以下、本発明に係る硬化性樹脂組成物、感放射線性脂組成物、感放射線性脂組成物を用いた電子回路および電子デバイスについて説明する。本発明の硬化性樹脂組成物、感放射線性脂組成物、感放射線性脂組成物を用いた電子回路および電子デバイスは、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び後述する実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(硬化性樹脂組成物)
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、アセタール結合を含む酸解離性基を有する化合物と、酸発生体とを含む組成物であり、酸発生体から発生する酸の作用により、溶剤に対して不溶性となることを特徴とする。
本発明の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、[A]下記式(1)で示される基を分子中に複数有する化合物と、[B]酸発生体と、を含む。
式(1)中、R1は2価の脂肪族炭化水素基または脂肪族炭化水素基の一つ以上の水素原子がハロゲン、シアノ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1から12のアルキル基、炭素数1から12のアルコキシル基で置換された2価の脂肪族炭化水素基を示す。R2、R3はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を示す。R4は、1価の炭化水素基又は炭化水素基の一つ以上の水素原子がハロゲン、シアノ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1から12のアルキル基、炭素数1から12のアルコキシル基で置換された1価の炭化水素基を示す。*は結合部位を示す。
式(1)で示されるアセタール結合を含む化合物は、HOR1−基を有する化合物とCH2=CH−O−R4で示されるビニルエーテル化合物とを反応させることで得ることができる。このようなアセタール保護基を有する化合物は、脱保護することによりHOR1−基を有する化合物に戻ることから、特許文献7においては、疎水性の(撥液性の高い)官能基をR4に導入することにより撥液性を付与するとともに、酸発生体から発生する酸の作用により、脱保護して親液性を付与していた。
例えば、ヒドロキシフェニル基を有するアルコールのフェノール性の水酸基をビニルエーテルによりアセタール保護する反応は、式(2)で示される。
式(2)の反応により得られた化合物は、酸発生体から発生する酸の作用により、式(3)で示される反応により脱保護することにより、保護前の水酸基を有する化合物が生成することが一般に知られている。
アセタール保護した化合物の脱保護においては、下記式(4)に示すようなエステル交換反応は起こらないと、一般には考えられている。
しかし、本発明者らは、[A]式(1)で示される基を分子中に複数有する化合物と、[B]酸発生体と、を含む硬化性樹脂組成物が、酸発生体から発生する酸の作用により、溶剤に対して不溶性となることを初めて見出した。撥液性と親液性を制御可能な硬化性樹脂組成物において、酸発生体から発生する酸の作用により、溶剤に対して不溶性となる硬化性樹脂組成物はこれまでに報告されていない。
本発明に係る硬化性樹脂組成物が、酸発生体から発生する酸の作用により、溶剤に対して不溶性となる作用機序は明らかとはなっていないが、反応生成物の分子量が大きくなることから、下記式(5)に示すように、アセタール保護した化合物の脱保護においてエステル交換反応が起こり、その後、隣接するビニル基が重合反応するものと推察される。
このような酸発生体から発生する酸の作用により、溶剤に対して不溶性となる本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、式(1)中、R1は、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の飽和脂肪族基、ビニレン基、プロペニレン基等の不飽和脂肪族基、フェニレン基、ナフチレン基等の芳香族基が挙げられる。これらの基は、基の一つ以上の水素原子がハロゲン、シアノ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1から12アルキル基、炭素数1から12のアルコキシル基で置換されてもよい。
R1は2価の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。R1が2価の脂肪族炭化水素基であると、エステル交換反応が生じやすくなると推察される。例えば、メチレン基又は炭素数2から12のアルキレン基が好ましく、アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が挙げられる。特に、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましい。
また、式(1)中、R4は、例えば、炭素数6以上の脂肪族炭化水素基、並びに、1つ以上の水素原子がフッ素原子、トリフオロメチル基およびペンタフルオロエチル基のうちの少なくとも1つで置換された脂肪族炭化水素基よりなる群から選ばれる基等が挙げられる。
式(1)中、R4の1価の炭化水素基がフッ素原子を有する基であることが好ましい。R4の1価の炭化水素基がフッ素原子を有する基であると、塗膜の撥液性に優れる。また、酸発生体から発生する酸の作用により、フッ素原子を有する基が脱離すると、この脱離基は比較的揮発し易いため、塗膜から除去されやすく好ましい。例えば、下記式(1−1)〜(1−31)に示す基、2,2,2−卜リフルオロエチル基、4,4,5,5,6,6,6−ヘプタ−ルオロヘキシル基、1,2,2−卜リフルオロビニル基が挙げられる。
式(1)中、R4は、2,2,2−卜リフルオロエチル基、式(1−1)の3,3,3−卜リフルオロプロピル基、式(1−2)の4,4,4−卜リフルオロブチル基、式(1−4)の3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、4,4,5,5,6,6,6−へプタフルオロヘキシル基、式(1−1−8)の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−卜リデ力フルオロオクチル基、1,2,2−卜リフルオロビニル基、式(1−29)の2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基が好ましい。
([A]化合物)
[A]化合物は、前駆体である水酸基を有する化合物の水酸基に、下記式(6)で示されるビニルエーテル化合物(以下、「化合物(6)]と称することがある。)に由来する保護基が導入された構造を有する化合物である。
R4は、上述した1価の炭化水素基又は炭化水素基の一つ以上の水素原子がハロゲン、シアノ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、炭素数1から12アルキル基、炭素数1から12のアルコキシル基で置換された1価の炭化水素基を示す。これらのうち、さらに、炭素数6以上の脂肪族炭化水素基、並びに、1つ以上の水素原子がフッ素原子、トリフオロメチル基およびペンタフルオロエチル基のうちの少なくとも1つで置換された脂肪族炭化水素基よりなる群から選ばれる基から選択される。
本発明に係る硬化性樹脂組成物において、[A]化合物は、式(1)で示される基を分子中に複数有する化合物であり、重合体であってもよく、低分子化合物であってもよい。
重合体である[A]化合物(以下、[A]重合体と称することがある。)を得るための方法について説明する。重合体である[A]化合物([A]重合体)を得るための方法としては、前駆体となる化合物として重合体を用いる方法と、前駆体となる化合物としてモノマーを用いる方法の2つの方法が可能である。
前駆体となる化合物として重合体を用いる方法では、前駆体となる重合体が水酸基を分子内に含有し、前駆体となる重合体の水酸基に化合物(6)を反応させることで[A]重合体を得ることができる。
また、前駆体となる化合物としてモノマーを用いる方法では、前駆体となるモノマーが分子内に水酸基を含有し、前駆体となるモノマーの水酸基に化合物(6)を反応させた後、得られたモノマーを重合させることで[A]重合体を得ることができる。
以下、[A]重合体を得るための2つの方法について、より具体的に説明する。
(1)前駆体となる化合物として重合体を用いる方法では、水酸基を有するモノマーを重合して水酸基を有する重合体(前駆体)を得て、その後、前駆体となる重合体の水酸基に化合物(6)を反応させて、[A]重合体を得る。
