JP2019008888A - 高柔軟電線及びインホイールモーター用ケーブル - Google Patents

高柔軟電線及びインホイールモーター用ケーブル Download PDF

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Abstract

【課題】低温(−40℃程度)での屈曲性に優れ、酸に対する耐久性及び機械強度に優れる高柔軟電線を提供する。【解決手段】金属導体と、金属導体を被覆する絶縁体と、を有し、金属導体の素線径が0.05〜0.18mmであり、絶縁体が、−40℃の低温雰因気下での初期引張弾性が30MPa以下であり、かつ、温度:−40℃、周波数:1.0Hzで測定した貯蔵弾性率が3500MPa以下であり、下記低温屈曲試験における屈曲回数が10万回以上であり、かつ、ISO6722−1に規定する要求特性を満足する、高柔軟電線である。[低温屈曲試験]−40℃の雰囲気下において、前記高柔軟電線を120°/秒で屈曲を繰り返し実施し、金属導体又は絶縁体に亀裂が発生するまでの回数(屈曲回数)を測定する試験。【選択図】図1

Description

本発明は、高柔軟電線及びインホイールモーター用ケーブルに関する。詳細には、本発明は、電気自動車等の車両に配索される電線として用いられる高柔軟電線、及び電気自動車などのインホイールモーター部に用いられるインホイールモーター用ケーブルに関する。
電気自動車用のワイヤーハーネス等の電線は、短い経路内で大きく曲げられて配索されることがある。また、電気自動車に用いられる電線は外径が大きいことから、ワイヤーハーネスのプロテクタに対し大きな曲げ応力を伴って配索されることがある。そのため、このような電線は柔軟性を備えることが要求され、従来、柔軟なシリコーンゴムを絶縁体としたものが使用されている(例えば、特許文献1参照)。ところが、シリコーンゴムを用いた電線は耐熱性を有する反面、酸に対する耐久性及び強度が低いことから使用部位が限定され、汎用性に乏しいという問題がある。さらに、シリコーンゴムを用いた電線は柔軟ではあるが、耐摩耗性が乏しいことから他部材と干渉する部位などへの配策が難しいことからも、ワイヤーハーネスの採用部位において制限がある。また、シリコーンゴム電線に用いるシリコーンゴムは原材料費が高く、かつ、被覆後の加硫のために熱風装置などが必要など、電線押出成形に関しても一般的な絶縁被覆工程では対応できないという課題が存在する。
一方、電気自動車の普及に伴い、インホイールモーター部にもワイヤーハーネスが用いられるが(例えば、特許文献2参照)。そのようなワイヤーハーネスの電線に求められる特性としては、耐振動性、耐屈曲性、耐熱性、耐低温性、耐水性、耐薬品性などが挙げられる。その中でも想定される最も厳しい車両環境である低温(−40℃)雰囲気下での耐屈曲性(以下、「低温屈曲性」とも呼ぶ。)を満足することが大きな課題である。
一般的に低温性の指標とされる樹脂材料の特性としては脆化温度が挙げられる。脆化温度だけを考慮するのであれば、オレフィン系樹脂としてはポリエチレンが−70〜−80℃と低温性に優れていることから有用と考えられる。そして、ポリエチレン系樹脂は、電線のISO規格等に謳われている低温衝撃性や低温巻き付け性などの特性を満足することができる。また、ポリエチレン系樹脂は、その他要求特性として求められる耐熱性や耐薬品性なども電子線照射などによる架橋処理によって満足することができる。
特開2016−76414号公報 特開2017−37703号公報
しかしながら、単純に脆化温度が優れるポリエチレン系樹脂により、低温屈曲性を満足することは困難である。そのため、インホイールモーターなど、低温性と屈曲性の両立が求められるような部位に使用される電線(ワイヤーハーネス) にポリエチレン系樹脂は適さない。すなわち、自動車用電線としての高電圧(60〜600V)に耐えられる絶縁体厚さでも低温屈曲性に優れる樹脂が必要となる。上述したシリコーンゴムは、低温屈曲性を示すものの、耐強酸性(自動車としてはバッテリー液が挙げられる)や、引張破断強度(JAS0 D624では10.3MPa以上)を満足することは難しく自動車内部に使用する汎用電線としての採用はできない。
