JP2019006708A - アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤とその製造方法、内服剤 - Google Patents

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章博 田井
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Abstract

【課題】強いACE阻害活性を有するアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤を提供すること。【解決手段】ヒアルロン酸と蛋白質とを含有する組成物をプロテアーゼで分解した分解生成物を含有するアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤。【選択図】なし

Description

本発明は、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤およびその製造方法に関する。また、本発明は、そのアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤からなる内服剤にも関する。
現在の罹患者数またその予備軍を含む高血圧人口は推定4300万人いるとされている(日本高血圧学会,高血圧治療ガイドライン2014,2014)。高血圧は心血管病(心臓病,脳卒中)や腎臓病などの原因疾患であると言われており、高血圧性疾患の患者数として約1000万人いるとされている(厚生労働省,患者調査の概況,2014)。また日本における高血圧人口は増加傾向にあり、近年では血圧降下剤と併用して食事指導や運動療法の治療が行われている。また高血圧の多くは本態性であり原因がほとんど分かっていない。したがって、治療を行なっていない高血圧予備軍の中には生活習慣の改善により血圧が好転する可能性がある。また、高血圧が生活習慣病の引き金と考えられていることから、血圧降下作用に関与する成分を含有するサプリメントや機能性食品の開発に注目が集まっている。
ここで、血圧上昇には、種々のメカニズムが関与しているが、血圧降下剤やサプリメント、機能性食品により血圧降下を図るには、レニン−アンジオテンシン系の制御が重要であり、特にサプリメント、機能性食品による血圧降下では、昇圧作用のないアンジオテンシンIを加水分解して昇圧作用のあるアンジオテンシンIIへ変換する、アンジオテンシン変換酵素(Angiotensin Converting Enzyme、以下、「ACE」ともいう)の活性を阻害することが基本とされている。また、アンジオテンシン変換酵素は、カリクレイン−キニン系において降圧作用のあるブラジキニンを加水分解して不活化する働きもあるため、アンジオテンシン変換酵素の活性阻害により、こうした降圧作用の不活化も抑制されて血圧降下に有利に働くことになる。
アンジオテンシン変換酵素の活性阻害作用を有する物質については、特許文献1において、鶏又は豚由来コラーゲンのプロテアーゼ分解物がACE阻害活性を有することが記載されており、特許文献2には、プロテアーゼ活性が20〜300U/g麹である醤油麹を用いて製造された醤油が降圧ペプチドを比較的多く含有し、ACE阻害活性を有することが記載されている。また、ACE阻害活性については明記されていないが、特許文献3には、還元糖類で修飾した糖修飾タンパク質が消化管内で血圧調節作用を有する機能性ペプチドを生成して血圧降下作用を示すことが記載されており、特許文献4には、ニンニク等のアリウム属植物に由来するS−1−プロペニルシステイン又はその塩が血圧降下作用を有することが記載されている。
国際公開第2007/108554号パンフレット 国際公開第2011/078324号パンフレット 国際公開第2005/120541号パンフレット 国際公開第2016/199885号パンフレット
上記のように、特許文献1には鶏又は豚由来コラーゲンのプロテアーゼ分解物がACE阻害活性を有することが記載され、特許文献2にはプロテアーゼ活性が特定範囲にある醤油麹を用いて製造された醤油がACE阻害活性を有することが記載されている。
一方、本発明者らが、強いACE阻害活性を有するプロテアーゼ分解物を得るべく検討を行っていたところ、プロテアーゼで分解する組成物に蛋白質以外の物質を含有させることにより、その物質の種類によってはプロテアーゼ分解物のACE阻害活性が向上するとの知見を得た。これは、組成物中に他の物質が共存することで蛋白質の立体構造が変化し、これによって、蛋白質に対するプロテアーゼの反応性やプロテアーゼ分解物のACEへの作用の仕方が変化するためであると考えられた。
引用文献1、2では、プロテアーゼで分解する原料の共存物資については検討されておらず、各文献からは、プロテアーゼで分解する原料において蛋白質と他の物質が共存することで得られるACE阻害活性の向上効果は予測がつかない。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、プロテアーゼ分解物のACE阻害活性についてさらに研究を行い、強いACE阻害活性を有するアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤を提供することを課題として検討を進めた。また、そのようなアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤を安価に製造することができるアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法を提供することを課題として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、ヒアルロン酸と蛋白質とを含有する組成物をプロテアーゼで分解した分解生成物に強いACE阻害活性があることを初めて見出した。そして、この分解生成物のACE阻害活性を利用することにより、血圧降下作用を有する内服薬やサプリメント、機能性食品の実現が期待できるとの知見を得た。
本発明は、これらの知見に基づいて提案されたものであり、具体的に以下の構成を有する。
[1] ヒアルロン酸と蛋白質とを含有する組成物をプロテアーゼで分解した分解生成物を含有することを特徴とするアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤。
[2] 前記分解生成物のエタノール可溶成分を含有する、[1]に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤。
[3] プロリン残基を有するペプチドを含有する、[1]または[2]に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤。
