JP2018531626A - 赤血球タンパク質を生産するための方法 - Google Patents

赤血球タンパク質を生産するための方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、赤血球タンパク質の合成のための新規な方法に関し、該方法では、前記タンパク質は、タンパク質の生産のための無細胞系にて、少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤、リポソームまたはナノディスクの存在下で合成される。本発明はまた、このようにして生産されたタンパク質を含んでなる組成物に関する。

Description

緒論
血液型は、遺伝的基準に基づき体系に分類される表面抗原セットにより決定される。現在、300を超える赤血球抗原を定義する35の血液型体系(ABO、Rhesus、Kell、Duffy、MNSなど)が存在する。ABO式などの広い組織分布を有するものもあれば、アカゲザル(Rh)式などの赤血球に特異的なものもある。特に、Rh式およびKell式では、赤血球が有する特定の抗原は免疫原性が高い。
アカゲザル(Rh)式は、最も多形であって輸血の観点から最も免疫原性が高いので、最も複雑な血液型体系である。一般的なRh表現型は、RHD遺伝子によりコードされる主要抗原RH1(D)と、RHCE遺伝子によりコードされるRH2(C)、RH3(E)、RH4(c)およびRH5(e)抗原を含んでなる。対立形質によれば、8種の古典的ハプロタイプが識別される。
Rh式は、輸血医学に重要な役割を果たす。実際に、その抗原は、血液型不適合の状況で、レシピエントまたは妊婦における同種異系抗体の生成の発端となり、それにより溶血事故および/または新生児(HDN)の溶血性疾患を招くことがある。RhD陰性妊婦では、抗D同種異系免疫は、胎児のRhD陽性赤血球が胎盤から母胎の循環に入ることに応答した抗D IgG抗体の合成に相当する。代わりに、母胎の抗Dが胎盤を通って胎児の循環に入ると、RhD陽性胎児において溶血および貧血を招く。
現在、不適合性のほとんどの場合の抗D抗体の最終的な生成は高性能スクリーニング検査とRHD陰性妊婦における効果的な予防によって大抵回避できるが、同種異系免疫の場合が残る。特に、D陰性表現型を有する特定の被験体は、「partial D」表現型を確定する1以上の欠損エピトープに対する抗D同種異系抗体を生成することがあり、これはRHDタンパク質の細胞外ループ内に位置する1以上のDエピトープの有無により識別できる(Cartron et al, 1996)。従って、D抗原は、エピトープのモザイクから構成され、そのうち少なくとも9種(epD1〜epD9)はモノクローナル抗体の組により定義されていることから、複雑な抗原である(Tippett et al 1996)。
現在のところ、Rh抗原に対する血漿抗体の同定は、異なるRh表現型を発現する検査赤血球からなるパネルの使用を必要とする。これらの表現型のほとんどのものは一般的であるが、あるものは希少な血液型に相当し、その入手可能性は大きな問題となることがあり、場合によっては、これらの抗原に対する抗体を同定することを困難にする。加えて、このようなパネルの使用は、サンプル中の病原体のリスクを伴う。
血液の安全性という点で、本発明者らが提案する患者の血清中に存在する抗Rh同種異系抗体の同定は、希少な血液の入手可能性に依存しない迅速かつ有効な特性決定のための新規なツールを開発することである。従って、RhDタンパク質、より一般には、Rhタンパク質の生産が、存在度の低い抗原、さらにはより多い抗原であっても、それに対する同種異系抗体を検出するというこれらの問題を克服するための代替として見えてくる。
Rhタンパク質をコードする遺伝子の発見以来、Rh表現型の分子的基礎が特定され(Mouro-Chanteloup et al, 1993)、組換えRhタンパク質の発現が種々の異種系で行われてきた。さらに、in vitroにおける膜タンパク質の合成技術も、膜タンパク質を可溶化および安定化するためのナノディスク(WO2007/038755;WO2005/081743;WO2015/095854)の使用などが記載されている。in vitroで発現されるタンパク質を機能的立体配座で合成可能とするには、ナノディスクの脂質組成が不可欠である。特定のナノディスク、特に市販のナノディスクは、総ての膜タンパク質の構造および/または活性を保存する立体配座を取得可能とするものではない(Bernhard Frank et al. (2015)。原形質膜の抽出後の発現レベルがプロテオリポソームにおける機能的再構成を可能にしたRh非赤血球タンパク質(Rh non-erythrocyte proteins)(RHCG)の合成(Mouro, Chanteloup et al, 2010)とは対照的に、抗体により認識されるエピトープを保存する立体配座でRHCEおよびRHDタンパク質の有意な膜発現を得ることは困難であった。それらの複雑なオリゴマーの組織化のために、これらのタンパク質は、会合RHAGタンパク質(Rh関連糖タンパク質(Rh-associated Glycoprotein))の存在下でしか発現できない(Cartron et al 1999, Mouro-Chanteloup et al, 2002) (Goossens et al., Plos one, 2013)。しかしながら、後者は異種系で10,000コピー/細胞(赤血球上でのその発現の10%)が発現できるに過ぎなかった。これらの発現レベルは、特に、力価の低いまたは親和性の低い抗体では、患者の血清中の抗体を検出するためのツールとしての組換えRhタンパク質の使用に適合しない。
従って、天然の構成で、かつ、診断使用を可能とするに十分なレベルで赤血球タンパク質の発現を可能とする系の必要がなお存在する。
説明
本発明は、大量のタンパク質をそれらの天然の状態で取得可能とする赤血球タンパク質生産系に関する。
これまで、使用する系に関わらずRhD、RHCE、RhAGおよびUTBなどの赤血球タンパク質を生産することはできなかったが、本発明者らは、in vitroにおいて界面活性剤、リポソームまたはナノディスクの存在下、好ましくは、POPC型の脂質組成を有するナノディスクの存在下で生産した際に、抗体により認識されるエピトープを保持可能とする立体配座で大量のこれらの赤血球タンパク質を取得可能であることを示した。
RhD、RHCE、RhAG、またはUTBなどの赤血球タンパク質無細胞生産のために発明者らが最適化した方法は、前記タンパク質を含んでなる新規な組成物を、従来技術の方法で可能であったものよりも大量に取得することを可能とした。特に驚くべき様式で、RhDなどの赤血球タンパク質の無細胞生産のための前記方法は、従来技術の教示(Mouro-Chanteloup et al., Blood 2002, Goossens et al., Plos one, 2013)とは対照的に、前記タンパク質RhDを生産するために会合タンパク質RHAG(Rh関連糖タンパク質)の使用をなしで済ますことを可能とした。
よって、本発明は、界面活性剤またはリポソームまたはナノディスクの存在を特徴とする、RhD、RHCE、RhAGまたはUTBなどの赤血球タンパク質を生産するための無細胞系に関する。
「赤血球タンパク質」は、本明細書では、赤血球系の細胞で発現されるタンパク質を意味する。「赤血球系」は、本明細書では、その分化が直接または間接的に赤血球に至る、赤血球を含むあらゆる細胞種を意味する。赤血球系は、本発明に関して、とりわけ、前赤芽球、好塩基球性赤芽球、多染性赤芽球、好酸性赤芽球、網状赤血球および赤血球を含んでなる。好ましくは、赤血球タンパク質は、本発明に関して、赤血球系で主要に発現されるタンパク質である。
本発明の赤血球タンパク質は、特に、膜タンパク質である。前記タンパク質は、内在性膜タンパク質または膜に会合したタンパク質であり得る。好ましくは、本発明の赤血球タンパク質は、内在性膜タンパク質であり;より好ましくは、それはポリトピック型タンパク質(polytopic protein)であり;いっそうより好ましくは、前記ポリトピック型タンパク質は血液型抗原を有する。
本発明に特に関連する赤血球タンパク質のうち、RhD、RHCE、RhAGおよびUTBタンパク質およびその変異体が挙げられる。実際に、現在のところ、これらのタンパク質を天然の形態で大量に生産するのは不可能である。細胞系における赤血球Rhタンパク質の生産は可能であるが、診断使用には全く不十分な極めて低い収量である。さらに、細胞系生産は、特定のタンパク質(例えば、RhDおよびRHCE)の適正な標的化のために、RhAGとの共発現を必要とする。しかしながら、血液型抗原を担持する赤血球膜の内在性ポリトピック型タンパク質、すなわち、特に、RhAG、RhD、RHCEおよびUTBの生産のために本発明者らによって開発された方法は、前記タンパク質を含んでなる新規な組成物を従来技術の方法で可能なものよりも大量に取得することを可能とした。
「RhDタンパク質」は、12の膜貫通ドメインと細胞質内N末端およびC末端を有する417アミノ酸の非グリコシル化膜タンパク質を意味する。D抗原は、RhDタンパク質の全長に沿った立体配座に依存するエピトープの集合体である。RhDタンパク質のこれらの立体配座エピトープを認識する多くのモノクローナル抗体が存在する。これらの抗体は、とりわけ、前記RhDタンパク質の正確な折りたたみを確認すること、またはその変異体を同定することを可能とした(Advent and Reid, 2000)。好ましくは、RhDタンパク質は、配列番号5(NP_001121163)により表される配列を有するタンパク質である。いっそうより好ましくは、RhDタンパク質は、配列が配列番号1(NM_001127691)により表されるRHD遺伝子によりコードされる。
「RHCEタンパク質」は、12の膜貫通ドメインと細胞質内N末端およびC末端を有する417アミノ酸の非グリコシル化膜タンパク質を意味する。好ましくは、RHCEタンパク質は、配列番号6(NP_065231)により表される配列を有するタンパク質である。いっそうより好ましくは、RHCEタンパク質は、配列が配列番号2(NM_020485)により表されるRHCE遺伝子によりコードされる。RHCE遺伝子は、RHD遺伝子と極めて高い相同性を有し、これらの2つの遺伝子は約96%の同一性を有する。
