JP2018192510A - 缶成形装置のカップ押さえ機構、及び缶成形装置 - Google Patents

缶成形装置のカップ押さえ機構、及び缶成形装置 Download PDF

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昭二 松尾
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Abstract

【課題】オーバートラベル量の調整が精度よく簡単に行え、カップホルダによりカップ状体をダイの端面に安定して付勢し固定することができ、成形不良を低減して生産効率を向上できること。【解決手段】前端部にパンチが設けられたラム軸と、前記ラム軸を該ラム軸の軸O方向に往復移動自在に支持する軸受5と、前記パンチが挿通される貫通孔が形成されたダイと、を含む缶成形装置に設けられて、前記ダイの前記軸O方向の後方を向く端面にカップ状体を押し付ける缶成形装置のカップ押さえ機構1であって、前記軸受5よりも前記軸O方向の前方に位置し、前記ラム軸の径方向外側に同軸に配置され、前記ダイの前記端面に接近離間可能な筒状のカップホルダ6と、前記軸受5よりも前記軸O方向の後方に位置し、前記カップホルダ6を前記端面にエア圧により付勢可能な付勢手段15と、を備えたことを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、例えばDI缶の製造に用いられる缶成形装置のカップ押さえ機構、及びこれを用いた缶成形装置に関する。
飲料等の内容物が充填、密封される缶体として、缶胴(ウォール)と缶底(ボトム)を有する有底筒状のDI缶と、該DI缶の開口端部に巻締められる円板状の缶蓋と、を備えた2ピース缶が知られている。また、DI缶にネッキング加工及びねじ加工等を施し、その開口端部にキャップが螺着されたボトル缶も周知である。
上記DI缶は、アルミニウム合金材料等の板材から打ち抜いた円板状のブランクに、カッピング工程(絞り工程)及びDI工程(絞りしごき工程)を施すことにより、有底筒状に形成される。
カッピング工程では、ブランクにカッピング加工(絞り加工)を施して、ブランクからDI缶へ移行する過程の成形中間体であるカップ状体とする。DI工程では、缶成形装置(DI加工装置)により、ツールパックに設けられた複数のダイ(再絞りダイ、しごきダイ)の貫通孔内に、ラム軸の前端部に設けたパンチによってカップ状体を押し込みつつ、絞りしごき加工する。つまりカップ状体にDI(Drawing&Ironing)加工を施して、DI缶とする。缶成形装置には、カップ状体をツールパックの再絞りダイ(リドローダイ。以下、単に「ダイ」ということがある)の端面に押し付けて固定するためのカップホルダを備えたカップ押さえ機構が設けられている。
従来の缶成形装置のカップ押さえ機構として、例えば下記特許文献1に記載されたものが知られている。
特表2016−534885号公報
しかしながら、従来の缶成形装置のカップ押さえ機構は、下記の課題を有していた。
カップ押さえ機構は、ダイの端面上に供給されたカップ状体の底壁を、油圧によりカップホルダで付勢し固定する。詳しくは、ダイの端面へ向けてカップホルダを前進させる移動量が、ダイの端面上に配置されたカップ状体の底壁とカップホルダとの間の距離に比べて僅かに大きく設定されており、これらの差分(以下、オーバートラベル量という)を油(油圧)により吸収させるとともに押圧力を生じさせて、カップ状体をダイの端面に押し付ける。
しかしながら、油は密度の変化が小さい非圧縮性流体であるため、上記オーバートラベル量を精度よく調整することが困難であった。
具体的に、油圧によるオーバートラベル量は例えば1mm未満であり、所望の調整値(設定値)に対してオーバートラベル量が大きくなり過ぎると、カップ状体の底壁の打ち抜き現象(底抜け)が発生したり、装置各部への負荷が大きくなる。またオーバートラベル量が小さくなり過ぎると、カップ状体の固定状態が不安定になり、成形不良が生じる。
DI加工において、絞り成形時の成形不良、缶底シワ、缶胴シワ、胴切れ、耳切れ等(総じて成形不良という)の発生は、品質不良や稼働率の低下を招いてしまう。上述のように、カップ状体の固定状態が不安定になると、成形不良の原因となる。
また油圧の場合、カップホルダが前進端位置においてダイの端面上でバウンドするなどの不具合も生じる。また、成形速度に応じてオーバートラベル量を変更する必要があり、調整をより困難なものとしていた。
そこで油圧の代わりに、例えば圧縮性流体であるエアを用いて、ダイの端面上に供給されたカップ状体の底壁を、エア圧によりカップホルダで付勢し固定する手法が考えられる。しかしながらエア圧による付勢手段は、推力を確保するため、油圧による付勢手段に比べて外形が大きくならざるを得ず、設置スペースを確保することが難しい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、オーバートラベル量の調整が精度よく簡単に行え、カップホルダによりカップ状体をダイの端面に安定して付勢し固定することができ、成形不良を低減して生産効率を向上できる缶成形装置のカップ押さえ機構、及びこれを用いた缶成形装置を提供することを目的としている。
本発明の一態様は、前端部にパンチが設けられたラム軸と、前記ラム軸を該ラム軸の軸方向に往復移動自在に支持する軸受と、前記パンチが挿通される貫通孔が形成されたダイと、を含む缶成形装置に設けられて、前記ダイの前記軸方向の後方を向く端面にカップ状体を押し付ける缶成形装置のカップ押さえ機構であって、前記軸受よりも前記軸方向の前方に位置し、前記ラム軸の径方向外側に同軸に配置され、前記ダイの前記端面に接近離間可能な筒状のカップホルダと、前記軸受よりも前記軸方向の後方に位置し、前記カップホルダを前記端面にエア圧により付勢可能な付勢手段と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る缶成形装置は、前述の缶成形装置のカップ押さえ機構と、前記ラム軸を前記軸方向に往復移動させるラム軸駆動機構と、前記ラム軸駆動機構に同期して駆動され、前記カップ押さえ機構の前記カップホルダを前記軸方向に往復移動させるカップホルダ駆動機構と、を備えたことを特徴とする。
