以下、本発明を図示する実施の形態に基づいて説明する。
<<< §1. 近接物体に基づく容量素子の静電容量値の変化 >>>
本発明に係る物体センサは、容量素子の静電容量値の変化に基づいて、近接する物体を検出するタイプのセンサである。そこで、ここでは便宜上、検出対象となる物体(以下、単に対象物という)が容量素子に接近した場合に、当該容量素子の静電容量値にどのような変化が生じるかを簡単に説明しておく。
図1は、本発明の基本原理を説明するための静電容量型物体センサの基本構造部の斜視図である。図示のとおり、この物体センサの基本構造部は、平板状の支持体10と、その上面に形成された一対の線状電極E1、E2とによって構成されている。支持体10は絶縁性材料から構成され、線状電極E1、E2は金属などの導電性材料から構成されている。ここでは、説明の便宜上、図示のようなXYZ三次元直交座標系を定義して、各部の構造を説明する。この座標系の原点Oは、平板状の支持体10の上面の中心位置に定義されており、図の右方向にX軸、図の奥方向にY軸、図の上方向にZ軸が定義されている。したがって、平板状の支持体10の上面はXY平面に含まれる。
支持体10の上面には、Y軸に平行な2本の配置線Lx1、Lx2が定義されており、線状電極E1、E2は、それぞれ配置線Lx1、Lx2に沿って配置された平板状の細長い電極である。配置線Lx1とY軸との距離および配置線Lx2とY軸との距離は等しく、この基本構造部は、YZ平面に関して面対称の構造を有している。
図2は、図1に示す静電容量型物体センサの検出動作を説明するために、これをXZ平面で切断した側断面図である。上述したとおり、平板状の支持体10の上面には、一対の線状電極E1、E2が設けられている。ここでは、配置線Lx1、Lx2とXZ平面との交点を、それぞれ配置点Px1、Px2と呼ぶことにする。配置点Px1、Px2は、いずれもX軸上の点になる。なお、図2には、線状電極E1と端子T1の間および線状電極E2と端子T2の間に配線が描かれているが、実際には、この配線や端子は、平板状の支持体10の上面に形成されることになる。
この静電容量型物体センサの検出動作を説明するために、図示のとおり、X軸の上方に移動経路Gを定義する。この移動経路Gは、X軸をZ軸正方向に高さhだけ移動させた直線に相当する。そして、この移動経路Gに沿って、図の左側から右側に向かって対象物20を移動させた場合に、端子T1、T2間の静電容量値Cがどのように変化するかを考えてみる。
ここでは、便宜上、対象物20が中心点Qを有する金属球であるものとし、図示のとおり、中心点Qの位置が、移動経路Gに沿ってQ1→Q0→Q2と変化するように、対象物20を移動させたものとしよう。図3は、このようにして、対象物20が移動経路G上を移動したときの端子T1、T2間の静電容量値Cの変化を示すグラフである。グラフの横軸は、対象物20の中心点QのX座標値であり、グラフの縦軸は、端子T1、T2間(すなわち、線状電極E1、E2間)の静電容量値Cである。図示のとおり、点Qが原点Oの直上にあるとき(対象物20が図2における中心点Q0の位置にあるとき)、静電容量値Cは最大値Cmaxをとり、点Qが原点Oから離れるにしたがって、静電容量値Cは減少してゆく。
図2に示す基本構造部は、YZ平面に関して面対称の構造を有しているため、図3のグラフも、原点Oを中心として左右対称のグラフになる。このため、点Qが配置点Px1の直上にあるとき、および、点Qが配置点Px2の直上にあるとき(別言すれば、対象物20が線状電極E1の直上にあるとき、および、対象物20が線状電極E2の直上にあるとき)には、静電容量値Cは所定値Ceをとる。
図4は、図2に示す静電容量型物体センサにおける静電容量の発生原理を示す側断面図である。図4(a)は、対象物20が存在しない状態(この静電容量型物体センサから十分に離れている状態)において、両電極E1、E2間に電圧を印加した場合に生じる電気力線のイメージを示している。電極E1、E2は、いずれも平板状の導電層(たとえば、金属層)によって構成され、図示のとおり、支持体10の上面に並んで配置されている。
このため、両電極E1、E2の対向面は、図に太線で示す側面部分ということになり、これら側面間に多くの電気力線(図には、破線で示す)が描かれることになる。ただ、電極E1、E2の上面や下面間にも、多少の電気力線が描かれる。
したがって、この一対の電極E1、E2を容量素子Cとして把握した場合、容量素子Cを構成する一対の電極の対向面は、図に太線で示す側面部分であるため、静電容量値Cは比較的小さい値をとる。図3のグラフの両端における静電容量値Cが0に近い値になっているのは、一対の電極E1、E2のみでは、小さな静電容量値Cしか得られないためである。グラフの縦軸の一番下の目盛りに示す値C0は、両電極E1、E2間に存在する既存容量の値であり、図4(a)に示すように、対象物20が存在しない場合において、容量素子Cが本来保有する静電容量値に対応する。
一方、図4(b)は、一対の電極E1、E2間の上方空間に対象物20が存在する状態において、両電極E1、E2間に電圧を印加した場合に生じる電気力線のイメージを示している。図4(a)と同様に、両電極E1、E2の対向する側面部分に電気力線が描かれることになるが、それだけではなく、電極E1と対象物20の対向面および電極E2と対象物20の対向面(図では、その一部を太線で示す)の間にも電気力線が描かれることになる。これは、導電性材料からなる対象物20の表面が、電極E1、E2に対する対向電極として機能するためである。
結局、図4(a)に示すように対象物20が近傍に存在しない場合は、端子T1、T2間の静電容量値Cは、専ら電極E1とE2との間の既存容量によって定まることになるのに対して、図4(b)に示すように対象物20が近傍に存在する場合は、端子T1、T2間の静電容量値Cは、電極E1とE2との間の既存容量に、対象物20との間に生じる左側付加容量Cleftおよび右側付加容量Crightを加えた値になる。このような理由から、図3に示すグラフのように、対象物20が一対の電極E1、E2の間の地点(原点O)の直上に位置したときに、得られる静電容量値は最大値Cmaxになる。
したがって、図2に示す例のように、予め定められた移動経路G(高さhの経路)上を、予め定められた対象物20が移動する場合に、図3のグラフに示すような静電容量値Cの変化が生じることがわかっていれば、両端子T1、T2間の静電容量値Cを測定することにより、対象物20の位置を特定することが可能である。具体的には、たとえば、測定された静電容量値Cが所定値Ce以上であれば、対象物20は、図3に示す検出領域A内(図1に示す配置線Lx1とLx2との間の領域上空)に位置すると判断でき、所定値Ce未満であれば、対象物20は、図3に示す検出領域A外に位置すると判断できる(左側の外か、右側の外かは判断できない)。
もっとも、対象物20の移動経路が図2に示す移動経路Gよりも上方であった場合(高さがhよりも大きかった場合)は、図3のグラフの山の高さはより低くなり、対象物20の移動経路が図2に示す移動経路Gよりも下方であった場合(高さがhよりも小さかった場合)は、図3のグラフの山の高さはより高くなる。別言すれば、対象物20が三次元空間上の任意の移動経路に沿って接近してきた場合は、図3に示すグラフの形状は変化してしまう。同様に、対象物20の形状や大きさが異なる場合や、材質が異なる場合も、図3に示すグラフの形状は変化してしまう。
上述の例は、対象物20が金属球の例であるが、実際には、人間の指などを対象物20とした場合にも、図4(b)に示すような現象が生じる。これは、水分を含む指が誘電体の性質を呈するためと考えられる。したがって、実際には、完全な導体に限らず、様々な材質からなる対象物20の接近により、図3のグラフに準じたグラフが得られることになる。ただ、グラフの正確な形状や図3に示す所定値Ceの値は、対象物20の形状、大きさ、材質によって変化し、また、移動経路Gの高さhによっても変化してしまう。
このように、図1に示す静電容量型物体センサは、静電容量値Cの変化に基づいて、「ある程度の大きさをもつ何らかの対象物がある程度の距離に接近している」という漠然とした検出を行うことは可能であるが、「任意の対象物が検出領域A内に存在する」というような正確な検出を行うことはできない。このため、図1に示す静電容量型物体センサは、前掲の特許文献1のように、車両のドアに手や指などが挟まれるのを防止するための物体センサとしての利用には適しているが、ロボットアームなどに装着して、対象物の位置をより正確に特定するための物体センサとしては不十分である。
本発明は、上述した静電容量型物体センサの基本原理を踏まえ、一対の電極からなる容量素子を複数配置する、という単純な構造を採用しながら、近傍に位置する対象物の存在領域に関する情報を、非接触状態で検出する技術を提案するものである。以下、本発明を具体的な実施の形態に基づいて説明する。
<<< §2. 本発明の第1の実施の形態 >>>
ここでは、本発明の第1の実施の形態に係る物体センサについて述べる。
<2−1 第1の実施の形態の基本構成>
図5(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る物体センサ1を構成する基本構造部2の上面図、図5(b)は、その側断面図である。図示のとおり、この物体センサ1の基本構造部2は、平板状の支持体30と、その上面に形成された3つの電極E0、E1、E2とによって構成されている。支持体30は、絶縁性材料から構成され、電極E0、E1、E2は導電性材料から構成されている。
具体的には、支持体30は、可撓性が必要な場合は、たとえば、ポリイミドフィルムやPETフィルムによって構成すればよく、可撓性が必要ない場合は、たとえば、ガラスエポキシ基板やセラミック基板によって構成すればよい。一方、電極E0、E1、E2は、たとえば、アルミニウムや銅などの金属で構成すればよい。ここでも、説明の便宜上、図示のようなXYZ三次元座標系を定義して、各部の構造を説明する。この座標系の原点Oは、平板状の支持体30の上面の中心位置(所定の基準位置)に定義されており、図5(a)の右方向にX軸、上方向にY軸、紙面垂直手前方向にZ軸が定義されている。図5(b)では、右方向がX軸、上方向がZ軸になる。平板状の支持体30の上面はXY平面に含まれている。X軸が延びる方向をX軸方向と称し、Y軸が延びる方向をY軸方向と称して、以下説明する。
3つの電極E0、E1、E2は、内側電極E0と、X軸方向において内側電極E0の両側に設けられた一対の外側電極E1、E2(第1外側電極)と、を有している。このうち内側電極E0は、X軸方向において、外側電極E1と外側電極E2との間に配置されており、外側電極E1、E2よりも原点Oの側に配置されている。外側電極E1、E2の各々は、Y軸方向に沿って直線状に延びている。
支持体30の上面には、Y軸に平行な3本の配置線Lx0、Lx1、Lx2が定義されており、内側電極E0は、配置線Lx0上(すなわち、原点O上)に配置された、円盤状の電極である。外側電極E1、E2は、それぞれ配置線Lx1、Lx2上に配置された平板状の細長い電極である。なお、配置線Lx0はY軸に一致し、配置線Lx0(Y軸)と配置線Lx1との距離、および配置線Lx0(Y軸)と配置線Lx2との距離は等しく、この基本構造部2は、YZ平面に関して面対称の構造を有している。
図5に示すように、内側電極E0のY軸方向における長さLEy0は、外側電極E1、E2のY軸方向における長さLEy1よりも短くなっている。すなわち、円盤状の内側電極E0の直径が、外側電極E1、E2のY軸方向長LEy1さよりも短くなっている。なお、図5に示す形態では、外側電極E1と外側電極E2は、YZ平面に関して面対称になっているため、外側電極E1のY軸方向における長さLEy1と、外側電極E2のY軸方向における長さLEy1は、等しくなっている。
図5(b)は、図5(a)に示す基本構造部2をXZ平面で切断した側断面図である。
上述のとおり、平板状の支持体30の上面には、1つの内側電極E0と、2本の外側電極E1、E2が設けられている。内側電極E0と外側電極E1との間隔と、内側電極E0と外側電極E2との間隔は、等しくなっている。ここでは、配置線Lx0、Lx1、Lx2とXZ平面との交点を、それぞれ配置点Px0、Px1、Px2と呼ぶことにする。配置点Px0、Px1、Px2は、いずれもX軸上の点になる。上述したとおり、実際には、配置線Lx0は、原点Oを通るY軸に一致するので、図示の配置点Px0は原点Oに一致する。
図5(b) に示すとおり、支持体30の上面には、内側電極E0および外側電極E1、E2を覆うように、第1絶縁層40が形成されている。言い換えると、内側電極E0および外側電極E1、E2は、第1絶縁層40に埋め込まれている。第1絶縁層40は、たとえば、ポリイミドなどの樹脂層によって構成されており、保護膜としての機能を果たす。なお、図5(a)の上面図では、説明の便宜上、この第1絶縁層40の図示は省略してあるが、実際には、平板状の支持体30の上面全面を覆うように、第1絶縁層40が形成されている。
ここで、2つの外側電極E1、E2のうちのいずれか一の外側電極E1、E2と、内側電極E0とによって、容量素子が構成されている。すなわち、内側電極E0と外側電極E1とによって容量素子C1が構成され、内側電極E0と外側電極E2とによって容量素子C2が構成される。なお、本願では、便宜上、各容量素子を示す符号と当該容量素子の静電容量値を示す符号とについて同一符号を用いることにする。したがって、容量素子C1の静電容量値はC1、容量素子C2の静電容量値はC2ということになる。図4を用いて説明したとおり、各容量値C1、C2の値は、近傍に対象物20が存在すると増加する。
図5(b)に描かれているように、この物体センサ1には、内側電極E0と外側電極E1との間の静電容量値C1を測定するための配線と、内側電極E0と外側電極E2との間の静電容量値C2を測定するための配線と、が設けられており、後述するように、これらの静電容量値C1、C2に基づいて、対象物20の位置が特定される。実際には、上記配線は、たとえば、平板状の支持体30の上面に形成することができる。また、図では、説明の便宜上、内側電極E0の左右両端から、それぞれ静電容量値C1を測定するための配線と静電容量値C2を測定するための配線とが別個に描かれているが、実際には、これら2本の配線は共通の1本の配線に置き換えることができる(後述する図6(a)の回路図参照)。
このように、図5に示す物体センサ1では、一対の電極E0、E1によって第1の容量素子C1が構成され、一対の電極E0、E2によって第2の容量素子C2が構成される。
中央に配置された内側電極E0は、2組の容量素子C1、C2に共通して利用される共通電極になる。この共通電極となる内側電極E0の位置を、2つの領域AleftとArightとを隔てる境界線Bが通っている。
すなわち、図5(a)に示すとおり、配置線Lx0(Y軸)は、平板状の支持体30の上面(ここでは、検出面と呼ぶ)を2つに仕切る境界線Bとしての役割を果たし、検出面のうち、境界線Bの左側が検出領域Aleftになり、右側が検出領域Arightになる。そして、この物体センサ1は、検出対象となる対象物20(物体)が近傍に存在しているか否かのみならず、当該対象物20が検出領域Aleftの近傍(上方)に存在するのか、検出領域Arightの近傍(上方)に存在するのか、を検出することができる。
なお、検出領域Aleftには、外側電極E1が配置され、検出領域Aleftは、この外側電極E1と内側電極E0とで構成される容量素子C1に対応する領域となっている。検出領域Arightには、外側電極E2が配置され、検出領域Arightは、この外側電極E2と内側電極E0とで構成される容量素子C2に対応する領域となっている。
図6(a)は、図5に示す物体センサ1における静電容量値の検出回路の一例を示す回路図および位置特定手段の構成を示すブロック図であり、図6(b)は、各静電容量値を測定する際の切替動作を示す表である。
図6(a)の回路図に示すとおり、第1の外側電極E1は、切替スイッチSW1を介して端子T1に接続されており、第2の外側電極E2は、切替スイッチSW2を介して同じく端子T1に接続されている。また、共通電極として機能する内側電極E0は、端子T0に接続されている。したがって、切替スイッチSW1をONにすれば、端子T0、T1間の静電容量値Cは、電極E0、E1間の静電容量値C1を示すことになり、切替スイッチSW2をONにすれば、端子T0、T1間の静電容量値Cは、電極E0、E2間の静電容量値C2を示すことになる。
図6(a)にブロック図として示した位置特定手段60は、一の容量素子の静電容量値と、他の静電容量値の静電容量値とに基づいて、対象物20が近傍に存在する検出領域を特定する処理を行う構成要素である。ここでは、位置特定手段60は、容量素子C1の静電容量値C1と、他の容量素子C2の静電容量値C2とに基づいて、対象物20が近傍に存在する検出領域を特定するものであり、図示のとおり、容量値測定部61、演算実行部62、領域特定部63を有している。
容量値測定部61は、各容量素子C1、C2の静電容量値を測定して測定値C1、C2を得る構成要素であり、切替スイッチSW1、SW2のON/OFFを切り替える機能(図の破線は切替用制御信号を示す)と、両端子T0、T1間の静電容量値Cを測定する機能とを有する。
具体的には、容量値測定部61は、図6(b)の表に示すように、切替スイッチSW1をON、切替スイッチSW2をOFFにして、両端子T0、T1間の静電容量値C(すなわち、電極E0、E1間の静電容量値C1)を測定する第1の測定操作と、切替スイッチSW1をOFF、切替スイッチSW2をONにして、両端子T0、T1間の静電容量値C(すなわち、電極E0、E2間の静電容量値C2)を測定する第2の測定操作と、を交互に実行することにより、所定のサンプリング周期で、測定値C1、C2を得ることができる。スイッチのON/OFFを切り替える回路や両端子T0、T1間の静電容量値Cを測定する回路は、種々のタイプのものが知られているため、ここでは詳しい説明は省略する。
演算実行部62は、一の容量素子の静電容量値と、他の容量素子の静電容量値とに基づく差分演算を行う構成要素である。ここでは、演算実行部62は、容量値測定部61によって測定された容量素子C1の測定値C1と容量素子C2の測定値C2とに基づく差分演算を行う。第1の実施の形態の場合、静電容量値の差Cdiff=C1−C2が演算される。当該差Cdiffは、隣接する一対の容量素子C1、C2の測定値に基づく差分演算の結果として得られた差(符号付きの値)ということになる。