「RhAGタンパク質」は、本発明の意味の範囲内で理解されるように、12の膜貫通ドメインを有する409アミノ酸のグリコシル化膜タンパク質である。このタンパク質は、アンモニウム輸送体活性を有する。好ましくは、RhAGタンパク質は、配列番号7(NP_000315)により表される配列を有するタンパク質である。いっそうより好ましくは、RhAGタンパク質は、配列が配列番号3(NM_000324)により表されるRHAG遺伝子によりコードされる。
「UTBタンパク質」は、本明細書において、10の膜貫通ドメインと細胞質内N末端およびC末端を有する尿素輸送体を意味する。UTBタンパク質は、Kidd抗原を有する。好ましくは、UTBタンパク質は、配列番号8(NP_001 122060)により表される配列を有するタンパク質である。いっそうより好ましくは、UTBタンパク質は、配列が配列番号3(NM_001 12858 8)により表されるSLC14A1遺伝子によりコードされる。
これらの遺伝子座のそれぞれに関して、特に、RHD遺伝子座に関して多くの表現型変異体が知られている(例えば、Advent and Reid, The Rh blood group System: a review Blood 95 (2): 375-387, 2000; The Blood Group Antigen FactsBook, 第3版, Marion E. Reid, Christine Lomas-Francis, Martin L. Olsson編, Academic Press, 2012, ISBN: 978-0-12-415849-8参照)。
本明細書で使用する場合、遺伝子または所与のタンパク質の「変異体」は、配列がそれぞれ前記遺伝子または前記タンパク質の配列と少なくとも95%、好ましくは97%、より好ましくは98%、いっそうより好ましくは99%の相同性を有するポリヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。これらの変異体は、少なくとも4つの機構:(1)染色体再配列;(2)1以上のアミノ酸変化を生じる点突然変異;(3)ナンセンス突然変異および(4)終止コドンの出現をもたらすヌクレオチド欠失により生じ得る。
本発明の赤血球タンパク質遺伝子に影響を及ぼす染色体再配列はよく知られている。例えば、極めて相同な(96%を超える同一性)RHCEおよびRHD遺伝子がタンデムで配置され、これがこれらの遺伝子間の遺伝子再構成および「ハイブリッド遺伝子」の出現を助長する。
さらに、RHDおよびRHCE遺伝子は、高度の多形を示す。同様に、RHAGおよびSLC14A1遺伝子のそれぞれに多くの変異体が存在する。これらの遺伝子における多数の突然変異が記載されている(例えば、The Blood Group AntigenFactsBook, 第3版, Marion E. Reid, Christine Lomas-Francis, Martin L. Olsson編, Academic Press, 2012, ISBN: 978- 0-12- 415849-8参照)。また、これらの遺伝子のそれぞれに見られる異なる突然変異をコンパイルする"Blood Group Antigen Gene Mutation Database" (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gv/rbc/xslcgi.fcgi?cmd=bgmut/systems_info&system=rh)のサイトも参照することができる。
本発明の方法は、RhD、RHCEおよびUTBタンパク質のそれぞれのみならず、これらのタンパク質のそれぞれの総ての変異体の生産も可能にした。
特定の実施形態では、対象とする赤血球タンパク質をコードするヌクレオチド配列のコドン使用頻度が、ヒト以外の種々の生物(例えば、大腸菌(E. coli)などの細菌)に由来する無細胞系での使用のために最適化される。ここで、用語「コドンの最適化」は、対象とするポリペプチドをコードヌクレオチド配列が、前記ポリペプチドのアミノ酸配列を変更することなく特定の生物での発現に最適となるように改変されるプロセスを意味する。「コドン」は、細胞内で特定のアミノ酸に翻訳される3つのヌクレオチドの配列である。3つのヌクレオチドの配列には64のあり得る組合せが存在するが、20の天然アミノ酸しかないことは周知である。よって、ほとんどのアミノ酸はいくつかのコドンによってコードされている。ある種の特定のコドンは、同じアミノ酸をコードする他のコドンよりも良好に翻訳される場合が多い。加えて、コドン使用頻度の選好性は種によって異なる。このために、ある種からのある遺伝子の発現は、この遺伝子が別の種に導入される場合には最適ではなくなり得るということが見られる。当業者ならば、遺伝コードの縮重を活用することによってこの問題を克服できることを容易に理解するであろう。よって、対象とするポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、前記配列が、コードされるポリペプチドの配列を変更することなく、対象とする種で有効に使用されるコドンを現状で含むように改変される。どのコドンが対象とする生物において最も広く使用されているかを決定することは可能である。これは最も慣用される無細胞系が由来する生物(大腸菌、ウサギ、コムギ)を含む多くの生物に関してすでに行われている。よって、当業者ならば、対象とする各生物のコドン使用頻度を十分に決定することができる。
特定の実施形態によれば、本発明の無細胞タンパク質は、後の回収またはさらには精製を容易にするためにタグ配列と融合される。このような配列は当業者に周知である。それらにはHA、FLAG、V5およびmycエピトープ、ならびにキチン結合タンパク質(chitin binding protein)(CBP)、マルトース結合タンパク質(maltose binding protein)(MBP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(glutathione-S-transferase)(GST)およびStrepタグが含まれる。また、6ヒスチジンの配列を使用することもできる。これらの配列は対象とするタンパク質のN末端またはC末端に付加することができる。
よって、本発明は、RhD、RHCE、RhAGおよびUTBから選択される赤血球タンパク質またはその変異体を合成するための方法に関し、前記方法は、
a)前記タンパク質またはその変異体をコードする核酸と無細胞タンパク質生産系とを、少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤、リポソームまたはナノディスクの存在下で接触させる工程;および
b)前記タンパク質の合成工程
を含んでなる。
好ましい実施形態によれば、本発明は、RhD、RhCE、RhAGおよびUTBから選択される赤血球タンパク質またはその変異体を合成する方法に関し、前記方法は、 a)前記タンパク質をコードする核酸またはそれと少なくとも95%の同一性を有する同族体とタンパク質生産のための無細胞系とを、少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤、リポソームまたはナノディスクの存在下で接触させる工程;および
b)前記タンパク質の合成工程
を含んでなる。
本発明に関して、「無細胞系タンパク質生産」は、細胞の不在下でのタンパク質の合成のための生化学系を意味する。よって、本発明に関するタンパク質生産のための無細胞系は、細胞の不在下でのタンパク質の生産に必要な総ての要素を含有する。特に、この系は、とりわけ、細胞由来の転写および翻訳装置を含んでなる。
これらのin vitro系は、生きている生物体、従って、従来のin vivo系では発現させることができない細胞傷害性膜タンパク質または調節もしくは不安定タンパク質の合成を可能とするという点で特に有利である。特に、無細胞系は、本発明の赤血球タンパク質などの膜タンパク質の発現に特に適している。実際に、膜タンパク質は細胞で発現させることが極めて難しく、細胞膜上での発現は細胞内輸送および適切な標的化を必要とする。可溶性タンパク質に適用可能な技術のほとんどは、特に抽出および精製段階で不溶性凝集塊に対処できない。対照的に、無細胞系は、例えば、正確な折りたたみを促進する試薬の添加によりタンパク質の反応環境をかなり簡単に変化させる能力を与えるという点で、従来のタンパク質合成系よりも有利である。事実、各反応パラメーター(例えば、pH、酸化還元電位、イオン強度など)を生産する目的タンパク質に応じて変化させることができる。加えて、これらの系では、得られる組換えタンパク質が反応の主生成物に相当する。
無細胞タンパク質合成の鋳型は、いずれのタイプのポリヌクレオチド、RNAまたはDNAであってもよい。好ましくは、使用するマトリックスは、DNA分子である。この場合、無細胞系は、DNA鋳型に含まれる情報を、転写反応と翻訳反応を組み合わせることによってタンパク質に変換することができる。
特に大腸菌系で使用される組合せ系は、認識可能なプロモーターを含んでなるDNA鋳型からmRNAを連続的に生成する。この系では、内因性RNAポリメラーゼを使用できるが、反応混合物に外因性のRNAポリメラーゼ、一般には、T7ファージまたはファージSP6のものを加えるのが好ましい。この系は、対象とするいずれの遺伝子とも併用が可能である。特に、本発明のDNA鋳型は、対象とする赤血球タンパク質を発現するための発現カセットを含んでなる。
「発現カセット」は、本明細書では、例えば、プロモーター配列および「エンハンサー」配列など、遺伝子配列の発現を制御する1以上の調節要素と機能的に連結された、対象とするポリヌクレオチド、例えば、本発明の赤血球タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでなるDNA断片を意味する。
