JP7078265B2 - 血液検査を用いる無意識の昏睡及び昏睡後状態(植物状態を含む)の経過及び転帰の予測 - Google Patents

血液検査を用いる無意識の昏睡及び昏睡後状態(植物状態を含む)の経過及び転帰の予測 Download PDF

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Description

本発明は救急医療、特に救急及び緊急医療、外傷学、外科処置、救命救急医療、並びに神経外科に関し、すなわちカイニン酸受容体に対する抗体など、脳特異的タンパク質バイオマーカを測定する血液検査により、外傷性、虚血性又は代謝性の原因の脳の構造的損傷の結果としての無意識及び植物状態を評価する方法、並びに昏睡の転帰を予測する方法に関する。
無意識状態は昏睡、及び意識の昏睡後疾患の異なるオプション(植物状態、無動/多動無言症)により表すことができる(E.V.Aleksandrova et al.,”Recovery from a prolonged unconscious state due to severe diffuse axonal brain damage”,Neurology,Neuropsychiatry,Psychosomatics,Issue No.2/2013,p.51-58)。構造的(外傷性)及び非構造的(代謝性)損傷は昏睡を引き起こす場合がある。あらゆるタイプの無意識状態の一般的な発症の特徴は、大脳皮質、皮質下部及び脳幹の機能不全、並びに大脳皮質を活性化する脳幹上行性網様体形成の障害を伴うことである。
重度頭蓋脳損傷(CCI)は急性期の昏睡状態により特徴づけられ、その直接の外傷性損傷、又は例えば浮腫、転位、頭蓋内圧亢進等の関連する2次的(非外傷性)要因の結果として、脳幹機能不全に起因することが最も多い。約35%の症例で昏睡からの回復は別の無意識状態(植物状態、無動無言症)への移行を伴い、その持続期間は精神機能、労働能力のさらなる回復の程度に影響し、脳深部構造損傷(幹、大脳基底核及び視床)の存在及び程度によって決まる(E.V.Aleksandrova et al.,”Recovery from a prolonged unconscious state due to severe diffuse axonal brain damage”,Neurology,Neuropsychiatry,Psychosomatics,Issue No.2/2013,p.51-58)。
昏睡の転帰の予測は臨床的及び生化学的診断を含む。コンピュータ断層撮影(CT)及び核磁気共鳴画像法(MRI)を使用した昏睡の神経診断は、(グラスゴーコーマスケール(GCS)を用いた)意識低下の性質、原因及び重症度の設定を含む。最も有益な診断方法である脳MRIを実施することは、患者の状態の不安定性、集中治療病棟外への移動の不可能性、禁忌の存在(体内の金属体の存在)により不可能であると判明することが多い。また、通常のMRIモードで脳における機能障害(血流、生化学プロセス)を評価することは多くなく、脳幹機能不全の偽陰性診断の原因となる。昏睡状態の原因の特定は、以下のシステムパラメータ:動脈圧、血液のガス及び酸塩基平衡(pH)、生化学(グルコース及びケトン類、乳酸並びにクレアチン)及び電解質指標、の評価も含む。しかし、明記された指標は昏睡の転帰の予測に特異的ではなく、これはその値が末梢循環の速度及び身体損傷の重症度によって決まるためである。
従来の方法のみを用いて、重度CCIの急性期における昏睡からの回復を予測することは困難である。単なる医学的重要性を除いて、昏睡における予測の決定は、物質資源を再分配し、絶望的な症例における集中的な活動を限定する必要性のため、非常に経済的に重要である。動態における脳状態の特異的パラメータの迅速な評価は、依然として解決していない問題である。この点に関して、疾患発症を反映し、信頼性の高い量の末梢血で測定される特異的な脳バイオマーカを特定することは、昏睡における脳の状態を監視し、予測する重要な課題である。