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、低温(−40℃程度)での耐屈曲性、ISO6722−1に規定する要求特性を満足する高柔軟電線、及び該高柔軟電線を有するインホイールモーター用ケーブルを提供することにある。
本発明の第1の態様に係る高柔軟電線は、金属導体と、
金属導体を被覆する絶縁体と、を有し、
金属導体の素線径が0.05〜0.18mmであり、
絶縁体が、−40℃の低温雰因気下での初期引張弾性が30MPa以下であり、かつ、温度:−40℃、周波数:1.0Hzで測定した貯蔵弾性率が3500MPa以下であり、
下記低温屈曲試験における屈曲回数が10万回以上であり、かつ、ISO6722−1に規定する要求特性を満足する。
[低温屈曲試験]
−40℃の雰囲気下において、前記高柔軟電線を120°/秒で屈曲を繰り返し実施し、金属導体又は絶縁体に亀裂が発生するまでの回数(屈曲回数)を測定する試験。
本発明の第2の態様に係る高柔軟電線は、第1の態様の高柔軟電線に関し、絶縁体が、ガラス転移温度が−25℃以下の樹脂を含む。
本発明の第3の態様に係る高柔軟電線は、金属導体の素線の最外層の本撚りと下撚りとが同一方向であり、かつ、撚りピッチが層心径の20倍以下である。
本発明の第4の態様に係る高柔軟電線は、第1乃至第3の態様の高柔軟電線に関し、金属導体が、屈曲時の素線別最大歪みが0.72%以下である。
本発明の第5の態様に係るインホイールモーター用ケーブルは、第1乃至第5の態様の高柔軟電線と、シールド部材と、シースとを有する。
本発明によれば、低温(−40℃程度)での耐屈曲性、ISO6722−1に規定する要求特性を満足する高柔軟電線、及び該高柔軟電線を有するインホイールモーター用ケーブルを提供することができる。
電気用軟鋼の疲労特性(屈曲を繰り返し行った場合のサイクル数に対する歪みの関係)を示すグラフである。 金属線が心棒に係合した状態を示す模式図である。 心棒の径を30mmとした場合における、素線径に対する歪みの関係を示すグラフである。 電線の屈曲性試験を行うに当たり、電線に対し屈曲を繰り返し行うための装置の模式図である。 各実施例・比較例における、低温での応力−歪み曲線を示すグラフである。 各実施例・比較例における、初期弾性に対する低温屈折回数の関係を示すグラフである。 各実施例・比較例における、測定温度に対する貯蔵弾性率の関係を示すグラフである。 各実施例・比較例における、素線別最大歪みに対する耐久回数の関係を示すグラフである。 実施例で用いた、(a)金属導体4における素線の摩耗状態を示すSEM写真、及び(b)金属導体6における素線の摩耗状態を示すSEM写真である。
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係るコネクタについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
<高柔軟電線>
本実施形態の高柔軟電線は、金属導体と、金属導体を被覆する絶縁体と、を有する。そして、金属導体の素線径が0.05〜0.18mmであり、絶縁体が、−40℃の低温雰因気下での初期引張弾性が30MPa以下であり、かつ、温度:−40℃、周波数:1.0Hzで測定した貯蔵弾性率が3500MPa以下である。また、下記低温屈曲試験における屈曲回数が10万回以上であり、かつ、ISO6722−1に規定する要求特性を満足する。また、本実施形態の高柔軟電線は、ISO6722−1に規定する要求特性を満足するためJASO D624規格をも満足する。
[低温屈曲試験]
−40℃の雰囲気下において、前記高柔軟電線を120°/秒で屈曲を繰り返し実施し、金属導体又は絶縁体に亀裂が発生するまでの回数(屈曲回数)を測定する試験。
本実施形態の高柔軟電線は、初期引張弾性及び貯蔵弾性率を規定の範囲内とすることで、低温(−40℃程度)での耐屈曲性、及び、ISO6722−1に規定する要求特性を満足する。低温(−40℃程度)での耐屈曲性に優れるとは、上記低温屈曲試験において、10万回以上の屈曲をさせた場合でも亀裂が生じない性能である。
以下に、本実施形態の高柔軟電線における絶縁体及び金属導体について説明する。
[絶縁体]
