JP2018207543A - 音量制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】周囲に悪影響を生じることなく、また、大規模なシステムを必要とすることなく、特定の聴取位置における再生音レベルを低くする。【解決手段】音量制御装置は、例えば車室などの音響空間に適用され、車室内の座席などに設定される聴取位置における再生音のレベルを制御する。具体的には、音量制御装置は、外部より入力された音声信号に対して位相差を与えて一対のスピーカに供給する。ここで、位相差は、聴取位置の前方のスピーカから再生される音声信号と聴取位置の後方のスピーカから再生される音声信号の、所定周波数より小さい周波数について算出される。また、その位相差は、聴取位置における再生音レベルが、一対のスピーカのうちの一方のスピーカのみで音声信号を再生したときの再生音レベルよりも小さくなるように算出される。【選択図】図8

Description

本発明は、車室などの音響空間において聴取者が聴く音のレベルを調整する技術に関する。
車室などの音響空間において、再生音の音圧レベルを調整する手法が提案されている。例えば、特許文献1は、イコライザにより再生音のレベルを周波数帯域毎に補正することにより、音響空間や聴取位置に応じた音圧レベルの調整を行う手法を提案している。特許文献2は、複数のスピーカを含むスピーカアレイを配置し、各スピーカから出力される音声信号の位相及び音量を制御することにより、特定の場所に高音圧領域を形成する方法を提案している。
また、特許文献3、4は、音響空間において聴取位置の前後に配置されたスピーカからの再生音のレベルを調整する手法を記載している。
特許第4757034号公報 特開2011−151559号公報 国際公開WO2009/144781号公報 国際公開WO2013/145127号公報
同一の車室内に音楽を聴きたい人と聴きたくない人がいる場合がある。例えば、同乗者に乳児や小さい子供が含まれている場合、その座席を静かにしたいということがある。いま、運転席及び助手席の前後にスピーカが配置されている車室内において、助手席の音量を小さくしたいと仮定する。この場合、特許文献1の手法などを利用して、前後のスピーカの音量を小さくすると、助手席は静かになるが、後部座席では音が聞こえにくくなる。一方、リアスピーカの音量のみを大きくすると、後部座席では音が聞こえやすくなるが、リアスピーカの音がもれてしまい助手席を十分に静かにすることができない。
特許文献2のようにスピーカアレイを用いて助手席付近の音圧を低くする方法も考えられる。しかし、特許文献2の方法は、複数のスピーカを利用して制御を行うため大規模なシステムを必要とし、車両に適用するには不向きである。
車室内の各乗員の耳元に個別のスピーカを配置する方法も考えられるが、スピーカの配置が特殊になってしまう。また、そのようにしても、再生音の低域成分は他の座席にも届いてしまうという不具合がある。
本発明が解決しようとする課題としては、上記のものが例として挙げられる。本発明は、周囲に悪影響を生じることなく、また、大規模なシステムを必要とすることなく、特定の聴取位置における再生音レベルを低くすることが可能な音量制御装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、音量制御装置であって、音響空間内の聴取位置に対して前後に配置された一対のスピーカに接続され、前記聴取位置における再生音レベルが、前記一対のスピーカのうちの一方のスピーカのみで音声信号を再生したときの再生音レベルよりも小さくなるよう、前記聴取位置の前方のスピーカから再生される音声信号と前記聴取位置の後方のスピーカから再生される音声信号の、所定周波数より小さい周波数の位相差を算出する算出部と、前記位相差に基づき、音声信号の周波数を制御し、前記一対のスピーカに供給する位相制御部と、を備えることを特徴とする。
