JP2018531389A - 現場(in situ)でのトランスデューサ較正 - Google Patents

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Abstract

流量計(5)のトランスデューサを較正する方法が提供され、該方法は流量計(5)の流管(130、130’) の振動モードを励振するステップと、振動モードの励振を停止するステップを備え、流管(130、130’)の自由減衰応答が測定される。駆動周波数における自由減衰応答の振幅及び位相が抽出され、トランスデューサの強度が計算される。
【選択図】図8

Description

本発明は流量計の分野に関し、特にコリオリ流量計に関する。
流量計高調波に関連するような非線形システムは、信号を歪ませる傾向がある。例えば、入力信号がωにおいて強い周波数成分を有すると、高調波歪みによりω、2ω、3ωなどの成分を有する出力信号が生成される。これに関連しているのは、相互変調(IM)歪み現象である。IM歪みは、少なくとも2つの入力トーンがあるときに見られる。この場合、非線形システムは高調波周波数においてだけでなく、入力トーンの線形結合(例えば和および差)においても出力を生成する。これら2つの現象は相互排他的ではなく、シングルトーンで高調波歪みを生成するあらゆる非線形システムは、マルチトーンに対してIM歪みを生成するであろう。高調波トーンは、実際はIM歪みトーンのサブセットである。
例として、流量計に適したボイスコイル・トランスデューサなどの速度トランスデューサは以下のように記述される出力を有し得る。
Figure 2018531389
利得kは通常、定数として扱われる(利得はBL係数としても知られている)。ボイスコイル・トランスデューサの場合、コイルに対する永久磁石の係合位置が変化することによって、トランスデューサ利得は実際に位置の関数となり、磁石がコイル中心から遠ざかるにつれて、トランスデューサの強度が低下する。この挙動を記述する数学モデルの例は次のとおりである。
Figure 2018531389
このトランスデューサモデルが正確であるためには、トランスデューサの位置は特定の範囲(この場合、|x|≦1)に制限されなければならない。IM歪みの影響を観察するために、システムへの入力が2つの純周波数である場合の例は、以下のように記述することができる。
Figure 2018531389
式(3)および(2)を(1)に代入すると、出力を計算することができる。
Figure 2018531389
式(4)は、積を展開し、次いで正弦および余弦の積に対して、例えば以下の三角関数の恒等式を繰り返し適用することにより簡略化することができる。
Figure 2018531389
式(5)は更に次のように簡略化することができる。
Figure 2018531389
式(6)は、8つの異なる周波数における特定の振幅の正弦波を表し、2つのトーンの特定の線形結合に対応する。振幅、周波数、および位相のすべてが予測可能であれば、IMの挙動を記述することが可能である。
本明細書では、トランスデューサの非線形性は多項式としてモデル化される。テイラーの定理によると、すべての十分に滑らかな(すなわち微分可能な)関数は、多項式で近似されることができる。そのような多項式の形は、大多数の流量計トランスデューサが遭遇すると予想される、大部分のあらゆる非線形性に対して存在する。多項式の低次項が、本明細書に記載される流量計トランスデューサの挙動を支配する傾向があることが認められている。従って、実用的な適用には、適切な最大多項式次数(例えば4次〜8次)が必須ではないが好ましい。
このシステム非線形性は、入力/出力、ならびにそれらのいくつかの数の微分または積分の観点でモデル化することができる。例えば、流量計で多くの場合に用いられるボイスコイル・トランスデューサは(システムにとって入力/出力空間と考えられる)速度を測定するが、位置(速度の積分)に関しては非線形である。
あらゆる入力周波数、位相、および振幅、ならびにあらゆる任意の非線形性多項式を有するIM歪みのケースを扱うために、実施形態で使用されることを予想して、以下にいくつかの特定の数学的ツールを簡単に説明する。
多項式の高次項を展開するとき、入力信号(またはその、いくつかの微分/積分)は、より高次のべき乗になる。実施形態はマルチトーン信号に重点を置いているため、入力はいくつかの数の項の和となるであろう。従って、以下の式の閉形式展開が用いられる。
Figure 2018531389
