JP2018186286A - 電磁波吸収熱伝導シート、電磁波吸収熱伝導シートの製造方法及び半導体装置 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば特許文献1には、CPU等の半導体とヒートシンクに挟んで用いる電磁吸収熱伝導シートであって、シリコーン樹脂に軟磁性粉末と熱伝導フィラーを混ぜることによって、軟磁性粉末の磁気吸収効果と、熱伝導フィラーの熱伝導特性で電磁波吸収と熱伝導特性の両立を図る、という技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1の技術では、電磁波吸収効果について一定の効果はみられるものの、シートの垂直方向に対する熱伝導率が1.5W/(m・K)程度であり、近年の放熱に対する要求に対しては十分な特性とはなっていない。
しかしながら、特許文献2の技術では、繊維状導電性カーボンが10体積%を超えると、分散が不良となり均一なシートが得られなくなるという問題があり、熱伝導性に関しては十分な考慮がされていなかった。
しかしながら、特許文献3の技術では、良好な熱伝導性が得られるものの、電磁ノイズの抑制という点では十分な効果が得られておらず、実用化の点を考慮するとさらなる改良を図ることが望まれていた。
(1)高分子マトリックス成分と、磁性金属粉と、一方向に配向している繊維状の熱伝導性充填剤とを含むことを特徴とする、電磁波吸収熱伝導シート。
上記構成によって、優れた熱伝導性及び電磁波吸収性を実現できる。
(2)前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向方向が、シートの長手方向に対して60°超え〜90°の範囲であることを特徴とする、上記(1)に記載の電磁波吸収熱伝導シート。
(3)前記電磁波吸収熱伝導シートの、厚さ方向の熱伝導率が5W/(m・K)以上、3GHzでの伝送吸収率が30%以上、6GHzでの伝送吸収率が70%以上であることを特徴とする、上記(1)に記載の電磁波吸収熱伝導シート。
(4)前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向方向が、シートの長手方向に対して30°超え〜60°の範囲であることを特徴とする、上記(1)に記載の電磁波吸収熱伝導シート。
(5)前記電磁波吸収熱伝導シートの、厚さ方向の熱伝導率が2.7W/(m・K)以上、3GHzでの伝送吸収率が39%以上、6GHzでの伝送吸収率が70%以上であることを特徴とする、上記(4)に記載の電磁波吸収熱伝導シート。
(6)前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向方向が、シートの長手方向に対して0°〜30°の範囲であることを特徴とする、上記(1)に記載の電磁波吸収熱伝導シート。
(7)前記電磁波吸収熱伝導シートの、厚さ方向の熱伝導率が1.5W/(m・K)以上、3GHzでの伝送吸収率が68%以上、6GHzでの伝送吸収率が70%以上であることを特徴とする、上記(6)に記載の電磁波吸収熱伝導シート。
(8)前記繊維状の熱伝導性充填剤の含有量が4〜40体積%、前記磁性金属粉の含有量が35〜75体積%であることを特徴とする、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の電磁波吸収熱伝導シート。
(9)前記繊維状の熱伝導性充填剤の含有量が5〜30体積%、前記磁性金属粉の含有量が40〜65体積%であることを特徴とする、上記(8)に記載の電磁波吸収熱伝導シート。
(10)前記繊維状の熱伝導性充填剤が、炭素繊維であることを特徴とする、前記(1)〜(9)のいずれかに記載の電磁波吸収熱伝導シート。
(11)前記電磁波吸収熱伝導シートが、無機物フィラーをさらに含むことを特徴とする、前記(1)〜(10)のいずれかに記載の電磁波吸収熱伝導シート。
(12)高分子マトリックス成分と、繊維状の熱伝導性充填剤と、磁性金属粉とを含むシート用組成物を調製する工程と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤を配向させる工程と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向を維持した状態で、前記高分子マトリックス成分を硬化させて、シート用成形体を作製する工程と、
前記配向した繊維状の熱伝導性充填剤の長軸方向に対して、0°〜90°の角度となるように、前記シート用成形体を切断し、電磁波吸収熱伝導シートを作製する工程と、
を含むことを特徴とする、電磁波吸収熱伝導シートの製造方法。
上記構成によって、優れた熱伝導性及び電磁波吸収性を有する電磁波吸収熱伝導シートを提供できる。
