(第1の実施の形態)
図1は、本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。なお、図1では本発明に係わる機器および装置のみを示し、それ以外の機器および装置については図示と説明を省略する。カメラ1は、カメラボディ100と、カメラボディ100に着脱可能な交換レンズ200とから構成される。
カメラボディ100には交換レンズ200が着脱可能に取り付けられるレンズマウント101が設けられている。カメラボディ100のレンズマウント101の近傍(レンズマウント101の内周側)の位置には、レンズマウント101の内周側に部分的に突出する状態で、接点を保持する保持部(電気的な接続部)102が設けられている。この保持部102には複数の接点が設けられている。
また交換レンズ200には、ボディ側のレンズマウント101に対応する、カメラボディ100が着脱可能に取り付けられるレンズマウント201が設けられている。交換レンズ200のレンズマウント201の近傍(レンズマウント201の内周側)の位置には、レンズマウント201の内周側に部分的に突出する状態で、接点を保持する保持部(電気的な接続部)202が設けられている。この保持部202には複数の接点が設けられている。
カメラボディ100に交換レンズ200が装着されると、複数の接点が設けられた保持部102が、複数の接点が設けられた保持部202に電気的に且つ物理的に接続される。両保持部102,202は、カメラボディ100から交換レンズ200への電力供給、および、カメラボディ100と交換レンズ200との信号の送受信に利用される。
カメラボディ100内のレンズマウント101後方には、例えばCMOSやCCDなどの撮像素子104が設けられる。本実施形態の撮像素子104の撮像面には、撮像用画素と共に焦点検出用画素が組み込まれている。撮像素子104の撮像面については後に詳述する。
カメラボディ100の上方には、入力装置たるボタン107が設けられている。カメラボディ100が電源オフ状態のとき、ユーザによりボタン107が押下されると、カメラボディ100は電源オン状態になる。また、交換レンズ200の鏡筒側面にも、ボタン107と同様のボタン207が設けられている。カメラボディ100が電源オフ状態のとき、カメラボディ100に取り付けられている交換レンズ200のボタン207がユーザにより押下されると、カメラボディ100は電源オン状態になる。
図2は、本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した断面図である。交換レンズ200は、被写体像を結像させる結像光学系210を備える。結像光学系210は複数のレンズ210a〜210cおよび絞り211により構成されている。これら複数のレンズ210a〜210cには、被写体像のピント位置を制御するためのフォーカシングレンズ210bが含まれている。
交換レンズ200はいわゆるズームレンズである。すなわち、結像光学系210は焦点距離が可変に構成されており、ユーザは例えば交換レンズ200に設けられた操作環を回転させる、あるいはカメラボディ100に設けられたボタン等の操作部材を操作する、等の所定の操作によって結像光学系210の焦点距離を変化させることができる。
交換レンズ200内部には、交換レンズ200の各部の制御を司るレンズ制御部203が設けられている。レンズ制御部203は不図示のマイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成される。レンズ制御部203には、レンズ側第1通信部217、レンズ側第2通信部218、レンズ駆動部212、レンズ位置検出部213、ズーム位置検出部214、ROM215、およびRAM216が接続されている。
レンズ側第1通信部217およびレンズ側第2通信部218は、保持部102、202の各通信接点を介して、カメラボディ100との間で信号の授受が可能に構成されている。このレンズ側第1通信部217とレンズ側第2通信部218はそれぞれ、交換レンズ200側の通信インターフェースである。レンズ制御部203はこれら通信インターフェースを使って、カメラボディ100(後述するボディ制御部103)との間で後述する各データ通信(ホットライン通信、コマンドデータ通信)を行う。受電部230は、カメラボディ100から保持部102、202の電力供給接点を介して、カメラボディ100からレンズ制御部203を含む各部の動作電流を受電する。
レンズ駆動部212は例えばステッピングモータ等のアクチュエータを有し、レンズ駆動部212に入力された信号に応じてフォーカシングレンズ210bを駆動する。フォーカシングレンズ210bは、レンズ駆動部212により光軸方向に駆動される。レンズ位置検出部213は、例えばフォーカシングレンズ210bに接続されたエンコーダ等により構成され、フォーカシングレンズ210bの光軸方向の位置を検出する。同様に、ズーム位置検出部214は、例えば結像光学系210に含まれるズーミングレンズに接続されたエンコーダ等により構成され、現在のズーム位置を検出する。
ROM215は不揮発性の記憶媒体であり、レンズ制御部203が実行する所定の制御プログラムや、後述する各種テーブル等が予め記憶される。RAM216は揮発性の記憶媒体であり、レンズ制御部203により各種データの記憶領域として利用される。
撮像素子104の前面には、撮像素子104の露光状態を制御するためのシャッター115と、光学的ローパスフィルターや赤外線カットフィルターを組み合わせた光学フィルター116とが設けられている。結像光学系210を透過した被写体光は、シャッター115およびフィルター116を介して撮像素子104に入射する。
カメラボディ100内部には、カメラボディ100の各部の制御を司るボディ制御部103が設けられている。ボディ制御部103は不図示のマイクロコンピュータ、RAMおよびその周辺回路等から構成される。ボディ制御部103には図1に示したボタン107が接続されており、ボタン107の押下操作を検知することが可能である。
ボディ制御部103には、ボディ側第1通信部117およびボディ側第2通信部118が接続されている。ボディ側第1通信部117およびボディ側第2通信部118は共に保持部102に接続されており、交換レンズ200との間で信号の授受が可能である。ボディ側第1通信部117は、保持部102に設けられた複数の通信接点を介して、レンズ側第1通信部217とデータの授受を行うことができる。同様に、ボディ側第2通信部118はレンズ側第2通信部218とデータの授受を行うことができる。換言すれば、ボディ側第1通信部117とボディ側第2通信部118はそれぞれ、ボディ側の通信インターフェースである。ボディ制御部103はこれら通信インターフェースを使って、交換レンズ200(レンズ制御部203)との間で、後述する各通信(ホットライン通信、コマンドデータ通信)を行う。
