JP2018510359A - 脳損傷または神経変性を診断するための方法および組成物 - Google Patents

脳損傷または神経変性を診断するための方法および組成物 Download PDF

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Abstract

対象において脳損傷、神経変性またはそれらの素因を診断するための方法および組成物が提供される。特に、本発明は、対象における脳損傷、神経変性またはそれらの素因の診断に有用な特定の抗原抗体反応性に関する。

Description

発明の分野
本発明は、脳損傷、神経変性またはそれらの素因を診断するための方法および組成物、より詳細には脳損傷または神経変性の存在およびタイプを決定するための臨床方法に関する。
発明の背景
脳損傷は複合的であり、多数の重大な臨床結果を示し得る。脳および脊髄の損傷は、頭部外傷、脳卒中、外傷性出産、心臓手術、心停止および心室補助装置または膜型人工肺(ECMO)による心血管補助を必要とする患者に起因し得る。
毎年約1,700万の米国人が、軽度から重度の範囲の外傷性脳損傷(TBI)を患っており、これに、爆発性(震とう性)衝撃を受けて軽度のTBIを発症する約360,000名の戦闘任務に関わる兵士およびテロ攻撃から生還した保安担当官が加わる。それは、すべての損傷関連死の約30%に相当し、毎年約600億ドルが費やされている。少なくとも230,000人がTBIで入院し存命であり、100万人超が緊急治療部(ED)においてTBIの処置を受け、80,000〜90,000名の米国人がTBIに起因する長期的身体障害を経験している。
最近、米国の救急部におけるTBI評価の状況を決定するために研究が行われた。毎年480万人の来院者でTBIが評価され、TBI評価の82%(毎年390万人の来院者)において頭部CTスキャンが行われた。TBIは、評価の52%(毎年250万人の来院者)において診断された。頭部CTスキャンを受けた者の中で、9%が外傷性異常のCT証拠を示した。TBIと評価されグラスゴー昏睡尺度スコアが記録された患者の中で、94.5%が軽度TBI、2.1%が中等度TBI、3.5%が重度TBIを有していると分類された。頭部簡略損傷尺度スコアを算出する規範である国際疾病分類第9版臨床修正版を用いた患者の中で、9.0%、85.0%、2.5%、3.2%。0.3%および0%が、それぞれ、1、2、3、4、5および6の頭部簡略損傷尺度スコアを有していた。TBIと評価された患者の中で、31%が他の頭/顔/首の損傷を有しており、10%が脊椎および背の損傷を有しており、7%が胴の損傷を有しており、14%が四肢の損傷を有していた(Korley et al., Sep 10, 2015, J Head Trauma Rehabil(非特許文献1))。
TBIは、脳機能を損なわせる鈍的殴打、振動または衝撃による過剰圧力の結果である。軽度TBI(mTBI)のサブセットは、診断がより困難なTBIの区分である。頭部損傷の重篤度は、精神状態または意識の短時間の変化から長期間の無意識および記憶喪失に及ぶ。重度または複数回の脳震とうの例においては、悲惨な結果を伴う人格変化が起こり得る。認識低下は、損傷後症候群の一部と認識されている。
TBI損傷の適切な処置は、影響を受けた構造の正確な診断を必要とする。TBIにおける損傷のメカニズムは、末梢前庭機構、中枢前庭構造、眼球運動神経路、小脳およびこれらの構造と連絡する脳のすべての部分において様々な異常を引き起こす。前庭障害の発病は通常、損傷後7〜10日以内に起こる。報告されているめまいの症状は3ヶ月後に解消するが、15%は、1年後も持続的な症状を有する。
現時点で、外傷性脳損傷が疑われた際のやや主観的であり完全に効果的ではない診断手順の1つは、多くの試験技術を利用するものである。患者は、以下:1)精神状態、2)運動機能、3)感覚試験、4)深部腱反射、5)静止、歩行および平衡、ならびに6)脳神経機能からなり得る神経学的試験を受ける。精神状態試験は、a)意識のレベル、b)短期および長期記憶、c)患者および立場の自覚(knowledge of patient and place)ならびにd)頭痛、めまい、視界不良等の症状に関する質問を含み得る。加えて、患者は、頭部のCTスキャン、MRI、PETスキャンを含み得る放射線学試験も受け得る。(特に軽度)外傷性脳損傷の早期段階において、画像化技術は異常を検出するのに十分な感度を有さない可能性が報告されている。さらに、患者の認識技能は、初期には損なわれていない可能性があり、かつ症状は、もしあったとしてもごくわずかかもしれない。患者はしばしば、24〜48時間の間観察下に置かれ、彼らが目覚めることができることを確認するため定期的な間隔(例えば、3〜4時間ごと)で起こされる。頭痛または他の苦痛に対する麻酔薬は、その効果が患者の覚醒状態の問題を隠蔽しないよう、与えられない。認識および反応時間のレベルを決定するコンピュータ検査はしばしば、反復される試験で用いられる。
潜在的な外傷性脳損傷を診断する上でのこのアプローチに伴う問題の1つは、それが常に正確で、タイムリーで、客観的な情報を提供するものではないことである。それはまた、人ごとにばらつきを示す。さらに、その人がその時点で無症状である場合、その結論は、問題は存在しないということかもしれず、その個人は通常の活動に戻るよう促されるかもしれない。そのような誘導は潜在的にその人の健康に有害であり得、致命的な結果さえ導き得る。
患者が脳損傷を有すると診断されたとき、恒久的な損傷または死の危険を最小限に抑えるためにその患者をタイムリーで効果的な方法で処置することが重要になる。
上記の公知の手順にもかかわらず、個体が脳損傷を患っているかどうか、それがどのくらい重症であるかに関する早期かつ効果的な決定、およびそのような損傷の存在が発見された場合、その患者を効果的に処置する方法に対して極めて現実的かつ実質的な要望がなおも存在している。
Korley et al., Sep 10, 2015, J Head Trauma Rehabil
本発明は、脳損傷または神経変性を診断するための方法およびキットを提供する。本発明はさらに、そのような診断を実施するための抗原プローブアレイおよびそのようなアレイを作製するための抗原プローブセットを提供する。
本発明の抗原プローブセットは、解剖学的構造のいずれかまたはすべての要素および血液脳関門を通過する成分の検出能力の破損による脳損傷または神経変性疾患を患っている患者において、その抗原に対する抗体応答をプロファイルするために使用され得る。この抗体応答プロファイルは、脳損傷の診断、モニタリングおよび管理のために使用され得る。いくつかの態様にしたがい、抗体プロファイルは、損傷時の患者の状態を反映する。抗体応答のプロファイルは、マイクロアレイまたは任意のアレイチップを含むがこれらに限定されない任意のプラットフォームで測定され得る。
本発明は、一部、健常対照と比較して脳損傷を患っている患者の抗体反応性を試験した際に得られた予想外の結果に基づいている。驚くべきことに、健常対照と比較して、試験された脳損傷患者において、特定の抗原に対する示差的な免疫グロブリンG(IgG)およびIgM反応性が見られた。本発明はまた、免疫応答のマーカーと組み合わせての特定の脳関連分子に対する個体の抗体応答のパターンの分析が、脳損傷および他の神経変性状態の性質および程度を解明する新規かつ信頼性のある方法を提供するという発見に基づいている。したがって、本発明は、脳損傷の指標となる特有の抗原を提供する。本発明はさらに、脳損傷に関連する抗原・自己抗体反応性パターンを提供する。特定の態様において、本発明は、指標となる抗原またはその反応性パターンに基づき脳損傷を診断およびモニタリングするための、高い特異性の、信頼性のある、正確なかつ識別力のあるアッセイを提供する。
いくつかの態様にしたがい、損傷時の患者の状態の「既存の状況」がモニタリングされる。
したがって、本発明のいくつかの態様にしたがい、脳損傷の進行を診断およびモニタリングするための新規の方法が提供される。本発明のいくつかの態様にしたがい、この方法は、本明細書に記載される少なくとも1つの抗原に対する、対象から得られたまたは対象から抽出されたサンプル中の抗体の反応性を決定する工程を含む。本発明の方法はさらに、少なくとも1つの抗原に対するサンプル中の抗体の反応性を、その少なくとも1つの抗原に対する対照反応性と比較する工程を含む。特定の態様にしたがい、健常対照の反応性または同じ患者由来の基準サンプルの反応性と比較して有意に異なるサンプル中の抗体の反応性は、その対象が脳損傷を患っていることの指標となる。
特定の態様にしたがい、疾患過程の進行、現象の解消または寛解を予測するために同じ患者由来の基準サンプルが[経時的測定のために]使用され得る。
特定の態様にしたがい、本発明の方法は、どの脳損傷患者が、脳震とうのみに対して頭蓋内出血を排除するために頭部CTスキャンを必要とするかを識別することができる。初期対応において(例えば、緊急診療部(ED)の場で)またはその後において(例えば、神経科部)実施されたとき、本発明の方法は、頭部CTスキャンの利用を減らし、保険医療費および放射線暴露を減らすであろう。
したがって、第1の局面にしたがい、本発明は、対象において脳損傷を診断する方法であって、対象からサンプルを入手する工程、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原に対するサンプル中の抗体の反応性を決定する工程、およびサンプル中の抗体の反応性を健常対照の反応性と比較する工程を含み、健常対照の反応性と比較して有意に異なるサンプル中の抗体または抗体群の反応性が、対象が脳損傷を患っていることの指標となる方法を提供する。
特定の態様において、少なくとも1つの抗原は、SEQ ID NO:2、14、28、42、85および86からなる群より選択されるかまたはそれらの任意の組み合わせである。
特定の態様において、この方法はさらに、サンプル中の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを測定する工程、ならびに1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを、脳損傷を有する対象に相関する同じバイオマーカーの既定のレベルおよび健常対照に相関する同じバイオマーカーの既定のレベルと比較する工程を含み、既定のレベルの1つとの相関が診断を提供する。
特定の態様において、脳損傷は、脳震とう、慢性外傷性脳症、軽度外傷性脳損傷、中等度外傷性脳損傷、重度外傷性脳損傷、頭部外傷、震とう性衝撃および脳神経変性状態からなる群より選択される。
特定の態様において、脳損傷は、血液脳関門を破損させる。
特定の態様において、脳神経変性状態はさらに、記憶または運動機能の喪失および認識低下を含む。
特定の態様において、神経変性状態は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、脱髄疾患、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、損傷または外傷後の病理学的神経学的症状、脳症およびウイルス性脳症からなる群より選択される。
特定の態様において、健常対照の反応性と比較して有意に高いサンプル中の抗体の反応性は、対象の脳損傷に罹患する可能性が上昇していることの指標となる。他の特定の態様において、健常対照の反応性と比較してサンプル中の抗体の反応性が有意に高くない場合、健常対照の反応性と比較してサンプル中の抗体の反応性が同程度である場合、健常対照の反応性と比較してサンプル中の抗体の反応性が低い場合または健常対照の反応性と比較してサンプル中の抗体の反応性が有意に低い場合、それは、対象の脳損傷に罹患する可能性が低下していることの指標となる。各々の可能性は、本発明の別個の態様を表す。
本発明の方法の特定の態様において、この方法の前に、対象からサンプルを入手または抽出することを含む工程が実施される。特定の態様において、サンプルは、非侵襲的手段または方法によって対象から入手または抽出される。
特定の態様において、入手は、頭部外傷から2時間以内に実施される。特定の態様において、入手は、頭部外傷から4時間以内に実施される。特定の態様において、入手は、頭部外傷から24時間以内に実施される。特定の態様において、入手は、頭部外傷から72時間以内に実施される。特定の態様において、入手は、急性期後治療中に実施される。
特定の態様において、対象は、前記入手の時点で意識がある。
特定の態様において、複数の抗原に対するサンプル中の抗体の反応性の決定は、対象における脳損傷の診断に使用される反応性パターンを生成する。したがって、本発明の例示的な態様にしたがい、複数の抗原に対するサンプル中の抗体の反応性パターンは、該複数の抗原に対する健常対照対象に対応するサンプル中の抗体の反応性パターンと比較され、サンプルの反応性パターンと健常対照の反応性パターンとの間の有意差は、対象が脳損傷を患っているまたは他の態様においては脳損傷を有する可能性が上昇していることを示す。反応性パターンは適宜、例えば本明細書に記載される学習およびパターン認識アルゴリズムを用いて算出され比較される。
別の態様にしたがい、抗体の反応性は、IgGおよびIgM反応性を含む。別の態様にしたがい、サンプル中の抗体の有意に高い反応性は、示差的なIgGおよび/またはIgM反応性を含む。別の態様にしたがい、上昇したIgM反応性は、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原のものである。別の態様にしたがい、上昇したIgG反応性は、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原のものである。各々の可能性は、本発明の別個の態様を表す。
本発明の方法のさらなる態様にしたがい、対象から入手されるサンプルは、体液である。いくつかの態様にしたがい、サンプルは、血漿、血清、血液、脳脊髄液、滑液、痰、尿、唾液、涙液、リンパ液試料または当技術分野で公知の任意の他の体液からなる群より選択される。各々の可能性は、本発明の別個の態様を表す。特定の態様にしたがい、対象から入手されるサンプルは、血清、血漿および血液からなる群より選択される。1つの態様にしたがい、サンプルは、血清サンプルである。特定の態様において、サンプルは、非侵襲的手段または方法によって対象から入手または抽出される。
本発明の方法の特定の態様にしたがい、対照は、少なくとも1人の健常個体由来のサンプル、同じ対象由来の基準サンプル、健常個体群由来の対照サンプルのパネルおよび健常個体由来の保存されたデータセットからなる群より選択される。各々の可能性は、本発明の別個の態様を表す。典型的に、健常個体は、脳損傷を患っていない対象である。別の態様において、健常個体は、神経変性疾患を患っていない対象である。
別の態様にしたがい、この方法は、複数の抗原に対するサンプル中の抗体の反応性を決定する工程を含む。
別の態様にしたがい、この方法は、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原に対するサンプル中の抗体の反応性を決定する工程を含む。別の態様にしたがい、この方法は、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも2つの抗原に対するサンプル中の抗体の反応性を決定する工程を含む。
別の態様にしたがい、複数の抗原は、抗原プローブセット、抗原アレイまたは抗原チップの形態で使用される。
別の局面にしたがい、本発明は、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる群より選択される複数の抗原プローブを含む抗原プローブセットを提供する。別の態様において、抗原プローブセットは、SEQ ID NO:1〜115の抗原プローブ、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせを含む。
別の局面にしたがい、本発明は、上記の抗原プローブセットを含む製造物品を提供する。
特定の態様において、製造物品はさらに、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、シヌクレインベータ(Sncb)、メタロチオネイン-3(MT3)、ニューログラニン(NRGN)、細胞内接着分子-5(ICAM5)および脳由来神経栄養因子(BDNF)、またはそれらのシトルリン化形態からなる群より選択される1つもしくは複数のバイオマーカーを含む。
特定の態様において、製造物品は、抗原プローブアレイの形態または抗原チップの形態またはディップスティックの形態またはラテラルフロー試験の形態またはELISAプレートの形態またはQuanterixシステム、Agilent Plateリーダー、Meso Scale Diagnosticsプラットフォームもしくは当業者に公知の任意の他のプラットフォームの形態である。特定の態様において、製造物品はキットの形態である。