べき乗kが大きい場合、または項nが大きい場合、本式の計算は困難になり得る。しかし、この問題はより広く知られている二項展開、(a+b)、の一般化である。二項展開により、aおよびbの、足してk:a、ak-1b、ak-2、…、abk-1、bとなるべき乗のあらゆる組合せからなるk+1項が得られる。その場合、多項式展開は、x、x、…xの、合計してkとなるべき乗のあらゆる組合せからなる。この多項式展開は、再帰的アルゴリズムを使用して容易に実現することができる。基本的に、第一項xは、これに対して許容されるすべてのべき乗にわたって、0からkまでループされる。次に、許容されるxのべき乗の各々に対して、xに許容される値にわたって、0から、xに対して選択されたべき乗をkから引いた値までループされる。その次の項に対してべき乗が選択され、べき乗の合計がkになると、各パスが終了する。べき乗の組合せで有効なものが各々、完全な多項式展開配列に記録される。すべてのループが完了したら、有効な展開項のすべてが計算されたことになるであろう。
べき乗kまたは項数nのいずれかが大きくなると、展開項の数は非常に急激に増加し得る。これは、復元を伴う、nからk選択(n-choose-k)という問題であり、すなわち、n群からk項目を選ぶことであり、所与の項目は複数回選ぶことができる。nからk選択という問題は、確率ではよく知られた構成概念であり、従って、単に参考文献を参照することで、多項式展開から得られる項の個数は以下のように記述できる。
Figure 2018531389
例えば、制限なしで、5項入力の4乗からは70項が得られ、6項入力の7乗からは792項が得られる。
多項式展開に現れる項を算出することに加え、この展開に伴う係数を計算することも必要である。二項式の例に戻る。
Figure 2018531389
展開の係数は、べき指数が増えるにつれて予測可能なパターンに従い、これら係数は多くの場合パスカルの三角形と呼ばれる。個々の係数はパスカルの法則を使用して得られる。
Figure 2018531389
ここでも、幸いなことに、この公式を任意の多項式の場合に一般化した式がある。多項式展開において、項x ko、x k1、…x kmに伴う係数は次のように計算される。
Figure 2018531389
ここで、多項式展開の性質により、k+k+…+k=nである。
正弦波入力トーンの多項式展開は、複数の正弦、余弦の積からなる項になるであろう。例えば以下のようになる。
Figure 2018531389
種々の展開項からの結果を簡略化し組み合わせるために、これらの項を正弦および余弦の独立和に変換する必要がある。これは、式(5)の恒等式を繰り返し適用し、結果を個々の正弦および余弦として表現し、次いで繰り返し恒等式を適用することにより可能になり、以下のようになる。
Figure 2018531389
追加の項はもっと複雑な展開になるが、同一の基本法則に従う。使われた三角関数の恒等式の性質により、展開の全体は結局、正弦または余弦のいずれかとして表現されるであろう。これら恒等式を繰り返し適用した結果、生成された周波数および振幅のベクトルが維持されつつ、ループ内に組み込むことが比較的簡単となった。一般に、積の各々は、既約後の和において項数が2倍になるが、多くの項は、結局は同じ周波数となり、従って合体可能であり(例えば式(13)の2つのsinωt)、正と負の周波数が等価であることを考慮すると、尚更そうである。
Figure 2018531389
システム非線形性の多項式モデルおよびシステムへの一組の入力トーンが与えられれば、システムによって生成される全てのトーン(周波数、振幅および位相を含む)を予測することができる流量計および/または関連する電子機器が提供され、当該技術分野の進歩が達成される。より具体的には、流量計に使用されるトランスデューサは通常、強度において顕著な変動を有し、理論上「同一」のトランスデューサにおいて20〜30%にも到る。この変動は、主に磁石強度の変動に起因すると考えられているが、製造工程における変動のために、静止状態のトランスデューサの係合点が異なることによっても生じる可能性がある。加えて、トランスデューサの強度は、例えば昇温状態などの、その場の条件によって変化し得る。本明細書に記載の装置および方法は、電気的測定のみに基づいて、実際の物理的装置でトランスデューサの強度を決定する方法を提供する。このように、トランスデューサは、専用装置を必要とするのではなく、オンボードの流量計電子機器で行われた測定に基づいて較正することができる。これにより、完全に組み立てられた流量計のオンデマンドおよび/または定期的な再較正も可能になる。
一実施形態による、流量計トランスデューサの較正方法が提供される。本方法は、流量計流管の振動モードを励振させるステップ、および振動モードの励振を停止させるステップを含む。流管の自由減衰応答が測定され、自由減衰応答の振幅および位相が駆動周波数において抽出される。次いで、トランスデューサの強度が計算される。