カメラボディ100の背面には、LCDパネル等により構成される表示装置111が配置される。ボディ制御部103はこの表示装置111に対し、撮像素子104の出力に基づく被写体の画像(いわゆるスルー画)や、撮影条件等を設定するための各種のメニュー画面を表示する。
図2の下部に示すように、ボディ制御部103はソフトウェア形態により、焦点検出部103a、範囲演算部103b、端部判定部103c、駆動指示送出部103d、および合焦制御部103eを備える。これらの各部は、ボディ制御部103が不図示のROM等に格納された所定の制御プログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実装されるが、これらの各部を専用の電子回路として構成してもよい。
焦点検出部103aは、撮像素子104の焦点検出用画素列の出力から被写体像の位相差を検出することにより、結像光学系210の焦点状態を検出する。範囲演算部103bは、絞り211の開口径とフォーカシングレンズ210bの位置とに基づいて、焦点検出部103aの焦点検出可能範囲を演算する。端部判定部103cは、範囲演算部103bにより演算された焦点検出可能範囲に、結像光学系210の端部(至近端および無限端の一方)が含まれるか否かを判定する。駆動指示送出部103dは、ボディ側第1通信部117を介して交換レンズ200に、フォーカシングレンズ210bの駆動指示を送出する。レンズ制御部203はこの駆動指示を受信すると、駆動指示に従ってフォーカシングレンズ210bを駆動する。合焦制御部103eは、焦点検出部103aにより検出された焦点状態に基づいて、結像光学系210が合焦状態になるように駆動指示送出部103dを制御する。
(保持部102,202の説明)
図3は保持部102,202の詳細を示す模式図である。なお図3において保持部102がレンズマウント101の右側に配置されているのは、実際のマウント構造に倣ったものである。すなわち、本実施形態の保持部102は、カメラボディ100のレンズマウント101のマウント面よりも奥まった場所(図3においてレンズマウント101よりも右側の場所)に配置されている。同様に、保持部202がレンズマウント201の右側に配置されているのは、本実施形態の保持部202が交換レンズ200のレンズマウント201のマウント面よりも突出した場所に配置されていることを表している。保持部102と保持部202がこのように配置されているので、レンズマウント101のマウント面とレンズマウント201のマウント面とを接触させて、カメラボディ100と交換レンズ200とをマウント結合させると、保持部102と保持部202とが接続され、両保持部に設けられている電気接点同士も接続することになる。このようなマウント構造については周知であるのでこれ以上の説明、図示を省略する。
図3に示すように、保持部102にはBP1〜BP12の12個の接点が存在する。また保持部202には、上記の12個の接点にそれぞれ対応する、LP1〜LP12の12個の接点が存在する。
接点BP1および接点BP2は、カメラボディ100内の送電部130に接続されている。送電部130は、接点BP1に、アクチュエータ等の駆動系を有し消費電力が比較的大きい回路(レンズ駆動部212等)を除く交換レンズ200内の各部の動作電圧を供給する。すなわち、接点BP1および接点LP1からは、上記の各駆動部を除く交換レンズ200内の各部の動作電圧が供給される。この接点BP1に供給可能な電圧値は、最小電圧値〜最大電圧値の範囲(例えば3V台での電圧幅)をもつが、標準的に供給される電圧値はその最大電圧値と最小電圧値の中間値近傍の電圧値である。そしてこれにより、カメラボディ100側から交換レンズ200側に供給される電流値は、電源ON状態において、約数10mA〜数100mAの範囲内の電流値である。
接点BP2は、接点BP1に与えられる上記動作電圧に対応する接地端子である。すなわち、接点BP2および接点LP2は、上記の動作電圧に対応する接地端子電圧である。接点LP1および接点LP2は、交換レンズ200内の受電部230に接続されている。受電部230は、カメラボディ100から供給された電力を、レンズ制御部203を含む交換レンズ200内の各部に供給する。
以下の説明では、接点BP1および接点LP1により構成される信号線を、信号線V33と呼ぶ。また、接点BP2および接点LP2により構成される信号線を、信号線GNDと呼ぶ。これらの接点LP1,LP2、BP1,BP2は、カメラボディ100側から交換レンズ200側へ電源供給するための、電源系接点を構成する。
接点BP3,BP4,BP5,およびBP6は、ボディ側第1通信部117に接続されている。これらの接点に対応する交換レンズ200側の接点LP3,LP4,LP5,およびLP6は、レンズ側第1通信部217に接続されている。ボディ側第1通信部117とレンズ側第1通信部217は、これらの接点(通信系接点)を用いて、互いにデータの送受信を行う。ボディ側第1通信部117とレンズ側第1通信部217が行う通信の内容については、後に詳述する。
なお以下の説明では、接点BP3および接点LP3により構成される信号線を、信号線CLKと呼ぶ。同様に、接点BP4および接点LP4により構成される信号線を信号線BDATと、接点BP5および接点LP5により構成される信号線を信号線LDATと、接点BP6および接点LP6により構成される信号線を信号線RDYと呼ぶ。
接点BP7,BP8,BP9,およびBP10は、ボディ側第2通信部118に接続されている。これらの接点に対応する交換レンズ200側の接点LP7,LP8,LP9,およびLP10は、レンズ側第2通信部218に接続されている。レンズ側第2通信部218は、これらの接点(通信系接点)を用いて、ボディ側第2通信部118にデータの送信を行う。ボディ側第2通信部118とレンズ側第2通信部218が行う通信の内容については、後に詳述する。
なお以下の説明では、接点BP7および接点LP7により構成される信号線を、信号線HREQと呼ぶ。同様に、接点BP8および接点LP8により構成される信号線を信号線HANSと、接点BP9および接点LP9により構成される信号線を信号線HCLKと、接点BP10および接点LP10により構成される信号線を信号線HDATと呼ぶ。
接点BP11および接点BP12は、カメラボディ100内の電源回路140に接続されている。電源回路140は、接点BP12に、アクチュエータ等の駆動系を有し消費電力が比較的大きい回路(レンズ駆動部212等)の駆動電圧を供給する。すなわち、接点BP12および接点LP12からは、上記の各駆動部の駆動電圧が供給される。この接点BP12に供給可能な電圧値は、最小電圧値〜最大電圧値の範囲をもつが、その範囲はいずれも、前述した接点BP1に供給可能な電圧値範囲よりも大きい電圧値である(例えば、接点BP12に供給可能な最大電圧値は、接点BP1に供給可能な最大電圧値の数倍程度)。即ち接点BP12に供給される電圧値は、上述の接点BP1に供給される電圧値とは、その大きさが異なる電圧値である。なお接点BP12に標準的に供給される電圧値は、接点BP12に供給可能な最大電圧値と最小電圧値の中間値近傍の電圧値である。そしてこれにより、カメラボディ100側から交換レンズ200側に供給される電流は、電源ON状態において、約10mA〜数Aの電流値となる。
