インクリメンタルセンサユニットを有する自動車のステアリングシャフト用のセンサデバイスは、例えばDE 10 2013 006 379A1の従来技術によって、原理上は知られている。
インクリメンタルセンサユニットを用いることにより、シャフトの少なくとも1つの離散的な規定回転角位置(例えば、ゼロ交差)が取得され得るため、特に、インクリメンタルセンサユニットを用いることによって、シャフトの回転数が確定され得る。自動車においては、このようなインクリメンタルセンサユニットを用いることにより、ステアリングシャフトの回転数ひいてはハンドル回転数が通常は取得されるため、これにより、別の絶対的(好ましくは、アナログ的すなわち連続的)なステアリング角信号の妥当性を確認する。これは、絶対的なステアリング角範囲があるべき角範囲のインクリメンタルセンサユニットのデジタル信号に基づいてステアリング角信号が粗く決定され得るからであり、このため、測定された絶対的な角度を確認することができる。
ステアリングシャフトに対して回転が固定された形態で接続されたステアリングシャフトまたはハンドルの回転数がインクリメンタルセンサユニットを用いて取得され得るため、取得された回転数および回転中の現在の角度によって絶対的なステアリング角度が確定され得ることから、このようなインクリメンタルセンサユニットでは、ステアリング角度検出範囲が360°しかないステアリング角度センサをさらに使用可能である。
この場合、インクリメンタルセンサユニットは、シャフトが所定の回転角位置に到達した場合に、デジタルまたは離散信号、特に、信号パルスを生成する。この場合、従来技術により知られているインクリメンタルセンサユニット(例えば、上述のDE 10 2013 006 379A1に記載されたインクリメンタルセンサユニット)において、信号または信号パルスは通常、固定若しくは静止磁気センサまたは固定受信要素に対して、シャフトに対して回転が固定された形態で接続された永久磁石の相対移動に基づいて生成される。この場合、永久磁石は通常、固定センサまたは受信要素の近くを通過するシャフト回転時の円周方向のリング状経路を描くように配置されるため、センサまたは受信要素の通過に際して、信号パルスが生成される。
例えば上述のDE 10 2013 006 379A1に記載されたセンサデバイス等、インクリメンタルセンサユニットを有するセンサデバイスは、トルクセンサユニットも有する場合が多いが、トルクセンサユニット自体は、例えばDE 10 2010 033 769A1、DE 10 2012 014 208A1、またはDE 10 2012 024 383A1の従来技術によって、原理上は知られている。
この場合、トルクセンサユニットは、自動車のシャフトに加えられるトルクの取得、特に、運転者によってステアリングシャフトに加えられるステアリングトルクの取得を目的として設けられている。このようなトルクセンサユニットは、例えば電動ステアリングシステムで使用され、運転者によって加えられたステアリングトルクに基づいてステアリングシステムの電動モータを起動することにより、例えば対応するステアリング補助を与える。
一般的には、ねじれ剛性が規定されて既知のトーションバーを有するトルクセンサユニットがこの目的に使用されるが、この場合、トーションバーは、軸方向に分割されたシャフトの第1の部分を軸方向に分割されたシャフトの第2の部分に接続する。
トルクがシャフトに加えられると、測定可能なねじれ角だけ、シャフトの2つの部分が互いにねじれるが、このねじれ角は、加えられたトルクおよびトーションバーの剛性に応じた結果であるため、トーションバーの剛性が規定されて既知の場合は、検出されたねじれ角から、加えられたトルクが確定され得る。
加えられたトルクの結果としてのねじれ角を測定する様々な測定原理およびセンサ構成が知られており、磁気センサシステムが使用されることが非常に多く、ステアリングシャフトの第1の部分に対して回転が固定された形態で、通例は永久磁石として設計された円周方向リング磁石が接続されており、シャフトの第2の部分に対して回転が固定された形態で、磁気伝導性の固定子を有するホルダが接続されており、固定子は、わずかな空隙を介してリング磁石周りで同心円状に半径方向に配置されている。リング磁石の磁束は、通常、リングディスクの形態の領域をそれぞれ有する2つの別個の固定子部分から成る固定子を介して、トルク磁気センサ(例えば、ホールセンサ)に導かれて解析され得る。
