JP2018197586A - シール付転がり軸受 - Google Patents

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宗徳 松尾
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宗徳 松尾
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Abstract

【課題】 この発明は、軸受内部への所定粒径の異物の侵入を防止するとともに、シールトルクの低減を図る。【解決手段】 外輪2と、内輪3と、外輪2と内輪3との間に組み込まれた複数のボール6と、外輪2と内輪3との間の軸受内部空間をシールするシール部材10とを備え、シール部材10は、外輪2に設けられたシール嵌合溝8に嵌合する嵌合部12aと、内輪3に設けられた第1シール摺動面33に摺動する内向きリップ部14と、第1シール摺動面33よりも軸方向外側に設けられた第2シール摺動面31に摺動するシールリップ部13とを有し、シールリップ部13のうち第2シール摺動面31に摺動する面には、軸受内部空間と軸受外部空間とを連通する油通路13bを生じさせ、かつ、シールリップ部13及び第2シール摺動面31間を流体潤滑状態にすることが可能な複数の突起が形成されている。【選択図】 図1

Description

この発明は、シール付転がり軸受に係り、例えば、自動車、各種建設用機械等の車両に搭載されたトランスミッション内に用いられるシール付転がり軸受に関する。
トランスミッション内には、ギヤの摩耗粉等の異物が混在する。この異物は軸受の転走面の早期剥離の原因となる。このため、シール部材により、軸受内部空間への異物侵入を防ぎ、転走面の早期剥離を防止することが行われている。
また、シール付転がり軸受は、潤滑剤として、軸受周辺の潤滑油を軸受内部へ侵入させ、侵入した潤滑油を軸受内部に保持させて潤滑不良を防いでいる。
一般的なシール部材は、ゴム材料等で形成されたシールリップを有する。シール部材に対して周方向に回転する軸受部品には、シールリップと滑り接触する摺動面が形成されている。シールリップと摺動面は全周に亘って滑り接触するため、シールリップの引き摺り抵抗(シールトルク)による軸受トルクの上昇を招くことになる。また、その滑り接触の摩擦は、転がり軸受の温度上昇をもたらす。温度上昇が進むと、軸受内部と軸受外部との間の圧力差による吸着作用を招き、その摩擦が大きくなる。
このような滑り接触するシール部材のシールトルクを抑えるため、特許文献1には、シール摺動面にショットピーニングを施すことにより、その表面の最大高さを2.5μm以下の微小凹凸を有するシール摺動面として、その凹部に貯留した潤滑油により、シールリップ及びシール摺動面間の油膜形成を促進することが提案されている。
しかしながら、特許文献1のようなショットピーニングによる低トルク化は、シールリップとシール摺動面間の滑り面積を低減させることでもたらされている。滑り面積の低減にも限界があるので、低トルク化にも限界があった。
また、シール部材として非接触シール部材を用いれば、シールトルクを無くすことはできるが、軸受内部へ所定粒径の異物が侵入することを防止するには、シール部材と軸受部品間の隙間を狭くする必要があり、各種部材の寸法管理が困難となる。
特開2007−107588号公報
この発明は、シール付転がり軸受において、各種部材の寸法管理を容易にし、軸受内部への所定粒径の異物の侵入を防止するとともに、シールトルクの低減を図ることを課題とするものである。
前記の課題を解決するために、この発明は、外輪と、内輪と、前記外輪と前記内輪との間に組み込まれた複数の転動体と、前記外輪と前記内輪との間の軸受内部空間をシールするシール部材とを備え、前記シール部材は、前記外輪に設けられたシール嵌合溝に嵌合する嵌合部と、前記内輪に設けられた第1シール摺動面に摺動する内向きリップ部と、前記第1シール摺動面よりも軸方向外側に設けられた第2シール摺動面に摺動するシールリップ部とを有し、前記シールリップ部のうち前記第2シール摺動面に摺動する面には、前記軸受内部空間と軸受外部空間とを連通する油通路を生じさせ、かつ、前記シールリップ部及び前記第2シール摺動面間を流体潤滑状態にすることが可能な複数の突起が形成されている、ことを特徴とする。
