<発明者等が得た知見>
まず、発明者等が得た知見について説明する。
電力ケーブルの導体が通電されると、ジュール熱によって電力ケーブルの温度が上昇する。電力ケーブルの温度が上昇すると、電力ケーブルが膨張し、電力ケーブルが軸方向に伸び出す。このとき、電力ケーブルの伸び出し量は、電力ケーブルに生じる熱応力(熱挙動時応力)に依存する。
ここで、電力ケーブルのヤング率をEとし、導体の断面積をAとし、電力ケーブルの線膨張係数をαとし、電力ケーブルが通電され、電力ケーブルの温度が常温から温度差tだけ上昇したとすると、電力ケーブルに生じる熱応力Fは、以下の式(1)で求められる。
F=EAαt ・・・(1)
式(1)によれば、電力ケーブルに生じる熱応力Fは、電力ケーブルのヤング率Eと電力ケーブルの線膨張係数αとの積Eαに比例する。
電力ケーブルの伸び出し量は、上記した熱応力Fと、マンホールでの電力ケーブルの拘束力(反抗力)と、電力ケーブルの自重による摩擦力と、に依存する。つまり、電力ケーブルの伸び出し量は、熱応力Fに依存することから、電力ケーブルのヤング率Eと電力ケーブルの線膨張係数αとに依存することとなる。
次に、特許文献1の電力ケーブルにおいて、上記した熱応力Fについて考える。特許文献1の電力ケーブルでは、上述のように、導体を構成する導体素線とインバ線とが、密接して撚り込まれている。なお、インバ線は、導体を構成する導体素線の線膨張係数よりも小さい線膨張係数を有するとともに、導体を構成する導体素線のヤング率よりも大きい(高い)ヤング率を有している。
特許文献1の電力ケーブルのように、導体を構成する導体素線とインバ線とが密接した状態であると、導体とインバ線との間に過剰な摩擦力が生じ、導体とインバ線とが一体として挙動するようになる。このように導体とインバ線とが一体となっていると、電力ケーブルの線膨張係数はインバ線の線膨張係数に近づいて小さくなるが、電力ケーブルのヤング率はインバ線のヤング率に近づいて大きくなる。このため、電力ケーブルのヤング率Eと電力ケーブルの線膨張係数αとの積Eαが小さくならず、電力ケーブルの熱応力Fが大きくなる可能性がある。その結果、特許文献1の電力ケーブルでは、導体内に線膨張係数の小さいインバ線を挿入したにもかかわらず、電力ケーブルの伸び出し量を小さくすることができない可能性がある。
したがって、電力ケーブルの伸び出し量を小さくするためには、どのようにして電力ケーブルの線膨張係数と電力ケーブルのヤング率とを調整して電力ケーブルの熱応力を小さくするかが重要となる。本発明は、本発明者が見出した上記知見に基づくものである。
なお、本明細書中において、「電力ケーブルの伸び出し量」とは、言い換えれば「電力ケーブルの伸び出し長」のことを意味している。また、電力ケーブルの伸び出し量が大きい又は小さいとは、言い換えれば、電力ケーブルの伸び出し長が長い又は短いことを意味している。
<本発明の一実施形態>
本発明の一実施形態に係る電力ケーブルについて、図1を用いて説明する。図1(a)は、本実施形態に係る電力ケーブルの軸方向と直交する概略断面図であり、図1(b)は、(a)に示す電力ケーブルにおける中心部を拡大した概略断面図である。なお、電力ケーブル10の中心部とは、導体110および線材120とを含む部分のことをいう。また、図面の簡略化のため、電力ケーブル10の中心部より外側のハッチングを省略している。
なお、以下において、電力ケーブル10の「軸方向」とは、電力ケーブル10の中心軸の方向のことをいい、電力ケーブル10の長手方向と言い換えることができる。また、電力ケーブル10の「径方向」とは、電力ケーブル10の軸方向に垂直な方向のことをいい、場合によっては電力ケーブル10の短手方向と言い換えることができる。また、電力ケーブル10の「周方向」とは、電力ケーブル10の外周に沿った方向のことをいう。また、電力ケーブル10の「布設方向」とは、電力ケーブル10が管路に沿って布設される方向のことをいい、管路の軸方向と言い換えることができる。電力ケーブル10を構成する部材の各方向の定義も、上記した電力ケーブル10の各方向の定義と同様である。
また、本明細書において、単に「電力ケーブル10の伸び出し量」と言った場合は、電力ケーブル10が撓んでいるか否かに関わらず、電力ケーブル10の軸方向の伸び出し量のことを意味している。一方で、「電力ケーブル10の布設方向の伸び出し量」と言った場合は、電力ケーブル10の伸び出し量のうち、電力ケーブル10の布設方向の成分のことを意味している。
図1(a)に示すように、本実施形態に係る電力ケーブル10は、いわゆるCVケーブルとして構成され、例えば、中心から外側に向けて、導体110と、バインダ130と、内部半導電層140と、絶縁層150と、外部半導電層160と、遮蔽層172と、押さえテープ174と、遮水層176と、シース(被覆層)180と、を有している。
導体110は、例えば、純銅(Cu)、銅合金、純アルミニウム(Al)又はアルミニウム合金からなっている。導体110には、線材120が複合されている。導体110および線材120については、詳細を後述する。
その他の構成としては、例えば、バインダ130は、金属テープとクラフト紙等の絶縁紙とからなっている。内部半導電層140は、エチレン−酢酸ビニル共重合体と、カーボンブラックと、を含む半導電性樹脂組成物からなっている。絶縁層150は、ポリエチレンを主成分とする樹脂組成物からなっている。外部半導電層160は、内部半導電層140と同様の半導電性樹脂組成物からなっている。遮蔽層172は、軟銅線等を組み合わせて構成されている。押さえテープ174は、遮水層176が無い場合は不織布テープ又はポリエステルテープなどからなり、遮水層176がある場合は半導電性テープなどからなっている。遮水層176は、アルミニウムラミネートテープなどからなっている。また、シース180は、塩化ビニル等からなっている。
(電力ケーブルの中心部の構成)
図1(b)に示すように、導体110は、例えば、純Cu等からなる複数の導体素線を撚り合わせてなるセグメント110sを複数有している。ここでは、セグメント110sは、例えば、電力ケーブル10の径方向に対して単層で構成され、5つ設けられている。
電力ケーブル10の軸方向に直交する断面において、それぞれのセグメント110sの断面形状は、例えば、略扇形状である。具体的には、それぞれのセグメント110sは、外周面112sと、内面114sと、一対の側面116sと、を有している。電力ケーブル10の軸方向に直交する断面において、外周面112sは、セグメント110sの中心から外側に凸の円弧状になっている。内面114sは、外周面112sと反対側の面を構成している。電力ケーブル10の軸方向に直交する断面において、内面114sは、例えば、セグメント110sの中心と外周面112sの中心とを通る中央線に対して垂直な直線状となっている。一対の側面116sのそれぞれは、外周面112sと内面114sとを繋ぐように設けられている。電力ケーブル10の軸方向に直交する断面において、一対の側面116sのそれぞれは、円弧状の外周面112sの径方向に沿った直線状となっている。
本実施形態では、複数のセグメント110sのそれぞれの断面形状は、例えば、互いに等しい形状となっている。すなわち、それぞれのセグメント110sの中心角は、互いに等しくなっている。これにより、同じダイスを用いて複数のセグメント110sを形成することができる。その結果、電力ケーブル10の製造コストを低減することができる。
なお、それぞれのセグメント110sは、例えば、断面円形の導体素線を複数撚り合わせてダイスに通すことで成形されるため、電力ケーブル10の軸方向に直交する断面において、それぞれのセグメント110sの角部は、尖った形状とならず、略円弧状になっていてもよい。
複数のセグメント110sは、互いの側面116sが当接した状態で環状に束ねられることで、導体110を構成している。複数のセグメント110sのそれぞれの外周面112sは、導体110の外周面(符号不図示)の一部を構成している。また、複数のセグメント110sのそれぞれの側面116sは、導体110の径方向に沿うように配置されている。また、複数のセグメント110sのそれぞれの内面114sは、導体110の内壁110iの一部を構成している。
複数のセグメント110sは、電力ケーブル10の軸方向に対して螺旋状に撚り合わされている。複数のセグメント110sの撚り方向は、各セグメント110s内での導体素線の撚り方向と同じでもよいし、それと反対であってもよい。
導体110の中心、すなわち、複数のセグメント110sの中心には、導体110の軸方向に延びる中空部110wが設けられている。中空部110wは、複数のセグメント110sの内面114sで囲まれた領域に形成されている。中空部110wの中心軸は、導体110の中心軸と一致している。
本実施形態では、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、中空部110wは、例えば、導体110の中心に対して非対称(非点対称)となっている。ここでは、例えば、導体110を構成するセグメント110sが奇数設けられていることで、中空部110wが導体110の中心に対して非対称となっている。より具体的には、例えば、上述のようにセグメント110sが5つ設けられ、それぞれのセグメント110sの中心角が互いに等しいため、中空部110wの断面形状が略正五角形となっている。
本実施形態では、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、中空部110wは、例えば、回転対称となっている。ここでは、例えば、中空部110wの断面形状が略正五角形となっているため、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、中空部110wは、5回の回転対称となっている。
また、本実施形態では、中空部110wの断面形状は、例えば、電力ケーブル10の軸方向の全長に亘って均等になっている。つまり、中空部110wの断面形状は、電力ケーブル10の軸方向の全長に亘って、導体110の中心に対して非対称となっている。また、中空部110wの断面形状は、電力ケーブル10の軸方向の全長に亘って、回転対称となっている。
なお、中空部110wの断面形状は、電力ケーブル10の軸方向の全長に亘って均等になっている場合に限られない。例えば、電力ケーブル10の軸方向に直交する一部の断面における中空部110wの断面形状が、他の一部の断面における中空部110wの断面形状と異なっていてもよい。例えば、中空部110wの断面形状は、電力ケーブル10の軸方向の他の一部の断面において、導体110の中心に対して対称となっていてもよい。また、例えば、空部110wの断面形状は、電力ケーブル10の軸方向の他の一部の断面において、非回転対称となっていてもよい。