ロシア国特許出願公開第2435165号明細書 ロシア国特許出願公開第2112243号明細書
E.V.Aleksandrova et al.,"Recovery from a prolonged unconscious state due to severe diffuse axonal brain damage",Neurology,Neuropsychiatry,Psychosomatics,Issue No.2/2013,p.51-58 http://klinrek.ru/calcs/glasgo.htm http://refdb.ru/look/2364618-p51.html
本発明の本質は、適当な生化学試験により患者の体液で検出することができる特定の神経受容体、すなわちカイニン酸受容体の断片に対する抗体の濃度は、脳の構造的損傷の結果として無意識状態及び昏睡している患者で増加することである。患者の体液における客観的指標の測定に基づき、遅れることなく合理的に適切な治療法を割り当てることができる。
イオンチャネル型グルタミン酸神経受容体は、NMDA型受容体、AMPA型受容体及びカイニン酸受容体の3つのサブタイプに分類されることが知られ、高速の信号伝達を行う中枢神経系の異なる構造に見られる。NMDA型受容体は主に大脳皮質の微小血管内皮表面に局在する。AMPA型受容体はシナプス終末に局在し、多数の皮質下脳構造に見出される。最後に、カイニン酸受容体(KAR)、特にGluR6及びGluR7などのサブタイプは主に脳幹及び脊髄の経路に位置し、脳静脈循環の調節に関与し、これらの受容体は基本的な生命を維持する機能も調節する。
KARはシナプス膜の受容体タンパク質であり、脳深部構造における二次性血管原性及び/又は細胞毒性浮腫の形成を伴う脳損傷における神経毒性カスケードに関与する。血液を含めた体液中のKARペプチド断片の出現は、構造的障害、つまりニューロンのシナプス後膜の病的変化、及び脳幹の静脈血循環の障害を指す。本発明者は無意識の患者においてGluR6及び/又はGluR7から形成されたKAR断片のレベル増加を見出している。健常者では、血液中のKAR断片の形成はかなり少ない量で起こるか、あるいは全く起こらない。過剰な濃度のKAR断片が血流に入ると、特異的抗体産生を含む免疫応答を引き起こすことがあり、そのレベルは重症度の程度、及び脳の構造的損傷の大きさと相関する。この点に関して、KARペプチド及びそれらに対する抗体の両方が、急性及び慢性的な脳の構造的損傷のバイオマーカとして機能することができる。
本発明の目的は無意識の被験者、及び昏睡している被験者の脳状態を客観的に評価すること、また、被験者の意識の回復(好ましい転帰)、又は慢性植物状態もしくは致死的な転帰への移行(疾患発症の好ましくない転帰)を引き起こす場合がある患者の状態の進展を予測することである。
この目的の解決手段は、無意識の被験者、及び昏睡している被験者の体液におけるKARに対する抗体レベルを測定して、神経組織の障害を評価し、その後、これに基づき、無意識状態からの回復の可能性を予測することである。患者の脳状態の提案された評価方法の本質は、脳特異的分子バイオマーカの評価に基づき、患者の幹及び皮質下脳構造の構造的及び機能的損傷の両方の存在及び程度を直ちに動的に評価することができることであり、これは一般的な神経可視化方法のみで行うことはできない(5~7日以内に変化が起こる)。
本発明のいくつかの実施形態においては、被験者の無意識状態からの回復を予測する方法は、以下の:(a)無意識の被験者から生体サンプルを得ることと;(b)該生体サンプルにおける1つ又は複数のGluR6及び/又はGluR7カイニン酸受容体断片に対する抗体のレベルを少なくとも1回測定することと;(c)測定した抗体のレベルを健常者から採取したサンプルの該当する抗体のレベルと比較することと;(d)無意識の被験者から採取したサンプルの抗体のレベルが健常者から採取したサンプルで記録したコントロールのレベルを超えないとき、無意識状態からの好ましい回復を予測することと;(e)無意識状態の被験者からのサンプルの抗体のレベルが健常者から採取したサンプルで記録したコントロールのレベルを超えるとき、好ましくない疾患発症を予測することと、を含む。
