以下、図面を参照して本発明の熱式流量計の実施の形態を説明する。
[実施形態1]
図1は、本発明の実施の形態に係る熱式流量計100を備えた内燃機関210の制御システム200の一例を示す模式図である。この制御システム200では、エンジンシリンダ211とエンジンピストン212を備える内燃機関210の動作に基づいて、熱式流量計100の被計測気体Gである吸入空気IGがエアクリーナ201から吸入され、たとえば吸気管である主通路202、スロットルボディ203、吸気マニホールド204を介してエンジンシリンダ211の燃焼室に導かれる。
前記燃焼室に導かれる吸入空気IGの流量は、熱式流量計100で計測され、計測された流量に基づいて燃料噴射弁205により燃料が供給され、吸入空気IGとともに混合気の状態で燃焼室に導かれる。なお、燃料噴射弁205は、たとえば、内燃機関210の吸気ポートに設けられ、吸気ポートに噴射された燃料が吸入空気IGと混合されて混合気となり、吸気弁213を介して燃焼室に導かれ、燃焼して機械エネルギを発生する。
熱式流量計100は、図1に示す内燃機関210の吸気ポートに燃料を噴射する方式だけでなく、各燃焼室に燃料を直接噴射する方式にも同様に使用できる。両方式とも熱式流量計100の使用方法を含めた制御パラメータの計測方法および燃料供給量や点火時期を含めた内燃機関の制御方法の基本概念は、おおむね共通している。図1では、両方式の代表例として、吸気ポートに燃料を噴射する方式を示す。
燃焼室に導かれた燃料および空気は、燃料と空気との混合状態であり、点火プラグ214の火花着火によって爆発的に燃焼して機械エネルギを発生する。燃焼後の気体は、排気弁215から排気管に導かれ、排気EGとして排気管から車外に排出される。前記燃焼室に導かれる吸入空気IGの流量は、アクセルペダルの操作に基づいてその開度が変化するスロットルバルブ206によって制御される。前記燃焼室に導かれる吸入空気IGの流量に基づいて燃料供給量が制御され、運転者はスロットルバルブ206の開度を制御して前記燃焼室に導かれる吸入空気IGの流量を制御することにより、内燃機関210が発生する機械エネルギを制御することができる。
エアクリーナ201から取り込まれ、主通路202を流れる吸入空気IGである被計測気体Gの流量および温度は、熱式流量計100により計測され、計測された吸入空気IGの流量および温度を表す電気信号が熱式流量計100から制御装置220に入力される。また、スロットルバルブ206の開度を計測するスロットル角度センサ207の出力が制御装置220に入力され、さらに内燃機関210のエンジンピストン212や吸気弁213や排気弁215の位置や状態、さらに内燃機関210の回転速度を計測するために、回転角度センサ216の出力が、制御装置220に入力される。排気EGの状態から燃料量と空気量との混合比の状態を計測するために、酸素センサ217の出力が制御装置220に入力される。
制御装置220は、熱式流量計100の出力である、たとえば、吸入空気IGの流量、湿度、および温度、ならびに回転角度センサ216からの内燃機関210の回転速度等に基づいて、燃料噴射量や点火時期を演算する。これら演算結果に基づいて、燃料噴射弁205から供給される燃料量や点火プラグ214により点火される点火時期が制御される。燃料供給量や点火時期は、実際には、さらに熱式流量計100で計測される吸気温度や、スロットル角度の変化状態、エンジン回転速度の変化状態、酸素センサ217で計測された空燃比の状態に基づいて制御されている。制御装置220は、さらに内燃機関210のアイドル運転状態において、スロットルバルブ206をバイパスする空気量をアイドルエアコントロールバルブ208により制御し、アイドル運転状態での内燃機関210の回転速度を制御する。
内燃機関210の主要な制御量である燃料供給量や点火時期は、いずれも熱式流量計100の出力を主パラメータとして演算される。したがって、熱式流量計100の計測精度の向上や、経時変化の抑制、信頼性の向上が、車両の制御精度の向上や信頼性の確保に関して重要である。特に近年、車両の省燃費に関する要望が非常に高く、また排気ガス浄化に関する要望が非常に高い。これらの要望に応えるには熱式流量計100により計測される吸入空気IGである被計測気体Gの流量の計測精度の向上が極めて重要である。
図2は、本発明の実施形態1に係る熱式流量計100の模式的な断面図である。熱式流量計100は、主通路202を流れる被計測気体Gの一部を取り込む副通路110と、該副通路110を流れる被計測気体Gの流量を計測する流量計測素子120とを備え、流量計測素子120の計測値に基づいて主通路202を流れる被計測気体Gの流量を計測する。
熱式流量計100は、たとえば、副通路110を画定するハウジング130を備えている。ハウジング130は、たとえば、被計測気体Gの主流れ方向Fに沿うおおむね矩形の平板状の筐体である。ここで、被計測気体Gの主流れ方向Fとは、主通路202を流れる被計測気体Gの主要な流れの方向であり、たとえば、主通路202の中心線CLに平行な方向である。
より詳細には、ハウジング130は、たとえば、主通路202の径方向Rに沿う高さ方向の寸法が、被計測気体Gの主流れ方向Fに沿う長さ方向の寸法よりも大きい矩形平板状に形成されている。また、ハウジング130は、たとえば、高さ方向および長さ方向の寸法よりも、これら高さ方向および長さ方向に直交する厚さ方向の寸法が小さい扁平な薄型形状に形成されている。
ハウジング130は、フランジ部131と、コネクタ部132と、計測部133とを有している。フランジ部131は、たとえば、ハウジング130の高さ方向の一方の端部に設けられた任意の形状の平板状の部分であり、主通路202を構成する吸気管に固定される。熱式流量計100は、たとえばネジ等により、フランジ部131を介して主通路202を構成する吸気管に固定され、主通路202の内壁面から主通路202の径方向Rに突出し、主通路202内に片持ち状に支持される。
コネクタ部132は、熱式流量計100を、たとえば制御装置220等の外部機器に接続するための外部接続端子である。計測部133は、主通路202を構成する吸気管にフランジ部131を介して熱式流量計100を取り付けたときに、ハウジング130の主通路202内に配置される部分である。計測部133の内部に副通路110が形成され、この副通路110内に流量計測素子120が配置されている。
