本発明は、光通信システムや光計測システムで用いられる光送信器およびそれを用いた光伝送システムに関する。
従来の光伝送システムでは、光ファイバを伝搬して減衰した信号を再生するために、光信号を電気信号に変換し、ディジタル信号を識別後に光信号を再生する識別再生光中継器が用いられた。識別再生光中継器では、光−電気変換する電子部品の応答速度制限や、消費電力増大の問題があった。そこで、希土類元素を添加した光ファイバに励起光を入射して信号光を光のままで増幅するファイバレーザ増幅器や、半導体レーザ増幅器が登場した。これらレーザ増幅器は、劣化した信号光波形を整形する機能を有していなかった。逆に、不可避的かつランダムに発生する自然放出光が信号成分と全く無関係に混入され、増幅前後で信号光のS/Nが少なくとも3dB低下する。S/N低下は、ディジタル信号伝送時における伝送符号誤り率を上昇させ、伝送品質を低下させる。
レーザ増幅器の限界を打開する手段として、位相感応光増幅器(Phase Sensitive Amplifier:PSA)が検討されている。PSAは、伝送ファイバの分散の影響による劣化した信号光波形や位相信号を整形する機能を有する。信号とは無関係の直交位相をもった自然放出光を抑圧でき、同相の自然放出光も最小限で済む。このために原理的に増幅前後で信号光のS/Nを劣化させず同一に保つことができる。
図3は、従来技術のPSAの基本的な構成を示す図である。PSA100は、光パラメトリック増幅を用いた位相感応光増幅部101と励起光源102と励起光位相制御部103と、第1光分岐部104−1及び第2の光分岐部104−2とを備える。図3に示されるように、PSA100に入力された信号光110は、光分岐部104−1で2分岐されて、一方は位相感応光増幅部101に入射し、他方は励起光源102に入射する。励起光源102から出射した励起光111は、励起光位相制御部103を介して位相が調整され、位相感応光増幅部101に入射する。位相感応光増幅部101は、入力した信号光110及び励起光111に基づいて出力信号光112を出力する。
位相感応光増幅部101は、信号光110の位相および励起光111の位相が一致すると信号光110を増幅し、両者の位相が90度ずれた直交位相関係になると信号光110を減衰する特性を有する。この特性を利用して増幅利得が最大となるように励起光111―信号光110間の位相を一致させると、信号光110と直交位相の自然放出光が発生せず、また同相の成分に関しても信号光のもつ雑音以上に過剰な自然放出光を発生しない。このため、S/N比を劣化させずに信号光110を増幅できる。
信号光110および励起光111の位相同期を達成するために、励起光位相制御部103は、第1の光分岐部104−1で分岐された信号光110の位相と同期するように励起光111の位相を制御する。励起光位相制御部103は、第2の光分岐部104−2で分岐された出力信号光112の一部を狭帯域の検出器で検波し、出力信号光112の増幅利得が最大となるように励起光111の位相を制御する。
上述のパラメトリック増幅を行う非線形光学媒質には、周期分極反転LiNbO3(PPLN)導波路に代表される二次非線形光学材料と、石英ガラスファイバに代表される三次非線形光学材料がある。
図4は、PPLN導波路を用いた従来技術のPSAの構成を示す図である(非特許文献1参照)。図4に示したPSA200は、エルビウム添加ファイバレーザ増幅器(EDFA)201と、第1の二次非線形光学素子202及び第2の二次非線形光学素子204と、第1の光分岐部203−1及び第2の光分岐部203−2と、位相変調器205と、光ファイバ伸長器206と、偏波保持ファイバ207と、光検出器208と、位相同期ループ(PLL)回路209と、を備える。第1の二次非線形光学素子202は、第1の空間光学系211と、第1のPPLN導波路212と、第2の空間光学系213と、第1のダイクロイックミラー214と、を備える。第2の二次非線形光学素子204も、同様の構成を持ち詳細は説明を省略する。
図4のPSA200に入射した信号光250は、光分岐部203−1によって分岐されて、一方は第2の二次非線形光学素子204に入射する。分岐光の他方は励起基本波光251として位相変調器205及び光ファイバ伸長器206を介して、位相制御されてEDFA201に入射する。EDFA201は、入射した励起基本波光251を十分に増幅し、第1の二次非線形光学素子202に入射する。EDFA201により、微弱な励起基本波光251から非線形光学効果を得るのに十分なパワーを得ることができる。第1の二次非線形光学素子202では、入射した励起基本波光251から第2高調波(以下、SH光)252が発生する。発生したSH光252は、偏波保持ファイバ207を介して第2の二次非線形光学素子204に入射する。第2の二次非線形光学素子204では、入射した信号光250およびSH光252によって縮退パラメトリック増幅を行うことで、位相感応光増幅を行い、出力信号光253を出力する。
PSAにおいては、信号光と位相の合った光のみを増幅するために、上述のように信号光の位相と励起光の位相とが一致するか、または、πラジアンだけずれている必要がある。すなわち二次の非線形光学効果を用いる場合は、SH光に相当する波長である励起光の位相φ2ωsと、信号光の位相φωsとが以下の式(1)の関係を満たすことが必要となる。ここで、nは整数とする。
Δφ=1/2(φ2ωs−φωs)=nπ 式(1)
図5は、従来技術の二次非線形光学効果を利用したPSAにおける、入力信号光‐励起光間の位相差Δφと利得との関係を示す図である。横軸の位相差Δφが−π、0、またはπのときに、縦軸の利得(dB)が最大となっていることがわかる。
