本発明の駆動機構は、出力軸の一端に振動子が固定された移動ユニットと、前記移動ユニットを前記出力軸で支持するガイド部材と、前記ガイド部材に固定されて前記移動ユニットを前記移動方向に対して自由度を有するように前記ガイド部材とともに前記出力軸を拘束する拘束部材を有しており、前記振動子を振動させることにより前記移動ユニットが前記出力軸の両端の中心を結ぶ方向を移動方向として前記ガイド部材と前記拘束部材に対して移動する駆動機構であって、前記ガイド部材は、上部を前記出力軸をガイドするガイド部とする一方、下部を前記駆動機構を外部機器に固定するためのインターフェース部としており、前記出力軸が、前記移動方向に沿う前後方向を長手方向とする直方体形状で構成されており、前記ガイド部材の前記ガイド部及び前記拘束部材それぞれが、断面L字状で構成されており、前記ガイド部が前記出力軸の外周面のうちの下面と左右一方の面の2面と接触する二つの摩擦平面を有する一方で、前記拘束部材が前記出力軸の外周面のうちの上面と左右他方の面の2面と接触する二つの摩擦平面を有するものである。
すなわち、一端に圧電素子を取り付けた直方体形状からなる剛性、熱伝導度、潤滑性の高い出力軸を、ガイド部材に対して、拘束部材で自由度を1自由度に限定するように押さえ込むことにより汎用的な機構要素として使え小型であり、少量生産においても低コストで製造可能で、発生力も大きく、直進性にもすぐれた直進性能の高いリニアアクチュエータ、電動シリンダーや力発生機を実現する。
ガイド部材にねじ止めされる拘束部材によって出力軸が、ガイド部材に強固に押さえつけられ、出力軸とガイド部材、拘束部材が出力軸の力を出す方向に長い四つの平面接触領域で密着するようにし、出力軸の直進性と姿勢の安定性が単純な構成で確保でき、拘束部材による押さえ力を大きくすることで発生力を大きくすることができる。
出力軸の出力端に圧電素子の質量に見合う質量を有する出力部材をとりつけ、出力端の損傷や磨耗を防止したり、先端ツールが取り付けやすくしたりし、本考案の駆動機構の発生力を高め、さらに出力部材に先端ツールを取り付けたときに、本駆動機構の振動特性に対する影響を少なくすることができ、先端ツールを取り付けても、本発明の駆動機構を安定的に動作させることができる。
出力軸には炭素繊維強化樹脂(CFRP)を使用し、ガイド部材と拘束部材には銅合金やステンレスを使用することで、潤滑剤なしで使用する場合も耐酸化特性の優れたパーフルオロポリエーテルやクロロトリフルオロエチレンなどのフッ素系の潤滑剤を使用する場合も出力軸とガイド部材、拘束部材の間の摩擦を炭素繊維の自己潤滑性や潤滑剤の特性を利用して低く抑え、さらに平面接触領域を大きくすることで、出力軸がガイド部材、拘束部材に対して外見上動いていない状態でも、力を作用させる対象物が駆動機構の発生力よりも強い力で動く場合も連続駆動できるようにし、対象物に押し付け力や引張り力を加え続けることのできる力発生機を実現する。
図1は本駆動機構の側面図、図2は平面図、図3は底面図、図4は正面図、図5は背面図である。図1から5において1は出力軸、2はガイド部材、3、4は側板、5はカバー、6はカバー取り付けねじ、7は底板、8は側板取り付けねじ、9は外部の装置の一部、10は外部の装置の取り付けねじ、11はリード線である。
図6、図7は本駆動機構の側面図と前面図において、一部の部品を断面にした図である。断面にした部品にはハッチングを施している。
図6において、出力軸1の一つの外面に圧電素子12が接着により取り付けられている。出力軸1は直方体の形状を持ち、駆動機構全体が長細いスリムな形状にできるようにしているため、種々の機械装置に組み込みがしやすいようにできている。圧電素子12は正負の電圧を印加されると、出力軸1の出力方向に伸び縮みするように構成されている。圧電素子のかわりに他の電歪素子や磁歪素子などの振動子を使用してもよい。
出力軸の圧電素子が取り付けられた面の中心と対向する面の中心を結んだ方向が出力軸の力を出す方向となる。Lはガイド部材2、拘束部材14が出力軸の力を出す方向に出力軸と接する部分の長さである。ガイド部材2には側板3と底板7が側板取り付けねじ8、底板取り付けねじ16によりねじ止めされている。底板には側板取り付けねじ8により側板4がねじ止めされている。側板3には出力軸よりも大きめの穴があけられ、出力軸が側板3に接触することなく移動できるようになっている。
図7において、出力軸1はガイド部材2とガイド部材2に拘束部材取り付けねじ13でねじ止めされた拘束部材14に挟み込まれた状態で保持されている。取り付けねじ13により、拘束部材14にある傾斜面14aはガイド部材2の傾斜面2aに押し付けられ、傾斜面2aの高さの低い側に移動していこうとする。この作用により拘束部材14とガイド部材2で囲まれた空間は狭められるため、拘束部材14は出力軸1をガイド部材2に押し付ける働きをする。
出力軸1の六つの外面のうち、圧電素子12が取り付けられる面に隣接する四つの面は隣り合う二つの面がガイド部材2に、残りの隣り合う二つの面が拘束部材14に押し付けられる。
拘束部材14は2つの摩擦平面14b、14cを持ち、出力軸1の隣り合う二つの平面との間で摩擦を発生する働きと、出力軸1の残りの隣り合う二つの平面をガイド部材2の2つの摩擦平面2b、2cに押し付けて摩擦を発生する働きと、出力軸1の出力方向以外の自由度を拘束する働きをする。拘束部材取り付けねじ13の締め付けトルクを調節することで、所望の力で出力軸をガイド部材に押しつけることができる。W1、W2はガイド部材2と拘束部材14が出力軸1と接する部分の出力軸が力を出す方向に直角方向の幅である。