ポリヌクレオチドは、これらの異なる核酸配列が、あるものの機能が他のものにより影響を受けるように単一の核酸断片上に会合されている場合に、調節要素に「機能的に連結」されている。例えば、調節DNA配列は、2つの配列が、調節DNA配列がコードDNA配列の発現に影響を与えるように配置されていれば(言い換えれば、コードDNA配列がプロモーターの転写制御下にあれば)、RNAまたはタンパク質をコードするDNA配列に「機能的に連結」されている。コード配列は、センス配向およびアンチセンス配向の両方で調節配列に機能的に連結することができる。好ましくは、本発明のコード配列は、センス配向で調節配列に機能的に連結される。
「調節配列」または「調節要素」は、本明細書では、それらが連結されるコード配列の発現およびプロセシングに影響を与えるのに必要なポリヌクレオチド配列を意味する。このような調節配列は、特に、転写終結配列、プロモーター配列および「エンハンサー」配列;スプライシングおよびポリアデニル化シグナルなどの有効なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を向上させる配列(例えば、Kozak配列);タンパク質の安定性を高める配列;ならびに必要に応じて、タンパク質の分泌を高める配列を含んでなる。
好ましくは、本発明の調節配列は、プロモーター配列を含み、すなわち、本発明の赤血球タンパク質をコードする遺伝子は好ましくは、対応するmRNAの発現を可能とするプロモーターに機能的に連結されている。タンパク質赤血球をコードする遺伝子は好ましくは、プロモーターの下流に位置し、それにより発現カセットを形成する場合に、そのプロモーターに機能的に連結されている。
「プロモーター」は、本明細書で使用する場合、コード配列の上流(5’)に位置する場合が最も多い、RNAポリメラーゼおよび転写に必要とされる他の因子により認識され、従って、前記コード配列の発現を制御するヌクレオチド配列を意味する。「プロモーター」は、本明細書で使用する場合、特に、ミニマルプロモーター、すなわち、TATAボックスおよび転写部位の始まりを特定することを可能とする他の配列から構成される短いDNA配列を含む。「プロモーター」はまた、本発明に関して、ミニマルプロモーターおよびコード配列の発現を制御し得る調節要素を含むヌクレオチド配列も含んでなる。例えば、本発明のプロモーター配列は、遺伝子の発現レベルに影響を与え得る「エンハンサー」配列などの調節配列を含み得る。
有利には、本発明によるプロモーターは、対象とする無細胞系で使用されるRNAポリメラーゼとともに機能するものである。例えば、SP6およびT7ファージRNAポリメラーゼにより認識されるプロモーターが当業者に広く知られている。よって、T7 RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーターを有するpIVEXベクター(Roge and Betton, 2005)が以下の実験の節で使用された。このようなプロモーターを含有するベクターもまた市販されている。
本発明によれば、界面活性剤、リポソームまたはナノディスクが、タンパク質合成中、または好ましくは、タンパク質合成の開始前にも、反応媒体に加えられる。最大数ミリグラム/mlのこの脂質が好ましくは反応媒体に、一般には0.5〜10mg/mlの間で加えられる。
「界面活性剤」は、本明細書で使用する場合、疎水基と親水基の両方を含有する両親媒性分子を意味する。これらの分子は、極性親水基および長い疎水性炭素鎖を含有する。用語「非イオン性界面活性剤」は、親水性部分が非荷電の界面活性剤を含む分子を意味する。非イオン性界面活性剤は、本発明によれば、とりわけ、アルキルポリグルコシド、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル(C12E8)、Brij系界面活性剤、例えば、Brij 35(C12E23ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル)またはBrij 58(C16E20ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル)、ゲナポール、グルカニド、例えば、MEGA−8、−9、−10、オクチルグルコシド、プルロニックF127、トリトン系界面活性剤、例えば、トリトンX−100(C14H220(C2H40)n)またはトリトンX−114(C24H4206)、およびツィーン系界面活性剤、特に、ツィーン20(ポリソルベート20)およびツィーン80(ポリソルベート80)を含んでなる。好ましくは、本発明の非イオン性界面活性剤は、Brij 35およびBrij 58から選択される。より好ましくは、本発明の非イオン性界面活性剤は、Brij 35である。
この好ましい実施形態によれば、本発明は、従って、工程a)の接触が、Brij 35およびBrij 58から選択される少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤の存在下で行われる上記のような方法に関する。
本発明の方法による赤血球タンパク質を生産するために最も有効な界面活性剤濃度は、界面活性剤ごとに異なる。それらは界面活性剤の低臨界ミセル濃度、すなわち、ミセルが形成される濃度によって異なる。しかしながら、これらの濃度は一般に、0.1〜5%の間、より詳しくは0.1〜1%の間を含む。例えば、Brij 35およびBrij 58は一般に0.5%で使用される。所与の界面活性剤が固体であるか液体であるかによって、%はそれぞれw/v%またはv/v%比を意味する。
「リポソーム」は、本明細書で使用する場合、間に水性コンパートメントが捕捉された同心性の脂質二重層により形成された人工小胞を意味する。リポソームは、限定されるものではないが、極性脂質、例えば、リン脂質、例えば、ホスホグリセリド、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、カルジオリピン、またはそれらの組合せを含む任意の好適な脂質から作製することができる。他の脂質化合物、例えば、トリアシルグリセロール、ワックス、スフィンゴ脂質およびステロールおよびそれらの脂肪酸エステル、またはそれらの組合せもリポソームに組み込むことができる。
脂質小胞は、当業者に既知のプロトコールを用いて作製されるおよそ100nm径の球体の形態の脂質二重層に相当する。
これらの脂質小胞は、反応媒体に導入する前に界面活性剤で処理してもよい。第1の実施形態によれば、使用する脂質小胞は、天然起源、好ましくは、ダイズまたは卵由来のものである。このような脂質は、フランスのCoger社により転売されたAvanti Polar Lipids社から市販されている。あるいは、脂質小胞は、合成起源の、すなわち、合成脂質から生産されたリポソームであってもよい。
好ましい実施形態によれば、特に、合成脂質の場合、本発明に関して使用されるリポソームは、ポリエチレングリコール(PEG)分子の担体またはPEG誘導体(官能基化PEG)、例えば、N−カルボニル−メトキシポリエチレングリコール2000である。
用語「ナノディスク」は、本明細書で使用する場合、タンパク質フレームワークにより安定化された少なくとも1つの脂質二重層を意味する。好ましくは、前記フレームワークは、円盤状構造を形成するように脂質二重層を取り囲んでいる。
「脂質」は、本明細書で使用する場合、いずれの天然の脂溶性分子(すなわち、親油性)も意味する。脂質は、多くの必須の生体機能を有するヘテロな化合物群である。これらの化合物は、細胞膜の構造成分、ならびにエネルギーの貯蔵源またはシグナル伝達経路における中間分子として機能する。脂質は、総てがまたは一部がケトアシル基またはイソプレン基に起源する疎水性または両親媒性の小分子として定義することができる。総ての脂質種の概要については、有利には"Lipid Metabolites and Pathways Strategy (LIPID MAPS) System classification" (National Institute of General Medical Sciences, Bethesda, MD)を参照することができる。脂質はミセル、単層膜、二層膜を形成し得る。脂質は、ナノディスクを形成させるために必要であれば他の成分と一緒に自己集合し得る。本発明に関する脂質には、脂肪、ワックス、リン脂質、スフィンゴ脂質(例えば、スフィンゴミエリン)、ステロール(例えば、コレステロール)、セレブロシドおよびこれらの脂質群のそれぞれから誘導された化合物が含まれる。本発明に関してナノディスクで使用される脂質は好ましくは、リン脂質である。本発明に関する「リン脂質」は、リン酸基をモノまたはジエステルとして含有する脂質である。本発明のナノディスクで使用可能なリン脂質は、合成、天然、飽和、不飽和リン脂質、それらの誘導体(例えば、アシル、ジエーテルおよびリゾ)、および発現されたタンパク質の良好な挿入および立体配座ならびに同様にリガンドまたは抗体によるその認識を促進し得る異なる種または同じ種のリン脂質の任意の組合せを含んでなる。リン脂質は、とりわけ、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルイノシトールホスフェート、カルジオリピン、およびそれらの誘導体を含んでなる。好ましい実施形態では、リン脂質は、ジオレオイル、ジミリストイル、パルミトイル オレオイル−グリセロ−ホスホコリン(DOPC、DMPC、POPC)、パルミトイル−オレオイル、ジミリストイルおよびジオレオイルホスホグリセロール(POPG、DMPGおよびDOPG)を含んでなる。いっそうより好ましい実施形態では、リン脂質は、ジオレオイル、ジミリストイル、パルミトイル−オレオイル−グリセロホスホコリン(DOPC、DMPC、POPC)を含んでなる。特に有利な実施形態によれば、本発明のリン脂質はコール酸ナトリウムと組み合わせる。この実施形態によれば、例えば透析によりこの塩を除去すると、リン脂質と本発明のタンパク質フレームワークからナノディスクを取得できる。