信号光250と励起基本波光251との間の位相同期のために、まず位相変調器205で微弱なパイロット信号により位相変調を励起基本波光251に施し、出力信号光253の一部を分岐して検出器208で検波する。このパイロット信号成分は、図5に示した位相差Δφが最小となって、位相同期が取れている状態で最小となる。したがって、パイロット信号が最小、つまり増幅出力信号が最大となるようにPLL回路209を用いて、光ファイバ伸長器206にフィードバックを行う。励起基本波光251の位相を光ファイバ伸長器206によって制御して、信号光250と励起基本波光251との間の位相同期を達成できる。
光通信の高速・大容量化の要請の中で、PSAにおいても、以下述べるように対応する変調方式や多重化方式の点でその適用範囲が広がっている。図5に示したように、PPLN導波路を用いた従来のPSAは、直交する位相成分を減衰させる特性を有しているため、通常の強度変調や二値の位相変調を用いる強度変調・直接検波(IMDD:Intensity Modulation-Direct Detection)、2値位相変調(BPSK:Binary Phase Shift Keying)、差動位相偏移変調(DPSK:Differential Phase Shift Keying)等の変調信号の増幅に適用できるものの、さらに多値の変調フォーマットであるQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)や8PSK等の変調信号を増幅できない。
非特許文献2及び非特許文献3は、QPSK等の変調信号を位相感応光増幅し、位相再生増幅が可能な構成を開示している。非特許文献2は三次の非線形光学材料である石英ガラスファイバを用いた方法を、非特許文献3は二次の非線形光学材料であるPPLNを用いた方法を開示している。
多値の変調フォーマットでは、信号光からキャリア抽出するためには、変調信号の多値度が上がるほどより多くの非線形過程を用いる必要がある。その場合、信号光からキャリア抽出によって生成した基本波光のS/Nを保つことが難しい。また、非線形過程を複数回用いたキャリア抽出方法の構成では、複数の信号を波長多重したWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号を一括して増幅することができなかった。
非特許文献4は、信号光として主信号光およびその位相共役光からなる対を用い、非縮退パラメトリック増幅により、高次多値変調フォーマットの直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)変調信号やマルチキャリア信号に対する位相感応光増幅器を開示している。
図6は、信号光として主信号光およびその位相共役光からなる対を用いた、従来技術の非縮退パラメトリック増幅によるPSAの構成を示した図である。図6に示したPSA300は、光送信器301および位相感応光増幅器302からなる。光送信器301では、複数の信号光源303からの出力光に対し外部変調器304を用いてデータ変調した後に、合波器305によって波長多重を行う。信号光源303とは別の局部発振光源307から出力される基本波光から、二次非線形光学素子311により第二高調波(SH: Second Harmonic)光を発生させて励起光312とする。その後、二次非線形光学素子306によって、励起光312と波長多重された主信号光313との差周波光を発生させ、この差周波光を主信号光に対する位相共役光とする。位相共役光は、アイドラ光とも呼ばれる。
光送信器301からは、多重化された主信号光313およびその位相共役光からなる複数対を含む信号光群316と、局部発振器307からの基本波光の一部314とを別々に位相感応光増幅器302へ出力する。位相感応光増幅器302では、二次非線形光学素子323によって基本波光314からSH光である励起光329を生成する。さらに二次非線形光学素子324において励起光329と信号光群316との間のパラメトリック増幅過程を用いて位相感応光増幅を行う。
図7は、図6の従来技術の非縮退パラメトリック増幅によるPSAにおいて、各部の光の波長軸上での関係を模式的に説明する図である。いずれの図も横軸は波長を縦軸は光強度を示している。図7の(a)に示すように、光送信器301からは、主信号光313とその位相共役光315との複数の対からなる信号光群315と、基本波光314が出力される。基本励起光314を中心として対称な位置関係にある主信号光と位相共光が1つの対となる。尚、対となる信号光と位相共役光は、厳密には周波数軸上において対称な位置関係にあることに留意されたい。図7の(b)は、位相感応光増幅器302の二次非線形光学素子323により基本波光314からSH光である励起光329を生成する過程(SHG:Second Harmonic Generation)を示している。図7の(c)は、二次非線形光学素子324において励起光329と信号光群316との間のパラメトリック増幅過程(OPA: Optical Parametric Amplification)で得られる増幅された信号光群330を示している。図6では光送信器301から分岐した基本波光314を用いた構成例を示したが、長距離ファイバ伝送後の中継増幅器として用いるためには、信号光から搬送波位相を抽出し、搬送波位相に同期した局部発振光を生成する必要がある。その場合は、非特許文献6に示されているように基本波光をパイロット光として同送する方法がある。また、非特許文献7に示されているような光位相同期(光PLL)を用いて、信号光の搬送波位相と同期した局部発振光源からの出力光を基本波として用いても良い。