(13)前記繊維状の熱伝導性充填剤を配向させる工程が、中空状の型内に、前記シート用組成物を、高剪断力下で押し出すこと又は圧入することによって行われ、
前記シート用成形体を作製する工程が、前記高分子マトリックス成分を熱硬化させることによって行われることを特徴とする、上記(12)に記載の電磁波吸収熱伝導シートの製造方法。
(14)高分子マトリックス成分と、繊維状の熱伝導性充填剤と、磁性金属粉とを含むシート用組成物を調製する工程と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤を配向させる工程と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向を維持した状態で、前記高分子マトリックス成分を硬化させて、シート用成形体を作製する工程と、
前記配向した繊維状の熱伝導性充填剤の長軸方向に対して、60°超え〜90°の角度となるように、前記シート用成形体を切断し、電磁波吸収熱伝導シートを作製する工程と、
を含むことを特徴とする、上記(1)、(4)又は(7)に記載の電磁波吸収熱伝導シートの製造方法。
(15)高分子マトリックス成分と、繊維状の熱伝導性充填剤と、磁性金属粉とを含むシート用組成物を調製する工程と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤を配向させる工程と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向を維持した状態で、前記高分子マトリックス成分を硬化させて、シート用成形体を作製する工程と、
前記配向した繊維状の熱伝導性充填剤の長軸方向に対して、30°超え〜60°の角度となるように、前記シート用成形体を切断し、電磁波吸収熱伝導シートを作製する工程と、
を含むことを特徴とする、上記(2)、(5)又は(8)に記載の電磁波吸収熱伝導シートの製造方法。
(16)高分子マトリックス成分と、繊維状の熱伝導性充填剤と、磁性金属粉とを含むシート用組成物を調製する工程と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤を配向させる工程と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向を維持した状態で、前記高分子マトリックス成分を硬化させて、シート用成形体を作製する工程と、
前記配向した繊維状の熱伝導性充填剤の長軸方向に対して、0°〜30°の角度となるように、前記シート用成形体を切断し、電磁波吸収熱伝導シートを作製する工程と、
を含むことを特徴とする、上記(3)、(6)又は(9)に記載の電磁波吸収熱伝導シートの製造方法。
(17)熱源と、放熱部材と、該熱源と該放熱部材との間に挟持された電磁波吸収熱伝導シートを備える半導体装置であって、
前記電磁波吸収熱伝導シートが、上記(1)〜(13)のいずれか1項に記載の電磁波吸収熱伝導シートであることを特徴とする、半導体装置。
上記構成によって、優れた放熱性及び電磁波抑制を実現できる。
<電磁波吸収熱伝導シート>
まず、本発明の電磁波吸収熱伝導シートについて説明する。
本発明は、高分子マトリックス成分と、繊維状の熱伝導性充填剤と、磁性金属粉とを含む、電磁波吸収熱伝導シートである。
本発明の電磁波吸収熱伝導シートに含まれる高分子マトリックス成分は、電磁波吸収熱伝導シートの基材となる高分子成分のことである。その種類については、特に限定されず、公知の高分子マトリックス成分を適宜選択することができる。
例えば、高分子マトリックス成分の一つとして、熱硬化性ポリマーが挙げられる。
上述した成形加工性、耐候性、密着性等を得る観点からは、前記シリコーン樹脂として、液状シリコーンゲルの主剤と、硬化剤とから構成されるシリコーン樹脂であることが好ましい。そのようなシリコーン樹脂としては、例えば、付加反応型液状シリコーン樹脂、過酸化物を加硫に用いる熱加硫型ミラブルタイプのシリコーン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、電子機器の放熱部材としては、電子部品の発熱面とヒートシンク面との密着性が要求されるため、付加反応型液状シリコーン樹脂が特に好ましい。
本発明の電磁波吸収熱伝導シートに含まれる熱伝導性充填剤は、シートの熱伝導性を向上させるための成分である。熱伝導性充填剤の種類については、繊維状の熱伝導性充填剤であること以外は、特に限定されず、公知の熱伝導性充填剤を適宜選択することができる。
図1は、本発明の電磁波吸収熱伝導シートについて、断面状態を模式的に示したものである。図1に示すように、本発明の電磁波吸収熱伝導シート1では、前記繊維状の熱伝導性充填剤12が、一方向(図1では方向X)に配向していることを特徴とする。