また、演算実行部62は、一の容量素子の静電容量値と、他の静電容量値の静電容量値とに基づく加算演算を行う構成要素にもなっている。ここでは、演算実行部62は、容量値測定部61によって測定された容量素子C1の測定値C1と容量素子C2の測定値C2とに基づく加算演算を行い、第1の実施の形態の場合、静電容量値の和Cadd=C1+C2が演算される。
領域特定部63は、演算実行部62による差分演算によって得られた差Cdiffに基づいて、近傍に対象物20が存在する検出領域を特定する処理を行う。この第1の実施の形態の場合、領域特定部63は、「Aleft」、「Aright」、「圏外」の3通りの検出結果を出力する。ここで、出力「Aleft」は、図5(a)に示す検出領域Aleft(実際には、その上方領域)に対象物20の存在を検知した旨の出力であり、出力「Aright」は、図5(a)に示す検出領域Aright(実際には、その上方領域)に対象物20の存在を検知した旨の出力であり、出力「圏外」は、近傍には対象物20の存在は検知されなかった旨の出力である。
なお、図5(a)では、説明の便宜上、平板状の支持体30の上面を検出面として、この検出面を境界線B(配置線Lx0(Y軸))を境として2つの領域に分割し、支持体30の上面のうち、境界線Bの左側半分の領域を検出領域Aleft、右側半分の領域を検出領域Arightとしているが、検出領域Aleftおよび検出領域Arightは、支持体30の上面の左半分および右半分というような明確な閉領域として定義されているものではなく、実際には、境界線Bの左側の領域あるいは右側の領域という漠然とした概念として定義される。
これは、対象物20のXY平面への投影像が支持体30の上面の外側に位置するような場合であっても、その存在が、容量素子C1、C2の静電容量値Cにある程度の影響を与えることになり、しかも、対象物20の形状、大きさ、材質および検出面からの距離(高さh)によって、影響の程度が変化するため、各検出領域を「静電容量値Cに基づいて対象物20の存在が認識できる領域」と定義した場合、検出領域Aleftの左端や検出領域Arightの右端を正確に定めることができないためである。したがって、図5では、境界線Bより左側を検出領域Aleftとし、右側を検出領域Arightとしている。
後述するように、実用上は、演算実行部62による差分演算によって得られた差Cdiffと、所定のしきい値Cthとを比較することにより、領域特定部63は、「Aleft」、「Aright」、「圏外」の3通りのいずれかの検出結果を出力することになるが、「Aleft」なる出力で特定される空間上の実領域と「圏外(左側の検出域外)」なる出力で特定される空間上の実領域との境界や、「Aright」なる出力で特定される空間上の実領域と「圏外(右側の検出域外)」なる出力で特定される空間上の実領域との境界は、対象物20の形状、大きさ、材質および検出面からの距離(高さh)に加えて、更に、しきい値Cthの値によって変動することになる。
したがって、この図5に示す形態の場合、領域特定部63からの「Aleft」なる出力は、「何らかの対象物20が境界線Bより左側に存在することが検出された」旨を示し、「Aright」なる出力は、「何らかの対象物20が境界線Bより右側に存在することが検出された」旨を示し、「圏外」なる出力は、「対象物20は検出されなかった」旨を示すことになる。このように、図5に示す形態の場合、対象物20が境界線Bの左に存在するか、右に存在するか、あるいは存在しないか、という漠然とした情報しか得られないが、それでも、「対象物20が存在するかしないか」という二値情報に比べれば、対象物20の接近方向に関する情報が得られるため、ロボットアームなどに装着した場合には、有益な情報提供が可能になる。
<2−2 第1の実施の形態の基本動作>
続いて、図5に示す物体センサ1の基本動作を説明する。§1で述べたとおり、図2に示すような一対の電極E1、E2の上方に、高さhの位置に定義された移動経路Gに沿って所定の対象物20を移動させると、電極E1、E2によって構成される容量素子の静電容量値Cは、図3のグラフに示すように変化する。この現象を踏まえて、図5(b)に示す3つの電極E0、E1、E2の上方の高さhの位置に、同じようにX軸に平行な移動経路Gを定義し、この移動経路Gに沿って所定の対象物20(たとえば、金属球)を移動させたときに、電極E0、E1によって構成される第1の容量素子C1の静電容量値C1および電極E0、E2によって構成される第2の容量素子C2の静電容量値C2がどのように変化するかを考えてみる。
図7は、図5に示す物体センサ1の上方の移動経路を対象物20が通過したときの各容量素子C1、C2の静電容量値Cの変化を示すグラフである。グラフの横軸は、対象物20の中心点QのX座標値であり、グラフの縦軸は、図6(a)に示す端子T0、T1間の静電容量値Cである。図6(b)に示すとおり、切替スイッチSW1、SW2の切替操作により、得られる静電容量値Cは、第1の容量素子の容量値C1になったり、第2の容量素子の容量値C2になったりする。図7に実線で示すグラフC1は、容量値C1の変化を示し、一点鎖線で示すグラフC2は、容量値C2の変化を示している。なお、縦軸の一番下の目盛りに示す値C0は、両電極間に存在する既存容量の値であり、図4(a)に示すように、対象物20が存在しない場合において、各容量素子が本来保有する静電容量値に対応する。
図7に示すようなグラフが得られることは、図3のグラフを参照すれば容易に理解できよう。すなわち、図7の実線のグラフC1は、図3に示すグラフに対応し、図7の一点鎖線のグラフC2は、図3に示すグラフを右方向に所定距離(電極E0、E1、E2の配置間隔に相当する距離)だけシフトしたグラフに対応する。
実線のグラフC1は、配置点Px1に位置する外側電極E1と配置点Px0に位置する内側電極E0とによって構成される第1の容量素子C1の静電容量値を示すグラフであるため、対象物20の中心点Qが配置点Px1と配置点Px0との間の位置(グラフC1自体が左右対称の場合には中間点)の直上に位置するときに最大値Cmaxをとり、左右に離れるにしたがって徐々に減少してゆくグラフになる。同様に、一点鎖線のグラフC2は、配置点Px0に位置する内側電極E0と配置点Px2に位置する外側電極E2とによって構成される第2の容量素子C2の静電容量値を示すグラフであるため、対象物20の中心点Qが配置点Px0と配置点Px2との間の位置(グラフC2自体が左右対称の場合には中間点)の直上に位置するときに最大値Cmaxをとり、左右に離れるにしたがって徐々に減少してゆくグラフになる。
各電極E0、E1、E2は、YZ平面に関して面対称に形成されているため、図7に示すグラフC1とグラフC2は、配置点Px0を基準にして左右対称のグラフになる。グラフC1自体が左右対称である場合には、点Qが配置点Px1の直上にあるとき、及び、点Qが配置点Px0の直上にあるとき(別言すれば、対象物20が外側電極E1の直上にあるとき、および、対象物20が内側電極E0の直上にあるとき)には、静電容量値C1は所定値Ceをとる。同様に、グラフC2が左右対称である場合には、点Qが配置点Px0の直上にあるとき、及び、点Qが配置点Px2の直上にあるとき(別言すれば、対象物20が内側電極E0の直上にあるとき、および、対象物20が外側電極E2の直上にあるとき)には、静電容量値C2は所定値Ceをとる。一方、各電極E0、E1、E2の形状によっては、グラフC1自体およびグラフC2自体が左右対称にならない場合もあり得る。
グラフC1が左右対称でない場合には、点Qが配置点Px1の真上にあるときに静電容量値C1は所定値Ceをとるが、点Qが配置点Px0の真上にあるときに静電容量値C1は所定値Ceにはならない。また、グラフC2が左右対称でない場合には、点Q1が配置点Px2の真上にあるときに静電容量値C2は所定値Ceをとるが、点Qが配点Px0の真上にあるときに静電容量値C2は所定値Ceにはならない。本実施の形態では、説明を簡略化するために、グラフC1自体およびグラフC2自体が左右対称であるものとして説明する。
図8は、図7に示す2つのグラフC1、C2についての差分演算および加算演算の結果を示す図である。すなわち、図8(a)は、図7と同じグラフC1、C2を示し、図8(b)は、これらのグラフを元にして求めた静電容量値の差「Cdiff=C1−C2」および和「Cadd=C1+C2」を示すグラフである。図8に示すグラフの横軸は、対象物20の中心点QのX座標値である。
図8(b)に実線で示すグラフCdiffは、図8(a)に示すグラフC1とC2との差を示しており、配置点Px0の位置(すなわち、境界線Bの位置)ではCdiff=0になるが、それより左の位置ではCdiff>0、右の位置ではCdiff<0になる。
これは、対象物20の中心点Qの位置を当該対象物20の位置と定義した場合、静電容量値の差Cdiffの符号に基づいて検出領域の特定を行い、対象物20の位置が境界線Bより左の領域(すなわち、検出領域Aleft)にあるか、右の領域(すなわち、検出領域Aright)にあるか、を判定できることを意味している。
したがって、図6(a)に示す位置特定手段60において、まず、容量値測定部61によってある時点の各容量素子の静電容量値C1、C2を測定し、演算実行部62による差分演算によって両者の差「Cdiff=C1−C2」を求めれば、領域特定部63は、当該差Cdiffの符号に基づき、Cdiff>0であれば「Aleft」なる検出結果を出力し、Cdiff<0であれば「Aright」なる検出結果を出力することができる。もちろん、差分演算として「Cdiff=C2−C1」なる演算を行った場合には、上例とは逆に、Cdiff>0であれば「Aright」、Cdiff<0であれば「Aleft」なる検出結果を出力すればよい。
<2−3 第1の実施の形態のより実用的な実施例>
このように、図6(a)に示す第1の実施の形態に係る物体センサ1では、演算実行部62による差分演算の結果として得られる差Cdiffの符号に基づいて、領域特定部63が検出領域の特定を行うことになるが、ここでは、この物体センサ1について、より実用的な実施例を説明する。
図8(b)には、図8(a)に示すグラフC1、C2の差に相当する実線グラフCdiffとともに、和に相当するグラフCaddが一点鎖線で示されている。このグラフCaddは、図8(a)に示すグラフC1とC2とを加算したものであるため、配置点Px0の位置(すなわち、境界線Bの位置)で最大値をとり、そこから左右に離れるにしたがって徐々に減少するグラフになる。ここで述べる実施例の場合、演算実行部62は、静電容量値C1、C2の差「Cdiff=C1−C2」を求める差分演算とともに、静電容量値C1、C2の和「Cadd=C1+C2」を求める加算演算を行い、領域特定部63は、差Cdiffと和Caddとの双方を利用して、検出領域を特定する処理を行う。以下、その具体的な処理内容について説明する。
図9は、図8(b)に示すグラフCdiffおよびグラフCaddの左右を若干拡張して示す図である。上述したとおり、領域特定部63は、原理的には、図に実線で示すグラフCdiffの符号に基づいて、対象物20の位置が境界線Bの左右どちらにあるのかを示す検出結果「Aleft」もしくは「Aright」を出力することが可能である。ただ、ここで留意すべき点は、差Cdiff=0の場合の取り扱いである。
図示のとおり、グラフCdiffの値は、配置点Px0の位置(すなわち、境界線Bの位置)において0になるが、左右の端部においても実質的に0になる。これは、対象物20が容量素子の左遠方や右遠方に位置する場合、対象物20の位置が遠すぎるため、図4(a)に示すように、対象物20が存在しない状態と同等になるためである。この状態では、一対の容量素子C1、C2の静電容量値C1、C2は、いずれも既存容量のみになるので、両容量素子C1、C2が同一形状同一サイズの電極によって構成されている場合、両者の静電容量値C1、C2は等しくなり、その差Cdiffは0になる。なお、和Caddは、それぞれの既存容量値の和になるため、0にはならない。
図9のグラフに示す左右の配置点Px3、Px4は、このように差Cdiffが0になる点(対象物20による静電容量値C1、C2への実質的な影響がなくなる点)に相当し、配置点Px3より左の領域や配置点Px4より右の領域では、差Cdiffの値は0になる。したがって、領域特定部63は、Cdiff>0であれば「Aleft」、Cdiff<0であれば「Aright」、Cdiff=0であれば「圏外」(左圏外か右圏外かは識別できない)という検出結果を出力することができる。
ただ、図示の例の場合、対象物20の位置が配置点Px0(境界線B)上にあった場合もCdiff=0になるため、Cdiff=0のときに一義的に「圏外」なる検出結果を出力してしまうと、対象物20が境界線B上にある場合も「圏外」とされてしまう。たとえば、対象物20が図の左遠方から近づきながら、右遠方へと通りすぎた場合、領域特定部63からの検出結果の出力は、「圏外」→「Aleft」→「圏外」→「Aright」→「圏外」となり、「Aleft」から「Aright」へ切り替わる際(境界線Bを通過する際)に、一時的に「圏外」との検出結果が出力されてしまうことになる。
もちろん、境界線Bを通過する際に「圏外」が出力されるのは一時的であるので、「Aleft」→「圏外」→「Aright」となる出力がなされ、中間の「圏外」がごく短時間であった場合には、これを無視して「Aleft」→「Aright」なる検出結果として取り扱うような修正処理を行うようにすれば、上記問題を解決することが可能である。ただ、この問題は、和Caddを利用することにより容易に解決することができる。
すなわち、図9に一点鎖線で示されたグラフCaddを見ればわかるように、和Caddの値は左右の両端(配置点Px3より左側および配置点Px4より右側)では、非常に小さな値(既存容量の和)になるのに対して、配置点Px0(境界線B)上では大きな値をとることになる。そこで、領域特定部63は、Cdiff=0のときには、和Caddの値を参照するようにし、Caddの値が基準より大きければ、対象物20の位置を境界線B上と判断し、Caddの値が基準より小さければ、対象物20の位置を圏外と判断することができる。
ただ、実用上は、差Cdiffを用いた判定にも、和Caddを用いた判定にも、所定のしきい値を利用するのが好ましい。図9のグラフに示すCthは、差Cdiffについて設定したしきい値であり、Cth2は、和Caddについて設定したしきい値である。
差Cdiffは正負両方の値をとるので、図示のとおり、正のしきい値+Cthと負のしきい値−Cthとを設定している。図示の例の場合、いずれも絶対値Cthは同一の値であるが、正と負とでそれぞれ異なる絶対値Cthを用いるようにしてもかまわない。一方、和Caddは正の値しかとらないので、正のしきい値Cth2のみを設定すればよい。
ここで、差Cdiffについてのしきい値Cthは、近傍に対象物20が存在するか否かの判定を行うために利用される。すなわち、領域特定部63は、まず、差分演算の結果として得られる差Cdiffの絶対値が所定のしきい値Cth以上である場合に、近傍に対象物20が存在する旨の検出を行うことになる。具体的には、図9に示す例の場合、「差Cdiffの絶対値が所定のしきい値Cth以上」という条件を満たす領域は、グラフの上部に矢印「Aleft」で示す検出領域と矢印「Aright」で示す検出領域ということになる。これらの2つの検出領域については、差Cdiffを領域特定に利用することができ、差Cdiffの符号に基づいて、検出領域「Aleft」か、検出領域「Aright」かのいずれであるかを特定可能である。具体的には、前述したとおり、Cdiff>0であれば検出領域「Aleft」、Cdiff<0であれば検出領域「Aright」との判定ができる。
一方、図9において、検出領域「Aleft」と検出領域「Aright」との間に位置する「Acenter」なる矢印で示す領域は、「差Cdiffの絶対値がしきい値Cth未満」であるため、上記条件を満たしていない。同様に、検出領域「Aleft」よりも左側の領域(左圏外)および検出領域「Aright」よりも右側の領域(右圏外)も、「差Cdiffの絶対値がしきい値Cth未満」であるため、上記条件を満たしていない。
ただ、ここで述べる実施例の場合、演算実行部62は、上述したように、容量素子C1の測定値と容量素子C2の測定値とに基づく差分演算だけでなく加算演算を行う機能を有している。このため、静電容量値C1、C2の差「Cdiff=C1−C2」とともに、和「Cadd=C1+C2」が得られる。そこで、領域特定部63は、この和Caddを検出領域の特定に利用することができる。すなわち、「差Cdiffの絶対値がしきい値Cth未満」であった場合には、この和Caddを検出領域の特定に利用することが可能になる。
具体的には、「差Cdiffの絶対値がしきい値Cth未満」であった場合でも、「和Caddが所定のしきい値Cth2以上」という条件を満たす場合には、当該一対の容量素子C1、C2の近傍に対象物20が存在する旨の検出が行われる。特に、図9のグラフに示す例の場合、「差Cdiffの絶対値がしきい値Cth未満」かつ「和Caddが所定のしきい値Cth2以上」という条件を満たす場合には、検出領域「Aleft」と検出領域「Aright」との間に定義された中央の検出領域「Acenter」、別言すれば、境界線Bの上方に対象物20が存在する旨の検出を行うことができる。
要するに、領域特定部63は、隣接する一対の容量素子C1、C2に関する差分演算の結果として得られる差Cdiffの絶対値が所定のしきい値Cth未満であり、かつ、加算演算の結果として得られる和Caddが所定のしきい値Cth2以上である場合には、当該一対の容量素子C1、C2に共通して用いられている電極E0の配置線Lx0となる境界線Bの上方に対象物20が存在する旨の検出を行うことになる。もちろん、差Cdiffの絶対値がしきい値Cth未満であり、和Caddも所定のしきい値Cth2未満であった場合には、領域特定部63は一対の容量素子C1、C2の近傍には対象物20は存在しないと判断し、「圏外」との検出結果を出力する(左圏外か右圏外かの区別はできない)。
このように、隣接する一対の容量素子C1、C2に関する加算演算の結果として得られる和Caddが所定のしきい値Cth2以上である場合には、差分演算の結果として得られる差Cdiffの絶対値が所定のしきい値Cth未満であっても、当該一対の容量素子C1、C2の近傍に対象物20が存在する旨の検出が行われることになる。