近年のデジタルコヒーレント光通信システムにおいては、偏波多重分離(PDM: Polarization Division Multiplexing)技術による偏波多重信号が用いられる。PPLN導波路等の非線形光学媒質は一般に偏波依存性を持つため、従来技術のPSAでは偏波多重信号の増幅を行うことができなかった。これに対し、非特許文献5および非特許文献6は、2つの非線形光学媒質を用いた偏波ダイバシティ構成によって偏波多重信号に対して位相感応光増幅する構成を開示している。
図8は、従来技術の偏波多重信号光を伝送する光伝送システムの概要を示す図である。光伝送システム350は、光送信器351と、光ファイバ伝送路361と、偏波ダイバシティ構成を持つ光増幅装置352からなる。非特許文献5および非特許文献6に開示されている偏波ダイバシティ構成は、図8の光伝送システムの光増幅装置352と同構成である。偏波ダイバシティ構成352では、光ファイバ361を伝送された偏波多重信号は、偏波ビームスプリッタ(PBS)362で分離される。分離した2つの偏波成分に対してそれぞれ非線形光学素子からなる位相感応光増幅器363、364で光増幅を行った後、PBS365で再度合波する。後述するように、偏波多重信号光を伝送する光伝送システムの送信信号であるPDM信号は、直交する偏波間で別々の異なるデータに基づき独立に変調される。PDM信号は、それぞれのデータに対応した光変調信号をPBSで合波することで生成できる。
しかしながら、従来技術の偏波多重信号光を伝送する光伝送システムでは、以下に述べるような光送信器における偏波状態の不安定性に起因する問題があった。主信号光およびその位相共役光からなる対を用い、非縮退のパラメトリック増幅によるPSAを利用するためは、すべての対に対して直交する偏波成分のそれぞれにおいて位相同期条件が満たされる必要がある。図8のような従来技術の光伝送システムの光送信器351における偏波多重信号の生成方法では、偏波ダイバシティ構成の位相感応光増幅器352で増幅動作が不安定になる問題があった。
再び図8を参照して光送信器の構成を概観すると、光送信器31は、2つの主信号光−位相共役光の対を生成する2つの信号アーム(ルート)から構成される。信号光源353からの搬送波光は光カプラ354等で分岐され、2つの光変調器355、356において異なるデータ信号により搬送波光を変調し、2つの主信号光を生成される。その後、2つの差周波発生器357、358においてそれぞれの位相共役光を生成する。一方の差周波発生器358からの主信号光−位相共役光の対の偏波を偏波回転子359で90°回転し、直交した主信号光−位相共役光の対366が得られる。直交した偏波の2つの対が、PBS360によって合波され、PDM信号367が出力される。光送信器351からのPDM信号367は、伝送路である光ファイバ361中で偏波が回転する。偏波回転を受けたPDM信号368が偏波ダイバシティ構成352に入力されると、初段のPBS362の2つの偏波軸に対して射影された光電界成分に分岐される。つまり、元の2つの直交する偏波成分がそれぞれ混ざった状態で非線形光学素子363、364に入射される。
図9は、従来技術のPDM光の光伝送システムにおける偏波の状態を概念的に説明する図である。図9の(a)は、光送信器351の出力のA点におけるPDM信号367の直交する2つの偏波を示している。横軸をs偏光(偏光)状態とすれば縦軸はp偏光(偏光)状態を示す。図9の(b)は、光ファイバ361を伝送後のB点でのPDM信号368の偏波状態を示し、光送信器351の出力点AのPDM信号367に対して、光ファイバの全体で累積的に生じる偏波回転が加えられている。図9の(c)は、初段のPBS362によって偏波分離された後のC1点およびC2点での各偏波軸の電界成分を示している。B点でのPDM信号の各偏波成分が、PBS362の2つの軸へ射影した成分が混ざった状態で分離される。
独立した位相感応光増幅を行う位相感応光増幅器363、364では、図4に示したような位相同期の構成により出力の一部をモニタし、その出力が最大になるように励起光と信号光の相対位相を調整するようにフィードバックを掛ける。偏波ダイバシティ構成352では、図9の(c)のように2つの直交する偏波成分がそれぞれ混ざった状態で入射される。2つの直交する偏波成分に対して、各位相感応光増幅器で、同時に位相感応光増幅条件が安定して満たされていないと、光増幅後のPDM信号を安定化できない。
図9の(c)のように2つの偏波の成分が混ざっている状態自体は、偏波ダイバシティ構成352においては問題ない。しかしながら、B点で受信されるPDM信号の偏波状態が揺らぐと、位相感応光増器の出力も不安定化してしまう。ここで、光伝送路上で生じる偏波状態のゆらぎは対象としない。問題となるのは、光送信器351内でPDM信号を生成する際の、2つの直交する偏波成分の偏波位相の揺らぎである。
