JP2018535654A - 修飾リソソームタンパク質とその製造 - Google Patents
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Abstract
修飾リソソームタンパク質、修飾リソソームタンパク質を調製する方法、および斯かる修飾タンパク質の治療用途を本明細書中に開示する。リソソーム蓄積症に罹患している哺乳動物を治療する方法をさらに本明細書中に開示する。特に、本開示は、修飾リソソームタンパク質を調製する方法であって、グリコシル化リソソームタンパク質を過ヨウ素酸アルカリ金属塩と反応させ、そして、前記リソソームタンパク質を水素化ホウ素アルカリ金属塩と2時間以下反応させること、を含み、それによって、前記リソソームタンパク質のグリカン部分を修飾し、グリカン認識受容体に関して前記リソソームタンパク質の活性を低下させる前記方法に関する。
Description
技術分野
本開示は、修飾リソソームタンパク質、修飾リソソームタンパク質を含む組成物、および修飾リソソームタンパク質を調製する方法に関する。さらに、リソソーム蓄積症の処置のような治療における修飾リソソームタンパク質の使用が開示される。
本開示は、修飾リソソームタンパク質、修飾リソソームタンパク質を含む組成物、および修飾リソソームタンパク質を調製する方法に関する。さらに、リソソーム蓄積症の処置のような治療における修飾リソソームタンパク質の使用が開示される。
背景
リソソーム蓄積症
リソソーム画分は、細胞内の廃棄物を分解する異化機構として機能する。分解は、リソソームに特異的に区画されたいくつかの加水分解酵素および輸送体によって達成される。今日、リソソームタンパク質をコードする遺伝子における突然変異と疾患との間に関連性が確立されている遺伝性疾患が40以上同定されている。これらの疾患は、リソソーム蓄積症(LSD)と定義され、不十分な分解能力により分解することができない代謝産物(または代謝産物(複数))を蓄積することを特徴とする。代謝産物の過剰なリソソーム蓄積の結果として、リソソームはサイズが増加する。蓄積された蓄積物質がどのように病理を引き起こすかについては完全には理解されていないが、オートファジーの阻害および細胞アポトーシスの誘導などの機構を含む可能性がある(Cox&Cachon-Gonzalez、J Pathol 226:241-254(2012))。
リソソーム蓄積症
リソソーム画分は、細胞内の廃棄物を分解する異化機構として機能する。分解は、リソソームに特異的に区画されたいくつかの加水分解酵素および輸送体によって達成される。今日、リソソームタンパク質をコードする遺伝子における突然変異と疾患との間に関連性が確立されている遺伝性疾患が40以上同定されている。これらの疾患は、リソソーム蓄積症(LSD)と定義され、不十分な分解能力により分解することができない代謝産物(または代謝産物(複数))を蓄積することを特徴とする。代謝産物の過剰なリソソーム蓄積の結果として、リソソームはサイズが増加する。蓄積された蓄積物質がどのように病理を引き起こすかについては完全には理解されていないが、オートファジーの阻害および細胞アポトーシスの誘導などの機構を含む可能性がある(Cox&Cachon-Gonzalez、J Pathol 226:241-254(2012))。
酵素/タンパク質補充療法
変異したかまたは失われたタンパク質によって引き起こされる失われた機能は、異種起源からのタンパク質を用いた投与および変異した/失われたタンパク質の置き換えによって復元され得る。これは、さまざまな疾患分野について示された。血友病の分野の中で、凝固経路における活性化複合体の一部である、例えばIX因子や因子VIIなどの酵素と、例えばVIII因子などのタンパク質の両方の投与が、首尾よく利用された。これらの成分はもちろん、血液中に存在し、従って、その作用部位にタンパク質を投与することが簡単である。
変異したかまたは失われたタンパク質によって引き起こされる失われた機能は、異種起源からのタンパク質を用いた投与および変異した/失われたタンパク質の置き換えによって復元され得る。これは、さまざまな疾患分野について示された。血友病の分野の中で、凝固経路における活性化複合体の一部である、例えばIX因子や因子VIIなどの酵素と、例えばVIII因子などのタンパク質の両方の投与が、首尾よく利用された。これらの成分はもちろん、血液中に存在し、従って、その作用部位にタンパク質を投与することが簡単である。
リソソーム蓄積症の分野では、蓄積は、異種の供給源からのリソソーム酵素の投与によって減少させることができる。リソソーム酵素の静脈内投与は、受容体媒介エンドサイトーシスと呼ばれる機構を介した、細胞による迅速な取り込みをもたらすことが十分に確立されている。このエンドサイトーシスは、細胞表面上の受容体が媒介しており、特に、2つのマンノース−6リン酸受容体(M6PR)は、特定のリソソーム酵素の取り込みに重要であることが示されている(Neufeld;Birth Defects Orig 16:77-84(1980))。M6PRは、リソソームタンパク質に特徴的なリン酸化オリゴマンノースグリカンを認識する。
受容体媒介エンドサイトーシスの原理に基づいて、7つのLSDに対し酵素置換療法(ERT)が今日利用可能である(ゴーシェ、ファブリー、ポンペ、ならびにムコ多糖症I、II、IVAおよびVI)。これらの療法は、様々な末梢器官におけるリソソーム蓄積を減少させるのに有効であり、それによって病理に関連するいくつかの症状を改善する。
Elaprase(登録商標)およびAldurazyme(登録商標)は、ハンター症候群(ムコ多糖症II、MPSII)を患っている患者およびハーラー/シャイエ症候群(ムコ多糖症I、MPS−I)を患っている患者の非神経症状の長期治療に適応されるオーファン医薬品の例である。両方の酵素は、グリコサミノグリカン(GAG)デルマタン硫酸とヘパラン硫酸の両方の加水分解によってリソソーム蓄積を低減するように実質的に機能する。この酵素結果の活性の低減または欠如は、これらのGAGの細胞内蓄積をもたらし、そしてそれが、多臓器および組織障害を伴った進行性かつ臨床的に異種の疾患の原因となる。
しかしながら、LSDの大部分は中枢神経系(CNS)においてリソソーム蓄積の増大を引き起こし、結果としてCNS関連の徴候および症状のレパートリーを提示する。静脈内投与されたERTの主な欠点は、CNSへの不良分布である。CNSは、CNS血管内皮によって形成された血液脳関門(BBB)によって、血液を介する化合物への暴露から保護される。傍細胞の通過を妨げるタイトジャンクションを示すBBBの内皮細胞は、制限した受動的エンドサイトーシスを示し、さらに、他の組織に見られるいくつかの受容体媒介トランスサイトーシス能力を欠く。特に、マウスにおいて、BBBを通過するM6PR媒介輸送は、出生後2週間までしか観察されない(Urayama et al,Mol Ther 16:1261-1266(2008))。
LSDの神経学的な要素に加えて、末梢病変もまた、ある程度、現在の酵素置換療法において準最適に対処される。患者は、重篤な運動の制限をもたらす関節痛および凝りという形で臨床的に表される関節症に罹患していることが多い。そのうえ、胸郭における進行性の変化は、呼吸制限を引き起こしかねない。
そのうえ、心臓の壁と併せて心臓弁の硬化につながる蓄積の蔓延は、心臓機能の進行性の低下をもたらす可能性がある。また、肺機能は、酵素置換療法にもかかわらず、さらに退縮し得る。
そのうえ、心臓の壁と併せて心臓弁の硬化につながる蓄積の蔓延は、心臓機能の進行性の低下をもたらす可能性がある。また、肺機能は、酵素置換療法にもかかわらず、さらに退縮し得る。
リソソーム(lysomal)酵素のグリコシル化
一般に、N−グリコシル化は、Asn−X−Ser/Thr配列モチーフで起こり得る。このモチーフに対して、N−グリカンの最初のコア構造は、グリコシルトランスフェラーゼオリゴサッカリルトランスフェラーゼによって、網状管腔内(reticular lumen)に転移される。すべてのN−結合型グリカンのこの共通基盤は14残基;3グルコース、9マンノース、および2N−アセチルグルコサミン、から構成されている。この前駆体は、次に、初期コアをトリミングして新しい糖部分を追加する多数の酵素の作用により、3つの一般的なタイプのN−グリカン;オリゴマンノース、複合体およびハイブリッド(図7)へと変換される。各成熟N−グリカンは、Asnがタンパク質への結合点を表す、共通のコア、Man(Man)2−GlcNAc−GlcNAc−Asnを含んでいる。酵母では、オリゴマンノースグリカンは、図7でさらに右側に示した反復様式で最大200個のマンノース残基を含むように伸長され得る(Dean, Biochimica et Biophysica Acta 1426:309-322 (1999))。
一般に、N−グリコシル化は、Asn−X−Ser/Thr配列モチーフで起こり得る。このモチーフに対して、N−グリカンの最初のコア構造は、グリコシルトランスフェラーゼオリゴサッカリルトランスフェラーゼによって、網状管腔内(reticular lumen)に転移される。すべてのN−結合型グリカンのこの共通基盤は14残基;3グルコース、9マンノース、および2N−アセチルグルコサミン、から構成されている。この前駆体は、次に、初期コアをトリミングして新しい糖部分を追加する多数の酵素の作用により、3つの一般的なタイプのN−グリカン;オリゴマンノース、複合体およびハイブリッド(図7)へと変換される。各成熟N−グリカンは、Asnがタンパク質への結合点を表す、共通のコア、Man(Man)2−GlcNAc−GlcNAc−Asnを含んでいる。酵母では、オリゴマンノースグリカンは、図7でさらに右側に示した反復様式で最大200個のマンノース残基を含むように伸長され得る(Dean, Biochimica et Biophysica Acta 1426:309-322 (1999))。
さらに、リソソームを指向するタンパク質は、リン酸化された1つ以上のN−グリカンを保持する。リン酸化はゴルジ体で起こり、オリゴマンノース型N−グリカンのマンノース残基のC−6にN−アセチルグルコサミン−1−リン酸の付加によって開始される。N−アセチルグルコサミンは、M6PRによって認識され、リソソームタンパク質のリソソームへの輸送を開始するマンノース−6−リン酸(M6P)残基を生成するように切断される。次いで、得られたN−グリカンを、M6PがN−グリカン鎖の末端基であるポイントまでトリミングする(Essentials of Glycobiology. 2nd edition.Varki A,Cummings RD,Esko JD,et al,editors.Cold Spring Harbor(NY):Cold Spring Harbor Laboratory Press;2009))。
糖部分およびリン酸基の両方が受容体への結合に関与するので、M6PRの結合部位は、完全な末端M6P基を必要とする(Kim et al,Curr Opin Struct Biol 19:534-42(2009))。
グリカン修飾による脳を標的とする酵素補充療法
リソソーム酵素のCNSへの分布を増加させる潜在的な戦略は、WO2008/109677に開示されている。これらの公開された出願では、メタ過ヨウ素酸ナトリウムおよび水素化ホウ素ナトリウムを使用するβ−グルクロニダーゼの化学修飾が記載されている(Grubb et al,Proc Natl Acad Sci USA 105:2616-2621(2008)も参照のこと)。20mMの過ヨウ素酸ナトリウムによる6.5時間の酸化、その後のクエンチング、透析および100mMの水素化ホウ素ナトリウムでの一晩の還元(以後、既知の方法と呼ぶ)からなるこの修飾は、β−グルクロニダーゼのCNS分布を実質的に改善し、LSDムコ多糖症VIIのマウスモデルにおける神経記憶のクリアランスをもたらす。脳の分布の根底にあるメカニズムは不明であるが、化学修飾がβ−グルクロニダーゼ上のグリカン構造を破壊することに注目し、M6PRによる受容体媒介エンドサイトーシスが著しく減少することがさらに証明された。
リソソーム酵素のCNSへの分布を増加させる潜在的な戦略は、WO2008/109677に開示されている。これらの公開された出願では、メタ過ヨウ素酸ナトリウムおよび水素化ホウ素ナトリウムを使用するβ−グルクロニダーゼの化学修飾が記載されている(Grubb et al,Proc Natl Acad Sci USA 105:2616-2621(2008)も参照のこと)。20mMの過ヨウ素酸ナトリウムによる6.5時間の酸化、その後のクエンチング、透析および100mMの水素化ホウ素ナトリウムでの一晩の還元(以後、既知の方法と呼ぶ)からなるこの修飾は、β−グルクロニダーゼのCNS分布を実質的に改善し、LSDムコ多糖症VIIのマウスモデルにおける神経記憶のクリアランスをもたらす。脳の分布の根底にあるメカニズムは不明であるが、化学修飾がβ−グルクロニダーゼ上のグリカン構造を破壊することに注目し、M6PRによる受容体媒介エンドサイトーシスが著しく減少することがさらに証明された。
化学修飾戦略は、他のリソソーム酵素についても研究されている。例えば、既知の方法による修飾は、静脈内投与されたプロテアーゼトリペプチジルペプチダーゼIの脳への分布を改善しなかった(Meng et al, PLoS One (2012))。スルファターゼについても満足のいく結果は実証されていない。既知の方法に従って化学的に修飾されたスルファターゼは、実際にはマウスで半減期の増加を示したが、MPS IIIIAマウスの脳では効果を示さなかった。化学的に修飾されたスルファターゼは、静脈内投与によって繰り返し投与された場合、脳実質には分布しなかった(Rozaklis et al,Exp Neurol 230:123-130(2011))。
従って、神経学的に関与があるLSDの治療に有効なERTが依然として必要とされている。機能的に活性を維持したまま、BBBを通過して輸送することができる新規タンパク質は、CNS関連病理を有するLSDを治療するための酵素/タンパク質補充療法用の全身投与に好適な化合物の開発において多大な価値がある。
発明の開示
本発明の目的は、異なるLSDのための酵素補充療法の開発を可能にする新規な修飾リソソームタンパク質を提供することである。
本発明の目的は、異なるLSDのための酵素補充療法の開発を可能にする新規な修飾リソソームタンパク質を提供することである。
本発明の別の目的は、哺乳動物の血液脳関門を通過して輸送され得、新規な修飾リソソームタンパク質を提供することである。加えて、前記タンパク質は、哺乳動物の脳において、例えば酵素的(触媒的)活性などの、前記哺乳動物の脳における生物学的活性を有利なことに有するであろう。
本発明のさらに別の目的は、特に、LSDの末梢病変に関与する末梢組織において触媒活性を有する新規な修飾リソソームタンパク質を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、従来技術の方法に従って修飾されたリソソームタンパク質と比較して、改善された構造的完全性などの改善された品質および安定性を示す新規な修飾リソソームタンパク質を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、従来技術の方法に従って修飾されたリソソームタンパク質と比較して、改善された構造的完全性などの改善された品質および安定性を示す新規な修飾リソソームタンパク質を提供することである。
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
本開示から当業者には明らかであろうこれらの目的および他の目的は、添付の特許請求の範囲において定義され、本明細書に一般的に開示される本発明の異なる態様によって達成される。
本発明の一態様において、リソソームタンパク質の未修飾形態と比較して、50%以下の未修飾グリカン部分が無傷のまま維持されていることを特徴とし、それによって、前記タンパク質がグリカン認識受容体について低下した活性を有するが、但し、前記タンパク質がスルファミダーゼでない、低い含量の未修飾グリカン部分を有する修飾リソソームタンパク質を提供する。一実施形態において、前記タンパク質はβ−グルクロニダーゼでない。別の実施形態において、前記タンパク質はトリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)でない。別の実施形態において、前記タンパク質はα−L−イズロニダーゼでない。
グリカン認識受容体とは、主としてリソソームタンパク質のグリカン部分を介してリソソームタンパク質を認識して結合する受容体を意味する。そのような受容体は、マンノース6−リン酸受容体に加えて、マンノース受容体によって例示され得;グリカンが露出した末端マンノース残基を示すタンパク質に選択的に結合する。レクチンは、グリカン上の末端ガラクトース残基を認識するアシアロ糖タンパク質受容体1を認識する末端ガラクトースによって例示され得るグリカン認識受容体の別の大きなファミリーを構成する。
従って、本発明による修飾リソソームタンパク質は、天然グリカン部分を取り除くことで修飾される。特に、前記リソソームタンパク質は、グリカン認識受容体のエピトープをグリカン部分から取り除くことで修飾される。グリカン認識受容体のエピトープは、本明細書中では、斯かる受容体によって認識されるグリカン部分(の一部)を表すと理解されるべきであり、そして、N−グリカンの末端におけるマンノース、マンノース6ホスファート、n−アセチルグルコサミンまたはガラクトース起源の糖部分として構造的に記載され得る。天然または未修飾グリカン部分の少なくとも部分的な欠損が、グリカン認識受容体に関する修飾リソソームタンパク質の活性を低減する。結果として、末梢組織における修飾リソソームタンパク質の受容体媒介エンドサイトーシスが低減され、そしてそのことは、それが、例えば哺乳動物に静脈内投与されたとき、血漿からの修飾タンパク質の低減されたクリアランスを順にもたらし得る。添付の実施例において、特定の代表的なリソソームタンパク質について実証されるように、本明細書中に記載した修飾リソソームタンパク質は、例えば2つのマンノース−6−リン酸受容体(M6PR)などのグリカン認識受容体のエピトープの除去の結果である細胞取り込む傾向が少ない(実施例5および6参照)。
投薬予測から、修飾リソソームタンパク質の低減されたクリアランスは、有利なことに、より低い頻繁で患者に投与され得る長時間作用する薬物の開発を可能にする。加えて、前記タンパク質の修飾はまた、CNSへの修飾リソソームタンパク質の分布を可能にし得る。本明細書中に記載した修飾タンパク質は、血液脳関門を通じて、それが生物学的活性を有する哺乳動物の脳の中に輸送され得る。修飾タンパク質のこの有利な特性は、複数のLSDの臨床成果を潜在的に改善し得る。
一実施形態において、リソソームタンパク質の未修飾形態と比較して、未修飾グリカン部分の45%以下、例えば40%以下、35%以下、30%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、1%以下のグリカン部分が、リソソームタンパク質の未修飾形態から維持される。従って、いくつかの実施形態において、修飾リソソームタンパク質は、無傷の天然または未修飾グリカン部分を実質的に含まないので、結果的にグリカン認識受容体のエピトープを実質的に含まない。これは、グリカン認識エピトープのほとんど完全な不存在と理解され得る。好ましい実施形態において、修飾リソソームタンパク質は、(検出可能な)グリカン認識受容体のエピトープを含まない。場合によっては、前記エピトープのほとんど完全な不存在は、グリカン認識受容体に関して修飾タンパク質の活性をさらに低減し、そして、血漿半減期を延長するだろう。これはおそらく、(実施例5の細胞取り込み調査で実証されるように)タンパク質の化学修飾後の末梢組織における受容体媒介性取り込みの阻害に少なくとも一部に起因するである。
特に、修飾リソソームタンパク質は、エンドサイトーシスM6PRタイプ1および2、マンノース受容体、n−アセチルグルコサミン結合レクチンおよびガラクトース受容体それぞれのエピトープを構成する(検出可能な)マンノース−6−リン酸部分、マンノース部分、N−アセチルグルコサミン部分またはガラクトース部分を含まない。先に規定されたとおり、天然または未修飾グリカン部分で見出された前記エピトープは、マンノース−6−リン酸部分、マンノース部分、n−アセチルグルコサミン部分、およびガラクトース部分から選択され得る。特定の実施形態において、これらは、本明細書中に開示される修飾リソソームタンパク質には存在しない。
修飾リソソームタンパク質の前記天然グリカン部分は、先に説明されるように、修飾リソソームタンパク質で少なくとも部分的に欠如していてもよい。この不存在は、前記修飾リソソームタンパク質の天然グリカン部分の中の、単結合の切断や二重結合の切断から成る破壊に相当し得る。単結合切断によるグリカン破壊は、一般的に優位になり得る。特に、前記リソソームタンパク質の天然グリカン部分は、単結合切断および二重結合切断によって破壊され得、ここで、該単結合切断の程度は、オリゴマンノースグリカンにおいて少なくとも60%であり得る。特に、単結合切断の程度は、オリゴマンノース型のグリカンの少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも85%であり得る。単結合切断対二重結合切断の程度は、代表的なタンパク質(スルファミダーゼ)に関する実施例10および11において記載されるように決定され得る。