導体110の中空部110w内には、導体110の軸方向に沿って、線材120が挿入されている。線材120は、導体110を構成する材料よりヤング率が大きく線膨張係数が小さい材料から構成されている。このような線材120が導体110の中空部110w内に設けられていることで、電力ケーブル10が通電された際に、導体110と線材120との間で所定の摩擦力を生じさせ、電力ケーブル10の伸び出し量を小さくすることができる。
線材120は、例えば、鉄(Fe)およびニッケル(Ni)を所定の割合で含んでおり、好ましくは、Fe:Niの組成比が63.5:36.5であるインバからなっている。これにより、線材120のヤング率および線膨張係数を、それぞれ、導体110を構成する材料のヤング率および線膨張係数よりも小さくすることができる。
なお、各構成材料のヤング率および線膨張係数は、以下のとおりである。
Cuのヤング率:3×103kgf/mm2
Cuの線膨張係数:20×10−6/℃
Alのヤング率:3.0×103kgf/mm2
Alの線膨張係数:23×10−6/℃
インバのヤング率:16.5×103kgf/mm2
インバの線膨張係数:3×10−6/℃
また、線材120は、例えば、インバからなり断面円形の線材素線を複数撚り合わせて構成されている。線材120の撚り方向は、例えば、各セグメント110s内での導体素線の撚り方向および複数のセグメント110sの撚り方向のうちの少なくともいずれかと同じである。これにより、導体110と線材120との接触面積を大きくすることができ、導体110との線材120との間に所定の摩擦力を生じさせ易くすることができる。一方で、線材120の撚り方向は、例えば、各セグメント110s内での導体素線の撚り方向または複数のセグメント110sの撚り方向と反対であってもよい。これにより、導体110と線材120とを接触させつつ、それらの接触面積を小さくすることができる(点接触とすることができる)。前者の構成は、導体110と線材120との間の摩擦力を大きくしたい場合に有効であり、一方で、後者の構成は、導体110と線材120との間の摩擦力の増大を抑制したい場合に有効である。なお、線材120は、複数の線材素線により構成されている場合に限られず、1本の線材素線により構成されていてもよい。
また、線材120は、例えば、複数の線材素線を非圧縮とすることで構成されている。つまり、線材120を構成する各線材素線の断面形状は、略円形に維持されており、複数の線材素線の間には、空隙が形成されている。なお、線材120は、複数の線材素線を非圧縮とすることで構成されている場合に限られず、線材120は、複数の線材素線を圧縮することで構成されていてもよい。
また、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、線材120は、複数のセグメント110sのうちの少なくともいずれか1つに接している。言い換えれば、線材120の外周面の少なくとも一部は、複数のセグメント110sのうちの少なくともいずれか1つの内面114sの一部に接している。
本実施形態では、線材120は、例えば、導体110の中心に対して鉛直下側に位置するセグメント110sの一部に対して、該線材120自身の自重によって接している。ここでは、線材120は、例えば、五角形の中空部110wの底辺を構成する1つのセグメント110sの一部に接している。
また、本実施形態では、線材120は、例えば、電力ケーブル10の軸方向の全長に亘って所定のセグメント110sの一部に接している。例えば、線材120は、電力ケーブル10の軸方向の全長に亘って同じセグメント110sのみに接していてもよい。一方で、上述のように複数のセグメント110sは撚られているため、例えば、電力ケーブル10の軸方向に直交する一部の断面において線材120が接するセグメント110sは、他の一部の断面において線材120が接するセグメント110sと異なっていてもよい。
なお、線材120は、電力ケーブル10の軸方向の全長に亘って所定のセグメント110sの一部に接している場合に限られない。例えば、電力ケーブル10の軸方向の一部の断面において、線材120がいずれのセグメント110sにも接していない部分があってもよい。
また、線材120は、1つのセグメント110sに接している場合に限られない。例えば、線材120は、2つ以上のセグメント110sに接していてもよく、導体110を構成する全てのセグメント110sに接していてもよい。線材120と導体110との接点は、中空部110wの形状や、後述の線材120の充填率等に依存する。
一方で、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、中空部110wは、例えば、複数のセグメント110sのうちの少なくともいずれか1つと線材120との間に空隙110vを有している。言い換えれば、例えば、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、線材120は、複数のセグメント110sのうちの少なくともいずれか1つから離れている。また、例えば、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、線材120の中心は、導体110の中心からずれている。
本実施形態では、中空部110wは、例えば、線材120が接する1つのセグメント110s以外の4つのセグメント110sと線材120との間に、空隙110vを有している。また、当該空隙110vは、線材120を挟んで、線材120が接するセグメント110sと反対側に大きくなっている。本実施形態では、中空部110wは、例えば、電力ケーブル10の軸方向の全長に亘って、上記空隙110vを有している。
なお、中空部110wは、電力ケーブル10の軸方向の全長に亘って、上記空隙110vを有している場合に限られない。例えば、電力ケーブル10の軸方向の一部の断面において、中空部110wが空隙110vを有していなくてもよい。
また、中空部110wは、線材120が接する1つのセグメント110s以外の4つのセグメント110sと線材120との間に空隙110vを有している場合に限られない。例えば、線材120が2つ以上のセグメント110sに接し、中空部110wが3つ以下のセグメント110sと線材120との間に空隙110vを有していてもよい。または、例えば、線材120が全てのセグメント110sに接し、中空部110wがそれぞれのセグメント110sの一部と線材120との間に空隙110vを有していてもよい。空隙110vの大きさや場所は、中空部110wの形状や、後述の線材120の充填率等に依存する。
本実施形態では、導体110を構成する複数のセグメント110sは、例えば、非圧縮で構成されている。これにより、導体110の中心に中空部110wを容易に形成することができるとともに、所定のセグメント110sと線材120との間に空隙110vを容易に形成することができる。なお、導体110の中心に中空部110wが形成可能であれば、複数のセグメント110sが圧縮されていてもよい。
ここで、本実施形態の電力ケーブル10の軸方向に直交する任意の断面において、中空部110wの断面積に対する線材120の断面積の比率である線材120の充填率は、例えば、20%以上90%以下である。
線材120の充填率が20%未満であると、導体110と線材120との間の空隙110vが大きくなる。このため、導体110と線材120との間で摩擦が起こり難くなり、電力ケーブル10の線膨張係数が充分に小さくならない可能性がある。また、線材120の充填率が20%未満であると、導体110の剛性が大きくなるため、電力ケーブル10のヤング率が大きくなってしてしまう可能性がある。これらのため、電力ケーブル10が通電されたときに電力ケーブル10に生じる熱応力が大きくなる可能性がある。その結果、電力ケーブルの伸び出し量が大きくなる可能性がある。また、線材120の充填率が20%未満であると、導体110の外径が大きくなり、導体110が座屈する座屈荷重が過剰に大きくなる。このため、線材120の充填率が20%未満に小さくなるにつれて、電力ケーブル10が通電されたときの電力ケーブル10の熱応力が大きくなる傾向にあっても、該熱応力が導体110の座屈荷重未満となる場合が生じうる。つまり、電力ケーブル10の熱応力によって導体110が座屈することが困難となり、線材120に対して導体110のみが撓み難くなる。その結果、電力ケーブルの布設方向の伸び出し量が大きくなる可能性がある。
なお、線材120の充填率が20%未満であると、導体110の外径が大きくなり、電力ケーブル10の外径が大きくなる。このため、電力ケーブル10が曲げ難くなり、屈曲した管路内に電力ケーブル10を挿通させ難くなる可能性がある。
これに対し、線材120の充填率を20%以上とすることにより、導体110と線材120との間の空隙110vが過大となることを抑制することができる。これにより、導体110と線材120との間に所定の摩擦力を生じさせることができ、電力ケーブル10の線膨張係数を小さくすることができる。また、線材120の充填率を20%以上とすることにより、導体110の剛性を適正化することができる。これにより、電力ケーブル10のヤング率の増大を抑制することができる。これらにより、電力ケーブル10が通電されたときに電力ケーブル10に生じる熱応力を小さくすることができる。その結果、電力ケーブルの布設方向の伸び出し量を充分に小さくすることができる。また、線材120の充填率を20%以上とすることにより、導体110の外径を小さくし、導体110の座屈荷重を小さくすることができる。これにより、線材120の充填率が20%以上に大きくなるにつれて、電力ケーブル10が通電されたときの電力ケーブル10の熱応力が小さくなる傾向にあっても、該熱応力を導体110の座屈荷重以上とすることができる。つまり、電力ケーブル10の熱応力によって導体110を座屈させることができ、線材120に対して導体110のみを撓ませることができる。その結果、電力ケーブルの布設方向の伸び出し量を充分に小さくすることができる。
また、線材120の充填率を20%以上とすることにより、導体110の外径を小さくすることができ、電力ケーブル10の外径の増大を抑制することができる。これにより、電力ケーブル10を容易に曲げることができ、屈曲した管路内に電力ケーブル10を容易に挿通させることができる。
