JP2005506039A - アフィニティ選択に基づいた疎水性タンパク質のスクリーニング - Google Patents
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Abstract
本発明は、両親媒性物質が結合した疎水性タンパク質のリガンドを同定するための、アフィニティ選択に基づく方法に関する。本発明は、疎水性タンパク質と、リガンドのスクリーニングに適した疎水性タンパク質の単離方法も提供する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬理学および医学の分野に関する。より詳細には、本発明は、新規な薬剤および医学的診断の開発に特に関連の深い個別のリガンド分子の同定のため、疎水性タンパク質をスクリーニングすることに関する。
【背景技術】
【0002】
疎水性タンパク質(HP)の機能のアゴニストおよびアンタゴニストの開発において、疎水性タンパク質は製薬産業に独自の問題を提起している。この問題は、HPが容易に精製されず、単離された形で働くことが難しいこと(例えば溶解度の問題)から生じている。疎水性タンパク質が無極性であると仮定すると、このタンパク質はとりわけ細胞の脂質2重層とその内部の細胞小器官に結合している可能性がある。非限定的な例として、疎水性タンパク質という用語には、膜タンパク質、内在性膜タンパク質、膜貫通タンパク質、モノトピック型膜タンパク質、ポリトピック型膜タンパク質、ポンプ・タンパク質(酵素のサブクラス)、チャネル・タンパク質、受容体キナーゼタンパク質、Gタンパク質共役受容体タンパク質、膜結合酵素、輸送体タンパク質などが含まれる。これらのタンパク質は、細胞内および細胞間のシグナル伝達と、細胞とその環境との一般的な関係、例えば溶質移動などにおいて、しばしば重要な役割を果たす。したがって疎水性タンパク質は、薬物開発の重要な標的である。
【0003】
ヒトゲノム・プロジェクトによって、ゲノムにコードされた親水性および疎水性のタンパク質の構造と機能とに関する膨大な量の情報が提供されることになる。例えば、ヒトゲノムでは1,700〜5,000個のGタンパク質共役受容体タンパク質(GPCR)が発見されると予測される(マルキーズ、エーら(Marchese,A.,et al.)(1999年)Trends Pharmacol.Sci.第20巻:370ページ;ヘニコフ、エスら(Henikoff,S.,et al.)(1997年)Science 第278巻:609ページ)。しかし、疎水性タンパク質に結合するリガンドを同定するための適切なスクリーニング方法がないので、ヒトゲノム・プロジェクトによって同定された何百ものGPCRは、その研究を進めるための既知のリガンドを全く持っていないオーファン(孤児)受容体として分類されることになる。GPCRは医学に非常に重要であるので、例えば配列データや変異体データ、リガンド結合データに関する情報を提供するべく個別のデータベースが確立されている(ホーン、エフら(Horn,F.,et al.)(1998年)Nucleic Acids Research 第26巻:227〜281ページ)。したがって当技術分野では、HPリガンド同定のためのスクリーニング方法、特に処理能力の高い方法の開発が必要とされている。
【0004】
従来技術では、アフィニティ選択に基づいたHPのスクリーニングの記録がない。その代わりこれらの標的は、機能的アッセイまたはリガンド置換アッセイでスクリーニングされる。HPをスクリーニングするのに使用される全てのリガンド置換アッセイおよびほとんどの機能的アッセイは、細胞を用いた形式で実施される(例えば、いずれも細胞を用いたメラノフォア・アッセイを開示するジャヤウィックレム、シー ケー(Jayawickreme,C.K.)およびコスト、ティー エー(Kost,T.A.)(1997年)Current Opinion in Biotechnology 第8巻:629〜634ページならびにチェン、ジーら(Chen,G.,et al.)(1999年)Molecular Pharmacology 第57巻:125〜124ページ;細胞を用いた蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)に基づいたアッセイを開示するメア、エルら(Mere,L.,et al.)(1999年)Drug Discovery Today 第4巻:363〜369ページ;および細胞を用いたエクオリン・アッセイを開示するシェーファー、エム ティーら(Schaeffer,M.T.,et al.)(1999年)J.Receptor&Signal Transduction Research 第19巻:927〜938ページ参照)か、または未精製の細胞膜調製物を用いる(例えば、ミクロソームを用いたアッセイを開示するクロムリッシュら(Cromlish et al.)の米国特許第5,543,297号参照:および膜調製物を使用した放射リガンド置換アッセイを開示するラベラ、エフ エスら(Labella,F.S.,et al.)Fed.Proc.(1985年)第44巻:2806〜2811ページ参照)かのいずれかである。これらのスクリーニング形式は分子レベルの定義が不明確であり、シグナル対ノイズ比が低く、偽陽性が生じ、標的タンパク質が発現する程度のばらつきおよび遺伝子発現パラメータの大きなばらつきの影響を受ける。
【0005】
非常にまれであるが、スクリーニングのためにHP標的が精製される。例えば、界面活性剤(デタージェント)で可溶化された形に精製されたCOX−2は、均一溶液相アッセイでその酵素活性をモニタリングすることによりスクリーニング可能であり、このアッセイにおいて酵素活性に対する小分子阻害剤を薬物リードとして同定し得る(ソング、ワイら(Song,Y.,et al.)(1999年)J.Med.Chem.第42巻:1151〜1160ページ、およびバーネット、ジェイら(Barnett,J.,et al.)(1994年)Biochimica et Biophysica Acta 第1209巻:130〜139ページ参照)。代替例として、スクリーニングのためにHPを担体に結合することが可能である(スクラー、エル エーら(Sklar,L.A.,et al.)(2000年)Biotechniques 第28巻:976〜985ページ;ビエリ、シーら(Bieri,C.,et al.)(1999年)Nature Biotechnology 第17巻:1105〜1108ページ;およびシュミット、イー エルら(Schmid,E.L.,et al.)(1998年)Anal.Chem.第70巻:1331〜1338ページ参照)。しかし、機能に関する読出し情報を使用するスクリーニング・アッセイでは、標的の機能を前もって推測する。また、医学的診断に使用される多くの造影剤の場合と同様に、多くの所望のタンパク質リガンドはアッセイ可能な機能を変化させず、タンパク質に単に結合するだけである。
【0006】
水溶性タンパク質に対するリガンドを同定するためのアフィニティ選択は、当技術分野で知られている。例えば、ナッシュら(Nash et al.)による国際公開番号第99/35109号は、アフィニティ選択と質量分析による結合リガンドの同定との組合せに有用なマスコード・コンビナトリアル・ライブラリを生成するための方法について述べている。ジンダルら(Jindal et al.)による国際特許出願の国際公開番号第97/01755号は、標的分子に結合したリガンドのアフィニティ選択について、その後の多次元クロマトグラフィ法によるリガンド分子の単離と組み合わせて述べている。さらに、パントリアノら(Pantoliano et al.)による米国特許第6,020,141号は、熱シフト・アッセイによるリガンドの同定と組み合わせたアフィニティ選択の方法について述べている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リガンドのアフィニティ選択およびリガンド同定によるこれらの進歩にもかかわらず、純粋なHPを生物学的に活性な高次構造に維持するために必要な過剰な両親媒性物質の存在が障害となるため、水に不溶なHP標的にアフィニティ選択を適用するには基本的な問題が依然として存在している。
【0008】
水溶性タンパク質の調製と純粋なHPの調製との相違を理解することが重要である。HPは、HPの疎水性部分と両親媒性物質の疎水性部分との間の疎水的相互作用によって溶媒和する。純粋な水溶性タンパク質の調製では、全ての緩衝成分が親水性であり、水和によって、あるいは静電結合またはイオン結合に加わることによって、タンパク質を溶媒和する。それに対し、純粋なHPを調製する際の両親媒性物質は、コロイドとしての性質を溶液にもたらす。一般にHPは、100〜10,000倍の過剰なモル濃度の界面活性剤中で精製される。これらの両親媒性の界面活性剤分子は、HPおよびスクリーニングされる薬物分子の両方と相互作用する。さらに両親媒性物質は、ほとんどのタンパク質とちょうど同じ大きさの、ミセルやリポソームなどの高分子アセンブリを形成する。これらの高分子アセンブリは、両親媒性物質に可溶化されたHPの溶液にコロイドとしての性質をもたらし、HPと可溶性タンパク質とがさらに区別される。
【0009】
可溶性タンパク質標的と比較すると、HP−両親媒性物質の調製は特に複雑であるため、結合リガンドの検出が妨げられ、スクリーニング感度が低下し、高率で偽陽性となる。典型的な調製において、このような複雑な問題を引き起こす分子の実体を、HP−両親媒性物質の複合体(20μM、HP:両親媒性物質::1:5〜250;MW=50〜500kD)と、ミセル(5000μM MW=60kD)と、モノマー両親媒性物質(500μM;MW=1200)とであると特定することが可能である。同じような水溶性タンパク質の調製では、20μMのタンパク質だけを得ることになる。どちらの場合も、緩衝剤(例えばトリスまたはリン酸ナトリウム)と塩(例えばNaClまたはKCl)を含ませることも可能である。HPタンパク質の調製では、様々な両親媒性物の存在により、可溶性タンパク質の調製では見られない特別な複雑さが示される。
【0010】
したがって当技術分野では、HP標的の特定の生物学的機能とは関係なく両親媒性物質の存在下で実施可能な、アフィニティ選択に基づいたHPスクリーニング法が、引き続き求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、HP標的の特定の生物学的機能とは関係なく両親媒性物質の存在下で実施可能な、アフィニティ選択に基づいたHPスクリーニング法を提供する。
【0012】
本発明は、両親媒性物質の存在下で薬物様小分子のHPに対する特異的結合の検出を可能にすることによって、HPリガンドのアフィニティ選択に関連した問題を解決する。さらに本発明は、スクリーニングを行うのに有用な精製HPを生成するための新規な方法および組成物も提供する。これらの発見は、組成物および方法を含む本発明を提供するために利用されている。
【0013】
第1の態様では、本発明は、(a)疎水性標的タンパク質とリガンド分子との少なくとも1個の複合体の形成が促進されるように、両親媒性物質が結合している疎水性標的タンパク質を多数の分子に曝すことによるアフィニティ選択により、リガンド分子を選択する工程と、(b)該複合体を非結合分子から分離する工程と、(c)リガンド分子を同定する工程とからなる、疎水性タンパク質のリガンドを同定する方法を提供する。
【0014】
第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質を多数の分子に曝すことが、均一溶液相の条件下で行われる。第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質を多数の分子に曝すことが、不均一溶液相の条件下で行われる。第1の態様のある実施形態では、リガンド分子の選択が、多次元クロマトグラフィを使用して行われる。
【0015】
第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質が、膜タンパク質、内在性膜タンパク質、膜貫通タンパク質、モノトピック型膜タンパク質、ポリトピック型膜タンパク質、ポンプ・タンパク質、チャネル・タンパク質、受容体キナーゼタンパク質、Gタンパク質共役受容体タンパク質、膜結合酵素、および輸送体タンパク質からなる群から選択される。
【0016】
第1の態様のある実施形態では、多数の分子はマスコードされた分子ライブラリである。第1の態様のある実施形態では、多数の分子はマスコードされていない分子のライブラリである。第1の態様のある実施形態では、両親媒性物質が、(a)極性脂質と、(b)両親媒性高分子ポリマーと、(c)表面活性物質(サーファクタント)または界面活性剤と、(d)両親媒性ポリペプチドとからなる群から選択される。第1の態様のある実施形態では、リガンド分子の同定が、質量スペクトル分析によって行われる。第1の態様のある実施形態では、リガンド分子のデコンボリューションが、質量スペクトル分析によって行われる。第1の態様のある実施形態では、複合体の非結合分子からの分離が、固相クロマトグラフィの媒体を用いて行われる。
【0017】
第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質が、(a)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列と、(b)アフィニティ精製に有用な少なくとも2つのタグ配列と、(c)疎水性タンパク質(HP)配列とからなる。前記態様のある実施形態では、疎水性タンパク質配列が、(a)膜タンパク質と、(b)内在性膜タンパク質と、(c)膜貫通タンパク質と、(d)モノトピック型膜タンパク質と、(e)ポリトピック型膜タンパク質と、(f)ポンプ・タンパク質と、(g)チャネル・タンパク質と、(h)受容体キナーゼタンパク質と、(i)Gタンパク共役受容体タンパク質と、(j)膜結合酵素と、(k)輸送体タンパク質とからなる群から選択される。前記態様のある実施形態では、タグ配列が、(a)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)と、(b)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)と、(c)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)と、(d)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)と、(e)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)と、(f)ロドプシン・タグ(NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEPWQFSM−COOH)(配列番号6)とからなる群から選択されたエピトープ・タグ配列からなる。
【0018】
第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質が、(a)タグ1−タグ2−HPと、(b)タグ1−HP−タグ2と、(c)HP−タグ1−タグ2とからなる群から選択された順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで並ぶ配列からなる。前記態様のある実施形態では、本発明は、疎水性標的タンパク質が、(a)Mycタグ−EEタグ−ヒトm2ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)(配列番号7)と、(b)Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号8)と、(c)ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号9)と、(d)Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号10)と、(e)ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号11)とからなる群から選択される方法を提供する。前記態様のある実施形態では、本発明は、疎水性標的タンパク質が、アミノ末端に異種シグナル配列(SS)をさらに含む方法を提供する。前記態様のある実施形態では、異種シグナル配列が、(a)メリチン・シグナル配列NH2−KFLVNVALVFMVVYISYIYA−COOH(配列番号12)と、(b)GPシグナル配列NH2−VRTAVLILLLVRFSEP−COOH(配列番号13)と、(c)ヘマグルチニン・シグナル配列NH2−KTIIALSYIFCLVFA−COOH(配列番号14)と、(d)ロドプシン・タグ1シグナル配列NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号15)と、(e)ロドプシン・タグID4シグナル配列NH2−GKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号16)とからなる群から選択される。前記態様のある実施形態では、タグ配列がヘキサヒスチジン配列(配列番号17)とデカヒスチジン配列(配列番号18)とをさらに含む。前記態様の別のある実施形態では、疎水性標的タンパク質が、(a)GP67 SS−Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、(b)メリチンSS−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号20)と、(c)ヘマグルチニンSS−ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号21)と、(d)メリチンSS−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号22)と、(e)ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号23)とからなる群から選択される。
【0019】
第2の態様では、本発明は、(a)疎水性タンパク質をショ糖勾配超遠心法によって精製する工程と、(b)疎水性タンパク質を抗体アフィニティ精製によって精製する工程と、(c)疎水性タンパク質を固定化金属アフィニティ・クロマトグラフィによって精製する工程とからなる疎水性タンパク質を単離する方法を提供する。
【0020】
第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質が、(a)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列と、(b)アフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列と、(c)疎水性タンパク質(HP)配列とからなる。前記態様のある実施形態では、疎水性タンパク質配列が、(a)膜タンパク質と、(b)内在性膜タンパク質と、(c)膜貫通タンパク質と、(d)モノトピック型膜タンパク質と、(e)ポリトピック型膜タンパク質と、(f)ポンプ・タンパク質と、(g)チャネル・タンパク質と、(h)受容体キナーゼタンパク質と、(i)Gタンパク質共役受容体タンパク質と、(j)膜結合酵素と、(k)輸送体タンパク質とからなる群から選択される。第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質のタグ配列が、(a)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)と、(b)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)と、(c)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)と、(d)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)と、(e)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)と、(f)ロドプシン・タグ(NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEPWQFSM−COOH)(配列番号6)とからなる群から選択されたエピトープ・タグ配列からなる。第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質が、(a)タグ1−タグ2−HPと、(b)タグ1−HP−タグ2と、(c)HP−タグ1−タグ2とからなる群から選択された順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで並ぶ配列からなる。
【0021】
第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質が、(a)Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号7)と、(b)Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号8)と、(c)ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号9)と、(d)Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号10)と、(e)ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号11)とからなる群から選択される。前記態様のある実施形態では、疎水性タンパク質がアミノ末端に異種シグナル配列(SS)をさらに含む。前記態様のある実施形態では、異種シグナル配列が、(a)メリチン・シグナル配列NH2−KFLVNVALVFMVVYISYIYA−COOH(配列番号12)と、(b)GPシグナル配列NH2−VRTAVLILLLVRFSEP−COOH(配列番号13)と、(c)ヘマグルチニン・シグナル配列NH2−KTIIALSYIFCLVFA−COOH(配列番号14)と、(d)ロドプシン・タグ1シグナル配列NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号15)と、(e)ロドプシン・タグID4シグナル配列NH2−GKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号16)とからなる群から選択される。第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質のタグ配列が、ヘキサヒスチジン配列(配列番号17)とデカヒスチジン配列(配列番号18)とからさらになる。
【0022】
前記態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質が、(a)GP67 SS−Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、(b)メリチンSS−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号20)と、(c)ヘマグルチニンSS−ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号21)と、(d)メリチンSS−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号22)と、(e)ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号23)とからなる群から選択される。
【0023】
第3の態様では、本発明は、(a)真核細胞におけるタンパク質発現用のベクター・ポリヌクレオチド配列と、(b)下記の要素、すなわち(i)N末端メチオニン残基、(ii)異種シグナル配列(SS)、(iii)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列、(iv)アフィニティ精製に有用な少なくとも2つのタグ配列、および(v)疎水性タンパク質(HP)配列からなる人工的に改変された疎水性タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列とからなる、疎水性タンパク質の発現に適した単離核酸分子を提供する。前記態様のある実施形態では、N末端メチオニン配列および異種シグナル配列が、(a)MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号24)と、(b)MVRTAVLILLLVRFSEP(配列番号25)と、(c)MKTIIALSYIFCLVFA(配列番号26)と、(d)MMNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号27)と、(e)MGKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号28)とからなる群から選択される。
【0024】
前記態様のある実施形態では、タグ配列が、(a)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)と、(b)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)と、(c)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)と、(d)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)と、(e)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)とからなる群から選択されたエピトープ・タグ配列からなる。
【0025】
第3の態様のある実施形態では、人工的に改変された疎水性タンパク質の要素が、(a)SS−タグ1−タグ2−HPと、(b)SS−タグ1−HP−タグ2と、(c)SS−HP−タグ1−タグ2とからなる群から選択された順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで配列される。前記態様のある実施形態では、人工的に改変された疎水性タンパク質が、(a)GP67 SS−Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、(b)メリチンSS−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号20)と、(c)ヘマグルチニンSS−ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号21)とからなる群から選択される。第3の態様のさらなる実施形態では、タグ配列が、ヘキサヒスチジン配列(配列番号17)とデカヒスチジン配列(配列番号18)とからさらになる。
【0026】
第4の態様では、本発明は、疎水性タンパク質のリガンドを同定する方法であって、(a)(i)膜タンパク質、(ii)内在性膜タンパク質、(iii)膜貫通タンパク質、(iv)モノトピック型膜タンパク質、(v)ポリトピック型膜タンパク質、(vii)ポンプ・タンパク質、(viii)チャネル・タンパク質、(ix)受容体キナーゼタンパク質、(x)Gタンパク共役受容体タンパク質、(xii)膜結合酵素、および(xiii)輸送体タンパク質からなる群から疎水性標的タンパク質を選択する工程と、該疎水性タンパク質に、(i)極性脂質、(ii)両親媒性高分子ポリマー、(iii)表面活性物質または界面活性剤、および(iv)両親媒性ポリペプチドからなる群から選択される両親媒性物質が結合していることと、(b)疎水性標的タンパク質とリガンド分子との少なくとも1つの複合体の形成が促進されるように、均一または不均一な溶液相の条件下、両親媒性物質が結合している疎水性標的タンパク質をマスコード・ライブラリ由来の多数の分子に曝すことによるアフィニティ選択により、多次元クロマトグラフィを使用してリガンド分子を選択する工程と、(c)非結合分子から複合体を分離する工程と、(d)質量スペクトル分析によってリガンド分子を同定する工程とからなる方法を提供する。
【0027】
第5の態様では、本発明は、疎水性タンパク質に対するリガンドを同定するための方法であって、(a)(i)膜タンパク質、(ii)内在性膜タンパク質、(iii)膜貫通タンパク質、(iv)モノトピック型膜タンパク質、(v)ポリトピック型膜タンパク質、(vii)ポンプ・タンパク質、(viii)チャネル・タンパク質、(ix)受容体キナーゼタンパク質、(x)Gタンパク質共役受容体タンパク質、(xii)膜結合酵素、および(xiii)輸送体タンパク質からなる群から疎水性標的タンパク質を選択する工程と、疎水性タンパク質に、(i)極性脂質、(ii)両親媒性高分子ポリマー、(iii)表面活性物質または界面活性剤、および(iv)両親媒性ポリペプチドからなる群から選択される両親媒性物質が結合していることと、(b)疎水性標的タンパク質とリガンド分子との少なくとも1つの複合体の形成が促進されるように、均一または不均一な溶液相の条件下、両親媒性物質が結合している疎水性標的タンパク質をマスコードされていないライブラリ由来の多数の分子に曝すことによるアフィニティ選択により、多次元クロマトグラフィを使用してリガンド分子を選択する工程と、(c)非結合分子から複合体を分離する工程と、(d)質量スペクトル分析によってリガンド分子を同定する工程とからなる方法を提供する。
【0028】
第6の態様では、本発明は、疎水性タンパク質を単離する方法であって、(a)(i)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列と、(ii)(A)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号29)、(B)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号30)、(C)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号31)、(D)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号32)、および(E)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号33)からなる群から選択されたアフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列と、(iii)(A)膜タンパク質、(B)内在性膜タンパク質、(C)膜貫通タンパク質、(D)モノトピック型膜タンパク質、(E)ポリトピック型膜タンパク質、(F)ポンプ・タンパク質、(G)チャネル・タンパク質、(H)受容体キナーゼタンパク質、(I)Gタンパク共役受容体タンパク質、(J)膜結合酵素、および(K)輸送体タンパク質からなる群から選択された疎水性タンパク質(HP)配列とからなる疎水性タンパク質を選択する工程と、(b)疎水性タンパク質をショ糖勾配超遠心法によって精製する工程と、(c)疎水性タンパク質を抗体アフィニティ精製によって精製する工程と、(d)疎水性タンパク質を固定化金属アフィニティ・クロマトグラフィによって精製する工程とからなる方法を提供する。
【0029】
第7の態様では、本発明は、(a)真核細胞におけるタンパク質発現用のベクター・ポリヌクレオチド配列と、(b)下記の要素、すなわち(i)N末端メチオニン残基と、(ii)N末端メチオニン配列および異種シグナル配列が、(1)MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号24)、(2)MVRTAVLILLLVRFSEP(配列番号25)、(3)MKTIIALSYIFCLVFA(配列番号26)、(4)MMNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号27)、および(5)MGKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号28)からなる群から選択される異種シグナル配列(SS)と、(iii)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列と、(iv)(1)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)、(2)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)、(3)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)、(4)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)、および(5)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)からなる群から選択されるアフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列と、(v)(1)膜タンパク質、(2)内在性膜タンパク質、(3)膜貫通タンパク質、(4)モノトピック型膜タンパク質、(5)ポリトピック型膜タンパク質、(6)ポンプ・タンパク質、(7)チャネル・タンパク質、(8)受容体キナーゼタンパク質、(9)Gタンパク質共役受容体タンパク質、(10)膜結合酵素、および(11)輸送体タンパク質からなる群から選択される疎水性タンパク質(HP)配列とを含む人工的に改変された疎水性タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列とを含む、疎水性タンパク質の発現に適した単離核酸分子を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、薬理学および医学の分野に関する。より詳細には、本発明は、新規な薬剤および医学的診断の開発に特に関連の深い個別のリガンド分子の同定のため、疎水性タンパク質をスクリーニングすることに関する。
【0031】
本明細書で引用される特許および科学文献は、当業者が利用可能な知識を明らかにする。発行された米国特許、許可された出願、公開された外国出願、および本明細書で引用された参考文献を本願明細書に援用する。これらの出典と本明細書との矛盾は、後者を優先することによって解消される。
【0032】
本発明は、HP標的の特定の生物学的機能とは無関係に両親媒性物質の存在下で実施可能な、アフィニティ選択に基づいたHPスクリーニング法を提供する。
【0033】
本発明の態様は、分子生物学、細胞生物学、および免疫学の分野で一般的な技法および方法を利用する。これらのタイプの方法に有用な実験室用参考文献は、当業者に容易に利用可能である。例えば、Molecular Cloning、A Laboratory Manual 第2版、サムブルック、ジェイ(Sambrook,J.)、フリッシュ、ビー エフ(Fritsch,B.F.)、およびマニアティス、ティー(Maniatis,T.)編、(1989年)、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Labortory Press);Current Protocols In Molecular Biology and Current Protocols in Immunology、ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)[ニューヨーク(New York)所在];ハーロー・アンド・レーン(Harlow&Lane)、Antibodies:A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー・プレス(Cold Spring Harbor Press)[ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)所在]を参照されたい。
【0034】
本明細書における本発明は、疎水性タンパク質の調製および精製に関し、また疎水性タンパク質に特異的に結合するリガンドを同定する方法に関する。本明細書で使用する「疎水性タンパク質」という用語は、両親媒性物質と共に調製された任意の精製タンパク質を指す。あるいはこの用語は、純度1%を超えて精製され、または純度10%を超えて精製され、または純度25%を超えて精製され、または純度50%を超えて精製されたときに、安定性(保存寿命または凍結融解サイクルに耐える能力)を高めるため、あるいは酵素分析、リガンド結合アッセイ、円偏向2色性、平均サイズ、形状、または密度の流体力学的評価、高次構造に特異的な抗体との相互作用を含めた一般的な実験室技法により観察される高次構造の完全性を維持するため、機能的アッセイに両親媒性物質の存在を必要とするかもしくはその存在が利益となる、任意のタンパク質を指してもよい。好ましい実施形態において、本発明の疎水性タンパク質は哺乳動物の疎水性タンパク質である。特に好ましい実施形態では、本発明の疎水性タンパク質はヒトの疎水性タンパク質である。
【0035】
「疎水性タンパク質」という用語は、疎水性タンパク質の同定のために設計されたアルゴリズムの下記の非限定的な例、すなわち(a)DAS−Dense Alignment Surface法を使用した、原核細胞における膜貫通領域の予測(ストックホルム大学)、エム、チェルゾ(M.Cserzo)、イー、ワリン(E.Wallin)、アイ、シモン(I.Simon)、ジー、フォン・ヘイネ(G.von Heijne)、およびエー、エロフソン(A.Elofsson):原核生物の膜タンパク質における膜貫通αへリックスの予測:Dense Alignment Surface法(Prediction of transmembrane alpha-helices in prokaryotic membrane proteins:the Dense Alignment Surface method );Prot.Eng.第10巻、第6号、673〜676ページ、1997年;(b)HMMTOP−タンパク質の膜貫通ヘリックスおよびトポロジーの予測(ハンガリー科学アカデミー)、ジー イー、タスナディ(G.E.Tusnady)およびアイ、シモン(I.Simon)(1998年)Principles Governing Amino Acid Composition of Integral Membrane Proteins:Applications to Topology Prediction.J.Mol.Biol.第283巻、489〜506ページ;(c)隠れマルコフモデル予測、イー エル エル、ゾーンハンマー(ELL Sonnhammer)、ジー、フォン ヘイネ(G.von Heijne)、およびエー、クロー(A.Krogh):A hidden Markov model for predicting transmembrane helices in protein sequences.分子生物学のためのインテリジェント・システムに関する第6回国際会議要旨集(ISMB98)、175〜182ページ、1998年;(D)TMAP−多重配列アライメントに基づく膜貫通検出(カロリンスカ研究所(Karolinska Institute);スウェーデン)参考文献なし:URL http//www.mbb.ki.se/tamp/ を参照のこと;および(e)TopPred 2−膜タンパク質のトポロジー予測(ストックホルム大学)を用いたバイオインフォマティクス支援手段によって同定されたタンパク質も含む。「膜タンパク質構造予測、疎水性の分析と正電荷の分布の偏り(Membrane Protein Structure Prediction,Hydrophobicity Analysis and the Positive-inside Rule)」、ガンナー フォン ヘイネ(Gunnar von Heijne)、J.Mol.Biol.(1992年)第225巻、487〜494ページ、ならびにエム、チェルゾ(M.Cserzo)、イー、ワリン(E.Wallin)、アイ、シモン(I.Simon)、ジー、フォン ヘイネ(G.von Heijne)、およびエー、エロフソン(A.Elofsson):原核生物の膜タンパク質における膜貫通αへリックスの予測:Dense Alignment Surface法(Prediction of transmembrane alpha-helices in prokaryotic membrane proteins):the Dense Alignment Surface method);Prot.Eng.第10巻、第6号、673〜676ページ、1997年。
【0036】
これらの方法の比較のため、Protein Engineering誌、第10巻、第6号(1997年)に記載されている「原核生物の膜タンパク質における膜貫通αへリックスの予測:Dense Alignment Surface法(Prediction of transmembrane alpha-helices in prokaryotic membrane proteins:the dense alignment surface method )」、ミクロス チェルゾ(Miklos Cserzo)、エリック ワリン(Erik Wallin)、イスタヴァン シモン(Istvan Simon)、ガンナー フォン ヘイネ(Gunnar von Heijne)、およびアーン・エロフソン(Arne Elofsson)を参照されたい。
【0037】
単なる典型的な例として、疎水性タンパク質(本明細書で使用される用語として)の非限定的な例を表1に示す。これらのタンパク質は、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のローカス名で表示されるように、GenBankにリスト化されている。
