JP2018184963A - 燃料噴射装置の駆動装置 - Google Patents

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【課題】駆動装置の計算負荷や圧力センサに必要な性能を抑制しつつ、各気筒の燃料噴射装置の噴射量ばらつきを検知し、噴射量ばらつきを補正することにある。【解決手段】燃料流路の開閉を行う複数の燃料噴射装置のそれぞれのソレノイドに対して設定された通電時間、電流を流し通電電流に達するようにすることで可動弁を駆動させ所定量の燃料が噴射されるように制御する燃料噴射装置の駆動装置において、前記複数の燃料噴射装置の上流側の燃料配管に取り付けられた圧力センサからの圧力検出値に基づいて、前記設定された通電時間、又は通電電流を補正することを特徴とする。【選択図】図10

Description

本発明は、内燃機関の燃料噴射装置を駆動する駆動装置に関する。
近年、炭酸ガスの排出規制の強化や、化石燃料枯渇の懸念から、内燃機関における燃費(燃料消費率)の向上が求められている。このため、内燃機関の各種の損失を低減することで、燃費の向上を図る努力が行われている。一般に、損失を低減すると、機関の運転に必要な出力を小さくすることができるため、内燃機関の最低出力を小さくすることができる。このような内燃機関においては、最低出力に対応した少ない燃料量まで制御して供給する必要が生じる。
また、近年では、排気量を減らして小型化するとともに、過給器によって出力を得るダウンサイジングエンジンが注目されている。ダウンサイジングエンジンでは、排気量を減らすことで、ポンピングロスやフリクションを低減することができるため、燃費を向上できる。一方で、過給器を用いることで十分な出力を得ると共に、筒内直接噴射を行うことによる吸気冷却効果により、過給に伴う圧縮比の低下を抑制して、燃費を向上することができる。特に、このダウンサイジングエンジンに用いる燃料噴射装置では、低排気量化による最低出力に対応した最小噴射量から、過給によって得る最高出力に対応した最大噴射量までの広範囲に亘って燃料を噴射できる必要があり、噴射量の制御範囲の拡大が求められる。
また、排気規制の強化に伴い、エンジンでは、モード走行時の未燃焼粒子(PM:Particulate Matter)の総量とその個数である未燃焼粒子数(PN:Particulate Number)の抑制が求められており、微少量の噴射量を制御できる燃料噴射装置が求められる。未燃焼粒子発生を抑制するための手段として、1燃焼行程中の噴霧を複数回に分割して噴射する(以降、分割噴射と称する)ことが有効である。分割噴射を行うことで、燃料のピストンおよびシリンダ壁面への付着を抑制できるため、噴射した燃料が気化し易くなり、未燃焼粒子の総量とその個数である未燃焼粒子数を抑制することが可能となる。分割噴射を行うエンジンでは、これまで1回で噴射していた燃料を複数回に分割して噴射する必要があるため、燃料噴射装置では、従来に比べて微少な噴射量を制御できる必要がある。
一般に、燃料噴射装置の噴射量は、エンジンコントロールユニット(ECU)より出力される噴射パルスのパルス幅によって制御する。噴射パルス幅を長くすると噴射量が大きく、噴射パルス幅を短くすると噴射量が小さくなり、その関係は略線形的である。しかしながら、噴射パルス幅を短くすると、可動子と固定コアが衝突しない、すなわち弁体が最大開度に到達しない中間開度の領域となる。この中間開度の領域では、各気筒の燃料噴射装置に同じ噴射パルスを供給しても、燃料噴射装置の寸法公差や経年劣化等の影響により生じる個体差によって、燃料噴射装置の弁体の変位量が大きく異なるため、噴射量の個体ばらつきが生じる。また、弁体の変位量が同等で有った場合でも、燃料を噴射している噴孔の噴孔径等の寸法公差の影響により、噴射量の個体ばらつきが生じる。中間開度の領域では要求噴射量が小さいため、噴射量の個体ばらつきが混合気の均質度に与える影響がより顕著になり、燃焼の安定性の観点から中間開度の領域を使用することは困難であった。
また、最小噴射量を大幅に低減するためには、噴射パルスが小さく、弁体が最大開度に到達しない中間開度の領域での噴射量ばらつきを抑制し、噴射量を正確に制御することが求められる。
中間開度での噴射量ばらつきを低減するためには、噴射パルスを停止してから可動子が閉弁位置に到達するまでの時間の個体差など、燃料噴射装置の寸法公差によって生じる噴射量のばらつきを各気筒の燃料噴射装置ごとに検知し、個体ごとに噴射量を補正できる技術が必要である。噴射量ばらつきの主要因である燃料噴射装置の弁体の動作タイミングを検出する手段として、特許文献1に開示されている方法がある。特許文献1では、コイルの電圧に生じる誘導起電圧と、参照電圧カーブを比較することにより、弁体の閉弁完了タイミングを検知し、その検知情報に基づいて噴射弁の閉弁時間を決定する方法が開示されている。
また、燃料噴射装置の噴孔径の寸法公差や、経年劣化等の影響により、燃料を噴射する噴孔にデボジットが付着し、噴射量が変化する場合がある。デポジットの生成要因としては、燃焼によって生じたすす(Soot)が噴孔内に入る場合や、燃料が噴孔周辺に堆積してデポジットとなる場合がある。この場合、各気筒の燃料噴射装置の弁体の時系列プロファイル、すなわち閉弁完了タイミングが同じ場合であっても噴射量ばらつきが生じる。例えば、特許文献2記載のように、コモンレールに対して噴射孔に近い側に配置された圧力センサを用いて、ECUで圧力センサの時系列プロファイルを検出することで、燃料噴射に伴い生じる変動波形を検出し、その検出波形に基づいて噴射量を推定する方法が開示されている。
WO2011/151128 特開2011−7203号公報
燃料噴射装置は、ソレノイド(コイル)に駆動電流を供給および停止することで、弁体を開・閉動作させるが、駆動電流を供給開始してから弁体が最大開度に到達するまでには時間遅れがあり、最大開度に到達してから弁体が閉弁動作を行う条件で噴射量を制御すると、制御できる最小噴射量に制約が生じる。したがって、微少な噴射量を制御するためには、弁体が最大開度に到達しない中間開度の条件での噴射量を正確に制御できる必要がある。しかしながら、中間開度の状態では、弁体の動きが物理的なストッパに規制されない不確実な動作であるため、燃料噴射装置を駆動するための噴射パルスをONにするタイミングを起点として弁体が閉弁するタイミングの時間から弁体が開弁を開始するタイミングの時間を引いた弁体が開弁している噴射期間が各気筒の燃料噴射装置ごとにばらつきを有する。
また、燃料噴射装置から噴射される流量は、噴孔の総断面積と、弁体が開弁している噴射期間の弁体変位量の積分面積で決まる。このため、各気筒の燃料噴射装置の噴射量ばらつきを低減するためには、弁体が変位している噴射期間を各気筒の燃料噴射装置ごとに一致させ、さらに噴孔の総断面積の個体ばらつきや耐久劣化に伴う噴射量ばらつきを補正する必要がある。