一方で、線材120の充填率が90%超であると、導体110と線材120との間の空隙110vが小さくなり、上記した特許文献1のように、導体110が線材120に密接した状態に近くなる。このため、電力ケーブル10が通電されたときに、導体110と線材120との間に過剰な摩擦力が生じ、導体110と線材120とが一体として挙動するようになる。このように導体110と線材120とが一体となっていると、電力ケーブル10の線膨張係数は線材120の線膨張係数に近づいて小さくなるが、電力ケーブル10のヤング率は線材120のヤング率に近づいて大きくなる。このため、電力ケーブル10が通電されたときに電力ケーブル10に生じる熱応力が大きくなる可能性がある。その結果、電力ケーブルの伸び出し量が大きくなる可能性がある。また、線材120の充填率が90%超であると、上記のように電力ケーブル10のヤング率が大きくなることに伴って、導体110の剛性が大きくなり、導体110の座屈荷重が過剰に大きくなる。このため、線材120の充填率が90%超に大きくなるにつれて、電力ケーブル10が通電されたときの電力ケーブル10の熱応力が大きくなる傾向にあっても、該熱応力は、導体110の座屈荷重未満となる。つまり、電力ケーブル10の熱応力によって導体110が座屈することが困難となり、線材120に対して導体110のみが撓み難くなる。その結果、電力ケーブルの布設方向の伸び出し量が大きくなる可能性がある。
これに対し、線材120の充填率を90%以下とすることにより、導体110と線材120との間の空隙110vが過剰に小さくなることを抑制することができる。これにより、電力ケーブル10が通電されたときに、導体110と線材120との間に所定の摩擦力を生じさせつつ、導体110と線材120とを互いに相対的に変形可能にすることができる。これにより、電力ケーブル10の線膨張係数を線材120の線膨張係数に近づけて小さくしつつ、電力ケーブル10のヤング率が線材のヤング率に近づいて大きくなることを抑制することができる。このようにして、電力ケーブル10が通電されたときに電力ケーブル10に生じる熱応力を小さくすることができる。その結果、電力ケーブルの伸び出し量を充分に小さくすることができる。また、線材120の充填率を90%以下とすることにより、上記のように電力ケーブル10のヤング率の増大を抑制することに伴って、導体110の剛性を小さくすることができ、導体110の座屈荷重を小さくすることができる。これにより、線材120の充填率が90%以下に小さくなるにつれて、電力ケーブル10が通電されたときの電力ケーブル10の熱応力が小さくなる傾向にあっても、該熱応力を導体110の座屈荷重以上とすることができる。つまり、電力ケーブル10の熱応力によって導体110を座屈させることができ、線材120に対して導体110のみを撓ませることができる。その結果、電力ケーブルの布設方向の伸び出し量を充分に小さくすることができる。
なお、線材120の充填率は、例えば、30%以上85%以下であることがより好ましい。これにより、電力ケーブルの伸び出し量(特に電力ケーブル10の布設方向の伸び出し量)を安定的に小さくすることができる。
上述のように線材120の充填率を20%以上90%以下とすることで、例えば、電力ケーブル10の導体110の温度と基底温度との差が65℃のときに電力ケーブル10に生じる熱応力は、長さ6000mmの電力ケーブル10の両端を固定したときに導体110が座屈する座屈荷重以上となる。ここでいう「電力ケーブル10の導体110の温度と基底温度との差が65℃のとき」とは、管路内に布設された電力ケーブル10に流れる連続通電電流が許容最大電流であるときの導体110の許容温度90℃と基底温度(土壌温度)25℃との差のことであり、電力ケーブル10の伸び出し量が最大となる温度変化幅に相当する。また、「長さ6000mmの電力ケーブル10の両端を固定したとき」とは、継ぎ目間の距離が6000mmである管路内に電力ケーブル10が両端を固定されて布設されているときに相当する。つまり、上記条件下での電力ケーブル10の熱応力を導体110の座屈荷重以上とすることで、管路の継ぎ目間で少なくとも1箇所以上の導体110の撓みを必ず生じさせることができる。その結果、管路の継ぎ目間での電力ケーブル10の布設方向の伸び出し量を充分に小さくすることができる。
次に、中空部110wおよび線材120が設けられていない従来の電力ケーブルを「基準電力ケーブル」とし、基準電力ケーブルと、本実施形態の電力ケーブル10とについて、電力ケーブル10が通電されたときの熱応力を比較する。なお、基準電力ケーブルは、導体の断面積が本実施形態の電力ケーブル10の導体110の断面積と等しく、他の構成が本実施形態の電力ケーブル10の他の構成と等しいものとする。
本実施形態での電力ケーブル10のヤング率をEとし、導体110の断面積をAとし、電力ケーブル10の線膨張係数をαとする。電力ケーブル10が通電され、電力ケーブル10の温度が常温から温度差tだけ上昇したとすると、本実施形態の電力ケーブル10に生じる熱応力Fは、上述した式(1)により、F=EAαtとなる。
一方で、基準電力ケーブルについて、基準電力ケーブルのヤング率をE0とし、導体の断面積をA0とし、基準電力ケーブルの線膨張係数をα0とする。基準電力ケーブルの温度が常温から温度差tだけ上昇したとすると、基準電力ケーブルに生じる熱応力F0は、以下の式(2)で求められる。
F0=E0A0α0t ・・・(2)
基準電力ケーブルの熱応力F0に対する本実施形態の電力ケーブル10の熱応力Fの比率である熱応力比率Rは、A=A0により、以下の式(3)で求められる。
R=F/F0=Eα/E0α0 ・・・(3)
本実施形態では、例えば、電力ケーブル10の熱応力Fは基準電力ケーブルの熱応力F0よりも小さくなるため、上記した熱応力比率Rは、1未満となっている。
熱応力比率Rが1以上であると、電力ケーブル10の伸び出し量が基準電力ケーブルの伸び出し量よりも大きくなってしまう。すなわち、この状態では、電力ケーブル10の導体110内に線材120を設けたことによる電力ケーブル10の伸び出し抑制効果が得られないこととなる。これに対し、熱応力比率Rを1未満とする、すなわち、電力ケーブル10の熱応力を基準電力ケーブルの熱応力よりも小さくすることにより、電力ケーブル10の伸び出し量を基準電力ケーブルの伸び出し量よりも小さくすることができる。すなわち、電力ケーブル10の導体110内に線材120を設けたことによる電力ケーブル10の伸び出し抑制効果を充分に得ることが可能となる。
なお、熱応力比率Rは低ければ低いほど、電力ケーブル10の伸び出し量を小さくすることができるため好ましい。しかしながら、線材120の種類によってそのヤング率および線膨張係数が限定されることから、熱応力比率Rの下限値は、例えば、0.8程度となることが考えられる。
本実施形態では、上述の線材120の充填率を20%以上90%以下とすることにより、電力ケーブル10の線膨張係数αを基準電力ケーブルの線膨張係数α0よりも小さくすることができるとともに、電力ケーブル10のヤング率Eを基準電力ケーブルのヤング率E0に対して1倍以上1.2倍以下とすることができる。その結果、熱応力比率Rを1未満とすることが可能となる。
なお、電力ケーブル10の線膨張係数αが線材120の線膨張係数未満となることはないため、電力ケーブル10の線膨張係数αの下限値は、線材120の線膨張係数程度となる。
また、本実施形態では、導体110の断面積Aに対する線材120の断面積の比率(以下、線材120の断面積比率)は、例えば、4%以上10%以下となっている。線材120の断面積比率が4%未満であると、電力ケーブル10の線膨張係数αを充分に小さくすることができない可能性がある。これに対し、線材120の断面積比率を4%以上とすることにより、電力ケーブル10の線膨張係数αを線材120の線膨張係数に近づけて充分に小さくすることができる。一方で、線材120の断面積比率が10%超であると、電力ケーブル10のヤング率Eが線材120のヤング率に近づいて大きくなる。これに対し、線材120の断面積比率を10%以下とすることにより、電力ケーブル10のヤング率が線材のヤング率に近づくことを抑制することができる。すなわち、電力ケーブル10のヤング率の増大を抑制することができる。このように、線材120の断面積比率を4%以上10%以下とすることにより、電力ケーブル10の線膨張係数αを基準電力ケーブルの線膨張係数α0よりも小さくしつつ、電力ケーブル10のヤング率Eを基準電力ケーブルのヤング率E0に対して1倍以上1.2倍以下とすることができる。
(2)電力ケーブルの通電時について
次に、図2を用い、本実施形態の電力ケーブル10が通電されたときについて説明する。図2は、本実施形態に係る電力ケーブルが通電されたときの電力ケーブルの軸方向に沿った概略断面図である。なお、図2では、導体110および線材120のみを示している。
電力ケーブル10の導体110が通電されると、ジュール熱によって電力ケーブル10の温度が上昇する。電力ケーブル10の温度が上昇すると、電力ケーブル10が膨張し、電力ケーブル10が軸方向に伸び出す。このとき、導体110の線膨張係数が線材120よりも大きいため、導体110の伸び出し量は、線材120の伸び出し量よりも大きくなる。
ここで、本実施形態では、上述のように、線材120の充填率を20%以上90%以下とすることにより、電力ケーブル10の導体110が通電されたときに、導体110と線材120との間に所定の摩擦力を生じさせつつ、導体110と線材120とを互いに相対的に変形させることができる。
これにより、図2に示すように、電力ケーブル10の導体110が通電されたときに、線材120に対して導体110のみを蛇行するように撓ませることができる。例えば、線材120に対して導体110のみを螺旋状に蛇行させることができる。なお、このとき、導体110の外周に設けられた絶縁層150等も、導体110の形状に追従するように蛇行してもよく、電力ケーブル10全体が蛇行してもよい。
このように、線材120に対して導体110のみを蛇行するように撓ませることで、導体110の伸び出し量のうち、電力ケーブル10の布設方向に直交する方向の成分を増加させ、一方で、電力ケーブル10の布設方向の成分を減少させることができる。言い換えれば、導体110の伸び出し量のうち、電力ケーブル10の布設方向の成分の一部を、電力ケーブル10の布設方向に直交する方向の成分に吸収させることができる。その結果、電力ケーブル10全体としての布設方向の伸び出し量を小さくすることができる。
このとき、本実施形態では、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、線材120は、例えば、複数のセグメント110sのうちの少なくともいずれか1つに接している。これにより、電力ケーブル10が通電されたときに、線材120が接するセグメント110sと線材120との間に所定の摩擦力を生じさせることができる。