【0038】
【表1】
【表1A】
【表1B】
当業者には理解されるように、疎水性タンパク質のリガンドを同定する方法は、小分子を結合するリガンドのスクリーニング方法と同義である。さらに、本明細書で使用するように、「スクリーニング」という用語は、例えば疎水性タンパク質などのポリペプチドと小分子との相互作用を検出するのに使用される手順を指し、Kd<200μMでタンパク質に結合するリガンドと、タンパク質に結合しないかまたはKd>200μMでタンパク質に非常に弱く結合するにすぎない大きなリガンド集合とを区別するのに有用である。
【0039】
本発明は、疎水性タンパク質リガンドの同定において、質量スペクトル分析(質量分析)法(MS)を利用する。MS技法は、疎水性タンパク質を含有するサンプルを分析するためにはまれにしか行われないが、その理由はこれらのサンプルが界面活性剤の両親媒性物質を含有するからである。界面活性剤は、検体のイオン形成、すなわちMSにとって極めて重要な現象を抑制し、MSを著しく妨げるので、疎水性タンパク質のMS分析がうまく行われたという報告はほとんどない。それにもかかわらず、いくつかの研究室は、MS分析の前に界面活性剤を除去する方法を明らかにすることにより精製済みの疎水性タンパク質のMS分析を行うことを試みてきた。これらの研究室の全てが、タンパク質サンプルを検出器にかけるためにマトリックス支援レーザ脱離イオン化法(MALDI)を使用する。
【0040】
しかし、疎水性タンパク質のサンプルを調製する既知の方法全てが、MS分析の前にポリペプチドから界面活性剤を抽出するために有機溶媒および/または酸を使用する。そのような処理によりポリペプチドが変性し、変性によりリガンドが検体の疎水性タンパク質に結合することができなくなる。疎水性タンパク質とリガンドとの相互作用に関する研究にMSを使用することに興味を持っている研究者にとって、変性を生じる調製法は適切ではない。さらに、MALDI−MSによる分析のため膜タンパク質を調製することは、本発明によって提供される方法に比べて労力を要する仕事である。
【0041】
これとは対照的に、ある好ましい実施形態では、本発明は、膜タンパク質サンプルがSEC分離からMS検出器に移るときにそのサンプルを流体として扱うことが可能であるエレクトロスプレイイオン化(ESI)MSを使用する。したがって、MS分析は、サンプルがRPCカラムに送られた後30秒未満で進行する。
【0042】
質量スペクトル分析の前にタンパク質サンプルから界面活性剤を除去しなければならない理由は周知であり、例えば下記の参考文献:(a)BioTechniques(1997年)第22巻:244〜250ページ;ジェイ ピーシー ヴィッサーズ(J.PC.Vissers)、ジェイ ピー シャーベット(J.−P、 Chervet)、ケイ サンボーン(K.Sanborn)、およびジェイ ピー ザルツマン(J.−P Salzmann);(b)Protein Science(1994年)第3巻:1975〜1983ページ;アール アール オゴルザレク ルー(R.R.Ogorzalek Loo)、エヌ デールズ(N.Dales)およびピー シー アンドリュース(P.C.Andrews);(c)J.Mass.Spectrom.(1995年)第30巻:1462〜8ページ、ロシンカ ビー(Rosinke B)、ストルパット ケイら(Strupat,K.,et al.);Methods Enzymol.(1996年)第270巻:519〜51ページ;ベアビス アールシー(Beavis,RC)およびチェイト ビーティー(Chait,BT);およびProc.Natl.Acad.Sci.USA(1990年)第87巻:6873〜7ページ;ベアビス
アールシー(Beavis,RC)およびチェイト ビーティー(Chait,BT);ファーンレイ アイ エムら(Fearnley,I.M.et al.)、Biochem.Soc.Trans.、(1996年)第24巻:12〜917ページ、に示されている。
【0043】
第1の態様では、本発明は、疎水性タンパク質のリガンドを同定する方法であって、(a)疎水性標的タンパク質とリガンド分子との少なくとも1個の複合体の形成が促進されるように、両親媒性物質に結合された疎水性標的タンパク質を多数の分子に曝すことによるアフィニティ選択により、リガンド分子を選択する工程と、(b)この複合体を非結合分子から分離する工程と、(c)リガンド分子を同定する工程とからなる方法を提供する。
【0044】
本発明のアフィニティ・スクリーニング法は、機能的選択法と区別される。機能的選択法は、ある特異的なタンパク質−リガンド相互作用またはタンパク質−タンパク質相互作用を有意であると認める基準に基づいてリガンドを選択することを含み、そのようなリガンド選択は、タンパク質に起因し得る作用(例えば酵素の化学触媒作用)、またはタンパク質とその他のある分子との間の何らかの相互作用(例えば、非酵素の場合は、タンパク質と既知の小分子リガンドとの相互作用)を確認することのいずれかに依存する。手短に言えば、これらのスクリーニング法は一般に、酵素的アッセイまたは生体機能的アッセイあるいはリガンド置換アッセイに基づくものである。
【0045】
本発明の方法の様々な実施形態は、新規な薬物リードを発見するために自動リガンド同定システム(ALIS)を利用することが可能である。ALISは、化合物のその標的タンパク質に対する親和性に基づいてリガンドを選択し、質量スペクトル分析によってリガンドを同定する(国際特許出願国際公開番号第99/35109号を参照のこと)。本明細書で述べる発明では、両親媒性物質と複合したHPにALISを利用する。
【0046】
本明細書で使用する「アフィニティ選択」という用語は、選択されたタンパク質標的に対するある分子の親和性に基づいたリガンド選択を意味し、そのようなリガンド選択は、タンパク質がその小分子に結合すること以外、問題のタンパク質の機能的活性には左右されない。
【0047】
本明細書で使用する「両親媒性物質」という用語は、疎水性ポリペプチドの水溶性を高める界面活性剤、リン脂質、または表面活性物質としての性質を通常有する任意の分子、特に、水溶液中で会合コロイドとして振る舞うことが知られている任意の分子を指すのに使用され、そのような両親媒性物質の非限定的な例には、リン脂質およびその他の極性脂質(例えばホスファチジルコリン、リゾリン脂質、コレステロール、レシチン、セラミドなど);両親媒性高分子ポリマー(例えばクリストフ トリベット(Christophe Tribet)およびジーン−ルク ポポット(Jean−Luc Popot)の研究(トリベット シーら(Tribet,C.,et al.)J.L.Natl.Acad.Sci.USA(1996年)第93巻:15047〜50ページ));アルキルサッカライド、アルキルチオグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、コール酸塩およびCHAPSシリーズ、FOS−CHOLINE(登録商標)シリーズ、CYMAL(登録商標)シリーズもしくはCYGLU(登録商標)シリーズなどの胆汁酸誘導体、グルカミド、ならびにアルキルポリオキシエチレンなどを含む表面活物物質;または両親媒性構造をとることが知られているポリペプチド(例えばシー イー シャフマイスター(C.E.Schafmeister)およびアール エム ストラウド(R.M.Stroud)の研究(シャフマイスター、シー イーら(Schafmeister,C.E.et al.)、RM Science(1993年)第262巻:734〜8ページ))が含まれるであろう。
【0048】
本明細書で使用する「多数の分子」という用語は、疎水性標的タンパク質に対する特異的結合性に関して試験される複数の分子を指す。「分子」という用語は、サイズが150〜5000原子質量単位(amu)の範囲内にある任意の化合物を意味する。そのような化合物は、当技術分野で知られている任意の手段によって生成することが可能である。多数の分子を生成する特に好ましい方法は、コンビナトリアル・ケミストリーを利用する。「コンビナトリアル・ライブラリ」は、構造上関連のある、もしくは関連のない1組の化学的もしくは生化学的構築単位を、所与の化合物の長さに対してあらゆる可能な方法で結合することによって形成される、複数の分子または化合物を指す。あるいはこの用語は、特定の1組の化学的構築単位を選択的に結合することによって形成される、複数の化学的または生化学的化合物を指す。例えば、20種のアミノ酸をランダムに結合して6量体ペプチドにすると、6400万種以上の化合物を生成することになる。「コンビナトリアル・ライブラリ」の手法によれば、可能な限り多くの異なる化合物が作製され、次いで、問題の標的分子、例えば疎水性タンパク質に対する結合活性に関してそれらをスクリーニングすることにより候補化合物が選択される。
【0049】
現在、コンビナトリアル・ライブラリを構築するための、当技術分野で周知の数多くの方法がある。非限定的な例として、下記の参考文献は、コンビナトリアル・ライブラリを構築するための方法を提供する:いくつか例を挙げると、米国特許第6,147,344号;(国際公開第99/35109号;第6,114,309号;第6,025,371号;第6,017,768号;第5,962,337号;第5,919、955号;および第5,856,496号がある。本明細書で使用する「多数の分子」という用語は、例えば体液、組織または細胞から得られた複数の天然分子または天然化合物を指してもよい。これらのサンプルを、リガンド・スクリーニング・プロトコルで使用する前にインビトロで、例えばタンパク質分解により消化するなどして処理してもよい。
【0050】
第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質を多数の分子に曝すことが、均一溶液相の条件下で行われる。第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質を多数の分子に曝すことが、不均一溶液相の条件下で行われる。第1の態様のある実施形態では、リガンド分子の選択は多次元クロマトグラフィを使用して実施される。
【0051】
本明細書で使用する「均一溶液相」という用語は、起こりうるタンパク質−リガンド相互作用を促進する目的でタンパク質と1つまたは複数のリガンドとを組み合わせたタンパク質調製物を意味するが;そのような調製物は、タンパク質もリガンドも支持要素に結合しないよう−40〜60℃の温度範囲においてはゾルの状態であり;これらの調製物は、カットオフ・サイズが5.0μMの半透膜を通過するか、もしくは沈降係数が500スベドベリ未満のように挙動するかのいずれか、またはその両方であり;そのような調製物の例には、両親媒性物質に可溶化されたタンパク質や、プロテオリポソームに取り込まれたタンパク質、細胞由来のウイルス様粒子に取り込まれたタンパク質などと、リガンドとの組合せが含まれると考えられる。
【0052】
本明細書で使用する「不均一溶液相」という用語は、起こりうるタンパク質−リガンド相互作用を促進する目的でタンパク質と1つまたは複数のリガンドとを組み合わせたタンパク質調製物を意味するが;そのような調製物は、タンパク質またはリガンドのいずれかが支持要素に結合するよう−40〜60℃の温度範囲において混合物の状態であり;これらの調製物は、カットオフ・サイズが5.0μMの半透膜を通過することができないか、もしくはこれらが500スベドベリを超える沈降係数を有するかのように挙動するかのいずれか、またはその両方であり;そのような調製物の例には、タンパク質が共有結合もしくは非共有結合または両親媒性物質の自己会合に依存する結合のいずれかを介してビーズ/固定要素に付着している、ビーズ/固定要素の表面に存在するタンパク質とリガンドの組合せ、または固定相に固定されたリガンドとタンパク質との組合せが含まれると考えられる。
【0053】
本明細書で使用される「多次元クロマトグラフィ」という用語は、連携する複数のクロマトグラフ法を含むサンプル処理手順を意味する。クロマトグラフ法の代表的なタイプには、(1)固相クロマトグラフィ媒体:小粒子(<5μM)、固体多孔質キャスティング、フィルタ、または半透膜を含めた様々な材料のいずれかであって、一般に樹脂、ゲル、固定化人工膜、固相要素もしくはその他の名称で呼ばれるものであり、かつクロマトグラフィまたは電気泳動による分離または分画化のように、その表面上またはその表面を通って可溶化検体が通過し、またはその表面と可溶化検体とが相互に作用する固定表面を提供する目的で使用されるものと、(2)液相クロマトグラフィ媒体:固相クロマトグラフィ媒体と組み合わせて使用する場合、電気泳動による分離または分画化における使用に適した溶液または流体とが含まれる。
【0054】
第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質は、膜タンパク質、内在性膜タンパク質、膜貫通タンパク質、モノトピック型膜タンパク質、ポリトピック型膜タンパク質、ポンプ・タンパク質、チャネル・タンパク質、受容体キナーゼタンパク質、Gタンパク質共役受容体タンパク質、膜結合酵素、および輸送体タンパク質からなる群から選択される。
【0055】
第1の態様のある実施形態では、多数の分子はマスコードされた分子ライブラリである。第1の態様のある実施形態では、多数の分子はマスコードされていない分子ライブラリである。
【0056】
本明細書で使用する「マスコード・ライブラリ」という用語は、マスコードされたコンビナトリアル・ライブラリを指す。マスコード・コンビナトリアル・ライブラリの化合物は、一般式がX(Y)nであって、Xは骨格であり、各Yは周辺部分であり、nは1より大きい整数で典型的には2から約6までである。本明細書で使用する「骨格」という用語は、2つ以上の周辺部分が共有結合を介して結合している分子の一部分を指す。骨格は、マスコードされた化合物群の各メンバに共通な、分子の一部分である。本明細書で使用する「周辺部分」という用語は、骨格に結合した分子の一部分を指す。マスコードされた化合物群の各メンバは骨格に結合したn個の周辺部分の組合せを含むことになり、この一連の化合物がマスコード・コンビナトリアル・ライブラリを形成する。マスコード・ライブラリについては、本願明細書に援用される特許出願国際公開番号第9935109A1号にさらに詳細に述べられている。
【0057】
本明細書で使用する「マスコードされていない分子のライブラリ」という文言は、マスコード・コンビナトリアル・プロセスによって作製されたのではない任意の複数の分子または化合物を意味する。したがってこの用語には、コンビナトリアル・ライブラリを作製するその他の方法のいずれか、および全てが含まれる。さらにこの用語は、標的タンパク質の構造に基づいて薬物を設計しようとする「構造に基づく薬物設計」の方法によって構築された化合物群と、体液、組織、または細胞から得られた天然の化合物ライブラリも含む。
【0058】
第1の態様のある実施形態では、両親媒性物質が、(a)極性脂質と、(b)両親媒性高分子ポリマーと、(c)表面活性物質または界面活性剤と、(d)両親媒性ポリペプチドとからなる群から選択される。第1の態様のある実施形態では、リガンドの同定を質量スペクトル分析によって行う。第1の態様のある実施形態では、リガンド分子のデコンボリューションを質量スペクトル分析によって行う。第1の態様のある実施形態では、非結合分子からの複合体の分離を固相クロマトグラフィ媒体により行う。
【0059】
本明細書で使用する「リガンド(の)同定」という用語は、スクリーニングで検出された小分子の構造組成を正確に特定し得る任意のプロセスを意味する。
【0060】
第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質は、(a)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列と、(b)アフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列と、(c)疎水性タンパク質(HP)配列とからなる。この態様のある実施形態では、疎水性タンパク質配列が、(a)膜タンパク質と、(b)内在性膜タンパク質と、(c)膜貫通タンパク質と、(d)モノトピック型膜タンパク質と、(e)ポリトピック型膜タンパク質と、(f)ポンプ・タンパク質と、(g)チャネル・タンパク質と、(h)受容体キナーゼタンパク質と、(i)Gタンパク質共役受容体タンパク質と、(j)膜結合酵素と、(k)輸送体タンパク質とからなる群から選択される。この態様のある実施形態では、タグ配列が、(a)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)と、(b)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)と、(c)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)と、(d)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)と、(e)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)と、(f)ロドプシン・タグ(NH2GTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEPWQFSM−COOH)(配列番号6)とからなる群から選択されるエピトープ・タグ配列を含む。
【0061】
第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質が、(a)タグ1−タグ2−HPと、(b)タグ1−HP−タグ2と、(c)HP−タグ1−タグ2とからなる群から選択された順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで並ぶ配列を含む。この態様のある実施形態では、本発明は、疎水性標的タンパク質が、(a)Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号6)と、(b)Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号7)と、(c)ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号9)と、(d)Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号10)と、(e)ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号11)とからなる群から選択される方法を提供する。この態様のある実施形態では、本発明は、疎水性標的タンパク質がアミノ末端に異種シグナル配列(SS)をさらに含む方法を提供する。この態様のある実施形態では、異種シグナル配列が、(a)メリチン・シグナル配列NH2−KFLVNVALVFMVVYISYIYA−COOH(配列番号12)と、(b)GPシグナル配列NH2−VRTAVLILLLVRFSEP−COOH(配列番号13)と、(c)ヘマグルチニン・シグナル配列NH2−KTIIALSYIFCLVFA−COOH(配列番号14)と、(d)ロドプシン・タグ1シグナル配列NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号15)と、(e)ロドプシン・タグID4シグナル配列NH2−GKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号16)とからなる群から選択される。この態様のある実施形態では、タグ配列が、ヘキサヒスチジン配列(配列番号17)とデカヒスチジン配列(配列番号18)とをさらに含む。さらにこの態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質が、(a)GP67 SS−Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、(b)メリチンSS−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号20)と、(c)ヘマグルチニンSS−ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号21)と、(d)メリチンSS−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号22)と、(e)ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号23)とからなる群から選択される。
【0062】
第2の態様では、本発明は、(a)疎水性タンパク質をショ糖勾配超遠心法によって精製する工程と、(b)疎水性タンパク質を抗体アフィニティ精製によって精製する工程と、(c)疎水性タンパク質を固定化金属アフィニティ・クロマトグラフィによって精製する工程とからなる疎水性タンパク質を単離する方法を提供する。
【0063】
第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質が、(a)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列と、(b)アフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列と、(c)疎水性タンパク質(HP)配列とからなる。この態様のある実施形態では、疎水性タンパク質配列が、(a)膜タンパク質と、(b)内在性膜タンパク質と、(c)膜貫通タンパク質と、(d)モノトピック型膜タンパク質と、(e)ポリトピック型膜タンパク質と、(f)ポンプ・タンパク質と、(g)チャネル・タンパク質と、(h)受容体キナーゼタンパク質と、(i)Gタンパク質共役受容体タンパク質と、(j)膜結合酵素と、(k)輸送体タンパク質とからなる群から選択される。第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質のタグ配列が、(a)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)と、(b)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)と、(c)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)と、(d)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)と、(e)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)と、(f)ロドプシン・タグ(NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEPWQFSM−COOH)(配列番号6)とからなる群から選択されるエピトープ・タグ配列を含む。第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質が、(a)タグ1−タグ2−HPと、(b)タグ1−HP−タグ2と、(c)HP−タグ1−タグ2とからなる群から選択された順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで並ぶ配列を含む。
【0064】
第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質が、(a)Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号7)と、(b)Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号8)と、(c)ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号9)と、(d)Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号10)と、(e)ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号11)とからなる群から選択される。この態様の実施形態では、疎水性タンパク質が、アミノ末端に異種シグナル配列(SS)をさらに含む。この態様のある実施形態では、異種シグナル配列が、(a)メリチン・シグナル配列NH2−KFLVNVALVFMVVYISYIYA−COOH(配列番号12)と、(b)GPシグナル配列NH2−VRTAVLILLLVRFSEP−COOH(配列番号13)と、(c)ヘマグルチニン・シグナル配列NH2−KTIIALSYIFCLVFA−COOH(配列番号14)と、(d)ロドプシン・タグ1シグナル配列NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号15)と、(e)ロドプシン・タグID4シグナル配列NH2−GKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号16)とからなる群から選択される。第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質のタグ配列が、ヘキサヒスチジン配列(配列番号17)とデカヒスチジン配列(配列番号18)とをさらに含む。
【0065】
第2の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質が、(a)GP67 SS−Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、(b)メリチンSS−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号20)と、(c)ヘマグルチニンSS−ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号21)と、(d)メリチンSS−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号22)と、(e)ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号23)とからなる群から選択される。
【0066】
第3の態様では、本発明は、(a)真核細胞におけるタンパク質発現用のベクター・ポリヌクレオチド配列と、(b)下記の要素、すなわち(i)N末端メチオニン残基、(ii)異種シグナル配列(SS)、(iii)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列、(iv)アフィニティ精製に有用な少なくとも2つのタグ配列、および(v)疎水性タンパク質(HP)配列からなる人工的に改変された疎水性タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列とからなる、疎水性タンパク質の発現に適した単離核酸分子を提供する。
【0067】
「真核細胞におけるタンパク質発現用のベクター・ポリヌクレオチド配列」という文言は、真核細胞内での複製を可能にする複製起点と、選択可能なマーカー、例えば抗生物質耐性マーカーと、構造遺伝子の転写を促進するための、ウイルス、原核細胞、もしくは真核細胞由来のプロモーター配列要素とからなる任意のポリヌクレオチド配列を意味する。ベクター・ポリヌクレオチド配列の起源は、ウイルス、原核細胞、真核細胞、またはこれらを組み合わせたものである。当技術分野で理解されるように、ベクター配列は真核細胞での発現のために設計されているが、任意選択で原核細胞の複製起点を含んでもよい。適切なベクター・ポリヌクレオチド配列の非限定的な例には、下記のもの、すなわちpVL1392(ファーミンゲン(Pharmingen)、[米国カリフォルニア州サンディエゴ所在])やpBAC−1(登録商標)(ノバゲン(Novagen)、[米国ウィスコンシン州マディソン所在])などのバキュロウイルス・ベクターと、pcDNA3.1(インビトロゲン(Invitrogen)、[米国カリフォルニア州サンディエゴ])やpTriEx−1(登録商標)(ノバゲン(Novagen)[米国ウィスコンシン州マディソン所在])などの哺乳動物の発現ベクターが含まれる。
【0068】
適切なDNA配列は、様々な手順によってベクターに挿入し得る。一般にDNA配列は、当技術分野で知られている手順によって、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。このような手順およびその他の手順は、当業者の技術の範囲内とみなされる。
【0069】
ある実施形態では、本発明は、上述の構築物を含有する宿主細胞に関する。宿主細胞は、哺乳動物細胞などの高等真核細胞でも酵母細胞などの下等真核細胞でもよく、または宿主細胞は細菌細胞などの原核細胞でもよい。宿主細胞への上記構築物の導入は、形質導入または形質転換またはトランスフェクションまたはエレクトロポレーションなどの(ただしこれらに限定されない)当技術分野で知られている任意の手段によって実施可能である。
【0070】
適切な異種シグナル配列(SS)の例には、ミツバチのメリチンSS(NH2−MKFLVNVALVFMVVYISYIYA−COOH)(配列番号12)(テッシヤー、ディー シー(Tessier D.C.)、(1991年)Gene、第98巻:177ページ)(インビトロゲンドットコム(Invitrogen.com)のpMelBac製品も参照のこと)、バキュロウイルスgp67 SS(NH2−MVRTAVLILLLVRFSEP−COOH)(配列番号13)(クレッチュマー、ティーら(Kretzschmar T.et al.)、(1996年)J.Immunol Methods、第195巻:93〜101)、インフルエンザA型ウイルス・ヘマグルチニンSS(NH2−MKTIIALSYIFCLVFA−COOH)(配列番号14)(ヴェルホーエン、エム(Verhoeyen,M.)、(1980年)Nature、第286巻:771〜776ページ)、ロドプシン・タグ1 SS(NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH)(配列番号15)、またはロドプシン・タグID4 SS(NH2−GKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号16)が含まれる。一般に、そのような適切なSSの長さは75aaよりも短くなる。これらのシグナル配列は、動物細胞で発現したときにタンパク質から切断されても切断されなくてもよい。例えばロドプシン・タグ1は、細胞により原形質膜に提示された場合はタンパク質から切断されないが、ロドプシン・タグID4シグナル配列は切り離される。
【0071】
適切なエピトープ・アフィニティ・タグの非限定的な例には、FLAG(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号29)、”EE”(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号30)、ヘマグルチニン(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号31)、myc(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号32)、または単純ヘルペスウイルス・タグ(”HSV”;NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号33)が含まれる。
【0072】
疎水性タンパク質に関するこれらの設計要素は、下記の順序、すなわち(1)SS−タグ1−タグ2−HP;(2)SS−タグ1−HP−タグ2;(3)SS−HP−タグ1−タグ2;のうちの1つの順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで配列される。
【0073】
この態様のある実施形態では、N末端メチオニン配列と異種シグナル配列が、(a)MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号24)と、(b)MVRTAVLILLLVRFSEP(配列番号25)と、(c)MKTIIALSYIFCLVFA(配列番号26)と、(d)MMNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号27)と、(e)MGKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号28)とからなる群から選択される。
【0074】
この態様のある実施形態では、タグ配列が、(a)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)と、(b)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)と、(c)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)と、(d)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)と、(e)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)と、(f)ロドプシン・タグ(NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEPWQFSM−COOH)(配列番号6)とからなる群から選択されるエピトープ・タグ配列を含む。
【0075】
第3の態様のある実施形態では、人工的に改変された疎水性タンパク質の要素が、(a)SS−タグ1−タグ2−HPと、(b)SS−タグ1−HP−タグ2と、(c)SS−HP−タグ1−タグ2とからなる群から選択された順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで配列される。この態様の実施形態では、人工的に改変された疎水性タンパク質が、(a)GP67−Myc−EE−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、(b)メリチン−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EE(配列番号20)と、(c)ヘマグルチニンSS−ヒトニューロキニン3受容体−HSV−Myc(配列番号21)とからなる群から選択される。第3の態様の別の実施形態では、タグ配列が、ヘキサヒスチジン配列(配列番号17)とデカヒスチジン配列(配列番号18)とをさらに含む。第3の態様のある実施形態では、人工的に改変された疎水性タンパク質が、(a)GP67−Myc−EE−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、(b)メリチン−Flag Tag−ヒトm1 mAChR−EE(配列番号20)と、(c)ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSV−8His(配列番号21)とからなる群から選択される。
【0076】
単離ポリヌクレオチドのHP配列は、両親媒性物質の存在下で単離されるタンパク質をコードする任意のポリヌクレオチドでよい。あるいはこの用語は、純度1%を超えて精製され、または純度10%を超えて精製され、または純度25%を超えて精製され、または純度50−99%を超えて精製されたときに、安定性(保存寿命または凍結融解サイクルに耐える能力)を高めるため、あるいはリガンド結合アッセイ、円偏向2色性、平均サイズ、形状、または密度の流体力学的評価、高次構造に特異的な抗体との相互作用を含めた一般的な実験室技法により観察される高次構造の完全性を維持するため、機能的アッセイに両親媒性物質の存在を必要とするかもしくはその存在が利益となる、任意のタンパク質を指してもよい。好ましい実施形態では、本発明の疎水性タンパク質は哺乳動物の疎水性タンパク質である。特に好ましい実施形態では、本発明の疎水性タンパク質はヒト疎水性タンパク質である。
【0077】
単離ポリヌクレオチドのHP配列は、疎水性タンパク質の同定のために設計されたアルゴリズムに関する下記の非限定的な例、すなわち(a)DAS−Dense Alignment Surface法を使用した原核細胞における膜貫通領域の予測(ストックホルム大学)、チェルゾ、エムら(Cserzo,M.et al.)、1997年、Prot.Eng.第10巻:673〜676ページ;(b)HMMTOP−タンパク質の膜貫通ヘリックスおよびトポロジーの予測(ハンガリー科学アカデミー)、ジー イー、タスナディ(G.E.Tusnady)およびアイ シモン(I.Simon)、1998年、J.Mol.Biol.第283巻、489〜506ページ;(c)隠れマルコフモデル予測、ゾーンハンマー、イー エル エルら(Sonnhammer,E.L.L.et al.)、1998年、タンパク質配列における膜貫通ヘリックスを予測するための隠れマルコフモデル(A hidden Markov model for predicting transmembrane helices in protein sequences )、分子生物学のためのインテリジェント・システムに関する第6回国際会議要旨集(ISMB98)、175〜182ページ;(D)TMAP−多重配列アライメントに基づく膜貫通検出(カロリンスカ研究所(Karolinska Institute);スウェーデン)(参考文献なし:URL http//www.mbb.ki.se/tamp/ を参照のこと)および(e)TopPred2−膜タンパク質のトポロジー予測(ストックホルム大学)、フォン ヘイネ、ジー(von Heijne,G.)(1992年)J.Mol.Biol.第225巻、487〜494ページおよびチェルゾ、エムら(Cserzo,M.et al.)、1997年、Prot.Eng.第10巻、673〜676ページ;を用いたバイオインフォマティクス支援手段によって同定されたタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含みうる。
【0078】
本発明のHPポリヌクレオチドによってコードし得るタンパク質の代表的かつ非限定的な例を、本明細書の表1に示す。
【0079】
適切なGenBank受入番号により上記に特定された全ての核酸配列および該核酸配列によってコードされる各アミノ酸配列を、引用により本願明細書に援用する。
【0080】
第4の態様では、本発明は、(a)(i)膜タンパク質、(ii)内在性膜タンパク質、(iii)膜貫通タンパク質、(iv)モノトピック型膜タンパク質、(v)ポリトピック型膜タンパク質、(vii)ポンプ・タンパク質、(viii)チャネル・タンパク質、(ix)受容体キナーゼタンパク質、(x)Gタンパク質共役受容体タンパク質、(xii)膜結合酵素、および(xiii)輸送体タンパク質からなる群から疎水性標的タンパク質を選択する工程と、疎水性タンパク質に、(i)極性脂質、(ii)両親媒性高分子ポリマー、(iii)表面活性物質または界面活性剤、および(iv)両親媒性ポリペプチドからなる群から選択される両親媒性物質が結合していることと、(b)疎水性標的タンパク質とリガンド分子との少なくとも1つの複合体の形成が促進されるように、均一または不均一な溶液相の条件下、両親媒性物質が結合している疎水性標的タンパク質をマスコード・ライブラリ由来の多数の分子に曝すことによるアフィニティ選択により、多次元クロマトグラフィを使用してリガンド分子を選択する工程と、(c)非結合分子から複合体を分離する工程と、(d)質量スペクトル分析によってリガンド分子を同定する工程とからなる、疎水性タンパク質のリガンドを同定する方法を提供する。
【0081】
第5の態様では、本発明は、(a)(i)膜タンパク質、(ii)内在性膜タンパク質、(iii)膜貫通タンパク質、(iv)モノトピック型膜タンパク質、(v)ポリトピック型膜タンパク質、(vii)ポンプ・タンパク質、(viii)チャネル・タンパク質、(ix)受容体キナーゼタンパク質、(x)Gタンパク質共役受容体タンパク質、(xii)膜結合酵素、および(xiii)輸送体タンパク質からなる群から疎水性標的タンパク質を選択する工程と、疎水性タンパク質に、(i)極性脂質、(ii)両親媒性高分子ポリマー、(iii)表面活性物質または界面活性剤、および(iv)両親媒性ポリペプチドからなる群から選択される両親媒性物質が結合していることと、(b)疎水性標的タンパク質とリガンド分子との少なくとも1つの複合体の形成が促進されるように、均一または不均一な溶液相の条件下、両親媒性物質が結合している疎水性標的タンパク質をマスコードされていないライブラリ由来の多数の分子に曝すことによるアフィニティ選択により、多次元クロマトグラフィを使用してリガンド分子を選択する工程と、(c)非結合分子から複合体を分離する工程と、(d)質量スペクトル分析によってリガンド分子を同定する工程とからなる、疎水性タンパク質に対するリガンドを同定する方法を提供する。
【0082】