これらの繊維状の熱伝導性充填剤の中でも、より高い熱伝導性を得られる点からは、炭素繊維を用いることが好ましい。
なお、前記熱伝導性充填剤については、一種単独でもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、二種以上の熱伝導性充填剤を用いる場合には、いずれも繊維状の熱伝導性充填剤であってもよいし、繊維状の熱伝導性充填剤と別の形状の熱伝導性充填剤とを混合して用いてもよい。
さらにまた、前記炭素繊維の平均繊維径(平均短軸長さ)についても、特に制限はなく適宜選択することができるが、確実に高い熱伝導性を得る点から、4μm〜20μmの範囲であることが好ましく、5μm〜14μmの範囲であることがより好ましい。
ここで、前記炭素繊維の平均長軸長さ、及び平均短軸長さは、例えばマイクロスコープ、走査型電子顕微鏡(SEM)等によって測定し、複数のサンプルから平均を算出することができる。
ここで、前記シートの長手方向Lとは、その名の通り電磁波吸収熱伝導シート1の長手方向のことであり、後述するシート用成形体から電磁波吸収熱伝導シートを切り出した際の切断面の方向又は該切断面と直交する方向のことである。なお、前記電磁波吸収熱伝導シート1が正方形の場合にはどちらが長手方向であってもよく、円形等の場合には最も長い直径を長手方向Lとする。
なお、各繊維状の熱伝導性充填剤12の配向方向Xについては、完全一致する必要はなく、本発明では、配向方向Xが±10°以内のズレであれば、一方向に配向しているといえる。
前記繊維状の熱伝導性充填剤12の配向方向Xが前記シートの長手方向Lに対して60°超え〜90°の範囲である場合、電磁波吸収熱伝導シートの、厚さ方向の熱伝導率が5W/(m・K)以上、3GHzでの伝送吸収率が30%以上、6GHzでの伝送吸収率が70%以上となる。なお、上記伝送吸収率については、φ20mmの円盤状に切り出した、厚さ1mmの電磁波吸収熱伝導シートを用い、マイクロストリップライン法によって測定した値である。
前記繊維状の熱伝導性充填剤12の配向方向Xが前記シートの長手方向Lに対して30°超え〜60°の範囲である場合、電磁波吸収熱伝導シートの、厚さ方向の熱伝導率が2.7W/(m・K)以上、3GHzでの伝送吸収率が39%以上、6GHzでの伝送吸収率が70%以上となる。なお、上記伝送吸収率については、φ20mmの円盤状に切り出した、厚さ1mmの電磁波吸収熱伝導シートを用い、マイクロストリップライン法によって測定した値である。
前記繊維状の熱伝導性充填剤12の配向方向Xが前記シートの長手方向Lに対して0°〜30°の範囲である場合、電磁波吸収熱伝導シートの、厚さ方向の熱伝導率が1.5W/(m・K)以上、3GHzでの伝送吸収率が68%以上、6GHzでの伝送吸収率が70%以上となる。この例では、前記繊維状の熱伝導性充填剤12の配向方向Xが小さいので厚さ方向への熱伝導率は低くなるが、面内方向での熱伝導率は高いのでヒートスプレッダとして機能する。なお、上記伝送吸収率については、φ20mmの円盤状に切り出した、厚さ1mmの電磁波吸収熱伝導シートを用い、マイクロストリップライン法によって測定した値である。
本発明の電磁波吸収熱伝導シートは、無機物フィラーをさらに含むことが好ましい。電磁波吸収熱伝導シートの熱伝導性をより高め、シートの強度を向上できるからである。
前記無機物フィラーとしては、形状、材質、平均粒径等については特に制限がされず、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、球状、楕円球状、塊状、粒状、扁平状、針状等が挙げられる。これらの中でも、球状、楕円形状が充填性の点から好ましく、球状が特に好ましい。
前記無機物フィラーがアルミナの場合、その平均粒径は、1μm〜10μmであることが好ましく、1μm〜5μmであることがより好ましく、4μm〜5μmであることが特に好ましい。前記平均粒径が1μm未満であると、粘度が大きくなり、混合しにくくなるおそれがある。一方、前記平均粒径が10μmを超えると、前記熱伝導シートの熱抵抗が大きくなるおそれがある。
さらに、前記無機物フィラーが窒化アルミニウムの場合、その平均粒径は、0.3μm〜6.0μmであることが好ましく、0.3μm〜2.0μmであることがより好ましく、0.5μm〜1.5μmであることが特に好ましい。前記平均粒径が、0.3μm未満であると、粘度が大きくなり、混合しにくくなるおそれがあり、6.0μmを超えると、前記熱伝導シートの熱抵抗が大きくなるおそれがある。
なお、前記無機物フィラーの平均粒径は、例えば、粒度分布計、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。