一方で、このとき、本実施形態では、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、中空部110wは、例えば、複数のセグメント110sのうちの少なくともいずれか1つと線材120との間に空隙110vを有している。所定のセグメント110sと線材120との間に空隙110vが介在することで、電力ケーブル10が通電されたときに、当該セグメント110sと線材120との間での摩擦力を小さくすることができる。これにより、上記のように線材120と接するセグメント110sの伸び出しを抑制しつつ、線材120との間に空隙110vが介在するセグメント110sの伸び出しを許容することができる。その結果、線材120に対して導体110のみを容易に蛇行させることができる。
また、所定のセグメント110sと線材120との間に空隙110vが介在することで、線材120が空隙110vに向かって入り込むように、線材120に対して導体110のみを撓ませることができる。例えば、空隙110vのうち、線材120を挟んで、線材120が接するセグメント110sと反対側に大きくなっている部分に向かって、線材120が入り込むように、線材120に対して導体110のみを撓ませることができる。このように、線材120とセグメント110sとの間の空隙110vにより、線材120に対する導体110のみの撓みを促すことができる。
このとき、本実施形態では、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、中空部110wは、例えば、導体110の中心に対して非対称となっている。線材120が複数のセグメント110sのいずれに接していたとしても、線材120とセグメント110sとの接点の配置は、導体110の中心に対して非対称となる。これにより、電力ケーブル10が通電されたときに、導体110と線材120との間に、電力ケーブル10の中心に対して非対称に、所定の摩擦力を生じさせることができる。その結果、線材120に対して導体110のみを蛇行するように撓ませ易くすることができる。
また、このとき、本実施形態では、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、中空部110wは、例えば、回転対称となっている。線材120が複数のセグメント110sのいずれに接していたとしても、電力ケーブル10の軸方向から見たときの、導体110と線材120との接点を、導体110の周方向に所定角度ごとに分布させることができる。これにより、電力ケーブル10が通電されたときに、線材120に対して導体110のみを規則的に(例えば所定の周期で)蛇行させることができる。その結果、電力ケーブル10の伸び出し量を容易に予測することができる。
なお、線材120に対して導体110のみが蛇行するように撓んでいる部分が、電力ケーブル10の全長に亘っていなくてもよい。例えば、電力ケーブル10の軸方向の少なくとも一部において、伸び出し量が大きい導体110と、伸び出し量が小さい線材120との間の応力が釣り合い、線材120および導体110が撓んでいない部分が生じていてもよい。
(3)電力ケーブルの製造方法
次に、本実施形態に係る電力ケーブル10の製造方法について説明する。
まず、例えば、インバからなり断面円形の線材素線を複数用意する。複数の線材素線を用意したら、複数の線材素線を撚り合わせることにより、線材120を形成する。なお、このとき、複数の線材素線を非圧縮とすることで、線材120を形成する。
また、このとき、製造する電力ケーブル10の仕様によって導体110の断面積が決まっているため、導体110の断面積に応じて、線材120の断面積(太さ)を調整する。ここでは、導体110の断面積に対する線材120の断面積の比率が例えば4%以上10%以下となるように、線材120を形成する。
また、Cu等からなる複数の導体素線を用意する。複数の導体素線を用意したら、複数の導体素線を撚り合わせながら、所定の開口を有するダイスに通すことにより、導体110を構成するセグメント110sを複数形成する。このとき、撚り合わせた導体素線を徐々にダイスで圧縮して成形する。具体的には、例えば、1本の導体素線の上に6本の導体素線を撚り合わせてダイスで圧縮し、その上に12本の導体素線を撚り合わせてダイスで圧縮し、さらにその上に18本の導体素線を撚り合わせてダイスで圧縮する。このようにして、それぞれのセグメント110sの断面形状を、略扇形状とする。
次に、複数のセグメント110sを撚り合わせることで、導体110を形成する。このとき、導体110を構成する複数のセグメント110sの中心に、導体110の軸方向に延びる中空部110wを形成しつつ、該導体110の中空部110w内に導体110の軸方向に沿って線材120を挿入する。
このとき、導体110の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、例えば、導体110の中心に対して非対称となるように、中空部110wを形成する。本実施形態では、例えば、5つのセグメント110sにより導体110を形成することで、断面形状が略正五角形である中空部110wを形成する。
また、このとき、導体110の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、線材120を、複数のセグメント110sのうちの少なくともいずれか1つに接触させる。本実施形態では、例えば、線材120を、五角形の中空部110wの底辺を構成する1つのセグメント110sの一部に接触させる。
また、このとき、導体110の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、複数のセグメント110sのうちの少なくともいずれか1つと線材120との間に空隙110vを介在させる。本実施形態では、例えば、線材120が接する1つのセグメント110s以外の4つのセグメント110sと線材120との間に、空隙110vを介在させる。
また、このとき、複数のセグメント110sのそれぞれを複数のダイスのそれぞれを用いて徐々に圧縮した後に、複数のセグメント110sを撚り合わせる際も、複数のセグメント110sの形状の組み合わせを軸方向に均一に成立させるように、ダイスを用いて複数のセグメント110sを撚り合わせる。
また、このとき、複数のセグメント110s同士を非圧縮で撚り合わせることで、導体110を形成する。
このようにして、電力ケーブル10の軸方向に直交する任意の断面において、中空部110wの断面積に対する線材120の断面積の比率である線材120の充填率が20%以上90%以下となるように、複数のセグメント110sを撚り合わせる。
なお、このとき、複数のセグメント110sを撚り合わせて導体110を形成しながら、導体110の外周を覆うように、バインダ130を巻回する。これにより、複数のセグメント110sをバインダ130によって束ねる。
次に、導体110の外周を覆うように、中心から外側に向けて、内部半導電層140と、絶縁層150と、外部半導電層160とを、順次または同時に押出成形することで、ケーブルコア(電力ケーブル中間体)を形成する。次に、ケーブルコアを所定の架橋温度に加熱した加熱炉に投入することで、絶縁層150中のポリエチレンを架橋させる。次に、外部半導電層160の外周に、軟銅線を被覆して、遮蔽層172を形成する。次に、遮蔽層172の外周に、押さえテープ174を重ね巻きする。次に、押さえテープ174の外周に、アルミニウムテープを巻回することで、遮水層176を形成する。次に、遮水層176の外周に、シース180を更に押出成形する。
以上のようにして、本実施形態に係る電力ケーブル10が製造される。
(4)電力ケーブルの接続方法(布設方法)
次に、図3および図4を用い、本実施形態に係る電力ケーブル10の接続方法(布設方法)について説明する。
ここで、図3に示すように、地中に所定の間隔でマンホール(人孔)940が設けられ、一対のマンホール940間に管路920が設けられている。以下では、例えば、管路920およびマンホール940内に設けられた既存のOFケーブルを、本実施形態の電力ケーブル10に置き換える場合について説明する。
まず、上記した製造方法により、本実施形態に係る電力ケーブル10を用意する。
次に、管路920およびマンホール940から、既存のOFケーブル(不図示)を撤去する。
次に、本実施形態の電力ケーブル10の先端にプーリングアイを取り付ける。プーリングアイの取り付け後、予め管路920内に挿通させておいたワイヤをプーリングアイの先端に接続する。ワイヤを接続したら、ウインチによってワイヤを牽引することで、管路920内に電力ケーブル10を挿通させる。
管路920内に電力ケーブル10を挿通させたら、マンホール940内で電力ケーブル10をS字に屈曲させることで、オフセット部30を形成する。マンホール940を挟んで反対側の管路920内にも、上記と同様に電力ケーブル10を挿通させるとともに、オフセット部30を形成する。
上述のようにマンホール940を挟んで対向する一対の管路920のそれぞれ内に電力ケーブル10を挿通させたら、マンホール940を挟んで対向する一対の電力ケーブル10のうちの一方に、インナーコアによって拡径された絶縁筒230を被せておく。
次に、一対の電力ケーブル10のそれぞれの先端において、絶縁層150等を剥ぎ取ることにより、導体110を露出させる。
一対の電力ケーブル10のそれぞれの先端において導体110を露出させたら、それぞれの導体110の先端から線材120の先端を引き出す。このとき、線材120の充填率が20%以上90%以下となっていることにより、導体110の中空部110wから線材120の先端を容易に引き出すことができる。
ここで、図4に示すように、一対の電力ケーブル10のそれぞれにおいて導体110の中空部110wから線材120を所定長さだけ引き出したら、それぞれの線材120の先端にストッパ220を固定する。ストッパ220は、例えば、金属製の筒状部材(リング状部材)として構成されており、線材120の先端が挿入された状態で圧縮されることで該線材120の先端に固定されるようになっている。また、ストッパ220の直径は、導体110の中空部110wの直径よりも大きくなっている。このように、一対の電力ケーブル10のそれぞれにおいて、線材120の先端にストッパ220を固定することで、電力ケーブル10が通電されたときに、線材120に対する導体110の軸方向の伸び出しをストッパ220によって規制することができる。
次に、金属製の筒状体として構成されるスリーブ210を用意し、該スリーブ210内に、一対の電力ケーブル10のそれぞれにおける導体110の先端を、ストッパ220を固定した状態で互いに対向するように挿入する。この状態で、スリーブ210を外側から圧縮することにより、一対の導体110同士を圧縮接続する。
次に、一対の電力ケーブル10のうちの一方に被せておいた絶縁筒230を、一対の導体110同士の接続部を覆う位置に移動させる。絶縁筒230が所定の位置に移動したら、絶縁筒230を拡径していたインナーコアを除去することで、絶縁筒230を縮径させる。これにより、絶縁筒230が一対の電力ケーブル10の接続部に固定される。
