパターニングすることがなされる。
(2)画素電極13、正孔注入層15の形成
次に、図9(c)に示すように、層間絶縁層12上に画素電極材料層130を形成する(図12のステップS3)。画素電極材料層130は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いて形成することができる。
次に、図9(d)に示すように、画素電極材料層130上に正孔注入材料層150を形成する(図12のステップS4)。正孔注入材料層150は、例えば、反応性スパッタ法などを用いて形成することができる。
そして、図9(e)に示すように、画素電極材料層130と正孔注入材料層150とをエッチングによりパターニングして、サブピクセルごとに区画された複数の画素電極13と正孔注入層15とを形成する(図12のステップS5)。
なお、画素電極13、正孔注入層15の形成方法は上述の方法に限られず、例えば、画素電極材料層130をパターニングして画素電極13を形成してから、正孔注入層15を形成してもよい。
(3)隔壁層14の形成
次に、図10(a)に示すように、正孔注入層15および層間絶縁層12上に、隔壁層14の材料である隔壁層用樹脂を塗布し、隔壁材料層140を形成する。隔壁材料層140は、隔壁層用樹脂であるフェノール樹脂を溶媒(例えば、乳酸エチルとGBLの混合溶媒)に溶解させた溶液を正孔注入層15上および層間絶縁層12上にスピンコート法などを用いて一様に塗布することにより形成される。そして、隔壁材料層140にパターン露光と現像を行うことで隔壁層14を形成し(図10(b),図12のステップS6)、隔壁層14を焼成する(図12のステップS7)。これにより、発光層17の形成領域となる開口部14aが規定される。隔壁層14の焼成は、例えば、150℃以上210℃以下の温度で60分間行う。
また、隔壁層14の形成工程においては、さらに、隔壁層14の表面を所定のアルカリ性溶液や水、有機溶媒等によって表面処理するか、プラズマ処理を施すこととしてもよい。これは、開口部14aに塗布するインク(溶液)に対する隔壁層14の接触角を調節する目的で、もしくは、表面に撥水性を付与する目的で行われる。
(4)正孔輸送層16の形成
次に、図10(c)に示すように、隔壁層14が規定する開口部14aに対し、正孔輸送層16の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド401のノズル4030から吐出して開口部14a内の正孔注入層15上に塗布し、焼成(乾燥)を行って、正孔輸送層16を形成する(図12のステップS8)。
(5)発光層17の形成
次に、図10(d)に示すように、発光層17の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド401のノズル4030から吐出して開口部14a内の正孔輸送層16上に塗布し、焼成(乾燥)を行って発光層17を形成する(図12のステップS9)。塗布に用いるインクは、有機発光材料など有機発光部17aの材料を溶媒に溶解させた公知の発光層形成用インクに、誘電体微粒子17bを混合して十分に撹拌することで生成される。誘電体微粒子17bは、例えば、プラズマCVD法などの気相法、液相析出法などの液相法で生成することができる。
なお、誘電体微粒子17bは、発光層インクに混合する前に、分散剤により表面処理を行ってもよい。これは、誘電体微粒子17bの凝集を防止し、インク中に均一に分散させる目的で行われる。
(6)電子輸送層18の形成
次に、図11(a)に示すように、発光層17および隔壁層14上に、電子輸送層18を形成する(図12のステップS10)。電子輸送層18は、例えば、電子輸送性の有機材料を蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
(7)電子注入層19の形成
次に、図11(b)に示すように、電子輸送層18上に、電子注入層19を形成する(図12のステップS11)。電子注入層19は、例えば、電子輸送性の有機材料とドープ金属を共蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
(8)対向電極20の形成
次に、図11(c)に示すように、電子注入層19上に、対向電極20を形成する(図12のステップS12)。対向電極20は、ITO、IZO、銀、アルミニウム等を、スパッタリング法、真空蒸着法により成膜することにより形成される。
(9)封止層21の形成
次に、図11(d)に示すように、対向電極20上に、封止層21を形成する(図12のステップS13)。封止層21は、SiON、SiN等を、スパッタリング法、CVD法などにより成膜することにより形成することができる。
なお、封止層21の上にカラーフィルタや上部基板を載置し、接合してもよい。
5.有機EL表示装置の全体構成
図13は、有機EL表示パネル100を備えた有機EL表示装置1000の構成を示す模式ブロック図である。図13に示すように、有機EL表示装置1000は、有機EL表示パネル100と、これに接続された駆動制御部200とを含む構成である。駆動制御部200は、4つの駆動回路210〜240と、制御回路250とから構成されている。