副通路110は、入口通路111と、出口通路112と、迂回通路113とを有している。また、図2に示す例において、副通路110は、入口通路111と出口通路112とを接続する接続通路114を有している。
入口通路111は、副通路110において、被計測気体Gの主流れ方向Fの上流側に設けられている。入口通路111は、被計測気体Gの主流れ方向Fの上流側の端部に主通路202を流れる被計測気体Gの一部を副通路110に取り込むための主取込口110aを有している。ハウジング130の高さ方向における入口通路111の寸法は、同方向における出口通路112および接続通路114の寸法よりも大きくされている。
出口通路112は、副通路110において、被計測気体Gの主流れ方向Fの下流側に設けられている。出口通路112は、被計測気体Gの主流れ方向Fの下流側の端部に、副通路110から被計測気体Gを排出するための主出口110bを有している。主出口110bの開口面積は、たとえば、主取込口110aの開口面積よりも小さくなっている。
迂回通路113は、入口通路111と出口通路112の間に設けられている。図2に示す例において、迂回通路113はおおむねU字状またはJ字状の折返し形状を有しているが、たとえばΩ字状の折返し形状を有してもよい。迂回通路113は、方向転換部113aと、折返し部113bと、内周抵抗部113cと有している。図2に示す例において、迂回通路113は、さらに、外周抵抗部113dと、絞り部113gを有している。
方向転換部113aは、入口通路111から被計測気体Gの主流れ方向Fに交差する方向に分岐している。図2に示す例において、方向転換部113aは、主流れ方向Fにおおむね平行な入口通路111から、ハウジング130の高さ方向にフランジ部131へ向けて分岐している。方向転換部113aは、たとえば、入口通路111から主流れ方向Fにおおむね直交する方向に分岐している。
折返し部113bは、方向転換部113aよりも、迂回通路113を流れる被計測気体Gの順流時の下流側に設けられ、出口通路112に向けて折り返すように湾曲している。図2に示す例において、折返し部113bは、半円を描くように円弧状に湾曲して、180°逆方向に折り返すように湾曲している。
図2に示す断面において、迂回通路113を横断する方向を迂回通路113の幅W方向とすると、湾曲した折返し部113bの内周側の端部を含む迂回通路113の幅W方向の端部が、迂回通路113の内周側の端部113eである。同様に、折返し部113bの外周側の端部を含む迂回通路113の幅W方向の端部が、迂回通路113の外周側の端部113fである。
内周抵抗部113cは、折返し部113bと方向転換部113aとの間に設けられている。内周抵抗部113cは、迂回通路113の内周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失が迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失よりも高くなる構成を有している。
外周抵抗部113dは、折返し部113bと出口通路112との間に設けられている。外周抵抗部113dは、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失が迂回通路113の内周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失よりも高くなる構成を有している。
図3は、図2に示す熱式流量計100のIII−III線に沿う模式的な断面図である。図3に示すように、内周抵抗部113cは、迂回通路113を内周側の端部113eから外周側の端部113fへ横断する幅W方向に沿う断面において、内周側の断面積が外周側の断面積よりも小さくなっている。ここで、内周抵抗部113cの内周側とは、たとえば、内周抵抗部113cの幅W方向の中央から内周抵抗部113cの内周側の端部113eまでの部分である。同様に、内周抵抗部113cの外周側とは、たとえば、内周抵抗部113cの幅W方向の中央から内周抵抗部113cの外周側の端部113fまでの部分である。
図3に示す例において、内周抵抗部113cは、幅W方向に直交する迂回通路113の高さ方向Hの寸法が、迂回通路113の外周側の端部113fから内周側の端部113eへ向けて漸次縮小している。これにより、内周抵抗部113cは、たとえば、迂回通路113の外周側の端部113fにおける高さ方向Hの寸法h1が、迂回通路113の内周側の端部113eにおける高さ方向Hの寸法h2よりも大きい形状を有している。
すなわち、内周抵抗部113cは、幅W方向に沿う断面において、たとえば、迂回通路113の外周側の端部113fに下底を有し、迂回通路113の内周側の端部113eに上底を有する台形の断面形状を有している。なお、図3に示す例において、内周抵抗部113cは、一対の底角の角度が等しい等脚台形の断面形状を有しているが、台形断面の一対の底角の角度は、異なっていてもよい。
一方、外周抵抗部113dは、迂回通路113を内周側の端部113eから外周側の端部113fへ横断する幅W方向に沿う断面において、外周側の断面積が内周側の断面積よりも小さくなっている。ここで、外周抵抗部113dの外周側とは、たとえば、外周抵抗部113dの幅W方向の中央から外周抵抗部113dの外周側の端部113fまでの部分である。同様に、外周抵抗部113dの内周側とは、たとえば、外周抵抗部113dの幅W方向の中央から外周抵抗部113dの内周側の端部113eまでの部分である。
図3に示す例において、外周抵抗部113dは、幅W方向に直交する迂回通路113の高さ方向Hの寸法が、迂回通路113の内周側の端部113eから外周側の端部113fへ向けて漸次縮小している。これにより、外周抵抗部113dは、たとえば、迂回通路113の内周側の端部113eにおける高さ方向Hの寸法h3が、迂回通路113の外周側の端部113fにおける高さ方向Hの寸法h4よりも大きい形状を有している。
すなわち、外周抵抗部113dは、幅W方向に沿う断面において、たとえば、迂回通路113の内周側の端部113eに下底を有し、迂回通路113の外周側の端部113fに上底を有する台形の断面形状を有している。なお、図3に示す例において、外周抵抗部113dは、一対の底角の角度が等しい等脚台形の断面形状を有しているが、台形断面の一対の底角の角度は、異なっていてもよい。