本発明のいくつかの実施形態において、脳損傷で放出され、血流を循環するKAR受容体断片のレベルの動的測定を用いることが好ましい。損傷の存在、程度を評価し、深部構造機能の回復(特に、外傷性脳疾患の経過)を監視し、従って、長期慢性症状下の転帰を予測する。これらの場合、少なくとも2個、3個又はそれ以上の生体サンプルが、無意識状態の開始後、1時間から90日間の間隔で無意識の被験者から採取される。その後、被験者の無意識状態からの回復を予測する方法は:(a)1時間から90日間の各サンプリングの時間間隔で無意識の被験者から少なくとも2個の生体サンプルを得ることと;(b)生体サンプルにおける1つ又は複数のGluR6及び/又はGluR7カイニン酸受容体断片に対する抗体のレベルを測定することと;(c)無意識の被験者から採取した異なるサンプルで測定した該当する抗体のレベルを互いに比較すること、及び健常者から採取したサンプルの該当する抗体のレベルと比較することと;(d)無意識の被験者から採取したサンプルの該当する抗体のレベルが経時的に減少するとき、無意識状態からの好ましい回復を予測することと;(e)無意識の被験者から採取したサンプルの該当する抗体のレベルが経時的に増加するとき、このレベルが健常者から採取したサンプルで記録したコントロールのレベルを超えるなら、好ましくない疾患発症を予測することと、を含む。予測の正確性を向上するため、3個またはそれ以上のサンプルを選択することが望ましい。脳の皮質及び皮質下機能を担うグルタミン酸系の総体的な状態を評価するため、KAR受容体断片、及び他のグルタミン酸受容体断片に対する抗体レベルの動態変化に基づき、サンプリング間の時間間隔を決定することが合理的である(例えば、ロシア国特許出願公開第2435165号及び第2112243号明細書による)。
本発明の好ましい形態において、無意識の被験者は患者であり、無意識状態は外傷性、虚血性及び/又は代謝性の原因の昏睡である。
本発明の特定の実施形態において、被験者から得られた全血、血清、血漿、脳脊髄液、呼吸気、汗及び/又は唾液が生体サンプルとして用いられる。
本発明で特定された方法において、カイニン酸受容体断片に特異的な抗体は主に、例えば酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RAI)又は酵素免疫測定法(EIA)などの免疫測定技術;及び特異的リガンドと相互作用後の測定タンパク質を分析する他の方法(例えば、質量分析法、NMR分光法、液体クロマトグラフィ等)により、1つ又は複数の分析系を使用して、定量的に検出及び/又は評価される。
別の態様によれば、本発明は本方法における使用のためのキットの適用、又は上述の適用の領域に関し、該キットはカイニン酸受容体の断片に対する抗体に結合することができるか、又はこの抗体により特異的に認識され得るリガンド、及びレポーター手段を含む。
本発明の好ましい形態において、被験者の無意識状態からの回復の予測は、検査の臨床的、実験的及び/又は機器による追加の方法も含む。例えば、追加の方法は細胞毒性浮腫、びまん性軸索損傷及び/又は血腫の出現で推奨され、核磁気共鳴画像法の特別な様式(T1、T2、FLAIR、DWI、SWI及びSWAN)を使用した神経可視化方法により、及び全身の血液の指標を測定することにより確認される。
本発明の技術的結果は、本発明が無意識状態を引き起こす脳構造損傷後、好ましい又は好ましくない転帰の客観的予測の問題を解決するということである。本発明は、脳幹及び皮質下構造の構造的及び機能的損傷の存在及び程度を評価する。さらに、本発明は多くの生化学的指標の値に応じて、患者の無意識状態からの回復の時間(時、日、週、月)を評価することができる。該予測は無意識の個体及び昏睡している個体における脳構造の状態を評価する正確性及び客観性を改善する。このような手法は主観を排除し、異なる起源の脳構造が損傷するとき、無意識状態からの回復を予測する正確性を改善する。これは、最適な治療法を実施し、患者の状態を改善させる。