拘束部材14の摩擦平面14b、14cを出力軸1に沿わせやすくするために溝部14dを設けてもよい。拘束部材取り付けねじ13のねじ頭と拘束部材14の間にスプリングワッシャーや波ワッシャーを挟みこんで、締め付けトルクの調整をしやすくしてもよい。
ガイド部材2、拘束部材14は出力軸1の出力方向にある長さをもって出力軸1と接している。この長さが小さすぎると、出力軸1の出力方向以外の動きである出力軸1のピッチやヨーを防ぐ効果が出にくくなる。
出力軸1の出す力を有効に作用させるために、対象物は出力軸1に対して正対した姿勢に近い姿勢、形状を持たせるのが望ましいが、対象物と出力軸1の接する部分の法線の方向が出力軸1の力fを出す方向と45°の角度までずれがあり得ると考えられる。45°以上の角度のずれが生じる場合は、対象物に対して出力軸1の向きを変更するのが合理的である。
図8は出力軸1が最も突き出た状態での側面図の一部部品を断面にした図である。Lは出力軸1が力を出す方向に、出力軸1とガイド部材2、拘束部材14が接触する長さになっている。Sは出力軸1がガイド部材2、拘束部材14から最も突き出す長さである。出力軸1がガイド部材2、拘束部材14と接触する出力軸の出力方向の長さLは、出力軸1がガイド部材2、拘束部材14から突き出す長さSに応じて設定するのがよい。
図8に示すように対象物15と出力軸1の接する部分の法線の方向が出力軸1の力fを出す方向と45°のずれがある場合、出力軸1には接触部の法線の方向に−f/√2の反力が作用する。この反力の出力軸1が力を出す方向に直角の分力は−f/2となり、出力軸1にはガイド部材2の外側の端部E1を回転中心として−Sf/2の回転モーメントが働く。
−Sf/2の回転モーメントにより出力軸1はガイド部材2の外側の端部E1を支点として拘束部材14の内側の端部E2を持ち上げようとする。持ち上げようとする力は−Sf/2Lとなる。後述するように、拘束部材14は出力軸1の出す力の7倍以上の力で出力軸1を押さえつけているので、7f以上の力で出力軸1を押さえつけていることになる。
この押さえつける力は拘束部材14が出力軸1と接している面全体に分散して働いているが、拘束部材14の内側の端部が持ち上げられようとすると、この端部に集中する。したがって7f−Sf/2L>0となるようにLとSの関係がなっていれば、出力軸1が回転することはない。この不等式から14L>Sであれば出力軸1が、対象物15からの反力により回転することはない。SがLの14倍であると力が釣り合うことになるため回転を防止するための約30%の力の余裕分を確保して、LをSの10分の1以上の長さに設定するのがよい。
出力軸1の回転のうちのロールは、長方形または正方形の断面を持つ出力軸1の四つの外面を、ガイド部材2と拘束部材14で4方向から締め付けられていることで防止されている。ロールの防止については、図7中の出力軸1の力を出す方向と直角の方向の幅W1、W2が重要になるが、出力軸1の出す力の方向から考えて、実際の作業において出力軸1をロールさせるモーメントは大きくは働きにくいため、ピッチやヨーの防止のためのLのような大きな長さにする必要はない。本駆動機構の用途、サイズ、デザイン等に合わせて許容される範囲で大きな幅を設定する。
図1、図2、図7において、ガイド部材2と側板4にはカバー取り付けねじ6により薄板を2箇所で曲げて作ったカバー5がねじ止めされている。ガイド部材2、側板3、底板7、側板4、カバー5が相互にねじ止めされ、箱型構造を形成するため、最小限の肉厚の部品によって、構造全体を堅牢にすることができる。このことにより本駆動機構を堅牢にしながら、軽量化、低コスト化を実現することができる。
図6、図7においてガイド部材2は上部が出力軸1をガイドする機能をもつガイド部となり、下部が外部機器とのインターフェース部になる。ガイド部材2のガイド部と拘束部材14は出力軸1の外周の四面のまわりにほぼ均等の厚みのスペースに配置されているため、図4、図2に示すように本駆動機構を正面や上面からみたときに出力軸1は本駆動機構のインターフェース部を除いた部分の中央部から出入りするように配置され、使いやすく、外観デザイン的にも良好な形態にすることができる。
図6において圧電素子12からは駆動用の2本のリード線11が引き出されていて、本駆動機構にらせん状に巻かれた状態で収納され、側板4の中央部にあけられた穴17から外部に出されている。リード線は側板4とは穴17で接着されている。本駆動機構の内部で圧電素子12の位置が変わるとリード線11のらせん状に巻かれた部分が伸び縮みし、圧電素子12がどの位置にあっても、圧電素子12に駆動信号が印加される。図8に出力軸1の位置が変化したときのリード線11のらせん部分の状態を示す。側板から引き出されたリード線11は駆動回路に接続され、圧電素子12に駆動信号が印加されることにより、出力軸1がガイド部材2、拘束部材14に対して動こうとする力が発生する。