本発明のカップ押さえ機構及び缶成形装置は、ダイの後方(ラム軸の軸方向に沿う後方)を向く端面上に配置されたワークであるカップ状体の底壁を、エア圧で付勢したカップホルダにより押し付けて固定する。つまり、カップ押さえ機構に、圧縮性流体であるエアを用いた付勢手段が備えられており、このエア圧式付勢手段とカップホルダとによって、カップ状体の底壁をダイの端面に押し付ける。
このため従来の油圧式の付勢手段に比べて、本発明によれば、オーバートラベル量及びその調整幅を大きく確保することができ、オーバートラベル量の調整を正確にかつ容易に行うことができる。これにより、ダイの端面へのカップ状体の固定状態が安定して、成形不良を抑制できる。また、付勢手段がエア圧式であるため、オーバートラベル量が所望の調整値を超えて意図せず大きく設定された場合であっても、装置各部への負荷は小さく抑えられる。
そしてこの付勢手段は、ラム軸の軸受よりも軸方向の前方ではなく、後方に配置されている。
具体的に、軸受の前方にはカップホルダやダイ等が密集して配置されており、油圧式に比べて外形が大きくなりがちなエア圧式の付勢手段を設置することは難しい。また、本発明とは異なり軸受の前方に付勢手段を設ける場合には、設置スペース等の関係上、例えば上記特許文献1(特表2016−534885号公報)のようにカップホルダと付勢手段とを一体に設けざるを得ない。DI成形を安定させる上で、カップホルダはダイの端面に対してラム軸の軸回りに周方向均等に押圧される必要があるが、上述のようにカップホルダと付勢手段とが一体に設けられていると、付勢手段のメンテナンスの都度、カップホルダの前端面の高さ(軸方向位置)を周方向均一にするための高さ位置調整作業が必要になる。この高さ位置調整作業は難しく面倒であり、熟練や長時間を要する。
一方、本発明のように、付勢手段が軸受の後方に配置されていれば、外形が大きいエア圧式の付勢手段であっても、容易に設置スペースを確保することができる。また、付勢手段とカップホルダとを独立して設けることができるので、付勢手段のメンテナンスを行ってもカップホルダの前端面の高さに影響することはなく、上記高さ位置調整作業を行う必要は生じない。また本発明ではメンテナンススペースが大きく確保されているため、メンテナンスの作業性がよい。
従って本発明によれば、作業性及び成形精度を安定して高めることができる。
以上より本発明によれば、オーバートラベル量の調整が精度よく簡単に行え、カップホルダによりカップ状体をダイの端面に安定して付勢し固定することができ、成形不良を低減して生産効率を向上できる。
また、上記缶成形装置のカップ押さえ機構において、前記付勢手段は、内部にエアを保持可能な弾性体を備えたことが好ましい。
この場合、付勢手段が、内部にエアを保持可能な弾性体(以下、エアバッグという)を備えているので、エア圧力及び弾性力(弾性変形することによる復元変形力)によって、カップ状体の底壁をより確実に押さえることができる。なお、エア圧式の付勢手段の中でも、エアバッグを用いた構成の場合には外形が大きくなりがちであるが、本発明では上述したように付勢手段の設置スペースが十分に確保されているため、部材の配置は容易である。
また、上記缶成形装置のカップ押さえ機構において、前記弾性体の外面に撥油膜が設けられたことが好ましい。
缶成形装置においては、例えばダイ、パンチ、カップホルダ等が配置される成形領域と、ラム軸駆動機構等の各機械構造が配置される機械領域とで、使用される潤滑剤の種類が異なる。具体的には、ラム軸の軸受の前方に位置する上記成形領域では、主に冷却効率や潤滑性の向上、成形安定性等を目的として、ソリュブル等の水溶性潤滑剤が使用される。また、ラム軸の軸受の後方に位置する上記機械領域では、主に機械動作の安定性等を目的として、油性潤滑剤が使用される。
本発明では上述したように、軸受の後方にエア圧式の付勢手段を配置しているので、この付勢手段は上記機械領域に設置されることとなる。このため、付勢手段が例えばゴム材料等からなる弾性体を備えている場合には、弾性体が油性の潤滑剤に浸されることにより耐久性に影響する可能性がある。そこで上記構成のように、弾性体の外面に撥油膜を設けることにより、油性潤滑剤による弾性体への影響を抑えるとともに弾性体の耐久性を高めて、弾性体の性能を良好に維持することができる。
また、上記缶成形装置のカップ押さえ機構において、前記弾性体の内部にエアを供給する弾性体エア供給手段と、前記弾性体の内部と外部とを連通する弾性体パージ孔と、を備えたことが好ましい。
この場合、弾性体エア供給手段により弾性体の内部にエアを供給し、弾性体パージ孔から外部へ少量ずつエアを抜くことで、弾性体内のエア圧(内圧)を一定に保つことができる。これにより、弾性体の性能(つまり付勢手段の付勢力)を安定させることができる。
また、上記缶成形装置のカップ押さえ機構において、前記弾性体を覆うカバー体が設けられたことが好ましい。
上記構成のように、付勢手段の弾性体を覆うカバー体が設けられていると、油性の潤滑剤が使用される上記機械領域にこの付勢手段が設置されても、弾性体が油性潤滑剤に浸されることを防止できる。従って、弾性体の耐久性を高めて、弾性体の性能を良好に維持することができる。
また、上記缶成形装置のカップ押さえ機構において、前記カバー体の内部にエアを供給するカバー体エア供給手段と、前記カバー体の内部と外部とを連通するカバー体パージ孔と、を備えたことが好ましい。
この場合、カバー体エア供給手段によりカバー体の内部にエアを供給し、カバー体パージ孔から外部へエアを抜くことで、カバー体の内部に意図せず浸入した油性潤滑剤等を、エアと一緒に外部へ排出することができる。従って、弾性体の性能をより安定化することができる。
また、上記缶成形装置のカップ押さえ機構において、前記付勢手段は、エアシリンダを備えたこととしてもよい。
この場合、付勢手段がエアシリンダを備えているので、該付勢手段の外形を小さく抑えやすくなり、付勢手段の設置スペースの確保がより容易となる。
また、上記缶成形装置のカップ押さえ機構において、前記ダイに対して前記カップホルダを前記軸方向に往復移動させる基部と、前記カップホルダと前記基部との前記軸方向の相対移動量を測定可能な測定手段と、を備えたことが好ましい。
この場合、ダイの端面へ向けて基部がカップホルダを軸方向に前進させ、該カップホルダがカップ状体の底壁をダイの端面へ押し付けた状態から、さらにカップホルダに対して基部が軸方向へ前進したオーバートラベル量(つまりカップホルダと基部との軸方向の相対移動量)を、測定手段により測定することができる。従って、オーバートラベル量を正確に調整、管理することが可能である。