用語「タンパク質フレームワーク」は、本明細書で使用する場合、水性環境中で両親媒性脂質とともに集合し、前記両親媒性脂質を二層で組織化することができるいずれのタンパク質も含む。好ましくは、本発明のタンパク質フレームワークは、その構造のある部分はいくぶんか親水性で水性溶媒に面し、他の部分はいくぶんか疎水性で疎水性二層の中心に面し、従って安定である両親媒性でなければならない。従って、用語「タンパク質フレームワーク」には、限定されるものではないが、アポリポタンパク質、リポホリン、その誘導体(例えば、末端切断型およびタンデム配置された配列)およびそれらの断片(すなわち、ペプチドの)、例えば、アポリポタンパク質E4、22K断片、リホリンIII、アポリポタンパク質A1および類似の分子が含まれる。タンパク質フレームワークは、この目的で特に設計された人工両親媒性ペプチドから構成されてもよい。いくつかの特定の実施形態では、これらのペプチドは、両親媒性脂質、特にリン脂質のものの脂肪酸鎖と直交して配向される、アポリポタンパク質αヘリックスを模倣する両親媒性らせん状ペプチドである。このようなペプチドは、親出願WO2008/141230A1に記載されている。
好ましくは、本発明のナノディスクのタンパク質フレームワークは、MSP1タンパク質、またはその誘導体から構成される。MSP1は、完全なタンパク質と同じ両親媒性らせん構造を有する、A1アポリポタンパク質の末端切断型である。MSP1タンパク質は配列:
を有する。
このタンパク質の誘導体は、すでに構築されている(例えば、Grinkova et al., 2010、WO02/40501、WO2005/081743、US7,083,958B2参照)。これらの誘導体のいくつかは、それらが組み込まれるタンパク質およびナノディスクの容易な精製を可能とする配列を含んでなる。従って、タグ配列はタンパク質に付加され得る。このような配列は当業者に周知である。それらは、HA、FLAG、V5またはmycエピトープ、ならびにキチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)およびStrepタグ、または6ヒスチジンの配列を含んでなる。例えば、6ヒスチジンの配列は、MSP1タンパク質のN末端に融合させることができる。MSP1の特定の誘導体は、TEVプロテアーゼにより認識される部位を含み、これは完全かつ特異的な切断を生じるように改変されている。MSP1誘導体はまた、MSP1のN末端に付加的な末端切断Δ(1−11)を含んでなってもよい。この末端切断は、より安定なディスクを与え、最初のヘリックスの完全性は脂質との相互作用に必要とされない。よって、M1PD1タンパク質(配列番号10)は、N末端にHis6配列と融合された末端切断Δ(1−11)とTEV部位を含んでなる。MSP1D1タンパク質は、直径およそ9.7nmのナノディスクを生成し、これは一般にナノディスク当たり120〜160分子の間の脂質と2つのMSPを含有する。当業者により慣用される別の誘導体は、MSP1D1タンパク質のヘリックス3と4の間に3つの付加的ヘリックス(4、5および6)の挿入を含んでなるタンパク質MSP1E3D1(配列番号11)である。従って、このタンパク質は、MSP1D1タンパク質のヘリックス4、5および6の倍加を含んでなる。結果として、それはMSP1D1タンパク質で得られるものよりも大きなサイズのナノディスク:約12.9nmを生成する。これらの2つの誘導体MSP1D1およびMSP1E3D1が、ナノディスクを生成するために最も慣用されている。それらは両方とも市販されている(とりわけSigma−AldrichまたはCube Biotechから)。極めて好ましくは、本発明のMSPタンパク質は、 配列番号9、10または11から選択される配列を有するタンパク質である。
この好ましい実施形態によれば、本発明は、工程a)の接触が、配列番号9、10または11のタンパク質から選択されるMSPタンパク質を含んでなるナノディスクの存在下で行われる、上記のような方法に関する。
従って、本発明は、工程a)の接触が、Brij 35もしくはBrij 58から選択される少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤または配列番号9、10もしくは11のタンパク質から選択されるMSPタンパク質を含んでなるナノディスクの存在下で行われる、上記のような方法に関する。
本発明者らは、ナノディスクの使用は本発明の赤血球タンパク質を可溶型でかつ大量に取得することを可能とすることを示した。特に、本発明者らは、生産を最適化するために十分なナノディスク濃度を使用することが重要であることを示した。これに関して、80μM未満のナノディスク濃度が、大量のタンパク質を可溶性状態で取得するために特に好適である。例えば、20μM、40μMまたは60μMのナノディスク濃度は、界面活性剤の存在下で得られるものと少なくとも同等に良好な収量を得ることを可能にする。
脂質、好ましくはリン脂質とフレームワークを形成し得るタンパク質を用いてナノディスクを生成するための方法は当業者に周知である(例えば、Denisov et al., 2004参照)。それらがここでは詳説されないが、加えて多くの会社がナノディスクを提供していることに留意されたい(例えば、Cube Biotech、Sigma Aldrich、Nanodiscs Inc.)。
無細胞系は、基本原理として、外因性の遺伝情報から特定の組換えタンパク質を生産するために生物の転写および翻訳装置の使用を備える。その装置が抽出される生物は多く、多様であり、原核生物および真核生物に由来する。
このような系は数十年間当業者によく知られてきた(総説としては、例えば、Carlson et al, 2012参照)。無細胞系でタンパク質を合成するために多くの方法が利用可能である(例えば、Cell-free Protein Synthesis: Methods and protocols, edited by Alexander S. Spirin and James R. Swartz 2008. Wiley-VCH, Weinheim, Germany参照)。様々な会社:Qiagen、Ambion、Promega、Invitrogen、Thermo Scientific、Roche Diagnostics、CellFree Science & Co,etcによって提供されるキットを使用することも可能である。
好ましくは、本発明のタンパク質を生産するための無細胞系は、細胞抽出液を含んでなる。いずれの生物も細胞抽出液の供給源として使用可能であるが、大腸菌(Escherichia coli)、ウサギ網状赤血球、コムギ胚芽または昆虫細胞の抽出液を使用することが好ましい。大腸菌抽出液が特に有利である。第一に、当業者はすでにこの系で広範な経験を有しており、群を抜いて好評である。これらの抽出液は容易かつ低コストで調製することができる。それらは他の系よりも低いエネルギーコストで極めて高い収量で提供できる。Qiagen、Promega、Invitrogen、Thermo Scientific、Roche Diagnosticsなどの多くの会社が現在、大腸菌の抽出液を用いたタンパク質無細胞発現キットを市販しているので、この系は商業的に容易に入手可能である。
無細胞反応を行うためには2つの方法がある。バッチ反応とも呼ばれる不連続反応では、転写および翻訳は、総ての必要成分を含有する反応容量で行われる。エネルギー供給の急速な枯渇、ヌクレオチドなどの成分の劣化およびMg2+遊離イオンの濃度の低下などの様々な理由のために、バッチ系での反応は一般に約1〜2時間後にプラトーに達する。最適化されたin vitroバッチ発現系の使用は一般に最大500μgタンパク質/mlを生産するが、さらなる最適化のコストをかければより多量が達成される場合もある。
透析様式では、無細胞転写/翻訳反応は、低分子量試薬を含有するおよそ10〜20倍大きいリザーバーから透析膜(通常10〜15kDaカットオフ)により分離される、小型の反応チャンバーで行われる。
透析様式、連続流無細胞生産系またはContinuous Flow Cell Free(CFCF)における系の初期において、反応媒体は限外濾過膜により隔離され、ポンプにより連続的に供給される。この膜は、対象とするタンパク質をバッファーコンパートメントへと通過させ、反応液の供給を続けつつ回収し、従って、反応を数十時間行うことを可能とする。
連続交換を用いる無細胞生産系(Continuous Exchange Cell FreeまたはCECF)では、細胞ライゼートおよび遺伝情報を含有する反応チャンバーが補因子、アミノ酸、バッファーおよび他の成分を含有する栄養コンパートメントから透析膜により分離されている。透析膜は、廃分子の流出を可能とするが、活性から生じる濃度勾配により、反応を進行させることができる成分の流入を可能とする。この構成は、反応時間および生産されるタンパク質のレベルを有意に増大させることを可能にする。この方法を用いた大腸菌系において、市販の系(RTS、Roche Applied Science)および自家製の系の両方で、反応容量中最大5mg/mlの収量が報告されている。
本発明の無細胞系は、バッチ様式または透析様式の系である。好ましくは、この系は、透析様式系である。より好ましくは、この系は、連続交換を用いる無細胞生産系である。
無細胞系の利点は、それが反応パラメーターの厳密な制御能を提供することである。抽出液に加え、タンパク質生産のための無細胞系は多くの要素を含み、その濃度は反応効率に関して臨界であり得る。
二価Mg2+イオンは、多くの生体反応において必須である。ここで、本発明者らは、14〜22mMの間、好ましくは16〜20mMの間に含まれるマグネシウム濃度が相当な収量の赤血球タンパク質の取得を可能とすることを示した。よって、本発明による無細胞タンパク質生産系は、14〜22mMの間、好ましくは16〜20mMの間のマグネシウム濃度を含んでなる。
他の塩、特にマンガンなどの生物学的に関連のあるものも添加可能である。カリウムは一般に少なくとも約50mM、多くとも約250mMの濃度で存在する。アンモニウムは、通常、200mM未満の濃度、一般には約100mM未満の濃度で存在し得る。通常、反応は、pH範囲約5〜10および温度約20〜50℃;より一般には、pH範囲約6〜9および温度約25〜40℃で維持される。有利には、反応は、pH=7.5で行われる。さらに、温度20℃がこの反応に特に有利である。これらの範囲は対象とする特定の条件に対して拡張することができる。