本発明の電磁波吸収熱伝導シートに含まれる磁性金属粉は、シートの電磁波吸収性を向上させるための成分である。
磁性金属粉の種類については、電磁波吸収性有すること以外は、特に限定されず、公知の磁性金属粉を適宜選択することができる。例えば、アモルファス金属粉や、結晶質の金属粉末を用いることができる。アモルファス金属粉としては、例えば、Fe−Si−B−Cr系、Fe−Si−B系、Co−Si−B系、Co−Zr系、Co−Nb系、Co−Ta系のもの等が挙げられ、結晶質の金属粉としては、例えば、純鉄、Fe系、Co系、Ni系、Fe−Ni系、Fe−Co系、Fe−Al系、Fe−Si系、Fe−Si−Al系、Fe−Ni−Si−Al系のもの等が挙げられる。さらに、前記結晶質の金属粉としては、結晶質の金属粉に、N(窒素)、C(炭素)、O(酸素)、B(ホウ素)等を微量加えて微細化させた微結晶質金属粉を用いてもよい。
なお、前記磁性金属粉については、材料が異なるものや、平均粒径が異なるものを二種以上混合したものを用いてもよい。
本発明の電磁波吸収熱伝導シートは、上述した、高分子マトリックス成分、繊維状の熱伝導性充填剤、無機物フィラー及び磁性金属粉に加えて、目的に応じてその他の成分を適宜含むこともできる。
その他の成分としては、例えば、チキソトロピー性付与剤、分散剤、硬化促進剤、遅延剤、微粘着付与剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤等が挙げられる。
次に、本発明の電磁波吸収熱伝導シートの製造方法について説明する。
本発明の電磁波吸収熱伝導シートの製造方法は、高分子マトリックス成分と、繊維状の熱伝導性充填剤と、磁性金属粉とを含むシート用組成物を調製する工程(シート用組成物調製工程)と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤を配向させる工程(充填剤配向工程)と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向を維持した状態で、前記高分子マトリックス成分を硬化させて、シート用成形体を作製する工程(シート用成形体作製工程)と、
前記配向した繊維状の熱伝導性充填剤の長軸方向に対して、0°〜90°の角度となるように、前記シート用成形体を切断し、電磁波吸収熱伝導シートを作製する工程(電磁波吸収熱伝導シート作製工程)と、
を含むことを特徴とする。
上記各工程を経ることで、本発明の電磁波吸収熱伝導シートを得ることができる。得られた電磁波吸収熱伝導シートについては、上述したように、熱伝導性及び電磁波吸収性に優れる。
本発明の電磁波吸収熱伝導シートの製造方法は、シート用組成物調製工程を含む。
このシート用組成物調製工程では、上述した、高分子マトリックス成分、繊維状の熱伝導性充填剤及び磁性金属粉、さらに、無機物フィラー及び/又はその他成分を配合し、シート用組成物を調製する。なお、各成分を配合、調製する手順については特に限定はされず、例えば、前記高分子マトリックス成分に、高分子マトリックス成分、繊維状の熱伝導性充填剤、無機物フィラー、磁性金属粉、その他成分を添加し、混合することにより、シート用組成物の調製が行われる。
本発明の電磁波吸収熱伝導シートの製造方法は、シート用組成物調製工程を含む。
前記繊維状の熱伝導性充填剤を配向させる方法については、一方向に配向させることができる手段であれば特に限定はされない。
前記押出し成型法において、前記シート用組成物をダイより押し出す際、あるいは前記金型成型法において、前記熱伝導性樹脂組成物を金型へ圧入する際、前記バインダ樹脂が流動し、その流動方向に沿って炭素繊維が配向する。この際、ダイの先端にスリットを取り付けると炭素繊維がより配向されやすくなる。
本発明の電磁波吸収熱伝導シートの製造方法は、シート用成形体作製工程を含む。
ここで、前記シート用成形体とは、所定のサイズに切断して得られる本発明の電磁波吸収熱伝導シートの元となるシート(成形体)のことをいう。前記シート用成形体の作製は、上述した充填剤配向工程にて行われた繊維状の熱伝導性充填剤の配向状態を維持したまま、前記高分子マトリックス成分を硬化させることによって行われる。
本発明の電磁波吸収熱伝導シートの製造方法は、電磁波吸収熱伝導シート作製工程を含む。
前記電磁波吸収熱伝導シート作製工程では、図2に示すように、前記配向した繊維状の熱伝導性充填剤12の長軸方向Jに対して、0°〜90°の角度βとなるように、前記シート用成形体を切断する。
例えば、前記電磁波吸収熱伝導シート1における炭素繊維12の配向方向Xが、シートの長手方向に対して30°(α=30°)の場合には、記炭素繊維12の長軸方向Jに対する切断角度βも30°とすればよい。