図2に示すように、迂回通路113を流れる被計測気体Gの順流方向において、外周抵抗部113dの下流側に配置された流量計測素子120は、主通路202を流れる被計測気体Gの流量を計測するための素子である。流量計測素子120は、被計測気体Gの温度を計測するための温度計測部などとともに、平板状の支持部材121に設けられている。支持部材121は、たとえば、ハウジング130の計測部133と一体にモールド成形されて計測部133に固定された回路パッケージやプリント基板などによって構成され、流量計測素子120を支持して迂回通路113に配置している。
流量計測素子120は、支持部材121に支持されて、迂回通路113の内周抵抗部113cと出口通路112との間に配置されている。より具体的には、図2に示す例において、流量計測素子120は、迂回通路113の外周抵抗部113dと出口通路との間に配置されている。すなわち、流量計測素子120は、迂回通路113を流れる被計測気体Gの順流方向において、内周抵抗部113cおよび外周抵抗部113dの下流側で、出口通路112の上流側に配置されている。
図4は、図2に示す熱式流量計100のIV−IV線に沿う流量計測素子120の近傍の模式的な断面図である。絞り部113gは、たとえば、流量計測素子120を支持する支持部材121に対向する迂回通路113の壁面に設けられている。絞り部113gは、たとえば、迂回通路113の壁面から迂回通路113の高さ方向Hに突出する凸状に設けられている。絞り部113gは、たとえば、迂回通路113を流れる被計測気体Gの順流方向において、支持部材121に近づくように傾斜する上流側の傾斜面と、支持部材121から遠ざかるように傾斜する下流側の傾斜面とを有している。
すなわち、迂回通路113は、迂回通路113を流れる被計測気体Gの順流方向において、流量計測素子120の上流側から下流側へ、支持部材121と絞り部113gとの間隔が徐々に狭くなるように、絞り部113gの上流側の傾斜面によって絞られている。また、迂回通路113は、迂回通路113を流れる被計測気体Gの順流方向において、流量計測素子120の下流側で、支持部材121と絞り部113gとの間隔が徐々に拡大するように、絞り部113gの下流側の傾斜面によって拡張されている。
図4に示す例において、迂回通路113は、絞り部113gに対向する壁面に凹部113hを有している。凹部113hは、たとえば、支持部材121を収容している。これにより、支持部材121の流量計測素子120が設けられた面と、迂回通路113の凹部113hに隣接する壁面とは、迂回通路113の高さ方向Hに、おおむね同じ高さで段差なく、ほぼ面一に配置され、迂回通路113を流れる被計測気体Gの流れの方向に並んでいる。
図2に示すように、接続通路114は、入口通路111から出口通路112へ向けて、主通路202を流れる被計測気体Gの主流れ方向Fに延びている。接続通路114は、ハウジング130の高さ方向の寸法が、入口通路111から出口通路112へ向けて漸次減少している。なお、接続通路114は、省略することも可能である。この場合、迂回通路113の方向転換部113aは、入口通路111から主通路202を流れる被計測気体Gの主流れ方向に交差する方向に分岐するのではなく、被計測気体Gの主流れ方向Fに交差する方向に湾曲させて設けることができる。
以上のように、本実施形態の熱式流量計100は、主通路202を流れる被計測気体Gの一部を取り込む副通路110と、この副通路110を流れる被計測気体Gの流量を計測する流量計測素子120とを備えている。熱式流量計100は、流量計測素子120の計測値に基づいて主通路202を流れる被計測気体の流量を計測する。副通路110は、主通路202を流れる被計測気体Gの主流れ方向Fの上流側に設けられた入口通路111と、主流れ方向Fの下流側に設けられた出口通路112と、これら入口通路111と出口通路112の間に設けられた迂回通路113とを有している。迂回通路113は、入口通路111から主流れ方向Fに交差する方向に湾曲または分岐した方向転換部113aと、出口通路112に向けて折り返すように湾曲した折返し部113bと、この折返し部113bと方向転換部113aとの間に設けられた内周抵抗部113cとを有している。この内周抵抗部113cは、迂回通路113の内周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失が迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失よりも高くなるように構成されている。そして、流量計測素子120は、迂回通路113の内周抵抗部113cと出口通路112との間に配置されている。
以下、本実施形態の熱式流量計100の作用について説明する。
図1に示すように、本実施形態の熱式流量計100は、たとえば内燃機関210の制御システム200を構成する吸気管の主通路202に取り付けられ、主通路202を流れる吸入空気IG(被計測気体G)の流量等を計測する。図2に示すように、主通路202を流れる被計測気体Gの一部は、その被計測気体Gの主流れ方向Fにおける上流側で熱式流量計100の主取込口110aから副通路110に取り込まれる。
副通路110に取り込まれた被計測気体Gは、副通路110の入口通路111から迂回通路113を介して出口通路112へ流れる。また、副通路110が接続通路114を有する場合には、副通路110に取り込まれた被計測気体Gの一部が、入口通路111から接続通路114を介して出口通路112へ流れる。副通路110が接続通路114を有することで、被計測気体Gに含まれるダストや水などが、被計測気体Gの一部とともに接続通路114を介して入口通路111から出口通路112へ流れ、迂回通路113へ流入することが抑制される。迂回通路113および接続通路114を通過した被計測気体Gは、出口通路112で合流し、出口通路112を通過して主流れ方向Fにおける下流側で熱式流量計100の副通路110から主出口110bを介して排出される。
熱式流量計100は、副通路110に設けられた迂回通路113を流れる被計測気体Gの流量を、迂回通路113に配置された流量計測素子120によって計測し、その計測値に基づいて主通路202を流れる被計測気体Gの流量を計測する。迂回通路113は、方向転換部113aにおいて入口通路111から主流れ方向Fに交差する方向に湾曲または分岐し、折返し部113bにおいて出口通路112に向けて折り返すように湾曲する。