対照的に、酸化的リン酸化の活性化のための外因性補因子を加える必要は無い。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、(NADH)、NAD、またはアセチル−補酵素Aなどの化合物を、タンパク質合成収量を補うために使用してもよいが、必要ではない。ホスホエノールピルビン酸シンセターゼ(Pps)の代謝阻害剤であるシュウ酸の添加は、タンパク質収量を増やすのに有益であり得るが、必要ではない。
本発明の赤血球タンパク質は膜タンパク質である。よって、無細胞系で生産される膜タンパク質が正確に折り畳まれ、機能的であることが重要である。特に、凝集塊の形成を避けることが重要である。これに関して、本発明者らは、2〜24時間の間、好ましくは6〜12時間の間に含まれる、より好ましくは約8時間の反応時間が凝集塊を避けつつ収量を最大化することを可能とすることを示した。
特定の実施形態によれば、本発明の方法は、生産されたタンパク質を回収する工程を含んでなる。この工程はタグ配列の使用によって容易となり得る。特定の実施形態によれば、この配列は、対象とする赤血球タンパク質と融合される。本発明の赤血球タンパク質がナノディスクの存在下で生産される場合、ナノディスクを含んでなるタンパク質をタグ配列と融合させ、本発明のタンパク質を回収するためにそれを使用することが有利であり得ることに留意されたい。
本発明の赤血球タンパク質の単離(または精製)は、当業者に公知のいずれの手段によって達成することもできる。例としては、示差沈殿または超遠心分離が挙げられる。また、対象とする断片をイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、分子篩、または等電点電気泳動によって精製することも有利であり得る。これらの技術は総て、Voet D and Voet JG, Techniques of Protein and Nucleic Acid Purification, Chapter 6, Biochemistry, 第2版に記載されている。好ましくは、対象とするタンパク質は、例えばこのタンパク質に対する抗体を用いた免疫沈降によって回収することができる。あるいは、対象とするタンパク質は、必要に応じて、タグ配列を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって単離することもできる。
特定の適用では、例えば、被験体の血清中のタンパク質に担持されている同種異系抗原に対する抗体を検出するために、対象とする赤血球タンパク質を固相支持体に結合させることが特に有用であり得る。前記タンパク質の結合は直接的でも間接的でもよい。このタンパク質の結合は、タンパク質が別のタンパク質の介在なく固相支持体と相互作用する場合には直接的である。これは、例えば、この結合が対象とするタンパク質に対する抗体を介して達成される場合である。これはまた、対象とするタンパク質がそれ自体タグ配列と融合されている場合でもある。本発明に関して間接的結合は、別のタンパク質により、例えば、MSPによりまたはMSPタンパク質とタグ配列の間の融合により媒介される結合を意味する。この場合、前記の他のタンパク質は固相支持体に結合され、そこに対象とするタンパク質がそれ自体、それが前記の他のタンパク質と相互作用する程度にだけ結合される。例えば、対象とするタンパク質は、そのMSPタンパク質が固相支持体に結合されているナノディスクで発現される場合に、前記固相支持体と間接的に結合されている。この結合様式は、対象とするタンパク質の三次元組織化を妨げないという点で有利であり得る。
この特定の実施形態によれば、本発明の方法は、赤血球タンパク質、またもしくはその変異体、および/またはMSPタンパク質を固相支持体に固定する付加的工程を含んでなる。有利には、赤血球タンパク質、もしくはその変異体、および/またはMSPタンパク質と特異的に相互作用する化合物が前記固相支持体にグラフトされる。前記化合物は、例えば、対象とする赤血球タンパク質に対するまたはMSPタンパク質に対する抗体である。好ましくは、この化合物は、赤血球タンパク質、もしくはその変異体、および/またはMSPタンパク質のタグ配列により認識される。この化合物は、HA、FLAG、V5またはmycなどの特定のエピトープを認識する抗体であり得る。それはまた、タンパク質(それぞれCBP、MBPおよびGST)が結合された糖(例えば、キチンまたはマルトース)または代謝産物(例えば、グルタチオン)であってもよい。前記化合物はまた、場合により遺伝子工学により改変された、特定のペプチド配列により認識され結合されるペプチドであってもよく、従って、Strep−Tactinペプチドは遺伝子改変によりストレプトアビジンから誘導され、特定の配列Strepタグが結合されている。最後に、この化合物は、6ヒスチジンの配列が結合されたNi2+などの二価イオンであってもよい。これらの化合物を固相支持体に結合させ方法は当業者に周知である。従って、それらはここでは詳細に取り扱わない。
本発明で使用可能な固体担体は、それが固相支持体であるかまたは不溶性材料(例えば、濾過、沈降、磁気分離または他のいずれかの好適な技術によって反応混合物から分離可能な材料)から構成される限り何ら限定されない。
前記固相支持体を構成する材料は、限定されるものではないが、セルロース、テフロン(商標)、ニトロセルロース、アガロース、デキストラン、キトサン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ナイロン、二フッ化ポリジビニリデン、ラテックス、シリカ、ガラス、ファイバーグラス、金、白金、銀、銅、鉄、ステンレス鋼、フェライト、シリコンウエハー、ポリエチレン、ポリエチレンイミン、ポリ乳酸、樹脂、多糖、タンパク質(例えば、アルブミン)、炭素、およびそれらの組合せを含んでなる。
固相支持体は、限定されるものではないが、ビーズ、磁性ビーズ、薄膜、マイクロチューブ、フィルター、プレート、マイクロプレート、カーボンナノチューブ、センサーチップなどのものを含め、いずれの形状であってもよい。薄膜または薄いプレートなどの平坦な固相支持体はまた、当技術分野で公知のように凹部、流路、フィルタードレンまたはその他を含んでなってもよい。実際に、固相支持体は、タグ配列により認識される化合物が結合できるいずれの表面であってもよい。本発明による固相支持体は、とりわけ、マイクロタイタープレート、ビーズ、ディスク、チップ、スライドグラス、および他の任意の好適な支持体を含んでなる。
本発明の一つの実施形態では、固相支持体は、約25nm〜約1mmの間に含まれる球径を有する磁性ビーズからなる。好ましい実施形態では、磁性ビーズは、約50nm〜約10μmの間に含まれる直径を有する。磁性ビーズのサイズは意図される使用によって選択することができる。
本発明の別の実施形態によれば、固相支持体は、高架橋球形アガロース(例えば、セファロース)から構成されるビーズを含んでなる。好ましくは、前記ビーズは、約24μm〜約165μmの間に含まれる直径を有する。より好ましい実施形態では、前記ビーズは、約24μm〜約44μmの間の直径を有する。これらの高架橋球形アガロースビーズのサイズは意図される使用によって選択することができる。
疎水面を有する固相支持体は、とりわけ、ポリスチレンラテックスビーズ、例えば、Polysciences、ウォリントン、PAまたはSpherotech、Liberville、ILから市販されているものなどを含んでなる。
Polysciences、ウォリントン、PAから入手可能な超常磁性シリカビーズを含んでなる処理済みシリカ(SiO)またはシリカ(SiO)に基づく固相支持体の例。
親水面を有する磁性ビーズは、本明細書の方法で使用可能である。これらの磁性ビーズの例としては、Polysciences、ウォリントン、PAからの名称Biomag(登録商標)カルボキシルまたはBangs Laboratory,Inc.、フィッシャーズ、INからのMC02Nビーズ 名称/2928として市販されているビーズが挙げられる。Dynal Biotechから市販されているM−270などを使用することもできる。
別の態様によれば、本発明は、ナノディスク、リポソームまたは非イオン性界面活性剤内で発現された赤血球タンパク質、またはそれと少なくとも95%の同一性を有する同族体に関し、ここで、前記タンパク質または変異体は上記方法によって得ることができる。
別の態様によれば、本発明は、RhD、RhCE、RhAGおよびUTBから選択される赤血球タンパク質またはその変異体に関し、ここで、前記タンパク質または変異体は、上記の方法によって得ることができ、固相支持体に結合される。有利には、本発明による赤血球タンパク質は、RhD、RhCE、RhAGおよびUTB、またはそれと少なくとも95%の同一性を有する同族体から選択され、ここで、前記タンパク質または同族体は、本発明による方法によって得ることができ、固相支持体に結合される。赤血球からタンパク質を、立体配座を保持せずに抽出する従来技術とは対照的に、このようにして得たれた赤血球タンパク質は正確に折りたたまれている。実際に、本発明者らは、本発明の方法により生産されたRhDタンパク質が天然の内因性タンパク質を同定するために通常使用される立体配座抗体により認識されることを示した。有利には、本発明の方法により得られる赤血球タンパク質は機能的である。
さらに別の態様によれば、本発明は、RhD、RhCE、RhAGおよびUTBから選択される赤血球タンパク質またはその変異体を含んでなる組成物に関する。好ましくは、前記組成物中のタンパク質の濃度は、0.01mg/mlを超え、より好ましくは0.1mg/mlを超え、いっそうより好ましくは0.5mg/mlを超え、なおさらにより好ましくは1mg/mlを超える。
本発明の方法におけるリポソームまたはナノディスクの使用は、脂質およびタンパク質の粒子、プロテオリポソームまたはナノディスクを生成し、対象とする赤血球タンパク質と脂質の両方を含む。よって、本発明は、別の態様において、RhD、RhCE、RhAGおよびUTBから選択される赤血球タンパク質またはその変異体と1以上の脂質とを含んでなる組成物に関する。好ましくは、前記組成物中のタンパク質の濃度は、0.01mg/mlを超え、より好ましくは0.1mg/mlを超え、いっそうより好ましくは0.5mg/mlを超え、なおさらにより好ましくは1mg/mlを超える。