用語及び定義
本明細書において、「含む」及び「含めて」という用語は「数ある中から含む」の意味とみなされる。これらの用語を「のみからなる」と解釈することは意図されない。
「無意識状態からの好ましい回復」という用語は被験者(患者)の意識の回復を意味し、一方「疾患発症の好ましくない転帰」は慢性植物状態又は致死的な転帰を意味する。
「被験者」はヒト、又はあまり好ましくないが意識のある別の哺乳動物を意味する。
カイニン酸受容体(KAR)はヒト及び動物の中枢神経系の構造体で見出されるイオンチャネル型グルタミン酸受容体のサブタイプの1つである。異なる5つのカイニン酸受容体のサブユニット(GluR5、GluR6、GluR7、KA1及びKA2)がある。これらはホモ又はヘテロ四量体を形成して、機能性受容体を形成する。一態様において、本発明は無意識の被験者で生じるGluR6及び/又はGluR7の断片に対する抗体レベルを測定する方法に関する。GluR6サブユニットは代わりにGluK2又はGRIK2と呼ぶことができ、配列番号1の配列(図1参照)又はそのオプションにより決定される。GluR7サブユニットは代わりにGluK3又はGRIK3と呼ぶことができ、配列番号2の配列(図1参照)又はそのオプションにより決定される。
「検査の臨床的方法」はグラスゴーコーマスケール又はピッツバーグスケールを用いる検査を意味し、一方「検査の実験的方法」は酸塩基平衡(pCO、pH)及び血液の生化学的パラメータ(ケトン類、乳酸、クレアチン)の測定を含めた全身の血液パラメータの測定を含む。「検査の機器による方法」は例えばT1及びT2強調、FLAIR、DWI、SWI並びにSWAN様式を含む、核磁気共鳴画像法を意味する。
本明細書における「GluR6及び/又はGluR7カイニン酸受容体断片」は、配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列により決定される両方の全タンパク質分子、これらの分子の部分断片を含んでいてよいこれらの分子の異なるオプション、これらの分子の断片の共有結合修飾(例えば、リン酸化、アセチル化、酸化的ストレスの影響下の修飾、アミド化、スルホン化等)、これらの分子の部分断片同士及び他の分子(ポリグルタミル、飽和酸、尿素、カルバミン酸塩、アルデヒド類、エーテル類、ニトロアニリド類、アミノメチルクマリン類、ポリエチレングリコール類等)との架橋、並びに被験者の身体における特異的抗体の形成を誘導することができる他の変異体を意味する。これらの受容体の全タンパク質分子及びその断片、並びに全タンパク質分子、部分断片、部分断片の架橋、及びこれらの分子又はその断片のタンパク質又は低分子化合物(ビオチン、アビジン、ペルオキシダーゼ、GABA、AEA、AVA、Ahx)との複合体を含めたGluR6及び/又はGluR7カイニン酸受容体断片の様々な組み換えオプションは、GluR6及び/又はGluR7カイニン酸受容体断片に特異的な抗体を検出するために用いることができる。
カイニン酸受容体の断片に対する抗体の「コントロール」又は「閾」値は、健康な被験者で測定した該当する抗体の上限レベルを意味する。このレベルの絶対値は抗体の特定の検出方法により変わる場合があり、各方法について実験的に決定するべきである。
GluR6(配列番号1)及びGluR7(配列番号2)カイニン酸受容体のアミノ酸配列 ナノ粒子を使用した免疫クロマトグラフィアッセイに基づくKAR抗体の半定量測定用テストカード。1-体液サンプルの投入用ウィンドウ、2-2重フィルタ、1つは検出試薬を有するナノ粒子(3)を含む、4-追加のコントロールストリップ(6)を有するニトロセルロース膜(5)に塗付された組み換えGluR6/7を有するテストストリップ、7-結果ウィンドウ、8-過剰な反応溶液を吸着するフィルタ。押さえバー(9)を有するテストカードはプラスチックカセット(10)の本体フレームに組み立てられる。 CCI後の患者の血清におけるKAR抗体の動的測定を異なる昏睡の持続期間で行った結果(実施例参照)。赤線は健康な被験者の血清で測定されたKAR抗体の閾値(1.5ng/ml)を示す。