噴孔径の個体差に伴う噴射量ばらつきを補正する手段としては、特許文献2記載の燃料噴射状態検出装置には、各気筒の燃料噴射装置に燃料圧力を検出するための圧力センサを取りつけて、燃料噴射に伴う圧力降下を検出し、その検出値の時系列データを用いて噴射量を推定する方法が開示されている。しかしながら、圧力センサのみで噴射量ばらつきを推定するためには、応答性が高い圧力センサを用いて、圧力センサからの出力値を高い時間分解能で駆動装置に取り込む必要がある。このため、圧力センサのコスト上昇と駆動装置の計算負荷の抑制が課題であった。
本発明の目的は、駆動装置の計算負荷や圧力センサに必要な性能を抑制しつつ、各気筒の燃料噴射装置の噴射量ばらつきを検知し、噴射量ばらつきを補正することにある。
上記課題を解決するため本発明は、燃料流路の開閉を行う複数の燃料噴射装置のそれぞれのソレノイドに対して設定された通電時間、電流を流し通電電流に達するようにすることで可動弁を駆動させ所定量の燃料が噴射されるように制御する燃料噴射装置の駆動装置において、前記複数の燃料噴射装置の上流側の燃料配管に又は前記複数の燃料噴射装置の何れかに取り付けられた圧力センサからの圧力検出値に基づいて、前記設定された通電時間、又は通電電流を補正することを特徴とする。
本発明によれば、駆動装置の負荷を抑制しつつ各気筒の燃料噴射装置の噴射量ばらつきを推定でき、制御可能な最小噴射量を低減できる駆動装置を提供することができる。
上記した以外の本発明の構成、作用、効果については以下の実施例において詳細に説明する。
実施例1から4に記載した燃料噴射装置、圧力センサ、駆動装置とECU(エンジンコントロールユニット)を筒内直接噴射式エンジンに搭載した場合の概略図である。 本発明の第一から第四実施例における燃料噴射装置の縦断面図と、この燃料噴射装置に接続される駆動回路及びエンジンコントロールユニット(ECU)の構成を示す図である。 本発明の第一から第四実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の断面拡大図を示した図である。 燃料噴射装置を駆動する一般的な噴射パルス、燃料噴射装置に供給する駆動電圧と駆動電流のタイミング、弁体変位量と時間の関係を示した図である。 図4におけるECUから出力される噴射パルス幅Tiと燃料噴射量の関係を示した図である。 噴射量特性に個体ばらつきがある一般的な燃料噴射装置の噴射パルス幅Tiと燃料噴射量の関係を示した図である。 図6における各点601、602、603、631、632での弁挙動を示した図である。 本発明の第一から第四実施例における燃料噴射装置の駆動装置およびECU(エンジンコントロールユニット)の詳細を示した図である。 実施例1における中間開度、同じ噴射パルス幅を与える条件において、弁体の軌跡が異なる3つの燃料噴射装置の個体の弁体の変位量、圧力センサで検出した圧力と時間の関係を示した図である。 本発明の実施例1および2における噴射量ばらつき補正部が備える噴射量の補正方法のフローチャートを示した図である。 本発明の第2実施例における弁体の開弁開始タイミングを各燃料噴射装置の個体ごとに揃えた場合の噴射パルス、弁体変位量、圧力と時間の関係を示した図である。 本発明の第2、第3実施例における寸法公差の変動の影響によって弁体挙動が変動している3つの燃料噴射装置のソレノイドの端子間電圧、駆動電流、電流1階微分値、電流2階微分値、弁体214の変位量と時間の関係を示した図である。 本発明の2、第3実施例における寸法公差の変動の影響によって弁体挙動が変動している3つの燃料噴射装置の駆動電流、弁体変位量、端子間電圧、端子間電圧の2階微分値と時間の関係を示した図である。 本発明の第2、第3実施例における閉弁完了タイミングの検知原理である噴射パルス停止後の可動子と固定コアとの間の変位と可動子を通過する磁束と、電圧の対応関係を示した表である。 本発明の第2実施例における噴射パルスTiを用いて各個体の開弁開始タイミングを揃えた場合の噴射パルス、弁体変位量、圧力と時間の関係を示した図である。 本発明の第3実施例における弁体の噴射期間を燃料噴射装置の各個体ごとに揃えた場合の噴射パルス、駆動電流、弁体変位量、圧力センサで検出した圧力と時間の関係を示した図である。 本発明の第3実施例における燃料噴射装置の各個体の噴射期間と噴射量の関係を示した図である。
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。
まず、図1〜図7を用いて、本発明に係る燃料噴射装置と圧力センサと駆動装置とで構成される燃料噴射システムについて説明する。
最初に、図1を用いて、燃料噴射システムの構成について説明する。燃料噴射装置101A乃至101Dはその噴射孔からの燃料噴霧が燃焼室107に直接噴射されるように各気筒に設置されている。燃料は燃料ポンプ106によって昇圧されて燃料配管105に送出され、燃料噴射装置101A乃至101Dに配送される。燃料圧力は燃料ポンプ106によって吐出された燃料の流量と、エンジンの各気筒に供えられた燃料噴射装置によって各燃焼室内に噴射された燃料の噴射量のバランスによって変動するが、圧力センサ102による情報に基づいて所定の圧力を目標値として、燃料ポンプ106からの吐出量が制御されるようになっている。
燃料噴射装置101A乃至101Dの燃料の噴射はエンジンコントロールユニット(ECU)104から送出される噴射パルス幅によって制御されており、この噴射パルスは燃料噴射装置の駆動回路103に入力され、駆動回路103はECU104からの指令に基づいて駆動電流波形を決定し、前記噴射パルスに基づく時間だけ燃料噴射装置101A乃至101Dに前記駆動電流波形を供給するようになっている。なお、駆動回路103は、ECU104と一体の部品や基板として実装されている場合もある。駆動回路104とECU104が一体となった装置を駆動装置150と称する。
次に、燃料噴射装置及びその駆動装置の構成と基本的な動作を説明する。図2は、燃料噴射装置の縦断面図とその燃料噴射装置を駆動するための駆動回路103、ECU104の構成の一例を示す図である。なお、図2において、図1と同等の部品には同じ記号を用いる。ECU104では、エンジンの状態を示す信号を各種センサから取り込み、内燃機関の運転条件に応じて燃料噴射装置から噴射する噴射量を制御するための噴射パルスの幅や噴射タイミングの演算を行う。また、ECU104には、各種センサからの信号を取り込むためのA/D変換器とI/Oポートが備えられている。ECU104より出力された噴射パルスは、信号線110を通して燃料噴射装置の駆動回路103に入力される。駆動回路103は、ソレノイド205に印加する電圧を制御し、電流を供給する。ECU104は、通信ライン111を通して、駆動回路103と通信を行っており、燃料噴射装置に供給する燃料の圧力や運転条件によって駆動回路103によって生成する駆動電流を切替えることや、電流および時間の設定値を変更することが可能である。