スライス装置については、前記シート用成形体を切断できる手段であれば特に限定はされず、公知のスライス装置を適宜用いることができる。例えば、超音波カッター、かんな(鉋)等を用いることができる。
本発明の電磁波吸収熱伝導シートの製造方法は、さらに、前記電磁波吸収熱伝導シートの表面を平滑化し、密着性を増し、軽荷重時の界面接触抵抗を軽減するべく、前記電磁波吸収熱伝導シートをプレスする工程(プレス工程)を含むことができる。
前記プレスについては、例えば、平盤と表面が平坦なプレスヘッドとからなる一対のプレス装置を使用して行うことができる。また、ピンチロールを使用してプレスを行ってもよい。
次に、本発明の半導体装置について説明する。
本発明の半導体装置は、熱源と、放熱部材と、該熱源と該放熱部材との間に挟持された電磁波吸収熱伝導シートを備える半導体装置であって、前記電磁波吸収熱伝導シートが、上述した本発明の電磁波吸収熱伝導シートであることを特徴とする。
本発明の電磁波吸収熱伝導シートを用いることによって、得られた半導体装置は、高い放熱性を有しつつ、電磁波抑制効果にも優れる。
図3(a)は、本発明の半導体装置の一例を示す断面模式図である。半導体装置は、電磁波吸収熱伝導シート1と、ヒートスプレッダ2と、電子部品3と、ヒートシンク5と、配線基板6とを備える。
半導体装置は、電磁波吸収熱伝導シート1と、ヒートスプレッダ2と、電子部品3と、ヒートシンク5と、配線基板6とを備える。
実施例1では、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂に、平均粒径5μmのFe-Si-B-Crアモルファス磁性粒子と、平均繊維長200μmのピッチ系炭素繊維(「熱伝導性繊維」 日本グラファイトファイバー株式会社製)とを、体積比で、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂:アモルファス磁性粒子:ピッチ系炭素繊維=35vol%:53vol%:12vol%となるように分散させて、シリコーン樹脂組成物(シート用組成物)を調製した。
2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂は、シリコーンA液(主剤)、シリコーンB液(硬化剤)を19:16の比率で混合したものである。得られたシリコーン樹脂組成物を、内壁に剥離処理したPETフィルムを貼った直方体状の金型30mm×30mmの中に押し出してシリコーン成形体を成型した。得られたシリコーン成形体をオーブンにて100℃で6時間硬化してシリコーン硬化物とした。
次に、得られたシリコーン硬化物を、配向された炭素繊維の長軸に対し垂直、すなわち切断角度β:90°(配向角度α:90°)にて超音波カッターで切断し、厚み1mmの電磁波吸収熱伝導シートのサンプルを得た。超音波カッターのスライス速度は、毎秒50mmとした。また、超音波カッターに付与する超音波振動は、発振周波数を20.5kHzとし、振幅を60μmとした。
実施例2では、上記のシリコーン硬化物を切断角度β:75°(配向角度α:75°)で切断し、厚み1mmの電磁波吸収熱伝導シートのサンプルを得た。配合及び他の工程は実施例1と同じ条件としている。
実施例3では、上記のシリコーン硬化物を切断角度β:60°(配向角度α:60°)で切断し、厚み1mmの電磁波吸収熱伝導シートのサンプルを得た。配合及び他の工程は実施例1と同じ条件としている。
実施例4では、上記のシリコーン硬化物を切断角度β:45°(配向角度α:45°)で切断し、厚み1mmの電磁波吸収熱伝導シートのサンプルを得た。配合及び他の工程は実施例1と同じ条件としている。
実施例5では、上記のシリコーン硬化物を切断角度β:30°(配向角度α:30°)で切断し、厚み1mmの電磁波吸収熱伝導シートのサンプルを得た。配合及び他の工程は実施例1と同じ条件としている。
実施例6では、上記のシリコーン硬化物を切断角度β:15°(配向角度α:15°)で切断し、厚み1mmの電磁波吸収熱伝導シートのサンプルを得た。配合及び他の工程は実施例1と同じ条件としている。
実施例7では、上記のシリコーン硬化物を切断角度β:0°(配向角度α:0°)で切断し、厚み1mmの電磁波吸収熱伝導シートのサンプルを得た。配合及び他の工程は実施例1と同じ条件としている。
比較例1では、上記のシリコーン硬化物を切断角度90°(配向角度α:90°)で切断し、厚み1mmの電磁波吸収熱伝導シートのサンプルを得た。この例では金属磁性粉の代わりに3〜5μmのシリカ粉末を用いており、配合は体積比で、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂:シリカ粉末:ピッチ系炭素繊維=35vol%:53vol%:12vol%となるように分散させて、シリコーン樹脂組成物(シート用組成物)を調製した。他の工程は実施例1と同じ条件としている。