図10は、図9のグラフを利用して、対象物20が存在する検出領域を特定する方法を示す表である。この表には、「左圏外」、「Aleft」、「Acenter」、「Aright」、「右圏外」なる5つの列が示されているが、これは、図9のグラフの上部に示された各検出領域に対応するものである。そして、「差」の行には、各検出領域に対象物20が存在するときの差Cdiffがとるべき値が記載され、「和」の行には、各検出領域に対象物20が存在するときの和Caddがとるべき値が記載されている。領域特定部63は、この図10に示す表を参照して、演算実行部62によって演算された差Cdiffの値と和Caddの値に基づき、5つの列に示された各検出領域のいずれか1つを特定することができる。
たとえば、差Cdiffの値が「Cdiff≧+Cth」であった場合は、表の第2列により対象物20の位置を検出領域「Aleft」と特定することができる。この場合、和Caddの値は不問である。同様に、「Cdiff≦−Cth」であった場合は、表の第4列により対象物20の位置を検出領域「Aright」と特定することができる。この場合も、和Caddの値は不問である。
これに対して、差Cdiffの値が「+Cth>Cdiff>−Cth」であった場合は、和Caddの値を参照することにより、表の第1列もしくは第5列か、あるいは、表の第3列か、のいずれであるかを特定することができる。すなわち、和Caddの値が「Cadd<Cth2」であれば、表の第1列もしくは第5列により対象物20の位置を「圏外」と特定することができ、和Caddの値が「Cadd≧Cth2」であれば、表の第3列により対象物20の位置を検出領域「Acenter」と特定することができる。
なお、領域特定部63から出力される検出結果だけでは、左圏外か右圏外かの区別はできず、いずれの場合も単に「圏外」という結果が出力されるだけであるが、この領域特定部63から出力される検出結果を時系列で解析すれば、「圏外」が「左圏外」であるのか「右圏外」であるのかを推定することができる。たとえば、「圏外」→「Aleft」という変化をした場合には、変化前の「圏外」を「左圏外」と推定し、「Aright」→「圏外」という変化をした場合には、変化後の「圏外」を「右圏外」と推定することができる。
このように、この§2−3で述べる物体センサ1における領域特定部63は、図10の表を参照することにより、差Cdiffおよび和Caddの値に基づき、「圏外」、「Aleft」、「Acenter」、「Aright」なる4通りの検出領域のいずれかを特定する検出結果を出力することができる。もちろん、この物体センサ1では、対象物20のサイズや正確な位置を認識することはできないが、「圏外」なる検出結果は、近傍には対象物20は存在していないことを示し、「Aleft」なる検出結果は、境界線Bよりも左側の近傍に対象物20が存在していることを示し、「Acenter」なる検出結果は、境界線B上に対象物20が存在していることを示し、「Aright」なる検出結果は、境界線Bよりも右側の近傍に対象物が存在していることを示すものになり、対象物20に関する大まかな情報を得ることができる。
もちろん、このような方法で特定される各検出領域の範囲は、各しきい値+Cth、−Cth、Cth2の値に応じて定められる。たとえば、検出領域「Aleft」、「Aright」の幅は、しきい値Cthの絶対値を小さく設定すれば広がり、大きく設定すれば狭まる。したがって、実用上は、検出対象として予想される対象物20の形状、サイズ、検出面に対する高さh、ならびに、各電極E0、E1、E2の配置間隔を考慮して、用途に応じて最も適切と思われるしきい値を設定するのが好ましい。なお、和Caddに関するしきい値Cth2は、容量素子C1、C2から得られる電気信号の静止ノイズを基準として決めればよく、例えば、静止ノイズが1%FS(FS:フルスケール)ならば、余裕を考慮して、和Caddの最大値の2〜20%FSとすればよい。これらのしきい値は、領域特定部63に設定されることになるが、もちろん、ユーザの操作入力に基づいて、これらしきい値の値を自由に調整できるようにしておくことも可能である。
なお、しきい値Cthの絶対値を比較的小さく設定すると、検出領域「Acenter」の幅はかなり狭くなると予想されるため、領域「Acenter」を独立した検出領域とはせずに、その左側半分を検出領域「Aleft」の一部として取り扱い、その右側半分を検出領域「Aright」の一部として取り扱うようにしてもかまわない。この場合、図10の表の第3列に該当するケースについては、たとえば、Cdiff≧0なら検出領域「Aleft」、Cdiff<0なら検出領域「Aright」と判定するようにすればよい。このような取り扱いを行うようにした場合、領域特定部63から出力される検出結果は、「圏外」、「Aleft」、「Aright」なる3通りの検出領域のいずれかを特定するものになる。
<2−4 第1の実施の形態のより実用的な他の実施例>
また、この物体センサ1について、更に実用的な実施例を説明する。
第1の実施の形態による物体センサ1は、容量素子の測定値に基づいて、対象物20の高さ(図2のh、Z軸方向)、あるいは対象物20の対向表面積(大きさ)が、所定の値よりも大きいか、または小さいかを特定する諸元特定手段を備えていてもよい。この諸元特定手段は、基準値記憶部と、設定入力部と、静電容量値比較部と、諸元特定部と、を有している。この諸元特定手段は、対象物20が図5の左側から右側に向かって原点Oの真上を通る移動経路(すなわちX軸の上方を移動する移動経路)を移動する場合に、対象物20の高さまたは対向表面積が、所定の値よりも大きいかまたは小さいかを特定するように構成されている。
基準値記憶部は、容量素子C1の静電容量値C1の基準値(以下、静電容量基準値と記す)を記憶する構成要素である。基準値記憶部が記憶する静電容量基準値は、対象物20が図5の左側から右側に向かって原点Oの真上を通る移動経路を移動した場合の容量素子C1の静電容量値C1の最大値となっている。このような静電容量基準値は、基準値記憶部に複数記憶されている。すなわち、種々の対象物20の高さまたは種々の対向表面積に関連付けられた複数の静電容量基準値が基準値記憶部に記憶されている。例えば、高さh1かつ対向表面積S1のときの静電容量基準値1と、高さh1かつ対向表面積S2(>S1)のときの静電容量基準値2と、高さh2(>h1)かつ対向表面積S1のときの静電容量基準値3と、高さh2かつ対向表面積S2のときの静電容量基準値4とが、記憶されている。
設定入力部は、動作時に検出される対象物20の高さまたは対向表面積を設定入力する構成要素である。すなわち、設定入力部は、検出される対象物20の高さおよび対向表面積を入力可能に構成されている。このため、検出される対象物20の高さが予め定められている場合には、その高さが設定入力部に入力される。一方、検出される対象物20の対向表面積が予め定められている場合には、その対向表面積が設定入力部に入力される。入力された高さまたは対向表面積を示す情報は、静電容量値比較部および諸元特定部に送信される。
静電容量値比較部は、容量値測定部61によって測定された容量素子C1の測定値の最大値と、基準値記憶部に記憶された静電容量基準値とに基づく差分演算を行う構成要素であり、例えば、測定値の最大値−静電容量基準値が演算される。静電容量値比較部には、設定入力部から送信された高さまたは対向表面積を示す情報に基づいて、基準値記憶部に記憶された複数の静電容量基準値から、比較対象とすべき静電容量基準値を選択する。そして、選択された静電容量基準値を用いて、差分演算を行う。
諸元特定部は、静電容量値比較部による差分演算の結果に基づいて、検出された対象物20の高さまたは対向表面積が、所定の値よりも大きいかまたは小さいかを特定する。すなわち、諸元特定部は、設定入力部から対向表面積を示す情報が送信された場合には、差分演算の結果から、検出された対象物20の高さが、静電容量基準値に関連付けられた高さよりも大きいか否かを特定し、出力する。一方、諸元特定部は、設定入力部から高さを示す情報が送信された場合には、差分演算の結果から、検出された対象物20の対向表面積が、静電容量基準値に関連付けられた対向表面積よりも大きいか否かを特定し、出力する。ここで、対象物20と物体センサ1の電極E0、E1とは平行平板電極であるとみなし、静電容量値は高さに反比例するとともに対向表面積に比例するという関係に基づいて、対象物20の高さまたは対向表面積が特定される。
例えば、動作時に検出される対象物20の対向表面積がS1であると予め定められている場合には、設定入力部に、対向表面積がS1である旨入力される。そして、静電容量値比較部は、高さh1かつ対向表面積S1に関連付けられた静電容量基準値1と、高さh2かつ対向表面積S1に関連付けられた静電容量基準値3とを比較対象として選択し、測定値の最大値−静電容量基準値1を演算するとともに、測定値の最大値−静電容量基準値3を演算する。
諸元特定部は、測定値の最大値−静電容量基準値1が正の値の場合、すなわち、測定値の最大値が静電容量基準値1よりも大きい場合には、検出された対象物20の高さが、高さh1よりも大きいと特定する。また、測定値の最大値−静電容量基準値3が正の値の場合、すなわち、測定値の最大値が静電容量基準値3よりも大きい場合には、検出された対象物20の高さが、高さh2よりも大きいと特定する。このようにして、検出された対象物20の高さが、高さh2よりも高いことがわかる。一方、測定値の最大値−静電容量基準値1が正の値であるが、測定値の最大値−静電容量基準値3が負の値である(測定値の最大値が静電容量基準値3よりも小さい)場合には、検出された対象物20の高さが、高さh2よりも小さいと特定する。この場合には、検出された対象物20の高さが、高さh1よりも高いが高さh2よりは低いことがわかる。
一方、例えば、動作時に検出される対象物20の高さがh1であると予め定められている場合には、設定入力部に、高さがh1である旨入力される。そして、静電容量値比較部は、高さh1かつ対向表面積S1に関連付けられた静電容量基準値1と、高さh1かつ対向表面積S2に関連付けられた静電容量基準値2とを比較対象として選択し、測定値の最大値−静電容量基準値1を演算するとともに、測定値の最大値−静電容量基準値2を演算する。
諸元特定部は、測定値の最大値−静電容量基準値1が正の値の場合、すなわち、測定値の最大値が静電容量基準値1よりも大きい場合には、検出された対象物20の対向表面積が、対向表面積S1よりも大きいと特定する。また、測定値の最大値−静電容量基準値2が正の値の場合、すなわち、測定値の最大値が静電容量基準値2よりも大きい場合には、検出された対象物20の対向表面積が、対向表面積S2よりも大きいと特定する。このようにして、検出された対象物20の対向表面積が、対向表面積S2よりも大きいことがわかる。一方、測定値の最大値−静電容量基準値1が正の値であるが、測定値の最大値−静電容量基準値2が負の値である(測定値の最大値が静電容量基準値2よりも小さい)場合には、検出された対象物20の対向表面積が、対向表面積S2よりも小さいと特定する。
この場合には、検出された対象物20の対向表面積が、対向表面積h1よりも大きいが対向表面積S2よりは小さいことがわかる。
このようにして、対象物20の高さが予め定められている場合には、容量素子の測定値に基づいて、対象物20の高さが所定の値よりも大きいかまたは小さいかを特定することができる。また、対象物20の対向表面積が予め定められている場合には、容量素子の測定値に基づいて、対象物20の対向表面積が所定の値よりも大きいかまたは小さいかを特定することができる。なお、基準値記憶部では、4つの静電容量基準値が記憶されている旨の説明をしたが、これに限られることはなく、高さおよび対向表面積を細分化して多数の静電容量基準値を記憶しておけば、任意の対向表面積を有する対象物20に対して高さの大小関係を特定することができるとともに、任意の高さを有する対象物20に対して対向表面積の大小関係を特定することができる。また、上述の説明では、容量素子C1の静電容量値C1の基準値と測定値とを用いているが、その代わりに、容量素子C2の静電容量値C2の基準値と測定値とを用いてもよく、あるいは、Cdiffの基準値と測定値とを用いてもよく、Caddの基準値と測定値とを用いてもよい。
<2−5 本発明における検出領域の本質>
これまで、図5に示す基本構造部2を有する物体センサ1について、その構造および動作を述べた。この物体センサ1は、近傍に位置する対象物20を検出するセンサであり、その基本的な構成要素は、複数の検出領域(図5の例の場合、少なくとも2つの検出領域「Aleft」、「Aright」)を定義するための検出面を有する支持体30と、この支持体30によって支持される電極によって構成される複数組の容量素子(図5の例の場合、容量素子C1、C2)と、これら容量素子の静電容量値に基づいて、対象物20の位置を特定する位置特定手段60である。
ここで、各検出領域の境界線は、容量素子を構成する電極の位置に基づいて定義されている。たとえば、図5に示す形態の場合、支持体30上には、「Aleft」および「Aright」なる2つの検出領域が示されているが、その境界線Bは、容量素子C1およびC2に共通して利用される内側電極E0の位置(配置線Lx0)に基づいて定義されている。
また、図9のグラフを用いて§2−3で説明した実施例の場合、しきい値Cthの設定により、検出領域「Aleft」、「Aright」の間に検出領域「Acenter」が定義されるが、これらの境界線は、やはり内側電極E0の位置(配置線Lx0)を基準として定められる。更に、この実施例の場合、検出領域「Aleft」の左側に「左圏外」、検出領域「Aright」の右側に「右圏外」なる領域が定義されているが、「Aleft」と「左圏外」との間の境界線は、外側電極E1の位置(配置線Lx1)に基づいて定められ、「Aright」と「右圏外」との間の境界線は、外側電極E2の位置(配置線Lx2)に基づいて定められる。
もっとも、検出領域「Acenter」の両側の境界線、「左圏外」の境界線、「右圏外」の境界線は、空間上の特定の位置に固定された境界線ではなく概念的な境界線であり、検出対象となる対象物20の形状、サイズ、検出面に対する高さh等に応じて逐次変化し、また、設定されたしきい値の大きさにも依存して変化するものである。たとえば、図9に示す領域「左圏外」と領域「Aleft」との間の境界線は、グラフCdiff(図の実線)としきい値+Cthを示す直線(図の水平破線)との交点として定められるものであるが、そもそもグラフCdiffは、対象物20の形状、サイズ、検出面に対する高さh等に応じて変化するものであり、しきい値+Cthの値も任意に設定することができるものであるから、当該境界線の位置を空間上の絶対的な位置として定義することはできない。
たとえば、領域「左圏外」と領域「Aleft」との間の境界線は、図5(a)に示す矩形状の支持体30の上面に形成される可能性もあれば、支持体30の左外側に形成される可能性もある。ただ、領域「左圏外」は領域「Aleft」の左側に位置する領域であることは確かであり、両者の境界線の位置は、外側電極E1の位置(配置線Lx1)に依存することも確かである。
結局、図9のグラフを用いて説明した実施例では、「左圏外」、「Aleft」、「Acenter」、「Aright」、「右圏外」なる5つの検出領域が定義されているが、これらの検出領域は空間上の絶対的な位置を示す領域ではなく、概念的な領域ということになる。別言すれば、「Acenter」は内側電極E0(配置線Lx0)の上方領域、「Aleft」は「Acenter」の左側に位置する領域、「左圏外」は外側電極E1より更に左側に位置する領域、「Aright」は「Acenter」の右側に位置する領域、「右圏外」は外側電極E2より更に右側に位置する領域、という漠然とした領域を示すものになる。
したがって、上述したとおり、「圏外」なる検出結果は「近傍には対象物20は存在しない」という漠然とした検出結果を示し、「Acenter」なる検出結果は「境界線B上に対象物20が存在する」という漠然とした検出結果を示し、「Aleft」なる検出結果は「境界線Bよりも左側の近傍に対象物20が存在する」という漠然とした検出結果を示し、「Aright」なる検出結果は「境界線Bよりも右側の近傍に対象物20が存在する」という漠然とした検出結果を示すものになる。ただ、これら5つの検出領域の各境界線の空間上の位置を定めるのに寄与する根本的な要因は、容量素子C1、C2を構成する電極E0、E1、E2の空間上の位置ということになる。
第1の実施の形態の特徴は、このように容量素子を構成する電極の位置に基づいて複数の概念的な検出領域を定義しておき、隣接する一対の容量素子の静電容量値に基づく差分演算を行うことにより、検出の対象となる対象物20が近傍に存在する検出領域を特定することにある。上述したとおり、各検出領域は、絶対的な位置を占有する特定の空間領域として定義されるものではなく、各電極の位置を基準として定義された概念的な領域であるため、図5に示す物体センサ1は、対象物20の正確な位置を検出することはできないが、対象物20が近くにあるか否か、境界線Bの左側にあるか右側にあるか、といった大まかな情報を提示することが可能である。
また、本発明の第1の実施の形態によれば、内側電極E0のY軸方向における長さLEy0は、外側電極E1、E2のY軸方向における長さLEy1よりも短くなっている。このため、内側電極E0を形成する材料の使用量を低減しながらも、近傍に位置する対象物20の存在領域を非接触状態で検出することができる。
また、本発明の第1の実施の形態によれば、容量素子C1の測定値と、容量素子C2の測定値とに基づく差分演算を行うため、各容量素子C1、C2から測定される測定値のノイズを相殺することができ、S/N比(信号/ノイズ比)を向上させて、対象物20の位置を高い精度で特定することができる。
<2−6 電極形状に関する変形例>
図5に示す形態では、平板状の支持体30の上面に1つの円盤状の内側電極E0と、2本の線状電極E1、E2が形成されている。内側電極E0を配置線Lx0が通り、外側電極E1、E2は、直線からなる配置線Lx1、Lx2に沿って配置されて、直線状に延びる電極になっている。しかしながら、第1の実施の形態に係る物体センサ1に用いる内側電極E0および外側電極E1、E2は、必ずしもこのような形状の電極である必要はなく、任意形状の電極であってもかまわない。