次に、図2の燃料噴射装置の縦断面と図3の可動子202および弁体214の近傍を拡大した断面図を用いて、燃料噴射装置の構成と動作について説明する。なお、図3において図2と同等の部品には同じ記号を用いる。図2および図3に示した燃料噴射装置は通常時閉型の電磁弁(電磁式燃料噴射装置)であり、ソレノイド205に通電されていない状態では、第1のばねであるスプリング210によって弁体214が閉弁方向に付勢され、弁体214は弁座218に密着して閉弁状態となっている。閉弁状態においては、可動子202には、開弁方向にかかる第2のばねの戻しばね212による力が作用する。このとき、弁体214に作用するスプリング210による力のほうが、戻しばね212による力に比べて大きいため、可動子202の端面302が弁体214に接触し、可動子202は静止している。また、弁体214と可動子202とは相対変位可能に構成されており、ノズルホルダ201に内包されている。また、ノズルホルダ201は、戻しばね212のばね座となる端面303を有している。スプリング210による力は、固定コア207の内径に固定されるバネ押さえ224の押し込み量によって組み立て時に調整されている。
また、燃料噴射装置は、固定コア207、可動子202、ノズルホルダ201、ハウシング203とで磁気回路を構成しており、可動子202と固定コア207との間に空隙を有している。ノズルホルダ201の可動子202と固定コア207との間の空隙に対応する部分には磁気絞り211が形成されている。ソレノイド205はボビン204に巻き付けられた状態でノズルホルダ201の外周側に取り付けられている。弁体214の弁座218側の先端部の近傍にはロッドガイド215がノズルホルダ201に固定されるようにして設けられている。弁体214は弁体214のばね台座207とロッドガイド215との2つの摺動箇所により、弁軸方向の動きをガイドされている。ノズルホルダ201の先端部には、弁座218と燃料噴射孔219とが形成されたオリフィスカップ216が固定され、可動子202と弁体214との間に設けられた内部空間(燃料通路)を外部から封止している。
燃料噴射装置に供給される燃料は、燃料噴射装置の上流に設けられたレール配管105から供給され、第一の燃料通路孔231を通って弁体214の先端まで流れ、弁体214の弁座218側の端部に形成されたシート部と弁座218とで燃料をシールしている。閉弁時には、燃料圧力によって弁体214の上部と下部の差圧が生じ、燃料圧力と弁座位置におけるシート内径の受圧面積とを乗じて求まる差圧力およびスプリング210の荷重によって弁体114が閉弁方向に押されている。閉弁状態からソレノイド205に電流が供給されると、磁気回路に磁界が生じ、固定コア207と可動子202との間に磁束が通過して、可動子202に磁気吸引力が作用する。可動子202に作用する磁気吸引力が、差圧力とセットスプリング210による荷重を越えるタイミングで、可動子202は、固定コア207の方向に変位を開始する。
弁体214が開弁動作を開始した後、可動子202は固定コア207の位置まで移動し、可動子202が固定コア207に衝突する。この可動子202が固定コア207に衝突した後には、可動子202は固定コア207からの反力を受けて跳ね返る動作をするが、可動子202に作用する磁気吸引力によって可動子202は固定コア207に吸引され、やがて停止する。このとき、可動子202には戻しばね212によって固定コア207の方向に力が作用しているため、跳ね返りが収束するまでの時間を短縮できる。跳ね返り動作が小さいことで、可動子202と固定コア207の間のギャップが大きくなってしまう時間が短くなり、より小さい噴射パルス幅に対しても安定した動作が行えるようになる。
このようにして開弁動作を終えた可動子202および弁体202は、開弁状態で静止する。開弁状態では、弁体202と弁座218の間には隙間が生じており、噴孔219より燃料が噴射されている。燃料は固定コア207に設けられた中心孔と、可動子202に設けられた下部燃料通路孔305を通過して下流方向へ流れるようになっている。
ソレノイド205への通電が断たれると、磁気回路中に生じていた磁束が消滅し、磁気吸引力も消滅する。可動子202に作用する磁気吸引力が消滅することによって、可動子202および弁体214はスプリング210の荷重と、差圧力によって、弁座218に接触する閉弁位置に押し戻される。
また、弁体214が開弁状態から閉弁する際に、弁体214が弁座218と接触した後、可動子202が弁体214、可動子202から分離して閉弁方向に移動して、一定時間運動した後に、戻しばね212によって、閉弁状態の初期位置まで戻される。弁体214が開弁完了する瞬間に可動子202が、弁体214から離間することで、弁体214が弁座218と衝突する瞬間の可動部材の質量を可動子202の質量分だけ低減することができるため、弁座218と衝突する際の衝突エネルギーを小さくすことができ、弁体214が弁座218に衝突することによって生じる弁体214のバウンドを抑制できる。
本実施例の燃料噴射装置では、弁体214と可動子202とは、開弁時に可動子202が固定コア207と衝突した瞬間と、閉弁時に弁体214が弁座218と衝突した瞬間の短い時間、相対的な変位を生じることにより、可動子202の固定コア207に対するバウンドや弁体214の弁座218に対するバウンドを抑制する効果を奏する。
次に、本発明におけるECU104から出力される噴射パルスと燃料噴射装置のソレノイド205の端子両端の駆動電圧と、駆動電流(励磁電流)と燃料噴射装置の弁体214の変位量(弁体挙動)との関係(図4)、及び噴射パルスと燃料噴射量との関係(図5)について説明する。
駆動回路103に噴射パルスが入力されると、駆動回路103はバッテリ電圧よりも高い電圧に昇圧された高電圧源からソレノイド205に高電圧401を印加し、ソレノイド205に電流の供給が開始される。電流値が予めECU104に定められたピーク電流値Ipeakに到達すると、高電圧401の印加を停止する。その後、印加する電圧値を0V以下にし、電流402のように電流値を低下させる。電流値が所定の電流値404より小さくなると、駆動回路103はバッテリ電圧VBの印加をスイッチングによって行い、所定の電流403が保たれるように制御する。
このような供給電流のプロファイルにより、燃料噴射装置は駆動される。高電圧401の印加からピーク電流値Ipeakに達するまでの間に、可動子202および弁体214がタイミングt41で変位を開始し、その後、可動子202および弁体214が最大開度に到達する。可動子202が最大開度に到達したタイミングで、可動子202が固定コア207に衝突し、可動子202が個体コア207との間でバウンド動作を行う。弁体214は可動子202に対して相対変位可能に構成されているため、弁体214は可動子202から離間し、弁体214の変位は、最大開度を越えてオーバーシュートする。その後、保持電流403によって生成される磁気吸引力と戻しばね212の開弁方向の力によって、可動子202は、所定の最大開度の位置に静止し、また、弁体214は可動子202に着座して最大開度の位置で静止し、開弁状態となる。