一実施形態において、前記修飾リソソームタンパク質は、対応する未修飾リソソームタンパク質のそれの95%超の分子量、例えば対応する未修飾リソソームタンパク質のそれの96%超、例えば対応する未修飾リソソームタンパク質のそれの97%超、例えば対応する未修飾リソソームタンパク質のそれの98%超、例えば対応する未修飾リソソームタンパク質のそれの99%超を有する。添付の実施例4では、本発明による修飾リソソームタンパク質の具体例は、(図8Aに示される)SDS−PAGE分析では対応する未修飾リソソームタンパク質と区別できず、主に単結合の切断が示唆された。添付の実施例2では、既知の方法により修飾したリソソームタンパク質は、(図8Aに示される)SDS−PAGE分析では対応する未修飾リソソームタンパク質より小さく、より高い程度の二重結合の切断が示唆された。
本明細書中に開示した態様の一実施形態において、前記グリカン部分は、少なくとも1個の前記修飾リソソームタンパク質のN−グリコシル化部位を欠き、例えば、前記リソソームタンパク質のN−グリコシル化部位の少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12、少なくとも13個を欠き、好ましくは、前記グリカン部分はすべてのN−グリコシル化部位を欠く。例えば、これは、2つのN−グリコシル化部位を有するリソソームタンパク質に関して、その2つの部位のうちの少なくとも1つのは、無傷のまたは完全なグリカン部分を欠いていることを意味する。
本明細書中に開示した態様の一実施形態において、前記修飾リソソームタンパク質は、非共有結合形態で提供される。有利なことには、前記リソソームタンパク質は、タンパク質の凝集を引き起こすことなく、および/またはより小さいペプチド断片へのタンパク質骨格の切断を引き起こすことなく、修飾された。
一実施形態において、修飾リソソームタンパク質は、対応する未修飾リソソームタンパク質のそれの少なくとも50%、例えば対応する未修飾リソソームタンパク質のそれの少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%の維持された触媒活性などの触媒活性を有する。触媒活性は、インビトロにおける触媒活性であっても、またはインビボにおける触媒活性であってもよい。インビトロにおいて触媒活性を計測するための方法、および少なくとも50%の触媒活性を有する修飾リソソームタンパク質は、実施例12で開示されている。
リソソームタンパク質は、静脈内注射によって投与されると、通常、循環から急速に取り除かれる。先に記載したように、細胞外区画からの細胞取り込みは、リソソームタンパク質の独特のマンノースやマンノース6−ホスファートの豊富なグリカンを認識する受容体によって容易にされる。従って、リソソームタンパク質の分布は、様々な細胞上のこれらの受容体の密度によって通常制御される。マンノース認識受容体が肝臓の組織定住マクロファージおよび類洞内皮細胞に大量に存在するのに対して、陽イオン非依存性マンノース−6−ホスファート受容体は、肝細胞に大量に存在する。それによって、静脈内によって投与された治療用酵素の用量の大半が、肝臓に分布する可能性があり、そしてそのことは、ほとんどの治療適用に関して準最適である。例えば、ファブリー病の治療として使用される2つの治療用α−ガラクトシダーゼA製剤は共に、マウスにおける単回投与後に肝臓に分布された用量の60〜70%を示す(Lee et al, Glycobiology 13: 305-313 (2003))。対照的に、血液がそれほど十分に供給されていない、および/または少量の受容体しか有していない組織内の細胞は、これらの取り込み機構によって十分に標的化されない。グリカン依存性経路を介した急速な取り込みを予防することによって、循環からのクリアランスが顕著に低下し、そして、異なった分布プロファイルをもたらす他のより遅い工程が細胞内への取り込みを容易にする。これは、未修飾リソソーム酵素にわずかしか晒されない組織の細胞への治療用修飾リソソームタンパク質の分布を可能にし得る。特定の実施形態において、本明細書中に開示した修飾リソソームタンパク質は、静脈内注入によって投与されると、関節、結合組織、軟骨、および骨により良好な分布を提供し得る。また、骨格筋、心臓、および肺もより良好に標的化され得る。これらは、重篤な病理がリソソーム蓄積の結果として通常見られるすべての組織である。
一実施形態において、前記修飾リソソームタンパク質は、哺乳動物に投与されると末梢組織に分布する。末梢組織の例は先に与えられている。そのうえ、前記リソソームタンパク質は、前記末梢組織において、例えば維持された酵素活性または触媒活性などの(維持された)生物学的活性を示し得る。
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載した態様による修飾リソソームタンパク質は、哺乳動物に投与されると脳に分布することができ、そして、前記哺乳動物の脳において、例えば維持された酵素活性または触媒活性などの(維持された)生物学的活性を示すこともある。一実施形態において、修飾リソソームタンパク質は脳において触媒活性を有する。
維持された生物学的活性とは、修飾リソソームタンパク質の生物学的活性が、未修飾形態のリソソームタンパク質から少なくとも一部が維持されていることを意味する。修飾によってリソソームタンパク質の活性が完全に失われないように、修飾は慎重に行われなければならない。修飾は、修飾タンパク質が不活性になるようなタンパク質の機能的エピトープまたは活性部位を変更はできない。従って、本明細書中に開示した修飾リソソームタンパク質は、例えばリソソーム蓄積、例えば脂質、GAG、糖脂質、糖タンパク質、アミノ酸またはグリコーゲンのリソソーム蓄積、を減少させるなど、哺乳動物の脳、内臓または末梢組織においてリソソーム蓄積に影響を及ぼし得る。
修飾リソソームタンパク質が修飾スルファターゼである特定の実施形態において、維持された触媒活性は、例えば、スルファターゼの活性部位における触媒アミノ酸残基の保存対修飾のレベルに依存し得る。スルファターゼは、種々の基質からの硫酸エステル結合の加水分解を触媒する共通の進化的起源を有するタンパク質ファミリーである。従って、本明細書で使用する修飾スルファターゼの「触媒活性」は、好ましくは哺乳動物の脳における末梢組織のリソソームおよび/またはリソソームにおける、硫酸エステル結合の加水分解を指してもよい。従って、修飾スルファターゼの触媒活性は、リソソーム蓄積症に罹患している哺乳動物の脳における、GAG、例えばデルマタン硫酸やヘパラン硫酸の蓄積などのリソソーム蓄積の減少をもたらし得る。触媒活性は、例えば、実施例7に記載されるように、動物モデルにおいて測定され得る。代表的なスルファターゼであるスルファミダーゼのグリカン修飾は、従来技術において開示された(Rozaklis et al、前掲)。しかしながら、スルファミダーゼを修飾するための既知の方法は、マウスの脳において触媒活性を欠いている修飾スルファミダーゼをもたらす。よって、このことは、触媒活性を危険にさらさないように酵素の修飾が慎重に実施されなければならないことを示している。スルファターゼの活性部位は、Cα−ホルミルグリシン(FGly)に翻訳後修飾された、保存されたシステインを一般的に含む。この反応は、小胞体においてFGly生成酵素によって起こる。位置59のこのFGly残基(FGly59)は、硫酸エステル結合の加水分解に直接関与しており、該修飾が活性化には必要であるようである。特に、アリールスルファターゼAおよびB中の保存されたシステインからセリン(Ser)への変異は、FGlyの形成を妨げ、不活性酵素を生じる(Recksiek et al, J Biol Chem 13;273(11):6096-103(1998))。スルファターゼの活性部位の保存が本明細書中で議論されるとき、それは、前記スルファターゼにおける翻訳後FGlyの保存として主に理解されるべきである。
一実施形態において、修飾リソソームタンパク質は、膜貫通ヘリックスを欠き、かつ、少なくとも1つのN−グリコシル化部位を有するリソソームタンパク質である。斯かるリソソームタンパク質の例は、以下の表で列挙されている:
表Iには、多数のリソソームタンパク質が記載されている。一部のタンパク質は、以下の別名で知られているだろう。先に列挙したタンパク質はありとあらゆる代替名も包含することは理解されるべきである。一実施形態において、修飾リソソームタンパク質は、デオキシリボヌクレアーゼ−2−α;β−マンノシダーゼ;リボヌクレアーゼT2;リソソームα−マンノシダーゼ(Laman);ペプチダーゼ−トリペプチジル1(TPP−1);ヒアルロニダーゼ−3(Hyal−3);カテプシンL2;セロイド−リポフスチノーシスニューロンタンパク質5;グルコシルセラミダーゼ;組織α−L−フコシダーゼ;ミエロペルオキシダーゼ(MPO);α−ガラクトシダーゼA;β−ヘキソサミニダーゼサブユニットα;カテプシンD;プロサポシン;β−ヘキソサミニダーゼサブユニットβ;カテプシンL1;カテプシンB;β−グルクロニダーゼ;プロカテプシンH;カテプシンH;非分泌性リボヌクレアーゼ;リソソームα−グルコシダーゼ;リソソーム保護タンパク質;γ−インターフェロン誘導性リソソームチオールレダクターゼ;タルトラート−耐性酸性ホスファターゼ5型(TR−AP);アリールスルファターゼA(ASA);前立腺酸性ホスファターゼ(PAP);N−アセチルグルコサミン−6−スルファターゼ;アリールスルファターゼB(ASB);β−ガラクトシダーゼ;α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ;スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ;ガングリオシドGM2アクチベーター;N(4)−(β−N−アセチルグルコサミニル)−L−アスパラギナーゼ;イズロン酸2−スルファターゼ;カテプシンS;N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ;α−L−イズロニダーゼ;リソソーム酸性リパーゼ/コレステリルエステルヒドロラーゼ(酸性コレステロールエステルヒドロラーゼ)(LAL);リソソームPro−Xカルボキシペプチダーゼ;カテプシンO;カテプシンK;パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(PPT−1);スルファミダーゼ;アリールスルファターゼD(ASD);ジペプチジルペプチダーゼ1;α−N−アセチルグルコサミニダーゼ;ガラクトセレブロシダーゼ(GALCERase);精巣上体分泌タンパク質E1;ジ−N−アセチルキトビアーゼ;N−アシルエタノールアミン加水分解酸性アミダーゼ;ヒアルロニダーゼ−1(Hyal−1);キトトリオシダーゼ−1;酸性セラミダーゼ(AC);ホスホリパーゼB様1;前駆タンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型;XV型ホスホリパーゼA2;推定ホスホリパーゼB様2;デオキシリボヌクレアーゼ−2−β;γ−グルタミルヒドロラーゼ;アリールスルファターゼG(ASG);L−アミノ酸オキシダーゼ(LAAO)(LAO); シアリダーゼ−1;レグミン;シアル酸O−アセチルエステラーゼ;胸腺特異的セリンプロテアーゼ;カテプシンZ;カテプシンF(CATSF);プレニルシステインオキシダーゼ1;ジペプチジルペプチダーゼ2;リソソームチオエステラーゼPPT2(PPT−2);ヘパラナーゼ;カルボキシペプチダーゼQ;β−グルクロニダーゼ、およびスルファターゼ修飾因子1、から成る群から選択される。
本明細書中に開示した態様の特定の実施形態において、前記修飾リソソームタンパク質はスルファターゼである。前記スルファターゼには、その活性部位にFGly部分を好ましくは有する。いくつかの実施形態において、前記スルファターゼは、従って、アリールスルファターゼA;N−アセチルグルコサミン−6−スルファターゼ、アリールスルファターゼB;イズロン酸2−スルファターゼ;N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ;スルファミダーゼ;アリールスルファターゼD、およびアリールスルファターゼGから選択される。特に、前記スルファターゼはアリールスルファターゼA;N−アセチルグルコサミン−6−スルファターゼ;アリールスルファターゼB;イズロン酸2−スルファターゼ;N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼまたはスルファミダーゼである。好ましくは、前記スルファターゼはアリールスルファターゼAである。スルファミダーゼは、一部の実施形態において除外されるであろう。
本明細書中に開示した態様の実施形態において、前記修飾リソソームタンパク質はグリコシドヒドロラーゼである。いくつかの実施形態において、前記グリコシドヒドロラーゼは、α−ガラクトシダーゼA;組織α−L−フコシダーゼ;グルコシルセラミダーゼ;リソソームα−グルコシダーゼ;β−ガラクトシダーゼ;β−ヘキソサミニダーゼサブユニットα;β−ヘキソサミニダーゼサブユニットβ;ガラクトセレブロシダーゼ;リソソームα−マンノシダーゼ;β−マンノシダーゼ;α−L−イズロニダーゼ;α−N−アセチルグルコサミニダーゼ;β−グルクロニダーゼ;ヒアルロニダーゼ−1;α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ;シアリダーゼ−1;ジ−N−アセチルキトビアーゼ;キトトリオシダーゼ−1;ヒアルロニダーゼ−3、およびヘパラナーゼから選択される。好ましくは、前記グリコシドヒドロラーゼは、α−L−イズロニダーゼまたはリソソームα−マンノシダーゼである。好ましくは、前記グリコシドヒドロラーゼはリソソームα−マンノシダーゼである。
本明細書中に開示した態様の実施形態において、前記修飾リソソームタンパク質はプロテアーゼである。いくつかの実施形態において、前記プロテアーゼは、カテプシンD;カテプシンL2;カテプシンL1;カテプシンB;プロカテプシンH;カテプシンS;カテプシンO;カテプシンK;ジペプチジルペプチダーゼ1;カテプシンZ;カテプシンF;レグミン;γ−グルタミルヒドロラーゼ;ペプチダーゼ−トリペプチジル1;カルボキシペプチダーゼQ;リソソーム保護タンパク質;リソソームプロ−Xカルボキシペプチダーゼ;胸腺特異的セリンプロテアーゼ;ジペプチジルペプチダーゼ2、および前駆タンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型から選択される。一実施形態において、前記プロテアーゼはトリペプチジルペプチダーゼ1である。別の実施形態において、トリペプチジルペプチダーゼは先に列挙したプロテアーゼの群から除外される。
本明細書中に開示した態様の一実施形態において、前記修飾リソソームタンパク質は、配列番号1〜74のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列、または配列番号1〜74から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%が配列同一性を有するポリペプチドから成るポリペプチドを含む。限定されることのない例では、前記ポリペプチドは、配列番号1〜74から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性、例えば、配列番号1〜74から選択されるアミノ酸配列と少なくとも98%の配列同一性、配列番号1〜74から選択されるアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有する。
具体的な実施形態において、前記修飾リソソームタンパク質は、修飾スルファターゼであって、そして、配列番号26;28;29;35;37;44;45、および61のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列から成るポリペプチドを含む。好ましい実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号26;配列番号28;配列番号29;配列番号35;配列番号37および配列番号44から選択されるアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号26に提示されたアミノ酸配列を有する。
別の実施形態において、前記修飾リソソームタンパク質は、修飾グリコシドヒドロラーゼであって、そして、配列番号12;配列番号10;配列番号9;配列番号22;配列番号30;配列番号13;配列番号16;配列番号48;配列番号4;配列番号2;配列番号38;配列番号47;配列番号19;配列番号52;配列番号31;配列番号63;配列番号50;配列番号53;配列番号6、および配列番号72のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列から成るポリペプチドを含む。好ましい実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号4または配列番号38に提示されたアミノ酸配列を有する。
別の実施形態において、前記修飾リソソームタンパク質は、修飾プロテアーゼであって、そして、配列番号14;配列番号68;配列番号5;配列番号23;配列番号56;配列番号46;配列番号42;配列番号7;配列番号17;配列番号18;配列番号20;配列番号36;配列番号41;配列番号67;配列番号64;配列番号60;配列番号73;配列番号40;配列番号66、および配列番号70のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列から成るポリペプチドを含む。好ましい実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号5に提示されたアミノ酸配列を有する。
さらなる実施形態において、前記ポリペプチドは、しかしながら、1若しくは複数のC−および/またはN末端アミノ酸によって伸長されてもよく、配列番号1〜74の配列より長い実際の修飾リソソームタンパク質配列を作り出してもよい。同様に、他の例では、修飾リソソームタンパク質は配列番号1〜74のアミノ酸配列に比べてより短いアミノ酸配列を有する可能性があり、長さの違いは、例えば、該配列の(単数若しくは複数の)特定の位置における(単数若しくは複数の)アミノ酸残基の(単数若しくは複数の)欠失に起因する。
一実施形態において、前記修飾リソソームタンパク質は単離される。
一実施形態において、前記リソソームタンパク質はヒトリソソームタンパク質である。
一実施形態において、修飾前の前記リソソームタンパク質はグリコシル化される。
一実施形態において、前記修飾リソソームタンパク質は遺伝子組換え体である。特に、リソソームタンパク質は、ヒト連続細胞株で遺伝子組換えによって製造され得る。
一実施形態において、前記リソソームタンパク質はヒトリソソームタンパク質である。
一実施形態において、修飾前の前記リソソームタンパク質はグリコシル化される。
一実施形態において、前記修飾リソソームタンパク質は遺伝子組換え体である。特に、リソソームタンパク質は、ヒト連続細胞株で遺伝子組換えによって製造され得る。
一実施形態において、前記修飾タンパク質は、哺乳動物、チャイニーズハムスター卵巣、植物または酵母細胞において発現される。従って、得られたタンパク質は、修飾前に1若しくは複数のオリゴマンノースN−グリカンによってグリコシル化される。
一態様において、低減された含量の天然または未修飾グリカン部分を有し、リソソームタンパク質の未修飾形態と比較して天然または未修飾グリカン部分の50%以下が維持されていて、それによって、血液脳関門を通じて、そして、前記修飾リソソームタンパク質が生物学的活性を有する哺乳動物の脳の中への前記リソソームタンパク質の輸送を可能にすることを特徴とする、修飾リソソームタンパク質を含む組成物を提供する。一実施形態において、前記タンパク質は、スルファミダーゼでもなく、β−グルクロニダーゼでもなく、またはトリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)でもない。別の実施形態において、前記タンパク質はα−L−イズロニダーゼではない。
リソソームタンパク質がスルファターゼである特定の実施形態において、前記組成物は、前記修飾スルファターゼの活性部位におけるCα−ホルミルグリシン(FGly)対セリン(Ser)比が1超であることを特徴とし得る。例えば、前記修飾リソソームタンパク質は、配列番号26;28;29;35;37;44;45、および61のうちのいずれか1つで規定されるアミノ酸配列から成るポリペプチド;または、配列番号26;28;29;35;37;44;45、および61で規定されるポリペプチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチド、を含むスルファターゼである。好ましくは、FGly対Serの比は1.5を超え、より好ましくは2.3、より好ましくは4を超え、最も好ましくは、その比は約9である。より大きな比は、より大きいほど、修飾スルファターゼの触媒活性が、スルファターゼの未修飾形態から維持され得ることを示す。