接点BP11は、接点BP12に与えられる上記駆動電圧に対応する接地端子である。すなわち、接点BP11および接点LP11は、上記駆動電圧に対応する接地端子である。
以下の説明では、接点BP11および接点LP11により構成される信号線を、信号線PGNDと呼ぶ。また、接点BP12および接点LP12により構成される信号線を、信号線BATと呼ぶ。これらの接点LP11,LP12、BP11,BP12は、カメラボディ100側から交換レンズ200側へ電源供給するための、電源系接点を構成する。
なお、上述の接点BP12、接点LP12に供給される電圧値(電流値)と、接点BP1,LP1に供給される電圧値(電流値)との大小関係から明らかなように、それら各接点に供給される電圧にそれぞれに対する接地端子となる接点BP11および接点LP11を流れる電流の最大値と最小値との差は、接点BP2および接点LP2を流れる電流の最大値と最小値との差よりも大きくなっている。これは、アクチュエータ等の駆動系を有する各駆動部が消費する電力が、交換レンズ200内のレンズ制御部203等の電子回路に比べて大きいこと、ならびに、被駆動部材を駆動する必要がない場合には各駆動部が電力を消費しないことに拠る。
(コマンドデータ通信の説明)
レンズ制御部203は、レンズ側第1通信部217を制御して、接点LP3〜LP6、すなわち信号線CLK,BDAT,LDAT,およびRDYを介して、ボディ側第1通信部117からの制御データの受信と、ボディ側第1通信部117への応答データの送信とを並行して、第1の所定周期(本実施形態では例えば16ミリ秒)で行う。以下、レンズ側第1通信部217とボディ側第1通信部117との間で行われる通信の詳細を説明する。
なお、本実施形態において、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217と、ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117との間で行われる通信を「コマンドデータ通信」と称する。また、コマンドデータ通信に利用される4つの信号線(信号線CLK,BDAT,LDAT,およびRDY)から成る伝送路を第1伝送路と称する。
図4は、コマンドデータ通信の例を示すタイミングチャートである。ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117は、コマンドデータ通信の開始時(T1)、まず信号線RDYの信号レベルを確認する。信号線RDYの信号レベルはレンズ側第1通信部217の通信可否を表している。つまり、信号線RDYにはレンズ側第1通信部217から、データ通信の可否を表す通信可否信号が出力される。レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、通信できない状態である場合には、接点LP6からH(High)レベルの信号を出力する。すなわち、信号線RDYの信号レベルをHレベルにする。ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117は、信号線RDYがHレベルである場合、これがLレベルになるまで通信開始しない。また通信中の次の処理を実行しない。
信号線RDYがL(Low)レベルであれば、ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117は接点BP3からクロック信号401を出力する。すなわち、信号線CLKを介してレンズ側第1通信部217にクロック信号401を伝送する。ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117はこのクロック信号401に同期して、接点BP4から制御データの前半部分であるボディ側コマンドパケット信号402を出力する。すなわち、信号線BDATを介してレンズ側第1通信部217にボディ側コマンドパケット信号402を伝送する。
また、信号線CLKにクロック信号401が出力されると、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、クロック信号401に同期して接点LP5から応答データの前半部分であるレンズ側コマンドパケット信号403を出力する。すなわち、信号線LDATを介してボディ側第1通信部117にレンズ側コマンドパケット信号403を伝送する。
レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、レンズ側コマンドパケット信号403の送信完了に応じて、信号線RDYの信号レベルをHレベルにする(T2)。レンズ制御部203は、受信したボディ側コマンドパケット信号402の内容に応じた処理である第1制御処理404(後述)を開始する。
レンズ制御部203は第1制御処理404が完了すると、レンズ側第1通信部217に第1制御処理404の完了を通知する。レンズ側第1通信部217はこの通知に応じて、接点LP6からLレベルの信号を出力する。すなわち、信号線RDYの信号レベルをLレベルにする(T3)。ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117はこの信号レベルの変化に応じて、接点BP3からクロック信号405を出力する。すなわち、信号線CLKを介してレンズ側第1通信部217にクロック信号405を伝送する。
ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117はこのクロック信号405に同期して、接点BP4から制御データの後半部分であるボディ側データパケット信号406を出力する。すなわち、信号線BDATを介してレンズ側第1通信部217にボディ側データパケット信号406を伝送する。
また、信号線CLKにクロック信号405が出力されると、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217はクロック信号405に同期して接点LP5から応答データの後半部分であるレンズがデータパケット信号407を出力する。すなわち、信号線LDATを介してボディ側第1通信部117にレンズ側データパケット信号407を伝送する。
レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、レンズ側データパケット信号407の送信完了に応じて、信号線RDYの信号レベルを再びHレベルにする(T4)。レンズ制御部203は、受信したボディ側データパケット信号406の内容に応じた処理である第2制御処理408(後述)を開始する。