以上のようにして、本実施形態に係る電力ケーブル10の接続構造20が構築される。
(5)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
(a)導体110の中心に設けられた中空部110w内に、導体110を構成する材料よりもヤング率が大きく線膨張係数が小さい材料から構成される線材120が挿入されている。電力ケーブル10の軸方向に直交する任意の断面において、中空部110wの断面積に対する線材120の断面積の比率である線材120の充填率は、20%以上90%以下である。これにより、導体110と線材120との間に所定の摩擦力を生じさせ、電力ケーブル10の線膨張係数を線材120の線膨張係数に近づけて小さくすることができる。また、線材120の充填率を上記範囲内とすることで、電力ケーブル10のヤング率の増大を抑制することができる。その結果、電力ケーブル10が通電されたときの電力ケーブル10の熱応力を小さくし、電力ケーブル10の伸び出し量を充分に小さくすることができる。
(b)線材120の充填率を上記範囲内とすることで、導体110と線材120との間に所定の摩擦力を生じさせつつ、導体110と線材120とを互いに相対的に変形させることができる。これにより、電力ケーブル10の導体110が通電されたときに、線材120に対して導体110のみを蛇行するように撓ませることができる。線材120に対して導体110のみを蛇行するように撓ませることで、導体110の伸び出し量のうち、電力ケーブル10の布設方向に直交する方向の成分を増加させ、一方で、電力ケーブル10の布設方向の成分を減少させることができる。その結果、電力ケーブル10全体としての布設方向の伸び出し量を小さくすることができる。
(c)線材120の充填率を上記範囲内とすることで、電力ケーブル10の導体110の温度と基底温度との差が65℃のときに電力ケーブル10に生じる熱応力を、長さ6000mmの電力ケーブル10の両端を固定したときに導体110が座屈する座屈荷重以上とすることができる。つまり、管路の継ぎ目間で少なくとも1箇所以上の導体110の撓みを必ず生じさせることができる。その結果、管路の継ぎ目間での電力ケーブル10の布設方向の伸び出し量を充分に小さくすることができる。
(d)R=Eα/E0α0で求められる熱応力比率Rを1未満とする、すなわち、電力ケーブル10の熱応力を基準電力ケーブルの熱応力よりも小さくすることにより、電力ケーブル10の伸び出し量を基準電力ケーブルの伸び出し量よりも小さくすることができる。すなわち、電力ケーブル10の導体110内に線材120を設けたことによる電力ケーブル10の伸び出し抑制効果を充分に得ることが可能となる。
(e)電力ケーブル10の伸び出し量を小さくすることで、管路920からマンホール940への電力ケーブル10の伸び出し量を小さくすることができる。ここで、管路920からの電力ケーブル10の伸び出しは、オフセット部30が変形されることによって吸収されうる。管路920からの電力ケーブル10の伸び出し量が大きいほど、オフセット部30の曲げ半径が小さくなる。オフセット部30の許容曲げ半径は、電力ケーブル10の外径をDとしたとき、例えば、10D以上と設定される。本実施形態では、管路920からマンホール940への電力ケーブル10の伸び出し量を小さくすることで、オフセット部30の曲げ半径を許容曲げ半径以上に保つことができる。
(f)電力ケーブル10の伸び出し量を小さくすることで、温度変化が生じても熱伸縮が発生しない領域、いわゆる、不動域を充分に確保することができる。これにより、管路920が傾斜している場合においても、電力ケーブル10の滑落が起こり難くなる。よって、例えば、マンホール940内にてバネや錘等を利用して滑落を抑制する滑落防止装置等を電力ケーブル10に取り付けなくてもよく、マンホール940が小さくても電力ケーブル10を布設することが可能となる。
(g)電力ケーブル10の伸び出し量を小さくすることで、電力ケーブル10を既存のOFケーブルと容易に置き換えることができる。
ここで、従来のCVケーブル(基準電力ケーブル)の伸び出し量は、上述のように、OFケーブルの伸び出し量よりも大きかった。このため、従来のCVケーブルを既存のOFケーブルと置き換える場合、通電時の伸び出しにより、オフセット部の曲げ半径が既存の線路で設定された許容曲げ半径より小さくなってしまう可能性があった。また、傾斜した管路内での滑落も生じやすくなる可能性があった。したがって、従来のCVケーブルを線路に布設する際には、通電時のオフセット部の曲げ半径が許容曲げ半径以上となるように、また、滑落防止装置等を設置できるように、マンホールを拡大しなければならなかった。このように、従来のCVケーブルは、OFケーブルが既設された線路への布設が困難であった。
これに対し、本実施形態では、通電時における電力ケーブル10の伸び出し量を、OFケーブルの伸び出し量と同等以下とすることができる。これにより、本実施形態に係る電力ケーブル10を既存のOFケーブルと置き換えた場合、オフセット部の曲げ半径を、既存の線路で設定された許容曲げ半径以上に保つことができる。また、傾斜した管路920内での滑落を抑制することができる。さらには、マンホール940を拡大する必要がない。その結果、本実施形態に係る電力ケーブル10を既存のOFケーブルと容易に置き換えることができる。
また、本実施形態では、電力ケーブル10を既存のOFケーブルと置き換え可能となることにより、電力ケーブル10の導体110の断面積を、例えば、OFケーブルにおける油の経路となる中空管を含めた導体の断面積と等しくなるように拡大することができる。これにより、本実施形態に係る電力ケーブル10の送電容量を、OFケーブルの送電容量よりも大きくすることができる。
さらには、本実施形態では、電力ケーブル10を既存のOFケーブルと置き換え可能となることにより、線路内からOFケーブルに付随していた給油設備を無くすことができる。つまり、電力ケーブル10の維持管理コストを削減することができる。
(h)本実施形態の電力ケーブル10において、導体110が複数の導体素線を撚り合わせてなるセグメント110sを複数有していることで、複数のセグメント110sの中心に、線材120が挿入される中空部110wを容易に形成することができる。
(i)電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、線材120は、複数のセグメント110sのうちの少なくともいずれか1つに接している。これにより、電力ケーブル10が通電されたときに、線材120が接するセグメント110sと線材120との間に所定の摩擦力を生じさせることができる。
(j)電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、中空部110wは、複数のセグメント110sのうちの少なくともいずれか1つと線材120との間に空隙110vを有している。所定のセグメント110sと線材120との間に空隙110vが介在することで、電力ケーブル10が通電されたときに、当該セグメント110sと線材120との間での摩擦力を小さくすることができる。これにより、上記のように線材120と接するセグメント110sの伸び出しを抑制しつつ、線材120との間に空隙110vが介在するセグメント110sの伸び出しを許容することができる。その結果、線材120に対して導体110のみを容易に蛇行させることができる。
また、所定のセグメント110sと線材120との間に空隙110vが介在することで、線材120が空隙110vに向かって入り込むように、線材120に対して導体110のみを撓ませることができる。つまり、線材120とセグメント110sとの間の空隙110vにより、線材120に対する導体110のみの撓みを促すことができる。
(k)電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、中空部110wは、導体110の中心に対して非対称となっている。線材120が複数のセグメント110sのいずれに接していたとしても、線材120とセグメント110sとの接点の配置は、導体110の中心に対して非対称となる。これにより、電力ケーブル10が通電されたときに、導体110と線材120との間に、電力ケーブル10の中心に対して非対称に、所定の摩擦力を生じさせることができる。その結果、線材120に対して導体110のみを蛇行するように撓ませ易くすることができる。
(l)電力ケーブル10の先端では、導体110の中空部110wから線材120が所定長さだけ引き出し可能である。これにより、一対の電力ケーブル10のそれぞれの導体110の中空部110wから線材120の先端を引き出して、該線材120の先端にストッパ220を固定することができる。その結果、電力ケーブル10が通電されたときに、線材120に対する導体110の軸方向の伸び出しをストッパ220によって規制することができる。
特に、線材120の充填率を90%以下とすることで、導体110の中空部110wから線材120を容易に引き出すことができる。これにより、電力ケーブル10の布設現場での作業性を向上させることができる。
(6)本実施形態の変形例
本実施形態は、上述の態様に限定されず、以下に示す変形例のように変更することができる。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
(変形例1)
図5(a)は、変形例1の電力ケーブルにおける中心部を拡大した概略断面図である。
図5(a)に示す変形例1では、セグメント110sは、偶数設けられている。また、セグメント110sは、5つより少なく設けられている。具体的には、セグメント110sは、例えば、4つ設けられている。
本変形例では、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、中空部110wは、例えば、導体110の中心に対して対称となっている。具体的には、例えば、上述のようにセグメント110sが4つ設けられ、それぞれのセグメント110sの中心角が互いに等しいため、中空部110wの断面形状が略正方形となっている。
本変形例では、線材120は、例えば、導体110の中心に対して鉛直下側で隣接する一対のセグメント110sのそれぞれの一部に接している。また、中空部110wは、線材120が接する一対のセグメント110s以外の2つのセグメント110sと線材120との間に空隙110vを有している。
変形例1によれば、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、中空部110wは、導体110の中心に対して対称となっている。これにより、電力ケーブル10が通電されたときに、導体110と線材120との間に、導体110の中心または中心線に対してバランスよく所定の摩擦力を生じさせることができる。その結果、線材120に対して導体110のみを規則的に撓ませることができる。したがって、本変形例は、例えば、導体110の撓み方向を、電力ケーブル10の布設方向に直交する方向のうちの所定の方向のみに限定したい場合などに有効である。