一実施形態により振動型流量計が提供される。流量計は、1つまたは複数の流管、ならびに第1及び第2のピックオフセンサ、ならびに1つまたは複数の流管を振動させるように構成される第1及び第2の励振器を含むセンサアセンブリを備える。メータ電子機器は、第1及び第2のピックオフセンサに結合され、第1及び第2の励振器に結合され、メータ電子機器は、第1の信号を第1及び第2の励振器に提供するように構成されている。第1及び第2の励振器は、1つまたは複数の流管の振動モードを励振するように構成され、振動モードの励振が停止され、1つまたは複数の流管の自由減衰応答が測定され、メータ電子機器は更に、多項式非線形性モデルを導出し、少なくとも第1及び第2のピックオフセンサの強度を計算するように構成される。
態様
一態様によれば、流量計トランスデューサを較正する方法は、流量計流管の振動モードを励振することと、振動モードの励振を停止することと、流管の自由減衰応答を測定することと、駆動周波数における自由減衰応答の振幅および位相を抽出することと、トランスデューサの強度を計算することと、を含む。
好ましくは、流量計は共振点にて励振される。
好ましくは、本方法はトランスデューサのピーク速度を決定するステップを含む。
好ましくは、トランスデューサは励振器を含む。
好ましくは、トランスデューサはピックオフセンサを含む。
好ましくは、トランスデューサはピックオフセンサと並置される励振器を含む。
好ましくは、本方法は、多項式非線形性を導出するステップと、参照曲線を提供するステップと、多項式非線形性モデルの曲線をモデル化するステップと、測定された非線形性モデルを参照曲線に当てはめるステップとを含む。
好ましくは、本方法は、トランスデューサの強度を補償するためにメータ電子機器を較正するステップを含む。
好ましくは、本方法は、プロセス流体を流管を通して流すステップと、プロセス流体の流量を測定するステップを含む。
一態様によれば、振動型流量計は、1つまたは複数の流管ならびに第1及び第2のピックオフセンサを含むセンサアセンブリと、1つまたは複数の流管を振動させるように構成される第1及び第2の励振器と、第1及び第2のピックオフセンサに結合され、第1及び第2の励振器に結合されるメータ電子機器とを備え、メータ電子機器は、第1の信号を第1及び第2の励振器に提供するように構成され、第1及び第2の励振器は、1つまたは複数の流管の振動モードを励振するように構成され、振動モードの励振が停止され、1つまたは複数の流管の自由減衰応答が測定され、メータ電子機器は更に、多項式非線形性モデルを導出し、少なくとも第1及び第2のピックオフセンサの強度を計算するように構成されている。
好ましくは、メータ電子機器は、自由減衰応答の振幅を計算し、自由減衰応答の位相を計算するように構成される。
好ましくは、第1のピックオフセンサと第1の励振器が並置され、第2のピックオフセンサと第2の励振器が並置される。
好ましくは、メータ電子機器は、参照曲線を提供し、かつ曲線を多項式非線形性モデルとしてモデル化し、測定された非線形性モデルが参照曲線に当てはめられるように構成される。
好ましくは、メータ電子機器は、メータ電子機器を較正してトランスデューサ強度を補償するように構成される。
好ましくは、振動型流量計は流管内にプロセス流体を含み、メータ電子機器はプロセス流体の流量を測定するように構成される。
好ましくは、メータ電子機器は、非線形性多項式を調整し、測定された高調波を補償するように構成される。
一実施形態による振動型流量計である。 4次非対称多項式トランスデューサモデルを示す。 5トーンシステムの相互変調歪みモデルを示す。 図3Aの相互変調歪みモデルの拡大図を示す。 プルカーブ試験からの生データを、2次多項式当てはめ結果と共に示す。 図4Aのプルカーブ試験からの生データを、3次多項式当てはめ結果と共に示す。 図4Aのプルカーブ試験からの生データを、4次多項式当てはめ結果と共に示す。 図4Aのプルカーブ試験からの生データを、5次多項式当てはめ結果と共に示す。 一実施形態による、未知の多項係数を解く方法を示す。 流量計の動作中の駆動周波数および関連する高調波を示す。 合成されたトランスデューサ応答曲線を示す。 一実施形態によるトランスデューサ強度を決定する方法を示す。