KARタンパク質は中枢神経系に特異的であり、皮質下脳構造における二次性血管原性及び/又は細胞毒性浮腫の形成を伴う脳損傷における神経毒性カスケードに関与する。構造的障害の場合、新規「異種」自己免疫抗原の形成を含めた脳深部の体液におけるKARのペプチド断片の形成が起こり、さらにKARのペプチド断片に対する特異的抗体産生を引き起こす。CCIの場合、出血巣における細胞毒性浮腫及び二次的虚血化(虚血発症)の形成は、KAR抗体の著しい増加に関連し、脳循環の遅発性疾患であり、昏睡の転帰の悪化を引き起こす。CCIの無い個体の体液を分析することにより、あるKARのペプチド断片に特異的な抗体レベルの閾値を決定することができる。KAR抗体の濃度が常に増加すると(すなわち、所定の閾値を超える)、全身の血液パラメータの負の値を伴い、疾患発症の好ましくない転帰のリスクを予測する。反対に、特異的KAR抗体のレベルが閾値に向かって徐々に減少すると、好ましい転帰(意識の回復)を予測することができるようになる。
無意識の患者から採取した、例えば血液、血清又は血漿、脳脊髄液、唾液等の異なる生体サンプルを抗体を測定するために用いることができる。抗体は好ましくは酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)により測定される。ELISAは分析したサンプルを、固体担体に固定したカイニン酸受容体の組み換えGluR6/7である抗原と反応させること、続いて対応する検出用酵素を有するヒト免疫グロブリンGに対する抗体抱合体により形成した免疫複合体を検出することを含む。特異的抗体レベル増加の半定量又は定量的検出は、分析したサンプルの値(光学濃度、蛍光発光、発光又は変色値)と、コントロールサンプルの類似指標(閾値測定)の差により行って、高い又は低い回復可能性を有する脳構造損傷患者を明らかにする。また、この方法はKAR抗体の測定と共に、全身の血液パラメータ(乳酸、クレアチン、pCO、ケトン類及びpH)の動的測定を行って、外傷性、代謝性又は虚血性昏睡の状態で生存可能性が持続している患者に、遅れることなく治療法を割り当てることを特徴とする。
ELISA-KAR抗体試薬キットの操作の原理は、体液に存在し、免疫KAR複合体に結合しないヒト脳カイニン酸受容体のペプチド断片に対する抗体の定量又は半定量的検出を含む。(GluR6及び/又はGluR7から形成された)KARの特異的に選択された組み換えオプションの収着は、固体担体の表面において患者の体液(20~100マイクロリットルの血液、血清、脳脊髄液、呼吸気、唾液)からKAR抗体を選択的に抽出する。形成された抗体抗原複合体はヒト免疫グロブリンGに対する酵素標識2次抗体により検出される。酵素免疫測定は、光学濃度の移動可能な垂直走査式装置(450/630nm)により、又は携帯機器のカラーカメラ(電話、タブレット等)により、及びソフトウェアアプリケーションにより記録した光学濃度変化により(蛍光発光又は発光にもよる)測定される。呈色反応をカラースケールにより視覚的に測定することもできる(半定量オプション)。患者の血液における著しい蓄積を含めたKAR抗体の濃度変化は、患者の脳の機能状態の基準となる。
患者の検査の追加の方法はグラスゴーコーマスケール(http://klinrek.ru/calcs/glasgo.htm)及び脳構造状態のためのピッツバーグスケール(http://refdb.ru/look/2364618-p51.html参照)による、状態の重症度の決定を含めた臨床的方法に基づく。検査の実験的方法は以下の全身の血液パラメータの測定を含む:乳酸(基準0.8~4.0mmol/h*l);ガスアシドーシスの程度を決定するpCO(基準32.5~47mmHg)及びpH(<7.3);腎不全を検出するクレアチン(血漿中の基準76.3~114.5μmol/l);代謝性疾患(代謝性昏睡)を評価するケトン類(基準<0.6mmol/);上記すべてのパラメータは累積的に評価される。患者が入院すると、脳構造損傷を評価するT1及びT2強調、FLAIR、脳浮腫を決定するDWI、脳出血を検出するSWI/SWANを含めた多くの様式を用いて、核磁気共鳴画像法も実施される。