弁体214と可動子202が一体となっている可動弁を持つ燃料噴射装置の場合、弁体214の変位量は、最大開度よりも大きくならず、最大開度に到達後の可動子202と弁体214の変位量は同等となる。
次に、図5を用いて噴射パルス幅Tiと燃料噴射量との関係について説明する。噴射パルス幅Tiが一定の時間に達しない条件では、可動子202に作用する磁気吸引力と戻しばね212の合力である開弁方向の力が、弁体214に作用するセットスプリング210と燃料圧力による力の合力である閉弁方向の力を上回らないため、弁体214は開弁せず、燃料は噴射されない。噴射パルス幅Tiが短い、例えば501のような条件では、弁体214は弁座218から離間し、変位を開始するが、弁体214が最大開度に達する前に閉弁を開始するため、直線領域520から外挿される一点鎖線530に対して噴射量は少なくなる。
また、点502の噴射パルス幅では、最大開度に達する直前で閉弁を開始し、弁体214の時間プロファイルの軌跡が放物運動となる。この条件においては、弁体214が有する開弁方向の運動エネルギーが大きく、また、可動子202に作用する磁気吸引力が大きいため、閉弁に要する時間の割合が大きくなり、一点鎖線530に対して噴射量が多くなる。点503の噴射パルス幅では、最大開度に到達後の可動子202のバウンド量が最大となるタイミングで閉弁を開始する。
このとき、可動子202と固定コア207が衝突する際の反発力が可動子202に働くため、噴射パルスをOFFしてから弁体214が閉弁するまでの閉弁遅れ時間が小さくなり、噴射量は一点鎖線530に対して少なくなる。点504の噴射パルス幅では、可動子202および弁体214のバウンドが収束した直後のタイミングt44に閉弁を開始する。噴射パルス幅Tiが点504より大きい条件では、噴射パルス幅Tiの増加に応じて、閉弁遅れ時間が略線形的に増加するため、燃料の噴射量が線形的に増加する。燃料の噴射が開始されてから、点504で示すパルス幅Tiまでの領域では、弁体214が最大開度に到達しないかもしくは、弁体214が最大開度に到達したとしても弁体214のバウンドが安定しないため、噴射量が変動し易い。
制御可能な最小噴射量を大幅に小さくするためには、点502での噴射パルス幅Tiより小さい、弁体214が最大開度に到達しない中間開度での噴射量ばらつきを抑制する必要がある。図4で説明したような一般的な駆電流波形では、可動子202と固定コア207の衝突によって発生する弁体214のバウンドが大きく、弁体214のバウンド途中で閉弁を開始することにより、点504までの短い噴射パルス幅Tiの領域に非線形性が発生し、この非線形性が最小噴射量悪化の原因となっている。従って、弁体214が最大開度に到達する条件での噴射量特性の非線形性を改善するためには、最大開度に到達後に生じる弁体214のバウンドを低減する必要がある。また、寸法公差に伴う弁体214の挙動の変動があるため、燃料噴射装置ごとに可動子202と固定コア207が接触するタイミングが異なり、可動子202と固定コア207の衝突速度にばらつきが生じるため、弁体114のバウンドは燃料噴射装置の個体ごとにばらつき、噴射量の個体ばらつきが大きくなる。
次に、図6、7を用いて、各噴射パルス幅Tiでの噴射量の個体ばらつきと弁体214の変位量の関係について説明する。図6は、噴射パルス幅Tiと燃料噴射装置の部品公差によって生じる噴射量の個体ばらつきの関係を示した図である。図7は、図6の噴射パルス幅がt61となる条件での噴射パルス幅、各燃料噴射装置の弁体214の変位量と時間の関係を示した図である。
噴射量の個体ばらつきは、燃料噴射装置の寸法公差の影響や経年劣化、燃料噴射装置に供給される燃料圧力、駆動装置のバッテリ電圧源、昇圧電圧源の電圧値の個体ばらつきによって生じるソレノイド205へ供給される電流値の変動、温度変化に伴うソレノイド205の抵抗値の変化等の環境条件の変動によって生じる。燃料噴射装置の噴孔219より噴射される燃料の噴射量は、噴孔219の直径によって決まる複数の噴孔の総断面積と、弁体214のシート部から噴孔入口までの圧力損失と、弁体214の変位量で決まる燃料シート部の弁体214と弁座218間の燃料流路の断面積の3つの因子で決まる。図6の図中には、燃料噴射装置に一定の燃料圧力を供給した場合の噴射パルス幅が小さい領域で噴射量が設計の中央値となる個体Qcに対して、噴射量が大きい個体Quと噴射量が小さい個体Qlの噴射量特性を記載する。
噴射パルス幅がt61の条件において、噴射量が設計中央値となる個体Qcの各噴射パルス幅Tiでの噴射量と弁体214の変位量の関係について説明する。噴射パルス幅Tiが小さい点601の条件では、弁体214が最大開度に到達する前に、噴射パルス幅TiをOFFにして弁体214が閉弁を開始し、弁体214の軌跡は実線705に示すように放物運動となる。次に、噴射パルス幅Tiと噴射量の関係が略線形となる直線領域から外挿される一点鎖線630より、噴射量が大きくなる点602では、点601の条件よりも弁体214の変位量は大きくなり、弁体214が最大開度に到達する直前で閉弁を開始し、点601と同様に放物運動の軌跡となる。
なお、点602では、点601と比べて、ソレノイド205への通電時間が長いため、一点鎖線703に示すように噴射パルスをOFFにしてから弁体214が閉弁するまでの閉弁遅れ時間が増加し、その結果、噴射量も増加する。次に、一点鎖線630より、噴射量が小さくなる点603では、可動子202が固定コア207と衝突した後、可動子のバウンドが最大となるタイミングで弁体214が閉弁を開始するため、弁体214の変位量は2点鎖線703に示すような軌跡となり、閉弁遅れ時間は、1点鎖線702の条件と比べて小さくなる。その結果、点602と比べて点603の噴射量が小さくなる。
また、図のt61の噴射パルス幅Tiでの各Qu、QC、Qlの点632、601、631での弁体214の時間プロファイルを706、705、704に示す。タイミングt61の噴射パルス幅701を駆動回路に入力した場合、燃料噴射装置の個体差の影響によって、噴射パルスをONにしてから弁体214が開弁を開始する開弁開始タイミングがt71、t72、t73のように変動する。各気筒の燃料噴射装置に同一の噴射パルス幅を与えた場合、開弁開始タイミングが早い個体704が、噴射パルス幅をOFFにするタイミングt74での弁体214の変位量が最も大きくなる。
噴射パルス幅をOFFにした後も、可動子202には可動子202が有する運動エネルギーと渦電流の影響による残留磁束に伴って生じる磁気吸引力によって、弁体214は変位を継続し、可動子202の運動エネルギーと磁気吸引力による開弁方向の力が、閉弁方向の力を下回ったタイミングt77で弁体214が閉弁を開始する。よって、開弁開始タイミングが遅い個体のほうが、弁体124のリフト量が大きくなり、閉弁遅れ時間が増加する。