本発明の缶成形装置のカップ押さえ機構、及びこれを用いた缶成形装置によれば、オーバートラベル量の調整が精度よく簡単に行え、カップホルダによりカップ状体をダイの端面に安定して付勢し固定することができ、成形不良を低減して生産効率を向上できる。
本発明の一実施形態に係る缶成形装置の概略構成を表す図である。 缶成形装置のカップ押さえ機構を示す斜視図である。 缶成形装置のカップ押さえ機構の縦断面図(平断面図)である。 缶成形装置のカップ押さえ機構の側面図である。 缶成形装置のカップ押さえ機構の縦断面図(側断面図)である。 缶成形装置のカップ押さえ機構の背面図である。 缶成形装置のカップ押さえ機構の変形例を示す斜視図である。
以下、本発明の一実施形態に係る缶成形装置10及びそのカップ押さえ機構1について、図面を参照して説明する。なお、本発明の実施形態の説明に用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、要部となる部分を拡大、強調、抜粋して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際のものと同じであるとは限らない。
図1において、本実施形態のカップ押さえ機構1は、ワークであるカップ状体WにDI加工を施してDI缶100に成形する缶成形装置(DI加工装置)10に備えられる。
まず、DI缶について説明する。
DI缶は、飲料等の内容物が充填、密封される缶体(2ピース缶やボトル缶)に用いられる。2ピース缶の場合、缶体は、有底筒状のDI缶と、該DI缶の開口端部に巻き締められる円板状の缶蓋と、を備える。ボトル缶の場合、缶体は、DI缶にネッキング加工及びねじ加工等を施したボトル缶本体と、その開口端部に螺着されるキャップと、を備える。なお、DI缶の「DI」とは、Drawing&Ironingの略称である。
DI缶は、アルミニウム合金材料等の板材から打ち抜いた円板状のブランクに、カッピング工程(絞り工程)及びDI工程(絞りしごき工程)を施すことにより、有底筒状に形成される。具体的にDI缶は、例えば2ピース缶の場合、板材打ち抜き工程、カッピング工程、DI工程、トリミング工程、印刷工程、塗装工程、ネッキング工程及びフランジング工程をこの順に経て、製造される。
DI缶を製造する過程では、ブランクをカッピングプレスによって絞り加工(カッピング加工)し、カップ状体Wに成形する。つまりカップ状体Wは、上記カッピング工程において、ブランクからDI缶へ移行する過程で作製される成形中間体である。カップ状体Wは、DI缶よりも周壁の高さが低く(缶軸方向に沿う長さが小さく)、周壁及び底壁の直径が大きい有底筒状をなしている。
次に、缶成形装置10及びそのカップ押さえ機構1について説明する。
缶成形装置10は、上記DI工程に用いられるものであり、カップ状体WにDI加工(絞り(再絞り)しごき加工)を施して、DI缶100に成形する。
図1において、缶成形装置10は、前端部にパンチ2が設けられたラム軸3と、ラム軸3を該ラム軸3の軸O方向に往復移動させるラム軸駆動機構4と、ラム軸3を軸O方向に往復移動自在に支持する軸受5(5F、5R)と、パンチ2が挿通される貫通孔7が形成されたダイ8(8A、8B)と、ダイ8の軸O方向の後方を向く端面9上に配置されたカップ状体Wの内部に挿入され、該カップ状体Wの底壁を端面9へ向けて押し付けるカップホルダ6を含むカップ押さえ機構1と、を備えている。
また缶成形装置10は、ダイ8の端面9上にカップ状体Wを搬送するカップフィーダー(図示略)と、この端面9上にカップ状体Wを保持する受け座(図示略)と、パンチ2に軸O方向から対向し、軸O方向に沿うパンチ2の前進端位置に配置されてパンチ2とともに缶底を成形するボトムフォーマー(缶底成形金型)11と、成形後のDI缶100を装置外部へ搬送する缶搬出機構(図示略)と、パンチ2の前端に開口するエア吐出孔からエアを吐出し該パンチ2からDI缶100を離型させるブローオフ(エア吐出機構)12と、ラム軸駆動機構4に同期して駆動され、カップ押さえ機構1のカップホルダ6を軸O方向に往復移動させるカップホルダ駆動機構(図示略)と、駆動モータ等の駆動源(図示略)と、を備えている。
上述の機構や部材等は、缶成形装置10の装置フレーム(図示略)に支持されている。これらの機構や部材等のうち、カップ押さえ機構1以外の構成については、例えば、特許第3158313号公報に記載されたもの等を用いることができる。
ラム軸3、パンチ2、軸受5、ダイ8、カップホルダ6及びボトムフォーマー11の各中心軸は、互いに同軸に配置されて水平方向に延びている。本実施形態では、この共通軸を軸Oと呼ぶ。
本実施形態で用いる向き(方向)の定義は、下記の通りである。
図1において、軸Oに沿う方向(軸Oが延在する方向)を、軸O方向という。また、軸O方向のうち、ラム軸駆動機構4からボトムフォーマー11へ向かう方向を前方(図1における左側)といい、ボトムフォーマー11からラム軸駆動機構4へ向かう方向を後方(図1における右側)という。
また、軸Oに直交する方向を径方向という。径方向のうち、軸Oに接近する向きを径方向の内側といい、軸Oから離間する向きを径方向の外側という。
また、軸O回りに周回する方向を周方向という。
ラム軸3は、軸O方向に互いに離間して設けられた一対の軸受5(5F、5R)により、軸O方向に摺動自在に支持されている。これらの軸受5F、5Rのうち、ダイ8に近い位置に配置されたものが前軸受5Fであり、ラム軸駆動機構4に近い位置に配置されたものが後軸受5Rである。軸受5F、5Rは、例えばハイドロスタティック軸受や静圧軸受等と呼ばれる流体軸受である。
本発明でいう「軸受」とは、本実施形態における一対の軸受5(5F、5R)のうち、少なくとも前軸受5Fを指しており、前軸受5Fのみによってラム軸3を安定的に軸支可能な場合には、後軸受5Rは設けられなくてもよい。
ラム軸駆動機構4は、駆動モータ等の駆動源から伝達された回転駆動力を軸O方向への往復直線運動に変換して、図1に符号Sで示されるストロークで、ラム軸3を軸O方向に往復直線移動させる。