[4] ヒアルロン酸と蛋白質とを含有する組成物をプロテアーゼで分解する酵素処理工程を含むことを特徴とするアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
[5] 前記組成物が鶏冠であり、前記酵素処理工程の前に、前記鶏冠を1辺0.5cm角以上に小片化する工程を有する、[4]に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
[6] 前記酵素処理工程の後に、前記酵素処理工程で得た分解生成物を、凍結乾燥した後、粉砕して粉砕物を得る工程を有する、[4]または[5]に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
[7] 前記酵素処理工程の後に、前記酵素処理工程で得た分解生成物を精製する精製工程を有する、[4]〜[6]のいずれか1項に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
[8] 前記精製工程が、前記分解生成物にエタノール沈殿を行って、前記分解生成物のエタノール可溶成分をエタノール不溶成分と分離する工程を有する、[7]に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
[9] 前記精製工程が、前記エタノール可溶成分を活性炭カラムクロマトグラフィーにより分離する工程を有する、[8]に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
[10] 前記活性炭カラムクロマトグラフィーの移動相として、アセトンと水の混合溶媒を用いる、[9]に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
[11] 前記アセトンと水の混合溶媒として、20容量%以上のアセトンを含有する混合溶媒を少なくとも用いる、[10]に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
[12] アセトンの混合率を変化させながら前記混合溶媒を活性炭カラムに供給する、[10]または[11]に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
[13] 前記混合溶媒のアセトンの混合率を段階的に変化させる、[12]に記載のアンジオテンシン変換酵素活性剤の製造方法。
[14] [1]〜[3]のいずれか1項に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤からなることを特徴とする内服剤。
本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤は、強いACE阻害活性を有し、これによる血圧降下作用を期待できる。また、本発明の製造方法によれば、上記のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤を低コストで製造することができる。
プロテアーゼ分解物、プロテアーゼ分解物のエタノール可溶成分およびエタノール不溶成分のACE阻害活性(アンジオテンシン変換酵素阻害活性)を示すグラフである。 プロテアーゼ分解物のエタノール可溶成分、および、エタノール可溶成分の活性炭カラムクロマトグラフィーにより得た画分Fr.B1〜Fr.F1のACE阻害活性(アンジオテンシン変換酵素阻害)活性を示すグラフである。 プロテアーゼ分解物のエタノール可溶成分、および、エタノール可溶成分の活性炭カラムクロマトグラフィーにより得た画分Fr.B2〜Fr.G2のACE阻害活性(アンジオテンシン変換酵素阻害)活性を示すグラフである。 エタノール可溶成分の活性炭カラムクロマトグラフィーにより得た画分FrB2〜FrG2の薄層クロマトグラフィーによる分析結果を示す写真である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
[アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤]
本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤は、ヒアルロン酸と蛋白質とを含有する組成物をプロテアーゼで分解した分解生成物を含有する点に特徴がある。
上記組成物に含まれるヒアルロン酸は、化粧品や医薬品の成分として通常用いられているヒアルロン酸であれば特に制限なく使用することができる。ヒアルロン酸は、元来ウシの眼の硝子体から単離されたものであるが、これに限らず、動物の関節液やニワトリの鶏冠などから単離されたものであっても使用することができる。また、自然界から単離されたものでなく、合成や微生物発酵法により得られたものでもよい。
ヒアルロン酸は、アミノ酸とウロン酸からなる複雑な多糖類であるが、その構造の詳細は特に限定されない。例えば、D−グルクロン酸とN−アセチル−D−グルコサミンからなるニ糖を繰り返し単位とする多糖を挙げることができる。組成物に含まれるヒアルロン酸の分子量は特に限定されないが、例えば鶏冠に含まれるヒアルロン酸は、分子量が600万〜1000万であり、鶏冠から抽出したヒアルロン酸は、抽出過程で分解されるため、平均分子量が数十万〜数百万である。本発明で使用するヒアルロン酸はACE阻害活性を過度に損なわない限り、誘導化や熱変性を受けたものであっても構わない。いわゆるヒアルロン酸誘導体として知られている化合物は、本発明で有効に使用することができる。
上記組成物に含まれる蛋白質はその種類を問わないが、鶏冠に含まれる蛋白質が極めて好ましい。鶏冠の種類は特に制限されないが、ニワトリの鶏冠を用いるのが好ましい。ニワトリの鶏冠はヒアルロン酸を含有するため、本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造に用いる組成物を提供するに際して、鶏冠にヒアルロン酸を別途添加しなくてもよいというメリットがある。このため、鶏冠を用いれば本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造工程が簡略化でき、製造コストも下げることができる。
本発明で用いる組成物は、蛋白質とヒアルロン酸のみを含んでいてもよいし、その他の成分や溶媒、分散媒を含んでいてもよい。溶媒および分散媒としては、蛋白質やヒアルロン酸を溶解できるものであればよく、水や水性緩衝液を好適に用いることができる。また、組成物は、蛋白質とヒアルロン酸を含む天然物そのものであってもよい。組成物となる天然物としては、動物の関節液や鶏冠を挙げることができ、ヒアルロン酸を豊富に含むことからニワトリの鶏冠であることが好ましい。