以上のように、レンズ側第1通信部217は、カメラボディ100からクロック信号が出力される信号線CLKと、カメラボディ100からクロック信号に同期してデータ信号が出力される信号線BDATと、レンズ側第1通信部217からクロック信号に同期してデータ信号が出力される信号線LDATと、レンズ側第1通信部217からレンズ側第1通信部217のデータ通信の可否を表す通信可否信号が出力される信号線RDYと、を用いてカメラボディ100とのデータ通信を行う。
ここで、レンズ制御部203が行う第1制御処理404、および第2制御処理408について述べる。
例えば、受信したボディ側コマンドパケット信号402が、交換レンズ側の特定のデータを要求する内容であった場合について述べる。レンズ制御部203は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402の内容を解析処理すると共に、当該要求されている特定データを生成する処理を実行する。更にレンズ制御部203は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402に含まれているチェックサムデータを用いて、コマンドパケット信号402の通信にエラーがないか否かをデータバイト数から簡易的にチェックする通信エラーチェック処理をも実行する。この第1制御処理404で生成された特定データの信号は、レンズ側データパケット信号407としてボディ側に出力される。なお、この場合においてコマンドパケット信号402の後でボディ側から出力されるボディ側データパケット信号406は、レンズ側にとっては特に意味をなさないダミーデータ信号(チェックサムデータは含む)となっている。この場合にはレンズ制御部203は、第2制御処理408として、ボディ側データパケット信号406に含まれるチェックサムデータを用いた、上述の如き通信エラーチェック処理を実行する。
また例えば、受信したボディ側コマンドパケット信号402が、レンズ側の被駆動部材を駆動する指示であった場合について述べる。例えば、コマンドパケット信号402がフォーカシングレンズ210bの駆動指示であり、受信したボディ側データパケット信号406がフォーカシングレンズ210bの駆動量であった場合について述べる。レンズ制御部203は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402の内容を解析処理すると共に、その内容を理解したことを表す了解信号を生成する。更にレンズ制御部203は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402に含まれているチェックサムデータを用いて、上述の如き通信エラーチェック処理をも実行する。この第1制御処理404で生成された了解信号は、レンズ側データパケット信号407としてボディ側に出力される。またレンズ制御部203は、第2制御処理408として、ボディ側データパケット信号406の内容の解析処理を実行すると共に、ボディ側データパケット信号406に含まれるチェックサムデータを用いた上述の如き通信エラーチェック処理を実行する。
レンズ制御部203は第2制御処理408が完了すると、レンズ側第1通信部217に第2制御処理408の完了を通知する。これによってレンズ制御部203は、レンズ側第1通信部217に、接点LP6からLレベルの信号を出力させる。すなわち、信号線RDYの信号レベルをLレベルにする(T5)。
なお受信したボディ側コマンドパケット信号402が、上述のようなレンズ側の被駆動部材(たとえばフォーカシングレンズ210b)を駆動する指示であった場合、レンズ制御部203は、レンズ側第1通信部217に信号線RDYの信号レベルをLレベルにさせつつ、レンズ駆動部212に対して、フォーカシングレンズ210bを当該駆動量だけ駆動する処理を実行させる。
上述した時刻T1〜時刻T5に行われた通信が、1回のコマンドデータ通信である。上述のように、1回のコマンドデータ通信では、ボディ制御部103およびボディ側第1通信部117により、ボディ側コマンドパケット信号402およびボディ側データパケット信号406がそれぞれ1つずつ送信される。すなわち、処理の都合上2つに分割されて送信されるものの、ボディ側コマンドパケット信号402およびボディ側データパケット信号406は2つ合わせて1つの制御データを構成する。
同様に、1回のコマンドデータ通信では、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217によりレンズ側コマンドパケット信号403およびレンズ側データパケット信号407がそれぞれ1つずつ送信される。すなわち、レンズ側コマンドパケット信号403およびレンズ側データパケット信号407は2つ合わせて1つの応答データを構成する。
以上のように、レンズ制御部203およびレンズ側第1通信部217は、ボディ側第1通信部117からの制御データの受信と、ボディ側第1通信部117への応答データの送信とを並行して行う。コマンドデータ通信に利用される接点LP6および接点BP6は、他のクロック信号に同期しない非同期信号(信号線RDYの信号レベル/H(High)レベル、またはL(Low)レベル)が伝送される接点である。
(ホットライン通信の説明)
レンズ制御部203は、レンズ側第2通信部218を制御して、接点LP7〜LP10、すなわち信号線HREQ,HANS,HCLK,およびHDATを介して、ボディ側第2通信部118へレンズ位置データを送信する。以下、レンズ側第2通信部218とボディ側第2通信部118との間で行われる通信の詳細を説明する。
なお、本実施形態において、レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218と、ボディ制御部103およびボディ側第2通信部118との間で行われる通信を「ホットライン通信」と称する。また、ホットライン通信に利用される4つの信号線(信号線HREQ,HANS,HCLK,およびHDAT)から成る伝送路を第2伝送路と称する。
図5は、ホットライン通信の例を示すタイミングチャートである。本実施形態のボディ制御部103は、ホットライン通信を第2の所定周期(本実施形態では例えば1ミリ秒)毎に開始するように構成されている。この周期は、コマンドデータ通信を行う周期よりも短い。図5(a)は、ホットライン通信が所定周期Tn毎に繰り返し実行されている様子を示す図である。繰り返し実行されるホットライン通信のうち、ある1回の通信の期間Txを拡大した様子が図5(b)に示されている。以下、図5(b)のタイミングチャートに基づいて、ホットライン通信の手順を説明する。