第6の態様では、本発明は、(a)(i)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列、(ii)(A)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号29)、(B)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号30)、(C)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号31)、(D)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号32)、および(E)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号33)からなる群から選択されるアフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列、(iii)(A)膜タンパク質、(B)内在性膜タンパク質、(C)膜貫通タンパク質、(D)モノトピック型膜タンパク質、(E)ポリトピック型膜タンパク質、(F)ポンプ・タンパク質、(G)チャネル・タンパク質、(H)受容体キナーゼタンパク質、(I)Gタンパク質共役受容体タンパク質、(J)膜結合酵素、および(K)輸送体タンパク質からなる群から選択される疎水性タンパク質(HP)配列からなる疎水性タンパク質を選択する工程と、(b)疎水性タンパク質をショ糖勾配超遠心法によって精製する工程と、(c)疎水性タンパク質を抗体アフィニティ精製によって精製する工程と、(d)疎水性タンパク質を固定化金属アフィニティ・クロマトグラフィによって精製する工程とからなる、疎水性タンパク質を単離する方法を提供する。
【0083】
第7の態様では、本発明は、(a)真核細胞におけるタンパク質発現用のベクター・ポリヌクレオチド配列と、(b)下記の要素、すなわち(i)N末端メチオニン残基と、(ii)N末端メチオニン配列および異種シグナル配列が、(1)MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号24)、(2)MVRTAVLILLLVRFSEP(配列番号25)、(3)MKTIIALSYIFCLVFA(配列番号26)、(4)MMNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号27)、および(5)MGKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号28)からなる群から選択される異種シグナル配列(SS)と、(iii)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列と、(iv)(1)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)、(2)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)、(3)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)、(4)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)、および(5)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)からなる群から選択されるアフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列と、(v)(1)膜タンパク質、(2)内在性膜タンパク質、(3)膜貫通タンパク質、(4)モノトピック型膜タンパク質、(5)ポリトピック型膜タンパク質、(6)ポンプ・タンパク質、(7)チャネル・タンパク質、(8)受容体キナーゼタンパク質、(9)Gタンパク質共役受容体タンパク質、(10)膜結合酵素、および(11)輸送体タンパク質からなる群から選択される疎水性タンパク質(HP)配列とを含む人工的に改変された疎水性タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列とからなる、疎水性タンパク質の発現に適した単離核酸分子を提供する。
【0084】
以下の実施例は、本発明の、ある好ましい実施形態をさらに例示するものであり、本発明の範囲をどのようにも限定するものではない。
(実施例1)
COX−1のアフィニティ選択およびALISによる同定
ケイマン・ケミカル社(Cayman Chemical Company)[米国ミシガン州アナーバー(Ann Arbor)所在]の精製ヒツジCOX−1(SDS−PAGEで>95%)を、界面活性剤を交換することによってスクリーニング用に調製した。納品時にタンパク質に含まれていた界面活性剤、Tween−20を除去するために、イオン交換クロマトグラフィを行った。80mM Tris−8.0、0.09% Tween−20、270μM DDC、および240μM ドデシル−β−D−マルトシド(DβM)の緩衝液中に0.27mg/mLのCOX−1溶液を約6mL、すなわち理論上の収量が1.8mgとなるものを、80mM tris、pH8.0、240μM DβM(TBS−AGD)の緩衝液を含んだPoros(登録商標)HQカラムにアプライした。このカラムを、流量5mL/分で10分間、0〜0.5M NaClの直線勾配で展開した。タンパク質溶出画分を、280nmの吸光度をモニタすることによって同定した。
【0085】
この処理の後、タンパク質含有試料18mLを合わせ、製造業者の使用説明書に従って(ミリポアインコーポレイティッド社(Millipore,Inc.)[米国マサチューセッツ州ベッドフォード(Bedford)所在])Amicon(登録商標)−30 Centricon(登録商標)で濃縮した。その結果、濃度約1.8mg/mlのCOX−1が得られ、これをスクリーニング用に1.3mg/mL(20μM COX−1)に希釈した。最終的なタンパク質調製物中の緩衝液は、2.4mM DβM、80mM tris−8.0、約50mM NaClからなると推定された。このCOX−1溶液に、ケイマン・ケミカル社(Cayman Chemical Company)が用いる処理手順に従って20μMヘミンと300μM ジエチルジチオカルバメート(DDC)を即座に添加した。
【0086】
次いで、COX−1タンパク質調製物を添付のサンプル調製標準操作手順書(SOP、表2)に従ってサンプル調製に使用した。
【0087】
【表2】
【表2A】
このサンプル調製SOPにより、COX−1と、約2500種の薬物様小分子からなり、各分子の濃度が1μMであるマスコード・コンビナトリアル・ライブラリとを組み合わせる結合アッセイが実施される。サンプルを、4℃で30分間インキュベートした。全体積が12μLなので、サンプルは240pmolのタンパク質と12pmolの各ライブラリ成分とを含有していた。対照試験として、無関係の膜タンパク質、ジアシルグリセロールキナーゼ(カルビオケムインコーポレイティッド社(Calbiochem,Inc.)[米国カリフォルニア州サンディエゴ所在])も同じ緩衝液で20μMに調製し、同じ2500種のライブラリと共にインキュベートし、同様に処理した。
【0088】
次いでこれらの混合物を個々にALIS分析に供した。適度に高い親和性の任意のリガンドが、COX画分の収集時にCOXに結合していれば、質量スペクトル分析によってその質量が同定される。マスコードであるおかげで、構築単位とコア分子との厳密な組合せを識別することが可能である(米国特許第6,147,344号参照)。同じ化合物がジアシルグリセロールキナーゼの対照実験で生じなければ、その化合物はCOX−1に特異的なリガンドとして同定してよい。
【0089】
次いで混合物を個々に、下記のように修正を加えたALIS分析に供した。流量2mL/分の溶出緩衝液TBS(80mM tris、pH8.0、150mM NaCl、2.5%DMSO)を用いて、4.6mm×50mm×5μmのSECカラムで0℃でサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を実施することにより、界面活性剤に可溶化された大きなタンパク質を薬物様小分子から分離した。タンパク質を含有する溶出SEC画分を、230nmでモニタするUV−VIS検出によって特定し、サンプルループを経て低流量(100μL/分)の逆相クロマトグラフィ(RPC)システムへ移した。RPCカラム(ヒギンス(Higgins)製C−18;1mm×50mm×5μm)を60℃に維持して、複合体からのリガンドの解離を促進させる。このRPCカラムから、5%〜95%アセトニトリル(0.1%ギ酸対イオン)水溶液(重量/0.1%ギ酸)で5分間の勾配を用いてリガンドを溶出し、分析のため高分解能の質量分析計に供する。適度に高い親和性の任意のリガンドが、そのCOX画分の収集時にCOXに結合していれば、質量スペクトル分析によってその質量が同定される。マスコードであるおかげで、構築単位とコア分子との厳密な組合せを識別することが可能である(米国特許第6,147,344号参照)。同じ化合物がジアシルグリセロールキナーゼの対照実験で生じなければ、その化合物はCOX−1に特異的なリガンドとして同定してよい。図6は、ALISを使用した非結合小分子からのタンパク質の分離を示す。
【0090】
対照実験では、この方法でスクリーニングされたCOX−1により、既知のCOX−1リガンドを大量の小分子混合物から抽出可能であることが実証された(図7)。被験ライブラリが、25μMメクロフェナメート(meclofenamate)、25μMインドメタシン、各1μMの様々な被験ライブラリからなる場合、これら既知のCOX−1リガンドはALISスクリーニング法によって回収、同定される。
【0091】
この実験により、330,000種の薬物様小分子全体をスクリーニングした後、41種の小分子がCOX−1リガンドとして同定されたが、その1例を図8に示す。これらのCOX−1リガンド分子を、小規模ライブラリに対する2つのスクリーニンにより同定したが、さらなる試験に向けてそれらの単一の分子の調製物を用意する。さらにこれらのヒット分子の多くは、既知のCOX−1リガンドであるメクロフェナメートと結合に関して競合することが観察される(図9)。
(実施例2)
質量スペクトル分析による、m2 mAChRタンパク質に結合しているリガンドの同定
従来のクローニング法に従い、ムスカリン性アセチルコリン受容体のm2サブタイプ(m2R)をコードする遺伝子構築物を、バキュロウイルス発現ベクターにクローニングした(Baculovirus Expression Vector System、第6版、1999年、ファーミンゲン(Pharmingen)[米国カリフォルニア州サンディエゴ所在]を参照のこと)。この遺伝子構築物は、アミノ末端メチオニンのすぐ後に読み枠を合わせてメリチン・シグナル配列(配列番号12)が続き、そのすぐ後に読み枠を合わせてFLAG M1エピトープ・タグ(配列番号1)が続き、そのすぐ後に読み枠を合わせてm2ムスカリン性アセチルコリン受容体(NCBI受入番号X04708)の配列が続くポリペプチドをコードするものであった。したがって完全長ポリペプチド配列は、以下のとおりであった。
【0092】
【化1】
発現されると、メリチン・シグナル配列はAla(21)の後で切断され、FLAG M1抗体樹脂(シグマ(Sigma)[米国ミズーリ州セントルイス所在])が特異的に結合するアミノ末端FLAGエピトープが現れる。このバキュロウイルス発現ベクターは、従来の方法(Baculovirus Expression Vector System、第6版、1999、ファーミンゲン(Pharmingen)[米国カリフォルニア州サンディエゴ所在])により昆虫細胞において上記ポリペプチドを発現させる目的でバキュロウイルスを生成させるために使用した。
【0093】
FLAGタグm2Rを精製するために、上記ポリペプチドを発現する昆虫細胞60gを0.6LのTBS(50mM Tris−CL、pH7.4、100mM NaCl)に懸濁し、そのサンプルを窒素キャビテーションによりホモジナイズした。ホモジネートを4℃で30分間、500×gの遠心分離にかけて、ホモジナイズされていない細胞を除去した。ペレットを廃棄し、上澄みを4℃で45分間、100,000×gの超遠心分離にかけた。超遠心分離後の上澄みを廃棄し、ペレット化した細胞膜を、0.5%(重量/容積)のジギトニンを含有するTBS(TBS−D緩衝液)中に再懸濁して、タンパク質濃度を2.5mg/mLにした。この懸濁液を4℃で60分間撹拌しながらインキュベートした後、4℃で45分間、100,000×gの超遠心分離にかけて、不溶物をペレットとした。可溶性の上澄みを、抗体アフィニティ精製を行うために、TBS−D緩衝液で予め平衡化したFLAG M1抗体樹脂の5mLカラムに流速0.7mL/分でアプライした。可溶性物質をFLAG M1抗体樹脂にロードした後、カラムを50mLのTBS―D緩衝液で洗浄し、次いでFLAGタグm2Rタンパク質を100μg/mLのFLAGペプチド(シグマ(Sigma)[米国ミズーリ州セントルイス所在])を含有するTBS―D緩衝液でカラムから溶出させた。精製されたFLAGタグ付きm2Rを含有する溶出カラム画分を、SDS−PAGEにより同定した。
【0094】
ムスカリン性リガンドを結合することが可能な精製FLAGタグm2Rタンパク質の濃度を算定するために、ピーターソン(Peterson)の方法(ピーターソン、ジー エルら(Peterson,G.L.et al.)(1995年)J.Biol.Chem.第270巻;17808ページ)に従ってガラス繊維フィルタ結合アッセイを実施した。
【0095】
このm2R調製物は、FLAGペプチド100μg/mLを含むTBS−D中の6μMのm2Rからなるものであった。各m2Rポリペプチドは、多数のジギトニン分子と可逆的に会合可能であり、化学量論上m2R:ジギトニンが1:5〜500で膜タンパク質−界面活性剤複合体を生成する。この調製物を、以下に概説するサンプル調製プロトコルによるALISサンプル調製用の、m2Rストックとした。
【0096】
その他の試薬ストックを調製した。保存シクロオキシゲナーゼ1(COX)を実施例1の方法に従って調製し、TBS中に濃度6μMのCOXを得た。個々のリガンドストック(シグマ(Sigma)[米国ミズーリ州セントルイス所在])ピレンゼピン、キヌクリジニルベンジラート(QNB)、およびアトロピンを、TBS中400μMに調製した。4つのコンビナトリアル・ケミカル・ライブラリを、平均2500〜5000種の薬物様小分子の各濃度が400μMとなるように、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に調製した。これら4つの薬物ライブラリを、NMG−66、NGM−41、NGL−10−A−41、およびNGL−116−A−470とした。DMSOに溶解したアトロピンを上記個々の薬物ライブラリに添加することによって400μMアトロピンを含有する4つの被験ライブラリストックを調製し、NMG−66+アトロピンストック、NGM−41+アトロピンストック、NGL−10−A−41+アトロピンストック、およびNGL−116−A−470+アトロピンストックを得た。DMSOに溶解したQNBを上記個々の薬物ライブラリに添加することによって400μM QNBを含有する4つの被験ライブラリストックを調製し、NMG−66+QNBストック、NGM−41+QNBストック、NGL−10−A−41+QNBストック、およびNGL−116−A−470+QNBストックが得られた。5%ジギトニン100μLと水4.6mLを合わせ、さらに400μLの1M Tris−Cl、pH7.5を合わせ、次いで42℃で平衡化することによって、プレミックス緩衝液を調製した。
【0097】
タンパク質(被験タンパク質m2Rまたは対照タンパク質COX)を、リガンド(QNB単独、アトロピン単独、ピレンゼピン単独、アトロピン+薬物ライブラリ、またはQNB+薬物ライブラリ)と組み合わせた、あるいは対照としてタンパク質をDMSOと組み合わせた結合反応物を調製した。各場合において、DMSOまたはDMSOに可溶化されたリガンドが2μL入ったポリプロピレン・チューブにプレミックス緩衝液38μLを分注し、ボルテックス撹拌によって混合し、室温で10分間、8,000×gで遠心分離して不溶性物質を除去した。水性のDMSO単独または水性のDMSOに溶解されたリガンドのいずれかを含有する(薬物ライブラリを含まない場合と含む場合)清澄化した上澄み(2μL)を、4℃のポリプロピレン・チューブに移した。標的タンパク質m2R(8μL)または対照タンパク質COX(8μL)を上澄みに添加し、ピペッティングにより十分混合し、4℃で60分間インキュベートした。
【0098】
次いでこれらの結合反応調製物をALIS分析にかけた。結合反応調製物は、平衡結合状態が確立される方法で、4.8μMの標的膜タンパク質(m2R)または4.8μMの対照膜タンパク質(COX)と、各濃度が1〜10μMの約2500種の多数の薬物様小分子とを混合する。次いでタンパク質に対する高親和性リガンド(Kid<100μM)をALISにより同定する。対照タンパク質COXには結合しない標的タンパク質m2Rの小分子リガンドを、標的タンパク質に特異的なリガンドとみなす。これとは別に、多数の薬物分子を用いた実験と比較するため、m2RまたはCOXと個々の(個別の)m2Rリガンドとを組み合わせた結合反応物も調製した。このALIS分析は、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)の後に逆相クロマトグラフィ(RPC)、その後に質量スペクトル(MS)分析を行う一連の操作によって下記のように進めた。
【0099】
これらの調製された結合反応混合物を、個別にALIS分析にかけた。適度に高い親和性でm2Rに結合したリガンドを、下記のようにタンパク質含有SEC画分と共に回収した。流速2mL/分の、50mM Tris−Cl、pH7.5、150mM NaCl、2.5%DMSOの溶出緩衝液を使用して、4℃で4.6mm×50mm×5μmのSECカラム上でSECにより、界面活性剤に可溶化された大きな分子を非結合の薬物様小分子から分離した。タンパク質含有画分を、230nmでモニタする紫外線電子吸収分光法で同定した。
【0100】
タンパク質含有画分を、サンプル・ループを介して低流量(100μL/分)RPCシステムへ移した。RPCカラム(ヒギンス(Higgins)製C−18;1mm×50mm×5μm)を60℃に維持して、複合体からのリガンドの解離を促進させる。このRPCカラムから、5%〜95%アセトニトリル(0.1%ギ酸対イオン)水溶液(重量/0.1%ギ酸)で5分間の勾配を用いてリガンドを溶出し、分析のため高分解能の質量分析計に供する。タンパク質−界面活性剤m2R複合体に対するその高い親和性により、タンパク質含有SEC画分と共に回収された質量分析済みのリガンドを、その精確な質量を予測することによって同定した。
【0101】
実験では、このようにALIS分析でスクリーニングされたm2Rにより、m2R−界面活性剤複合体に対して高い親和性を有する既知のm2Rリガンドのその高親和性に基づいて、既知のm2Rリガンドを多数の薬物様小分子の混合物から抽出可能であることが実証された。このALIS形式のスクリーニングでは、薬物ライブラリが存在しない場合にm2R−界面活性剤複合体に結合したm2Rリガンドを回収するのと全く同様に、薬物ライブラリからm2Rリガンドが回収された(図10)。
【0102】
これらの実験のデータを図10に示す。これらの実験では、各濃度が1〜10μMである約2500種の薬物様小分子を提示するコンビナトリアル薬物ライブラリ(NGM−66、NGM−340、NGL−10−A−41、NGL−116−A−470)が存在しない状態またはその存在下で、2.0μM m2Rと10μMピレンゼピン、QNB、またはアトロピンとを混合することによって、平衡結合反応が確立された。結合反応物をALIS分析にかけ、リガンド回収の程度を、質量分析計のシグナル強度によって定量した。x軸は、ピレンゼピン、QNB、およびアトロピンのそれぞれの質量に対する質量スペクトルのシグナル応答を相対的な単位で表す。
(実施例3)
HPリガンドのアフィニティに基づいた選択およびALIS同定における置換アッセイ 代表的なHPとして、m2 mAChRをピーターソンらの方法(ピーターソン、ジー エルら(Peterson,G.L.et al.)(1995年)J.Biol.Chem.第270巻:17808ページ)に従い精製する。標的タンパク質をTBS−AGD緩衝液中で20μMの濃度に調整し、濃度1μMの既知のムスカリン性リガンド、ピレンゼピン(分子量=424.3)と共にインキュベートする。対照試験として、無関係の膜タンパク質、グリコホリンも、TBS−AGD中で20μMに調製し、濃度1μMの化合物ピレンゼピン(分子量=424.3)と共にインキュベートする。
【0103】
m2 mAChR/ピレンゼピン混合物にマスコード化合物ライブラリを加え、サンプルを分析し、ライブラリ化合物によってHPタンパク質からピレンゼピンが外れて置換されたかどうか決定する。ピレンゼピンの置換は、ライブラリ化合物が、ピレンゼピン自体と同じ部位にピレンゼピンより緊密に結合することを示す。
【0104】
置換アッセイは、下記のように実施する。m2 mAChRと、1μmのピレンゼピンと、1μMの各ライブラリ化合物との混合物をALIS分析にかける。この分析では、ピレンゼピンの質量に対応するMSシグナルをモニタし、ライブラリ化合物の質量は無視する。ライブラリ化合物によって、ピレンゼピンの質量に対応するMSシグナルが定量的に低減される場合、ライブラリ化合物によって、HPタンパク質、この場合はmAChRタンパク質から、ピレンゼピンが外れて置換されたと推測される。ライブラリ化合物とのインキュベーションにより、ピレンゼピンの質量に対応するMSシグナルが変化しない場合、ライブラリ化合物はm2 mAChRリガンドを含まないと考えられる。ライブラリ化合物とのインキュベーションを行った場合と行わない場合のピレンゼピンMSシグナルを比較することによって、ライブラリ化合物がピレンゼピンと置換されたがどうか、したがってmAChRタンパク質に結合したかどうか評価することが可能である。
(実施例4)
m2 mACHRマスコード・リガンドのアフィニティ選択およびALISによる同定
代表的なHPとして、m2 mAChRをピーターソンらの方法(ピーターソン、ジー エル(Peterson,G.L.)(1995年)J.Biol.Chem.第270巻:17808ページ)に従い精製する。該タンパク質をTBS−AGD緩衝液中で20μMに調整し、各濃度が1μMであるマスコード化合物の2500分子のライブラリと共にインキュベートする。22℃で30分間インキュベートした後、ALIS分析までの間サンプルを4℃に冷却する。対照試験として、無関係の膜タンパク質、グリコホリンも、TBS−AGD中で20μMに調製し、マスコード・ライブラリと共にインキュベートする。化合物がmAChRに特異的に結合するかどうかを決定するため、mAChR−化合物の混合物をALIS分析により分析する。タンパク質のピークを回収しMSにより測定したとき、マスコード・ライブラリのメンバの1つに相当する質量が現れれば、その化合物は結合リガンドであると特定される可能性がある。その同じ化合物がグリコホリン対照実験では現れない場合、その時はその化合物をmAChRに特異的なリガンドであると特定することが可能である。マスコードであるおかげで、構築単位とコアとの厳密な組合せを特定することが可能である(アニスら(Annis et al.)による米国特許第6,147,344号参照)。MS−MS分析(アニスら(Annis et al.)による米国特許第6,147,344号参照)を使用することにより、コアに構築単位を組み合わせたものの正確な構造を特定することも可能である。
(実施例5)
COX−1リガンドのアフィニティ選択と、オンライン蛍光検出を用いる修正ALISによる同定
代表的なHPとして、COX−1タンパク質をジョンソンら(Johnson et al.)の方法に従い仔ヒツジの精嚢から精製した(ジョンソン、ジェイ エル(Johnson J.L.)(1995年)Arch.Biochem.Biophys.第324巻:26〜34ページ)。COX−1サンプルを、TBS−AGE(50mM tris、pH8.0、150mM NaCl、800mMドデシルβ−D−マルトシド、2.5%DMSO)中で20μMに調整し、各化合物の濃度が1μMである2500種のマスコード化合物のライブラリと混合してインキュベートする。22℃で30分間インキュベートした後、そのサンプルをALIS分析までの間4℃に冷却した。全体積は12μLであるので、サンプルは240pmolのタンパク質と、12pmolの各ライブラリ成分とを含有する。対照試験として、無関係の膜タンパク質、グリコホリンも、TBS−AGD中で20μMに調製し、同じ2500分子のライブラリと共にインキュベートして、同様に処理する。
【0105】
次いでこの混合物を下記のように修正ALIS分析に個々に供する。流量2mL/分の溶出緩衝液TBS(50mM tris、pH8.0、150mM NaCl、2.5%DMSO)を用いて、4.6mm×50mm×5μmのSECカラムで0℃でサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を実施することにより、界面活性剤に可溶化された大きなタンパク質を薬物様小分子から分離する。タンパク質を含有する溶出SEC画分を、240〜250nmで励起しかつ340nmでの発光をモニタするオンライン蛍光検出によって特定し、サンプルループを介して低流量(100μL/分)逆相クロマトグラフィ(RPC)システムへ移す。RPCカラム(ヒギンス(Higgins)製C−18;1mm×50mm×5μm)を60℃に維持して、複合体からのリガンドの解離を促進させる。このRPCカラムから、5%〜95%アセトニトリル(0.1%ギ酸対イオン)水溶液(重量/0.1%ギ酸)で5分間の勾配を用いてリガンドを溶出し、分析のため高分解能の質量分析計に供する。適度に高い親和性のリガンドが、COX−1画分の回収時にCOX−1に結合していれば、質量スペクトル分析によってそのリガンドの質量が同定される。
【0106】
マスコードであるおかげで、構築単位とコア分子との厳密な組合せを特定することが可能である(アニスら(Annis et al.)による米国特許第6,147,344号参照)。同じ化合物がグリコホリン対照実験では現れない場合、その化合物はCOX−1タンパク質の特異的なリガンドとして同定し得る。
(実施例6)
COX−1リガンドのアフィニティ選択と、オンライン光散乱検出を用いる修正ALISによる同定
代表的なHPとして、COX−1タンパク質をジョンソンら(Johnson et al.)の方法に従い仔ヒツジの精嚢から精製した(ジョンソン、ジェイ エル(Johnson J.L.)(1995年)Arch.Biochem.Biophys.第324巻:26〜34ページ)。COX−1サンプルを、TBS−AGE(50mM tris、pH8.0、150mM NaCl、800mMドデシルβ−D−マルトシド、2.5%DMSO)中で20μMに調整し、各化合物の濃度が1μMである2500種のマスコード化合物のライブラリと混合してインキュベートする。22℃で30分間インキュベートした後、そのサンプルを、修正ALIS分析までの間4℃に冷却する。全体積は12μLであるので、サンプルは240pmolのタンパク質と、12pmolの各ライブラリ成分とを含有する。対照試験として、無関係の膜タンパク質、グリコホリンもTBS−AGD中で20μMに調製し、同じ2500分子のライブラリと共にインキュベートし、同様に処理する。
【0107】
次に、これら対照混合物および試験混合物を下記のように修正ALIS分析に個々に供する。流量2mL/分の溶出緩衝液TBS(50mM tris、pH8.0、150mM NaCl、2.5%DMSO)を用いて、4.6mm×50mm×5μmのSECカラムで0℃でサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を実施することにより、界面活性剤に可溶化された大きなタンパク質を薬物様小分子から分離する。タンパク質を含有する溶出SEC画分を、オンライン光散乱検出によって特定し、サンプルループを介して低流量(100μL/分)逆相クロマトグラフィ(RPC)システムヘ移す。RPCカラム(ヒギンス(Higgins)製C−18;1mm×50mm×5μm)を60℃に維持して、複合体からのリガンドの解離を促進させる。このRPCカラムから、5%〜95%アセトニトリル(0.1%ギ酸対イオン)水溶液(重量/0.1%ギ酸)で5分間の勾配を用いてリガンドを溶出し、分析のため高分解能の質量分析計に供する。適度に高い親和性のリガンドが、COX−1画分の回収時にCOX−1に結合していれば、質量スペクトル分析によってそのリガンドの質量が同定される。
【0108】
マスコードであるおかげで、構築単位とコア分子との厳密な組合せを特定することが可能である(アニスら(Annis et al.)による米国特許第6,147,344号参照)。同じ化合物がグリコホリン対照実験で現れない場合、その化合物はCOX−1タンパク質の特異的なリガンドとして同定し得る。
(実施例7)
m2 mACHRに結合するリガンドの不均一溶液相のスクリーニング:アフィニティ選択およびALIS分析を用いる同定
HPリガンドを、タグ付き標的配列を固体支持体に固定化する不均一溶液相のスクリーニング法を使用することによってスクリーニングすることも可能である。例えば、免疫沈降(IP)に基づくスクリーニング・プロトコルで沈降性固定要素として使用するために、抗flag抗体を吸着させたプロテインAアガロースビーズ(抗flagビーズ)を準備する。
【0109】
概要を述べると、TBS−AG緩衝液(50mM tris、pH8.0、150mM NaCl、800mMドデシルβ−D−マルトシド)を使用して、プロテインAアガロースの50%(容積/容積)スラリ(サンタクルーズバイオテクノロジー社(Santa Cruz Biotechnology)、[米国ミズーリ州セントルイス所在])100μLを1.5mLエッペンドルフチューブ内で、室温で、(1)ビーズを1mLのTBS−AGと合わせる、(2)サンプルをひっくり返すことによって20分間混合する、(3)10000×gで遠心分離し、その後慎重に上澄みを除去してペレット状のアガロースビーズをチューブの底に残す、というサイクルを3回実施して洗浄する。
【0110】
ビーズを洗浄した後、ビーズのペレット50μLを1.0mLのTBS−AG中に入れる。この混合物に、TBS―AG緩衝液に溶かした1mg/mLのβ−ガラクトシダーゼ50μLを添加し、混合物を4℃で60分間インキュベートして、タンパク質がビーズに非特異的に結合するのを阻止する。この混合物に、1.0μg/mLの抗flag抗体(シグマ社[米国モンタナ州セントルイス所在])を10μL添加し、混合物を4℃で60分間インキュベートする。並行して、同様に処理した別の対照アガロース・ビーズ調製物を、抗flag抗体の代わりにTBS−AG 10μLで処理する。次いで抗フラグ抗体を吸着させたビーズと対照ビーズとを洗浄して、過剰な抗体およびタンパク質を除去し、最後にTBS−AG緩衝液0.10mLに再懸濁し、0.5mLエッペンドルフチューブに移す。
【0111】
m2 mAChR−flagタグ−Hisタグタンパク質を発現するCHO細胞を培養し、溶解し、ホモジナイズする。m2 mAChRを含有する細胞膜を、ショ糖ステップ勾配超遠心分離により精製する。このショ糖ステップ勾配超遠心分離工程により、ほとんどの非膜タンパク質および細胞破壊片が除去される。超遠心分離工程により、膜様の細胞内下部構造の特定の集団を単離することも可能である。mAChRに富む膜を、界面活性剤(ドデシル−β−マルトシド、DβMまたはCYMAL−7;(アナトレース社(Anatrace)[米国オハイオ州モーミー(Maumee)所在]))により可溶化し、アフィニティ精製の3工程に供する。
【0112】
初めに、ポリヒスチジン・タグの付加されたC末端を利用するために金属キレート・アフィニティ・クロマトグラフィ(MCAQ)を使用し、その後、第2のアフィニティ精製、すなわちFLAGタグの付加されたN末端に基づく抗体アフィニティ精製を行うことになる(コビルカ、ビー ケー(Kobilka,B.K.)(1995年)Anal.Biochem.第231巻:269ページ)。第3に、固体化mAChRリガンド3−(2’−アミノベンズヒドリルオキシ)−トロパン(ABT)のカラムを通したリガンド・アフィニティ精製を行い、その後、脱塩工程により活性m2 mAChRタンパク質の最終的な濃縮が行われる。
【0113】
サンプルを、TBS−AGD緩衝液でmAChRタンパク質が20μMになるよう調整し、各化合物の濃度が1μMである2500種のマスコード化合物のライブラリと共にインキュベートする。体積40μL中で反応を行う。22℃で30分間インキュベートした後、そのサンプルをMS分析までの間4℃に冷却する。比較試験として、β−ガラクトシダーゼをTBS−AGD中で20μMになるよう同様に調製し、マスコード・ライブラリと共にインキュベートする。
【0114】
m2 mAChRタンパク質−化合物の混合物を、下記の手順により、MS分析による分析用に調製する。m2 mAChRタンパク質またはβ−ガラクトシダーゼタンパク質のいずれかを用いた試行由来の、精製タンパク質−ライブラリ混合物を、それぞれ体積20μLずつに2分割する。m2 mAChR−ライブラリ混合物の場合、一方をIP用に抗flagビーズ(抗flag/プロテインAアガロース)と合わせ、もう一方を対照アガロース・ビーズ(緩衝液/プロテインAアガロース・ビーズ)と合わせることによって模擬IPに供する。同様にβ−ガラクトシダーゼ混合物の場合、一方の20μLを対照IP用に抗flagビーズと合わせ、他方の20μLを、対照アガロース・ビーズと合わせることによって模擬IPに供する。ひっくり返すことによって混合し、これらのIPを引き続き4℃で60分間進行させる。その後、各IPを室温で、(1)ビーズを1mLのTBS−AGと合わせる、(2)ひっくり返すことによって2分間混合する、(3)10000gで遠心分離し、その後慎重に上澄みを除去してチューブの底にペレット状のアガロース・ビーズを残す、というサイクルを3回実施して洗浄する。最後に、各50μLのベッド・ボリュームのビーズ調製物を、次にさらに50μLのTBS(50mM tris、pH8.0、150mM NaCl)に再懸濁し、4℃に保持する。このプロセスの完了時には、4種の不均一ビーズ調製物、すなわち(1)m2 mAChR/抗flag/プロテインAアガロース(m2ビーズ)と、(2)m2 mAChR/緩衝液/プロテインAアガロース・ビーズ(m2対照ビーズ)と、(3)β−ガラクトシダーゼ/抗flag/プロテインAアガロース・ビーズ(β−lacビーズ)と、(4)β−ガラクトシダーゼ/緩衝液/プロテインAアガロース・ビーズ(β−ガラクトシダーゼ対照ビーズ)が作製される。
【0115】
これらのビーズを基にした調製物は、下記の手法でスクリーニングするのに有用な不均一溶液相系を構成する。各100μLのビーズ調製物を50μLの30%アセトニトリル水溶液と混合し、60℃に5分間加熱して、結合しているリガンドをタンパク質から解離させる。次いで混合物を10,000×gで遠心分離にかけてビーズをペレット化し、上澄み中の解離タンパク質を新しいチューブに移す。
【0116】
IP手順により、リガンドのアフィニティ選択と、結合していないライブラリ分子からのm2mAChR−リガンド複合体の物理的分離との両方が可能になる。これらの上澄みは、50mM Tris、pH8.0、150mM NaCl、80mMドデシルβ−D−マルトシド、および10%アセトニトリルを含有する。これらの上澄みサンプル約60μLを個々に、低流量(100μL/分)逆相クロマトグラフィ(RPC)システムに注入する。RPCカラム(ヒギンス(Higgins)製 C−18;1mm×50mm×5μm)を60℃に維持する。このRPCカラムから、5%〜95%アセトニトリル(0.1%ギ酸対イオン)水溶液(重量/0.1%ギ酸)で5分間の勾配を用いてリガンドを溶出し、分析のため高分解能の質量分析計に供する。
【0117】
m2 mAChRタンパク質ビーズの上澄み中にあり、m2 mAChRタンパク質対照ビーズ、β−lacライブラリのビーズ、またはβ−lac対照ビーズの上澄みにはない質量で2500分子のマスコード・ライブラリのある化合物に相当する質量を観測することによって、m2 mAChR−リガンドを同定する。この手順で選択されたマスコード化合物の構造は、容易に特定される(アニスら(Annis et al.)による米国特許第6,147,344号参照)。MS−MS分析(アニスら(Annis et al.)による米国特許第6,147,344号参照)を使用することにより、コアと構築単位の組み合わせの正確な構造を示すことも可能である。
(実施例9)
m2 mACHRに結合するリガンドの不均一溶液相のスクリーニング:アフィニティ選択およびMS分析と組み合わせた置換アッセイを使用する同定
Flagタグが付加されたm2 mAChRタンパク質を、本明細書で既に概説したように精製し、濃度20μMになるようTBS−AGD緩衝液に再懸濁する。タンパク質を、各化合物の濃度が1μMである2500のマスコード化合物のライブラリと、1μMのピレンゼピン、すなわちm2 mAChRタンパク質の既知のリガンドと共に、体積40μL中でインキュベートする。22℃で30分間インキュベートした後、MS分析までの間サンプルを4℃に冷却した。比較試験として、β−ガラクトシダーゼを同様に20μMになるようTBS−AGD中に調製し、マスコード・ライブラリおよびピレンゼピンと共にインキュベートする。
【0118】
m2 mAChRタンパク質またはβ−ガラクトシダーゼのいずれかを用いた試行由来の精製タンパク質−ライブラリ−ピレンゼピン混合物を、それぞれ体積20μLずつに2分割する。m2 mAChR−ライブラリ−ピレンゼピン混合物の場合、一方をIP用に抗flagビーズ(抗flag/プロテインAアガロース)と合わせ、他方を対照アガロース・ビーズ(緩衝液/プロテインAアガロース・ビーズ)と合わせることによって模擬IPに供する。プロテインAアガロース・ビーズは、本明細書で既に述べたように調製する。同様にβ−ガラクトシダーゼ混合物の場合、一方の20μLを対照IP用に抗flagビーズと合わせ、他方の20μLを対照アガロース・ビーズと合わせることによって模擬IPに供する。ひっくり返すことによって混合し、これらのIPを引き続き4℃で60分間進行させる。次いで各IPを室温ので、(1)ビーズを1mLのTBS−AGと合わせる、(2)ひっくり返すことによって2分間混合する、(3)10000gで遠心分離し、その後慎重に上澄みを除去してチューブの底にペレット状のアガロース・ビーズを残す、というサイクルを3回実施して洗浄する。最後に、各50μLのベッド・ボリュームのビーズ調製物を、次にさらに50μLのTBS(50mM tris、pH8.0、150mM NaCl)に再懸濁し、4℃に保持する。このプロセスの完了時には、4種の不均一なビーズ調製物、すなわち(1)m2 mAChR/抗flag/プロテインAアガロース(m2ビーズ)と、(2)m2 mAChR/緩衝液/プロテインAアガロース・ビーズ(m2対照ビーズ)と、(3)β−ガラクトシダーゼ/抗flag/プロテインAアガロース・ビーズ(β−ガラクトシダーゼ・ビーズ)と、(4)β−ガラクトシダーゼ/緩衝液/プロテインAアガロース・ビーズ(β−ガラクトシダーゼ対照ビーズ)が作製される。
【0119】
これらのビーズを基にした調製物は、下記の手法でスクリーニングするのに有用な不均一溶液相系を構成する。各100μLのビーズ調製物を50mLの30%アセトニトリル水溶液と混合し、60℃に5分間加熱して、結合しているピレンゼピンをタンパク質から解離させる。次いで混合物を10,000×gで遠心分離にかけ、ビーズをペレット化し、上澄み中の解離タンパク質を新しいチューブに移す。IP手順により、リガンドのアフィニティ選択と、結合していないライブラリ分子からのm2 mAChR−リガンド複合体の物理的分離との両方が可能になる。これらの上澄みは、50mM Tris、pH8.0、150mM NaCl、80mMドデシルβ−D−マルトシド、10%アセトニトリル、および<50pmolのピレンゼピンを含有する。これらの上澄み約60μLを、低流量(100μL/分)逆相クロマトグラフィ(RPC)システムに注入する。RPCカラム(ヒギンス(Higgins)製 C−18;1mm×50mm×5μm)を60℃に維持する。このRPCカラムから、5%〜95%アセトニトリル(0.1%ギ酸対イオン)水溶液(重量/0.1%ギ酸)で5分間の勾配を用いてリガンドを溶出し、分析のため高分解能の質量分析計に供する。
【0120】
m2 mAChRタンパク質対照ビーズ、β−ガラクトシダーゼ・ライブラリ試験ビーズ、またはβ−ガラクトシダーゼ対照ビーズの上澄み由来のピレンゼピンに相当する質量は、m2 mAChRタンパク質ビーズのMS分析におけるピレンゼピンの質量応答値よりも高いはずである。したがって2500分子のマスコード・ライブラリは、ピレンゼピンよりも高い親和性でm2 mAChRタンパク質に結合するリガンドを含有することが推測される。ヒットを含むライブラリを、ヒットを含まないその他のライブラリの中からこのように検出し選択することが可能である。
(実施例10)
多重化による疎水性タンパク質スクリーニング成果の向上
両親媒性物質−可溶化HPを、スクリーニング成果を高める3次元高次構造に維持するには、HPを、スクリーニング・サンプル調製物中で多重化する。多重化は、標的タンパク質といくらかの既知のモル当量の1つ以上のアクセサリタンパク質(AP)とを組み合わせた、任意の調製方法を指すよう定義される。APの使用に関して最も好ましいスクリーニング条件の選択が行われるように、5つの独立した基準が明らかにされている:その基準とは、(1)APの存在下で、APの非存在下よりも高い親和性で標的HPが既知のアゴニストに結合することが観察されること;(2)APの存在下で、APの非存在下よりも高い親和性で標的HPが既知のアンタゴニストに結合することが観察されること;(3)APの存在下で、HPが、酵素アッセイ、インビトロアッセイ、または細胞を用いるアッセイをおこなった場合により高い機能活性を有することが示されること;(4)APの存在下、HPがその多量体化状態を変化させることが示されること;および(5)APの存在下、HPがより高い高次構造上の安定性または不変性を有することが示されること、である。
【0121】