他の態様に関して開示した利点もまた、組成物の態様に適用される。同様に、他の態様に関して開示した実施形態もまた、組成物の態様に適用される。特に、グリカン部分の含量、タンパク質活性、およびリソソームタンパク質(上記の表Iおよび一覧表を参照)の特定の例に関連する実施形態もまたこの態様に適用可能である。
組成物の態様の1つの実施形態において、10%(重量)以下、例えば7.5%(重量)以下、5%(重量)以下、2.5%(重量)以下、1%(重量)以下の前記修飾リソソームタンパク質は、1010kDaを超える分子量を有する多量体型で存在する。
組成物の態様の1つの実施形態において、前記修飾されたリソソームタンパク質の10%(重量)以下は共有結合したオリゴマー形態で存在する。該オリゴマー形態は、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、ヘプタマーおよびオクタマーから選択される。オリゴマー、多量体または凝集形態の存在は、例えば、動的光散乱によってまたはサイズ排除クロマトグラフィーによって決定することができる。この文脈において、凝集形態は、ネイティブに折り畳まれたモノマーから折り畳まれていないモノマーまでの範囲の構造から構成される高分子量タンパク質形態として理解されるべきである。タンパク質の凝集形態は、タンパク質のモノマー形態に対する免疫応答を増強することができる。増強された免疫応答の最も可能性の高い説明は、抗原の多価提示がB細胞受容体にクロスリンクし、従って免疫応答を誘導することである。これは、高い免疫応答を確実にするために、凝集形態にて抗原が宿主に提示されるワクチン製造に利用されている現象である。治療用タンパク質の場合、定説(dogma)とは反対である。免疫応答を最小限に抑えるために、高分子量形態の任意の含量を最小限にするか、または避けるべきである(Rosenberg,AAPS J,8:E501-7(2006))。従って、オリゴマー、多量体および/または凝集体の形態の減少は、治療における使用により適した酵素を提供し得る。
そのうえ、試料中の凝集タンパク質のごく少量の発生が、正常に折りたたまれたタンパク質のさらなる凝集を誘導し得ることである。凝集した材料は、一般に、残存活性がない、または低い残存活性であり、不十分な溶解性を有する。凝集体の出現は、生物学的薬剤の貯蔵寿命を決定する因子の1つであり得る(Wang,Int J Pharm,185:129-88(1999))。
本明細書で使用される用語「組成物」は、固体および液体の形態を含むものとして理解されるべきである。組成物は、好ましくは、患者(例えば、哺乳動物)に、例えば注射または経口投与するのに適した医薬組成物であり得る。
一態様において、修飾リソソームタンパク質を提供するものであって、ここで、前記リソソームタンパク質は、過ヨウ素酸アルカリ金属塩(alkali metal periodate)および水素化ホウ素アルカリ金属塩(alkali metal borohydride)との逐次反応によって調製され、それによってリソソームタンパク質のグリカン認識受容体のエピトープを修飾し、リソソームタンパク質の生物学的活性を保持しながら、前記グリカン認識受容体に関して前記リソソームタンパク質の活性を低下させる。従って、リソソームタンパク質は、修飾前のその天然のグリコシル化形態で存在するそのエピトープまたはグリカン部分が前記修飾によって本質的に不活性化されている点で修飾されている。従って、グリカン認識受容体に関してエピトープの存在は、修飾リソソームタンパク質において低減されている。修飾リソソームタンパク質、組成物および調製方法に関連する態様のような、本明細書に開示される他の態様に関連して開示される実施形態およびその利点は、この態様の実施形態でもあることを理解すべきである。特に、以下に開示される様々な方法の実施形態は、特異的反応条件の点で前記修飾リソソームタンパク質の調製のさらなる例示的な定義を提供する。同様に、上記の修飾リソソームタンパク質および組成物の態様に関して開示された実施形態は、修飾リソソームタンパク質のさらなる例示的な定義を提供する。
一態様において、修飾リソソームタンパク質を調製する方法を提供し、前記方法は:a)グリコシル化リソソームタンパク質を過ヨウ素酸アルカリ金属塩と反応させ、およびb)前記リソソームタンパク質を水素化ホウ素アルカリ金属塩と2時間以下反応させること、を含み;それによって、前記リソソームタンパク質のグリカン部分を修飾し、グリカン認識受容体に関して前記リソソームタンパク質の活性を低下させるが、但し、前記タンパク質はスルファミダーゼではない。
一態様において、修飾リソソームタンパク質を調製する方法を提供し、前記方法は:a)グリコシル化リソソームタンパク質を過ヨウ素酸アルカリ金属塩と反応させ、およびb)前記リソソームタンパク質を水素化ホウ素アルカリ金属塩と2時間以下反応させること、を含み;それによって、前記リソソームタンパク質のグリカン部分を修飾し、グリカン認識受容体に関して前記リソソームタンパク質の活性を低下させるが、但し、前記タンパク質はスルファミダーゼではない。
関連する態様において、修飾リソソームタンパク質を調製する方法を提供し、前記方法は:a)グリコシル化リソソームタンパク質を過ヨウ素酸アルカリ金属塩と反応させ、およびb)前記リソソームタンパク質を水素化ホウ素アルカリ金属塩と、任意で2時間以下反応させること、を含み;それによって、前記リソソームタンパク質のグリカン部分を修飾し、グリカン認識受容体に関してリソソームタンパク質の活性を低下させ、ここで、前記リソソームタンパク質の活性部位または機能的エピトープは、ステップa)およびb)のうちの少なくとも一方の間、酸化および/または還元反応に利用不可能にされる。
「機能的エピトープ」という用語は、これに関連して、タンパク質には酵素活性がないが、リソソームの必須機能を有するタンパク質の一部と理解されるべきである。必須機能は、例えば、分解酵素に対する基質を提示することによって、酵素のソーティングに影響を及ぼすことによって、または機能的酵素に対する結合パートナーとして機能することによって、提供される場合がある。次に、着目のタンパク質の機能的エピトープは、その機能に関与するタンパク質残基、例えばタンパク質の機能を規定するリガンド結合残基またはタンパク質‐タンパク質結合に関与する残基、によって規定される。
従って、上記の方法は、グリカン認識受容体のエピトープの存在を減少させるリソソームタンパク質のマイルドな化学修飾を提供し、前記エピトープは、例えば、本明細書に記載の天然または未修飾のグリカン部分によって表される。これは、有利には、哺乳動物の脳、および/または内臓、および/または他の未修飾リソソームタンパク質があまり分布していない末梢組織を標的化するのに適した修飾リソソームタンパク質を提供し得る。特に、該方法は、例えば、静脈内注入によって投与されると、末梢組織、例えば関節、結合組織、軟骨および骨など、においてより高い曝露を有するリソソームタンパク質を提供し得る。マイルドな方法はさらに、生物学的活性の完全な喪失に至ることなく前記エピトープを有利に修飾する。特定の実施形態において、マイルドな方法は、その生物学的活性が失われるようにリソソームタンパク質の機能的エピトープを修飾することは無い。前記リソソームタンパク質がスルファターゼであるとき、生物学的活性は、修飾リソソームタンパク質の活性部位にFGlyを維持することにより、触媒活性を維持することができる。従って、タンパク質または酵素の分布特性を改善する一方で、この方法は、生物学的活性、例えば触媒活性を排除しない。マイルドな方法によって調製された修飾リソソームタンパク質のさらなる利点は、上記に説明されているように、例えば、リソソームタンパク質および組成物の態様に対するものである。
この方法は、グリカン(炭水化物)部分の2つの隣接するヒドロキシル基間の炭素結合の過ヨウ素酸切断によるグリカン修飾を可能にする。一般に、過ヨウ素酸酸化切断は、隣接のジオールが存在する場所で起こる。ジオールは、赤道−赤道または軸−赤道位置に存在しなければならない。ジオールが剛性軸−軸位置に存在する場合、反応は起こらない(Kristiansen et al.,Car.Res(2010))。過ヨウ素酸塩処理は、M6P部分のC2とC3および/またはC3とC4の間の結合を切断し、M6P受容体に結合することができない構造を生じる。一般的に、他の末端ヘキソースも同様の方法で処理される。非末端の1−4結合残基は、C2とC3の間のみが切断されるが、一方で、非末端(1−3)結合残基は、切断に耐性である。図7において、可能性がある修飾のポイントは、3つの一般的なタイプのN−グリカン;オリゴマンノース、複合体およびハイブリッド、にアスタリスクでマークされている。添付の実施例にさらに示されるように、本明細書に開示される方法は、限られた数の結合の切断によって天然のグリカン部分が破壊された修飾リソソームタンパク質を提供する。一般的に、既知の方法の使用による修飾は、ポリペプチドスルファミダーゼの比較実験で実証されたように、大規模な破壊への増大をもたらす。ステップa)で使用される過ヨウ素酸塩は、リソソームタンパク質に自然に生じるグリカン部分の構造を破壊し得る。修飾リソソームタンパク質のグリカン構造の維持は、少なくとも1つの過ヨウ素酸塩が触媒した切断、すなわち少なくとも1つの単結合切断が天然に存在するグリカン部分のそれぞれで起きた際に、少なくとも部分的に破壊された。現在開示している方法は、リソソームタンパク質のグリカン部分の糖部分における単独型の結合切断を主にもたらし得る(図8参照)。二重結合切断対単結合切断の傾向に関する既知の方法と本明細書中に開示した方法の間の違いは、例えば、主に二重結合切断に向かう傾向がモノマータンパク質の分子量のより明白な低下につながるSDS−PAGEにより観察できる。主に単結合切断がグリカン部分で起こる修飾タンパク質では、モノマータンパク質の分子量の低下は、タンパク質の未修飾形態と比較して、あまり明白ではないか、または無視できるほどでさえある。主に単独型の結合切断を示す修飾グリカン部分のレパートリーは、生きている動物の脳内における静脈内投与後のリソソームタンパク質の分布および活性に有益であり得る。単独型の結合切断を主に示す修飾グリカン部分のレパートリーは、同様にして、静脈内投与後に生きている動物の脳におけるリソソームタンパク質の分布および活性に有益であり得る。
本明細書に記載の修飾リソソームタンパク質を調製する方法、および修飾リソソームタンパク質は、従来技術の方法および化合物よりも改善されている。主に、新規な修飾リソソームタンパク質が哺乳動物の脳に分布して生物学的活性を示し得る。実施例2および4はさらに、既知の方法に従って修飾されたリソソームタンパク質と、本明細書中に開示される方法に従って修飾されたリソソームタンパク質との間に比較を提供する。これらの実施例の結果は、既知の方法に従って修飾されたリソソームタンパク質がアミノ酸配列、ポリペプチド鎖切断、およびタンパク質凝集の変化を示すことを示す。特に、活性部位に触媒作用のFGly残基を含んでいるスルファターゼでは、既知の修飾方法がFGly部分のSer部分への前駆タンパク質転換酵素サブチリシンにつながることが、観察された。従って、本明細書中に開示した方法は、そのうえ、例えば構造的完全性、に関して改善された品質および安定性を有する修飾リソソームタンパク質を提供し得る。
方法の態様の一実施形態において、前記過ヨウ素酸アルカリ金属塩は、グリカン部分のcis−グリコール基をアルデヒド基に酸化する。
方法の態様の一実施形態において、前記水素化ホウ素アルカリ金属塩は、前記アルデヒドをアルコールに還元する。
方法の態様の一実施形態において、ステップa)およびステップb)は、中間ステップを実行することなく、順番に実行される。
ステップb)を、ステップa)の直後に、または以下に記載される任意のクエンチングステップa2)の後に実施することによって、例えば、限外濾過、沈殿または緩衝液の交換によって、反応試薬を除去することなどの任意の中間ステップが省かれ、従って、リソソームタンパク質が反応性アルデヒド中間体に長時間さらされることを回避する。ステップa)、または任意にa2)の後にステップb)を進行させると、全体の反応時間も有利に短縮される。
以下の段落において、ステップa)の特定の実施形態が開示される。他に定義されない限り、本明細書に開示される態様の特定の実施形態を組み合わせることができることを理解すべきである。
一実施形態において、前記過ヨウ酸アルカリ金属塩はメタ過ヨウ素酸ナトリウムである。
一実施形態において、ステップa)の前記反応は、4時間以下、例えば3時間以下、例えば2時間以下、例えば1時間以下、例えば約0.5時間、実施される。特定の実施形態において、ステップa)の反応は、0.5時間未満、例えば約20分間、実施される。反応は、好ましくは、約3時間、2時間、1時間、または1時間未満の持続時間を有する。本発明者らは、ステップa)の持続時間が4時間以下であることにより、グリカン認識受容体のエピトープを効率的に不活性化することを見出した。さらに、4時間以下の比較的に限定された持続時間は、ポリペプチド鎖の鎖切断の限定された程度を生じさせると仮定される。
一実施形態において、前記過ヨウ素酸塩は、(最終)濃度が20mM以下、例えば15mM以下、例えば約10mMで使用される。過ヨウ素酸塩は、8〜20mM、好ましくは約10mMの濃度で使用することができる。あるいは、過ヨウ素酸塩は、20mM未満、例えば10mM〜19mMの濃度で使用される。より低濃度の過ヨウ素酸アルカリ金属塩、例えばメタ過ヨウ素酸ナトリウムが、ポリペプチド鎖の鎖切断の程度、ならびにアミノ酸側鎖上の関連する酸化、例えば、メチオニン残基の酸化を減少させ得る。
一実施形態において、ステップa)の前記反応は、周囲温度、好ましくは0〜22℃の温度で実施される。好ましい実施形態において、前記ステップa)の反応は、0〜8℃の温度、例えば0〜4℃の温度で実施される。好ましい実施形態において、ステップa)の反応は、約8℃の温度、約4℃の温度または約0℃の温度で実施される。
一実施形態において、ステップa)の前記反応は、pH3〜7ので実施される。当該pHは、反応の開始時のpHとして理解されるべきである。特定の実施形態において、ステップa)で使用されるpHは3〜6、例えば4〜5である。特定の実施形態において、ステップa)で使用されるpHは、約6、約5、または約4である。ステップa)のpHを低下させることによって、過ヨウ素酸塩の濃度またはステップa)の反応時間を短縮してもよい。
一実施形態において、前記過ヨウ素酸塩は、メタ過ヨウ素酸ナトリウムであり、20mM以下、例えば15mM以下、例えば約10mMの(最終)濃度で使用される。一実施形態において、前記メタ過ヨウ素酸ナトリウムは、8〜20mMの濃度で使用される。好ましい実施形態において、メタ過ヨウ素酸ナトリウムは、約10mMの濃度で使用される。
一実施形態において、前記過ヨウ素酸塩はメタ過ヨウ素酸ナトリウムであり、20mM以下、例えば15mM以下、例えば約10mMの(最終)濃度で使用され、ステップa)の前記反応が、4時間以下、例えば3時間以下、例えば2時間以下、例えば1時間以下、例えば約0.5時間実施される。20mMの過ヨウ素酸塩の濃度および4時間以下の反応時間は、有利なことには、より少ない鎖切断および酸化をもたらし得る。
一実施形態において、前記過ヨウ素酸塩はメタ過ヨウ素酸ナトリウムであり、20mM以下、例えば15mM以下、例えば約10mMの(最終)濃度で使用され、ステップa)の前記反応が4時間以下の時間、例えば3時間以下、例えば2時間以下、例えば1時間以下、例えば約0.5時間、0〜22℃の温度で、例えば約8℃、例えば約0℃で実施される。
一実施形態において、前記過ヨウ素酸塩は、20mM以下の濃度、例えば15mM以下、例えば約10mMで使用され、ステップa)の前記反応は、4時間以下、例えば約3時間以下、例えば2時間以下、例えば1時間以下、例えば約0.5時間の期間、0〜22℃の温度で、例えば0〜8℃の温度で、例えば0〜4℃の温度で、例えば約8℃で、例えば約0℃で、実施される。
一実施形態において、前記過ヨウ素酸塩は、メタ過ヨウ素酸ナトリウムであり、前記ステップa)の反応は、4時間以下、例えば約3時間以下、例えば2時間以下、例えば1時間以下、例えば約0.5時間の期間、0〜22℃の温度で、例えば0〜8℃の温度で、例えば0〜4℃の温度で、例えば約8℃で、例えば約0℃で実施される。
一実施形態において、前記過ヨウ素酸塩は、20mM以下の濃度、例えば15mM以下、例えば約10mMで使用されるメタ過ヨウ素酸ナトリウムであり、前記ステップa)の反応は、0〜22℃の温度で、例えば0〜8℃の温度で、例えば0〜4℃の温度で、例えば約8℃で、例えば約0℃で、実施される。
一実施形態において、前記過ヨウ素酸塩は、約10mMの濃度で使用されるメタ過ヨウ素酸ナトリウムであり、前記ステップa)の反応は、約8℃の温度で、2時間以下の期間実施される。
一実施形態において、前記過ヨウ素酸塩は、約10mMの濃度で使用されるメタ過ヨウ素酸ナトリウムであり、前記ステップa)の反応は、0〜8℃の温度で、3時間以下の期間実施される。
以下の段落において、ステップb)の特定の実施形態が開示される。他に定義されない限り、特定の実施形態、特にステップa)およびステップb)の特定の実施形態を組み合わせることができることを理解されたい。
一実施形態において、前記水素化ホウ素は、10〜80mMの濃度にて使用される。一実施形態において、前記水素化ホウ素アルカリ金属塩は、水素化ホウ素ナトリウムである。
いくつかの例において、ステップb)に使用される条件は、ステップa)に使用される条件に部分的に依存することが見出されている。ステップb)において使用される水素化ホウ素塩(borohydride)の量は、好ましくは、できるだけ低く保たれる一方、水素化ホウ素塩対過ヨウ素酸塩(periodate)のモル比は、そのような場合0.5〜4:1である。従って、ステップb)において、水素化ホウ素塩は、ステップa)において使用される過ヨウ素酸塩の量の4倍のモルで使用される。一実施形態において、前記水素化ホウ素塩は、前記過ヨウ素酸塩の(最終)濃度の4倍以下の(最終)モル濃度で使用される。例えば、水素化ホウ素塩は、過ヨウ素酸塩の濃度の3倍以下の濃度、例えば過ヨウ素酸塩の濃度の2.5倍以下、例えば過ヨウ素酸塩の濃度の2倍以下、前記過ヨウ素酸塩の濃度の1.5倍以下、例えば前記過ヨウ素酸塩の濃度におおよそ対応する濃度で使用されてもよい。しかし、特定の実施形態において、過ヨウ素酸塩濃度の半分、または過ヨウ素酸塩濃度の0.5倍に相当する濃度で、水素化ホウ素塩が使用される。従って、過ヨウ素酸塩が約20mMの濃度で使用される場合、水素化ホウ素塩は、80mM以下の濃度、または10〜80mMの濃度、例えば10〜50mMの濃度で使用されてもよい。過ヨウ素酸塩が10〜20mMの濃度で使用される場合、水素化ホウ素塩は5〜80mM、例えば50mMの濃度で使用され得る。同様に、過ヨウ素酸塩が約10mMの濃度で使用される場合、水素化ホウ素塩は、40mM以下の濃度、例えば、25mM以下の濃度で使用され得る。さらに、そのような実施形態において、水素化ホウ素塩は、好ましくは、12mM〜50mMの濃度で使用され得る。リソソームタンパク質がスルファターゼである実施形態において、水素化ホウ素塩の濃度が活性部位における触媒アミノ酸残基の保存度に影響を及ぼす。
一実施形態において、前記ステップb)の反応は、1.5時間以下、例えば1時間以下、例えば0.75時間以下、例えば約0.5時間の期間実施される。反応時間は、好ましくは約1時間、または1時間未満である。さらなる例において、ステップb)の反応は、約0.25時間の持続時間を有する。さらなる実施形態において、ステップb)の反応は、0.25時間〜2時間の期間実施することができる。上記で説明されるように、還元ステップの持続時間は、リソソームタンパク質の生物学的活性、特にスルファターゼなどの酵素の触媒活性、に影響を及ぼし得る。そのうえ、比較的短い反応時間は、酵素の全体的な構造的完全性に有利に影響し得る。特に、リソソームタンパク質の高分子量形態ならびに鎖切断の発生を生じるタンパク質凝集は、少なくとも部分的に反応時間と関連し得る。
一実施形態において、前記ステップb)の反応は、0〜8℃の温度で実施される。ステップb)の反応温度は、反応生成物の生物学的活性に少なくとも部分的に影響を及ぼし得る。従って、ステップb)を8℃未満の温度で実施することが有利であり得る。温度は好ましくは約0℃である。
一実施形態において、前記水素化ホウ素アルカリ金属塩は、前記過ヨウ素酸塩の濃度の0.5倍〜4倍の濃度、例えば前記過ヨウ素酸塩の濃度の2.5倍以下の濃度で使用される水素化ホウ素ナトリウムである。
一実施形態において、前記水素化ホウ素アルカリ金属塩は、前記過ヨウ素酸塩の濃度の0.5倍〜4倍の濃度、例えば前記過ヨウ素酸塩の濃度の2.5倍以下の濃度で使用される水素化ホウ素ナトリウムであり、前記ステップb)の反応は、1時間以下、例えば約0.5時間の期間実施される。
一実施形態において、前記水素化ホウ素アルカリ金属塩は、前記過ヨウ素酸塩の濃度の0.5倍〜4倍の濃度、例えば前記過ヨウ素酸塩の濃度の2.5倍以下の濃度で使用される水素化ホウ素ナトリウムであり、前記ステップb)の反応は、1時間以下、例えば約0.5時間の期間、0〜8℃の温度で実施される。
一実施形態において、前記過ヨウ素酸アルカリ金属塩は、前記過ヨウ素酸塩の濃度の0.5倍〜4倍の濃度で、例えば前記過ヨウ素酸塩の濃度の2.5倍以下の濃度で使用され、前記ステップb)の反応は1時間以下、例えば約0.5時間、0〜8℃の温度で実施される。