図11は、本発明の第1の実施の形態に係る物体センサ1を構成する基本構造部2の第1の変形例を示す上面図である。この物体センサ1を構成する基本構造部2は、平板状をなす支持体30と、その上面に形成された内側電極E0および2つの外側電極E1、E2とによって構成されている。しかしながら、図5に示す基本構造部2と異なる点は、図11に示す外側電極E1、E2が、第1線状部分Eaと延長線状部分Ebとを有するように構成されている点である。このうち第1線状部分Eaは、Y軸方向に延びる部分である。
図11に示す第1の変形例では、延長線状部分Ebは、X軸方向に沿って延びており、第1線状部分Eaに電気的に接続されている。すなわち、第1線状部分Eaと延長線状部分Ebとは一体に連続的に形成されている。また、延長線状部分Ebは、Y軸方向における第1線状部分Eaの少なくとも一方の端部に設けられている。図11に示す第1の変形例では、第1線状部分Eaの両端部に、延長線状部分Ebがそれぞれ設けられている。そして、延長線状部分Ebは、第1線状部分Eaの端部から、他方の外側電極の側に延びるように形成されている。なお、延長線状部分Ebは、当該端部から、他方の外側電極の側とは反対側には延びていない。このようにして、図11に示す第1の変形例では、外側電極E1、E2は、コの字状に形成されている。
このような第1の変形例であっても、第1の実施の形態と同様にして、検出の対象となる対象物20が近傍に存在する検出領域を特定することができる。
また、第1の実施の形態では、内側電極E0が、円盤状の電極になっている。しかしながら、内側電極E0は、必ずしも円盤状の電極である必要はなく、内側電極E0のY軸方向における長さLEy0が、外側電極E1、E2のY軸方向における長さLEy1よりも短ければ、任意の平面形状とすることができる。例えば、内側電極E0は、平面視で矩形状に形成してもよく、更には、Y軸方向に沿って直線状に延びるように形成して、外側電極E1、E2と平行に形成してもよい(図27参照)。また、内側電極E0は、後述する図25に示すように、互いに絶縁された状態で配置された2つの内側電極分割体を含むように構成され、一方の内側電極分割体が外側電極E1に対向して外側電極E1と容量素子C1を構成し、他方の内側電極分割体が外側電極E2に対向して外側電極E2と容量素子C2を構成してもよい。
<2−7 位置特定手段に関する変形例>
本発明の第1の実施の形態では、位置特定手段60が、容量値測定部61と演算実行部62と領域特定部63とを有し、容量値測定部61が、各容量素子C1、C2の静電容量値を測定し、演算実行部62が、容量値測定部61によって測定された容量素子C1の測定値C1と容量素子C2の測定値C2とに基づく差分演算を行う例について説明した。しかしながら、位置特定手段60は、この構成に限られることはない。例えば、図12に示すように構成されていてもよい。
図12に示す第2の変形例では、位置特定手段60は、クロック発生回路70と、並列に接続された第1遅延回路72および第2遅延回路73と、位相比較器74(位相比較手段)と、領域特定部76と、を有している。
クロック発生回路70は、所定周波数のパルス信号(より詳細には、クロックパルス信号)を出力するように構成されている。クロック発生回路70と各遅延回路72、73との間には、カウンタ71が介在されている。このカウンタ71は、クロック発生回路70から出力されたパルス信号を変換して、第1遅延回路72に第1パルス信号Q1として出力するとともに、第2遅延回路73に第2パルス信号Q2として出力する。この際、カウンタ71は、第1遅延回路72に出力する第1バルス信号Q1と、第2遅延回路73に出力する第2パルス信号Q2とに、所定の位相差φ(図13参照)を付与する。例えば、カウンタ71は、第2パルス信号Q2を、第1パルス信号Q1よりも位相差φだけ遅らせて出力するようになっている。
第1遅延回路72は、入力される第1パルス信号Q1を、一の容量素子C1の静電容量値に基づいて遅延させるための回路である。図12に示す第2の変形例では、第1遅延回路72は、抵抗素子R1と容量素子C1との積分回路として構成されている。より具体的には、容量素子C1を構成する外側電極E1が抵抗素子R1の下流側の端子Tc1に接続されている。内側電極E0は、接地されている。このような構成により、第1遅延回路72は、カウンタ71から出力された第1パルス信号Q1を、容量素子C1の静電容量値の変化に応じて遅延させる。すなわち、第1遅延回路72は、抵抗素子R1の抵抗値と容量素子C1の静電容量値とで決定される時定数に応じた量だけ遅延するように第1パルス信号Vc1(図13参照)を出力する。
第2遅延回路73は、入力される第2パルス信号Q2を、他の容量素子C2の静電容量値に基づいて遅延させるための回路である。図12に示す第2の変形例では、第1遅延回路72と同様に、第2遅延回路73は、抵抗素子R2と容量素子C2との積分回路として構成されている。より具体的には、容量素子C2を構成する外側電極E2が抵抗素子R2の下流側の端子Tc2に接続されている。内側電極E0は、接地されている。このような構成により、第2遅延回路73は、カウンタ71から出力された第2パルス信号Q2を、容量素子C2の静電容量値の変化に応じて遅延させる。すなわち、第2遅延回路73は、抵抗素子R2の抵抗値と容量素子C2の静電容量値とで決定される時定数に応じた量だけ遅延するように第2パルス信号Vc2(図13参照)を出力する。なお、第2遅延回路73の抵抗素子R2は、第1遅延回路72の抵抗素子R1と同一特性であることが好適である。
位相比較器74は、第1遅延回路72から出力される第1パルス信号Vc1の位相と、第2遅延回路73から出力される第2パルス信号Vc2の位相とを比較して、位相差に応じたパルス幅Tx(図13参照)の信号を出力するように構成されている。例えば、位相比較器74は、排他的論理和演算を行うEX−OR素子で構成されていてもよい。
位相比較器74の下流にローパスフィルタ75(平滑化手段)が設けられている。このローパスフィルタ75は、位相比較器74から出力されたパルス信号Vxを平滑化して、レベル信号VLを出力する。出力されるレベル信号VLは、容量素子C1と容量素子C2の静電容量差に相当する量を示す信号となる。
領域特定部76は、ローパスフィルタ75から出力されるレベル信号VLに基づいて、近傍に対象物20が存在する検出領域を特定する処理を行う。ローパスフィルタ75から出力されたレベル信号VLは、容量素子C1と容量素子C2の静電容量差Cdiffに相当する量を示す信号となっているため、上述した第1の実施の形態と同様にして、領域特定部76は、近傍に対象物20が存在する検出領域を特定することができる。
図12に示す位置特定手段60の動作時には、クロック発生回路70から発生したパルス信号は、カウンタ71によって位相差が異なる第1パルス信号Q1と第2パルス信号Q2に変換され、第1パルス信号Q1が第1遅延回路72に入力され、第2パルス信号Q2が第2遅延回路73に入力される。ここでは、図13に示すように、第1パルス信号Q1が第2パルス信号Q2よりも位相差φだけ進んでいるものとする。
第1遅延回路72に入力された第1パルス信号Q1は、抵抗素子R1と容量素子C1で決定される時定数に応じて遅延量D1だけ位相が遅延される。第2遅延回路73に入力された第2パルス信号Q2は、抵抗素子R2と容量素子C2で決定される時定数に応じて遅延量D2だけ位相が遅延される。なお、各遅延回路72、73から出力されるパルス信号Vc1、Vc2は、実際は積分波形になるが、便宜上ここではパルス波形として示す。
対象物20が存在しない状態(この物体センサ1から十分に離れている状態)では、物体センサ1の2つの容量素子C1、C2はともに等容量であり、かつ、第1遅延回路72の抵抗素子R1の抵抗値と第2遅延回路73の抵抗素子R2の抵抗値が等しく設定されているため、第1遅延回路72の時定数と第2遅延回路73の時定数は同一である。この場合、遅延量D1、D2は、ほぼ同一であり、Vc1とVc2の位相差φxは、第1パルス信号Q1と第2パルス信号Q2の位相差φと同一である。
第1遅延回路72から出力される第1パルス信号Vc1と、第2遅延回路73から出力される第2パルス信号Vc2は、位相比較器74で排他的論理和演算が行われる。このことにより、一方がHレベルで他方がLレベルのときに、Hレベルとなるパルス信号Vx0が出力される。このパルス信号Vx0のパルス幅Tx0は、上述した位相差φに対応している。
そして、位相比較器74から出力されたパルス信号Vx0は、ローパスフィルタ75によって平滑化されて出力され、この平滑化されたレベル信号VLが、対象物20が物体センサ1の近傍に存在しない場合の基準レベル信号となる。
一方、対象物20が物体センサ1の検出領域Aleftの近傍に存在する場合には、図7および図8に示すように、容量素子C1の静電容量値が、容量素子C2の静電容量値よりも大きくなる。このことにより、第1遅延回路72の時定数が大きくなり、第2遅延回路73の時定数が小さくなる。従って、第1遅延回路72に入力する第1パルス信号Q1に対する遅延量D1が大きくなり、第2遅延回路73に入力する第2パルス信号Q2に対する遅延量D2が小さくなる。このため、第1遅延回路72から出力される第1パルス信号Vc1と第2遅延回路73から出力される第2パルス信号Vc2の位相差φxは、上述した位相差φよりも小さくなる。その結果、位相比較器74から出力されるパルス信号Vxのパルス幅Txは小さくなり、ローパスフィルタ75から出力されるレベル信号VLのレベルが、上述した基準レベル信号よりも低下する。
逆に、対象物20が物体センサ1の検出領域Arightの近傍に存在する場合には、図7および図8に示すように、容量素子C2の静電容量値が、容量素子C1の静電容量値よりも大きくなる。このことにより、第1遅延回路72の時定数が小さくなり、第2遅延回路73の時定数が大きくなる。従って、第1遅延回路72に入力する第1パルス信号Q1に対する遅延量D1が小さくなり、第2遅延回路73に入力する第2パルス信号Q2に対する遅延量D2が大きくなる。このため、第1遅延回路72から出力されるパルス信号Vc1と第2遅延回路73から出力されるパルス信号Vc2の位相差φxは、上述した位相差φよりも大きくなる。その結果、位相比較器74から出力されるパルス信号Vx’のパルス幅Tx’は大きくなり、ローパスフィルタ75から出力されるレベル信号VLのレベルが、上述した基準レベル信号よりも上昇する。
このようにして、対象物20の位置によって、ローパスフィルタ75から出力されるレベル信号VLのレベルが、基準レベル信号よりも上昇したり、低下したりするため、対象物20が近傍に存在する検出領域を特定することができる。すなわち、レベル信号VLのレベルが、基準レベル信号よりも上昇した場合には、対象物20が、物体センサ1の検出領域Aleftの近傍に存在することを特定することができる。一方、レベル信号VLのレベルが、基準レベル信号よりも低下した場合には、対象物20が、物体センサ1の検出領域Arightの近傍に存在することを特定することができる。従って、図12に示す位置特定手段60は、第1の実施の形態で述べた差分演算方式に位置特定手段60の代用とすることができる。
また、図12に示した位置特定手段60では、第1遅延回路72の抵抗素子R1と第2遅延回路73の抵抗素子R2は、同一特性であることから、環境条件、例えば温度等が変化した場合であっても、抵抗素子に基づく特性変化を相殺することができる。このため、S/N比を向上させることができるとともに、環境条件の変化が影響を及ぼすことを防止し、対象物20の位置を高い精度で特定することができる。
<2−7 位置特定手段に関する他の変形例>
本発明の第1の実施の形態では、領域特定部63が、演算実行部62による差分演算によって得られた差Cdiffに基づいて、近傍に対象物20が存在する検出領域を特定する処理を行う例について説明した。しかしながら、領域特定部63は、この構成に限られることはない。例えば、第1の実施の形態における第3の変形例として、領域特定部63は、各容量素子の測定値C1、C2のうちの最大値をとる容量素子が配置された検出領域を、対象物20が近傍に存在する領域として特定するようにしてもよい。この場合、演算実行部62は、容量値測定部61により測定された各容量素子C1、C2の静電容量値C1、C2の差分演算を行い、領域特定部63は、この差分演算の結果に基づいて、静電容量値が最大である容量素子を特定し、特定された容量素子に対応する検出領域を、近傍に対象物20が存在する領域として特定する。例えば、領域特定部63が、容量素子C1の測定値が容量素子C2の測定値よりも大きいと判定した場合には、容量素子C1が配置された検出領域Aleft(図5)を、近傍に対象物20が存在する領域であると特定する。
<<< §3. 本発明の第2の実施の形態 >>>
次に、図14〜図19を用いて、本発明の第2の実施の形態における物体センサについて説明する。
図14〜図22に示す第2の実施の形態においては、電極が、Y軸方向において内側電極の両側に設けられた一対の外側電極を更に有している点が主に異なり、他の構成は、図1〜図13に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図14〜図22において、図1〜図13に示す第1の実施の形態と同一部分には、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図14は、本発明の第2の実施の形態に係る物体センサ1を構成する基本構造部2の上面図である。この物体センサ1の基本構造部2は、平板状の支持体30と、その上面に形成された5つの電極E0、Ex1、Ex2、Ey1、Ey2とによって構成されている。
5つの電極E0、Ex1、Ex2、Ey1、Ey2は、4つの外側電極Ex1、Ex2、Ey1、Ey2と、外側電極Ex1、Ex2、Ey1、Ey2よりも原点Oの側に設けられた内側電極E0と、を有している。
このうち、外側電極Ex1、Ex2(第1外側電極)は、X軸方向において内側電極E0の両側に配置されており、外側電極Ex1が、Y軸より左側に位置するXの負側領域に配置され、外側電極Ex2が、Y軸より右側に位置するXの正側領域に配置されている。
外側電極Ex1、Ex2は、Y軸方向に沿って直線状に延びている。
一方、外側電極Ey1、Ey2(第2外側電極)は、Y軸方向において内側電極E0の両側に配置されており、外側電極Ey1が、X軸より上側に位置するYの正側領域に配置され、外側電極Ey2が、X軸より下側に位置するYの負側領域に配置されている。外側電極Ey1、Ey2は、X軸方向に沿って直線状に延びている。
図14においては、4つの外側電極Ex1、Ex2、Ey1、Ey2が、全体として正方形状をなすように配置されているが、これに限られることはなく、長方形状をなすように配置されていてもよい。
支持体30の上面には、Y軸に平行な3本の配置線Lx0、Lx1、Lx2と、X軸に平行な3本の配置線Ly0、Ly1、Ly2と、が定義されている。内側電極E0は、配置線Lx0上に配置されるとともに配置線Ly0上に配置されている。すなわち、内側電極E0は、原点O上に配置された、円盤状の電極である。外側電極Ex1、Ex2は、それぞれ配置線Lx1、Lx2上に配置された平板状の細長い電極である。同様に、外側電極Ey1、Ey2は、それぞれ配置線Ly1、Ly2に沿って配置された平板状の細長い電極である。
配置線Lx0はY軸に一致し、配置線Lx1と配置線Lx0との距離および配置線Lx0と配置線Lx2との距離は等しく、この基本構造部2は、YZ平面に関して面対称の構造を有している。このため、内側電極E0と外側電極Ex1との間隔と、内側電極E0と外側電極Ex2との間隔は、等しくなっている。
配置線Ly0はX軸に一致し、配置線Ly1と配置線Ly0との距離および配置線Ly0と配置線Ly2との距離は等しく、この基本構造部2は、XZ平面に関しても面対称の構造を有している。このため、内側電極E0と外側電極Ey1との間隔と、内側電極E0と外側電極Ey2との間隔は、等しくなっている。
図14に示すように、内側電極E0のY軸方向における長さLEy0は、外側電極Ex1、Ex2のY軸方向における長さLEy1よりも短くなっている。また、内側電極E0のX軸方向におけるLEx0長さは、外側電極Ey1、Ey2のX軸方向における長さLEx1よりも短くなっている。すなわち、円盤状の内側電極E0の直径が、外側電極Ex1、Ex2のY軸方向長さLEy1よりも短くなっているとともに、外側電極Ey1、Ey2のX軸方向長さLEx1よりも短くなっている。なお、図14に示す形態では、外側電極Ex1と外側電極Ex2は、YZ平面に関して面対称になっているため、外側電極Ex1のY軸方向における長さLEy1と、外側電極Ex2のY軸方向における長さLEy1は、等しくなっている。同様に、外側電極Ey1と外側電極Ey2は、XZ平面に関して面対称になっているため、外側電極Ey1のX軸方向における長さLEx1と、外側電極Ey2のX軸方向における長さLEx1は、等しくなっている。
支持体30の上面には、内側電極E0および外側電極Ex1、Ex2、Ey1、Ey2を覆うように、第1絶縁層40(図5参照)が形成されている。言い換えると、内側電極E0および外側電極Ex1、Ex2、Ey1、Ey2は、第1絶縁層40に埋め込まれている。
ここで、4つの外側電極Ex1、Ex2、Ey1、Ey2のうちのいずれか一の外側電極Ex1、Ex2、Ey1、Ey2と、内側電極E0とによって、容量素子が構成されている。すなわち、内側電極E0と外側電極Ex1とによって容量素子Cx1が構成され、内側電極E0と外側電極Ex2とによって容量素子Cx2が構成される。また、内側電極E0と外側電極Ey1とによって容量素子Cy1が構成され、内側電極E0と外側電極Ey2とによって容量素子Cy2が構成される。ここでも便宜上、各容量素子を示す符号と当該容量素子の静電容量値を示す符号とについて同一符号を用いることにする。したがって、上記容量素子Cx1、Cx2、Cy1、Cy2の静電容量値は、それぞれCx1、Cx2、Cy1、Cy2になる。図4を用いて説明したとおり、これらの各静電容量値は、近傍に対象物20が存在すると増加する。
図示は省略するが、5つの電極E0、Ex1、Ex2、Ey1、Ey2には、上記各静電容量値を測定するための配線が施されている。なお、各配線は、支持体30の上面に配置させることが好適である。内側電極E0に接続された配線は、4つの外側電極Ex1、Ex2、Ey1、Ey2のうちの任意の隣接する2つの外側電極の間の領域に配置すればよい。