第1の例として、Gαi1β1γ2−グアノシン二リン酸(GDP)をヘテロトリマーAPとして用いたm2 mAChRの多重化スクリーニング法を示す。Gαi1β1γ2−GDP複合体は、下記の方法によって示されるように、その存在によってm2 mAChRのアンタゴニストN−メチルスカポラミン(N−methylscapolamine)(NMS)に対する親和性が5倍高まるため、m2 mAChRに対するAPであると確認された。リンケン(Rinken)およびハガ(Haga)の方法(リンケン、エー(Rinken,A.)およびハガ、ティー(Haga,T.)(1993年)Arch.Biochem.Biophys.第301巻:158〜164ページ)により実施された3H−NMS結合アッセイから、3H−NMSに対するm2 mAChRの見掛けのKdが0.17nMであり、一方、m2 mAChR−Gαi1β1γ2−GDP複合体のKdが432nMであることが示された。このHP/AP複合体をスクリーニングするため、m2 mAChR/Gαi1β1γ2−PLを実施例11で説明するように調製し、リガンド化合物とのインキュベーション段階で50μM GDPを結合緩衝液に添加し、本明細書に示すアフィニティ選択およびALISまたは修正ALISを利用する方法のいずれかに従ってリガンド結合に関してスクリーニングを行った。
【0122】
第2の例として、ヒトオピオイド受容体の、ヘテロダイマー化したκおよびδサブタイプの多重化スクリーニングを示す。ヒトκオピオイド受容体は、ジョーダン(Jordan)およびデヴィ(Devi)の方法(ジョーダン、ビー エー(Jordan,B.A.)およびデヴィ、エル エー(Devi,L.A.)、(1999年)Nature 第399巻:697〜708ページ)によって示されるように、その存在によってヒトδオピオイド受容体の多量体化状態がモノマーからヘテロダイマーに変化するので、ヒトδオピオイド受容体に対するAPであることが確認された。
【0123】
スクリーニング用にδ/κオピオイド受容体ヘテロ二量体複合体を調製するには、以下の方法を使用する。ヒトκオピオイド受容体を精製し、TBS−AG中に透析分離し、濃度50μMになるようにする。ヒトδオピオイド受容体を精製し、TBS−AG中に透析分離し、濃度50μMになるようにする。これら2つの等体積の調製物を合わせて二量体化させる。
【0124】
次いで二量体化したオピオイド受容体複合体を、本明細書に示すアフィニティ選択およびALISまたは修正ALISを利用した方法のいずれかに従い、リガンド結合に関してスクリーニングする。
(実施例11)
定義されたGPCRプロテオリポソーム(GPCR−PL)の調製方法
界面活性剤に可溶化されたGPCRに高次構造上の安定性をもたらすため、界面活性剤ミセルによる可溶化を、以下の基準、すなわち:(1)PLの脂質組成が、PLの脂質含量の90%を構成する6種以下の個別の脂質部分を有するものと定義され、特徴付けられること、(2)HP−PL調製物の90%が、3桁以内に収まる明確な単峰形の粒子サイズ分布を有し、平均的な粒子サイズが5〜10000nmの範囲内であること、(c)PL調製物の収量>50nM HPであること;を満たすものとして定義されたプロテオリポソームによる可溶化に変更した。
【0125】
m2 mAChRタンパク質を含むHP−PLを調製するため、下記の手順を使用する。合成脂質(アバンティポーラーリピッズ(Avanti Polar Lipids)[米国アラバマ州アラバスター(Alabaster)所在])D−リボ−フィトスピンゴシン−1−ホスフェートおよびセラミド−C18:0をそれぞれクロロホルムに溶かしたものを、ガラスの試験管内で一緒にして1mLの体積(それぞれ5mM)とし、アルゴン流中で24時間、室温でクロロホルムを蒸発させる。次いで脂質残分をTBS 0.40mLで湿らせ、28℃で30分間超音波処理し、混合物を1.5mLポリプロピレンチューブに移す。この脂質混合物に、ピーターソン、ジー エルら(Peterson,G.L.et al.)が記述するように調製した50μM m2 mAChRを0.2mL添加する(ピーターソン、ジー エルら(Peterson,G.L.et al.)(1995年)J.Biol.Chem.第270巻:17808ページ)。この結果、脂質とタンパク質との粗製混合物が得られる。
【0126】
次いでタンパク質−脂質粗製混合物を、5分、22℃の槽中の超音波処理を30分間隔で(6回)実施しながら8℃で3時間インキュベートする。次いでこの混合物を20℃で、製造業者のプロトコルに従って(アバンティポーラーリピッズ(Avanti Polar Lipids)[米国アラバマ州アラバスター(Alabaster)所在])容積の小さい押出し機で100nmポリカーボネート膜に11回通す。この結果、体積0.6mLのPL粗製物、16μM m2 mAChR、および過剰な両親媒性物質(DbMおよび脂質)が得られる。過剰な脂質および界面活性剤を除去するため、予め4℃でTBSで平衡化した10mLの脱塩体(G−50セファデックス(sephadex、登録商標)カラム)に、PL粗製物を通過させる。PL粗製物を脱塩カラムに通した後、4℃のTBSを使用してその物質をカラムから溶出する。この脱塩操作は、流速0.5mL/分で実施する。タンパク質濃度は、サンプル10μLと0.2%Triton X−100 10μLとを合わせ、その混合物をバイオラッド社(Bio−Rad)比色タンパク質アッセイ(バイオラッドインコーポレイテッド社(Bio−Rad Inc.)[米国カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules)所在])に使用することにより推定する。次いでTBSで希釈することにより濃度を10μMに調整する。
【0127】
コールター(Coulter)のN4サブミクロン・パーティクル・アナライザを使用して、製造業者のプロトコルに従いサイズ分布を明らかにする。これとは別に、サイズ分布と平均粒子サイズの評価を、流速1.0mL/分で溶出緩衝液TBSを用いた分析用SECカラム(G2000SWXL、5×300mm、5μm;トーソーハース(ToSo−Haas))に、280nmでモニタするUV検出器を取り付け、12℃に冷却した状態で20μLを注入することにより分析SECによって実施する。8.23分に溶出する単一ピークによりGPCR−PLの保持時間が同定され、これを分子サイズ・マーカー溶出時間の標準曲線と比較し、GPCR−PLの見掛けの平均サイズが940,000ダルトンのタンパク質のサイズに匹敵することが示された。
【0128】
プロテオリポソームは、APと複合体を形成したHPを用いて調製することもできる。この手順では、界面活性剤ミセルによる可溶化を、以下の基準、すなわち:(1)PLの脂質組成が、PLの脂質含量の90%を構成する6種以下の個別の脂質部分を有するものと定義され、特徴付けられたこと、(2)HP−PL調製物の90%が、3桁以内に収まる明確な単峰形の粒子サイズ分布を有し、平均的な粒子サイズが5〜10000nmの範囲内であること、(3)PL調製物の収量>50nM HPであること;(4)PL調製物が、アクセサリタンパク質(AP)と呼ばれる少なくとも1つの他のタンパク質を含み、その存在により標的HPにとって好ましい高次構造が維持されること;を満たすものとして定義されたプロテオリポソームへの可溶化に変更する。
【0129】
m2 mAChRを有するHP−PLを調製するため、下記の手順を使用した。合成脂質(アバンティポーラーリピッズ(Avanti Polar Lipids)[米国アラバマ州アラバスター(Alabaster)所在])D−リボ−フィトスピンゴシン−1−ホスフェートとセラミド−C18:0をそれぞれクロロホルムに溶かしたものを、ガラスの試験管内で一緒にして1mLの体積(それぞれ5mM)にし、アルゴン流中で24時間、室温でクロロホルムを蒸発させる。次いで脂質残分を0.40mLのTBSに2mM MgCl2を加えたもの(TBSM)で湿らせ、28℃で30分間超音波処理し、混合物を1.5mLポリプロピレンチューブに移す。これとは別に、記述(参照文献)に従い精製した100μM Gβ1γ2と100μM Gαi1とを等体積で合わせることによって50μM Gαi1β1γ2を調製し、TBSMに800mM DbMを加えたものに透析分離した(TBSM−AG)。該脂質混合物に、ピーターソン、ジー エルら(Petreson,G.L.et al.)が記述するように(ピーターソン、ジー エルら(Peterson,G.L.et al.)(1995年)J.Biol.Chem.第270巻;17808ページ)調製した50μM m2 mAChRを0.2mLと、50μM Gαi1β1γ2を0.2mL添加する。この混合物に、50mM GDPを10μL添加する。その結果、脂質、HP、およびAPの粗製混合物が得られる。
【0130】
次いでHP/AP−脂質粗製混合物を、5分、22℃の槽中の超音波処理を30分間隔で(6回)実施しながら8℃で3時間インキュベートする。次いでこの混合物を20℃で、製造業者のプロトコルに従って(アバンティポーラーリピッズ(Avanti Polar Lipids)[米国アラバマ州アラバスター(Alabaster)所在])容積の小さい押出し機で100nmポリカーボネート膜に11回通す。この結果、体積0.8mLのPL粗製物、12μM mAChR、12μM Gαi1β1γ2、および過剰な両親媒性物質(DbMおよび脂質)が得られる。過剰な脂質および界面活性剤を除去するため、予め4℃でTBSにより平衡化した10.0mLの脱塩体(G−50セファデックス・カラム)に、PL粗製物を通過させる。PL粗製物を脱塩カラムに通した後、4℃のTBSを使用してその物質をカラムから溶出する。この脱塩操作は、流速0.5mL/分で実施する。タンパク質濃度は、サンプル10μLと0.2%Triton X−100 10μLとを合わせ、その混合物をバイオラッド社(Bio−Rad)比色タンパク質アッセイ(バイオラッドインコーポレイテッド社(Bio−Rad Inc.)[米国カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules)所在])に使用することにより推定する。次いでTBSで希釈することにより濃度を20μMに調整する。
【0131】
サイズ分布を明らかにするために、製造業者のプロトコルに従いコールター(Coulter)のN4サブミクロン・パーティクル・アナライザを使用する。これとは別に、サイズ分布と平均粒子サイズの評価を、流速1.0mL/分で溶出緩衝液TBSを用いた分析用SECカラム(G2000SWXL、5×300mm、5μm;トーソーハース(ToSo−Haas))に、280nmでモニタするUV検出器を取り付け、12℃に冷却した状態で20μLを注入することにより分析SECによって実施する。注入後8.23分に溶出する単一ピークによりHP/AP−PLの保持時間が同定され、これを分子サイズ・マーカー溶出時間の標準曲線と比較する。その結果得られる見掛けの平均サイズは940,000ダルトンのタンパク質のサイズに匹敵することが示された。
【0132】
スクリーニング対照として使用される対照AP−PLは、以下の基準、すなわち:(1)PLの脂質組成が、PLの脂質含量の90%を構成する6個以下の個別の脂質部分を有するものと定義され特徴付けられること、(2)HP−PL調製物の90%が、3桁以内に収まる明確な単峰形の粒子サイズ分布を有し、平均的な粒子サイズが5〜10000nmの範囲内であること、(3)PL調製物が、標的HPが存在しないこと以外は類似のHP/AP−PLを正確に模倣するよう設計されること、という基準を満たすよう作製される。
【0133】
m2 mAChRを有するAP−PLを調製するため、下記の手順を使用する。合成脂質(アバンティポーラーリピッズ(Avanti Polar Lipids)[米国アラバマ州アラバスター(Alabaster)所在])D−リボ−フィトスピンゴシン−1−ホスフェートとセラミド−C18:0をそれぞれクロロホルムに溶かしたものを、ガラスの試験管内で一緒にして1mLの体積(それぞれ5mM)にし、アルゴン流中で24時間、室温でクロロホルムを蒸発させる。次いで脂質残分を0.40mLのTBSに2mM MgCl2を加えたもの(TBSM)で湿らせ、28℃で30分間超音波処理し、混合物を1.5mLポリプロピレンチューブに移す。これとは別に、ホウ、ワイら(Hou,Y.et al.)J.Biol.Chem.(2000年)第275巻:38961〜6ページの記述に従って精製した100μM Gβ1γ2と100μM Gαi1とを等体積で合わせることによって50μM Gαi1β1γ2を調製し、TBSMに800mM DbMを加えたものに透析分離した(TBSM−AG)。該脂質混合物に、TBS−AGを0.2mLと、50μM Gαi1β1γ2を0.2mL添加する。この混合物に、50mM GDPを10μL添加する。その結果、脂質およびAPの粗製混合物が得られる。タンパク質濃度は、サンプル10μLと0.2%Triton X−100 10μLとを合わせ、その混合物を、製造業者の使用説明書に従ってバイオラッド社(Bio−Rad)比色タンパク質アッセイに使用することにより推定する。次いでTBSで希釈することにより濃度を10μMに調整する。
【0134】
次いでAP−脂質粗製混合物を、5分、22℃の槽中の超音波処理を30分間隔で(6回)実施しながら8℃で3時間インキュベートする。次いでこの混合物を20℃で、製造業者のプロトコルに従って(アバンティポーラーリピッズ(Avanti Polar Lipids)[米国アラバマ州アラバスター(Alabaster)所在])容積の小さい押出し機で100nmポリカーボネート膜に11回通す。この結果、体積0.8mLのPL粗製物、12μM mAChR、12μM Gαi1β1γ2、および過剰な両親媒性物質(DbMおよび脂質)が得られる。過剰な脂質および界面活性剤を除去するため、予め4℃でTBSにより平衡化した10.0mLの脱塩体(G−50セファデックス・カラム)に、PL粗製物を通過させる。PL粗製物を脱塩カラムに通した後、4℃のTBSを使用して、その物質をカラムから溶出させる。この脱塩操作は、流速0.5mL/分で実施する。
【0135】
サイズ分布を明らかにするために、製造業者のプロトコルに従いコールター(Coulter)のN4サブミクロン・パーティクル・アナライザを使用する。これとは別に、サイズ分布と平均粒子サイズの評価を、流速1.0mL/分で溶出緩衝液TBSを用いた分析用SECカラム(G2000SWXL、5×300mm、5μm;トーソーハース(ToSo−Haas))に、280nmでモニタするUV検出器を取り付け、12℃に冷却した状態で20μLを注入することにより分析SECによって実施する。8.23分に溶出する単一ピークによりAP−PLの保持時間が同定され、これを分子サイズ・マーカー溶出時間の標準曲線と比較する。得られた見掛けの平均サイズは、940,000ダルトンのタンパク質のサイズに匹敵する。
【0136】
次いで本明細書で述べたプロテオリポソームを、本明細書に示すアフィニティ選択およびALISまたは修正ALISを利用する方法のいずれかに従い、リガンド結合についてスクリーニングする。
(実施例12)
HPの2重エピトープ・アフィニティ精製
本発明のタグ付きHPタンパク質をコードする核酸配列の構築は、核酸クローニングの技術分野で一般的な通常の手順を利用する当業者の技術範囲に十分含まれる。
【0137】
タグ付きHP、例えばメリチン−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグタンパク質や、メリチン−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグタンパク質を、ウイルス発現系の製造業者(ファーミンゲン(Pharmingen)[米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)所在])により提供される方法に従って、組換えバキュロウイルスから生成する。
【0138】
概要を述べると、組換えウイルスを、その組換えタンパク質発現能に基づいて選択する。発現タンパク質を、感染昆虫細胞を界面活性剤により可溶化した細胞溶解物のウェスタン・ブロット分析により確認する。Flagエピトープ、EEエピトープ、またはHPタンパク質そのもののいずれかを認識する1次抗体を使用し、ウェスタン・ブロットによりHPタンパク質が発現するかどうか、またはHPタンパク質がどの程度発現するかを明らかにする。可能であれば、発現タンパク質が機能を有することを確認するために、機能的アッセイを行う。例えばメリチン−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグタンパク質の場合、リンケン(Rinken)およびハガ(Haga)の方法(リンケン、エー(Rinken,A.)およびハガ、ティー(Haga,T.)(1993年)Arch.Biochem.Biophys.第301巻:158〜164ページ)に従って細胞を用いた3H−N−メチルスカポラミン結合分析を行い、それによって、ウイルスに誘導されたタンパク質発現が機能を有し、細胞当たりの受容体が0.5×106個のBmaxと、0.10nMのKdとを示すことが確認された。次いでこのバキュロウイルスを、従来の方法(ファーミンゲン(Pharmingen)[米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)所在])によって2.0×108pfu/mLに達する高い力価に増幅した。
【0139】
次に、タンパク質を単離するため大量の昆虫細胞培養物を得る。概要を述べると、高力価のウイルスストックが所定の構築物を生成するとすぐに、Sf21昆虫細胞をバイオリアクタ内で波動撹拌しながら(ウェーブバイオテクノロジー(Wave Biotechnology)[米国ニュージャージー州ベッドミンスター(Bedminster)所在])細胞密度2×106/mLまで増殖させる10リットル規模の生産を10回実施した。生産する各タンパク質について、これらの細胞に感染効率(MOI)5で高力価ウイルスストックを接種し、感染後2日で細胞をハーベストした。
【0140】
次いでHPタンパク質を可溶化する。例えば、mAChRタンパク質発現細胞を10,000×gで30分間遠心分離することによって回収する。10回のバイオリアクタによる生産の全ての細胞ペレットを一緒にし、その細胞ペレットを、1mM EDTA、10μg/ml ペプスタチンおよび1μg/ml pメチルスルホニルフルオライド、ならびに20mM ドデシル−β−D−マルトシド(DbM)を加えた氷冷TBS緩衝液500mLに再懸濁する。この細胞スラリを、A型乳棒のDounceホモジナイザで4℃で50回のストロークに供し、細胞を破砕して膜タンパク質を可溶化する。この懸濁液を清澄にするために、該物質を4℃で60分間、40000×gで遠心分離にかけて、不溶性物質を除去する。次いで上澄みを回収し、可溶性メリチン−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタンパク質の供給源として使用する。(注記:ミツバチのメリチン・シグナル配列は、発現および昆虫細胞原形質膜への移動の過程で細胞プロテアーゼにより切断される。それ以降は、該可溶化タンパク質をFlagタグ−ヒトm1 mAChR−EEと呼ぶ)。
【0141】
次いで各可溶化組換えHPを、抗体アフィニティ・カラムでアフィニティ精製を2回行うことにより精製する。抗EEタグカラムと抗Flagタグカラムの両方を同じように準備する。概要を述べると、製造業者のプロトコルに従って(アマシャムファルマシア(Amersham Pharmacia[米国ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway)所在])、35mgの精製抗エピトープ抗体を結合緩衝液中に透析し、CNBr活性化セファロース・ビーズ10mLに結合させる。次いで樹脂を1.2×15cmポリプロピレン・カラムに移し、次にエピトープ・アフィニティ・カラムを4℃でTBS−AGを用いて平衡化する。
【0142】
次に、50mLの可溶化HPタンパク質、例えばFlagタグ−ヒトm1 mAChR−EEを、毎分0.2mLの流速で抗EEアフィニティ・カラムにアプライする。次いで、カラム体積の5倍量のTBS−AGにより同じ流速でそのカラムを洗浄した。次いで特異的に結合したHPを、TBS−AG中体積15mLに可溶化して10mMとした過剰なEEペプチド(NH2−EEEEYMPME−COOH;シグマゲノシス(Sigma−Genosys)[米国ミズーリ州セントルイス所在])の大量添加によりカラムから溶出させる。次いで溶出液を、抗Flagタグ・アフィニティ・カラムに同様にアプライし、同様に洗浄し、過剰な抗FLAGペプチド(NH2−DYKDDDDK−COOH;シグマゲノシス(Sigma−Genosys)[米国ミズーリ州セントルイス所在])でカラムから溶出させる。次いでこの物質を、100倍容のTBS−AGを2回交換して4℃で1晩透析する。
【0143】
次いでショ糖勾配超遠心分離を使用して、誤って折り畳まれたポリペプチドを除去する。概要を述べると、該物質を、TBS−AGに溶かした5%〜25%ショ糖の不連続なステップ勾配に供し、4℃で4時間、100000×gでベックマンSW Ti.50ロータにより遠心分離する。適正な高次構造のHP、例えばFlagタグ−ヒトm1 mAChR−EEは、5%〜25%の界面で回収される。次いでこの物質を、100倍容のTBS−AGを2回交換して4℃で1晩の最後の透析に供する。
【0144】
HP溶液のタンパク質濃度を、比色タンパク質アッセイ(バイオラッドラボラトリーズインコーポレイテッド社(Bio−Rad Laboratories,Inc.)[米国カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules)所在])によって決定し、必要に応じて希釈または撹拌限外濾過セル(ミリポア(Millipore)[米国マサチューセッツ州ベッドフォード(Bedford)所在])で濃縮することによって、50μMに調整する。界面活性剤濃度も、ヒギンス(Higgins)C−18カラムを使用してRPC−UVで決定し、この場合、リガンドの混合物50μLを、20分かけて、5%〜95%アセトニトリル(0.1%ギ酸対イオン)水溶液(w/0.1%ギ酸)の勾配を使用して溶出し、分析のため高分解能質量分析計へ供する。DbMのRtは、同一の条件下で個別に対照実験を行うことにより決定する。界面活性剤の量を定量するためには、タンパク質サンプルからのDbMピークの面積を、既知濃度のDbMサンプルのDbMピーク高をアッセイする同一条件下の複数回のRPCから作製された標準曲線と比較する。界面活性剤濃度が0.48mM(4×cmc)よりも低いと推定される場合、TBSに溶かした高濃度のDbMを少量添加することによって調整する。
(実施例13)
HPのエピトープ・アフィニティおよび金属キレート・アフィニティ・クロマトグラフィ(MCAC)
HPはまた、例えばヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSV−8Hisに代表されるように、エピトープ・アフィニティ・タグおよび金属キレート・アフィニティ・タグを備えて構成される。概要を述べると、製造業者(ファーミンゲン(Pharmingen)[米国カリフォルニア州サンディエゴ所在])により提示される下記の方法に従って、ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSV−8Hisをコードする単離核酸分子を組換えバキュロウイルスの産生に使用する。ウイルス産生、大量の昆虫細胞培養およびタンパク質発現、エピトープ・アフィニティ・カラムの調製、可溶化HPの調製、ならびにエピトープ・アフィニティ精製は、HSVエピトープ・アフィニティ・カラムを調製する際に抗FLAG抗体の代わりに抗HSV抗体を使用し、FLAGペプチドの代わりにHSVペプチド(NH2−QPELAPEDPED−COOH;シグマゲノシス(Sigma−Genosys))を使用してヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSV−8Hisタンパク質をカラムから溶出すること以外、全て本明細書で既に述べたように行った。また、ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSV−8Hisタンパク質にはEEエピトープがないので、EEエピトープを使用するエピトープ・アフィニティ精製は使用しない。(注記:ヘマグルチニンSSシグナル配列は、一部の細胞株では発現および昆虫細胞の原形質膜への移動の過程で細胞プロテアーゼによって切断される可能性がある。それ以降は、該可溶化タンパク質をラットm3 mAChR−HSV−8Hisと呼ぶ。
【0145】
アフィニティ精製の最終ステップでは、Ni−NTA樹脂(キアゲン(Qiagen))10mLを1.2×15cmのポリプロピレン・カラムに充填し、そのカラムを流速0.2mL/分で4℃のTBS−AG 100mLで平衡化することにより調製したMCACカラムに、ラットm3 mAChR−HSV−8Hisを流速0.2mL/分でアプライする。ラットm3 mAChR−HSV−8Hisがカラムに結合したら、そのカラムを5mMのイミダゾールを含有するTBS−AG 100mLで洗浄する。次いでこのカラムを、同じ流速でTBS−AG中の5mM〜350mMイミダゾールの50mL直線勾配で展開し、0.5mLずつ画分を回収する。活性mAChRを含有する画分は、既知の放射性リガンド結合アッセイによって評価されるとおり、190〜240mMのイミダゾール濃度に相当する体積11mL中に溶出する。次いでこの物質を、100倍容のTBS−AGを3回交換して4℃で1晩透析し、過剰なイミダゾールを除去する。次いでこの物質を、ショ糖勾配超遠心分離にかけ、本明細書で既に述べたようにタンパク質および界面活性剤の濃度を測定し調整する。
(実施例14)
精製HPの特徴付け
本明細書で生産したHPの最終的な調製物の純度を確認するために、各サンプルを5〜12%Novex(登録商標)(インビトロジェン(Invitrogen)[米国カリフォルニア州サンディエゴ所在])ゲル上で、製造業者の使用説明書に従いSDS−PAGE分析に供する。ゲル・レーン当たりサンプル10μgをロードし、タンパク質サンプルを銀染色法によって視覚化する(ピーターソン、ジー エルら(Peterson,G.L.et al.)(1995年)J.Biol.Chem.第270巻:17808ページ)。これらの方法により調製したmAChRタンパク質の特異的な活性を、ピーターソン、ジー エルら(Peterson,G.L.et al.)の方法(ピーターソン、ジー エルら(Peterson,G.L.et al.)(1995年)J.Biol.Chem.第270巻:17808ページ)に従って決定する。本明細書で述べた方法では一般に、タンパク質の特異的な活性は、mAChRタンパク質1mg当たりの特異的リガンド結合が11〜16nmolの範囲内になるよう決定される。
【0146】
リガンド・アフィニティ・クロマトグラフィは、本発明のHPを特異的な活性に関して評価することが可能なもう1つの測定法である。例えば本明細書で述べた方法により精製したmAChRは、固定化mAChRリガンド3−(2’−アミノベンズヒドリルオキシ)−トロパン(ABT)のカラムに通して既知リガンドのアフィニティ・クロマトグラフィにかけることが可能である。
【0147】
均等物
当業者なら、本明細書に記載する本発明の特定の実施形態の数多くの均等物を、通常の実験を行うだけで理解しまたは確かめることが可能であろう。そのような均等物は、上記の特許請求の範囲に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】HPタンパク質GP67 SS−Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChRのアミノ酸配列(配列番号19)を示す図。
【図2】HPタンパク質メリチン−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEのアミノ酸配列(配列番号20)を示す図。
【図3】HPタンパク質ヘマグルチニンSS−ヒトニューロキニン3受容体−HSV−Mycのアミノ酸配列(配列番号21)を示す図。
【図4】HPタンパク質メリチン−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEのアミノ酸配列(配列番号22)を示す図。
【図5】HPタンパク質ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSV−8Hisのアミノ酸配列(配列番号23)を示す図。
【図6】ALISスクリーニング・システムの性能をモニタするために開発されたコンピュータ・インターフェースのスクリーンショットにより表示されるSECクロマトグラム。SECカラムに注入した後のサンプル注入に伴う溶出時間に対して230nmでの相対吸光度を垂直軸上にプロットする。この表示は、6種の異なる結合反応混合物の分析に関する分離プロフィルをまとめたものである。いずれの場合も、混合物は、各25μMのインドメタシンおよびメクロフェナメートと、10μMのCOX−1と、各1μMの約2500種の個々のスクリーニング化合物とからなる。12〜15秒の間で溶出するピークは、分析のために質量分析計に送られるSEC画分を含有するCOX−1に該当する。17秒後に溶出するピークは、非結合のライブラリ分子に該当する。
【図7】図1に示す試験ライブラリから抽出された2つの既知COX−1リガンド(NSAID LM;インドメタシンおよびメクロフェナメートからなる)について測定された回収率を示す質量スペクトル分析図。異なる日(10/15および10/18)の異なるCOX−1調製物は、競合ライブラリ(NGL−15−A−137、NGL−10−A−41、NGL−116−A−470、NGM−51、NGM−108、NGM−177)が存在しない状態で、または存在下で、既知のリガンドを結合する。標準曲線と比較することにより、質量スペクトル分析では、各回収リガンドのピコモルレベルの測定が可能になる。測定は、インドメタシンとメクロフェナメートの両方について3連で実施した。
【図8】ALISによって同定された1例であるCOX−1リガンドの構造を示す図。NGL−177−A−1128−A−2aと呼ばれるこの化合物は、ALISスクリーニングによってCOX−1リガンドであると同定された化合物の1例である。
【図9】COX−1結合に関するメクロフェナメートとの競合を示す棒グラフ。選択されたCOX−1ヒット化合物は、各約1μMで、頭にNGL−xと付いた10文字の名称で識別されるが、これらがCOX−1への結合に関して25μMメクロフェナメートと競合するかどうかを決定するため個々に試験を行った。メクロフェナメートまたは被験リガンドのいずれかの質量に相当する質量スペクトルの応答を定量化した。COX−1結合に関してメクロフェナメートと競合する被験リガンドでは、「リガンド+競合物質」の応答が、「リガンド−競合物質」の応答よりも低くなる。また、メクロフェナメートの応答は、上述の「リガンド+競合物質」の試行に関して「COX1+25μMメクロフェナメートの試行」の場合より低くなる。例えば、NGL−169−A−1151−A−4で表される試験化合物はメクロフェナメートと競合するが、NGL−175−A−1127−A−1で表される試験化合物は、はっきりと競合するとは言えない。
【図10】ALIS法による質量スペクトル分析のシグナル強度によって定量したM2R1リガンド回収率の程度を示す棒グラフ。x軸は、ピレンゼピン、QNB、およびアトロピンの各質量に対する質量スペクトルのシグナル応答を相対単位で表す。
【0001】
本発明は、薬理学および医学の分野に関する。より詳細には、本発明は、新規な薬剤および医学的診断の開発に特に関連の深い個別のリガンド分子の同定のため、疎水性タンパク質をスクリーニングすることに関する。
【背景技術】
【0002】
疎水性タンパク質(HP)の機能のアゴニストおよびアンタゴニストの開発において、疎水性タンパク質は製薬産業に独自の問題を提起している。この問題は、HPが容易に精製されず、単離された形で働くことが難しいこと(例えば溶解度の問題)から生じている。疎水性タンパク質が無極性であると仮定すると、このタンパク質はとりわけ細胞の脂質2重層とその内部の細胞小器官に結合している可能性がある。非限定的な例として、疎水性タンパク質という用語には、膜タンパク質、内在性膜タンパク質、膜貫通タンパク質、モノトピック型膜タンパク質、ポリトピック型膜タンパク質、ポンプ・タンパク質(酵素のサブクラス)、チャネル・タンパク質、受容体キナーゼタンパク質、Gタンパク質共役受容体タンパク質、膜結合酵素、輸送体タンパク質などが含まれる。これらのタンパク質は、細胞内および細胞間のシグナル伝達と、細胞とその環境との一般的な関係、例えば溶質移動などにおいて、しばしば重要な役割を果たす。したがって疎水性タンパク質は、薬物開発の重要な標的である。
【0003】
ヒトゲノム・プロジェクトによって、ゲノムにコードされた親水性および疎水性のタンパク質の構造と機能とに関する膨大な量の情報が提供されることになる。例えば、ヒトゲノムでは1,700〜5,000個のGタンパク質共役受容体タンパク質(GPCR)が発見されると予測される(マルキーズ、エーら(Marchese,A.,et al.)(1999年)Trends Pharmacol.Sci.第20巻:370ページ;ヘニコフ、エスら(Henikoff,S.,et al.)(1997年)Science 第278巻:609ページ)。しかし、疎水性タンパク質に結合するリガンドを同定するための適切なスクリーニング方法がないので、ヒトゲノム・プロジェクトによって同定された何百ものGPCRは、その研究を進めるための既知のリガンドを全く持っていないオーファン(孤児)受容体として分類されることになる。GPCRは医学に非常に重要であるので、例えば配列データや変異体データ、リガンド結合データに関する情報を提供するべく個別のデータベースが確立されている(ホーン、エフら(Horn,F.,et al.)(1998年)Nucleic Acids Research 第26巻:227〜281ページ)。したがって当技術分野では、HPリガンド同定のためのスクリーニング方法、特に処理能力の高い方法の開発が必要とされている。
【0004】
従来技術では、アフィニティ選択に基づいたHPのスクリーニングの記録がない。その代わりこれらの標的は、機能的アッセイまたはリガンド置換アッセイでスクリーニングされる。HPをスクリーニングするのに使用される全てのリガンド置換アッセイおよびほとんどの機能的アッセイは、細胞を用いた形式で実施される(例えば、いずれも細胞を用いたメラノフォア・アッセイを開示するジャヤウィックレム、シー ケー(Jayawickreme,C.K.)およびコスト、ティー エー(Kost,T.A.)(1997年)Current Opinion in Biotechnology 第8巻:629〜634ページならびにチェン、ジーら(Chen,G.,et al.)(1999年)Molecular Pharmacology 第57巻:125〜124ページ;細胞を用いた蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)に基づいたアッセイを開示するメア、エルら(Mere,L.,et al.)(1999年)Drug Discovery Today 第4巻:363〜369ページ;および細胞を用いたエクオリン・アッセイを開示するシェーファー、エム ティーら(Schaeffer,M.T.,et al.)(1999年)J.Receptor&Signal Transduction Research 第19巻:927〜938ページ参照)か、または未精製の細胞膜調製物を用いる(例えば、ミクロソームを用いたアッセイを開示するクロムリッシュら(Cromlish et al.)の米国特許第5,543,297号参照:および膜調製物を使用した放射リガンド置換アッセイを開示するラベラ、エフ エスら(Labella,F.S.,et al.)Fed.Proc.(1985年)第44巻:2806〜2811ページ参照)かのいずれかである。これらのスクリーニング形式は分子レベルの定義が不明確であり、シグナル対ノイズ比が低く、偽陽性が生じ、標的タンパク質が発現する程度のばらつきおよび遺伝子発現パラメータの大きなばらつきの影響を受ける。
【0005】
非常にまれであるが、スクリーニングのためにHP標的が精製される。例えば、界面活性剤(デタージェント)で可溶化された形に精製されたCOX−2は、均一溶液相アッセイでその酵素活性をモニタリングすることによりスクリーニング可能であり、このアッセイにおいて酵素活性に対する小分子阻害剤を薬物リードとして同定し得る(ソング、ワイら(Song,Y.,et al.)(1999年)J.Med.Chem.第42巻:1151〜1160ページ、およびバーネット、ジェイら(Barnett,J.,et al.)(1994年)Biochimica et Biophysica Acta 第1209巻:130〜139ページ参照)。代替例として、スクリーニングのためにHPを担体に結合することが可能である(スクラー、エル エーら(Sklar,L.A.,et al.)(2000年)Biotechniques 第28巻:976〜985ページ;ビエリ、シーら(Bieri,C.,et al.)(1999年)Nature Biotechnology 第17巻:1105〜1108ページ;およびシュミット、イー エルら(Schmid,E.L.,et al.)(1998年)Anal.Chem.第70巻:1331〜1338ページ参照)。しかし、機能に関する読出し情報を使用するスクリーニング・アッセイでは、標的の機能を前もって推測する。また、医学的診断に使用される多くの造影剤の場合と同様に、多くの所望のタンパク質リガンドはアッセイ可能な機能を変化させず、タンパク質に単に結合するだけである。
【0006】
水溶性タンパク質に対するリガンドを同定するためのアフィニティ選択は、当技術分野で知られている。例えば、ナッシュら(Nash et al.)による国際公開番号第99/35109号は、アフィニティ選択と質量分析による結合リガンドの同定との組合せに有用なマスコード・コンビナトリアル・ライブラリを生成するための方法について述べている。ジンダルら(Jindal et al.)による国際特許出願の国際公開番号第97/01755号は、標的分子に結合したリガンドのアフィニティ選択について、その後の多次元クロマトグラフィ法によるリガンド分子の単離と組み合わせて述べている。さらに、パントリアノら(Pantoliano et al.)による米国特許第6,020,141号は、熱シフト・アッセイによるリガンドの同定と組み合わせたアフィニティ選択の方法について述べている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リガンドのアフィニティ選択およびリガンド同定によるこれらの進歩にもかかわらず、純粋なHPを生物学的に活性な高次構造に維持するために必要な過剰な両親媒性物質の存在が障害となるため、水に不溶なHP標的にアフィニティ選択を適用するには基本的な問題が依然として存在している。
【0008】
水溶性タンパク質の調製と純粋なHPの調製との相違を理解することが重要である。HPは、HPの疎水性部分と両親媒性物質の疎水性部分との間の疎水的相互作用によって溶媒和する。純粋な水溶性タンパク質の調製では、全ての緩衝成分が親水性であり、水和によって、あるいは静電結合またはイオン結合に加わることによって、タンパク質を溶媒和する。それに対し、純粋なHPを調製する際の両親媒性物質は、コロイドとしての性質を溶液にもたらす。一般にHPは、100〜10,000倍の過剰なモル濃度の界面活性剤中で精製される。これらの両親媒性の界面活性剤分子は、HPおよびスクリーニングされる薬物分子の両方と相互作用する。さらに両親媒性物質は、ほとんどのタンパク質とちょうど同じ大きさの、ミセルやリポソームなどの高分子アセンブリを形成する。これらの高分子アセンブリは、両親媒性物質に可溶化されたHPの溶液にコロイドとしての性質をもたらし、HPと可溶性タンパク質とがさらに区別される。
【0009】
可溶性タンパク質標的と比較すると、HP−両親媒性物質の調製は特に複雑であるため、結合リガンドの検出が妨げられ、スクリーニング感度が低下し、高率で偽陽性となる。典型的な調製において、このような複雑な問題を引き起こす分子の実体を、HP−両親媒性物質の複合体(20μM、HP:両親媒性物質::1:5〜250;MW=50〜500kD)と、ミセル(5000μM MW=60kD)と、モノマー両親媒性物質(500μM;MW=1200)とであると特定することが可能である。同じような水溶性タンパク質の調製では、20μMのタンパク質だけを得ることになる。どちらの場合も、緩衝剤(例えばトリスまたはリン酸ナトリウム)と塩(例えばNaClまたはKCl)を含ませることも可能である。HPタンパク質の調製では、様々な両親媒性物の存在により、可溶性タンパク質の調製では見られない特別な複雑さが示される。
【0010】
したがって当技術分野では、HP標的の特定の生物学的機能とは関係なく両親媒性物質の存在下で実施可能な、アフィニティ選択に基づいたHPスクリーニング法が、引き続き求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、HP標的の特定の生物学的機能とは関係なく両親媒性物質の存在下で実施可能な、アフィニティ選択に基づいたHPスクリーニング法を提供する。
【0012】
本発明は、両親媒性物質の存在下で薬物様小分子のHPに対する特異的結合の検出を可能にすることによって、HPリガンドのアフィニティ選択に関連した問題を解決する。さらに本発明は、スクリーニングを行うのに有用な精製HPを生成するための新規な方法および組成物も提供する。これらの発見は、組成物および方法を含む本発明を提供するために利用されている。
【0013】