上記の通り、絶縁体は、−40℃の低温雰因気下での初期引張弾性が30MPa以下であり、かつ、温度:−40℃、周波数:1.0Hzで測定した貯蔵弾性率が3500MPa以下である。ここで、−40℃の低温雰因気下での初期弾性率の数値範囲、及び貯蔵弾性率の数値範囲は、低温屈曲性に貢献するたのパラメータである。そして、両者は連動しているため、初期弾性率及び貯蔵弾性率のいずれかが優れている、又は劣っているという事象が起こることはない。
本実施形態においては、初期引張弾性及び貯蔵弾性率を上記数値範囲とするため、絶縁体を構成する樹脂組成物に配合する樹脂として、低温域においても柔軟性のある樹脂を用いている。樹脂を柔らかくするために樹脂分子の動きやすさを示すガラス転移温度(Tg)が異なるが、本実施形態においては、Tgが−25℃以下の樹脂を用いることが好ましい。ここで、Tgは、最終コンパウンドとして測定される温度である。
なお、上記初期引張弾性の下限は5MPaであり、上記貯蔵弾性率の下限は100MPaであることが好ましい。
本実施形態においては、絶縁体のコンパウンドとして使用する樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上(エラストマーを含む)を混合して用いてもよい。最終的に、絶縁体のコンパウンドのTgが−25℃以下になるのであれば、2種以上の樹脂(エラストマーを含む)を用いる場合の各樹脂の割合についても制限はない。2種以上の樹脂を用いる場合、オレフィン系樹脂及びTgが−25℃以下の樹脂を含むことが好ましい。オレフィン系樹脂としては、エチレン共重合体樹脂、 エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリエチレン(HDPE、MDPE、LDPE)等が挙げられる。また、Tgが−25℃以下の樹脂(エラストマー)としては、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリオキシメチレン(POM)、及びシリコーンゴムやクロロプレンゴムなどの各種ゴム等が挙げられる。
本実施形態において、絶縁体は、以上の樹脂成分に対し、本実施形態の効果を妨げない範囲で必要に応じて他の添加剤を添加することができる。添加剤としては、難燃助剤、酸化防止剤、金属不活性剤、老化防止剤、充填剤、補強剤、紫外線吸収剤、安定剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤等が挙げられる。
[金属導体]
金属導体は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。そして金属導体は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。金属導体の材料としては、銅、銅合金及びアルミニウム、アルミニウム合金等の公知の導電性金属材料を用いることができる。
本実施形態においては、金属導体が10万回以上の低温での屈曲耐久性能を呈するため、耐屈曲性を考慮した素線、及びその素線を用いた撚り構成とすることが好ましい。金属導体における素線径は0.05〜0.18mmであることが好ましい。その詳細について以下に説明する。
図1に、電気用軟鋼の疲労特性(屈曲を繰り返し行った場合のサイクル数に対する歪みの関係)を示す。図1より、10万回の耐屈曲性能を満足するには、歪みが約0.3%となることが要求されることが分かる。ここで、素線の曲げ歪みについて図2を参照して説明する。図2においては、金属線12が心棒14に係合した状態を示している。つまり、金属線12は、心棒14を支点に屈曲状態と、直線状態とに所定の速度で繰り返し遷移するのであるが、図2は屈曲状態を示している。そして、図2において、R1は心棒14から金属線12の中心軸までの距離を示し、R2は心棒14から金属線12の最も遠い外面までの距離を示す。この状態において、金属線の曲げ歪みは、次の式で表すことができる。
歪みe=R2/R1−1
心棒14の径を30mmとした場合における、金属線12の径、つまり電線における素線径に対する歪みの関係を図3に示す。図3より、素線径が0.18mmであると、屈曲時の歪みが0.3%となることが分かる。また、素線径が0.05mm未満では、工業的に安定した伸線を施すことは技術的に困難である。以上より、素線径が0.05〜0.18mmとすることにより10万回の屈曲回数でも断線を防止することができる。素線径は、0.06〜0.12mmとすることがより好ましい。ただし、素線の撚り方次第では、曲げ応力・歪みが局所集中するため、素線の撚り方を以下に示すようにして金属導体を構成することが好ましい。