上述の水酸基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシルエチルフタル酸、ジプロピレングリコールメタクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート、グリセリンモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート、を挙げることができる。
[A]重合体の前駆体となる、水酸基を有する重合体は、上述の水酸基を有するモノマーのみを用いて得ることができるほか、上述の水酸基を有するモノマーと、水酸基を有するモノマー以外のモノマーとを共重合して得ることができる。水酸基を有するモノマー以外のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、不飽和芳香族化合物、共役ジエン、テ卜ラヒドロフラン骨格を含有する不飽和化合物、マレイミドおよびこれら以外のモノマー等を挙げることができる。
より具体的に説明すると、上述の(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステルとしては、例えば、メタクリルメチル、メタクリルエチル、メタクリル−n−ブチル、メタクリル−sec−ブチル、メタクリル−t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸n−ラウリル、メタクリル酸卜リデシル、メタクリル酸n−ステアリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸n−ラウリル、アクリル酸卜リデシル、アクリル酸n−ステアリル等が挙げられる。
また、上述の(メタ)アクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−メチルシクロヘキシル、メタクリル酸卜リシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、メタクリル酸イソボルニル、シクロヘキシルアクリレート、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、卜リシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルアクリレート、イソポルニルアクリレート等が挙げられる。
また、上述の(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジルが挙げられる。
また、上述の不飽和芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンが挙げられる。
また、上述の共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが挙げられる。
また、上述のテ卜ラヒドロフラン骨格を含有する不飽和化合物としては、例えば、テ卜ラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイルオキシ−プロピオン酸テ卜ラヒドロフルフリルエステル、3−(メタ)アクリロイルオキシテ卜ラヒドロフラン−2−オンが挙げられる。
また、上述のマレイミドとしては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−トリルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミドが挙げられる。
またそれ以外のモノマーとして、例えば、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル、アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル、3−(メタクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、メタクリル酸卜リシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシエチル、卜リシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシエチルアクリレートが挙げられる。
[A]重合体の前駆体となる、水酸基を有する重合体を合成するための重合反応に用いられる溶媒としては、例えば、アルコール、グリコールエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテー卜、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテー卜、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネー卜、ケトン、エステルが挙げられる。
[A]重合体の前駆体となる、水酸基を有する重合体を得るための重合反応においては、分子量を調整するために、分子量調整剤を使用できる。分子量調整剤としては、例えば、クロロホルム、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類;ジメチルキサン卜ゲンスルフィド、ジイソプロピルキサン卜ゲンジスルフィド等のキサン卜ゲン類;ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマーが挙げられる。
水酸基を有する重合体のゲルパーミエーションクロマ卜グラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)としては、1000〜30000が好ましく、5000〜20000がより好ましい。水酸基を有する重合体のMwを上述の範囲とすることで、[A]化合物としてそれを含有する感放射線性組成物の感度を高めることができる。
次に、水酸基を有する重合体の水酸基に化合物(6)を反応させ、[A]化合物を得る方法は、下記式(7)で示されるように、水酸基にビニルエーテル基を付加させることによって行うことができる。
そして、[A]化合物を得る方法は、公知の方法を参考にすることができ、例えば、特開2005−187609号公報に記載される方法を参考とすることができる。具体的には、水酸基を有する重合体の水酸基と化合物(6)のビニルエーテル基によってアセタール結合を生成して、付加物を形成する。
例えば、水酸基を有する重合体を適宜の有機溶媒中に溶解した後、重合体の有する水酸基に対して等モルまたは過剰量の化合物(6)を加え、得られた反応混合物を0℃から室温(25℃)程度の温度に冷却した後、上述の有機溶媒と同じ溶媒に溶解させた酸(例えば、シュウ酸溶液)を触媒として滴下し、滴下終了後、室温下で1時間〜24時間撹拌し、反応させる。反応終了後、有機溶剤を除去することにより、目的の[A]化合物を得ることができる。
(2)前駆体となる化合物としてモノマーを用いるこの方法では、水酸基を有するモノマーの水酸基に化合物(6)を反応させて付加物を得て、それらを重合させることで、[A]化合物を得る。このような[A]化合物を得る方法は、公知の方法を参考にすることができる。例えば、特開2005−187609号公報に記載されているように、水酸基を有するモノマーの水酸基とビニルエーテル化合物のビニルエーテル基によってアセタール結合を生成して、付加物を形成する。次いで、得られたモノマーを用いて、上述した水酸基を有する重合体の製造方法と同様にして、[A]化合物を得ることができる。
以上のようにして得られる[A]化合物の好ましい例としては、下記式(A−1)〜(A−13)で示される構成単位よりなる群から選ばれる少なくとも1つを有する重合体を挙げることができる。
[A]化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
[A]化合物は、重量平均分子量が2000以上であってもよい。
本明細書において、低分子化合物である[A]化合物とは、一分子中に水酸基を2以上持っているアルコール化合物を前駆体として、その化合物の水酸基に化合物(6)を反応させることで低分子化合物である[A]化合物が得られる。反応は上記の重合体の場合と同様にして行うことができる。前駆体の化合物の重量分子量が3000以下の化合物であることが好ましい。このような前駆体化合物としては、脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコールが挙げられる。具体的な化合物としては、グリセリン、グリコール、ヘキサメチレンジアルコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