第1の態様では、本発明は、(a)疎水性標的タンパク質とリガンド分子との少なくとも1個の複合体の形成が促進されるように、両親媒性物質が結合している疎水性標的タンパク質を多数の分子に曝すことによるアフィニティ選択により、リガンド分子を選択する工程と、(b)該複合体を非結合分子から分離する工程と、(c)リガンド分子を同定する工程とからなる、疎水性タンパク質のリガンドを同定する方法を提供する。
【0014】
第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質を多数の分子に曝すことが、均一溶液相の条件下で行われる。第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質を多数の分子に曝すことが、不均一溶液相の条件下で行われる。第1の態様のある実施形態では、リガンド分子の選択が、多次元クロマトグラフィを使用して行われる。
【0015】
第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質が、膜タンパク質、内在性膜タンパク質、膜貫通タンパク質、モノトピック型膜タンパク質、ポリトピック型膜タンパク質、ポンプ・タンパク質、チャネル・タンパク質、受容体キナーゼタンパク質、Gタンパク質共役受容体タンパク質、膜結合酵素、および輸送体タンパク質からなる群から選択される。
【0016】
第1の態様のある実施形態では、多数の分子はマスコードされた分子ライブラリである。第1の態様のある実施形態では、多数の分子はマスコードされていない分子のライブラリである。第1の態様のある実施形態では、両親媒性物質が、(a)極性脂質と、(b)両親媒性高分子ポリマーと、(c)表面活性物質(サーファクタント)または界面活性剤と、(d)両親媒性ポリペプチドとからなる群から選択される。第1の態様のある実施形態では、リガンド分子の同定が、質量スペクトル分析によって行われる。第1の態様のある実施形態では、リガンド分子のデコンボリューションが、質量スペクトル分析によって行われる。第1の態様のある実施形態では、複合体の非結合分子からの分離が、固相クロマトグラフィの媒体を用いて行われる。
【0017】
第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質が、(a)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列と、(b)アフィニティ精製に有用な少なくとも2つのタグ配列と、(c)疎水性タンパク質(HP)配列とからなる。前記態様のある実施形態では、疎水性タンパク質配列が、(a)膜タンパク質と、(b)内在性膜タンパク質と、(c)膜貫通タンパク質と、(d)モノトピック型膜タンパク質と、(e)ポリトピック型膜タンパク質と、(f)ポンプ・タンパク質と、(g)チャネル・タンパク質と、(h)受容体キナーゼタンパク質と、(i)Gタンパク共役受容体タンパク質と、(j)膜結合酵素と、(k)輸送体タンパク質とからなる群から選択される。前記態様のある実施形態では、タグ配列が、(a)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)と、(b)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)と、(c)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)と、(d)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)と、(e)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)と、(f)ロドプシン・タグ(NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEPWQFSM−COOH)(配列番号6)とからなる群から選択されたエピトープ・タグ配列からなる。
【0018】
第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質が、(a)タグ1−タグ2−HPと、(b)タグ1−HP−タグ2と、(c)HP−タグ1−タグ2とからなる群から選択された順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで並ぶ配列からなる。前記態様のある実施形態では、本発明は、疎水性標的タンパク質が、(a)Mycタグ−EEタグ−ヒトm2ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)(配列番号7)と、(b)Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号8)と、(c)ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号9)と、(d)Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号10)と、(e)ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号11)とからなる群から選択される方法を提供する。前記態様のある実施形態では、本発明は、疎水性標的タンパク質が、アミノ末端に異種シグナル配列(SS)をさらに含む方法を提供する。前記態様のある実施形態では、異種シグナル配列が、(a)メリチン・シグナル配列NH2−KFLVNVALVFMVVYISYIYA−COOH(配列番号12)と、(b)GPシグナル配列NH2−VRTAVLILLLVRFSEP−COOH(配列番号13)と、(c)ヘマグルチニン・シグナル配列NH2−KTIIALSYIFCLVFA−COOH(配列番号14)と、(d)ロドプシン・タグ1シグナル配列NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号15)と、(e)ロドプシン・タグID4シグナル配列NH2−GKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号16)とからなる群から選択される。前記態様のある実施形態では、タグ配列がヘキサヒスチジン配列(配列番号17)とデカヒスチジン配列(配列番号18)とをさらに含む。前記態様の別のある実施形態では、疎水性標的タンパク質が、(a)GP67 SS−Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、(b)メリチンSS−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号20)と、(c)ヘマグルチニンSS−ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号21)と、(d)メリチンSS−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号22)と、(e)ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号23)とからなる群から選択される。
【0019】
第2の態様では、本発明は、(a)疎水性タンパク質をショ糖勾配超遠心法によって精製する工程と、(b)疎水性タンパク質を抗体アフィニティ精製によって精製する工程と、(c)疎水性タンパク質を固定化金属アフィニティ・クロマトグラフィによって精製する工程とからなる疎水性タンパク質を単離する方法を提供する。
【0020】
第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質が、(a)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列と、(b)アフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列と、(c)疎水性タンパク質(HP)配列とからなる。前記態様のある実施形態では、疎水性タンパク質配列が、(a)膜タンパク質と、(b)内在性膜タンパク質と、(c)膜貫通タンパク質と、(d)モノトピック型膜タンパク質と、(e)ポリトピック型膜タンパク質と、(f)ポンプ・タンパク質と、(g)チャネル・タンパク質と、(h)受容体キナーゼタンパク質と、(i)Gタンパク質共役受容体タンパク質と、(j)膜結合酵素と、(k)輸送体タンパク質とからなる群から選択される。第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質のタグ配列が、(a)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)と、(b)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)と、(c)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)と、(d)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)と、(e)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)と、(f)ロドプシン・タグ(NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEPWQFSM−COOH)(配列番号6)とからなる群から選択されたエピトープ・タグ配列からなる。第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質が、(a)タグ1−タグ2−HPと、(b)タグ1−HP−タグ2と、(c)HP−タグ1−タグ2とからなる群から選択された順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで並ぶ配列からなる。
【0021】
第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質が、(a)Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号7)と、(b)Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号8)と、(c)ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号9)と、(d)Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号10)と、(e)ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号11)とからなる群から選択される。前記態様のある実施形態では、疎水性タンパク質がアミノ末端に異種シグナル配列(SS)をさらに含む。前記態様のある実施形態では、異種シグナル配列が、(a)メリチン・シグナル配列NH2−KFLVNVALVFMVVYISYIYA−COOH(配列番号12)と、(b)GPシグナル配列NH2−VRTAVLILLLVRFSEP−COOH(配列番号13)と、(c)ヘマグルチニン・シグナル配列NH2−KTIIALSYIFCLVFA−COOH(配列番号14)と、(d)ロドプシン・タグ1シグナル配列NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号15)と、(e)ロドプシン・タグID4シグナル配列NH2−GKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号16)とからなる群から選択される。第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質のタグ配列が、ヘキサヒスチジン配列(配列番号17)とデカヒスチジン配列(配列番号18)とからさらになる。
【0022】
前記態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質が、(a)GP67 SS−Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、(b)メリチンSS−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号20)と、(c)ヘマグルチニンSS−ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号21)と、(d)メリチンSS−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号22)と、(e)ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号23)とからなる群から選択される。
【0023】
第3の態様では、本発明は、(a)真核細胞におけるタンパク質発現用のベクター・ポリヌクレオチド配列と、(b)下記の要素、すなわち(i)N末端メチオニン残基、(ii)異種シグナル配列(SS)、(iii)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列、(iv)アフィニティ精製に有用な少なくとも2つのタグ配列、および(v)疎水性タンパク質(HP)配列からなる人工的に改変された疎水性タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列とからなる、疎水性タンパク質の発現に適した単離核酸分子を提供する。前記態様のある実施形態では、N末端メチオニン配列および異種シグナル配列が、(a)MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号24)と、(b)MVRTAVLILLLVRFSEP(配列番号25)と、(c)MKTIIALSYIFCLVFA(配列番号26)と、(d)MMNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号27)と、(e)MGKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号28)とからなる群から選択される。
【0024】
前記態様のある実施形態では、タグ配列が、(a)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)と、(b)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)と、(c)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)と、(d)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)と、(e)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)とからなる群から選択されたエピトープ・タグ配列からなる。
【0025】
第3の態様のある実施形態では、人工的に改変された疎水性タンパク質の要素が、(a)SS−タグ1−タグ2−HPと、(b)SS−タグ1−HP−タグ2と、(c)SS−HP−タグ1−タグ2とからなる群から選択された順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで配列される。前記態様のある実施形態では、人工的に改変された疎水性タンパク質が、(a)GP67 SS−Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、(b)メリチンSS−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号20)と、(c)ヘマグルチニンSS−ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号21)とからなる群から選択される。第3の態様のさらなる実施形態では、タグ配列が、ヘキサヒスチジン配列(配列番号17)とデカヒスチジン配列(配列番号18)とからさらになる。
【0026】
第4の態様では、本発明は、疎水性タンパク質のリガンドを同定する方法であって、(a)(i)膜タンパク質、(ii)内在性膜タンパク質、(iii)膜貫通タンパク質、(iv)モノトピック型膜タンパク質、(v)ポリトピック型膜タンパク質、(vii)ポンプ・タンパク質、(viii)チャネル・タンパク質、(ix)受容体キナーゼタンパク質、(x)Gタンパク共役受容体タンパク質、(xii)膜結合酵素、および(xiii)輸送体タンパク質からなる群から疎水性標的タンパク質を選択する工程と、該疎水性タンパク質に、(i)極性脂質、(ii)両親媒性高分子ポリマー、(iii)表面活性物質または界面活性剤、および(iv)両親媒性ポリペプチドからなる群から選択される両親媒性物質が結合していることと、(b)疎水性標的タンパク質とリガンド分子との少なくとも1つの複合体の形成が促進されるように、均一または不均一な溶液相の条件下、両親媒性物質が結合している疎水性標的タンパク質をマスコード・ライブラリ由来の多数の分子に曝すことによるアフィニティ選択により、多次元クロマトグラフィを使用してリガンド分子を選択する工程と、(c)非結合分子から複合体を分離する工程と、(d)質量スペクトル分析によってリガンド分子を同定する工程とからなる方法を提供する。
【0027】
第5の態様では、本発明は、疎水性タンパク質に対するリガンドを同定するための方法であって、(a)(i)膜タンパク質、(ii)内在性膜タンパク質、(iii)膜貫通タンパク質、(iv)モノトピック型膜タンパク質、(v)ポリトピック型膜タンパク質、(vii)ポンプ・タンパク質、(viii)チャネル・タンパク質、(ix)受容体キナーゼタンパク質、(x)Gタンパク質共役受容体タンパク質、(xii)膜結合酵素、および(xiii)輸送体タンパク質からなる群から疎水性標的タンパク質を選択する工程と、疎水性タンパク質に、(i)極性脂質、(ii)両親媒性高分子ポリマー、(iii)表面活性物質または界面活性剤、および(iv)両親媒性ポリペプチドからなる群から選択される両親媒性物質が結合していることと、(b)疎水性標的タンパク質とリガンド分子との少なくとも1つの複合体の形成が促進されるように、均一または不均一な溶液相の条件下、両親媒性物質が結合している疎水性標的タンパク質をマスコードされていないライブラリ由来の多数の分子に曝すことによるアフィニティ選択により、多次元クロマトグラフィを使用してリガンド分子を選択する工程と、(c)非結合分子から複合体を分離する工程と、(d)質量スペクトル分析によってリガンド分子を同定する工程とからなる方法を提供する。
【0028】
第6の態様では、本発明は、疎水性タンパク質を単離する方法であって、(a)(i)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列と、(ii)(A)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号29)、(B)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号30)、(C)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号31)、(D)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号32)、および(E)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号33)からなる群から選択されたアフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列と、(iii)(A)膜タンパク質、(B)内在性膜タンパク質、(C)膜貫通タンパク質、(D)モノトピック型膜タンパク質、(E)ポリトピック型膜タンパク質、(F)ポンプ・タンパク質、(G)チャネル・タンパク質、(H)受容体キナーゼタンパク質、(I)Gタンパク共役受容体タンパク質、(J)膜結合酵素、および(K)輸送体タンパク質からなる群から選択された疎水性タンパク質(HP)配列とからなる疎水性タンパク質を選択する工程と、(b)疎水性タンパク質をショ糖勾配超遠心法によって精製する工程と、(c)疎水性タンパク質を抗体アフィニティ精製によって精製する工程と、(d)疎水性タンパク質を固定化金属アフィニティ・クロマトグラフィによって精製する工程とからなる方法を提供する。
【0029】
第7の態様では、本発明は、(a)真核細胞におけるタンパク質発現用のベクター・ポリヌクレオチド配列と、(b)下記の要素、すなわち(i)N末端メチオニン残基と、(ii)N末端メチオニン配列および異種シグナル配列が、(1)MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号24)、(2)MVRTAVLILLLVRFSEP(配列番号25)、(3)MKTIIALSYIFCLVFA(配列番号26)、(4)MMNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号27)、および(5)MGKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号28)からなる群から選択される異種シグナル配列(SS)と、(iii)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列と、(iv)(1)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)、(2)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)、(3)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)、(4)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)、および(5)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)からなる群から選択されるアフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列と、(v)(1)膜タンパク質、(2)内在性膜タンパク質、(3)膜貫通タンパク質、(4)モノトピック型膜タンパク質、(5)ポリトピック型膜タンパク質、(6)ポンプ・タンパク質、(7)チャネル・タンパク質、(8)受容体キナーゼタンパク質、(9)Gタンパク質共役受容体タンパク質、(10)膜結合酵素、および(11)輸送体タンパク質からなる群から選択される疎水性タンパク質(HP)配列とを含む人工的に改変された疎水性タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列とを含む、疎水性タンパク質の発現に適した単離核酸分子を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、薬理学および医学の分野に関する。より詳細には、本発明は、新規な薬剤および医学的診断の開発に特に関連の深い個別のリガンド分子の同定のため、疎水性タンパク質をスクリーニングすることに関する。
【0031】
本明細書で引用される特許および科学文献は、当業者が利用可能な知識を明らかにする。発行された米国特許、許可された出願、公開された外国出願、および本明細書で引用された参考文献を本願明細書に援用する。これらの出典と本明細書との矛盾は、後者を優先することによって解消される。
【0032】
本発明は、HP標的の特定の生物学的機能とは無関係に両親媒性物質の存在下で実施可能な、アフィニティ選択に基づいたHPスクリーニング法を提供する。
【0033】
本発明の態様は、分子生物学、細胞生物学、および免疫学の分野で一般的な技法および方法を利用する。これらのタイプの方法に有用な実験室用参考文献は、当業者に容易に利用可能である。例えば、Molecular Cloning、A Laboratory Manual 第2版、サムブルック、ジェイ(Sambrook,J.)、フリッシュ、ビー エフ(Fritsch,B.F.)、およびマニアティス、ティー(Maniatis,T.)編、(1989年)、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Labortory Press);Current Protocols In Molecular Biology and Current Protocols in Immunology、ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)[ニューヨーク(New York)所在];ハーロー・アンド・レーン(Harlow&Lane)、Antibodies:A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー・プレス(Cold Spring Harbor Press)[ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)所在]を参照されたい。
【0034】
本明細書における本発明は、疎水性タンパク質の調製および精製に関し、また疎水性タンパク質に特異的に結合するリガンドを同定する方法に関する。本明細書で使用する「疎水性タンパク質」という用語は、両親媒性物質と共に調製された任意の精製タンパク質を指す。あるいはこの用語は、純度1%を超えて精製され、または純度10%を超えて精製され、または純度25%を超えて精製され、または純度50%を超えて精製されたときに、安定性(保存寿命または凍結融解サイクルに耐える能力)を高めるため、あるいは酵素分析、リガンド結合アッセイ、円偏向2色性、平均サイズ、形状、または密度の流体力学的評価、高次構造に特異的な抗体との相互作用を含めた一般的な実験室技法により観察される高次構造の完全性を維持するため、機能的アッセイに両親媒性物質の存在を必要とするかもしくはその存在が利益となる、任意のタンパク質を指してもよい。好ましい実施形態において、本発明の疎水性タンパク質は哺乳動物の疎水性タンパク質である。特に好ましい実施形態では、本発明の疎水性タンパク質はヒトの疎水性タンパク質である。
【0035】
「疎水性タンパク質」という用語は、疎水性タンパク質の同定のために設計されたアルゴリズムの下記の非限定的な例、すなわち(a)DAS−Dense Alignment Surface法を使用した、原核細胞における膜貫通領域の予測(ストックホルム大学)、エム、チェルゾ(M.Cserzo)、イー、ワリン(E.Wallin)、アイ、シモン(I.Simon)、ジー、フォン・ヘイネ(G.von Heijne)、およびエー、エロフソン(A.Elofsson):原核生物の膜タンパク質における膜貫通αへリックスの予測:Dense Alignment Surface法(Prediction of transmembrane alpha-helices in prokaryotic membrane proteins:the Dense Alignment Surface method );Prot.Eng.第10巻、第6号、673〜676ページ、1997年;(b)HMMTOP−タンパク質の膜貫通ヘリックスおよびトポロジーの予測(ハンガリー科学アカデミー)、ジー イー、タスナディ(G.E.Tusnady)およびアイ、シモン(I.Simon)(1998年)Principles Governing Amino Acid Composition of Integral Membrane Proteins:Applications to Topology Prediction.J.Mol.Biol.第283巻、489〜506ページ;(c)隠れマルコフモデル予測、イー エル エル、ゾーンハンマー(ELL Sonnhammer)、ジー、フォン ヘイネ(G.von Heijne)、およびエー、クロー(A.Krogh):A hidden Markov model for predicting transmembrane helices in protein sequences.分子生物学のためのインテリジェント・システムに関する第6回国際会議要旨集(ISMB98)、175〜182ページ、1998年;(D)TMAP−多重配列アライメントに基づく膜貫通検出(カロリンスカ研究所(Karolinska Institute);スウェーデン)参考文献なし:URL http//www.mbb.ki.se/tamp/ を参照のこと;および(e)TopPred 2−膜タンパク質のトポロジー予測(ストックホルム大学)を用いたバイオインフォマティクス支援手段によって同定されたタンパク質も含む。「膜タンパク質構造予測、疎水性の分析と正電荷の分布の偏り(Membrane Protein Structure Prediction,Hydrophobicity Analysis and the Positive-inside Rule)」、ガンナー フォン ヘイネ(Gunnar von Heijne)、J.Mol.Biol.(1992年)第225巻、487〜494ページ、ならびにエム、チェルゾ(M.Cserzo)、イー、ワリン(E.Wallin)、アイ、シモン(I.Simon)、ジー、フォン ヘイネ(G.von Heijne)、およびエー、エロフソン(A.Elofsson):原核生物の膜タンパク質における膜貫通αへリックスの予測:Dense Alignment Surface法(Prediction of transmembrane alpha-helices in prokaryotic membrane proteins):the Dense Alignment Surface method);Prot.Eng.第10巻、第6号、673〜676ページ、1997年。
【0036】
これらの方法の比較のため、Protein Engineering誌、第10巻、第6号(1997年)に記載されている「原核生物の膜タンパク質における膜貫通αへリックスの予測:Dense Alignment Surface法(Prediction of transmembrane alpha-helices in prokaryotic membrane proteins:the dense alignment surface method )」、ミクロス チェルゾ(Miklos Cserzo)、エリック ワリン(Erik Wallin)、イスタヴァン シモン(Istvan Simon)、ガンナー フォン ヘイネ(Gunnar von Heijne)、およびアーン・エロフソン(Arne Elofsson)を参照されたい。
【0037】
単なる典型的な例として、疎水性タンパク質(本明細書で使用される用語として)の非限定的な例を表1に示す。これらのタンパク質は、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のローカス名で表示されるように、GenBankにリスト化されている。
【0038】
【表1】
【表1A】
【表1B】
当業者には理解されるように、疎水性タンパク質のリガンドを同定する方法は、小分子を結合するリガンドのスクリーニング方法と同義である。さらに、本明細書で使用するように、「スクリーニング」という用語は、例えば疎水性タンパク質などのポリペプチドと小分子との相互作用を検出するのに使用される手順を指し、Kd<200μMでタンパク質に結合するリガンドと、タンパク質に結合しないかまたはKd>200μMでタンパク質に非常に弱く結合するにすぎない大きなリガンド集合とを区別するのに有用である。
【0039】
本発明は、疎水性タンパク質リガンドの同定において、質量スペクトル分析(質量分析)法(MS)を利用する。MS技法は、疎水性タンパク質を含有するサンプルを分析するためにはまれにしか行われないが、その理由はこれらのサンプルが界面活性剤の両親媒性物質を含有するからである。界面活性剤は、検体のイオン形成、すなわちMSにとって極めて重要な現象を抑制し、MSを著しく妨げるので、疎水性タンパク質のMS分析がうまく行われたという報告はほとんどない。それにもかかわらず、いくつかの研究室は、MS分析の前に界面活性剤を除去する方法を明らかにすることにより精製済みの疎水性タンパク質のMS分析を行うことを試みてきた。これらの研究室の全てが、タンパク質サンプルを検出器にかけるためにマトリックス支援レーザ脱離イオン化法(MALDI)を使用する。
【0040】
しかし、疎水性タンパク質のサンプルを調製する既知の方法全てが、MS分析の前にポリペプチドから界面活性剤を抽出するために有機溶媒および/または酸を使用する。そのような処理によりポリペプチドが変性し、変性によりリガンドが検体の疎水性タンパク質に結合することができなくなる。疎水性タンパク質とリガンドとの相互作用に関する研究にMSを使用することに興味を持っている研究者にとって、変性を生じる調製法は適切ではない。さらに、MALDI−MSによる分析のため膜タンパク質を調製することは、本発明によって提供される方法に比べて労力を要する仕事である。
【0041】
これとは対照的に、ある好ましい実施形態では、本発明は、膜タンパク質サンプルがSEC分離からMS検出器に移るときにそのサンプルを流体として扱うことが可能であるエレクトロスプレイイオン化(ESI)MSを使用する。したがって、MS分析は、サンプルがRPCカラムに送られた後30秒未満で進行する。
【0042】
質量スペクトル分析の前にタンパク質サンプルから界面活性剤を除去しなければならない理由は周知であり、例えば下記の参考文献:(a)BioTechniques(1997年)第22巻:244〜250ページ;ジェイ ピーシー ヴィッサーズ(J.PC.Vissers)、ジェイ ピー シャーベット(J.−P、 Chervet)、ケイ サンボーン(K.Sanborn)、およびジェイ ピー ザルツマン(J.−P Salzmann);(b)Protein Science(1994年)第3巻:1975〜1983ページ;アール アール オゴルザレク ルー(R.R.Ogorzalek Loo)、エヌ デールズ(N.Dales)およびピー シー アンドリュース(P.C.Andrews);(c)J.Mass.Spectrom.(1995年)第30巻:1462〜8ページ、ロシンカ ビー(Rosinke B)、ストルパット ケイら(Strupat,K.,et al.);Methods Enzymol.(1996年)第270巻:519〜51ページ;ベアビス アールシー(Beavis,RC)およびチェイト ビーティー(Chait,BT);およびProc.Natl.Acad.Sci.USA(1990年)第87巻:6873〜7ページ;ベアビス
アールシー(Beavis,RC)およびチェイト ビーティー(Chait,BT);ファーンレイ アイ エムら(Fearnley,I.M.et al.)、Biochem.Soc.Trans.、(1996年)第24巻:12〜917ページ、に示されている。
【0043】
第1の態様では、本発明は、疎水性タンパク質のリガンドを同定する方法であって、(a)疎水性標的タンパク質とリガンド分子との少なくとも1個の複合体の形成が促進されるように、両親媒性物質に結合された疎水性標的タンパク質を多数の分子に曝すことによるアフィニティ選択により、リガンド分子を選択する工程と、(b)この複合体を非結合分子から分離する工程と、(c)リガンド分子を同定する工程とからなる方法を提供する。
【0044】
本発明のアフィニティ・スクリーニング法は、機能的選択法と区別される。機能的選択法は、ある特異的なタンパク質−リガンド相互作用またはタンパク質−タンパク質相互作用を有意であると認める基準に基づいてリガンドを選択することを含み、そのようなリガンド選択は、タンパク質に起因し得る作用(例えば酵素の化学触媒作用)、またはタンパク質とその他のある分子との間の何らかの相互作用(例えば、非酵素の場合は、タンパク質と既知の小分子リガンドとの相互作用)を確認することのいずれかに依存する。手短に言えば、これらのスクリーニング法は一般に、酵素的アッセイまたは生体機能的アッセイあるいはリガンド置換アッセイに基づくものである。
【0045】
本発明の方法の様々な実施形態は、新規な薬物リードを発見するために自動リガンド同定システム(ALIS)を利用することが可能である。ALISは、化合物のその標的タンパク質に対する親和性に基づいてリガンドを選択し、質量スペクトル分析によってリガンドを同定する(国際特許出願国際公開番号第99/35109号を参照のこと)。本明細書で述べる発明では、両親媒性物質と複合したHPにALISを利用する。
【0046】
本明細書で使用する「アフィニティ選択」という用語は、選択されたタンパク質標的に対するある分子の親和性に基づいたリガンド選択を意味し、そのようなリガンド選択は、タンパク質がその小分子に結合すること以外、問題のタンパク質の機能的活性には左右されない。
【0047】
本明細書で使用する「両親媒性物質」という用語は、疎水性ポリペプチドの水溶性を高める界面活性剤、リン脂質、または表面活性物質としての性質を通常有する任意の分子、特に、水溶液中で会合コロイドとして振る舞うことが知られている任意の分子を指すのに使用され、そのような両親媒性物質の非限定的な例には、リン脂質およびその他の極性脂質(例えばホスファチジルコリン、リゾリン脂質、コレステロール、レシチン、セラミドなど);両親媒性高分子ポリマー(例えばクリストフ トリベット(Christophe Tribet)およびジーン−ルク ポポット(Jean−Luc Popot)の研究(トリベット シーら(Tribet,C.,et al.)J.L.Natl.Acad.Sci.USA(1996年)第93巻:15047〜50ページ));アルキルサッカライド、アルキルチオグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、コール酸塩およびCHAPSシリーズ、FOS−CHOLINE(登録商標)シリーズ、CYMAL(登録商標)シリーズもしくはCYGLU(登録商標)シリーズなどの胆汁酸誘導体、グルカミド、ならびにアルキルポリオキシエチレンなどを含む表面活物物質;または両親媒性構造をとることが知られているポリペプチド(例えばシー イー シャフマイスター(C.E.Schafmeister)およびアール エム ストラウド(R.M.Stroud)の研究(シャフマイスター、シー イーら(Schafmeister,C.E.et al.)、RM Science(1993年)第262巻:734〜8ページ))が含まれるであろう。
【0048】
本明細書で使用する「多数の分子」という用語は、疎水性標的タンパク質に対する特異的結合性に関して試験される複数の分子を指す。「分子」という用語は、サイズが150〜5000原子質量単位(amu)の範囲内にある任意の化合物を意味する。そのような化合物は、当技術分野で知られている任意の手段によって生成することが可能である。多数の分子を生成する特に好ましい方法は、コンビナトリアル・ケミストリーを利用する。「コンビナトリアル・ライブラリ」は、構造上関連のある、もしくは関連のない1組の化学的もしくは生化学的構築単位を、所与の化合物の長さに対してあらゆる可能な方法で結合することによって形成される、複数の分子または化合物を指す。あるいはこの用語は、特定の1組の化学的構築単位を選択的に結合することによって形成される、複数の化学的または生化学的化合物を指す。例えば、20種のアミノ酸をランダムに結合して6量体ペプチドにすると、6400万種以上の化合物を生成することになる。「コンビナトリアル・ライブラリ」の手法によれば、可能な限り多くの異なる化合物が作製され、次いで、問題の標的分子、例えば疎水性タンパク質に対する結合活性に関してそれらをスクリーニングすることにより候補化合物が選択される。
【0049】
現在、コンビナトリアル・ライブラリを構築するための、当技術分野で周知の数多くの方法がある。非限定的な例として、下記の参考文献は、コンビナトリアル・ライブラリを構築するための方法を提供する:いくつか例を挙げると、米国特許第6,147,344号;(国際公開第99/35109号;第6,114,309号;第6,025,371号;第6,017,768号;第5,962,337号;第5,919、955号;および第5,856,496号がある。本明細書で使用する「多数の分子」という用語は、例えば体液、組織または細胞から得られた複数の天然分子または天然化合物を指してもよい。これらのサンプルを、リガンド・スクリーニング・プロトコルで使用する前にインビトロで、例えばタンパク質分解により消化するなどして処理してもよい。
【0050】
第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質を多数の分子に曝すことが、均一溶液相の条件下で行われる。第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質を多数の分子に曝すことが、不均一溶液相の条件下で行われる。第1の態様のある実施形態では、リガンド分子の選択は多次元クロマトグラフィを使用して実施される。
【0051】
本明細書で使用する「均一溶液相」という用語は、起こりうるタンパク質−リガンド相互作用を促進する目的でタンパク質と1つまたは複数のリガンドとを組み合わせたタンパク質調製物を意味するが;そのような調製物は、タンパク質もリガンドも支持要素に結合しないよう−40〜60℃の温度範囲においてはゾルの状態であり;これらの調製物は、カットオフ・サイズが5.0μMの半透膜を通過するか、もしくは沈降係数が500スベドベリ未満のように挙動するかのいずれか、またはその両方であり;そのような調製物の例には、両親媒性物質に可溶化されたタンパク質や、プロテオリポソームに取り込まれたタンパク質、細胞由来のウイルス様粒子に取り込まれたタンパク質などと、リガンドとの組合せが含まれると考えられる。
【0052】