車室の環境を模式的に示す平面図である。 2つのスピーカへの信号に位相差を与える手法を模式的に示す。 本発明に係る音量制御装置の第1実施例の概略構成を示す。 位相シフト量の計算方法の例を示す。 2つの正弦波を異なる位相差で合成した合成波の振幅レベルを示す。 第1実施例における特性を示す図である。 制御帯域の上限周波数の決定方法を示す。 本発明に係る音量制御装置の第2実施例の概略構成を示す。 第2実施例における特性を示す図である。 2つのスピーカの再生音が同期する軸と聴取位置との関係を示す。 第2実施例による効果を従来技術と比較して示す図である。
本発明の好適な実施形態では、音量制御装置は、音響空間内の聴取位置に対して前後に配置された一対のスピーカに接続され、前記聴取位置における再生音レベルが、前記一対のスピーカのうちの一方のスピーカのみで音声信号を再生したときの再生音レベルよりも小さくなるよう、前記聴取位置の前方のスピーカから再生される音声信号と前記聴取位置の後方のスピーカから再生される音声信号の、所定周波数より小さい周波数の位相差を算出する算出部と、前記位相差に基づき、音声信号の周波数を制御し、前記一対のスピーカに供給する位相制御部と、を備える。
上記の音量制御装置は、例えば車室などの音響空間に適用され、車室内の座席などに設定される聴取位置における再生音のレベルを制御する。具体的には、音量制御装置は、外部より入力された音声信号に対して位相差を与えて一対のスピーカに供給する。ここで、位相差は、聴取位置の前方のスピーカから再生される音声信号と聴取位置の後方のスピーカから再生される音声信号の、所定周波数より小さい周波数について算出される。また、その位相差は、聴取位置における再生音レベルが、一対のスピーカのうちの一方のスピーカのみで音声信号を再生したときの再生音レベルよりも小さくなるように算出される。好適には、前記聴取位置は2つの評価点を有し、前記聴取位置における再生音レベルは、前記2つの評価点それぞれにおける再生音レベルの和である。これにより、音響空間内の任意の聴取位置において再生音を小さくすることができる。
上記の音量制御装置の一態様では、前記2つの評価点の距離をdWとし、前記2つの評価点の中心と前記前方のスピーカとを結ぶ線分と前記2つの評価点を結ぶ線分とのなす角をθFとし、前記2つの評価点の中心と前記後方のスピーカとを結ぶ線分と前記2つの評価点を結ぶ線分とのなす角をθRとし、音速をcとすると、前記所定周波数fuは、
fu = c/dW/3/(|cosθF+cosθR|)
で得られる。この場合の好適な例では、所定周波数は、333kHzである。
上記の音量制御装置の他の一態様では、前記位相制御部は、前記再生音レベルの和が最も小さくなる位相から±60度以内の位相差を前記位相差として前記所定周波数帯域毎に設定する。位相差をこの範囲内に設定することにより、聴取位置における再生音レベルを、少なくとも一対のスピーカのうちの一方のスピーカのみで音声信号を再生したときの再生音レベルよりも小さくすることができる。
上記の音量制御装置の他の一態様では、前記算出部は、前記聴取位置と前記一対のスピーカの位置との距離に基づいて前記位相差を算出する。これにより、聴取位置と一対のスピーカの配置に応じて適切な位相差を算出することができる。
本発明の他の好適な実施形態では、音響空間内の聴取位置に対して前後に配置された一対のスピーカに接続された音量制御装置により実行される音量制御方法は、前記聴取位置における再生音レベルが、前記一対のスピーカのうちの一方のスピーカのみで音声信号を再生したときの再生音レベルよりも小さくなるよう、前記聴取位置の前方のスピーカから再生される音声信号と前記聴取位置の後方のスピーカから再生される音声信号の、所定周波数より小さい周波数の位相差を算出する算出工程と、前記位相差に基づき、音声信号の周波数を制御し、前記一対のスピーカに供給する位相制御工程と、を備える。この方法によっても、音響空間内の任意の聴取位置において再生音を小さくすることができる。