特定の態様にしたがい、キットはさらに、複数の抗原の中の少なくとも1つの抗原に対するサンプル中の抗体の反応性を決定するための手段を含む。別の態様にしたがい、キットはさらに、複数の抗原の中の少なくとも1つの抗原に対する異なるサンプル中の抗体の反応性を比較するための手段を含む。別の態様にしたがい、キットはさらに、脳損傷を診断するためのキットの使用説明書を含む。
別の局面にしたがい、対象において脳損傷を診断する診断キットを製造するための、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原の使用が提供される。各々の可能性は、本発明の別個の態様を表す。診断キットは、いくつかの態様において、サンプル中の抗体の反応性を決定し、それによって少なくとも1つの抗原に対するサンプルの反応性パターンを決定する上で有用である。いくつかの態様において、サンプルの反応性パターンと対照サンプルの反応性パターンとの間の有意差(例えば、増加)は、脳損傷の指標である。
別の局面にしたがい、対象において脳損傷状態を評価する方法であって、対象からサンプルを入手する工程、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原に対するサンプル中の抗体の反応性を決定する工程、およびサンプル中の抗体の反応性を、脳損傷を有する、脳損傷を有さない、脳損傷の素因がある、亜急性脳損傷、急性脳損傷、急性期後脳損傷、進行中の脳損傷、退行中の脳損傷、亜臨床性脳損傷、軽度の脳損傷、中等度の脳損傷、重度の脳損傷および慢性的な脳損傷からなる群より選択される1つまたは複数の脳損傷状態に相関する既定の反応性と比較する工程を含み、既定の反応性の1つとの相関が、対象の脳損傷状態を決定する、方法が提供される。
特定の態様において、この方法はさらに、サンプル中の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを測定する工程、および1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを、1つまたは複数の脳損傷状態と相関する同じバイオマーカーの既定のレベルと比較する工程を含み、既定のレベルの1つとの相関が、対象の脳損傷状態を決定する。
別の局面において、対象において脳損傷からの回復を検出する方法であって、対象からサンプルを入手する工程、SEQ ID NO:10、44、61、66、102、104、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原に対するサンプル中の抗体の反応性を決定する工程、およびサンプル中の抗体の反応性を既定の反応性しきい値と比較する工程を含み、既定の反応性しきい値と比較して有意に異なるサンプル中の抗体の反応性が、対象における脳損傷からの回復の指標となる、方法が提供される。
特定の態様において、この方法はさらに、サンプル中の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを測定する工程、および1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを、脳損傷からの回復と相関する同じバイオマーカーの既定のレベルと比較する工程を含み、既定のレベルの1つとの相関が、対象の脳損傷からの回復の指標となる。
特定の態様において、1つまたは複数のバイオマーカーは、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、シヌクレインベータ(Sncb)、メタロチオネイン-3(MT3)、ニューログラニン(NRGN)、細胞内接着分子-5(ICAM5)および脳由来神経栄養因子(BDNF)、またはそれらのシトルリン化形態からなる群より選択される。
特定の態様において、1つまたは複数の抗体および1つまたは複数のバイオマーカーの組み合わせが使用される。
特定の態様にしたがい、比較は、少なくとも1つの分類アルゴリズムを用いて実施される。
特定の態様にしたがい、少なくとも1つの分類アルゴリズムは、決定木分類、ロジスティック回帰分類、最近傍分類、ニューラルネットワーク分類、混合ガウスモデル(GMM)、サポートベクターマシン(SVM)分類、最近接セントロイド分類、線形回帰分類、線形判別分析(LDA)分類、二次判別分析(QDA)分類およびランダムフォレスト分類からなる群より選択される。
本発明の他の目的、特徴および利点は、下記の説明および図面から明らかとなるであろう。
脳損傷後第30日の抗脂肪酸結合タンパク質(FABP-3、SEQ ID NO:61)IgM自己抗体レベルを示している。拡張グラスゴー転帰尺度(GOSE)スコア<8のTBI患者(十字で示されている)は、GOSEスコア=8の患者(丸で示されている)よりも低いIgMレベルを示している。 脳損傷後第30日の抗ミエリン塩基性タンパク質(MBPR149、SEQ ID NO:10)由来BSA結合ペプチドIgM自己抗体レベルを示している。拡張グラスゴー転帰尺度(GOSE)スコア<8のTBI患者(十字で示されている)は、GOSEスコア=8の患者(丸で示されている)よりも高いIgMレベルを示している。 TBI患者から入手した血清サンプル中の抗ミエロペルオキシダーゼ(MPO、SEQ ID NO:85)IgM自己抗体レベル(丸で示されている)を、健常対照(十字で示されている)と比較して示している。 図4Aは、損傷後第30日および第90日のTBI患者から入手した血清サンプル中の抗CMV(SEQ ID NO:86)IgG自己抗体レベル(丸で示されている)(N=142)を、健常対照(十字で示されている)(N=21)と比較して示している。図4Bは、抗サイトメガロウイルス(CMV)IgG自己抗体レベルの受信者動作特性(ROC)曲線による上記の分離能力を示している。分離のT検定P値: 3.746E-07、FDR補正後: 5.02E-05。分離のクラスカル・ウォリス検定P値: 4.567E-05、FDR補正後: 0.0081593。 図5Aは、損傷後第30日のTBI患者から入手した血清サンプル中の抗TNFRSF12A(SEQ ID NO:104)IgM自己抗体レベルに基づく、損傷後第90日のTBI患者の臨床状態の予測を示している。損傷後第90日のGOSE<8のTBI患者(丸で示されている)(N=52)を、損傷後第90日のGOSE=8のTBI患者(十字で示されている)(N=15)と比較した。図5Bは、抗TNFRSF12A IgM自己抗体レベルの受信者動作特性(ROC)曲線による上記の分離能力を示している。分離のT検定P値: 6.808E-06、FDR補正後: 0.0036493。分離のクラスカル・ウォリス検定P値: 0.0004082、FDR補正後: 0.1541973。 70:30交差検証の100回反復に基づく6つの分類法(SVM、LR、QDA、CART、RFおよびLDA)の受信者動作特性(ROC)曲線下面積を示している。特徴を、その方法に依存して、それらの中央スコアまたはモデル包含数にしたがいランク付けした。時間0のTBI患者(t0、N=85)から入手した血清サンプルを、健常対照(HC、N=21)から入手した血清サンプルと比較した。この分析は、464個のiChipの特徴(232個の抗原、IgMおよびIgG)ならびに4個のELISAの特徴に基づくものであった。iChipデータは、補正手順後の2つの複製ブロックの平均に基づく。ELISAの特徴を、データ利用性に基づき選択し、データがiChipサンプルの>80%で利用可能な特徴のみを使用した。ELISAデータが欠落したサンプルは分析から除外した。 70:30交差検証の100回反復に基づく6つの分類法(SVM、LR、QDA、CART、RFおよびLDA)のROC曲線を示している。特徴を、その方法に依存して、それらの中央スコアまたはモデル包含数にしたがいランク付けした。異常なCTの時間0(t0)のTBI患者から入手した血清サンプルを、正常なCTの時間0(t0)のTBI患者から入手したサンプルと比較した。分析は、464個のiChipの特徴(232個の抗原、IgMおよびIgG)ならびに4個のELISAの特徴に基づくものであった。iChipデータは、補正手順後の2つの複製ブロックの平均に基づく。ELISAの特徴を、データ利用性に基づき選択し、データがiChipサンプルの>80%で利用可能な特徴のみを使用した。ELISAデータが欠落したサンプルは分析から除外した。
発明の詳細な説明
本発明は、対象における脳損傷または神経変性障害を診断する方法を提供する。本発明はさらに、そのような診断を実施するための抗原プローブセットまたはアレイを提供し、そのようなセットまたはアレイを作製するための特定の抗原プローブセットを特定する。
いかなる特定の学説または作用機序に束縛されることも望まないが、本発明は、一部、健常対象と脳損傷を患った患者との間で高度に示差的である特有の抗原の発見に基づいている。本発明はさらに、脳損傷を患った患者の血清中の抗体反応性プロフィールが健常対照個体から明確に区別されたという発見に基づいている。脳損傷患者のタンパク質バイオマーカーは幅広く調査されているが、本明細書に記載される特有の抗体免疫指標は、これまで報告されていない。本開示の特有の抗体指標は、脳損傷の診断のための高感度かつ特異的なアッセイを提供する点で優れている。
本発明は、いくつかの態様において、特に脳損傷に関連する特有の抗原抗体反応性パターンを提供する。特定の抗体を調査する過程で、本発明者らは、抗原マイクロアレイおよびインフォマティクス分析を用いて、様々な抗原に対する健常人および脳損傷と診断された人の血清中のIgMおよびIgG抗体の反応性を試験した。
定義
本明細書で使用される用語は、個々の態様を説明する目的しか有しておらず、限定を意図したものではないことを理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、複数の参照を包含することに留意されたい。
本明細書で使用される「約」という用語は、数量的な用語プラスもしくはマイナス5%、または別の態様においてはプラスもしくはマイナス10%、または別の態様においてはプラスもしくはマイナス15%、または別の態様においてはプラスもしくはマイナス20%を意味する。
本明細書で使用される場合、「自己抗体」という用語は、その個人独自の組織または細胞の抗原性要素に対して反応することができる抗体を表す(例えば、抗体は「自己抗原」を認識し、結合する)。
「脳損傷」という用語は、あるイベントによって引き起こされた損傷により脳がダメージを受けた状態を表す。本明細書で使用される場合、「損傷」は、細胞または分子の完全性、活性、レベル、堅牢性、状態の変化またはあるイベント遡ることができる他の変化である。例えば、損傷は、細胞または分子的特徴の物理的、機械的、化学的、生物学的、機能的、感染性または他の変調要因を含む。イベントは、物理的な外傷、例えば衝撃(打撃性もしくは震とう性)または生物学的異常、例えば血管の閉塞もしくは漏洩のいずれかから生じる脳卒中を含み得る。イベントは、任意で、感染因子による感染である。当業者は、損傷またはイベントという用語に包含される多数の同等のイベントを理解している。
本発明の方法のいくつかの態様にしたがい、健常対象が脳損傷を将来発症する素因も診断される。いくつかの態様にしたがい、この素因は、過去の損傷によるまたは家族歴によるものである。
より詳細に、「脳損傷」という用語は、その病態生理学的基礎にかかわらず、中枢神経系にダメージを与える状態を表す。中でも脳損傷の最も多い原因は脳卒中および外傷性脳損傷(TBI)である。「脳卒中」は、出血性および非出血性に分類される。出血性脳卒中の例は、脳出血、クモ膜下出血および脳動脈奇形に起因する頭蓋内出血を含み、非出血性脳卒中の例は、脳梗塞を含む。
「脳損傷」という用語はまた、亜臨床性脳損傷、脊髄損傷および無酸素性虚血性脳損傷を表す。「亜臨床性脳損傷」(SCI)という用語は、脳損傷の明白な臨床的証拠が見られない脳損傷を表す。脳損傷が実際には存在する場合の脳損傷の臨床的証拠の欠如は、損傷の程度、損傷のタイプ、意識のレベル、薬物特に鎮痛薬および麻酔薬に起因し得る。これらの原因の多くは、慢性外傷性脳症(CTE)を引き起こし得る。
本明細書で使用される場合、「外傷性脳損傷」という用語は、患者の頭蓋骨内で脳を高速かつ不自然に動かす脳に加えられた直接的または間接的な衝撃の負荷または負荷群から引き起こされた脳損傷を意味し、例えば、明示的に、(a)頭蓋骨に貫通する物体、例えば銃弾、矢および頭蓋骨を通過し脳に侵入する他の物理的物体、(b)頭部または患者の体の他の部分に与えられた衝撃の負荷、(c)手術により誘導された外傷、(d)個人が立っている場所の比較的近くの地面で相当な揺れを引き起こす、手榴弾、爆弾および他の爆発物の影響を通じた爆発、例えば戦争で見られるもの、および非爆発手段により引き起こされる類似の揺れ、例えば運動による怪我、自動車事故、建物の崩壊および地震により引き起こされた脳損傷を含むが、これらに限定されない。外傷性脳損傷の結果は、様々なタイプの結果であり得るが、各々の例において、正常に機能する脳の能力の一時的または恒久的低下を伴い、死をもたらすこともある。
脳に対する衝撃は内皮細胞の透過性を上昇させる働きをし、それによって脳への血管構造から体液が喪失するため、外傷性脳損傷の結果の1つは、しばしば、脳内での炎症の発生である。そのような漏出は、しばしば、外傷により生じた血管の間隙率の上昇に起因して起こり、それによって血清が血管を通じて脳領域に漏出する。これが進行すると、これは、外科的介入を必要とし得る脳の炎症および膨張を引き起こし得る。
臨床的に、外傷性脳損傷は、意識消失(LOC)期間、グラスゴー昏睡スコア(GCS)および外傷後ストレス性記憶喪失を含むTBI変数に基づき軽度、中等度または重度にランク付けされ得る。
本明細書で使用される場合、「二次性脳外傷」は、急性脳損傷後、すなわちTBIの第二損傷期の間の患者の脳へのダメージを表す。
「慢性外傷性脳症(CTE)」は、反復的な脳への衝撃に晒された個体、例えばボクサーおよびフットボール選手の検死解剖において最も多く見出される神経変性疾患である。CTEの神経病理は、アルツハイマー病を含む他の神経変性疾患のそれからみて特有のパターンでの過リン酸化tauタンパク質の蓄積により特徴づけられる。CTEの臨床的特徴は、多くの場合進行性であり、気分、行動および認識を劇的に変化させ、しばしば衰弱性の認知症を引き起こす。いくつかの例において、パーキンソニズムを含む運動性の特徴も存在し得る。
「非外傷性脳損傷」は、虚血または外部機械力を伴わない脳損傷(例えば、特に脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脳内出血、脳感染症、脳腫瘍)を表す。
「脳卒中」は、脳内出血または梗塞の結果としての脳組織の破壊を表す。脳卒中は、途上国における一番の死因である。それは、脳の1つの領域における血流減少および組織の死(梗塞)により引き起こされ得る。脳卒中の原因は、脳内の血管において形成される血塊(血栓)および別の場所から脳に移動してくる血塊または動脈硬化プラークもしくは他の物質の小片(塞栓)を含む。脳内での出血(bleeding)(出血(hemorrhage))もまた、脳卒中に似た症状を引き起こし得る。
「アルツハイマー病(AD)」は、記憶および思考力、そして最終的には単純作業を実行する能力を徐々に破壊する、非常に一般的であるが不可逆的で進行性の脳疾患である。ADは、老人において認知症の最も一般的な原因であり、その人の日常生活および活動を妨げるほどに認識機能、思考、記憶および理性を失わせる。推計は様々であるが、専門家は510万もの米国人がADを有している可能性があることを示唆している。現在、ADまたはその初期段階である健忘性軽度認知障害(MCI)を有する人またはその家族歴を有する人の脳撮像が、脳内の変化を検出する最初の一手である。臨床的なAD認知症は、明白な老人斑の病変と結び付けられている。ADは、血液脳関門(BBB)障害を引き起こす脳実質および脳内毛細血管における異常なアミロイドベータ蓄積および堆積により特徴づけられる。
本明細書で使用される場合、「慢性脳損傷」は、過去に損傷後3日から少なくとも12ヶ月まで脳損傷を患っており、なおも脳損傷の症状を示し続けている対象を表す。
本明細書で使用される場合、「亜急性脳損傷」は、損傷後約2〜5日から脳損傷を患っている対象を表す。
「意識」は、本明細書で使用される場合、参照により本明細書に組み入れられる、Plum, et al., The Diagnosis of Stupor and Coma, CNS Series, Philadelphia:Davis (1982)に示されている従来的な意味を有する。意識のある患者は、自己またはその環境を認識していることを証明する信頼できる、再現性のある双方向的な行動を行う能力を有する者を含む。意識のある患者は、重症度の低い脳損傷の下で意識を回復しているが、彼ら/彼女らの損なわれた認知機能が原因で、独立した生活に達しない者を含む。意識のある患者は、覚醒を示すが意思疎通を欠く者(例えば、遷延性植物状態にあるとみなされる者)を含まない。