さらに別の態様によれば、本発明は、RhD、RhCE、RhAGおよびUTBから選択される赤血球タンパク質またはその変異体と配列番号9、10または11のタンパク質から選択されるMSPタンパク質とを含んでなる組成物に関する。このような組成物は特に、本発明の方法でナノディスクが使用される場合に得られる。好ましくは、本発明の組成物はまた脂質も含む。好ましくは、このような組成物中に含まれる赤血球タンパク質の濃度は、0.01mg/mlを超え、より好ましくは0.1mg/mlを超え、いっそうより好ましくは0.5mg/mlを超え、なおさらにより好ましくは1mg/mlを超える。
別の態様によれば、本発明は、RhD、RhCE、RhAGおよびUTBから選択される赤血球タンパク質またはその変異体に関し、ここで、前記タンパク質は固相支持体に結合される。前記タンパク質の結合は、上記で説明したように直接的であっても間接的であってもよい。
本発明のタンパク質は、それらが抗赤血球同種異系抗体を検出するための検査で簡単に使用することができることから特に重要である。これらの赤血球の表面に存在する抗原に対するもので、その溶血を誘導することができる抗体である。抗赤血球同種異系抗体は、外来の赤血球抗原に対して生産される。免疫誘導は例えば、輸血を介して、妊娠中に、または誕生時に起こる。このようなIgG抗体が胎盤障壁を渡れば、それらは胎児の赤血球の加速化された破壊または胎児の赤血球新生の遮断を誘発し得る。
本発明のこの新たな態様によれば、本発明は、同種異系抗体検出検査における赤血球タンパク質または組成物赤血球タンパク質を含んでなる組成物の使用に関する。
被験体の生体サンプル中のこのような同種異系抗体の存在は、上記のように、前記サンプルと赤血球タンパク質または赤血球タンパク質を含んでなる組成物とを接触させること、次いで、適当であれば、赤血球タンパク質とそれに対する抗体の間の相互作用の検出を特に含んでなる。
「被験体」は、本明細書で使用する場合、哺乳類、好ましくは、ヒト、例えば、妊婦または輸血患者を意味する。本明細書で使用する場合、用語「生体サンプル」または「サンプル」は、生物全体またはその組織、細胞もしくは構成部分のセットに関する。さらに、「生体サンプル」は、生物全体またはその組織、細胞もしくは成分、またはその画分または部分のセットから調製されたホモジネート、ライゼートまたは抽出液に関する。好ましくは、本発明による「生体サンプル」は、同種異系抗体を含み得る任意の組織である。「生体サンプル」は、本明細書で使用する場合、例えば、血液、骨髄液、およびリンパ液などの体液サンプル、ならびにリンパ節、血管、骨髄、脳、脾臓および皮膚などの固体サンプルを意味する。より好ましくは、本発明の生体サンプルは、血液、血漿、または骨髄のサンプルである。
対象とする赤血球タンパク質と対応する同種異系抗体の間の相互作用は、当業者に公知のいずれかの手段により検出される。それらは特に、免疫沈降、免疫組織学、ウエスタンブロッティング、ドットブロッティング、ELISAまたはELISPOT、タンパク質アレイ、抗体マイクロアレイまたは免疫組織化学と組み合わせた組織チップなどの周知の技術を使用することができる。使用可能な他の技術としては、FRETまたはBRET技術、1以上の励起波長と電気化学的方法(ボルタンメトリー(voltametry)およびアンペロメトリー技術)、原子間力顕微鏡法、および無線周波数法として適合される光学的方法の使用に基づく共焦点顕微鏡および電子顕微鏡法を含む顕微鏡または組織化学的方法、例えば、多極共鳴分光法、共焦点および非共焦点、蛍光検出、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率、および複屈折または屈折率(例えば、表面プラズモン共鳴による、偏光解析法による、共振ミラー法によるなど)、フローサイトメトリー、放射性同位元素または磁気共鳴画像法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE分析);HPLC−質量分析、液体クロマトグラフィー/質量分析/質量分析(LC−MS/MS)を含んでなる。これらの技術は総て当業者に周知であり、ここでそれらを詳説する必要はない。
本発明を、以下の例を用いてより正確に説明する。
図1 ウエスタンブロッティングによるRHDタンパク質の検出。種々の合成の全タンパク質を遠心分離により可溶性画分および不溶性画分に分離し、RHDタンパク質をLOR−15C9抗体およびHRP結合抗ヒト二次抗体(1/1000)により可視化した。分子量マーカー(kDa)を左および右に示す。 図2 0.5%Brij 35の存在下で生産されたタンパク質のアガロースHA上での精製。抗HA抗体(1/2000)を用いた精製工程のウエスタンブロット解析(A)および硝酸銀染色による溶出液の分析(B)。SM画分はRHDタンパク質のin vitro合成生成物である、NR:樹枝により保持されない画分、E:溶出液 LE:溶出洗液、およびMW:分子量マーカー(kDa)。 図3 ウエスタンブロッティングによるRHDおよびMSPタンパク質の検出。ナノディスクまたはBrij 35の存在下でのRHDタンパク質合成生成物の分析。(A)RHDタンパク質は、LOR−15C9抗体およびHRP結合抗ヒト二次抗体(1/1000)により可視化した。(B)MSPタンパク質は、HRP結合抗His抗体(1/10,000)により可視化した。MWは分子量マーカー(kDa)である。 図4 ウエスタンブロッティングによるRHDおよびMSPタンパク質の検出。50μMナノディスク(N1、N2)の存在下または0.5%Brij 35の存在下でのRHDタンパク質の生産の可溶性画分および不溶性画分の分析。(A)RHDタンパク質は、LOR−15C9抗体、およびHRP結合抗ヒト二次抗体(1/800)により可視化した。(B)ナノディスクのMSPタンパク質は、HRP結合抗His抗体(1/10,000)により可視化した。MWは分子量マーカー(kDa)である。 図5 ウエスタンブロッティングによるRHDおよびMSPタンパク質の検出。40μMのナノディスクの存在下で生産されたRHDタンパク質の種々の精製工程の分析(IP抗RHD Cter)および20および60μMの存在下で生産された精製RHDタンパク質の溶出画分(IP抗HA)との比較。(A)RHDタンパク質は、LOR−15C9抗体、およびHRP結合抗ヒト二次抗体(1/800)により可視化した。(B) ナノディスクのMSPタンパク質は、HRP結合抗His抗体(1/10,000)により可視化した。SM画分は、RHDタンパク質のin vitro合成生成物である、NR:樹枝により保持されない画分、L1、L2、L3、様々な洗液の画分、E20/40/60:溶出画分、MW、分子量マーカー(kDa)。 図6 ウエスタンブロッティングによるRHDおよびMSPタンパク質の検出。スクロース勾配の画分1〜11の分析 (A)RHDタンパク質は、LOR−15C9抗体、およびHRP結合抗ヒト二次抗体(1/800)により可視化した。(B)ナノディスクのMSPタンパク質は、HRP結合抗His抗体(1/10,000)により可視化した。MWは分子量マーカー(kDa)である。P Ctrl Brij 35の存在下で生産されたRHDタンパク質、N Ctrl:ナノディスク単独。 図7 種々の抗体によるRHDタンパク質の認識の実証:種々の抗体とともにインキュベートした赤血球に対してフローサイトメトリーを行った。(A)(B)陰性対照として使用したRh(−)赤血球の抗ep D2および抗ep D5抗体による認識の定量的分析。(C)(D)抗ep D2および抗ep D5抗体によるRh(+)赤血球の認識の定量的分析。(E)(F)供試した集団および亜集団の選択。
材料および方法
I.材料
−20℃で保存されたRTS 100大腸菌HYキットは5 PRIMEにより提供されるものである。−80℃で保存されたMSP1E3D1−His_POPCナノディスク(500μM)はCube Biotechからのものである。使用したELISAプレートは、Nunc MaxiSorp96ウェル型(Dutscher)のものであり、FACSプレートはCorningからのものである。セファロース4Bタンパク質樹脂はGE Healthcare Life Sciencesからのものである。−20℃で保存された、アガロースHA樹脂および20%界面活性剤(C12、Brij 35、Brij 58)はSigma−Aldrichから入手した。
MPC8ウサギポリクローナル抗体は、RHDタンパク質のC末端の残基408〜416を認識し(Apoil et al., 1997)、LOR−15C9抗体は、RHDタンパク質の残基320〜331および350〜354を認識するモノクローナル抗体である(Apoil et al., 1997)。HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)を結合させたヒトIgGに対する二次抗体はP.A.R.I.S(ウエスタンブロッティング)およびJackson(ELISA)から入手した。HRP結合マウス抗Penta−His抗体は、Qiagenからキット(RGS−His HRPコンジュゲートキット)とともに供給される。ヤギ抗ヒトIgG抗体はR−フィコエリトリン(PE)が結合されている(Beckman)。
pIVEX−HA特注ベクターは、無細胞系でのRHDタンパク質発現用に開発されたものである。それはベクターplVEX2.3d(5 PRIME)のHisタグをHAタグに置換することにより作製され、これにより、C末端でHA−タグと融合されたタンパク質を取得することができる。
II.方法
II.1.無細胞タンパク質発現
in vitroタンパク質発現の原理は、タンパク質合成に必要な要素を含有する反応媒体中に、対象とするタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含有するプラスミドDNAを導入することである。転写および翻訳装置は総て大腸菌S30細胞ライゼートにより提供される。