したがって、弁体214が最大開度に到達しない中間開度では、噴射量は弁体214の開弁開始タイミングと弁体214の閉弁完了タイミングの影響を強く受ける。各気筒の燃料噴射装置の開弁開始タイミングと、閉弁完了タイミングの個体ばらつきを駆動装置で検知もしくは推定できれば、中間開度での変位の制御が可能となり、噴射量の個体ばらつきを低減して中間開度の領域でも噴射量を安定的に制御することができる。
次に、図8を用いて、本発明の第一実施例における燃料噴射装置の駆動装置の構成について説明する。図8は、燃料噴射装置の駆動回路103およびECU104の詳細を示した図である。
CPU801は例えばECU104に内蔵され、燃料噴射装置の上流の燃料配管に取り付けられた圧力センサや、エンジンシリンダへの流入空気量を測定するA/Fセンサ、エンジンシリンダから排出された排気ガスの酸素濃度を検出するための酸素センサ、クランク角センサ等のエンジンの状態を示す信号を、前述で説明した各種センサから取り込み、内燃機関の運転条件に応じて燃料噴射装置から噴射する噴射量を制御するための噴射パルスの幅や噴射タイミングの演算を行う。
また、CPU801は、内燃機関の運転条件に応じて適切な噴射パルス幅Tiのパルス幅(すなわち噴射量)や噴射タイミングの演算を行い、通信ライン804を通して燃料噴射装置の駆動IC802に噴射パルス幅Tiを出力する。その後、駆動IC802によって、スイッチング素子805、806、807の通電、非通電を切替えて燃料噴射装置840へ駆動電流を供給する。
スイッチング素子805は駆動回路に入力された電圧源VBよりも高い高電圧源と燃料噴射装置840の高電圧側の端子間に接続されている。スイッチング素子805、806、807は、例えばFETやトランジスタ等によって構成され、燃料噴射装置840への通電・非通電を切り替えることができる。高電圧源の電圧値である昇圧電圧VHは例えば60Vであり、バッテリ電圧を昇圧回路によって昇圧することで生成される。昇圧回路814は例えばDC/DCコンバータ等により構成される。また、ソレノイド205の電源側端子890とスイッチング素子805との間には、第二の電圧源から、ソレノイド205、設置電位815の方向に電流が流れるようにダイオード835が設けられており、また、ソレノイド205の電源側端子890とスイッチング素子807との間にも、バッテリ電圧源から、ソレノイド105、設置電位815の方向に電流が流れるようにダイオード811が設けられており、スイッチ素子808を通電している間は、接地電位815から、ソレノイド205、バッテリ電圧源および第二の電圧源へ向けては電流が流れられない構成となっている。また、ECU104には、噴射パルス幅の演算等のエンジンの制御に必要な数値データを記憶させるために、レジスタおよびメモリが搭載されている。レジスタおよびメモリは駆動装置150もしくは駆動装置150内のCPU801に内包されている。
また、スイッチング素子807は、低電圧源VBと燃料噴射装置の高圧端子間に接続されている。低電圧源VBは例えばバッテリ電圧であり、その電圧値は12から14V程度である。スイッチング素子806は、燃料噴射装置840の低電圧側の端子と接地電位815の間に接続されている。駆動IC802は、電流検出用の抵抗808、812、813により、燃料噴射装置840に流れている電流値を検出し、検出した電流値によって、スイッチング素子805、806、807の通電・非通電を切替え、所望の駆動電流を生成している。ダイオード809と810は、燃料噴射装置のソレノイド205に逆電圧を印加し、ソレノイド205に供給されている電流を急速に低減するために備え付けられている。CPU801は駆動IC802と通信ライン803を通して、通信を行っており、燃料噴射装置840に供給する燃料の圧力や運転条件によって駆動IC802によって生成する駆動電流を切替えることが可能である。また、抵抗808、812、813の両端は、IC802のA/D変換ポートに接続されており、抵抗808、812、813の両端にかかる電圧をIC802で検出できるように構成されている。また、燃料噴射装置840のHiサイド側(電圧側)、接地電位(GND)側にそれぞれ入力電圧および出力電圧の信号を、サージ電圧や、ノイズから保護するためのコンデンサ850、851を設け、燃料噴射装置840の下流にコンデンサ850と並列に抵抗器852および抵抗器853を設けると良い。
また、端子881と接地電位815との間の電位差VL1をCPU801または、IC802で検出できるように端子y80を設けると良い。抵抗器853に比べて抵抗器852の抵抗値を大きく設定することで、燃料噴射装置840の設地電位(GND)側端子と接地電位との間の電位差VLを分圧できる。その結果、検出する電圧VL1の電圧値を小さくでき、CPU801のA/D変換ポートの耐電圧を低減でき、ECUのコストを抑制できる。また、抵抗808の燃料噴射装置840側の端子880と接地電位815との間の電位差VL2を、CPU801または、IC802で検出すると良い。電位差VL2を検出することで、ソレノイド205に流れる電流を検出できる。
次に、図9、10を用いて実施例1における噴射量ばらつきの推定方法と噴射量ばらつき補正方法について説明する。
図9は、中間開度で弁体214が駆動され、同じ噴射パルス幅を与える条件において、弁体214の軌跡が異なる3つの燃料噴射装置の個体901、902、903の弁体214の変位量、圧力センサで検出した圧力と時間の関係を示した図である。また、弁体214の軌跡が個体903と同等であるが、個体903と比べて噴射量が大きい個体904の圧力を図中に記載する。また、圧力センサで検出した噴射前の圧力をPtaとし、Ptaとタイミングt98で検出した各個体の圧力との差分を、個体901、902、903それぞれで圧力降下ΔP91、ΔP92、圧力降下ΔP93と称する。
なお、図9に示す噴射パルスが開弁信号である。開弁信号である噴射パルスは、ECU104で生成される。噴射パルスがONとなる時間もしくはタイミングを調整することで弁体214の開弁開始タイミングを制御できる。また、燃料噴射装置に供給する燃料圧力を検出するための圧力センサ102は、レール配管105または燃料噴射装置840に取り付けられている。図9における圧力信号取得手段は、ECU104の機能の一部である。また、圧力信号取得手段は、開弁信号に基づいて所定のタイミングでの圧力センサ102から出力される圧力情報をCPU801またはIC802で取得する機能を備える。
個体902を用いて弁体214の変位量と圧力の関係について説明する。噴射パルスがOFFで弁体214が閉弁している状態では、圧力センサで検出した圧力の値は、ECUで設定した目標の燃料圧力Ptaに保持されている。噴射パルスがONになると、可動子202に磁気吸引力が作用し、磁気吸引力等の開弁方向の力が閉弁方向に作用する力を超えたタイミングt92で弁体214が開弁を開始する。弁体214が開弁開始した後、燃料噴射に伴って燃料噴射装置の内部とレール配管105内部で圧力降下が生じ、タイミングt93を超えると圧力が減少する。その後、弁体214の変位量が最大となるタイミングt97を超えた後、圧力が増加に転ずる。圧力センサで検出した圧力の時系列プロファイルは、燃料噴射装置から噴射される単位時間当たりの流量に相当し、単位時間当たりの流量の時間積分値がその個体の噴射量に相当する。