頭部外傷に晒された後に意識がある対象は、外傷性脳損傷のあらゆる視認できる症状が現れていない場合がある。逆に、対象は、脳損傷および認知機能障害の様々な症状を示す場合がある。
これは、脳震とうまたは頭蓋内出血(例えば、軸内血腫、硬膜外血腫および硬膜下血腫)等の状態によって示される、発生時に無意識である対象と対照的である。
「脳損傷状態」というフレーズは、脳損傷を有さないことを含む、その状態の任意の識別性のある表徴を含む。例えば、脳損傷状態は、非限定的に、患者における脳損傷の存在または非存在、脳損傷を発症する危険、脳損傷の段階または重篤度、脳損傷の進行(例えば、経時的な脳損傷の進行)およびの脳損傷の処置の有効性またはそれに対する応答(例えば、処置後の脳損傷の臨床的追跡および監視)を含む。この状態に基づき、追加の診断試験または治療手順もしくは計画を含むさらなる手順が示され得る。
「脊髄損傷」は、機能障害を引き起こす脊椎の骨折または脱臼により脊髄が圧迫/磨滅を受けている状態を表す。本明細書で使用される場合、「無酸素性虚血性脳損傷」という用語は、脳機能の障害を引き起こす脳組織への酸素供給の欠乏を表し、脳低酸素を含む。例えば、無酸素性虚血性脳損傷は、局所脳虚血、全脳虚血、低酸素性低酸素症(すなわち、その環境における限定された酸素が、脳機能を低下させる、例えば、すべてこの種の脳低酸素の危険があるダイバー、飛行士、登山家および消防士で見られるもの)、肺における閉塞(例えば、息詰まり、絞首、気管の押しつぶしに起因する低酸素症)を含む。
「脳損傷バイオマーカー(BIB)」、「脳損傷バイオマーカータンパク質」、「脳損傷バイオマーカーペプチド」、「脳損傷バイオマーカーポリペプチド」等の用語は、本発明の方法において例えば患者における脳損傷を診断するために使用することができる、本明細書に記載されるものを含むタンパク質を表す。脳損傷バイオマーカータンパク質は、SNCB、GFAP、S100B、MT3、ICAM5、BDNFおよび/またはNSEを含むがこれらに限定されない。この用語はまた、ニューログラニン(NRGN)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、PAD-2、チューブリンベータ-4B鎖、チューブリンアルファ-IB鎖、CNPアーゼ、PPIA、セプチン-7、伸長因子1-アルファ2、TPPP、TPPP3、Erminアイソフォーム2、NDRG2アイソフォーム2、アストロタクチン1(ASTN1)、脳血管新生阻害因子3(BAD)、カルノシンジペプチダーゼ1(CNDP 1)、ERMTN、代謝型グルタミン酸受容体3(GRM3)、kelch様タンパク質32(KLH32)、黒色腫抗原ファミリーE,2(MAGE2)、ニューレグリン3(NRG3)、乏突起膠細胞ミエリン糖タンパク質(OMG)、溶質輸送体ファミリー39(亜鉛輸送体)、レチキュロン1(RTN1)およびペプチジルアルギニンデイミナーゼ(1〜4および6型)(PAD)を含む、当技術分野で公知の他の脳損傷バイオマーカータンパク質も含む。
加えて、「脳損傷バイオマーカー」という用語はまた、上記のいずれかのアイソフォームおよび/または翻訳後修飾形態も含む。本発明は、非修飾および修飾(例えば、シトルリン化または他の翻訳後修飾)の両方のタンパク質/ポリペプチド/ペプチドならびに上記のいずれかに対する自己抗体の検出、測定、定量、決定等を想定している。特定の態様において、バイオマーカーの検出、測定、決定等の言及は、そのタンパク質/ポリペプチド/ペプチド(修飾および/または非修飾)の検出を表すことが理解される。特定の態様において、バイオマーカーの検出、測定、決定等の言及は、そのタンパク質/ポリペプチド/ペプチドの自己抗体の検出を表す。
本明細書で使用される場合、「比較する」という用語は、患者由来のサンプル中の抗体の反応性が標準または対照サンプル中の対応する抗体の反応性とどのように関連するかの評価を行うことを表す。例えば、「比較する」は、1つまたは複数の抗原に対する患者のサンプル由来の抗体の反応性が標準または対照サンプル由来の抗体の対応する反応性と同じであるか、それより高いもしくは低いか、またはそれと異なるかを評価することを表す。より詳細に、この用語は、1つまたは複数の抗原に対する患者由来のサンプルの抗体の反応性が、例えば亜臨床性脳損傷(SCI)を有する、SCIを有さない、SCIの処置に対する応答を示す、SCIの処置に対して応答しない、特定のSCI処置に対して応答する可能性がある/可能性が低い、または別の疾患もしくは状態を有する/有さない患者に対応する抗体の既定の反応性と同じであるか、それより高いもしくは低いか、それと異なるか、または他の様式で対応する(もしくはしない)かを評価することを表し得る。
本明細書で使用される場合、パラメータ、例えば患者由来のサンプルの抗体の変化した反応性を参照して言う「示す(indicates)」または「相関する(correlates)」(または文脈によっては「示す(indicating)」もしくは「相関する(correlating)」もしくは「指標(indication)」もしくは「相関(correlation)」)という用語は、その患者が脳損傷を有することを意味し得る。特定の態様において、パラメータは、本発明の1つまたは複数の抗原に対する抗体の反応性を含み得る。1つまたは複数の抗原に対する抗体の特定の反応性は、患者が脳損傷を有することを示し得る(すなわち、脳損傷を有する患者と相関する)。他の態様において、1つまたは複数の抗原に対する抗体の特定の反応性は、罹患していない患者と相関し得る(すなわち、患者が脳損傷を有さないことを示す)。特定の態様において、「示す」または「相関する」は、本発明にしたがい使用される場合、脳損傷もしくは脳損傷の進行の診断、予測の評価、臨床的処置の有効性の評価、特定の処置計画もしくは薬物に対して応答し得る患者の特定、処置の進行のモニタリングのためおよびスクリーニングアッセイにおいては抗脳損傷治療剤の同定のために抗体の反応性のレベルと標準、対照または比較値との間の関係を定量する任意の線形的または非線形的方法によるものであり得る。
いくつかの態様にしたがい、脳損傷の進行のモニタリングは、神経回路の再接続が起こり始める損傷後7〜20日の時点で行われる。いくつかの態様にしたがい、神経回路系へのダメージの危険が予測される。
「患者」、「個体」または「対象」という用語は、本明細書で言い換え可能に使用され、哺乳動物、特にヒトを表す。患者は、軽度、中等度または重度の疾患を有し得る。患者は、処置未経験、何らかの形式の処置に対して応答性または難治性であり得る。患者は、特定の症状または家族歴に基づき処置を必要とするまたは診断を必要とする個体であり得る。いくつかの例において、この用語は、マウス、ラットおよびハムスターを含むげっ歯類ならびに霊長類を含むがこれらに限定されない、実験動物における、獣医学的適用におけるおよび疾患の動物モデルの開発における処置を表し得る。
本明細書で使用される「健常対照」という用語は、健常個体、同じ個体における基準値、複数の健常個体、健常個体または複数の健常個体に対応するまたはそれらから入手したデータセットまたは値を表す。
本明細書で使用される「拡張グラスゴー転帰尺度(GOSE)」という用語は、1=死および8=上位の良好な回復である1〜8の尺度でTBI後の機能的障害を分類する。機能的障害は、<8のGOSEスコアと定義される。
「測定する」、「検出する」および「決定する」という用語は、本明細書を通じて言い換え可能に使用され、患者サンプルを入手することおよびサンプル中の抗体の反応性を検出することを含む方法を表す。いくつかの態様において、この用語は、患者サンプルを入手することおよび1つまたは複数の抗原に対するサンプル中の抗体の反応性を検出することを表す。測定は、当技術分野で公知の方法および本明細書にさらに記載される方法により達成され得る。
「サンプル」、「患者サンプル」、「生物学的サンプル」等の用語は、患者、個体または対象から入手される様々なサンプルタイプを包含し、診断またはモニタリングアッセイにおいて使用され得る。患者サンプルは、健常対象、有病患者または脳損傷の関連症状を有する患者から入手され得る。さらに、患者から入手したサンプルは分割され、一部のみが診断に使用され得る。さらに、サンプルまたはその一部は、後の分析のためにサンプルを維持する条件下で保管され得る。この定義は具体的に、(末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、排泄物および滑液を含むがこれらに限定されない)血液および生物学的起源の他の液体サンプルを包含する。特定の態様において、サンプルは、血液サンプルを含む。別の態様において、血清サンプルが使用される。この定義はまた、それらの調達後に任意の方法で、例えば、遠心分離、ろ過、沈降、透析、クロマトグラフィー、試薬処理、洗浄または特定細胞集団の濃縮によって操作されたサンプルを含む。この用語はさらに、臨床サンプルを包含し、培養下の細胞、細胞上清、組織サンプル、臓器等も含む。サンプルはまた、新鮮凍結および/またはホルマリン固定、パラフィン包埋された組織ブロック、例えば臨床または病理学的生検から調製された、病理学的分析または免疫組織化学による研究のために調製されたブロックを含み得る。
サンプルは、収集後直ちに、摂氏4℃、-20℃または-80℃で保管された後に、試験され得る。24時間、1週間、1ヶ月間、1年間、10年間または最大30年間の保管の後。
本発明の様々な方法は、本明細書で「適当な対照」または「対照サンプル」と言い換え可能に称される「適切な対照」と値、レベル、特徴(feature)、特徴(characteristic)、特性等を比較することを含む工程を含む。「適切な対照」、「適当な対照」または「対照サンプル」は、比較の目的上有用な当業者によく知られている任意の対照または標準である。1つの態様において、「適切な対照」または「適当な対照」は、細胞、臓器または患者、例えば、例えば正常な特質を示す対照または正常細胞、臓器または患者において決定される値、レベル、特徴(feature)、特徴(characteristic)、特性等である。例えば、非罹患個体(UI)または正常対照個体(NC)(両方の用語は本明細書で言い換え可能に使用される)由来のサンプル中の抗体の反応性。別の態様において、「適切な対照」または「適当な対照」は、患者に対して治療(例えば、脳損傷処置)を行う前に決定される値、レベル、特徴(feature)、特徴(characteristic)、特性等である。さらに別の態様において、転写率、mRNAレベル、翻訳率、タンパク質レベル、生物学的活性、細胞の特徴または特性、遺伝子型、表現型等は、細胞、臓器または患者に対して治療を行う前、治療中または治療後に決定され得る。さらなる態様において、「適切な対照」または「適当な対照」は、既定の値、レベル、特徴(feature)、特徴(characteristic)、特性等である。「適切な対照」は、患者サンプルと比較することができる、脳損傷に相関する少なくとも1つの抗原に対する抗体の反応性のプロフィールまたはパターンであり得る。患者サンプルはまた、陰性対照、すなわち脳損傷を有さないことと相関するプロフィールと比較され得る。
本発明のアッセイにおいて使用される抗原プローブは、当技術分野で周知の方法を用いて精製または合成され得る。例えば、抗原性タンパク質またはペプチドは、固相(例えば、Bocまたはf-Moc化学)および液相合成法(Stewart and Young, 1963; Meienhofer, 1973; Schroder and Lupke, 1965; Sambrook et al., 2001)を含むがこれらに限定されない公知の組み換えまたは合成法を用いて作製され得る。当業者は、本発明の抗原プローブを取得または合成するのに必要とされる技能を有している。抗原プローブのいくつかはまた、本明細書の以下で詳述されるように、例えばSigma(St. Louis, Mo., USA)、Prospec(Ness-Ziona, Israel)、Abnova(Taipei City, Taiwan)、Matreya LLC(Pleasant Gap, Pa., USA)、Avanti Polar Lipids(Alabaster, Ala., USA)、Calbiochem(San Diego, Calif., USA)、Chemicon(Temecula, Calif., USA)、GeneTex(San Antonio, Tex., USA)、Novus Biologicals(Littleton, Colo., USA)、Assay Designs(Ann Arbor, Mich., USA)、ProSci Inc.(Poway, Calif., USA)、EMD Biosciences(San Diego, Calif., USA)、Cayman Chemical(Ann Arbor, Mich., USA)、HyTest(Turku, Finland)、Meridian Life Science(Memphis, Tenn. USA)およびBiodesign International(Saco, Me., USA)から市販されている。
本発明は、抗原プローブならびにそのホモログ、フラグメント、部分配列、変異形態、修飾形態および誘導体を、これらのホモログ、フラグメント、部分配列、変異形態、修飾形態および誘導体がこれらの抗原プローブと免疫学的に交差反応する限り、使用することに留意されたい。本明細書で使用される「免疫学的に交差反応する」という用語は、同じ抗体によって特異的に結合される2つまたはそれ以上の抗原を表す。本明細書で使用される「ホモログ」という用語は、その抗原のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%または少なくとも90%の同一性を有するペプチドを表す。交差反応は、多くの免疫アッセイ技術のいずれか、例えば競合アッセイ(その既知の抗原に対する抗体の結合を競合的に阻害する試験抗原の能力の測定)によって決定され得る。
「ペプチド」という用語は典型的に、最大約50アミノ酸長のポリペプチドを表す。特定の態様にしたがい、本発明の抗原性ペプチドは、10〜50アミノ酸長であり得、典型的には約10〜30または約15〜25アミノ酸長である。
この用語は、ネイティブペプチド(分解産物、合成的に合成されたペプチドまたは組み換えペプチドのいずれか)、ペプチド模倣体(典型的に、合成的に合成されたペプチド)ならびにペプチドアナログであるペプトイドおよびセミペプトイドを包含し、例えば、そのペプチドを体内にあるときにより安定的にするまたは細胞により浸透できるようにする修飾を有し得る。そのような修飾は、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合修飾、骨格修飾および残基修飾を含むがこれらに限定されない。
本発明のペプチド抗原は、カルボキシアミドとして、還元末端アルコールとしてまたは任意の薬学的に許容される塩として、例えばナトリウム、カリウム、リチウムもしくはカルシウム塩を含む金属塩としてまたは有機塩基との塩としてまたは硫酸、塩酸もしくはリン酸を含む鉱酸もしくは有機酸、例えば酢酸もしくはマレイン酸との塩として、末端カルボキシ酸を有するものが使用され得る。いくつかの態様にしたがい、本発明のペプチド抗原は、BSA結合ペプチドである。
機能的誘導体は、当該ペプチドのアミノ酸側鎖ならびに/またはカルボキシルおよび/もしくはアミノ部分に対する化学修飾からなる。そのような誘導体化された分子は、例えば、遊離アミノ基がアミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基を形成するよう誘導体化された分子を含む。遊離カルボキシル基は、塩、メチルおよびエチルエステルもしくは他のタイプのエステルまたはヒドラジドを形成するよう誘導体化され得る。遊離ヒドロキシル基は、O-アシルまたはO-アルキル誘導体を形成するよう誘導体化され得る。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、N-im-ベンジルヒスチジンを形成するよう誘導体化され得る。20個の標準的なアミノ酸残基の1つまたは複数の天然に存在するまたは修飾されたアミノ酸誘導体を含むポリペプチドも、化学的誘導体として含まれる。例えば、4-ヒドロキシプロリンはプロリンと置換され得、5-ヒドロキシリジンはリジンと置換され得、3-メチルヒスチジンはヒスチジンと置換され得、ホモセリンはセリンと置換され得、そしてオルニチンはリジンと置換され得る。
本明細書に記載されるアミノ酸残基は、そうでないことが示されていない限り、「L」異性体型である。しかし、そのペプチドが所望の抗体特異性を実質的に保持する限り、「D」異性体型の残基が、任意のL-アミノ酸残基と置き換えられ得る。