本発明で用いる分解生成物は、上記の組成物をプロテアーゼで分解したものである。プロテアーゼの種類は特に制限されない。通常の蛋白質分解に用いられるプロテアーゼであればいずれも使用することができる。すなわち、エンドペプチダーゼであっても、エキソぺプチダーゼであっても使用することが可能であり、また活性部位はセリン、システイン、金属、アスパラギン酸等のいずれであってもよい。また、複数のプロテアーゼを混合して使用してもよい。好ましいプロテアーゼとして、例えばプロナーゼを使用することができる。
また、本発明で用いる分解生成物は、上記の組成物をプロテアーゼで分解したものであるため、少なくとも、プロテアーゼにより分解された蛋白質の分解物と、ヒアルロン酸を含有し、未分解の蛋白質(プロテアーゼ添加前の組成物に元々含まれていた蛋白質)や組成物由来の他の成分を含有していてもよい。
分解生成物に含まれる蛋白質の分解物としては、未分解の蛋白質よりも低分子量の蛋白質、ペプチド、遊離アミノ酸を挙げることができ、これらが混在していてもよい。
また、分解生成物は、遊離アミノ酸を含有することが好ましい。分解生成物が含有する遊離アミノ酸は、蛋白質の分解物としての遊離アミノ酸であってもよいし、プロテアーゼ添加前の組成物に遊離アミノ酸として元々含まれていたものであってもよい。遊離アミノ酸の種類は、組成物の成分によっても異なるが、例えば組成物が鶏冠である分解生成物では、比較的含有率が多いアミノ酸としてイソロイシン、β−アミノイソ酪酸、アラニン、タウリン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、シスチン、チロシン等を挙げることができ、この他にも、多種類のアミノ酸を含む。
また、分解生成物は、プロリン残基を有するペプチドを含有することが好ましい。プロリン残基を有するペプチドを含有する分解生成物はACE阻害活性が強い傾向がある。分解生成物や分解生成物から分離した画分にプロリン残基を有するペプチドが含有されていることは、薄層クロマトグラフィー分析におけるレーンの原点付近でニンヒドリン反応による黄色呈色を観察することで確認することができる。
アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤における総蛋白質量は、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の全量に対する質量比で0.5〜10質量%であることが好ましく、1〜7質量%であることがより好ましく、2〜5質量%であることがさらに好ましい。また、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤における総遊離アミノ酸量は、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の全量に対する質量比で0.5〜12質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがより好ましく、2〜6質量%であることがさらに好ましい。アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤における総蛋白質量および遊離アミノ酸量が上記の範囲であることにより、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤が効果的に作用すると考えられ、強いACE阻害活性を得ることができる。
本明細書中において「総蛋白質量」とは、Lowry法により求めた総蛋白質含量のことをいい、「総遊離アミノ酸量」とは、Ninhydrin法により求めた遊離アミノ酸の総量のことをいう。
上記の分解生成物に含まれるヒアルロン酸は、プロテアーゼ添加前の組成物に元々含まれていたヒアルロン酸がそのまま残存したもの(以下、「未分解のヒアルロン酸」という)であってもよいし、ヒアルロン酸の分解物(以下、「低分子ヒアルロン酸」という)であってもよいし、未分解のヒアルロン酸と低分子ヒアルロン酸とが混在したものであってもよいが、低分子ヒアルロン酸を含有することが好ましい。低分子ヒアルロン酸は生命体の深部に浸透し易く、生命体に対する作用を効果的に得ることができる。分解生成物が含有する低分子ヒアルロン酸は、組成物中でヒアルロン酸を加水分解させて得た低分子ヒアルロン酸であってもよいし、上記の組成物とは別の系でヒアルロン酸を加水分解し、得られた低分子ヒアルロン酸を分解生成物に添加したものであってもよいが、組成物中でヒアルロン酸を加水分解させて得た低分子ヒアルロン酸であることが好ましい。組成物中での低分子ヒアルロン酸の生成は、塩酸やヒアルロニダーゼ等の、ヒアルロン酸を加水分解する物質を組成物に添加することにより行うことができる。また、組成物が天然物である場合には、天然物に元々含まれる物質による自己消化を利用して低分子ヒアルロン酸を生成してもよい。ただし、ヒアルロン酸の生体に対する作用を有効に得る点から、ヒアルロン酸は構成単位を保持していること、すなわち、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンまで分解が進行していないことが好ましい。具体的には、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤におけるN−アセチルグルコサミンの含有量は、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の全量に対して0.01質量%以下であることが好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
本明細書中において「N−アセチルグルコサミン量」とはMorgan-Elson法により求めたN−アセチルグルコサミン含量のことをいう。
分解生成物が含有する低分子ヒアルロン酸は、分子量が380〜5000であることが好ましい。分子量380〜5000は、ヒアルロン酸の繰り返し単位数で約1〜14に相当する。アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤における、分子量380〜5000の低分子ヒアルロン酸の含有量は、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の全量に対して5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、低分子ヒアルロン酸のうちでは、分子量1520〜5000の低分子ヒアルロン酸が主成分であることが好ましく、分子量1520〜5000の低分子ヒアルロン酸の割合が分子量380〜5000の低分子ヒアルロン酸全量の60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤が効果的に作用すると考えられ、強いACE阻害活性を得ることができる。