比較例2では、上記のシリコーン硬化物を切断角度45°(配向角度α:45°)で切断し、厚み1mmの電磁波吸収熱伝導シートのサンプルを得た。この例では金属磁性粉の代わりに3〜5μmのシリカ粉末を用いており、配合は体積比で、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂:シリカ粉末:ピッチ系炭素繊維=35vol%:53vol%:12vol%となるように分散させて、シリコーン樹脂組成物(シート用組成物)を調製した。他の工程は実施例1と同じ条件としている。
比較例3では、上記のシリコーン硬化物を切断角度0°(配向角度α:0°)で切断し、厚み1mmの電磁波吸収熱伝導シートのサンプルを得た。この例では金属磁性粉の代わりに3〜5μmのシリカ粉末を用いており、配合は体積比で、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂:シリカ粉末:ピッチ系炭素繊維=35vol%:53vol%:12vol%となるように分散させて、シリコーン樹脂組成物(シート用組成物)を調製した。他の工程は実施例1と同じ条件としている。
比較例4では、上記のシリコーン硬化物を切断角度0°(配向角度α:0°)で切断し、厚み1mmの電磁波吸収熱伝導シートのサンプルを得た。この例では炭素繊維を含まず、シリコーン樹脂と金属磁性粉のみで構成され、配合は体積比で2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂:金属磁性粉=47vol%:53vol%となるように分散させて、シリコーン樹脂組成物(シート用組成物)を調製した。他の工程は実施例1と同じ条件としている。
比較例5では、金型中に押し出してシリコーン成形体の成形を行わなかった。そのため、得られた電磁波吸収熱伝導シート中の炭素繊維は一方向に配向していない。他の工程は実施例1と同じ条件としている。
比較例6では、金型中に押し出してシリコーン成形体の成形を行わなかった。そのため、得られた電磁波吸収熱伝導シート中の炭素繊維は一方向に配向していない。また、この例では金属磁性粉の代わりに3〜5μmのシリカ粉末を用いており、配合は体積比で、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂:シリカ粉末:ピッチ系炭素繊維=35vol%:53vol%:12vol%となるように分散させて、シリコーン樹脂組成物(シート用組成物)を調製した。他の工程は実施例1と同じ条件としている。
実施例8〜11では、上記のシリコーン硬化物を切断角度90°(配向角度α:90°)で切断し、厚み1mmの電磁波吸収熱伝導シートのサンプルを得た。配合は体積比で、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂:アモルファス磁性粒子:ピッチ系炭素繊維が、表2に示すような割合となる。他の工程は実施例1と同じ条件としている。
実施例12〜15では、上記のシリコーン硬化物を切断角度45°(配向角度α:45°)で切断し、厚み1mmの電磁波吸収熱伝導シートのサンプルを得た。配合は体積比で、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂:アモルファス磁性粒子:ピッチ系炭素繊維が、表2に示すような割合となる。他の工程は実施例1と同じ条件としている。
実施例16〜19では、上記のシリコーン硬化物を切断角度0°(配向角度α:0°)で切断し、厚み1mmの電磁波吸収熱伝導シートのサンプルを得た。配合は体積比で、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂:アモルファス磁性粒子:ピッチ系炭素繊維が、表2に示すような割合となる。他の工程は実施例1と同じ条件としている。
得られた電磁波吸収熱伝導シートの各サンプルについて、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
各サンプルを、φ20mmの円盤状に切り出し熱抵抗を測定した。各電磁波吸収熱伝導シートの熱抵抗は、ASTM D 5470に準拠して、熱伝導率測定装置(ソニー株式会社製)を用い、荷重1.5kgf/cm2をかけて測定。この値から熱伝導率を算出した。結果を表1、表2に示した。