図1乃至図8及び以下の説明は、当業者に、本発明の最良の形態を作成および使用する方法を教示するための特定の例を示す。本発明の原理を教示するために、いくつかの従来の態様は簡略化または省略されている。当業者は、本発明の範囲内に含まれる、これらの実施例からの変形形態を理解するであろう。当業者は、以下に説明する特徴を様々な方法で組み合わせて本発明の複数の変形形態を形成できることを理解するであろう。その結果、本発明は、以下に説明する具体例に限定されるものではなく、特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定される。
図1は、一実施形態による振動型流量計5を示す。流量計5は、センサアセンブリ10、およびセンサアセンブリ10に結合されるメータ電子機器20を含む。センサアセンブリ10は、プロセス材料の質量流量および密度に応答する。メータ電子機器20は、リード線100を介してセンサアセンブリ10に接続され、通信リンク26を介して密度、質量流量、および温度情報、ならびに他の情報を提供する。コリオリ流量計構造が記載されているが、当業者には本発明を振動管デンシトメータとして動作させることもできることは明らかである。
センサアセンブリ10は、マニホールド150および150'、フランジネック110および110'を有するフランジ103および103'、平行流管130および130'、第1及び第2の励振器180Lおよび180R、ならびに第1及び第2のピックオフセンサ170Lおよび170R、を含む(簡潔のため、励振器180L、180Rおよびピックオフセンサ170L、170Rは、本明細書ではまとめて「トランスデューサ」と呼ぶことがある)。第1及び第2の励振器180Lおよび180Rは、1つまたは複数の流管130および130'上で離間している。加えて、いくつかの実施形態では、センサアセンブリ10は、温度センサ190を含み得る。流管130および130'は、流管取付けブロック120および120'において互いに向かって収束する、2つの基本的に直線状の入口脚部131および131'、および出口脚部134および134'を有する。流管130および130'は、その長手方向に沿った2つの対称位置で曲げられ、長手方向の全体にわたって基本的に平行である。ブレースバー140および140'は、軸W、およびそれと実質的に平行な軸W'を画定する役割を担い、これら軸のまわりを各流管130、130'が振動する。なお、一実施形態では、第1の励振器180Lは第1のピックオフセンサ170Lと並置されてもよく、第2の励振器180Rは第2のピックオフセンサ170Rと並置されてもよい。
流管130および130'の側方脚部131、131'および134、134'は、流管取付けブロック120および120'に固定して取り付けられ、これらのブロックは次いで、マニホールド150および150'に固定して取り付けられる。これにより、センサアセンブリ10を通る連続的な材料閉路が提供される。
ファスナ穴102および102'を有するフランジ103および103'が、入口端部104および出口端部104'を介して、被測定物であるプロセス材料を搬送するプロセスライン(図示せず)に接続されると、材料は、フランジ103内のオリフィス101を通って流量計5の入口端部104に入り、マニホールド150を通り、表面121を有する流管取付けブロック120に導かれる。マニホールド150内で、材料は分割され、流管130および130'を通って送られる。流管130および130'を出た時点で、プロセス材料はマニホールド150'内で単一の流れに再合流し、その後、フランジ103'によってオリフィス101'を介してプロセスライン(図示せず)に接続される出口端部104'に送られる。
流管130および130'は、それぞれ、曲げ軸W-WおよびW'-W'のまわりに、実質的に同じ質量分布、慣性モーメントおよびヤング率を有するように選択され、流管取付けブロック120および120'に適切に取り付けられる。これら曲げ軸は、ブレースバー140および140'を通過する。流管のヤング率は温度と共に変化し、この変化は流量および密度の計算に影響を及ぼすゆえに、抵抗温度検出器(RTD)であってもよい温度センサ190が流管130、130'に取り付けられ、流管130、130'の温度を連続的に測定する。温度センサ190にわたって生じる温度依存性電圧は、メータ電子機器20に使用され、流管温度のあらゆる変化による流管130および130'の弾性率の変化を補償することができる。温度センサ190は、リード線195によってメータ電子機器20に接続されている。
システム非線形性の入力トーン情報(周波数、振幅および位相)および多項式モデルが与えられれば、メータ電子機器20はシステムから出力トーン(周波数、振幅および位相)を返す。一実施形態では、任意位相の正弦波は、余弦成分と正弦成分の加重和として表される。
入力は正弦波の和であると仮定される。
Figure 2018531389