図7において、出力軸1は拘束部材14に押さえつけられ、ガイド部材2の2つの摩擦平面2b、2cに沿って移動するように拘束されるため、出力軸1の動きの直進性を高くすることができる。上記の押し付け力は、拘束部材取り付けねじ13の締め付けの程度により調節することができ、通電時の駆動力、非通電時の出力軸1の保持力や、出力軸1が外力を受けたときに回転するのを防止する能力を高くしたいときは、拘束部材取り付けねじ13の締め付けを強くすることで達成される。出力軸1の移動速度を速くしたいときは拘束部材取り付けねじ13の締め付けを弱くすることで達成される。
仕様の一例として本駆動機構で出力軸が出す力を10Nにしようとすると、出力軸1の四つの面の各面で2.5Nの力を発生させることになる。後述する本駆動機構に使用する材料と仕上げ条件では、出力軸1とガイド部材2、拘束部材14の間の動摩擦係数は潤滑剤の有無により変化はあるが、0.1から0.15になる。2.5Nの力を発生させるためには、出力軸1がガイド部材2、押さえ板14、15と接触する四つの面の間で2.5Nを動摩擦係数0.15で割った16.7N以上の押し付け力が作用する必要がある。この押しつけ力を出すだけの強い力で拘束部材14はねじ止めされるため、出力軸1の回転など出力方向への移動以外の自由度はなくなっている。
ガイド部材2は本駆動機構を外部の装置に固定するためのインターフェース機能も持つ。図6、7においてガイド部材2にはねじ穴18が設けられ、ねじ10によって外部の装置9にガイド部材2をねじ止めすることにより、本駆動機構全体を外部の装置9に固定する。ガイド部材2は本駆動機構の出力軸1の移動の基準となる摩擦平面2b、2cを有し、出力軸1は常に摩擦平面2b、2cに押し付けられた状態で作動するためガイド部材2を保持することで、精度よく出力軸1の位置決めができ、外部装置は出力軸1に発生す力を正確に対象物に作用させることができる。
出力軸1とガイド部材2、拘束部材14の接触部で出力軸1を駆動する力が発生するので、力の発生場所であるガイド部材2を本駆動機構全体の保持に使うことで、本駆動機構を動作させたときに外部の装置に加わる回転モーメントを小さくし、外部の装置の変形など外部の装置への影響を少なくすることができる。
またガイド部材2は、本駆動機構の構成部品の中で最も肉厚で、剛性が高く堅牢な部品であるので本駆動機構全体の保持に使用することで、本駆動機構の動作時に、外力による構成部品のひずみの影響からくる性能の低下を防ぐことができる。
図6において出力軸1と圧電素子12の接合部の近傍で、出力軸1に出力軸1を囲むように板状のストッパー19が、底板7、カバー5に対して微小な隙間をもって接着されている。ストッパー19は出力軸1が最も外側に出たときにガイド部材2に当たって出力軸1の動きを止める働きをする。底板には棒状の規制部材20が接着され、出力軸1が側板4に当たるのを防止する働きをする。図9にストッパー18が規制部材20に当たった状態を示す。板状の部品19は出力軸1と圧電素子12の両方と接着されるようにして、出力軸1と圧電素子12の接着を補強するようにしてもよい。
ストッパー19は出力軸1に強い衝撃などの外力がかかったときに、ガイド部材2近傍を回転中心として出力軸1が回転しようとする動きを、底板7やカバー5に当たることにより規制し、圧電素子12が底板7やカバー5に当たって壊れるのを防止する。
出力軸1には炭素繊維強化樹脂(CFRP)を使用し、ガイド部材2と拘束部材14には銅合金やステンレスを使用することで、潤滑剤なしでの使用においても出力軸1とガイド部材2、拘束部材14の間の摩擦を炭素繊維の自己潤滑性を利用して低く抑え、さらに平面接触により圧力を分散することで、出力軸1がガイド部材2、拘束部材14に対して外見上動いていない状態でも連続駆動することで、対象物に押し付け力や引張り力を加え続けることのできる力発生機を実現できる。
出力軸1に使用する炭素繊維強化樹脂は、出力軸1が力を出す方向に長繊維の炭素繊維が平行に配向され、ガイド部材2と拘束部材14との相対的な運動の方向に長く接触領域が確保されるため、滑らかに相対運動をさせる効果を高めている。
図10は出力位置が中間位置にある本駆動機構のカバー5を外した状態の側面図である。ガイド部材2の側面と側板4の側面にはカバー5をねじ止めするためのねじ穴18が設けられている。
本駆動機構では、出力軸1の先端にニードルやグリッパー、インジェクターなどの先端ツールを取り付けて作業する際に、先端ツールを正確に操作できるようにする必要があるため、出力軸1がガイド部材2に対して回転しないように構成する。
本駆動機構ではガイド部材2に対して出力軸1が回転しないようにするためと、本駆動機構の特徴の一つである、対象物15が停止した状態でも対象物15固有の力で移動する場合でも、押し付け力や引張り力を対象物15に作用させ続けることのできる力発生器としての機能を実現するために、出力軸1が外見上動いていない状態あるいは出力軸1が対象物固有の力で強制的に移動させられる状態で連続駆動させても、接触部の局所的な摩耗や表面状態が変化することにより性能が劣化するのを防げるよう、出力軸1とガイド部材2、拘束部材14は精密に仕上げられた平面と平面での摺動をするようする。
本考案の駆動機構は振動子12のサブミクロンの振幅の振動を用いた駆動機構であるため、出力軸1とガイド部材2、拘束部材14の摺動面は面間のサブミクロンのすべり相対運動を妨げず、面間の圧力を分散させて局所的な摩耗や表面状態の変化を防止できるレベルの滑らかな面であることが必要である。このため出力軸1とガイド部材2、拘束部材14の摺動面は研削、ラッピングなどの平面度と面粗さのよい平面が得られる加工法で加工する必要がある。