以下の実施例は本発明による方法を説明する目的のためのものであり、本発明の範囲を限定する手段としてみなされるべきではない。
GluR6/7カイニン酸受容体の組み換え変異体に対する抗体含有量を決定する方法の例
定量ELISA用の分析血清サンプルの調製:分析血清サンプルは測定前に1:50の比率で希釈する;ガラス又はプラスチック試験管に血清20μlを移し、リン酸バッファ980μlを添加し、回転運動により内容物を完全に混合する。希釈した血清サンプルは+2~8℃で7日間のみ保存することができる。
定量ELISAの実施
患者の体液におけるKAR抗体レベルは、DRD LLCキット(ウラン・ウデ、ロシア連邦)を用いて、酵素結合免疫吸着検定法による酵素免疫測定方法により分析することができる。標準溶液、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識された抱合体溶液、作業バッファ及び試験サンプルは、キットの説明書に従って調製する。カイニン酸受容体の組み換えGluR6/7でコートしたプレートの全ウェルをバッファ(200μl/ウェル)で自動ELISAマイクロプレートウォッシャを用いて1回洗浄する。標準溶液100μl又は調製した試験サンプル100μlを対応するウェルに添加し、マイクロプレートインキュベータシェーカで+37℃、30分間インキュベートする。インキュベーションの終わりに自動ELISAマイクロプレートウォッシャで3回、作業バッファを用いてプレートのウェルを洗浄する。酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼ)を有する抗ヒトIgG抗体抱合体を含む溶液100μlを全ウェルに添加し、+37℃で30分間、シェーカで常に振とうしながらプレートをインキュベートする。インキュベーションが終了すると、上記のように、作業バッファで3回プレートのウェルを洗浄し、最後に蒸留水でウェルを洗浄する;プレートのウェルの各洗浄で、+37℃で2分間、シェーカでプレートをインキュベートする必要がある。テトラメチルベンジジン(TMB)溶液100μlを添加し、室温暗所で10分間インキュベートする。停止液100μlを添加して反応を停止し、薄青/青色は黄色に変わる。各ウェルを均一な色まで注意深く混合し、波長450/630nmの垂直走査式光度計で光学濃度を測定する。説明書の抗体濃度-光学濃度検量線を用いてng/mlで試験サンプル中のKAR抗体濃度を測定する。
半定量ELISAの実施
KAR抗体の半定量測定は、患者の体液から採取したばかりの希釈したサンプルを使用し、免疫クロマトグラフィアッセイ(ラテラルフロー試験)(図2)によりテストカードで実施する。反応はサンプル1滴(約20μl)を添加することにより活性化され、抗体はGluR6/7ペプチドと反応する。形成した抗原抗体複合体は、カラフルなバンド状のコントロールストリップで西洋ワサビペルオキシダーゼを有する抗ヒトIgG抗体抱合体を可視化することにより検出される。バンドの発現強度及び速度はサンプル中の抗体濃度と一致し、キットに付与される参照カードのバンドの色と比較して測定される。コントロールバンドのみが現れると、結果は陰性とみなされる。
特異的KAR(GluR6/7)の断片に対する抗体レベル、及び無意識の患者の回復動態間の相関関係に関する研究
患者K(女性、19歳)は高所から落ちた後昏睡状態で8日目に、非開放性重度CCI(sCCI)[グラスゴーコーマスケール(GCS)4ポイント]の状態で日中及び夜間の一次診療所から神経外科研究所に入院した。
診断:非開放性CCI。グレードIIの脳のびまん性軸索損傷、びまん性脳浮腫。入院時の神経状態に関する判定:昏睡2。主に代謝性の脳に対する幹損傷。