本発明の他の好適な実施形態では、音響空間内の聴取位置に対して前後に配置された一対のスピーカに接続され、コンピュータを備える音量制御装置により実行される音量制御プログラムは、前記聴取位置における再生音レベルが、前記一対のスピーカのうちの一方のスピーカのみで音声信号を再生したときの再生音レベルよりも小さくなるよう、前記聴取位置の前方のスピーカから再生される音声信号と前記聴取位置の後方のスピーカから再生される音声信号の、所定周波数より小さい周波数の位相差を算出する算出手段、前記位相差に基づき、音声信号の周波数を制御し、前記一対のスピーカに供給する位相制御手段、として前記コンピュータを機能させる。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記の音量制御装置を実現することができる。このプログラムは、記憶媒体に記憶して取り扱うことができる。
[基本原理]
まず、実施例の基本的な原理について説明する。本実施例は、車室などの音響空間内の特定の場所、例えば助手席における音圧レベルを小さくすることを目的とする。そのために、本実施例では車内の特殊な環境を利用する。
図1は、本実施例による車内環境を模式的に示す平面図である。図1において、車内には4つの座席があり、聴取位置に相当する助手席には聴取者Lが座っている。ここで、助手席の左側には、フロントスピーカSP1とリアスピーカSP2が設けられている。なお、実際の車両では、車両の右側にも同様にフロントスピーカとリアスピーカが設けられるが、ここではその図示は省略する。
図1に示すように、本実施例では、車内の特殊な環境として、助手席を挟むように2つのスピーカSP1、SP2が前後に配置されていることを利用する。そして、本実施例では、助手席を静かにするために、即ち、助手席にいる聴取者Lに再生音が聞こえにくくするために、聴取者Lの左右の耳の音圧レベルを同時に制御する。
一般的に、人間が感じる音の大きさは、両耳の音の強さを加算した値をもとに決まる。即ち、人間は両耳でそれぞれ6dBの音圧で音を聴いた場合と、片耳のみで12dBの音圧で音を聴いた場合とで同じ音の大きさを感じる。これは、下記の文献においても指摘されている。
参考文献:『境久雄、中島剛、「日本音響学会編 聴覚と音響心理」、コロナ社、pp.173〜174、「両耳で聴いたときの音の大きさは、両耳に加えられている音の音圧レベルを6dB大きくして、それを片耳で聴いたときの音の大きさに等しい。」』
よって、本実施例では、聴取者Lの左右の耳の位置を評価点とし、その2つの評価点における音圧レベルの和が小さくなるように、スピーカSP1、SP2に入力される信号を制御する。これにより、聴取者Lは再生音を小さいと感じる。
図2は、2つのスピーカSP1、SP2へ供給される音声信号に位相差を与える手法を模式的に示す。図2(A)は、2つのスピーカSP1、SP2へ音声信号を供給する構成を示している。無響室において、聴取位置にダミーヘッド3を配置し、その右側の前後にフロントスピーカSP1、リアスピーカSP2を配置する。音源2からの音声信号は、そのままリアスピーカSP2に入力されるとともに、遅延器4により全帯域において固定の遅延量「Z」で遅延された後、フロントスピーカSP1に入力される。
図2(A)に示すように、一対のスピーカが縦方向に配置されている場合、スピーカから出力される再生音の音圧分布は干渉により横縞となる。具体的に、図2(A)において、ダミーヘッド3の位置を含む黒色の領域は音圧レベルが大きく、白色の領域は音圧レベルが小さく、音圧分布は横縞を形成している。よって、遅延量Zを変化させることにより、両耳のレベルを同期して変化させ、両耳レベル和を制御することができる。
遅延量Zを変化させた場合の、ダミーヘッド3近傍の音圧分布の例を図2(B)に示している。図中に等高線表示された数値は音圧レベル値を示す。図2(B)の例では、遅延量Z=0.8[ms]のときに、ダミーヘッド3の両耳付近の音圧レベルが負の値となっている。よって、この例では、遅延量Z=0.8[ms]のときに両耳レベル和が小さくなっている。
このように、聴取者の位置に対して前後に一対のスピーカを配置し、それらのスピーカに供給される音声信号に適切な位相差を与えることにより、聴取者の両耳レベル和を小さくすることができる。