すなわち、迂回通路113は、ループ状の周回形状を有しない折返し形状に形成されている。換言すると、迂回通路113を流れる被計測気体Gの順流方向における折返し部113bの上流側の端部は、当該順流方向における折返し部113bの下流側の端部よりも、被計測気体Gの主流れ方向Fにおける上流側に配置されている。そのため、副通路110を流れる被計測気体Gは、入口通路111を主流れ方向Fに沿って流れ、迂回通路113の方向転換部113aで主流れ方向Fに交差する方向に方向転換され、迂回通路113の折返し部113bで主流れ方向Fを経て出口通路112へ向かう方向に方向転換される。
図5Aは、図3に示す熱式流量計100の内周抵抗部113cにおける被計測気体Gの流速分布を示すグラフである。なお、図5Aに示すグラフの横軸は、図3に示す断面において、被計測気体Gの主流れ方向Fすなわち迂回通路113の幅W方向の位置であり、縦軸は迂回通路113を流れる被計測気体Gの流速である。
前述のようなループ状の周回形状を有しない折返し形状の副通路110は、迂回通路113が内周抵抗部113cを有しない場合、迂回通路113の幅W方向において流速分布に偏りを生じる。より詳細には、迂回通路113の方向転換部113aと折返し部113bとの間で、図5Aに破線で示すように、迂回通路113の内周側、すなわち、幅W方向の内周側の端部113e寄りを流れる被計測気体Gの流速が、迂回通路113の外周側、すなわち幅W方向の外周側の端部113f寄りを流れる被計測気体Gの流速よりも高くなる。
これに対し、本実施形態の熱式流量計100の迂回通路113は、内周抵抗部113cを有している。そのため、内周抵抗部113cにおいて、迂回通路113の内周側を流れる被計測気体Gの圧力損失が、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gの圧力損失よりも高くなり、図5Aに実線で示すように、迂回通路113の内周側を流れる被計測気体Gの流速が低下する。これにより、迂回通路113を流れる被計測気体Gの流速分布の内周側への偏りを抑制することができる。
より具体的には、図3に示す例において、本実施形態の熱式流量計100の内周抵抗部113cは、迂回通路113を内周側から外周側へ横断する幅W方向に沿う断面において、内周側の断面積が外周側の断面積よりも小さい。これにより、内周抵抗部113cの内周側を流れる被計測気体Gが、内周抵抗部113cの壁面から抵抗を受けやすくなる。そのため、迂回通路113の内周側を流れる被計測気体Gの圧力損失が、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gの圧力損失よりも高くなる。その結果、迂回通路113を流れる被計測気体Gの流速分布の内周側への偏りを抑制することができる。
より詳細には、図3に示す例において、本実施形態の熱式流量計100の内周抵抗部113cは、幅W方向に直交する迂回通路113の高さ方向Hの寸法が、迂回通路113の外周側の端部113fから内周側の端部113eへ向けて漸次縮小している。これにより、内周抵抗部113cは、内周側の断面積が外周側の断面積よりも小さくなり、内周抵抗部113cの内周側を流れる被計測気体Gが、内周抵抗部113cの壁面から抵抗を受けやすくなる。そのため、迂回通路113の内周側を流れる被計測気体Gの圧力損失が、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gの圧力損失よりも高くなる。その結果、迂回通路113を流れる被計測気体Gの流速分布の内周側への偏りを抑制することができる。
ここで、図2に示すように、流量計測素子120は、迂回通路113の内周抵抗部113cと出口通路112との間に配置されている。そのため、流量計測素子120は、内周抵抗部113cによって流速分布の偏りが抑制された被計測気体Gの流量を測定することができる。したがって、流量計測素子120によって迂回通路113を流れる被計測気体Gの流量を測定するときに測定誤差を低減することができ、被計測気体Gに脈動が生じたときの計測誤差を低減することができる。
迂回通路113の内周抵抗部113cを通過して流速分布の偏りが低減された被計測気体Gは、図2に示すように、出口通路112に向けて折り返すように湾曲した折返し部113bにおいて出口通路112へ向かう方向に方向転換される。この折返し部113bは、たとえば円弧状に湾曲しているため、被計測気体Gの流れの方向は、主流れ方向Fに交差して入口通路111から遠ざかる方向から、主流れ方向Fに平行な方向を経て、主流れ方向Fに交差して出口通路112へ向かう方向へ方向転換される。このとき、折返し部113bを流れる被計測気体Gに遠心力が作用する。折返し部113bを通過した被計測気体Gは、折返し部113bと出口通路112との間に形成された外周抵抗部113dに流入する。
図5Bは、図3に示す熱式流量計100の外周抵抗部113dにおける被計測気体Gの流速分布を示すグラフである。なお、図5Bに示すグラフの横軸は、図3に示す断面において、被計測気体Gの主流れ方向Fすなわち迂回通路113の幅W方向の位置であり、縦軸は迂回通路113を流れる被計測気体Gの流速である。
逆方向に折り返すように湾曲した折返し部113bでは、前述のように被計測気体Gに遠心力が作用するため、外周抵抗部113dを有しない場合、迂回通路113の幅W方向において流速分布に偏りを生じる。より詳細には、迂回通路113の折返し部113bと出口通路112との間で、図5Bに破線で示すように、迂回通路113の内周側、すなわち、幅W方向の外周側の端部113f寄りを流れる被計測気体Gの流速が、迂回通路113の内周側、すなわち幅W方向の内周側の端部113e寄りを流れる被計測気体Gの流速よりも高くなる。
これに対し、本実施形態の熱式流量計100の迂回通路113は、折返し部113bと出口通路112との間に設けられた外周抵抗部113dを有している。この外周抵抗部113dは、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失が迂回通路113の内周側を流れる被計測気体に対する圧力損失よりも高い。そして、流量計測素子120は、迂回通路113の外周抵抗部113dと出口通路112との間に配置されている。
