JP2018510494A - 実効的魔法周波数の光格子時計およびその動作方法 - Google Patents

実効的魔法周波数の光格子時計およびその動作方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2018510494A
JP2018510494A JP2017538753A JP2017538753A JP2018510494A JP 2018510494 A JP2018510494 A JP 2018510494A JP 2017538753 A JP2017538753 A JP 2017538753A JP 2017538753 A JP2017538753 A JP 2017538753A JP 2018510494 A JP2018510494 A JP 2018510494A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
optical lattice
clock
frequency
optical
laser
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017538753A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018510494A5 (ja
JP6635608B2 (ja
Inventor
秀俊 香取
秀俊 香取
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Original Assignee
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by RIKEN Institute of Physical and Chemical Research filed Critical RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Publication of JP2018510494A publication Critical patent/JP2018510494A/ja
Publication of JP2018510494A5 publication Critical patent/JP2018510494A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6635608B2 publication Critical patent/JP6635608B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • GPHYSICS
    • G04HOROLOGY
    • G04FTIME-INTERVAL MEASURING
    • G04F5/00Apparatus for producing preselected time intervals for use as timing standards
    • G04F5/14Apparatus for producing preselected time intervals for use as timing standards using atomic clocks
    • HELECTRICITY
    • H03ELECTRONIC CIRCUITRY
    • H03LAUTOMATIC CONTROL, STARTING, SYNCHRONISATION OR STABILISATION OF GENERATORS OF ELECTRONIC OSCILLATIONS OR PULSES
    • H03L7/00Automatic control of frequency or phase; Synchronisation
    • H03L7/26Automatic control of frequency or phase; Synchronisation using energy levels of molecules, atoms, or subatomic particles as a frequency reference

Landscapes

  • Physics & Mathematics (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Spectroscopy & Molecular Physics (AREA)
  • Optical Modulation, Optical Deflection, Nonlinear Optics, Optical Demodulation, Optical Logic Elements (AREA)
  • Lasers (AREA)

Abstract

ある実施形態では原子(2)と実効的魔法周波数のレーザー光源(4)とを備える光格子時計が提供される。原子は、電子状態の2つの準位間で時計遷移を起こしうるものであり、レーザー光源はそれぞれが光格子レーザー強度Iをもつ少なくとも一対の対向伝播するレーザー光を生成する。一対の対向伝播するレーザー光は、それ自体の電磁波が作る定在波の腹の周りに原子をトラップする光格子ポテンシャルを形成する。実効的魔法周波数は、光格子レーザー強度Iの偏差ΔIに対する時計遷移の光格子誘起時計シフトを鈍感にするような周波数の一つであり、その光格子誘起時計シフトは、電子準位の2つの準位に対するACシュタルク効果のために光格子レーザー強度Iの偏差ΔIによって生じる、原子の時計遷移についての周波数が示すシフトである。