光送信器351は、通常、光源、光半導体素子、光学部品、およびこれらを相互に接続する偏波保持ファイバなどから構成される。さらに、これらの要素部品を制御するための制御回路、装置内外のインタフェース回路、電源などを含んだモジュール構成が採られる。このような装置内では、装置の動作状態や環境温度の変化によって、内部温度が不均一に分布し、その分布も刻々と変化し得る。また装置外の環境や運用状態によっては、外部からの振動が装置内の部品間の接続光ファイバや光学部品に加わることもある。図8で説明したように光送信器内では、別々の差周波発生器(二次非線形光学素子)357、378によって2つの信号アームで信号光群が生成され、PBSにより偏波多重されるが、この2つの信号アームでは、それぞれ独立して温度変化や振動などによって影響を受け得る。したがって、2つの信号アームによって信号光、位相共役光およびパイロット光の位相も異なる態様で変動し得る。さらに、2つの差周波発生器へ供給される励起光の位相も、異なる態様で変動し得る。偏波多重光を生成する2つのアーム間で位相条件が別個に変動することで、2つの偏波間の相対位相も、周期的にまたは不定期に、刻々と変動し揺らぎが生じる。このように、PDM信号が、光送信器における2つの信号光アーム間の相対位相のゆらぎを持っていると、光ファイバ361を伝送した後の、偏波ダイバシティ構成において位相感応光増幅動作に直接影響を与えることになる。
図9の(c)を参照すれば、偏波ダイバシティ構成では、2つの偏波成分が混在した形態でPBSにより分離され、混在した2つの偏波成分がそれぞれの位相感応光増幅器に入力される。したがって、PDM信号が形成される光送信器において2つの偏波間で信号光群の相対位相が異なっていれば、1つの位相感応光増幅器内で図5および式(1)で示した位相感応光増幅のための位相条件を満たすことはできない。偏波多重された後では光ファイバによって受ける位相変化は、2つの偏波間で同一変化を受けることから相対位相の変化は小さい。一方、光送信器において発生する2つの偏波間の相対位相の変動・ゆらぎは、より直接的であって、光送信器351と偏波ダイバシティ構成352との間でリアルタイムに影響する。このように光送信器から出力されるPDM信号の質の揺らぎ自体が、偏波ダイバシティ構成352の位相感応光増器363,364からの出力を不安定化してしまう問題があった。図8に示したようなPDM信号の光送信器351で、偏波多重された主信号―位相共役光の対を、従来技術の構成で安定して生成することはできなかった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものでその目的とするところは、直交する偏波間の位相の変動を抑えたPDM信号を生成する光送信器を提供することにある。
本発明はこのような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、主信号光を出力する信号光源と、前記主信号光を変調する偏波多重変調器と、偏波多重され変調された前記主信号光の一方の偏波成分に対する位相共役光を生成する第1の二次非線形光学素子と、前記第1の二次非線形光学素子からの出力光を偏波回転する偏波回転子と、偏波多重され変調された前記主信号光の他方の偏波成分に対する位相共役光を生成し、主信号光−位相共役光の対を含む偏波多重光群を出力する第2の二次非線形光学素子と、基本波光を出力する局部発振光源と、前記基本波光に基づいて、前記第1の二次非線形光学素子で位相共役光を生成するための第1の励起光および前記第2の二次非線形光学素子で位相共役光を生成するための第2の励起光を生成する1つ以上の二次非線形光学素子と、前記基本波光の一部であって前記第1の二次非線形光学素子を透過するパイロット信号の位相と、前記第1の励起光位相とを同期させ、前記第2の二次非線形光学素子をさらに透過する前記パイロット信号の位相と、前記第2の励起光の位相とを同期させる位相調整機構とを備えたことを特徴とする光送信器である。
上述の1つ以上の二次非線形光学素子は、第1の励起光を生成する第3の二次非線形光学素子と、第2の励起光を生成する第4の二次非線形光学素子とから構成することができる(実施形態1に対応)。また、上述の1つ以上の二次非線形光学素子は、単一の二次非線形光学素子からの励起光を分岐し、前記第1の励起光、前記第2の励起光として、第1、第2の二次非線形光学素子へそれぞれ供給しても良い(実施形態1の変形例に対応)。
請求項2に記載の発明は、請求項1の光送信器であって、前記位相調整機構は、前記第1の二次非線形光学素子の出力側の前記パイロット信号のレベルを検出して、前記第1の二次非線形光学素子の入力側の前記主信号光の位相を調整する第1のフィードバック回路と、前記第2の二次非線形光学素子の出力側の前記パイロット信号のレベルを検出して、前記第2の二次非線形光学素子の入力側の前記主信号光および前記位相共役光の位相を調整する第2のフィードバック回路とを含むことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2の光送信器であって、前記第1の二次非線形光学素子、前記第2の二次非線形光学素子および前記1つ以上の二次非線形光学素子は、それぞれ直接接合リッジ導波路を含み、前記直接接合リッジ導波路は、LiNbO3、KNbO3、LiTaO3、LiNb(x)Ta(1―x)O3(0≦x≦1)、またはKTiOPO4のいずれかの材料から構成されるか、または、当該材料のいずれかにMg、Zn、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加物として加えた材料から構成されることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、主信号光を出力する信号光源と、前記主信号光を変調する偏波多重変調器と、偏波多重され変調された前記主信号光の位相共役光を生成し、偏波多重光群を出力する第1の二次非線形光学素子であって、偏波多重され変調された前記主信号光の一方の偏波成分に対する位相共役光を生成する第1の二次非線形導波路と、前記第1の二次非線形導波路からの前記主信号光および前記位相共役光を、波長依存性を持って偏波回転する偏光子と、偏波多重され変調された前記主信号光の他方の偏波成分に対する位相共役光を生成し、主信号光−位相共役光の対を含む前記偏波多重光群を出力する第2の二次非線形導波路とを含む第1の二次非線形光学素子と、基本波光を出力する局部発振光源と、前記基本波光に基づいて、前記第1の二次非線形光学素子で位相共役光を生成するための励起光を生成する第2の二次非線形光学素子とを備えたことを特徴とする光送信器である(実施形態2に対応)。