低分子化合物である[A]化合物を得るための方法について説明する。低分子化合物である[A]化合物を得る方法は、公知の方法を参考にすることができる。例えば、特開2005−187609号公報に記載されているように、水酸基を有するモノマーの水酸基とビニルエーテル化合物のビニルエーテル基によってアセタール結合を生成して、付加物を形成することで、[A]化合物を得ることができる。
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、感放射線性樹脂組成物であってもよく、熱硬化性樹脂組成物であってもよい。本発明に係る硬化性樹脂組成物は、感放射線性樹脂組成物である場合は、以下に説明する[B]酸発生体が放射線(光)の作用により酸を発生する感放射線性酸発生体(Photo acid generator:PAG)を含む。また、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物である場合は、以下に説明する[B]酸発生体が加熱により酸を発生する感熱性酸発生体(Thermal acid generator:TAG)を含む。
([B]酸発生体)
[B]酸発生体は、少なくとも放射線の照射又は加熱によって酸を発生する化合物である。硬化性樹脂組成物が、[B]酸発生体を含有することで、[A]化合物から酸解離性基を脱離させることができる。
[B]酸発生体である感放射線性酸発生体としては、例えば、オキシムスルホネー卜化合物、オニウム塩、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物等が挙げられる。
感放射線性酸発生体は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
[オキシムスルホネー卜化合物]
上述のオキシムスルホネー卜化合物としては、下記式(7)で表されるオキシムスルホネー卜基を含む化合物が好ましい。
式(6)中、R11は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のフルオロアルキル基、炭素数4〜12の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20のアリール基、あるいはこれらのアルキル基、脂環式炭化水素基およびアリール基が有する水素原子の一部または全部が置換基で置換された基である。
上述のR11で表されるアルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。この炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキル基は置換基により置換されていてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜10のアルコキシ基、7,7−ジメチル−2−オキソノルボルニル基等の橋かけ環式脂環基を含む脂環式基等が挙げられる。炭素数1〜12のフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプチルフルオロプロピル基等が挙げられる。
上述のR11で表される炭素数4〜12の脂環式炭化水素基は置換基により置換されていてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
上述のR11で表される炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基が好ましい。上述のアリール基は置換基により置換されていてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
式(6)で表されるオキシムスルホネー卜基を含有する化合物としては、例えば、下記式(7−1)、下記式(7−2)、下記式(7−3)で表されるオキシムスルホネー卜化合物が挙げられる。
式(7−1)、式(7−2)および式(7−3)中、R11は、上述した式(7)と同義である。式(7−1)、式(7−2)および式(7−3)中、R15は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のフルオロアルキル基である。式(7−3)中、Xは、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子である。mは、0〜3の整数である。但し、Xが複数の場合、複数のXは同一であっても異なっていてもよい。
式(7−3)のXで表されるアルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。上述のXで表されるアルコキシ基としては、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルコキシ基が好ましい。上述のXで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子が好ましい。mとしては、0または1が好ましい。前記式(7−3)においては、mが1であり、Xがメチル基であり、Xの置換位置がオル卜位である化合物が特に好ましい。
式(7−3)で表されるオキシムスルホネー卜化合物としては、例えば、下記式(7−3−1)〜(7−3−5)で表される化合物等が挙げられる。
式(7−3−1)〜式(7−3−5)で表される化合物は、それぞれ(5−プロピルスルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセ卜二トリル、(5−オクチルスルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセ卜ニトリル、(カンファースルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセ卜ニトリル、(5−p−卜ルエンスルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセ卜二トリル、(5−オクチルスルフォニルオキシイミノ)−(4−メトキシフェニル)アセ卜ニトリルであり、市販品として入手できる。
[オニウム塩]
感放射線性酸発生体として好ましいオニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム塩、卜リフェニルスルホニウム塩、アルキルスルホニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ジベンジルスルホニウム塩、置換ベンジルスルホニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、テ卜ラヒドロチオフェニウム塩が挙げられる。
上述した卜リフェニルスルホニウム塩としては、例えば、卜リフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナー卜、卜リフェニルスルホニウムカンファースルホン酸、卜リフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、卜リフェニルスルホニウムトリフルオロアセテー卜、卜リフェニルスルホニウム−p−卜ルエンスルホナー卜、卜リフェニルスルホニウムブチル卜リス(2、6−ジフルオロフェニル)ポレートが挙げられる。
[スルホンイミド化合物]
感放射線性酸発生体として好ましいスルホンイミド化合物としては、例えば、N−(卜リフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4ーメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−卜リフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(卜リフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−卜リフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド等が挙げられる。
感放射線性酸発生体としては、オキシムスルホネー卜化合物、オニウム塩、スルホン酸エステル化合物が好ましく、オキシムスルホネー卜化合物がより好ましい。上述したオキシムスルホネー卜化合物としては、式(7−3−1)〜(7−3−5)で表されるオキシムスルホネー卜基を含む化合物が好ましく、式(7−3−5)で表される化合物がより好ましい。
また、上述したオニウム塩としては、テ卜ラヒドロチオフェニウム塩、ベンジルスルホニウム塩が好ましく、4,7−ジ−n−ブトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネー卜、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェー卜がより好ましく、4,7−ジ−n−ブトキシ−1−ナフチルテ卜ラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネー卜がさらに好ましい。上述したスルホン酸エステル化合物としては、ハロアルキルスルホン酸エステルが好ましく、N−ヒドロキシナフタルイミド−卜リフルオロメタンスルホン酸エステルがより好ましい。[B]酸発生体を上述の化合物とすることで、本実施形態の感放射線性組成物は感度を向上させることができ、さらに溶解性を向上させることができる。