加工精度は高ければ高いほど面間圧力の分散に有利であるが、本駆動機構は汎用的な機械要素として使用するため現実的な製造コストを考慮して、平面度はガイド部材2、拘束部材14の一つ一つの摺動面全域にわたって1マイクロメートル以下、面粗さはRa0.4以下の精度とする。出力軸1はガイド部材2、拘束部材14の摺動面に対面する部分ごとに平面度が1マイクロメートル以下、面粗さはRa0.4以下の精度とする。出力軸1の摺動面全体については、局所的な段差やねじれがないように平滑な仕上げをする。
出力部材1とガイド部材2、拘束部材14は、必要に応じてすり合わせを行い、出力軸1の摺動面とガイド部材2、拘束部材14の摺動面の密着度を上げるようにしてもよい。本動機構では、出力軸1が微小振動すること、出力軸1とガイド部材2、拘束部材14の材料が異種材料であること、出力軸1の材料が摺動性のよい材料であることから、摺動面の平面度、面粗さを上げ密着度を上げることで摺動面どうしが吸着するような不具合が起きることはない。
面粗さ測定の基準長は、ガイド部材2、拘束部材14については、一つの摺動面を横断するほぼ全長とする。出力軸1についてはガイド部材2、拘束部材14の摺動面に対面する部分部分を横断するほぼ全長とする。
ガイド部材2、拘束部材14と平面と平面での摺動をさせるために、出力軸1は三角柱以上の多角柱の形状をとる必要がある。
三角柱は面の数が少なく、形状の粗取りでは加工コストを下げられる利点があるが、面と面のなす角が直角でない箇所ができるため、すべての面を加工するときに、ワークの固定角度を精度よく変える作業に手間と時間がかかり、コスト増の要因となる。5軸フライスなどの多軸加工機を使う方法も考えられるが、設備費や加工チャージが大きくなり、少量生産ではコスト増の要因となる。さらに面を研削やラッピングで仕上げる際も、ワークの保持の難しさや2面同時仕上げができないことから、仕上げ加工のコストも大きくなる。また出来上がった部品の面と面のなす角度の測定も直方体と比べて困難になり、コスト増の要因となる。
五角柱以上の多角柱は、三角柱の場合と同じように製作、角度検査が直方体と比べて困難である。摩擦保持をするガイド部材2、拘束部材14の構成が複雑になり製作も困難になる。また五角柱以上であると三角柱や四角柱とくらべて、断面形状が円に近付いていくため出力軸1の回転、特にロールを防止する作用が働きにくくなる欠点がでてくる。
したがって、出力軸1として使用する多角柱は四角柱がよく、さらに製造コストを下げるために直方体の形状にするのがよい。
直方体でない一般的な四角柱の場合は底面の形状が長方形や正方形でないため、面と面のなす角が直角でない箇所がでてくるため、製作、角度検査が直方体と比べて困難でコスト増の要因となる。またガイド部材2、拘束部材14の製作コストが上がり、機構の構成が複雑になる。
直方体の出力軸1においては、平面摺動に使われない残りの2面も側面と直角になるため、製作が容易になり、角度検査も容易になる効果がある。
これらの面の一つに振動子12を固定するが、振動子12の振動は面の法線方向に加えられため、振動は、出力軸1が自由度を持つ軸の方向に、効率的に加えられ、本駆動機構の効率を上げることができる。振動子12を固定するのと反対側の面はそのままで出力端としてしようするか、出力部材を固定して使用する。出力端として使用する場合は出力軸1の発生する力の方向に直角の面が出力端となるが、これは物体を押したりするのに適した形状である。
後述するように出力部材を出力軸1の一端に固定して使用する場合も、この面を出力部材の受け面に当てて接着するなど、固定を容易に確実に行え、出力部材の受け面の法線方向が、出力軸1の出す力の方向になるため、出力軸1の出す力が効率的に出力部材に伝達される効果がある。
上記の事情から、低コストで少量生産も可能で、安定した動作が可能なリニアアクチュエータ、力発生機を実現するために、出力軸1の形状を直方体にすることが有効である。
出力軸1の出力端となる面は、対象物15の形状や必要な圧力の大きさあるいは取り付ける出力部材の形状などに応じて完全な平面ではなく凸部や凹部を持つなどの変形を加えてもよい。出力部材を固定する場合も出力部材の受け面が加工都合上平面にできない場合などは、受け面の加工形状などに応じて変形を加えてもよい。
また直方体のエッジ部は面取りをして、エッジ部の微小な損傷の発生を防いだり、出力軸1と組み合わせるガイド部材2や拘束部材14のコーナー部のR形状を許容して加工を容易にしたりするようにしてもよい。
出力軸1は拘束部材14とガイド部材2による押し付け力によって変形しないためと、発生した力を対象物15に効率的に作用させるために高い剛性を持つ必要がある。また圧電素子12による加振により出力軸1が効率的に振動できるためと、駆動機構の軽量化のために軽量であることが必要である。さらに拘束部材14とガイド部材2との接触においてサブミクロンの振幅の相対的な振動を可能にするために、低摩擦の材料であることが必要である。
これらの要求を満たす材料として、炭素繊維強化樹脂が適している。炭素繊維は軽量で弾性係数が高く、摩擦係数も低いため、前記の要求を満たすことができる。炭素繊維は長繊維のものを、出力軸1の出力方向に配向させた出力軸1を用いる。出力軸1が力を出す方向の縦弾性係数が大きくでき、圧電素子12からの振動が出力軸1に効率よく伝わる。また、炭素繊維が、出力軸1とガイド部材2、拘束部材14の相対移動方向に配向されるので、繊維の方向に長い距離にわたってガイド部材2、拘束部材14が接することになり、炭素繊維の潤滑性のよさを有効に活用できる。拘束部材14とガイド部材2の押し付けに対しては、炭素繊維の配向方向と直角方向の圧力になるが、炭素繊維強化樹脂中の炭素繊維の体積比率を60%以上にすることにより、必要な圧縮剛性を得ることができる。