請求項5に記載の発明は、請求項4の光送信器であって、前記第1の二次非線形光学素子は、直接接合リッジ導波路を用いた前記第1の二次非線形導波路および前記第2の二次非線形導波路並びに前記偏光子が、単一のモジュールにパッケージされた構成を持つことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5の光送信器であって、前記直接接合リッジ導波路は、LiNbO3、KNbO3、LiTaO3、LiNb(x)Ta(1―x)O3(0≦x≦1)、またはKTiOPO4のいずれかの材料から構成されるか、または、当該材料のいずれかにMg、Zn、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加物として加えた材料から構成されることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6いずれかの光送信器であって、異なる波長の光をそれぞれ出力する複数の前記信号光源と、対応する複数の偏波多重変調器と、偏波多重され変調された複数の前記主信号光を合波して、波長多重光を出力する波長合波器を備え、異なる波長の前記主信号光の各々に位相共役光が生成されることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、上述のいずれかの光送信器と、前記光送信器からの前記偏波多重光群の搬送波位相に同期した基本波光を出力する局部発振光源を備え、前記偏波多重光群を2つの偏波成分に分離し、非線形光学素子によって前記2つの偏波成分をそれぞれ光増幅し、光増幅された前記2つの偏波成分を再合波する偏波ダイバシティ構成を有する位相感応光増幅器とを備えたことを特徴とする光伝送システムである。
本発明により直交する偏波間の相対位相の変動ゆらぎを抑えた光送信器を提供できる。
本発明の光送信器では、主信号光、その位相共役光、励起光、パイロット信号などの各信号において、直交する偏波間の位相差のドリフト変動を安定化させる構成が提示される。偏波多重光群は、偏波多重変調器と、2つの直交する偏波に対して、主信号光の位相共役光を別個に生成する従属接続された2つの二次非線形光学素子とによって生成される。位相調整機構によって、直交する2つの偏波の位相共役光を生成する二次非線形光学素子の各々において、直交する2つの偏波間で主信号光またはパイロット信号の相対位相のドリフトを安定化させる。2つの二次非線形導波路を含むモジュール構成の二次非線形光学素子を備え、2つの偏波間の相対位相を調整する位相調整機構が不要な光送信器も開示される。本発明の光送信器は、中継型の偏波ダイバシティ構成を持つ位相感応光増幅器と組み合わせた光伝送システムも提供する。以下、複数の実施形態とともに、本発明の光送信器の詳細な構成および動作を説明する。
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る光送信器の構成を示す図である。本実施形態の光送信器400は、信号光およびその位相共役光の対からなる偏波多重された信号光群を生成するための光送信器の構成を示す。ここで、1つの主信号光およびその位相共役光を対(ペア)と呼ぶ。第1の偏波に対して、1つのデータ信号による変調によって、変調された主信号光および位相共役光からなる第1の対が得られる。さらに、第1の偏波に直交する第2の偏波に対して、別のデータ信号による変調によって、変調された主信号光および位相共役光からなる第2の対が得られる。後述するように本発明の光送信器では、最初に偏波多重光を生成し、その後、位相共役光が生成される。より具体的には、1つの信号光搬送波に対して、まず2つのデータ信号によって偏波多重された主信号光が得られる。異なる波長の信号光源からの複数の偏波多重された主信号光は、光合波器によって波長多重され、偏波多重され波長多重された主信号光445が得られる。光合波器からの主信号光に対して、2つの二次非線形光学素子404、406において、偏波成分毎に位相共役光が生成される。偏波多重され波長多重された主信号光および対応する位相共役光の複数の対から偏波多重信号光群が得られる。主信号光の波長および位相共役光の波長の中心に位置する波長を持つパイロット光を重畳し、偏波多重信号光群と同時に送信する。
光送信器400は、異なる波長の信号光を出力する複数の信号光源401と、複数の偏波多重変調器402と、波長合波器403と、差周波発生(Difference Frequency Generation:DFG)用の第1の二次非線形光学素子404と、偏波回転子405と、DFG用の第2の二次非線形光学素子406と、を備える。光送信器400は、さらに、基本波を出力する局部発振光源407と、基本波光を分岐する光カプラ408と、基本波の偏波を回転させる偏光子409と、EDFA409、412と、バンドパスフィルタ(Band Pass Filter:BPF)409、413と、SH光発生(Second Harmonic Generation:SHG)用の二次非線形光学素子411、414と、PZT(チタン酸ジルコニウム酸鉛)圧電素子を用いた光ファイバ伸縮器418、422と、光カプラ416、417と、光検出器419、423と、PLL回路420、424とを備えている。これらのうち、光ファイバ伸縮器421、光カプラ416、光検出器419、およびPLL回路420を含むループは、第1の位相調整機構を構成している。同様に、光ファイバ伸縮器425、光カプラ417、光検出器423、およびPLL回路424を含むループは、第2の位相調整機構を構成している。