ボディ制御部103およびボディ側第2通信部118は、ホットライン通信の開始時(T6)、まず接点BP7からLレベルの信号を出力する。すなわち、信号線HREQの信号レベルをLレベルにする。レンズ側第2通信部218は、この信号が接点LP7に入力されたことをレンズ制御部203に通知する。レンズ制御部203はこの通知に応じて、レンズ位置データを生成する生成処理501の実行を開始する。生成処理501とは、レンズ制御部203がレンズ位置検出部213にフォーカシングレンズ210bの位置を検出させ、検出結果を表すレンズ位置データを生成する処理である。
レンズ制御部203が生成処理501を実行完了すると、レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218は接点LP8からLレベルの信号を出力する(T7)。すなわち、信号線HANSの信号レベルをLレベルにする。ボディ制御部103およびボディ側第2通信部118は、この信号が接点BP8に入力されたことに応じて、接点BP9からクロック信号502を出力する。すなわち、信号線HCLKを介してレンズ側第2通信部218にクロック信号を伝送する。
レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218は、このクロック信号502に同期して、接点LP10からレンズ位置データを表すレンズ位置データ信号503を出力する。すなわち、信号線HDATを介してボディ側第2通信部118にレンズ位置データ信号503を伝送する。
レンズ位置データ信号503の送信が完了すると、レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218は接点LP8からHレベルの信号を出力する。すなわち、信号線HANSの信号レベルをHレベルにする(T8)。ボディ側第2通信部118は、この信号が接点BP8に入力されたことに応じて、接点LP7からHレベルの信号を出力する。すなわち、信号線HREQの信号レベルをHレベルにする(T9)。
上述した時刻T6〜時刻T9に行われた通信が、1回のホットライン通信である。上述のように、1回のホットライン通信では、レンズ制御部203およびレンズ側第2通信部218により、レンズ位置データ信号503が1つ送信される。ホットライン通信に利用される接点LP7、LP8、BP7、およびBP8は、他のクロック信号に同期しない非同期信号が伝送される接点である。つまり接点LP7およびBP7は、非同期信号(信号線HREQの信号レベル/H(High)レベル、またはL(Low)レベル)が伝送される接点であり、接点LP8およびBP8は、非同期信号(信号線HANSの信号レベル/H(High)レベル、またはL(Low)レベル)が伝送される接点である。
なお、コマンドデータ通信とホットライン通信は、同時にも或いは一部並行的にも実行することが可能である。すなわち、レンズ側第1通信部217とレンズ側第2通信部218との一方は、その他方がカメラボディ100と通信を行っている場合であってもカメラボディ100と通信を行うことが可能である。
(焦点検出用画素の説明)
図6は、撮像素子104の撮像面を模式的に示した拡大図である。撮像用画素は緑画素310、赤画素311、青画素312の3種類の画素からなり、これらの画素がベイヤー配列で2次元配列されている。撮像用画素(緑画素310、赤画素311、青画素312)はそれぞれ、マイクロレンズと、光電変換部と、不図示の色フィルタ(赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類)とからなる。
図6において、焦点検出用画素320は行方向(図6の横方向)に連続的に配列され、焦点検出領域を形成する。焦点検出用画素320の配列は撮像用画素により取り囲まれている。撮像素子104の撮像面には、このように形成された焦点検出領域が複数存在する。つまり、行方向に連続的に配列された焦点検出用画素320が複数組存在する。なお、焦点検出用画素320が列方向(図6の縦方向)に配列された領域も存在するが、このような領域はちょうど図6を時計回りに90度回転させたものとなるので、図示および説明を省略する。
図7は焦点検出用画素320の断面図である。図7(a)が被写体光の入射方向側(光学系側)から見た断面図であり、図7(b)が横方向(図2の紙面側)から見た断面図である。焦点検出用画素320はそれぞれ、マイクロレンズ10と一対の光電変換部12、13とからなる。焦点検出用画素320において、焦点検出用の光電変換部12、13の前方にマイクロレンズ10が配置され、マイクロレンズ10により光電変換部12、13が前方に投影される。光電変換部12、13は半導体回路基板29上に形成される。
図8は撮像用画素310、311、312の断面図である。図8(a)が被写体光の入射方向側(光学系側)から見た断面図であり、図8(b)が横方向(図2の紙面側)から見た断面図である。撮影用画素310、311、312はそれぞれ、マイクロレンズ10と撮像用の光電変換部11とからなる。撮像用画素310、311、312において、撮像用の光電変換部11の前方にマイクロレンズ10が配置され、マイクロレンズ10により光電変換部11が前方に投影される。光電変換部11は半導体回路基板29上に形成される。不図示の色フィルタはマイクロレンズ10と光電変換部11の中間に配置される。
撮像用画素310、311、312の光電変換部11は、マイクロレンズ10により所定の絞り開口径(例えばF1.0)の光束をすべて受光するような形状に設計される。一方、焦点検出用画素320の一対の光電変換部12、13は、マイクロレンズ10により所定の絞り開口径(例えばF2.8)の光束をすべて受光するような形状に設計される。
(焦点検出部103aによる焦点状態の検出処理の説明)
図9はマイクロレンズを用いた瞳分割方式による焦点検出の説明図である。焦点検出用画素のマイクロレンズ50、60は結像光学系210の予定結像面近傍に配置されている。マイクロレンズ50は、その背後に配置された一対の光電変換部52、53の形状をマイクロレンズ50、60から投影距離d0だけ離間した射出瞳90上に投影し、その投影形状は測距瞳92、93を形成する。なお、投影距離d0はマイクロレンズの曲率、屈折率、マイクロレンズと光電変換部の間の距離などに応じて決まる距離であって、以下では測距瞳距離という。マイクロレンズ60は、その背後に配置された一対の光電変換部62、63の形状を投影距離(測距瞳距離)d0だけ離間した射出瞳90上に投影し、その投影形状は測距瞳92、93を形成する。すなわち、投影距離d0にある射出瞳90上で各焦点検出用画素の光電変換部の投影形状(測距瞳92、93)が一致するように、各画素の投影方向が決定されている。つまり、一対の測距瞳92、93と、一対の光電変換部52、53および一対の光電変換部62、63は、マイクロレンズ50、60を介して共役な関係となっている。
なお、図9では便宜的に、光軸上にある焦点検出用画素(マイクロレンズ50と一対の光電変換部52、53からなる)と、隣接する焦点検出用画素(マイクロレンズ60と一対の光電変換部62、63からなる)を模式的に例示しているが、焦点検出用画素が画面周辺の光軸から離れた位置にあった場合においても、一対の光電変換部はそれぞれ一対の測距瞳から各マイクロレンズに到来する光束を受光する。焦点検出用画素320の配列方向は、一対の測距瞳の並び方向すなわち一対の光電変換部の並び方向と一致させる。