シャフトの第2の部分に接続された固定子に対するシャフトの回転移動によって、シャフトの第1の部分に対して回転が固定された形態で接続されたリング磁石が移動すると、固定子における磁束密度が変化するが、これは、トルク磁気センサによって検出され得る。この場合、固定子における磁束密度の変化は、とりわけ固定子に対するリング磁石の相対移動の大きさすなわちねじれ角に依存する。したがって、取得された磁束密度の変化によってねじれ角が結論付けられ、トーションバーのねじれ剛性が既知である場合は、このねじれ角によって、シャフトに加えられたトルクが確定され得る。
上述のDE 10 2013 006 379A1に記載されたようなセンサデバイスがインクリメンタルセンサユニットのほかにトルクセンサユニットも有する場合、特にステアリングシャフトの離散的な規定回転角位置およびステアリングシャフトに加えられたトルクの両者が磁気的に取得された場合、特にステアリングシャフトの回転ごとに、インクリメンタルセンサユニットの永久磁石がトルク磁気センサを通過して導かれた場合は、トルクセンサユニットのトルク磁気センサとの、インクリメンタルセンサユニットの磁界の望ましくない結合、特に、インクリメンタルセンサユニットの永久磁石の散乱磁界の結果としてのいわゆる「クロストーク」が生じ得る。
本発明の目的は、インクリメンタルセンサユニットを有する別のセンサデバイス、特に、インクリメンタルセンサユニットのトルクセンサユニットからの分離を改善可能なインクリメンタルセンサユニットを有する別のセンサデバイスを提供することである。
上記目的は、各独立請求項に係る特徴を有する、本発明に係るセンサデバイスおよび本発明に係る自動車によって達成される。本発明の有利な実施形態が、本明細書の従属請求項および図面の主題であり、以下により詳しく説明される。
本発明は、回転軸周りに回転可能なシャフト、特に、自動車のステアリングシャフト用のインクリメンタルセンサユニットを有するセンサデバイスに関する。この場合、インクリメンタルセンサユニットは、シャフトの少なくとも1つの規定回転角位置を取得するとともに、送信要素およびハウジングに固定された受信要素を有し、送信要素により発せられ、信号経路に沿って送信された信号が受信要素により受信される。受信要素により受信された信号に基づいて、シャフトが規定回転角位置に位置付けられているか否かを認識可能であり、インクリメンタルセンサユニットは、シャフトの規定回転角位置への到達時に、信号パルスを生成する。
本発明によれば、この場合、インクリメンタルセンサユニットの送信要素は、インクリメンタルセンサユニットの受信要素と同様に、ハウジングにも固定される。すなわち、インクリメンタルセンサユニットの送信要素と受信要素との間に相対移動は生じない。ただし、受信要素から受信される信号の変化は、シャフトの回転移動によってもたらされ得る。
トルクセンサユニット、特に、トルク磁気センサを有するトルクセンサユニットも有するセンサデバイスに関して特に、本発明に係るインクリメンタルセンサユニットの送信要素のハウジング固定構成が好適であるのは、ハウジングにおけるインクリメンタルセンサユニットの送信要素のハウジング固定ひいては固定構成のため、各回転時に、トルクセンサユニットのトルク磁気センサを通過してインクリメンタルセンサユニットの送信要素が導かれることを回避可能なためである。したがって、送信要素とトルク磁気センサとの間の結合の悪影響が低減され得る。特に、トルクセンサユニットとインクリメンタルセンサユニットとの間の望ましくない相互作用および発生する干渉の影響が最小限に抑えられ得る。
本発明の意味において、ハウジング固定は、ハウジングにおける静止または固定を意味する。
本発明に係るシャフトの回転角位置に応じて、送信要素から受信要素に送信された信号に影響を与えることにより、受信要素から受信される信号の変化がシャフトの回転移動によってもたらされるようにするため、有利な一実施形態において、インクリメンタルセンサユニットは、シャフトに対して回転が固定された形態で結合されるとともに、半径方向の外側に延び、好ましくはスクリーンとして動作する遮蔽要素を有する。