金属導体の屈曲回数を向上するため、素線の撚り方としては、(1)最外層の本撚りと下撚りとが同一方向であること、及び(2)撚りピッチが層心径の20倍以下であることの条件を満たすことが好ましい。ここで、「層心径」とは、撚り線又は下撚り束撚り合わせにおいて、その層に含まれる線心の中心を連ねる円の直径をいう。
一方、金属導体において、10万回の耐屈曲性能を満足するため、屈曲時の素線別最大歪みは0.72%以下であることが好ましい(図8参照)。素線別最大歪みとは、有限要素法で再現した電線モデルを所定の曲げRで屈曲させたときに、屈曲部の素線に作用している応力と歪みを素線ごとに解析・出力したときの最大歪み値である。
以上、絶縁体と金属導体とについて説明したが、本実施形態の高柔軟電線は、金属導体を、上述の絶縁体を構成する樹脂組成物からなる絶縁体で被覆することにより形成される。以下に、本実施形態の高柔軟電線の製造方法について説明する。高柔軟電線の絶縁体は、上述の材料を混練することにより調製されるが、その方法は公知の手段を用いることができる。例えば、予めヘンシェルミキサー等の高速混合装置を用いてプリブレンドした後、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル等の公知の混練機を用いて混練することにより、絶縁体を構成する樹脂組成物を得ることができる。
また、金属導体を絶縁体で被覆する方法も公知の手段を用いることができる。例えば絶縁体は、一般的な押出成形法により形成することができる。そして、押出成形法で用いる押出機としては、例えば単軸押出機や二軸押出機を使用し、スクリュー、ブレーカープレート、クロスヘッド、ディストリビューター、ニップル及びダイスを有するものを使用することができる。
そして、絶縁体を構成する樹脂組成物を調製する場合には、樹脂材料が十分に溶融する温度に設定された二軸押出機に、樹脂材料を投入する。この際、必要に応じて、滑剤、難燃助剤や酸化防止剤などの他の成分も投入する。そして、樹脂材料はスクリューにより溶融及び混練され、一定量がブレーカープレートを経由してクロスヘッドに供給される。溶融した樹脂材料等は、ディストリビューターによりニップルの円周上へ流れ込み、ダイスにより金属導体の外周上に被覆された状態で押し出されることにより、金属導体の外周を被覆する絶縁体、すなわち高柔軟電線を得ることができる。
<インホイールモーター用ケーブル>
本実施形態のインホイールモーター用ケーブルは、以上の本実施形態の高柔軟電線と、シールド部材と、シースとを有する。
本実施形態のインホイールモーター用ケーブルにおけるシールド部材としては、金属線を編み込んだ編組や、繊維めっきを編み込んだ編組、樹脂シートに金属箔を貼りつけたシールドシート等が挙げられる。
本実施形態のインホイールモーター用ケーブルにおけるシースは、高柔軟電線の外周を覆うものであり、例えばポリ塩化ビニル樹脂等の可塑剤を含む樹脂やゴムにより構成される。当該シースは、公知の方法により形成することができ、例えば一般的な押出成形法により作製することができる。具体的には、高柔軟電線を1本又は複数本束ねた後、それらの外部に塩化ビニル樹脂組成物などのシースの材料を押し出して被覆することにより、シースを形成することができる。
本実施形態のインホイールモーター用ケーブルは、既述の本実施形態の高柔軟電線を含むものであり、それ故に、低温(−40℃程度)での耐屈曲性に優れる。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜3、比較例1〜2]
各実施例・比較例において、表1に示す材料を溶融混練して得た絶縁体組成物を金属導体に押出成形して被覆し、高柔軟電線を得た。なお、金属導体としては、各実施例・比較例において表2に記載の5種の撚線を使用し(各実施例においては金属導体1を除く)、それぞれの例において5つの高柔軟電線を作製した。さらに、絶縁体の厚さは1.0mmとなるようにし、得られる電線サンプルの外径が7.6mmとなるように調整した。なお、表2中、「素線撚り方向」のSはS撚りを、ZはZ撚りを示す。