出力軸1がガイド部材2、拘束部材14に対して外見上動いていない状態で連続駆動する場合には、出力軸1とガイド部材2、拘束部材14は同じ場所でサブミクロンの振幅の微小な相対運動を5KHz以上の高周波で繰り返すことになるため、継続的に局所的に発生する摩擦熱の放散も重要になる。
出力軸1の材料として配向性ピッチ系炭素繊維を使用した炭素繊維強化樹脂を使用すると摩擦熱の放散に有利である。配向性ピッチ系炭素繊維は熱伝導率が80から800W/m・Kであり、10W/m・K程度のPAN系炭素繊維よりも高く、摩擦熱を発生場所から出力軸1や出力部材を介して放散し、出力軸1とガイド部材2、押さえ板の接触部が摩擦熱により高温になり、表面状態の劣化から性能劣化につながることを防止する効果が高い。
また配向性ピッチ系炭素繊維は引っ張り弾性率が640から935GPa程度あり、PAN系炭素繊維の230から650GPa程度よりも大きく出力軸の剛性を高め、本駆動機構の性能を上げるのにも有効である。
前述のように、炭素繊維は長繊維のものを用い、出力軸1の出力方向に配向させた炭素繊維強化樹脂を出力軸1として使用する。こうすることにより、摩擦部からの熱と圧電素子12からの熱を炭素繊維の配向している方向に効率的に拡散させ、連続駆動する場合も熱による性能の低下がないようにすることができる。
後述するように、出力軸1先端に出力部材を取り付けて使用する場合は、出力軸1を伝わってきた熱を出力部材から放散させる効果ももたせることができる。
ピッチ系炭素繊維の一種である等方性ピッチ系炭素繊維は引っ張り弾性率が40GPaまでしかなく、短繊維しかないため出力軸1の剛性を高くすることができないので不適当である。
またガイド部材2を保持部材に使っていることにより、保持部から放散が促進され、性能の劣化を防止する効果が実現されている。
出力軸1のガイド部材2への押し付け力を大きくして出力軸1の出す力を大きくする場合は、潤滑剤を使用することもできる。潤滑剤を使用する場合は強い力で押し付けられた二つの平面に潤滑剤が介在した状態からの起動が必用になる。このような状態からの起動では、潤滑剤の酸化による潤滑剤粘度が増加すると起動がしにくくなる恐れがある。起動を容易にするために耐酸化特性がよく、酸化による粘度増加の少ないパーフルオロポリエーテルやクロロトリフルオロエチレンなどのフッ素系の潤滑油を使用する。潤滑油が酸化して潤滑特性が低下し、振動子の微小振動で励起される出力軸1とガイド部材2、押さえ板間の微小な相対運動が阻害され、起動に障害が起きるのを防ぐことができる。潤滑油は綿棒で出力軸の表面に塗布するなどの方法で使用できる。
増ちょう剤を潤滑油に付加すると増ちょう剤が平面間に強い圧力ではさみこまれ出力軸1とガイド部材2、押さえ板間の微小な相対運動を阻害することになるため、増ちょう剤は使用しない。
出力軸1の出力端は、対象物15と接触することにより損傷を受けたり、磨耗したりする可能性があり、使用上の問題となる場合がある。また出力端に用途に応じたロッドや、インジェクタ、グリッパーのような先端ツールを取り付ける必要がある場合もある。
出力端の損傷や磨耗を防止したり、アダプターや先端ツールを取り付けたりするために、出力端に出力部材を取り付けた場合について説明する。
図11は出力部材21を取り付けた場合の本駆動機構の側面図、図12は平面図、図13は底面図、図14は正面図である。図11から図14において、出力部材21が出力軸1の先端部に取り付けられている。図13において22は出力部材取り付けねじである。
出力部材21は対象物15との接触で損傷したり磨耗したりしにくく、アダプターや先端ツールの取り付けに適した堅牢性の高い材料を用いる。具体的には金属、セラミック、繊維強化プラスチックなどが適している。出力部材21にはアダプターや先端ツール取り付け用のねじ穴や植え込みボルトを設けてもよい。図14において出力部材21の先端部に、ツール取り付けねじ穴23が設けられている。
図15は出力部材21を取り付けた本駆動機構の側面図において、一部の部品を断面にした図である。断面にした部品にはハッチングを施している。出力部材取り付けねじ22を締め付けることによって出力部材21が出力軸1に取り付けられている。出力部材21は出力軸1と接触する部分で接着することで、結合強度を高くするようにしてもよい。
出力部材21が取り付けることにより、出力端の損傷や磨耗を防止したり、先端ツールが取り付けやすくなることに加えて、本考案の駆動機構の性能を向上させる効果がある。その効果のひとつは、出力部材21を取り付けることにより、本考案の駆動機構の発生力を高めることができることである。
もうひとつの効果は、先端ツールを取り付けたときに、先端ツールの質量が出力軸1、圧電素子12、出力部材21からなる振動ユニットに追加されることによる振動ユニットの振動特性に対する影響を少なくすることができ、先端ツールを取り付けても、本発明の駆動機構を安定的に動作させることができる効果である。