低分子ヒアルロン酸の分子量と質量比率は、ポリエチレングリコールを分子量マーカーに用いる高速液体クロマトグラフィーにより分析することができる。
分解生成物の性状は、用いる組成物の成分や組成比、プロテアーゼの種類によっても異なるが、通常は液状、さらには粘質性を帯びた液状である。分解生成物は、そのまま本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤としてもよいし、適宜精製して他の成分と組み合わせる等して本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤としてもよい。分解生成物を精製することにより、よりACE阻害活性が強いアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤とすることができる。また、分解生成物からエタノール可溶成分を分離してアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤として用いてもよい。すなわち、本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤は、分解生成物から分離したエタノール可溶成分を含有するものであってもよい。分解生成物のエタノール可溶成分は、エタノール不溶成分よりも強いACE阻害活性を有しており、また、低濃度領域において、分解生成物の原液を上回る強いACE阻害活性を示す。そのため、エタノール可溶成分はアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤として効果的に用いることができる。また、分解生成物のエタノール可溶成分は、分解生成物の原液よりも粘性および保水性が低いため短時間で濃縮できるという利点もある。分解生成物のエタノール可溶成分は、分解生成物にエタノール沈殿を行うことで生じる上清として得ることができる。エタノール沈殿の具体的な条件については、後掲の実施例の[プロテアーゼ分解物のエタノール沈殿による分離]の欄を参照することができる。上記のエタノール沈殿やその他の精製工程により分解生成物を精製してアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤とする場合、その分解生成物の精製物はプロリン残基を有するペプチドを含有することが好ましい。すなわち、本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤は、プロリン残基を有するペプチドを含有することが好ましい。
本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の剤形は特に制限されない。例えば、液状のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤は、塗布や点眼のための外用剤、飲料タイプの内服剤等として用いることができる。また、分解生成物を凍結乾燥等により乾燥した後、粉砕した場合は、粉末状のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤を提供することが可能である。粉末状のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤は、そのまま、もしくは他の成分を含有させて内服剤に用いてもよいし、錠剤やカプセル剤に加工してもよいし、所望の溶媒または分散媒を添加して液状とし、塗布や点眼のための外用剤や飲料タイプの内服剤等として用いてもよい。
本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤には、上記分解生成物以外にも、さまざまな成分を含有させることができる。例えば、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤に賦形剤を含有させた場合には、分解生成物と賦形剤の配合率を制御して総蛋白質量や総遊離アミノ酸量、低分子ヒアルロン酸量等の成分量を調整することができる。また、保存し易いアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の態様として、凍結乾燥させた分解生成物を粉砕して得た粉末を賦形剤で希釈した混合粉末を挙げることができる。賦形剤としては、特に限定されないが、デキストリンが好適である。賦形剤による希釈倍率は、質量比で2〜10倍であることが好ましく、2〜7倍であることがより好ましく、3〜5倍であることがさらに好ましい。
本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤は、強いACE阻害活性を有する。このため、本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤は、経口で摂取され、その成分が腸管から吸収された場合には、到達した血管内皮細胞膜等においてアンジオテンシン変換酵素の活性を効果的に阻害する。その結果、昇圧作用のないアンジオテンシンIから昇圧作用のあるアンジオテンシンIIへの変換や、降圧作用のあるブラジキニンの加水分解による不活化が抑制されて血圧降下作用が得られると推測される。ここで、本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤は、生体成分であるヒアルロン酸や蛋白質、反応が緩和な酵素を用いているため安全性が高く、経口で摂取する内服剤として使用し易いという利点がある。
本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の使用量は、投与する対象の高血圧の程度によっても異なるが、例えば以下の使用量で用いることが好ましい。
例えば本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤を内服薬として経口投与する場合、その投与量は80〜2000mg/成人標準体重/日であることが好ましく、1日に2〜3回に分けて投与することが適当である。
[アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法]
次に、本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法について説明する。
本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法は、ヒアルロン酸と蛋白質とを含有する組成物をプロテアーゼで分解する酵素処理工程を含むことを特徴とする。