また、前記内輪は、前記第1シール摺動面を含んで前記油通路と連通するシール溝部と、前記内輪の軸方向端面より軸方向内側に形成された前記第2シール摺動面を含む段部とを有するように構成することができる。
また、前記内輪は、前記シール溝部と前記段部との間に位置する肩部を更に有し、
前記シールリップ部は、前記肩部と径方向に対向する第1部分と、前記第2シール摺動面と軸方向に対向して前記突起を含む第2部分とを含むように構成することができる。
また、前記内向きリップ部のうち前記第1シール摺動面と摺動する面には、前記第1シール摺動面と流体潤滑状態で摺接可能な複数の突起を設ければよい。
以上のように、この発明は、内径部に前記内輪の軸方向の側面に対向するシールリップ部を有し、このシールリップ部の前記内輪の軸方向の側面に対向する面に、前記側面と接触する複数の突起を設け、この複数の突起の間に、軸受内部空間と軸受外部空間とを連通する油通路を形成するので、油通路の大きさを突起間隔と突起の高さにより管理することができる。このため、所定粒径の異物の混入を防ぐための軸受部材の寸法管理は、突起の寸法管理で行えることができ、その寸法管理も容易となる。また、前記突起と前記内輪の軸方向の側面との間に流体潤滑状態が形成されるので、シールトルクも低減させることができる。
この発明の実施形態に係るシール付転がり軸受の一部を拡大して示す縦断正面図である。 この発明の実施形態に係るシール付転がり軸受のシール部材のシールリップ部分を拡大して示す断面図である。 この発明の実施形態に係るシール付転がり軸受のシールリップ部と内輪の径方向端面の摺動部分を拡大して示す断面図である。 この発明の実施形態に用いられるシール部材を示す斜視図である。 この発明の実施形態に用いられるシール部材を軸受内部側から見た平面図である。 この発明の実施形態に係るシール付転がり軸受をトランスミッションに用いた例を示す概略図である。
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、シール付転がり軸受(以下、単に転がり軸受と呼ぶこともある)1は、外輪2と、内輪3と、外輪2と内輪3との間に組み込まれた複数の転動体(ボール)6と、ボール6を保持する保持器7と、外輪2と内輪3との間の軸受内部空間をシールするシール部材10とを備えたものである。本実施形態の転がり軸受1は、深溝玉軸受である。外輪2、内輪3、ボール6及び保持器7は、金属製部材である。本実施形態では、保持器7は鉄製であるが、樹脂製であってもよい。なお、転がり軸受1は、深溝玉軸受に限らず、アンギュラ玉軸受、スラスト玉軸受、自動調心玉軸受などの任意の転がり軸受であってもよい。
以下、転がり軸受1の軸受中心軸に沿った方向を軸方向、軸方向に直交する方向を径方向という。また、軸受中心軸回りの円周方向を周方向という。
外輪2及び内輪3によって形成される環状の軸受内部には、グリース、オイルバス等の適宜の手段により、潤滑油が供給される。このシール付転がり軸受1では、外輪2が固定されて内輪3が回転する。即ち、シール付転がり軸受1は、内輪回転用軸受である。
外輪2の内径面2aには、軌道溝4を中心にして、その両側に小径肩部2aa、シール嵌合溝8、大径肩部2abが形成され、一方、内輪3の外径面3aには、上記一対のシール嵌合溝8と径方向に対向する一対のシール溝9が形成されている。なお、シール嵌合溝8及びシール溝9は一対形成されていなくてもよく、軌道溝4,5に対して軸方向一方側のみに形成されていてもよい。
内輪3は、その外径面3aに大径肩部3aaと小径肩部3abとを有している。大径肩部3aaは内輪3の転動面(軌道溝5)よりも軸方向外側に位置している。小径肩部3abは、大径肩部3abよりも軸方向外側に位置している。小径肩部3abは大径肩部3aaよりも小径であり、その外径面が大径肩部3aaよりも内径側に位置している。大径肩部3aaと小径肩部3abとの間には、上記シール溝9が設けられている。
内輪3の軸方向端部には、小径肩部3abよりさらに小径の段部3acが設けられている。段部3acは、小径肩部3abよりも軸方向外側(大径肩部3abとは反対側)に設けられている。段部3acは、小径肩部3abの外径面のうち軸方向外側端部から内径側に延びる側面31と、当該側面31の下端部から軸方向外側に向けて延びる水平面32とを有している。側面31は、内輪3の軸方向端面3aよりも軸方向内側に形成されている。段部3acの軸方向の側面31に、後述するシール部材10のシールリップ部13が摺接する。段部3acの水平面32は、シール溝9の溝底よりも内径側に位置している。