[B]酸発生体である感熱性酸発生体としては、例えば、トリフェニルスルフォニウム アンチモネート等が挙げられる。
[B]酸発生体の含有量としては、[A]化合物100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、1質量部〜5質量部がより好ましい[B]酸発生体の含有量を上述の範囲とすることで、感放射線性組成物の感度を最適化できるため、上述した工程(i)〜(vi)を経ることで高解像度な凹パターンを形成できる。
([C]溶剤)
[C]溶剤としては特に限定されないが、[A]化合物のほか、[B]酸発生体および後述する[F]重合性化合物等の各成分を均一に溶解または分散することができる溶剤が好ましい。
好適な[C]溶剤としては、アルコール系溶剤、エーテル類、ジエチレングリコールアルキルエーテル類、エチレングリコールアルキルエーテルアセテー卜類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテー卜類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類およびエステル類等を挙げることができる。具体例としては、WO2014/178279等に記載の溶剤を使用することができる。
以上で挙げた[C]溶剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
溶剤の使用量は、硬化性樹脂組成物の溶剤を除く成分100質量部に対して、好ましくは200質量部〜1600質量部、より好ましくは400質量部〜1000質量部である。溶剤の使用量を上述の範囲内とすることによって、硬化性樹脂組成物のガラス基板等に対する塗布性を向上し、さらに塗布ムラ(筋状ムラ、ピン跡ムラ、モヤムラ等)の発生を抑制し、膜厚均一性の向上した塗膜を得ることができる。
([D]増感剤)
本発明の実施形態の硬化性樹脂組成物は、[D]増感剤を含有することができる。
本発明の実施形態の硬化性樹脂組成物が、[D]増感剤をさらに含有することで、その組成物の放射線感度をより向上することができる。[D]増感剤は、活性光線または放射線を吸収して電子励起状態となる化合物であることが好ましい。電子励起状態となった[D]増感剤は、[C]酸発生体と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱等が生じ、これにより[C]酸発生体は化学変化を起こして分解し酸を生成する。増感剤の具体例としては、WO2014/178279等に記載の感放射線性重合開始剤を使用することができる。
([E]クエンチャー)
本発明の実施形態の硬化性樹脂組成物は、上述した[A]酸解離性基を有する化合物[B]酸発生体、[D]増感剤のほか、[E]クエンチャーを含有することができる。
[E]クエンチャーは、酸発生体からの酸の拡散を防止する酸拡散抑制材として機能する。感放射線性樹脂組成物における[E]クエンチャーとしては、アミン化合物や露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることができる。光崩壊性塩基は、露光部においては酸を発生する一方、未露光部ではアニオンによる高い酸捕捉機能が発揮されて、酸発生体からの酸を補足し、露光部から未露光部拡散する酸を失活させる。すなわち、未露光部のみにおいて酸を失活させるため、保護基の脱離反応のコントラストが向上し、結果として解像性をより向上させることができる。光崩壊性塩基の一例として、露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物がある。このようなクエンチャーのとしては、特開2011−232632号公報に記載の酸拡散制御剤を用いることができる。
[E]クエンチャーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合してイ吏用してもよい。
[E]クエンチャーの含有量としては、[A]化合物100質量部に対して、0.001質量部〜5質量部が好ましく、0.005質量部〜3質量部がより好ましい。[D]増感剤の含有量を上述の範囲とすることで、感放射線性組成物の反応性を最適化できる。
([F]重合性化合物)
硬化性樹脂組成物は、[F]重合性化合物を含有することで、硬化性樹脂組成物の硬化を行うことができる。
[F]重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物である。但し、[A]化合物以外の化合物である。
このような[F]重合性化合物としては、重合性が良好であり、硬化性樹脂組成物から得られる膜の強度が向上するという観点から、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。WO2014/178279等に記載の重合性化合物を使用することができる。
これらの[F]重合性化合物のうち、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、卜リメチロールプロパン卜リアクリレート、ペンタエリスリトール卜リアクリレート、ペンタエリスリトールテ卜ラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトール卜リアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、多官能ウレタンアクリレート系化合物を含有する市販品等が好ましい。中でも、3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物が特に好ましい。
[F]重合性化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。[F]重合性化合物の使用量は、[A]化合物100質量部に対して、1質量部〜300質量部が好ましく、3質量部〜200質量部がより好ましく、5質量部〜100質量部がさらに好ましい。[F]重合性化合物の使用量を上述の範囲内とすることで、感硬化性樹脂組成物から得られる塗膜の高度を高め、耐熱性をより良好とすることができる。
([G]感放射線性重合開始剤)
[G]感放射線性重合開始剤は、放射線の照射を受けて、[F]重合性化合物の重合を促進する化合物である。したがって、感放射線性組成物が[F]重合性化合物を含有する場合、[G]感放射線性重合開始剤を用いることが好ましい。
[G]感放射線性重合開始剤としては、O−アシルオキシム化合物、アセ卜フェノン化合物、ビイミダゾール化合物等を挙げることができる。このような感放射線性重合開始剤の具体例としては、WO2014/178279等に記載の感放射線性重合開始剤を使用することができる。
感放射線性組成物は、[G]感放射線性重合開始剤を含有する場合、O−アシルオキシム化合物およびアセ卜フェノン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、さらにビイミダゾール化合物を含有してもよい。
[G]感放射線性重合開始剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
[G]感放射線性重合開始剤の使用量は、[A]化合物100質量部に対して、好ましくは0.05質量部〜30質量部、より好ましくは0.1質量部〜15質量部である。[G]感放射線性重合開始剤の使用量を上述の範囲内とすることによって、感放射線性組成物は、低露光量でも、高い放射線感度で塗膜の硬化を行うことができる。
(その他の任意成分)
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、さらに、本発明の効果を損なわない限りその他の任意成分を含有することができる。
その他の任意成分としては、界面活性剤、保存安定剤、接着助剤、耐熱性向上剤等を挙げることができる。
その他の任意成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
上記の組成を有する本発明の一実施形態に係る感放射線性樹脂組成物は、放射線が照射された部分又は加熱された部分が硬化し、ネガ型のレジストに類似した特性を有する。
(硬化性樹脂組成物を利用した塗膜パターンの形成)