開弁信号である噴射パルスをONにしてから一定時間経過後のタイミングt98での燃料圧力は、弁体214の変位量が小さい個体903では、圧力降下ΔP93は小さく、弁体214の変位量が大きい個体901では、圧力降下ΔP91が大きくなる。これは、噴射量が弁体214の変位量に依存するためであり、噴射量が大きいほど、圧力降下が大きくなる。また、個体903と個体904を比較すると、弁体214の変位の軌跡が同等であるため、圧力が減少するタイミングt93は一致するが、個体904の方がタイミングt98での圧力降下は大きくなる。タイミングt98で検出される圧力は、弁体214の変位の個体差に起因する流量ばらつきと、噴孔径等のノズル寸法公差の個体差に起因する流量ばらつきの2つの因子を検出している。
つまり、圧力信号取得手段では、開弁信号の情報を元に所定のタイミングでの圧力を検出することで、噴射量に相当する各個体の圧力降下を検出することができる。具体的には、開弁信号である噴射パルスを用いて、その噴射パルスがONとなるタイミングを起点とし、所定のタイミングt98で個体901、個体902、個体903、個体904の圧力を検出すると良い。圧力センサ102で検出した圧力と噴射量の関係は、MAPデータまたは計算式として予め駆動装置150のレジスタに与えておくことで、各個体ごとに検出した圧力から噴射量を推定することができる。
また、圧力を検出するタイミングt98は、噴射パルスがONとなってから一定時間経過後もしくは、駆動装置150で検出しているセンサ情報を用いて設定しても良い。センサ情報とは例えば、クランク角センサで検出したクランクシャフトの角度(クランク角)である。燃料の噴射タイミング等の制御は、クランク角の検出値からピストンの速度を計算し、時間に換算して噴射タイミングや通電パルスをECUで演算している場合がある。圧力を検出するタイミングをクランク角の検出値から決定することで、クランク角の検出値から時間に換算する際の計算誤差を低減でき、圧力を検出するタイミングを正確に制御できる。
次に、図5、図10を用いて噴射量ばらつき補正部で行う噴射量補正の方法について説明する。図10は、噴射量の補正方法のフローチャートを示した図である。噴射量ばらつき補正部は、CPU801上で実行されるソフトウェアの一部である。また、噴射量ばらつき補正部は、駆動装置150で決定される目標噴射量と各気筒の燃料噴射装置の噴射量の推定値との乖離値が小さくなるように、ソレノイド205の通電時間または通電電流を燃料噴射装置の各個体ごとに調整する機能を備える。
噴射量を個体ごとに調整する手段であるソレノイド205の通電時間とは、ソレノイド205に電流が流れ出してからピーク電流Ipeakに到達するまでの時間とする。あるいは、噴射パルス幅Tiの時間、もしくは噴射パルスがONになってからピーク電流Ipeakに到達するまでの時間(以降、高電圧印加時間Tpと称する)としてもよい。また、通電電流とはピーク電流Ipeakとする。なお、図10では噴射量を個体ごとに調整する手段であるソレノイド205の通電時間に噴射パルス幅を用いる。
図10より、ECU104で決定される要求噴射量から各個体でその要求噴射量を噴射するための噴射パルス幅を決定するためには、噴射量と圧力降下ΔP、噴射パルス幅と圧力降下ΔPの関係を各個体ごとにECU104で演算できる必要がある。圧力センサを用いてECU104で検知した圧力降下ΔPと噴射量の関係を関数化して、駆動装置150のCPU801に予め設定しておくと良い。前述で説明した通り、圧力の検出値は、燃料噴射装置の噴射量と対応関係にあり、噴射量と圧力降下ΔPの関係は、例えば1次近似の関係で表すことができる。
各噴射パルス幅Tiで圧力降下ΔPを取得し、噴射パルス幅Tiと圧力降下ΔPの関係より、圧力降下の検出値から各気筒の圧力降下ΔPと噴射量の関数の係数を決定する。検知する圧力降下ΔPと噴射パルス幅Tiの関係は、例えば、1次近似の関係で表すことができ、各個体の関数の係数である傾きと切片を検知情報から算出できる。中間開度での噴射パルス幅Tiと噴射量の関係が1次近似の関数で表せる場合、射パルス幅Tiが異なる少なくとも2点以上の条件で圧力降下ΔPをECUで検知することで、近似式の係数を算出できる。
以上で説明した通り、燃料噴射装置を駆動するための開弁信号と、圧力信号取得手段と、噴射量ばらつき補正部とを備えることによって、ECU104で計算される噴射量の目標値に対して、各気筒ごとに噴射パルス幅Tiを適切に補正する。つまり、本実施例の燃料噴射装置の駆動装置は、ソレノイド205に電流を流すことにより可動弁(可動子202、弁体214)を駆動させ燃料流路の開閉を行う複数の燃料噴射装置(101A乃至101D)のそれぞれのソレノイド205に対して設定された通電時間、電流を流し通電電流(ピーク電流Ipeak)に達するようにすることで所定量の燃料が噴射されるように制御するものである。そして、複数の燃料噴射装置(101A乃至101D)の上流側の燃料配管(レール配管105)に取り付けられた圧力センサ102からの圧力検出値に基づいて、上記の設定された通電時間、又は通電電流(ピーク電流Ipeak)を補正する。
より具体的には、それぞれの燃料噴射装置(101A乃至101D)が燃料を噴射した際の圧力センサ102の電圧降下分が大きいほど、その燃料噴射装置の噴霧量が大きいことが推定されるため、当該燃料噴射装置に対して設定された通電時間、又は通電電流(ピーク電流Ipeak)は短くなるように補正される。
これにより、中間開度での噴射量を補正することができ、精密かつ微少な噴射量制御が可能となる。また、圧力の時系列プロファイルをECU104で検出する場合に比べて、噴射量の補正に必要な圧力の検出頻度、圧力センサの応答性およびECU104で圧力を取り込むのに必要な時間分解を抑制することができるため、ECU104の計算負荷と圧力センサのコストを抑制できる。
つまり、燃料噴射装置の各個体ごとに噴射量と圧力降下ΔP、噴射パルス幅と圧力降下ΔPの関係式を関数化して駆動装置150のレジスタに予め設定し、その関数の係数を圧力降下の検出値から算出することで、駆動装置150で計算される要求噴射量に対して、その要求噴射量を各個体で噴射するための各個体の噴射パルス幅Tiを適切に決定できる。また、関数の係数を各個体ごとに求める方法により、MAPデータを駆動装置150のレジスタに設定する場合に比べて、レジスタに記憶させる必要があるデータ点数を抑制することができるため、駆動装置150のレジスタのメモリ容量を抑制できる効果がある。