(変形例2)
図5(b)は、変形例2の電力ケーブルにおける中心部を拡大した概略断面図である。
図5(b)に示す変形例2では、セグメント110sは、5つより多く設けられている。具体的には、セグメント110sは、例えば、6つ設けられている。
本変形例では、例えば、上述のようにセグメント110sが6つ設けられ、それぞれのセグメント110sの中心角が互いに等しいため、中空部110wの断面形状が略正六角形となっている。
本変形例では、線材120は、例えば、六角形の中空部110wの底辺を構成する1つのセグメント110sの一部に接している。また、中空部110wは、線材120が接するセグメント110s以外の5つのセグメント110sと線材120との間に空隙110vを有している。
変形例2によれば、セグメント110sが5つより多く設けられていることで、セグメント110s一つ当たりの剛性を小さくすることができる。これにより、電力ケーブル10が通電されたときに、それぞれのセグメント110sを変形し易くすることができる。その結果、線材120に対して導体110のみを容易に蛇行するように撓ませることができる。
また、変形例2によれば、セグメント110sが5つより多く設けられていることで、線材120の充填率を高くすれば、導体110と線材120との接点(線材120と接するセグメント110sの数)を増やすことができる。これにより、導体110と線材120との間の摩擦力を容易に大きくすることができる。
(変形例3)
図6(a)は、変形例3の電力ケーブルにおける中心部を拡大した概略断面図である。
図6(a)に示す変形例3では、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、中空部110wは、例えば、非回転対称となっている。
具体的には、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、複数のセグメント110sのうちの少なくとも1つのセグメント110sの断面形状は、他のセグメント110sの断面形状と異なっている。ここでは、例えば、5つのセグメント110sのそれぞれの断面形状が互いに異なっている。また、例えば、電力ケーブル10の軸方向に直交する断面において、5つのセグメント110sのうち少なくとも1つの断面形状は、該セグメント110sの中心と円弧状の外周面112sの中心とを通る中央線に対して非対称となっている。また、例えば、電力ケーブル10の軸方向に直交する断面において、5つのセグメント110sのうち少なくとも1つの内面114sは、セグメント110sの中心と外周面112sの中心とを通る中央線に対して垂直な方向から互いに異なる方向に傾斜している。このような構成により、中空部110wは、導体110の中心に対して非回転対称となっている。
また、本変形例では、例えば、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、空隙110vは、線材120を挟んで、線材120が接するセグメント110sと反対側以外の部分に大きくなっている。
変形例3によれば、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、中空部110wは、例えば、非回転対称となっている。電力ケーブル10の軸方向から見たときの、導体110と線材120との接点は、導体110の周方向に不規則に分布することとなる。これにより、電力ケーブル10が通電されたときに、線材120に対して導体110のみを不規則に(例えば不定周期で)蛇行させることができる。その結果、電力ケーブル10が通電されたときの熱応力が特定のセグメント110sに対して局所的に集中しないように、熱応力を分散させることができる。
(変形例4)
図6(b)は、変形例4の電力ケーブルにおける中心部を拡大した概略断面図である。
図6(b)に示す変形例4では、変形例3と同様に、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、中空部110wが非回転対称となっている。
本変形例では、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、複数のセグメント110sのそれぞれの中心角は、互いに異なっている。つまり、複数のセグメント110sのそれぞれの断面積が互いに異なっている。
変形例4によれば、変形例3と同様の効果を得ることができる。
また、変形例4によれば、複数のセグメント110sのそれぞれの中心角を互いに異ならせることで、複数のセグメント110sのそれぞれの剛性を互いに異ならせることができる。これにより、線材120に対して導体110のみを容易に不規則に蛇行させることができる。
なお、変形例3および4では、複数のセグメント110sのそれぞれを製造するために、それぞれ異なるダイスを用いなければならない。このため、電力ケーブル10の製造コストが高くなる可能性がある。したがって、上述の実施形態のように、複数のセグメント110sのそれぞれの断面形状が互いに等しい形状となっている場合のほうが、同じダイスを用いて複数のセグメント110sを形成し、電力ケーブル10の製造コストを低減することができる点で好ましい。
(変形例5)
図7(a)は、変形例5の電力ケーブルにおける中心部を拡大した概略断面図である。
図7(a)に示す変形例5では、例えば、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、複数のセグメント110sのそれぞれの内面114sは、該セグメント110sの中心に向けて凹の円弧状となっている。これにより、該断面において、中空部110wの断面形状は、例えば、円形となっている。
変形例5によれば、複数のセグメント110sのそれぞれの内面114sが該セグメント110sの中心に向けて凹の円弧状となっていることで、線材120をセグメント110sの内面114sの形状に沿うように接触させることができる。つまり、該セグメント110sと線材120との接触面積を大きくすることができる。したがって、本変形例は、例えば、セグメント110sと線材120との摩擦力を大きくしたい場合などに有効である。
また、変形例5によれば、セグメント110sの数や中心角にかかわらず、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、中空部110wを、導体110の中心に対して対称とすることができる。これにより、セグメント110sの数や中心角にかかわらず、電力ケーブル10が通電されたときに、導体110と線材120との間にバランスよく所定の摩擦力を生じさせることができる。
(変形例6)
図7(b)は、変形例6の電力ケーブルにおける中心部を拡大した概略断面図である。
図7(b)に示す変形例6では、例えば、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、複数のセグメント110sのそれぞれの内面114sは、該セグメント110sの径方向の外側に向けて凸の円弧状となっている。これにより、該断面において、中空部110wの断面形状は、例えば、略星形となっている。
また、例えば、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、空隙110vは、少なくとも複数のセグメント110sのうちの隣接するセグメント110sの間において、導体110の中心側から導体110の径方向に広がっている。
変形例6によれば、複数のセグメント110sのそれぞれの内面114sが該セグメント110sの径方向の外側に向けて凸の円弧状となっていることで、線材120をセグメント110sの内面114sに点接触させることができる。つまり、該セグメント110sと線材120との接触面積を小さくすることができる。したがって、本変形例は、例えば、セグメント110sと線材120との摩擦力を小さくしたい場合などに有効である。
また、変形例6によれば、電力ケーブル10の軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、空隙110vは、少なくとも複数のセグメント110sのうちの隣接するセグメント110sの間に、導体110の中心側から導体110の径方向に広がっていることで、電力ケーブル10が通電されたときに、隣接するセグメント110s間の空隙110vに線材120が入り込むようにして、線材120に対して導体110のみを撓ませることができる。例えば、複数のセグメント110sが撚られることによって形成された螺旋状の空隙110vに沿って、線材120に対して導体110のみを撓ませることができる。
(変形例7)
図8は、変形例7の電力ケーブルにおける中心部を拡大した概略図である。図8は、導体110の内壁110iと、線材120とを示している。
図8に示す変形例7では、線材120が導体110の内壁110iに接している接点(以下、線材120の接点ともいう)CPは、電力ケーブル10の軸方向に沿って異なる位置に配置されている。すなわち、電力ケーブル10の軸方向に直交する任意の第1断面Aでは、線材120の一部のみが導体110に接し、一方で、第1断面Aと異なる第2断面Bでは、第1断面Aで線材120の一部が導体110に接している位置と異なる位置の、線材120の一部のみが、導体110に接している。
さらに本変形例では、線材120の接点CPは、電力ケーブル10の軸方向に対して螺旋状に位置している。例えば、電力ケーブル10の軸方向と直交する断面を軸方向に移動させたとき、線材120の接点CPが、導体110の周方向に(例えば時計と反対回りに)隣接するセグメント110sに順次移動している。
線材120の接点CPが導体110の周方向に移動している方向(接点CPの回転方向)は、導体110を構成する複数のセグメント110sの撚り方向と同じであってもよいし、該撚り方向と反対であってもよい。また、線材120の接点CPが導体110の周方向に移動している周期(接点CPの回転周期)は、複数のセグメント110sの撚り周期と同じであってもよいし、該撚り周期と異なっていてもよい。
なお、線材120の接点CPの回転方向および回転周期が、複数のセグメント110sの撚り方向および撚り周期にそれぞれ等しい場合は、線材120は、常に同一のセグメント110sに接していてもよい。
ここでは、例えば、電力ケーブル10が通電されていない状態で、直線状の線材120に対して導体110のみが螺旋状に蛇行して配置されている。これにより、線材120の接点CPが、電力ケーブル10の軸方向に対して螺旋状に位置している。なお、直線状の導体110の中空部110w内で線材120が螺旋状に配置されていることで、線材120の接点CPが、電力ケーブル10の軸方向に対して螺旋状に位置していてもよい。