本明細書で使用する「不均一溶液相」という用語は、起こりうるタンパク質−リガンド相互作用を促進する目的でタンパク質と1つまたは複数のリガンドとを組み合わせたタンパク質調製物を意味するが;そのような調製物は、タンパク質またはリガンドのいずれかが支持要素に結合するよう−40〜60℃の温度範囲において混合物の状態であり;これらの調製物は、カットオフ・サイズが5.0μMの半透膜を通過することができないか、もしくはこれらが500スベドベリを超える沈降係数を有するかのように挙動するかのいずれか、またはその両方であり;そのような調製物の例には、タンパク質が共有結合もしくは非共有結合または両親媒性物質の自己会合に依存する結合のいずれかを介してビーズ/固定要素に付着している、ビーズ/固定要素の表面に存在するタンパク質とリガンドの組合せ、または固定相に固定されたリガンドとタンパク質との組合せが含まれると考えられる。
【0053】
本明細書で使用される「多次元クロマトグラフィ」という用語は、連携する複数のクロマトグラフ法を含むサンプル処理手順を意味する。クロマトグラフ法の代表的なタイプには、(1)固相クロマトグラフィ媒体:小粒子(<5μM)、固体多孔質キャスティング、フィルタ、または半透膜を含めた様々な材料のいずれかであって、一般に樹脂、ゲル、固定化人工膜、固相要素もしくはその他の名称で呼ばれるものであり、かつクロマトグラフィまたは電気泳動による分離または分画化のように、その表面上またはその表面を通って可溶化検体が通過し、またはその表面と可溶化検体とが相互に作用する固定表面を提供する目的で使用されるものと、(2)液相クロマトグラフィ媒体:固相クロマトグラフィ媒体と組み合わせて使用する場合、電気泳動による分離または分画化における使用に適した溶液または流体とが含まれる。
【0054】
第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質は、膜タンパク質、内在性膜タンパク質、膜貫通タンパク質、モノトピック型膜タンパク質、ポリトピック型膜タンパク質、ポンプ・タンパク質、チャネル・タンパク質、受容体キナーゼタンパク質、Gタンパク質共役受容体タンパク質、膜結合酵素、および輸送体タンパク質からなる群から選択される。
【0055】
第1の態様のある実施形態では、多数の分子はマスコードされた分子ライブラリである。第1の態様のある実施形態では、多数の分子はマスコードされていない分子ライブラリである。
【0056】
本明細書で使用する「マスコード・ライブラリ」という用語は、マスコードされたコンビナトリアル・ライブラリを指す。マスコード・コンビナトリアル・ライブラリの化合物は、一般式がX(Y)nであって、Xは骨格であり、各Yは周辺部分であり、nは1より大きい整数で典型的には2から約6までである。本明細書で使用する「骨格」という用語は、2つ以上の周辺部分が共有結合を介して結合している分子の一部分を指す。骨格は、マスコードされた化合物群の各メンバに共通な、分子の一部分である。本明細書で使用する「周辺部分」という用語は、骨格に結合した分子の一部分を指す。マスコードされた化合物群の各メンバは骨格に結合したn個の周辺部分の組合せを含むことになり、この一連の化合物がマスコード・コンビナトリアル・ライブラリを形成する。マスコード・ライブラリについては、本願明細書に援用される特許出願国際公開番号第9935109A1号にさらに詳細に述べられている。
【0057】
本明細書で使用する「マスコードされていない分子のライブラリ」という文言は、マスコード・コンビナトリアル・プロセスによって作製されたのではない任意の複数の分子または化合物を意味する。したがってこの用語には、コンビナトリアル・ライブラリを作製するその他の方法のいずれか、および全てが含まれる。さらにこの用語は、標的タンパク質の構造に基づいて薬物を設計しようとする「構造に基づく薬物設計」の方法によって構築された化合物群と、体液、組織、または細胞から得られた天然の化合物ライブラリも含む。
【0058】
第1の態様のある実施形態では、両親媒性物質が、(a)極性脂質と、(b)両親媒性高分子ポリマーと、(c)表面活性物質または界面活性剤と、(d)両親媒性ポリペプチドとからなる群から選択される。第1の態様のある実施形態では、リガンドの同定を質量スペクトル分析によって行う。第1の態様のある実施形態では、リガンド分子のデコンボリューションを質量スペクトル分析によって行う。第1の態様のある実施形態では、非結合分子からの複合体の分離を固相クロマトグラフィ媒体により行う。
【0059】
本明細書で使用する「リガンド(の)同定」という用語は、スクリーニングで検出された小分子の構造組成を正確に特定し得る任意のプロセスを意味する。
【0060】
第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質は、(a)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列と、(b)アフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列と、(c)疎水性タンパク質(HP)配列とからなる。この態様のある実施形態では、疎水性タンパク質配列が、(a)膜タンパク質と、(b)内在性膜タンパク質と、(c)膜貫通タンパク質と、(d)モノトピック型膜タンパク質と、(e)ポリトピック型膜タンパク質と、(f)ポンプ・タンパク質と、(g)チャネル・タンパク質と、(h)受容体キナーゼタンパク質と、(i)Gタンパク質共役受容体タンパク質と、(j)膜結合酵素と、(k)輸送体タンパク質とからなる群から選択される。この態様のある実施形態では、タグ配列が、(a)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)と、(b)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)と、(c)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)と、(d)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)と、(e)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)と、(f)ロドプシン・タグ(NH2GTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEPWQFSM−COOH)(配列番号6)とからなる群から選択されるエピトープ・タグ配列を含む。
【0061】
第1の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質が、(a)タグ1−タグ2−HPと、(b)タグ1−HP−タグ2と、(c)HP−タグ1−タグ2とからなる群から選択された順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで並ぶ配列を含む。この態様のある実施形態では、本発明は、疎水性標的タンパク質が、(a)Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号6)と、(b)Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号7)と、(c)ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号9)と、(d)Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号10)と、(e)ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号11)とからなる群から選択される方法を提供する。この態様のある実施形態では、本発明は、疎水性標的タンパク質がアミノ末端に異種シグナル配列(SS)をさらに含む方法を提供する。この態様のある実施形態では、異種シグナル配列が、(a)メリチン・シグナル配列NH2−KFLVNVALVFMVVYISYIYA−COOH(配列番号12)と、(b)GPシグナル配列NH2−VRTAVLILLLVRFSEP−COOH(配列番号13)と、(c)ヘマグルチニン・シグナル配列NH2−KTIIALSYIFCLVFA−COOH(配列番号14)と、(d)ロドプシン・タグ1シグナル配列NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号15)と、(e)ロドプシン・タグID4シグナル配列NH2−GKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号16)とからなる群から選択される。この態様のある実施形態では、タグ配列が、ヘキサヒスチジン配列(配列番号17)とデカヒスチジン配列(配列番号18)とをさらに含む。さらにこの態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質が、(a)GP67 SS−Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、(b)メリチンSS−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号20)と、(c)ヘマグルチニンSS−ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号21)と、(d)メリチンSS−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号22)と、(e)ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号23)とからなる群から選択される。
【0062】
第2の態様では、本発明は、(a)疎水性タンパク質をショ糖勾配超遠心法によって精製する工程と、(b)疎水性タンパク質を抗体アフィニティ精製によって精製する工程と、(c)疎水性タンパク質を固定化金属アフィニティ・クロマトグラフィによって精製する工程とからなる疎水性タンパク質を単離する方法を提供する。
【0063】
第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質が、(a)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列と、(b)アフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列と、(c)疎水性タンパク質(HP)配列とからなる。この態様のある実施形態では、疎水性タンパク質配列が、(a)膜タンパク質と、(b)内在性膜タンパク質と、(c)膜貫通タンパク質と、(d)モノトピック型膜タンパク質と、(e)ポリトピック型膜タンパク質と、(f)ポンプ・タンパク質と、(g)チャネル・タンパク質と、(h)受容体キナーゼタンパク質と、(i)Gタンパク質共役受容体タンパク質と、(j)膜結合酵素と、(k)輸送体タンパク質とからなる群から選択される。第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質のタグ配列が、(a)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)と、(b)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)と、(c)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)と、(d)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)と、(e)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)と、(f)ロドプシン・タグ(NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEPWQFSM−COOH)(配列番号6)とからなる群から選択されるエピトープ・タグ配列を含む。第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質が、(a)タグ1−タグ2−HPと、(b)タグ1−HP−タグ2と、(c)HP−タグ1−タグ2とからなる群から選択された順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで並ぶ配列を含む。
【0064】
第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質が、(a)Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号7)と、(b)Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号8)と、(c)ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号9)と、(d)Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号10)と、(e)ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号11)とからなる群から選択される。この態様の実施形態では、疎水性タンパク質が、アミノ末端に異種シグナル配列(SS)をさらに含む。この態様のある実施形態では、異種シグナル配列が、(a)メリチン・シグナル配列NH2−KFLVNVALVFMVVYISYIYA−COOH(配列番号12)と、(b)GPシグナル配列NH2−VRTAVLILLLVRFSEP−COOH(配列番号13)と、(c)ヘマグルチニン・シグナル配列NH2−KTIIALSYIFCLVFA−COOH(配列番号14)と、(d)ロドプシン・タグ1シグナル配列NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号15)と、(e)ロドプシン・タグID4シグナル配列NH2−GKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号16)とからなる群から選択される。第2の態様のある実施形態では、疎水性タンパク質のタグ配列が、ヘキサヒスチジン配列(配列番号17)とデカヒスチジン配列(配列番号18)とをさらに含む。
【0065】
第2の態様のある実施形態では、疎水性標的タンパク質が、(a)GP67 SS−Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、(b)メリチンSS−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号20)と、(c)ヘマグルチニンSS−ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号21)と、(d)メリチンSS−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号22)と、(e)ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号23)とからなる群から選択される。
【0066】
第3の態様では、本発明は、(a)真核細胞におけるタンパク質発現用のベクター・ポリヌクレオチド配列と、(b)下記の要素、すなわち(i)N末端メチオニン残基、(ii)異種シグナル配列(SS)、(iii)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列、(iv)アフィニティ精製に有用な少なくとも2つのタグ配列、および(v)疎水性タンパク質(HP)配列からなる人工的に改変された疎水性タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列とからなる、疎水性タンパク質の発現に適した単離核酸分子を提供する。
【0067】
「真核細胞におけるタンパク質発現用のベクター・ポリヌクレオチド配列」という文言は、真核細胞内での複製を可能にする複製起点と、選択可能なマーカー、例えば抗生物質耐性マーカーと、構造遺伝子の転写を促進するための、ウイルス、原核細胞、もしくは真核細胞由来のプロモーター配列要素とからなる任意のポリヌクレオチド配列を意味する。ベクター・ポリヌクレオチド配列の起源は、ウイルス、原核細胞、真核細胞、またはこれらを組み合わせたものである。当技術分野で理解されるように、ベクター配列は真核細胞での発現のために設計されているが、任意選択で原核細胞の複製起点を含んでもよい。適切なベクター・ポリヌクレオチド配列の非限定的な例には、下記のもの、すなわちpVL1392(ファーミンゲン(Pharmingen)、[米国カリフォルニア州サンディエゴ所在])やpBAC−1(登録商標)(ノバゲン(Novagen)、[米国ウィスコンシン州マディソン所在])などのバキュロウイルス・ベクターと、pcDNA3.1(インビトロゲン(Invitrogen)、[米国カリフォルニア州サンディエゴ])やpTriEx−1(登録商標)(ノバゲン(Novagen)[米国ウィスコンシン州マディソン所在])などの哺乳動物の発現ベクターが含まれる。
【0068】
適切なDNA配列は、様々な手順によってベクターに挿入し得る。一般にDNA配列は、当技術分野で知られている手順によって、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。このような手順およびその他の手順は、当業者の技術の範囲内とみなされる。
【0069】
ある実施形態では、本発明は、上述の構築物を含有する宿主細胞に関する。宿主細胞は、哺乳動物細胞などの高等真核細胞でも酵母細胞などの下等真核細胞でもよく、または宿主細胞は細菌細胞などの原核細胞でもよい。宿主細胞への上記構築物の導入は、形質導入または形質転換またはトランスフェクションまたはエレクトロポレーションなどの(ただしこれらに限定されない)当技術分野で知られている任意の手段によって実施可能である。
【0070】
適切な異種シグナル配列(SS)の例には、ミツバチのメリチンSS(NH2−MKFLVNVALVFMVVYISYIYA−COOH)(配列番号12)(テッシヤー、ディー シー(Tessier D.C.)、(1991年)Gene、第98巻:177ページ)(インビトロゲンドットコム(Invitrogen.com)のpMelBac製品も参照のこと)、バキュロウイルスgp67 SS(NH2−MVRTAVLILLLVRFSEP−COOH)(配列番号13)(クレッチュマー、ティーら(Kretzschmar T.et al.)、(1996年)J.Immunol Methods、第195巻:93〜101)、インフルエンザA型ウイルス・ヘマグルチニンSS(NH2−MKTIIALSYIFCLVFA−COOH)(配列番号14)(ヴェルホーエン、エム(Verhoeyen,M.)、(1980年)Nature、第286巻:771〜776ページ)、ロドプシン・タグ1 SS(NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH)(配列番号15)、またはロドプシン・タグID4 SS(NH2−GKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号16)が含まれる。一般に、そのような適切なSSの長さは75aaよりも短くなる。これらのシグナル配列は、動物細胞で発現したときにタンパク質から切断されても切断されなくてもよい。例えばロドプシン・タグ1は、細胞により原形質膜に提示された場合はタンパク質から切断されないが、ロドプシン・タグID4シグナル配列は切り離される。
【0071】
適切なエピトープ・アフィニティ・タグの非限定的な例には、FLAG(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号29)、”EE”(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号30)、ヘマグルチニン(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号31)、myc(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号32)、または単純ヘルペスウイルス・タグ(”HSV”;NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号33)が含まれる。
【0072】
疎水性タンパク質に関するこれらの設計要素は、下記の順序、すなわち(1)SS−タグ1−タグ2−HP;(2)SS−タグ1−HP−タグ2;(3)SS−HP−タグ1−タグ2;のうちの1つの順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで配列される。
【0073】
この態様のある実施形態では、N末端メチオニン配列と異種シグナル配列が、(a)MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号24)と、(b)MVRTAVLILLLVRFSEP(配列番号25)と、(c)MKTIIALSYIFCLVFA(配列番号26)と、(d)MMNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号27)と、(e)MGKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号28)とからなる群から選択される。
【0074】
この態様のある実施形態では、タグ配列が、(a)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)と、(b)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)と、(c)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)と、(d)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)と、(e)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)と、(f)ロドプシン・タグ(NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEPWQFSM−COOH)(配列番号6)とからなる群から選択されるエピトープ・タグ配列を含む。
【0075】
第3の態様のある実施形態では、人工的に改変された疎水性タンパク質の要素が、(a)SS−タグ1−タグ2−HPと、(b)SS−タグ1−HP−タグ2と、(c)SS−HP−タグ1−タグ2とからなる群から選択された順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで配列される。この態様の実施形態では、人工的に改変された疎水性タンパク質が、(a)GP67−Myc−EE−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、(b)メリチン−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EE(配列番号20)と、(c)ヘマグルチニンSS−ヒトニューロキニン3受容体−HSV−Myc(配列番号21)とからなる群から選択される。第3の態様の別の実施形態では、タグ配列が、ヘキサヒスチジン配列(配列番号17)とデカヒスチジン配列(配列番号18)とをさらに含む。第3の態様のある実施形態では、人工的に改変された疎水性タンパク質が、(a)GP67−Myc−EE−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、(b)メリチン−Flag Tag−ヒトm1 mAChR−EE(配列番号20)と、(c)ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSV−8His(配列番号21)とからなる群から選択される。
【0076】
単離ポリヌクレオチドのHP配列は、両親媒性物質の存在下で単離されるタンパク質をコードする任意のポリヌクレオチドでよい。あるいはこの用語は、純度1%を超えて精製され、または純度10%を超えて精製され、または純度25%を超えて精製され、または純度50−99%を超えて精製されたときに、安定性(保存寿命または凍結融解サイクルに耐える能力)を高めるため、あるいはリガンド結合アッセイ、円偏向2色性、平均サイズ、形状、または密度の流体力学的評価、高次構造に特異的な抗体との相互作用を含めた一般的な実験室技法により観察される高次構造の完全性を維持するため、機能的アッセイに両親媒性物質の存在を必要とするかもしくはその存在が利益となる、任意のタンパク質を指してもよい。好ましい実施形態では、本発明の疎水性タンパク質は哺乳動物の疎水性タンパク質である。特に好ましい実施形態では、本発明の疎水性タンパク質はヒト疎水性タンパク質である。
【0077】
単離ポリヌクレオチドのHP配列は、疎水性タンパク質の同定のために設計されたアルゴリズムに関する下記の非限定的な例、すなわち(a)DAS−Dense Alignment Surface法を使用した原核細胞における膜貫通領域の予測(ストックホルム大学)、チェルゾ、エムら(Cserzo,M.et al.)、1997年、Prot.Eng.第10巻:673〜676ページ;(b)HMMTOP−タンパク質の膜貫通ヘリックスおよびトポロジーの予測(ハンガリー科学アカデミー)、ジー イー、タスナディ(G.E.Tusnady)およびアイ シモン(I.Simon)、1998年、J.Mol.Biol.第283巻、489〜506ページ;(c)隠れマルコフモデル予測、ゾーンハンマー、イー エル エルら(Sonnhammer,E.L.L.et al.)、1998年、タンパク質配列における膜貫通ヘリックスを予測するための隠れマルコフモデル(A hidden Markov model for predicting transmembrane helices in protein sequences )、分子生物学のためのインテリジェント・システムに関する第6回国際会議要旨集(ISMB98)、175〜182ページ;(D)TMAP−多重配列アライメントに基づく膜貫通検出(カロリンスカ研究所(Karolinska Institute);スウェーデン)(参考文献なし:URL http//www.mbb.ki.se/tamp/ を参照のこと)および(e)TopPred2−膜タンパク質のトポロジー予測(ストックホルム大学)、フォン ヘイネ、ジー(von Heijne,G.)(1992年)J.Mol.Biol.第225巻、487〜494ページおよびチェルゾ、エムら(Cserzo,M.et al.)、1997年、Prot.Eng.第10巻、673〜676ページ;を用いたバイオインフォマティクス支援手段によって同定されたタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含みうる。
【0078】
本発明のHPポリヌクレオチドによってコードし得るタンパク質の代表的かつ非限定的な例を、本明細書の表1に示す。
【0079】
適切なGenBank受入番号により上記に特定された全ての核酸配列および該核酸配列によってコードされる各アミノ酸配列を、引用により本願明細書に援用する。
【0080】
第4の態様では、本発明は、(a)(i)膜タンパク質、(ii)内在性膜タンパク質、(iii)膜貫通タンパク質、(iv)モノトピック型膜タンパク質、(v)ポリトピック型膜タンパク質、(vii)ポンプ・タンパク質、(viii)チャネル・タンパク質、(ix)受容体キナーゼタンパク質、(x)Gタンパク質共役受容体タンパク質、(xii)膜結合酵素、および(xiii)輸送体タンパク質からなる群から疎水性標的タンパク質を選択する工程と、疎水性タンパク質に、(i)極性脂質、(ii)両親媒性高分子ポリマー、(iii)表面活性物質または界面活性剤、および(iv)両親媒性ポリペプチドからなる群から選択される両親媒性物質が結合していることと、(b)疎水性標的タンパク質とリガンド分子との少なくとも1つの複合体の形成が促進されるように、均一または不均一な溶液相の条件下、両親媒性物質が結合している疎水性標的タンパク質をマスコード・ライブラリ由来の多数の分子に曝すことによるアフィニティ選択により、多次元クロマトグラフィを使用してリガンド分子を選択する工程と、(c)非結合分子から複合体を分離する工程と、(d)質量スペクトル分析によってリガンド分子を同定する工程とからなる、疎水性タンパク質のリガンドを同定する方法を提供する。
【0081】
第5の態様では、本発明は、(a)(i)膜タンパク質、(ii)内在性膜タンパク質、(iii)膜貫通タンパク質、(iv)モノトピック型膜タンパク質、(v)ポリトピック型膜タンパク質、(vii)ポンプ・タンパク質、(viii)チャネル・タンパク質、(ix)受容体キナーゼタンパク質、(x)Gタンパク質共役受容体タンパク質、(xii)膜結合酵素、および(xiii)輸送体タンパク質からなる群から疎水性標的タンパク質を選択する工程と、疎水性タンパク質に、(i)極性脂質、(ii)両親媒性高分子ポリマー、(iii)表面活性物質または界面活性剤、および(iv)両親媒性ポリペプチドからなる群から選択される両親媒性物質が結合していることと、(b)疎水性標的タンパク質とリガンド分子との少なくとも1つの複合体の形成が促進されるように、均一または不均一な溶液相の条件下、両親媒性物質が結合している疎水性標的タンパク質をマスコードされていないライブラリ由来の多数の分子に曝すことによるアフィニティ選択により、多次元クロマトグラフィを使用してリガンド分子を選択する工程と、(c)非結合分子から複合体を分離する工程と、(d)質量スペクトル分析によってリガンド分子を同定する工程とからなる、疎水性タンパク質に対するリガンドを同定する方法を提供する。
【0082】
第6の態様では、本発明は、(a)(i)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列、(ii)(A)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号29)、(B)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号30)、(C)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号31)、(D)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号32)、および(E)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号33)からなる群から選択されるアフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列、(iii)(A)膜タンパク質、(B)内在性膜タンパク質、(C)膜貫通タンパク質、(D)モノトピック型膜タンパク質、(E)ポリトピック型膜タンパク質、(F)ポンプ・タンパク質、(G)チャネル・タンパク質、(H)受容体キナーゼタンパク質、(I)Gタンパク質共役受容体タンパク質、(J)膜結合酵素、および(K)輸送体タンパク質からなる群から選択される疎水性タンパク質(HP)配列からなる疎水性タンパク質を選択する工程と、(b)疎水性タンパク質をショ糖勾配超遠心法によって精製する工程と、(c)疎水性タンパク質を抗体アフィニティ精製によって精製する工程と、(d)疎水性タンパク質を固定化金属アフィニティ・クロマトグラフィによって精製する工程とからなる、疎水性タンパク質を単離する方法を提供する。
【0083】
第7の態様では、本発明は、(a)真核細胞におけるタンパク質発現用のベクター・ポリヌクレオチド配列と、(b)下記の要素、すなわち(i)N末端メチオニン残基と、(ii)N末端メチオニン配列および異種シグナル配列が、(1)MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号24)、(2)MVRTAVLILLLVRFSEP(配列番号25)、(3)MKTIIALSYIFCLVFA(配列番号26)、(4)MMNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号27)、および(5)MGKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号28)からなる群から選択される異種シグナル配列(SS)と、(iii)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列と、(iv)(1)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)、(2)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)、(3)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)、(4)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)、および(5)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)からなる群から選択されるアフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列と、(v)(1)膜タンパク質、(2)内在性膜タンパク質、(3)膜貫通タンパク質、(4)モノトピック型膜タンパク質、(5)ポリトピック型膜タンパク質、(6)ポンプ・タンパク質、(7)チャネル・タンパク質、(8)受容体キナーゼタンパク質、(9)Gタンパク質共役受容体タンパク質、(10)膜結合酵素、および(11)輸送体タンパク質からなる群から選択される疎水性タンパク質(HP)配列とを含む人工的に改変された疎水性タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列とからなる、疎水性タンパク質の発現に適した単離核酸分子を提供する。
【0084】
以下の実施例は、本発明の、ある好ましい実施形態をさらに例示するものであり、本発明の範囲をどのようにも限定するものではない。
(実施例1)
COX−1のアフィニティ選択およびALISによる同定
ケイマン・ケミカル社(Cayman Chemical Company)[米国ミシガン州アナーバー(Ann Arbor)所在]の精製ヒツジCOX−1(SDS−PAGEで>95%)を、界面活性剤を交換することによってスクリーニング用に調製した。納品時にタンパク質に含まれていた界面活性剤、Tween−20を除去するために、イオン交換クロマトグラフィを行った。80mM Tris−8.0、0.09% Tween−20、270μM DDC、および240μM ドデシル−β−D−マルトシド(DβM)の緩衝液中に0.27mg/mLのCOX−1溶液を約6mL、すなわち理論上の収量が1.8mgとなるものを、80mM tris、pH8.0、240μM DβM(TBS−AGD)の緩衝液を含んだPoros(登録商標)HQカラムにアプライした。このカラムを、流量5mL/分で10分間、0〜0.5M NaClの直線勾配で展開した。タンパク質溶出画分を、280nmの吸光度をモニタすることによって同定した。
【0085】
この処理の後、タンパク質含有試料18mLを合わせ、製造業者の使用説明書に従って(ミリポアインコーポレイティッド社(Millipore,Inc.)[米国マサチューセッツ州ベッドフォード(Bedford)所在])Amicon(登録商標)−30 Centricon(登録商標)で濃縮した。その結果、濃度約1.8mg/mlのCOX−1が得られ、これをスクリーニング用に1.3mg/mL(20μM COX−1)に希釈した。最終的なタンパク質調製物中の緩衝液は、2.4mM DβM、80mM tris−8.0、約50mM NaClからなると推定された。このCOX−1溶液に、ケイマン・ケミカル社(Cayman Chemical Company)が用いる処理手順に従って20μMヘミンと300μM ジエチルジチオカルバメート(DDC)を即座に添加した。
【0086】
次いで、COX−1タンパク質調製物を添付のサンプル調製標準操作手順書(SOP、表2)に従ってサンプル調製に使用した。
【0087】
【表2】
【表2A】
このサンプル調製SOPにより、COX−1と、約2500種の薬物様小分子からなり、各分子の濃度が1μMであるマスコード・コンビナトリアル・ライブラリとを組み合わせる結合アッセイが実施される。サンプルを、4℃で30分間インキュベートした。全体積が12μLなので、サンプルは240pmolのタンパク質と12pmolの各ライブラリ成分とを含有していた。対照試験として、無関係の膜タンパク質、ジアシルグリセロールキナーゼ(カルビオケムインコーポレイティッド社(Calbiochem,Inc.)[米国カリフォルニア州サンディエゴ所在])も同じ緩衝液で20μMに調製し、同じ2500種のライブラリと共にインキュベートし、同様に処理した。
【0088】
次いでこれらの混合物を個々にALIS分析に供した。適度に高い親和性の任意のリガンドが、COX画分の収集時にCOXに結合していれば、質量スペクトル分析によってその質量が同定される。マスコードであるおかげで、構築単位とコア分子との厳密な組合せを識別することが可能である(米国特許第6,147,344号参照)。同じ化合物がジアシルグリセロールキナーゼの対照実験で生じなければ、その化合物はCOX−1に特異的なリガンドとして同定してよい。
【0089】
次いで混合物を個々に、下記のように修正を加えたALIS分析に供した。流量2mL/分の溶出緩衝液TBS(80mM tris、pH8.0、150mM NaCl、2.5%DMSO)を用いて、4.6mm×50mm×5μmのSECカラムで0℃でサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を実施することにより、界面活性剤に可溶化された大きなタンパク質を薬物様小分子から分離した。タンパク質を含有する溶出SEC画分を、230nmでモニタするUV−VIS検出によって特定し、サンプルループを経て低流量(100μL/分)の逆相クロマトグラフィ(RPC)システムへ移した。RPCカラム(ヒギンス(Higgins)製C−18;1mm×50mm×5μm)を60℃に維持して、複合体からのリガンドの解離を促進させる。このRPCカラムから、5%〜95%アセトニトリル(0.1%ギ酸対イオン)水溶液(重量/0.1%ギ酸)で5分間の勾配を用いてリガンドを溶出し、分析のため高分解能の質量分析計に供する。適度に高い親和性の任意のリガンドが、そのCOX画分の収集時にCOXに結合していれば、質量スペクトル分析によってその質量が同定される。マスコードであるおかげで、構築単位とコア分子との厳密な組合せを識別することが可能である(米国特許第6,147,344号参照)。同じ化合物がジアシルグリセロールキナーゼの対照実験で生じなければ、その化合物はCOX−1に特異的なリガンドとして同定してよい。図6は、ALISを使用した非結合小分子からのタンパク質の分離を示す。
【0090】
対照実験では、この方法でスクリーニングされたCOX−1により、既知のCOX−1リガンドを大量の小分子混合物から抽出可能であることが実証された(図7)。被験ライブラリが、25μMメクロフェナメート(meclofenamate)、25μMインドメタシン、各1μMの様々な被験ライブラリからなる場合、これら既知のCOX−1リガンドはALISスクリーニング法によって回収、同定される。
【0091】
この実験により、330,000種の薬物様小分子全体をスクリーニングした後、41種の小分子がCOX−1リガンドとして同定されたが、その1例を図8に示す。これらのCOX−1リガンド分子を、小規模ライブラリに対する2つのスクリーニンにより同定したが、さらなる試験に向けてそれらの単一の分子の調製物を用意する。さらにこれらのヒット分子の多くは、既知のCOX−1リガンドであるメクロフェナメートと結合に関して競合することが観察される(図9)。
(実施例2)
質量スペクトル分析による、m2 mAChRタンパク質に結合しているリガンドの同定
従来のクローニング法に従い、ムスカリン性アセチルコリン受容体のm2サブタイプ(m2R)をコードする遺伝子構築物を、バキュロウイルス発現ベクターにクローニングした(Baculovirus Expression Vector System、第6版、1999年、ファーミンゲン(Pharmingen)[米国カリフォルニア州サンディエゴ所在]を参照のこと)。この遺伝子構築物は、アミノ末端メチオニンのすぐ後に読み枠を合わせてメリチン・シグナル配列(配列番号12)が続き、そのすぐ後に読み枠を合わせてFLAG M1エピトープ・タグ(配列番号1)が続き、そのすぐ後に読み枠を合わせてm2ムスカリン性アセチルコリン受容体(NCBI受入番号X04708)の配列が続くポリペプチドをコードするものであった。したがって完全長ポリペプチド配列は、以下のとおりであった。
【0092】
【化1】
発現されると、メリチン・シグナル配列はAla(21)の後で切断され、FLAG M1抗体樹脂(シグマ(Sigma)[米国ミズーリ州セントルイス所在])が特異的に結合するアミノ末端FLAGエピトープが現れる。このバキュロウイルス発現ベクターは、従来の方法(Baculovirus Expression Vector System、第6版、1999、ファーミンゲン(Pharmingen)[米国カリフォルニア州サンディエゴ所在])により昆虫細胞において上記ポリペプチドを発現させる目的でバキュロウイルスを生成させるために使用した。
【0093】