シール部材10は、芯金11にゴム製部分12を固着することで形成されている。
芯金11は金属製であり、軸方向から見て、環状である。芯金11の径方向内端部11aは、軸方向内側に向かって折り曲げられている。そして、芯金11の径方向外端部11bは、シール嵌合溝8と軸方向に対向している。芯金11の径方向内端部11aは、後述するゴム製部分12のくびれ部12cよりも上方に位置している。芯金11の径方向外端部11bと径方向内端部11aとの間には、径方向に延びる立板部11cが設けられている。
ゴム製部分12は、軸方向から見て、環状である。ゴム製部分12は、例えば、ニトリルゴム、耐熱ニトリルゴム、水素添加ニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム等の耐油性や耐熱性に優れたゴムを素材としている。ゴム製部分12は、芯金11に加硫成型することで当該芯金11と一体に形成されている。ゴム製部分12は、芯金11のうち立板部11cの内側面を除く芯金11全体を覆っている。
図1及び図2に示すように、ゴム製部分12は、嵌合部12aと、本体部12bと、くびれ部12cと、シールリップ部13と、内向きリップ部(アキシャルシールリップ部)14とを有している。嵌合部12aは、シール嵌合溝8に嵌合され、かつ、芯金11の径方向外端部11bを覆っている部分である。本体部12bは、嵌合部12aと後述するくびれ部12cとの間に位置する部分である。本体部12bは、嵌合部12aよりも内径側に位置し、かつ、芯金11のうち径方向外端部11bを除く部分を覆っている部分である。
くびれ部12cは、本体部12bの径方向内端部よりも内径側に位置している部分である。即ち、くびれ部12cは、芯金11の径方向内端部11aよりも内径側に位置している。
くびれ部12cの内径側には、シールリップ部13及び内向きリップ部14が設けられている。内向きリップ部14は、シール溝9の内側面の壁面33に軸方向に接触(摺接)している。シールリップ部13は、内向きリップ部14よりも軸方向外側に設けられている。シールリップ部13は、内輪3の軸方向の側面、この実施形態では、段部3acの軸方向の側面31と対向し、この側面31と軸方向に摺接する。ここで、シール溝9の壁面33は、シール部材10の内向きリップ部14が摺接する第1シール摺動面であり、段部3acの側面31はシールリップ部13が摺接する第2シール摺動面である。
シールリップ部13及び内向きリップ部14は、シール部材10の内径部にくびれ部12cを介して形成されている。シールリップ部13は、くびれ部12cから軸方向外側に向けて延びて、小径段部3abを超える位置から内径側に延びて形成されている。シールリップ部13は、くびれ部12cから軸方向外側に向けて延出する第1部分15と、当該第1部分15の先端から内径側(段部3ac)に向けて延びる第2部分16とを有している。
第1部分15は、くびれ部12cから軸方向外側に向けてやや下方に傾斜して延びた後、軸方向に略平行に延びている。第1部分15は、シール溝9及び小径肩部3acと径方向に間隔を設けて対向している。第2部分16の先端は、段部3acの水平面32と径方向に間隔を設けて対向している。本実施形態では、第2部分16と水平面32との間隔は、第2部分16と側面31との間隔よりも大きい。第2部分16のうち側面31と対向する面16aには、側面31と軸方向に摺接する複数の突起13aが設けられている。
このシール部材10は、軸受内部空間と軸受外部空間を区切る。シール部材10を境界とした外部側には、ギヤの摩耗粉、クラッチの摩耗粉、微小採石等、転がり軸受1の組み込み先に応じた異物が存在する。このような粉状の異物は、潤滑油の流れによって転がり軸受1付近に到達する。シール部材10は、軸受外部空間から軸受内部空間への異物の侵入を防止する。
上記したように、シール部材10は、嵌合部12aをシール嵌合溝8に圧入することにより、外輪2に取り付けられる。
図1及び図2に示すように、シール部材10のシールリップ部13は、内輪3の軸方向端部に形成された段部3acの側面31に弾性接触する。一方、内向きリップ部14の先端はシール溝9の内側面である壁面33に弾性接触している。シールリップ部13と側面31間に軸方向に締め代が形成され、内向きリップ部14及びシール溝9の壁面33には、軸方向に締め代が形成されている。締め代により、シールリップ部13と内向きリップ部14は、弾性変形し、軸受空間を密閉している。