図16は出力部材21の質量を変えたときに、駆動機構の発生力がどう変化するかを測定したグラフである。測定に使用した駆動機構は出力軸1の長さが30mm、ガイド部材2と拘束部材14の出力軸の力を出す方向の長さが10mm、圧電素子12の質量が1.3gのものを使用している。グラフの横軸は出力軸1の位置を示す。出力軸1が最も引き込まれた状態を1mm、最も突き出た状態を19mmとしている。縦軸は出力軸1が出す押し出し力をフォースゲージで測定した値である。グラフ中に各条件での測定値と近似曲線を記入している。
質量が0のときは出力部材21をつけない場合であり、発生力も小さく、周波数により特性が変化しやすくなっている。出力部材21の質量が振動子12の質量の二倍程度の2.5gでは、発生力が小さく力の方向が反対方向になる。出力部材21の質量を大きくしていくと発生力が大きくなり、5g以上になると発生力が大きくなり、出力軸1の位置による発生力の変動も小さくなる。
このように振動子12の質量に見合う質量の出力部材21を取り付けることにより、駆動機構の発生力を高くし、安定的に動作させることができる。測定結果から出力部材21の質量は振動子12の四倍以上がよい。この条件では先端ツールを取り付けても本駆動装置を安定的に動作させることができる。
図17、図18は出力部材21に先端ツールとしてグリッパーを取り付けた場合の側面図と正面図である。グリッパーユニット24はツール取り付けねじ25により出力部材21に取り付けられている。グリッパーユニット24からはグリップ用のアーム26と駆動信号を供給するリード線27が2本ずつ出ていて、駆動信号を入力することによりアーム26を開閉して、対象物をつかんだり、離したりすることができる。対象物をつかんでから本駆動機構を動作させることで、対象物を移動させ、希望の位置で対象物を離すという作業が可能になる。グリッパーユニット24は電磁コイルによるもの、モーターによるものなど種々のものが利用できる。
図19は本駆動機構を部品の押し込みや圧入作業に使用する場合の駆動方法を示す。作業は棒状部品28を穴29に押し込無作業である。
出力部材には押し込みツール30がツール取り付けねじ23によりねじ止めされている。本駆動機構を動作させる前に、穴29と棒状部品28と押し込みツール30の位置を合わせる(Aの状態)。棒状部品28は不図示の保持具で穴の上方に位置決めされ、保持されている。本駆動機構は外部の装置により棒状部品28の上方に位置決めされ、保持されている。
この後、本駆動機構は押す力(f)と引く力(−f)を交互に出力し、対象の棒状部品28を間欠的な力で押し込んでいく。引く力を出す時間は押す力を出す時間はよりも短く設定され、引く力を出す間に押し込みツール30がわずかに後退し、押し込みツール30との間に隙間ができ、次に押す力を出すと押し込みツール30が棒状部品28に衝突して押し込んでいく動作が連続し、押し込みや圧入作業をよりなめらかに行うことができる。
本駆動機構を動作させると出力部材21が所定の力で押し込みツール30を動かしていき、棒状部品28は押し込みツールに押されて穴29の入り口に押し付けられる(Bの状態)。本駆動機構を引き続き動作させると棒状部品28は、穴29とのはめあいの抵抗力に抗して、穴29の中ごろまで押し込まれる(Cの状態)。本駆動機構の動作を継続すると棒状部品28は穴29の底に到達する(Dの状態)。押し込み完了後も本駆動機構の動作は継続され、押し込みの完了を確実にして作業が完了する(Eの状態)。作業が完了すると本駆動機構の動作を終了する。図19の下側のグラフは、本駆動機構の出力軸1、出力部材21、押し込みツール30が出力する力を示す。
本駆動機構では出力軸1がガイド部材2、拘束部材14に対して外見上動いていない状態でも連続駆動することができる、エンコーダーやロードセルで対象物の位置や負荷を測定して作業の状態を監視しながら、本駆動装置の出力を制御する必要はなく、使いやすい装置システムが低コストで実現できる。本駆動機構を応用できる作業は押し込みや圧入作業に限られず、所定の引っ張り力が必要な作業、所定の圧力を保持する作業など広い範囲に及ぶ。
図20はAの状態からCの状態まではfの力で押し続け、その後はEの状態まで押す力(f)と引く力(−f)を交互に出力し、対象の棒状部品28を間欠的な力で押し込んでいく例である。このようにすると、棒状部品28と穴29の位置合わせ精度が重要で作業の負荷が小さい間は一定の力で押して、棒状部品28の位置合わせがずれないようにし、棒状部品28が穴29に入り込んでからは間欠的に衝撃力を加えることで押し込みを確実にすることができる。
図21は本駆動装置を曲面へのシート貼り付けに利用する例である。
出力部材21には押さえローラーツール31がツール取り付けねじ23によりねじ止めされている。押さえローラーツールは先端に回転するローラーが取り付けられ、ローラーが回転しながら対象物を押さえていくことができる。シート32は曲面を持つ台座33の表面に貼り付けられる。台座の表面には接着剤が塗布され、シート32が貼り付け位置に仮置きされている。
台座は移動台34に乗せられ本駆動装置の下方に移動させて停止する(Aの状態)。本駆動装置を動作させ、出力軸に押しの力を発生させると押さえローラーツール31はシート32の端の部分を台座に押さえつける(Bの状態)。移動台34の移動を再開すると、シート32と台座は押さえローラーに押さえられながら移動し、シート32が台座に強固に接着されるよう、シート32の全長にわたって台座に押し付けられる(CからEの状態)。シート全長の押さえつけが完了すると出力軸に−fの力を発生させ、押さえローラーはシート32から離れる(Fの状態)。