FLAGタグm2Rを精製するために、上記ポリペプチドを発現する昆虫細胞60gを0.6LのTBS(50mM Tris−CL、pH7.4、100mM NaCl)に懸濁し、そのサンプルを窒素キャビテーションによりホモジナイズした。ホモジネートを4℃で30分間、500×gの遠心分離にかけて、ホモジナイズされていない細胞を除去した。ペレットを廃棄し、上澄みを4℃で45分間、100,000×gの超遠心分離にかけた。超遠心分離後の上澄みを廃棄し、ペレット化した細胞膜を、0.5%(重量/容積)のジギトニンを含有するTBS(TBS−D緩衝液)中に再懸濁して、タンパク質濃度を2.5mg/mLにした。この懸濁液を4℃で60分間撹拌しながらインキュベートした後、4℃で45分間、100,000×gの超遠心分離にかけて、不溶物をペレットとした。可溶性の上澄みを、抗体アフィニティ精製を行うために、TBS−D緩衝液で予め平衡化したFLAG M1抗体樹脂の5mLカラムに流速0.7mL/分でアプライした。可溶性物質をFLAG M1抗体樹脂にロードした後、カラムを50mLのTBS―D緩衝液で洗浄し、次いでFLAGタグm2Rタンパク質を100μg/mLのFLAGペプチド(シグマ(Sigma)[米国ミズーリ州セントルイス所在])を含有するTBS―D緩衝液でカラムから溶出させた。精製されたFLAGタグ付きm2Rを含有する溶出カラム画分を、SDS−PAGEにより同定した。
【0094】
ムスカリン性リガンドを結合することが可能な精製FLAGタグm2Rタンパク質の濃度を算定するために、ピーターソン(Peterson)の方法(ピーターソン、ジー エルら(Peterson,G.L.et al.)(1995年)J.Biol.Chem.第270巻;17808ページ)に従ってガラス繊維フィルタ結合アッセイを実施した。
【0095】
このm2R調製物は、FLAGペプチド100μg/mLを含むTBS−D中の6μMのm2Rからなるものであった。各m2Rポリペプチドは、多数のジギトニン分子と可逆的に会合可能であり、化学量論上m2R:ジギトニンが1:5〜500で膜タンパク質−界面活性剤複合体を生成する。この調製物を、以下に概説するサンプル調製プロトコルによるALISサンプル調製用の、m2Rストックとした。
【0096】
その他の試薬ストックを調製した。保存シクロオキシゲナーゼ1(COX)を実施例1の方法に従って調製し、TBS中に濃度6μMのCOXを得た。個々のリガンドストック(シグマ(Sigma)[米国ミズーリ州セントルイス所在])ピレンゼピン、キヌクリジニルベンジラート(QNB)、およびアトロピンを、TBS中400μMに調製した。4つのコンビナトリアル・ケミカル・ライブラリを、平均2500〜5000種の薬物様小分子の各濃度が400μMとなるように、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に調製した。これら4つの薬物ライブラリを、NMG−66、NGM−41、NGL−10−A−41、およびNGL−116−A−470とした。DMSOに溶解したアトロピンを上記個々の薬物ライブラリに添加することによって400μMアトロピンを含有する4つの被験ライブラリストックを調製し、NMG−66+アトロピンストック、NGM−41+アトロピンストック、NGL−10−A−41+アトロピンストック、およびNGL−116−A−470+アトロピンストックを得た。DMSOに溶解したQNBを上記個々の薬物ライブラリに添加することによって400μM QNBを含有する4つの被験ライブラリストックを調製し、NMG−66+QNBストック、NGM−41+QNBストック、NGL−10−A−41+QNBストック、およびNGL−116−A−470+QNBストックが得られた。5%ジギトニン100μLと水4.6mLを合わせ、さらに400μLの1M Tris−Cl、pH7.5を合わせ、次いで42℃で平衡化することによって、プレミックス緩衝液を調製した。
【0097】
タンパク質(被験タンパク質m2Rまたは対照タンパク質COX)を、リガンド(QNB単独、アトロピン単独、ピレンゼピン単独、アトロピン+薬物ライブラリ、またはQNB+薬物ライブラリ)と組み合わせた、あるいは対照としてタンパク質をDMSOと組み合わせた結合反応物を調製した。各場合において、DMSOまたはDMSOに可溶化されたリガンドが2μL入ったポリプロピレン・チューブにプレミックス緩衝液38μLを分注し、ボルテックス撹拌によって混合し、室温で10分間、8,000×gで遠心分離して不溶性物質を除去した。水性のDMSO単独または水性のDMSOに溶解されたリガンドのいずれかを含有する(薬物ライブラリを含まない場合と含む場合)清澄化した上澄み(2μL)を、4℃のポリプロピレン・チューブに移した。標的タンパク質m2R(8μL)または対照タンパク質COX(8μL)を上澄みに添加し、ピペッティングにより十分混合し、4℃で60分間インキュベートした。
【0098】
次いでこれらの結合反応調製物をALIS分析にかけた。結合反応調製物は、平衡結合状態が確立される方法で、4.8μMの標的膜タンパク質(m2R)または4.8μMの対照膜タンパク質(COX)と、各濃度が1〜10μMの約2500種の多数の薬物様小分子とを混合する。次いでタンパク質に対する高親和性リガンド(Kid<100μM)をALISにより同定する。対照タンパク質COXには結合しない標的タンパク質m2Rの小分子リガンドを、標的タンパク質に特異的なリガンドとみなす。これとは別に、多数の薬物分子を用いた実験と比較するため、m2RまたはCOXと個々の(個別の)m2Rリガンドとを組み合わせた結合反応物も調製した。このALIS分析は、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)の後に逆相クロマトグラフィ(RPC)、その後に質量スペクトル(MS)分析を行う一連の操作によって下記のように進めた。
【0099】
これらの調製された結合反応混合物を、個別にALIS分析にかけた。適度に高い親和性でm2Rに結合したリガンドを、下記のようにタンパク質含有SEC画分と共に回収した。流速2mL/分の、50mM Tris−Cl、pH7.5、150mM NaCl、2.5%DMSOの溶出緩衝液を使用して、4℃で4.6mm×50mm×5μmのSECカラム上でSECにより、界面活性剤に可溶化された大きな分子を非結合の薬物様小分子から分離した。タンパク質含有画分を、230nmでモニタする紫外線電子吸収分光法で同定した。
【0100】
タンパク質含有画分を、サンプル・ループを介して低流量(100μL/分)RPCシステムへ移した。RPCカラム(ヒギンス(Higgins)製C−18;1mm×50mm×5μm)を60℃に維持して、複合体からのリガンドの解離を促進させる。このRPCカラムから、5%〜95%アセトニトリル(0.1%ギ酸対イオン)水溶液(重量/0.1%ギ酸)で5分間の勾配を用いてリガンドを溶出し、分析のため高分解能の質量分析計に供する。タンパク質−界面活性剤m2R複合体に対するその高い親和性により、タンパク質含有SEC画分と共に回収された質量分析済みのリガンドを、その精確な質量を予測することによって同定した。
【0101】
実験では、このようにALIS分析でスクリーニングされたm2Rにより、m2R−界面活性剤複合体に対して高い親和性を有する既知のm2Rリガンドのその高親和性に基づいて、既知のm2Rリガンドを多数の薬物様小分子の混合物から抽出可能であることが実証された。このALIS形式のスクリーニングでは、薬物ライブラリが存在しない場合にm2R−界面活性剤複合体に結合したm2Rリガンドを回収するのと全く同様に、薬物ライブラリからm2Rリガンドが回収された(図10)。
【0102】
これらの実験のデータを図10に示す。これらの実験では、各濃度が1〜10μMである約2500種の薬物様小分子を提示するコンビナトリアル薬物ライブラリ(NGM−66、NGM−340、NGL−10−A−41、NGL−116−A−470)が存在しない状態またはその存在下で、2.0μM m2Rと10μMピレンゼピン、QNB、またはアトロピンとを混合することによって、平衡結合反応が確立された。結合反応物をALIS分析にかけ、リガンド回収の程度を、質量分析計のシグナル強度によって定量した。x軸は、ピレンゼピン、QNB、およびアトロピンのそれぞれの質量に対する質量スペクトルのシグナル応答を相対的な単位で表す。
(実施例3)
HPリガンドのアフィニティに基づいた選択およびALIS同定における置換アッセイ 代表的なHPとして、m2 mAChRをピーターソンらの方法(ピーターソン、ジー エルら(Peterson,G.L.et al.)(1995年)J.Biol.Chem.第270巻:17808ページ)に従い精製する。標的タンパク質をTBS−AGD緩衝液中で20μMの濃度に調整し、濃度1μMの既知のムスカリン性リガンド、ピレンゼピン(分子量=424.3)と共にインキュベートする。対照試験として、無関係の膜タンパク質、グリコホリンも、TBS−AGD中で20μMに調製し、濃度1μMの化合物ピレンゼピン(分子量=424.3)と共にインキュベートする。
【0103】
m2 mAChR/ピレンゼピン混合物にマスコード化合物ライブラリを加え、サンプルを分析し、ライブラリ化合物によってHPタンパク質からピレンゼピンが外れて置換されたかどうか決定する。ピレンゼピンの置換は、ライブラリ化合物が、ピレンゼピン自体と同じ部位にピレンゼピンより緊密に結合することを示す。
【0104】
置換アッセイは、下記のように実施する。m2 mAChRと、1μmのピレンゼピンと、1μMの各ライブラリ化合物との混合物をALIS分析にかける。この分析では、ピレンゼピンの質量に対応するMSシグナルをモニタし、ライブラリ化合物の質量は無視する。ライブラリ化合物によって、ピレンゼピンの質量に対応するMSシグナルが定量的に低減される場合、ライブラリ化合物によって、HPタンパク質、この場合はmAChRタンパク質から、ピレンゼピンが外れて置換されたと推測される。ライブラリ化合物とのインキュベーションにより、ピレンゼピンの質量に対応するMSシグナルが変化しない場合、ライブラリ化合物はm2 mAChRリガンドを含まないと考えられる。ライブラリ化合物とのインキュベーションを行った場合と行わない場合のピレンゼピンMSシグナルを比較することによって、ライブラリ化合物がピレンゼピンと置換されたがどうか、したがってmAChRタンパク質に結合したかどうか評価することが可能である。
(実施例4)
m2 mACHRマスコード・リガンドのアフィニティ選択およびALISによる同定
代表的なHPとして、m2 mAChRをピーターソンらの方法(ピーターソン、ジー エル(Peterson,G.L.)(1995年)J.Biol.Chem.第270巻:17808ページ)に従い精製する。該タンパク質をTBS−AGD緩衝液中で20μMに調整し、各濃度が1μMであるマスコード化合物の2500分子のライブラリと共にインキュベートする。22℃で30分間インキュベートした後、ALIS分析までの間サンプルを4℃に冷却する。対照試験として、無関係の膜タンパク質、グリコホリンも、TBS−AGD中で20μMに調製し、マスコード・ライブラリと共にインキュベートする。化合物がmAChRに特異的に結合するかどうかを決定するため、mAChR−化合物の混合物をALIS分析により分析する。タンパク質のピークを回収しMSにより測定したとき、マスコード・ライブラリのメンバの1つに相当する質量が現れれば、その化合物は結合リガンドであると特定される可能性がある。その同じ化合物がグリコホリン対照実験では現れない場合、その時はその化合物をmAChRに特異的なリガンドであると特定することが可能である。マスコードであるおかげで、構築単位とコアとの厳密な組合せを特定することが可能である(アニスら(Annis et al.)による米国特許第6,147,344号参照)。MS−MS分析(アニスら(Annis et al.)による米国特許第6,147,344号参照)を使用することにより、コアに構築単位を組み合わせたものの正確な構造を特定することも可能である。
(実施例5)
COX−1リガンドのアフィニティ選択と、オンライン蛍光検出を用いる修正ALISによる同定
代表的なHPとして、COX−1タンパク質をジョンソンら(Johnson et al.)の方法に従い仔ヒツジの精嚢から精製した(ジョンソン、ジェイ エル(Johnson J.L.)(1995年)Arch.Biochem.Biophys.第324巻:26〜34ページ)。COX−1サンプルを、TBS−AGE(50mM tris、pH8.0、150mM NaCl、800mMドデシルβ−D−マルトシド、2.5%DMSO)中で20μMに調整し、各化合物の濃度が1μMである2500種のマスコード化合物のライブラリと混合してインキュベートする。22℃で30分間インキュベートした後、そのサンプルをALIS分析までの間4℃に冷却した。全体積は12μLであるので、サンプルは240pmolのタンパク質と、12pmolの各ライブラリ成分とを含有する。対照試験として、無関係の膜タンパク質、グリコホリンも、TBS−AGD中で20μMに調製し、同じ2500分子のライブラリと共にインキュベートして、同様に処理する。
【0105】
次いでこの混合物を下記のように修正ALIS分析に個々に供する。流量2mL/分の溶出緩衝液TBS(50mM tris、pH8.0、150mM NaCl、2.5%DMSO)を用いて、4.6mm×50mm×5μmのSECカラムで0℃でサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を実施することにより、界面活性剤に可溶化された大きなタンパク質を薬物様小分子から分離する。タンパク質を含有する溶出SEC画分を、240〜250nmで励起しかつ340nmでの発光をモニタするオンライン蛍光検出によって特定し、サンプルループを介して低流量(100μL/分)逆相クロマトグラフィ(RPC)システムへ移す。RPCカラム(ヒギンス(Higgins)製C−18;1mm×50mm×5μm)を60℃に維持して、複合体からのリガンドの解離を促進させる。このRPCカラムから、5%〜95%アセトニトリル(0.1%ギ酸対イオン)水溶液(重量/0.1%ギ酸)で5分間の勾配を用いてリガンドを溶出し、分析のため高分解能の質量分析計に供する。適度に高い親和性のリガンドが、COX−1画分の回収時にCOX−1に結合していれば、質量スペクトル分析によってそのリガンドの質量が同定される。
【0106】
マスコードであるおかげで、構築単位とコア分子との厳密な組合せを特定することが可能である(アニスら(Annis et al.)による米国特許第6,147,344号参照)。同じ化合物がグリコホリン対照実験では現れない場合、その化合物はCOX−1タンパク質の特異的なリガンドとして同定し得る。
(実施例6)
COX−1リガンドのアフィニティ選択と、オンライン光散乱検出を用いる修正ALISによる同定
代表的なHPとして、COX−1タンパク質をジョンソンら(Johnson et al.)の方法に従い仔ヒツジの精嚢から精製した(ジョンソン、ジェイ エル(Johnson J.L.)(1995年)Arch.Biochem.Biophys.第324巻:26〜34ページ)。COX−1サンプルを、TBS−AGE(50mM tris、pH8.0、150mM NaCl、800mMドデシルβ−D−マルトシド、2.5%DMSO)中で20μMに調整し、各化合物の濃度が1μMである2500種のマスコード化合物のライブラリと混合してインキュベートする。22℃で30分間インキュベートした後、そのサンプルを、修正ALIS分析までの間4℃に冷却する。全体積は12μLであるので、サンプルは240pmolのタンパク質と、12pmolの各ライブラリ成分とを含有する。対照試験として、無関係の膜タンパク質、グリコホリンもTBS−AGD中で20μMに調製し、同じ2500分子のライブラリと共にインキュベートし、同様に処理する。
【0107】
次に、これら対照混合物および試験混合物を下記のように修正ALIS分析に個々に供する。流量2mL/分の溶出緩衝液TBS(50mM tris、pH8.0、150mM NaCl、2.5%DMSO)を用いて、4.6mm×50mm×5μmのSECカラムで0℃でサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を実施することにより、界面活性剤に可溶化された大きなタンパク質を薬物様小分子から分離する。タンパク質を含有する溶出SEC画分を、オンライン光散乱検出によって特定し、サンプルループを介して低流量(100μL/分)逆相クロマトグラフィ(RPC)システムヘ移す。RPCカラム(ヒギンス(Higgins)製C−18;1mm×50mm×5μm)を60℃に維持して、複合体からのリガンドの解離を促進させる。このRPCカラムから、5%〜95%アセトニトリル(0.1%ギ酸対イオン)水溶液(重量/0.1%ギ酸)で5分間の勾配を用いてリガンドを溶出し、分析のため高分解能の質量分析計に供する。適度に高い親和性のリガンドが、COX−1画分の回収時にCOX−1に結合していれば、質量スペクトル分析によってそのリガンドの質量が同定される。
【0108】
マスコードであるおかげで、構築単位とコア分子との厳密な組合せを特定することが可能である(アニスら(Annis et al.)による米国特許第6,147,344号参照)。同じ化合物がグリコホリン対照実験で現れない場合、その化合物はCOX−1タンパク質の特異的なリガンドとして同定し得る。
(実施例7)
m2 mACHRに結合するリガンドの不均一溶液相のスクリーニング:アフィニティ選択およびALIS分析を用いる同定
HPリガンドを、タグ付き標的配列を固体支持体に固定化する不均一溶液相のスクリーニング法を使用することによってスクリーニングすることも可能である。例えば、免疫沈降(IP)に基づくスクリーニング・プロトコルで沈降性固定要素として使用するために、抗flag抗体を吸着させたプロテインAアガロースビーズ(抗flagビーズ)を準備する。
【0109】
概要を述べると、TBS−AG緩衝液(50mM tris、pH8.0、150mM NaCl、800mMドデシルβ−D−マルトシド)を使用して、プロテインAアガロースの50%(容積/容積)スラリ(サンタクルーズバイオテクノロジー社(Santa Cruz Biotechnology)、[米国ミズーリ州セントルイス所在])100μLを1.5mLエッペンドルフチューブ内で、室温で、(1)ビーズを1mLのTBS−AGと合わせる、(2)サンプルをひっくり返すことによって20分間混合する、(3)10000×gで遠心分離し、その後慎重に上澄みを除去してペレット状のアガロースビーズをチューブの底に残す、というサイクルを3回実施して洗浄する。
【0110】
ビーズを洗浄した後、ビーズのペレット50μLを1.0mLのTBS−AG中に入れる。この混合物に、TBS―AG緩衝液に溶かした1mg/mLのβ−ガラクトシダーゼ50μLを添加し、混合物を4℃で60分間インキュベートして、タンパク質がビーズに非特異的に結合するのを阻止する。この混合物に、1.0μg/mLの抗flag抗体(シグマ社[米国モンタナ州セントルイス所在])を10μL添加し、混合物を4℃で60分間インキュベートする。並行して、同様に処理した別の対照アガロース・ビーズ調製物を、抗flag抗体の代わりにTBS−AG 10μLで処理する。次いで抗フラグ抗体を吸着させたビーズと対照ビーズとを洗浄して、過剰な抗体およびタンパク質を除去し、最後にTBS−AG緩衝液0.10mLに再懸濁し、0.5mLエッペンドルフチューブに移す。
【0111】
m2 mAChR−flagタグ−Hisタグタンパク質を発現するCHO細胞を培養し、溶解し、ホモジナイズする。m2 mAChRを含有する細胞膜を、ショ糖ステップ勾配超遠心分離により精製する。このショ糖ステップ勾配超遠心分離工程により、ほとんどの非膜タンパク質および細胞破壊片が除去される。超遠心分離工程により、膜様の細胞内下部構造の特定の集団を単離することも可能である。mAChRに富む膜を、界面活性剤(ドデシル−β−マルトシド、DβMまたはCYMAL−7;(アナトレース社(Anatrace)[米国オハイオ州モーミー(Maumee)所在]))により可溶化し、アフィニティ精製の3工程に供する。
【0112】
初めに、ポリヒスチジン・タグの付加されたC末端を利用するために金属キレート・アフィニティ・クロマトグラフィ(MCAQ)を使用し、その後、第2のアフィニティ精製、すなわちFLAGタグの付加されたN末端に基づく抗体アフィニティ精製を行うことになる(コビルカ、ビー ケー(Kobilka,B.K.)(1995年)Anal.Biochem.第231巻:269ページ)。第3に、固体化mAChRリガンド3−(2’−アミノベンズヒドリルオキシ)−トロパン(ABT)のカラムを通したリガンド・アフィニティ精製を行い、その後、脱塩工程により活性m2 mAChRタンパク質の最終的な濃縮が行われる。
【0113】
サンプルを、TBS−AGD緩衝液でmAChRタンパク質が20μMになるよう調整し、各化合物の濃度が1μMである2500種のマスコード化合物のライブラリと共にインキュベートする。体積40μL中で反応を行う。22℃で30分間インキュベートした後、そのサンプルをMS分析までの間4℃に冷却する。比較試験として、β−ガラクトシダーゼをTBS−AGD中で20μMになるよう同様に調製し、マスコード・ライブラリと共にインキュベートする。
【0114】
m2 mAChRタンパク質−化合物の混合物を、下記の手順により、MS分析による分析用に調製する。m2 mAChRタンパク質またはβ−ガラクトシダーゼタンパク質のいずれかを用いた試行由来の、精製タンパク質−ライブラリ混合物を、それぞれ体積20μLずつに2分割する。m2 mAChR−ライブラリ混合物の場合、一方をIP用に抗flagビーズ(抗flag/プロテインAアガロース)と合わせ、もう一方を対照アガロース・ビーズ(緩衝液/プロテインAアガロース・ビーズ)と合わせることによって模擬IPに供する。同様にβ−ガラクトシダーゼ混合物の場合、一方の20μLを対照IP用に抗flagビーズと合わせ、他方の20μLを、対照アガロース・ビーズと合わせることによって模擬IPに供する。ひっくり返すことによって混合し、これらのIPを引き続き4℃で60分間進行させる。その後、各IPを室温で、(1)ビーズを1mLのTBS−AGと合わせる、(2)ひっくり返すことによって2分間混合する、(3)10000gで遠心分離し、その後慎重に上澄みを除去してチューブの底にペレット状のアガロース・ビーズを残す、というサイクルを3回実施して洗浄する。最後に、各50μLのベッド・ボリュームのビーズ調製物を、次にさらに50μLのTBS(50mM tris、pH8.0、150mM NaCl)に再懸濁し、4℃に保持する。このプロセスの完了時には、4種の不均一ビーズ調製物、すなわち(1)m2 mAChR/抗flag/プロテインAアガロース(m2ビーズ)と、(2)m2 mAChR/緩衝液/プロテインAアガロース・ビーズ(m2対照ビーズ)と、(3)β−ガラクトシダーゼ/抗flag/プロテインAアガロース・ビーズ(β−lacビーズ)と、(4)β−ガラクトシダーゼ/緩衝液/プロテインAアガロース・ビーズ(β−ガラクトシダーゼ対照ビーズ)が作製される。
【0115】
これらのビーズを基にした調製物は、下記の手法でスクリーニングするのに有用な不均一溶液相系を構成する。各100μLのビーズ調製物を50μLの30%アセトニトリル水溶液と混合し、60℃に5分間加熱して、結合しているリガンドをタンパク質から解離させる。次いで混合物を10,000×gで遠心分離にかけてビーズをペレット化し、上澄み中の解離タンパク質を新しいチューブに移す。
【0116】
IP手順により、リガンドのアフィニティ選択と、結合していないライブラリ分子からのm2mAChR−リガンド複合体の物理的分離との両方が可能になる。これらの上澄みは、50mM Tris、pH8.0、150mM NaCl、80mMドデシルβ−D−マルトシド、および10%アセトニトリルを含有する。これらの上澄みサンプル約60μLを個々に、低流量(100μL/分)逆相クロマトグラフィ(RPC)システムに注入する。RPCカラム(ヒギンス(Higgins)製 C−18;1mm×50mm×5μm)を60℃に維持する。このRPCカラムから、5%〜95%アセトニトリル(0.1%ギ酸対イオン)水溶液(重量/0.1%ギ酸)で5分間の勾配を用いてリガンドを溶出し、分析のため高分解能の質量分析計に供する。
【0117】
m2 mAChRタンパク質ビーズの上澄み中にあり、m2 mAChRタンパク質対照ビーズ、β−lacライブラリのビーズ、またはβ−lac対照ビーズの上澄みにはない質量で2500分子のマスコード・ライブラリのある化合物に相当する質量を観測することによって、m2 mAChR−リガンドを同定する。この手順で選択されたマスコード化合物の構造は、容易に特定される(アニスら(Annis et al.)による米国特許第6,147,344号参照)。MS−MS分析(アニスら(Annis et al.)による米国特許第6,147,344号参照)を使用することにより、コアと構築単位の組み合わせの正確な構造を示すことも可能である。
(実施例9)
m2 mACHRに結合するリガンドの不均一溶液相のスクリーニング:アフィニティ選択およびMS分析と組み合わせた置換アッセイを使用する同定
Flagタグが付加されたm2 mAChRタンパク質を、本明細書で既に概説したように精製し、濃度20μMになるようTBS−AGD緩衝液に再懸濁する。タンパク質を、各化合物の濃度が1μMである2500のマスコード化合物のライブラリと、1μMのピレンゼピン、すなわちm2 mAChRタンパク質の既知のリガンドと共に、体積40μL中でインキュベートする。22℃で30分間インキュベートした後、MS分析までの間サンプルを4℃に冷却した。比較試験として、β−ガラクトシダーゼを同様に20μMになるようTBS−AGD中に調製し、マスコード・ライブラリおよびピレンゼピンと共にインキュベートする。
【0118】
m2 mAChRタンパク質またはβ−ガラクトシダーゼのいずれかを用いた試行由来の精製タンパク質−ライブラリ−ピレンゼピン混合物を、それぞれ体積20μLずつに2分割する。m2 mAChR−ライブラリ−ピレンゼピン混合物の場合、一方をIP用に抗flagビーズ(抗flag/プロテインAアガロース)と合わせ、他方を対照アガロース・ビーズ(緩衝液/プロテインAアガロース・ビーズ)と合わせることによって模擬IPに供する。プロテインAアガロース・ビーズは、本明細書で既に述べたように調製する。同様にβ−ガラクトシダーゼ混合物の場合、一方の20μLを対照IP用に抗flagビーズと合わせ、他方の20μLを対照アガロース・ビーズと合わせることによって模擬IPに供する。ひっくり返すことによって混合し、これらのIPを引き続き4℃で60分間進行させる。次いで各IPを室温ので、(1)ビーズを1mLのTBS−AGと合わせる、(2)ひっくり返すことによって2分間混合する、(3)10000gで遠心分離し、その後慎重に上澄みを除去してチューブの底にペレット状のアガロース・ビーズを残す、というサイクルを3回実施して洗浄する。最後に、各50μLのベッド・ボリュームのビーズ調製物を、次にさらに50μLのTBS(50mM tris、pH8.0、150mM NaCl)に再懸濁し、4℃に保持する。このプロセスの完了時には、4種の不均一なビーズ調製物、すなわち(1)m2 mAChR/抗flag/プロテインAアガロース(m2ビーズ)と、(2)m2 mAChR/緩衝液/プロテインAアガロース・ビーズ(m2対照ビーズ)と、(3)β−ガラクトシダーゼ/抗flag/プロテインAアガロース・ビーズ(β−ガラクトシダーゼ・ビーズ)と、(4)β−ガラクトシダーゼ/緩衝液/プロテインAアガロース・ビーズ(β−ガラクトシダーゼ対照ビーズ)が作製される。
【0119】
これらのビーズを基にした調製物は、下記の手法でスクリーニングするのに有用な不均一溶液相系を構成する。各100μLのビーズ調製物を50mLの30%アセトニトリル水溶液と混合し、60℃に5分間加熱して、結合しているピレンゼピンをタンパク質から解離させる。次いで混合物を10,000×gで遠心分離にかけ、ビーズをペレット化し、上澄み中の解離タンパク質を新しいチューブに移す。IP手順により、リガンドのアフィニティ選択と、結合していないライブラリ分子からのm2 mAChR−リガンド複合体の物理的分離との両方が可能になる。これらの上澄みは、50mM Tris、pH8.0、150mM NaCl、80mMドデシルβ−D−マルトシド、10%アセトニトリル、および<50pmolのピレンゼピンを含有する。これらの上澄み約60μLを、低流量(100μL/分)逆相クロマトグラフィ(RPC)システムに注入する。RPCカラム(ヒギンス(Higgins)製 C−18;1mm×50mm×5μm)を60℃に維持する。このRPCカラムから、5%〜95%アセトニトリル(0.1%ギ酸対イオン)水溶液(重量/0.1%ギ酸)で5分間の勾配を用いてリガンドを溶出し、分析のため高分解能の質量分析計に供する。
【0120】
m2 mAChRタンパク質対照ビーズ、β−ガラクトシダーゼ・ライブラリ試験ビーズ、またはβ−ガラクトシダーゼ対照ビーズの上澄み由来のピレンゼピンに相当する質量は、m2 mAChRタンパク質ビーズのMS分析におけるピレンゼピンの質量応答値よりも高いはずである。したがって2500分子のマスコード・ライブラリは、ピレンゼピンよりも高い親和性でm2 mAChRタンパク質に結合するリガンドを含有することが推測される。ヒットを含むライブラリを、ヒットを含まないその他のライブラリの中からこのように検出し選択することが可能である。
(実施例10)
多重化による疎水性タンパク質スクリーニング成果の向上
両親媒性物質−可溶化HPを、スクリーニング成果を高める3次元高次構造に維持するには、HPを、スクリーニング・サンプル調製物中で多重化する。多重化は、標的タンパク質といくらかの既知のモル当量の1つ以上のアクセサリタンパク質(AP)とを組み合わせた、任意の調製方法を指すよう定義される。APの使用に関して最も好ましいスクリーニング条件の選択が行われるように、5つの独立した基準が明らかにされている:その基準とは、(1)APの存在下で、APの非存在下よりも高い親和性で標的HPが既知のアゴニストに結合することが観察されること;(2)APの存在下で、APの非存在下よりも高い親和性で標的HPが既知のアンタゴニストに結合することが観察されること;(3)APの存在下で、HPが、酵素アッセイ、インビトロアッセイ、または細胞を用いるアッセイをおこなった場合により高い機能活性を有することが示されること;(4)APの存在下、HPがその多量体化状態を変化させることが示されること;および(5)APの存在下、HPがより高い高次構造上の安定性または不変性を有することが示されること、である。
【0121】
第1の例として、Gαi1β1γ2−グアノシン二リン酸(GDP)をヘテロトリマーAPとして用いたm2 mAChRの多重化スクリーニング法を示す。Gαi1β1γ2−GDP複合体は、下記の方法によって示されるように、その存在によってm2 mAChRのアンタゴニストN−メチルスカポラミン(N−methylscapolamine)(NMS)に対する親和性が5倍高まるため、m2 mAChRに対するAPであると確認された。リンケン(Rinken)およびハガ(Haga)の方法(リンケン、エー(Rinken,A.)およびハガ、ティー(Haga,T.)(1993年)Arch.Biochem.Biophys.第301巻:158〜164ページ)により実施された3H−NMS結合アッセイから、3H−NMSに対するm2 mAChRの見掛けのKdが0.17nMであり、一方、m2 mAChR−Gαi1β1γ2−GDP複合体のKdが432nMであることが示された。このHP/AP複合体をスクリーニングするため、m2 mAChR/Gαi1β1γ2−PLを実施例11で説明するように調製し、リガンド化合物とのインキュベーション段階で50μM GDPを結合緩衝液に添加し、本明細書に示すアフィニティ選択およびALISまたは修正ALISを利用する方法のいずれかに従ってリガンド結合に関してスクリーニングを行った。
【0122】
第2の例として、ヒトオピオイド受容体の、ヘテロダイマー化したκおよびδサブタイプの多重化スクリーニングを示す。ヒトκオピオイド受容体は、ジョーダン(Jordan)およびデヴィ(Devi)の方法(ジョーダン、ビー エー(Jordan,B.A.)およびデヴィ、エル エー(Devi,L.A.)、(1999年)Nature 第399巻:697〜708ページ)によって示されるように、その存在によってヒトδオピオイド受容体の多量体化状態がモノマーからヘテロダイマーに変化するので、ヒトδオピオイド受容体に対するAPであることが確認された。
【0123】
スクリーニング用にδ/κオピオイド受容体ヘテロ二量体複合体を調製するには、以下の方法を使用する。ヒトκオピオイド受容体を精製し、TBS−AG中に透析分離し、濃度50μMになるようにする。ヒトδオピオイド受容体を精製し、TBS−AG中に透析分離し、濃度50μMになるようにする。これら2つの等体積の調製物を合わせて二量体化させる。
【0124】
次いで二量体化したオピオイド受容体複合体を、本明細書に示すアフィニティ選択およびALISまたは修正ALISを利用した方法のいずれかに従い、リガンド結合に関してスクリーニングする。
(実施例11)
定義されたGPCRプロテオリポソーム(GPCR−PL)の調製方法
界面活性剤に可溶化されたGPCRに高次構造上の安定性をもたらすため、界面活性剤ミセルによる可溶化を、以下の基準、すなわち:(1)PLの脂質組成が、PLの脂質含量の90%を構成する6種以下の個別の脂質部分を有するものと定義され、特徴付けられること、(2)HP−PL調製物の90%が、3桁以内に収まる明確な単峰形の粒子サイズ分布を有し、平均的な粒子サイズが5〜10000nmの範囲内であること、(c)PL調製物の収量>50nM HPであること;を満たすものとして定義されたプロテオリポソームによる可溶化に変更した。
【0125】
m2 mAChRタンパク質を含むHP−PLを調製するため、下記の手順を使用する。合成脂質(アバンティポーラーリピッズ(Avanti Polar Lipids)[米国アラバマ州アラバスター(Alabaster)所在])D−リボ−フィトスピンゴシン−1−ホスフェートおよびセラミド−C18:0をそれぞれクロロホルムに溶かしたものを、ガラスの試験管内で一緒にして1mLの体積(それぞれ5mM)とし、アルゴン流中で24時間、室温でクロロホルムを蒸発させる。次いで脂質残分をTBS 0.40mLで湿らせ、28℃で30分間超音波処理し、混合物を1.5mLポリプロピレンチューブに移す。この脂質混合物に、ピーターソン、ジー エルら(Peterson,G.L.et al.)が記述するように調製した50μM m2 mAChRを0.2mL添加する(ピーターソン、ジー エルら(Peterson,G.L.et al.)(1995年)J.Biol.Chem.第270巻:17808ページ)。この結果、脂質とタンパク質との粗製混合物が得られる。
【0126】
次いでタンパク質−脂質粗製混合物を、5分、22℃の槽中の超音波処理を30分間隔で(6回)実施しながら8℃で3時間インキュベートする。次いでこの混合物を20℃で、製造業者のプロトコルに従って(アバンティポーラーリピッズ(Avanti Polar Lipids)[米国アラバマ州アラバスター(Alabaster)所在])容積の小さい押出し機で100nmポリカーボネート膜に11回通す。この結果、体積0.6mLのPL粗製物、16μM m2 mAChR、および過剰な両親媒性物質(DbMおよび脂質)が得られる。過剰な脂質および界面活性剤を除去するため、予め4℃でTBSで平衡化した10mLの脱塩体(G−50セファデックス(sephadex、登録商標)カラム)に、PL粗製物を通過させる。PL粗製物を脱塩カラムに通した後、4℃のTBSを使用してその物質をカラムから溶出する。この脱塩操作は、流速0.5mL/分で実施する。タンパク質濃度は、サンプル10μLと0.2%Triton X−100 10μLとを合わせ、その混合物をバイオラッド社(Bio−Rad)比色タンパク質アッセイ(バイオラッドインコーポレイテッド社(Bio−Rad Inc.)[米国カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules)所在])に使用することにより推定する。次いでTBSで希釈することにより濃度を10μMに調整する。
【0127】
コールター(Coulter)のN4サブミクロン・パーティクル・アナライザを使用して、製造業者のプロトコルに従いサイズ分布を明らかにする。これとは別に、サイズ分布と平均粒子サイズの評価を、流速1.0mL/分で溶出緩衝液TBSを用いた分析用SECカラム(G2000SWXL、5×300mm、5μm;トーソーハース(ToSo−Haas))に、280nmでモニタするUV検出器を取り付け、12℃に冷却した状態で20μLを注入することにより分析SECによって実施する。8.23分に溶出する単一ピークによりGPCR−PLの保持時間が同定され、これを分子サイズ・マーカー溶出時間の標準曲線と比較し、GPCR−PLの見掛けの平均サイズが940,000ダルトンのタンパク質のサイズに匹敵することが示された。
【0128】
プロテオリポソームは、APと複合体を形成したHPを用いて調製することもできる。この手順では、界面活性剤ミセルによる可溶化を、以下の基準、すなわち:(1)PLの脂質組成が、PLの脂質含量の90%を構成する6種以下の個別の脂質部分を有するものと定義され、特徴付けられたこと、(2)HP−PL調製物の90%が、3桁以内に収まる明確な単峰形の粒子サイズ分布を有し、平均的な粒子サイズが5〜10000nmの範囲内であること、(3)PL調製物の収量>50nM HPであること;(4)PL調製物が、アクセサリタンパク質(AP)と呼ばれる少なくとも1つの他のタンパク質を含み、その存在により標的HPにとって好ましい高次構造が維持されること;を満たすものとして定義されたプロテオリポソームへの可溶化に変更する。
【0129】
m2 mAChRを有するHP−PLを調製するため、下記の手順を使用した。合成脂質(アバンティポーラーリピッズ(Avanti Polar Lipids)[米国アラバマ州アラバスター(Alabaster)所在])D−リボ−フィトスピンゴシン−1−ホスフェートとセラミド−C18:0をそれぞれクロロホルムに溶かしたものを、ガラスの試験管内で一緒にして1mLの体積(それぞれ5mM)にし、アルゴン流中で24時間、室温でクロロホルムを蒸発させる。次いで脂質残分を0.40mLのTBSに2mM MgCl2を加えたもの(TBSM)で湿らせ、28℃で30分間超音波処理し、混合物を1.5mLポリプロピレンチューブに移す。これとは別に、記述(参照文献)に従い精製した100μM Gβ1γ2と100μM Gαi1とを等体積で合わせることによって50μM Gαi1β1γ2を調製し、TBSMに800mM DbMを加えたものに透析分離した(TBSM−AG)。該脂質混合物に、ピーターソン、ジー エルら(Petreson,G.L.et al.)が記述するように(ピーターソン、ジー エルら(Peterson,G.L.et al.)(1995年)J.Biol.Chem.第270巻;17808ページ)調製した50μM m2 mAChRを0.2mLと、50μM Gαi1β1γ2を0.2mL添加する。この混合物に、50mM GDPを10μL添加する。その結果、脂質、HP、およびAPの粗製混合物が得られる。
【0130】
次いでHP/AP−脂質粗製混合物を、5分、22℃の槽中の超音波処理を30分間隔で(6回)実施しながら8℃で3時間インキュベートする。次いでこの混合物を20℃で、製造業者のプロトコルに従って(アバンティポーラーリピッズ(Avanti Polar Lipids)[米国アラバマ州アラバスター(Alabaster)所在])容積の小さい押出し機で100nmポリカーボネート膜に11回通す。この結果、体積0.8mLのPL粗製物、12μM mAChR、12μM Gαi1β1γ2、および過剰な両親媒性物質(DbMおよび脂質)が得られる。過剰な脂質および界面活性剤を除去するため、予め4℃でTBSにより平衡化した10.0mLの脱塩体(G−50セファデックス・カラム)に、PL粗製物を通過させる。PL粗製物を脱塩カラムに通した後、4℃のTBSを使用してその物質をカラムから溶出する。この脱塩操作は、流速0.5mL/分で実施する。タンパク質濃度は、サンプル10μLと0.2%Triton X−100 10μLとを合わせ、その混合物をバイオラッド社(Bio−Rad)比色タンパク質アッセイ(バイオラッドインコーポレイテッド社(Bio−Rad Inc.)[米国カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules)所在])に使用することにより推定する。次いでTBSで希釈することにより濃度を20μMに調整する。
【0131】
サイズ分布を明らかにするために、製造業者のプロトコルに従いコールター(Coulter)のN4サブミクロン・パーティクル・アナライザを使用する。これとは別に、サイズ分布と平均粒子サイズの評価を、流速1.0mL/分で溶出緩衝液TBSを用いた分析用SECカラム(G2000SWXL、5×300mm、5μm;トーソーハース(ToSo−Haas))に、280nmでモニタするUV検出器を取り付け、12℃に冷却した状態で20μLを注入することにより分析SECによって実施する。注入後8.23分に溶出する単一ピークによりHP/AP−PLの保持時間が同定され、これを分子サイズ・マーカー溶出時間の標準曲線と比較する。その結果得られる見掛けの平均サイズは940,000ダルトンのタンパク質のサイズに匹敵することが示された。
【0132】