送信器400において、局部発振光源407から出力された連続波光(CW光)は、光カプラ408により3つの光に分波され、それぞれパイロット光442、第1の基本波光440および第2の基本波光441として用いる。EDFA409、412は、それぞれの第1の基本波光440および第2の基本波光441を増幅する。BPF410、413は、EDFA409、412によって発生したノイズ光を排除し、増幅された基本波光のみを透過させる。
SHG用の二次非線形光学素子411、414は、それぞれ、PPLN導波路と、出力側のダイクロイックミラーとを含む。BPF410を透過した基本波光が二次非線形光学素子411に入射すると、PPLN導波路により基本波光の半分の波長(2倍の周波数)のSH光が発生する。ダイクロイックミラーにより、基本波光とSH光とが分離される。同様に、BPF413を透過した基本波光が二次非線形光学素子414に入射すると、PPLN導波路により基本波光の半分の波長を持つSH光が発生し、ダイクロイックミラーにより基本波光とSH光とが分離される。出力されたSH光を、第1の励起光443、第2の励起光444として、DFG用の二次非線形光学素子404、406にそれぞれに入射する。
複数の信号光源401は、それぞれの波長が異なり、局部発振光源407の基本波光とも波長が異なる連続波光(CW光)を出力する。偏波多重変調器402は、信号光源からのそれぞれの出力光に対して独立した送信データ451、452に応じた偏波多重16QAM変調を施す。偏波多重変調器402の各々からの偏波多重された変調光は、波長合波器403により波長多重される。偏波多重および波長多重された主信号光は、光カプラ415によりパイロット光442を合波された後、DFG用の第1の二次非線形光学素子404に入力される。ここでパイロット光442の偏光方向は、偏波多重信号の2つの直交する偏波成分の間の偏波状態にした後で、光カプラ415により合波されている。本実施形態では、2つの直交する偏波成分を0°、90°とした場合に、偏光子409を用いて45°の偏光となるようにパイロット光442の偏光が調整されている。
DFG用の第1の二次非線形光学素子404は、入力側のダイクロイックミラーと、PPLN導波路と、出力側のダイクロイックミラーとを含む。光カプラ415から出力された多重化された主信号光およびパイロット光と、二次非線形光学素子411から出力された励起光443とは、ダイクロイックミラーにより合波され、PPLN導波路に入射する。第1の二次非線形光学素子404において、主信号光のうち一方の偏波成分について主信号光と励起光443との差周波光が発生する。この差周波光が、主信号光に対する位相共役光となる。偏波多重された主信号光の2つの直交する偏波成分をそれぞれX偏波成分、Y偏波成分とすると、DFG用の第1の二次非線形光学素子404内では、主信号光のX偏波成分の位相共役光が生成される。一方で、偏波多重された主信号光のY偏波成分については、二次非線形光学素子404をそのまま通過する。
DFG用の第1の二次非線形光学素子404の出力は、偏光をλ/2板による偏波回転子405で偏波を回転させた後、DFG用の第2の二次非線形光学素子406に入力される。本実施形態では、偏波回転のためにλ/2板を用いたが、光ファイバを90度ひねった状態で二次非線形光学素子406と接続するなどの偏波回転方法によっても良い。こうして、DFG用の第2の二次非線形光学素子406内では、偏波多重された主信号光のY偏波成分の位相共役光が生成される。一方で、X偏波成分については、DFG用の第2の二次非線形光学素子406をそのまま通過する。DFG用の第2の二次非線形光学素子406からは、光送信器400のPDM信号出力として、偏波多重され波長多重された主信号光およびその位相共役光をからなる複数の対を含む偏波多重信号光群448が出力される。尚、DFG用の二次非線形光学素子404、406を透過した励起光443、444は、各々の出力側のダイクロックミラーで分離(449、450)される。
DFG用の二次非線形光学素子404、406の出力の後には、それぞれ、出力の一部を分岐する光カプラ416、417が備えられている。光カプラ416からの分岐光はBPF418を経由し、光検出器419によりパイロット光の光強度の変化が検出される。同様に、光カプラ417からの分岐光はBPF422を経由し、光検出器423によりパイロット光の光強度の変化が検出される。BPF418、422は、主信号光445に合波されたパイロット信号446のみを分離する。PLL回路420によりファイバ伸縮器421へフィードバックを行い、PLL回路424によりファイバ伸縮器425へフィードバックを行うことで、二次非線形光学素子404、406の各出力点で、パイロット光の出力が最大になるよう位相調整を行う。
上述のようにファイバ伸縮器421、425によって光路の位相を調整することによって、二次非線形光学素子内において、主信号光、位相共役光およびパイロット信号の位相と、励起光の位相を調整していることに留意されたい。したがって、PLL回路420を含むループは、第1の二次非線形光学素子404を透過するパイロット信号の位相と、第1の励起光位相とを同期させている。PLL回路424を含むループは、第2の二次非線形光学素子406をさらに透過するパイロット信号の位相と、第2の励起光の位相とを同期させている。これらの2つのループは、位相調整機構として機能している。