この作業では、出力軸1は上述したような押し引き交互動作や、一定の力での押しなどの設定された力出力モードで押さえローラーツール31を対象物に押し付けるが、対象物の凹凸に追従して出力軸1が本駆動装置の側板3から出たり入ったりして位置を変化させる。この動作により対象物に凹凸があっても、対象物に一定のモードでの力を加え続けることができる。この場合も本駆動機構ではエンコーダーやロードセルで対象物の位置や負荷を測定して作業の状態を監視しながら、本駆動装置の出力を制御する必要はなく、使いやすい装置システムが低コストで実現できる。
出力軸1に出力部材21を取り付けた場合や、出力部材21に先端ツールを取り付けた場合は、出力軸1が最も突き出した状態で、ガイド部材2、拘束部材14の外側エッジから出力部材21や先端ツールの先端までの距離をSとして、ガイド部材2、拘束部材14の出力軸1の力を出す方向の長さLがSの10分の1以上の長さに設定するのがよい。
図22は本駆動機構のガイド部材2の別の形態を示す。この形態では、拘束部材がガイド部材2に一体化されている。ガイド部材2の内径寸法は出力軸1の外形寸法よりもわずかに小さめに作成し、出力軸1を挿入することで、ガイド部材2の押さえ面2d、2eにより出力軸1の移動の基準となる摩擦平面2b、2cに出力軸1が押し付けられガイド部材2と出力軸1間で摩擦が発生し、出力軸1の出力方向以外の自由度がなくなるように拘束される。
ガイド部材2の一部に溝部2fを設け、ガイド部材2の拘束部材に相当する部分を出力軸1に沿いやすくしてもよい。この形態では、出力軸1を挟み込む力を所定の値にするため高精度の加工が必要で、出力軸1との当たり面の加工も難度が高くなるが、部品点数の削減、組み立て工数の削減が可能になる。
図23に示すように拘束部材を拘束部材14と押さえ板35、36に分割することも可能である。出力軸1は、ガイド部材2と、ガイド部材2に拘束部材取り付けねじ13でねじ止めされた拘束部材14、押さえ板35、36に挟み込まれた状態で保持されている。
拘束部材14は先端が曲がっていて、出力軸1との間に挿入された押さえ板35、36の摩擦平面35a、36aを出力軸1に押し付ける。拘束部材14は、押さえ板35、36と出力軸1の2つの平面との間で摩擦を発生する働きと、出力軸1の残りの2つの平面をガイド部材2の2つの摩擦平面2b、2cに押し付けて摩擦を発生する働きと、出力軸1の出力方向以外の自由度を拘束する働きをする。
拘束部材14と押さえ板35、36の接触面は研削やラッピングなど特段の平滑化は施さないため、拘束部材14と押さえ板35、36の間の摩擦力は、押さえ板35、36と出力軸1の間の摩擦力より2倍以上大きくなり、本駆動機構を動作させたときに、押さえ板35、36と拘束部材14は相対的に動くことはない。これにより、押さえ板35、36と出力軸1との間に発生する力は、出力軸1がガイド部材2に対して動こうとする力に加えて、出力軸1から取り出せる力として有効に利用できる。
仕様の一例として本駆動機構で出力軸の出力を10Nにしようとすると、出力軸1の四つの面の各面で2.5Nの力を発生させることになる。出力軸1とガイド部材2、押さえ板35、36の間の動摩擦係数は潤滑剤の有無により変化はあるが、0.1から0.15程度になる。2.5Nの力を発生させるためには、出力軸1がガイド部材2、押さえ板35、36と接触する四つの面で2.5Nを動摩擦係数0.15で割った17N程度以上の押し付け力が作用する必要がある。
拘束部材14は押さえ板を17N以上の力で押さえつけることになり、押さえ板35、36と拘束部材端面の間には強い摩擦が発生する。鉄系や銅系合金の材料でこのような接触条件の場合には、摩擦係数は0.5以上になると考えられ、押さえ板35、36と拘束部材14端面の間の摩擦力は8N以上になる。この摩擦力は押さえ板35、36と出力軸1の間で発生する2.5Nの力よりもはるかに大きく、押さえ板35、36と拘束部材14は相対的に動くことはない。
この構成では部品点数が増え、組み立てコストなどコスト増の要因となるが、部品の加工や仕上げが容易になる。
図7の例と同じように、拘束部材14とガイド部材2に傾斜面を設け、取り付けねじ13により拘束部材14の傾斜面がガイド部材2の傾斜面に押し付けられ、傾斜面の高さの低い側に移動していこうとするようにしてもよい。
図24は、ガイド部材2を二体に分けた例である。ガイド部材をガイド部材2とガイド部材37に分割して作成し、ガイド部材の生産コストを下げることができる。分割したガイド部材はガイド部材結合ねじ38で結合され一体の部品として機能する。
図25は本発明において圧電素子12を駆動する駆動回路の一例の回路図である。圧電素子12は回路図中に記載している。回路は3つのブロックに分かれていて、それぞれのブロックを破線の枠で囲んでいる。左上のブロックはパルスジェネレータ、右上のブロックはワンショットマルチバイブレータ、下部のブロックは圧電素子12の駆動部になっている。以下の回路の説明では圧電素子12を圧電素子P1と呼ぶ。
パルスジェネレータはアナログのコンパレータを利用したもので、抵抗R1、R2とコンデンサーC1の値に従って一定の周波数とデューティ比のパルスを連続的に出力する。