各実施例・比較例における絶縁体のガラス転移温度Tg、初期引張弾性、貯蔵弾性率を以下のようにして測定した。
(1)ガラス転移温度Tg
JIS K7216に則り、L:15mm×W:6mm×t:1〜3mmの短冊状サンプルを作製し、JIS K7244、JIS K7244−5に準拠して測定した。具体的には、動的粘度弾性測定(DMA)にて、−40℃の雰囲気下で曲げモード(JIS−K7244−5)で貯蔵弾性率及び損失弾性率から求められる損失正接tanδのピーク温度をガラス転移温度として、周波数1Hz、変位:0.05mmにて測定した。
(2)初期引張弾性
JIS K6251に則り、厚さ1mmのダンベル試験片3号を作製して測定した。具体的には、−40℃の雰囲気下において、200mm/minの引張速度にてサンプルを引っ張り、歪み10%までの間での応力−歪み曲線における最大傾き(応力が飽和する点)を弾性率として算出した。
(3)貯蔵弾性率
JIS K7216に則り、L:15mm×W:6mm×t:1〜3mmの短冊状サンプルを作製し、JIS K7244、JIS K7244−5に準拠して測定した。具体的には、動的粘弾性測定(DMA)にて、−40℃の雰囲気下で曲げモード(JIS−K7244−5)で貯蔵弾性率を、周波数1Hz、変位:0.05mmにて測定した。
作製した各実施例・比較例の高柔軟電線について、以下に示す評価試験を実施した。金属導体4を用いて作製した高柔軟電線についての試験結果を表3に示す。
(1)低温屈曲性
−40℃の雰囲気下において、図4に示す装置を用い120°/秒で屈曲を繰り返し実施し、金属導体又は絶縁体に亀裂が発生するまでの回数を測定した。
ここで、図4に示す装置について説明する。図4(A)及び(B)は正面図、(C)は右側面図である。図4に示す装置は、回動可能に設けられた回転体33と、電線の端部近傍を固定可能な電線固定部32とを有する。回転体33の回転面には、電線固定部31と、一対の心棒34とを備える。電線1は、一端部近傍が電線固定部31に固定され、他端部近傍が電線固定部32に固定される。そして、屈曲性の試験時には、電線1が電線固定部31、32に固定された状態で回転体33は、図4(B)の位置(0°(原点))から120°/秒の速度で時計回りに図4(A)の位置まで回動する。そして、その位置で停止した直後に半時計回りに120°回動し原点に戻る。この原点から120°の位置への時計回り・半時計回りの回動が繰り返し行われる。このような回転体33の回動により、電線は心棒34を支点として延ばされた状態(原点)と、屈曲された状態(120°)とに繰り返してなる。
(2)引張特性(引張強度、引張破断伸び)
試験方法は、絶縁体材料をプレス成形したシート状にて行い、JIS K 7161に準拠し、試験片サンプルはJIS K 6251の3号にて測定を実施した。試験速度は200mm/分、標線距離は20±0.2mm、サンプル厚さは1.0mm、引張強さ(MPa)は試験片を切断するまで引っ張ったときに記録される最大引張力を試験片の初期断面積で除して表した。引張伸び(%)は試験片が切断したときの伸びを示し、初期に対する比率(%)を表した。
(3)難燃性
JIS C 3005 4.26に記載の水平試験に準拠し、消炎時間30秒以内の場合を合格(○)とした。
(4)耐摩耗性
ISO 6722 9.2に準拠して測定した。摩耗テープは理研コランダム製、アルミナ粒度150テープを用いた。一つの電線サンプルにおいて4箇所を90度ずつずらして測定し、平均値を求めた。1カウントで152mmとし、635mm以上を合格(○)とし、635mm未満を不合格(△)とした。
(5)バッテリー液性(酸に対する耐久性)
ISO 6722 11.23及びJASO D611 6.5に準拠して実施した。長さ350mmの素線を3本準備し、3箇所にバッテリー液を2、3滴たらした。90℃のオーブンに入れて所定時間処理し、また滴下をISO 6722の2006年版に従って実施した。その後、耐電圧1kVで1分をかけて導通しなかった場合を合格(○)とし、そうでない場合を不合格(×)とした。
(6)加熱変形