本実施形態の光送信器では、直交する2つの偏波の1つの偏波のみの位相共役光を生成する二次非線形光学素子が縦続接続された偏波多重信号光群を生成する構成において、各々の二次非線形光学素子の入出力間でフィードバックループを構成している。2つのフィードバックループで、それぞれ、パイロット光のレベルを最大化するように入力側の光路の位相を調整することで、2つの偏波間の信号光、位相共役光、励起光の相対位相のドリフト・変動を抑えることができる。
上述のように、光ファイバ伸縮器にフィードバックを行い、温度や振動による、送信器内の2つの直交する偏波間の信号光群の相対位相のドリフトを補償することで、2つの直交した偏波間の相対位相を安定化した状態で偏波多重信号を送信できる。中継器においても、偏波ダイバシティされた位相感応光増幅器を安定動作させることができる。
図10は、実施形態1の変形例の光送信器の構成を示す図である。光送信器600の構成は、DFG用の二次非線形光学素子404、406への励起光の供給方法を除いて、図1の光送信器400の構成と同一である。DFG用の第1の二次非線形光学素子404および第2の二次非線形光学素子406へ十分な光強度の励起光を供給できれば、図1のSHG用の二次非線形光学素子411、414を、単一の二次非線形光学素子とすることもできる。図10に示したように、変形例の光送信器600では、単一のSHG用の二次非線形光学素子411から励起光を出力し、光カプラ602で励起光を分岐して、第1の励起光443および第2の励起光444としてDFG用の二次非線形光学素子404、406へそれぞれ供給している。
したがって本発明の光送信器は、主信号光を出力する信号光源401と、前記主信号光を変調する偏波多重変調器402と、偏波多重され変調された前記主信号光の一方の偏波成分に対する位相共役光を生成する第1の二次非線形光学素子404と、前記第1の二次非線形光学素子からの出力光を偏波回転する偏波回転子405と、偏波多重され変調された前記主信号光の他方の偏波成分に対する位相共役光を生成し、主信号光−位相共役光の対を含む偏波多重光群を出力する第2の二次非線形光学素子406と、基本波光を出力する局部発振光源407と、前記基本波光に基づいて、前記第1の二次非線形光学素子で位相共役光を生成するための第1の励起光および前記第2の二次非線形光学素子で位相共役光を生成するための第2の励起光を生成する1つ以上の二次非線形光学素子411、414と、前記基本波光の一部であって前記第1の二次非線形光学素子を透過するパイロット信号の位相と、前記第1の励起光位相とを同期させ、前記第2の二次非線形光学素子をさらに透過する前記パイロット信号の位相と、前記第2の励起光の位相とを同期させる位相調整機構とを備えたものとして実施できる。
本実施形態の光送信器では、それぞれの二次非線形光学素子内の非線形光学媒質として、擬似位相整合が可能なPPLN導波路を用いている。まず、Znを添加したLiNbO3上に周期が約17μmの周期的な電極を形成した。次に、電界印加法により上記の電極パターンに応じた分極反転グレーティングをZn:LiNbO3中に形成した。次に、この周期分極反転構造を有するZn:LiNbO3基板をクラッドとなるLiTaO3上に直接接合を行い、500℃で熱処理を行うことにより両基板を強固に接合した。
次に、コア層を研磨により5μm程度まで薄膜化し、ドライエッチングプロセスを用いてリッジ型の光導波路を形成した。この導波路はペルチェ素子により温度調整が可能である。導波路の長さを50mmとした。このようにして形成されたPPLN導波路を有する二次非線形光学素子を、1.55μm帯の偏波保持ファイバで光の入出力が可能なモジュール構成とした。本実施形態では、Znを添加したLiNbO3を用いたが、それ以外の非線形材料である、KNbO3、LiTaO3、LiNbxTa1-xO3(0≦x≦1)若しくはKTiOPO4、又はそれらにMg、Zn、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加物として含有している材料を用いても良い。
上述のように本実施形態に示した光送信器では、光送信器内の局部発振光源からの出力をパイロット光として主信号光と同送しかつ主信号光およびその位相共役光を偏波多重した偏波多重光群を送信することができる。光送信器において2つの偏波間の相対位相が安定化されているため、中継器においても、偏波ダイバシティ構成の位相感応光増幅器を安定して動作させることができる。
本実施形態の光送信器では、信号変調フォーマットとして16QAMを用いた例について説明をした。しかしながら、IMDD、BPSK,QPSK、64QAM,256QAM、より多値度の高いQAMなど任意のフォーマットに対しても、本実施形態の光送信器と全く同じ構成で励起光を生成できる。本実施形態の光送信器によれば、多値の変調フォーマットの変調信号を送信することができる。
[実施形態2]
図2は、本発明の実施形態2の光送信器の構成を示す図である。本実施形態の光送信器500は、実施形態1と同様に信号光およびその位相共役光の対からなる偏波多重された信号光群を生成するための構成を示す。本実施形態の光送信器では、パイロット光は同送されない。