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、例えば、感放射線性酸発生体を含む感放射線性樹脂組成物とすることにより、脱保護前には撥液性を有し、放射線照射により脱保護され、溶剤に対して不溶性となる特性を利用して、例えば、高精細な印刷による配線形成を実現することができる。
一実施形態において、本発明に係る配線の形成方法は、以下の(1)から(4)の工程を含む。
(1)本実施形態に係る感放射線性樹脂組成物を基材の上に塗布し、第1の塗膜を形成する工程
(2)(1)の工程で得られた第1の塗膜に放射線を照射する工程
(3)(2)の工程で得られた第1の塗膜の放射線照射部に第2の塗膜を形成する工程
(4)第1の塗膜の放射線未照射部を除去する工程
上述の(1)〜(2)の工程(以下、工程(1)〜工程(2)ともいう。)を用いることにより、凹パターンを形成した基材を製造することができる。また、(3)〜(4)の工程(以下、工程(3)〜工程(4)ともいう。)を用いることにより、その凹パターンを利用して形成した配線を有する基材を製造することができる。
以下、本発明の実施形態の凹パターンを有する基材の製造方法が有する各工程について説明する。
[工程(1)]
図1(a)〜(c)は、基板上に形成された本発明の実施形態の感放射線性組成物の第1の塗膜を模式的に示す図である。
工程(1)は、基板上に酸解離性基を有する化合物および酸発生剤を含む組成物(以下、「感放射線性組成物」ともいう。)を塗布した後、好ましくは塗布面を加熱(プレベーク)することにより、基板10上に第1の塗膜2を形成する工程である(図1(a))。
工程(1)において、感放射線性組成物を用いることにより、下記工程(2)において露光するだけで、基板10上に凹部3bを形成することができる。尚、感放射線性組成物については、以下で具体的に説明する。
使用できる基板10の材質としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、樹脂等を挙げることができる。樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネー卜、ポリイミド、環状オレフィンの開環重合体(ROMPポリマー)およびその水素添加物が挙げられる。
また、基板10としては、本発明に係る配線の製造方法で最終的に得られる配線付基板をそのまま電子回路等に用いることが好ましいことから、従来、電子回路に用いられてきた、樹脂製基板、ガラス基板、半導体基板が好ましい。
尚、基板10に感放射線性組成物を塗布する前に、必要に応じて基板表面を洗浄、粗面化、微少な凹凸面の付与等の前処理を施しておいてもよい。
感放射線性組成物の塗布方法としては特に限定されず、はけやブラシを用いた塗布法、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリッ卜ダイ塗布法、バー塗布法、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジ、エツ卜印刷、ディスペンス法等の適宜の方法を採用することができる。これらの塗布方法の中でも、特にスリッ卜ダイ塗布法またはスピンコート法が好ましい。
工程(1)で形成される塗膜2の厚みは、所望の用途に応じ適宜調整すればよいが、好ましくは0.1μm〜20μm、より好ましくは0.2μm〜18μmである。
プレベークの条件は、用いる感放射線性組成物の組成等によっても異なるが、好ましくは60℃〜120℃で1分間〜10分間程度である。
[工程(2)]
工程(2)は、工程(1)で形成した第1の塗膜2の少なくとも一部に放射線を照射して露光を行う。
図1(b)は、基板上の本発明の実施形態の樹脂組成物の塗膜の露光を模式的に説明する断面図である。
工程(2)では、図1(b)に示すように、基板10上の第1の塗膜2の一部に放射線が照射され、第1の塗膜2の放射線未照射部には溶剤可溶部2aと放射線照射部には溶剤不溶部2bとが形成される。
工程(2)では、形成したい第2の塗膜の形状と同様の形状の放射線照射部が形成されるように、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、または直描式露光装置を用いて所定のパターンを描画露光することができる。
露光に使用される放射線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線、荷電粒子線、X線等を使用できる。これらの放射線の中でも、波長が190nm〜450nmの範囲にある放射線が好ましく、特に365nmの紫外線を含む放射線が好ましい。
工程(2)における露光量は、得られる凹部3bの膜厚が、下記範囲となるように放射線を露光することが好ましく、具体的には、放射線の波長365nmにおける強度を照度計(OAI model356、OAI Optical Associates Inc.製)により測定した値として、好ましくは10mJ/cm2〜1000mJ/cm2、より好ましくは20mJ/cm2〜500mJ/cm2である。
[加熱工程]
図1(c)は、一部が露光された感放射線性組成物の第1の塗膜2の加熱を模式的に説明する図である。
加熱工程では、工程(2)で得られた塗膜2を加熱することで、工程(2)の溶剤不溶部2bであった部分に相当する凹部3bと、工程(2)の溶剤可溶部2aであった部分に相当する凸部3aとを有する第1の塗膜2を形成する。
加熱工程により、放射線照射部における凹状のくぼみが更に深化し(凹部3bの膜厚が更に薄くなり)、凹部3bの膜厚が凸部3aの膜厚に対して10%以上薄い形状の塗膜を形成することができる。
工程(1)において、基板上に、撥液性の凸部3aと、凸部3aより親液性の凹部3bとを有する塗膜2が形成される。そして、このような塗膜2上に液状の膜形成材料を塗布すると、凸部3aと凹部3bの膜厚差が大きいため、塗膜表面の凹凸により凹部3b上に液状の膜形成材料が集まりやすくなるが、この塗膜表面形状の効果だけではなく、塗膜2の表面の親液・撥液性により、凹部3b上に膜形成材料が集まりやすくなり、より所望の形状の、具体的には微細なパターンを有する配線を形成しやすくなる。
加熱工程における塗膜2を加熱する方法としては、例えば、該塗膜付基板を、ホットプレート、バッチ式オーブンまたはコンベア式オーブンを用いて加熱する方法、ドライヤー等を用いて熱風乾燥する方法、真空ベークする方法が挙げられる。
加熱の条件は、工程(1)で用いる感放射線性組成物の組成や、工程(2)で得られた第1の塗膜の厚み等によっても異なるが、好ましくは60℃〜150℃で3分間〜30分間程度である。
加熱工程では、凹部3bの膜厚が凸部3aの膜厚に対して、好ましくは2%以上薄い、より好ましくは2%〜40%薄い、さらに好ましくは10%〜30%薄い形状の塗膜を形成することが望ましい。得られる塗膜がこのような形状を有していると、凹部3bに膜形成材料を塗布する際に、塗膜表面の凹凸の段差により、凹部3bから該材料が溢れ出にくく、また、凹部3b以外の箇所に該材料が残りにくくなるため、多量の膜形成材料を塗布することができ、例えば、多量の配線材料を用いても微細なパターンを有する配線を得ることができる。
凹部3bおよび凸部3aの膜厚は、具体的には、接触式膜厚計で測定することができる。
尚、加熱工程で得られる凹部3bの膜厚は、所望の用途に応じ適宜調整すればよいが、好ましくは0.01μm〜18μm、より好ましくは0.05μm〜15μmである。
凹部3b表面と凸部3a表面のテトラデカンに対する接触角差(凸部3a表面の接触角−凹部3b表面の接触角)は、好ましくは30°以上であり、より好ましくは40°以上、さらに好ましくは50°以上である。接触角差が前記範囲にあることにより、下記工程(3)において、凸部3a表面にも液状の膜形成材料を塗布した場合であっても、撥液部である凸部3aにおいて、液状の膜形成材料をはじき、親液部である凹部3bに液状の膜形成材料が移動しやすくなることにより、凹部3bに沿った配線の形成が可能となる。
凹部3b表面と凸部3a表面のテトラデカンに対する接触角差は、具体的には、接触角計を用いて測定することができる。尚、凹部3b表面および凸部3a表面とは、それぞれ図1(c)で示すように、基板10上に形成された塗膜の、基板10に接する側とは反対側の表面のことをいう。
得られる凹部3bと凸部3aが、凹部3bの膜厚が凸部3aの膜厚に対して10%以上薄く、かつ、凹部3b表面と凸部3a表面のテトラデカンに対する接触角差が30°以上という条件を満たすと、前記と同様の理由から、多量の膜形成材料を凹部3b上のみに容易に塗布することが可能となる。
〔凹部上に第2の塗膜を形成する方法〕
本発明に係る製造方法は、加熱工程で得られた凹部3b上に第2の塗膜を形成する方法を含む。
[工程(3)]
図2(a)は、本発明の実施形態の膜形成方法における膜形成材料の第2の塗膜を模式的に説明する図である。
工程(3)では、凹部3b上に膜形成材料4を塗布する。尚、膜形成材料4については、以下で具体的に説明する。