パンチ2は、円筒状又は円柱状をなしており、少なくともその前端部(先端部)は円筒状をなしている。パンチ2は、ラム軸駆動機構4によりラム軸3とともに軸O方向に往復直線移動させられる。パンチ2は、ダイ8に対して軸O方向に前進と後退とを繰り返し、ダイ8の貫通孔7に進入したり退出したりする。また、パンチ2はその前進端位置において、ダイ8を収容する後述のツールパック13よりも前方に位置するボトムフォーマー11に接近配置される。
缶成形装置10にはツールパック13が設けられており、ツールパック13は、軸O方向に互いに接近して同軸に配置された複数のダイ8を備える。これらのダイ8には、パンチ2との間でカップ状体Wを絞り(再絞り)加工する1枚の再絞りダイ(リドローダイ)8Aと、しごき加工する複数枚のしごきダイ(アイオニングダイ)8Bと、が含まれる。
ツールパック13に設けられた複数のダイ8A、8Bのうち、再絞りダイ8Aは、該ツールパック13において最も軸O方向の後方に配置される。再絞りダイ8Aの軸O方向の後方を向く端面9には、カップ状体Wの底壁が当接される。この端面9は、軸Oに垂直な平面状をなしており、該端面9の中央には貫通孔7が開口する。
本実施形態の例では、しごきダイ8Bが3枚設けられている。また、各しごきダイ8Bの軸O方向の前方には、パイロットリング(図示略)がそれぞれ接近配置されている。パイロットリングが設けられることにより、成形時にワークのDI缶100がしごきダイ8Bから外れたときの衝撃で、パンチ2が各ダイ8Bに接触するようなことが防止される。
複数のダイ8A、8Bの貫通孔7は、軸Oに垂直な断面がそれぞれ円形状をなしている。
成形時においてツールパック13には、潤滑と冷却のためソリュブル等の水溶性潤滑剤(クーラント液)が供給される。
カップホルダ駆動機構は、駆動モータ等の駆動源から伝達された回転駆動力を軸O方向への往復運動に変換して、カップ押さえ機構1及びそのカップホルダ6を軸O方向に往復直線移動させる。
図示を省略しているが、カップホルダ駆動機構は、駆動源からの回転駆動力が伝達されるプーリと、プーリが連結される入力軸及びダブルカム機構を有するカムボックスと、カムボックスの出力側に所定角度の範囲内で揺動可能に設けられたピボット軸と、ピボット軸の両端に連結部材を介して互いに対向して設けられ、カップ押さえ機構1の後述するカムローラ係合溝23に係合する一対のカムローラ(回転ローラ)と、を備えている。
カップ押さえ機構1は、カップホルダ6により、ダイ8(再絞りダイ8A)の軸O方向の後方を向く端面9にカップ状体Wの底壁を押し付けて、該ダイ8との間でカップ状体Wを固定し保持するものである。
図1〜図6において、カップ押さえ機構1は、軸受5(前軸受5F)よりも軸O方向の前方に位置し、ラム軸3の径方向外側に同軸に配置され、ダイ8の軸O方向の後方を向く端面9に接近離間可能な筒状のカップホルダ6と、ダイ8に対してカップホルダ6を軸O方向に往復移動させる基部14と、軸受5(前軸受5F)よりも軸O方向の後方に位置し、カップホルダ6を端面9にエア圧により付勢可能な付勢手段15と、カップホルダ6と基部14との軸O方向の相対移動量(オーバートラベル量)を測定可能な測定手段16と、を備えている。
なお、図2〜図6においては、軸O上を延びるパンチ2及びラム軸3の図示を省略している。
カップホルダ6は、円筒状をなしている。カップホルダ6には、該カップホルダ6を軸O方向に貫通するパンチ挿通孔が形成されている。パンチ挿通孔の内部には、パンチ2及びラム軸3が該パンチ挿通孔に同軸に配置されて軸O方向に挿通される。カップホルダ6と、パンチ2及びラム軸3とは、軸O方向に互いにスライド移動可能である。カップホルダ6の軸O方向の前方を向く端面(前端面)は、軸Oに垂直な円形リング平面状をなしている。カップホルダ6の前端面は、カップ状体Wの底壁をダイ8の端面9に押し付ける押圧面とされる。カップホルダ6は、軸O方向の前進端位置において、再絞りダイ8Aの端面9にカップ状体Wの底壁を押圧し固定可能である。
基部14は、軸O方向に延びる一対の支持軸17と、一対の支持軸17の前端部同士を連結し、カップホルダ6を支持する支持軸前受け部18と、一対の支持軸17の後端部同士を連結する支持軸後受け部19と、支持軸後受け部19の軸O方向の後端部に接続され、付勢手段15の後述する弾性体31に対してその前方から当接する弾性体押し板20と、軸受5(前軸受5F)の固定筒部21の外周に軸O方向に摺動自在に嵌合する基部本体22と、基部本体22に形成され、上述したカップホルダ駆動機構の一対のカムローラが係合する一対のカムローラ係合溝23と、弾性体31を覆うカバー体24と、を備えている。
一対の支持軸17は、装置フレームに固定されたサドル30の一対の挿通孔内に、軸O方向に移動自在に挿通されている。これらの支持軸17同士は、軸Oを中心として互いに径方向に離間して配置されている。支持軸17は、サドル30に固定された前軸受5Fの固定筒部21の径方向外側に配置されている。
支持軸前受け部18は、サドル30よりも軸O方向の前方に配置されている。支持軸前受け部18には、該支持軸前受け部18を軸O方向に貫通し、パンチ2及びラム軸3が挿通される挿通孔が形成されている。支持軸前受け部18の前端には、カップホルダ6が取り付けられている。支持軸前受け部18の挿通孔は、カップホルダ6のパンチ挿通孔と連通している。支持軸前受け部18とカップホルダ6との間には、該カップホルダ6の前端面を、軸Oに対して垂直に配置するとともにカップ状体Wの底壁に対して周方向均等に押し付けるための偏心スリーブが設けられている。
支持軸後受け部19は、サドル30よりも軸O方向の後方に配置されている。支持軸後受け部19の後端には、円板状をなす弾性体押し板20が該支持軸後受け部19に一体に設けられている。弾性体押し板20の中心軸は、軸Oに同軸に配置されている。
支持軸後受け部19及び弾性体押し板20は、基部本体22の後述する内筒体25の外周に軸O方向に摺動自在に嵌合している。支持軸後受け部19及び弾性体押し板20は、基部本体22に対して軸O方向に沿う所定範囲内においてスライド移動可能である。
固定筒部21は、支持軸前受け部18よりも後方に位置し、弾性体押し板20よりも前方に位置して、サドル30に固定されている。