本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法は、さらに必要に応じて、この他の工程を有していてもよい。例えば、組成物が鶏冠である場合には、酵素処理工程の前に、鶏冠を小片化する小片化工程を有していてもよい。また、酵素処理工程の後に、分解生成物を濾過する濾過工程、濾過した分解生成物を乾燥した後、粉砕する製粉工程、濾過した分解生成物を精製する精製工程を有していてよい。以下において、本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法を詳細に説明する。
まず、ヒアルロン酸と蛋白質とを含有する組成物を準備する。組成物としてニワトリの鶏冠を利用する場合には、性別、年令を問わず使用し得る。ただし、採取後なるべく時間を置かずにプロテアーゼ分解に供することが好ましい。また、時間を置いてプロテアーゼ分解するときには、冷凍保存した後に解凍して使用することが好ましい。
鶏冠をプロテアーゼ分解するときには、まず鶏冠を小片化する小片化工程を行ってから、該鶏冠の小片をプロテアーゼ含有溶液に接触させることが好ましい。鶏冠は、好ましくは0.5cm角以上、より好ましくは0.7cm角以上、さらに好ましくは0.9cm角以上の小片にする。過度に細片化してしまったり、ミンチ状にしてしまうと、水分が過度に流れ出てしまったりするため好ましくない。
次に、組成物をプロテアーゼで分解する酵素処理工程を行う。本発明の製造方法で用いるプロテアーゼの説明については、上記の[アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤]の欄のプロテアーゼの説明を参照することができる。酵素処理は、組成物やプロテアーゼの種類によっても異なるが、例えば組成物が鶏冠等の固形物や粉末である場合には、プロテアーゼを溶解した水溶液等の溶液(酵素液)を組成物に添加した後、一定時間放置することで行うことが好ましい。ここで、酵素液のpHは5.0〜10.0であることが好ましく、処理温度は40〜60℃であることが好ましく、処理時間は0.5〜3.0時間であることが好ましい。また、酵素処理は、酵素液を添加した組成物を振とうしながら行うことが好ましい。
以上のようにして得られた分解生成物は、ろ過などの方法により鶏冠等の固形分を除去して、液状の分解生成物として用いることができる。また、凍結乾燥等により乾燥してさらに粉砕する製粉工程を行うことにより、粉末状の分解生成物として用いることもできる。これらの分解生成物は、そのまま本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤としてもよいし、適宜精製し、賦形剤等の他の成分と組み合わせる等して本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤としてもよい。
本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤は、このように、極めて簡単な工程で製造することができる。このため、本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法を用いることにより、有用性が高いアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤を低いコストで提供することができる。
また、濾過した分解生成物や粉末状の分解生成物を精製することにより、ACE阻害活性がより強いアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤とすることができる。分解生成物の精製方法の詳細については、後掲の実施例の[プロテアーゼ分解物のエタノール沈殿による分離]および[エタノール可溶成分の活性炭カラムクロマトグラフィーによる分離]の欄を参照することができる。分解生成物を精製するに当たっては、分解生成物にエタノール沈殿を行って沈殿画分を除去することが好ましい。分解生成物にエタノール沈殿を行うことで生じる沈殿画分はエタノール不溶成分であり、ACE阻害活性がほとんど認められないが、その上清は、分解生成物の成分のうち、エタノールに可溶な成分(エタノール可溶成分)を含有しており、強いACE阻害活性を有する。分解生成物に加えるエタノールの量は、エタノールを加えた状態での全量に対して20〜90容量%であることが好ましく、40〜80容量%であることがより好ましく、60〜80容量%であることがさらに好ましい。また、エタノール沈殿に用いるエタノールは変性剤が添加された変性エタノールであってもよい。
また、分解生成物のエタノール可溶成分を、さらにカラムクロマトグラフィー等にて分離精製することが好ましい。これにより、ACE阻害活性がさらに強いアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤を得ることができる。カラムクロマトグラフィーとしては、例えば吸着クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、金属キレートクロマトグラフィー、疎水性(ハイドロホービック)クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を挙げることができ、吸着クロマトグラフィーを用いることが好ましく、活性炭カラムクロマトグラフィーを用いることがより好ましい。例えば、分解生成物のエタノール可溶成分を活性炭カラムに供給した後、水とアセトンの混合溶媒をカラムに流して溶出液のフラクションを得ることにより、その複数のフラクションの中に、ACE阻害活性が極めて強いフラクションを得ることができる。ACE阻害活性を有する成分を溶出させる際の、混合溶媒におけるアセトンの混合率は、20容量%以上であることが好ましく、20〜90容量%であることがより好ましく、30〜90容量%であることがさらに好ましい。また、混合溶媒におけるアセトンの混合率は90〜99容量%であることも好ましい。このとき、カラムに流す混合溶媒は、混合比を一定にしてカラムに供給してもよく、アセトンの混合率を連続的または段階的に変化させながらカラムに供給してもよい。また、溶出液のフラクションのうち、プロリン残基を有するペプチドを含有するフラクションにおいて、強いACE阻害活性が得られる傾向があるため、呈色反応等によりプロリンの存在が認められたフラクションを混合し、必要に応じて濃縮してアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤として用いてもよい。
[アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の用途]