システム非線形性は、入出力空間の多項式、またはこの空間のいくつかの数の積分/微分を用いてモデル化される(例えば、加速度を測定しているかもしれないが、システムは位置に関して非線形である)。「非線形性空間」を
Figure 2018531389
と表すと、システム応答は以下のように記述できる。
Figure 2018531389
ここで、Pは非線形性多項式である。
Figure 2018531389
メータ電子機器20は、計算の異なるレベルにわたって反復してもよい。最上位のレベルでは、反復は多項式の項にわたって行われる。入力xを多項式の項に分配することによって、出力はいくつかの独立項の和として記述することができる。
Figure 2018531389
従って、各多項係数の出力は別々に計算され、結果を最後に合体する。
そこで、多項式の各項に対して
Figure 2018531389
の完全展開を計算する必要がある。従って
Figure 2018531389
もまた、正弦波項の和と仮定されることに留意されたい。従って
Figure 2018531389
は、項が正弦および余弦からなる標準の多項式展開である。展開項は、本明細書に記載された多項式項の手法を使用して、例えば制限なしに計算されることができる。
Figure 2018531389
の展開が与えられれば、次いで各展開項にxが掛けられる。これにより、
Figure 2018531389
に関連する全ての項が得られる。この時点で、n項が合計され、各項は複数の正弦および余弦の積となる。
次のステップは、第2レベルの反復ループに入り、各展開項を評価することである。各項に対して、多項式係数(すなわち、
Figure 2018531389
がどのように展開するかというパターンのみに基づく各項の乗数)が計算され、次いでその項に寄与する正弦および余弦の多項係数Pおよび振幅が掛けられる。上記のとおり、多項式係数の計算は、この特定の展開項に関連するスカラを形成する。この展開項は、単にいくつかの正弦および余弦の積である。次いで、これは種々の周波数における正弦または余弦の和に変換される。これら正弦波(周波数、振幅、正弦/余弦)に関する情報は保持され、次の展開項に引き継がれる。
上記の手順がすべての展開項(すなわち内側ループ)に対して、およびすべての多項係数(すなわち外側ループ)に対して完了すると、その結果は特定周波数において特定振幅を有する多数の正弦および余弦となり、次いでその結果はまとめられる。負の周波数を有する正弦波はすべて、正の周波数を有する等価なものに変換され、類似した周波数の正弦と余弦は合計される。これら正弦と余弦の振幅と周波数が返され、完全な出力が形成される。
従ってメータ電子機器20は、相当に複雑な特性を生成することができる。図2を参照すると、約80Hzを中心とする5トーン入力を示す例が提示され、4次多項式を利用する若干誇張されたトランスデューサの非線形性モデルが示される。結果として得られる全体のシステム出力が図3Aに示され、入力周波数帯域を拡大したものが図3Bである。入力トーンの近くの特定のIMトーンは相当な振幅(入力トーンより約30dB下)を有するが、多項式の高次項に対応する、入力からさらに離れたトーンは振幅がずっと小さい(多くは入力トーンより100〜200dB低い)。
トランスデューサの非線形性は、多項式モデルから導かれた参照用テーブルを介してモデル化することができる。モデルがプルカーブ・データに当てはめられ、その結果の多項式モデルが返されるが、これは測定されたプルカーブ・データの2乗に対する当てはめである。これは近似だが、非線形トランスデューサ効果は2度、すなわち1度はシステムに力を加えるため、次いで再び速度を測定するために適用される。従来の流量計は、励振器およびピックオフセンサ用に別個のトランスデューサを使用しており、これらは異なるプルカーブおよび異なる振動振幅を有している。しかし、一実施形態では、並置されたトランスデューサが使用され、従って、ほぼ同じプルカーブ特性および振動振幅を有する。この二重の効果は、標準的なプルカーブの結果を単純に2乗することで近似できる。
多項式当てはめ用の調整可能なパラメータは、主として当てはめの次数、および静止位置が曲線のピークにあるかどうか、またはオフセットがあるかどうかである。図4A乃至図4Dはプルカーブ試験からの生データを、いくつかの次数の多項式当てはめ結果と共に示す。これらの結果に基づくと、4次多項式当てはめ結果は十分な忠実度を含んでいて有利であり、その理由は、より高次の多項式では、例えば計算機器の性能に依存して計算が完了するのに数分ではなく数時間を要し、ランタイムが非常に長くなったであろうからである。いったん4次多項式当てはめ結果が得られると、多項式は、係合位置がゼロのときに最大値が生じるように再びセンタリングされ、最大利得は正規化されてもよい。