図15(a)は、図14に示す第2の実施の形態に係る物体センサ1における静電容量値の検出回路の一例を示す回路図であり、図15(b)は、各静電容量値を測定する際の切替動作を示す表である。図15(a)の左の回路図に示すとおり、外側電極Ex1は、切替スイッチSWx1を介して端子Tx1に接続されており、外側電極Ex2は、切替スイッチSWx2を介して同じく端子Tx1に接続されている。また、共通電極として機能する内側電極E0は、端子Tx0に接続されている。したがって、切替スイッチSWx1をONにすれば、端子Tx0、Tx1間の静電容量値Cxは、電極E0、Ex1間の静電容量値Cx1を示すことになり、切替スイッチSWx2をONにすれば、端子Tx0、Tx1間の静電容量値Cxは、電極E0、Ex2間の静電容量値Cx2を示すことになる。
同様に、図15(a)の右の回路図に示すとおり、外側電極Ey1は、切替スイッチSWy1を介して端子Ty1に接続されており、外側電極Ey2は、切替スイッチSWy2を介して同じく端子Ty1に接続されている。また、共通電極として機能する内側電極E0は、端子Ty0に接続されている。したがって、切替スイッチSWy1をONにすれば、端子Ty0、Ty1間の静電容量値Cyは、電極E0、Ey1間の静電容量値Cy1を示すことになり、切替スイッチSWy2をONにすれば、端子Ty0、Ty1間の静電容量値Cyは、電極E0、Ey2間の静電容量値Cy2を示すことになる。なお、便宜上、図15(a)の左の回路図と右の回路図とで、内側電極E0の接続先が、端子Tx0と端子Ty0とに別個に描かれているが、実際には、内側電極E0と端子Tx0および端子Ty0は、共通の1つの電極と1つの端子として構成してもよい。
この第2の実施の形態に係る物体センサ1にも、図6(a)にブロック図として示したものと同様の位置特定手段60が備わっている。この位置特定手段60を構成する容量値測定部61は、各容量素子Cx1、Cx2、Cy1、Cy2の静電容量値を測定して測定値Cx1、Cx2、Cy1、Cy2を得る構成要素であり、切替スイッチSWx1、SWx2、SWy1、SWy2のON/OFFを切り替える機能と、両端子Tx0、Tx1間の静電容量値Cxを測定する機能と、両端子Ty0、Ty1間の静電容量値Cyを測定する機能と、を有する。
この第2の実施の形態における容量値測定部61の具体的な測定操作は、図15(b)の表に示すとおりである。すなわち、容量値測定部61は、切替スイッチSWx1をON、切替スイッチSWx2をOFFにして、両端子Tx0、Tx1間の静電容量値Cx(すなわち、電極E0、Ex1間の静電容量値Cx1)を測定する第1の測定操作と、切替スイッチSWx1をOFF、切替スイッチSWx2をONにして、両端子Tx0、Tx1間の静電容量値Cx(すなわち、電極E0、Ex2間の静電容量値Cx2)を測定する第2の測定操作と、を交互に実行することにより、所定のサンプリング周期で、測定値Cx1、Cx2を得ることができる。
また、容量値測定部61は、上記測定操作と並行して、切替スイッチSWy1をON、切替スイッチSWy2をOFFにして、両端子Ty0、Ty1間の静電容量値Cy(すなわち、電極E0、Ey1間の静電容量値Cy1)を測定する第3の測定操作と、切替スイッチSWy1をOFF、切替スイッチSWy2をONにして、両端子Ty0、Ty1間の静電容量値Cy(すなわち、電極E0、Ey2間の静電容量値Cy2)を測定する第4の測定操作と、を交互に実行することにより、所定のサンプリング周期で、測定値Cy1、Cy2を得ることができる。
この第2の実施の形態における演算実行部62は、容量値測定部61によって測定された容量素子の測定値Cx1、Cx2に基づく差分演算を行い、静電容量値の差Cxdiff=Cx1−Cx2を求めるとともに、測定値Cy1、Cy2に基づく差分演算を行い、静電容量値の差Cydiff=Cy1−Cy2を求める。そして、領域特定部63は、演算実行部62による差分演算によって得られた差Cxdiffと差Cydiffとに基づいて、近傍に対象物20が存在する検出領域を特定する処理を行う。
ここで、差Cxdiffと差Cydiffとは別個独立した値であり、前者は、対象物20のX軸方向に関する位置に関する情報を与え、後者は、対象物20のY軸方向に関する位置に関する情報を与えることになる。
この第2の実施の形態では、まず、図16の上面図に示すとおり、平板状の支持体30の検出面上に、二次元的に分布した4つの検出領域を定義することができる。図示の例の場合、支持体30の上面には、その中央に原点OをもったXY座標系が定義されており、各検出領域は、このXY座標系の象限に対応している。より具体的には、第1象限が第1の検出領域A1として定義され、第2象限が第2の検出領域A2として定義され、第3象限が第3の検出領域A3として定義され、第4象限が第4の検出領域A4として定義されている。そして、原点Oを通りX軸に一致する線が境界線B1として定義され、原点Oを通りY軸に一致する線が境界線B2として定義されている。これらの境界線B1、B2が、各検出領域A1、A2、A3、A4(以下、A1〜A4と記す)を画定している。なお、第2の実施の形態においても、各検出領域A1〜A4の境界線B1、B2は、容量素子を構成する電極の位置に基づいて定義されている。境界線B1は、外側電極Ex1の中点、内側電極E0(より具体的には原点O)、および外側電極Ex2の中点を通るように定義されている。同様に、境界線B2は、外側電極Ey1の中点、内側電極E0(より具体的には原点O)、および外側電極Ey2の中点を通るように定義されている。
なお、外側電極Ex1は、第2の検出領域A2と第3の検出領域A3とに跨がって配置されている。同様に、外側電極Ex2は、第1の検出領域A1と第4の検出領域A4とに跨がって配置されている。外側電極Ey1は、第1の検出領域A1と第2の検出領域A2とに跨がって配置され、外側電極Ey2は、第3の検出領域A3と第4の検出領域A4とに跨がって配置されている。
すなわち、§2−2で述べたとおり、静電容量値の差「Cxdiff=Cx1−Cx2」は、対象物20のX軸方向に関する位置を示しており、領域特定部63は、当該差Cxdiffの符号に基づき、Y軸より左側の領域か、Y軸より右側の領域か、を特定することができる。同様に、静電容量値の差「Cydiff=Cy1−Cy2」は、対象物20のY軸方向に関する位置を示しており、領域特定部63は、当該差Cydiffの符号に基づき、X軸より上側の領域か、X軸より下側の領域か、を特定することができる。したがって、領域特定部63は、両者を組み合わすことにより、対象物20の位置が第1検出領域A1、第2検出領域A2、第3検出領域A3および第4検出領域A4のいずれであるかを特定することができ、特定した検出領域を検出結果として出力することができる。
要するに、X軸方向に関する検出領域としては、Y軸より左側に位置する負側領域(第2検出領域A2と第3検出領域A3とを合併させた領域)と、Y軸より右側に位置する正側領域(第1検出領域A1と第4検出領域A4とを合併させた領域)と、が定義されており、静電容量値Cx1、Cx2によって、X軸に関する負側領域か正側領域かが特定されることになる。
例えば、Cx1−Cx2>0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、Y軸より左側に位置する負側領域であることを特定することができる。逆に、Cx1−Cx2<0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、Y軸より右側に位置する正側領域であることを特定することができる。
同様に、Y軸方向に関する検出領域としては、X軸より上側に位置する正側領域(第1検出領域A1と第2検出領域A2とを合併させた領域)と、X軸より下側に位置する負側領域(第3検出領域A3と第4検出領域A4とを合併させた領域)と、が定義されており、静電容量値Cy1、Cy2によって、Y軸に関する正側領域か負側領域かが特定されることになる。
例えば、Cy1−Cy2>0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、X軸より上側に位置する正側領域であることを特定することができる。逆に、Cy1−Cy2<0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、X軸より下側に位置する負側領域であることを特定することができる。
そして、領域特定部63は、X軸方向に関する領域の特定とY軸方向に関する領域の特定とを組み合わすことにより、対象物20の位置が第1検出領域A1、第2検出領域A2、第3検出領域A3、第4検出領域A4の何れであるかを特定することができ、特定した検出領域を検出結果として出力することができる。
要するに、Cx1−Cx2>0で、かつCy1−Cy2>0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、第2検出領域A2と第3検出領域A3とを合併させたX軸に関する負側領域と、第1検出領域A1と第2検出領域A2とを合併させたY軸に関する正側領域とで重なる領域である、第2検出領域A2となる。
同様に、Cx1−Cx2>0で、かつCy1−Cy2<0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、第2検出領域A2と第3検出領域A3とを合併させたX軸に関する負側領域と、第3検出領域A3と第4検出領域A4とを合併させたY軸に関する負側領域とで重なる領域である、第3検出領域A3となる。
また、Cx1−Cx2<0で、かつCy1−Cy2>0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、第1検出領域A1と第4検出領域A4とを合併させたX軸に関する正側領域と、第1検出領域A1と第2検出領域A2とを合併させたY軸に関する正側領域とで重なる領域である、第1検出領域A1となる。
また、Cx1−Cx2<0で、かつCy1−Cy2<0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、第1検出領域A1と第4検出領域A4とを合併させたX軸に関する正側領域と、第3検出領域A3と第4検出領域A4とを合併させたY軸に関する負側領域とで重なる領域である、第4検出領域A4となる。
なお、領域特定部63が領域を特定する前提として、容量素子Cx1、Cx2、Cy1、Cy2の静電容量値を加算した加算結果を用いて、対象物20が、容量素子Cx1、Cx2、Cy1、Cy2の近傍に存在するかどうかを判断することが好適である。例えば、上述した第1の実施の形態と同様にして、静電容量値Cx1、Cx2、Cy1、Cy2を合計した加算演算の結果として得られる和Cadd’が所定のしきい値以上である場合には、差分演算の結果として得られる差Cxdiff、Cydiffの絶対値が所定のしきい値未満であっても、領域特定部63は、容量素子Cx1、Cx2、Cy1、Cy2の近傍(例えば、原点O近傍の領域)に対象物20が存在すると判断してもよい。逆に、和Cadd’が所定のしきい値未満である場合には、容量素子Cx1、Cx2、Cy1、Cy2の近傍には対象物20は存在しないと判断し、「圏外」との検出結果を出力してもよい。また、対象物20が容量素子Cx1、Cx2、Cy1、Cy2の近傍に存在するかどうかの判断は、静電容量値Cx1、Cx2、Cy1、Cy2の合計値ではなく、Cx1とCx2の合計値や、Cy1とCy2の合計値を用いてもよく、あるいは、個々の静電容量値Cx1、Cx2、Cy1、Cy2を用いて、少なくとも一つの静電容量値がしきい値以上である場合には、対象物20が容量素子Cx1、Cx2、Cy1、Cy2の近傍に存在すると判断するようにしてもよい。
また、§2−3で述べた実施例のように、演算実行部62において、静電容量値の差とともに和(「Cxadd=Cx1+Cx2」、「Cyadd=Cy1+Cy2」)を演算するようにし、X軸方向に関する位置検出を、差Cxdiffとしきい値+Cxth、−Cxthとの比較、および、和Cxaddとしきい値Cxth2との比較によって行うようにし、Y軸方向に関する位置検出を、差Cydiffとしきい値+Cyth、−Cythとの比較、および、和Cyaddとしきい値Cyth2との比較によって行うようにすることもできる。そうすれば、検出領域A1、A2、A3、A4に加えて、「X軸近傍領域」、「Y軸近傍領域」(§2−3で述べた実施例における領域「Acenter」に対応)や、「圏外」といった領域を更に追加することができる。
この二次元センサに用いる基本構造部2の構成を一般論として述べれば、検出面上にXY座標系を定義したときに、Y軸に平行な配置線に沿って延び、X軸方向に等間隔に並んで配置された第1グループの外側電極Ex1、Ex2と、X軸に平行な配置線に沿って延び、Y軸方向に等間隔に並んで配置された第2グループの外側電極Ey1、Ey2と、が互いに絶縁された状態で配置されるようにすればよい。図14に示す例の場合、両グループは支持体30の検出面上に、互いに離間していることにより、互いに絶縁されている。
そして、第1グループに所属する外側電極Ex1、Ex2と内側電極E0とによって構成された第1グループの容量素子Cx1、Cx2によってX軸方向に関する位置を特定し、第2グループに所属する外側電極Ey1、Ey2と内側電極E0とによって構成された第2グループの容量素子Cy1、Cy2によってY軸方向に関する位置を特定するようにすれば、対象物20に関する二次元的な位置を検出できるようになる。
第2の実施の形態の特徴は、上述したように、対象物20に関する二次元的な位置を検出できることである。そして、内側電極E0と、外側電極Ex1、Ex2、Ey1、Ey2が、支持体30の上面に形成されている。このことにより、各容量素子の静電容量値に指向性が生じることを抑制できる。このことについて、以下により詳細に説明する。
例えば、図17に示すような基本構造部2を有する物体センサ1の場合には、各容量素子の静電容量値に指向性が生じ得る。すなわち、図17に示す比較例では、Y軸に平行な配置線に沿って延び、X軸方向に等間隔に並んで配置された第1グループの線状電極Ex5、Ex6、Ex7と、X軸に平行な配置線に沿って延び、Y軸方向に等間隔に並んで配置された第2グループの線状電極Ey5、Ey6、Ey7とが、互いに絶縁された状態で配置されている場合を考える。図17に示す比較例の場合、第1グループの線状電極Ex5、Ex6、Ex7は、支持体30の上面に形成され、支持体30の上面に形成された第1絶縁層40によって覆われている。第2グループの線状電極Ey5、Ey6、Ey7は、第1絶縁層40上に形成され、第1絶縁層40上に形成された第2絶縁層41によって覆われている。このようにして、図17において、第1グループの線状電極Ex5、Ex6、Ex7が破線で示され、第2グループの線状電極Ey5、Ey6、Ey7が実線で示されており、線状電極Ex5、Ex6、Ex7と線状電極Ey5、Ey6、Ey7とが立体的に交差し、互いに絶縁されている。
図17に示す比較例では、線状電極Ex5、Ex6によって容量素子Cx5が構成され、線状電極Ex6、Ex7によって容量素子Cx6が構成される。同様に、線状電極Ey5、Ey6によって容量素子Cy5が構成され、線状電極Ey6、Ey7によって容量素子Cy6が構成される。
図17に示す比較例での動作時、線状電極Ex5、Ex6、Ex7と、線状電極Ey5、Ey6、Ey7が交差している領域で、交流信号による電気的なカップリングが起る場合がある。このことにより、第1グループの線状電極Ex5、Ex6によって容量素子Cx5を測定した場合、第2グループの線状電極Ey5、Ey6、Ey7が第1グループの線状電極Ex5、Ex6に立体的に交差していることにより、測定される容量素子Cx5に、指向性が発生し得る。線状電極Ex6、Ex7によって容量素子Cx6を測定した場合も同様である。また、第2グループの線状電極Ey5、Ey6によって容量素子Cy5を測定した場合には、第1グループの線状電極Ex5、Ex6、Ex7が第2グループの線状電極Ey5、Ey6に立体的に交差していることにより、測定される容量素子Cy5に、指向性が発生し得る。線状電極Ey6、Ey7によって容量素子Cy6を測定した場合も同様である。
これに対して、本発明の第2の実施の形態によれば、外側電極Ex1、Ex2、Ey1、Ey2が、支持体30の上面に形成されて、互いに離間して絶縁されている。このことにより、電極E0、Ex1、Ex2、Ey1、Ey2を、立体的に交差させることなく配置することができる。このため、容量素子Cx1、Cx2、Cy1、Cy2の静電容量値に、指向性が発生することを防止でき、静電容量値の検出精度を向上させることができる。
また、本発明の第2の実施の形態によれば、内側電極E0のY軸方向における長さLEy0が、外側電極Ex1、Ex2のY軸方向における長さLEy1よりも短くなっている。このため、容量素子Cx1、Cx2の静電容量値に指向性が発生することをより一層防止できる。同様に、内側電極E0のX軸方向における長さLEx0が、外側電極Ey1、Ey2のX軸方向における長さLEx1よりも短くなっている。このため、容量素子Cy1、Cy2の静電容量値に指向性が発生することをより一層防止できる。
なお、内側電極E0のY軸方向における長さLEy0が、外側電極Ex1、Ex2のY軸方向における長さLEy1よりも短くなくてもよい。この場合においても、外側電極Ex1、Ex2、Ey1、Ey2が、支持体30の上面に形成されていることで、上述したように容量素子Cx1、Cx2、Cy1、Cy2の静電容量値に指向性が発生することを防止でき、静電容量値の検出精度を向上させることができる。同様に、内側電極E0のX軸方向における長さLEx0が、外側電極Ey1、Ey2のX軸方向における長さLEx1よりも短くなくてもよい。
<位置特定手段に関する変形例>
本発明の第2の実施の形態では、演算実行部62は、容量素子の測定値Cx1、Cx2に基づく差分演算を行い、静電容量値の差Cxdiff=Cx1−Cx2を求めるとともに、測定値Cy1、Cy2に基づく差分演算を行い、静電容量値の差Cydiff=Cy1−Cy2を求める例について説明した。しかしながら、これに限られることはない。第2の実施の形態における第1の変形例として、演算実行部62は、隣接する二対の検出領域における容量素子の静電容量値を加算する加算演算を行い、領域特定部63は、加算演算の結果として得られた二対の容量素子の静電容量値の和を利用して、検出領域を特定する処理を行うようにしてもよい。以下、その具体的な処理方法について説明する。