上記のように、本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤は、強いACE阻害活性を有する。このため、本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤は、ヒト等の動物に投与して、そのアンジオテンシン変換酵素の活性を阻害して血圧を降下させる内服剤として効果的に用いることができる。内服剤の使用態様は特に制限されず、例えば内服薬、サプリメント、機能性食品等のいずれとして使用してもよい。内服剤としてのアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤には、必要に応じて、上記の分解生成物や賦形剤以外にも、さまざまな成分を含有させることができる。例えば、ビタミン、野菜粉末、ミネラル、酵母エキス、着色剤、増粘剤などを必要に応じて含有させることができる。これらの成分の種類は特に制限されず、含有量は目的とする機能を十分に発揮させることができる範囲内で適宜調節することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、割合、操作等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[製造例]
採取したてのニワトリの鶏冠1kgを約1cm角に切断して小片化し、100℃で蒸きょうを行うことにより加熱殺菌した。この小片状の鶏冠にプロテアーゼを中心とした食物由来の酵素類を添加して45℃で1.5時間反応させた後、攪拌して均質化した。その後、濾過して粗大な固形成分を除去し、液状の分解生成物(以下、「プロテアーゼ分解物」という)を得た。このプロテアーゼ分解物は、pH6.5、Brix値6.20、固形分濃度5.91質量%であった。このプロテアーゼ分解物を凍結乾燥して粉砕し、プロテアーゼ分解物の凍結乾燥粉末(アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤1)を得た。また、このプロテアーゼ分解物の凍結乾燥粉末に3倍等量(質量比)のデキストリンを添加することにより、デキストリン添加凍結乾燥粉末(アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤1’)を製造した。
[分析法]
本実施例で製造したアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の成分分析は下記の方法により行った。
(1)水分含有量の測定
水分含有量は、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の1gを105℃で3時間加熱乾燥し、精密天秤で恒量を求め定量した。
(2)全窒素の定量
全窒素はAOAC法に基づくセミミクロケルダール法によって定量した。
(3)遊離アミノ酸の定量およびアミノ酸組成の分析
総遊離アミノ酸量はNinhydrin法によって定量した。定量には標準アミノ酸としてロイシンの検量線を作成し使用した。また、遊離アミノ酸の組成は、生体分析用カラムを装着したアミノ酸自動分析機(日立社製、L-8500型)を用いて分析した。この分析には、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の50mgを蒸留水に溶解し、ロータリーエバポレーダー(60℃)で減圧乾固させた後、0.02N塩酸5mLで溶出し、ろ紙でろ過したのち、滅菌フィルターでろ過したろ液50μLを分析試料として使用した。
(4)タンパク質の定量
総タンバク質量はLowry法によって決定した。標準検量線の作成には牛血清アルブミンを使用した。
(5)N−アセチル−D−グルコサミンの定量
N−アセチル−D−グルコサミン含有量はMorgan-Elson法で定量した。
(6)グルコサミノグリカンの定量
2−ニトロフェニルヒドラジンカップリング法による比色定量法で分析した。標準検量の作成には鶏冠由来ヒアルロン酸ナトリウム(和光純薬社製、HARC)およびstreptococcus zooepidemicus由来のヒアルロン酸ナトリウム(和光純薬社製、HASZ)を用いた。
(7)低分子ヒアルロン酸の分子量測定
示差屈折計(Shimazu社製、RID-10A型)を装着した高速液体クロマトグラフィー(Shimazu社製)によってヒアルロン酸の分子量を推定した。カラムとしてTSKgel G-2,500PWXL(7.8mmID×30cm)を用い、水を移動相として流速1ml/minで分析を行った。分子量マーカーには分子量400、1000、2000、6000の4種のポリエチレングリコール(Aldrich社製)を用いた。また、各低分子ヒアルロン酸の構成重量比は、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤とデキストリンのみのサンプルを高速液体クラマトグラフィにより分析し、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤で現れたピークのピーク面積からデキストリンのピーク面積を差し引くことにより求めた。
[アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の成分分析]
製造したアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤1’について、上記の方法により成分分析を行った。測定された一般成分の含有率を表1に示し、遊離アミノ酸の組成を表2に示し、低分子ヒアルロン酸の分子量の分析結果を表3に示す。なお、表1〜3中の「%」は「質量%」を表す。
表2に示すように、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤1’に含まれる遊離アミノ酸の中では、イソロイシン、β−アミノイソ酪酸の含有量が多く、ついで、アラニン、タウリン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、シスチン、チロシン等が多く含まれていた。
また、表3に示すように、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤1’に含まれる低分子ヒアルロン酸は、推定分子量5000、1520、1140、760および380の5種類からなることがわかった。また、ヒアルロン酸の繰り返し単位1つの分子量を約400とすると、各低分子ヒアルロン酸の繰り返し単位数は、分子量の大きい順に、13〜14、4、3、2および1であり、質量比率は、33%、47%、10%、6%および4%であった。よって、低分子ヒアルロン酸の主要成分は、分子量1520程度の4分子成分と分子量5000程度の13〜14分子成分の2成分であることがわかった。なお、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤1’における、分子量380〜5000の低分子ヒアルロン酸の含有率は、アンジオテンシン変換酵素阻害活性剤1’の全量に対して13.4質量%であった。