また、中間開度での噴射量を推定する場合には、噴射量が小さい中間開度の条件で行うとよい。弁体214が最大開度に到達してから閉弁動作に移行する場合、圧力の検出値には、弁体214の開弁動作中の噴射量ばらつきとノズル寸法に起因する噴射量ばらつきの影響に加えて、最大開度の個体差に起因する噴射量ばらつきが生じる。この場合、最大開度の個体差によって、弁体214と弁座118との間のシート部燃料通路の断面積が変化し、噴射量も変化する。中間開度での弁体214の変位量の最大値は、最大開度に依存しないため、最大開度の個体差は、中間開度での噴射量ばらつきに与える影響が小さい。
また、弁体214が最大開度に到達してから閉弁動作に移行する場合、中間開度の条件と比べて噴射量が大きくなる。噴射量が大きい条件では、各気筒の燃料噴射装置の燃料噴射による圧力降下と、燃料ポンプからの高圧燃料の吐出によってレール配管105および燃料噴射装置101A乃至101D内の圧力が変動し、圧力脈動が生じる場合がある。噴射量が大きいほど圧力脈動の振幅が大きくなるため、圧力センサで検出した圧力に圧力脈動が重畳し、噴射量ばらつきの推定に誤差が生じる場合がある。中間開度の条件で噴射量を推定する場合には、圧力を検出する条件を中間開度で行うと良い。以上によって、圧力脈動が圧力の検出値に与える影響を小さくでき、噴射量の推定精度を高めることができる。
なお、噴射量ばらつきを推定するための圧力検出を行う条件では、燃料ポンプ106からレール配管105内への燃料吐出を停止すると良い。換言すると、燃料ポンプ106からレール配管105内への燃料吐出が無い状態において、噴射量ばらつきを推定するための圧力検出を行う燃料を噴射開始してから圧力を検出するタイミングまでの間に、燃料ポンプ106からレール配管105内に高圧の燃料の吐出を行うと、レール配管105内の圧力が増加するため、その影響により圧力センサで検出される圧力も増加する。各個体の噴射量ばらつきを推定する条件において、燃料ポンプからの高圧燃料の吐出を停止することで、燃料噴射に伴う圧力降下を精度よく検出できるため、噴射量の推定精度を高めることができる。
また、図1を用いて圧力センサ102の取付位置について説明する。各気筒の燃料噴射装置に対して圧力センサ102の1つのセンサを用いて噴射量を推定する場合、各気筒の燃料噴射装置の噴孔から燃圧センサまでの距離が各気筒ごとに異なる。したがって、各燃料噴射装置で噴射する噴射量が同じで圧力降下が同等であった場合であっても、圧力センサの検出値には、噴孔119と圧力センサ102までの距離の個体差の影響を受ける場合がある。この場合、噴孔119から圧力センサ102までの距離の個体差による影響は、予め圧力降下に乗じる補正値としてECUのレジスタに設定しておくと良い。以上の構成により、圧力センサ102がレール配管105の端面に取り付けられる場合で合っても噴射量の推定精度を確保することができる。
また、圧力センサ102は、燃圧ポンプ106の配管120とレール配管105との接合部121近傍に取り付けても良い。この場合、接合部121と燃料噴射装置101B、101Cの噴孔119までの距離がほぼ一定となり、また、接合部121と燃料噴射装置101A、101Dの噴孔119までの距離がほぼ一定となる。また、圧力センサ102をレール配管105の端面に設ける場合に比べて、圧力センサ102から噴孔119までの最大距離を小さくできる効果があるため、圧力降下に伴う圧力の変化を検出し易く、噴射量の推定精度を高めることができる。
また、圧力センサ102はレール配管105の両端部140と141に2つ設けてもよい。両端部140に設けられた圧力センサを第1の圧力センサ、両端部141に設けられた圧力センサを第2の圧力センサと称する。この場合、燃圧ポンプ106の配管120とレール配管105との接合部121がレール配管105の両端部140もしくは141に取付けられる場合、燃料噴射装置に供給される燃料圧力が同等の条件で、第1の圧力センサで検出した圧力と、第2の圧力センサで検出した圧力を比較参照すると良い。比較参照によって、圧力センサから各気筒の燃料噴射装置101Aから101Dの噴孔119までの距離が異なることによる圧力の検出値に与える影響を補正するためにECUのレジスタに与える補正値を正確に演算することが可能となり、圧力の検出精度を高められるため、噴射量の推定精度が向上する。
また、圧力センサ102は、燃料噴射装置101Aから101Dの上部に位置するレール配管105の取付部130、131、132、133もしくは、燃料噴射装置の各個体に設けてもよい。燃料噴射による圧力降下は、燃料を噴射する噴孔119に近い方が検出し易い。したがって、燃料噴射装置の各個体に圧力センサ102を設ける場合、圧力の検出精度を最も向上させることができるが、その一方で燃料噴射装置の構造上、圧力センサ102を設けるのに必要な取付スペースを確保するのが困難な場合がある。また、圧力センサ102を各気筒別にレール配管105の取付部130、131、132、133に設けることで、噴孔119から圧力センサまでの距離を一定に保つことができ、圧力脈動等によって各気筒の燃料噴射装置ごとに圧力の検出値に誤差が生じる影響を小さくすることができる。その結果、噴射量の推定精度を向上させることができ、精度よく噴射量を制御することが可能となる。
図9、図11、図12、図13および図14を用いて、本発明の第2実施例における噴射量ばらつきの推定方法について説明する。なお、本実施例における燃料噴射装置と圧力信号取手段および噴射量ばらつき補正部は実施例1と同等の構成とする。
図11は、本発明の第2実施例における弁体214の開弁開始タイミングを各燃料噴射装置の個体1101、1102、1103ごとに揃えた場合の噴射パルス、弁体変位量、圧力の時系列を示した図である。本第2実施例における実施例1との差異は、圧力情報信号手段で、弁体214の動作タイミングに基づいて圧力センサ102からの情報を検出する点である。
開弁完了検知手段と閉弁完了手段は、駆動回路103およびECU104のハードウェアの機能の一部とCPU801上で実行されるソフトウェアの一部である。また、開弁完了検知手段は、ソレノイド205の電流の時間変化をECU104で検出し、弁体214が最大開度に到達する開弁完了タイミングを検知する機能を備える。また、閉弁完了検知手段は、ソレノイド205の電圧を取得し、時間変化をECU104で検出し、弁体214が弁座218に到達する閉弁タイミングを検知する機能を備える。
開弁開始推定手段は、CPU801上で実行されるソフトウェアの一部である。また、開弁開始推定手段は、開弁完了検知手段もしくは閉弁完了検知手段で得られた検出値に駆動装置150のレジスタに予め与えておく補正定数を乗じることで、各個体の弁体214の開弁開始タイミングを推定する機能を備える。実施例2における圧力信号取得手段は、開弁開始推定手段で推定した開弁開始タイミングに基づいて所定のタイミングでの圧力センサ102からの情報をECU104で取得する機能を備える。
より具体的には、閉弁完了検知手段で推定した閉弁完了のタイミングで圧力センサ102により検知された圧力値から、開弁開始推定手段で推定した開弁開始タイミングで圧力センサ102により検知された圧力値との差を取ることで圧力降下分を求める。