2つのタイプの系を使用した。総ての成分が単一のコンパートメントに混合される第一の系(「バッチ」法)は、種々の発現条件をスクリーニングするために使用した。第二の系は、CECF(Continuous Exchange Cell Free)(Shirokov et al., 2007)であり、この場合、タンパク質合成は、半透膜によりリザーバーから分離されたコンパートメント内で行われ、これにより、廃生成物の希釈および基質の供給が可能となる。CECF系は、最大24時間、連続的タンパク質発現としてのタンパク質の大規模生産のために使用し、「バッチ」系に比べて良好な収量が得られる。
II.1.A「バッチ」系におけるタンパク質発現
5PRIME社により開発された実験プロトコールは、RTS 100大腸菌HYキットで容量50μlという小規模でのタンパク質合成を可能とする。RTS 100キットおよびMSP1E3D1−His_POPCナノディスク(500μM)または20%界面活性剤(C12、Brij 35、Brij 58)を氷上で解凍した。ナノディスクの存在下でのRhDタンパク質生産に必要な反応混合物(12μl大腸菌ライゼート;エネルギーミックス10μl;アミノ酸12μl;メチオニン1μl;再構成バッファー5μl)は、室温にてエッペンドルフ管内で調製する。次に、50μl混合物をエッペンドルフサーモミキサー内で30℃、750rpmで撹拌しながら5時間インキュベートする。
発現後、混合物を4℃、22,000gで10分間遠心分離して不溶性画分(ペレット)から可溶性画分(上清)を分離する。
II.1.B CECF系におけるタンパク質発現
CECF系を、大容量(1〜2mL)での、界面活性剤またはナノディスクの存在下のタンパク質生産のために使用した。これらの反応は、付表に示される割合を用いて行った。
II.2.精製
II.2.A HAアガロースを用いた免疫沈降
界面活性剤(条件1)またはナノディスク(条件2)(表1)の存在下で生産されたRHD−HAタンパク質を免疫沈降させるために、in vitro生産の1mlの可溶性画分を、バッファーAまたはAで予備洗浄した250μl(1CV)の抗HAアガロースビーズに加える。このチューブを4℃で一晩、回転下でインキュベートする。次に、非保持画分を4℃にて2,000gで10分間の遠心分離により回収する。その後、バッファーAまたはA(18CV)で、次いでバッファーBまたはB(28CV)で数回の洗浄を行う。これらの洗浄を行うために、チューブを4℃にて5,200gで5分間遠心分離し、上清を除去する。最終洗浄の後、タンパク質が結合しているビーズを再懸濁させ、325μlのCまたはC溶出バッファー中、4℃で4時間、回転させながらインキュベートする。4℃にて18,000gで15分の遠心分離後に溶出液を回収する。
II.2.B プロテインAセファロース4Bを用いた免疫沈降
氷上、エッペンドルフ管内で、in vitro生産の30μlの可溶性画分をAバッファーで1/5希釈し(表3)、その後、回転盤上、4℃で一晩、10μlの精製MPC8抗体(1.5mg/ml)とともにインキュベートする。次に、形成された複合体を、回転盤上、4℃で1時間、Aバッファーで予備洗浄した50μlのプロテインAセファロース4B樹脂とともにインキュベートする。
非保持画分を、低減速率で、4℃にて15,000gで5分間の遠心分離後に回収する。次に、ペレットを1mLのAバッファーでの遠心分離により3回洗浄し、次いで、Bバッファーで2回洗浄し、Cバッファーで最終洗浄を行う。タンパク質を溶出させるために、樹脂を50μlのLaemmli 2Xとともに5分間100℃で加熱する。15,000gで5分の遠心分離後、溶出液を回収する。
II.3.スクロース勾配
合成生成物を不連続スクロース勾配(PBS中5−10−15 20−30%)に載せた後、T H. Bayburt et al, 2007により記載されている条件を用い、4℃にて210,000gで18時間、超遠心分離を行った。上層から下層へ0.5ml画分を採取し、ウエスタンブロッティングにより分析した。
II.4.電気泳動
サンプルをローディングバッファー(5mMトリス−HCl、8.56%スクロース、1%SDS、5%β−メルカプトエタノール)中で変性させ、10%変性ポリアクリルアミドゲルまたは4〜12%勾配ビス−トリスポリアクリルアミドゲル(Invitrogen)にロードする。移動バッファー(25mMトリス−HCl、192mMグリシン、0.1%SDSまたは50mM MOPS、50mMトリスHCl、0.1%SDS、1mM EDTA)中、180Vでの電気泳動により、タンパク質をそれらの分子量に応じて分離する。
II.5.硝酸銀による染色
固定バッファー(50%メタノール、12%酢酸、0.05%ホルムアルデヒド)中で1時間振盪しながらインキュベートした後、50%エタノールで数回すすぎ、ゲルを1%チオ硫酸ナトリウム溶液で1分間処理する。水中で数回すすいだ後、ゲルを染色混合物(0.2%AgNO、0.075%ホルムアルデヒド)中で20分間インキュベートする。水中で2回すすいだ後、現像溶液(0.05%ホルムアルデヒド、0.04%チオ硫酸塩、6%NaCO)でゲルのタンパク質を可視化する。反応物を10%酢酸溶液で30分間急冷した。
II.6.ウエスタンブロッティング
移動が完了したところで、転写バッファー(12.5mMトリス−HCl、96mMグリシン、20%エタノール)中、30Vで2時間、タンパク質をニトロセルロース膜(Amersham)に転写した。
II.6.A RHDタンパク質の可視化
転写後、膜をPBS単独で一度洗浄した後、5%希釈乳汁を含有するPBSの溶液中で、室温で振盪しながら1時間飽和させる。次に、この膜を回転プレート上で、4℃にて一晩、一次LOR−15C9抗体とともにインキュベートする。
0.1%PBS−ツィーン20中で数回洗浄した後、この膜を、PBS 5%乳汁で1/800希釈したHRP結合マウス抗ヒトIgG二次抗体の存在下で,振盪しながら1時間インキュベートする。0.1%PBS−ツィーン20中で数回洗浄した後、PBS単独で洗浄し、酵素反応を化学発光により可視化する(GE Healthcare Life Sciences)。
II.6.B ナノディスクのMSPタンパク質の可視化
ポリ−ヒスチジンタグを有する、ナノディスクのMSPタンパク質は、HRP結合抗His抗体(Qiagen)を用いたウエスタンブロッティングにより可視化する。
転写後、この膜をTBS単独で2回すすいだ後、キットとともに供給されているプロトコールに従い、新しく調製したブロッキング溶液中、室温で1時間ブロッキングする。室温にてTBS−0.05%ツィーン20中での2回の洗浄とTBS単独中での最終洗浄の後、膜を室温で1時間、ブロッキング溶液で1/10,000希釈した抗Penta−His−HRP抗体とともにインキュベートする。TBS−0.05%ツィーン20およびTBS単独で数回洗浄した後、酵素反応を化学発光により可視化する。
II.7.フローサイトメトリー
種々の抗epDヒトモノクローナル抗体によるRHDタンパク質の認識を赤血球への間接的タグ付けにより可視化する。
このために、0.5μlの赤血球ペレット(5×10細胞)を1mlの0.2%BSA−PBSに懸濁させた後、プレートの異なるウェルに、5×10細胞/ウェルの量で分注する。このプレートを4℃にて3分間100gで遠心分離し、上清を除去する。
最初の洗浄後、赤血球を4℃で1時間、RHDタンパク質に対する抗体とともにインキュベートする。次に、細胞をPBS中0.2%BSA中で2回洗浄し、暗所、4℃で1時間、0.2%BSA−PBSで1/100希釈したR−フィコエリトリン(PE)結合ヒト抗IgG抗体とともにインキュベートする。0.2%BSA−PBS中で3回洗浄した後、細胞を200μlのPBSに再懸濁させ、フローサイトメトリー(BD FCS Canto II、BD Biosciences)により分析する。
これらの結果をFlowJoソフトウエアにより分析する。
II.8.ELISA試験
種々の抗体と対象とするタンパク質の間の相互作用を可視化するために、ELISAサンドイッチ試験を行った。
MPC8捕捉抗体をウェル内のウェル当たり1ng/μlのPBS中でインキュベートする。捕捉を一晩室温で行う。PBS中で数回洗浄した後、ウェルを5%乳汁−PBSで飽和させ、その後、PBSですすぐ。
次に、in vitroにおいてナノディスクの存在下で生産されたRHDタンパク質をこれらのウェルに37℃で45分間加える。PBS中ですすいだ後、供試する抗RHDヒト抗体をこの複合体とともに37℃で45分間インキュベートし、連続洗浄により過剰分を除去する。
形成された複合体を、マウスおよびウサギIgGに対するものを除去し、HRPを結合させた抗ヒトIgG抗体(PBS中1/50,000)を用いて検出する。全体を37℃で30分間インキュベートする。洗浄後、酵素に結合した複合体を、ウェルにTMB(Bio−Rad)を加えることにより可視化する。反応物を0.1N HSO溶液で急冷し、450nmの波長で吸光度を測定する。
結果
I.界面活性剤の存在下でのRHDタンパク質の発現および溶解度試験
本発明者らは、種々の界面活性剤の、in vitro翻訳系におけるRHDタンパク質の生産との適合性を検討した。
12、Brij 35、Brij 58の3種類の非イオン性界面活性剤を使用する。これらの界面活性剤の選択は、膜タンパク質に対するそれらの非変性特性に基づいて行った。使用濃度は、低臨界ミセル濃度(ミセルが形成されるCMC濃度)に基づいて選択した(Brij 35は0.11%、Brij 58は0.0086%およびC12は0.006%)。3種類の界面活性剤(0.5%C12、0.5%Brij 35、0.5%Brij 58)の存在下でのRHDタンパク質の「バッチ」生産のウエスタンブロッティングによる分析(図1)は、Brij 35またはBrij 58を含有する反応物では可溶性画分にのみタンパク質の存在を示した。C12を含有する反応物では、不溶性画分には低強度のシグナルが検出されたに過ぎず、一方、界面活性剤の不在下では、タンパク質は主としてペレット(不溶性画分)に見られる。従って、C12はin vitro合成におけるRHDタンパク質の発現の助けとならない。よって、Brij 35がRHDタンパク質の生産に最も適合する界面活性剤であることがわかる。従って、この界面活性剤をより大規模にタンパク質を生産するために選択した。
I.1.界面活性剤の存在下でのRHDタンパク質の大規模生産および精製