[ACE阻害活性試験]
上記の製造例で得たプロテアーゼ分解物およびプロテアーゼ分解物から分離した各試料のACE阻害活性は下記の方法により測定した。
(試薬)
ACE阻害活性試験に用いた試薬を以下に示す。
緩衝液:
300mMの塩化ナトリウムを含む50mMHEPES緩衝液(pH8.3)
Hippuryl-His-Leuの溶液(基質溶液):
25mMのBz-Gly-His-Leu・H2O(ペプチド研究所社製)を含む水溶液を2N水酸化ナトリウムでpH9以下に調整して基質溶液とした。
アンジオテンシン変換酵素溶液(酵素溶液):
1gのウサギ由来肺アセトンパウダーに、塩化ナトリウムを含まないHEPES緩衝液を10mL加え、4℃で60分間撹拌して酵素を抽出した後、20000×gで40分間遠心分離を行い、その上清を回収した。回収した液を必要な酵素活性が得られるように適宜希釈して酵素溶液とした。
(ACE阻害活性試験の方法)
緩衝液(185μL)、基質溶液(25μL)、測定試料(20μL)をガラス試験管(1.2×7.5cm)に入れて攪拌した後、酵素溶液(20μL)を添加して攪拌し、37°Cで1時間インキュベートした。その後、この反応液に、1N塩酸(250μL)を添加し、撹拌して反応を停止させた後、酢酸エチル(1.5mL)を添加して撹拌した。その酢酸エチル層から1mLを測り取って別のガラス試験管(1.2×7.5cm)に移し、120°Cのドライブロックバスにて蒸発乾固した。乾固した固体物に純水(1mL)を添加、攪拌してサンプル溶液を調製し、その233nmにおける吸光度を測定して、下記式によりアンジオテンシン変換酵素阻害活性(ACE阻害活性)を求めた。なお、計算には試料毎に2回測定した吸光度の平均値を使用した。
ACE阻害活性(%)=[[(CAs−BAs)−(SAs−SBAs)]/(CAs−BAs)]×100
式において、SAsはサンプル溶液の233nmにおける吸光度を表し、CAsは測定試料の代わりに純水を添加してサンプル溶液と同じ処理を行ったコントロール溶液の233nmの吸光度を表し、BAsは測定試料および酵素溶液の代わりに純水を添加してサンプル溶液と同じ処理を行ったブランク溶液の233nmの吸光度を表し、SBAsは酵素溶液の代わりに純水を添加してサンプル溶液と同じ処理を行った試料ブランク溶液の233nmの吸光度を表す。
[プロテアーゼ分解物のエタノール沈殿による分離]
上記の製造例で得たプロテアーゼ分解物に変性アルコール(今津薬品社製:エコノールS)を80容量%になるように加え、その直後に析出したエタノール不溶性成分を200mLのビーカーに移し、残った溶液を4℃で一晩静置して細かいエタノール不溶成分を沈殿させた。静置後の溶液を、4℃、1500×gで10分間遠心分離して上清画分と沈殿画分に分離し、その沈殿画分を、先にビーカー内に移した沈殿物と混合した。混合した沈殿物と上清の1mL分をそれぞれ採取し、45℃のロータリーエバポレーターで濃縮乾固して重量を測定し、その重量から、エタノール可溶成分としての上清画分およびエタノール不溶成分としての沈殿画分の総重量をそれぞれ求めた。その結果、エタノール可溶成分の総重量は44.5g、エタノール不溶成分の総重量は25.3gであった。
得られたエタノール可溶成分およびエタノール不溶成分と原液(エタノール沈殿を行っていないプロテアーゼ分解物)を、それぞれ純水にて0.2mg/mL、0.4mg/mL、0.8mg/mLの濃度に希釈してACE阻害活性を測定した。その測定結果を図1示す。
図1に示すように、エタノール可溶成分において、特に低濃度領域で原液を上回る強いACE阻害活性を得ることができた。これに対して、エタノール不溶成分のACE阻害活性は原液よりも弱いものであった。
また、プロテアーゼ分解物の原液は非常に粘性および保水性が高く、その固体物を得るには、長時間かけてロータリーエバポレーターで乾固させる必要があった。一方、エタノール可溶成分は粘性および保水性が低く、短い時間で乾固させることができた。このことから、エタノール可溶成分は取り扱い性にも優れることがわかった。
以上のことから、プロテアーゼ分解物のエタノール可溶成分はアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤として好ましいことがわかった。
[エタノール可溶成分の活性炭カラムクロマトグラフィーによる分離]
(精製例1)
上記のプロテアーゼ分解物のエタノール沈殿により得られたエタノール可溶成分(44.5g)を活性炭カラムクロマトグラフィー(カラム寸法:内径7cm×高さ40cm、活性炭:和光純薬社製)に供し、アセトンと水の混合溶媒を移動相に用いて分離を行った。具体的には、混合容量比(アセトン/水)が10/90、20/80、30/70、40/60、50/50、70/30、90/10の各混合溶媒を用意し、この順に1.5Lずつカラムに流して、カラムから溶出してくる溶出液を500mLずつ回収して分離を行った。そして、回収した各フラクションのうち、フラクションナンバー1、2のものを合わせた液を「Fr.A1」とし、フラクションナンバー3〜5を合わせた液を「Fr.B1」とし、フラクションナンバー6〜8のものを合わせた液を「Fr.C1」とし、フラクションナンバー9〜11のものを合わせた液を「Fr.D1」とし、フラクションナンバー12〜15のものを合わせた液を「Fr.E1」とし、フラクションナンバー16〜21のものを合わせた液を「Fr.F1」として、それぞれロータリーエバポレーターで濃縮した。なお、Fr.A1〜Fr.F1で合わせた各フラクションは、それぞれ薄層クロマトグラフィー分析のニンヒドリン反応試験で同様のスポットが認められたものである。濃縮物の重量は、Fr.B1で17.8g、Fr.C1で2.0g、Fr.D1で4.1g、Fr.E1で1.8g、Fr.F1で0.5gであり、Fr.A1の濃縮物は秤量限界以下であった。
Fr.B1〜Fr.F1の濃縮物と分離前のエタノール可溶成分を、それぞれ純水にて0.2mg/mL、0.4mg/mL、0.8mg/mLの濃度に希釈してACE阻害活性を測定した。その測定結果を図2に示す。
図2に示すように、(アセトン/水)=約30/70の混合溶媒により溶出されたFr.C1に、分離前のエタノール可溶成分よりも強いACE阻害活性が認められ、Fr.E1およびFr F1については上清画分と同程度のACE阻害活性が認められた。