有利な一実施形態において、送信要素および受信要素は、互いに間隔をとって配置され、好ましくは軸方向に互いに間隔をとって配置され、送信要素および受信要素が特に、平行平面において配置されている。この場合、遮蔽要素は、送信要素および受信要素がそれぞれ配置された平面間のシャフトの回転移動によって、円周方向に移動可能であるのが好ましく、シャフトに結合されるとともに、遮蔽要素が、特に送信要素と受信要素との間を移動可能である。
これは、本発明に係るセンサデバイスの特に有利な一実施形態において、インクリメンタルセンサユニットの遮蔽要素が、特に送信要素と受信要素との間で、固定された送信要素および固定された受信要素に対するシャフトの回転移動によって移動可能であり、シャフトに結合されることを意味する。
この場合、遮蔽要素は、固定された受信要素の他に、好ましくは固定された送信要素の近くを通過するシャフト回転時の円周方向のリング状経路を描くように配置されるのが特に好ましい。
この場合、インクリメンタルセンサユニットに加えて、トルクセンサユニット、特に、トルク磁気センサを有するトルクセンサユニットも有するセンサデバイスにおいて、遮蔽要素は、シャフトの各回転時に、トルク磁気センサも通過して導かれる。遮蔽要素に起因するトルクセンサユニットへの干渉の影響は、シャフトの各回転時にトルク磁気センサを通過して導かれる永久磁石に起因する干渉の影響よりもはるかに小さい。
特に有利な一実施形態において、遮蔽要素は、シャフトの規定回転角位置への到達時に、インクリメンタルセンサユニットの送信要素とインクリメンタルセンサユニットの受信要素との間の信号経路へ達するとともに、送信要素と受信要素との間の信号経路、好ましくは最短の信号経路を遮断するか、または、信号を大幅に減衰させるが、この目的のため、遮蔽要素は、規定回転角位置と関連付けられた円周方向の位置でシャフトに結合される。規定回転角位置への到達時に信号経路の遮断または信号の大幅な減衰は、特に、幅の狭い翼として設計された遮蔽要素によって実現される。
遮蔽要素を有する受信要素の通過時における信号経路の遮断および/または信号の大幅な減衰、ひいては送信要素から受信要素への信号伝達の遮断または減衰によって、信号パルスが生成され、制御ユニットによる解析またはさらなる処理がなされる。
この場合、本発明の意味において、信号パルスは、受信要素によって受信される信号のパルス型変化として理解され、パルス型変化は、好ましくは信号経路の遮断および信号経路の遮断の終了の両方によって引き起こされる。ただし、受信要素から受信される信号のパルス型変化は、信号の急激且つ大幅な減衰または急激な増大によっても引き起こされ得る。
別の有利な実施形態において、遮蔽要素は、シャフトの規定回転角位置の外側で、インクリメンタルセンサユニットの送信要素とインクリメンタルセンサユニットの受信要素との間の信号経路へ達するとともに、シャフトの規定回転角位置の外側で、送信要素と受信要素との間の信号経路、好ましくは最短の信号経路を遮断するか、または、規定回転角位置の外側で、信号を大幅に減衰させるが、この目的のため、遮蔽要素は、規定回転角位置と関連付けられた円周方向の位置でシャフトに結合される。規定回転角位置の外側での信号経路の遮断または規定回転角位置の外側での信号の大幅な減衰は、特に、開放リングディスクとして設計された遮蔽要素によって実現され得る。
このため、有利な一実施形態において、遮蔽要素は、ディスク状の部分、特に、リングディスク状の部分であり、遮蔽要素が、好ましくは所定の回転角位置でシャフトに結合される翼または円周方向に開口し、規定回転角位置と関連付けられた円周方向にその開口の位置があるリングディスクである。
特に有利な一実施形態において、送信要素は、磁石、好ましくは永久磁石であり、受信要素は、磁気センサ、特に、ホールセンサであり、この場合、遮蔽要素は、好ましくは強磁性化されており、本発明に係る受信要素から受信される信号に影響を及ぼし得る。
有利な一実施形態において、インクリメンタルセンサユニットの磁気センサは、軸方向に感度がなく、接線および/または半径方向に感度があるように設計されている。したがって、トルクセンサユニットの磁気伝導性の固定子部分のリングディスク状領域間で軸方向に生じる磁界に対するインクリメンタルセンサユニットの磁気センサの干渉結合は、低減またはほぼ完全な回避が可能である。