変形例7によれば、線材120が導体110に接している接点CPが、電力ケーブル10の軸方向に沿って異なる位置に配置されていることで、電力ケーブル10が通電されたときに、導体110と線材120との間にランダムな位置で摩擦力を生じさせることができる。その結果、線材120に対して導体110のみを容易に蛇行させることができる。
また、変形例5によれば、線材120が導体110に接している接点CPが、電力ケーブル10の軸方向に対して螺旋状に位置していることで、電力ケーブル10が通電されたときに、導体110と線材120との間に螺旋状に摩擦力を生じさせることができる。その結果、線材120に対して導体110のみを容易に螺旋状に蛇行させることができる。
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態および変形例について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態および変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
上述の実施形態では、線材120がインバ線により構成されている場合について説明したが、線材120は、例えば、炭素繊維や、デュポン社製のケブラー(登録商標)等のアラミド繊維等から構成されていてもよい。
上述の実施形態では、導体110を構成するセグメント110sが電力ケーブル10の径方向に対して単層により構成されている場合について説明したが、導体110を構成するセグメント110sは、電力ケーブル10の径方向に対して複数層で構成されていてもよい。
上述の実施形態、変形例1および変形例2では、それぞれ、セグメント110sが5つ、4つ、6つ設けられている場合について説明したが、セグメント110sは、2つ、3つ、または7つ以上設けられていてもよい。
次に、本発明に係る実施例について説明する。
(1)電力ケーブルの作製
表1〜表3に示すように、サンプル1〜10、比較サンプル1および2の電力ケーブルを作製した。
(サンプル1〜8)
図9(a)は、サンプル1〜5に係る電力ケーブルにおける中心部を拡大した概略断面図であり、図9(b)は、サンプル6〜8に係る電力ケーブルにおける中心部を拡大した概略断面図である。図9(a)および(b)に示すように、サンプル1〜10の電力ケーブルとして、上述の実施形態の構成を有するCVケーブルを作製した。
サンプル1〜8の電力ケーブルの構成の詳細は、以下のとおりである。
電力ケーブルの公称電圧:154kV
導体の材料:純Cu
導体の断面積:2000mm2
セグメント数:5つ(サンプル1〜5)、4つ(サンプル6〜10)
セグメント中心角:72°(サンプル1〜5)、90°(サンプル6〜10)
線材の材料:インバ
線材素線の数:7つ
線材素線の外径:
4.3mm(サンプル1〜3、5)、3.5mm(サンプル4)
導体の断面積に対する線材の断面積の比率:
20.3%(サンプル1〜3、5)、13.5%(サンプル4)
電力ケーブルの中心部の他の構成:上記表1および2に記載のとおり
電力ケーブルの中心部よりも外側の構成:各サンプルで上述の実施形態のとおりに共通
電力ケーブルの外径: 導体外径+56mm
なお、表1および表2において、「充填率」は、中空部110wの断面積に対する線材120の断面積の比率である。なお、線材120の断面積については、線材120を構成する7つの線材素線122の断面積の合計として算出した。「線材外径」は、線材120を構成する7つの線材素線122の外接円120ocの直径のことである。「導体内接円直径」は、導体110の内壁110iに接する内接円110sicの直径のことである。「空隙間隔」(d)は、線材120を構成する7つの線材素線122の外接円120ocと、導体110の内壁110iに接する内接円110sicとの間隔の最大値のことである。なお、サンプル1については、導体110を圧縮したため、導体110の中空部110w側の断面形状が7つの線材素線122の外形に倣った形状となったため、空隙間隔を0mmとした。
(比較サンプル1)
比較サンプル1の電力ケーブルとして、従来のOFケーブルを作製した。比較サンプル1のOFケーブルは、中心側から外側に向けて、中空管と、導体と、バインダと、絶縁層と、カーボン紙と、遮蔽層と、布テープと、アルミ被と、被覆層と、を有している。中空管は、絶縁層に含浸させる油を通す油通路を形成し、亜鉛鍍鋼帯スパイラルからなっている。導体は、複数のセグメントを有している。バインダは、金属テープおよびクラフト紙からなっており、導体を構成する各セグメント間および導体の外周に設けられている。絶縁層は、油浸紙からなっている。カーボン紙は、絶縁層の内側と外側とに設けられている。遮蔽層は、金属テープおよびカーボン紙からなっている。布テープは、銅線が織り込まれている。アルミ被は、波付きのアルミ被覆からなり、その外側には防食塗料が塗布されている。被覆層は、ポリ塩化ビニルからなっている。
比較サンプル1のOFケーブルの構成のその他の詳細は、以下のとおりである。
電力ケーブルの公称電圧:154kV
導体の材料:純Cu
導体の断面積:2000mm2
セグメント数:6つ
セグメント中心角:60°
電力ケーブルの外径:111mm
(比較サンプル2)
比較サンプル2の電力ケーブルとして、従来のCVケーブル(基準電力ケーブル)を作製した。すなわち、比較サンプル2の従来のCVケーブルには、中空部および線材が設けられていない。
比較サンプル2の従来のCVケーブルの構成の詳細は、以下のとおりである。
電力ケーブルの公称電圧:154kV
導体の材料:純Cu
導体の断面積:2000mm2
導体外径:53.8mm
セグメント数:5つ
セグメント中心角:72°
電力ケーブルの中心部よりも外側の構成:サンプル1〜10と同様
電力ケーブルの外径:110mm
(2)電力ケーブルの評価
表1〜3に示すように、電力ケーブルの「線膨張係数α」の理論値を算出した。なお、サンプル2〜5では、電力ケーブルの線膨張係数の実測値が、電力ケーブルの線膨張係数の理論値以下となることを確認している。
また、電力ケーブルの「ヤング率E」を実測した。なお、表1〜3に記載のヤング率は、実測した平均値である。また、実測したヤング率Eに基づいて、導体剛性を算出した。
また、「導体の座屈荷重」Pcrは、以下の式(4)により求めた。
ただし、Cは、両端固定の場合における端末条件係数であり、4とした。Iは、導体の断面二次モーメントであり、EIは、表1における導体剛性とした。また、Lは、電力ケーブルの長さであり、6000mmとした。
また、「熱応力」は、電力ケーブルに生じる熱応力であり、上記した式(1)により求めた。ただし、電力ケーブルのヤング率Eおよび線膨張係数αは、それぞれ、表1〜3における電力ケーブルのヤング率Eおよび線膨張係数αを用いた。導体の断面積Aは、上記のように2000mm2とした。また、温度差tは、導体に許容最大電流が流れ、導体の温度が90℃となった場合を想定し、そのときの導体の温度と基底温度25℃との差に基づいて、65℃とした。ただし、表3の比較例1のOFケーブルについては、実際のOFケーブルの温度変化幅に基づいて、温度差tを50℃とした。
また、「通電時のケーブル撓み」については、導体に許容最大電流が流れた条件下で電力ケーブル10が通電されたときに、線材に対して導体のみが撓むことによって電力ケーブルが撓んだ場合を○とし、電力ケーブルが撓まない場合を×とした。
(3)結果
図10は、サンプル1〜8に係る電力ケーブルの充填率に対する、電力ケーブルの熱応力および座屈荷重を示すグラフである。
図10に示すように、サンプル1〜8に係る電力ケーブルの充填率に対する、電力ケーブルの熱応力および導体の座屈荷重は、それぞれ、下に凸の傾向を示した。図10において、各サンプルの熱応力に基づいた傾向を実線で外挿し、各サンプルの導体の座屈荷重に基づいた傾向を点線で外挿した。
線材の充填率を20%未満とした場合では、導体と線材との間の空隙が大きくなり、導体と線材との間で摩擦が起こり難くなったため、電力ケーブルの線膨張係数が比較サンプル2の従来のCVケーブルの線膨張係数に対して充分に小さくならなかった。また、導体が中空の円筒状となるため、電力ケーブルのヤング率が比較サンプル2の従来のCVケーブルのヤング率よりも大きくなっていた。これらのため、線材の充填率が20%未満に小さくなるにつれて、電力ケーブルの熱応力は大きくなる傾向を示し、比較サンプル1のOFケーブルの熱応力および比較サンプル2の従来のCVケーブルの熱応力よりも大きくなる傾向を示した。その結果、電力ケーブルの伸び出し量は、比較サンプル1のOFケーブルの伸び出し量および比較サンプル2の従来のCVケーブルの伸び出し量よりも大きくなる傾向を示した。
また、線材の充填率を20%未満とした場合では、導体外径が大きくなることに伴って導体の断面二次モーメントIが大きくなったため、導体の座屈荷重が過剰に大きくなる傾向を示した。一方で、線材の充填率が20%未満に小さくなるにつれて、電力ケーブルのヤング率が飽和したため、電力ケーブルの熱応力も飽和する傾向を示した。線材の充填率を20%未満とした場合では、電力ケーブルの熱応力が導体110の座屈荷重未満となる傾向を示した。このため、電力ケーブルの熱応力によって導体が座屈することが困難となったため、電力ケーブルの撓みは見られなかった。
なお、比較例2の従来のCVケーブルでは、熱応力が座屈荷重よりも大きかったが、導体の中心に空隙がないため、ケーブルの撓みは見られなかった。
これに対し、線材の充填率を20%以上とした場合では、導体と線材との間に所定の摩擦力を生じさせることができ、電力ケーブルの線膨張係数を比較サンプル2の従来のCVケーブルの線膨張係数よりも小さくすることができることを確認した。また、線材の充填率を20%以上とすることで、電力ケーブルのヤング率の増大を抑制することができることを確認した。これらにより、電力ケーブルの熱応力を比較サンプル1のOFケーブルの熱応力および比較サンプル2の従来のCVケーブルの熱応力よりも小さくすることができることを確認した。その結果、電力ケーブルの伸び出し量を、比較サンプル1のOFケーブルの伸び出し量および比較サンプル2の従来のCVケーブルの伸び出し量よりも小さくすることができることを確認した。
また、線材の充填率を20%以上とした場合では、導体の外径を小さくし、導体の座屈荷重を小さくすることができることを確認した。これにより、線材の充填率が20%以上に大きくなるにつれて、電力ケーブルの熱応力が小さくなる傾向にあっても、該熱応力を導体の座屈荷重以上とすることができることを確認した。実際に、電力ケーブルの熱応力によって導体を座屈させることができ、線材に対して導体のみを撓ませることができること、すなわち、電力ケーブルを撓ませることができることを確認した。