図25においてスイッチS1を閉にすると、パルスジェネレータが動作を開始し、圧電素子P1を駆動する波形の基本周波数を持つパルス波形を発生する。このパルス波形のデューティ比は0.5〜0.99程度が好ましく、圧電素子P1を急速充電または急速放電するのに十分な時間、波形がゼロレベルになるようにする。
ワンショットマルチバイブレータは、パルスジェネレータの出力がハイレベルからゼロレベルに変化すると、所定の時間幅のパルスを一つ発生する。パルスの時間幅は抵抗R3とコンデンサーC2の値によって決定される。このパルスの時間幅はパルスジェネレータから出される連続パルス波形のハイレベルの時間よりも小さく設定する。
圧電素子12の駆動部はPchのCMOS FETQ1、Q2とNchのCMOS FETQ3、Q4からなるブリッジ回路に、圧電素子P1を低速で充電または放電させるための抵抗R4と、本駆動機構の動作方向を切り替えるための方向切換スイッチS2を付加したものである。
図26は駆動回路中のA点からE点における、電圧波形の説明図である。
パルスジェネレータからの出力波形は図26中のA点の波形となり、図25の圧電素子12駆動回路の左側のPch FETQ1とNch FETQ3のゲートに入力される。ワンショットマルチバイブレータからはパルスジェネレータの出力がハイレベルからゼロレベルに変化するときに抵抗R3とコンデンサーC2の値によって決定される時間幅のパルスが出力される。ワンショットマルチバイブレータの出力は圧電素子12駆動回路の右側のPch FETQ2とNch FETQ4のゲートに入力される。
パルスジェネレータからの出力がハイレベルからゼロレベルに変化すると、Pch FETQ1がオンになり、Nch FETQ3がオフになる。このときにワンショットマルチバイブレータからの出力はゼロレベルからハイレベルに変化するためNch FETQ4がオンになり、Pch FETQ2がオフになる。圧電素子P1はPch FETQ1とNch FETQ4を通じて、電源電圧Vで急速に充電される。
パルスジェネレータからの出力は、圧電素子P1の急速充電が完了するのに十分な時間が経過すると、ゼロレベルからハイレベルに変化するようにデューティ比が設定されている。パルスジェネレータからのの出力がゼロレベルからハイレベルに変化すると、Pch FETQ1がオフになり、Nch FETQ3がオンになる。
急速充電されていた圧電素子P1の電荷は抵抗R4とNch FETQ3を通して放電を開始するが、抵抗R4が介在しているため緩やかに放電が行われる。ワンショットマルチバイブレータからのパルスは、パルスジェネレータ出力の1周期の半分程度のあいだハイレベルであり、この間に圧電素子12が放電するように抵抗R4の値は設定されている。
ワンショットマルチバイブレータの出力がハイレベルからゼロレベルに変化すると、Pch FETQ2がオンになり、Nch FETQ4がオフになる。これにより圧電素子P1はPch FETQ2、抵抗R4、Nch FETQ3を通して逆極性での充電が開始される。このときも抵抗R4が介在しているため緩やかに充電が行われる。ワンショットマルチバイブレータの出力はパルスジェネレータ出力の1周期の半分程度のあいだゼロレベルであり、この間に圧電素子12の逆極性での充電が完了する。
パルスジェネレータから出される連続パルスの1周期の時間が経過するとパルスジェネレータの出力はふたたびハイレベルからゼロレベルに変化し、再びPcn FETQ1がオン、Nch FETQ3がオフになる。このときにワンショットマルチバイブレータからの出力も再びゼロレベルからハイレベルに変化するためNch FETQ4がオンになり、Pch FETQ3がオフになる。以下、上記の回路動作が繰り返されることにより圧電素子12は時間的に非対称な電圧波形で駆動され、本発明の駆動機構が力発生機やリニアアクチュエータ、電動シリンダーとして動作する。
パルスジェネレータからの波形の1周期分だけ、本発明の駆動機構を動作させることも可能である。このときには、パルスジェネレータのブロックを修正してワンショットマルチバイブレータとして動作させればよい。
スイッチS2は、ブリッジ回路のなかで圧電素子P1の接続を逆にするスイッチで、このスイッチを切り替えることにより本発明の駆動機構の動作方向、力を出す方向を切り替えることができる。スイッチS2を設けるかわりに、電子的なスイッチ素子と抵抗の追加と駆動波形の調整で方向の切り替えをすることもできる。
図26においてAはパルスジェネレータからの出力であり、ブリッジ回路の左半分のPch FETQ1とNch FETQ3のゲートに入力される。Bはワンショットマルチバイブレータの出力で、ブリッジ回路の右側のPch FETQ2とNch FETQ4のゲートに入力される。Cは圧電素子P1の一方の電極の電圧で、Dは圧電素子12のもう一方の電極の電圧である。EはNch FETQ3のソース電圧である。
D-Cは圧電素子12の二つの電極間の電圧を計算したもので、圧電素子P1が+Vから-Vの電圧範囲で急速放電と緩やかな充電をされていることがわかる。
駆動回路により圧電素子P1が非対称な電圧波形で駆動されると、圧電素子P1は伸縮運動をする。この伸縮運動は伸びと縮みの速度が異なるため、出力軸1には非対称な加振が行われ、出力軸1がガイド部材2、拘束部材14に対して動こうとする力が発生し、対象物を移動させたり、対象物が駆動機構の発生する力では動かない場合や駆動機構の発生力に抗して出力軸1を動かす場合にも、対象物に力を加え続けたりすることができる。