この場合には、まず図18の上面図に示すとおり、平板状の支持体30の検出面上に、二次元的に分布した4つの検出領域を定義することができる。図示の例の場合、支持体30の上面には、その中央に原点OをもったXY直交座標系が定義されており、この原点Oを通りX軸およびY軸に対して45°の角度をなす境界線B1’、B2’が定義されている。そして、この境界線B1’と境界線B2’によって画定される4つの扇形の領域のうち外側電極Ex1が配置された領域が第1の検出領域A1’として定義されている。同様にして、境界線B1’と境界線B2’とによって画定される4つの扇形の領域のうち外側電極Ex2が配置された領域が第2の検出領域A2’として定義されている。境界線B1’と境界線B2’とによって画定される4つの扇形の領域のうち外側電極Ey1が配置された領域が第3の検出領域A3’として定義されている。境界線B1’と境界線B2’とによって画定される4つの扇形の領域のうち外側電極Ey2が配置された領域が第4の検出領域A4’として定義されている。領域特定部63は、上述した加算演算の結果として得られた静電容量値の和を用いることにより、対象物20がいずれの領域に存在するかを特定することができる。なお、図18に示す形態においても、各検出領域A1’〜A4 ’の境界線B1’、B2’は、容量素子を構成する電極の位置に基づいて定義されている。境界線B1’は、外側電極Ex1と外側電極Ey2との間、内側電極(より具体的には原点O)、および外側電極Ex2と外側電極Ey1との間を通るように定義されている。
同様に、境界線B2’は、外側電極Ex1と外側電極Ey1との間、内側電極(より具体的には原点O)、および外側電極Ex2と外側電極Ey2との間を通るように定義されている。
なお、第1の検出領域A1’には、外側電極Ex1が配置され、第1の検出領域A1’は、この外側電極Ex1と内側電極E0とで構成される容量素子Cx1に対応する領域となっている。第2の検出領域A2’には、外側電極Ex2が配置され、第2の検出領域A2’は、この外側電極Ex2と内側電極E0とで構成される容量素子Cx2に対応する領域となっている。第3の検出領域A3’には、外側電極Ey1が配置され、第3の検出領域A3’は、この外側電極Ey1と内側電極E0とで構成される容量素子Cy1に対応する領域となっている。第4の検出領域A4’には、外側電極Ey2が配置され、第4の検出領域A4’は、この外側電極Ey2と内側電極E0とで構成される容量素子Cy2に対応する領域となっている。
演算実行部62は、容量値測定部61によって測定された容量素子の測定値Cx1、Cy1に基づく加算演算を行い、静電容量値の和Cadd1=Cx1+Cy1を求めるとともに、測定値Cx2、Cy2に基づく加算演算を行い、静電容量値の和Cadd2=Cx2+Cy2を求める。その後、演算実行部62は、求められた和Cadd1と、和Cadd2とに基づく差分演算を行い、静電容量値の和の差Cdiff1=Cadd1−Cadd2を求める。書き換えると、Cdiff1=(Cx1+Cy1)−(Cx2+Cy2)となる。
また、演算実行部62は、容量値測定部61によって測定された容量素子の測定値Cx1、Cy2に基づく加算演算を行い、静電容量値の和Cadd3=Cx1+Cy2を求めるとともに、測定値Cx2、Cy1に基づく加算演算を行い、静電容量値の和Cadd4=Cx2+Cy1を求める。その後、演算実行部62は、求められた和Cadd3と、和Cadd4とに基づく差分演算を行い、静電容量値の和の差Cdiff2=Cadd3−Cadd4を求める。書き換えると、Cdiff2=(Cx1+Cy2)−(Cx2+Cy1)となる。
そして、領域特定部63は、演算実行部62による加算演算および差分演算によって得られた差Cdiff1と差Cdiff2とに基づいて、近傍に対象物20が存在する検出領域を特定する処理を行う。
ここで、差Cdiff1と差Cdiff2とは別個独立した値であり、差Cdiff1は、境界線B2’方向に関する対象物20の位置を示している。領域特定部63は、当該差Cdiff1の符号に基づき、境界線B1’より第2象限の側の領域か、境界線B1’より第4象限の側の領域か、を特定することができる。
要するに、(Cx1+Cy1)−(Cx2+Cy2)>0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域が、境界線B1’より第2象限の側の領域(第1の検出領域A1’と第3の検出領域A3’とを合併させた領域)であることを特定することができる。逆に、(Cx1+Cy1)−(Cx2+Cy2)<0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域が、境界線B1’より第4象限の側の領域(第2の検出領域A2’と第4の検出領域A4’とを合併させた領域)であることを特定することができる。
差Cdiff1と同様に、差Cdiff2は、境界線B1’方向に関する対象物20の位置を示している。領域特定部63は、当該差Cdiff2の符号に基づき、境界線B2’より第1象限の側の領域か、境界線B2’より第3象限の側の領域か、を特定することができる。
要するに、(Cx1+Cy2)−(Cx2+Cy1)>0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域が、境界線B2’より第3象限の側の領域(第1の検出領域A1’と第4の検出領域A4’とを合併させた領域)であることを特定することができる。逆に、(Cx1+Cy2)−(Cx2+Cy1)<0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域が、境界線B2’より第1象限の側の領域(第2の検出領域A2’と第3の検出領域A3’とを合併させた領域)であることを特定することができる。
そして、領域特定部63は、境界線B1’方向に関する領域の特定と境界線B2’方向に関する領域の特定とを組み合わすことにより、対象物20の位置が検出領域A1’、A2’、A3’、A4’の何れであるかを特定することができ、特定した検出領域を検出結果として出力することができる。
要するに、(Cx1+Cy1)−(Cx2+Cy2)>0で、かつ(Cx1+Cy2)−(Cx2+Cy1)>0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、第1の検出領域A1’と第3の検出領域A3’とを合併させた領域と、第1の検出領域A1’と第4の検出領域A4’とを合併させた領域とで重なる領域である、第1の検出領域A1’となる。
同様に、(Cx1+Cy1)−(Cx2+Cy2)>0で、かつ(Cx1+Cy2)−(Cx2+Cy1)<0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、第1の検出領域A1’と第3の検出領域A3’とを合併させた領域と、第2の検出領域A2’と第3の検出領域A3’とを合併させた領域とで重なる領域である、第3の検出領域A3’となる。
また、(Cx1+Cy1)−(Cx2+Cy2)<0で、かつ(Cx1+Cy2)−(Cx2+Cy1)>0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、第2の検出領域A2’と第4の検出領域A4’とを合併させた領域と、第1の検出領域A1’と第4の検出領域A4’とを合併させた領域とで重なる領域である、第4の検出領域A4’となる。
さらに、(Cx1+Cy1)−(Cx2+Cy2)<0で、かつ(Cx1+Cy2)−(Cx2+Cy1)<0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、第2の検出領域A2’と第4の検出領域A4’とを合併させた領域と、第2の検出領域A2’と第3の検出領域A3’とを合併させた領域とで重なる領域である、第2の検出領域A2’となる。
なお、図18に示す検出領域を定義する場合には、位置特定手段60は、第2の実施の形態の第1の変形例で説明した方法とは異なる方法で、対象物20が近傍に存在する領域を特定するようにしてもよい。例えば、各容量素子の測定値Cx1、Cx2、Cy1、Cy2のうちの最大値をとる容量素子が配置された検出領域を、対象物20が近傍に存在する領域として特定するようにしてもよい。この場合、領域特定部63は、容量値測定部61により測定された各容量素子Cx1、Cx2、Cy1、Cy2のうちの最大値をとる容量素子を判定し、この判定結果に基づいて、近傍に対象物20が存在する検出領域を特定する。例えば、領域特定部63が、容量素子Cx1の測定値が最大値をとると判定した場合には、容量素子Cx1が配置された検出領域A1’を、近傍に対象物20が存在する領域であると特定する。
<位置特定手段に関する他の変形例>
本発明の第2の実施の形態では、位置特定手段60が、容量値測定部61と演算実行部62と領域特定部63とを有している例について説明した。しかしながら、これに限られることはない。第2の実施の形態における第2の変形例として、位置特定手段60は、図12および図13に示す第1の実施の形態の第2の変形例で示した位置特定手段60のように構成されていてもよい。
この場合、第1遅延回路72の構成は、図19に示すようにすればよい。すなわち、端子Tc1には、切替スイッチSWx11を介して外側電極Ex1が接続されているとともに、切替スイッチSWx21を介して外側電極Ex2が接続されている。また、端子Tc1には、切替スイッチSWy11を介して外側電極Ey1が接続されているとともに、切替スイッチSWy21を介して外側電極Ey2が接続されている。このようにして、各切替スイッチSWx11、SWx21、SWy11、SWy21を操作することにより、端子Tc1に、外側電極Ex1、Ex2、Ey1、Ey2を選択的に接続可能になっており、端子Tc1に接続された外側電極が構成する容量素子と、抵抗素子R1とで決定される時定数に応じて第1パルス信号Q1が遅延される。
同様に、第2遅延回路73の構成も、図19に示すようにすればよい。すなわち、図19に示すように、端子Tc2には、切替スイッチSWx22を介して外側電極Ex2が接続されている。また、端子Tc1には、切替スイッチSWy12を介して外側電極Ey1が接続されているとともに、切替スイッチSWy22を介して外側電極Ey2が接続されている。このようにして、各切替スイッチSWx22、SWy12、SWy22を操作することにより、端子Tc2に、外側電極Ex2、Ey1、Ey2を選択的に接続可能になっており、端子Tc2に接続された外側電極が構成する容量素子と、抵抗素子R1とで決定される時定数に応じて第2パルス信号Q2が遅延される。
このようにして、図19に示す第1遅延回路72および第2遅延回路73を採用する場合には、ローパスフィルタ75から出力される信号を、外側電極Ex1、Ex2、Ey1、Ey2のうちのいずれか2つの外側電極によって構成される一対の容量素子の静電容量差に相当する量を示す信号とすることができる。このため、図19に示す第1遅延回路72および第2遅延回路73が組み込まれた図12に示す位置特定手段60は、第2の実施の形態で述べた差分演算方式の位置特定手段60の代用とすることができる。この場合、環境条件による抵抗素子の特性変化を相殺して、S/N比を向上させることができるとともに、環境条件の変化が影響を及ぼすことを防止し、対象物20の位置を高い精度で特定することができる。
<電極形状に関する変形例>
図14に示す形態では、内側電極E0は、円盤状に形成されている。しかしながら、内側電極E0は、必ずしもこのような形状の電極である必要はなく、任意形状の電極であってもかまわない。
図20は、本発明の第2の実施の形態に係る物体センサ1の第3の変形例を示す上面図である。この物体センサ1を構成する基本構造部2は、平板状の支持体30と、その上面に形成された5つの電極E0、Ex1、Ex2、Ex3、Ex4とによって構成されている。しかしながら、図14に示す基本構造部2と異なる点は、図20に示す内側電極E0が、第1内側線状部分E01と、第2内側線状部分E02と、を含むように構成されている点である。
図20に示す第3の変形例では、第1内側線状部分E01は、Y軸方向に沿って直線状に延びている。第2内側線状部分E02は、X軸方向に沿って直線状に延びている。第3の変形例では、内側電極E0のY軸方向における長さLEy0は、第1内側線状部分E01のY軸方向における長さに相当し、対向する外側電極Ex1、Ex2のY軸方向における長さLEy1よりも短くなっている。また、内側電極E0のX軸方向における長さLEx0は、第2内側線状部分E02のX軸方向における長さに相当し、対向する外側電極Ey1、Ey2のX軸方向における長さLEx1よりも短くなっている。第1内側線状部分E01と第2内側線状部分E02とは、互いに電気的に接続されている。すなわち、第1内側線状部分E01と第2内側線状部分E02とは、支持体30の上面に形成されるとともに、交差するように一体に形成されており、内側電極E0は、全体として十字状に形成されている。
<電極形状に関する他の変形例>
図21(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る物体センサ1の第4の変形例を示す上面図であり、図21(b)は、その側断面図である。この物体センサ1は、第1内側線状部分E01と第2内側線状部分E02とが、互いに絶縁されている点で、図20に示す第3の変形例とは異なっている。
図21(a)、(b)に示す第4の変形例では、支持体30の上面に第1内側線状部分E01が形成され、当該上面に形成された第1絶縁層40によって覆われている。第2内側線状部分E02は、第1絶縁層40上に形成されている。このようにして、第1内側線状部分E01と第2内側線状部分E02とは互いに絶縁されている。
第2内側線状部分E02は、第1絶縁層40上に形成された第2絶縁層41によって覆われている。第2絶縁層41は、保護膜として機能している。第2絶縁層41は、第1絶縁層40の上面の全体に形成されていてもよく、第2内側線状部分E02を覆うことができれば、第1絶縁層40の中央部分だけに形成されるようにしてもよい。図21(a)の上面図では、説明の便宜上、この第2絶縁層41の図示は省略してある。第1内側線状部分E01は、端子Tx0(図15参照)に接続され、第2内側線状部分E02は、端子Ty0に接続されている。
また、図14に示す形態では、支持体30の上面に、4つの外側電極Ex1、Ex2、Ey1、Ey2が形成され、これらの外側電極Ex1、Ex2、Ey1、Ey2が、全体として平面視で正方形状をなすように配置されている。しかしながら、外側電極の個数は、必ずしも4つである必要はなく、任意の個数とすることができる。例えば、図22に示す第5の変形例のように、支持体30の上面に8つの外側電極が形成されて、全体として平面視で正八角形状をなすように配置されていてもよく、あるいは、図示しないが、16個の外側電極が形成されて、全体として平面視で正十六角形状をなすように配置されていてもよい。
図22に示すように、支持体30の上面に8つの外側電極を形成する場合、原点Oを中心とする周方向において、外側電極Ex1と外側電極Ey1との間に、1つの外側電極E3が追加される。この追加される外側電極E3は、正八角形状をなすように、外側電極Ex1に対して135°の内角をなすとともに外側電極Ey1に対して135°の内角をなす方向に沿って直線状に延びるように形成される。外側電極Ex1と外側電極Ey2との間にも同様に1つの外側電極E3が追加され、外側電極Ex2と外側電極Ey1との間、および外側電極Ex2と外側電極Ey2との間にも、それぞれ1つの外側電極E3が追加される。図22に示す第5の変形例においては、追加される各外側電極E3は、それぞれ細長い電極として形成されており、各外側電極E3の長手方向において、内側電極E0の当該長手方向における長さが、外側電極E3の当該長手方向における長さよりも短くなっていることが好適である。
そして、支持体30の検出面上には、外側電極Ex1、Ex2、Ey1、Ey2、E3がそれぞれ配置されるように、8つの扇形の検出領域A’’が定義される。各検出領域A’’を画定する一対の境界線は、原点Oから放射方向に延び、一の検出領域を画定する一対の境界線がなす角度は45°となる。すなわち、図18に示す境界線B1’とX軸とがなす角度の二等分線が、境界線B3として定義され、境界線B2’とX軸とがなす角度の二等分線が、境界線B4として定義される。また、境界線B1’とY軸とがなす角度の二等分線が、境界線B5として定義され、境界線B2’とY軸とがなす角度の二等分線が、境界線B6として定義される。これら4つの境界線B3、B4、B5、B6によって、8つの検出領域A’’が定義される。このため、対象物20に関する二次元的な位置が、8つの検出領域A’’のいずれであるかを特定することができ、対象物20の位置をより細分化して特定できるようになる。なお、境界線B1’、B2’は検出領域A’’を画定しない。
なお、外側電極の個数は、対称性を考慮すれば4の倍数であることが好適であるが、これに限られることはなく、2以上の整数であれば、4の倍数以外の偶数であってもよく、奇数であってもよい。
<<< §4. 本発明の第3の実施の形態 >>>
次に、図23〜図26を用いて、本発明の第3の実施の形態における物体センサについて説明する。
図23〜図26に示す第3の実施の形態においては、外側電極が、Y軸方向に延びる第1線状部分と、Y軸方向とは異なる方向に延びる第2線状部分と、を含んでいる点が主に異なり、他の構成は、図1〜図13に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図23〜図26において、図1〜図13に示す第1の実施の形態と同一部分には、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図23は、本発明の第3の実施の形態に係る物体センサ1を構成する基本構造部2の上面図である。この物体センサ1の基本構造部2は、平板状の支持体30と、その上面に形成された5つの電極E0、E10、E20、E30、E40とによって構成されている。
5つの電極E0、E10、E20、E30、E40は、検出領域A1〜A4(図16参照)の各々に配置された4つの外側電極E10、E20、E30、E40(以下、E10〜E40と記す)と、外側電極E10〜E40よりも原点Oの側に設けられた内側電極E0と、を有している。このうち外側電極E10は、第1象限に配置されており、外側電極E20は、第2象限に配置されており、外側電極E30は、第3象限に配置されており、外側電極E40は、第4象限に配置されている。外側電極E10を原点Oを中心に90°回転すると、外側電極E20に重なり、180°回転すると、外側電極E30に重なり、270°回転すると外側電極E40に重なるようになっている。