固定筒部21は、軸受5(前軸受5F)の構成要素の1つであり、軸受本体である。固定筒部21は、軸O方向に沿って延びる筒状をなし、その軸O方向に延びる貫通孔内には、筒状の軸受メタル(図示略)が嵌合する。軸受メタルには、該軸受メタルを軸O方向に貫通する軸受孔が形成されている。軸受孔の内周面には、周方向に間隔をあけて複数のポケットが形成されており、該ポケット内には油等の流体が保持される。固定筒部21に設けられた軸受メタルの軸受孔内には、軸O方向に摺動自在にラム軸3が挿通される。軸受孔のポケットに保持された流体に圧力を加えることで、軸受5は、流体圧によって軸受孔の内周面からラム軸3を離間させて(ラム軸3を空中に浮かせて)支持する。
基部本体22は、固定筒部21の外周に軸O方向にスライド移動自在に摺接する内筒体25と、内筒体25の径方向外側に該内筒体25と一体に設けられ、支持軸17が軸O方向に摺動自在に挿通され、カムローラ係合溝23が形成された一対のカムローラ受け部26と、内筒体25の軸O方向の後端部に接続された蓋体27と、を備える。
内筒体25は、軸O方向の後方へ向かうに従い段階的に直径が小さくなる多段筒状をなしている。
内筒体25は、軸O方向に延び、固定筒部21の外周に軸O方向に摺動自在に嵌合する大径筒部28と、大径筒部28の後端に接続して軸O方向に延び、ラム軸3の外周に軸O方向に摺動自在に嵌合し、大径筒部28よりも小径に形成された小径筒部29と、を備えている。
大径筒部28の内周には、固定筒部21の後方部分が軸O方向に摺動自在に嵌合している。大径筒部28の前方部分における外周には、軸Oを中心に互いに径方向に離間して一対のカムローラ受け部26が接続されている。図3において、一対のカムローラ受け部26の各カムローラ係合溝23は、それぞれ径方向外側を向いて互いに背向配置(背中合わせに配置)されている。大径筒部28の後方部分における外周には、支持軸後受け部19が軸O方向に摺動自在に嵌合している。図3及び図5に示されるように、本実施形態の例では、大径筒部28の前方部分の外径が、大径筒部28の後方部分の外径よりも若干大きくされている。大径筒部28の内径は、軸O方向に沿って略一定である。
小径筒部29の外周には、弾性体押し板20が軸O方向に摺動自在に嵌合している。小径筒部29の後端には、該小径筒部29よりも大径の円板状をなす蓋体27が、該小径筒部29に同軸とされて一体に設けられている。
蓋体27には、該蓋体27を軸O方向に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔は小径筒部29の内部と連通している。図示の例では、蓋体27の貫通孔の内径が、小径筒部29の内径と略同等である。蓋体27の貫通孔内には、ラム軸3が軸O方向に摺動自在に挿通される。蓋体27の外径は、弾性体押し板20の外径と同等又はそれ以上の大きさである。図示の例では、蓋体27の外径が、弾性体押し板20の外径よりも大きくされている。
カバー体24は、後述する弾性体31をその径方向外側から覆っている。カバー体24は、軸Oに同軸とされた筒状をなしており、蓋体27の径方向の外端に接続しているとともに、この外端から軸O方向の前方へ向けて延びている。カバー体24の前端部内には、弾性体押し板20の外周面が、軸O方向に摺動自在に嵌合している。
図2に示されるように、本実施形態の例ではカバー体24が、周方向に分割された複数(図示の例では2つ)の分割カバー体を組み合わせることにより、円筒状に形成されている。またカバー体24の周面には、該カバー体24の剛性を所定以上に確保しつつ軽量化する目的で、複数の肉抜き凹部が形成されている。
また図3及び図5において、符号32で示されるものは、主として密閉を目的としたシール体であり、符号33で示されるものは、密閉及び摺動を目的としたシール体である。
図3及び図5において、付勢手段15は、内部にエアを保持可能な弾性体(エアバッグ)31を備えている。弾性体31は、例えばゴム材料等からなり、弾性変形可能である。本実施形態では、弾性体31が、軸Oに同軸とされた円筒状をなしている。弾性体31は、基部本体22の内筒体25における小径筒部29の外周を囲うように、この小径筒部29の径方向外側に、該小径筒部29から離間して配置されている。
弾性体31の外面(表面)には、撥油膜が設けられている。撥油膜は、弾性体31の表面のうち少なくとも外周面に形成されている。撥油膜は、弾性体31の表面全域に形成されていてもよい。撥油膜は、油性の液体や油分等の油をはじく性質(撥油性)を有しており、例えば弾性体31の外面に、撥油性の液剤(撥油剤)を塗布し乾燥することにより形成される。
本実施形態では、弾性体31の外径が、軸O方向の各位置において互いに異なっており、軸O方向に沿って大小に変化している。具体的には、弾性体31の外周に、軸O方向に沿って配列する複数の山部が形成されており、隣り合う山部同士の間には谷部が形成されている。これらの山部及び谷部は、弾性体31の外周においてそれぞれ全周にわたって延びている。図示の例では、弾性体31の外周に、軸O方向に沿って3つの山部が形成されており、軸O方向の両端に位置する一対の山部に対して、軸O方向の中央に位置する山部の外径(径方向外側へ向けた高さ)が大きくされている。図3及び図5に示されるように、各山部の軸O方向に沿う縦断面形状は、径方向外側へ向けて凸となる曲線状をなしている。
弾性体31の内径については、軸O方向に沿って一定とされている。
弾性体31の軸O方向の前方を向く端面(前端面)は、弾性体押し板20の後端面に当接されている。弾性体31の軸O方向の後方を向く端面(後端面)は、蓋体27の前端面に当接されている。本実施形態の例では、弾性体31の軸O方向を向く両端面が、軸Oに垂直な円形リング平面状をなしており、弾性体押し板20及び蓋体27に対する接触面積が所定以上に確保されている。
軸O方向に互いに離間する弾性体押し板20と蓋体27との間に形成されたスペースのうち、小径筒部29の外周と弾性体31の内周との間に位置する円環状の領域は、付勢手段15のエア室34とされている。エア室34は、弾性体押し板20、蓋体27、小径筒部29及び弾性体31により区画されて密閉された室である。
また、軸O方向に互いに離間する弾性体押し板20と蓋体27との間に形成されたスペースのうち、弾性体31の外周とカバー体24の内周との間に位置する円環状の領域は、カバー室35とされている。カバー室35は、弾性体押し板20、蓋体27、弾性体31及びカバー体24により区画されて密閉された室である。