図2の送信器500は、異なる波長の信号光を出力する複数の信号光源501と、複数の偏波多重変調器502と、波長合波器503と、差周波発生(DFG)用の二次非線形光学素子504と、基本波を出力する局部発振光源505と、EDFA506と、BPF507と、SH光発生(SHG)用の二次非線形光学素子508とを備えている。
送信器500において、局部発振光源505から出力された連続波光(CW光)は、基本波光530として用いられる。EDFA506は、基本波光を増幅する。BPF507は、EDFA506によって発生したノイズ光を排除し、増幅された基本波光のみを透過させる。
SHG用の二次非線形光学素子508は、PPLN導波路と、出力側のダイクロイックミラーとを含む。BPF507を透過した基本波光が二次非線形光学素子508に入射すると、PPLN導波路により基本波光の半分の波長(2倍の周波数)を持つSH光が発生する。ダイクロイックミラーによって、基本波光およびSH光が分離される。二次非線形光学素子508から出力されたSH光を、励起光531としてDFG用の二次非線形光学素子504に入射する。
複数の信号光源501は、それぞれ波長が異なり、局部発振光源の基本波光とも波長が異なる連続波光(CW光)を出力する。偏波多重変調器502は、信号光源501のそれぞれの出力光に対して独立した送信データ535、536に応じた偏波多重16QAM変調を施す。偏波多重変調器502の各々からの偏波多重された変調光は、波長合波器503により波長多重される。偏波多重および波長多重された主信号光532は、DFG用の二次非線形光学素子504に入力される。
DFG用の二次非線形光学素子504は、入力側のダイクロイックミラーと、第1のPPLN導波路510および第2のPPLN導波路513と、2つのPPLN導波路の間に配置された偏光子512と、出力側のダイクロイックミラーとを含む。波長多重された主信号光と、SHG用の二次非線形光学素子508から出力された励起光531とは、入力側のダイクロイックミラーにより合波され、第1のPPLN導波路510に入射する。P第1のPLN導波路510において、偏波多重された主信号光532のうち一方の偏波成分について、主信号光の周波数と励起光の周波数との差周波光が発生する。この差周波光は、主信号光532に対する位相共役光となる。偏波多重された主信号光532の2つの直交する偏波成分をそれぞれX偏波成分、Y偏波成分とすると、第1のPPLN導波路510では、主信号光のX偏波成分の位相共役光が生成される。一方で、偏波多重された主信号光532のY偏波成分に対しては何も作用せず、第1のPPLN導波路510をそのまま通過する。
第1のPPLN導波路510からの出力光533は、波長依存型の偏光子512を通過する。この時、偏光子512によって主信号光に対しては90°偏波を回転させ、励起光に対しては0°または180°偏光が回転させる。偏光子512により偏波回転した主信号光は、第2のPPLN導波路513に入力される。第2のPPLN導波路513内では、主信号光のY偏波成分の位相共役光が生成される。一方で、主信号光のX偏波成分に対しては何も作用せず、第2のPPLN導波路513をそのまま通過する。第2のPPLN導波路513の出力の後には、励起光を分離するためのダイクロイックミラーが配置されている。ダイクロイックミラーを通過後、送信器の出力として、主信号光および対応する位相共役からなる複数の対を含む偏波多重信号光群534がファイバ514に出力される。尚、二次非線形光学素子504を透過した励起光531は、出力側のダイクロイックミラーで分離される(535)。
図2の送信器500の構成によれば、波長合波器503から出力された主信号光の偏波多重信号532を、二次非線形光学素子504によって一度も偏波分離することなく、リジッドな光学部品を用いて直交する2つの偏波成分に対する位相共役光を生成することができる。二次非線形光学素子504は、2つのPPLN導波路510、513を構成するLiNbO3基板および偏光子512を、接続用光ファイバを使用せずにモジュール内に固定して構成できる。したがって、実施形態1の送信器400のように別個の二次非線形光学素子を光ファイバで相互接続する構成と比べて、直交する偏波間における相対位相のドリフトや変動が無視できるほど小さい。このため、図2の光送信器は、実施形態1の光送信器のように、直交する偏波間の位相同期、相対位相の安定化のための制御機構が不要である利点を有する。
図2の本実施形態に示した光送信器500の構成では、局部発振光源505からの出力をパイロット光として同送することなく、主信号光を偏波多重した光波を送信することができる。偏波間の相対位相のドリフト・変動が生じず安定化されているため、中継器においても、偏波ダイバシティ構成の位相感応光増幅器を安定動作させることができる。
実施形態1、実施形態2で用いた二次非線形光学素子を構成するリッジ導波路の材料は一例にすぎない。すなわち、リッジ導波路は、LiNbO3、KNbO3、LiTaO3、LiNb(x)Ta(1-x)O3(0≦x≦1)、またはKTiOPO4のいずれかの材料を用いて構成しても良いし、これらにMg、Zn、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加物として加えた材料でも良い。
以上詳細に説明したように、本発明の光送信器では、主信号光、その位相共役光、励起光、パイロット信号などの各信号において、直交する偏波間の位相差のドリフト変動を安定化させることができる。光送信器における温度変動や振動などによる2つの偏波間で相対位相を安定化する。本発明の光送信器から送信されるPDM信号によれば、中継器における偏波ダイバシティ構成の位相感応光増幅器でも、安定した光増幅動作が可能となる。