非線形性モデルは、本明細書で述べたIMトーン合成プロセスを単に反転させることによって測定データから導き出すことができる。便宜上、正弦と余弦を表す複素数表記を使用する。
Figure 2018531389
また、表記上は、正弦波のべき乗の展開係数として、記号Rを使用することも便利である。kに依存して、cosp+1ωtまたはcosωt・sinωtのいずれかを展開してもよい。しかし、いずれの場合も、Rkpfは、べき乗pを周波数f・ωを有する項に展開したときの係数を表すために使用される。例えば、三角関数の恒等式を単純に適用すると、cosωt・cosωt=cosωt=0.75cosωt+0.25cos3ωtとなる。従って、この場合、R021=0.75及びR023=0.25となる。
別の例として、cosωt・sinωt=0.25cosωt―0.25cos3ωtである。この場合、R121=0.25及びR123=-0.25となる。なお、Rを定義するために、kが偶数であるか奇数であるかだけが重要である。すなわち、R0pf=R2pf=R−4pf及びR1pf=R3pf=R−5pfである。従って、任意の値のpおよびfに対して、特定の係数の値を見つけることができる。pの偶数の値が基底周波数の奇数倍だけを生成し、pの奇数の値が偶数倍だけを生成することは注目に値する。
周波数または符号にかかわらず、積分/微分値がRkpfのkの値に基づいて、正弦または余弦であるかどうかの問題が扱われる。例えば、(d/dt)cosωt=―sinωtである。
余弦から正弦への変換は係数Rによって処理されるが、因子―ωは依然として考慮されなければならない。一般に、kが測定空間から非線形性空間への微分(正)または積分(負)の数を表すために使用されるので、非線形性空間の振幅はsAωと記述され、ここでAは元の信号の振幅であり、sは適当な符号である。例えば、元の加速度信号がAcosωtの場合、その位置は(-A/ω)cosωtである。簡略化した表記では、これは振幅s-2Aω-2=―Aω-2の余弦である。別の例として、Acosωtの位置は、―Aωsinωtの速度、または簡略化した表記では振幅sAω=―Aωの正弦になる。
また、非線形性多項式はy=P+Pn―1n−1+…+Px+Pと与えられ、トーン入力へのシステム応答AcosωtはH+Hcos ωt+Hcos2ωt+…+Hcosnωtと記述されることに注意すべきである。正弦成分は、係数Hの虚数値を介して組み込むことができる。
上で導出した数学を使用して、非線形システムの出力を計算して純粋なトーン入力Acosωtを得る行列方程式が構築されてもよい。このシステムは、入力測定値からの特定空間およびk導関数(積分の場合、kは負)において非線形であり、以下になる。
Figure 2018531389
行列の任意の1行を調べると、次のような式が得られる。
Figure 2018531389
この例では、k=-1(例えば、位置に対して非線形な速度トランスデューサ)と仮定する。基本的な非線形性方程式は
Figure 2018531389
であり、ここで
Figure 2018531389
なので、x(t)=A/ωsinωtとなる。これは出力の3次高調波周波数に対するものであるため、2以上(この場合Rは4までしか増えないため2または4)である偶数の値のRに対する寄与のみを反映する。従って、項P(Acosωt)(Aω-1sinωt)及びP(Acosωt)(Aω-1sinωt)からの寄与が実現される。これは、Pω-2(cosωtsinωt)及びPω-4(cosωtsinωt)と書き直すことができる。Rの定義に留意すると、3次高調波に寄与するこれらの項の一部が、Pω-223cos3ωt及びPω-443cos3ωtと判明する。しかしs-1=1なので、これは式(21)で与えられたものである。
行列(20)の方程式系に関して、項HはDC測定値である。多くの現実のデータ収集では、信頼性の高いDC測定は利用できない。たとえ利用できたとしても、いかなる積分の場合(k<0)でも、数学的計算はDCで不良条件となり、微分の場合(k>0)、DC成分はゼロでなければならない。従って、実際には、方程式の第1行を削除して、既約である一組の式を得ることが必要であり得る。
Figure 2018531389