光電変換部52は、測距瞳92を通過しマイクロレンズ50に向う焦点検出光束72によりマイクロレンズ50上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。光電変換部53は測距瞳93を通過し、マイクロレンズ50に向う焦点検出光束73によりマイクロレンズ50上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。また、光電変換部62は測距瞳92を通過し、マイクロレンズ60に向う焦点検出光束82によりマイクロレンズ60上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。光電変換部63は測距瞳93を通過し、マイクロレンズ60に向う焦点検出光束83によりマイクロレンズ60上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
上記のような焦点検出用画素を直線状に複数個配置し、各画素の一対の光電変換部の出力を測距瞳92および測距瞳93に対応した出力グループにまとめることによって、測距瞳92と測距瞳93を各々通過する焦点検出光束(結像光学系210の異なる領域を通過した一対の光束)が焦点検出用画素列上に形成する一対の像の強度分布に関する情報が得られる。これらの情報に対して後述する像ズレ検出演算処理(相関演算処理、位相差検出処理)を施すことにより、いわゆる瞳分割型位相差検出方式で一対の像の像ズレ量が検出される。さらに、像ズレ量に一対の測距瞳の重心間隔に応じた変換演算を行うことにより、予定結像面に対する現在の結像面(予定結像面上のマイクロレンズアレイの位置に対応した焦点検出位置における結像面)の偏差(デフォーカス量)が算出される。焦点検出部103aは以上のような演算を行うことにより、結像光学系210の焦点状態を検出する。
なお、上記説明では測距瞳は交換レンズの開口制限要素(絞り開口、レンズ外形、フードなど)によって制限されていない(けられていない)状態として説明を行ったが、交換レンズの開口制限要素によって測距瞳が制限される場合には、焦点検出用画素の光電変換部は制限を受けた測距瞳を通過する光束を焦点検出光束として受光することになる。
図10は、焦点検出部103aによる焦点検出演算の詳細を説明するための図である。焦点検出用画素列から出力される一対のデータ列(α1〜αM、β1〜βM:Mはデータ数)に対し、下記(1)式に示すような高周波カットフィルター処理を施し、第1データ列(A1〜AN)、第2データ列(B1〜BN)を生成することによって、データ列から相関処理に悪影響を及ぼすノイズ成分や高周波成分を除去する。
An=αn+2 ×α(n+1)+α(n+2),
Bn=βn+2 ×β(n+1)+β(n+2) ・・・(1)
上述した(1)式において、n=1〜Nである。また、α1〜αMは図9において測距瞳92を通る焦点検出光束により形成された像の画像データに相当し、β1〜βMは測距瞳93を通る焦点検出光束により形成された像の画像データに相当する。なお、演算時間の短縮を図る場合や、すでに大きくデフォーカスしていて高周波成分が少ないことがわかっている場合などには、この処理を省略することもできる。
次にデータ列An、Bnに対し下記(2)式に示す相関演算を行い、相関量C(k)を演算する。
C(k)=Σ|An−B(n+k)| ・・・(2)
上述した(2)式において、Σ演算はnについて累積される総和演算である。nのとる範囲は、ずらし量kに応じてAn、Bn+kのデータが存在する範囲に限定される。ずらし量kは整数であり、データ列のデータ間隔(画素ピッチ)を単位とした相対的シフト量である。(2)式の演算結果は、図10(a)に示すように、一対のデータの相関が高いシフト量(図10(a)ではk=k j =2)において相関量C(k)が極小(小さいほど相関度が高い)になる。
次に、下記(3)〜(6)式による3点内挿の手法を用いて連続的な相関量に対する極小値C(x)を与えるシフト量xを求める。
x=k j +D/SLOP ・・・(3),
C(x)= C(kj)- |D| ・・・(4),
D={C ( k j- 1 ) −C ( k j +1 )}/2 ・・・(5),
SLOP=MAX{C( k j +1 ) −C ( k j),C ( k j- 1 ) −C ( k j)} ・・・(6)
上述の(3)式で算出されたずらし量xの信頼性があるかどうかは、以下のようにして判定される。図10(b)に示すように、一対のデータの相関度が低い場合は内挿された相関量の極小値C(x)の値が大きくなる。したがって、C(x)が所定のしきい値以上の場合は算出されたずらし量の信頼性が低いと判定し、算出されたずらし量xをキャンセルする。あるいは、C(x)をデータのコントラストで規格化するために、コントラストに比例した値となるSLOPでC(x)を除した値が所定値以上の場合は、算出されたずらし量の信頼性が低いと判定し、算出されたずらし量xをキャンセルする。さらにはまた、コントラストに比例した値となるSLOPが所定値以下の場合は、被写体が低コントラストであり、算出されたずらし量の信頼性が低いと判定し、算出されたずらし量xをキャンセルする。図10(c)に示すように、一対のデータの相関度が低く、シフト範囲kmin〜kmaxの間で相関量C(x)の落ち込みがない場合は、極小値C(x)を求めることができず、このような場合は焦点検出不能と判定する。
算出されたずらし量xの信頼性があると判定された場合は、被写体像面の予定結像面に対するデフォーカス量DEFを下記(7)式で求めることができる。
DEF=KX・PY・x ・・・(7)
上述の(7)式において、PYは検出ピッチ(焦点検出用画素のピッチ)であり、KXは一対の測距瞳を通過する光束の重心の開き角の大きさ(測距瞳重心間隔と測距瞳距離によって決まる)によって決まる変換係数である。
(自動焦点調節動作の説明)
カメラ1においては、ボディ制御部103内の合焦制御部103eにより自動焦点調節が行われる。例えばユーザによる操作やボディ制御部103による自動制御等により、自動焦点調節が開始される。自動焦点調節は、表示装置111にいわゆるスルー画を表示しているときに実行されてもよいし、動画を撮影している場合や静止画の撮影直前に実行されてもよい。
本実施形態のカメラ1は、撮影絞りで自動焦点調節を行う。例えば絞り優先オートモードにおいて、ユーザが撮影絞りをF4と設定していれば、自動焦点調節を行う際、合焦制御部103eはまず絞り211の開口径をF4に相当する径に制御してから、焦点検出部103aに焦点検出を行わせる。ただし、あまり開口径を小さくしてしまうと焦点検出を行うために必要な光量が得られなくなってしまうため、所定の下限値(例えばF5.6)が設定されている。撮影絞り値がこの下限値より大きければ(すなわち開口径が所定の径よりも小さければ)、合焦制御部103eはこの下限値まで絞り211を駆動させてから焦点検出部103aに焦点状態を検出させる。以下、ここで設定された開口径を第1開口径と称する。