適切なアナログは、現在標準的となっているペプチド合成法および装置または組み換え法により容易に合成され得る。すべてのそのようなアナログは、本質的にはそれらのアミノ酸配列に関して本発明の抗原に基づくであろうが、1または複数のアミノ酸残基が欠失、置換または付加されるであろう。アミノ酸残基が置換される場合、想定されるそのような保存的置換は、そのポリペプチドの構造または抗原性を実質的に変更しないものであることが想定される。例えば、塩基性アミノ酸は他の塩基性アミノ酸で、酸性のものは酸性のもので、そして中性のものは中性のもので置換され得る。上で詳述された保存的置換を含むアナログに加えて、非保存的アミノ酸置換を含むアナログが、本発明のペプチド抗原と免疫学的に交差反応する限り、さらに想定される。
他の局面において、これらのペプチドをコードする核酸、これらの核酸を含むベクターおよびそれらを含む宿主細胞が提供される。これらの核酸、ベクターおよび宿主細胞は、当技術分野で公知の組み換え法により容易に作製される(例えば、Sambrook et al., 2001)。例えば、本発明の抗原をコードする単離された核酸配列は、全(すなわち、完全)遺伝子またはその一部のいずれかとして、その天然源から入手することができる。核酸分子はまた、組み換えDNA技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、クローニング)または化学合成を用いて作製され得る。核酸配列は、その修飾が天然対立遺伝子変種ならびに本発明の機能的ペプチドをコードする核酸分子の能力と実質的に干渉しないようにヌクレオチドが挿入、欠失、置換および/または反転された修飾核酸配列を含むがこれらに限定されない天然核酸配およびそのホモログを含む。
本明細書で使用される、本発明のポリペプチドまたはペプチド抗原の「機能的に等価な変種」は、部分的な配列相同性を有するポリペプチドまたはペプチド、1つまたは複数の特定の保存的および/または非保存的アミノ酸変化を有するポリペプチドまたはペプチドならびにそのポリペプチドまたはペプチドの生物学的または構造的特性を変化させないポリペプチドまたはペプチドコンジュゲートである。
「機能的アナログ」に関して、その分子の既定の部分においてなされ得かつ許容可能なレベルの等価な生物学的活性を有する分子をなおも生じさせる変化の数には限度があるという考え方が、生物学的に機能的なポリペプチドまたはペプチドアナログの定義に内在しているということが、当業者によく理解されている。異なる置換を有する複数の別個のポリペプチドまたはペプチドが、本発明にしたがい容易に作製および使用され得る。特定の残基は、ポリペプチドの生物学的または構造的特性に特に重要であり、そのような残基は通常交換されないかもしれないことも理解されている。
機能的アナログは、保存的または非保存的アミノ酸置換によって生成され得る。アミノ酸置換は通常、アミノ酸側鎖置換基、例えばそれらの疎水性、親水性、電荷、サイズ等の相対的類似性に基づく。したがって、本発明の範囲において、保存的アミノ酸変換は、当初存在していたのと同じタイプのものである特定位置におけるアミノ酸変換、すなわち、疎水性アミノ酸と疎水性アミノ酸の交換、塩基性アミノ酸と塩基性アミノ酸の交換等を意味する。保存的置換の例は、非極性(疎水性)残基、例えばイソロイシン、バリン、ロイシンもしくはメチオニンと別のものの置換、1つの極性(親水性)残基と別のものとの置換、例えばアルギニンとリジンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間、グリシンとセリンとの間の置換、1つの塩基性残基、例えばリジン、アルギニンもしくはヒスチジンと別のものとの置換、または1つの酸性残基、例えばアスパラギン酸もしくはグルタミン酸と別のものとの置換、分枝鎖アミノ酸、例えばイソロイシン、ロイシンもしくはバリンと別のものとの置換、1つの芳香族アミノ酸、例えばフェニルアラニン、チロシンもしくはトリプトファンと別のものとの置換を含む。そのようなアミノ酸交換は、それらがそのポリペプチドの全体的な電荷および/または構成を有意に変化させない点で機能的アナログを生成する。そのような保存的変換の例は、当業者に周知であり、本発明の範囲内である。保存的置換はまた、生じるポリペプチドがそのポリペプチド抗原と生物学的に機能的等価である限り、非誘導体化残基に代わる化学的に誘導体化された残基の使用を含む。
したがって、「シトルリン化ポリペプチド」は、1つまたは複数の保存的置換によって本明細書に提供される配列と相違するアミノ酸配列を有するポリペプチドを包含する。シトルリン化ポリペプチドはまた、単一の変異によって本明細書に提供される配列と相違するアミノ酸配列を有するポリペプチドを包含し、単一の変異は、単一のアミノ酸欠失、挿入または置換である。
シトルリン化ペプチドは、特にかつ好ましくは合成ペプチドを作製するためのタンパク質化学において周知の技術を用いる化学合成、例えば固相合成(Merrifield et al, 65 J. AM. CHEM. ASSOC. 2149 (1964); Merrifield et al, 85 J. AMER. CHEM. SOC. 2149 (1963);およびMerrifield et al, 35 INT. J. PEPTIDE PROTEIN RES. 161-214 (1990))または均質溶液中での合成(METHODS OF ORGANIC CHEMISTRY, E. Wansch (Ed.) Vol. 15, pts. I and II, Thieme, Stuttgart (1987))による、当業者に公知の方法によって作製され得る。シトルリンは、アルギニンから正電荷を除去し生じたシトルリンを本質的に極性にする酵素ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4(PAD-4)により触媒される脱イミノ化のプロセスを通じて生成される翻訳後修飾アルギニンである。
1つの態様において、シトルリン化ペプチドは、公知の商業的に利用可能なソースから作製され得る。この局面において、凍結乾燥されたタンパク質が適当な緩衝液中で再構成され、そこに酵素ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4が添加される。あるいは、Ca2+が、溶液中のPAD-4に添加される。この溶液は、アルギニン残基からシトルリンへの修飾に十分な時間、適当な温度下に置かれ、それによってシトルリン化タンパク質を生成する。次いでシトルリン化タンパク質は、酵素を分離する高分子量メンブレンまたは他のクロマトグラフィー法を用いた酵素の除去によって単離される。当業者は、インキュベーションの温度、緩衝液の条件およびインキュベーションの時間が、脱イミノ化されるタンパク質によって異なり得ることを理解している(Masson-Bessiere et al, 166 J. IMMUNOL. 4177-4184 (2001))。
シトルリン化タンパク質は、その配列によって明らかになる特性に基づき選択された方法によってさらに単離および精製され得る。精製は、クロマトグラフィー法(ゲルろ過、イオン交換および免疫親和性)等のタンパク質精製手順によって、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、RP-HPLC、イオン交換HPLC、サイズ排除HPLC、高速クロマトフォーカシングおよび疎水性相互作用クロマトグラフィー)によってまたは沈降(免疫沈降)によって達成され得る。
ポリアクリルアミドゲル電気泳動もまた、シトルリン化タンパク質を、そのタンパク質の分子量、電荷特性および疎水性に基づき単離するために使用され得る。精製されたシトルリン化タンパク質は、当該タンパク質と相互作用する医薬の設計に役立ち得る、当該タンパク質の電荷構成もしくは他のタンパク質との電荷相互作用を変化させ得るまたはその機能を変化させ得る二次および三次構造を確立するためのさらなる生化学分析において使用され得る。
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド抗原」という用語は、一定の長さの連続するヌクレオチドのストレッチを表す。そうでないことが示されていない限り、本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド抗原」という用語は、15〜40ヌクレオチド長、あるいは17〜28ヌクレオチド長または18〜25ヌクレオチド長のヌクレオチド配列に関する。特定の態様において、オリゴヌクレオチド抗原は、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも16またはそれ以上の連続するヌクレオチドからなる。各々の可能性は、本発明の別個の態様を表す。特定の態様において、抗原は、50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、16以下またはそれ未満の連続するヌクレオチドからなる。各々の可能性は、本発明の別個の態様を表す。特定の態様において、抗原は、10〜30、15〜25または17〜20の連続するヌクレオチドからなる。特定の態様において、抗原は、17、18、19または20の連続するヌクレオチドからなる。
本明細書で使用される場合、「抗原」に対するまたは「複数の抗原」に対する「サンプル中の抗体群の反応性」または「サンプル中の抗体の反応性」は、複数の抗原から選択される少なくとも1つの特定の抗原に対するサンプル中の少なくとも1つの抗体の免疫反応性を表す。抗原に対する抗体の免疫反応性、すなわち、その抗原に特異的に結合する能力は、サンプル中の抗体の量を決定するために使用され得る。サンプル中の試験される抗体の各々1つずつの算出されたレベルは、まとめて、これらの抗原に対するサンプルの反応性パターンと称される。サンプルの反応性パターンは、サンプル中の試験される抗体の各々1つずつのレベルを反映し、それによって定量的アッセイを提供する。好ましい態様において、抗体は、量的に決定される。
反応性パターン間の「有意な差」は、異なる態様において、統計的に有意な差または他の態様において、当業者によって認識される有意な差を表す。別の態様において、対象から入手したサンプルの反応性パターンと対照反応性パターンとの間の有意な差は、その対象が脳損傷を患っている指標である。特定の態様において、抗原に対するサンプル中の抗体の反応性の上方調節またはより高い反応性は、対照における抗原に対する抗体の反応性レベルよりも少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍または少なくとも約5倍高い(すなわち、大きい)増加(すなわち、上昇)を表す。別の態様において、抗原に対するサンプル中の抗体の反応性の下方調節またはより低い反応性は、対照における抗原に対する抗体の反応性レベルよりも少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍または少なくとも約5倍低い減少(すなわち、低下)を表す。
いくつかの態様にしたがい、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド抗原は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の連続するアデニンヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列である。別の態様にしたがい、オリゴヌクレオチド配列は、最大20の連続するアデニンヌクレオチドを含む。さらなる態様にしたがい、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド抗原は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の連続するチミンヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列である。別の態様にしたがい、オリゴヌクレオチド配列は、最大20の連続するチミンヌクレオチドを含む。
別の態様にしたがい、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド抗原は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の連続するシトシンヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列である。別の態様にしたがい、オリゴヌクレオチド配列は、最大20の連続するシトシンヌクレオチドを含む。さらなる態様にしたがい、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド抗原は、5〜17、6〜17、7〜17、8〜17、9〜17、10〜17、11〜17、12〜17、13〜17、14〜17、15〜17、16〜17または最大17の連続するグアニンヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列である。
いくつかの態様にしたがい、少なくとも1つの抗原は、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる群より選択される。
いくつかの態様にしたがい、抗原は、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド抗原またはそれらの任意の組み合わせから選択される。
本発明にしたがう各抗原は、試験対象から入手または抽出されるサンプルから見出されるまたは単離されるIgM抗体および/またはIgG抗体によって結合され得ることが理解されるべきである。特定のエピトープまたは抗原に対するIgM抗体およびIgG抗体の相対量は通常時間と共に変化するので、本発明にしたがう各抗原はIgM抗体、IgG抗体またはその両方によって結合され得る。特定の態様において、抗体の反応性は、IgG抗体の反応性を意味する。特定の態様において、抗体の反応性は、IgM抗体の反応性を意味する。別の態様にしたがい、サンプル中の抗体の有意に高い反応性は、上昇したIgG反応性を意味する。別の態様にしたがい、サンプル中の抗体の有意に高い反応性は、上昇したIgM反応性を意味する。
別の態様にしたがい、上昇したIgM反応性は、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態または上記の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原に対するものである。
別の態様にしたがい、上昇したIgG反応性は、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態または上記の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原に対するものである。
特定の態様において、上昇したIgMおよびIgG反応性は、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態または上記の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原に対するものである。特定の態様において、上昇したIgM反応性は、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原に対するものである。各々の可能性は、本発明の別個の態様を表す。
本発明の方法を実施するために、対象から入手または抽出されるサンプルは対象自身によって産生される抗体を含んでいなければならないことを理解されたい。したがって、サンプルは、対象の抗体の少なくともサブセットを本来的に含む任意の組織、臓器または液体から入手または抽出され得る。特定の態様において、対象から入手されるサンプルは、体液である。いくつかの態様にしたがい、サンプルは、血漿、血清、血液、脳脊髄液、滑液、痰、尿、唾液、涙液、リンパ液試料または当技術分野で公知の任意の他の体液からなる群より選択される。各々の可能性は、本発明の別個の態様を表す。特定の態様にしたがい、対象から入手されるサンプルは、血清、血漿および血液からなる群より選択される。1つの態様にしたがい、サンプルは、血清サンプルである。適当なサンプルを入手および単離する方法は、当業者の技能のうちである。
本発明の方法の特定の態様にしたがい、対照は、少なくとも1人の健常個体由来のサンプル、同じ対象の基準、健常個体群由来の対照サンプルのパネルおよび健常個体由来の保存されたデータセットからなる群より選択される。各々の可能性は、本発明の別個の態様を表す。典型的に、健常個体は、脳損傷を患っていない対象である。
特定の態様において、有意な差は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%の陽性的中率(PPV)のカットオフを用いて決定される。選択されたマーカー(例えば、抗原)についてのPPVの決定は、当業者に周知であり、以下に記載される方法で例示されている。典型的に、ある抗原についての陽性は、それが選択されたカットオフ値、例えばPPV≧90%を用いて特定の研究サブグループにおいて対象の10%以上で検出された場合に決定される。例えば、抗原iは、それが異なる試験グループBと比較したときにPPV≧90%でグループAの対象の少なくとも10%で検出された場合に、グループAを具体的に特徴づけるために決定される。抗原iについてPPV≧90%のカットオフを超えるグループAの対象は、抗原iについて陽性であるとみなされる。