IEC62333−2に記載されているマイクロストリップライン法を用いた。測定系100は、図7に示したものを用い、ネットワークアナライザ110により反射信号(S11)と透過信号(S21)を測定している。マイクロストリップライン112は、100×100×1.6mmの誘電体基板(裏面銅)の表面に幅4mmで形成されたもので特性インピーダンス50Ωに調整されている。各サンプル111を、φ20mmの円盤状に切り出し、マイクロストリップライン中央部に張り付け、S11、S21を測定し吸収率を算出した。
この際、電磁波吸収熱伝導シートを設置しない場合の損失を差し引き、電磁波吸収熱伝導シートの効果のみの値として算出した。1、3、6GHzでの値を抽出し、表1及び表2に示した。
また、実施例1、比較例4及び比較例1について、周波数に応じた伝送吸収率(%)を示したものを図4に示し、実施例4、比較例4及び比較例2について、周波数に応じた伝送吸収率(%)を示したものを図5に示し、実施例7、比較例4及び比較例3について、周波数に応じた伝送吸収率(%)を示したものを図6に示した。
このように、実施例1〜7では、優れた熱伝導率及び伝送吸収率が得られ、更に炭素繊維の配向角により、熱伝導率と伝送吸収率の適切なバランス設定が可能となることがわかった。
一方比較例を見ると、磁性体を含まず炭素繊維とシリカだけで構成した、比較例1及び2では、伝送吸収率が著しく小さく、比較例3では、熱伝導率及び伝送吸収率が共に小さくなっていることがわかった。磁性体のみで構成した比較例4では、熱伝導率が著しく小さくなっていることがわかった。また、炭素繊維の配向処理をしていない比較例5、6では、炭素繊維又は熱伝導フィラーの配向がないこと以外は同様の条件である実施例1及び比較例1と比べると、熱伝導性に劣ることがわかった。
2 ヒートスプレッダ
2a 主面
2b 側壁
2c 他の面
3 電子部品
3a 上面
5 ヒートシンク
6 配線基板
10 電磁波吸収熱伝導シート
11 高分子マトリックス成分
12 炭素繊維
13 磁性金属粉
100 測定系
110 ネットワークアナライザ
111 電磁波吸収熱伝導シートのサンプル
112 マイクロストリップライン
Claims (17)
- 高分子マトリックス成分と、磁性金属粉と、繊維状の熱伝導性充填剤とを含む電磁波吸収熱伝導シートであって、
前記繊維状の熱伝導性充填剤が、シート面の延在方向に対して60°超え〜90°の範囲に配向し、前記電磁波吸収熱伝導シートの、厚さ方向の熱伝導率が5W/(m・K)以上、1GHzでの伝送吸収率が3.6%以上であることを特徴とする、電磁波吸収熱伝導シート。 - 高分子マトリックス成分と、磁性金属粉と、繊維状の熱伝導性充填剤とを含む電磁波吸収熱伝導シートであって、
前記繊維状の熱伝導性充填剤が、シート面の延在方向に対して30°超え〜60°の範囲に配向し、前記電磁波吸収熱伝導シートの、厚さ方向の熱伝導率が2.7W/(m・K)以上、1GHzでの伝送吸収率が3.8%以上であることを特徴とする、電磁波吸収熱伝導シート。 - 高分子マトリックス成分と、磁性金属粉と、繊維状の熱伝導性充填剤とを含む電磁波吸収熱伝導シートであって、
前記繊維状の熱伝導性充填剤が、シート面の延在方向に対して0°〜30°の範囲に配向し、前記電磁波吸収熱伝導シートの、厚さ方向の熱伝導率が1.5W/(m・K)以上、1GHzでの伝送吸収率が4.8%以上であることを特徴とする、電磁波吸収熱伝導シート。 - 高分子マトリックス成分と、磁性金属粉と、繊維状の熱伝導性充填剤とを含む電磁波吸収熱伝導シートであって、
前記繊維状の熱伝導性充填剤が、シート面の延在方向に対して60°超え〜90°の範囲に配向し、前記電磁波吸収熱伝導シートの、厚さ方向の熱伝導率が5W/(m・K)以上、3GHzでの伝送吸収率が30%以上であることを特徴とする、電磁波吸収熱伝導シート。 - 高分子マトリックス成分と、磁性金属粉と、繊維状の熱伝導性充填剤とを含む電磁波吸収熱伝導シートであって、
前記繊維状の熱伝導性充填剤が、シート面の延在方向に対して30°超え〜60°の範囲に配向し、前記電磁波吸収熱伝導シートの、厚さ方向の熱伝導率が2.7W/(m・K)以上、3GHzでの伝送吸収率が39%以上であることを特徴とする、電磁波吸収熱伝導シート。 - 高分子マトリックス成分と、磁性金属粉と、繊維状の熱伝導性充填剤とを含む電磁波吸収熱伝導シートであって、
前記繊維状の熱伝導性充填剤が、シート面の延在方向に対して0°〜30°の範囲に配向し、前記電磁波吸収熱伝導シートの、厚さ方向の熱伝導率が1.5W/(m・K)以上、3GHzでの伝送吸収率が68%以上であることを特徴とする、電磁波吸収熱伝導シート。 - 高分子マトリックス成分と、磁性金属粉と、繊維状の熱伝導性充填剤とを含む電磁波吸収熱伝導シートであって、