Description

本発明は光格子時計に関する。さらに詳細には、本発明は、実効的魔法周波数を採用し、不確かさを減らした計時が可能な光格子時計とその動作方法に関する。
近時、時間基準のために原子時計(atomic clocks)が採用されている。原子時計は計時に高い精度が要求される応用分野にも使用されている。原子時計は、例えばCs(セシウム)やRb(ルビジウム)などの原子における電子準位間の遷移により生じるマイクロ波領域の電磁波を周波数基準として利用するものである。より高精度な時間測定のために光学時計(optical clocks)と呼ばれる装置も開発されている。
ここ数年の光学時計の大幅な進歩によって、イオンベースクロックおよび光格子時計において10-18レベルの不確定性に到達してきたところである。これまで手つかずであった光学時計の精度により科学と技術における新たな可能性が生まれており、そこには例えば基本定数(fundamental constants)の恒常性の検証や、重力ポテンシャル差分値を測定する相対論的測地学(relativistic geodesy)が含まれている。これらの努力の核心をなすのは、時計遷移における摂動量の評価である。
光格子時計において、無摂動の(unperturbed)遷移周波数は、これまでは摂動量をゼロに外挿することによって取り扱われてきており、その手法は、仮にその修正が摂動因子(perturber)に比例しているのであれば直接的といえる。例えば黒体輻射が温度に対しT4の変動を示すごとく、いったんその依存性に非線形性が見出されるのならば、それ専用の実験および理論的調査が極めて肝要となる。これとは逆に、ハイパーラムゼー分光においては、時計遷移を摂動に対し鈍感なものにすべく非線形応答が活用されている。
H. Katori, M. Takamoto, V. G. Pal'chikov, and V. D.Ovsiannikov, "Ultrastable Optical Clock with Neutral Atoms in an Engineered Light Shift Trap," Phys. Rev. Lett. 91, 173005 (2003). M. Takamoto , F-L Hong , R. Higashi, and H. Katori, "An optical lattice clock," Nature 435, 321-324 (2005). V. D. Ovsiannikov, V. G. Pal'chikov, A. V. Taichenachev, V. I. Yudin, and H. Katori, "Multipole, nonlinear, and anharmonic uncertainties of clocks of Sr atoms in an optical lattice," Phys. Rev. A 88, 013405 (2013). Hidetoshi Katori, "Spectroscopy of strontium atoms in the Lamb-Dicke confinement," Proceedings of the 6th Symposium on Frequency Standards and Metrology, 323-330 (2002). A. V. Taichenachev, V. I. Yudin, V. D. Ovsiannikov, and V. G. Pal'chikov, "Optical Lattice Polarization Effects on Hyperpolarizability of Atomic Clock Transitions," Phys. Rev. Lett. 97, 173601 (2006). Hidetoshi Katori, Koji Hashiguchi, E.Yu. Il’inova, and V. D. Ovsiannikov, "MagicWavelength to Make Optical Lattice Clocks Insensitive to Atomic Motion," Phys. Rev. Lett. 103, 153004 (2009) Kazuhiro Yamanaka, Noriaki Ohmae, Ichiro Ushijima, Masao Takamoto, and Hidetoshi Katori, "Frequency Ratio of 199Hg and 87Sr Optical Lattice Clocks beyond the SI Limit," Phys. Rev. Lett. 114, 230801 (2015) I. Ushijima, M. Takamoto, M. Das, T. Ohkubo, and H.Katori, "Cryogenic optical lattice clocks," Nat. Photonics 9, 185 (2015). J. J. McFerran, L. Yi, S. Mejri, S. Di Manno, W. Zhang, J.Guena, Y. Le Coq, and S. Bize, "Neutral Atom Frequency Reference in the Deep Ultraviolet with Fractional Uncertainty = 5.7 × 10-15, " Phys. Rev. Lett. 108, 183004 (2012). P. G. Westergaard, J. Lodewyck, L. Lorini, A. Lecallier, E. A. Burt, M. Zawada, J. Millo, and P. Lemonde, "Lattice-Induced Frequency Shifts in Sr Optical Lattice Clocks at the 10-17 Level," Phys. Rev. Lett. 106, 210801(2011)
光格子時計において目指しているのは、魔法周波数での光格子の動作を通じ時計遷移についての光シフトの摂動を除去することである(非特許文献1、非特許文献2)。このため一見すると、光格子時計では時計遷移する原子を閉じ込める光格子レーザー(lattice-laser)の強度を評価すること自体が免れているようにも思える。しかしながら、光格子時計の不確かさ(uncertainty)について1×10-15より減らし、また1×10-16レベルにまで達しようとすべき状況において、原子を閉じ込めるのに最適となる光格子周波数(lattice frequency)を決定することは、単にカット・トライ式に最適化するだけでは困難である。後述するように本発明者は、光シフト摂動に起因する時計遷移のシフトが複雑な非線形の依存性を通じ光格子レーザーの強度に依存して、ゼロへの線形外挿アプローチが不可能となっていること、そしてその補正が極めてデリケートな問題であることを見出した(非特許文献2、非特許文献3)。それのみならず、原子の運動は空間的な光強度の変化をもつ光格子と結合する。このため、光格子時計における強度Iは、実際の動作条件において比較的広い範囲で変化する可能性があり、最適な値を注意深く決めてもその値へ制御することはできない。
具体的にみると、光格子レーザー強度は、原子を閉じ込めるためにある程度の強度が要求されるものの、実際には空間的に分布をもつ。光格子が1対のガウシアンビームにより形成されている場合であっても、光格子レーザーのための定在波の強さは、光軸から半径方向に離れるのに応じ弱まる。光格子レーザー場と相互作用する原子は、光軸方向に正弦波的な変化を示し横方向に深さ自体が漸減するポテンシャルの作用を受ける。その結果原子は、定在波の腹の位置に向かって引き寄せられ腹の位置の並びを格子点とする格子状に空間分布し、光軸付近の光格子レーザーのみならず、半径方向に光軸から離れた位置にある弱まった光格子レーザーにも閉じ込められる。光格子が、2次元または3次元の光格子を形成する2対以上のレーザー光(laser beams)により形成されたものである場合、光格子レーザー強度の変化は、1次元の光格子を形成する1対のレーザー光を採用する場合に比べ大きくなることもある。このため、光格子レーザー強度に生じうる分布や偏差まで念頭においた実用性の高い光格子時計の開発が肝要である。
本発明は上述した問題を解決することを課題とする。本発明は、時計遷移の周波数の光シフト(以降、時計シフトとも称する)について小さな系統不確かさ(systematic uncertainty)を示しつつ動作可能な光格子時計を実現する手法を提供することを課題とする。
本発明者は、従来のゼロ外挿アプローチに頼らずに、光格子からの摂動に起因する光シフトを除去したりその影響を緩和したりするための指針を提案する。光格子レーザー周波数および偏光依存超分極効果(light-polarization-dependent hyperpolarizability effect)が光シフトの強度依存性を調製(tailor)する目的で使用可能であることが示される。
すなわち、本発明のある態様においては、電子状態の2つの準位間で時計遷移を起こしうる原子と、それぞれが光格子レーザー強度Iをもつ少なくとも一対の対向伝播するレーザー光を生成するための実効的魔法周波数のレーザー光源であって、該一対の対向伝播するレーザー光は、それ自体の電磁波が作る定在波の腹の周りに前記原子をトラップする光格子ポテンシャルを形成するものである、レーザー光源とを備えており、前記実効的魔法周波数は、前記光格子レーザー強度Iの偏差ΔIに対する前記時計遷移の光格子誘起時計シフトを鈍感にするような周波数であり、該光格子誘起時計シフトは、前記電子準位の前記2つの準位に対するACシュタルク効果のために前記光格子レーザー強度Iの偏差ΔIによって生じる、前記原子の前記時計遷移についての周波数が示すシフトである、光格子時計が提供される。
本発明の上記態様においては「実効的魔法周波数(operational magic frequency)」が光格子時計の動作に利用され、その周波数においては、光格子レーザー強度Iの広い範囲で光格子誘起時計シフトが小さくなる。時計シフトとは、光光格子レーザー強度Iの偏差ΔIに起因して生じる時計遷移周波数におけるシフトのことである。実効的魔法周波数は、実際の動作条件にて生じうる偏差ΔIを許容するよう新たに構築された指針に基づき導入されるものであり、それにより1×10-18を下回るよう時計シフトを低減することができる。なお、計時に関連した遷移が「時計遷移(clock transition)」と、関連する電子準位または状態が「時計用電子状態(clock states)」と、それぞれ呼称されることがある。本方式の時計に関連する原子は、原子のみならずそのイオンも含みうる。加えて、本出願においては、不明瞭にならない限り本発明の属する技術分野の慣用に従う用語法を採用することがある。例えば赤外や紫外の電磁波放射といった可視光以外の電磁波に対しても、「光」、「レーザー」、「光源」等と光学分野で使用される表現を用いることがある。
本発明のある態様では実用性の高い光格子時計およびその動作方法が提供される。一例として、時計周波数の値に必要な補正を行うことを前提としたうえで光格子レーザー強度の拡大した範囲にわたり明確な態様での動作を可能とするような、実用性の高い光格子時計の設計指針が提供される。別例として、光シフト量を補正する必要がなくとも最小化された不確かさを与え、光格子レーザー強度の拡大した範囲にわたり明確な態様での動作を可能とするような、同様に、光格子時計の実用性の高い別の設計指針も提供される。結果、いくつかの原子種を用いる光格子時計を、例えば10-17を下回る系統不確かさで動作させることができる。
図1は、本発明の実施形態における光格子時計の例示の構造を示す模式説明図である。 図2は、光格子レーザー光によって形成された光格子にトラップされた原子と関連する時計遷移様式とを示す図である。 図3は、Hgの光格子誘起時計シフトが光格子レーザー強度Iへ依存する様子を示すグラフである。 図4A、4Bは、それぞれ、ξYb=0.771および0.75における光格子レーザー強度Iと光格子レーザー離調δνとを関数とするYbの時計シフト値の等値線図である。 図5は、ξSr=0における光格子レーザー強度Iと光格子レーザー離調δνとを関数とするSrの時計シフト値の等値線グラフである。 図6は、本発明の実施形態にて動作魔法周波数についての着想を実証するのに用いられた199Hgを用いる実効的魔法周波数の光格子時計の実験セットアップの説明図である。 図7は、実効的魔法周波数のHg光格子時計の実験結果を理論解析に基づくフィッティングカーブとともに示す複合グラフである。 図8は、87Srを用いる光格子時計への指針の適用可能性を示すグラフである。
以下図面を参照し、本発明に係る光格子時計の実施形態を説明する。全図を通じ当該説明に際し特に言及がない限り、共通する部分または要素には共通する参照符号が付される。また、図中、各実施形態の要素のそれぞれは、必ずしも互いの縮尺比を保って示されてはいない。
1.光格子時計の構造
図1は、本実施形態の光格子時計の例示の構成を示す概略図である。光格子時計100は、原子2の電子状態間における遷移周波数を計測する。原子2は、長寿命状態間にて時計遷移を起こす原子およびイオンからなる群から選択され、さらに具体的には、イッテルビウム(Yb)、水銀(Hg)、ストロンチウム(Sr)、カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、およびカルシウム(Ca)からなる群から選択される。原子2による電子状態の遷移のうちレーザー分光を用いて遷移周波数が測定される遷移を時計遷移と呼ぶ。