カップ押さえ機構1は、弾性体31の内部にエアを供給する弾性体エア供給手段と、弾性体31の内部と外部とを連通する弾性体パージ孔36と、カバー体24の内部にエアを供給するカバー体エア供給手段と、カバー体24の内部と外部とを連通するカバー体パージ孔37と、を備えている。
弾性体エア供給手段は、圧縮機等のエア供給源(図示略)と、エア供給源から弾性体31の内部のエア室34にエア(圧縮空気)を流通させる弾性体エア供給配管38と、を備える。
弾性体パージ孔36は、エア室34内のエア圧を一定に保つためのエア抜き孔である。弾性体パージ孔36は、エア室34の内部と外部(本実施形態の例ではカバー体24の径方向外側の外部)とを連通しており、本実施形態では蓋体27内に流路が形成されている。弾性体パージ孔36の外部への開口部は、鉛直方向の下方へ向けて開口している。弾性体パージ孔36の流路内には、該流路を部分的に狭めるためのオリフィス(図示略)が着脱可能に設けられる。
カバー体エア供給手段は、圧縮機等のエア供給源(図示略)と、エア供給源からカバー体24の内部のカバー室35にエア(圧縮空気)を流通させるカバー体エア供給配管39と、を備える。図示の例では、カバー体エア供給配管39に、スピードコントローラ40が設けられている。
カバー体パージ孔37は、カバー室35内のエア圧を一定に保つためのエア抜き孔である。カバー体パージ孔37は、カバー室35の内部と外部(本実施形態の例ではカバー体24の径方向外側の外部)とを連通しており、本実施形態ではカバー体24内に流路が形成されている。カバー体パージ孔37の外部への開口部は、鉛直方向の下方へ向けて開口している。カバー体パージ孔37の流路内には、該流路を部分的に狭めるためのオリフィス(図示略)が着脱可能に設けられる。
本実施形態の例では、測定手段16が、基部14の基部本体22に着脱可能に装着されるデプスゲージである。図5において測定手段16は、基部本体22と、支持軸後受け部19と、の軸O方向に沿う相対移動量を測定可能であるとともに、オーバートラベル量を測定可能である。
本実施形態でいう「オーバートラベル量」について、詳しく説明する。
カップホルダ駆動機構が、カップ押さえ機構1のカムローラ係合溝23に係合する一対のカムローラを軸O方向の前方へ向けて移動させると、カップ押さえ機構1の基部本体22が、軸O方向の前方へ向けて移動する。また、基部本体22とともにその蓋体27が前方へ移動することによって、該蓋体27の前方に設置された弾性体31、弾性体押し板20、支持軸後受け部19、支持軸17、支持軸前受け部18及びカップホルダ6が、前方へ向けて移動する。
カップホルダ6がツールパック13へ向けて前進していき、該カップホルダ6の前端面が、カップ状体Wの底壁をダイ8の軸O方向の後方を向く端面9に押し付けると、それ以上のカップホルダ6の前方へ向けた移動が規制される。また、カップホルダ6に一体に接続された支持軸前受け部18、支持軸17、支持軸後受け部19及び弾性体押し板20についても同様に、それ以上の前方へ向けた移動が規制される。
上記カップホルダ6等の前方移動が規制された状態で、さらにカップホルダ駆動機構が、基部本体22を前方へ向けて移動させることにより、該基部本体22の蓋体27が弾性体押し板20に向けて軸O方向に接近させられ、これらの間に挟まれた弾性体31が弾性変形して、軸O方向に収縮させられる。このとき、弾性体31の内部のエア室34のエア圧力及び弾性体31の復元変形力がカップホルダ6に作用して、該カップホルダ6の前端面は、カップ状体Wの底壁を端面9へ向けて付勢する(押し付ける)。
カップホルダ6の前方移動が規制される前の状態における、基部本体22(基部14)とカップホルダ6との軸O方向に沿う相対位置を基準値(ゼロ)として、カップホルダ6の前方移動が規制された(後の)状態において基部本体22が前進端位置まで到達したときに、該基部本体22とカップホルダ6との軸O方向に沿う相対位置が前記基準値に対して変化した変位量(最大変位量)を、オーバートラベル量と呼ぶ。
そして本実施形態では、測定手段16が、カップホルダ6に一体に接続された支持軸後受け部19と、基部本体22と、の軸O方向に沿う相対移動量(相対的な最大変位量)を測定することにより、上記オーバートラベル量を測定する。
測定手段16は、オーバートラベル量を測定、調整する目的で基部本体22に装着され、測定作業及び調整作業が終了した後は、基部本体22から取り外される。つまりDI加工時(生産時)には、測定手段16はカップ押さえ機構1に設けられなくてもよい。
缶成形装置10によるカップ状体WへのDI加工は、下記のように行われる。
図1において、まず、ワークであるカップ状体Wが、カップ軸(缶軸)を水平方向に延ばし、その開口部をパンチ2へ向けた状態で、ツールパック13の再絞りダイ8Aと、パンチ2との間に配置される。カップ状体Wの底壁は、再絞りダイ8Aの端面9に接近配置又は当接される。
このカップ状体Wに対して、カップホルダ6及びパンチ2が、軸O方向の前方へ向けて移動する。そしてカップホルダ6が、再絞りダイ8Aの端面9にカップ状体Wの底壁を押し付けてカップ押し付け動作を行いながら、パンチ2が、カップ状体Wを再絞りダイ8Aの貫通孔7内に押し込んでいき、再絞り加工を施す。
再絞り加工により、カップ状体Wは小径に成形され、かつカップ軸方向に沿う長さ(高さ)が大きく成形される。引き続き、このカップ状体Wをパンチ2で押し込んでいき、複数のしごきダイ8Bの貫通孔7を順次通過させつつ徐々にしごき加工していく。つまり、カップ状体Wの周壁をしごいて該周壁を延伸させ、周壁高さを高くするとともに壁厚を薄くして、有底筒状のDI缶100を成形する。このDI缶100は、周壁がしごかれることで冷間加工硬化され、強度が高められる。
しごき加工が終了したDI缶100は、ツールパック13内から前方へ離脱され、さらにパンチ2が前方に押し出して底部(缶底となる部分)をボトムフォーマー11に押圧することにより、この底部がドーム形状に形成される。
このようにして、カップ状体WはDI缶100にDI成形加工される。
以上説明した本実施形態のカップ押さえ機構1及び缶成形装置10は、ダイ8の後方(ラム軸3の軸O方向に沿う後方)を向く端面9上に配置されたワークであるカップ状体Wの底壁を、エア圧で付勢したカップホルダ6により押し付けて固定する。つまり、カップ押さえ機構1に、圧縮性流体であるエアを用いた付勢手段15が備えられており、このエア圧式付勢手段15とカップホルダ6とによって、カップ状体Wの底壁をダイ8の端面9に押し付ける。