前記繊維状の熱伝導性充填剤が、シート面の延在方向に対して60°超え〜90°の範囲に配向し、前記電磁波吸収熱伝導シートの、厚さ方向の熱伝導率が5W/(m・K)以上、6GHzでの伝送吸収率が70%以上であることを特徴とする、電磁波吸収熱伝導シート。 - 高分子マトリックス成分と、磁性金属粉と、繊維状の熱伝導性充填剤とを含む電磁波吸収熱伝導シートであって、
前記繊維状の熱伝導性充填剤が、シート面の延在方向に対して30°超え〜60°の範囲に配向し、前記電磁波吸収熱伝導シートの、厚さ方向の熱伝導率が2.7W/(m・K)以上、6GHzでの伝送吸収率が70%以上であることを特徴とする、電磁波吸収熱伝導シート。 - 高分子マトリックス成分と、磁性金属粉と、繊維状の熱伝導性充填剤とを含む電磁波吸収熱伝導シートであって、
前記繊維状の熱伝導性充填剤が、シート面の延在方向に対して0°〜30°の範囲に配向し、前記電磁波吸収熱伝導シートの、厚さ方向の熱伝導率が1.5W/(m・K)以上、6GHzでの伝送吸収率が70%以上であることを特徴とする、電磁波吸収熱伝導シート。 - 前記繊維状の熱伝導性充填剤の含有量が4〜40体積%、前記磁性金属粉の含有量が35〜75体積%であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電磁波吸収熱伝導シート。
- 前記繊維状の熱伝導性充填剤の含有量が5〜30体積%、前記磁性金属粉の含有量が40〜65体積%であることを特徴とする、請求項10に記載の電磁波吸収熱伝導シート。
- 前記繊維状の熱伝導性充填剤が、炭素繊維であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電磁波吸収熱伝導シート。
- 前記電磁波吸収熱伝導シートが、無機物フィラーをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の電磁波吸収熱伝導シート。
- 高分子マトリックス成分と、繊維状の熱伝導性充填剤と、磁性金属粉とを含むシート用組成物を調製する工程と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤を配向させる工程と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向を維持した状態で、前記高分子マトリックス成分を硬化させて、シート用成形体を作製する工程と、
前記配向した繊維状の熱伝導性充填剤の長軸方向に対して、60°超え〜90°の角度となるように、前記シート用成形体を切断し、電磁波吸収熱伝導シートを作製する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1、4又は7に記載の電磁波吸収熱伝導シートの製造方法。 - 高分子マトリックス成分と、繊維状の熱伝導性充填剤と、磁性金属粉とを含むシート用組成物を調製する工程と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤を配向させる工程と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向を維持した状態で、前記高分子マトリックス成分を硬化させて、シート用成形体を作製する工程と、
前記配向した繊維状の熱伝導性充填剤の長軸方向に対して、30°超え〜60°の角度となるように、前記シート用成形体を切断し、電磁波吸収熱伝導シートを作製する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項2、5又は8に記載の電磁波吸収熱伝導シートの製造方法。 - 高分子マトリックス成分と、繊維状の熱伝導性充填剤と、磁性金属粉とを含むシート用組成物を調製する工程と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤を配向させる工程と、
前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向を維持した状態で、前記高分子マトリックス成分を硬化させて、シート用成形体を作製する工程と、
前記配向した繊維状の熱伝導性充填剤の長軸方向に対して、0°〜30°の角度となるように、前記シート用成形体を切断し、電磁波吸収熱伝導シートを作製する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項3、6又は9に記載の電磁波吸収熱伝導シートの製造方法。 - 熱源と、放熱部材と、該熱源と該放熱部材との間に挟持された電磁波吸収熱伝導シートを備える半導体装置であって、
前記電磁波吸収熱伝導シートが、請求項1〜13のいずれか1項に記載の電磁波吸収熱伝導シートであることを特徴とする、半導体装置。
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