絞り211が第1開口径に設定されたとき、被写体のコントラストやフォーカシングレンズ210bの現在位置によっては、焦点検出部103aが焦点状態を検出不能であることがある。これはすなわち、前述したずらし量xの信頼性が低いと判定されたため、デフォーカス量DEFが算出されないことを意味している。合焦制御部103eは、デフォーカス量DEFが算出されていれば、算出されたデフォーカス量DEFに基づいてフォーカシングレンズ210bを合焦位置まで駆動させる。これにより結像光学系210は合焦状態になり、自動焦点調節が完了する。他方、焦点状態が検出不能である場合、合焦制御部103eはまず、絞り211を前述の第1開口径より大きい(開口径が小さい)第2開口径に駆動させる。つまり、絞り211がより絞り込まれた状態とする。
なお、本実施形態においてこの第2開口径は、焦点検出が可能な最も小さい開口径(最も大きい絞り値)とする。第2開口径は、焦点調節の対象とする(焦点検出を行う)焦点検出領域の撮影範囲における相対位置により異なる径としてもよい。例えば、光軸付近(撮影範囲の中央付近)に位置する焦点検出領域において焦点検出を行う場合であれば、撮影範囲の端部付近に位置する焦点検出領域よりも第2開口径を小さく(絞り値を大きく)することが可能である。また、特定の焦点検出領域を対象に焦点調節を行うのではなく、多数の焦点検出領域から適切な領域を自動的に選択する場合には、それら多数の焦点検出領域のうち最も開口径の制限が厳しいものに合わせることになる。
ここで合焦制御部103eは、再度焦点検出部103aに焦点状態を検出させ、デフォーカス量DEFが算出されているか否かを確認する。第2開口径に設定後、再度焦点状態の検出を試みるのは、前回焦点検出時に焦点状態が検出不能であっても、今回は焦点状態を検出可能である可能性があるためである。これは、前回焦点検出時の第1開口径よりも絞り211が絞られた状態であるため、前回焦点検出時よりもデフォーカス量DEFの検出可能範囲が広くなっていることに拠る。
図11は、絞り211の開口径と焦点検出可能範囲とを模式的に示す図である。図11に示した範囲90Aは、絞り211が第1開口径に設定されている場合の焦点検出可能範囲であり、範囲90Bは第1開口径より小さく第2開口径より大きい開口径に設定されている場合の焦点検出範囲、範囲90Cは第2開口径に設定されている場合の焦点検出可能範囲である。このように、焦点検出可能な範囲は絞り211が絞られるほど(絞り211の開口径が小さくなるほど)大きくなる。
なお、範囲演算部103bは、焦点検出可能範囲を、絞り211の開口径とフォーカシングレンズ210bの現在位置とに基づいて演算する。これらの情報は、コマンドデータ通信やホットライン通信等により、必要に応じてレンズ制御部203から取得される。
この2回目の焦点検出において、焦点状態が検出できたのであれば(デフォーカス量DEFが算出されたのであれば)、合焦制御部103eは当該デフォーカス量DEFに基づいてフォーカシングレンズ210bを合焦位置まで駆動させる。これにより結像光学系210は合焦状態になり、自動焦点調節が完了する。もし、この2回目の焦点検出においてもデフォーカス量DEFが算出されなかった場合、合焦制御部103eは、フォーカシングレンズ210bを一定範囲(例えば至近端から無限遠端まで)で駆動させながら焦点検出を繰り返し行う、いわゆるスキャン動作を行う必要がある。
合焦制御部103eはこのスキャン動作を開始するにあたり、まず範囲演算部103bに、現在の開口径(第2開口径)における焦点検出部103aの焦点検出可能範囲を演算させる。そして端部判定部103cに、演算された焦点検出可能範囲に結像光学系210の至近端および無限遠端の一方が含まれるか否かを判定する。
図11の範囲90Cに示すように、仮にここで演算された焦点検出可能範囲に無限遠端が含まれているとすれば、この時点において焦点検出部103aは、無限遠端からフォーカシングレンズ210bの現在位置までの範囲について焦点状態を検出することが可能なはずである。それにも関わらず、ここではデフォーカス量DEFが算出されていない。そこで合焦制御部103eは、無限遠端から現在位置までの範囲には合焦位置(合焦状態となるようなフォーカシングレンズ210bの位置)が存在しないと見なし、スキャン動作を至近端に向けて行う。つまり、フォーカシングレンズ210bが至近端の方向に駆動されるよう駆動指示送出部103dを制御する。
換言すると、合焦制御部103eは、端部判定部103cにより焦点検出可能範囲に至近端が含まれていると判定された場合にはフォーカシングレンズ210bを無限遠端の方向に駆動させ、無限遠端が含まれていると判定された場合にはフォーカシングレンズ210bを至近端の方向に駆動させる。なお、演算された焦点検出可能範囲に至近端も無限遠端も含まれていない場合、合焦制御部103eは、予め決められた方向(例えば至近端の方向)に対してスキャン動作を行う。
図12は、合焦制御部103eによる自動焦点調節処理のフローチャートである。この処理は、ボディ制御部103が不図示の記憶媒体(例えばフラッシュメモリ等のROM)に格納されている制御プログラムを実行することにより行われる処理である。なお、本処理と同様の処理を実行するよう構成された電子回路等により自動焦点調節が行われるようにしてもよい。
まずステップS100では、合焦制御部103eが、絞り211の開口径が撮影絞りに対応する径(第1開口径)になるようレンズ制御部203に指示を送信する。この指示はコマンドデータ通信により送信される。ステップS110では、焦点検出部103aが結像光学系210の焦点状態を検出する。ステップS120では合焦制御部103eが、十分な信頼性のある焦点状態を検出できたか否かを判定する。焦点状態を検出できた場合、処理はステップS220に進み、駆動指示送出部103dにより検出された焦点状態(デフォーカス量DEF)に基づいてフォーカシングレンズ210bが駆動され、自動焦点調節処理は終了する。他方、焦点状態を検出できなかった場合、処理はステップS130に進む。
ステップS130では合焦制御部103eが、ステップS100と同様に、絞り211の開口径が焦点調節対象の焦点検出領域に応じた開口径(第2開口径)になるようレンズ制御部203に指示を送信する。ステップS140では焦点検出部103aが再度結像光学系210の焦点状態を検出する。