有利な一実施形態において、インクリメンタルセンサユニットの送信要素を構成する磁石は、双極性として設計され、この磁石が、好ましくはディスク状に形成され、特に、隣接したN極およびS極を有する。ただし、磁石は、例えば円筒状または球状等、円形状とされてもよい。
特に有利な一実施形態においては、インクリメンタルセンサユニットの磁石の極を分離する仕切り平面が半径方向に配向しているため、シャフトの回転軸に対して垂直に配向した平面において、インクリメンタルセンサユニットの磁石の磁力線が整列している。
別の実施形態において、インクリメンタルセンサユニットの磁石の極を極分離する仕切り平面は、半径方向に対してある角度で配向しているものの、シャフトの回転軸に平行である。このため、遮蔽要素の対応する実施形態では、送信要素により生成された磁界の磁界方向に対してある角度にて、インクリメンタルセンサユニットの送信要素側を向いた遮蔽要素の縁部を配向可能であることから、遮蔽要素の磁界への接近、特に、遮蔽要素の縁部の磁界への接近に際して、磁力線が回転する。遮蔽要素が送信要素と受信要素との間を移動すると、送信要素と受信要素との間の磁界強度のみならず、磁界方向も影響および/または変調される。この利点を利用できるように、受信要素は、シャフトの回転軸に対して垂直に配向し、磁力線が整列した平面における磁界の磁界方向も検出可能な磁気センサであるものとする。
別の実施形態において、送信要素は光源であり、受信要素は光センサであり、この場合、遮蔽要素が不透明に設計され、光センサの遮光が遮蔽要素によってもたらされる。
ただし、別の実施形態において、送信要素および受信要素はそれぞれ、少なくとも1つの誘導コイルによって構成され得るものであり、この場合、遮蔽要素が金属化されて、送信要素の受信要素との誘導結合に影響を与える。
特に有利な一実施形態において、このセンサデバイスは、トルクセンサユニットをさらに有し、トルクセンサユニットは、シャフトに加えられたトルクを取得し、好ましくは第1の部分および当該第1の部分に対してねじれた第2の部分を有するシャフトに加えられたトルクを取得し、特に、シャフトの第1および第2の部分がトーションバーによって互いに接続されている。
この目的のため、センサユニットは、シャフトの第1の部分に対して回転が固定された形態で接続可能なリング磁石と、ハウジング固定トルク磁気センサと、リング磁石からトルク磁気センサに磁束を導くため、シャフトの第2の部分に対して回転が固定された形態で接続可能な固定子とを有するのが好ましい。
この場合、有利な一実施形態において、インクリメンタルセンサユニットの遮蔽要素は、トルクセンサユニットの固定子に対して回転が固定された形態で接続され、遮蔽要素は、好ましくは固定子、特に、固定子ホルダに固定されている。
ステアリングシャフトおよび当該シャフトの少なくとも1つの規定回転角位置を取得するセンサデバイスを有する、本発明に係る自動車は、本発明に係る上記センサデバイスを備えることを特徴とする。
この場合、センサデバイスを参照して提示された有利な実施形態およびその利点は、センサデバイスのみならず、本発明に係る自動車にも該当する。
本発明の別の特徴は、特許請求の範囲、図面、および図面の説明に由来する。上記説明において述べられたすべての特徴および特徴の組み合わせならびに図面の説明における後述および/若しくは図中での図示のみがなされる特徴および特徴の組み合わせは、それぞれ指定された組み合わせのみならず、他の組み合わせまたは単独にて有効である。
上述の特徴または特性の一部は、本発明に係るセンサデバイスおよび本発明に係る自動車の両方に関する。これらの特徴および特性のうちの複数は、一度だけ記載される場合もあるが、技術的に可能な実施形態の範囲で互いに独立して、本発明に係るセンサデバイスおよび本発明に係る自動車の両方に該当する。
本発明は、添付の図面を参照し、複数の好適な例示的実施形態に基づいて、より詳しく説明される。
図1は、本発明に係るトルクセンサユニット(図1には詳しく示されていない)およびインクリメンタルセンサユニット40を有するセンサデバイス100の一部の構成要素の分解図であって、センサユニット100は、特に自動車のステアリングシャフト用と考えられる。