[第1実施例]
図3(A)は、音量制御装置の第1実施例の概略構成を示す。第1実施例は、音響空間として無響室を想定する。
図3(A)に示すように、聴取者Lの聴取位置に対して、前後に一対のスピーカ、即ち、フロントスピーカSP1とリアスピーカSP2が配置される。なお、この例では、聴取者Lからは、リアスピーカSP2よりもフロントスピーカSP1の方が遠い。
音源2から出力される音声信号は、そのままリアスピーカSP2に供給されるとともに、位相補正部6により位相が補正された後、フロントスピーカSP1に供給される。ここで、位相補正部6は、音声信号の帯域毎に異なる位相差(位相補正値)θ(f)を与える。位相θ(f)は、聴取者Lの両耳レベル和が小さくなるように決定される。なお、聴取者Lの左右の耳の位置は、2つの評価点に相当する。
図4は、位相差θ(f)の決定方法を説明する図である。位相差θ(f)は、聴取者Lの両耳の位置と、前後のスピーカspF、spRとの距離に基づいて決定することができる。ここでは、簡単化のため、頭部中心点、即ち左右の耳の中央点Mを評価点とみなす。いま、左右の耳の中央点、即ち2つの評価点の中央点MからフロントスピーカspFまでの距離を「dF」とし、中央点MからリアスピーカspRまでの距離を「dR」とすると、理想的な位相シフト量Aは以下の式で与えられる。
A[s]=(dF−dR)/c+1/f×1/2 (1)
なお、「f」は再生音の周波数であり、「c」は音速(約340[m/s])である。
式(1)の第1項は中央点Mから前後のスピーカまでの距離差を補正する値であり、第2項は再生音の半周期(半波長)に相当する値である。即ち、理想的な位相シフト量Aを与えて、前後のスピーカまでの距離差を補正するとともに、再生音を半周期ずらすことにより、評価点における前後のスピーカからの再生音が打ち消し合うようにする。これにより、評価点における再生音レベル和を最小にすることができる。
また、位相差θ(f)は、位相シフト量Aを用いて以下のように設定される。
θ(f) = A+α (2)
ここで、「α」は、以下の範囲の値である。
−60°<α<60° (3)
これは、評価点において、SP1及びSP2の振幅が概ね同一で、αがこの範囲内にあれば、両耳レベル和は前後のスピーカの一方のみから音を再生した場合よりも小さくなるからである。これについて、図5を参照して説明する。図5は、2つの正弦波を異なる位相差で合成した合成波の振幅レベルを示す。2つの正弦波を同相(位相差=0)で合成すると、グラフ41に示すように、合成波の振幅は元の正弦波の振幅の2倍になる。2つの正弦波を位相差120°で合成すると、グラフ42に示すように、2つの正弦波の振幅と合成波の振幅は等しくなる。一方、2つの正弦波を逆相(位相差180°)で合成すると、合成波の振幅はもとの正弦波の振幅よりも小さくなる。
グラフ40に示すように、位相差が120〜180°の場合、2つの正弦波の合成波の振幅は少なくとも元の正弦波の振幅以下となる。従って、聴取位置における両耳レベル和は、2つのスピーカに供給される信号に与える位相差θ(f)がα=180°(逆相)、即ちθ(f)=Aのときに最も大きくなるが、そのときの位相からαが±60°の範囲内であれば、少なくとも前後のスピーカの一方のみから音を再生した場合よりも両耳レベル和を小さくすることができる。この理由から、αの値は±60°の範囲内とされる。
さて、図3(B)に示す配置例において、式(1)により算出した位相シフト量Aを位相補正部6が位相差θ(f)として与えた場合の特性を図5に示す。なお、図3(B)に示す配置例は、標準的なセダン車の助手席に聴取者が座った場合の例である。
具体的に、図6(A)は両耳レベル和の周波数特性を示す。図6(A)において、グラフ11は、フロントスピーカSP1のみに音声信号を入力した場合の両耳のレベル和を示す。グラフ12は、リアスピーカSP2のみに音声信号を入力した場合の両耳レベル和を示す。グラフ13は、2つのスピーカに音声信号を入力し、それらに式(1)により算出した位相シフト量Aを位相差θ(f)として与えた場合の両耳レベル和を示す。