抗原「に対する」抗体は、本明細書で使用される場合、その抗原に特異的に結合することができる抗体である。複数の抗原に対する抗体のレベルの決定は、本発明の特定の抗原に対するサンプル中の各抗体のレベルの測定を含む。この工程は典型的に、本明細書で詳述されるように、免疫アッセイを用いて実施される。
他の態様において、少なくとも1つの抗原に対するサンプル中の抗体の反応性(およびサンプル中の試験抗体の各々1つずつのレベル)の決定は、特定の抗原・抗体複合体が形成され得る条件下でサンプルを少なくとも1つの抗原と(または複数の抗原が使用される場合は、複数の抗原を含む抗原プローブセットと)接触させることおよび各抗原プローブについて形成された抗原・抗体複合体の量を定量することを含むプロセスによって行われる。抗原・抗体複合体の量は、サンプル中の試験抗体のレベル(または抗原に対するサンプルの反応性)の指標である。
別の態様において、この方法は、複数の抗原に対するサンプル中の少なくとも1つのIgG抗体および少なくとも1つのIgM抗体の反応性を決定することを含む。別の態様において、この方法は、複数の抗原に対するサンプル中の複数のIgG抗体および少なくとも1つのIgM抗体の反応性を決定することを含む。別の態様において、この方法は、複数の抗原に対するサンプル中の少なくとも1つのIgG抗体および複数のIgM抗体の反応性を決定することを含む。別の態様にしたがい、この方法は、複数の抗原に対するサンプル中の抗体の反応性を決定することを含む。
典型的に、少なくとも1つの抗原に対するサンプル中の抗体の反応性の決定は、免疫アッセイを用いて行われる。有利には、複数の抗原が使用される場合、複数の抗原は抗原アレイの形式で使用され得る。
抗原プローブおよび抗原プローブセット
さらなる態様にしたがい、本発明は、本明細書で詳述されるような、脳損傷を診断するのに有用な抗原プローブおよび抗原プローブセットを提供する。
本発明はさらに、本明細書で抗原プローブセットとも称される複数の抗原を提供する。これらの抗原プローブセットは、脳損傷を有する対象の血清に対して特異的に反応する複数の抗原を含む。本発明の原理にしたがい、複数の抗原は、有利には、抗原アレイの形式で使用され得る。いくつかの態様にしたがい、抗原アレイは適宜、抗原チップの形式で配置される。
本明細書で使用される「プローブ」は、ある要素に特異的に結合することができる任意の化合物を意味する。1つの局面にしたがい、本発明は、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる群より選択される複数の抗原を含む抗原プローブセットを提供する。特定の態様にしたがい、抗原プローブセットは、本発明の抗原のサブセットを含む。特定の態様において、抗原のサブセットは、SEQ ID NO:1〜24、27〜30、42、75、76、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる。
いくつかの態様において、抗原プローブセットは、最大300個の抗原からなる。いくつかの態様において、抗原プローブセットは、2〜5個の抗原からなる。
別の態様にしたがい、本発明の方法は、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原に対するサンプル中の抗体の反応性を決定することを含む。
本発明の複数の抗原に対する抗体の反応性は、当技術分野で公知の技術にしたがい決定され得る。
好ましくは、本発明の方法およびキットの複数の抗原は、本明細書に開示される抗原のセットを含む。さらに他の態様において、複数の抗原(または抗原プローブセット)は、そのサブセット、例えば各々本発明の抗原から選択される3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66または115個の異なる抗原を含むかまたはそれらからなり、各々の可能性は、本発明の別個の態様を表す。そのようなサブセットは、診断アッセイの最適な感度および/または特異性をもたらすよう選択され得る。
本発明のアッセイにおいて使用される抗原プローブは、当技術分野で周知の方法を用いて合成または精製され得る。
本発明は、抗原プローブならびに、これらの抗原プローブと免疫学的に交差反応する限りそのホモログ、フラグメントおよび誘導体を利用することに留意されたい。本明細書で使用される「f」という用語は、同じ抗体によって特異的に結合される2つまたはそれ以上の抗原を表す。本明細書で使用される「ホモログ」という用語は、その抗原の配列または構造に対して少なくとも80%、少なくとも85%または少なくとも90%の同一性を有する抗原プローブを表す。交差反応性は、任意の多くの免疫アッセイ技術、例えば競合アッセイ(その既知の抗原に対する抗体の結合を競合的に阻害する試験抗原の能力の測定)によって決定され得る。
本明細書で使用される「フラグメント」という用語は、その抗原プローブとの免疫学的交差反応性を保持している、例えばその標的抗原を免疫特異的に認識する抗原の一部または抗原アナログを表す。フラグメントは、各抗原の約80%、約85%、約90%または約95%の長さを有し得る。
別の局面にしたがい、本発明は、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる群より選択される複数の抗原プローブを含む抗原プローブセットを提供する。
別の関連する局面にしたがい、本発明は、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原プローブを含む抗原プローブセットを提供する。
別の局面において、本発明は、上記の抗原プローブセットの少なくとも1つを含む製造物品を提供する。
特定の態様において、製造物品は、抗原プローブアレイの形態または抗原チップの形態またはディップスティックの形態またはラテラルフロー試験の形態または当業者に公知の任意の他のプラットフォームである。「抗原プローブアレイ」は一般に、単一の容器中で混合されているかまたは2つもしくはそれ以上の容器に配置されているかのいずれかの複数の抗原プローブを表す。「抗原チップ」は一般に、複数の抗原が付加または付着された実質的に二次元の表面を表す。「ディップスティック」は一般に、化学試験を実施するまたは液体中に見出される量の測定を提供するための液体に浸漬された、1つまたは複数の抗原が付加または付着された物体を表す。「ラテラルフロー試験」は一般に、専門または高価な設備を必要とせずにサンプル(マトリクス)中の標的分析物の存在(または非存在)を検出することが意図されたデバイスを表す。特定の態様において、製造物品は、キットの形態である。
特定の態様にしたがい、キットはさらに、複数の抗原の中の少なくとも1つの抗原に対するサンプル中の抗体の反応性を決定するための手段を含む。別の態様にしたがい、キットはさらに、複数の抗原の中の少なくとも1つの抗原に対する異なるサンプル中の抗体の反応性を比較するための手段を含む。別の態様にしたがい、キットはさらに、使用説明書を含む。例えば、上記手段は、本発明の抗原プローブに対する抗体の特異的結合を測定するために使用され得る試薬、検出標識および/または容器を含み得る。本明細書で使用される「手段」はまた、生物学的または化学的アッセイを実施するために使用されるデバイス、試薬および化学物質、例えばバイアル、緩衝液および書面上のプロトコルまたは説明書を表し得る。
別の局面にしたがい、対象において脳損傷を診断するための診断キットの製造のための、SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原の使用が提供される。診断キットは、いくつかの態様において、サンプル中の抗体の反応性を決定し、それによって少なくとも1つの抗原に対するサンプルの反応性パターンを決定するために有用である。いくつかの態様において、サンプルの反応性パターンと対照サンプルの反応性パターンとの間の有意な差(例えば、増加)は、脳損傷の指標である。
他の態様において、抗原プローブセットに含まれる複数の抗原は、最大50、55、60、70、80、90または100個の異なる抗原を含むかまたはそれらからなる。他の態様において、抗原プローブセットに含まれる複数の抗原は、少なくとも50、100、150、200または500個の異なる抗原を含むかまたはそれらからなる。
他の局面において、本発明のオリゴヌクレオチドを含む核酸ベクターおよびそれらを含む宿主細胞が提供される。これらの核酸、ベクターおよび宿主細胞は、当技術分野で公知の組み換え法により容易に作製される。ポリ核酸分子はまた、組み換えDNA技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、クローニング)または化学合成を用いて作製され得る。核酸配列は、天然核酸配列ならびにそのホモログを含み、ホモログは、天然対立遺伝子変種ならびに修飾により本発明の方法を実施する核酸分子の能力が実質的に干渉されない様式でヌクレオチドが挿入、欠失、置換および/または反転された修飾核酸配列を含むがこれらに限定されない。
本発明にしたがい、キットは、本明細書で抗原プローブセットとも称される複数の抗原を含む。複数の抗原を含むこれらの抗原プローブセットは、脳損傷を有する対象の血清に対して特異的に反応する。いくつかの態様において、抗原プローブセットは、脳損傷を有する対象の血清と正常な対象とを区別し得る。本発明の原理にしたがい、複数の抗原は、有利には、抗原アレイの形式で使用され得る。いくつかの態様にしたがい、抗原アレイは適宜、抗原チップの形式で配置される。
他の態様において、キットはさらに、複数の抗原に対するサンプル中の抗体の反応性を決定するための手段を含み得る。例えば、キットは、本発明の抗原プローブに対する抗体の特異的結合を測定するために使用され得る試薬、検出標識および/または容器を含み得る。特定の態様において、キットは、抗原アレイの形態である。
いくつかの態様において、キットは、複数の抗原に対する異なるサンプル中の抗体の反応性パターンを比較するための手段を含む。他の態様において、キットはさらに、陰性および/または陽性対照サンプルを含み得る。例えば、陰性対照サンプルは、少なくとも1人の健常個体(例えば、脳損傷を患っていない個体)由来のサンプルを含み得る。陽性対照は、脳損傷または診断対象の脳損傷の亜型を患っている少なくとも1人の個体由来のサンプルを含み得る。他の非限定的な例は、健常個体もしくは有病個体のセット由来の対照サンプルのパネルまたは対照個体由来の保存されたデータセットである。
抗体、サンプルおよび免疫アッセイ
抗体または免疫グロブリンは、ジスルフィド結合によって1つに連結された2つの重鎖および2つの軽鎖を含み、各軽鎖はジスルフィド結合によってそれぞれの重鎖に「Y」字型の構成で連結されている。各重鎖は、一方の端に、可変ドメイン(VH)を有し、それに複数の定常ドメイン(CH)が続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)およびその他端に定常ドメイン(CL)を有し、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列しており、軽鎖定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列している。軽鎖および重鎖の各対の可変ドメインは、抗原結合部位を形成する。
重鎖のアイソタイプ(ガンマ、アルファ、デルタ、イプシロンまたはミュー)は、免疫グロブリンクラス(それぞれ、IgG、IgA、IgD、IgEまたはIgM)を決定する。軽鎖は、すべての抗体クラスで見出される2つのアイソタイプ(カッパ、κまたはラムダ、λ)のいずれかである。
「抗体」または「抗体群」という用語が使用される場合、これはインタクトな抗体、例えばポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体(mAb)およびそれらのタンパク質溶解フラグメント、例えばFabまたはF(ab')2フラグメントを含むことが意図されていることを理解されたい。キメラ抗体、組み換えおよび人工抗体、ならびにそれらのフラグメントがさらに、本発明の範囲に(例えば、本明細書で詳述されるように、免疫アッセイ試薬として)含まれる。
軽鎖および重鎖の両方の完全なまたは本質的に完全な可変領域を含む例示的な機能的抗体フラグメントは、以下のように定義される:(i)2つの鎖として発現された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域からなる遺伝子操作されたフラグメントと定義される、Fv;(ii)適切なポリペプチドリンカーによって連結された、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含む、遺伝子操作された単鎖分子である、単鎖Fv(「scFv」);(iii)完全抗体を酵素パパインで処理し、インタクトな軽鎖ならびにその可変およびCH1ドメインからなる重鎖のFdフラグメントを生じさせることによって得られる、抗体分子の1価抗原結合部分を含む抗体分子のフラグメントである、Fab;(iv)完全抗体を酵素ペプシンで処理し、その後に還元することによって得られる、抗体分子の1価抗原結合部分を含む抗体分子のフラグメントである、Fab'(1つの抗体分子あたり2つのFab'フラグメントが得られる);ならびに(v)完全抗体を酵素ペプシンで処理することによって得られる、抗体分子の1価抗原結合部分を含む抗体分子のフラグメントである、F(ab')2(すなわち、2つのジスルフィド結合によって一体化されたFab'フラグメントの二量体である)。
本明細書で使用される「抗原」という用語は、抗体によって結合されることができる分子または分子の一部である。抗原は典型的に、その抗原のエピトープに結合することができる抗体を産生するよう動物を誘導することができる。抗原は、1つまたは複数のエピトープを有し得る。上記の特異的反応性は、その抗原が、高度に選択的な様式で、その対応する抗体と反応すること、および他の抗原によって惹起され得る多くの他の抗体と反応しないことを示すことが意味されている。「抗原性ペプチド」は、抗体と特異的に結合することができるペプチドである。
他の態様において、抗原プローブに特異的に結合する抗体の能力の検出は、個々の抗原・抗体複合体形成を定量することによって実施され得る。本明細書で使用される「特異的に結合する」という用語は、特定の抗原プローブに対する抗体の結合が、非関連分子の存在によって影響されないことを意味する。
特定の態様において、本発明の方法は、対象から単離されるIgGアイソタイプ抗体、または他の態様においてはIgM抗体に特異的に結合する本発明の抗原の能力を決定することにより実施される。
対象から適切な抗体含有生物学的サンプルを入手する方法は、十分に当業者の能力の範囲内である。典型的に、適切なサンプルは、全血およびそれから抽出される生産物、例えば血漿および血清を含む。他の態様において、他の抗体含有サンプル、例えばCSF、尿および唾液サンプルが使用され得る。
多くの周知の体液収集方法が、本発明の方法を実施するために対象から生物学的サンプルを収集するために利用され得る。
本発明にしたがい、任意の適切な免疫アッセイが、対象抗原と共に使用され得る。そのような技術は、当業者に周知であり、多くの標準的な免疫学のマニュアルおよび書籍に記載されている。特定の好ましい態様において、抗原プローブに特異的に結合する抗体の能力の決定は、抗原プローブアレイベースの方法を用いて実施される。好ましくは、アレイは、血清中に含まれる抗体と固定された抗原プローブとの間で特異的結合が起こるよう適切に希釈された対象の血清と共にインキュベートされ、未結合の血清がアレイから洗い流され、洗浄されたアレイが望ましいアイソタイプの抗体の検出標識結合リガンドと共にインキュベートされ、非結合標識がアレイから洗い流され、そして各抗原プローブに結合した標識のレベルが測定される。
様々な態様において、本発明の方法はさらに、決定工程を実施する前にサンプルを希釈する工程を含む。1つの態様において、サンプルは、例えばPBSを用いて、1:2希釈される。別の態様において、サンプルは、1:4、1:6、1:8、1:15、1:20、1:50または好ましくは1:10希釈される。各々の可能性は、本発明の別個の態様を表す。別の態様において、サンプルは、2倍〜10倍の範囲で希釈される。別の態様において、サンプルは、4倍〜10倍の範囲で希釈される。別の態様において、サンプルは、6倍〜10倍の範囲で希釈される。別の態様において、サンプルは、8倍〜10倍の範囲で希釈される。
抗原チップ