一実施形態において、前記水素化ホウ素アルカリ金属塩は水素化ホウ素ナトリウムであり、前記ステップb)の反応は、1時間以下、例えば約0.5時間、0〜8℃の温度で実施される。
一実施形態において、前記水素化ホウ素アルカリ金属塩は、前記過ヨウ素酸塩の濃度の0.5倍〜4倍の濃度、例えば前記過ヨウ素酸塩の濃度の2.5倍以下の濃度で使用される水素化ホウ素ナトリウムであり、前記ステップb)の反応は0〜8℃の温度で実施される。
一実施形態において、前記水素化ホウ素アルカリ金属塩は、前記過ヨウ素酸塩の濃度の0.5倍〜4倍の濃度、例えば前記過ヨウ素酸塩の濃度の2.5倍の濃度で使用される水素化ホウ素ナトリウムであり、前記ステップb)の反応は、約0℃の温度で約0.5時間の期間実施される。
一実施形態において、前記過ヨウ素酸塩はメタ過ヨウ素酸ナトリウムであり、前記水素化ホウ素アルカリ金属塩は水素化ホウ素ナトリウムである。
一実施形態において、ステップa)およびステップb)のそれぞれは、2時間以下、例えば1時間以下、例えば約1時間または約0.5時間の期間、個別に実施される。任意に、前記水素化ホウ素塩は、前記過ヨウ素酸塩の濃度の0.5〜4倍、好ましくは前記過ヨウ素酸塩の濃度の0.5〜2.5倍の濃度で使用される。特定の実施形態において、前記水素化ホウ素塩は、過ヨウ素酸塩の濃度の0.5倍の濃度で、または前記過ヨウ素酸塩の濃度の2.5倍の濃度で使用される。
一実施形態において、ステップa)は3時間以下の期間実施され、ステップb)は1時間以下実施される。任意に、前記水素化ホウ素塩は、前記過ヨウ素酸塩の濃度の4倍以下、好ましくは前記過ヨウ素酸塩の濃度の2.5倍以下で使用される。
一実施形態において、ステップa)は0.5時間以下の期間実施され、ステップb)は1.5時間以下実施される。任意に、前記水素化ホウ素塩は、前記過ヨウ素酸塩の濃度の4倍以下、好ましくは前記過ヨウ素酸塩の濃度の2.5倍以下で使用される。
当業者は、化学反応の反応持続時間、例えばステップa)およびb)のそれぞれの反応持続時間を制御する方法を認識している。従って、一実施形態において、前記方法の態様は、a2)ステップa)から生じる反応のクエンチングをさらに含む。前記クエンチングは、30分未満、例えば15分未満の持続時間を有する。いくつかの例において、前記クエンチングは、ステップa)の直後に実施される。クエンチングは、例えば、エチレングリコールまたは別のジオール、例えばcis−シクロ−ヘプタン−1,2−ジオールなどの添加によって実施してもよい。好ましくは、ステップb)は、クエンチングの直後に続く。これにより、リソソームタンパク質が反応性アルデヒド基に暴露される期間を最短にすることができる。反応性アルデヒドは、タンパク質の不活性化および凝集を促進することができる。
一実施形態において、前記方法は、b2)ステップb)から生じる反応の停止をさらに含む。このクエンチングは、ケトンまたはアルデヒド基、例えばシクロヘキサノンまたはアセトンを含有する分子を添加することによって実施することができ、前記分子は好ましくは水に可溶性であるか、あるいは、酢酸または他の酸の添加によって反応混合物をpH6以下に低下させることによって実施することができる。任意のクエンチングステップは、ステップb)の反応時間の正確な制御を可能にする。
従って、一実施形態において、方法のステップa)およびb)のうちの少なくとも一方は、保護リガンドの存在下で行われる。特に、ステップa)は、保護リガンドの存在下で行われ得る。リガンド、例えば前記リソソームタンパク質の基質などは、酸化および/または還元ステップ中、および(単数若しくは複数の)任意のクエンチングステップ中、タンパク質の機能的エピトープまたは活性部位を保護し得る。あるいは、リガンドはタンパク質の阻害剤である可能性がある。別の実施形態において、方法のステップa)およびb)は、リソソームタンパク質が樹脂で固定されたままで行われる。従って、リソソームタンパク質は最初に、樹脂または媒質で固定され得る。次に、ステップa)およびb)の反応、ならびに任意のa2)およびb2)の反応が、タンパク質が樹脂または媒質に固定されたまま行われ得る。好適な樹脂または媒質が当業者に知られている。例えば、陰イオン交換性媒質または親和性媒質が使用され得る。
方法態様の一実施形態において、ステップa)およびb)のうちの少なくとも一方は、保護リガンドの存在下で行われ、そして、ステップa)およびb)は、前記リソソームタンパク質が樹脂に固定されたままで行われる。
一実施形態において、方法のステップa)およびb)が連続工程で行われる。特に、ステップa)、a2)、b)、b2)は、連続工程で行われ得る。「連続工程」という用語、本明細書中で使用される場合、連続的に操作されるプロセスと理解されるべきであり、そして、ここで、試薬はプロセスユニットに連続的に補給される。例えばアルカリ金属過ヨウ素酸塩やアルカリ金属水素化ホウ素などの試薬を、リソソームタンパク質を含んでいる流れに加えることによって、反応は連続方式で実施され得る。連続工程は、例えばマルチポンプHPLCシステムにおいて行われ得る。
従って、本明細書に開示される方法は、改善された特性を有する修飾リソソームタンパク質を提供する。リソソームタンパク質ポリペプチド鎖の構造的完全性に対する最小の負の影響を伴うリソソームタンパク質の化学修飾条件が予想され、同時に、天然または未修飾グリカンエピトープの実質的な不存在をもたらした。この方法の例示的な実施形態は、図1B、1Cおよび1Dに示す。
関連する態様において、タンパク質を作製する方法を提供し、前記方法は:
哺乳動物、植物または酵母細胞において前記タンパク質を発現させ、それによって、グリコシル化タンパク質を提供し;そして、
前記グリコシル化タンパク質のグリカン認識受容体のエピトープを修飾し、それによって、前記グリカン認識受容体に関してタンパク質の活性を低減すること、を含む。
哺乳動物、植物または酵母細胞において前記タンパク質を発現させ、それによって、グリコシル化タンパク質を提供し;そして、
前記グリコシル化タンパク質のグリカン認識受容体のエピトープを修飾し、それによって、前記グリカン認識受容体に関してタンパク質の活性を低減すること、を含む。
一実施形態において、前記修飾は、アルカリ金属過ヨウ素酸塩およびアルカリ金属水素化ホウ素を用いた連続反応によって行われる。植物および酵母発現系の例は、当業者に知られているが、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia Pastoris)およびオガタエア・ミヌタ(Ogataea minuta)などの種の発現系を含んでもよい。哺乳動物細胞株の例はCHO細胞株である。前記方法の他の実施形態は先に開示されている。
一態様において、先に規定した方法態様の方法によって取得可能な修飾リソソームタンパク質を提供するが、但し、前記タンパク質はスルファミダーゼでない。
本明細書中に開示した態様の一実施形態において、先に期待した方法態様のいずれか1つによって取得可能な、前記修飾リソソームタンパク質、前記リソソームタンパク質組成物または修飾リソソームタンパク質は、治療法に使用するためのものである。
本明細書中に開示した態様の一実施形態において、方法態様のうちのいずれか1つによって取得可能な、前記修飾リソソームタンパク質、前記リソソームタンパク質組成物または修飾リソソームタンパク質は、リソソーム蓄積症に罹患している哺乳動物の治療に使用するためのものである。
本明細書中に開示した態様の一実施形態において、方法態様のうちのいずれか1つによって取得可能な、前記修飾リソソームタンパク質、前記リソソームタンパク質組成物または修飾リソソームタンパク質は、リソソーム蓄積症に罹患している哺乳動物の治療に使用するためのものである。
本明細書中に開示した態様の一実施形態において、前記哺乳動物の脳はヒトの脳である。関連する実施形態において、従って、前記哺乳動物はヒトである。従って、一実施形態において、前記哺乳動物の脳はマウスの脳である。関連する実施形態において、従って、前記哺乳動物はマウスである。
一態様において、哺乳動物の脳における、リソソーム蓄積症を治療するために血液脳関門を通過する、修飾のリソソームタンパク質の薬物製造における使用が提供されるものであって、前記修飾は、酵素を過ヨウ素酸アルカリ金属塩および水素化ホウ素アルカリ金属塩で逐次処理することによって化学的に修飾されたグリカン部分を有することを含み、それによって、前記リソソームタンパク質の生物学的活性を維持しながら、グリカン認識受容体、例えばマンノースおよびマンノース−6−リン酸細胞送達系に対するリソソームタンパク質の活性を減少させる、但し、前記リソソームタンパク質は、スルファミダーゼ、β−グルクロニダーゼ、またトリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)、またはα−L−イズロニダーゼでないことを条件とする。
一態様において、影響を受けた内臓または末梢組織における、リソソーム蓄積症を治療するための、哺乳動物の影響を受けた内臓および/または末梢組織への(促進された)分布のために、修飾のリソソームタンパク質の薬物製造における使用が提供されるものであって、前記修飾は、タンパク質を過ヨウ素酸アルカリ金属塩および水素化ホウ素アルカリ金属塩で逐次処理することによって化学的に修飾されたグリカン部分を有することを含み、それによって、前記リソソームタンパク質の生物学的活性を維持する一方、グリカン認識受容体、例えばマンノースおよびマンノース−6−リン酸細胞送達系に対する修飾リソソームタンパク質の活性を減少させる。特定の実施形態において、前記リソソームタンパク質は、スルファミダーゼ、β−グルクロニダーゼ、またトリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)、またはα−L−イズロニダーゼでない。
本明細書中に開示した態様の施形態において、前記リソソーム蓄積症は、マンノシドーシスβA;リソソーム;白質脳症;嚢胞性;巨大脳髄脳症を伴わない(LCWM);マンノシドーシス、αB;リソソーム(MANSA);セロイドリポフスチノーシス、ニューロン性2(CLN2);脊髄小脳失調;常染色体劣性7(SCAR7);セロイドリポフスチノーシス、ニューロン性;5(CLN5);ゴーシェ病(GD);フコース症(FUCA1D);ミエロペルオキシダーゼ欠損症(MPOD);ファブリー病(FD);GM2−ガングリオシドーシス1(GM2G1);セロイドリポフスチノーシス、ニューロン性、10(CLN10);混合型サポシン欠損症(CSAPD);サポシンB欠損症に起因する異染性白質ジストロフィー(MLD−SAPB);サポシンC欠損症(寒天ゲル内拡散法)に起因する非定型的ゴーシェ病;サポシンA欠損症(AKRD)に起因する非定型的クラッベ病;PSAPサポシンD領域における欠陥がテイ−サックス病の変異体で見出された(GM2−ガングリオシドーシス);GM2−ガングリオシドーシス2(GM2G2);ムコ多糖症7(MPS7);グリコーゲン蓄積症2(GSD2);ガラクトシアリドーシス(GSL);免疫調節不全を伴った脊椎内軟骨異形成(SPENCDI);異染性白質ジストロフィー(MLD);ムコ多糖症3D(MPS3D);ムコ多糖症6(MPS6);GM1−ガングリオシドーシス1(GM1G1);GM1−ガングリオシドーシス2(GM1G2);GM1−ガングリオシドーシス3(GM1G3);ムコ多糖症4B(MPS4B);シンドラー病(SCHIND);カンザキ病(KANZD);ニーマン−ピック病A(NPDA);ニーマン−ピック病B(NPDB);GM2−ガングリオシドーシスAB(GM2GAB);アスパルチルグルコサミン尿(AGU);ムコ多糖症2(MPS2);ムコ多糖症4A(MPS4A);ムコ多糖症1H(MPS1H);ムコ多糖症1H/S(MPS1H/S);ムコ多糖症1S(MPS1S);ウォルマン病(WOD);コレステリルエステル蓄積病(CESD);ピクノディスオストーシス(PKND);セロイドリポフスチノーシス、ニューロン性、1(CLN1);ムコ多糖症3A(MPS3A);パピヨン−ルフェーブル症候群(PLS);ムンク−ハイム症候群(HMS);歯周炎、侵襲性、1(AP1);ムコ多糖症3B(MPS3B);白質ジストロフィー、グロボイド細胞(GLD);ニーマン−ピック病C2(NPC2);ムコ多糖症9(MPS9);ファーバー病(FL);進行性ミオクローヌス癲癇を伴った背髄性筋萎縮症(SMAPME);高コレステロール血症、常染色体優性、3(HCHOLA3);シアリドーシス(SIALIDOSIS);自己免疫疾患6(AIS6);セロイドリポフスチノーシス、ニューロン性、13(CLN13);および多発性スルファターゼ欠損症(MSD)、から選択される。
一実施形態において、治療法において使用するための、方法態様によって取得可能な、前記修飾リソソームタンパク質、リソソームタンパク質組成物、または修飾リソソームタンパク質は、前記哺乳動物の脳におけるリソソーム蓄積を低減する。特に、前記蓄積は、例えば動物モデルにおいて、少なくとも30%、例えば少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%低減される。
一態様において、リソソーム蓄積症に罹患した哺乳動物を治療する方法が提供され、該方法は、哺乳動物に、治療上有効量の修飾リソソームタンパク質を投与することを含み、前記修飾リソソームタンパク質は、以下:
a)本明細書に開示された態様および実施形態に記載の、またはそれらから取得可能な修飾リソソームタンパク質;そして、
b)本明細書の態様および実施形態に記載のリソソームタンパク質組成物、
から選択される。
a)本明細書に開示された態様および実施形態に記載の、またはそれらから取得可能な修飾リソソームタンパク質;そして、
b)本明細書の態様および実施形態に記載のリソソームタンパク質組成物、
から選択される。
その一実施形態において、前記治療が、70日間の期間にわたり、10用量の修飾リソソームタンパク質の投与後に、哺乳動物の脳からの少なくとも約50%のリソソーム蓄積のクリアランスをもたらす。
実施例
以下の実施例は、スルファミダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、およびイズロン酸2−スルファターゼによって例示される修飾リソソームタンパク質の開発について開示する。
材料と方法
以下の実施例に使用する遺伝子組換えα−L−イズロニダーゼは医薬品Aldurazyme(登録商標)であったのに対して、遺伝子組換えイズロン酸2−スルファターゼは医薬品Elaprase(登録商標)であった。両方を、薬局(Apoteket farmaci, Sweden)から購入し、製造者の仕様書どおりに保存し、そして、無菌条件下で治療した。
以下の実施例は、スルファミダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、およびイズロン酸2−スルファターゼによって例示される修飾リソソームタンパク質の開発について開示する。
材料と方法
以下の実施例に使用する遺伝子組換えα−L−イズロニダーゼは医薬品Aldurazyme(登録商標)であったのに対して、遺伝子組換えイズロン酸2−スルファターゼは医薬品Elaprase(登録商標)であった。両方を、薬局(Apoteket farmaci, Sweden)から購入し、製造者の仕様書どおりに保存し、そして、無菌条件下で治療した。
スルファミダーゼを、pcDNA3.1(+)ベクターを用いたHEK293細胞、およびpQMCF1ベクターを用いた、Quattromed Cell Factory(QMCF)エピソーム発現系(Icosagen AS)を備えたCHOにおける、クローニングならびに一過性発現によって製造した。スルファミダーゼは、20mMトリス、1mM EDTA、pH8.0で平衡化したQセファロースカラム(GE Healthcare)上の陰イオン交換クロマトグラフィー(AIEX)によって培地から捕獲し、NaCl勾配で溶出させた。捕獲されたスルファミダーゼを、4−メルカプト−エチル−ピリジン(MEP)クロマトグラフィーによりさらに精製した。スルフェアミダーゼ含有画分を、MEP HyperCelクロマトグラフィーカラムにロードし、続いて50mM NaAc、0.1M NaCl、1mM EDTA、1mM DTT、pH4.6の定組成溶出によって溶出した。最終精製は、25mM NaAc、2mM DTT、pH4.5で平衡化したSP Sepharose FF(GE Healthcare)カラムを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー(CIEX)によって達成した。溶出にはNaCl勾配を用いた。
実施例1:
既知の方法によるリソソームタンパク質スルファミダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、およびイズロン酸2−スルファターゼの化学修飾
既知の方法によるリソソームタンパク質スルファミダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、およびイズロン酸2−スルファターゼの化学修飾
材料と方法
WO2008/109677による化学修飾:グリカン部分を修飾するために、上記リソソームタンパク質を、20mMリン酸ナトリウム、137mM NaCl(pH6.0)中、0℃で6.5時間、20mMメタ過ヨウ素酸ナトリウムとともに最初にインキュベートした。エチレングリコールを最終濃度192mMになるように添加することにより、グリカン酸化を停止(quench)した。クエンチングを0℃で15分間進行させた後、20mMリン酸ナトリウム、137mM NaCl(pH6.0)に対して4℃で一晩透析をおこなった。透析後、反応混合物に100mMの最終濃度で水素化ホウ素ナトリウムを添加して還元をおこなった。還元反応を一晩進行させた。最後に、酵素調製物を20mMリン酸ナトリウム、137mM NaCl(pH6.0)に対して透析した。全てのインキュベーションは暗所でおこなった。
WO2008/109677による化学修飾:グリカン部分を修飾するために、上記リソソームタンパク質を、20mMリン酸ナトリウム、137mM NaCl(pH6.0)中、0℃で6.5時間、20mMメタ過ヨウ素酸ナトリウムとともに最初にインキュベートした。エチレングリコールを最終濃度192mMになるように添加することにより、グリカン酸化を停止(quench)した。クエンチングを0℃で15分間進行させた後、20mMリン酸ナトリウム、137mM NaCl(pH6.0)に対して4℃で一晩透析をおこなった。透析後、反応混合物に100mMの最終濃度で水素化ホウ素ナトリウムを添加して還元をおこなった。還元反応を一晩進行させた。最後に、酵素調製物を20mMリン酸ナトリウム、137mM NaCl(pH6.0)に対して透析した。全てのインキュベーションは暗所でおこなった。
実施例2:
既知の方法に従って修飾したリソソームタンパク質スルファミダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、およびイズロン酸2−スルファターゼの分析
既知の方法に従って修飾したリソソームタンパク質スルファミダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、およびイズロン酸2−スルファターゼの分析
材料と方法
SDS−PAGE分析:実施例1に記載の既知の方法に従って修飾したリソソーム酵素を、NuPAGE 4−12%Bis−Trisゲルに添加したタンパク質と共にSDS−PAGE分析にかけた。Seeblue2プラスマーカーを分子量較正に使用し、そして、ゲルをInstant Blue(C.B.S Scientific)で染色した。
SDS−PAGE分析:実施例1に記載の既知の方法に従って修飾したリソソーム酵素を、NuPAGE 4−12%Bis−Trisゲルに添加したタンパク質と共にSDS−PAGE分析にかけた。Seeblue2プラスマーカーを分子量較正に使用し、そして、ゲルをInstant Blue(C.B.S Scientific)で染色した。
トリプシン断片のLC/MSによるグリカン分析:グリコシル化パターンを、実施例1の3種類のリソソームタンパク質のトリプシン断片のLC/MSによって測定した。タンパク質を還元し、アルキル化し、トリプシンで消化した。タンパク質の還元は、70℃で1時間(α−L−イズロニダーゼでは70℃)、50mM NH4HCO3中の5μLのDTT 10mM中でインキュベーションした。その後のアルキル化を50mMのNH4HCO3中の55mMヨードアセトアミド5μLを用いて室温(RT)および暗所で45分間おこなった。最後に、トリプシン消化を、30μLの50mM NH4HCO3、5mM CaCl2、pH8、および50mM酢酸中の0.2μg/μLトリプシン(プロテアーゼ:タンパク質比1:20(w/w))の添加によって実施した。消化は37℃で一晩おこなった。