位相差を与えて2つのスピーカに音声信号を入力した場合の両耳レベル和(グラフ13)は、100Hz〜2kHzの全帯域において、フロントスピーカSP1のみに音声信号を入力した場合の両耳のレベル和(グラフ11)及びリアスピーカSP2のみに音声信号を入力した場合の両耳のレベル和(グラフ12)より小さくなっている。よって、評価点において両耳レベル和を小さくするためには、グラフ13のように、2つのスピーカに適切な位相差で音声信号を入力することが必要となる。
図6(B)は、2つのスピーカに入力する音声信号に与える位相差及び音声信号の周波数と、両耳レベル和との関係を示す。図6(B)に示す破線14は、2つのスピーカに音声信号を入力し、それらに式(1)により算出した位相シフト量Aを位相差θ(f)として与えた場合の両耳レベル和を示し、全帯域において両耳レベル和が小さい(負の値)領域を通過している。つまり、図6(B)も、評価点において両耳レベル和を小さくするためには、2つのスピーカSP1、SP2へ入力される音声信号に適切な位相差を与える必要があることを示している。
次に、第1実施例によって両耳レベル和を小さくすることができる帯域(以下、「制御帯域」と呼ぶ。)の上限周波数について説明する。図7(A)は制御帯域の上限周波数を算出するための式、及び、その環境を示す。図示のように、聴取者Lの前後にフロントスピーカspFとリアスピーカspRが配置されている。聴取者Lの両耳位置(評価点に相当)の距離、即ち耳の幅を「dW」とする。また、聴取者Lの耳位置の中心MとフロントスピーカspFとを結ぶ線分FLと、聴取者Lの両耳位置を結ぶ線分ELとのなす角を「θF」とする。同様に、聴取者Lの耳位置の中心MとリアスピーカspRとを結ぶ線分RLと、聴取者Lの両耳位置を結ぶ線分ELとのなす角を「θR」とする。このとき、音速を「c」とすると、制御帯域の上限周波数fuは、以下の式で与えられる。
fu = c/dW/3/(|cosθF+cosθR|) (4)
なお、聴取位置は各スピーカから十分距離があるものとし、簡単のため再生音の波は平面波と考える。
いま、聴取者Lの耳の幅dWを、標準的な人間の頭の幅として17cmと仮定する。この場合、上記の角度θF、θRに応じて、上限周波数fuは以下のようになる。
(例1)θF、θR≒0°のとき、fu≒333Hz
(例2)θF≒0、θR=90°のとき、f≒666Hz
(例3)θF、θR=90°のとき(2つの評価点に対してフロントスピーカが真正面、リアスピーカが真後ろにある場合)、fu≒∞(無限大)Hz
(例4)θF=0°、θR=180°のとき、理論上はfu≒∞(無限大)Hzとなるが、実際には2つのスピーカが同じ直線上で同じ方向を向いて並ぶことになり、干渉縞が無くなるので制御不可となる。
以上より、聴取者Lの耳の幅dW=17cmと仮定した場合、制御帯域の上限周波数fuは例1のケースで333Hzとなる。図7(B)はこの時に聴取者Lの頭部周りに形成される干渉縞を模式的に示す。例1の場合、2つのスピーカspF、spRは同一直線上に対向配置されることになり、その間に干渉縞が生じる。干渉縞は、2つのスピーカからの音波が強め合う領域でレベル大となり、弱め合う領域でレベル小となる。本実施例で両耳レベル和を小さくするためには、聴取者Lの頭(即ち、2つの評価点)が同時に1つのレベル小の領域に入らなければならない。上限周波数fu=333Hzの場合、図7(B)に示すように、聴取者Lの頭部(幅17cm)がちょうど1つのレベル小の領域に入ることになる。
仮に、周波数fを333Hzよりも高くすると、1つのレベル小の領域の幅が17cmよりも小さくなり、聴取者Lの左右の耳(2つの評価点)が1つのレベル小の領域に入りきらなくなるため、聴取者Lの両耳レベル和を小さくすることができなくなる。一方、周波数fを333Hzより低くすると、1つのレベル小の領域の幅が17cmよりも大きくなり、聴取者Lの左右の耳(2つの評価点)が1つのレベル小の領域に入るので、聴取者Lの両耳レベル和を小さくすることができる。よって、聴取者Lの耳の幅(2つの評価点の距離)を17cmとすると、本実施例による制御帯域の上限周波数fuは333Hzとなり、この上限周波数fu以下の帯域に再生音について、両耳レベル和を小さくすることが可能となる。なお、制御帯域の下限周波数は、人間の可聴帯域の下限である20Hz程度となる。