このため従来の油圧式の付勢手段に比べて、本実施形態によれば、オーバートラベル量及びその調整幅を大きく確保することができ、オーバートラベル量の調整を正確にかつ容易に行うことができる。これにより、ダイ8の端面9へのカップ状体Wの固定状態が安定して、成形不良を抑制できる。また、付勢手段15がエア圧式であるため、オーバートラベル量が所望の調整値を超えて意図せず大きく設定された場合であっても、装置各部への負荷は小さく抑えられる。
そしてこの付勢手段15は、ラム軸3の軸受5(前軸受5F)よりも軸O方向の前方ではなく、後方に配置されている。
具体的に、前軸受5Fの前方にはカップホルダ6やダイ8等が密集して配置されており、油圧式に比べて外形が大きくなりがちなエア圧式の付勢手段15を設置することは難しい。また、本実施形態とは異なり前軸受5Fの前方に付勢手段15を設ける場合には、設置スペース等の関係上、例えば上記特許文献1(特表2016−534885号公報)のようにカップホルダ6と付勢手段15とを一体に設けざるを得ない。DI成形を安定させる上で、カップホルダ6はダイ8の端面9に対してラム軸3の軸O回りに周方向均等に押圧される必要があるが、上述のようにカップホルダ6と付勢手段15とが一体に設けられていると、付勢手段15のメンテナンスの都度、カップホルダ6の前端面の高さ(軸O方向位置)を周方向均一にするための高さ位置調整作業が必要になる。この高さ位置調整作業は難しく面倒であり、熟練や長時間を要する。
一方、本実施形態のように、付勢手段15が前軸受5Fの後方に配置されていれば、外形が大きいエア圧式の付勢手段15であっても、容易に設置スペースを確保することができる。また、付勢手段15とカップホルダ6とを独立して設けることができるので、付勢手段15のメンテナンスを行ってもカップホルダ6の前端面の高さに影響することはなく、上記高さ位置調整作業を行う必要は生じない。また本実施形態ではメンテナンススペースが大きく確保されているため、メンテナンスの作業性がよい。
従って本実施形態によれば、作業性及び成形精度を安定して高めることができる。
以上より本実施形態によれば、オーバートラベル量の調整が精度よく簡単に行え、カップホルダ6によりカップ状体Wをダイ8の端面9に安定して付勢し固定することができ、成形不良を低減して生産効率を向上できる。
また本実施形態では、付勢手段15が、内部にエアを保持可能な弾性体(エアバッグ)31を備えているので、エア圧力及び弾性力(弾性変形することによる復元変形力)によって、カップ状体Wの底壁をより確実に押さえることができる。なお、エア圧式の付勢手段15の中でも、エアバッグを用いた構成の場合には外形が大きくなりがちであるが、本実施形態では上述したように付勢手段15の設置スペースが十分に確保されているため、部材の配置は容易である。
また本実施形態では、弾性体31の外面に撥油膜が設けられているので、下記の作用効果を奏する。
缶成形装置10においては、例えばダイ8、パンチ2、カップホルダ6等が配置される成形領域と、ラム軸駆動機構4等の各機械構造が配置される機械領域とで、使用される潤滑剤の種類が異なる。具体的には、ラム軸3の前軸受5F(軸受5)の前方に位置する上記成形領域では、主に冷却効率や潤滑性の向上、成形安定性等を目的として、ソリュブル等の水溶性潤滑剤が使用される。また、ラム軸3の前軸受5Fの後方に位置する上記機械領域では、主に機械動作の安定性等を目的として、油性潤滑剤が使用される。
本実施形態では上述したように、前軸受5Fの後方にエア圧式の付勢手段15を配置しているので、この付勢手段15は上記機械領域に設置されることとなる。このため、付勢手段15が例えばゴム材料等からなる弾性体31を備えている場合には、弾性体31が油性の潤滑剤に浸されることにより耐久性に影響する可能性がある。そこで上記構成のように、弾性体31の外面に撥油膜を設けることにより、油性潤滑剤による弾性体31への影響を抑えるとともに弾性体31の耐久性を高めて、弾性体31の性能を良好に維持することができる。
また本実施形態では、弾性体31の内部(エア室34)にエアを供給する弾性体エア供給手段と、弾性体31の内部と外部とを連通する弾性体パージ孔36と、を備えるため、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、弾性体エア供給手段により弾性体31の内部にエアを供給し、弾性体パージ孔36から外部へ少量ずつエアを抜くことで、弾性体31内(エア室34)のエア圧(内圧)を一定に保つことができる。これにより、弾性体31の性能(つまり付勢手段15の付勢力)を安定させることができる。
また本実施形態では、付勢手段15の弾性体31を覆うカバー体24が設けられているので、油性の潤滑剤が使用される上記機械領域にこの付勢手段15が設置されても、弾性体31が油性潤滑剤に浸されることを防止できる。従って、弾性体31の耐久性を高めて、弾性体31の性能を良好に維持することができる。
また本実施形態では、カバー体24の内部(カバー室35)にエアを供給するカバー体エア供給手段と、カバー体24の内部と外部とを連通するカバー体パージ孔37と、を備えるため、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、カバー体エア供給手段によりカバー体24の内部にエアを供給し、カバー体パージ孔37から外部へエアを抜くことで、カバー体24の内部(カバー室35)に意図せず浸入した油性潤滑剤等を、エアと一緒に外部へ排出することができる。従って、弾性体31の性能をより安定化することができる。
また、弾性体パージ孔36及びカバー体パージ孔37の外部への各開口部が、鉛直方向の下方へ向けて開口しているので、これらのパージ孔36、37から室34、35の内部へと潤滑剤が浸入するようなことを防止できる。また、パージ孔36、37から室34、35の外部へとエアや潤滑剤の排出を確実に行うことができる。