スクリーニング対照として使用される対照AP−PLは、以下の基準、すなわち:(1)PLの脂質組成が、PLの脂質含量の90%を構成する6個以下の個別の脂質部分を有するものと定義され特徴付けられること、(2)HP−PL調製物の90%が、3桁以内に収まる明確な単峰形の粒子サイズ分布を有し、平均的な粒子サイズが5〜10000nmの範囲内であること、(3)PL調製物が、標的HPが存在しないこと以外は類似のHP/AP−PLを正確に模倣するよう設計されること、という基準を満たすよう作製される。
【0133】
m2 mAChRを有するAP−PLを調製するため、下記の手順を使用する。合成脂質(アバンティポーラーリピッズ(Avanti Polar Lipids)[米国アラバマ州アラバスター(Alabaster)所在])D−リボ−フィトスピンゴシン−1−ホスフェートとセラミド−C18:0をそれぞれクロロホルムに溶かしたものを、ガラスの試験管内で一緒にして1mLの体積(それぞれ5mM)にし、アルゴン流中で24時間、室温でクロロホルムを蒸発させる。次いで脂質残分を0.40mLのTBSに2mM MgCl2を加えたもの(TBSM)で湿らせ、28℃で30分間超音波処理し、混合物を1.5mLポリプロピレンチューブに移す。これとは別に、ホウ、ワイら(Hou,Y.et al.)J.Biol.Chem.(2000年)第275巻:38961〜6ページの記述に従って精製した100μM Gβ1γ2と100μM Gαi1とを等体積で合わせることによって50μM Gαi1β1γ2を調製し、TBSMに800mM DbMを加えたものに透析分離した(TBSM−AG)。該脂質混合物に、TBS−AGを0.2mLと、50μM Gαi1β1γ2を0.2mL添加する。この混合物に、50mM GDPを10μL添加する。その結果、脂質およびAPの粗製混合物が得られる。タンパク質濃度は、サンプル10μLと0.2%Triton X−100 10μLとを合わせ、その混合物を、製造業者の使用説明書に従ってバイオラッド社(Bio−Rad)比色タンパク質アッセイに使用することにより推定する。次いでTBSで希釈することにより濃度を10μMに調整する。
【0134】
次いでAP−脂質粗製混合物を、5分、22℃の槽中の超音波処理を30分間隔で(6回)実施しながら8℃で3時間インキュベートする。次いでこの混合物を20℃で、製造業者のプロトコルに従って(アバンティポーラーリピッズ(Avanti Polar Lipids)[米国アラバマ州アラバスター(Alabaster)所在])容積の小さい押出し機で100nmポリカーボネート膜に11回通す。この結果、体積0.8mLのPL粗製物、12μM mAChR、12μM Gαi1β1γ2、および過剰な両親媒性物質(DbMおよび脂質)が得られる。過剰な脂質および界面活性剤を除去するため、予め4℃でTBSにより平衡化した10.0mLの脱塩体(G−50セファデックス・カラム)に、PL粗製物を通過させる。PL粗製物を脱塩カラムに通した後、4℃のTBSを使用して、その物質をカラムから溶出させる。この脱塩操作は、流速0.5mL/分で実施する。
【0135】
サイズ分布を明らかにするために、製造業者のプロトコルに従いコールター(Coulter)のN4サブミクロン・パーティクル・アナライザを使用する。これとは別に、サイズ分布と平均粒子サイズの評価を、流速1.0mL/分で溶出緩衝液TBSを用いた分析用SECカラム(G2000SWXL、5×300mm、5μm;トーソーハース(ToSo−Haas))に、280nmでモニタするUV検出器を取り付け、12℃に冷却した状態で20μLを注入することにより分析SECによって実施する。8.23分に溶出する単一ピークによりAP−PLの保持時間が同定され、これを分子サイズ・マーカー溶出時間の標準曲線と比較する。得られた見掛けの平均サイズは、940,000ダルトンのタンパク質のサイズに匹敵する。
【0136】
次いで本明細書で述べたプロテオリポソームを、本明細書に示すアフィニティ選択およびALISまたは修正ALISを利用する方法のいずれかに従い、リガンド結合についてスクリーニングする。
(実施例12)
HPの2重エピトープ・アフィニティ精製
本発明のタグ付きHPタンパク質をコードする核酸配列の構築は、核酸クローニングの技術分野で一般的な通常の手順を利用する当業者の技術範囲に十分含まれる。
【0137】
タグ付きHP、例えばメリチン−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグタンパク質や、メリチン−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグタンパク質を、ウイルス発現系の製造業者(ファーミンゲン(Pharmingen)[米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)所在])により提供される方法に従って、組換えバキュロウイルスから生成する。
【0138】
概要を述べると、組換えウイルスを、その組換えタンパク質発現能に基づいて選択する。発現タンパク質を、感染昆虫細胞を界面活性剤により可溶化した細胞溶解物のウェスタン・ブロット分析により確認する。Flagエピトープ、EEエピトープ、またはHPタンパク質そのもののいずれかを認識する1次抗体を使用し、ウェスタン・ブロットによりHPタンパク質が発現するかどうか、またはHPタンパク質がどの程度発現するかを明らかにする。可能であれば、発現タンパク質が機能を有することを確認するために、機能的アッセイを行う。例えばメリチン−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグタンパク質の場合、リンケン(Rinken)およびハガ(Haga)の方法(リンケン、エー(Rinken,A.)およびハガ、ティー(Haga,T.)(1993年)Arch.Biochem.Biophys.第301巻:158〜164ページ)に従って細胞を用いた3H−N−メチルスカポラミン結合分析を行い、それによって、ウイルスに誘導されたタンパク質発現が機能を有し、細胞当たりの受容体が0.5×106個のBmaxと、0.10nMのKdとを示すことが確認された。次いでこのバキュロウイルスを、従来の方法(ファーミンゲン(Pharmingen)[米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)所在])によって2.0×108pfu/mLに達する高い力価に増幅した。
【0139】
次に、タンパク質を単離するため大量の昆虫細胞培養物を得る。概要を述べると、高力価のウイルスストックが所定の構築物を生成するとすぐに、Sf21昆虫細胞をバイオリアクタ内で波動撹拌しながら(ウェーブバイオテクノロジー(Wave Biotechnology)[米国ニュージャージー州ベッドミンスター(Bedminster)所在])細胞密度2×106/mLまで増殖させる10リットル規模の生産を10回実施した。生産する各タンパク質について、これらの細胞に感染効率(MOI)5で高力価ウイルスストックを接種し、感染後2日で細胞をハーベストした。
【0140】
次いでHPタンパク質を可溶化する。例えば、mAChRタンパク質発現細胞を10,000×gで30分間遠心分離することによって回収する。10回のバイオリアクタによる生産の全ての細胞ペレットを一緒にし、その細胞ペレットを、1mM EDTA、10μg/ml ペプスタチンおよび1μg/ml pメチルスルホニルフルオライド、ならびに20mM ドデシル−β−D−マルトシド(DbM)を加えた氷冷TBS緩衝液500mLに再懸濁する。この細胞スラリを、A型乳棒のDounceホモジナイザで4℃で50回のストロークに供し、細胞を破砕して膜タンパク質を可溶化する。この懸濁液を清澄にするために、該物質を4℃で60分間、40000×gで遠心分離にかけて、不溶性物質を除去する。次いで上澄みを回収し、可溶性メリチン−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタンパク質の供給源として使用する。(注記:ミツバチのメリチン・シグナル配列は、発現および昆虫細胞原形質膜への移動の過程で細胞プロテアーゼにより切断される。それ以降は、該可溶化タンパク質をFlagタグ−ヒトm1 mAChR−EEと呼ぶ)。
【0141】
次いで各可溶化組換えHPを、抗体アフィニティ・カラムでアフィニティ精製を2回行うことにより精製する。抗EEタグカラムと抗Flagタグカラムの両方を同じように準備する。概要を述べると、製造業者のプロトコルに従って(アマシャムファルマシア(Amersham Pharmacia[米国ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway)所在])、35mgの精製抗エピトープ抗体を結合緩衝液中に透析し、CNBr活性化セファロース・ビーズ10mLに結合させる。次いで樹脂を1.2×15cmポリプロピレン・カラムに移し、次にエピトープ・アフィニティ・カラムを4℃でTBS−AGを用いて平衡化する。
【0142】
次に、50mLの可溶化HPタンパク質、例えばFlagタグ−ヒトm1 mAChR−EEを、毎分0.2mLの流速で抗EEアフィニティ・カラムにアプライする。次いで、カラム体積の5倍量のTBS−AGにより同じ流速でそのカラムを洗浄した。次いで特異的に結合したHPを、TBS−AG中体積15mLに可溶化して10mMとした過剰なEEペプチド(NH2−EEEEYMPME−COOH;シグマゲノシス(Sigma−Genosys)[米国ミズーリ州セントルイス所在])の大量添加によりカラムから溶出させる。次いで溶出液を、抗Flagタグ・アフィニティ・カラムに同様にアプライし、同様に洗浄し、過剰な抗FLAGペプチド(NH2−DYKDDDDK−COOH;シグマゲノシス(Sigma−Genosys)[米国ミズーリ州セントルイス所在])でカラムから溶出させる。次いでこの物質を、100倍容のTBS−AGを2回交換して4℃で1晩透析する。
【0143】
次いでショ糖勾配超遠心分離を使用して、誤って折り畳まれたポリペプチドを除去する。概要を述べると、該物質を、TBS−AGに溶かした5%〜25%ショ糖の不連続なステップ勾配に供し、4℃で4時間、100000×gでベックマンSW Ti.50ロータにより遠心分離する。適正な高次構造のHP、例えばFlagタグ−ヒトm1 mAChR−EEは、5%〜25%の界面で回収される。次いでこの物質を、100倍容のTBS−AGを2回交換して4℃で1晩の最後の透析に供する。
【0144】
HP溶液のタンパク質濃度を、比色タンパク質アッセイ(バイオラッドラボラトリーズインコーポレイテッド社(Bio−Rad Laboratories,Inc.)[米国カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules)所在])によって決定し、必要に応じて希釈または撹拌限外濾過セル(ミリポア(Millipore)[米国マサチューセッツ州ベッドフォード(Bedford)所在])で濃縮することによって、50μMに調整する。界面活性剤濃度も、ヒギンス(Higgins)C−18カラムを使用してRPC−UVで決定し、この場合、リガンドの混合物50μLを、20分かけて、5%〜95%アセトニトリル(0.1%ギ酸対イオン)水溶液(w/0.1%ギ酸)の勾配を使用して溶出し、分析のため高分解能質量分析計へ供する。DbMのRtは、同一の条件下で個別に対照実験を行うことにより決定する。界面活性剤の量を定量するためには、タンパク質サンプルからのDbMピークの面積を、既知濃度のDbMサンプルのDbMピーク高をアッセイする同一条件下の複数回のRPCから作製された標準曲線と比較する。界面活性剤濃度が0.48mM(4×cmc)よりも低いと推定される場合、TBSに溶かした高濃度のDbMを少量添加することによって調整する。
(実施例13)
HPのエピトープ・アフィニティおよび金属キレート・アフィニティ・クロマトグラフィ(MCAC)
HPはまた、例えばヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSV−8Hisに代表されるように、エピトープ・アフィニティ・タグおよび金属キレート・アフィニティ・タグを備えて構成される。概要を述べると、製造業者(ファーミンゲン(Pharmingen)[米国カリフォルニア州サンディエゴ所在])により提示される下記の方法に従って、ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSV−8Hisをコードする単離核酸分子を組換えバキュロウイルスの産生に使用する。ウイルス産生、大量の昆虫細胞培養およびタンパク質発現、エピトープ・アフィニティ・カラムの調製、可溶化HPの調製、ならびにエピトープ・アフィニティ精製は、HSVエピトープ・アフィニティ・カラムを調製する際に抗FLAG抗体の代わりに抗HSV抗体を使用し、FLAGペプチドの代わりにHSVペプチド(NH2−QPELAPEDPED−COOH;シグマゲノシス(Sigma−Genosys))を使用してヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSV−8Hisタンパク質をカラムから溶出すること以外、全て本明細書で既に述べたように行った。また、ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSV−8Hisタンパク質にはEEエピトープがないので、EEエピトープを使用するエピトープ・アフィニティ精製は使用しない。(注記:ヘマグルチニンSSシグナル配列は、一部の細胞株では発現および昆虫細胞の原形質膜への移動の過程で細胞プロテアーゼによって切断される可能性がある。それ以降は、該可溶化タンパク質をラットm3 mAChR−HSV−8Hisと呼ぶ。
【0145】
アフィニティ精製の最終ステップでは、Ni−NTA樹脂(キアゲン(Qiagen))10mLを1.2×15cmのポリプロピレン・カラムに充填し、そのカラムを流速0.2mL/分で4℃のTBS−AG 100mLで平衡化することにより調製したMCACカラムに、ラットm3 mAChR−HSV−8Hisを流速0.2mL/分でアプライする。ラットm3 mAChR−HSV−8Hisがカラムに結合したら、そのカラムを5mMのイミダゾールを含有するTBS−AG 100mLで洗浄する。次いでこのカラムを、同じ流速でTBS−AG中の5mM〜350mMイミダゾールの50mL直線勾配で展開し、0.5mLずつ画分を回収する。活性mAChRを含有する画分は、既知の放射性リガンド結合アッセイによって評価されるとおり、190〜240mMのイミダゾール濃度に相当する体積11mL中に溶出する。次いでこの物質を、100倍容のTBS−AGを3回交換して4℃で1晩透析し、過剰なイミダゾールを除去する。次いでこの物質を、ショ糖勾配超遠心分離にかけ、本明細書で既に述べたようにタンパク質および界面活性剤の濃度を測定し調整する。
(実施例14)
精製HPの特徴付け
本明細書で生産したHPの最終的な調製物の純度を確認するために、各サンプルを5〜12%Novex(登録商標)(インビトロジェン(Invitrogen)[米国カリフォルニア州サンディエゴ所在])ゲル上で、製造業者の使用説明書に従いSDS−PAGE分析に供する。ゲル・レーン当たりサンプル10μgをロードし、タンパク質サンプルを銀染色法によって視覚化する(ピーターソン、ジー エルら(Peterson,G.L.et al.)(1995年)J.Biol.Chem.第270巻:17808ページ)。これらの方法により調製したmAChRタンパク質の特異的な活性を、ピーターソン、ジー エルら(Peterson,G.L.et al.)の方法(ピーターソン、ジー エルら(Peterson,G.L.et al.)(1995年)J.Biol.Chem.第270巻:17808ページ)に従って決定する。本明細書で述べた方法では一般に、タンパク質の特異的な活性は、mAChRタンパク質1mg当たりの特異的リガンド結合が11〜16nmolの範囲内になるよう決定される。
【0146】
リガンド・アフィニティ・クロマトグラフィは、本発明のHPを特異的な活性に関して評価することが可能なもう1つの測定法である。例えば本明細書で述べた方法により精製したmAChRは、固定化mAChRリガンド3−(2’−アミノベンズヒドリルオキシ)−トロパン(ABT)のカラムに通して既知リガンドのアフィニティ・クロマトグラフィにかけることが可能である。
【0147】
均等物
当業者なら、本明細書に記載する本発明の特定の実施形態の数多くの均等物を、通常の実験を行うだけで理解しまたは確かめることが可能であろう。そのような均等物は、上記の特許請求の範囲に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】HPタンパク質GP67 SS−Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChRのアミノ酸配列(配列番号19)を示す図。
【図2】HPタンパク質メリチン−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEのアミノ酸配列(配列番号20)を示す図。
【図3】HPタンパク質ヘマグルチニンSS−ヒトニューロキニン3受容体−HSV−Mycのアミノ酸配列(配列番号21)を示す図。
【図4】HPタンパク質メリチン−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEのアミノ酸配列(配列番号22)を示す図。
【図5】HPタンパク質ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSV−8Hisのアミノ酸配列(配列番号23)を示す図。
【図6】ALISスクリーニング・システムの性能をモニタするために開発されたコンピュータ・インターフェースのスクリーンショットにより表示されるSECクロマトグラム。SECカラムに注入した後のサンプル注入に伴う溶出時間に対して230nmでの相対吸光度を垂直軸上にプロットする。この表示は、6種の異なる結合反応混合物の分析に関する分離プロフィルをまとめたものである。いずれの場合も、混合物は、各25μMのインドメタシンおよびメクロフェナメートと、10μMのCOX−1と、各1μMの約2500種の個々のスクリーニング化合物とからなる。12〜15秒の間で溶出するピークは、分析のために質量分析計に送られるSEC画分を含有するCOX−1に該当する。17秒後に溶出するピークは、非結合のライブラリ分子に該当する。
【図7】図1に示す試験ライブラリから抽出された2つの既知COX−1リガンド(NSAID LM;インドメタシンおよびメクロフェナメートからなる)について測定された回収率を示す質量スペクトル分析図。異なる日(10/15および10/18)の異なるCOX−1調製物は、競合ライブラリ(NGL−15−A−137、NGL−10−A−41、NGL−116−A−470、NGM−51、NGM−108、NGM−177)が存在しない状態で、または存在下で、既知のリガンドを結合する。標準曲線と比較することにより、質量スペクトル分析では、各回収リガンドのピコモルレベルの測定が可能になる。測定は、インドメタシンとメクロフェナメートの両方について3連で実施した。
【図8】ALISによって同定された1例であるCOX−1リガンドの構造を示す図。NGL−177−A−1128−A−2aと呼ばれるこの化合物は、ALISスクリーニングによってCOX−1リガンドであると同定された化合物の1例である。
【図9】COX−1結合に関するメクロフェナメートとの競合を示す棒グラフ。選択されたCOX−1ヒット化合物は、各約1μMで、頭にNGL−xと付いた10文字の名称で識別されるが、これらがCOX−1への結合に関して25μMメクロフェナメートと競合するかどうかを決定するため個々に試験を行った。メクロフェナメートまたは被験リガンドのいずれかの質量に相当する質量スペクトルの応答を定量化した。COX−1結合に関してメクロフェナメートと競合する被験リガンドでは、「リガンド+競合物質」の応答が、「リガンド−競合物質」の応答よりも低くなる。また、メクロフェナメートの応答は、上述の「リガンド+競合物質」の試行に関して「COX1+25μMメクロフェナメートの試行」の場合より低くなる。例えば、NGL−169−A−1151−A−4で表される試験化合物はメクロフェナメートと競合するが、NGL−175−A−1127−A−1で表される試験化合物は、はっきりと競合するとは言えない。
【図10】ALIS法による質量スペクトル分析のシグナル強度によって定量したM2R1リガンド回収率の程度を示す棒グラフ。x軸は、ピレンゼピン、QNB、およびアトロピンの各質量に対する質量スペクトルのシグナル応答を相対単位で表す。
Claims (40)
- (a)疎水性標的タンパク質とリガンド分子との少なくとも1個の複合体の形成が促進されるように、両親媒性物質が結合している疎水性標的タンパク質を多数の分子に曝すことによるアフィニティ選択によってリガンド分子を選択する工程と、
(b)該複合体を非結合分子から分離する工程と、
(c)リガンド分子を同定する工程と
からなる疎水性タンパク質のリガンドを同定する方法。 - 前記疎水性標的タンパク質を多数の分子に曝すことが、均一溶液相の条件下で行われる請求項1に記載の方法。
- 前記疎水性標的タンパク質を多数の分子に曝すことが、不均一溶液相の条件下で行われる請求項1に記載の方法。
- 前記リガンド分子の選択が、多次元クロマトグラフィを使用して行われる請求項1に記載の方法。
- 前記疎水性標的タンパク質が、
(a)膜タンパク質と、
(b)内在性膜タンパク質と
(c)膜貫通タンパク質と、
(d)モノトピック型膜タンパク質と、
(e)ポリトピック型膜タンパク質と、
(f)ポンプ・タンパク質と、
(g)チャネル・タンパク質と、
(h)受容体キナーゼタンパク質と、
(i)Gタンパク質共役受容体タンパク質と、
(j)膜結合酵素と、
(k)輸送体タンパク質と
からなる群から選択される請求項1に記載の方法。 - 前記多数の分子はマスコードされた分子ライブラリである請求項1に記載の方法。
- 前記多数の分子はマスコードされていない分子ライブラリである請求項1に記載の方法。
- 前記両親媒性物質が、
(a)極性脂質と、
(b)両親媒性高分子ポリマーと、
(c)表面活性物質または界面活性剤と、
(d)両親媒性ポリペプチドと
からなる群から選択される請求項1に記載の方法。 - リガンド分子の同定が、質量スペクトル分析によって行われる請求項1に記載の方法。
- 前記リガンド分子のデコンボリューションが質量スペクトル分析によって行われる請求項1に記載の方法。
- 前記複合体の前記非結合分子からの分離が、固相クロマトグラフィ媒体により行われる
請求項1に記載の方法。 - 前記疎水性標的タンパク質が、
(a)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列と、
(b)アフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列と、
(c)疎水性タンパク質(HP)配列と
からなる請求項1に記載の方法。 - 前記疎水性タンパク質配列が、
(a)膜タンパク質と、
(b)内在性膜タンパク質と、
(c)膜貫通タンパク質と、
(d)モノトピック型膜タンパク質と、
(e)ポリトピック型膜タンパク質と、
(f)ポンプ・タンパク質と、
(g)チャネル・タンパク質と、
(h)受容体キナーゼタンパク質と、
(i)Gタンパク質共役受容体タンパク質と、
(j)膜結合酵素と、
(k)輸送体タンパク質と
からなる群から選択される請求項12に記載の方法。 - 前記タグ配列が、
(a)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号29)と、
(b)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号30)と、
(c)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号31)と、
(d)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号32)と、
(e)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号33)と
からなる群から選択されるエピトープ・タグ配列を含む請求項12に記載の方法。 - 前記疎水性標的タンパク質が、
(a)タグ1−タグ2−HPと、
(b)タグ1−HP−タグ2と、
(c)HP−タグ1−タグ2と
からなる群から選択された順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで並ぶ配列を含む請求項12に記載の方法。 - 前記疎水性標的タンパク質が、
(a)Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号7)と、
(b)Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号8)と、
(c)ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号9)と、
(d)Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号10)と、
(e)ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号11)と
からなる群から選択される請求項15に記載の方法。 - 前記疎水性標的タンパク質が、アミノ末端に異種シグナル配列(SS)をさらに含む請求項15に記載の方法。
- 前記異種シグナル配列が、
(a)メリチン・シグナル配列NH2−KFLVNVALVFMVVYISYIYA−COOH(配列番号12)と、
(b)GPシグナル配列NH2−VRTAVLILLLVRFSEP−COOH(配列番号13)と、
(c)ヘマグルチニン・シグナル配列NH2−KTIIALSYIFCLVFA−COOH(配列番号14)と、
(d)ロドプシン・タグ1シグナル配列NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号15)と、
(e)ロドプシン・タグID4シグナル配列NH2−GKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号16)と
からなる群から選択される請求項17に記載の方法。 - 前記タグ配列が、ヘキサヒスチジン配列(配列番号17)とデカヒスチジン配列(配列番号18)とをさらに含む請求項18に記載の方法。
- 前記疎水性標的タンパク質が、
(a)GP67 SS−Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、
(b)メリチンSS−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号20)と、
(c)ヘマグルチニンSS−ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号21)と、
(d)メリチンSS−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号22)と、
(e)ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号23)と
からなる群から選択される請求項19に記載の方法。 - (a)疎水性タンパク質をショ糖勾配超遠心法によって精製する工程と、
(b)該疎水性タンパク質を抗体アフィニティ精製によって精製する工程と、
(c)該疎水性タンパク質を固定化金属アフィニティ・クロマトグラフィによって精製する工程と
からなる、疎水性タンパク質を単離する方法。 - 前記疎水性タンパク質が、
(a)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列と、
(b)アフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列と、
(c)疎水性タンパク質(HP)配列と
からなる請求項21に記載の方法。 - 前記疎水性タンパク質配列が、
(a)膜タンパク質と、
(b)内在性膜タンパク質と、
(c)膜貫通タンパク質と、
(d)モノトピック型膜タンパク質と、
(e)ポリトピック型膜タンパク質と、
(f)ポンプ・タンパク質と、
(g)チャネル・タンパク質と、
(h)受容体キナーゼタンパク質と、
(i)Gタンパク質共役受容体タンパク質と、
(j)膜結合酵素と、
(k)輸送体タンパク質と
からなる群から選択される請求項22に記載の方法。 - 前記タグ配列が、
(a)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号29)と、
(b)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号30)と、
(c)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号31)と、
(d)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号32)と、
(e)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号33)と
からなる群から選択されるエピトープ・タグ配列を含む請求項22に記載の方法。 - 前記疎水性タンパク質が、
(a)タグ1−タグ2−HPと、
(b)タグ1−HP−タグ2と、
(c)HP−タグ1−タグ2と
からなる群から選択された順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで並ぶ配列を含む請求項22に記載の方法。 - 前記疎水性タンパク質が、
(a)Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号7)と、
(b)Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号8)と、
(c)ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号9)と、
(d)Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号10)と、
(e)ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号11)と
からなる群から選択される請求項22に記載の方法。 - 前記疎水性タンパク質が、アミノ末端に異種シグナル配列(SS)をさらに含む請求項22に記載の方法。
- 前記異種シグナル配列が、
(a)メリチン・シグナル配列NH2−KFLVNVALVFMVVYISYIYA−COOH(配列番号12)と、
(b)GPシグナル配列NH2−VRTAVLILLLVRFSEP−COOH(配列番号13)と、
(c)ヘマグルチニン・シグナル配列NH2−KTIIALSYIFCLVFA−COOH(配列番号14)と、
(d)ロドプシン・タグ1シグナル配列NH2−MNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号15)と、
(e)ロドプシン・タグID4シグナル配列NH2−GKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号16)と
からなる群から選択される請求項27に記載の方法。 - 前記タグ配列が、ヘキサヒスチジン配列(配列番号17)とデカヒスチジン配列(配列番号18)とをさらに含む請求項14に記載の方法。
- 前記疎水性標的タンパク質が、
(a)GP67 SS−Mycタグ−EEタグ−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、
(b)メリチンSS−Flagタグ−ヒトβ2アドレナリン受容体−EEタグ(配列番号20)と、
(c)ヘマグルチニンSS−ヒトニューロキニン3受容体−HSVタグ−Mycタグ(配列番号21)と、
(d)メリチンSS−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EEタグ(配列番号22)と、
(e)ヘマグルチニンSS−ラットm3 mAChR−HSVタグ−8Hisタグ(配列番号23)と
からなる群から選択される請求項29に記載の方法。 - (a)真核細胞におけるタンパク質発現用のベクター・ポリヌクレオチド配列と、
(b)下記の要素、すなわち
(i)N末端メチオニン残基、
(ii)異種シグナル配列(SS)、
(iii)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列、
(iv)アフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列、および
(v)疎水性タンパク質(HP)配列
からなる人工的に改変された疎水性タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列と
を含む疎水性タンパク質の発現に適した単離核酸分子。 - 前記N末端メチオニン配列および前記異種シグナル配列が、
(a)MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号24)と、
(b)MVRTAVLILLLVRFSEP(配列番号25)と、
(c)MKTIIALSYIFCLVFA(配列番号26)と、
(d)MMNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号27)と、
(e)MGKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号28)と
からなる群から選択される請求項32に記載の単離核酸分子。 - 前記タグ配列が、
(a)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)と、
(b)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)と、
(c)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)と、
(d)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)と、(e)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)と
からなる群から選択されたエピトープ・タグ配列からなる請求項33に記載の単離核酸分子。 - 前記人工的に改変された疎水性タンパク質の前記要素が、
(a)SS−タグ1−タグ2−HPと、
(b)SS−タグ1−HP−タグ2と、
(c)SS−HP−タグ1−タグ2と
からなる群から選択された順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで配列される請求項33に記載の単離核酸分子。 - 前記タグ配列がヘキサヒスチジン配列(配列番号17)とデカヒスチジン配列(配列番号18)とをさらに含む請求項34に記載の単離核酸分子。
- 前記人工的に改変された疎水性タンパク質が、
(a)GP67−Myc−EE−ヒトm2 mAChR(配列番号19)と、
(b)メリチン−Flagタグ−ヒトm1 mAChR−EE(配列番号20)と
からなる群から選択される請求項35に記載の単離核酸分子。 - (a)(i)膜タンパク質、
(ii)内在性膜タンパク質、
(iii)膜貫通タンパク質、
(iv)モノトピック型膜タンパク質、
(v)ポリトピック型膜タンパク質、
(vi)ポンプ・タンパク質、
(vii)チャネル・タンパク質、
(viii)受容体キナーゼタンパク質、
(ix)Gタンパク質共役受容体タンパク質、
(x)膜結合酵素、および
(xi)輸送体タンパク質
からなる群から疎水性標的タンパク質を選択する工程と、
(xii)該疎水性タンパク質に両親媒性物質が結合していることと、
(b)(i)極性脂質、
(ii)両親媒性高分子ポリマー、
(iii)表面活性物質または界面活性剤、および
(iv)両親媒性ポリペプチド
からなる群から該疎水性タンパク質に結合する両親媒性物質を選択する工程と、
(c)該疎水性標的タンパク質と該リガンド分子との少なくとも1つの複合体の形成が促進されるように、均一溶液相の条件下、両親媒性物質が結合している該疎水性標的タンパク質をマスコード・ライブラリ由来の多数の分子に曝すことによるアフィニティ選択により、多次元クロマトグラフィを使用してリガンド分子を選択する工程と、
(d)該複合体を非結合分子から分離する工程と、
(e)質量スペクトル分析によって該リガンド分子を同定する工程と
からなる、疎水性タンパク質のリガンドを同定する方法。 - (a)(i)膜タンパク質、
(ii)内在性膜タンパク質、
(iii)膜貫通タンパク質、
(iv)モノトピック型膜タンパク質、
(v)ポリトピック型膜タンパク質、
(vi)ポンプ・タンパク質、
(vii)チャネル・タンパク質、
(viii)受容体キナーゼタンパク質、
(ix)Gタンパク質共役受容体タンパク質、
(x)膜結合酵素、および
(xi)輸送体タンパク質
からなる群から疎水性標的タンパク質を選択する工程と、
(xii)該疎水性タンパク質に両親媒性物質が結合していることと、
(b)(i)極性脂質、
(ii)両親媒性高分子ポリマー、
(iii)表面活性物質または界面活性剤、および
(iv)両親媒性ポリペプチド
からなる群から該疎水性タンパク質に結合する両親媒性物質を選択する工程と、
(c)疎水性標的タンパク質とリガンド分子との少なくとも1つの複合体の形成が促進されるように、不均一溶液相の条件下、両親媒性物質が結合している疎水性標的タンパク質をマスコードされていないライブラリ由来の多数の分子に曝すことによるアフィニティ選択により、多次元クロマトグラフィを使用してリガンド分子を選択する工程と、
(d)複合体を非結合分子から分離する工程と、
(e)質量スペクトル分析によって該リガンド分子を同定する工程と
からなる、疎水性タンパク質のリガンドを同定する方法。 - (a)(i)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列、
(ii)(1)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号29)、
(2)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号30)、
(3)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号31)、
(4)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号32)、および
(5)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号33)
からなる群から選択されるアフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列、
(iii)(1)膜タンパク質、
(2)内在性膜タンパク質、
(3)膜貫通タンパク質、
(4)モノトピック型膜タンパク質、
(5)ポリトピック型膜タンパク質、
(6)ポンプ・タンパク質、
(7)チャネル・タンパク質、
(8)受容体キナーゼタンパク質、
(9)Gタンパク質共役受容体タンパク質、
(10)膜結合酵素、および
(11)輸送体タンパク質
からなる群から選択される疎水性タンパク質(HP)配列
からなる疎水性タンパク質を選択する工程と、
(b)該疎水性タンパク質をショ糖勾配超遠心法によって精製する工程と、
(c)該疎水性タンパク質を抗体アフィニティ精製によって精製する工程と、
(d)該疎水性タンパク質を固定化金属アフィニティ・クロマトグラフィによって精製する工程と
からなる疎水性タンパク質を単離する方法。 - (a)真核細胞におけるタンパク質発現用のベクター・ポリヌクレオチド配列と、
(b)下記の要素、すなわち
(i)N末端メチオニン残基、
(ii)該N末端メチオニン配列および異種シグナル配列が、
(1)MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号24)、
(2)MVRTAVLILLLVRFSEP(配列番号25)、
(3)MKTIIALSYIFCLVFA(配列番号26)、
(4)MMNGTEGPNFYVPFSNKTGVVRSPFEAPQYYLAEP−COOH(配列番号27)、および
(5)MGKNPLGVRKTETSQVAPA−COOH(配列番号28)
からなる群から選択される異種シグナル配列(SS)、
(iii)少なくとも1つの膜貫通ドメイン配列、
(iv)(1)FLAGタグ(NH2−DYKDDDDK−COOH)(配列番号1)、
(2)EEタグ(NH2−EEEEYMPME−COOH)(配列番号2)、
(3)ヘマグルチニン・タグ(NH2−YPYDVPDYA−COOH)(配列番号3)、
(4)mycタグ(NH2−KHKLEQLRNSGA−COOH)(配列番号4)、および
(5)HSVタグ(NH2−QPELAPEDPED−COOH)(配列番号5)からなる群から選択されるアフィニティ選択に有用な少なくとも2つのタグ配列、
(v)(1)膜タンパク質、
(2)内在性膜タンパク質
(3)膜貫通タンパク質、
(4)モノトピック型膜タンパク質、
(5)ポリトピック型膜タンパク質、
(6)ポンプ・タンパク質、
(7)チャネル・タンパク質、
(8)受容体キナーゼタンパク質、
(9)Gタンパク質共役受容体タンパク質、
(10)膜結合酵素、および
(11)輸送体タンパク質
からなる群から選択される疎水性タンパク質(HP)配列
を含む人工的に改変された疎水性タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列と
を含む、疎水性タンパク質の発現に適した単離核酸分子。
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