5つのトリプシンペプチドフラグメントの可能なグリコシル化変異体を、糖ペプチド分析によって調べた。これは、液体クロマトグラフィーに続き、Agilent 6510四極子飛行時間型質量分析計(Q−TOF−MS)に連結したAgilent 1200 HPLCシステムを用いた質量分析(LC−MS)によっておこなった。いずれのシステムもMassHunter Workstationによって制御した。Waters XSELECT CSH 130 C18カラム(150×2.1mm)を用いてLC分離を行い、カラム温度を40℃に設定した。移動相Aは、5%アセトニトリル、0.1%プロピオン酸、および0.02%TFAから成り、移動相Bは、95%アセトニトリル、0.1%プロピオン酸および0.02%TFAからなる。0%〜10%Bの勾配で10分間、次いで10%〜70%Bでさらに25分間、0.2mL/分の流速で使用した。注入量は10μLであった。Q−TOFは、正のエレクトロスプレーイオンモードで操作した。データ取得の過程で、フラグメンター電圧、スキマー電圧、およびオクトポールRFはそれぞれ90、65および650Vに設定した。質量範囲は300〜2800m/zであった。
以下の分析を、スルファミダーゼ調製物のためだけにおこなった。
スルファミダーゼの動的光散乱(DLS)分析:修飾スルファミダーゼを12000rpmで3分間室温(RT)遠心分離することによって脱気した。DynaPro Titan装置(Wyatt Technology Corp)上で25%レーザー出力を用いて、それぞれ75μLを3回反復でDLS実験をおこなった。スルファミダーゼのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析:修飾酵素をAKTAmicroシステム(GE Healthcare)で実施した、分析サイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。40μL/分の製剤緩衝液の流速を有するSuperdex 200 PC 3.2/30カラムを使用した。サンプル量は10μLであり、10μgの酵素を含有していた。
スルファミダーゼの動的光散乱(DLS)分析:修飾スルファミダーゼを12000rpmで3分間室温(RT)遠心分離することによって脱気した。DynaPro Titan装置(Wyatt Technology Corp)上で25%レーザー出力を用いて、それぞれ75μLを3回反復でDLS実験をおこなった。スルファミダーゼのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析:修飾酵素をAKTAmicroシステム(GE Healthcare)で実施した、分析サイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。40μL/分の製剤緩衝液の流速を有するSuperdex 200 PC 3.2/30カラムを使用した。サンプル量は10μLであり、10μgの酵素を含有していた。
ゲル内消化およびMALDI−TOF MS分析:SDS−PAGE分析により、いくつかの余分なバンドが明らかとなり、切り取り、脱染色し、トリプシンを用いたゲル内消化で処理した。37℃で一晩消化した。上清を新しいチューブに移し、室温で60%アセトニトリル、0.1%TFA(3×20分)で抽出した。得られた上清をSpeed Vacで乾燥近くまで蒸発させた。濃縮溶液をα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸溶液(10mg/mL)と1:1で混合し、0.6μLをMALDIプレートに適用した。
Sciex 5800マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI−TOF/TOF MS)を用いてトリプシンペプチドフラグメントの分子質量を測定した。分析は、3550ショットおよび400ショットのレーザーエネルギーを用いた陽イオンリフレクトロンモードでおこなった。
活性部位の保存:スルファミダーゼの活性部位に対する化学修飾の影響をLC−MSおよびLC−MS/MS分析を用いて調べた。サンプルは、グリコシル化分析セクションに記載されたLC−MS法に従って調製した。システイン50変異体(システイン50(アルキル化)、酸化システイン50、FGly59およびSer50)を含む得られたトリプシンペプチドを、再構成されたイオンクロマトグラムを利用して半定量化した。ペプチドの同一性は、MSMSシークエンスによって確認した。MSMSパラメータは、以下の通りであった:衝突エネルギーを10、15、20V、走査範囲100〜1800m/z、スキャン速度1スキャン/秒に設定した。
結果
SDS−PAGE分析で明らかなように、全長タンパク質とは異なるサイズのいくつかの主要なペプチドが、既知の方法による化学修飾の結果、形成された(図2A)。ペプチド切断生成物を表している低分子量のペプチドバンドが、3種類のリソソームタンパク質のすべて明らかであったが、それは、スルファミダーゼに関して最も際立っていた。MALDI−TOF MS分析により、SDS−PAGEで観察された4つのゲルバンド#1−4(図2A、レーン2)は、化学修飾中に鎖切断によって生成されたスルファミダーゼのフラグメントとして同定することができた。ゲルバンド#1および#2は、化学修飾の結果形成された、6kDaおよび30kDaの分子量を有する2つのC末端トランケーションとして、ゲルバンド#3は1つの41kDaのN末端トランケーションとして決定された。
SDS−PAGE分析で明らかなように、全長タンパク質とは異なるサイズのいくつかの主要なペプチドが、既知の方法による化学修飾の結果、形成された(図2A)。ペプチド切断生成物を表している低分子量のペプチドバンドが、3種類のリソソームタンパク質のすべて明らかであったが、それは、スルファミダーゼに関して最も際立っていた。MALDI−TOF MS分析により、SDS−PAGEで観察された4つのゲルバンド#1−4(図2A、レーン2)は、化学修飾中に鎖切断によって生成されたスルファミダーゼのフラグメントとして同定することができた。ゲルバンド#1および#2は、化学修飾の結果形成された、6kDaおよび30kDaの分子量を有する2つのC末端トランケーションとして、ゲルバンド#3は1つの41kDaのN末端トランケーションとして決定された。
また、公知の方法による化学修飾により、スルファミダーゼ上のいくつかのメチオニン残基、特に、ほぼ完全に酸化された、メチオニン184およびメチオニン443に酸化が導入されることも見出された。メチオニン226(アミノ酸残基226〜238に対応するトリプシンペプチドに見出される)は、はるかに低い程度しか酸化されないが、この酸化はスルファミダーゼよりも不安定なタンパク質を生じ、41kDaのN末端トランケーションを生じる。従って、MS分析で観察されるように、メチオニン226の酸化および鎖切断は相関しているようであった。
特に、既知の方法による化学修飾の結果として共有結合による多量体形成を示す高分子量のバンドは、3種類のリソソームタンパク質のすべてで明らかであった。スルファミダーゼに関しては、主なバンドは111kDaの分子量の二量体として同定され得る(図2A、レーン2、バンド#4)。最も重大な多量体形成は、α−L−イズロニダーゼに関して見られた(図2A、レーン6)。
従って、既知の方法(WO2008/109677)によるスルファミダーゼの化学修飾が、グリカンを修飾するだけではなく、ポリペプチド鎖切断、共有結合による多量体形成、および酵素の構造的完全性に重要なアミノ酸部分の酸化も生じることがわかった。
SDS−PAGE分析はまた、未修飾タンパク質と比較したときに、3種類のリソソームタンパク質の全てに関して、主たるモノマーバンドの位置の共通する低下も明確に示した(図2Aレーン1対レーン2;レーン3対レーン4;レーン5対レーン6)。これは、約500〜1500Daの分子量の低下を示唆しており、主にグリカン部分が二重結合切断によって修飾される化学反応が予想される(図8)。
SECによるスルファミダーゼのさらなる分析は、既知の方法による化学修飾手順が、図3Aのクロマトグラムのプレピークとして示されるように、スルファミダーゼの凝集を促進することを明らかにした。クロマトグラムにおけるプレピークのピーク高さは、主ピークの高さの約3%であることが見出された。さらに、DLS分析は、同じ物質が、高分子量形態(すなわち、1010kDaを超える)の全タンパク質含量の15〜20%のタンパク質を含有することを明らかにした(図4A)。
さらに、LC−MSMSの使用により、還元ステップ(図1A)は、スルファミダーゼ(配列番号44)の活性部位50位のFGly残基をSerに還元することが判明した。この位置のSerは、効率的な触媒作用に適合しない(Recksiek et al,J Biol Chem 273(11): 6096-103 (1998))。FGlyから生成した相対量のSerを、FGly59およびSer50を含む2つのトリプシンペプチド断片に対応する、質量スペクトル中の二価荷電イオンのピーク面積測定に基づいて推定した。ピーク面積は、イオン化効率の補正を伴わないMS反応に基づくものであった。以下の表2は、既知の方法(実施例4、表3も参照)によるFGlyからSerへの変換率が約56%であることを示す。
従って、上記の修飾に加えて、既知の化学修飾手順は、スルファミダーゼの触媒活性にとって重要なアミノ酸残基の還元を引き起こす。FGly残基は、すべてのスルファターゼに存在し、酵素活性に重要である。
トリプシン断片のLC/MSによるグリカン分析は、グリカンの完全な修飾を示す、非天然グリカンが化学修飾後に試験したリソソームタンパク質に存在しないことを確認した。
実施例3:
リソソーム酵素スルファミダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、およびイズロン酸2−スルファターゼの化学修飾のための新規方法
新規方法1による化学修飾:上記リソソームタンパク質を、pH6.0のリン酸緩衝液中にて、20mMのメタ過ヨウ素酸ナトリウムと0℃にて120分間暗所にてインキュベートすることにより酸化した。エチレングリコールを最終濃度192mMになるように添加することにより、グリカン酸化を停止させた。クエンチングを6℃にて15分間進行させ、その後、反応混合物に水素化ホウ素ナトリウムを50mMの最終濃度まで添加した。暗所にて0℃にて120分間インキュベートした後、得られたタンパク質調製物を20mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl,pH6.0に対して限外濾過をおこなった。化学修飾のための新規方法1を図1Bに示す。
リソソーム酵素スルファミダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、およびイズロン酸2−スルファターゼの化学修飾のための新規方法
新規方法1による化学修飾:上記リソソームタンパク質を、pH6.0のリン酸緩衝液中にて、20mMのメタ過ヨウ素酸ナトリウムと0℃にて120分間暗所にてインキュベートすることにより酸化した。エチレングリコールを最終濃度192mMになるように添加することにより、グリカン酸化を停止させた。クエンチングを6℃にて15分間進行させ、その後、反応混合物に水素化ホウ素ナトリウムを50mMの最終濃度まで添加した。暗所にて0℃にて120分間インキュベートした後、得られたタンパク質調製物を20mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl,pH6.0に対して限外濾過をおこなった。化学修飾のための新規方法1を図1Bに示す。
新規方法2による化学修飾:上記リソソームタンパク質を、20mMのリン酸ナトリウム、137mMのNaCl(pH6.0)中にて、15mMのメタ過ヨウ素酸ナトリウムと0℃にて0.5時間インキュベートすることにより酸化した。エチレングリコールを最終濃度96mMになるように添加することにより、グリカン酸化を停止させた。0℃にて15分間クエンチングを進行させた。その後、反応液に水素化ホウ素ナトリウムを最終濃度が38mMになるまで加え、得られた混合物を0℃にて0.5時間保持した。最後に、得られた酵素調製物を20mMリン酸ナトリウム、137mM NaCl,pH6.0に対して限外濾過した。すべてのインキュベーションを暗所にておこなった。化学修飾のための新規方法2を図1Cに示す。
新規方法3による化学修飾:上記リソソームタンパク質を、20mMのリン酸ナトリウム、137mMのNaCl(pH6.0)中にて、10mMのメタ過ヨウ素酸ナトリウムと0℃にて0.5時間インキュベートすることにより酸化した。エチレングリコールを最終濃度96mMになるように添加することにより、グリカン酸化を停止させた。0℃にて15分間クエンチングを進行させた。その後、反応液に水素化ホウ素ナトリウムを最終濃度が15mMになるまで加え、得られた混合物を0℃にて1時間保持した。最後に、得られた酵素調製物を20mMリン酸ナトリウム、137mM NaCl,pH6.0に対して限外濾過した。すべてのインキュベーションを暗所にておこなった。化学修飾のための新規方法3を図1Dに示す。
ここで、以下の新規方法に関する実施例を、1種類の特定のリソソーム酵素を用いて評価および例示した。
ここで、以下の新規方法に関する実施例を、1種類の特定のリソソーム酵素を用いて評価および例示した。
新規方法4:スルファミダーゼについて例示する。還元ステップにおける水素化ホウ素ナトリウムの濃度が10mMであったことを除き、新規方法1のように実施した。
新規方法5:スルファミダーゼについて例示する。スルファミダーゼを、初期のpHが4.5〜6の酢酸塩緩衝液中、0℃、暗所で180分間、メタ過ヨウ素酸ナトリウム10mMと共にインキュベートすることによって酸化させた。エチレングリコールを最終濃度192mMになるように添加することにより、グリカン酸化をクエンチングした。反応混合液に水素化ホウ素ナトリウムを25mMの最終濃度まで添加する前に、6℃にて15分間クエンチングを進行させた。暗所にて0℃にて60分間インキュベートした後、得られたスルファミダーゼ調製物を10mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH7.4に対して限外濾過した。
新規方法6:スルファミダーゼについて例示する。スルファミダーゼを、初期pH4.5の酢酸緩衝液中、暗所で8℃にて、10mMメタ過ヨウ素酸ナトリウムと共に60分間インキュベートすることによって酸化させた。エチレングリコールを最終濃度192mMになるように添加することにより、グリカン酸化をクエンチングした。反応混合液に水素化ホウ素ナトリウムを25mMの最終濃度まで添加する前に、6℃にて15分間クエンチングを進行させた。暗所にて0℃にて60分間インキュベートした後、得られたスルファミダーゼ調製物を10mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH7.4に対して限外濾過した。
新規方法7:スルファミダーゼについて例示する。スルファミダーゼを、初期pH4.5の酢酸塩緩衝液中、暗所にて8℃にて、10mMメタ過ヨウ素酸ナトリウムと共にインキュベートすることにより酸化させた。エチレングリコールを最終濃度192mMになるように添加することにより、グリカン酸化をクエンチングした。反応混合液に水素化ホウ素ナトリウムを25mMの最終濃度まで添加する前に、6℃にて15分間クエンチングを進行させた。暗所にて0℃にて30分間インキュベートした後、得られたスルファミダーゼ調製物を10mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH7.4に対して限外濾過をおこなった。
新規方法8:α−L−イズロニダーゼについて例示する。α−L−イズロニダーゼを、20mMのリン酸ナトリウム、137mMのNaCl(pH6.0)中にて、15mMのメタ過ヨウ素酸ナトリウムと0℃にて20分間インキュベートすることにより酸化した。エチレングリコールを最終濃度96mMになるように添加することにより、グリカン酸化を停止させた。0℃にて15分間クエンチングを進行させた。その後、反応液に水素化ホウ素ナトリウムを最終濃度が37mMになるまで加え、得られた混合物を0℃にて1時間保持した。最後に、得られた酵素調製物を20mMリン酸ナトリウム、137mM NaCl,pH6.0に対して限外濾過した。すべてのインキュベーションを暗所にておこなった。
新規方法9:α−L−イズロニダーゼについて例示する。反応条件は、新規方法8について記載したとおりのものであったが、酸化工程中に保護リガンドとして機能する、過ヨウ素酸酸化を100μMの4−メチルウンベリフェロンイズロニダーゼの存在下で実施したというただ一つの例外を伴った。
結果
既に本明細書の他の部分で説明したように、メタ過ヨウ素酸ナトリウムは、炭水化物のcis−グリコール基をアルデヒド基に変換する酸化剤であるのに対し、水素化ホウ素塩は、アルデヒドをより不活性なアルコールに還元する還元剤である。従って、炭水化物構造は不可逆的に破壊される。
既に本明細書の他の部分で説明したように、メタ過ヨウ素酸ナトリウムは、炭水化物のcis−グリコール基をアルデヒド基に変換する酸化剤であるのに対し、水素化ホウ素塩は、アルデヒドをより不活性なアルコールに還元する還元剤である。従って、炭水化物構造は不可逆的に破壊される。
グリカンの化学修飾の改良方法を提供するために、特に改善された特性を有する修飾リソソームタンパク質を提供する手順を提供するために、異なる反応条件が評価された。メタ過ヨウ素酸ナトリウムによる酸化と水素化ホウ素ナトリウムによる還元の両方が、触媒活性および免疫原性傾向に悪影響を与える特性の、ポリペプチドの修飾および凝集を導入したと結論付けることができた。
改善された化学修飾手順についての条件を発見した(新規方法1〜9によって例示する)。驚いたことに、リソソームタンパク質の構造的完全性および活性は、水素化ホウ素ナトリウム還元ステップが、メタ過ヨウ素酸ナトリウム酸化のクエンチングの直後に続き、かつ、反応物質濃度および反応時間のバランスを保ち、既知の方法と比較して顕著に低い/短いという状況で維持できる。新規方法は、リソソームタンパク質の緩衝液交換および反応性アルデヒド中間体への長時間の暴露を省略した。新規化学修飾手順の例を図1B〜1Dに示す。
実施例4:
新規方法に従って修飾したスルファミダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、およびイズロン酸2−スルファターゼの分析
実施例2に記載の実験法を、新規方法に従って修飾したリソソームタンパク質を分析するために使用した。
新規方法に従って修飾したスルファミダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、およびイズロン酸2−スルファターゼの分析
実施例2に記載の実験法を、新規方法に従って修飾したリソソームタンパク質を分析するために使用した。
結果
ペプチド切断生成物を表す低分子量のペプチドバンドは、ごくわずかな程度ではあったが、新規方法に従って修飾された材料についても明らかであった(図2B、レーン1対レーン2;レーン3対レーン4;レーン5対レーン6、7、および8)。新規方法8に従って修飾されたα−L−イズロニダーゼに関して、モノマーのバンドだけが明らかであった(図2Bレーン7)。重要なことに、活性部位を保護するリガンドの使用(新規方法9、図2Bレーン8)は、手順に適合し、リガンドが省略された場合がSDS−PAGE分析によって区別可能である修飾α−L−イズロニダーゼをもたらした(新規方法8)。
ペプチド切断生成物を表す低分子量のペプチドバンドは、ごくわずかな程度ではあったが、新規方法に従って修飾された材料についても明らかであった(図2B、レーン1対レーン2;レーン3対レーン4;レーン5対レーン6、7、および8)。新規方法8に従って修飾されたα−L−イズロニダーゼに関して、モノマーのバンドだけが明らかであった(図2Bレーン7)。重要なことに、活性部位を保護するリガンドの使用(新規方法9、図2Bレーン8)は、手順に適合し、リガンドが省略された場合がSDS−PAGE分析によって区別可能である修飾α−L−イズロニダーゼをもたらした(新規方法8)。
結論として、修飾方法によって製造される薬物の工程に関連した不純物、品質の制限および安全性は、既知の方法と比較して、新規方法によって顕著に低減される。
選択されたトリプシンペプチド断片のグリカン分析は、化学修飾後に天然のグリカン構造が存在しないか、または場合によっては5%未満しか存在しないことを示し、グリカン修飾の完了または完了に近いことを暗示した。
SECによるスルファミダーゼのさらなる分析は、新規方法1に従って修飾されたスルファミダーゼは、既知の方法によって修飾されたスルファミダーゼと比較して凝集体が少ないことを示した。これは、図3のクロマトグラムで実証されており、高分子量の形態がクロマトグラムにプレピークとして存在している。図3Bのプレピークのピーク高さは、メインピーク高さに対して0.5%であり、図3Aのピーク高さ(3%)と比較して減少している。これは、新規方法5および6によって修飾されたスルファミダーゼの場合にも当てはまる(データ未掲載)。DLS分析(図4B)は、SEC分析の結果を確認した。新規方法に従って製造されたスルファミダーゼは、高分子量形態(1010kDa以上)で5%のタンパク質を含有した。従って、スルファミダーゼの凝集の形成は、新規方法によって制限されると結論づけることができた。
スルファミダーゼを活性部位の保存の程度を評価することによってさらに試験した:スルファミダーゼの活性部位における位置50のFGlyからSerへの還元をLC−MS/MSによって決定し、FGlyおよびSerを含有するトリプシンペプチドを陽性に同定した。ペプチドフラグメントの相対量を、二重荷電イオンの再構成イオンクロマトグラムからのピーク面積(イオン化効率の補正なし)を測定することによりLC−MSで分析した。化学修飾のために実施例3に記載した4種類の新規方法によって生成された試料を調製し、二連または三連で分析した(表3)。