抗原マイクロアレイは、免疫応答の高スループットの特徴づけのために使用され(Robinson et al., 2002, Nat Med 8, 295-301)、ワクチン接種におけるおよび自己免疫障害における免疫応答を分析するために使用されている(Robinson et al., 2002; Robinson et al., 2003, Nat Biotechnol. 21, 1033-9; Quintana et al., 2004; Kanter et al., 2006, Nat Med 12, 138-43)。健康な状態および有病状態の下でのマウス(Quintana et al., 2004; Quintana et al., 2001, J Autoimmun 17, 191-7)およびヒト(Merbl et al., 2007, J Clin Invest 117, 712-8; Quintana et al., 2003, J Autoimmun 21, 65-75)の自己免疫レパートリーのこれまでの分析において示されているように、複数の反応性のパターンは単一の抗原・抗体関係よりも検出力があり得る(Quintana et al., 2006, Lupus 15, 428-30)という仮説が立てられている。したがって、自己抗体レパートリーは、疾患の病理に関する新規の見識を提供するおよび疾患プロセスの免疫バイオマーカー(Cohen, 2007, Nat Rev Immunol. 7, 569-74)として機能するという両方の能力を有する。
いくつかの局面にしたがい、本発明の方法は、その内容が参照により本明細書に組み入れられるWO 02/08755およびU.S. 2005/0260770に開示される抗原アレイを用いて実施され得る。WO 02/08755は、疾患の診断または処置のモニタリングを必要とする患者から抽出された血清の未決定の免疫グロブリンに反応する既定の抗原をクラスター化しおよびそれによって同定するためのシステムおよび製造物品に関する。複数の患者から抽出された複数の抗体と反応する、複数の抗原の中の抗原のサブセットをクラスター化する工程および対象の抗体を得られたクラスターと関連付けるまたは関連付けないようにする工程を用いる診断方法、およびこれらの方法において有用なシステムもさらに開示される。
米国特許出願公開第2005/0260770号は、抗原アレイシステムおよびその診断方法を開示している。この出願は、抗原プローブセットの各抗原プローブに特異的に結合する対象の免疫グロブリンの能力を決定することを含む、対象における免疫疾患、特に1型糖尿病またはその素因を診断する方法を提供する。この開示の教示は、それが完全に本明細書に示されているものとして、それらの全体が組み入れられる。
他の態様において、非限定的に、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、多重ビーズを用いるフローサイトメトリー(例えば、Luminexによって構築されたシステム)、表面プラズモン共鳴(SPR)、エリプソメトリーならびに、例えばレーザー走査、光検出、光電子増倍管を通じた光子検出、デジタルカメラベースのシステムまたはビデオシステムを用いた撮影、放射線計測、蛍光検出、電子的、磁気的検出および抗原・抗体結合の定量的アッセイを実現する任意の他のシステムを用いた様々な他の免疫アッセイを含む、様々な他の免疫アッセイが使用され得る。
本発明の方法に適したアレイを調製する様々な方法が開発されている。最新の方法は、ロボット装置を用いて抗原プローブを含む個々の溶液を平面支持体、典型的にはガラス支持体、例えば顕微鏡スライド、の表面上の狭い間隔を開けられた個々にアドレス可能な位置に適用または「スポット」し、その後に抗原プローブを支持体の表面に付着させる適切な熱および/または化学処理によって処理するものである。最初に、ガラス表面は、遊離アミンまたはチオール基を含む任意の分子に共有結合する反応性基、例えばエポキシ基の層を表面上に残す化学処理によって活性化される。適切な支持体はまた、ケイ素、ニトロセルロース、紙、セルロース支持体等を含み得る。
好ましくは、アレイの特定のアドレス可能な位置に付着された本発明の各抗原プローブまたは抗原プローブの個々のサブセットは、統計的に信頼できるデータの生成を実現するために、アレイの少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つの別個の特定のアドレス可能な位置に個別に付着される。
さらなる態様にしたがい、抗原プローブセットは、本発明によって提供される1つまたは複数の抗原を含む、少なくとも5、少なくとも25、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300またはそれ以上の抗原を含む。
本発明の抗原プローブに加えて、アレイは、有利には、対照抗原プローブまたは他の標準的化学物質を含み得る。そのような対照抗原プローブは、標準化対照プローブを含み得る。標準化対照プローブから得られるシグナルは、結合条件、標識強度、「読み取り」効率および与えられた結合抗体・プローブリガンド相互作用のシグナルを変化させ得る他の要因のばらつきに関する対照を提供する。例えば、抗原プローブアレイのすべての他の抗原プローブから読み取られたシグナル、例えば蛍光強度を、標準化対照プローブ由来のシグナル(例えば、蛍光強度)で割り算し、それによって測定が標準化される。標準化対照プローブは、抗体・リガンドプローブ効率の空間的ばらつきを制御するため、抗原プローブアレイ上の様々なアドレス可能な位置に結合され得る。好ましくは、標準化対照プローブは、周辺効果を制御するためにアレイの角または縁におよびアレイの中央に配置される。
標識抗体リガンドは、任意の様々な適切なタイプの抗体リガンドであり得る。好ましくは、抗体リガンドは、使用される対象の抗体のFc部分に特異的に結合することができる抗体である。例えば、対象の抗体がIgMアイソタイプである場合、抗体リガンドは、好ましくは、対象のIgM抗体のFc領域に特異的に結合することができる抗体である。
対象の抗体のリガンドは、任意の様々なタイプの検出可能な標識に結合され得る。好ましくは、標識はフルオロフォア、最も好ましくはCy3である。あるいは、フルオロフォアは、Cy5、Dy5、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、ローダミン、テキサスレッド等を含む様々なフルオロフォアのいずれかであり得る。特定のアイソタイプの抗体に特異的な適切なフルオロフォア結合抗体は、商業的供給元から幅広く入手可能であり、それらの製造方法は十分確立されている。
対象の抗体は、用途および目的に依存して、任意の様々な様式でのそれらの抗原プローブ結合能力の分析のために単離され得る。対象の抗体は、適切にかつ適宜、血清もしくは血漿またはそれらの希釈物(例えば、1:10希釈物)の形態であり得るが、抗体は、抗原プローブに特異的に結合するそれらの能力について試験される前に任意の所望の程度の精製に供され得る。本発明の方法は、対象の完全抗体または抗体の可変領域を含む対象の抗体フラグメントを用いて実施され得る。
対象から入手したサンプル中の1つまたは複数の抗体および1つまたは複数のバイオマーカーのレベルの組み合わせ測定
本発明は、少なくとも部分的に、対象から得られたサンプル中の1つまたは複数の抗体および1つまたは複数のバイオマーカーのレベルの組み合わせ測定が、対象のリアルタイムのバックグラウンド生理学および急性イベントの状態の両方を測定することができるという発見に基づいている。
脳損傷患者において、損傷に対する応答および損傷からの回復プロセスは、損傷の性質および損傷前の個体の状態の組み合わせに依存する。「健常」なバックグラウンドで損傷を受けた患者は、「病気」のまたは「以前に損傷を受けている」バックグラウンドで損傷を受けた患者よりも、良好な(速い、より完全な)回復プロフィールを示す可能性が高い。
患者の自己抗体プロフィールの決定は、脳損傷前の患者の状態の代理測定として使用され得、損傷直後の循環中の抗原のレベルの決定は、損傷の性質/程度の代理測定として使用され得る。結果を予測するために、損傷前の患者の状態および損傷の性質/程度についての情報を統合するアルゴリズムが使用され得る。
自己抗体プロフィールの決定は、抗原を表面に結合させ、循環抗体を抗原に結合させ、そしてそれをタグ付加された二次抗体で検出する任意のプラットフォームを用いて実施され得る。循環抗原プロフィールの決定は、捕捉抗体および検出抗体を含む任意のELISAタイプのサンドイッチアッセイ形式で行われ得る。
抗体および抗原の検出のために使用されるプラットフォームは、独立したもの(例えば、自己抗体の場合のiCHIP、抗原の場合のMSD ELISAもしくは任意の関連するELISAベースのプラットフォーム)であってもよく、または循環中の自己抗体および抗原の両方を同時に測定するよう単一プラットフォームに統合されてもよい。これは、関連する抗原および捕捉抗体の両方をiCHIPにプリントし、循環中の抗体が、表面に結合された抗原に結合し、かつ循環中の抗原が、表面に結合された捕捉抗体に結合するように、血清をプリント表面と接触させることにより行われ得る。検出は、二次および検出抗体のカクテルを用いるものであり得る。
疾患状態についての情報を有する同じ抗原に対する自己抗体を測定する必要がある場合、これらの測定は、2つの別個のチャンバーにおいて行われ得る。複数の試験からのデータは、患者の状態を最終的に予測するアルゴリズム分析のために統合され得る。
バイオマーカーの検出のためのキット
別の局面において、本発明は、本明細書に記載されるバイオマーカーを検出するために使用される、脳損傷状態を評価するためのキットを提供する。特定の態様において、キットは、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)およびシヌクレインベータ(Sncb)を含むがこれらに限定されない本発明のバイオマーカーに対する抗体を含むELISAキットとして提供される。
代替の態様において、バイオマーカーのパネルは、BDNF、GFAP、MT3およびSNCBを含む。別の態様において、バイオマーカーのパネルは、BDNF、GFAP、NRGNおよびSNCBを含む。さらなる態様において、バイオマーカーのパネルは、BDNF、ICAM5、MT3およびSNCBを含む。
ELISAキットは、バイオマーカー捕捉試薬が付着された固相支持体、例えばチップ、マイクロタイタープレート(例えば、96ウェルプレート)、ビーズまたは樹脂を含み得る。
キットはさらに、バイオマーカーを検出するための手段、例えば抗体、ならびに二次抗体・シグナル複合体、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗ウサギIgG抗体およびHRPの基質としてのテトラメチルベンジジン(TMB)を含み得る。
キットは、抗体が固定化されたメンブレンおよび検出のための手段、例えば金粒子結合抗体を含む免疫クロマトグラフィーストリップとして提供され得、メンブレンはNCメンブレンおよびPVDFメンブレンを含む。キットは、血清の連続的な毛細管流動を維持するよう連続する様式でサンプル適用パッド、ガラス繊維フィルター上に一時的に固定された金粒子結合抗体、抗体バンドおよび二次抗体バンドが固定されたニトロセルロースメンブレンならびに吸着パッドが配置されたプラスチックプレートを含み得る。
データ分析
本発明の方法は、有利には、健常対照対象の反応性パターンと脳損傷を有する患者の反応性パターンとの間を区別するために、学習・パターン認識分析、クラスタリングアルゴリズム等を使用し得る。その場合、この用語は、詳細には、例えば複数の抗原に対する試験サンプル中の抗体の反応性を決定し、得られた反応性パターンを、そのようなアルゴリズムおよび/または分析を用いて陰性および陽性対照サンプル(例えば、それぞれ、脳損傷を患っていない対照対象または脳損傷を患っている患者から得られたサンプル)の反応性パターンと比較することにより測定される差を含む。この差はまた、試験サンプルの反応性パターンをそのような様式で得られた既定の分類ルールと比較することによって測定され得る。
いくつかの態様において、本発明の方法は、脳損傷の亜型を有する対象の反応性パターンと対照対象との間を区別するために、学習・パターン認識分析、クラスタリングアルゴリズム等を使用し得る。例えば、この方法は、複数の抗原に対する試験サンプル中の抗体の反応性を決定し、得られたパターンを、そのようなアルゴリズムおよび/または分析を用いて陰性および陽性対照サンプルの反応性パターンと比較することを含み得る。
したがって、別の態様において、学習・パターン認識アルゴリズムを用いて計算される、試験サンプルの反応性パターンと対照サンプルの反応性パターンとの間の有意な差は、その対象が脳損傷を患っていることを示す。例えば、アルゴリズムは、非限定的に、主成分分析(PCA)、部分的最小二乗(PLS)、多重線形回帰(MLR)、主成分回帰(PCR)、線形判別分析(LDA)を含む判別関数分析(DFA)および近傍、人工ニューラルネットワーク、連成二次元クラスタリングアルゴリズム、多層パーセプトロン(MLP)、一般回帰ニューラルネットワーク(GRNN)、ファジー推論システム(FIS)、自己組織化マップ(SOM)、遺伝的アルゴリズム(GAS)、ニューロファジーシステム(NFS)、適応共鳴理論(ART)を含むクラスター分析を含むがこれらに限定されない統計アルゴリズムを含む、教師つきまたは教師なし分類器を含み得る。
特定の態様において、1つまたは複数のアルゴリズムまたはコンピュータプログラムが、試験サンプルで定量された各抗体の量を既定のカットオフに対して(または多数の既定のカットオフに対して)比較するために使用され得る。あるいは、必要な工程を人間が手作業で実行するための1つまたは複数の説明書が提供され得る。
パターン分析を決定および比較するためのアルゴリズムは、主成分分析、フィッシャー線形分析、ニューラルネットワークアルゴリズム、遺伝的アルゴリズム、ファジー論理パターン認識等を含むがこれらに限定されない。分析を完了した後、得られた情報は、例えば、ディスプレイ上に表示され得、ホストコンピュータに転送され得、またはその後の検索のために保存デバイス上に保存され得る。
アルゴリズムの多くは、ニューラルネットワークベースのアルゴリズムである。ニューラルネットワークは、入力層、処理層および出力層を有する。ニューラルネットワーク内の情報は、処理層を通じて分配される。処理層はノードから構成され、ノードはそれらのノードとの相互接続によってニューロンをシミュレートする。データ集に内在するパターンを明らかにする統計分析と同様、ニューラルネットワークは、既定の基準に基づき、データ集において一貫性のあるパターンを見出す。
適切なパターン認識アルゴリズムは、主成分分析(PCA)、フィッシャー線形判別分析(FLDA)、ソフト非依存的クラス類似性モデリング(SIMCA)、K近傍(KNN)、ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズム、ファジー論理および他のパターン認識アルゴリズムを含むがこれらに限定されない。いくつかの態様において、フィッシャー線形判別分析(FLDA)および正準判別分析(CDA)ならびにそれらの組み合わせが、出力シグネチャーとデータベース由来の利用可能なデータを比較するために使用される。
他の態様においては、主成分分析が使用される。主成分分析(PCA)は、多くの相関のある変数を少数の相関のない変数に変換する数学的技術を利用するものである。少数の相関のない変数は、主成分として知られている。第1の主成分または固有ベクトルは、可能な限り多くのデータ内変動を担い、各々の後続の成分は、可能な限り多くの残りの変動を担う。PCAの主目的は、データセットの次元を減らすことおよび新しい内在する変数を特定することである。
主成分分析は、2つまたはそれ以上の共分散行列の構造を階層的様式で比較する。例えば、1つの行列は、その行列の各要素が1つの定数によって乗じられていることを除いて他方と同一であり得る。したがってこの行列は相互に比例する。より具体的に、行列は同一の固有ベクトル(または主成分)を共有しているが、それらの固有値はある定数によって相違する。行列間の別の関係は、それらが共通の主成分を共有しているが、それらの固有値が異なることである。主成分分析で使用される数学的技術は、固有分析と呼ばれる。最大の固有値を有する固有ベクトルは、第1の主成分と同じ方向を有する。2番目に大きな固有値を有する固有ベクトルは、第2の主成分の方向を決定する。固有値の和は、正方行列のトレースに等しく、固有ベクトルの最大数は、この行列の行の数に等しい。
別の態様において、アルゴリズムは、分類器である。1つのタイプの分類器は、訓練セットからのデータを用いてアルゴリズムを「訓練」することによって作成され、その性能が試験セットデータを用いて評価される。本発明と組み合わせて使用される分類器の例は、判別分析、決定木分析、受信者動作曲線またはスプリットアンドスコア分析である。