ステップS150では合焦制御部103eが、十分な信頼性のある焦点状態を検出できたか否かを判定する。焦点状態を検出できた場合、処理はステップS210に進む。ステップS210では合焦制御部103eが、レンズ制御部203に絞り211を撮影絞り(第1開口径)に戻すよう絞り211の駆動指示を送信する。そしてステップS220においてフォーカシングレンズ210bが駆動され、自動焦点調節処理は終了する。他方、ステップS150においてもやはり焦点状態を検出できなかった場合、処理はステップS160に進む。
ステップS160では範囲演算部103bが焦点検出部103aの焦点検出可能範囲を演算する。ステップS170ではステップS210と同様に、合焦制御部103eが、レンズ制御部203に絞り211を撮影絞り(第1開口径)に戻すよう絞り211の駆動指示を送信する。ステップS180では端部判定部103cが、ステップS160において演算された焦点検出可能範囲にフォーカシング範囲の端部(至近端または無限遠端)が含まれるか否かを判定する。至近端または無限遠端が含まれていた場合、処理はステップS190に進む。ステップS190では駆動指示送出部103dが、焦点検出可能範囲に含まれていた端部とは逆の方向にフォーカシングレンズ210bが駆動されるよう駆動指示を送出する。
他方、焦点検出可能範囲に端部が含まれていなかった場合、処理はステップS200に進み、フォーカシングレンズ210bが所定方向(本実施形態では至近端方向)に駆動されるよう、駆動指示送出部103dが駆動指示を送出する。
上述した第1の実施の形態によるカメラシステムによれば、次の作用効果が得られる。
(1)合焦制御部103eは、絞り211の開口径を第1開口径に設定して焦点検出部103aに焦点状態を検出させ、焦点状態を検出不能であれば、絞り211の開口径を第1開口径より小さい第2開口径に設定し、焦点検出可能範囲に端部が含まれるか否かを端部判定部103cに判定させる。そして、焦点検出可能範囲に至近端が含まれていれば無限遠端の方向に、無限遠端が含まれていれば至近端の方向に、それぞれフォーカシングレンズ210bが駆動されるよう駆動指示送出部103dを制御する。このようにしたので、焦点検出に要する時間を短縮することができる。
(2)合焦制御部103eは、絞り211の開口径を第2開口径に設定した後、焦点検出部103aに焦点状態を検出させる。そして、焦点状態が検出可能であった場合には当該焦点状態に基づいて結像光学系210が合焦状態になるように駆動指示送出部103dを制御し、焦点状態が検出不能であった場合には端部判定部103cに判定を行わせる。このようにしたので、スキャン動作を行う頻度が減少し、速やかな合焦動作が可能となる。
(3)合焦制御部103eは、絞り211の開口径を第2開口径に設定した後、必要がなくなった時点で絞り211の開口径を速やかに第1開口径に戻す。このようにしたので、表示装置111に表示されるスルー画の見え方がごく短時間しか変化することがなく、ユーザに違和感を抱かせない。
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
図12に示す自動焦点調節処理において、合焦制御部103eは、第2開口径にした後に焦点検出が可能であった場合、絞り211の絞り径を第1開口径に戻し(ステップS210)、その後フォーカシングレンズ210bを駆動させている(ステップS220)。この絞り211の駆動とフォーカシングレンズ210bの駆動は並行して行ってもよい。つまり、合焦制御部103eによる絞り211の駆動指示の送信と、駆動指示送出部103dによるフォーカシングレンズ210bの駆動指示の送信とを相前後して行い、絞り211およびフォーカシングレンズ210bの駆動が並行して行われるようにしてもよい。このようにすることで、合焦までの所要時間を更に短縮することが可能となる。ステップS170における絞り211の駆動とステップS190およびステップS200におけるフォーカシングレンズ210bの駆動についても同様である。
また、絞り211の駆動とフォーカシングレンズ210bの駆動とを並行して行う場合に、絞り211の駆動が完了した時点で(フォーカシングレンズ210bが駆動されている状態のまま)、焦点検出部103aに再度焦点状態を検出させるようにしてもよい。この場合、合焦制御部103eは、デフォーカス量DEFが演算された時点で、駆動指示送出部103dにこの新たなデフォーカス量DEFに基づくフォーカシングレンズ210bの駆動指示を送信させる。一般に、絞り211の開口径が大きい方が演算されるデフォーカス量DEFの精度が高いため、このようにすることで、最終的な合焦までの所要時間を減少させることができる。
(変形例2)
第2開口径を、予め決めておいた開口径とするのではなく、適切な開口径を都度演算により求めるようにしてもよい。例えば、焦点検出可能範囲にフォーカス可能範囲の端部が含まれる最も大きな開口径を第2開口径とし、そのような開口径を図12のステップS130の段階で演算により求めるようにしてもよい。
(変形例3)
上述した実施形態では、まず焦点検出を行い、焦点検出不能であれば絞り211を絞り込み、その後更に焦点検出を行った後に端部の判定を行っていた。これらの、「(A)焦点検出を行う」という動作と、「(B)第2開口径まで絞り込む」という動作と、「(C)端部の判定を行う」という動作とは、さまざまな順序で組み合わせることが可能である。
上述の実施形態では(A)、(B)、(A)、(C)、という順序で処理を行っていたが、これを例えば(A)、(C)、(B)、(A)、(C)、とすることもできる。つまり、最初に焦点検出不能であった場合に、第2開口径まで絞り込む前に端部判定部103cによる端部の判定を行う。そして、もし焦点検出可能範囲に端部が含まれているようであれば、一旦その端部とは反対の方向にフォーカシングレンズ210bを所定距離だけ駆動させ、再度焦点検出を行う。他方、端部が含まれていなければ絞り211を第2開口径まで絞り込み、第1の実施形態と同様の流れで処理を進める。
あるいは、(A)、(B)、(C)、という順序で処理を行うことも可能である。つまり、絞り211を第2開口径まで絞り込んだ後、すぐに端部の判定を開始してスキャン動作を行う。このように、第2開口径まで絞り込む動作の前後における処理の流れは、種々の組み合わせが考えられる。
(変形例4)
上述した実施形態では、焦点検出方式として、撮像面に設けられた焦点検出用画素を用いた瞳分割方式を用いていた。本発明はこのような焦点検出方式に限定されない。例えば、撮像用の撮像素子とは別に焦点検出用の光電変換素子を設け、ハーフミラー等により被写体光の一部をこの光電変換素子に導くようにし、この光電変換素子の出力に基づいて焦点検出を行う方式であってもよい。
(変形例5)
上述した実施形態では、レンズ交換式のカメラシステムに本発明を適用していたが、本発明はこのような実施形態に限定されない。例えば、本発明を適用した焦点検出装置をレンズ一体型のカメラに搭載することも、いわゆる一眼レフレックス方式のカメラに本発明を適用することも可能である。
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。