この女性患者は昏睡11日間、植物状態8日間であったため、無意識状態の持続期間は全体として19日間であった。最初の7日間の血清中のカイニン酸受容体に対する抗体の動的測定(図3A)は、そのレベルが中程度に上昇していることを示した(閾値1.5ng/mlで4.7~4.4ng/ml)。幹の総合的症状は明白ではなく、構造的損傷よりむしろ代謝性機能不全に該当する。T1、T2、FLAIR、SWANモードで実施したMRIによれば、脳幹及び皮質下構造に損傷は無かった。
sCCI後1か月の神経状態:はっきりした意識(知力障害症候群)。低い筋緊張を有する主に左半身四肢不全まひ。6か月後のグラスゴーアウトカムスケール(GOS)は5ポイント中5であった(良好な回復)。
最初の月の終わりまでに、KARに対する抗体の値(図1A)は、閾値(1.5ng/ml)まで低下する傾向を示し、神経評価において言及される幹機能の回復を示した。
従って、脳深部構造に損傷のない患者においては、昏睡状態中のKAR抗体レベルはやや高めであり、幹の総合的症状の完全な退行及び意識の回復と共にすぐに正常化された。全体として、6か月後には患者はsCCIからの良好な転帰を示した。
患者Sh(男性、44歳)は高所から落下後昏睡状態で2日目に、非開放性重度CCI(GCS=4)の状態で日中及び夜間の一次診療所から入院した。診断:急性非開放性sCCI。脳内血腫(入院日に除去)の形成を伴う左前頭葉の重度の挫傷。脳浮腫。入院時の神経状態に関する判定:昏睡2。中脳、両側から橋上部及び橋下部位置の幹の総合的症状。MRIにより、脳幹及び皮質下構造に対する著しい虚血性及び出血性損傷が明らかであった。
血清中のKAR抗体の動的測定は、抗体レベルが初日の閾値から7日までに8.0ng/mlに急激に上がっていることを示した(図3B)。sCCI後9日目に、昏睡3(GCS=3ポイント)まで意識レベルが低下し、中脳、橋上部及び橋下部位置の幹の総合的症状が亢進する形で負の神経動態が明らかであった。
神経の総合的症状のさらなる亢進を背景に、14日目には致死的な転帰を記録した。GOSによるスコアは1ポイントであった。
このように、幹転位による神経の総合的症状の悪化を伴うKARに対する抗体価の著しい増加は、脳深部の顕著な構造的損傷を有する患者に明らかであった。疾患の転帰は外傷後14日目の死亡である。
患者L(男性、39歳)は交通事故(オートバイ事故)後3日目に重度CCIの昏睡状態(GCS=3ポイント)で入院した。診断:急性合併sCCI、前頭葉及び右側頭葉及び頭頂葉、脳幹における第3型の打撲傷の形成を伴う重度の脳挫傷。グレード4びまん性軸索損傷。重度のくも膜下出血は入院日に除去し、前頭部の骨欠損の形成外科処置は2側面で実施した。入院時の神経状態に関する判定:昏睡3、中脳位置の厳しい幹の総合的症状、橋上部及び橋下部、延髄部であまり顕著ではない。
脳のCTによれば、出血巣は脳の前頭、内側部、及びくも膜下腔で明らかである。血清中のカイニン酸受容体に対する抗体の動的測定は、抗体レベルが入院の最初の3日間、8日目、14~17日目に閾値であることを示した(図3C)。しかし、これらの値は7日目、10~12日目の超高レベルのKAR抗体と交互に起こり(18~28ng/ml)、脳幹構造の経過の悪化及び患者の状態の不安定性を示す。入院2か月目の終わりまでに、患者は昏睡から回復し、90日以上植物状態であったため、全体として無意識状態の持続期間は120日超であった。患者は植物状態、GOS2ポイントで診療所から退院した。
このように、KARに対する抗体価の明らかな増加は、脳深部の重度の構造的損傷、長期昏睡及び植物状態の患者でも明らかであった。疾患の転帰は慢性無意識状態である。
試薬キット操作の特性
25人の無意識患者(外傷後及び代謝性昏睡)、及び47人のコントロールにおける143の血液サンプルの試験結果は、定量ELISAにより測定されたKAR抗体の濃度が<0.6~60ng/mlの広い範囲で変わることを示した。KAR抗体の値は以下のように分布した:コントロール及び好ましい転帰を含めた90の血清サンプルのうち89が≦1.5ng/mlのKAR抗体濃度を示した。無意識個体及び好ましくない転帰であった個体の血清53サンプルのうち51サンプルにおいて、KAR抗体レベルは1.6~60ng/mlであった。昏睡からの回復を診断する試験の主な特性の測定[疾患/陽性試験(真陽性)=51、疾患/試験陰性(偽陰性)=2、疾患なし/陽性試験(偽陽性)=1、疾患なし/陰性試験(真陰性)=89]は、初期感度96%、特異度98%を示し、陽性尤度比86.6であった。