原子2は、レーザー冷却、ドップラー冷却などの手段によって十分に熱振動を抑制した状態にされて真空槽82内部の真空空間中に供給される。供給された原子2は、周波数コントローラー5によって周波数が正確に制御されている光格子レーザー4が供給する一対の対向伝播するレーザー光の作る定在波の電界と相互作用した後にトラップされる。この定在波を形成するためにミラー42および44を真空空間に配置している。原子2と上記定在波との相互作用によるポテンシャルの形状は、定在波中の電界の腹の位置が極小となっており、各腹の位置に中心をもつ復元力によって原子2に引力を及ぼしている。このレーザー光の定在波中の電界は、光軸方向にみると強い位置と弱い位置が光軸方向に交番して現われる。これに対し光軸から半径方向にみると、典型的実施態様としてガウシアンモードが励起されている場合、その電界は周辺に向かって漸減してゆく。原子2の時計遷移の遷移周波数ν0は、ACシュタルク効果と呼ばれてきたレーザー光による摂動のために、シフトΔνC、つまり“光格子誘起時計シフト(lattice-induced clock shift)ΔνC”を受けることとなる。なお、光格子レーザーによる摂動を通じて光格子レーザー強度に依存する時計遷移の任意の周波数シフトを光格子誘起時計シフトと呼ぶ。
1−1.魔法波長およびゼロ外挿アプローチ
トラップのための光格子レーザー4の周波数を注意深く定めて制御すれば、この光格子誘起時計シフトを極小化しうることが本発明者により見出され、そうして定めた波長が魔法周波数と呼ばれてきた。本願の発明者らは非特許文献4において、光格子誘起時計シフトΔνcが光格子レーザー4のレーザー強度(つまり光格子レーザー強度)に依存すること、および注意をあまり払わずに決定した周波数では、光格子レーザー強度が増大するにつれ光格子誘起時計シフトΔνcが顕著となることを報告した。さらに、同文献に報告した実験では、光格子誘起時計シフトΔνcがある強度範囲で光格子レーザー強度にまったく依存しなくなるような周波数が光格子レーザー4に存在することが明らかとなり、そのような周波数を、上述したように魔法周波数と呼んできた。本指針を説明するにあたり、その実現可能性を理論解析に基づいて示し、その後、当該解析の有効性が実験的に確認される。さらに、提案する指針による10-19レベルへの方策が示される。
1−2.実効的魔法周波数
本発明者は、光格子誘起時計シフトを実際にどこまで減らせるかについて、非特許文献3における従前のアプローチに基づき魔法周波数の着想を理論的観点から綿密に再検討した。というのも、光格子レーザーが強いほど光シフトが大きくなるという実験事実からは、逆に光格子レーザーを十分に弱くすれば光シフトは低減するであろう(ゼロ外挿アプローチ)と論理的にいえるためである。しかし、ゼロ外挿アプローチに従って実際に光格子レーザーを弱めても、時計シフトがゼロに向かって直線比例的に減少しないという新たな問題が生じた。そこで、時計シフトについてさらに掘り下げた理論的解析がなされ、結果、超分極率(hyperpolarizability)および多重極効果(multipolar effect)のために生じる残留時計シフトが10-17前半における主たる系統不確かさとなって表面化していることが見出された。さらに、有限つまり非ゼロの光格子レーザー強度の動作に一層適する魔法周波数(「実効的魔法周波数」(operational magic frequency)と呼ぶ)を特定する手法を見出した。以降、非特許文献3の研究を手掛かりにして実効的魔法周波数に至る着想を説明する。電気双極子(E1)、磁気双極子(M1)、および電気四重極(E2)での分極率および超分極率の数値計算結果を、Sr、Yb、Hgの1030時計遷移に関し提示する。
1−3.光格子誘起時計シフト:定式化
光格子誘起時計シフトは、時計用電子状態(clock states)のうちの基底状態(g)と励起状態(e)とにおけるACシュタルクエネルギー間の差分によって与えられる。これらの状態は、トラップされた原子と定在波の電場(field)との間の相互作用である次式により決定される。
E(x,t)=2E0coskx cosωt, (1)
これは電気ベクトルE0(対応する強度つまり光格子レーザー強度I)をもち、図2に示すように、周波数ω、およびk=ω/c(cは光速)として波数ベクトルk=±kexである。
図2は、光格子レーザー光によって形成された光格子にトラップされた原子と関連する時計遷移様式とを示す模式図である。図2に示すように、|x|≪λm/4の範囲でUg(x)中にトラップされた原子が、10(g)→30(e)の時計遷移にて、無摂動の周波数ν0、光格子誘起時計シフトΔνcとして励起される。ガウシアンビームを実装する場合、現実のレーザー光は、ビーム半径r0をr0≫λとしてIexp(−2(y2+x2)/r0 2)という横方向強度分布を示し、横向きに原子を弱く閉じ込める。原子−格子相互作用は、次の空間因子をもつ演算子V(x,t)=Re[V(x)exp(−iωt)]により決定される:
V(x)=VE1coskx+(VE2+VM1)sinkx, (2)
ここで、VE1、VE2、およびVM1は、それぞれE1、E2、およびM1の相互作用に対応する。以下、光格子誘起時計シフトを単に時計シフトとも記す。
原子格子相互作用エネルギーV(x)の2次および4次の項は、光格子レーザー強度Iにおける線形および2次の項に対応している。位置|x|≪λ=2/k(図2)にある原子にとっての光格子ポテンシャルは
g(e)(x,I)≒−Dg(e)(I)+u(2) g(e)(I)x2
−u(4) g(e)(I)x4+ … (3)
により与えられ、ポテンシャル深さは次式により与えられる。
g(e)(I)≒−Ug(e)(x,I)=αg(e) E1(ω)I+βg(e)(ω,ξ)I2
(4)
これは電気双極子分極率αg(e) E1(ω)Iおよび超分極率βg(e)(ω,ξ)により決定され、その際ξは、本節にて後述する光の円偏光度(degree of circular polarization of light)である。簡便のため本出願の発明の詳細な説明では、複合した添え字、例えばg(e)が用いられる。
式(3)中の調和項の係数である
(5)
によって、光格子中の原子の振動周波数Ωg(e)(I)が定まる。Μを原子質量、h−bar=h/2πをプランク定数(ただし「h−bar」はhに横棒を重ねたもの)としたとき、フォトンの反跳エネルギーΕR=(h−bar k)2/2Μを用いて、振動の周波数は、
(6)
として与えられる。ここで、原子の定在波との間でのE1と多重極(E2−M1)との相互作用における1/4周期オフセット(the quarter period offset of E1)に起因して、結合(combined)E1−E2−M1分極率
αg(e) dqm(ω)=αg(e) E1(ω)−αg(e) qm(ω) (7)
が定義される。この際、αg(e) qm(ω)=αg(e) E2(ω)+αg(e) M1(ω)は、E2とM2の分極率の和である。光格子における最小次数の非調和補正は、
(8)
により与えられる。
n番目の振動状態|n>にある原子のエネルギーは、次のように計算される:
(9)
ここで、第2項は調和振動子エネルギーに対応し、最終項は、
(10)
により与えられる非調和分の修正に対応する。光格子誘起時計シフトは、振動状態|n>を不変としつつ基底状態および励起状態にある原子のエネルギーの差分(式(9))により与えられる(ラム・ディッケ領域)。その時計シフトは、
hΔνc(I,n)=Ee vib(I,n)−Eg vib(I,n)=−ΔD(I)
+h−barΔΩ(I)(n+1/2)−ΔE(4)(I)(n2+n+1/2),
(11)
により与えられる。ここで、ΔD(I)=De(I)−Dg(I)、ΔΩ(I)=Ωe(I)−Ωg(I)、およびΔE(4)(I)=Ee (4)(I)−Eg (4)(I)と定義している。
これら超分極率は、光格子レーザーの周波数に加えその楕円率にも依存し、次式にて与えられる。
βg(e)(ω,ξ)=βg(e) l(ω,ξ)+ξ2[βg(e) c(ω)−βg(e) l(ω)],
(12)
ここで、βg(e) l(c)(ω)は直線(円)偏光に対する超分極率である。ここで、tanχを偏光楕円の短軸の長軸に対する比を決定するものとしたとき円偏光度はξ=sin2χによって定義され、楕円角(ellipticity angle)は0≦χ≦π/4において定義される。Δβl(=βe l−βg l)とΔβc(=βe c−βg c)とが逆符号の場合には、ξm=1/(1−Δβc/Δβe l1/2で決まる「魔法楕円率(magic ellipticity)」が存在しており(非特許文献5参照)、それによって微分超分極率Δβ(ξ)=Δβl+ξ2(Δβc−Δβl)[式(12)]が消去される。
実際の光格子時計において時計シフトを支配している原理を調査するために、上述した非特許文献3の理論的枠組みを採用することとした。電気双極子効果に加え多重極相互作用および超分極効果も考慮されることから、式(1)〜(12)の方程式は、ほとんど近似を含んでおらずあらゆる可能な条件を織り込んでいる。しかしながら、時計シフトの強度依存性が調製されている実際の光格子時計に対し当該枠組みを適用するにあたり、時計シフトと光格子レーザー強度Iとの間のためのより直接的な関係式を導出する必要がある。この点に関するより重要な結論は、ΔβlとΔβcの間でのΔβ(ξ)のチューニング可能性であり、次にこの点を明らかにする。
1−4.時計シフトの光格子レーザー強度依存性
時計シフトの光格子レーザー強度I依存性を明確化するために、レーザー冷却された原子をトラップするための実験面からみて現実的な光格子レーザー強度を仮定し、時計シフト(式(11))について近似が行われる。その際次の量は、電気双極子分極率αg(e) E1≒αE1よりもおよそ106倍小さいとした:(i)E2−M1分極率αg(e) qm=αg(e) E2+αg(e) M1,(ii)超分極効果βg(e)I、および(iii)微分双極子分極率
そして時計シフトをω≒ωm E1の近傍でテイラー級数に展開し、高次項を無視することにより、式(13):
(13)
が得られる。ここで、δν(=δω/2π)は、ΔαE1(ωm E1)=0により定義される「E1魔法周波数」からの離調であり、Δαqm=αe qm−αg qmは微分多重分極率である。この際、I1/2についての最初の項は原子へのポテンシャルに対するαg(e) qmIsin2(kx)変調に起因した多重極効果を表現しており、I3/2とI2の第3および第4項はIの第2項の後半と併せ、例えばI2についてβI2cos4(kx)のようにポテンシャル変調に起因する超分極効果を表現している。残りの項つまりIに比例する第2項の前半は、光格子レーザー周波数δνの離調であり、その比例係数は微分双極子の光格子レーザー周波数νについての微分係数である。例えば不確かさが10-15レベルのときなどの多重極効果や超分極効果を考慮する必要がない場合、時計シフトΔνcは、光格子レーザー強度Iへの比例依存性により支配され微分係数によって決定される。このため、多重極効果および超分極効果を考慮することにより最適な周波数の探索を開始する値となるE1魔法周波数を導入することが役に立つ。式(13)の微分係数から、E1魔法周波数は、時計遷移の基底および励起状態のための2つの電気双極子分極率をちょうど一致させる光格子レーザーの周波数を表している。
これまで魔法周波数ωm/2π(=c/λm)はωm→ωm E1となるようチューニングすることにより、式(13)において支配的なc1の最小化を狙いとしていた(非特許文献1参照)。しかしながら強調されるべきは、分数不確かさ(fractional uncertainty)Δνc/ν0が10-17程度にもなると、他のcjjの項も同様に影響をもつためにこの処方がもはや有効といえないことである。言い換えれば、摂動原因を厳密に評価したことに基礎を置いて理論的に見出した式(13)が、光格子誘起時計シフトΔνcの光格子レーザー強度I依存性に対し、ゼロ外挿アプローチよりも一層包括的な全体像を与えているのである。
多重分極効果を無視したときの「E1魔法周波数」の適用可能性を評価する手段として、メリットファクターκ=αE1/|Δαqm|を定義することができる。上述した計算を通じて得たSr、Yb、Hgに対するκ値は、順に3.3×107、2.4×107、6.9×105である。メリットファクターの逆数κ-1は、原子運動が誘起するI1/2非線形性をもたらすE2−M1効果の分数寄与度(fractional contribution)を示している。典型的な時計の実験は比較的弱い強度の領域(βI≦αqm)で行われることから、SrおよびYbについての大きなκによって10-17レベルにまで時計シフトを線形外挿できることが保証されうる。しかし、例えばHgのようにメリットファクターが小さくなる場合や、SrおよびYbにおいて不確かさを極限まで除去しようとする場合には、このシンプルなアプローチは瓦解し新たな指針が必要となる。
1−5.原子への実効的魔法周波数の適用
本実施形態の光格子時計の実現可能性を評価するためには、実際的な時計の動作を仮定したうえで、現実の原子のパラメーターを用いて式(13)における実効的光格子レーザー強度Iへの時計シフトΔνcの依存性を適用することが役立つ。利用可能なのは3つの自由パラメーター(free parameters)n、δν、ξのみであるため、明らかに、式(13)の4つの係数でcj→0とするような「魔法条件」が存在しえない。実効的(operational)光格子強度Iopを、Sr、Yb、およびHgのそれぞれ温度T〜1μK、4μK、30μKにドップラー冷却された原子をトラップする、Dg(e)≒αE1op〜5kBTという自然なものに決めた状況を考えよう。その場合、レーザー強度が空間的に不均一なため、可能な限りΔIを拡大しつつIop±ΔIについて光シフトΔνcを最小化するようδνおよびξをチューニングすることができる。実際の1次元光格子は、原子の熱運動を横向きに閉じ込めるために(図2参照)強度プロファイルIexp(−2(y2+x2)/r0 2)とビーム半径r0≫λとなるガウシアンビームを採用しており、これにより不可避的にΔI/I≒kBT/De(g)の強度の不均一性がもたらされる。説明を簡略化する目的で以降の解析では、サイドバンド冷却を適用して原子がx軸について振動の基底状態(n=0)にあることを仮定する。そのうえで
とΔνc(IOP,δν,ξ)=0との双方を満足する条件を探索する。
1−5−1.水銀
図3は、式(13)によって算出された、Hgについての光格子誘起時計シフトΔνc Hg(I)の光格子レーザー強度I依存性を示すグラフである。弱い光格子レーザー強度ではI1/2の振る舞いが支配的となり、その係数c1/2は電気双極子分極率
および多重分極率(Δαqm)によって決定される。時計が動作する中間的強度では、Iに比例する最高次の項が、電気双極子分極率と非調和補正(式(10))を通じたわずかな超分極効果Δβ(ξ)とによって決定され、加えてI3/2およびI2の項がΔβ(ξ)により決まる。