そのため、外周抵抗部113dにおいて、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gの圧力損失が、迂回通路113の内周側を流れる被計測気体Gの圧力損失よりも高くなり、図5Bに実線で示すように、迂回通路113の内周側を流れる被計測気体Gの流速が低下する。これにより、迂回通路113を流れる被計測気体Gの流速分布の外周側への偏りを抑制することができる。
より具体的には、図3に示す例において、本実施形態の熱式流量計100の外周抵抗部113dは、迂回通路113を内周側から外周側へ横断する幅W方向に沿う断面において、外周側の断面積が内周側の断面積よりも小さい。これにより、外周抵抗部113dの外周側を流れる被計測気体Gが、外周抵抗部113dの壁面から抵抗を受けやすくなる。そのため、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gの圧力損失が、迂回通路113の内周側を流れる被計測気体Gの圧力損失よりも高くなる。その結果、迂回通路113を流れる被計測気体Gの流速分布の外周側への偏りを抑制することができる。
より詳細には、図3に示す例において、本実施形態の熱式流量計100の外周抵抗部113dは、幅W方向に直交する迂回通路113の高さ方向Hの寸法が、迂回通路113の内周側の端部113eから外周側の端部113fへ向けて漸次縮小している。これにより、外周抵抗部113dは、外周側の断面積が内周側の断面積よりも小さくなり、外周抵抗部113dの外周側を流れる被計測気体Gが、外周抵抗部113dの壁面から抵抗を受けやすくなる。そのため、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gの圧力損失が、迂回通路113の内周側を流れる被計測気体Gの圧力損失よりも高くなる。その結果、迂回通路113を流れる被計測気体Gの流速分布の外周側への偏りを抑制することができる。
また、図2に示すように、流量計測素子120は、迂回通路113の外周抵抗部113dと、出口通路112との間に配置されている。そのため、流量計測素子120は、内周抵抗部113cによって流速分布の内周側への偏りが抑制され、さらに外周抵抗部113dによって流速分布の外周側への偏りが抑制された被計測気体Gの流量を測定することができる。したがって、流量計測素子120によって迂回通路113を流れる被計測気体Gの流量を測定するときに測定誤差をさらに低減することができ、被計測気体Gに脈動が生じたときの計測誤差をさらに低減することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、ループ状の周回形状を有しない湾曲した折返し形状の副通路110を有する熱式流量計100において、副通路110における被計測気体Gの流速分布の偏りを抑制することができる。したがって、本実施形態の熱式流量計100によれば、主通路202を流れる被計測気体Gの流量の計測誤差を低減することができる。
[実施形態2]
次に、本発明に係る熱式流量計の実施形態2について、図1および図4を援用し、図6から図8Aおよび図8Bを用いて説明する。
図6は、本発明の実施形態2に係る熱式流量計100Aの模式的な断面図である。本実施形態の熱式流量計100Aは、内周抵抗部113jおよび外周抵抗部113kの構成が前述の実施形態1の熱式流量計100の内周抵抗部113cおよび外周抵抗部113dと異なっている。本実施形態の熱式流量計100Aのその他の構成は、前述の実施形態1の熱式流量計100の構成と同様であるため、同一の部分には同一の符号を付して、説明を省略する。
本実施形態の熱式流量計100Aにおいて、迂回通路113は、入口通路111から主流れ方向Fに交差する方向に湾曲または分岐した方向転換部113aと、出口通路112に向けて折り返すように湾曲した折返し部113bと、この折返し部113bと方向転換部113aとの間に設けられた内周抵抗部113jとを有している。この内周抵抗部113jは、迂回通路113を外周側と内周側に仕切る仕切壁115を有することで、迂回通路113の内周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失が、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失よりも高くなるように構成されている。
図7は、図6に示す熱式流量計100AのVII-VII線に沿う模式的な断面図である。本実施形態の熱式流量計100Aにおいて、内周抵抗部113jは、迂回通路113を外周側と内周側に仕切る仕切壁115を有している。仕切壁115は、内周抵抗部113jの幅W方向において、幅W方向の中央よりも内周側の端部113eに近い位置に設けられている。これにより、内周抵抗部113jは、迂回通路113を内周側の端部113eから外周側の端部113fへ横断する幅W方向に沿う断面において、仕切壁115よりも内周側の断面積が、仕切壁115よりも外周側の断面積よりも小さくなっている。
そのため、内周抵抗部113jにおいて、仕切壁115の内周側を流れる被計測気体Gは、仕切壁115の外周側を流れる被計測気体よりも、内周抵抗部113jの壁面及び仕切壁115の壁面から抵抗を受けやすくなる。その結果、内周抵抗部113jの仕切壁115より内周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失は、内周抵抗部113jの仕切壁115より外周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失よりも高くなる。
図8Aは、図7に示す熱式流量計100Aの内周抵抗部113jにおける被計測気体Gの流速分布を示すグラフである。なお、図8Aに示すグラフの横軸は、図7に示す断面において、被計測気体Gの主流れ方向Fすなわち迂回通路113の幅W方向の位置であり、縦軸は迂回通路113を流れる被計測気体Gの流速である。
前述のようなループ状の周回形状を有しない折返し形状の副通路110は、迂回通路113が内周抵抗部113jを有しない場合、迂回通路113の幅W方向において流速分布に偏りを生じる。より詳細には、迂回通路113の方向転換部113aと折返し部113bとの間で、図8Aに破線で示すように、迂回通路113の内周側、すなわち、幅W方向の内周側の端部113e寄りを流れる被計測気体Gの流速が、迂回通路113の外周側、すなわち幅W方向の外周側の端部113f寄りを流れる被計測気体Gの流速よりも高くなる。