この場合、本発明に係るセンサデバイス100は、第1の部分および第2の部分を有する回転軸80の周りに回転可能なステアリングシャフト(ここでは図示せず)上で配置されるように設計され、ステアリングシャフトの第1の部分および第2の部分は、トーションバー(図示せず)を介して、軸方向に互いに接続されている。
この場合、本発明に係るセンサデバイス100のトルクセンサユニットは、ステアリングシャフトに加えられたトルクを取得するため、ステアリングシャフトの第1の部分に対して回転が固定された形態で接続可能な永久リング磁石(図示せず)と、ハウジング固定トルク磁気センサ22と、リング磁石からトルク磁気センサ22に磁束を導くため、ステアリングシャフトの第2の部分に対して回転が固定された形態で接続可能な固定子30とを有する。
この場合、ホールセンサ22により構成されたトルク磁気センサ22は、ハウジングに静止形態で固定されたリングディスク部分形状のプリント配線板60の一面に配置され、本発明に係るこのセンサデバイス100のハウジングは、2つのハウジング部分51および52によって構成されている。この場合、トルク磁気センサ22が配置されたプリント配線板60は、ステアリングシャフトの外側で半径方向に配置されており、プリント配線板面が回転軸80に対して垂直に配向している。
例示的な本実施形態において、2つのプラスチック製の磁気伝導性固定子部分32aおよび32bから構成された固定子ホルダ31により構成され、リング磁石により生成された磁束をプリント配線板60上のトルク磁気センサ22に導くために設けられた固定子30は、ステアリングシャフトの第2の部分に対して回転が固定された形態で接続されるとともに、センサデバイス100のハウジングに摺動形態で取り付けられているため、ステアリングシャフトの回転移動に追従可能であるとともに、ハウジングおよびプリント配線板60を介してハウジングに静止形態で固定されたトルク磁気センサ22に対して移動可能である。
2つの固定子部分32aおよび32bは、特に軟磁性化され、それぞれ、ステアリングシャフトの回転軸80に対して垂直に配向するとともに半径方向の外側に延びたリングディスク状領域34を有する。この場合、2つの固定子部分32aおよび32bは、リングディスク状領域34がそれぞれ平行平面91、92において軸方向に互いに間隔をとって配置され、リング磁石に対して同心円状に空隙を有するように、固定子ホルダ31によって収容されている(図2参照)。
リング磁石の磁界の結果として、固定子部分32aおよび32bが磁気伝導性とされているため、固定子部分32aおよび32bには磁束が生じる。このため、軸方向に整列した磁界35はとりわけ、固定子部分32aおよび32bの2つのリングディスク状領域34間に形成されるが、これは、符号35で識別される矢印によって図2に記号表示されている。
本発明に係るセンサデバイス100の図2に示される例示的な実施形態のように、プリント配線板60に固定されたトルクセンサ22が固定子部分32aおよび32bのリングディスク状領域34間で軸方向に配置された場合は、固定子部分32aおよび32bにおいてリング磁石により生成された磁束が取得され得る。
上記センサデバイス100において、トルク磁気センサ22の領域の磁束密度を増幅することによりトルクセンサユニット20の分解能を向上させるため、トルク磁気センサ22の領域には、2つのディスク部分状磁束導体33aおよび33bがさらに設けられ、対応するホルダ36を介してハウジングに静止形態で固定されるとともに、それぞれが回転軸80に対して垂直に延びた平行平面において、互いに軸方向に間隔をとっている(図1参照)。
センサデバイス100において、トルク磁気センサ22が固定されたプリント配線板60は、トルク磁気センサ22が軸方向において正確に、固定子部分32aおよび32bのリングディスク状領域34間の中心すなわち半径方向中心面90に位置付けられるように、固定子部分32aおよび32bのリングディスク状領域34間に配置されている。