「決定木」という用語は、分類のために用いられるフローチャート様のツリー構造を有する分類器を表す。決定木は、データセットをサブセットに繰り返し分枝させることからなる。各分枝は、1つの変数に適用される単一のルールからなる、例えば、「もし「変数1」の値が「しきい値1」よりも大きい場合、左へ進む、それ以外は右に進む。」。したがって、与えられた特徴空間は、各々1つのクラスに割り当てられた長方形群に分割される。
「試験セット」または「未知」または「検証セット」という用語は、訓練セットに含まれないエントリーからなる全利用可能データセットのサブセットを表す。試験データは、分類能を評価するために適用される。
「訓練セット」または「既知のセット」または「参照セット」という用語は、各々の全利用可能データセットのサブセットを表す。このサブセットは典型的に無作為に選択され、もっぱら分類器構築の目的で使用される。
診断方法
本明細書で使用される場合、「診断する」または「診断」という用語は、その徴候、症状により、特に、例えば1つまたは複数の抗原に対する個体から入手した生物学的サンプル(例えば血清)中の抗体の反応性または反応性パターンの検出を含む、様々な診断手順の結果から医学的状態または疾患(例えば、脳損傷)を判定するプロセスを表す。さらに、本明細書で使用される場合、「診断する」または「診断」という用語は、疾患のスクリーニング、疾患の存在または重篤度の検出、1つまたは複数の類似または同一の症状を特徴とし得る疾患を含む他の疾患からのある疾患の区別、疾患の予後の提供、疾患の進行または再発のモニタリング、ならびに処置効果および/または疾患、障害もしくは状態の再発の評価、ならびに疾患に対する治療および/または処置の選択、疾患に対する特定の治療(用量/スケジュール)の最適化、疾患の処置のモニタリング、および/または特定の患者もしくは亜集団に対する治療の適性の予測または患者もしくは亜集団における治療製品の適当な用量の決定を包含する。
1つの態様において、脳損傷の診断はさらに、脳へのダメージに発展し長期的な機能障害をもたらす脳損傷の危険の評価を可能にする。別の態様において、長期的な機能障害に発展する脳損傷の危険の評価は、早期段階での治療的介入を可能にする。
TBIを患っている個体が直面する緊急の問題は、細胞レベルで起こる恒久的な脳へのダメージの危険を伴わずに、震とう性の損傷後、いつ危険性の高い活動に復帰するのが安全かを決定することである。いくつかの態様にしたがい、本発明は、長期にわたる結果をモニタリングし、評価し、仕事または競技への復帰の安全性を検証するための広範な免疫系試験を提供する。
TBI直後の病理および神経学的障害の評価は、適当な臨床管理の決定のためおよび長期的結果の予測のために重要である。頭部損傷において最も多く使用される結果判定法は、グラスゴー昏睡尺度(GCS)、グラスゴー転帰尺度(GOS)、コンピュータ断層撮影および頭蓋内病変を検出する磁気共鳴画像化(MRI)である。しかし、これらの結果判定法に基づく劇的に改善された緊急トリアージシステムにもかかわらず、ほとんどのTBIは、長期的障害をもたらし、多数のTBI生存者は、GOSにおいて「良好な回復」と予測されているにもかかわらず深刻な影響を受けている。加えて、CTおよびMRIは、高価であり、緊急治療室の環境で素早く利用することができない。さらに、戦闘を伴う厳しい医療環境において、TBIの正確な診断は負傷者の適当なトリアージの必須要件であろう。
1つの態様において、脳損傷に関連する脳ダメージのタイプは、白質構造異常である。別の態様において、白質構造異常またはダメージは、脳梁領域で見られる。別の態様において、異常またはダメージは、鉤状束で見られる。別の態様において、異常またはダメージは、右脳前頭葉で見られる。別の態様において、異常またはダメージは、左前頭葉で見られる。別の態様において、異常またはダメージは、びまん性軸索損傷(DAI)である。別の態様において、異常またはダメージは、びまん性血管損傷である。
いくつかの態様において、脳損傷は軽度TBIであり、1つの態様において脳震とうは軽度TBIである。別の態様において、軽度TBIは頭部損傷により引き起こされ、頭部損傷は、別の態様において、鈍的外傷、加速または減速力である。そのような頭部損傷は、以下の状態の1つまたは複数を有することにより特徴づけられ得ることが理解されるであろう:(1)観察されるまたは自己申告の挫傷、失見当識または意識障害、損傷時の記憶の機能障害、30分未満続く意識喪失;ならびに(2)頭痛、めまい、疲労、興奮および損傷直後の乏しい集中力等の症状。頭部損傷はまた、グラスゴー昏睡尺度を用いた臨床試験に基づいて軽度に分類される。1つの態様において、頭部損傷は、緊急治療室での試験におけるグラスゴー昏睡尺度スコア(GCS)13〜15、頭部CTにおける異常な所見なし、意識喪失期間30分間以内、外傷性健忘症24時間未満、ならびに簡易損傷スコア(AIS)S3および頭部領域を除外するよう調整されたISS<12である。
診断方法は、その感度および特異性が異なる。診断アッセイの「感度」は、試験で陽性を示す有病個体の比率(「真陽性」の比率)である。アッセイによって検出されない有病個体は、「偽陰性」である。疾患を有さずアッセイにおいて陰性を示す対象は、「真陰性」と称される。診断アッセイの「特異性」は、1から偽陽性率を引いたものであり、「偽陽性」率は、試験で陽性を示す疾患を有さない者の比率と定義される。特定の診断方法は、ある状態の明確な診断を提供しないかもしれないが、その方法が診断に役立つ前向きな指標を提供する場合、それで十分である。診断アッセイの「精度」は、真の値に対する測定結果の近似性である。診断アッセイの「p値」は、ヌル仮説が実際に真であった場合に観察されたサンプル結果(またはより極端な結果)を得る可能性である。
特定の態様において、本発明により提供される抗原プローブセットまたは本発明により提供される抗原プローブアレイの使用は、脳損傷示唆的(p値≦1.00E-08)、高感度(≧0.600)、特異的(≧0.700)および正確(≧0.600)である抗体反応性プロフィールを生成する。特定の態様において、この使用は、より脳損傷示唆的(p値≦1.00E-10)、高感度(≧0.700)、特異的(≧0.800)および正確(≧0.700)である抗体反応性プロフィールを生成する。特定の態様において、この使用は、さらにより脳損傷示唆的(p値≦1.00E-12)、高感度(≧0.800)、特異的(≧0.900)および正確(≧0.800)である抗体反応性プロフィールを生成する。特定の態様において、この使用は、なおさらにより脳損傷示唆的(p値≦1.00E-14)、高感度(≧0.900)、特異的(≧0.950)および正確(≧0.900)である抗体反応性プロフィールを生成する。特定の態様において、この使用は、極めて脳損傷示唆的(p値≦1.00E-16)、高感度(≧0.950)、特異的(≧0.990)および正確(≧0.950)である抗体反応性プロフィールを生成する。各々の可能性は、本発明の別個の態様を表す。
特定の態様において、本発明により提供される抗原または本発明により提供される抗原パターンは、脳損傷示唆的(p値≦1.87E-08)、高感度(≧0.609)、特異的(≧0.769)および正確(≧0.687)である。特定の態様において、本発明により提供される抗原または本発明により提供される抗原パターンは、有利には、脳損傷示唆的(p値≦2.81E-12)、高感度(≧0.657)、特異的(≧0.798)および正確(≧0.725)である。特定の態様において、本発明により提供される抗原または本発明により提供される抗原パターンは、さらに有利には、脳損傷示唆的(p値≦8.00E-14)、高感度(≧0.663)、特異的(≧0.814)および正確(≧0.738)である。
別の態様において、この方法は、脳損傷の進行のレベルを決定し得る。さらなる態様において、この方法は、脳損傷の進行をモニタリングするための存在との比較を提供し得る。これらの態様において、この方法は、例えば、進行性の脳損傷を有する患者と退行性の脳損傷を有する患者との間を区別するために使用され得る。
1つの態様において、本発明の方法にしたがい診断される対象は、症候性である。他の態様において、対象は、無症候性である。特定の態様において、対象は、即時に症状を示す。特定の態様において、対象は、遅れて症状を示す。特定の態様において、対象は、処置を受けていないまたは処置を受けなかった者である。
本明細書で使用される場合、「処置する」という用語は、疾患を治癒すること、疾患を予防すること、疾患の発病率を低下させること、疾患の症状を緩和すること、疾患の寛解を誘導すること、または疾患の進行を鈍化させることを包含する。「低下させる」、「抑制する」および「阻害する」という用語は、軽減または減少を表す。
診断手順は、インビボまたはインビトロで、好ましくはインビトロで実施され得る。本発明の方法の特定の態様において、診断手順は、非侵襲的手段または方法によって実施される。
本発明の診断手順およびプラットフォームは、クリニックにおいて、医師のオフィスにおいて、病院の研究室において、または商業的診断研究所において、ポイント・オブ・ケアデバイスまたはポイント・オブ・サービスとしての使用に適し得る。
以下の実施例は、本発明のいくつかの態様をより十分に説明するために示されるものである。しかし、それらは、いかなる方法においても、本発明の広範な範囲を限定するものと解釈すべきでない。
材料および方法
ヒト対象
この研究は、参加した臨床施設の施設審査委員会によって承認され、すべての参加者からインフォームドコンセントを得た。初期研究において、健常対象および損傷後の様々な時点のかつ様々なGOSEスコアを有する脳損傷を患っている対象から入手した血液サンプルから抽出した血清を、228の抗原を含む抗原マイクロアレイを用いて試験した(表1を参照のこと)。
Johns Hopkins Hospital(JHH, Baltimore)の緊急治療部(ED)(n=61)またはCOBRIT臨床試験(JAMA. 2012;308(19):1993-2000に記載されている)に参加したセンターの1つ(n=31)に到着したHeadSMART試験の患者から血液サンプルおよび臨床データを収集した。
規定のヒト血清サンプルをこの研究で使用した。成人TBI患者由来のサンプルをレトロスペクティブに分析した。TBI症状なしと評価された健常対象群の患者を、Baylor College of Medicine (Houston, TX;n=21)から入手した。
HeadSMART試験においてTBI患者とみなすために、以下の基準に合致しなければならなかった:18歳以上であること、損傷から24時間以内にTBIがはっきりと見られること、TBIに関して頭部CTスキャンを得るためのAmerican College of Emergency Physicians (ACEP)基準に合致すること。脳腫瘍を有する患者、脳外科手術を受けた患者、妊娠中である患者、英会話ができない患者を除外した。61名のTBI患者から、開始から6ヶ月まで連続血清サンプルを収集した。脳損傷後の8つの異なる時点で患者あたり3つのサンプルを収集し、そこから選抜したものを分析に使用した。COBRIT試験サンプルについては、以下の基準を使用した:その患者が、非穿通性外傷性脳損傷を有している、18歳(アラバマでは19歳)から70歳である、プロトコルに示される麻痺あり/なしのGCS基準を満たす、損傷6ヶ月後にネットワークセンターで結果判定を完了することが合理的に期待される、24時間の時間枠内での参加が合理的に期待されるおよび英会話力がある。除外基準は以下を含んだ:GCS運動スコア=6かつCT基準に合致しない挿管患者、両方の瞳孔の固定および散大、陽性の妊娠試験、妊娠が分かっている、または授乳中、結果の評価を妨げる疾患の徴候、現在アセチルコリンエステラーゼ阻害薬を使用中である、死が迫っているもしくは現在生命を脅かす疾患を有している、現在別の研究に参加している、または囚人。健常対象については、Baylor College of Medicineにおいて、インフォームドコンセントの下で少なくとも18歳の21名の非TBI個体を勧誘した。対照患者あたり1つの血液サンプルを収集し、血清および血漿の複製バイアルを得るよう処理し、これらは使用するまで摂氏-80℃で保管した。すべての患者の識別子を部外秘で維持した。
抗原および血清試験
228の異なる抗原を、Scienion S-11非接触マイクロアレイプリンタ(Scienion AG, Germany)を用いて自作のエポキシヘキシルトリエトキシシラン(EHTES)活性化エポキシスライド上にスポットした。次いでこのマイクロアレイを室温で1時間、1%カゼインを用いてブロックした。1%カゼインブロッキング緩衝液中の試験血清サンプル(1:20希釈)を、37℃で1時間、カバースリップ下でインキュベートした。次いでこのアレイを洗浄し、37℃で1時間、ひとまとめにした1:500希釈の2つの検出抗体:ヤギ抗ヒトIgG Cy3結合抗体およびヤギ抗ヒトIgM AF647結合抗体(両方ともJackson ImmunoResearch Laboratories Inc., West Grove, PAから購入)と共にインキュベートした。画像の取得は、530nmおよび630nmの2つの波長のレーザーによって行い(Agilent Technologies, Santa Clara, CA)、その結果をGenepix pro 7ソフトウェア(Molecular devices, Sunnyvale, CA)を用いて分析した。各抗原スポットへの結合のシグナル強度の定量範囲は、0〜65,000であり、この検出範囲は、1:20希釈の試験血清サンプルにおいて信頼性のあるデータを取得することを可能にするものであった。
画像分析およびデータ処理
各スポットの強度は、その領域のバックグラウンド中央値を減算し、その後にLog2変換を行った後のそのピクセルの平均によって表される。陰性スポット(バックグラウンド減算後)を、バックグラウンド様強度とみなした。各スポットでバックグラウンド強度を減算し、正味のシグナルを得た。各スライドの各抗原で、異常なスポットを除外した。異常なスポットは、Zスコア>2または<-2を有するものと定義される。異常スポットを除去した後に、複数のスポットの強度を中央値を通じて統合した。各抗原の複数のスポットのフォアグラウンドおよびバックグラウンド強度を平均化し、フォアグラウンドとバックグラウンドの差を計算した。得られた値を、そのスポットされた抗原に結合する抗体の抗原反応性と解釈した。すべての抗原が、有意な数のスライドにおいて有意義な反応性を示し、したがっていずれの抗原も除外されなかった。
抗体結果の統計分析
その反応性が特定の研究サブグループにおいて他のサブグループと比較して高かったまたは低かった抗原を特定した。T検定で抗原を分離するために単変量分析を使用した。陽性的中値(PPV)≧90%および感度≧20%のような分類しきい値を設定することができる抗原が達成され、特定のサブグループを有意に特徴づけることが決定された。追加の制限のために、(多重仮説に関するベンジャミニ・ホッホベルグ補正後の)両側t検定におけるそのp値が0.05よりも小さかった抗原のみを選択した。
ELISAプレートアッセイ法
バイオマーカーは、比色、蛍光、化学発光または電気化学発光検出法のいずれかによって試験する。比色検出法では、Maxisorb 96ウェルプレートを使用する。蛍光アッセイでは、黒い不透明な壁面を有するプレートを使用する。発光ベースのアッセイでは、発光に適したマイクロタイタープレートを使用する。プレートは以下のようにして調製する。プレートを、各プレートタイプ専用のコーティング緩衝液で一度リンスする。捕捉抗体を、最適濃度で最適時間、各ウェルに添加する。通常、コーティングは、最適なコーティング緩衝液中、4℃で12時間かけて行う。コーティング期間の後、過剰な抗体を除去し、プレートを、以下の1つ:カゼイン、ウシ血清アルブミン、種特異的総血清もしくはろ過済み脱脂粉乳、もしくは他のブロッキング剤、および/または非イオン性界面活性剤、を含む緩衝生理食塩水からなる最適化されたブロッキング緩衝液中でブロックする。以下:1)非特異的結合部位のマスキング(すなわち、ブロッキング)、2)捕捉抗体・抗原の結合、3)抗原の結合、その後の過剰および非結合抗原の除去のための洗浄、4)抗抗原検出抗体溶液および検出タグのインキュベーション、5)過剰な非結合検出抗体およびタグの除去のための洗浄、ならびに6)検出基質(ELISA)または最適な検出溶液(蛍光または発光)の添加、を行うために、最適な長さの連続するインキュベーションを使用する。比色検出は、マイクロタイタープレートリーダーまたは類似技術において、適当な波長の光の下で着色基質の吸光度を測定することによって行う。蛍光アッセイは、蛍光ベースのプレートリーダーを用いて行う。発光は、発光ベースのリーダーにおいて検出する。データを収集し、既知の濃度の組み換えタンパク質の標準曲線を用いてバイオマーカー濃度を決定する。
実施例1:FABP(SEQ ID No:61)およびMBPR149(SEQ ID NO:10)とTBI結果との間の関連性