(精製例2)
精製例1で用いたものとは別に調製したエタノール可溶成分(53.5g)について、精製例1と同様の分離条件で活性炭カラムクロマトグラフィーを行った。但し、ここでは、回収した各フラクションのうち、フラクションナンバー1のものを「Fr.A2」とし、フラクションナンバー2、3を合わせた液を「Fr.B2」とし、フラクションナンバー4、5のものを合わせた液を「Fr.C2」とし、フラクションナンバー6〜10のものを合わせた液を「Fr.D2」とし、フラクションナンバー11、12のものを合わせた液を「Fr.E2」とし、フラクションナンバー13〜18のものを合わせた液を「Fr.F2」とし、フラクションナンバー19〜21のものを合わせた液を「Fr.G2」として、それぞれロータリーエバポレーターで濃縮した。濃縮物の重量は、Fr.B2で15.9g、Fr.C2で5.0g、Fr.D2で14.2g、Fr.E2で2.8g、Fr.F2で3.2g、Fr.G2で0.17gであり、Fr.A2の濃縮物は秤量限界以下であった。
Fr.B2〜Fr.G2の濃縮物と分離前のエタノール可溶成分を、それぞれ純水にて0.2mg/mL、0.4mg/mL、0.8mg/mLの濃度に希釈してACE阻害活性を測定した結果を図3示す。
図3に示すように、(アセトン/水)=約30/70の混合溶媒で溶出されたFr.D2に、特に強いACE阻害活性が認められ、先に行った活性炭カラムクロマトグラフィーと同じ傾向の結果が得られた。このことから、(アセトン/水)=30/70の混合溶媒で溶出される画分にプロテアーゼ分解物のACE阻害活性物質が多く含まれていることが示唆された。
なお、この精製例では、(アセトン/水)=90/10の混合溶媒により溶出されたFr.G2にも強いACE阻害活性が認められた。
また、Fr.B2〜Fr.G2を薄層クロマトグラフィーにより分離してニンヒドリン反応試験を行った結果を図4に示す。ここで、展開溶媒には(1−ブタノール/メタノール/水)=5/3/2(V/V)の混合溶媒を使用した。
図4から、ACE阻害活性が比較的強いFr.D2〜Fr.G2の各レーンの原点付近に黄色を呈したスポットが確認された。ニンヒドリン呈色における黄色はプロリンに由来することから、Fr.D2〜Fr.G2はプロリン残基を有するペプチドを含有することが確認され、このペプチドがプロテアーゼ分解物に含まれるACE阻害活性成分であると推測された。
本発明によれば、強いACE阻害活性を有するアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤を低コストで提供することができる。また、このアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤は、生体に関連する物質を原料に用いるため、サプリメントや機能性食品にも使用し易い。このため、本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤を用いれば、高血圧患者や高血圧予備軍の血圧を改善しうる内服薬やサプリメント、機能性食品を安価に提供することができる。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。

Claims (14)

  1. ヒアルロン酸と蛋白質とを含有する組成物をプロテアーゼで分解した分解生成物を含有することを特徴とするアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤。
  2. 前記分解生成物のエタノール可溶成分を含有する、請求項1に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤。
  3. プロリン残基を有するペプチドを含有する、請求項1または2に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤。
  4. ヒアルロン酸と蛋白質とを含有する組成物をプロテアーゼで分解する酵素処理工程を含むことを特徴とするアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
  5. 前記組成物が鶏冠であり、前記酵素処理工程の前に、前記鶏冠を1辺0.5cm角以上に小片化する工程を有する、請求項4に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
  6. 前記酵素処理工程の後に、前記酵素処理工程で得た分解生成物を、凍結乾燥した後、粉砕して粉砕物を得る工程を有する、請求項4または5に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
  7. 前記酵素処理工程の後に、前記酵素処理工程で得た分解生成物を精製する精製工程を有する、請求項4〜6のいずれか1項に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
  8. 前記精製工程が、前記分解生成物にエタノール沈殿を行って、前記分解生成物のエタノール可溶成分をエタノール不溶成分と分離する工程を有する、請求項7に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
  9. 前記精製工程が、前記エタノール可溶成分を活性炭カラムクロマトグラフィーにより分離する工程を有する、請求項8に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
  10. 前記活性炭カラムクロマトグラフィーの移動相として、アセトンと水の混合溶媒を用いる、請求項9に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
  11. 前記アセトンと水の混合溶媒として、20容量%以上のアセトンを含有する混合溶媒を少なくとも用いる、請求項10に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
  12. アセトンの混合率を変化させながら前記混合溶媒を活性炭カラムに供給する、請求項10または11に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤の製造方法。
  13. 前記混合溶媒のアセトンの混合率を段階的に変化させる、請求項12に記載のアンジオテンシン変換酵素活性剤の製造方法。
  14. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンジオテンシン変換酵素阻害活性剤からなることを特徴とする内服剤。
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