図3の線RSはδν=−4.66MHzおよびξHg=0.75のときの時計シフトΔνc Hg(I)を示しており、115kW/cm2<I<177kW/cm2における分数不確かさ1×10-18に相当する1mHzの時計シフトを実証するものである。線BSおよびBDは光格子レーザーの離調δν=0についての直線偏光および魔法楕円偏光に相当する。δν=−4.66MHzおよびξHg=0.75としたとき、時計シフト(線RS)は光格子レーザー強度Iの範囲Wで±1mHz(線G)を下回る。線RDはξHgについての許容範囲(0.5%)を示す。δν=−2MHzの直線偏光(ξ=0)に対しては、I〜36kW/cm2の近くで光シフトがΔIに対し鈍感になる。わずかに変更した条件であるδν=−4.65MHzおよびξHg=0.892についてほとんど同じ依存性が得られ、115kW/cm2<I<180kW/cm2について1mHzを下回る時計シフトとなる(図示しない)。
図3に示すように、光格子レーザーの離調δνと円偏光度ξHgの異なる組合せの図中の各光格子誘起時計シフトΔνc Hg(I)は各々の光格子レーザー強度Iに対する依存性を示す。そればかりか、実質的に
およびΔνc(Iop,δν,ξ)=0をともに満足する時計シフトΔνc Hg(I)と光格子レーザーの離調δνとの組合せを見付けることも可能である。この組合せでの線RSからは、光格子強度Iop周りで拡げた範囲W=Iop−ΔI〜Iop+ΔIにわたり所定の不確かさレベルよりも小さな不確かさで時計を動作させることが可能となる。このことから、円偏光度ξHg=0.75を活用しつつE1魔法周波数からの光格子レーザー離調δν=−4.66MHzを伴う当該魔法周波数は、本実施形態にてHgについて採用しうる実効的魔法周波数の一例といえる。
1−5−2.イッテルビウム
図4A、4Bは、式(13)で算出された、光格子レーザー強度Iと光格子レーザー離調δνを関数とするYbの時計シフト値の等値線図であり、順にξYb=0.771および0.75のものである。線RDは時計シフトが0の場合を示しており、線RLを外縁にもつ領域が、時計シフトの不確かさ|Δνc(I,δν)|/ν0<1×10-18を満たす範囲である。図4Aは、Ybの時計シフトΔνc Yb(I,δν)をξYb=0.771について計算したものであり、光格子レーザー離調をδν=0.45MHzとするとき、6kW/cm2<I<30kW/cm2について|Δνc Yb(I,δν)|/ν0 Yb<1×10-18が達成できることを示している。線WDは光格子レーザー離調δνのところにあり、鎖線長方形DRが対応する光格子レーザー強度の範囲を図示している。ξYbの0.5%の変動(図示しない)に対し2×10-18となる分数不確かさを許容すると、適用可能な強度幅がΔI<15kW/cm2に狭まる。同様に、図4Bは、Ybの時計シフトΔνc Yb(I,δν)をξYb=0.75について計算したものであり、ξYb=0.7516からのわずかな差分によって多重極効果を補償するものである。光格子レーザー離調をδν=0.11MHz(線WD)とするとき、図に示した光格子レーザー強度Iの全範囲で時計シフトの不確かさ|Δνc Yb(I,δν)|/ν0 Ybを1×10-18よりずっと小さくすることができる。ξYbの0.5%の偏差に対し1×10-18となる分数不確かさを許容すると、対応する光格子レーザー強度の範囲はI<12kW/cm2にまで狭まる。楕円偏光であることにより生じるベクトル時計シフトは、ゼーマン副準位m=±1/2での時計遷移の平均化によってキャンセルする。テンソル時計シフトがないことから、核スピン1/2の171Ybと199Hgがこの手法のための最適な候補となる。魔法楕円率からのわずかな、しかしはっきりした円偏光度の上記ずれによって、多重極効果の補償が可能となる。これは、光格子レーザー強度のために受け入れられる強度の範囲、つまり受け入れうる許容差が、円偏光度を調整することによって増やすことができるということを示す一例である。
1−5−3.ストロンチウム
図5は、ξSr=0としたSrの|Δνc Sr(I,δν)|/ν0 Srの等値線グラフであり、図4A、4Bと同様の軸および線の表示が適用される。Srについて超分極率の符号はチューニングできない。しかし、図5に示されるように、δν=1.5MHzを伴う直線偏光の光格子(ξ=0)では、0<I<3.3kW/cm2について|Δνc Sr(I,δν)|/ν0 Sr<1×10-18が成り立ち、このためにSrは魅力的な候補となっている。Sr光格子は、それがもつ非常に小さいドップラー温度のために弱い光格子レーザー強度I≒2.3kW/cm2にて動作可能であり、その条件での高いメリットファクターκSrによって多重極効果が小さく保たれ、超分極効果が作用しない。類似の弱い強度での最適化は、光格子にトラップされた原子の犠牲を伴って、または、1030時計遷移についての深いレーザー冷却を適用することにより、YbおよびHgに対しても適用可能である。
1−6.現実の実効的魔法周波数
何種類かの原子についてこれまで説明した概念が及ぶ本実施形態の範囲を明確にするため、実効的魔法周波数のために用いられた要件を再度説明する。超分極率がチューニングできないか実験上の問題を緩和するために光格子が直線偏光格子(ξ=0)であるかのどちらかまたは両方である場合、次のようにして決められる最適光格子レーザー離調δνopで光格子時計を動作させることもできる:
時計遷移に非ゼロで有限となる補正Δνc(Iop,δνop)がなくせなくても、図3の線BSおよびDに顕れているように少なくともある範囲で時計シフトが光格子レーザー強度に鈍感になることから、本手法は適用可能であろう。例えば、離調がゼロ(δν=0)の直線偏光(ξHg=0)を光格子レーザーに使用しているHg光格子時計の場合、図3に顕れるように時計周波数を決定するために−30mHzの補正が受け入れられるのであれば、75kW/cm2の光格子レーザー強度Iにて光格子レーザー強度の強度範囲または受け入れうる許容差を拡大できることとなる。同様に、別のHg光格子時計であって、直線偏光ξHg=0および離調δν=−2.0MHzを採用するものも、光格子レーザー強度をおおむね40kW/cm2に設定することにより光格子レーザー強度Iの許容差を拡大することができ、その場合には、時計シフトΔνcに−18mHzの補正が必要となる。このため、光格子時計の実効的魔法周波数での動作時には、光格子レーザー4(図1)のレーザー周波数をMHzレベルで制御することが重要となる。光格子時計100のコントローラー5は、任意の種類の周波数基準(図示しない)を参照し、光コムの手法を頼りにその動作中の光格子レーザー4の周波数を管理する。光格子レーザー4の周波数は、典型的には150kHzほどの正確さで容易に制御することができる。
光格子誘起時計シフトΔνcが光格子レーザー強度Iの偏差ΔIに対し鈍感になることから、
によって導出される光格子誘起時計シフトΔνcを最適に設定するための要件はもう一つ別の方法で説明することができる。光格子誘起時計シフトΔνcがこの要件を満たす場合、光格子誘起時計シフトΔνcに対する上述した修正は、判明している値の分だけ時計周波数シフトするだけで済ませることができ、時計の性能を実質的に劣化させない明解な態様での動作といえる。この種の補正は、時計遷移を検知した後にいつでも実行されうるだろう。なお、そのようなシフトのために時計遷移周波数に補正が必要となりうるものの、時計周波数の不確かさが増えることは一切ない。このため、範囲Wの中の一点でゼロの時計シフトつまりΔνc=0に接触するような図3の線RSをもたらす条件の集合だけではなく、強度軸Iに平行に線が延びている直線偏光(ξ=0)に対し線DおよびBSの2つの曲線に対応する条件によっても、本実施形態をHgにて実施化することができる。時計周波数の類似したシフトは、別の条件での他の原子においても許容される。図4A、4B(Yb)および図5(Sr)の等値線図に示されるように、光格子誘起時計シフトにゼロとなることを要求することなく、光格子誘起時計シフトの等値線またはその局所的接線が光格子レーザー強度Iのための横軸に対して平行に延びる条件を選択することが有用である。そういった選択をした場合、光格子誘起時計シフトの補正を必要としつつ光格子レーザー強度の受け入れうる許容差が拡大することとなる。このため、光格子レーザー強度Iの偏差に対し光格子誘起時計シフトΔνcを鈍感にする光格子レーザー周波数は本実施形態の範囲内の実効的魔法周波数といえるもう一つの例である。
1−7.光格子レーザーの偏光制御
図1を再び参照し、ξ>0である光格子の準備について説明する。光格子レーザー4からミラー42、44によるキャビティーまでの光路における任意の位置に偏光素子6を配置することによってξ>0での光格子を構築することが可能である。典型的な偏光素子6は、偏光子62と波長板64の組合せである。波長板64は、例えば水晶板とすることができる。なお、光格子レーザー4からの光の偏光は、窓部材84を通過した後には有限の円偏光度となって歪んでいる可能性がある。これは窓部材84には両面の圧力差による応力が加わっているのためである。偏光素子6は、そのような環境においても、光格子がミラー42、44のキャビティー内に置いて所望の円偏光度をもつことを可能にする。なお、時計遷移の検出は、窓部材84または86を通じキャビティーの内部に検出のための別のレーザー光(図示しない)を供給することにより本分野の当業者には容易に実行できる。
1−8.変形
実施形態として典型的な実施化態様を説明したものの、本実施形態の実効的魔法周波数による光格子時計の構造は変更することが可能である。図1の光格子レーザー4によって形成される光格子は、その光格子を生成する一対の対向伝播するレーザーにて説明されてきた。光格子は、実質的に単一の閉じ込め方向をもつ1次元の光格子x軸に沿った交番ポテンシャルをもつ。しかしながら、実効的魔法周波数の光格子時計についての本実施形態は、合計して2つまたは3つの閉じ込め方向をもつ2次元または3次元格子を生成する、追加の一対または複数対のレーザーとともに実施化できる。そのような実施化においても、上記追加の一対または複数対のレーザーが実効的魔法周波数にて光格子を励起するのであれば、1次元の光格子についての上記説明が成り立つといえる。なお、原子の2次元または3次元の振動モードは式(2)〜(10)とは異なる可能性があり、その点は式(13)にも反映されるため、光格子が2つまたは3つの閉じ込め方向をもつときには実効的魔法周波数が相応に変更されうる。2次元または3次元の光格子に閉じ込められた原子の量子化された振動がこれまで精力的に研究されてきている(非特許文献6)ことから、本技術の分野に属する当業者は、量子化した振動力学の定式化を頼りに上述した説明をフォローすることによって容易に関連する方程式を変更することができる。このため、2次元および3次元格子を用いる実効的魔法周波数の光格子時計もまた本実施形態の範囲に含まれている。
2.Hgを用いる光格子時計での実効的魔法周波数の実験的確認
時計遷移における光シフト(時計シフト)の不確かさ低減に関する上述した着想の実現可能性を、実効的魔法周波数の199Hgを用いる(199Hg-based)光格子時計の一連の実験により確認した。その実験の設定や器具は、本発明者のグループによって非特許文献7にて報告済みである。非特許文献7については、その内容をここに引用することにより本願明細書の一部をなすものとする。実験において、実効的魔法周波数の199Hgを用いる光格子時計の不確かさが実効的でない(non-operational)魔法周波数の87Srを用いる光格子時計による10-18レベルのリファレンス光格子時計と比較された。これは、199Hg時計の主要な起源となるのが励起状態(30)と基底状態(10)の光シフトの間の差だけの時計シフトだからである。加えて、実効的でない魔法周波数を採用する87Srを用いるリファレンス光格子時計は、極低温(cryogenic temperature)で動作していれば十分に小さな不確かさを示す(非特許文献8)。
図6は、実験のために199Hg原子を用いる実効的魔法周波数の光格子時計100の実験セットアップを示す。レーザー冷却した199Hg原子2が、光格子レーザー4により供給され約363nmの波長に当たる実効的魔法周波数の光格子内へロードされる。199Hg原子2の1030時計遷移が、698nmのSr時計を参照するようになっている266nmの時計レーザーにより問合せされる(interrogated)。698nmのSr時計は、光周波数コム300を通じて、87Sr光格子時計200の時計遷移を検出するために使用されるものである。以下のようにして、サイクル時間1.5秒の実験シーケンスが実行される。199Hg原子が、蒸気セルタイプのマグネトオプティカルトラッピング(MOT)により、自然線幅Γ=1.3MHzにて254nmの1031遷移を対象にレーザー冷却される。最初に、原子を捕集するためMOTレーザー離調δνMOT≒−7Γ、ビーム当たりの強度≒10mW/cm2が適用される。860ms長の原子ロード時間の後、原子雲を圧縮するために四重極磁場勾配が1mT/cmから3mT/cmへと増大される。最後に、レーザー周波数がδνMOT≒−Γとなるようにチューニングされて、その後に光格子トラップに転送する効率の最大化を目的に原子をさらに冷却するようレーザー強度が低減される。