本実施形態の熱式流量計100Aの迂回通路113は、内周抵抗部113jに仕切壁115を有し、仕切壁115よりも内周側を流れる被計測気体Gの圧力損失が、仕切壁115よりも外周側を流れる被計測気体Gの圧力損失よりも高くなっている。これにより、図8Aに実線で示すように、迂回通路113の仕切壁115より内周側を流れる被計測気体Gの流速が低下し、迂回通路113を流れる被計測気体Gの流速分布の内周側への偏りを抑制することができる。
また、迂回通路113は、折返し部113bと出口通路112との間に設けられた外周抵抗部113kを有している。外周抵抗部113kは、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失が迂回通路113の内周側を流れる被計測気体に対する圧力損失よりも高い。より具体的には、外周抵抗部113kは、迂回通路113を外周側と内周側に仕切る仕切壁115を有している。
仕切壁115は、外周抵抗部113kの幅W方向において、幅W方向の中央よりも外周側の端部113fに近い位置に設けられている。これにより、外周抵抗部113kは、迂回通路113を内周側の端部113eから外周側の端部113fへ横断する幅W方向に沿う断面において、仕切壁115よりも外周側の断面積が、仕切壁115よりも内周側の断面積よりも小さくなっている。
そのため、外周抵抗部113kは、仕切壁115よりも外周側を流れる被計測気体Gが、仕切壁115よりも内周側を流れる被計測気体よりも、外周抵抗部113kの壁面及び仕切壁115の壁面から抵抗を受けやすくなる。その結果、外周抵抗部113kの仕切壁115より外周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失は、外周抵抗部113kの仕切壁115より内周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失よりも高くなる。
図8Bは、図7に示す熱式流量計100Aの外周抵抗部113kにおける被計測気体Gの流速分布を示すグラフである。なお、図8Bに示すグラフの横軸は、図7に示す断面において、被計測気体Gの主流れ方向Fすなわち迂回通路113の幅W方向の位置であり、縦軸は迂回通路113を流れる被計測気体Gの流速である。
前述のようなループ状の周回形状を有しない折返し形状の副通路110は、迂回通路113が外周抵抗部113kを有しない場合、迂回通路113の幅W方向において流速分布に偏りを生じる。より詳細には、迂回通路113の折返し部113bと出口通路112との間で、図8Bに破線で示すように、迂回通路113の外周側、すなわち、幅W方向の外周側の端部113f寄りを流れる被計測気体Gの流速が、迂回通路113の内周側、すなわち幅W方向の内周側の端部113e寄りを流れる被計測気体Gの流速よりも高くなる。
本実施形態の熱式流量計100Aの迂回通路113は、外周抵抗部113kに仕切壁115を有し、仕切壁115よりも外周側を流れる被計測気体Gの圧力損失が、仕切壁115よりも内周側を流れる被計測気体Gの圧力損失よりも高くなっている。これにより、図8Bに実線で示すように、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gの流速が低下し、迂回通路113を流れる被計測気体Gの流速分布の外周側への偏りを抑制することができる。
したがって、本実施形態の熱式流量計100Aによれば、前述の実施形態1の熱式流量計100と同様に、ループ状の周回形状を有しない湾曲した折返し形状の副通路110における被計測気体Gの流速分布の偏りを抑制することができる。よって、本実施形態の熱式流量計100Aによれば、主通路202を流れる被計測気体Gの流量の計測誤差を低減することができる。
[実施形態3]
次に、本発明に係る熱式流量計の実施形態3について、図1、図4、図5Aおよび図5Bを援用し、図9を用いて説明する。
図9は、本発明の実施形態3に係る熱式流量計100Bの模式的な断面図である。本実施形態の熱式流量計100Bは、内周抵抗部113mおよび外周抵抗部113nの構成が前述の実施形態1の熱式流量計100の内周抵抗部113cおよび外周抵抗部113dと異なっている。本実施形態の熱式流量計100Bのその他の構成は、前述の実施形態1の熱式流量計100の構成と同様であるため、同一の部分には同一の符号を付して、説明を省略する。
本実施形態の熱式流量計100Bにおいて、迂回通路113は、入口通路111から主流れ方向Fに交差する方向に湾曲または分岐した方向転換部113aと、出口通路112に向けて折り返すように湾曲した折返し部113bと、この折返し部113bと方向転換部113aとの間に設けられた内周抵抗部113mとを有している。
内周抵抗部113mは、迂回通路113の内周側の壁面に外周側へ向けて突出した凸部116を有することで、迂回通路113の内周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失が、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失よりも高くなるように構成されている。なお、凸部116は、たとえば、入口通路111から折返し部113bまで真っ直ぐに延びる内周抵抗部113mの延在方向の中央部に設けることができる。
前述のようなループ状の周回形状を有しない折返し形状の副通路110は、迂回通路113が内周抵抗部113mを有しない場合、迂回通路113の幅W方向において流速分布に偏りを生じる。より詳細には、迂回通路113の方向転換部113aと折返し部113bとの間で、図5Aに破線で示すように、迂回通路113の内周側、すなわち、幅W方向の内周側の端部113e寄りを流れる被計測気体Gの流速が、迂回通路113の外周側、すなわち幅W方向の外周側の端部113f寄りを流れる被計測気体Gの流速よりも高くなる。
本実施形態の熱式流量計100Bの迂回通路113は、内周抵抗部113mの内周側の壁面に凸部116を有し、内周側を流れる被計測気体Gの圧力損失が、仕切壁115よりも外周側を流れる被計測気体Gの圧力損失よりも高くなっている。より詳細には、内周抵抗部113mの内周側の壁面に沿う被計測気体Gの流れは、凸部116にぶつかって衝突損失を生じ、流動抵抗が大きくなる。また、凸部116にぶつかった被計測気体Gの流れは、内周抵抗部113mの外周側へ向けて方向を変える。これにより、図5Aに実線で示すように、迂回通路113の内周側を流れる被計測気体Gの流速が低下し、迂回通路113を流れる被計測気体Gの流速分布の内周側への偏りを抑制することができる。