一方で、線材の充填率を90%超とした場合では、導体と線材とが密接し一体として挙動したため、電力ケーブルの線膨張係数は線材の線膨張係数に近づいて小さくなったが、電力ケーブルのヤング率は線材のヤング率に近づいて大きくなっていた。このため、線材の充填率が90%超に大きくなるにつれて、電力ケーブルの熱応力は大きくなる傾向を示し、比較サンプル1のOFケーブルの熱応力および比較サンプル2の従来のCVケーブルの熱応力よりも大きくなる傾向を示した。その結果、電力ケーブルの伸び出し量は、比較サンプル1のOFケーブルの伸び出し量および比較サンプル2の従来のCVケーブルの伸び出し量よりも大きくなる傾向を示した。
また、線材の充填率を90%超とした場合では、上記のように電力ケーブルのヤング率が大きくなることに伴って、導体の剛性が大きくなり、導体の座屈荷重が過剰に大きくなっていた。線材の充填率が90%超に大きくなるにつれて、電力ケーブルが通電されたときの電力ケーブルの熱応力が大きくなる傾向にあっても、該熱応力は、導体の座屈荷重未満となっていた。このため、電力ケーブルの熱応力によって導体が座屈することが困難となったため、電力ケーブルの撓みは見られなかった。
これに対し、線材の充填率を90%以下とした場合では、導体と線材との間に所定の摩擦力を生じさせつつ、導体と線材とを互いに相対的に変形可能にすることにより、電力ケーブルの線膨張係数を線材の線膨張係数に近づけて小さくしつつ、電力ケーブルのヤング率が線材のヤング率に近づいて大きくなることを抑制することができることを確認した。これにより、電力ケーブルの熱応力を比較サンプル1のOFケーブルの熱応力および比較サンプル2の従来のCVケーブルの熱応力よりも小さくすることができることを確認した。その結果、電力ケーブルの伸び出し量を、比較サンプル1のOFケーブルの伸び出し量および比較サンプル2の従来のCVケーブルの伸び出し量よりも小さくすることができることを確認した。
また、線材の充填率を90%以下とした場合では、上記のように電力ケーブルのヤング率の増大を抑制することに伴って、導体の剛性を小さくすることができ、導体の座屈荷重を小さくすることができることを確認した。これにより、線材の充填率が90%以下に小さくなるにつれて、電力ケーブルの熱応力が小さくなる傾向にあっても、該熱応力を導体の座屈荷重以上とすることができることを確認した。実際に、電力ケーブルの熱応力によって導体を座屈させることができ、線材に対して導体のみを撓ませることができること、すなわち、電力ケーブルを撓ませることができることを確認した。
以上のように、線材の充填率を20%以上90%以下とすることで、電力ケーブルの伸び出し量(特に電力ケーブルの布設方向の伸び出し量)を小さくすることができることを確認した。
なお、線材の充填率を30%以上85%以下することで、線材の充填率に対する電力ケーブルの熱応力の傾きの絶対値を小さくすることができ、電力ケーブルの熱応力を安定的に小さくすることができることを確認した。つまり、電力ケーブルの伸び出し量を安定的に小さくすることができることを確認した。
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様を付記する。
(付記1)
導体と、前記導体の外周を覆う絶縁層と、を備える電力ケーブルであって、
前記導体の中心には前記導体の軸方向に延びる中空部が設けられ、
前記導体の前記中空部内には、前記導体を構成する材料よりもヤング率が大きく線膨張係数が小さい材料から構成される線材が前記導体の軸方向に沿って挿入され、
前記電力ケーブルの軸方向に直交する任意の断面における、前記中空部の断面積に対する前記線材の断面積の比率である前記線材の充填率は、20%以上90%以下である電力ケーブル。
(付記2)
前記線材の充填率は、30%以上85%以下である付記1に記載の電力ケーブル。
(付記3)
導体と、前記導体の外周を覆う絶縁層と、を備える電力ケーブルであって、
前記導体の中心には前記導体の軸方向に延びる中空部が設けられ、
前記導体の前記中空部内には、前記導体を構成する材料よりもヤング率が大きく線膨張係数が小さい材料から構成される線材が前記導体の軸方向に沿って挿入され、
前記電力ケーブルの前記導体の温度と基底温度との差が65℃のときに前記電力ケーブルに生じる熱応力は、長さ6000mmの前記電力ケーブルの両端を固定したときに前記導体が座屈する座屈荷重以上である電力ケーブル。
(付記4)
導体と、前記導体の外周を覆う絶縁層と、を備える電力ケーブルであって、
前記導体の中心には前記導体の軸方向に延びる中空部が設けられ、
前記導体の前記中空部内には、前記導体を構成する材料よりヤング率が大きく線膨張係数が小さい材料から構成される線材が前記導体の軸方向に沿って挿入され、
前記電力ケーブルの軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、前記中空部は、前記導体の中心に対して非対称となっている電力ケーブル。
(付記5)
導体と、前記導体の外周を覆う絶縁層と、を備える電力ケーブルであって、
前記導体の中心には前記導体の軸方向に延びる中空部が設けられ、
前記導体の前記中空部内には、前記導体を構成する材料よりヤング率が大きく線膨張係数が小さい材料から構成される線材が前記導体の軸方向に沿って挿入され、
前記電力ケーブルの軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、前記中空部は、非回転対称となっている電力ケーブル。
(付記6)
導体と、前記導体の外周を覆う絶縁層と、を備える電力ケーブルであって、
前記導体の中心部には前記導体の軸方向に延びる中空部が設けられ、
前記導体の前記中空部内には、前記導体を構成する材料よりヤング率が大きく線膨張係数が小さい材料から構成される線材が前記導体の軸方向に沿って挿入され、
前記電力ケーブルの軸方向に直交する任意の第1断面では、前記線材の一部のみが前記導体に接し、
前記第1断面と異なる第2断面では、前記第1断面で前記線材の一部が前記導体に接している位置と異なる位置の、前記線材の一部のみが、前記導体に接している電力ケーブル。
(付記7)
前記線材が前記導体に接している部分は、前記電力ケーブルの軸方向に対して螺旋状に位置している付記6に記載の電力ケーブル。
(付記8)
前記電力ケーブルが通電されたときに、前記線材に対して前記導体のみが蛇行するように撓む付記1〜7のいずれか1つに記載の電力ケーブル。
(付記9)
前記電力ケーブルのヤング率をEとし、前記電力ケーブルの線膨張係数をαとし、導体の断面積が前記電力ケーブルの前記導体の断面積と等しく前記中空部および前記線材が設けられていない基準電力ケーブルのヤング率をE0とし、前記基準電力ケーブルの線膨張係数をα0としたときに、R=Eα/E0α0で求められる熱応力比率Rは、1未満である付記1〜8のいずれか1つに記載の電力ケーブル。
(付記10)
前記電力ケーブルの線膨張係数は、導体の断面積が前記電力ケーブルの前記導体の断面積と等しく前記中空部および前記線材が設けられていない基準電力ケーブルの線膨張係数より小さく、
前記電力ケーブルのヤング率は、前記基準電力ケーブルのヤング率に対して1倍以上1.2倍以下である付記1〜9のいずれか1つに記載の電力ケーブル。
(付記11)
導体の断面積に対する線材の断面積の比率は、4%以上10%以下である付記1〜10のいずれか1つに記載の電力ケーブル。
(付記12)
前記導体は、複数の素線を撚り合わせてなるセグメントを複数有する請求項1〜11のいずれか1つに記載の電力ケーブル。
(付記13)
前記電力ケーブルの軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、前記線材は、前記複数のセグメントのうちの少なくともいずれか1つに接する付記12に記載の電力ケーブル。
(付記14)
前記電力ケーブルの軸方向に直交する複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、前記中空部は、前記複数のセグメントのうちの少なくともいずれか1つと前記線材との間に空隙を有する付記12又は13に記載の電力ケーブル。
(付記15)
前記導体は、非圧縮である付記1〜14に記載の電力ケーブル。
(付記16)
前記電力ケーブルの先端では、前記中空部から前記線材が所定長さだけ引き出し可能である付記1〜15のいずれか1つに記載の電力ケーブル。
(付記17)
導体を形成する工程と、前記導体の外周を覆うように絶縁層を形成する工程と、を備える電力ケーブルの製造方法であって、
前記導体を形成する工程では、
前記導体の中心に前記導体の軸方向に延びる中空部を形成しつつ、
前記導体の前記中空部内に、前記導体を構成する材料よりヤング率が大きく線膨張係数が小さい材料から構成される線材を前記導体の軸方向に沿って挿入し、
前記電力ケーブルの軸方向に直交する任意の断面における前記中空部の断面積に対する前記線材の断面積の比率である前記線材の充填率を、20%以上90%以下とする電力ケーブルの製造方法。
(付記18)
導体と、前記導体の外周を覆う絶縁層と、を有し、前記導体の中心には前記導体の軸方向に延びる中空部が設けられ、前記導体の前記中空部内には、前記導体を構成する材料よりもヤング率が大きく線膨張係数が小さい材料から構成される線材が前記導体の軸方向に沿って挿入される一対の電力ケーブルと、
前記一対の電力ケーブルのそれぞれの前記導体の前記中空部から引き出された前記線材の先端に固定され、前記導体の軸方向の伸び出しを規制するストッパと、
金属製の筒状体として構成され、前記一対の電力ケーブルのそれぞれにおける前記導体の先端が前記ストッパを固定した状態で互いに対向するように挿入され、該一対の導体同士を圧縮接続するスリーブと、
を備える電力ケーブルの接続構造。
(付記19)
導体と、前記導体の外周を覆う絶縁層と、を有し、前記導体の中心には前記導体の軸方向に延びる中空部が設けられ、前記導体の前記中空部内には、前記導体を構成する材料よりもヤング率が大きく線膨張係数が小さい材料から構成される線材が前記導体の軸方向に沿って挿入される一対の電力ケーブルを用意する工程と、
前記一対の電力ケーブルのそれぞれの前記導体の前記中空部から前記線材の先端を引き出し、それぞれの前記線材の先端に、前記導体の軸方向の伸び出しを規制するストッパを固定する工程と、
金属製の筒状体として構成されるスリーブ内に、前記一対の電力ケーブルのそれぞれにおける前記導体の先端を、前記ストッパを固定した状態で互いに対向するように挿入し、該スリーブを外側から圧縮することにより前記一対の導体同士を圧縮接続する工程と、
を備える電力ケーブルの接続方法。