第2の塗膜の形成方法としては、特に限定されず、例えば、はけやブラシを用いた塗布法、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、スキージ法、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、ディスペンス法等の適宜の方法を採用することができる。この中でも特にディッピング法、スプレー法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、オフセット印刷法、インクジェット印刷、ディスペンス法が好ましい。
また、例えば、微細で厚みがあり、低抵抗で断線しにくい配線を形成する観点からは、オフセット印刷が好ましい。オフセット印刷は、例えば、特開2010−159350号公報、特開2011−178006号公報の記載に基づいて行うことができる。
加熱工程で得られた第1の塗膜2は、撥液性の凸部3aとそれより親液性の凹部3bとを有するため、液状の膜形成材料4を用いる場合には、前記いずれの方法を用いても、凸部3aでは該材料がはじかれ、凹部3bに集まりやすいため、凹部3bに沿って膜形成材料4が塗布された状態となる。
[第2の塗膜の固化工程]
第2の塗膜の固化工程では、工程(iv)で得られた膜形成材料付基板を加熱する。
図2(b)は、基板上に形成された本発明の実施形態のパターンを模式的に示す図である。
この固化工程により、第2の塗膜5が形成される。
加熱の温度としては特に限定されないが、190℃以下が好ましい。また、基板10として、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に乏しいフィルムを用いる場合には、該フィルムの耐熱温度以下、具体的には150℃以下が好ましい。
また、加熱時間も特に制限されないが、1分間〜120分間が好ましく、3分間〜60分間がより好ましい。
前記加熱の方法としては、例えば、ホットプレート、バッチ式オーブンまたはコンベア式オーブンを用いて加熱する方法、ドライヤー等を用いて熱風乾燥する方法、真空ベークする方法が挙げられる。
[工程(4)]
工程(4)では、工程(3)で得られた膜形成材料付基板を現像する。
図2(c)は、基板上に形成された本発明の実施形態のパターンを模式的に示す図である。
工程(4)により、溶剤可溶部2aを選択的に除去する。これにより、溶剤不溶部2b上に第2の塗膜5のパターンが形成される。
上記現像液としては、例えば、アルカリ現像液、有機溶媒を含有する現像液等が挙げられる。現像液は、形成するパターン形状に応じて選択することができる。マスクパターンを露光により塗膜2上に投影した時に、光照射強度の強い領域をアルカリ性の水溶液で現像することにより、所定の閾値以上の露光部が溶解・除去されることによって溶剤不溶部2bのパターンを形成することができる。つまり、親撥材を含む塗膜2は、マスクパターンを露光により塗膜2上に投影した時に光照射強度の弱い領域を、有機溶媒を含有する溶剤で現像することにより、所定の閾値以下の露光部が溶解・除去されることによって溶剤不溶部2bのパターンを形成することができる。
上記アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ性水溶液等が挙げられる。
上記有機溶媒を含有する現像液に含有される有機溶媒としては、例えば、上述の感放射線性樹脂組成物の溶媒として列挙した溶媒の1種又は2種以上等が挙げられる。これらの中でも、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましい。エーテル系溶媒としては、芳香族含有エーテル系溶媒が好ましく、アニソールがより好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n−ブチルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトン系溶媒が好ましく、2−ヘプタノンがより好ましい。
現像液中の有機溶媒の含有量としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。現像液中の有機溶媒の含有量を上記範囲とすることで、露光部と未露光部とのコントラストを向上させることができる。
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。界面活性剤としては例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
現像方法としては、例えば現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
上記現像後は、水、アルコール等のリンス液を用いてリンスした後、乾燥することが好ましい。上記リンスの方法としては、例えば一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
〔導電性パターンの形成方法〕
本発明においては、本発明の実施形態である感放射線性樹脂組成物を用い、膜形成材料として導電膜形成インクや導電膜形成ペーストを用いることにより、上述した本発明の実施形態の膜形成方法と同様の方法で、本発明の導電膜を形成することができる。すなわち、上述した本発明の凹パターンを有する基材を用い、その凹パターン上に導電膜形成インクを塗布する方法、および、凹パターン上で導電膜形成を行う方法を実施することにより、本発明の導電膜として、本発明の導電性パターンを形成することができる。
また、本実施形態の感放射線性組成物の膜上で形成された本実施形態の導電性パターンにおいては、導通性および密着性等の特性にも優れ、高精細な配線や電極の形成に有効となる。
そして、本実施形態の導電性パターン等のパターンは、本発明の実施形態の電子回路の形成に好適に用いることができる。
〔電子回路および電子デバイス〕
本発明の電子回路は、前記導電性パターンの形成方法によって製造された配線を有し、好ましくは、導電性パターンの形成方法によって製造された配線と基板との積層体を有する。
また、本発明の電子デバイスは、電子回路を有する。このため、小型化、薄型化、高機能化された電子デバイスとなる。
電子デバイスとしては、例えば、液晶ディスプレイ、携帯電話等の携帯情報機器、デジタルカメラ、有機ディスプレイ、有機EL照明、各種センサーやウェアラブルデバイスが挙げられる。
〔電子デバイス〕
図3を用いて、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタの構成について詳細に説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を説明する断面図である。本実施形態においては、半導体層に対して上方にソース電極14b、ドレイン電極14c及びゲート電極14aが設けられる所謂プレーナ型の薄膜トランジスタについて説明する。
図3に示すように、本実施形態に係る薄膜トランジスタは、基板10上に設けられた半導体層12と、半導体層上に設けられたソース電極14b及びドレイン電極14cと、半導体層12とソース電極14bとドレイン電極14cとを覆うように設けられた絶縁層13と、絶縁層13上に設けられたゲート電極14aとを具備する。本実施形態に係る薄膜トランジスタにおいては、ゲート電極14aが親撥材から成る絶縁層13上に位置し、それに埋め込まれるように設けられている。このためにゲート電極14aによる凹凸を抑え、平坦性の高い薄膜トランジスタとなっている。また、図3に示すように、本実施形態においては、半導体層12上に薄膜トランジスタ1aと薄膜トランジスタ1bが分離した素子として配置される。
図4及び図5を用いて、本発明の第2実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法について詳細に説明する。図4及び図5は、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。本実施形態においては、まず、基板10の第一面上に下地膜となる絶縁層11を形成し、絶縁層11上に半導体層12を形成する(図3(a))。
使用できる基板10の材質としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、樹脂等を挙げることができる。樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、環状オレフィンの開環重合体(ROMPポリマー)およびその水素添加物が挙げられる。
また、基板10としては、感放射線性組成物上に形成する配線の製造方法で最終的に得られる配線付基板をそのまま電子回路等に用いることが好ましいことから、従来電子回路に用いられてきた、樹脂製基板、ガラス基板、半導体基板が好ましい。