活性部位FGlyの欠損は、新規方法によってかなり制限される。スルファミダーゼ上のグリカンを修飾する4種類の新規方法は、WO2008/109677に記載の手順を用いた56%(表2、実施例2参照)から、45%、44%、および34%(それぞれ新規方法1、5、および6、表3)までSer形成量を有意に減少させた。新規方法4のSer形成は約11%であり、従ってFGlyのSerへの変換は水素化ホウ素ナトリウム濃度に大きく依存することが示された。
実施例5:
インビトロでの化学的に修飾したリソソームタンパク質の受容体媒介エンドサイトーシス
インビトロでの化学的に修飾したリソソームタンパク質の受容体媒介エンドサイトーシス
材料と方法
スルファミダーゼを、公知の方法、ならびに新規方法1および4に従って調製し、修飾した(実施例1および3)。エンドサイトーシスはM6P受容体を発現するMEF−1線維芽細胞で評価した。MEF−1細胞を、75nMのスルファミダーゼを補充したDMEM培地中で24時間インキュベートした。細胞をDMEMで2回、0.9%NaClで1回洗浄した後、1%TritonX100を用いて細胞溶解した。溶解物スルファミダーゼ活性および総タンパク質含量を決定し、溶解物比活性を計算した。活性は、14.5mMジエチルバルビツール酸、14.5mM酢酸ナトリウム、0.34%(w/v)NaCl、および0.1%BSA中の基質として、0.25mM 4メチルウンベリフェリル−α−D−N−スルホグルコサミニドを用いて、460nmの蛍光強度でモニターした。全タンパク質濃度は、標準としてBSAを含むBCAキット(Pierce)を用いて測定した。データは、平均±SD(n=4)として示される。
スルファミダーゼを、公知の方法、ならびに新規方法1および4に従って調製し、修飾した(実施例1および3)。エンドサイトーシスはM6P受容体を発現するMEF−1線維芽細胞で評価した。MEF−1細胞を、75nMのスルファミダーゼを補充したDMEM培地中で24時間インキュベートした。細胞をDMEMで2回、0.9%NaClで1回洗浄した後、1%TritonX100を用いて細胞溶解した。溶解物スルファミダーゼ活性および総タンパク質含量を決定し、溶解物比活性を計算した。活性は、14.5mMジエチルバルビツール酸、14.5mM酢酸ナトリウム、0.34%(w/v)NaCl、および0.1%BSA中の基質として、0.25mM 4メチルウンベリフェリル−α−D−N−スルホグルコサミニドを用いて、460nmの蛍光強度でモニターした。全タンパク質濃度は、標準としてBSAを含むBCAキット(Pierce)を用いて測定した。データは、平均±SD(n=4)として示される。
結果
エンドサイトーシスアッセイで評価された全ての調製物について、細胞ホモジネート中でスルファミダーゼ活性を検出することができた。既知の方法ならびに新規の方法1および2によって調製された修飾スルファミダーゼは、未修飾組換えスルファミダーゼで得られたものの10%未満の細胞ホモジネートで特異的活性を示した(図5)。スルファミダーゼとともに最初にロードされ、次いでスルファミダーゼの非存在下で2日間増殖された細胞に保持された活性は、化学修飾がリソソームの安定性に悪影響を及ぼさないことを示す全ての調製物と同等であった。
エンドサイトーシスアッセイで評価された全ての調製物について、細胞ホモジネート中でスルファミダーゼ活性を検出することができた。既知の方法ならびに新規の方法1および2によって調製された修飾スルファミダーゼは、未修飾組換えスルファミダーゼで得られたものの10%未満の細胞ホモジネートで特異的活性を示した(図5)。スルファミダーゼとともに最初にロードされ、次いでスルファミダーゼの非存在下で2日間増殖された細胞に保持された活性は、化学修飾がリソソームの安定性に悪影響を及ぼさないことを示す全ての調製物と同等であった。
従って、化学修飾により、M6PRとしてのグリカン認識受容体に対するエピトープの除去の結果、スルファミダーゼの細胞への取り込みが起こりにくくなると結論付けることができる。巨視的レベルでは、この分子相互作用の喪失は、静脈内投与された場合に、血漿からのクリアランスの減少につながる。タンパク質クリアランスの減少は、患者への投与頻度を低減することが可能となる。修飾α−L−イズロニダーゼおよびイズロン酸2−スルファターゼで同様の結果を得た(データ未掲載)。
実施例6:
新規方法に従って修飾したリソソームタンパク質スルファミダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、およびイズロン酸2−スルファターゼのインビボでの血漿/血清クリアランス
新規方法に従って修飾したリソソームタンパク質スルファミダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、およびイズロン酸2−スルファターゼのインビボでの血漿/血清クリアランス
材料と方法
生活相において:血漿/血清クリアランス(CL)を、未修飾、修飾リソソームタンパク質スルファミダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、およびイズロン酸2−スルファターゼについてマウス(C57BL/6J)において調査した。マウスには、尾静脈に単回静脈内投与した。投与後24時間までの異なる時点(時間点あたり3匹のマウス)で、血液サンプルを採取し、そして、血漿/血清を調製した。リソソーム酵素の血漿/血清レベルを電気化学発光(ECL)イムノアッセイによって分析した。血漿クリアランスは、WinNonlinソフトウェアバージョン6.3(非コンパートメント分析、Phoenix, Pharsight Corp., USA)を用いて計算した。
生活相において:血漿/血清クリアランス(CL)を、未修飾、修飾リソソームタンパク質スルファミダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、およびイズロン酸2−スルファターゼについてマウス(C57BL/6J)において調査した。マウスには、尾静脈に単回静脈内投与した。投与後24時間までの異なる時点(時間点あたり3匹のマウス)で、血液サンプルを採取し、そして、血漿/血清を調製した。リソソーム酵素の血漿/血清レベルを電気化学発光(ECL)イムノアッセイによって分析した。血漿クリアランスは、WinNonlinソフトウェアバージョン6.3(非コンパートメント分析、Phoenix, Pharsight Corp., USA)を用いて計算した。
スルファミダーゼおよび新規方法1に従って修飾したスルファミダーゼに関しては、用量は、2mg/mLにて処方し、5mL/kgにて投与した10mg/kgであった。イズロン酸2−スルファターゼおよび新規方法2に従って修飾したイズロン酸2−スルファターゼに関しては、用量は、0.2mg/mLにて処方し、5mL/kgにて投与した1mg/kgであった。α−L−イズロニダーゼおよび新規方法3に従って修飾したα−L−イズロニダーゼに関しては、用量は、0.6mg/mLにて処方し、5mL/kgにて投与した3mg/kgであった。
ECLによるスルファミダーゼおよび修飾スルファミダーゼの定量:血漿PKサンプル中のスルファミダーゼおよび修飾スルファミダーゼを、Meso Scale Discovery(MSD)プラットフォームを用いたECLイムノアッセイにより決定した。ストレプトアビジン被覆MSDプレートをPBS中の5%ブロッカー−Aでブロックした。プレートを洗浄し、標準およびPKサンプルの異なる希釈液をプレートに分注した。ビオチン化抗スルファミダーゼマウスモノクローナル抗体とSulfo−Ru−標識ウサギ抗スルファミダーゼ抗体との混合物を加え、プレートを室温でインキュベートした。スルファミダーゼおよび標識抗体の複合体は、ビオチン化mAbを介してストレプトアビジン被覆プレートに結合するであろう。洗浄後、ウェルに読み取り緩衝液を添加することによって結合複合体量を決定し、プレートをMSD SI2400装置で読み取った。記録されたECLカウントは、試料中のスルファミダーゼの量に比例し、比較のスルファミダーゼ標準に対して評価した。
ECLによるα−L−イズロニダーゼおよび修飾α−L−イズロニダーゼの定量:血漿PKサンプル中のα−L−イズロニダーゼおよび修飾α−L−イズロニダーゼを、Meso Scale Discovery(MSD)プラットフォームを用いたECLイムノアッセイにより決定した。96ウェルストレプトアビジン金プレート(#L15SA−1、MesoScaleDiscovery(MSD))のウェルを、リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)中の1%のFish Gelatinでブロッキングし、洗浄緩衝液(PBS+0.05%のTween−20)で洗浄し、そして、ビオチン化、アフィニティー精製ヤギ−a−ヒトα−L−イズロニダーゼポリクローナル抗体(BAF2449、R&D)と共にインキュベートし、洗浄後に、サンプル希釈剤(PBS+0.05%のTween20+1%のC57BL6血清プール中の1%のFish Gelatin)中の標準およびPKサンプルの様々な希釈物を、プレート内で700rpmの振盪、RTにて2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、α−L−イズロニダーゼ特異的Rutenium(SULFO−TAG、MSD)タグ付与ヤギポリクローナル抗体(AF2449、R&D)を加え、捕捉されているα−L−イズロニダーゼまたは化学修飾α−L−イズロニダーゼに結合させた。プレートを洗浄し、そして、2×Read Buffer(MSD)を加えた。プレート内容物を、MSD Sector 2400 Imager Instrumentを使用して分析した。該器具は、プレート電極に電位をかけ、形成された免疫複合体を介して電極面に結合したSULFO−TAG標識を発光させる。器具は、サンプル中のα−L−イズロニダーゼまたは化学修飾α−L−イズロニダーゼの量に比例する発光強度を計測する。α−L−イズロニダーゼまたは化学修飾α−L−イズロニダーゼの量を、関連するα−L−イズロニダーゼまたは化学修飾α−L−イズロニダーゼ標準に対して決定した。
ECLによるイズロン酸2−スルファターゼおよび修飾イズロン酸2−スルファターゼの定量:血漿PKサンプル中のイズロン酸2−スルファターゼおよび修飾イズロン酸2−スルファターゼを、Meso Scale Discovery(MSD)プラットフォームを用いたECLイムノアッセイにより決定した。96ウェルストレプトアビジン金プレート(#L15SA−1、MesoScaleDiscovery(MSD))のウェルを、リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)中の1%のFish Gelatinでブロッキングし、洗浄緩衝液(PBS+0.05%のTween−20)で洗浄し、そして、ビオチン化、アフィニティー精製ヤギ−a−ヒトイズロン酸2−スルファターゼポリクローナル抗体(BAF2449、R&D)と共にインキュベートし、洗浄後に、サンプル希釈剤(PBS+0.05%のTween20+1%のC57BL6血清プール中の1%のFish Gelatin)中の標準およびPKサンプルの様々な希釈物を、プレート内で700rpmの振盪、RTにて2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、イズロン酸2−スルファターゼ特異的Rutenium(SULFO−TAG、MSD)タグ付与ヤギポリクローナル抗体(AF2449、R&D)を加え、捕捉されているイズロン酸2−スルファターゼまたは化学修飾イズロン酸2−スルファターゼに結合させた。プレートを洗浄し、そして、2×Read Buffer(MSD)を加えた。プレート内容物を、MSD Sector 2400 Imager Instrumentを使用して分析した。該器具は、プレート電極に電位をかけ、形成された免疫複合体を介して電極面に結合したSULFO−TAG標識を発光させる。器具は、サンプル中のイズロン酸2−スルファターゼまたは化学修飾イズロン酸2−スルファターゼの量に比例する発光強度を計測する。イズロン酸2−スルファターゼまたは化学修飾イズロン酸2−スルファターゼの量を、関連するイズロン酸2−スルファターゼまたは化学修飾イズロン酸2−スルファターゼ標準に対して決定した。
結果
修飾スルファミダーゼ、イズロン酸2−スルファターゼ、およびα−L−イズロニダーゼのマウスにおける血漿/血清クリアランスは、未修飾対応物と比較して有意に低下した(下記表4参照)。これはおそらく、少なくとも部分的に、化学修飾後の末梢組織における受容体媒介性取り込み阻害によるものであろう。
修飾スルファミダーゼ、イズロン酸2−スルファターゼ、およびα−L−イズロニダーゼのマウスにおける血漿/血清クリアランスは、未修飾対応物と比較して有意に低下した(下記表4参照)。これはおそらく、少なくとも部分的に、化学修飾後の末梢組織における受容体媒介性取り込み阻害によるものであろう。
実施例7:
脳ヘパラン硫酸蓄積に対する修飾スルファミダーゼのインビボ効果
脳ヘパラン硫酸蓄積に対する修飾スルファミダーゼのインビボ効果
材料および方法
インビボでの脳ヘパラン硫酸蓄積に関し、全体的な材料と方法に記載のようにQuattromed Cell Factory(QMCF)エピソーム発現系(Icosagen AS)で産生し、実施例3の新規方法1に従って修飾した修飾スルファミダーゼの静脈内(iv)投与の効果を調べた。
インビボでの脳ヘパラン硫酸蓄積に関し、全体的な材料と方法に記載のようにQuattromed Cell Factory(QMCF)エピソーム発現系(Icosagen AS)で産生し、実施例3の新規方法1に従って修飾した修飾スルファミダーゼの静脈内(iv)投与の効果を調べた。
試験物の調製:修飾スルファミダーゼを6mg/mLで調製し、滅菌濾過し、使用するまで−70℃にて凍結させた。凍結修飾スルファミダーゼおよび対応するビヒクル溶液を、注射する日に使用前に室温で最低1時間、最高2時間解凍した。クロロフェニラミンを等張食塩水に0.5mg/mLの濃度で溶解し、−20℃にて保存した。
動物:mps3a遺伝子に自発的ホモ接合突然変異を有する雄マウス、B6.Cg−Sgshmps3a/PstJ(MPS−II)(Jackson Laboratories, ME, USA)を使用した。動物は23±1℃および湿度40〜60%のケージに単独で飼育し、水および標準実験室用飼料を自由に摂取した。12時間/12時間の明/暗サイクルは、午後7時に点灯するように設定した。研究を開始する前に、動物を少なくとも2週間調整した。同じ育種単位由来の野生型兄弟を対照として含めた。研究Aでは、マウスは23〜24週齢であったが、研究Bではマウスは9〜10週齢であった。
実験手順研究A:30mg/kg(n=8)およびビヒクル(n=7)の修飾スルファミダーゼを、MPS−IIマウスに25日間、2日に1度(13回の注射)静脈内投与した。修飾スルファミダーゼまたはビヒクルの投与の30〜45分前に、クロルフェニラミンを皮下投与した(2.5mg/kg)。投薬は、朝の7時頃に開始した。試験品およびビヒクルを5mL/kgで投与した。最終投与量は、各投与機会において実際の体重に対して補正した。このスキームはビヒクルにも繰り返した。この試験は、最後の注射の2時間後に終了した。未処置の月齢が一致した野生型マウス(n=5)を、試験物質処置群と併せて含めた。マウスをイソフルランで麻酔した。血液は後眼窩叢から採取した。灌流後、心臓の左心室に20mLの生理食塩水を流した。組織を解剖(脳、肝臓、脾臓、肺、および心臓)し、秤量し、液体窒素中で急速に凍結させた。組織および血液は、LC−MS/MSを用いてヘキソサミンN−硫酸[α−1,4]ウロン酸(HNS−UA)レベルを測定するために調製した。HNS−UAはヘパラン硫酸蓄積の二糖マーカーであり、従ってHNS−UAレベルの減少はヘパラン硫酸の分解を反映する。HNS−UAデータは、mg組織当たりで表され、対照群の平均に対して標準化し、相対的単位対内部標準で計算した。全体的な有意性が、グループ間の有意性の試験のためのBonferroniの多重比較事後検定でも実証された場合、データは一元配置ANOVA検定によって分析した(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。
実験手順研究B:30mg/kg(n=6)、10mg/kg(n=6)の修飾スルファミダーゼおよびビヒクル(n=6)をMPS−IIマウスに週1回10週間(10回)静脈内投与した。修飾スルファミダーゼまたはビヒクルの投与の30〜45分前に、クロルフェニラミンを皮下投与した(2.5mg/kg)。最終投与量は、各投与機会において実際の体重に対して補正した。このスキームをビヒクルにも繰り返した。研究は最後の注射の24時間後に終了した。未処置の月齢が一致した野生型マウス(n=6)を、試験物処置群と併せて含めた。マウスをイソフルランで麻酔した。血液は後眼窩叢から採取した。灌流後、心臓の左心室に20mLの生理食塩水を流した。組織を解剖(脳、肝臓、脾臓)し、秤量し、液体窒素中で迅速に凍結させた。LC−MS/MSを用いてHNS−UAレベルを測定するために組織および血液を調製した。HNS−UAデータは、mg組織当たりで表し、対照群の平均に対して標準化し、相対的単位対内部標準で計算した。全体的な有意性が、グループ間の有意性の試験のためのBonferroniの多重比較事後検定でも実証された場合、データは一元配置ANOVA検定によって分析した(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。
組織試料のHNS−UAのLC−MS/MS分析:組織試料中のヘキソサミンN−硫酸[α−1,4]ウロン酸(HNS−UA)の液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC−MS/MS)分析は、Fullerら(Pediatr Res 56:733-738(2004))およびRamsayら(Mol Genet Metab 78:193-204(2003))に記載された方法に従って部分的に実施した。Lysing Matrix D装置(MP Biomedicals、LCC、Ohaio、US)を用いて、基質緩衝液(29mMジエチルバルビツール酸、29mM酢酸ナトリウム、0.68%(w/v)NaCl、100mL水、pH6.5)中でホモジナイズした。Savant FastPrep FP120/Bio101ホモジナイザー(LabWrench、ON、Canada)で25秒間ホモジナイズし、ホモジネートを10000rcfにてエッペンドルフ遠心分離機5417Rで遠心分離した。上清を蒸発乾固させた。150μLの誘導化溶液(250mMの3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン(PMP)、400mMのNH3、pH9.1)および内部標準コンドロイチン二糖Δジ−4Sナトリウム(ΔUA−GalNAc4S、0.1mg/mL)ストック溶液を添加した。誘導は、70℃にて90分間攪拌した後、溶液を200μLの800mMギ酸で酸性化した。脱イオン水を試料に加えて最終容量500μLとし、抽出をクロロホルム(3×500μL)で行い、過剰のPMPを除去した。遠心分離を13000×gで5分間行い、上相を新しいバイアルに移した。過剰のギ酸およびNH4COOHを除去するために、水相をスピードバック(Savant Instruments Inc.、Farmingdale、NY)で蒸発乾固させた。サンプルを合計100μLの5%アセトニトリル/0.1%酢酸/0.02%TFAに再構成した。
LC−MS/MS分析は、Sciex API 4000三重四極子質量分析計に連結したWaters Ultra Performance Liquid Chromatography(UPLC)でおこなった。機器の制御、データの取得と評価はAnalystソフトウェアでおこなった。
Acquity C18 CSHカラム(50×2.1mm、1.7μm)を用いてLC分離をおこなった。移動相Aは5%アセトニトリル/0.5%ギ酸から成り、移動相Bは95%アセトニトリル/0.5%ギ酸から構成された。7分間で1%〜99%Bの勾配を流速0.35mL/分で使用した。注入量は10μLであった。API4000は、エレクトロスプレー陰イオン多重反応モニタリング(MRM)モードで操作した。イオンスプレー電圧は4.5kVで動作し、ソース温度は450℃にてあった。アルゴンを衝突ガスとして使用した。衝突エネルギーは34Vであった。MRM遷移は764.4/331.2(PMP−HNS−UA)および788.3/534.3(PMP−内部標準)であった。HNS−UAの相対量は、内部標準のレベルに対して計算した。
結果
図6Aに示される研究Aの結果は、新規方法1に従って修飾されたスルファミダーゼが、30mg/kgの用量で25日間、1日おき(13回)に静脈内投与を繰り返した後に脳内のHNS−UAのレベルを30%減少させることを示している。
図6Aに示される研究Aの結果は、新規方法1に従って修飾されたスルファミダーゼが、30mg/kgの用量で25日間、1日おき(13回)に静脈内投与を繰り返した後に脳内のHNS−UAのレベルを30%減少させることを示している。