方程式(22)の方程式系が与えられれば、未知の多項係数Pについて解くことは、単に重み付け行列の逆数を式の両辺に左から掛けることによって簡単にできると思われるかもしれない。しかし、変数Aは厳密には既知ではないということに注目することが重要である。Aは、システムの非線形動力学とは無関係に、「真の」基本的な挙動を表す。非線形システムからの測定値しかないと仮定した場合、Aを直接知ることはできない。これは、実際の物理単位に合わせてスケーリングしなければならない単位で測定することを、流量計ユーザーに対して要求することによって、本質的には真の振幅に関して仮定を強いることによって処理される。より具体的には、計算は係数P=1であると仮定する。Pは非線形性多項式のy切片を表し、従って提供された測定値は、「静止状態で」(位置0において)正しい値であると仮定している。この仮定により、システムは解決可能になる。図5は、これを示す方法である。ステップ500において、中間の変数セットPr+1が解かれる。ステップ502において、P=1と仮定してPAに対する解からAが得られる。最後に、ステップ504に示すように、Aの計算値を(20)または(22)などの行列に代入して係数Pについて解くか、または単にAの既知の値をステップ502からの解に適用してPを計算する。
図6を参照すると、有意な高調波の振幅および位相は、流量計5の標準動作中のピックオフセンサ170L、170Rの応答の時間履歴から取られる(左ピックオフセンサ170LをLPOと呼び、右ピックオフセンサ170RをRPOと呼ぶ)。これらのデータを用いて、図7に示すトランスデューサ応答曲線が作成された。これらの結果は、流量計トランスデューサが、通常の運動範囲での係合位置の関数として、その強度が顕著な変化を見せることを示している。なお、ここで用いられる応答は、閉ループ駆動によって駆動され、(それ自身が非線形性を有する)励振器180L、180Rを介して印加されるので、その結果は真にピックオフセンサ170L、170Rだけの特性ではないと考えられ、むしろ、生成されたプロットは、非線形励振器180L、180Rおよびピックオフセンサ170L、170Rの相乗効果を含む可能性が高い。
図8を参照すると、トランスデューサの強度を決定するための実施形態が示されている。ステップ800において、流量計5が共振点にて励振される。これは、励振器180L、180Rを、例えば制限なしに作動させることによって達成することができる。いったん流量計5が所望の振幅で駆動されると、ステップ802に示すように、流量計5を駆動する信号が停止される。次のステップ804において、自由減衰応答が、ピックオフセンサ170L、170Rを介して測定される。これは、ピックオフの非線形性を励振器180L、180Rの非線形性から分離するために必要である。この応答データから、ステップ806に示すように、駆動周波数における応答の振幅および位相、ならびにその関連する高調波が抽出される。これは、自由減衰中のある時点で行われる。自由減衰中に振幅が低下すると、流量計5はより線形になるであろう。目標は、流量計5が依然として著しく非線形である間に、ある時点で測定を行うことであるが、この測定時の厳密な振幅は特に重要ではない。
一組の高調波振幅および位相が与えられれば、上述しステップ808に示したように、多項式非線形性モデルを得ることができる。トランスデューサの挙動における主な予想される変動源は、マグネット強度および静止状態での係合点であるため、トランスデューサの強度が係合位置の絶対値の関数として測定されると、非線形性は参照プルカーブのように見えるはずである。測定された曲線は、異なる強度を有するかもしれず、参照曲線のサブセクションに位置しているかもしれないが、同じ近似形状であるはずである。ステップ810で反映されるように、測定された非線形性モデルを、その形状が係合位置の関数である参照曲線上に当てはめることにより、トランスデューサが受けている運動範囲を決定することができる。
真の運動範囲が既知の場合、利得値を決定することができる。ステップ812で、運動範囲を主駆動周波数と組み合わせてピーク速度を決定することができる。ステップ814で、この情報をピーク電圧と組み合わせることにより、速度当たりの電圧(電流当たりの力に等しい)におけるトランスデューサ強度が絶対単位で得られる。
励振器180L、180Rの強度は、励振器が発生する逆起電力を測定するためにA/Dハードウェアが利用できるならば、同じようにして得ることできる。あるいは、ピックオフセンサ170L、170Rの非線形性モデルがいったん導出されると、ピックオフセンサ170L、170Rの測定値に基づいて励振器180L、180Rを較正することが可能である。そうするためには、ピックオフセンサ170L、170Rの非線形効果と、システムの機械的応答の効果との両方を除去しなければならない。