図2、図3に示すように、シールリップ部13の第2部分16のうち側面31に摺動する面16aには、微小な複数の突起13aが設けられ、また、内向きリップ部14のうちシール溝9の壁面33に対向する面には、壁面33と軸方向に摺接する微小な複数の突起14aが設けられている。
図3に示すように、シールリップ部13は、側面31との軸方向に突出高さを持った複数の突起13aを有している。側面31に接触する突起13a、13a間には、軸受外部空間とシール溝9とを連通する油通路13bが形成されている。
図2に示すように、内向きリップ部14は、シール溝9の壁面33と直交する方向に突出高さを持った複数の突起14aを有する。内向きリップ部14は突起14aにおいて、壁面33と摺動接触する。壁面33が軸受中心軸を中心としたすり鉢状なので、当該軸受中心軸との直交方向は、軸方向から所定角度傾斜した方向となる。壁面33に接触する突起14a、14a間には、軸受内部空間とシール溝9とを連通する油通路14bが形成される。
油通路13bと油通路14bとにより、軸受内部空間と軸受外部空間とが連通されることになる。
図5に示すように、シールリップ部13の突起13aは、周方向全周に亘って均一間隔で配置されている。このため、油通路13bも周方向全周に均一間隔で設けられる。突起13aが全周に分散配置され、シールリップ部13は突起13aにおいて、側面31と摺動接触する。また、内向きリップ部14の突起14aは、周方向全周に均一間隔で配置されている。このため、油通路14bも周方向全周に均一間隔で設けられる。
油通路13bは、概ね側面31に沿った溝状である。油通路13bは、第1部分15と小径肩部3abとの間の間隔を介して、シール溝9と軸受外部空間とを連通している。これにより、シール溝9には、軸受外部空間から供給される潤滑油が溜まる。よって、シール溝9は、油溜まり用溝としても機能する。油通路14bは、シール溝9と軸受内部を連通する。転がり軸受1が自動車のトランスミッションに使用された場合、当該軸受1には、ハウジングに設けられたオイルバスの潤滑油が軸受内部に流入する(いわゆる油浴潤滑)、又は、ギヤによるはねかけ(いわゆるはねかけ潤滑)によって、潤滑油が供給される。このような場合、図2の破線の矢印A、Bで示すように、潤滑油は、軸受外部空間から油通路13b、14bを通って軸受内部空間に至り、遠心力により外輪2側へ送られる。油通路13bから流入した潤滑油Oはシール溝9内にも溜まる。また、突起13aにより、潤滑油Oの軸受外部空間への漏れを抑制でき、潤滑不良を防ぐことができる。
また、側面(第2シール摺動面)31が軸方向端面3aに対して内側に形成されているので、シール溝部9に保持されている潤滑油Oは軸受外部空間へと漏れにくい構造となっている。
シール溝9と段部3acとの間に小径肩部3abが設けられ、当該小径肩部3abとシールリップ部13の第1部分15が対向していることで、ラビリンス効果が高まり、潤滑油が軸受外部空間へと更に漏れ難くなる。また、第2部分16と水平面32との間隔が第2部分16と側面31との間隔よりも大きいことにより、軸受外部空間から潤滑油を軸受内部空間に進入し易くしつつ、シール溝9から軸受外部空間へと潤滑油を更に漏れ難くすることができる。
図3は、シール部材10のシールリップ部13付近を拡大して断面で示している。この断面は、シールリップ部13と側面31との間における摺動面との直交方向の隙間を示している。
図3に示すように、シールリップ部13と側面31間の締め代に基づいてシールリップ部13が弾性変形することで生じる緊迫力又は潤滑油の油圧により、突起13aに実質的な変形が生じないようになっている。
突起13aは、周方向に一定の間隔dで並んでいる。シールリップ部13を軸方向から見た外観で考えると、複数の突起13aが間隔dに対応した一定のピッチ角度θで周方向に配置された放射状になって現れている。なお、放射中心は、図外のシール部材10の中心軸上にある。
各突起13aがシールリップ部13に存在することにより、シールリップ部13が各突起13aで側面31と摺動接触し、各突起13a、13a間に油通路13bが生じる。
突起13aは、周方向wの両端から周方向の中央に向かって次第に側面31に接近するR形状となっている。このため、突起13aと側面31とが接触する領域は、突起13aの周方向の中央に存在する。