[第2実施例]
次に、第2実施例について説明する。図8は、音量制御装置の第2実施例の概略構成を示す。第2実施例は、音響空間として車室を想定する。図8に示すように、助手席の左側にフロントスピーカSP1とリアスピーカSP2が配置される。音源2からの音声信号は、リアスピーカSP2に供給されるともに、位相補正部6により位相が補正された後、フロントスピーカSP1に供給される。ここで、位相補正部6は、第1実施例と同様に、音声信号の帯域毎に異なる位相差(位相補正値)θ(f)を与える。
第1実施例と同様に、位相差θ(f)は、以下のように設定される。
θ(f) = A+α (2)
ここで、「A」は、聴取者の両耳レベル和が最小となる位相シフト量であり、第2実施例では2つのスピーカと2つの評価点との間の伝達関数に基づいて算出される。具体的には、2つのスピーカSP1、SP2と聴取者の両耳(評価点)との位置関係に基づいて、各スピーカと聴取者の両耳との間の伝達関数を求め、その伝達関数に基づいてシミュレーションなどにより、後述する図9(B)に示すように、位相及び周波数に対する両耳レベル和の分布を生成する。そして、その分布上で、両耳レベル和が最も低い領域を結んだ線分(図9(B)の線分24)が、帯域毎の位相差θ(f)を示すものとなる。
さて、図8に示す配置例において、上記のように算出した位相シフト量Aを位相補正部6が位相差θ(f)として与えた場合の特性を図9に示す。なお、図8に示す配置例は、標準的なセダン車の助手席に聴取者が座った場合の例である。
具体的に、図9(A)は両耳レベル和の周波数特性を示す。図9(A)において、グラフ21は、フロントスピーカSP1のみに音声信号を入力した場合の両耳のレベル和を示す。グラフ22は、リアスピーカSP2のみに音声信号を入力した場合の両耳レベル和を示す。グラフ23は、2つのスピーカに音声信号を入力し、それらに上記のようにして算出した位相シフト量Aを位相差θ(f)として与えた場合の両耳レベル和を示す。
位相差を与えて2つのスピーカに音声信号を入力した場合の両耳レベル和(グラフ23)は、200Hz以下の帯域において、フロントスピーカSP1のみに音声信号を入力した場合の両耳のレベル和(グラフ21)及びリアスピーカSP2のみに音声信号を入力した場合の両耳のレベル和(グラフ22)より小さくなっている。よって、評価点において両耳レベル和を小さくするためには、グラフ23のように、2つのスピーカに適切な位相差で音声信号を入力することが必要となる。
図9(B)は、2つのスピーカに入力する音声信号に与える位相差及び音声信号の周波数と、両耳レベル和との関係を示す。図9(B)に示す破線24は、2つのスピーカに音声信号を入力し、それらに上記のように算出した位相シフト量Aを位相差θ(f)として与えた場合の両耳レベル和を示し、全帯域において両耳レベル和が小さい(負の値)領域を通過している。つまり、図9(B)も、評価点において両耳レベル和を小さくするためには、2つのスピーカSP1、SP2へ入力される音声信号に適切な位相差を与える必要があることを示している。
第2実施例の方法では、2つのスピーカSP1、SP2から音を再生するが、後部座席にいる者に与える影響は少ない。即ち、後部座席にいる者が再生音を小さいと感じることはない。これは後部座席が2つのスピーカの外側に位置するため、2つのスピーカからの再生音が同期しにくいからである。これについて図10を参照して説明する。
図10は、2つのスピーカと聴取者Lとの位置関係を示す。図10(A)に示すように、2つのスピーカSP1、SP2から音を再生する場合、2つのスピーカからの再生音が同期する軸は、2つのスピーカの中心線CLとなる。聴取者Lが2つのスピーカの内側に位置する場合、聴取者Lの両耳がこの中心線CL上又は中心線CLに近い位置にあるため、両耳に至る再生音が同期し、両耳レベル和が変化しやすくなる。