さらに、修飾スルファミダーゼによる処理は、肝臓(図6B)および肺(図示せず)におけるHNS−UAレベルを完全に消失させた。
研究Bの結果は図6Cに示されており、新規方法1による修飾スルファミダーゼは、週30mg/kgおよび10mg/kgで10週間それぞれ繰り返し静脈内投与した後、脳内のHNS−UAレベルを48%および14%減少させることを示している。
従って、これらの結果は、本明細書に記載の新規方法1に従って修飾されたスルファミダーゼタンパク質が、長期治療後に、脳におけるHNS−UAレベルの堅牢な低下、ならびに末梢器官におけるHNS−UAレベルの本質的に完全な低下を引き起こすことを実証する。
実施例8:
スルファミダーゼ修飾の最適化
スルファミダーゼ修飾の最適化
化学修飾ステップは、酸化ステップが第1ステップであり(以下ではR1と称される)、還元が第2ステップである(R2で表される)2つの部分に分けられる。2つのステップを最適化するために、2つのステップの温度、濃度、および時間の影響を調べる完全な設計の実験(DoE)を設定した。
材料および方法
Quattromed Cell Factory(QMCF)エピソーム発現系(Icosagen AS)において実施例1に記載のように製造したスルファミダーゼは、新規方法1に関して本質的に実施例3に記載したように修飾したが、調査するパラメータは、表5(以下)に従って変更した。R1の調査は、実施例3(新規方法1)に記載されているのと同様の減少およびパラメータ精密検査(work−up)を実施した。分析のエンドポイントは、実施例2に記載されたグリカンの酸化の程度、および実施例5に記載の修飾タンパク質の細胞取り込みのレベルである。
Quattromed Cell Factory(QMCF)エピソーム発現系(Icosagen AS)において実施例1に記載のように製造したスルファミダーゼは、新規方法1に関して本質的に実施例3に記載したように修飾したが、調査するパラメータは、表5(以下)に従って変更した。R1の調査は、実施例3(新規方法1)に記載されているのと同様の減少およびパラメータ精密検査(work−up)を実施した。分析のエンドポイントは、実施例2に記載されたグリカンの酸化の程度、および実施例5に記載の修飾タンパク質の細胞取り込みのレベルである。
パラメータの数および選択された設計のタイプにより、各ステップについて10回の実験が行われ、その結果はMODDE 10ソフトウェア(Umetrics AB)を用いて評価した。
さらに、第2のクエンチングステップの影響を、R1パラメータ8℃、60分および20mMのメタ過ヨウ素酸ナトリウムで生成したスルファミダーゼについて試験した。DoE実験と並行して2つのさらなる反応を行い、0.1Mアセトンを用いて、またはpH6.0以下になるまで酢酸を添加することによってクエンチングした。最後の精密検査は、他の反応のスキームに従った。このようにして製造されたスルファミダーゼを、実施例5に記載のSDS−PAGE法を用いて評価した。
R2実験は、R1のDoE分析後に最適であることが判明したパラメータに従って修飾されたスルファミダーゼを用いておこなった。
結果
R1の結果を以下の表6に要約する。
R1の結果を以下の表6に要約する。
さらに、実施例2によるグリコシル化分析は、既知の方法に従って修飾されたスルファミダーゼについて実施した。残存する元のN−グリカンは、N−グリコシル化部位N(21)、N(131)、N(244)およびN(393)で検出されなかった。
R1(酸化)のMODDE評価は、約8℃の温度、約1時間の反応持続時間および約10mmol/Lのメタ過ヨウ素酸ナトリウムの濃度でR1に最適性を示した。タンパク質全体の健康状態(例えば、構造的完全性)は、グリカン認識受容体を介した細胞取り込みを新規方法1のレベルに制限する、可能な限り低い酸化剤濃度より利益を得るようである(詳細については実施例5を参照)。
R1反応時間に関して開示された種々の条件が、グリカン修飾の程度の重要なパラメータと考えられた。さらに、過ヨウ素酸濃度は、グリカン修飾の程度に影響を及ぼし得る。
従って、R2(還元)設計は、R1についての上記同定された好ましいパラメータを使用した。すなわち、スルファミダーゼの酸化に使用した。R2の重要な終点は、修飾スルファミダーゼの活性に影響を及ぼすことが判明しているので(実施例2および4参照)、FGly含量である。結果は下記の表7を参照のこと。FGly59およびSer50を含有するペプチドフラグメントの相対量を、LC−MSを用いて再構成されたイオンクロマトグラム(イオン化効率の補正なし)からピーク面積を測定することによって分析した。
R2のDoEは、Ser形成が水素化ホウ素ナトリウムの濃度および温度に関連することを示した。Ser形成および高分子量形態の存在を考慮に入れると(データは示さない、結果は実施例3の新規方法4について得られたものと類似している)、R2の好ましい条件は、約0℃の温度、反応時間が約1時間以下、および水素化ホウ素ナトリウム濃度が12mmol/L超50mmol/L以下であることが好ましい。
還元ステップがクエンチングされた反応で生成されたスルファミダーゼが、クエンチングなしで生成されたスルファミダーゼに匹敵することがSDS−PAGE(データ示さず)で確認された。これは、0.1Mアセトンでクエンチングすること、または酢酸を添加してpH6未満に低下させることによる第2のクエンチングステップの導入が、材料の品質に悪影響を及ぼさないことを示す。
実施例9:
既知の方法によるスルファミダーゼの化学修飾後のグリカン構造解析
既知の方法によるスルファミダーゼの化学修飾後のグリカン構造解析
材料と方法
既知の方法による化学修飾:既知の方法によるスルファミダーゼの化学修飾は、実施例1に記載したように実施した。
既知の方法による化学修飾:既知の方法によるスルファミダーゼの化学修飾は、実施例1に記載したように実施した。
グリコシル化分析:化学修飾後のスルファミダーゼ上のグリカン構造の分析を、実施例2に記載のLC−MS法に従って実施した。
実施例2に記載されたNグリコシル化部位N(21)、N(131)、N(244)およびN(393)を含む4つのトリプシンペプチド断片上のグリカン部分の得られた修飾をLC−MS分析によって調べた。
結果
グリコシル化分析:化学修飾前の4つのグリコシル化部位に見出されるグリコシル化のタイプは、主にN(21)およびN(393)上では複合型グリカン、および、N(131)およびN(244)上ではオリゴマンノース型グリカンであった。
グリコシル化分析:化学修飾前の4つのグリコシル化部位に見出されるグリコシル化のタイプは、主にN(21)およびN(393)上では複合型グリカン、および、N(131)およびN(244)上ではオリゴマンノース型グリカンであった。
化学修飾の後、最も豊富に化学的に修飾された糖ペプチド上に対し、修飾されたグリカン構造の詳細な特徴付けを実施した(化学的に修飾した後のグリカンの不均一性が増加した結果、有意な感度の低下が理由でグリカンは検出されなかった)。この実施例では、既知の方法による化学修飾後のMan−6グリカンの修飾が調べられる。
グリカンの過ヨウ素酸塩処理は、炭水化物部分の2つの隣接するヒドロキシル基間の炭素結合を切断し、グリカン鎖の分子量を変化させる。図8Aは、化学修飾後のマンノースの予想される結合切断の例を示す。図8Bは、過ヨウ素酸ナトリウムによる酸化後に起こりうる理論的な結合切断を示すMan−6グリカンのモデルを示す。
図9には、既知の方法による化学修飾の前後に、N(131)に結合したMan−6グリカンを有するトリプシンペプチドNITR(T13+Man−6グリカン)の質量スペクトルが示されている。様々な程度の結合切断を有する化学修飾された糖ペプチドに対応するイオンが同定された。Man−6グリカンについては、理論的には、最大で3個の二重結合切断および1個の単結合切断があり得る。修飾が既知の方法に従っておこなった場合、質量スペクトルにおいて最も強いイオンシグナルは、2重結合切断および2個の単結合切断に対応し、一方で2番目に強いイオンシグナルは3個の二重結合切断および1個の単結合切断に相当することが見出され、それらは、最も可能性のある広範囲な結合切断である。既知の方法に従って化学修飾後のT13+Man−6グリカンに見られる結合決断の程度を可視化する図を図10Aに示す(観察されたイオンからの同位体分布により、結果は近似的であるが比較可能である)。化学修飾の再現性は、以前に知られている方法に従って製造された化学的に修飾されたスルファミダーゼの3つの異なるバッチを用いて試験された。異なる程度の結合切断に対応するイオンは、3つの異なるバッチからのMSスペクトルにおいて非常に類似した分布を示した。
実施例10:
新規方法1、4および5によるスルファミダーゼの化学修飾後のグリカン構造の分析
新規方法1、4および5によるスルファミダーゼの化学修飾後のグリカン構造の分析
新規方法1、4および5:新規方法によるスルファミダーゼの化学修飾を、実施例3の記載のように実施した。
グリコシル化分析:グリコシル化分析は、実施例2に記載のLC−MS法に従って実施した。Nグリコシル化部位N(21)、N(131)、N(244)およびN(393)を含む4つのトリプシンペプチド断片のグリカン変異体上の得られる修飾をLC−MS分析によって調べた。
結果
グリコシル化分析:新規方法1、4および5に従って化学的に修飾されたスルファミダーゼ上の修飾されたグリカンプロフィールの詳細な特徴付けを、最も豊富に化学的に修飾された糖ペプチドに対して実施した。この実施例10では、新規方法1、4および5による化学修飾後のMan−6グリカンの修飾を調べた。
グリコシル化分析:新規方法1、4および5に従って化学的に修飾されたスルファミダーゼ上の修飾されたグリカンプロフィールの詳細な特徴付けを、最も豊富に化学的に修飾された糖ペプチドに対して実施した。この実施例10では、新規方法1、4および5による化学修飾後のMan−6グリカンの修飾を調べた。
様々な程度の結合切断を伴う化学的に修飾された糖ペプチドT13+Man−6グリカンに対応するイオンが同定された。理論的には、最大で3個の二重結合切断および1個の単結合切断が存在し得る(図8B参照、Man−6グリカンのモデルは、過ヨウ素酸ナトリウムによる酸化後に起こり得る結合切断を示す)。修飾を新規方法1に従っておこなった場合、質量スペクトルにおける最も強いイオンシグナルは、1つの二重結合切断および3つの単結合切断に対応することが見出され、2番目に強いイオンシグナルは、2つの二重結合切断および2つの単結合が切断に対応することが見出された。新規方法3および4に従って修飾をおこなった場合、Man−6グリカンの結合切断は、さらに優先的に単結合切断へとシフトした。図10Aには、化学修飾後のトリプシンペプチドT13+Man−6グリカンの結合切断の程度を視覚化する図を示す。
化学的修飾の再現性を、三連(新規方法1)または二連(新規方法3)の化学修飾スルファミダーゼを使用することによって試験した。
既知の方法に従って化学的に修飾されたスルファミダーゼに由来するMan−6グリカン修飾と、新規方法1、4および5に従って化学的に修飾されたスルファミダーゼに由来するMan−6グリカン修飾とを比較すると、結合切断の程度に大きな違いがあった。これは図10Aに示されており、異なる程度の結合切断の分布が4つの方法についてプロットされている(観察されたイオンからの同位体分布のため、結果は近似的であるが比較可能である)。
図10Bは、使用された方法に対する単結合切断の相対的存在量を示す。既知の方法は、調べられたMan−6グリカン中に45%の単結合切断を有する修飾スルファミダーゼを提供するが、新規方法1、3および4は、化学修飾後にそれぞれ70、80および82%を有する。
実施例11:
公知の方法に従って修飾したイズロン酸2−スルファターゼの酵素活性の分析
公知の方法に従って修飾したイズロン酸2−スルファターゼの酵素活性の分析
材料と方法
実施例1に記載の公知の方法に従って修飾したイズロン酸2−スルファターゼの触媒活性を、基質4−メチルウンベリフェロンイズロニダーゼ−スルファートと共にイズロン酸2−スルファターゼの調製物をインキュベートすることによって評価した。反応混合物中の基質の濃度は50μMであり、そして、アッセイ緩衝液は50mMの酢酸ナトリウム、0.005%のTween20、0.1%のBSA、0.025%のAnapoe X−100、1.5mMのアジ化ナトリウム、pH5であった。インキュベーション後に、更なる脱硫酸化を、0.4Mのリン酸ナトリウム、0.2MのシトラートpH4.5を含むストップ緩衝液の添加によって阻害した。イズロン酸2−スルファターゼ(アッセイ濃度0.83μg/mL)を伴った第二の24時間のインキュベーションを行って、生成物(4−メチルウンベリフェロンイズロニダーゼ)を加水分解し、4−メチルウンベリフェロンを放出させ、そしてそれを、0.5Mの炭酸ナトリウム、0.025%のTriton X−100、pH10.7を用いて反応を停止させた後に、460nmの蛍光によって観察した。
実施例1に記載の公知の方法に従って修飾したイズロン酸2−スルファターゼの触媒活性を、基質4−メチルウンベリフェロンイズロニダーゼ−スルファートと共にイズロン酸2−スルファターゼの調製物をインキュベートすることによって評価した。反応混合物中の基質の濃度は50μMであり、そして、アッセイ緩衝液は50mMの酢酸ナトリウム、0.005%のTween20、0.1%のBSA、0.025%のAnapoe X−100、1.5mMのアジ化ナトリウム、pH5であった。インキュベーション後に、更なる脱硫酸化を、0.4Mのリン酸ナトリウム、0.2MのシトラートpH4.5を含むストップ緩衝液の添加によって阻害した。イズロン酸2−スルファターゼ(アッセイ濃度0.83μg/mL)を伴った第二の24時間のインキュベーションを行って、生成物(4−メチルウンベリフェロンイズロニダーゼ)を加水分解し、4−メチルウンベリフェロンを放出させ、そしてそれを、0.5Mの炭酸ナトリウム、0.025%のTriton X−100、pH10.7を用いて反応を停止させた後に、460nmの蛍光によって観察した。
結果
公知の方法に従って修飾したイズロン酸2−スルファターゼの活性は、未修飾イズロン酸2−スルファターゼのそれの50%未満であった(結果未掲載)。
公知の方法に従って修飾したイズロン酸2−スルファターゼの活性は、未修飾イズロン酸2−スルファターゼのそれの50%未満であった(結果未掲載)。
実施例12:
新規方法に従って修飾したイズロン酸2−スルファターゼの酵素活性の分析
新規方法に従って修飾したイズロン酸2−スルファターゼの酵素活性の分析
材料と方法
イズロン酸2−スルファターゼを新規方法10および11に従って修飾し、そしてそれは、実施例3のとおりであったが、水素化ホウ素ナトリウム反応混合物を0℃にて0.5時間維持した点が異なっていた。新規方法11では、さらに、過ヨウ素酸酸化を、0.5mg/mLのヘパリンの存在下でおこなった。新規方法10および11に従って修飾したイズロン酸2−スルファターゼの触媒活性を、実施例11に記載の手順に従って測定した。
イズロン酸2−スルファターゼを新規方法10および11に従って修飾し、そしてそれは、実施例3のとおりであったが、水素化ホウ素ナトリウム反応混合物を0℃にて0.5時間維持した点が異なっていた。新規方法11では、さらに、過ヨウ素酸酸化を、0.5mg/mLのヘパリンの存在下でおこなった。新規方法10および11に従って修飾したイズロン酸2−スルファターゼの触媒活性を、実施例11に記載の手順に従って測定した。
結果
新規方法10および11に従って調製したイズロン酸2−スルファターゼは、未修飾イズロン酸2−スルファターゼのそれに匹敵する活性を示した(図11)。
新規方法10および11に従って調製したイズロン酸2−スルファターゼは、未修飾イズロン酸2−スルファターゼのそれに匹敵する活性を示した(図11)。
実施例13:
活性部位保護リガンドの存在下でのα−L−イズロニダーゼの化学修飾
活性部位保護リガンドの存在下でのα−L−イズロニダーゼの化学修飾
実施例3の新規方法9に記載のとおり、酸化(ステップa)を様々なリガンドの存在下でおこなった。使用したリガンドは、それぞれ、4−メチルウンベリフェロンイズロニダーゼ、5−フルオロ−α−L−イドピラノシルウロン酸フルオリド、ヘパリン、ヘパリンスルファートおよびD−サッカリン酸1.4−ラクトンであった。
酵素活性を、「Standardization of α-L-iduronidase Enzyme Assay with Michaelis-Menten Kinetics. Ou L, Herzog TL, Carrie M. Wilmot CM3、およびChester B. Whitley CB. Mol Genet Metab. 2014 111: 113-115」に記載のとおり計測した。
結果
ステップa)中に保護リガンドとして5−フルオロ−α−L−イドピラノシルウロン酸フルオリドを使用したとき、保護リガンドなしで、すなわち、新規方法8に従って、ステップa)をおこなったときと比較して、修飾α−L−イズロニダーゼに関して、52%低い触媒活性を得た。例えばD−サッカリン酸1.4−ラクトンなどの文献で知られている他の阻害剤を使用したとき、修飾α−L−イズロニダーゼに関して、25%減の触媒活性を得た。触媒活性減少の同様の傾向は、例えば4−MU−イズロニダーゼ、ヘパリンまたはヘパリンスルファートなどの基質に関して気付いた(データ未掲載)。
ステップa)中に保護リガンドとして5−フルオロ−α−L−イドピラノシルウロン酸フルオリドを使用したとき、保護リガンドなしで、すなわち、新規方法8に従って、ステップa)をおこなったときと比較して、修飾α−L−イズロニダーゼに関して、52%低い触媒活性を得た。例えばD−サッカリン酸1.4−ラクトンなどの文献で知られている他の阻害剤を使用したとき、修飾α−L−イズロニダーゼに関して、25%減の触媒活性を得た。触媒活性減少の同様の傾向は、例えば4−MU−イズロニダーゼ、ヘパリンまたはヘパリンスルファートなどの基質に関して気付いた(データ未掲載)。
実施例14:
ゲルマトリックス上に固定したα−L−イズロニダーゼの化学修飾
ゲルマトリックス上に固定したα−L−イズロニダーゼの化学修飾
本明細書中に記載した修飾方法、特に実施例3の新規方法3を、α−L−イズロニダーゼをゲルマトリックスに固定しながらおこなった。α−L−イズロニダーゼを、20mMのNaClを含み、6.7のpHを有する20mMのリン酸ナトリウム緩衝液と共にSOURCE(商標)15S Strong Cation Exchangeカラムに添加することによって固定した。
Aldurazymeを、250μLのSource15Sゲルマトリックスと共に1時間インキュベートした。その後、ゲルマトリックスをそっとペレット化し、上清中のタンパク濃度が、ゲルとのインキュベーション前のそれの10%未満であることを見つけ出した。あるサンプルを、化学修飾で処理する前に1日冷蔵庫内で保存した。第二のインキュベーションを化学修飾の直前におこなった。
Aldurazymeを、250μLのSource15Sゲルマトリックスと共に1時間インキュベートした。その後、ゲルマトリックスをそっとペレット化し、上清中のタンパク濃度が、ゲルとのインキュベーション前のそれの10%未満であることを見つけ出した。あるサンプルを、化学修飾で処理する前に1日冷蔵庫内で保存した。第二のインキュベーションを化学修飾の直前におこなった。
α−L−イズロニダーゼの添加に続いて、カラムを、連続方式で、ステップa)の溶液で平衡化し、ステップa)のクエンチング、ステップb)、およびステップb)のクエンチングをおこなった。100mMのリン酸ナトリウムおよび700mMの塩化ナトリウムを含み、5.6のpHを有する緩衝液を用いてカラムを洗浄することによって、化学修飾α−L−イズロニダーゼの溶出をおこなう。
酵素活性を、「Standardization of α-L-iduronidase Enzyme Assay with Michaelis-Menten Kinetics. Ou L, Herzog TL, Carrie M. Wilmot CM3, and Chester B. Whitley CB. Mol Genet Metab. 2014 111: 113-115」に記載のとおり計測した。
結果
Source15Sへのバッチ方式での結合
Aldurazymeをゲルマトリックスに固定しながらの、化学修飾の実施は、修飾を溶液中でおこなったときと比較して、得られた修飾α−L−イズロニダーゼの触媒活性を8%増強した。
Source15Sへのバッチ方式での結合
Aldurazymeをゲルマトリックスに固定しながらの、化学修飾の実施は、修飾を溶液中でおこなったときと比較して、得られた修飾α−L−イズロニダーゼの触媒活性を8%増強した。
実施例15
保護リガンドの存在下、ゲルマトリックスに固定したα−L−イズロニダーゼの化学修飾
保護リガンドの存在下、ゲルマトリックスに固定したα−L−イズロニダーゼの化学修飾
本明細書中に記載した修飾方法、特に実施例3の新規方法3を、α−L−イズロニダーゼをゲルマトリックスに固定しながら、かつ、リガンドの存在下でおこなった。使用したリガンドは、それぞれ、5−フルオロ−α−L−イドピラノシルウロン酸フルオリドおよびD−サッカリン酸1.4−ラクトンであった。