シールリップ部13に対して側面31が相対的に矢印A方向に回転すると、油通路13b内の潤滑油が突起13aと側面31との楔状の隙間13cに引き込まれる。前述の楔状の隙間13cは、引き込まれる潤滑油が存在する油通路13bから突起13aの先端に向かって次第に小さくなることから、突起13aと側面31とが摺動接触する突起13aの先端に近いところほど楔効果が強く生じる。従って、突起13aの先端での油膜の油圧をより効果的に高め、突起13aを側面31から完全に離れさせ、その領域での油膜を厚く生じさせることができ、突起13aと側面31との間の潤滑状態を流体潤滑状態とすることが容易となる。
ここで、突起13aと側面31との間を完全に分離させる油膜があれば、突起13aに対して側面31が直接接触しない状態で摺動する流体潤滑状態となる。このような油膜を各突起13aと側面31との間で保つことにより、シールリップ部13及び側面31の間を流体潤滑状態とすることができる。
本実施形態では、シール溝9内に潤滑油Oを溜めることで、潤滑油が十分に行き届いていない可能性がある軸受始動時にこのシール溝9から油通路13b,14bを経て潤滑油Oが流れ、内輪3の第2シール摺動面31とシールリップ部13との間、第1シール摺動面32と内向きリップ部14との間を流体潤滑状態へ早期に移行することができる。
図2及び図5に示すように、シールリップ部13と同様に、内向きリップ部14の先端から壁面33と軸方向に対面する範囲の全域に亘って突起14aが形成されている。摺動面となる壁面33に接触する突起14a、14a間に油通路14bが生じる。この突起14aもシールリップ部13の突起13aと同様に、周方向に一定の間隔で並び、複数の突起13aが間隔に対応した一定のピッチ角度で周方向に配置された放射状になって形成されている。なお、放射中心は、図外のシール部材10の中心軸上にある。
各突起14aが内向きリップ部14の先端付近に存在することにより、各突起14aで壁面33と摺動接触し、各突起14a、14a間に油通路14bが生じる。この突起14aもシールリップ部13の突起13aと同様に、周方向の両端から周方向の中央に向かって次第に摺動面に接近するR形状とし、このR形状は突起14aの放射方向の全長に亘って形成すればよい。
このように、内向きリップ部14の先端に突起14aを設けることにより、シールリップ部13の突起13aと同様に、内向きリップ部14のシール溝9の壁面33との間を流体潤滑状態とすることができる。
上記したように、オイルバス、又は、はね掛けの場合、図2の破線の矢印A、Bで示すように、潤滑油は軸受外部から油通路13b、14bを通って軸受内部に引き込まれ、シールリップ部13、内向きリップ部14とも流体潤滑状態として、シールトルクの低減を図ることができる。
この発明の実施形態に係るシール付転がり軸受1は、例えば、自動車のトランスミッション内に用いられる。図6は、自動車のトランスミッションに組み込んだ一例を示す概略図である。同図はオートマチックトランスミッションの例である。ケース23の軸方向両端にシール付転がり軸受1、1の各外輪2が嵌合され、これら軸受1、1の内輪3に、メインシャフト24の両端がそれぞれ回転自在に支持されている。ケース23に、カウンターシャフト25が前記メインシャフト24と平行に設けられている。このカウンターシャフト25は、メインシャフト24のギヤ部に噛み合うギヤ部を有し、前記ケース23に軸受を介して回転自在に支持されている。
尚、この発明の実施形態のシール付転がり軸受1は、車両のトランスミッション以外に、ディファレンシャル、等速ジョイント、プロペラシャフト、ターボチャージャ、工作機械等の軸受に用いられ、これらの回転軸に取り付けられる。
上記したように、この実施形態におけるシール付転がり軸受1は、車両のトランスミッションに用いることを想定している。車両のトランスミッション内に存在するシール付転がり軸受への給油は、はね掛け、オイルバス、ノズル噴射等の方法によって行われる。このため、シール付転がり軸受1に固定されるシール部材10のシールリップ周辺には潤滑油が存在している。給油される潤滑油は、トランスミッション内に存在するギヤ等の他の潤滑部分でも共通に用いられる。その潤滑油は、オイルポンプで循環されており、その循環経路に設けられたオイルフィルタで濾過される。
上記したように、内輪3は、メインシャフト24(図6参照)に取り付けられ、メインシャフト24と一体に回転する。外輪2は、ケース23(図6参照)に取り付けられる。