本発明は発明の実施形態の形式に関して記載されているが、特定の詳細に記載された実験は本発明を説明する目的のためにのみに記載され、本発明の範囲を制限するものとみなされるべきではないことは当業者にとって明らかである。様々な変更を含めた他の実施形態は本発明の要点から逸脱することなく可能であることを理解すべきである。

Claims (10)

  1. 被験者の無意識状態からの回復を予測するためのキットであって、
    カイニン酸受容体の組み換えGluR6及び/又はGluR7を固定化した個体担体を含み、
    無意識の被験者から得た生体サンプルにおける1つ又は複数のGluR6及び/又はGluR7カイニン酸受容体断片に対する抗体のレベルを少なくとも1回測定し、
    )前記測定された抗体のレベルを健常者から採取したサンプルにおける該当する抗体のレベルと比較し、
    )前記無意識の被験者から採取した前記サンプルにおける前記抗体の前記レベルが健常者から採取したサンプルで記録したコントロールのレベルを超えないとき、前記無意識状態からの好ましい回復を予測し、
    )前記無意識状態の被験者からの前記サンプルにおける前記抗体の前記レベルが健常者から採取したサンプルで記録した前記コントロールのレベルを超えるとき、好ましくない疾患発症を予測することにより、被験者の無意識状態からの回復を予測する、キット
  2. 前記抗体レベルが酵素結合免疫吸着検定法により測定される、請求項1に記載のキット。
  3. 前記抗体レベルが免疫クロマトグラフィアッセイにより測定される、請求項1に記載のキット。
  4. 前記無意識状態が外傷性、虚血性又は代謝性の原因の昏睡である、請求項1~3のいずれか一項に記載のキット
  5. 前記生体サンプルが全血、血清、血漿、脳脊髄液、呼吸気、汗又は唾液のサンプルである、請求項1~4のいずれか一項に記載のキット
  6. 被験者の無意識状態からの回復を予測するためのキットであって、
    カイニン酸受容体の組み換えGluR6及び/又はGluR7を固定化した個体担体を含み、
    a)1時間から90日間の各サンプリング間の時間間隔で、前記無意識の被験者から得た少なくとも2つの生体サンプル中の1つ又は複数のGluR6及び/又はGluR7カイニン酸受容体断片に対する抗体のレベルを測定し、
    )前記無意識の被験者から採取した異なるサンプルで測定された該当する抗体の前記レベルを互いに比較すること、及び健常者から採取した前記サンプルにおける該当する抗体の前記レベルと比較し、
    )前記無意識の被験者から採取した前記サンプルにおける前記該当する抗体の前記レベルが経時的に減少するとき、前記無意識状態からの好ましい回復を予測し、
    )前記無意識の被験者から採取した前記サンプルにおける前記該当する抗体の前記レベルが経時的に増加し、このレベルが健常者から採取した前記サンプルで記録した前記コントロールのレベルを超えているなら、好ましくない疾患発症を予測することにより、被験者の無意識状態からの回復を予測する、キット
  7. 前記抗体レベルが酵素結合免疫吸着検定法により測定される、請求項6に記載のキット。
  8. 前記抗体レベルが免疫クロマトグラフィアッセイにより測定される、請求項6に記載のキット。
  9. 前記無意識状態が外傷性、虚血性又は代謝性の原因の昏睡である、請求項6~8のいずれか一項に記載のキット
  10. 前記生体サンプルが全血、血清、血漿、脳脊髄液、呼吸気、汗又は唾液のサンプルである、請求項6~9のいずれか一項に記載のキット
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