なお、実際の有機EL表示装置1000では、有機EL表示パネル100に対する駆動制御部200の配置については、これに限られない。
6.変形例
上記実施の形態においては、陰極が対向電極であり、かつ、トップエミッション型の有機EL表示装置であるとした。しかしながら、例えば、陽極が対向電極であり、陰極が画素電極であってもよい。また、例えば、ボトムエミッション型の有機EL表示装置であってもよい。
また、上記実施の形態においては、電子輸送層18や電子注入層19、正孔注入層15や正孔輸送層16を必須構成であるとしたが、これに限られない。例えば、電子輸送層18を有しない有機EL素子や、正孔輸送層16を有しない有機EL素子であってもよい。また、例えば、正孔注入層15と正孔輸送層16とに替えて、単一層の正孔注入輸送層を有していてもよい。また、例えば、発光層17と電子輸送層18との間に、アルカリ金属からなる中間層を備えてもよい。
また、上記実施の形態においては、図3(a)および図3(c)に示されるバンド構造であるとしたが、バンド構造はこれに限られない。誘電体微粒子17bが発光層17における電子および/または正孔の輸送の障害となることで、有機発光部17aの誘電体微粒子17bとの界面付近の電子および/または正孔の密度を高めればよく、発光層17と他の層との界面のバンド構造は図3(a)および図3(c)に示される構造とは異なっていてもよい。
また、表示装置に限られず、有機EL照明装置のようなパネル型の照明装置であってもよい。
以上、本開示に係る有機発光パネルおよび表示装置について、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態および変形例に限定されるものではない。上記実施の形態および変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態および変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
本発明は、長寿命の有機EL素子およびそれを備える有機EL表示パネル、表示装置を製造するのに有用である。
11 基板
12 層間絶縁層
13 画素電極
14 隔壁層
14a 開口部
15 正孔注入層
16 正孔輸送層
17 発光層
17a 有機発光部
17b 誘電体微粒子
18 電子輸送層
19 電子注入層
20 対向電極
21 封止層

Claims (11)

  1. 陽極と、
    前記陽極に対向する陰極と、
    前記陽極と前記陰極との間に配された発光層とを備え、
    前記発光層には誘電体微粒子が分散されている、
    有機EL素子。
  2. 前記誘電体微粒子は、前記発光層において、その膜厚方法において均一に分散されている
    請求項1に記載の有機EL素子。
  3. 前記誘電体微粒子の粒径は、1nm以上30nm以下である
    請求項1または2に記載の有機EL素子。
  4. 前記誘電体微粒子の材料のバンドギャップは、3eV以上である
    請求項1から3のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  5. 前記発光層は、電子輸送性材料を含み、
    前記誘電体微粒子の材料の伝導帯下端(CBM)と、前記電子輸送材料における最低空軌道(LUMO)準位との差は0.1eV以上である
    請求項1から4のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  6. 前記発光層は、正孔輸送材料を含み、
    前記誘電体微粒子の材料の価電子帯上端(VBM)と、前記正孔輸送材料における最高被占有軌道(HOMO)準位との差は0.1eV以上である
    請求項1から5のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  7. 前記誘電体微粒子の材料は、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化シリコン(SiO2)、酸化アルミニウム(Al23)からなるグループから選択される
    請求項1から6のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  8. 前記誘電体微粒子の表面は、分散剤で修飾されている
    請求項1から7のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  9. 前記分散剤は、リン酸、カルボン酸、スルホン酸、または、その塩類のうち1以上を含む
    請求項8に記載の有機EL素子。
  10. 請求項1から9のいずれか1項に記載の有機EL素子を基板上に複数備える
    有機EL表示パネル。
  11. 基板を準備し、
    前記基板の上方に画素電極を形成し、
    前記画素電極の上方に、有機発光材料と誘電体微粒子とを含むインクを塗布することにより発光層を形成し、
    前記発光層の上方に共通電極を形成する
    有機EL素子の製造方法。
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