車両のトランスミッションやディファレンシャルギヤ等の駆動系の回転部支持に用いられるシール付転がり軸受1に対して、オイルフィルタで濾過される潤滑油を給油する場合、粒径50μmを超えるような大きな異物が軸受内部へ侵入することをシール部材10で防止する限り、潤滑油に含まれる粒径50μm以下の異物が軸受内部に侵入することを許容しても軸受寿命に問題は起こさない。本願出願人の研究により、突起13a、14aの高さを0.07mm以下に設定すれば、粒径50μmを超える異物が容易に通過できないような狭い隙間(油通路を含む)をシールリップとシール摺動面間に生じさせることができることがわかった。そこで、この実施形態におけるシールリップ部13に形成される油通路13b、内向きリップ部14に形成される油通路14bの大きさを70μm以下にするとよい。
この実施形態では、突起13a、14aの高さhは、0.07mm以下に設定しており、具体的には0.05mmに設定している。この高さhは、設計上、側面31又は壁面33と接触し得る範囲において最も高い位置での値である。この位置は、各突起13a、14aと摺動面との間に設定された締め代が最大になるところでもある。軸受運転中の突起の変形量は無視できるから、シールリップ部13と側面31、内向きリップ部14と壁面33との間における摺動面との直交方向の隙間(油通路を含む)は、摺動面との直交方向の最も狭いところで突起13a、14aの高さhに相当の高さになり、実質0.05mmを超えない。このため、粒径50μmを超える異物が外部の潤滑油に含まれていても、その異物が油通路13b、14bを通過することは略起こらないと考えられる。
尚、シール付転がり軸受1の早期破損の原因となる摩耗粉は、粒径0.3mmを超える異物として仮定すれば、突起13a、14aの突出高さを0.3mm以下に設定すればよい。また、油通路13b、14bの通油性を良好にするためには、突起13a、14aの突出高さは、0.05mm以上にすればよい。油通路13b、14bの通油性又は異物の通過を防止する観点から突起13a、14aの突出高さは適宜選択すればよい。
この発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内の全ての変更を含む。
1 :シール付転がり軸受
2 :外輪
3 :内輪
3ac :段部
6 :ボール
8 :シール嵌合溝
9 :シール溝
10 :シール部材
12a :嵌合部
13 :シールリップ部
13a :突起
13b :油通路
14 :内向きリップ部
14a :突起
14b :油通路
15 :第1部分
16 :第2部分
31 :側面(第2シール摺動面)
33 :壁面(第1シール摺動面)

Claims (4)

  1. 外輪と、
    内輪と、
    前記外輪と前記内輪との間に組み込まれた複数の転動体と、
    前記外輪と前記内輪との間の軸受内部空間をシールするシール部材とを備え、
    前記シール部材は、前記外輪に設けられたシール嵌合溝に嵌合する嵌合部と、前記内輪に設けられた第1シール摺動面に摺動する内向きリップ部と、前記第1シール摺動面よりも軸方向外側に設けられた第2シール摺動面に摺動するシールリップ部とを有し、
    前記シールリップ部のうち前記第2シール摺動面に摺動する面には、前記軸受内部空間と軸受外部空間とを連通する油通路を生じさせ、かつ、前記シールリップ部及び前記第2シール摺動面間を流体潤滑状態にすることが可能な複数の突起が形成されている、ことを特徴とするシール付転がり軸受。
  2. 前記内輪は、前記第1シール摺動面を含んで前記油通路と連通するシール溝部と、前記内輪の軸方向端面より軸方向内側に形成された前記第2シール摺動面を含む段部とを有する、請求項1に記載のシール付転がり軸受。
  3. 前記内輪は、前記シール溝部と前記段部との間に位置する肩部を更に有し、
    前記シールリップ部は、前記肩部と径方向に対向する第1部分と、前記第2シール摺動面と軸方向に対向して前記突起を含む第2部分とを含む、請求項2に記載のシール付転がり軸受。
  4. 前記内向きリップ部のうち前記第1シール摺動面と摺動する面には、前記第1シール摺動面と流体潤滑状態で摺接可能な複数の突起が形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシール付転がり軸受。
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