約3%の199Hg原子が、λL≒362.6nmで動作し最大トラップ深さUL≒65ERの垂直向きの1次元の光格子にロードされる。ここで、ER/h=h/(2mλL 2)=7.6kHzは格子−フォトン反跳周波数、hはプランク定数、mは199Hg原子の質量である。次に、軸方向振動状態のn≧3の高位にトラップされている原子を解放するために、トラップ深さが一時的にUL≒35ERにまで減少される。この1次元格子は、2つの曲面ミラー42、44と平面折り返しミラー(図6)からなりパワー増強比が10程度の蓄積キャビティーの内部にて形成される。これらのキャビティーミラーは、ミラーのコーティングの劣化を避けるため真空チェンバーの外部に配置されており、窓部材84または86つまりブリュースター窓によって真空部への光学的なアクセスとp偏光の光の選択的な増強とが可能になっている。光格子の中の原子2は254nmの円偏光で1031遷移を励起することによってスピン偏極する。スピン偏極およびクロックの励起時にはバイアス磁場Bbiasを印加する。ライン幅転写法によってErドープファイバー光周波数コム300に対し安定化し、1063nmのファイバーレーザーを2段階周波数倍化して生成した266nmの時計レーザーにより1030遷移を励起する。コムのキャリア包絡線オフセット周波数fCEOは、自己参照するf−2f干渉計を利用することにより安定化している。そして、コムのくり返しレートfrepは698nmのSr時計レーザーの分周波(1379nm)を参照することにより安定化する。Sr時計レーザーは、不安定性≒5×10-16の安定な基準キャビティーに対しτ=1sにて事前安定化(pre-stabilized)しておき、Sr時計遷移に対してτ>10sに安定化する(非特許文献8)。この動作のために電荷結合デバイス(CCD)カメラ、周波数シフター(FS)、フォトダイオード(PD)そしてダイレクトデジタルシンセサイザー(DDS)を使用する。
266nmの時計レーザーは363nmの光格子レーザーに同一の偏光で重畳する。下に示すデータのためには、原子遷移への周波数安定化が数時間の間の実験条件の変化に対しロバストとなるように、Hg時計が問い合わせ時間(interrogation time)τi=40−80msecで動作する。原子の10状態の占有数(population)NSは、MOTを20msec間だけ動作することにより蛍光から決定する。そして30状態にある原子2を、405nmで3031遷移を励起することにより光ポンプして10状態に戻し、原子の30状態の占有数NPを決定する。励起原子割合[NP/(NS+NP)]が時計レーザー周波数を安定化するために用いられる。1次のゼーマンシフトおよびベクトル光シフトを平均するために2つのπ遷移mF=±1/2→mF=±1/2を交番で問い合わせる。
光格子レーザー強度Iと光格子レーザー周波数νとの関数として光格子誘起時計シフトΔνc(I,ν)を評価するために、光格子レーザー強度ILを変えた逐次計測サイクルにおける強度依存時計シフトδνc(IL,I0,ν)=Δνc(IL,ν)−Δνc(I0,ν)を、I0=89kW/cm2と一定に維持しながら測定する。なお、各光格子レーザー周波数νはE1魔法周波数νL E1(826 855 534MHz)と各離調δν値との合計である。ここで、強度ILおよび強度I0は、UL=Ug(e)の光格子ポテンシャル深さを生じさせる単一の進行波のレーザーのピーク強度の表現を用いて示している。図7は、複合グラフ(a)(b)にて、光格子レーザー強度IL(下軸)の関数として時計周波数シフトΔνc(IL,δνc)を示す。対応する光格子トラップ深さULを上軸に与えている。図7にプロットしたデータは、光周波数コム(図6に図示しない)に対し0.5MHz以内に安定化された7つの異なる光格子レーザー周波数νにて取得し、その際、光周波数コムのキャリア包絡線オフセット周波数fCEOを、自己参照するf−2f干渉計を利用することにより安定化している。図7(a)は、次に示す方法に応じて各離調値に対して曲線をフィッティングするために用いる測定データポイントを十字によって示す。曲線に関連付けられている数値は、νE1=826 855 534MHzからの光格子レーザー周波数離調δν(MHz単位)を示している。そしてコムの繰り返しレートfrepは、698nmの87Srを用いるリファレンス光格子時計の分周波(1379nm)を参照することにより安定化する。698nmの87Srを用いるリファレンス光格子時計は、不安定性≒5×10-16をもつ安定な参照キャビティーに対しτ=1sにて事前安定化(pre-stabilized)される。各データ点は、0.2Hzの不確かさで測定する。
最高次の超分極率シフトつまり式(13)のΔβ(ξ)に依存するI2の項がIL=89kW/cm2の最大の光格子レーザー強度において2×10-17であると見積もられ、その値は約10-16である測定不確かさよりも小さい。このため、最高次数項以外の上記式(13)の超分極効果は、時計シフトを
(14)
のように近似することにより無視する。留意すべきは、光格子レーザーのガウシアンの強度プロファイルIL(r)=ILexp(−2r2/w0 2)によって原子が半径方向に閉じ込められることである。ここでw0はビーム半径、rは半径方向変位である。典型的な光格子ポテンシャル深さUL≒43ERに対し、半径方向および軸方向の振動周波数は、νr=(4UL/(π2mw0 2))1/2〜100Hz、およびνa=(2UL/(mλL 2))1/2〜100kHzである。光格子にトラップされている原子の典型的な運動エネルギー約h×100kHzが半径方向振動エネルギー離間hνrよりも約103倍大きいため、半径方向の運動は古典的手法にて扱えるだろう。加えて、n番目の軸方向振動状態についてエネルギー固有値Eg(e) vib(IL(r),n)を計算する際には、断熱条件νa≫νrが満たされているので,軸方向および半径方向運動を切り離す(decouple)ことができる。
式(14)の光シフトの評価には光格子内での原子運動が決定的な役割を果たす。というのは、軸方向運動が平均化した運動状態<n>を決定し、ガウシアンの強度プロファイルにおける平均した原子分布<r2>を通じて半径方向運動が実効的な光格子レーザー強度<IL(r)>を決定するからである。軸方向のn=0状態の振動占有数は、赤方および青方の運動サイドバンドスペクトルの全面積の差分によって0.7(1)と測定する。この際の括弧は、中に典型的な数値を記載し不確定な数値の桁を示している。n≧3にある原子は状態準備の際に除き、平均の占有率は、n=0、1、2振動状態において原子がボルツマン分布すると仮定することにより、<n>=0.4(2)と見積もられる。半径方向の原子分布は不均質に広がったサイドバンドラインの形状により推論できる。というのも、サイドバンドの周波数は、光格子レーザーのガウシアンの強度分布ILexp(−2r2/w0 2)のために<r2>が増大するにつれて小さくなるからである。青方サイドバンドの周波数νb(n,r)=[Ee vib(IL(r),n+1)−Eg vib(IL(r),n)]/hは、
νb(n,r)≒νbexp(−r2/w0 2)−ER(n+1)/h,
により与えられる。ここでの第2項は、光格子ポテンシャルの非調和性から生じており光格子強度とは独立している。ガウシアンの強度分布のファクターは、サイドバンドのスペクトルを利用して<exp(−2r2/w0 2)>=0.8(1)と決定される。
E1魔法周波数での双極子モーメントα0 E1/h=5.5(8)kHz/(kW/cm2)が軸方向運動サイドバンド周波数に基づいて実験的に決定された。ここで、不確かさは光格子レーザー強度の測定不確かさによって与えられる。算出値はΔαqm/h=8.25mHz/(kW/cm2)およびΔβ/h=−2.2μHz/(kW/cm22である。全体のデータは、その後式(13)にフィッティングされ(図7参照)、その際、ILとνを説明変数、Δνcを応答変数とする重回帰分析とした。こうしてνE1=826 855 534(9)MHzのE1魔法周波数と(1/h)(∂ΔαE1/∂ν)=1.5(4)×10-10/(kW/cm2)とが決定される。
Hg時計周波数の測定のために、−3MHzの離調を採用した。つまり、光格子誘起時計シフトΔνc(IL,ν)がIop=59(10)kW/cm2の周りにおいて光格子強度の偏差に対して鈍感に、すなわち[∂Δνc(IL,ν)/∂IL]|IL=Iop=0が得られるように、光格子レーザー周波数νをνE1−3MHz=826 855 531MHzと設定する。図7(b)は図7(a)の垂直軸についての拡大図を示す。ラジオ測定に用いるδν=−3MHzについて見積もった時計周波数シフトと不確かさを曲線BCとハッチング領域によってそれぞれ示す。動作させた光格子強度(IL≒59kW/cm2つまりUL≒43ER)は鎖線により示す。光格子誘起時計シフトはΔνc=−0.04(7)Hzと、また分数周波数シフト(fractional frequency shift)は−4(6)×10-17と見積もられ、その不確かさは、主として現測定における統計的不確かさに起源をもつものである。式(14)にて非線形項を省略して解析すれば、不確かさの範囲において矛盾のない結果が得られる。光格子誘起時計シフトをさらに調査するには実験的にΔβとΔαqmを決定することが極めて肝要となろう。
実効的魔法周波数の、つまりE1魔法周波数から−3MHz離調した199Hgを用いる光格子時計では、不確かさ7.2×10-17を伴う26.9×10-17の補正が必要となる。実効的魔法周波数の199Hgを用いる光格子時計では、リファレンス光格子時計、つまり時計遷移周波数の全体として、不確かさ0.7×10-17を伴う補正量−17.0×10-1787Srを用いる光格子時計に比べ、時計遷移周波数のより大きなシフトと不確かさが影響する。しかしながら、留意すべきは、光格子誘起時計シフトが199Hg時計の不確かさの主要な起源であると知られていることである(非特許文献9)。このことからいえるのは、199Hgを用いる光格子時計を動作させるときの補正および不確かさが実効的魔法周波数の199Hgを用いる光格子時計によって軽減されることが上述した実験的事実により証明されていることであり、あわせて、実効的魔法周波数を活用することにより光格子誘起時計シフトを低減するという指針が実際に機能したことも確認された。
3.時計シフトの一層の低減
ここまでに説明し実験的にも確かめられた指針は、時計シフトをさらに低減するためにYbまたはSr原子の場合に実施することができる。図8は、87Srを用いる光格子時計への上記指針の適用可能性を示すグラフである。このグラフは、87Srを用いる光格子時計の実験結果に基づく半理論的な解析結果を示している。光格子レーザー強度I(横軸)に依存している分数時計シフト(縦軸)を、E1魔法周波数からの偏差と関連する効果によって各条件についてプロットしている。曲線DLは、87Srを用いる光格子時計について典型的であるものの予備的な値であるE1魔法周波数νE1=ωm E1/2π=368 554 483.5 (2.5)MHzで光格子が動作する87Srを用いる光格子時計について、本発明者が実験結果に基づいて見積もった結果を示している。この見積りは、超分極効果Δβを導入せず、微分多重分極率Δαqm=αe qm−αg qmに基づいて実行している。なお、分数時計シフト(fractional clock shift)は、プロットした範囲で10-18レベルに広がり、光格子レーザー強度が増大するにつれて単調に増大するだろう。もしその見積りが、光格子レーザー周波数をE1魔法周波数に維持しつつ多重極分極率と超分極率とを単に同時に採用する分析に基づいてなされれば(非特許文献10)、分数時計シフトは、線Hによって示されるように、光格子レーザー強度Iが増大するにつれて急増する。したがって、光格子レーザー周波数がE1魔法周波数に固定されていれば、光格子レーザー強度Iを可能な限り弱めることが、10-19レベルの正確さを得るための唯一のアプローチとなってしまう。
これに対し本指針に応じて実効的魔法周波数が採用され、光格子レーザー周波数がνE1+3.15MHzへとシフトされると(曲線C1、図8)、分数時計シフトは光格子レーザー強度Iの実用的強度範囲の中ほどで10-18レベル未満にまで達する。留意すべきは、図8にプロットされた光格子レーザーの強度値Iが単一のレーザー強度値を示すことである。それだけでなく、実効的魔法周波数により周波数それ自体についての実用的な許容差が受け入れられることである。起こりうる逸脱として±0.15MHzの光格子レーザー周波数を仮定するとき、図8にてそれぞれνE1+3.00MHzおよびνE1+3.30MHzに対するカーブC2、C3が描くように、分数時計シフトは10-18レベル未満を保っている。図8にて強度の範囲W2が示すように、曲線C1は、倍化した強度範囲にわたって分数時計シフトを〜10-19レベルに保ちつつ、光格子レーザー強度Iの偏差に対し継続的に鈍感である。光格子レーザー周波数が揺らぐときでも、分数時計シフトは曲線C2、C3により示されるように継続的に5×10-19未満となり、これら曲線もまた強度範囲W2内の光格子レーザー強度Iに対し相対的に鈍感である。図8にて見積もられた結果はE1魔法周波数νE1について理論的に見積もった値に部分的に基づいて得たものであるものの、微分多重分極率Δαqmと超分極率Δβはその性質上実験により決定できる。加えて、超分極率Δβは光格子レーザーの偏光状態を制御することにより必要に応じてチューニングでき、時計シフトを、現実に向く光格子レーザー強度Iの動作範囲へとさらに調整する余裕が生まれる。このため、実効的魔法周波数を用いる指針は、10-18レベル未満や10-19にも至る時計シフトの低減に適用できる。そればかりか、実効的魔法周波数で動作される87Srを用いるし光格子時計では10-18レベル未満または10-19レベルの正確な時間リファレンス標準のための有望な候補になるであろう。
4.まとめ
実効的魔法周波数にて動作する光格子時計を細部にわたり説明した。提案したアプローチに従えば、光格子誘起時計シフトは、これまでになく桁違いに低減され、例えば、動作パラメーターの設定次第で1×10-18未満にまで到達する。実効的魔法周波数にて動作される光格子時計は、光格子強度の拡大された範囲にわたり明解な態様で動作させることが可能である。これは、分極率の値が実験的に決定されるときに達成されうるものであり、最近実証した時計の2×10-18での再現性は、強力なツールとなる。それらパラメーターを定めかつある値の円偏光度が必要となるときには、例えば波長板など特別に設計された偏光素子を、計時の不確かさを最小化するために使用することができる。
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。上述の実施形態、変形例および実施例は、本出願において開示される発明を説明するために記載されたものであり、本出願の発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき定められるべきものである。実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
本発明は、高精度の時計装置として、または高精度の周波数信号を利用する任意の機器として使用可能である。