尚、基板10に親撥材を形成する前に、必要に応じて基板表面を洗浄、粗面化、微少な凹凸面の付与等の前処理を施しておいてもよい。
基板10上に第一の絶縁層11を形成する。第一の絶縁層11の材料は特に限定されるものではないが、具体的には、SiO2、SiN、SiON、Al2O3などの無機系材料や、フッ素樹脂、ポリエステル/メラミン樹脂系、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)などの有機系材料などを用いることができる。第一の絶縁層11の形成方法として、例えば、スピンコート法、凸版印刷法、インクジェット法、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
第一の絶縁層11上に半導体層12を形成する。半導体層12としては、アモルファスシリコンまたは多結晶シリコンを用いることができる。また、半導体層12としては、酸化物半導体を用いてもよい。具体的には、InGaZnO系、InZnO系、InO系、GaO系、SnO系、あるいはそれらの混合物の酸化物半導体を用いることができる。あるいは、ガリウム砒素(GaAs)等の無機半導体や、ポリチオフェンやポリアリルアミン及びそれらの誘導体のような高分子有機半導体や、ペンタセンやテトラセンおよびそれらの誘導体のような低分子有機半導体を用いることができる。半導体層12の形成方法として、酸化物半導体では、スパッタリング法、真空蒸着法、レーザアブレーション法等を用いることができ、有機半導体では、インクジェットを用いることができる。
次に、半導体層12上にソース電極14b及びドレイン電極14cを形成する(図4(b))。本実施形態においては、フォトリソグラフィ技術を用いてソース電極14b及びドレイン電極14cを形成する。図示はしないが、先ず、基板10上に、導電膜を形成する。導電膜の形成には、スパッタ法、真空蒸着法、パルスレーザ堆積法、イオンプレーティング法、有機金属気相成長法などに代表される薄膜堆積法を用いることができる。次いで、導電膜上にフォトレジストを形成する。次いで、フォトレジストをマスクとして、導電膜を選択的にエッチングすることによりソース電極14b及びドレイン電極14cを形成する。また、フォトレジストは、ソース電極14b及びドレイン電極14cの形成後に除去する。
次に、半導体層12とソース電極14bとドレイン電極14cとを覆うように、親撥材からなり、ゲート絶縁膜として機能する第二の絶縁層13を形成する(図4(c))。親撥材は感放射線性組成物から成る溶液を基板に塗布することで形成される。感放射線性組成物から成る溶液の塗布方法としては特に限定されず、はけやブラシを用いた塗布法、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、ディスペンス法等の適宜の方法を採用することができる。これらの塗布方法の中でも、特にスリットダイ塗布法またはスピンコート法が好ましい。
感放射線性組成物の塗布によって形成される親撥材の厚みは、所望の用途に応じ適宜調整すればよいが、好ましくは0.1μm〜20μm、より好ましくは0.2μm〜10μmである。
感放射線性組成物の塗布後にプリベークを行ってもよい。プレベークの条件は、用いる感放射線性組成物の組成等によっても異なるが、好ましくは60℃〜120℃で1分間〜10分間程度である。
次に、第二の絶縁層13上のゲート電極を形成する領域(以下、ゲート電極形成領域と呼ぶ。)にゲート電極14aを形成するが、本実施形態においては、塗布法を用いる。具体的には、第二の絶縁層13上のゲート電極形成領域に特定波長のエネルギーを照射してゲート電極形成領域を親液性にするとともに凹部を形成する。図5(a)に示すように、基板10上に形成された親撥材の所定の領域にエネルギーが照射され、放射線照射部13bと放射線未照射部13aとを有する塗膜が形成される。
図5(a)の工程により、放射線照射部13bの膜厚が放射線未照射部13aの膜厚に比べ薄くなり、凹部が形成される。このとき、フッ素原子を有していれば、図5(a)の工程で得られた放射線未照射部13aは撥液性を示すが、放射線照射部13bはフッ素原子を有する基の脱離によって撥液性を失い、放射線未照射部13aに比べ親液性となる。
したがって、図5(a)の工程において、フッ素原子を有する基を含有する化合物を含む組成物を用いると、この工程により、基板上に、撥液性の放射線未照射部13aと、放射線未照射部13aより親液性の凹部である放射線照射部13bとを有する塗膜が形成される。
図5(a)の工程では、形成したい形状のゲート電極14aが形成されるように、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、または直描式露光装置を用いて所定のパターンを描画露光することができる。
本発明において、露光に使用される放射線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線、荷電粒子線、X線等を使用できる。これらの放射線の中でも、波長が190nm〜450nmの範囲にある放射線が好ましく、特に365nmの紫外線を含む放射線が好ましい。
図5(a)の工程における露光量は、凹部の膜厚が、下記範囲となるように放射線を露光することが好ましく、具体的には、放射線の波長365nmにおける強度を照度計(OAI model356、OAI Optical Associates Inc.製)により測定した値として、好ましくは10mJ/cm2〜1000mJ/cm2、より好ましくは20mJ/cm2〜500mJ/cm2である。
第二の絶縁層13における凹部の膜厚は、親撥材の組成にも依るが、第一の絶縁層11の凹部以外の領域の膜厚に比べて5%〜30%程度薄くなる。本実施形態においては第一の絶縁層11の膜厚に比べて10%〜30%程度薄い。
図示はしないが、第二の絶縁層13のパターニング後にポストベークを行ってもよい。ポストベークの条件は、用いる親撥材の組成等によっても異なるが、好ましくは60℃〜120℃で1分間〜10分間程度である。ポストベークにより、放射線照射部13bにおいて生じた脱離した基を更に揮発させることができる。その結果、放射線照射部13bにおける凹状のくぼみが更に深化し(凹部の膜厚が更に薄くなり)、凹部の膜厚が凹部以外の領域の膜厚に対して10%以上薄い形状の塗膜を形成することができる。
親撥材として、フッ素原子を有する基を含有する化合物を含む組成物を用いると、更にポストベークを組み合わせることにより、基板上に、撥液性の領域と、撥液性の領域より親液性の、更に深化した凹部とを有する塗膜が形成される。そして、このような塗膜上に液状の膜形成材料を塗布すると、放射線未照射部13aと放射線照射部13bの膜厚差が大きいため、塗膜表面の凹凸により凹部に液状の膜形成材料が集まりやすくなるが、この塗膜表面形状の効果だけではなく、塗膜表面の親液・撥液性により、凹部上に膜形成材料が集まりやすくなり、より所望の形状の、具体的には微細なパターンを有する配線を形成しやすくなる。
また、親撥材において、フッ素原子を有する基を含有する化合物を含む組成物を用いると、エネルギー照射により、フッ素原子を有する基が脱離することなる。更に、この脱離基は比較的揮発し易いため、ポストベークにおいて、より簡便に、凹部とそれ以外の領域の膜厚差の大きい塗膜を形成することができる。
ポストベークにおける塗膜を加熱する方法としては、例えば、該塗膜付基板を、ホットプレート、バッチ式オーブンまたはコンベア式オーブンを用いて加熱する方法、ドライヤー等を用いて熱風乾燥する方法、真空ベークする方法が挙げられる。
加熱の条件は、親撥材の組成や、塗膜の厚み等によっても異なるが、好ましくは60℃〜150℃で3分間〜30分間程度である。ポストベークでは、凹部の膜厚がそれ以外の領域の膜厚に対して、好ましくは2%以上薄い、より好ましくは2%〜40%薄い、さらに好ましくは10%〜30%薄い形状の塗膜を形成することが望ましい。得られる塗膜がこのような形状を有していると、凹部に膜形成材料を塗布する際に、塗膜表面の凹凸の段差により、凹部から該材料が溢れ出にくく、また、凹部以外の箇所に該材料が残りにくくなるため、多量の膜形成材料を塗布することができる。よって、凹部のくぼみの分だけ厚く形成できるために低抵抗の配線を得ることができ、更に、多量の配線材料を用いても直線性に優れ、微細なパターンを有する配線を得ることができる。
尚、ポストベークで得られる凹部の膜厚は、所望の用途に応じ適宜調整すればよいが、好ましくは0.01μm〜18μm、より好ましくは0.05μm〜15μmである。