また本実施形態では、カップホルダ6と、基部14の基部本体22と、の軸O方向の相対移動量を測定可能な測定手段16を備えているため、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、ダイ8の端面9へ向けて基部14がカップホルダ6を軸O方向に前進させ、該カップホルダ6がカップ状体Wの底壁をダイ8の端面9へ押し付けた状態から、さらにカップホルダ6に対して基部14の基部本体22が軸O方向へ前進したオーバートラベル量(つまりカップホルダ6と基部本体22との軸O方向の相対移動量)を、測定手段16により測定することができる。従って、オーバートラベル量を正確に調整、管理することが可能である。
また、測定手段16が基部本体22に対して着脱可能に装着されるので、オーバートラベル量の測定時及び調整時以外は、この測定手段16をカップ押さえ機構1から取り外すことができる。これにより測定手段16への負荷を低減して、測定手段16の測定精度を良好に維持することができるとともに、測定手段16を長寿命化できる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
前述の実施形態では、缶成形装置10のカップ押さえ機構1が、弾性体31を覆うカバー体24を備えているとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、図7に示されるカップ押さえ機構1の変形例のように、弾性体31を覆うカバー体24が設けられていなくてもよい。例えば弾性体31の外面に撥油膜が形成されている場合には、カバー体24を設けなくても、油性潤滑剤による弾性体31への影響を抑制できる。また、カバー体24を設けないことで、カップ押さえ機構1全体の重量を数kgも削減でき、カップホルダ駆動機構の駆動力を小さく抑えたり装置各部への負荷を低減することができる。
また、弾性体31の外面に撥油膜を設けずに、カバー体24を設けてもよい。
また前述の実施形態では、弾性体31が、軸Oに同軸の円筒状をなしているとしたが、弾性体31の形状はこれに限定されるものではなく、それ以外の例えば円板状等であってもよい。
また、弾性体31が、内部にエアを保持可能なゴム材料等からなるエアバッグであるとしたが、これに限定されるものではない。例えば弾性体31は、内部にエアを保持可能な柔軟な樹脂材料等であってもよい。
また、付勢手段15が、エアシリンダを備えていてもよい。つまり付勢手段15が、エアシリンダを用いて、カップホルダ6をダイ8の端面9にエア圧により付勢可能であってもよい。付勢手段15がエアシリンダを備えている場合には、前述の実施形態で説明したエアバッグ方式に比べて、付勢手段15の外形を小さく抑えやすくなり、付勢手段15の設置スペースの確保がより容易となる。
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例及びなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
本発明の缶成形装置のカップ押さえ機構、及びこれを用いた缶成形装置によれば、オーバートラベル量の調整が精度よく簡単に行え、カップホルダによりカップ状体をダイの端面に安定して付勢し固定することができ、成形不良を低減して生産効率を向上できる。従って、産業上の利用可能性を有する。
1 カップ押さえ機構
2 パンチ
3 ラム軸
4 ラム軸駆動機構
5 軸受
5F 前軸受
6 カップホルダ
7 貫通孔
8 ダイ
8A 再絞りダイ
9 端面
10 缶成形装置(DI加工装置)
14 基部
15 付勢手段
16 測定手段
24 カバー体
31 弾性体(エアバッグ)
36 弾性体パージ孔
37 カバー体パージ孔
O 軸
W カップ状体(ワーク)

Claims (9)

  1. 前端部にパンチが設けられたラム軸と、
    前記ラム軸を該ラム軸の軸方向に往復移動自在に支持する軸受と、
    前記パンチが挿通される貫通孔が形成されたダイと、を含む缶成形装置に設けられて、前記ダイの前記軸方向の後方を向く端面にカップ状体を押し付ける缶成形装置のカップ押さえ機構であって、
    前記軸受よりも前記軸方向の前方に位置し、前記ラム軸の径方向外側に同軸に配置され、前記ダイの前記端面に接近離間可能な筒状のカップホルダと、
    前記軸受よりも前記軸方向の後方に位置し、前記カップホルダを前記端面にエア圧により付勢可能な付勢手段と、を備えた缶成形装置のカップ押さえ機構。
  2. 請求項1に記載の缶成形装置のカップ押さえ機構であって、
    前記付勢手段は、内部にエアを保持可能な弾性体を備えた缶成形装置のカップ押さえ機構。
  3. 請求項2に記載の缶成形装置のカップ押さえ機構であって、
    前記弾性体の外面に撥油膜が設けられた缶成形装置のカップ押さえ機構。
  4. 請求項2又は3に記載の缶成形装置のカップ押さえ機構であって、
    前記弾性体の内部にエアを供給する弾性体エア供給手段と、
    前記弾性体の内部と外部とを連通する弾性体パージ孔と、を備えた缶成形装置のカップ押さえ機構。
  5. 請求項2〜4のいずれか一項に記載の缶成形装置のカップ押さえ機構であって、
    前記弾性体を覆うカバー体が設けられた缶成形装置のカップ押さえ機構。
  6. 請求項5に記載の缶成形装置のカップ押さえ機構であって、
    前記カバー体の内部にエアを供給するカバー体エア供給手段と、
    前記カバー体の内部と外部とを連通するカバー体パージ孔と、を備えた缶成形装置のカップ押さえ機構。
  7. 請求項1に記載の缶成形装置のカップ押さえ機構であって、
    前記付勢手段は、エアシリンダを備えた缶成形装置のカップ押さえ機構。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の缶成形装置のカップ押さえ機構であって、
    前記ダイに対して前記カップホルダを前記軸方向に往復移動させる基部と、
    前記カップホルダと前記基部との前記軸方向の相対移動量を測定可能な測定手段と、を備えた缶成形装置のカップ押さえ機構。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の缶成形装置のカップ押さえ機構と、
    前記ラム軸を前記軸方向に往復移動させるラム軸駆動機構と、
    前記ラム軸駆動機構に同期して駆動され、前記カップ押さえ機構の前記カップホルダを前記軸方向に往復移動させるカップホルダ駆動機構と、を備えた缶成形装置。
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