ステアリングシャフトに加えられたトルクによってステアリングシャフトにねじれが生じ、ステアリングシャフトの第2の部分に対してステアリングシャフトの第1の部分がねじれると、固定子30に対してリング磁石の相対移動が生成されるため、2つの固定子部分32aおよび32b、特に、リングディスク状領域34において磁束密度が変化し、これがトルク磁気センサ22によって取得される。固定子30に対するリング磁石の相対位置、すなわちねじれ角は、取得された磁束密度または取得された磁束密度変化から断定できる。トーションバーの剛性が既知である場合は、それによって、ステアリングシャフトに加えられたトルクが確定されるようになっていてもよい。
本発明に係るセンサデバイス100のインクリメンタルセンサユニット40を用いることにより、ステアリングシャフトの離散的な規定回転角位置δdefが取得できるが、この場合、規定回転角位置δdefは、ゼロ交差すなわちそれぞれの場合の回転に対するδ=0°という回転角を規定するため、インクリメンタルセンサユニットを用いることによって、ステアリングシャフトの回転数を確定できる。ステアリングシャフトの回転数が既知の場合は、別の絶対的、好ましくはアナログ的すなわち連続的なステアリング角信号の妥当性を確認できる。特に、絶対的なステアリング角範囲があるべき角範囲のインクリメンタルセンサユニットのデジタル信号に基づいてステアリング角信号が粗く決定され得るため、例えば、40°または400°の絶対的なステアリング角が存在するか否か等、測定された絶対角の確認が可能である。
この目的のため、インクリメンタルセンサユニット40は、プリント配線板60上に配置され、以下では受信要素42と称されるハウジング固定磁気ホールセンサ42と、ディスク状の双極性永久磁石41の形態の関連する送信要素41とを有する。
本発明に係る送信要素41は、ハウジング部分51および52により構成されたセンサデバイス100のハウジング上に固定配置され、受信要素42により受信された信号の変化がステアリングシャフトの回転移動によってもたらされることから、ステアリングシャフトが所定の回転角位置δdefに位置付けられているか否かが認識できる。
この場合、本発明に係るセンサデバイス100の例示的な実施形態において、受信要素42は、トルク磁気センサ22とプリント配線板60の同じ側に配置されるが、それと比較して円周方向にオフセットしている。図2および図3bに関して、図2は、図1の発明に係るセンサデバイス100において、シャフトの回転軸80に平行な断面におけるトルク磁気センサ22の領域の4分断面図である一方、図3bは、インクリメンタルセンサユニットの送信要素および受信要素の領域において対応する断面図である。当然のことながら、受信要素42およびトルク磁気センサ22は、プリント配線板60の異なる側にも配置できる。
固定子部分32aおよび32bのリングディスク状領域34間に生じる軸方向に整列した磁界35が受信要素42(ホールセンサ42によっても構成される)に与える干渉の影響を最小限に抑えるため、例示的な本実施形態において、受信要素42すなわちホールセンサ42は、軸方向で感度がないよう設計され、回転軸80に対して垂直に配向した平面90においてのみ感度があるように設計されるのが好適である。これは、リングディスク状領域34に平行な固定子部分32aおよび32bの平面90またはプリント配線板60に平行な中心平面90においてのみ、送信要素41により生成された磁界の変化が受信要素42によって検出できることを意味する。
受信要素42を用いて対応する信号を検出できるように、送信要素41または送信要素を構成する永久磁石41は、受信要素42の平面90において作用する磁界の生成を目的として設計されている。これは、対応して配向した磁界が生じるように永久磁石41が設計される必要があることを意味する。
この場合は、図4に基づいて模式的に示されるように、S極に隣接してN極が配置された双極性のディスク状永久磁石41の形態の送信要素41が特に好適であることが証明されており、N極およびS極は、N極からS極に延びた磁界の磁力線が少なくとも部分的に整列し、平面90において、ステアリングシャフトに対して接線方向および/または半径方向に延びるとともに、受信要素42により信号MInk_planarとして受信され得るように配向している。この目的のため、図4に示される例において認識され得るように、N極をS極から分離する永久磁石41の仕切り平面43が半径方向に配向しているのが好ましい。