上記実施形態の詳細な記載は、本発明の範囲内にあると発明者らによって企図された全ての実施形態を網羅的に記載したものではない。実際、当業者であれば、上記実施形態の特定の要素を様々に結合または除外して更なる実施形態を作成してもよく、そのような更なる実施形態が本発明の範囲および教示に含まれるということを理解するであろう。上記実施形態を全体的にまたは部分的に結合させて、本発明の範囲および教示内にある追加の実施形態を作成してもよいということも、当業者には明らかであろう。従って、本発明の特定の実施形態および本発明の実施例は例示を目的として本明細書に記載されているが、関連技術の当業者は理解するように、本発明の範囲内で様々な均等な修正形態が可能である。本明細書で提供される教示は、上記の実施形態および添付の図面に示された実施形態だけでなく、他の振動システムに適用可能である。従って、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲から決定されるべきである。

Claims (16)

  1. 流量計のトランスデューサを較正する方法であって、
    流量計の流管の振動モードを励振するステップと、
    振動モードの励振を停止するステップと、
    流管の自由減衰応答を測定するステップと、
    駆動周波数における自由減衰応答の振幅及び位相を抽出するステップと、
    トランスデューサの強度を計算するステップと、を含む、方法。
  2. 流量計は共振点にて励振される、請求項1に記載の方法。
  3. 更に、トランスデューサのピーク速度を決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  4. トランスデューサは励振器を含む、請求項1に記載の方法。
  5. トランスデューサはピックオフセンサを含む、請求項1に記載の方法。
  6. トランスデューサはピックオフセンサと並置される励振器を含む、請求項1に記載の方法。
  7. 多項式非線形性を導出するステップと、
    参照曲線を提供するステップと、
    多項式非線形性モデルの曲線をモデル化するステップと、
    測定された非線形性モデルを参照曲線に当てはめるステップとを含む、請求項1に記載の方法。
  8. トランスデューサの強度を補償するためにメータ電子機器を較正するステップを含む、請求項7に記載の方法。
  9. プロセス流体を流管を通して流すステップと、
    プロセス流体の流量を測定するステップを含む、請求項8に記載の方法。
  10. 振動型流量計(5)であって、
    1つまたは複数の流管(130、130’)ならびに第1及び第2のピックオフセンサ(170L、170R)を含むセンサアセンブリ(10)と、
    1つまたは複数の流管(130、130’)を振動させるように構成される第1及び第2の励振器(180L、180R)と、
    第1及び第2のピックオフセンサ(170L、170R)に結合され、第1及び第2の励振器(180L、180R)に結合されるメータ電子機器(20)とを備え、
    メータ電子機器(20)は、第1の信号を第1及び第2の励振器(180L、180R)に提供するように構成され、第1及び第2の励振器(180L、180R)は、1つまたは複数の流管(130、130’)の振動モードを励振するように構成され、振動モードの励振が停止され、1つまたは複数の流管(130、130’)の自由減衰応答が測定され、
    メータ電子機器(20)は更に、多項式非線形性モデルを導出し、少なくとも第1及び第2のピックオフセンサ(170L、170R)の強度を計算するように構成されている、振動型流量計(5)。
  11. メータ電子機器(20)は、自由減衰応答の振幅を計算し、自由減衰応答の位相を計算するように構成される、請求項10に記載の振動型流量計(5)。
  12. 第1のピックオフセンサ(170L)と第1の励振器(180L)が並置され、第2のピックオフセンサ(170R)と第2の励振器(180R)が並置される、請求項10に記載の振動型流量計(5)。
  13. メータ電子機器(20)は、参照曲線を提供し、かつ曲線を多項式非線形性モデルとしてモデル化し、測定された非線形性モデルが参照曲線に当てはめられるように構成される、請求項10に記載の振動型流量計(5)。
  14. メータ電子機器(20)は、メータ電子機器を較正してトランスデューサ強度を補償するように構成される、請求項13に記載の振動型流量計(5)。
  15. 流管内にプロセス流体を含み、メータ電子機器(20)はプロセス流体の流量を測定するように構成される、請求項14に記載の振動型流量計(5)。
  16. メータ電子機器(20)は、非線形性多項式を調整し、測定された高調波を補償するように構成される、請求項14に記載の振動型流量計(5)。
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