ゲート電極14aを形成した後に、基板のゲート電極14a側より特定波長のエネルギーを照射して第二の絶縁層13の放射線未照射部13aの所定の領域を親液性にする(図5(b))。その後、有機溶剤を含む液で親液性の領域を除去することにより、分離溝15を形成することができる(図5(c))。本実施形態においては、半導体層12上に配置された薄膜トランジスタ1aと薄膜トランジスタ1bを、分離溝15により分離した素子とすることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態による親撥材を用いた薄膜トランジスタ及びその製造方法について説明した。しかし、これらは単なる例示に過ぎず、本発明の技術的範囲はそれらには限定されない。実際、当業者であれば、特許請求の範囲において請求されている本発明の要旨を逸脱することなく、種々の変更が可能であろう。よって、それらの変更も当然に、本発明の技術的範囲に属すると解されるべきである。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。各物性値の測定方法を以下に示す。
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりMw及びMnを測定した。また、分子量分布(Mw/Mn)は得られたMw及びMnより算出した。
装置:昭和電工社のGPC−101
GPCカラム:島津ジーエルシー社のGPC−KF−801、GPC−KF−802、GPC−KF−803及びGPC−KF−804を結合
移動相:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
<化合物の合成>
(合成例1)
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)8質量部、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン 2質量部、および、ジエチレングリコールジメチルエーテル 200質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸2−ヒドロキシエチル 56質量部、N-シクロヘキシルマレイミド 28質量部、およびスチレン 16質量部をフラスコに仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、反応溶液を緩やかに攪拌しつつ、反応溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を4時間保持して重合することにより、共重合体である重合体(A−101)を含有する溶液を得た。得られた溶液を大過剰のヘキサンに滴下し、沈殿物を乾燥させることで白色固体状の重合体(A−101)を得た(Mw=20500、Mw/Mn=2.0)。
次いで、重合体(A−101) 10質量部をテトラヒドロフラン 26質量部に溶かし、1-ビニルオキシブタン 3.5質量部を加え、十分に攪拌した後にトリフルオロ酢酸 0.43質量部を加え、窒素雰囲気下、60℃で8時間反応させた。続いて反応溶液を室温まで冷却し、ピリジン 0.6質量部を加え反応をクエンチした。得られた反応溶液を過剰量のメタノールに滴下することにより再沈殿精製を行った。続いて沈殿物を20質量部のテトラヒドロフランに再度溶解させた後、ヘキサンに滴下することにより再沈殿精製を行った。沈殿物を乾燥させることで白色固形状の共重合体として[A]重合体(P−1) 10.9質量部を得た。得られた[A]重合体(P−1)について1H−NMRを用いて分析を行い、アセタール化が進行していることを確認した(化学シフト:5.40ppm、アセタール基C−H)。
(合成例2)
合成例1における1−ビニルオキシブタンを、1−ビニルオキシ−3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクタンに変更した以外は合成例1と同様に行った。得られた[A]重合体(P−2)について1H−NMRを用いて分析を行い、アセタール化が進行していることを確認した(化学シフト:4.20ppm、アセタール基C−H)。
(比較合成例1)
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート) 8質量部、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン 2質量部、および、ジエチレングリコールジメチルエーテル 200質量部を仕込んだ。引き続きp−ヒドロキシスチレン 56質量部、N-シクロヘキシルマレイミド 28質量部、およびスチレン 16質量部を仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、反応溶液を緩やかに攪拌しつつ、反応溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を4時間保持して重合することにより、共重合体である重合体(A−101)を含有する溶液を得た。得られた溶液を大過剰のヘキサンに滴下し、沈殿物を乾燥させることで白色固体状の重合体(A−102)を得た(Mw=21000、Mw/Mn=2.0)。
次いで、重合体(A−102) 10質量部をテトラヒドロフラン 26質量部に溶かし、1−ビニルオキシ−3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクタン 4.0質量部を加えた。反応溶液を十分に攪拌した後にトリフルオロ酢酸 0.43質量部を加え、窒素雰囲気下、60℃で8時間反応させた。続いて反応溶液を室温まで冷却し、ピリジン 0.6質量部を加え反応をクエンチした。得られた反応溶液を過剰量のメタノールに滴下することにより再沈殿精製を行った。続いて沈殿物を20質量部のテトラヒドロフランに溶再度解させた後、ヘキサンに滴下することにより再沈殿精製を行った。沈殿物を乾燥させることで白色固形状の共重合体として[A]重合体(P−3) 12.5質量部を得た。得られた[A]重合体(P−3)について1H−NMRを用いて分析を行い、アセタール化が進行していることを確認した(化学シフト:5.40ppm、アセタール基C−H)。
<感放射線性樹脂組成物の調製>
実施例および比較例で用いた各成分の詳細を以下に示す。
<[A]重合体および比較合成例1で得られた重合体>
P−1:合成例1参照
P−2:合成例2参照
P−3:比較合成例1参照
<[C]酸発生剤>
C−1:N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンスルホン酸エステル
C−2:(5−オクチルスルフォニルオキシイミノ)−(4−メトキシフェニル)アセ卜ニトリル (CGI725 BASF社製)
E−1:4−ジメチルアミノピリジン
(実施例1〜2および比較例1)
表1に示す種類、含有量の各成分を混合し、固形分濃度が30質量%となるように、それぞれ[B]溶剤として、ジエチレングリコールジメチルエーテルまたはトルエンを加えた。その後、孔径0.5μmのミリポアフィルタでろ過することにより、各感放射線性樹脂組成物を調製した。尚、表1中の「−」は該当する成分を使用しなかったことを表す。
<膜評価>
実施例1〜2および比較例1で調製した各感放射線性樹脂組成物を用いて膜形成を行い、以下の評価を実施した。結果を表2に示す。
[パターニング性能の確認]
無アルカリガラス基板上に、実施例1〜実施例2、比較例1で調製した感放射線性樹脂組成物をスピンナーにより塗布した後、90℃のホットプレート上で2分間プレベークすることにより塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜にマスクを介して高圧水銀ランプを用いて露光量を250 mJ/cm2として放射線照射を行った。その後、酢酸ブチルを主成分とする有機溶剤で60秒間現像を行った。その後、さらにオーブン中130℃で60分ポストベークすることにより、露光部分が硬化したパターンが形成された。
一方、比較例1では、現像後露光部にパターンが形成されたが、さらに130℃のオーブン中で60分ポストベークすることにより、露光部分のパターンが除去され、基板上にはパターンが形成されなかった。
この結果は実施例1及び2の場合、露光でネガ化が発生し、露光部で架橋によるパターンが形成されたと考えられる。一方、比較例1では、露光によって、酸発生剤から発生した酸によって保護基が切断され、親水性パターンが形成されるが、その後の熱プロセスでパターンは分解したため、基板上にパターンが形成されなかったと考えられる。
[パターンの外観評価]
得られたパターンの外観評価を光学顕微鏡で行った、透明なパターンが得られていれば○、目視で膜荒れ、白化等が起こっていれば×として外観の評価を行った。
[パターンの密着性評価]
得られたパターンの膜において、碁盤目剥離試験を実施し、剥離が発生しなければ○、部分的に剥離が発生すれば×として密着性評価を実施した。結果パターン剥がれは発生せず、密着性の高いパターンが形成されていることを確認した。