α−L−イズロニダーゼを、20mMのNaClを含み、6.7のpHを有する20mMのリン酸ナトリウム緩衝液と共にSOURCE(商標)15S Strong Cation Exchangeカラムに添加することによって固定した。Aldurazymeを、250μLのSource15Sゲルマトリックスと共に1時間インキュベートした。その後、ゲルマトリックスをそっとペレット化し、上清中のタンパク濃度が、ゲルとのインキュベーション前のそれの10%未満であることを見つけ出した。あるサンプルを、化学修飾で処理する前に1日冷蔵庫内で保存した。第二のインキュベーションを化学修飾の直前におこなった。
α−L−イズロニダーゼを、20mMのNaClを含み、6.7のpHを有する20mMのリン酸ナトリウム緩衝液と共にSOURCE(商標)15S Strong Cation Exchangeカラムに添加することによって固定した。Aldurazymeを、250μLのSource15Sゲルマトリックスと共に1時間インキュベートした。その後、ゲルマトリックスをそっとペレット化し、上清中のタンパク濃度が、ゲルとのインキュベーション前のそれの10%未満であることを見つけ出した。あるサンプルを、化学修飾で処理する前に1日冷蔵庫内で保存した。第二のインキュベーションを化学修飾の直前におこなった。
α−L−イズロニダーゼの添加に続いて、カラムを、連続方式で、ステップa)の溶液で平衡化し、ステップa)のクエンチング、ステップb)、およびステップb)のクエンチングをおこなった。100mMのリン酸ナトリウムおよび700mMの塩化ナトリウムを含み、5.6のpHを有する緩衝液を用いてカラムを洗浄することによって、化学修飾α−L−イズロニダーゼの溶出をおこなった。
酵素活性を、「Standardization of α-L-iduronidase Enzyme Assay with Michaelis-Menten Kinetics. Ou L, Herzog TL, Carrie M. Wilmot CM3, and Chester B. Whitley CB. Mol Genet Metab. 2014 111: 113-115」に記載のとおり計測した。
結果
ゲルマトリックス上のaldurazymeの固定と組み合わせた、活性部位を保護するための阻害剤の使用の複合アプローチは、Source15SStrong Cation Exchangeカラム上への固定と組み合わせた5−フルオロ−α−L−イドピラノシルウロン酸フルオリドが、修飾を保護リガンドなしで溶液中でおこなったときと比較して、得られた修飾α−L−イズロニダーゼの触媒活性の37%の増大をもたらしたという驚くべき知見をもたらした。阻害剤D−サッカリン酸1.4−ラクトンを使用した対応する結果は、修飾を保護リガンドなしで溶液中でおこなったときと比較して、触媒活性の25%の減少であった。
ゲルマトリックス上のaldurazymeの固定と組み合わせた、活性部位を保護するための阻害剤の使用の複合アプローチは、Source15SStrong Cation Exchangeカラム上への固定と組み合わせた5−フルオロ−α−L−イドピラノシルウロン酸フルオリドが、修飾を保護リガンドなしで溶液中でおこなったときと比較して、得られた修飾α−L−イズロニダーゼの触媒活性の37%の増大をもたらしたという驚くべき知見をもたらした。阻害剤D−サッカリン酸1.4−ラクトンを使用した対応する結果は、修飾を保護リガンドなしで溶液中でおこなったときと比較して、触媒活性の25%の減少であった。
実施例16:
イズロン酸2−スルファターゼ欠乏マウスにおける脳への修飾イズロン酸2−スルファターゼの分布
イズロン酸2−スルファターゼ欠乏マウスにおける脳への修飾イズロン酸2−スルファターゼの分布
材料と方法
実施例4の新規方法2に従って製造し、静脈内(iv)に投与された修飾イズロン酸2−スルファターゼのインビボにおける脳への分布を調査した。
実施例4の新規方法2に従って製造し、静脈内(iv)に投与された修飾イズロン酸2−スルファターゼのインビボにおける脳への分布を調査した。
試験物調製:
修飾イズロン酸2−スルファターゼを、2mg/mLにて処方し、濾過滅菌し、そして、使用するまで−70℃にて冷凍した。
修飾イズロン酸2−スルファターゼを、2mg/mLにて処方し、濾過滅菌し、そして、使用するまで−70℃にて冷凍した。
動物:
雄マウス、IDS−KO(B6N.Cg−Idstm1Muen/J)(Jackson Laboratories, ME, USA)を使用した。動物を、23±1℃および40〜60%の湿度にてケージ内に単独で収容し、水および標準的な飼料を自由摂取させた。12/12時間の光/暗サイクルに設定し、午後7時に点灯した。動物を、試験開始の少なくとも2週間前に馴化した。マウスには、10mg/kgの修飾イズロン酸2−スルファターゼを尾静脈に静脈内投与した。最後の注射の24時間後に、試験を完了した。マウスを、イソフルランで麻酔した。血液を、後眼窩静脈叢放血から採血した。潅流の後に、心臓の左心室を通した20mLの生理的食塩水のフラッシュが続いた。脳を、摘出し、計量し、そして、液体窒素中で急速に冷凍した。脳ホモジネートを調製し、そして、プロトコールに対する調整として10mMの酢酸鉛の添加を伴った実施例2に記載の方法を使用して、活性を評価した。
雄マウス、IDS−KO(B6N.Cg−Idstm1Muen/J)(Jackson Laboratories, ME, USA)を使用した。動物を、23±1℃および40〜60%の湿度にてケージ内に単独で収容し、水および標準的な飼料を自由摂取させた。12/12時間の光/暗サイクルに設定し、午後7時に点灯した。動物を、試験開始の少なくとも2週間前に馴化した。マウスには、10mg/kgの修飾イズロン酸2−スルファターゼを尾静脈に静脈内投与した。最後の注射の24時間後に、試験を完了した。マウスを、イソフルランで麻酔した。血液を、後眼窩静脈叢放血から採血した。潅流の後に、心臓の左心室を通した20mLの生理的食塩水のフラッシュが続いた。脳を、摘出し、計量し、そして、液体窒素中で急速に冷凍した。脳ホモジネートを調製し、そして、プロトコールに対する調整として10mMの酢酸鉛の添加を伴った実施例2に記載の方法を使用して、活性を評価した。
結果:
IDS−KOマウスの灌流脳ホモジネート中の修飾イズロン酸2−スルファターゼの活性を、確認できた。1.8±0.4μM/分(n=4)の平均活性を、使用したアッセイ条件下で測定した。
IDS−KOマウスの灌流脳ホモジネート中の修飾イズロン酸2−スルファターゼの活性を、確認できた。1.8±0.4μM/分(n=4)の平均活性を、使用したアッセイ条件下で測定した。
Claims (24)
- 修飾リソソームタンパク質を調製する方法であって、該方法が:
a)グリコシル化リソソームタンパク質を過ヨウ素酸アルカリ金属塩と4時間以下の期間にわたり反応させ、および
b)前記リソソームタンパク質を水素化ホウ素アルカリ金属塩と2時間以下の期間にわたり反応させること、
を含み、
それによって、該リソソームタンパク質のグリカン部分を修飾し、グリカン認識受容体に関して該リソソームタンパク質の活性を低下させ、但し、前記タンパク質がスルファミダーゼでないことを条件とする、方法。 - ステップb)が、以下のi)〜iv):
i)前記水素化ホウ素アルカリ金属塩が水素化ホウ素ナトリウムである;
ii)前記水素化ホウ素が、前記過ヨウ素酸塩の濃度の4倍以下、例えば前記過ヨウ素酸塩の濃度の3倍以下、例えば前記過ヨウ素酸塩の濃度の2.5倍以下、例えば前記過ヨウ素酸塩の濃度の0.5〜4倍以下の濃度にて使用される;
iii)前記反応が、2時間以下、例えば1.5時間以下、例えば1時間以下、例えば0.75時間以下、例えば約0.5時間の期間にわたりおこなわれる、および、
iv)前記反応が、0〜8℃の温度にておこなわれる、
のうちの少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ、例えばそのすべてによってさらに特徴づけられる、請求項1に記載の方法。 - ステップa)が、以下のi)〜v):
i)前記過ヨウ素酸アルカリ金属塩がメタ過ヨウ素酸ナトリウムである;
ii)前記過ヨウ素酸塩が、20mM以下、例えば15mM以下、例えば約10mMの濃度にて使用される;
iii)前記反応が、0〜22℃の温度、例えば0〜8℃の温度、例えば0〜4℃の温度、例えば約8℃、例えば約0℃にておこなわれる;
iv)前記反応が、3時間以下、例えば2時間以下、例えば1時間以下、例えば約0.5時間の期間にわたりおこなわれる;および、
v)前記ステップa)の反応が、3〜7のpHにておこなわれる、
のうちの少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、例えば少なくともすべてによってさらに特徴づけられる、請求項1または2に記載の方法。 - ステップa)が3時間以下の期間にわたりおこなわれ、およびステップb)が1時間以下にわたりおこなわれ、そして、前記水素化ホウ素が、前記過ヨウ素酸塩の濃度の4倍以下の濃度にて任意に使用される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- ステップa)およびステップb)を、透析、限外濾過、沈殿または緩衝液の交換をおこなうことなく、順におこなわれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 修飾リソソームタンパク質を調製する方法であって、該方法が:
a)グリコシル化リソソームタンパク質を過ヨウ素酸アルカリ金属塩と4時間以下の期間にわたり反応させ、および
b)前記リソソームタンパク質を水素化ホウ素アルカリ金属塩と2時間以下の期間にわたり反応させること、
を含み;
それによって、該リソソームタンパク質のグリカン部分を修飾し、グリカン認識受容体に関して該リソソームタンパク質の活性を低下させ、ここで、前記リソソームタンパク質の活性部位または機能的エピトープを、ステップa)およびb)の少なくとも一方の間、酸化および/または還元反応に利用不可能にする、方法。 - ステップb)が、以下のi)〜iv):
i)前記水素化ホウ素アルカリ金属塩が水素化ホウ素ナトリウムである;
ii)前記水素化ホウ素が、前記過ヨウ素酸塩の濃度の4倍以下、例えば前記過ヨウ素酸塩の濃度の3倍以下、例えば前記過ヨウ素酸塩の濃度の2.5倍以下、例えば前記過ヨウ素酸塩の濃度の0.5〜4倍以下の濃度にて使用される;
iii)前記反応が、2時間以下、例えば1.5時間以下、例えば1時間以下、例えば0.75時間以下、例えば約0.5時間の期間にわたりおこなわれる;および、
iv)前記反応が、0〜8℃の温度にておこなわれる、
のうちの少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ、例えばそのすべてによってさらに特徴づけられる、請求項6に記載の方法。 - ステップa)が、以下のi)〜v):
i)前記過ヨウ素酸アルカリ金属塩がメタ過ヨウ素酸ナトリウムである;
ii)前記過ヨウ素酸塩が、20mM以下、例えば15mM以下、例えば約10mMの濃度にて使用される;
iii)前記反応が、0〜22℃の温度、例えば0〜8℃の温度、例えば0〜4℃の温度、例えば約8℃、例えば約0℃にておこなわれる;
iv)前記反応が、3時間以下、例えば2時間以下、例えば1時間以下、例えば約0.5時間の期間にわたりおこなわれる;および、
v)前記ステップa)の反応が、3〜7のpHにておこなわれる、
のうちの少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、例えば少なくともすべてによってさらに特徴づけられる、請求項6または7に記載の方法。 - ステップa)が3時間以下の期間にわたりおこなわれ、およびステップb)が1時間以下にわたりおこなわれ、そして、前記水素化ホウ素が、前記過ヨウ素酸塩の濃度の4倍以下の濃度にて任意に使用される、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
- ステップa)およびステップb)を、透析、限外濾過、沈殿または緩衝液の交換をおこなうことなく、順におこなわれる、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 前記修飾リソソームタンパク質が、スルファターゼ;グリコシドヒドロラーゼ、またはプロテアーゼである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
- 前記リソソームタンパク質が、デオキシリボヌクレアーゼ−2−α;β−マンノシダーゼ;リボヌクレアーゼT2;リソソームα−マンノシダーゼ;α−L−イズロニダーゼ;トリペプチジル−ペプチダーゼ1;ヒアルロニダーゼ−3;カテプシンL2;セロイド−リポフスチノーシスニューロンタンパク質5;グルコシルセラミダーゼ;組織α−L−フコシダーゼ;ミエロペルオキシダーゼ;α−ガラクトシダーゼA;β−ヘキソサミニダーゼサブユニットα;カテプシンD;プロサポシン;β−ヘキソサミニダーゼサブユニットβ;カテプシンL1;カテプシンB;β−グルクロニダーゼ;プロカテプシンH;カテプシンH;非分泌性リボヌクレアーゼ;リソソームα−グルコシダーゼ;リソソーム保護タンパク質;γ−インターフェロン誘導性リソソームチオールレダクターゼ;タルトラート−耐性酸性ホスファターゼ5型;アリールスルファターゼA;前立腺酸性ホスファターゼ;N−アセチルグルコサミン−6−スルファターゼ;アリールスルファターゼB;β−ガラクトシダーゼ;α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ;スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ;ガングリオシドGM2アクチベーター;N(4)−(β−N−アセチルグルコサミニル)−L−アスパラギナーゼ;イズロン酸2−スルファターゼ;カテプシンS;N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ;リソソーム酸性リパーゼ/コレステリルエステルヒドロラーゼ;リソソームPro−Xカルボキシペプチダーゼ;カテプシンO;カテプシンK;パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1;アリールスルファターゼD;ジペプチジルペプチダーゼ1;α−N−アセチルグルコサミニダーゼ;ガラクトセレブロシダーゼ;精巣上体分泌タンパク質E1;ジ−N−アセチルキトビアーゼ;N−アシルエタノールアミン加水分解酸性アミダーゼ;ヒアルロニダーゼ−1;キトトリオシダーゼ−1;酸性セラミダーゼ;ホスホリパーゼB様1;前駆タンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型;XV型ホスホリパーゼA2;推定ホスホリパーゼB様2;デオキシリボヌクレアーゼ−2−β;γ−グルタミルヒドロラーゼ;アリールスルファターゼG;L−アミノ酸オキシダーゼ; シアリダーゼ−1;レグミン;シアル酸O−アセチルエステラーゼ;胸腺特異的セリンプロテアーゼ;カテプシンZ;カテプシンF;プレニルシステインオキシダーゼ1;ジペプチジルペプチダーゼ2;リソソームチオエステラーゼPPT2;ヘパラナーゼ;カルボキシペプチダーゼQ;β−グルクロニダーゼ、およびスルファターゼ修飾因子1、から選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
- 前記方法のステップa)およびb)の少なくとも一方が、保護リガンドの存在下でおこなわれる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
- 前記方法のステップa)およびb)が、リソソームタンパク質を樹脂で固定したままおこなわれる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
- リソソームタンパク質の未修飾形態と比較して、グリカン部分の50%以下が未修飾のまま維持されていることを特徴とする、低い含量の未修飾グリカン部分を有する修飾リソソームタンパク質であって、それによって、グリカン認識受容体について低下した活性を有するが、但し、スルファミダーゼ、β−グルクロニダーゼ、トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)またはα−L−イズロニダーゼでないことを条件とする、タンパク質。
- 前記タンパク質が、デオキシリボヌクレアーゼ−2−α;β−マンノシダーゼ;リボヌクレアーゼT2;リソソームα−マンノシダーゼ;ヒアルロニダーゼ−3;カテプシンL2;セロイド−リポフスチノーシスニューロンタンパク質5;グルコシルセラミダーゼ;組織α−L−フコシダーゼ;ミエロペルオキシダーゼ;α−ガラクトシダーゼA;β−ヘキソサミニダーゼサブユニットα;カテプシンD;プロサポシン;β−ヘキソサミニダーゼサブユニットβ;カテプシンL1;カテプシンB;プロカテプシンH;カテプシンH;非分泌性リボヌクレアーゼ;リソソームα−グルコシダーゼ;リソソーム保護タンパク質;γ−インターフェロン誘導性リソソームチオールレダクターゼ;タルトラート−耐性酸性ホスファターゼ5型;アリールスルファターゼA;前立腺酸性ホスファターゼ;N−アセチルグルコサミン−6−スルファターゼ;アリールスルファターゼB;β−ガラクトシダーゼ;α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ;スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ;ガングリオシドGM2アクチベーター;N(4)−(β−N−アセチルグルコサミニル)−L−アスパラギナーゼ;イズロン酸2−スルファターゼ;カテプシンS;N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ;リソソーム酸性リパーゼ/コレステリルエステルヒドロラーゼ;リソソームPro−Xカルボキシペプチダーゼ;カテプシンO;カテプシンK;パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1;アリールスルファターゼD;ジペプチジルペプチダーゼ1;α−N−アセチルグルコサミニダーゼ;ガラクトセレブロシダーゼ;精巣上体分泌タンパク質E1;ジ−N−アセチルキトビアーゼ;N−アシルエタノールアミン加水分解酸性アミダーゼ;ヒアルロニダーゼ−1;キトトリオシダーゼ−1;酸性セラミダーゼ;ホスホリパーゼB様1;前駆タンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型;XV型ホスホリパーゼA2;推定ホスホリパーゼB様2;デオキシリボヌクレアーゼ−2−β;γ−グルタミルヒドロラーゼ;アリールスルファターゼG;L−アミノ酸オキシダーゼ; シアリダーゼ−1;レグミン;シアル酸O−アセチルエステラーゼ;胸腺特異的セリンプロテアーゼ;カテプシンZ;カテプシンF;プレニルシステインオキシダーゼ1;ジペプチジルペプチダーゼ2;リソソームチオエステラーゼPPT2;ヘパラナーゼ;カルボキシペプチダーゼQ、およびスルファターゼ修飾因子1、から選択される、請求項15に記載の修飾リソソームタンパク質。
- リソソームタンパク質の未修飾形態と比較して、未修飾グリカン部分の45%以下が未修飾を維持し、例えば40%以下、35%以下、30%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、1%以下のグリカン認識受容体のエピトープが、リソソームタンパク質の未修飾形態から維持される、請求項15または16に記載の修飾リソソームタンパク質。
- 前記リソソームタンパク質の未修飾グリカン部分が、単結合切断および二重結合切断によって破壊され、単結合切断の程度が、オリゴマンノースグリカンにおいて少なくとも60%である、請求項15〜17のいずれか1項に記載の修飾リソソームタンパク質。
- 前記未修飾グリカン部分が、少なくとも1個の前記修飾リソソームタンパク質のN−グリコシル化部位を欠き、例えば、前記リソソームタンパク質のN−グリコシル化部位の少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12、少なくとも13個を欠き、好ましくは前記エピトープがすべてのN−グリコシル化部位を欠く、請求項15〜18のいずれか1項に記載の修飾リソソームタンパク質。
- 前記リソソームタンパク質が、対応する未修飾リソソームタンパク質の触媒活性の少なくとも50%の触媒活性を維持した、請求項15〜19のいずれか1項に記載の修飾リソソームタンパク質。
- 請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法によって取得可能な修飾リソソームタンパク質(但し、当該タンパク質はスルファミダーゼでない)。
- 治療法に使用するための、請求項15〜21のいずれか1項に記載の修飾リソソームタンパク質。
- リソソーム蓄積症に罹患している哺乳動物の治療に使用するための、請求項22に記載の修飾リソソームタンパク質。
- リソソーム蓄積症に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、治療的有効量の、請求項15〜21のいずれか1項に記載の修飾リソソームタンパク質を該哺乳動物に投与することを含む、方法。
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