損傷後の時点でのその自己抗体のプロフィールの変化を調査するため、各患者を、その独自の測定時点でプロファイルした。拡張グラスゴー転帰尺度(GOSE)が8であるTBI患者由来のサンプルを、特定の時点(3ヶ月/1ヶ月)でGOSEが8未満であるTBI患者由来のサンプルと比較した。
抗体の結合
健常対照および損傷後の様々な時点のかつ様々なGOSEスコアを有する脳損傷患者由来の血清サンプルを、表1に開示される様々な抗原に対する血清IgGおよび/またはIgM抗体の結合について試験した。
(表1)脳損傷関連抗原の一覧
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図1に示されるように、拡張グラスゴー転帰尺度(GOSE)スコア<8の、損傷後第30日のTBI患者から入手した血清サンプル中の抗脂肪酸結合タンパク質(FABP、SEQ ID NO:61)IgM自己抗体のレベル(十字で示されている)は、GOSEスコア=8の患者(丸で示されている)と比較して低い。
図2に示されるように、拡張グラスゴー転帰尺度(GOSE)スコア<8の、損傷後第30日のTBI患者から入手した血清サンプル中の抗ミエリン塩基性タンパク質(MBPR149、SEQ ID NO:10、MBP由来BSA結合ペプチド)IgM自己抗体のレベル(十字で示されている)は、GOSEスコア=8の患者(丸で示されている)と比較して高い。これらの結果は、TBI患者から入手した血清サンプル中の抗FABP IgM自己抗体のレベルの上昇がTBI患者の脳損傷からの回復の指標となることを初めて実証するものである。さらに、TBI患者から入手した血清サンプル中の抗MBPR149 IgMのレベルの低下が、TBI患者の脳損傷からの回復の指標となる。したがって、本発明は、脳損傷のモニタリングおよび/または診断のために使用され得る特定の抗原抗体反応性を明らかにした。
実施例2:健常対照と比較した、TBI患者から入手した血清サンプル中の抗ミエロペルオキシダーゼ(MPO、SEQ ID NO:85)IgM自己抗体のレベルの上昇
図3に示されるように、TBI患者から入手した血清サンプル中の抗MPO IgM自己抗体のレベル(丸で示されている)は、健常対照(十字で示されている)と比較して高い。これらの結果は、抗MPO自己抗体のレベルの上昇が脳損傷の指標となることを初めて実証するものである。
実施例3:健常対照と比較した、TBI患者から入手した血清サンプル中の抗CMV(SEQ ID NO:86)IgG自己抗体のレベルの低下
図4Aに示されるように、損傷後第30日および第90日(N=142)のTBI患者から入手した血清サンプル中の抗CMV(SEQ ID NO:86)IgG自己抗体のレベル(丸で示されている)は、健常対照(十字で示されている)(N=21)と比較して低い。図4Bは、抗CMV IgG自己抗体レベルの受信者動作特性(ROC)曲線による分離能を示している。
実施例4:損傷後第30日のTBI患者から入手した血清サンプル中の抗TNFRSF12A(SEQ ID NO:104)IgM自己抗体レベルに基づく、損傷後第90日のTBI患者の臨床状態の予測
図5Aに示されるように、損傷後第30日のTBI患者から入手した血清サンプル中の抗TNFRSF12A(SEQ ID NO:104)IgM自己抗体のレベルは、損傷後第90日のTBI患者の臨床状態(GOSE<8またはGOSE=8)の予測に使用することができる。図5Bは、抗TNFRSF12A IgM自己抗体レベルの受信者動作特性(ROC)曲線による分離能を示している。
実施例5:健常対照と比較した、TBI患者から入手した血清サンプル中の自己抗体およびバイオマーカーのレベルの組み合わせ測定
血清サンプル中の抗体およびバイオマーカーのレベルの組み合わせ測定がTBI患者と健常対照との間を区別することができるかどうかを決定するために、組み合わせ分析を行った。時間0(t0、N=85)のTBI患者から入手した血清サンプルを、健常対照(HC、N=21)から入手した血清サンプルと比較した。この分析は、464のiChipの特徴(232の抗原、IgMおよびIgG)ならびに4つのELISAの特徴に基づくものであった。iChipデータは、補正手順後の2つの複製ブロックの平均に基づく。ELISAの特徴を、データ利用性に基づき選択し、データがiChipサンプルの>80%で利用可能な特徴のみを使用した。ELISAデータが欠落したサンプルは分析から除外した。
図6は、70:30交差検証の100回反復に基づく6つの分類法(SVM、LR、QDA、CART、RFおよびLDA)の受信者動作特性(ROC)曲線下面積を示している。特徴を、その方法に依存して、それらの中央スコアまたはモデル包含数にしたがいランク付けした。
LDA分類法を用いた場合、無作為バックグラウンドレベルを超える上位6つの特徴は、バイオマーカー:GFAPおよびSNCBと、自己抗体:抗MBPインビトロシトルリン化(SEQ ID NO:2)IgM、抗GFAP(SEQ ID NO:14)IgM、抗ICAM5(SEQ ID NO:28)IgMおよび抗BDNF(SEQ ID NO:42)IgMとの組み合わせであることが明らかになった。
QDA分類法を用いた場合、無作為バックグラウンドレベルを超える上位3つの特徴は、バイオマーカー:GFAPおよびSNCBと、自己抗体:抗MBPインビトロシトルリン化(SEQ ID NO:2)との組み合わせであることが明らかになった。
実施例6:正常なCTのTBI患者と比較した、頭部CTにおいて頭蓋内出血を示すTBI患者から入手した血清サンプル中の抗体およびバイオマーカーのレベルの組み合わせ測定
血清サンプル中の抗体およびバイオマーカーのレベルの組み合わせ測定が頭部CTにおいて頭蓋内出血を示すTBI患者と正常なCTの者との間を区別することができるかどうかを決定するために、組み合わせ分析を行った。時間0(t0)の異常なCTのTBI患者から入手した血清サンプルを、時間0(t0)の正常なCTのTBI患者から入手したサンプルと比較した。分析は、464のiChipの特徴(232の抗原、IgMおよびIgG)ならびに4つのELISAの特徴に基づくものであった。iChipデータは、補正手順後の2つの複製ブロックの平均に基づく。ELISAの特徴を、データ利用性に基づき選択し、データがiChipサンプルの>80%で利用可能な特徴のみを使用した。ELISAデータが欠落したサンプルは分析から除外した。
図7は、70:30交差検証の100回反復に基づく6つの分類法(SVM、LR、QDA、CART、RFおよびLDA)のROC曲線を示している。特徴を、その方法に依存して、それらの中央スコアまたはモデル包含数にしたがいランク付けした。
LDA分類法を用いた場合、無作為バックグラウンドレベルを超える上位5つの特徴は、バイオマーカー:SNCBと、自己抗体:抗コラーゲンIV(SEQ ID NO:66)IgG、抗オリゴ24(SEQ ID NO:44)IgM、抗EBV IgMおよび抗コラーゲンII(SEQ ID NO:102)IgGとの組み合わせであることが明らかになった。
上記の特定の態様の説明は、本発明の共通の性質を十分に明らかにするものであり、当業者は、現在の知識を適用することによって、過度の実験を行うことなくかつその共通思想から逸脱することなくそのような特定の態様を容易に改変するおよび/または様々な用途に適応させることができ、したがってそのような適応および改変は、開示される態様の等価物の意味および範囲内に含まれるべきであり、含まれることが意図されている。本明細書で用いられている表現または用語は、説明を目的としたものであり、限定を目的としたものではないことを理解されたい。様々な開示される機能を実行するための手段、材料および工程は、本発明から逸脱することなく、様々な代替形態をとり得る。

Claims (28)

  1. 対象において脳損傷を診断する方法であって、
    (i)対象からサンプルを入手する工程、
    (ii)SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原に対する該サンプル中の抗体の反応性を決定する工程、および
    (iii)該サンプル中の抗体の該反応性を健常対照の反応性と比較する工程
    を含み、
    健常対照の反応性と比較して有意に異なる該サンプル中の抗体の反応性が、該対象が脳損傷を有していることの指標となる、
    方法。
  2. 抗体の反応性が、IgGおよびIgM反応性を含む、請求項1記載の方法。
  3. 有意に異なるサンプル中の抗体の反応性が、示差的なIgGおよびIgM反応性を含む、請求項1記載の方法。
  4. 脳損傷が、脳震とう、慢性外傷性脳症、軽度外傷性脳損傷、中等度外傷性脳損傷、重度外傷性脳損傷、頭部外傷、震とう性衝撃および脳神経変性状態からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  5. 脳神経変性状態が、記憶または運動機能の喪失をさらに含む、請求項4記載の方法。
  6. 神経変性状態が、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、脱髄疾患、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症、損傷または外傷後の病理学的神経学的症状、脳症およびウイルス性脳症からなる群より選択される、請求項5記載の方法。
  7. サンプルが、血液、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)、尿および唾液サンプルからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  8. サンプルが、血清サンプルである、請求項1記載の方法。
  9. 健常対照の反応性が、少なくとも1人の健常個体の反応性、同じ個体由来の基準サンプルの反応性、健常個体群由来の対照サンプルのパネルの反応性および健常対照個体由来の保存されたデータセットの反応性からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  10. 複数の抗原に対するサンプル中の抗体の反応性を決定する工程を含む、請求項1記載の方法。
  11. 複数の抗原が、抗原プローブセット、抗原アレイまたは抗原チップの形態で使用される、請求項10記載の方法。
  12. サンプル中の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを測定する工程、ならびに
    該1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを、脳損傷を有する対象に相関する同じバイオマーカーの既定のレベルおよび健常対照に相関する同じバイオマーカーの既定のレベルと比較する工程
    をさらに含み、
    該既定のレベルの1つとの相関が、診断を提供する、
    請求項1記載の方法。
  13. 1つまたは複数のバイオマーカーが、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、シヌクレインベータ(Sncb)、メタロチオネイン-3(MT3)、ニューログラニン(NRGN)、細胞内接着分子-5(ICAM5)および脳由来神経栄養因子(BDNF)、またはそれらのシトルリン化形態からなる群より選択される、請求項12記載の方法。
  14. SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される複数の抗原プローブを含む、抗原プローブセット。
  15. 請求項14記載の抗原プローブセットを含む、製造物品。
  16. グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、シヌクレインベータ(Sncb)、メタロチオネイン-3(MT3)、ニューログラニン(NRGN)、細胞内接着分子-5(ICAM5)および脳由来神経栄養因子(BDNF)、またはそれらのシトルリン化形態からなる群より選択される1つまたは複数のバイオマーカーをさらに含む、請求項15記載の製造物品。
  17. 抗原プローブアレイの形態または抗原チップの形態またはディップスティックの形態またはラテラルフロー試験の形態である、請求項15記載の製造物品。
  18. 請求項1記載の方法を実施するための手段、または
    脳損傷を診断するためのキットの使用説明書
    をさらに含むキットの形態である、請求項17記載の製造物品。
  19. 対象において脳損傷状態を評価する方法であって、
    (i)対象からサンプルを入手する工程、
    (ii)SEQ ID NO:1〜115、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原に対する該サンプル中の抗体の反応性を決定する工程、および
    該サンプル中の抗体の該反応性を、脳損傷を有する、脳損傷を有さない、脳損傷の素因がある、亜急性脳損傷、急性脳損傷、急性期後脳損傷、進行中の脳損傷、退行中の脳損傷、亜臨床性脳損傷、軽度の脳損傷、中等度の脳損傷、重度の脳損傷および慢性的な脳損傷からなる群より選択される1つまたは複数の脳損傷状態に相関する既定の反応性と比較する工程
    を含み、
    該既定の反応性の1つとの相関が、該対象の脳損傷状態を決定する、
    方法。
  20. サンプル中の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを測定する工程、および
    該1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを、1つまたは複数の脳損傷状態と相関する同じバイオマーカーの既定のレベルと比較する工程
    をさらに含み、
    該既定のレベルの1つとの相関が、対象の脳損傷状態を決定する、
    請求項19記載の方法。
  21. 1つまたは複数のバイオマーカーが、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、シヌクレインベータ(Sncb)、メタロチオネイン-3(MT3)、ニューログラニン(NRGN)、細胞内接着分子-5(ICAM5)および脳由来神経栄養因子(BDNF)、またはそれらのシトルリン化形態からなる群より選択される、請求項20記載の方法。
  22. 対象において脳損傷からの回復を検出する方法であって、
    (i)対象からサンプルを入手する工程、
    (ii)SEQ ID NO:10、61、104、そのアイソフォーム、その翻訳後修飾形態、そのフラグメントまたは上記の任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗原に対する該サンプル中の抗体の反応性を決定する工程、および
    (iii)該サンプル中の抗体の該反応性を既定の反応性しきい値と比較する工程
    を含み、
    該既定の反応性しきい値と比較して有意に異なる該サンプル中の抗体の反応性が、該対象における脳損傷からの回復の指標となる、
    方法。
  23. 抗体の反応性が、IgGおよびIgM反応性を含む、請求項22記載の方法。
  24. 有意に異なるサンプル中の抗体の反応性が、示差的なIgGおよびIgM反応性を含む、請求項22記載の方法。
  25. サンプル中の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを測定する工程、および
    該1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを、脳損傷からの回復に相関する同じバイオマーカーの既定のレベルと比較する工程
    をさらに含み、
    該既定のレベルの1つとの相関が、対象の脳損傷からの回復の指標となる、
    請求項22記載の方法。
  26. 1つまたは複数のバイオマーカーが、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、シヌクレインベータ(Sncb)、メタロチオネイン-3(MT3)、ニューログラニン(NRGN)、細胞内接着分子-5(ICAM5)および脳由来神経栄養因子(BDNF)、またはそれらのシトルリン化形態からなる群より選択される、請求項25記載の方法。
  27. 比較が、少なくとも1つの分類アルゴリズムを用いて実施される、請求項1、19または22記載の方法。
  28. 少なくとも1つの分類アルゴリズムが、決定木分類、ロジスティック回帰分類(LR)、最近傍分類、ニューラルネットワーク分類、混合ガウスモデル(GMM)、サポートベクターマシン(SVM)分類、最近接セントロイド分類、線形回帰分類、線形判別分析(LDA)分類、二次判別分析(QDA)分類およびランダムフォレスト分類からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
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