送信要素41および受信要素42は、図4に示される本発明に係るセンサデバイス100のインクリメンタルセンサユニット40において、平行平面で軸方向に互いに間隔をとって配置され、送信要素41は、受信要素42に対して、受信要素42とプリント配線板60の同じ側に配置されている。したがって、送信要素41から発せられ、信号経路に沿って送信された信号は、受信要素42によって受信され得る。受信要素42により受信された信号に基づいて、ステアリングシャフトが規定回転角位置δdefに位置付けられているか否かを認識可能である。この場合、インクリメンタルセンサユニット40は、ステアリングシャフトの規定回転角位置δdefへの到達時に信号パルスを生成するように設計されている。
ステアリングシャフトの回転移動によって、受信要素42により受信された信号の変化をもたらすため、インクリメンタルセンサユニット40は、固定子ホルダ31に回転が固定された形態で固定されるとともに、図1に示される本発明に係るセンサデバイス100の例示的な実施形態において、半径方向の外側に延びた翼の形態のディスク状の強磁性板70により構成された強磁性遮蔽要素70を有する。この場合、遮蔽要素70は、送信要素41および受信要素42がそれぞれ位置付けられた平面間、特に、送信要素41と受信要素42との間で、ステアリングシャフトの回転中に、円周方向に移動できるように設計されるとともに、固定子ホルダ31上に配置されている。
ステアリングシャフトの回転移動の結果として、強磁性遮蔽要素70が送信要素41と受信要素42との間で移動すると、遮蔽要素70により、その強磁性の結果として磁力線が「集約」され、これにより受信要素42が遮蔽されるため、受信要素42により取得された平面磁界成分の磁界強度ひいては受信要素42により受信された信号MInk_planarが大幅に低下する。
図5は、受信要素42により受信された信号MInk_planarの回転角位置δに対する関連信号曲線を示しており、所定の規定回転角位置δdefへの到達に際して、遮蔽要素70による受信要素42の遮蔽の結果としての対応する信号パルスが生成されている。この場合、図3aおよび図3bのこのインクリメンタルセンサユニット40のように、遮蔽要素70が幅の狭い翼で構成されていると、信号MInk_planarの遮断によって信号パルスが生成される。規定回転角位置δdefへの到達に際して信号パルスを生成するため、遮蔽要素70は、固定子ホルダ31上の円周方向において、規定回転角位置δdefと関連付けられた対応位置に固定されている。
受信要素により受信された信号MInk_planarは、この場合は平面磁界の強度を反映しているが、出力信号として直接与えられ得るとともに、制御ユニットに送信された後、ステアリングシャフトの回転数を決定する解析が実行され得る。当然のことながら、特定の磁界強度を上回るか、または下回った際に出力を切り替える切り換え機能のトリガとして、生成されたパルス信号を与えることも可能である。
図6は、本発明に係るセンサデバイスのインクリメンタルセンサユニット40の別の例示的な実施形態を示しており、例示的な本実施形態において、遮蔽要素70’は、円周方向に開口したリングディスク70’によって構成されており、円周方向におけるリングディスク70’の開口の位置は、規定回転角位置δdefと関連付けられている。この場合は、所定の回転角位置δdefへの到達に際した信号経路の遮断をリングディスク70’の開口で相殺することにより、すなわち、リングディスク70’の開口が送信要素41と受信要素42との間に位置付けられた場合に、信号パルスが生成される。
この場合に得られる受信要素42により受信された信号MInk_planarの関連する曲線が図7に示される。
信号パルスのパルス持続時間は、円周方向の遮蔽要素70または70’の幅すなわち翼または開口の幅によって影響され得る。当然のことながら、複数の遮蔽要素または複数の開口を有する開放リングディスクとして設計された単一の遮蔽要素を設けることも可能であるため、複数の規定回転角位置において、単一のパルスが生成され得る。