Claims (15)

  1. 電子状態の2つの準位間で時計遷移を起こしうる原子と、
    それぞれが光格子レーザー強度Iをもつ少なくとも一対の対向伝播するレーザー光を生成するための実効的魔法周波数のレーザー光源であって、該一対の対向伝播するレーザー光は、それ自体の電磁波が作る定在波の腹の周りに前記原子をトラップする光格子ポテンシャルを形成するものである、レーザー光源と
    を備えており、
    前記実効的魔法周波数は、前記光格子レーザー強度Iの偏差ΔIに対する前記時計遷移の光格子誘起時計シフトを鈍感にするような周波数であり、
    該光格子誘起時計シフトは、前記電子準位の前記2つの準位に対するACシュタルク効果のために前記光格子レーザー強度Iの偏差ΔIによって生じる、前記原子の前記時計遷移についての周波数が示すシフトである、
    光格子時計。
  2. 前記光格子誘起時計シフトが前記光格子レーザー強度Iの関数として与えられ、
    前記光格子時計が前記光格子レーザー強度Iとして所定の実効的光格子レーザー強度IOPで動作され、
    前記実効的魔法周波数は、前記光格子誘起時計シフトの微分値を、前記実効的光格子レーザー強度IOPの付近で実質的にゼロにするような周波数である、
    請求項1に記載の光格子時計。
  3. 前記実効的魔法周波数がE1魔法周波数から離調された周波数であり、
    該E1魔法周波数は、前記電子の前記2準位の2つの電気双極子分極率をちょうど一致させる前記レーザー光源の周波数である
    請求項2に記載の光格子時計。
  4. 前記実効的魔法周波数は、前記光格子誘起時計シフトを所定の不確かさより小さくする周波数となるよう選択される、
    請求項1に記載の光格子時計。
  5. 前記光格子誘起時計シフトが前記光格子レーザー強度Iの関数として与えられ、
    前記光格子時計が前記光格子レーザー強度Iとして所定の実効的光格子レーザー強度IOPで動作され、
    前記実効的魔法周波数は、前記光格子誘起時計シフトと前記光格子誘起時計シフトの微分値との双方を、前記所定の前記実効的光格子レーザー強度IOPの付近で実質的にゼロにするような周波数である、
    請求項4に記載の光格子時計。
  6. 前記一対の対向伝播するレーザー光の偏光状態は、前記光格子誘起時計シフトが前記光格子レーザー強度Iの偏差ΔIに対し鈍感になるよう設定されている、
    請求項1に記載の光格子時計。
  7. 前記一対の対向伝播するレーザー光の偏光状態を調整するための偏光素子
    さらに備え、
    該偏光素子により調整される前記偏光状態は、所定の円偏光度となるように調整される
    請求項6に記載の光格子時計。
  8. 前記実効的魔法周波数および前記所定の偏光度は、前記光格子レーザー強度Iの受け入れうる許容差を広げるように決定されるものである、
    請求項7に記載の光格子時計。
  9. 前記原子が、長寿命状態間にて時計遷移を起こす原子およびイオンからなる群から選択されるものである、
    請求項1に記載の光格子時計。
  10. 前記原子が、イッテルビウム(Yb)、水銀(Hg)、ストロンチウム(Sr)、カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、およびカルシウム(Ca)からなる群から選択されるものである、
    請求項9に記載の光格子時計。
  11. 前記一対のレーザー光の偏光状態を調整するための偏光素子
    をさらに備えており、
    前記原子が水銀(Hg)であり、
    前記一対のレーザー光の前記偏光状態は、水銀のための所定の円偏光度をもつように調整されている、
    請求項4に記載の光格子時計。
  12. 前記一対のレーザー光の偏光状態を調整するための偏光素子
    をさらに備えており、
    前記原子がイッテルビウム(Yb)であり、
    前記一対のレーザー光の前記偏光状態は、イッテルビウムのための所定の円偏光度をもつように調整されている、
    請求項4に記載の光格子時計。
  13. 前記一対の対向伝播するレーザー光の偏光状態を調整するための偏光素子
    をさらに備えており、
    前記原子がストロンチウム(Sr)であり、
    前記一対の対向伝播するレーザー光の前記偏光状態は、円偏光度0の直線偏光である、
    請求項4に記載の光格子時計。
  14. 電子状態の2つの準位間で時計遷移を起こしうる原子と、
    それぞれが光格子レーザー強度Iをもつ少なくとも一対の対向伝播するレーザー光を生成するための実効的魔法周波数のレーザー光源であって、該一対の対向伝播するレーザー光は、それ自体の電磁波が作る定在波の腹の周りに前記原子をトラップする光格子ポテンシャルを形成するものである、レーザー光源と
    を備えており、
    前記実効的魔法周波数は、前記光格子レーザー強度Iの偏差ΔIに対する前記時計遷移の光格子誘起時計シフトを鈍感にするような周波数であり、
    該光格子誘起時計シフトは、前記電子準位の前記2つの準位に対するACシュタルク効果のために前記光格子レーザー強度Iの偏差ΔIによって生じる、前記原子の前記時計遷移についての周波数が示すシフトである、
    時間基準装置。
  15. 電子状態の2つの準位間で時計遷移を起こしうる原子を提供する段階と、
    それぞれが光格子レーザー強度Iをもつ少なくとも一対の対向伝播するレーザー光を実効的魔法周波数のレーザー光源により生成する段階と、ここで、該一対の対向伝播するレーザー光は、それ自体の電磁波が作る定在波の腹の周りに前記原子をトラップする光格子ポテンシャルを形成するものであり、
    を含み、前記実効的魔法周波数は、前記光格子レーザー強度Iの偏差ΔIに対する前記時計遷移の光格子誘起時計シフトを鈍感にするような周波数であり、
    該光格子誘起時計シフトは、前記電子準位の前記2つの準位に対するACシュタルク効果のために前記光格子レーザー強度Iの偏差ΔIによって生じる、前記原子の前記時計遷移についての周波数が示すシフトである、
    光格子時計の動作方法。
JP2017538753A 2015-01-30 2016-01-28 実効的魔法周波数の光格子時計およびその動作方法 Active JP6635608B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015016480 2015-01-30
JP2015016480 2015-01-30
PCT/JP2016/053599 WO2016122001A1 (en) 2015-01-30 2016-01-28 Optical lattice clock at operational magic frequency and method for operating the same