また、迂回通路113は、折返し部113bと出口通路112との間に設けられた外周抵抗部113nを有している。外周抵抗部113nは、迂回通路113の外周側の壁面に内周側へ向けて突出した凸部116を有することで、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失が迂回通路113の内周側を流れる被計測気体に対する圧力損失よりも高くなるように構成されている。なお、凸部116は、たとえば、折返し部113bから出口通路112まで真っ直ぐに延びる外周抵抗部113nの延在方向において、折返し部113b側の始端部に設けることができる。
前述のようなループ状の周回形状を有しない折返し形状の副通路110は、迂回通路113が外周抵抗部113nを有しない場合、迂回通路113の幅W方向において流速分布に偏りを生じる。より詳細には、迂回通路113の折返し部113bと出口通路112との間で、図5Bに破線で示すように、迂回通路113の外周側、すなわち、幅W方向の外周側の端部113f寄りを流れる被計測気体Gの流速が、迂回通路113の内周側、すなわち幅W方向の内周側の端部113e寄りを流れる被計測気体Gの流速よりも高くなる。
本実施形態の熱式流量計100Bの迂回通路113は、外周抵抗部113nに凸部116を有し、外周側を流れる被計測気体Gの圧力損失が、仕切壁115よりも内周側を流れる被計測気体Gの圧力損失よりも高くなっている。より詳細には、外周抵抗部113nの外周側の壁面に沿う被計測気体Gの流れは、凸部116にぶつかって衝突損失を生じ、流動抵抗が大きくなる。また、凸部116にぶつかった被計測気体Gの流れは、外周抵抗部113nの内周側へ向けて方向を変える。これにより、図5Bに実線で示すように、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gの流速が低下し、迂回通路113を流れる被計測気体Gの流速分布の外周側への偏りを抑制することができる。
したがって、本実施形態の熱式流量計100Bによれば、前述の実施形態1の熱式流量計100と同様に、ループ状の周回形状を有しない湾曲した折返し形状の副通路110における被計測気体Gの流速分布の偏りを抑制することができる。よって、本実施形態の熱式流量計100Bによれば、主通路202を流れる被計測気体Gの流量の計測誤差を低減することができる。
[実施形態4]
次に、本発明に係る熱式流量計の実施形態4について、図1、図4、図5Aおよび図5Bを援用し、図10を用いて説明する。
図10は、本発明の実施形態4に係る熱式流量計100Cの模式的な断面図である。本実施形態の熱式流量計100Cは、内周抵抗部113pおよび外周抵抗部113qの構成が前述の実施形態1の熱式流量計100の内周抵抗部113cおよび外周抵抗部113dと異なっている。本実施形態の熱式流量計100Cのその他の構成は、前述の実施形態1の熱式流量計100の構成と同様であるため、同一の部分には同一の符号を付して、説明を省略する。
本実施形態の熱式流量計100Cにおいて、迂回通路113は、入口通路111から主流れ方向Fに交差する方向に湾曲または分岐した方向転換部113aと、出口通路112に向けて折り返すように湾曲した折返し部113bと、この折返し部113bと方向転換部113aとの間に設けられた内周抵抗部113pとを有している。
この内周抵抗部113pは、迂回通路113の内周側の壁面に凹部117を有することで、迂回通路113の内周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失が、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失よりも高くなるように構成されている。図10に示す例において、入口通路111から折返し部113bまで真っ直ぐに延びる内周抵抗部113pの延在方向の中央部に、複数の凹部117が内周抵抗部113pの延在方向に並んで設けられている。
前述のようなループ状の周回形状を有しない折返し形状の副通路110は、迂回通路113が内周抵抗部113pを有しない場合、迂回通路113の幅W方向において流速分布に偏りを生じる。より詳細には、迂回通路113の方向転換部113aと折返し部113bとの間で、図5Aに破線で示すように、迂回通路113の内周側、すなわち、幅W方向の内周側の端部113e寄りを流れる被計測気体Gの流速が、迂回通路113の外周側、すなわち幅W方向の外周側の端部113f寄りを流れる被計測気体Gの流速よりも高くなる。
本実施形態の熱式流量計100Cの迂回通路113は、内周抵抗部113pの内周側の壁面に凹部117を有し、内周側を流れる被計測気体Gの圧力損失が、仕切壁115よりも外周側を流れる被計測気体Gの圧力損失よりも高くなっている。より詳細には、内周抵抗部113pの内周側の壁面に沿う被計測気体Gの流れは、凹部117によって流動抵抗が大きくなる。これにより、図5Aに実線で示すように、迂回通路113の内周側を流れる被計測気体Gの流速が低下し、迂回通路113を流れる被計測気体Gの流速分布の内周側への偏りを抑制することができる。
また、迂回通路113は、折返し部113bと出口通路112との間に設けられた外周抵抗部113qを有している。外周抵抗部113qは、迂回通路113の外周側の壁面に凹部117を有することで、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gに対する圧力損失が迂回通路113の内周側を流れる被計測気体に対する圧力損失よりも高くなるように構成されている。図10に示す例では、折返し部113bから出口通路112まで真っ直ぐに延びる外周抵抗部113qの延在方向において、折返し部113b側の始端部に、複数の凹部117が外周抵抗部113qの延在方向に並んで設けられている。
前述のようなループ状の周回形状を有しない折返し形状の副通路110は、迂回通路113が外周抵抗部113qを有しない場合、迂回通路113の幅W方向において流速分布に偏りを生じる。より詳細には、迂回通路113の折返し部113bと出口通路112との間で、図5Bに破線で示すように、迂回通路113の外周側、すなわち、幅W方向の外周側の端部113f寄りを流れる被計測気体Gの流速が、迂回通路113の内周側、すなわち幅W方向の内周側の端部113e寄りを流れる被計測気体Gの流速よりも高くなる。