ISO 6722に準拠して測定した。電線サンプル600mmで前記規格に記載の計算方法にて荷重を算出し、150℃にて4時間の加熱処理後、耐電圧1kVで1分間かけて導通しなかった場合を合格(○)とした。
(7)耐熱性
電線サンプルをギア式オーブンにて耐熱処理(170℃、240時間)を行い、その後、ISO 6722に記載の所定マンドレル径にて巻き付け処理を行い、その後、後耐電圧1kVで1分間かけて導通しない場合を合格(○)とした。
一方、各実施例・比較例の低温での応力−歪み曲線を図5に、初期引張弾性を図6に、貯蔵弾性率を図7に、低温屈曲性(耐久回数)を図8にそれぞれグラフで示す。
表3及び図5〜図8より、実施例1〜3においては、低温屈曲性及びISO6722−1の規格をすべて満足する結果が得られた(つまり、JASO D624規格をも満足する)。これに対して、比較例1は、低温屈曲性に劣り、比較例2は耐摩耗性及びバッテリー液性に劣っていた。
また、各実施例・比較例において作製した高柔軟電線について、それぞれの絶縁体と金属導体1〜5(各実施例は金属導体1を除く)との組合せについての評価を表4に示す。表4においては、表3に示す評価項目のすべてにおいて良好な結果が得られたものを「A」とした。また、低温屈曲性に劣っていたものを「B」とし、バッテリー液性に劣っていたものを「C」とした。なお、金属導体1を用いた例は実施例には該当せず、本来なら比較例とすべき例であるが、それらの例は金属導体1を除き、各実施例と同じ構成であるため、便宜上各実施例の欄に示した。
表4より、実施例1〜3においては、すべての評価において良好な結果が得られたことが分かる。これに対して、比較例1は、金属導体1〜5のいずれを用いても低温屈曲性に劣っていた。また、比較例2は、金属導体1を用いた場合は低温屈曲性に劣り、それ以外はバッテリー液性に劣っていた。
次に、金属導体4に対して、本撚りと下撚りとを同じ方向としたことのみが異なる金属導体6を作製した。金属導体4及び6の最大主応力及び最大ひずみのデータを表5に示す。
表5より、本撚りと下撚りとを同じ方向とした金属導体6の方が、金属導体4よりも素線別最大ひずみが小さい。一方、金属導体4及び6に対して750万回の屈曲試験を行った後における素線の摩耗状態のSEM写真を図9に示す。図9(a)は金属導体4、(b)は金属導体6のSEM写真である。図9より、本撚りと下撚りとを同じ方向とした金属導体6の方が摩耗が小さいことが分かる。以上のことから、本撚りと下撚りとが同じ方向であると、低温屈曲性が向上すると推察される。
以上、本発明を実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
12 金属線
14 心棒

Claims (5)

  1. 金属導体と、
    前記金属導体を被覆する絶縁体と、を有し、
    前記金属導体の素線径が0.05〜0.18mmであり、
    前記絶縁体が、−40℃の低温雰因気下での初期引張弾性が30MPa以下であり、かつ、温度:−40℃、周波数:1.0Hzで測定した貯蔵弾性率が3500MPa以下であり、
    下記低温屈曲試験における屈曲回数が10万回以上であり、かつ、ISO6722−1に規定する要求特性を満足する、高柔軟電線。
    [低温屈曲試験]
    −40℃の雰囲気下において、前記高柔軟電線を120°/秒で屈曲を繰り返し実施し、金属導体又は絶縁体に亀裂が発生するまでの回数(屈曲回数)を測定する試験。
  2. 前記絶縁体が、ガラス転移温度が−25℃以下の樹脂を含む、請求項1に記載の高柔軟電線。
  3. 前記金属導体の素線の最外層の本撚りと下撚りとが同一方向であり、かつ、撚りピッチが層心径の20倍以下である、請求項1又は2に記載の高柔軟電線。
  4. 前記金属導体が、屈曲時の素線別最大歪みが0.72%以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高柔軟電線。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の高柔軟電線と、シールド部材と、シースとを有する、インホイールモーター用ケーブル。
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