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2018510494A true JP2018510494A (ja) 2018-04-12
JP2018510494A5 JP2018510494A5 (ja) 2019-03-07
JP6635608B2 JP6635608B2 (ja) 2020-01-29

Family

ID=56543603

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017538753A Active JP6635608B2 (ja) 2015-01-30 2016-01-28 実効的魔法周波数の光格子時計およびその動作方法

Country Status (4)

Country Link
US (1) US10452029B2 (ja)
EP (1) EP3251183B1 (ja)
JP (1) JP6635608B2 (ja)
WO (1) WO2016122001A1 (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021200906A1 (ja) 2020-03-31 2021-10-07 日本電子株式会社 3軸磁場補正コイル、物理パッケージ、光格子時計用物理パッケージ、原子時計用物理パッケージ、原子干渉計用物理パッケージ、量子情報処理デバイス用物理パッケージ、及び、物理パッケージシステム
WO2021200908A1 (ja) 2020-03-31 2021-10-07 日本電子株式会社 光格子時計及び光格子時計の磁場補正方法
WO2021200907A1 (ja) 2020-03-31 2021-10-07 日本電子株式会社 3軸磁場補正コイル、物理パッケージ、光格子時計用物理パッケージ、原子時計用物理パッケージ、原子干渉計用物理パッケージ、量子情報処理デバイス用物理パッケージ、及び、物理パッケージシステム
WO2021200909A1 (ja) 2020-03-31 2021-10-07 日本電子株式会社 光格子時計用物理パッケージ
WO2022113717A1 (ja) 2020-11-25 2022-06-02 日本電子株式会社 低速原子ビーム生成装置、物理パッケージ、光格子時計用物理パッケージ、原子時計用物理パッケージ、原子干渉計用物理パッケージ、量子情報処理デバイス用物理パッケージ、及び、物理パッケージシステム
WO2022176765A1 (ja) 2021-02-16 2022-08-25 日本電子株式会社 原子ビーム生成装置、物理パッケージ、光格子時計用物理パッケージ、原子時計用物理パッケージ、原子干渉計用物理パッケージ、量子情報処理デバイス用物理パッケージ、及び、物理パッケージシステム
WO2022181408A1 (ja) * 2021-02-25 2022-09-01 国立大学法人東京大学 原子の電子状態スプリッター、原子干渉計、原子遷移周波数測定装置、原子発振器、光格子時計、量子コンピュータおよび原子の電子状態重ね合わせ状態の生成方法
KR20230167364A (ko) 2021-04-08 2023-12-08 지올 리미티드 저속 원자빔 생성 장치, 물리 패키지, 광격자 시계용 물리 패키지, 원자 시계용 물리 패키지, 원자 간섭계용 물리 패키지, 양자 정보 처리 디바이스용 물리 패키지 및 물리 패키지 시스템