ひと度、最適な発現および溶解度条件が確立されれば、2ml反応容量での大規模生産が、選択された界面活性剤(0.5%Brij 35)の存在下でのCECF系を用いて行われる。タンパク質に融合されたHAタグの、アガロース−HA樹脂による認識に基づき、可溶性画分が精製される。溶出はHAペプチドとの競合により達成される。全精製は、Brij 35を、相同な非赤血球Rhタンパク質であるRHCGタンパク質の精製とリポソーム内での機能的再構成(Mouro-Chanteloup and al. 2010)のために本チームにより従前に首尾良く使用されていた界面活性剤0.3%C12に置き換えることにより行う。
図2に示す結果は、可溶性RHDタンパク質は主として溶出液および溶出洗液に見られることを示す。また、タンパク質の一部は樹脂に固定されず、非保持画分(unretained fraction)(NR)に見られることも見出される。硝酸銀中での溶出液の分析は、それがRHDタンパク質のみを含有することを示す。16時間の反応からはRHDタンパク質の凝集のリスクがあるので、可溶性RHDタンパク質の生産のために選択された反応時間は8時間の反応である。
II.ナノディスクの存在下でのRHDタンパク質の発現および溶解度試験
本発明者らは、RHDタンパク質の発現レベルに及ぼすナノディスクの効果を検討した。種々の濃度のナノディスクの存在下でタンパク質を生産する(例えば、MSP1E3D1−His_POPC(20、40、60、80μM)。
各生産の合成生成物をウエスタンブロッティングにより分析する。0.5%Brij 35の存在下で生産されたタンパク質の場合と同様に、ナノディスクの存在下で生産されたタンパク質の大部分は可溶性画分に存在する(図3)。20、40、60μMの濃度のナノディスクの存在は、Brij 35の存在下と同様に高い合成収量を得ることを可能とする。しかしながら、高い濃度のナノディスク(80μM)の存在は、合成の低下を招く。予想されたように、可溶性画分のMSPタンパク質のシグナル強度はナノディスクの濃度とともに上昇する。本発明者らはまた、可溶性画分および不溶性画分の移動パターンが異なり、この違いは、RTS 100キットとともに提供されているプロトコールで報告されているように、大腸菌ライゼート中の高分子の存在によるものであることを注記しておく。
II.1ナノディスクの存在下でのRHDタンパク質の大規模生産(CECF)
50μM濃度のナノディスクの存在下、最終容量1mlで2種類の大規模生産を行った。この濃度は、小規模発現試験によって、良好な収量でRHDタンパク質を生産するのに好適であると見られる。並行して、0.5%Brij 35の存在下での生産対照を行った。ウエスタンブロッティングによる構築物の分析は、RHDタンパク質は本質的に可溶性画分中およびナノディスク内で生産されることを示す。不溶性画分中にナノディスクのより大きな付着物が見られ、凝集塊の形成を示唆する(図4)。
III.ナノディスクの存在下で生産されたRHDタンパク質の精製の種々のアプローチ
界面活性剤の存在下での生産に関して、ナノディスクの存在下で生産されたタンパク質は、大腸菌の数種の細菌ライゼートタンパク質もまた含有する可溶性画分に見られる。従って、充填ナノディスク(中にタンパク質が挿入されている)の空のナノディスクからの分離とともにその精製が必要である。ナノディスク内に挿入されたRHDタンパク質を精製するためには2つのアプローチが使用されてきた。第一のアプローチは、2つのプロトコールを用いてRHDタンパク質を免疫沈降させることであり、第二のアプローチは、スクロース勾配での合成生成物超遠心分離(Bayburt et al., 2007)である。
供試した第一の免疫沈降法は、HAタグと融合したRHDタンパク質をHAアガロース樹脂で保持することからなる。溶出はHAペプチドの存在下で行われ、これにより競合によってRHDタンパク質を解離させる。
第二のプロトコールでは、タンパク質は、プロテインAセファロース4B樹脂を用いて免疫沈降させる。in vitro生産物をウサギ抗RHポリクローナル抗体(MPC8)と接触させ、その後、複合体を、タンパク質と複合体を形成した抗体を固定するプロテインAセファロース4B樹脂とともにインキュベートする。最後に、タンパク質をLaemmliバッファーの存在下で加熱することにより溶出させる。
これらの2つのプロトコールの溶出画分において、ナノディスクはRHDタンパク質とともに共溶出したが、ウエスタンブロッティングにより見られるように、種々の精製段階の損失により低収量である(図5)。
免疫沈降結果によれば、RHDタンパク質およびナノディスクは溶出液中に見られ、このことは、ナノディスク内にタンパク質が挿入されていることを示す。
この結果はまた、合成生成物のスクロース勾配分析によっても見出された。最初の11画分からのサンプルを上層から下層へと採取した後、ウエスタンブロッティングにより分析した(図6)。ナノディスクのRHDタンパク質とMSPタンパク質は、10〜15%スクロースの濃度に相当する同じ画分6〜11にあり、一方、少数である空のナノディスクはより上の画分(4〜5)にあることに留意されたい。
IV.ナノディスクの存在下で生産されたRHDタンパク質抗原のイムノアッセイ
界面活性剤の存在下、in vitroで翻訳されたタンパク質の立体配座を確認するために、本発者らは、Tippett分類に従って9つのDエピトープに対する立体配座モノクローナル抗体(抗ep D)を用いる「サンドイッチELISA」試験を開発したいと考えた。これらの抗体は、その天然型にあるタンパク質のみを認識し、従って、それらの反応性は前記タンパク質の立体配座に依存する。非立体配座LOR−15C9抗体 もまた、この試験で陽性対照として使用する。
IV.1.フローサイトメトリーによる抗体の試験
このELISA試験の開発前に、異なる研究室からの、未知濃度の抗ep D抗体を含有する上清を、RHDタンパク質を発現する赤血球に対するフローサイトメトリーにより分析した。数種の希釈率を試験し(純品、1/4、1/16)、RHD(−)赤血球を陰性対照として使用した(図7A〜B)。
結果は、立体配座抗体または非立体配座抗体は、それらの濃度に応じてRHDタンパク質の異なるエピトープを認識することを示す(図7C)。クラスター化した細胞を排除するために、「単細胞」亜集団で分析を行った。これらの結果もまた、検討した試験サンプル内で高い均質性を示す(図7E〜F)。
V.ELISA試験の開発
ELISA試験を行うために抗体が使用される希釈率を決定した後、捕捉抗体の選択およびプレートブロッキングなどの他のパラメーターも最適化しなければならない。
捕捉抗体として、本発明者には抗HAまたはMPC8の選択肢がある。しかしながら、抗HAは粗画分で使用可能であるに過ぎず、HAアガロースによる免疫沈降により精製されたタンパク質についてはその限りでない。実際に、HAペプチドが溶出画分中に存在することは、この試験の感度を大幅に低下させ得る。従って、本発明者らは、MPC8を捕捉抗体として保持し、これは総て未精製または精製画分とともに使用可能である。
最初のELISA試験において、40μMのナノディスクの存在下で合成された生成物の種々の希釈液(1/40、1/80、1/160)を、従前に最適化した様々な条件とともに、LOR−15C9抗体を一次抗体として1/32(表2)で、また、抗ヒト結合抗体を用い、二反復で使用した。対照ウェルは、タンパク質またはLOR−15C9一次抗体の不在下で実施した。
表2で、試験ウェルのシグナル強度はタンパク質濃度とともに上昇する。この強度は、バックグラウンドノイズに関わらず、対照ウェルのそれよりも高い。
参照文献

Claims (10)

  1. RhD、RhCE、RhAGおよびUTBから選択される赤血球タンパク質またはその変異体を合成する方法であって、
    a)前記タンパク質をコードする核酸またはそれと少なくとも95%の同一性を有する同族体と無細胞タンパク質生産系とを、少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤、リポソームまたはナノディスクの存在下で接触させる工程;および
    b)前記タンパク質の合成工程
    を含んでなる、方法。
  2. 工程a)の接触がBrij 35もしくはBrij 58から選択される少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤、または配列番号9、10もしくは11のタンパク質から選択されるMSPタンパク質を含んでなるナノディスクの存在下で起こる、請求項1に記載の方法。
  3. タンパク質生産のための無細胞系がバッチ系または連続交換を用いる無細胞系である、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
  4. ナノディスク濃度が80μM未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記赤血球タンパク質もしくはその変異体、および/または配列番号9、10もしくは11のタンパク質から選択されるMSPタンパク質がタグ配列と融合されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法により得ることのできる、ナノディスク、リポソームまたは非イオン性界面活性剤内で発現される赤血球タンパク質。
  7. RhD、RhCE、RhAGおよびUTB、またはそれと少なくとも95%の同一性を有する同族体から選択され、固相支持体に結合されている、請求項6に記載の赤血球タンパク質。
  8. 請求項6に記載の赤血球タンパク質と、配列番号9、10または11のタンパク質から選択されるMSPタンパク質とを含んでなる、組成物。
  9. 請求項6に記載の赤血球タンパク質を0.01mg/mlを超える、好ましくは0.1mg/mlを超える濃度で含んでなる、組成物。
  10. 同種異系抗体検出のin vitro検査における、請求項6もしくは7のいずれか一項に記載のタンパク質または請求項8もしくは9のいずれか一項に記載の組成物の使用。
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