図8は、インクリメンタルセンサユニット40’’のさらに考え得る一実施形態を示しており、本実施形態においては、上記例示的な実施形態と対照的に、送信要素41’’のN極とS極との間の仕切り平面43’’が半径方向に配向しておらず、ある角度で依然として回転軸80に平行なため、送信要素41’’により生成された磁界の磁力線が平面90において接線方向に整列するのではなく、半径−接線方向に整列する。
この結果、遮蔽要素70または70’の縁部の接近に際して、磁力線が回転する。遮蔽要素70または70’が送信要素41’’と受信要素42との間を移動すると、磁界強度のみならず磁界方向も変調される。このため、所定の規定回転角位置δdefのみならず、所定の回転角位置δdefに到達した回転方向も認識され得ることになり、すなわち、ステアリングシャフトが最後に回転したのが左なのか右なのかも認識され得る。
この効果を利用できるように、磁界の磁界強度を取得することのほか、平面90における磁界方向を検出することも目的として設計された磁気センサによって、受信要素42すなわちホールセンサ42が構成されていると好適である。
ただし、半径方向に対するある角度で対応して延びた遮蔽要素70、70’の縁部をそれぞれ有することにより、半径方向に配向していない仕切り平面43と同様の効果のみならず、半径方向に対してある角度で配向した仕切り平面43の効果も実現され得る。これは、リングディスクの翼の縁部または開口の縁部が半径方向ではなく、傾いて配向していることを意味する。
送信要素41または41’’として固体磁石を設ける代わりに、双極性の表面磁化のみを有する送信要素を設けることも考えられるが、この場合、2つの極すなわちN極およびS極は、受信要素42側を向いた表面上に形成されるのが好ましい。
当然のことながら、送信要素内の平面90に平行な平面においてのみ、磁化を与えることも考えられる。
この場合、上記例示的な実施形態において、送信要素41または41’’および受信要素42はそれぞれ、平行平面において軸方向に互いに間隔をとった状態、すなわち実質的な対向状態で配置されている。ただし、受信要素が磁気センサであり、送信要素が磁石として設計された場合は、ハウジングに固定された送信要素を受信要素の半径方向外側に配置することも可能である。このような構成によって、遮蔽要素70または70’が受信要素42を通過して移動すると、送信要素により生成された磁界の強度および/または方向も変化するためである。磁気送信要素と、送信要素と受信要素との間に配置されていない強磁性対象を有する受信要素としての磁気センサとを有し、本発明に係る対応して設計されたセンサデバイスにおいて遮蔽要素70または70’が対象を形成する上記構成は基本的に、従来技術により知られており、例えば、クランクシャフト若しくはカムシャフトの位置の検出の場合またはABSシステムにおいて使用されている。この点に関しては、米国特許第5,814,985号が一例として参照される。
当然のことながら、送信要素41、41’’として磁石を用いる代わりに、送信要素41、41’’として光源を用いることも可能であり、このため、受信要素42として、磁気センサ42の代わりに、光学バリアを構成するとともに多様な構造的形状で利用可能な光センサを設けることも可能である。この場合は、光センサ42の遮光または遮光の中断がもたらされ得るように、遮蔽要素70、70’が不透明に具現化されるものとする。
光学バリアの使用の利点として、特に、遮蔽要素70、70’は、プラスチックから生産され得るとともに、例えば、固定子ホルダ31に直接、射出成型され得る。
ただし、光学系の場合の不都合として、例えば、設置空間における潤滑グリース等および水分の凝結による送信要素41、41’’および/または受信要素42の汚染のリスクがあるものの、多くの場合、汚染の影響は、制御ユニットでの対応する補償アルゴリズムによって低減または除外され得る。
当然のことながら、インクリメンタルセンサユニットの送信要素41、41’’により発せられた信号の受信要素42による受信には、例えば誘導性または容量性の測定原理等、他の測定原理も使用され得る。
例えば、送信要素41、41’’および受信要素42はそれぞれ、金属製の遮蔽要素70、70’’と併せて誘導コイルにより構成されることによって、送信要素41、41’’の受信要素42との誘導結合に影響を及ぼすとともに、信号パルスを生成することができる。