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6784373B2 (ja) * 2017-04-10 2020-11-11 日本電信電話株式会社 光伝送システム
JP7189588B2 (ja) 2018-01-19 2022-12-14 国立研究開発法人理化学研究所 輻射シールドおよびそれを利用する光格子時計
CN108917922B (zh) * 2018-07-09 2021-09-10 北京无线电计量测试研究所 一种激光功率的量子测量方法
US11243079B2 (en) * 2019-01-02 2022-02-08 Kutztown University Of Pennsylvania Rotation sensing and magnetometry using localization on a ring shaped lattice
US11800629B2 (en) 2019-02-26 2023-10-24 Nippon Telegraph And Telephone Corporation Magneto-optical trap method and apparatus using positive and negative g-factors
US11990313B2 (en) 2019-09-16 2024-05-21 The Regents Of The University Of California Use of optical polarization states to control a ponderomotive phase plate

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014027637A1 (ja) * 2012-08-17 2014-02-20 独立行政法人理化学研究所 光格子時計、時計装置、およびレーザー光源

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9229073B2 (en) * 2012-12-27 2016-01-05 Northrop Grumman Guidance And Electronics Company, Inc. Systems and method to substantially mitigate AC stark shift effects in a sensor system
US20160163407A1 (en) * 2014-12-03 2016-06-09 The Charles Stark Draper Laboratory, Inc. Robust ramsey sequences with raman adiabatic rapid passage

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014027637A1 (ja) * 2012-08-17 2014-02-20 独立行政法人理化学研究所 光格子時計、時計装置、およびレーザー光源

Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
ANDREI DEREVIANKO ET AL: "Colloquium: Physics of optical lattice clocks", REVIEW OF MODERN PHYSICS, vol. 83, no. 2, JPN6019036273, 1 April 2011 (2011-04-01), pages 331 - 347, XP055199491, ISSN: 0004118280, DOI: 10.1103/RevModPhys.83.331 *
B.J.BLOOM ET AL: "An optical lattice clock with accuracy and stability at the 10-18 level", NATURE, vol. 506, JPN6019036274, pages 71 - 77, ISSN: 0004118281 *
V.D.OVSIANNIKOV ET AL: "Multipole, nonlinear, and anharmonic uncertainties of clocks of Sr atoms in an optical lattice", PHYSICAL REVIEW A, vol. 88, no. 1, JPN6019036275, 1 July 2013 (2013-07-01), pages 013405 - 1, XP055530402, ISSN: 0004118282, DOI: 10.1103/PhysRevA.88.013405 *

Cited By (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20220160046A (ko) 2020-03-31 2022-12-05 지올 리미티드 3 축 자기장 보정 코일, 물리 패키지, 광격자 시계용 물리 패키지, 원자 시계용 물리 패키지, 원자 간섭계용 물리 패키지, 양자 정보 처리 디바이스용 물리 패키지 및 물리 패키지 시스템
KR20220160045A (ko) 2020-03-31 2022-12-05 지올 리미티드 3 축 자기장 보정 코일, 물리 패키지, 광격자 시계용 물리 패키지, 원자 시계용 물리 패키지, 원자 간섭계용 물리 패키지, 양자 정보 처리 디바이스용 물리 패키지 및 물리 패키지 시스템
WO2021200907A1 (ja) 2020-03-31 2021-10-07 日本電子株式会社 3軸磁場補正コイル、物理パッケージ、光格子時計用物理パッケージ、原子時計用物理パッケージ、原子干渉計用物理パッケージ、量子情報処理デバイス用物理パッケージ、及び、物理パッケージシステム
WO2021200909A1 (ja) 2020-03-31 2021-10-07 日本電子株式会社 光格子時計用物理パッケージ
US11929754B2 (en) 2020-03-31 2024-03-12 Jeol Ltd. Triaxial magnetic field correction coil, physics package, physics package for optical lattice clock, physics package for atomic clock, physics package for atom interferometer, physics package for quantum information processing device, and physics package system
US11894854B2 (en) 2020-03-31 2024-02-06 Jeol Ltd. Optical lattice clock and magnetic field correction method for optical lattice clock
WO2021200908A1 (ja) 2020-03-31 2021-10-07 日本電子株式会社 光格子時計及び光格子時計の磁場補正方法
KR20220159416A (ko) 2020-03-31 2022-12-02 지올 리미티드 광격자 시계 및 광격자 시계의 자기장 보정 방법
KR20220159417A (ko) 2020-03-31 2022-12-02 지올 리미티드 광격자 시계용 물리 패키지
WO2021200906A1 (ja) 2020-03-31 2021-10-07 日本電子株式会社 3軸磁場補正コイル、物理パッケージ、光格子時計用物理パッケージ、原子時計用物理パッケージ、原子干渉計用物理パッケージ、量子情報処理デバイス用物理パッケージ、及び、物理パッケージシステム
WO2022113717A1 (ja) 2020-11-25 2022-06-02 日本電子株式会社 低速原子ビーム生成装置、物理パッケージ、光格子時計用物理パッケージ、原子時計用物理パッケージ、原子干渉計用物理パッケージ、量子情報処理デバイス用物理パッケージ、及び、物理パッケージシステム
KR20230144545A (ko) 2021-02-16 2023-10-16 지올 리미티드 원자빔 생성 장치, 물리 패키지, 광격자 시계용 물리패키지, 원자 시계용 물리 패키지, 원자 간섭계용 물리 패키지, 양자 정보 처리 디바이스용 물리 패키지 및 물리 패키지 시스템
WO2022176765A1 (ja) 2021-02-16 2022-08-25 日本電子株式会社 原子ビーム生成装置、物理パッケージ、光格子時計用物理パッケージ、原子時計用物理パッケージ、原子干渉計用物理パッケージ、量子情報処理デバイス用物理パッケージ、及び、物理パッケージシステム
WO2022181408A1 (ja) * 2021-02-25 2022-09-01 国立大学法人東京大学 原子の電子状態スプリッター、原子干渉計、原子遷移周波数測定装置、原子発振器、光格子時計、量子コンピュータおよび原子の電子状態重ね合わせ状態の生成方法
KR20230167364A (ko) 2021-04-08 2023-12-08 지올 리미티드 저속 원자빔 생성 장치, 물리 패키지, 광격자 시계용 물리 패키지, 원자 시계용 물리 패키지, 원자 간섭계용 물리 패키지, 양자 정보 처리 디바이스용 물리 패키지 및 물리 패키지 시스템

Also Published As

Publication number Publication date
US20180011449A1 (en) 2018-01-11
US10452029B2 (en) 2019-10-22
WO2016122001A1 (en) 2016-08-04
JP6635608B2 (ja) 2020-01-29
EP3251183B1 (en) 2020-03-18
EP3251183A1 (en) 2017-12-06
EP3251183A4 (en) 2019-01-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6635608B2 (ja) 実効的魔法周波数の光格子時計およびその動作方法
Yamaguchi et al. Narrow-line cooling and determination of the magic wavelength of Cd
Ludlow et al. Optical atomic clocks
Yamanaka et al. Frequency ratio of Hg 199 and Sr 87 optical lattice clocks beyond the SI limit
Katori et al. Strategies for reducing the light shift in atomic clocks
Löw et al. An experimental and theoretical guide to strongly interacting Rydberg gases
Bober et al. Strontium optical lattice clocks for practical realization of the metre and secondary representation of the second
Iftiquar et al. Subnatural linewidth for probe absorption in an electromagnetically-induced-transparency medium due to Doppler averaging
Schiller et al. The space optical clocks project: Development of high-performance transportable and breadboard optical clocks and advanced subsystems
Ovsiannikov et al. Higher-order effects on the precision of clocks of neutral atoms in optical lattices
Mejri et al. Ultraviolet laser spectroscopy of neutral mercury in a one-dimensional optical lattice
Nauta et al. Towards precision measurements on highly charged ions using a high harmonic generation frequency comb
Cui et al. Evaluation of the systematic shifts of a 40 Ca+–27 Al+ optical clock
Chalopin et al. Anisotropic light shift and magic polarization of the intercombination line of dysprosium atoms in a far-detuned dipole trap
Chepurov et al. Spectroscopy of the quadrupole clock transition of ytterbium-171 ions for optical frequency standard development
Zalivako et al. Improved Wavelength Measurement of 2 S 1/2→ 2 P 1/2 and 2 D 3/2→ 3 [3/2] 1/2 Transitions in Yb+
Ovchinnikov Compact magneto-optical sources of slow atoms
Sautenkov et al. Power broadening of two-photon coherent resonances on Rydberg atomic transitions in a magneto-optical trap
Tanaka et al. Sideband cooling of a Ca^+ Ca+–In^+ In+ ion chain toward the quantum logic spectroscopy of In^+ In+
Zhang et al. Toward a transportable microwave frequency standard based on laser-cooled 113 Cd+ ions
Ushijima et al. Cryogenic optical lattice clocks with a relative frequency difference of $1\times 10^{-18} $
Chepurov et al. Optical frequency standard with a single 171Yb+ ion
Bobrov et al. Determination of characteristics of a magneto-optical trap by the spectral width of coherent two-photon resonance
Sauvan et al. Spectroscopic diagnostics of plasma interaction with an external oscillatory field
Fim First optical lattice frequency standard based on 24Mg atoms

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170801

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190122

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190122

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190919

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191029

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191210

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191216

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6635608

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250