本実施形態の熱式流量計100Cの迂回通路113は、外周抵抗部113qに凹部117を有し、外周側を流れる被計測気体Gの圧力損失が、仕切壁115よりも内周側を流れる被計測気体Gの圧力損失よりも高くなっている。より詳細には、外周抵抗部113qの外周側の壁面に沿う被計測気体Gの流れは、凹部117により流動抵抗が大きくなる。これにより、図5Bに実線で示すように、迂回通路113の外周側を流れる被計測気体Gの流速が低下し、迂回通路113を流れる被計測気体Gの流速分布の外周側への偏りを抑制することができる。
したがって、本実施形態の熱式流量計100Cによれば、前述の実施形態1の熱式流量計100と同様に、ループ状の周回形状を有しない湾曲した折返し形状の副通路110における被計測気体Gの流速分布の偏りを抑制することができる。よって、本実施形態の熱式流量計100Cによれば、主通路202を流れる被計測気体Gの流量の計測誤差を低減することができる。
[実施形態5]
最後に、本発明に係る熱式流量計の実施形態5について、図1、図2、および図4を援用し、図11、図12Aおよび図12Bを用いて説明する。図11は、本発明の実施形態5に係る熱式流量計100Dの模式的な断面図である。図11は、実施形態1の熱式流量計100の図3に相当する、本実施形態の熱式流量計100Dの断面図である。
本実施形態の熱式流量計100Dは、内周抵抗部113rおよび外周抵抗部113sの構成と、ハウジング130の計測部133の断面形状が前述の実施形態1の熱式流量計100の内周抵抗部113cおよび外周抵抗部113dと異なっている。本実施形態の熱式流量計100Dのその他の構成は、前述の実施形態1の熱式流量計100の構成と同様であるため、同一の部分には同一の符号を付して、説明を省略する。
本実施形態の熱式流量計100Dの内周抵抗部113rおよび外周抵抗部113sは、図11に示すように、前述の実施形態1の熱式流量計100の内周抵抗部113cおよび外周抵抗部113dと同様に、台形の断面形状を有している。しかし、本実施形態の熱式流量計100Dの外周抵抗部113sの断面積は、内周抵抗部113rの断面積よりも小さくなっている。
より詳細には、内周抵抗部113rの下底の長さ、すなわち外周側の端部113fにおける高さ方向Hの寸法h1は、外周抵抗部113sの下底の長さ、すなわち内周側の端部113eにおける高さ方向Hの寸法h3よりも大きい。また、内周抵抗部113rの上底の長さ、すなわち内周抵抗部113rの内周側の端部113eにおける高さ方向Hの寸法h2は、外周抵抗部113sの上底の長さ、すなわち外周抵抗部113sの外周側の端部113fにおける高さ方向Hの寸法h4よりも大きい。一方、内周抵抗部113rの幅Wは、外周抵抗部113sの幅Wとおおむね等しいため、内周抵抗部113rの台形断面の底角の角度は、外周抵抗部113sの台形断面の底角の角度よりも小さくなっている。
図12Aおよび図12Bは、それぞれ、図11に示す熱式流量計100Dの内周抵抗部113rおよび外周抵抗部113sを流れる被計測気体Gの流速分布を示すグラフである。前述のように、本実施形態の熱式流量計100Dは、外周抵抗部113sの断面積が、内周抵抗部113rの断面積よりも小さくなっている。そのため、図12Bに示すように、外周抵抗部113sを流れる被計測気体Gの流速は、図5Bに示す実施形態1の熱式流量計100の外周抵抗部113dを流れる被計測気体Gの流速と比較して増加する。
被計測気体Gが迂回通路113の壁面から受ける抵抗は、流速の2乗に比例して大きくなる。そのため、外周抵抗部113dの外周側における被計測気体Gの圧力損失の増加は内周側に比べて相対的に大きくなり、外周側における被計測気体Gの流動抵抗が、内周側における被計測気体Gの流動抵抗よりも大きくなる。これにより、図12Bに破線で示すように、外周抵抗部113dにおいて外周側に偏っていた被計測気体Gの流速分布を、図12Bに実線で示すように、図5Bに示す実施形態1の場合よりも、幅W方向中央側へシフトさせることができる。
したがって、本実施形態の熱式流量計100Dによれば、前述の実施形態1の熱式流量計100と同様の効果を得られるだけでなく、ループ状の周回形状を有しない湾曲した折返し形状の副通路110における被計測気体Gの流速分布の偏りをより効果的に抑制することができる。よって、本実施形態の熱式流量計100Dによれば、主通路202を流れる被計測気体Gの流量の計測誤差をより低減することができる。
また、本実施形態の熱式流量計100Dは、実施形態1の熱式流量計100と同様に、副通路110を画定するハウジング130を備えている。このハウジング130は、前述のように、主流れ方向Fに沿う平板状である。さらに、本実施形態の熱式流量計100Dは、図11に示すように、ハウジング130の計測部133の主流れ方向Fの上流側の端部の厚さが、主流れ方向Fの下流側の端部の厚さよりも薄くなっている。
このように、ハウジング130の計測部133が、鈍頭の翼状の形状を有することで、主通路202を流れる被計測気体Gに対する抵抗を低減することができる。また、図11に示すように、主通路202を流れる被計測気体Gの主流れ方向Fの下流側において、ハウジング130の計測部133の厚さを薄くして、熱式流量計100Dの小型化および軽量化を実現することが可能である。このように、ハウジング130の計測部133の主流れ方向Fの上流側の端部の厚さが、主流れ方向Fの下流側の端部の厚さよりも薄くなる形状は、外周抵抗部113sの断面積が、内周抵抗部113rの断面積よりも小さくなる場合に、特に有効である。
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。たとえば、前記した各実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
たとえば、前述の実施形態では、熱式流量計の副通路を構成する迂回通路が内周抵抗部と外周抵抗部の双方を有している場合について説明したが、迂回通路は外周抵抗部を有しなくてもよい。また、前述の実施形態では、迂回通路の折返し部が一つである場合について説明したが、迂回通路は、複数の折返し部と、折返し部と折返し部の間に設けられ出口通路から離れるように湾曲した一以上の逆折返し部と、を有してもよい。この場合、迂回通路の形状は、たとえばM字状の形状、S字状の形状、または波形の形状にすることができる。