すなわち、第3の実施の形態では、一対の外側電極E10、E20(第1外側電極)および一対の外側電極E30、E40(第2外側電極)が、X軸方向において内側電極E0の両側に設けられた第1線状部分Eaをそれぞれ含んでいる。第1線状部分Eaは、Y軸方向に沿って直線状に延びている。外側電極E10の第1線状部分Eaは、外側電極E40の第1線状部分EaにY軸方向において整列している。すなわち、これらの第1線状部分Eaは、Y軸方向(より具体的には配置線Lx2)に沿って一直線上に配置されている。同様に、外側電極E20の第1線状部分Eaは、外側電極E30の第1線状部分EaにY軸方向において整列している。すなわち、これらの第1線状部分Eaは、Y軸方向(より具体的には配置線Lx1)に沿って一直線上に配置されている。
外側電極E10の第1線状部分Eaは、対応する外側電極E40の側に設けられた第1端部Ea1と、第1端部Ea1とは反対側に設けられた第2端部Ea2と、を含んでいる。同様に、外側電極E20の第1線状部分Eaは、対応する外側電極E30の側に設けられた第1端部Ea1と、第1端部Ea1とは反対側に設けられた第2端部Ea2と、を含んでいる。外側電極E30の第1線状部分Eaは、対応する外側電極E20の側に設けられた第1端部Ea1と、第1端部Ea1とは反対側に設けられた第2端部Ea2と、を含んでおり、外側電極E40の第1線状部分Eaは、対応する外側電極E10の側に設けられた第1端部Ea1と、第1端部Ea1とは反対側に設けられた第2端部Ea2と、を含んでいる。図23に示す第3の実施の形態においては、各外側電極E10〜E40の第1線状部分Eaの第1端部Ea1は、X軸に一致する境界線B1の側に設けられている。
外側電極E10〜E40は、第2線状部分Ecを更に含んでいる。この第2線状部分Ecは、第1線状部分Eaに電気的に接続されている。すなわち、第1線状部分Eaと第2線状部分Ecとは一体に連続的に形成されている。
第2線状部分Ecは、第1線状部分Eaが延びる方向であるY軸方向とは異なる方向に沿って直線状に延びている。すなわち、第1線状部分Eaと第2線状部分Ecとが、角度αで接続されている。第3の実施の形態では、第2線状部分EcがX軸方向に延びている例が示されており、第2線状部分Ecは、X軸方向に沿って直線状に延びるように形成されている。このため、上述した角度αは、90°となっている。そして、外側電極E10の第2線状部分Ecと、対応する外側電極E40の第2線状部分Ecは、Y軸方向において内側電極E0の両側に配置されている。外側電極E20の第2線状部分Ecと、対応する外側電極E30の第2線状部分Ecも、Y軸方向において内側電極E0の両側に配置されている。
各外側電極E10〜E40の第2線状部分Ecは、第1線状部分Eaの第2端部Ea2から第2の境界線B2の側に延びている。すなわち、外側電極E10の第2線状部分Ecは、第1線状部分Eaの第2端部Ea2から外側電極E20の側に延び、外側電極E20の第2線状部分Ecは、第1線状部分Eaの第2端部Ea2から外側電極E10の側に延びている。また、外側電極E30の第2線状部分Ecは、第1線状部分Eaの第2端部Ea2から外側電極E40の側に延び、外側電極E40の第2線状部分Ecは、第1線状部分Eaの第2端部Ea2から外側電極E30の側に延びている。なお、第2線状部分Ecは、この第2端部Ea2から、第2の境界線B2の側とは反対側には延びていない。このようにして、図23に示す第3の実施の形態では、各外側電極E10〜E40は、平面視でL字状に形成されており、外側電極E10〜E40は、全体として平面視で正方形状をなすように配置されている。言い換えると、各外側電極E10〜E40の第1線状部分Eaは、X軸に一致する第1の境界線B1に垂直に形成されており、第2線状部分Ecは、Y軸に一致する第2の境界線B2に垂直に形成されている。
支持体30の上面には、Y軸に平行な3本の配置線Lx0、Lx1、Lx2と、X軸に平行な3本の配置線Ly0、Ly1、Ly2と、が定義されている。内側電極E0は、配置線Lx0上に配置されるとともに配置線Ly0上に配置されている。すなわち、内側電極E0は、原点O上に配置された、円盤状の電極である。外側電極E10〜E40の第1線状部分Eaは、それぞれ配置線Lx1、Lx2上に配置されている。より具体的には、外側電極E10およびE40の第1線状部分Eaは、配置線Lx2上に配置され、外側電極E20およびE30の第1線状部分Eaは、配置線Lx1上に配置されている。また、外側電極E10〜E40の第2線状部分Ecは、それぞれ配置線Ly1、Ly2上に配置されている。より具体的には、外側電極E10およびE20の第2線状部分Ecは、配置線Ly1上に配置され、外側電極E30およびE40の第2線状部分Ecは、配置線Ly2上に配置されている。
配置線Lx0はY軸に一致し、配置線Lx1と配置線Lx0との距離および配置線Lx0と配置線Lx2との距離は等しく、この基本構造部2は、YZ平面に関して面対称の構造を有している。このため、内側電極E0と外側電極E10およびE40の第1線状部分Eaとの間隔と、内側電極E0と外側電極E20およびE30の第1線状部分Eaとの間隔は、等しくなっている。
配置線Ly0はX軸に一致し、配置線Ly1と配置線Ly0との距離および配置線Ly0と配置線Ly2との距離は等しく、この基本構造部2は、XZ平面に関しても面対称の構造を有している。このため、内側電極E0と外側電極E10およびE20の第2線状部分Ecとの間隔と、内側電極E0と外側電極E30およびE40の第2線状部分Ecとの間隔は、等しくなっている。
図23に示すように、内側電極E0のY軸方向における長さLEy0は、各外側電極E10〜E40のY軸方向における長さLEy1よりも短くなっている。また、内側電極E0のX軸方向における長さLEx0は、各外側電極E10〜E40のX軸方向における長さLEx1よりも短くなっている。すなわち、円盤状の内側電極E0の直径が、外側電極E10〜E40のY軸方向長さLEy1よりも短くなっているとともに、外側電極E10〜E40のX軸方向長さLEx1よりも短くなっている。
支持体30の上面には、内側電極E0および外側電極E10〜E40を覆うように、第1絶縁層40(図5参照)が形成されている。言い換えると、内側電極E0および外側電極E10〜E40は、第1絶縁層40に埋め込まれている。
ここで、4つの外側電極E10〜E40のうちのいずれか一の外側電極E10〜E40と、内側電極E0とによって、容量素子が構成されている。すなわち、内側電極E0と外側電極E10とによって容量素子C10が構成され、内側電極E0と外側電極E20とによって容量素子C20が構成される。また、内側電極E0と外側電極E30とによって容量素子C30が構成され、内側電極E0と外側電極E40とによって容量素子C40が構成される。ここでも便宜上、各容量素子を示す符号と当該容量素子の静電容量値を示す符号とについて同一符号を用いることにする。したがって、上記容量素子C10、C20、C30、C40の静電容量値は、それぞれC10、C20、C30、C40(以下、C10〜C40と記す)になる。図4を用いて説明したとおり、これらの各静電容量値は、近傍に対象物20が存在すると増加する。
図示は省略するが、5つの電極E0、E10〜E40には、上記各静電容量値を測定するための配線が施されている。なお、各配線は、支持体30の上面に配置させることが好適である。内側電極E0に接続された配線は、4つの外側電極E10〜E40のうちの任意の隣接する2つの外側電極の間の領域に配置すればよい。
図24(a)は、図23に示す第3の実施の形態に係る物体センサ1における静電容量値の検出回路の一例を示す回路図であり、図24(b)は、各静電容量値を測定する際の切替動作を示す表である。図24(a)に示すとおり、外側電極E10は、切替スイッチSW10を介して端子T10に接続されており、外側電極E20は、切替スイッチSW20を介して同じく端子T10に接続されている。更に、外側電極E30は、切替スイッチSW30を介して端子T10に接続されており、外側電極E40は、切替スイッチSW40を介して端子T10に接続されている。また、共通電極として機能する内側電極E0は、端子T0に接続されている。したがって、切替スイッチSW10をONにすれば、端子T0、T10間の静電容量値Cは、電極E0、E10間の静電容量値C10を示すことになり、切替スイッチSW20をONにすれば、端子T0、T10間の静電容量値Cは、電極E0、E20間の静電容量値C20を示すことになる。また、切替スイッチSW30をONにすれば、端子T0、T10間の静電容量値Cは、電極E0、E30間の静電容量値C30を示すことになり、切替スイッチSW40をONにすれば、端子T0、T10間の静電容量値Cは、電極E0、E40間の静電容量値C40を示すことになる。
この第3の実施の形態に係る物体センサ1にも、図6(a)にブロック図として示したものと同様の位置特定手段60が備わっている。この位置特定手段60を構成する容量値測定部61は、各容量素子C10〜C40の静電容量値を測定して測定値C10〜C40を得る構成要素であり、切替スイッチSW10、SW20、SW30、SW40(以下、SW10〜SW40と記す)のON/OFFを切り替える機能と、両端子T0、T10間の静電容量値Cを測定する機能と、を有する。
この第3の実施の形態における容量値測定部61の具体的な測定操作は、図24(b)の表に示すとおりである。すなわち、容量値測定部61は、第1の測定操作と、第2の測定操作と、第3の測定操作と、第4の測定操作とを交互に実行することにより、所定のサンプリング周期で、測定値C10〜C40を得ることができる。このうち第1の測定操作では、切替スイッチSW10をON、切替スイッチSW20、SW30、SW40をOFFにして、両端子T0、T10間の静電容量値C(すなわち、電極E0、E10間の静電容量値C10)を測定する。第2の測定操作では、切替スイッチSW10、SW30、SW40をOFF、切替スイッチSW20をONにして、両端子T0、T10間の静電容量値C(すなわち、電極E0、E20間の静電容量値C20)を測定する。第3の測定操作では、切替スイッチSW10、SW20、SW40をOFF、切替スイッチSW30をONにして、両端子T0、T10間の静電容量値C(すなわち、電極E0、E30間の静電容量値C30)を測定する。第4の測定操作では、切替スイッチSW10、SW20、SW30をOFF、切替スイッチSW40をONにして、両端子T0、T10間の静電容量値C(すなわち、電極E0、E40間の静電容量値C40)を測定する。
この第3の実施の形態における演算実行部62は、隣接する二対の検出領域における静電容量値を加算する加算演算を行い、加算演算の結果として得られた静電容量値の和を利用して、検出領域を特定する処理を行うようにしてもよい。以下、その具体的な処理方法について説明する。
演算実行部62は、容量値測定部61によって測定された容量素子の測定値C10、C40に基づく加算演算を行い、静電容量値の和Cx1add=C10+C40を求めるとともに、測定値C20、C30に基づく加算演算を行い、静電容量値の和Cx2add=C20+C30を求める。その後、演算実行部62は、求められた和Cx1addと、和Cx2addとに基づく差分演算を行い、静電容量値の和の差Cxdiff’=(C10+C40)−(C20+C30)となる。
また、演算実行部62は、容量値測定部61によって測定された容量素子の測定値C10、C20に基づく加算演算を行い、静電容量値の和Cy1add=C10+C20を求めるとともに、測定値C30、C40に基づく加算演算を行い、静電容量値の和Cy2add=C30+C40を求める。その後、演算実行部62は、求められた和Cy1addと、和Cy2addとに基づく差分演算を行い、静電容量値の和の差Cydiff’=Cy1add−Cy2addを求める。書き換えると、Cydiff’=(C10+C20)−(C30+C40)となる。
そして、領域特定部63は、演算実行部62による差分演算によって得られた差Cxdiff’と差Cydiff’とに基づいて、近傍に対象物20が存在する検出領域を特定する処理を行う。なお、上述した第1の実施の形態と同様にして、容量素子C10〜C40を合計した加算演算の結果として得られる和Cadd’’が所定のしきい値以上である場合には、差分演算の結果として得られる差Cxdiff’、Cydiff’の絶対値が所定のしきい値未満であっても、領域特定部63は、容量素子C10〜C40の近傍(例えば、原点O近傍の領域)に対象物20が存在すると判断することが好適である。
ここで、差Cxdiff’と差Cydiff’とは別個独立した値であり、前者は、対象物20のX軸方向に関する位置に関する情報を与え、後者は、対象物20のY軸方向に関する位置に関する情報を与えることになる。すなわち、この第3の実施の形態の場合、図23の上面図に示すとおり、平板状の支持体30上には、二次元的に分布した検出領域を定義することができる。図示の例の場合、図16に示す形態と同様に、支持体30の上面には、その中央に原点OをもったXY直交座標系が定義されており、X軸およびY軸に一致する境界線B1、B2が定義されている。そして、この境界線B1と境界線B2によって画定された第1象限が第1の検出領域A1として定義されている。同様にして、第2象限が第2の検出領域A2として定義され、第3象限が第3の検出領域A3として定義され、第4象限が第4の検出領域A4として定義されている。領域特定部63は、上述した差Cxdiff’と差Cydiff’の情報を用いることにより、対象物20がこれら4つの検出領域(あるいは象限)のいずれに存在するかを特定することができる。なお、第3の実施の形態においても、各検出領域A1〜A4の境界線B1、B2は、容量素子を構成する電極の位置に基づいて定義されている。境界線B1は、外側電極E10と外側電極E40との間、内側電極E0(より具体的には原点O)、および外側電極E20と外側電極E30との間を通るように定義されている。同様に、境界線B2は、外側電極E10と外側電極E20との間、内側電極E0(より具体的には原点O)、および外側電極E30と外側電極E40との間を通るように定義されている。
なお、第1の検出領域A1には、外側電極E10が配置され、第1の検出領域A1は、この外側電極E10と内側電極E0とで構成される容量素子C10に対応する領域となっている。第2の検出領域A2には、外側電極E20が配置され、第2の検出領域A2は、この外側電極E20と内側電極E0とで構成される容量素子C20に対応する領域となっている。第3の検出領域A3には、外側電極E30が配置され、第3の検出領域A3は、この外側電極E30と内側電極E0とで構成される容量素子C30に対応する領域となっている。第4の検出領域A4には、外側電極E40が配置され、第4の検出領域A4は、この外側電極E40と内側電極E0とで構成される容量素子C40に対応する領域となっている。
すなわち、§2−2で述べたとおり、静電容量値の差「Cxdiff’=(C10+C40)−(C20+C30)」は、対象物20のX軸方向に関する位置を示しており、領域特定部63は、当該差Cxdiff’の符号に基づき、Y軸より右側の領域か、Y軸より左側の領域か、を特定することができる。同様に、静電容量値の差「Cydiff=(C10+C20)−(C30+C40)」は、対象物20のY軸方向に関する位置を示しており、領域特定部63は、当該差Cydiff’の符号に基づき、X軸より上側の領域か、X軸より下側の領域か、を特定することができる。したがって、領域特定部63は、X軸方向に関する領域の特定とY軸方向に関する領域の特定とを組み合わすことにより、対象物20の位置が第1の検出領域A1、第2の検出領域A2、第3の検出領域A3および第4の検出領域A4のいずれであるかを特定することができ、特定した検出領域を検出結果として出力することができる。
要するに、X軸方向に関する検出領域としては、Y軸より右側に位置する正側領域(第1の検出領域A1と第4の検出領域A4とを合併させた領域)と、Y軸より左側に位置する負側領域(第2の検出領域A2と第3の検出領域A3とを合併させた領域)と、が定義されており、静電容量値Cx1add(=C10+C40)、Cx2add(=C20+C30)によって、X軸に関する正側領域か負側領域かが特定されることになる。
例えば、(C10+C40)−(C20+C30)>0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、Y軸より右側に位置する正側領域であることを特定することができる。逆に、(C10+C40)−(C20+C30)<0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、Y軸より左側に位置する負側領域であることを特定することができる。
同様に、Y軸方向に関する検出領域としては、X軸より上側に位置する正側領域(第1の検出領域A1と第2の検出領域A2とを合併させた領域)と、X軸より下側に位置する負側領域(第3の検出領域A3と第4の検出領域A4とを合併させた領域)と、が定義されており、静電容量値Cy1add、Cy2addによって、Y軸に関する正側領域か負側領域かが特定されることになる。
例えば、(C10+C20)−(C30+C40)>0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、X軸より上側に位置する正側領域であることを特定することができる。逆に、(C10+C20)−(C30+C40)<0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、X軸より下側に位置する負側領域であることを特定することができる。
そして、領域特定部63は、X軸方向に関する領域の特定とY軸方向に関する領域の特定とを組み合わすことにより、対象物20の位置が第1の検出領域A1、第2の検出領域A2、第3の検出領域A3、第4の検出領域A4の何れであるかを特定することができ、特定した検出領域を検出結果として出力することができる。