一方、図10(B)に示すように、聴取者Lが2つのスピーカSP1、SP2の外側に位置する場合、聴取者Lは2つのスピーカからの再生音が同期する中心線CL上に位置していても、聴取者の両耳を結ぶ方向は中心線CLからずれるため、両耳レベル和は変化しにくい。このため、第2実施例では、助手席において両耳レベル和が小さくなるようにフロントスピーカSP1とリアスピーカSP2から音を再生しても、後部座席において再生音を小さいと感じることはない。
図11は、第2実施例を従来技術の方法と比較した場合の効果を説明する図である。ここで、従来技術の方法とは、イコライザにより、ある帯域においてリアスピーカの再生音を小さくする補正を行い、助手席における両耳レベル和を減衰させる方法を指す。
図11の左側のグラフG1、G2に示すように、従来技術の方法により運転席における両耳レベル和を減衰させると、後部座席でも両耳レベル和が小さくなってしまい、後部座席の再生音も小さくなってしまう。これに対し、図15の右側のグラフG3、G4に示すように、第2実施例の手法により助手席における両耳レベル和を減衰させても、前述のように後部座席では両耳レベル和はあまり変化しないので、後部座席の再生音が小さくなってしまうという不具合は生じない。このように、第2実施例では、他の座席における再生音レベルに影響を与えることなく、助手席の再生音レベルを下げることができる。
なお、上記の第2実施例では、車室の左側に設けられたフロントスピーカ及びリアスピーカを用いて、助手席、即ち右側の前方座席における両耳レベル和を小さくするものであるが、同様の手法により、車室の右側に設けられたフロントスピーカ及びリアスピーカを用いて、運転席、即ち右側の前方座席における両耳レベル和を小さくするように構成しても構わない。
[変形例]
上記の実施例では、音声信号の各帯域は1/3オクターブ毎に区切られており、各帯域の位相シフト量Aは、帯域の中心周波数fを用いて算出されている。例えば、図6や図9で示されている処理は、1/3オクターブで区切った各帯域の中心周波数を用いて位相シフト量Aを算出し、帯域毎にその位相シフト量Aを適用して音声信号を制御している。具体的には、中心周波数125Hzである111Hz〜140Hzの帯域には中心周波数125Hzで算出した位相シフト量Aを与え、中心周波数157Hzである140Hz〜176Hzの帯域には中心周波数157Hzで算出した位相シフト量Aを与えている。なお、各帯域を1/3オクターブ毎に区切っている理由は、一般的に1/3オクターブで特性を平滑化することは聴感上での処理と似ているとされているためである。
しかし、本発明では、音声信号の各帯域の区切り方は1/3オクターブ毎には限られず、ある間隔で区切られた帯域毎にそれぞれの中心周波数を用いて算出した位相シフト量を与えればよい。即ち、音声信号の各帯域を1/2オクターブ毎、1/4オクターブ毎に区切ってもよく、また、周波数毎に位相差(例えば、100Hz、101Hz、102Hz、..毎に、50°、51°、52°、..)を与えてもよい。
2 音源
3 ダミーヘッド
6 位相調整部
SP1 フロントスピーカ
SP2 リアスピーカ
L 聴取位置

Claims (1)

  1. 音響空間内の聴取位置に対して前後に配置された一対のスピーカに接続され、
    前記聴取位置における再生音レベルが、前記一対のスピーカのうちの一方のスピーカのみで音声信号を再生したときの再生音レベルよりも小さくなるよう、前記聴取位置の前方のスピーカから再生される音声信号と前記聴取位置の後方のスピーカから再生される音声信号の、所定周波数より小さい周波数の位相差を算出する算出部と、
    前記位相差に基づき、音声信号の周波数を制御し、前記一対のスピーカに供給する位相制御部と、
    を備えることを特徴とする音量制御装置。
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