要するに、(C10+C40)−(C20+C30)>0で、かつ(C10+C20)−(C30+C40)>0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、第1の検出領域A1と第4の検出領域A4とを合併させた領域と、第1の検出領域A1と第2の検出領域A2とを合併させた領域とで重なる領域である、第1の検出領域A1となる。
同様に、(C10+C40)−(C20+C30)>0で、かつ(C10+C20)−(C30+C40)<0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、第1の検出領域A1と第4の検出領域A4とを合併させた領域と、第3の検出領域A3と第4の検出領域A4とを合併させた領域とで重なる領域である、第4の検出領域A4となる。
また、(C10+C40)−(C20+C30)<0で、かつ(C10+C20)−(C30+C40)>0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、第2の検出領域A2と第3の検出領域A3とを合併させた領域と、第1の検出領域A1と第2の検出領域A2とを合併させた領域とで重なる領域である、第2の検出領域A2となる。
また、(C10+C40)−(C20+C30)<0で、かつ(C10+C20)−(C30+C40)<0である場合には、対象物20が近傍に存在する領域は、第2の検出領域A2と第3の検出領域A3とを合併させた領域と、第3の検出領域A3と第4の検出領域A4とを合併させた領域とで重なる領域である、第3の検出領域A3となる。
もちろん、§2−3で述べた実施例のように、演算実行部62において、静電容量値の差とともに和(「Cx1add+Cx2add=(C10+C40)+(C20+C30)」、「Cy1add+Cy2add=(C10+C20)+(C30+C40)」)を演算するようにし、X軸方向に関する位置検出を、差Cxdiff’としきい値+Cxth、−Cxthとの比較、および、和Cx1add+Cx2addとしきい値Cxth2との比較によって行うようにし、Y軸方向に関する位置検出を、差Cydiff’としきい値+Cyth、−Cythとの比較、および、和Cy1add+Cy2addとしきい値Cyth2との比較によって行うようにすることもできる。そうすれば、検出領域A1、A2、A3、A4に加えて、「X軸近傍領域」、「Y軸近傍領域」(§2−3で述べた実施例における領域「Acenter」に対応)や、「圏外」といった領域を更に追加することができる。
この二次元センサに用いる基本構造部2の構成を一般論として述べれば、検出面上にいて、内側電極E0と外側電極E10と外側電極E20と外側電極E30と外側電極E40とが、互いに絶縁された状態で配置されるようにすればよい。図23に示す例の場合、各電極E0、E10〜E40は、いずれも支持体30の上面に形成されているが、互いに離間していることにより互いに絶縁されている。
そして、X軸方向において、内側電極E0の両側に、外側電極E10〜E40の第1線状部分Eaを配置して、内側電極E0と外側電極E10〜E40とによって構成された容量素子C10〜C40によってX軸方向に関する位置を特定する。Y軸方向において、内側電極E0の両側に、外側電極E10〜E40の第2線状部分Ecを配置して、内側電極E0と外側電極E10〜E40とによって構成された容量素子C10〜C40によってY軸方向に関する位置を特定する。このようにすれば、対象物20に関する二次元的な位置を特定できるようになる。
第3の実施の形態の特徴は、上述したように、対象物20に関する二次元的な位置を検出できることである。そして、内側電極E0と、外側電極E10〜E40が、支持体30の上面に形成されている。このことにより、各容量素子の静電容量値に指向性が生じることを抑制できる。
すなわち、図17に示す比較例について説明したように、図17に示す基本構造部2を有する物体センサ1では、測定される容量素子Cx5、Cx6、Cy5、Cy6に指向性が発生し得る。これは、X軸方向に関する位置を特定する容量素子を構成する線状電極Ex5、Ex6、Ex7と、Y軸方向に関する位置を特定する容量素子を構成する線状電極Ey5、Ey6、Ey7とが、立体的に交差していることに起因すると考えられる。
これに対して、本発明の第3の実施の形態によれば、外側電極E10〜E40が、支持体30の上面に形成されて、互いに離間して絶縁されている。このことにより、電極E0、E10〜E40が、立体的に交差することを回避できる。このため、容量素子C10〜C40の静電容量値に、指向性が発生することを防止でき、静電容量値の検出精度を向上させることができる。
また、本発明の第3の実施の形態によれば、内側電極E0のY軸方向における長さLEy0が、外側電極E10〜E40のY軸方向における長さLEy1よりも短くなっている。このため、容量素子C10〜C40の静電容量値に指向性が発生することをより一層防止できる。同様に、内側電極E0のX軸方向における長さLEx0が、外側電極E10〜E40のX軸方向における長さLEx1よりも短くなっている。このため、容量素子C10〜C40の静電容量値に指向性が発生することをより一層防止できる。
なお、内側電極E0のY軸方向における長さLEy0が、外側電極E10〜E40のY軸方向における長さLEy1よりも短くなくてもよい。この場合においても、外側電極E10〜E40が、支持体30の上面に形成されていることにより、容量素子C10〜C40の静電容量値に指向性が発生することを防止でき、静電容量値の検出精度を向上させることができる。同様に、内側電極E0のX軸方向における長さLEx0が、外側電極E10〜E40のX軸方向における長さLEx1よりも短くなくてもよい。
<電極形状に関する変形例>
図23に示す形態では、内側電極E0は、円盤状に形成されている。しかしながら、内側電極E0は、必ずしもこのような形状の電極である必要はなく、任意形状の電極であってもかまわない。
図25は、本発明の第3の実施の形態に係る物体センサ1の第1の変形例を示す上面図である。この物体センサ1を構成する基本構成部は、平板状の支持体30と、その上面に形成された5つの電極E0、E10〜E40とによって構成されている。しかしながら、図23に示す基本構造部2と異なる点は、図25に示す内側電極E0が、互いに絶縁された状態で配置された4つの内側電極分割体Ei10、Ei20、Ei30、Ei40を含むように構成されている点である。
図25に示す第1の変形例では、内側電極分割体Ei10は、外側電極E10に対向しており、外側電極E10と容量素子C10を構成している。この内側電極分割体Ei10は、第1内側線状部分E01と、第2内側線状部分E02と、を含んでいる。このうち第1内側線状部分E01は、Y軸方向に沿って直線状に延びている。第2内側線状部分E02は、X軸方向に沿って直線状に延びている。第1内側線状部分E01のY軸方向における長さLEy0は、対向する外側電極E10〜E40のY軸方向における長さLEy1よりも短くなっている。また、第2内側線状部分E02のX軸方向における長さLEx0は、対向する外側電極E10〜E40のX軸方向における長さLEx1よりも短くなっている。第1内側線状部分E01と第2内側線状部分E02とは、互いに電気的に接続されている。すなわち、第1内側線状部分E01と第2内側線状部分E02とは、支持体30の上面に形成されている。そして、第1内側線状部分E01の負側端部に、第2内側線状部分E02の負側端部が接続されており、第1内側線状部分E01と第2内側線状部分E02とは、一体に連続的に形成されている。このようにして、内側電極分割体Ei10は、全体としてL字状に形成されている。
同様に、内側電極分割体Ei20は、外側電極E20に対向しており、外側電極E20と容量素子C20を構成している。この内側電極分割体Ei20も、互いに電気的に接続された第1内側線状部分E01と第2内側線状部分E02とを含んでおり、第1内側線状部分E01の負側端部に、第2内側線状部分E02の正側端部が接続されて、全体としてL字状に形成されている。
内側電極分割体Ei30は、外側電極E30に対向しており、外側電極E30と容量素子C30を構成している。この内側電極分割体Ei30も、互いに電気的に接続された第1内側線状部分E01と第2内側線状部分E02とを含んでおり、第1内側線状部分E01の正側端部に、第2内側線状部分E02の正側端部が接続されて、全体としてL字状に形成されている。
内側電極分割体Ei40は、外側電極E40に対向しており、外側電極E40と容量素子C40を構成している。この内側電極分割体Ei40も、互いに電気的に接続された第1内側線状部分E01と第2内側線状部分E02とを含んでおり、第1内側線状部分E01の正側端部に、第2内側線状部分E02の負側端部が接続されて、全体としてL字状に形成されている。
図25に示す第1の変形例では、上述のようにL字状に形成された各内側電極分割体Ei10、Ei20、Ei30、Ei40は、全体として平面視で十字状をなすように配置されている。
なお、図25に示す第1の変形例では、第1内側線状部分E01と第2内側線状部分E02とが、互いに電気的に接続されているが、これに限られることはなく、第1内側線状部分E01と第2内側線状部分E02とは、互いに絶縁されていてもよい。この場合には、図21に示す第2の実施の形態の第4の変形例と同様にして、第1内側線状部分E01と第2内側線状部分E02とを絶縁するようにしてもよい。
また、図25に示す第1の変形例では、内側電極E10が、互いに絶縁された状態で配置された4つの内側電極分割体Ei10、Ei20、Ei30、Ei40を含むように構成されているが、これに限られることはなく、内側電極E10は図20に示す第2の実施の形態の第3の変形例や、図21に示す第4の変形例と同様にしてもよい。
<電極形状に関する他の変形例>
また、図23に示す形態では、支持体30の上面に、4つの外側電極E10〜E40が形成され、これらの外側電極E10〜E40が、全体として平面視で正方形状をなすように配置されている。しかしながら、外側電極の個数は、必ずしも4つである必要はなく、任意の個数とすることができる。例えば、図26に示す第2の変形例のように、支持体30の上面に8つの外側電極が形成されて、平面視で正八角形状に配置されていてもよく、あるいは、図示しないが、16個の外側電極が形成されて、平面視で正十六角形状に配置されていてもよい。
図26に示すように、支持体30の上面に8つの外側電極E10〜E40、E50を形成する場合、外側電極E10において、第2線状部分Ecが延びる方向は、正八角形状をなすように隣接するX軸方向に対して45°の角度をなす方向に沿うようになり、角度αが、135°となる。他の外側電極E20、E30、E40も同様の形状になる。そして、原点Oを中心とする周方向において、外側電極E10と外側電極E20との間に、2つの外側電極E50が追加され、一方の外側電極E50は、Y軸より右側に位置する正側領域に配置され、他方の外側電極E50は、Y軸より左側に位置する負側領域に配置される。このうち正側領域に追加された外側電極E50は、外側電極E10を、原点Oを中心として45°回転したものと同じ形状になる。負側領域に追加された外側電極E50は、外側電極E20を、原点Oを中心として−45°回転したものと同じ形状になる(外側電極E10を原点Oを中心として90°回転したものと同じ形状でもある)。原点Oを中心とする周方向における外側電極E30と外側電極E40との間にも、同様に2つの外側電極E50が追加される。なお、図26に示す第2の変形例においては、内側電極E0の第3方向における長さLEx0’は、各外側電極E10〜E40の第2線状部分Ecが延びる方向(第2洗浄部分Ecの長手方向)における長さLEx1’よりも短くなっている。また、詳細な説明は省略するが、他の外側電極E50の各部の長さと内側電極E0の長さとの関係も、同様になっている。
そして、支持体30の検出面上には、外側電極E10〜E40、E50がそれぞれ配置されるように、8つの扇形の検出領域A’’’が定義される。各検出領域A’’’を画定する一対の境界線B1、B2、B1’、B2’は、原点Oから放射方向に延び、一の検出領域A’’’を画定する一対の境界線がなす角度は45°となる。すなわち、X軸に一致する境界線B1とY軸に一致する境界線B2とがなす角度についての二等分線が、境界線B1’、B2’としてそれぞれ追加的に定義される。このため、対象物20に関する二次元的な位置が、8つの検出領域A’’’のいずれであるかを特定することができ、対象物20の位置をより細分化して特定できるようになる。
なお、外側電極の個数は、対称性を考慮すれば4の倍数であることが好適であるが、これに限られることはなく、2以上の整数であれば、4の倍数以外の偶数であってもよく、奇数であってもよい。
<位置特定手段に関する変形例>
本発明の第3の実施の形態においても、第2の実施の形態の第1の変形例として述べたように、容量素子C10〜C40のうちの最大値をとる容量素子を判定して、対象物20が存在する検出領域を特定するようにしてもよい。例えば、領域特定部63が、容量素子C10の測定値が最大値をとると判定した場合には、容量素子C10が配置された検出領域A1(図16参照)を、近傍に対象物20が存在する用域であると特定する。
また、本発明の第3の実施の形態では、位置特定手段60は、図12、図13および図19に示す第2の実施の形態の第2の変形例で示した位置特定手段60のように構成されていてもよい。
<<< §5. 本発明の第4の実施の形態 >>>
次に、図27および図28を用いて、本発明の第4の実施の形態における物体センサについて説明する。
図27および図28に示す第4の実施の形態においては、物体センサの支持体が、絶縁体を介して被取付体の表面に設けられている点が主に異なり、他の構成は、図1〜図13に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図27および図28において、図1〜図13に示す第1の実施の形態と同一部分には、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図27は、本発明の第4の実施の形態に係る物体センサ1を構成する基本構造部2の上面図である。この物体センサ1の基本構造部2は、内側電極E0がY軸方向に沿って直線状に延びるように形成されている点で、図5等に示す第1の実施の形態における物体センサ1を構成する基本構造部2とは異なっているが、その他の点では、第1の実施の形態と略同一である。また、第4の実施の形態における物体センサ1の位置特定手段60は、後述する警告信号発生部82を有している点以外では、第1の実施の形態における物体センサ1の位置特定手段60と同様である。
図28に示すように、第4の実施の形態における物体センサ1は、被取付体80上に、絶縁体81を介して取り付けられている。すなわち、被取付体80の表面に絶縁体81が設けられている。この絶縁体81上に、上述した支持体30が設けられている。この絶縁体81は、平板状に形成されており、絶縁体81上に支持体30が積層された形態をなしている。
絶縁体81は、絶縁性を有していれば、任意の材料を用いて形成することができるが、例えば、シリコンゴムによって形成することが好適である。その他にも、絶縁体81は、ガラスエポキシ基板や、セラミック基板、平板状の発泡スチロールなどによって構成してもよい。
一般に、物体センサ1が取り付けられる被取付体80は、静電容量値の測定に外乱として影響を及ぼす場合がある。とりわけ、支持体30は、厚さを薄くして(例えば1mm以下)形成する場合があり、この場合には、静電容量値の測定に対する被取付体80の影響が大きくなり、静電容量値の測定精度が低下するおそれがある。また、被取付体80が、導電性を有する場合にも、被取付体80の影響が大きくなる。
これに対して、第4の実施の形態によれば、被取付体80と支持体30との間に絶縁体81が介在される。このため、静電容量値の測定に対して被取付体80が影響を及ぼすことを抑制することができ、静電容量値の測定精度を向上させることができる。この結果、対象物20の位置の特定精度を高めることができる。
例えば、図28に示すように、外側電極E1と内側電極E0との距離をL1、外側電極E2と内側電極E0との距離をL2としたときに、支持体30の上面(電極E0、E1、E2の側の面)と、絶縁体81の底面(被取付体80の側の面)との間の距離(すなわち、支持体30と絶縁体81の合計厚さ)は、L1およびL2の小さい方の距離の0.1倍以上であることが好ましい。このことにより、支持体30と絶縁体81とによって、電極E0、E1、E2と、被取付体80との距離を増大させることができ、被取付体80が、静電容量値の測定に外乱として影響を及ぼすことを抑制できる。
また、第4の実施の形態における物体センサ1の位置特定手段60は、図27に示すように、警告信号を発生する警告信号発生部82を更に有していてもよい。この警告信号発生部82は、対象物20が存在しない状態(この物体センサ1から十分に離れている状態)において、容量値測定部61により測定された各容量素子C1、C2の静電容量値を所定の浮遊容量基準値と比較し、当該静電容量値が浮遊容量基準値よりも大きいと判定した場合には、警告信号を発生するように構成されている。浮遊容量基準値は、対象物20が存在しない状態における静電容量値を初期値として予め測定しておき、この測定された初期値に基づいて設定されることが好適である。このことにより、物体センサ1の使用中に、静電容量値の測定に対する被取付体80の影響が増大しているか否かを判定することができ、影響が増大している場合には、警告信号を発信して、異常が生じていることを報知することができる。このため、対象物20の位置の特定精度が低下した状態で放置されることを防止できる。
なお、絶縁体81の形状は、平板状であることに限られない。例えば、複数の絶縁体81を支持体30の底面に取り付けて、脚として機能させてもよい。この場合においても、支持体30と被取付体80との間には空間が形成され、電極E0、E1、E2と、被取付体80との距離を増大させることができる。このため、静電容量値の測定に対して被取付体80が影響を及ぼすことを抑制することができる。
本発明は上記実施の形態および変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。実施の形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態および変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。