最初に、図9、図11を用いて、各個体ごとに弁体214の開弁開始タイミングを推定し、その検知情報に基づいて燃料圧力を取得して、噴射量を推定する方法について説明する。各個体の燃料噴射に伴う圧力降下は、各個体の噴射量と対応関係にあり、噴射量は弁体214の変位量の時系列プロファイルで決まる。また、弁体214が開弁開始した後に、燃料が噴射されることで圧力降下が生じるため、圧力降下は、弁体214の開弁開始タイミングと連動している。
図9より、開弁を検知する検知手段を噴射パルス幅として、タイミングt99での圧力を検出する場合、個体902、903では圧力が最小となるタイミングを超えており、圧力が増加に転じている。一方で、個体901では圧力が最小となるタイミングを超えておらず、圧力が減少している途中にある。したがって、タイミングt99で検出した圧力は、個体902、個体903の圧力降下が個体901と比べて相対的に小さく検出されるため、検出すべき圧力降下の検出値と、実際の圧力降下の検出値とが乖離する場合がある。結果、個体901と比べて、個体902と個体903の噴射量が実噴射量よりも小さく見積もられる場合がある。
以上で説明した通り、開弁完了検知手段または閉弁完了検知手段と、開弁開始推定手段と圧力信号取得手段を備えることによって、各気筒の燃料噴射装置ごとに弁体214の開弁開始タイミングを検出でき、その開弁開始タイミングに基づいて圧力を検出するタイミングを適切に決定できる。その結果、圧力が最小となるタイミングを超えている個体と、超えていない個体が存在する場合に、圧力を検出することで生じる噴射量の推定誤差を小さくできる。その結果、噴射量を精度良く推定することが可能となる。
次に、図12、図13および図14を用いて燃料噴射装置の開弁開始タイミングを推定する2つの開弁開始推定手段について説明する。
1つ目の開弁開始推定手段は、可動子202が最大開度に到達した際の可動子202の速度または加速度の変化をソレノイド205に流れる電流の時間変化として検出し、その検出値から可動子が最大開度に到達するタイミングを検知する開弁完了検知手段を備え、開弁完了検知手段で検知した開弁完了タイミングに補正定数を乗じることで開弁開始タイミングを推定する機能を備える。
2つ目の開弁開始推定手段は、弁体214が弁座218に衝突する閉弁完了タイミングで生じる可動子202の加速度の変化をソレノイド205の電圧の時間変化として検出し、その検出値から弁体214の閉弁完了タイミングを検知する閉弁完了検知手段を備え、閉弁完了検知手段で検知した開弁完了タイミングに補正定数を乗じることで開弁開始タイミングを推定する機能を備える。
図12を用いて1つ目の開弁開始推定手段について説明する。図12は、ソレノイド205の端子間電圧Vinj、駆動電流、電流1階微分値、電流2階微分値、弁体214の変位量と噴射パルスON後の時間の関係を示した図である。なお、図12の駆動電流、電流1階微分値、電流2階微分値および弁体214の変位量には、寸法公差によって生じる可動子202と弁体214に作用する力の変動によって、弁体214の動作タイミングが異なる燃料噴射装置840の各個体3つのプロファイルを記載している。図12より、最初に、スイッチング素子805、806をONにしてソレノイド205に昇圧電圧VHを印加することで、急速に電流を増加させて、可動子202に作用する磁気吸引力を増加させる。その後、駆動電流がピーク電流Ipeakに到達すると、スイッチング素子805、806、807をOFFにし、燃料噴射装置840のインダクタンスによる逆起電力によって、設置電位815からダイオード809、燃料噴射装置840、ダイオード810、電圧源VHの経路が形成されて、電流が電圧源VH側へ帰還され、燃料噴射装置840に供給されていた電流は、電流1202のようにピーク電流値Ipeakから急速に低下する。電圧遮断期間T2が終了すると、スイッチング素子806、807をONにし、燃料噴射装置840にバッテリ電圧VBの印加を行う。電圧遮断期間T2が終了するタイミングt12dまでに、各気筒の燃料噴射装置である個体1、個体2、個体3の弁体214の開弁完了タイミングがくるように、ピーク電流Ipeak、もしくは高電圧印加時間Tpと電圧遮断期間T2を設定するとよい。バッテリ電圧VBの印加を続けて電圧値1201が供給されている条件では、ソレノイド205への印加電圧の変化が小さいため、可動子202が閉弁位置から変位を開始し、可動子202と固定コア207との間の磁気ギャップの縮小に伴う磁気抵抗の変化を誘導起電力の変化として電流で検出することができる。弁体214および可動子202が変位を開始すると、可動子202と固定コア207との間の磁気ギャップxが縮小するため、誘導起電力が大きくなり、ソレノイド205に供給される電流が1203のように緩やかに減少する。可動子202が固定コア207に到達するタイミングすなわち、弁体214が最大開度に到達した開弁完了タイミング以降は、磁気ギャップの変化が急激に小さくなるため、誘導起電力の変化も小さくなり、電流値は1204のように緩やかに増加する。誘導起電力の大きさは、磁気ギャップの他に電流値の影響を受けるが、バッテリ電圧VBのように昇圧電圧VHに比べて低い電圧が印加されている条件では、電流の変化が小さいため、ギャップが変化することによる誘導起電力の変化を電流で検出し易い。
以上で説明した燃料噴射装置840の各気筒の個体1、個体2、個体3について、弁体214が最大開度に到達したタイミングを駆動電流が減少から増加へ転ずる点として検出するために、電流の1階微分を行い、電流の1階微分値が0となるタイミングt12e、t12f、t12gを開弁完了タイミングとして検知するとよい。
また、磁気ギャップの変化によって生じる誘導起電力が小さいような駆動部および磁気回路の構成では、必ずしも磁気ギャップの変化によって、電流が減少しない場合がある。このような場合、駆動装置で検出した電流の2階微分値の最大値を検出することで、開弁完了タイミングを検知でき、磁気回路やインダクタンス、抵抗値、電流値の制約の影響が小さい条件で、安定して開弁完了タイミングを検知することが可能となる。また、磁性材のBHカーブは、磁場と磁束密度の関係が非線形となる。一般的に、低い磁界の条件では、磁場と磁束密度の傾きである透磁率が大きくなり、高い磁界の条件では、透磁率が小さくなる。そこで、開弁完了タイミングを検知する条件では、ピーク電流Ipeakに到達するまで電流を増加させ、弁体214が変位するために必要な磁気吸引力を可動子202に発生させた後、弁体214が開弁完了タイミングに達する前に駆動電流を急速に減少させる電圧遮断期間T2を設けることで、可動子202に作用する磁気吸引力を低下させると良い。燃料噴射装置840のソレノイド205に供給される駆動電流がピーク電流Ipeakのように開弁状態で弁体214を保持する電流値と比べて高い条件では、ソレノイド205に供給される電流値が大きくなり、磁束密度が飽和に近い状態となる場合がある。可動子202に開弁に必要な磁気吸引力を発生させた後、負の方向の昇圧電圧VHを電圧遮断期間T2の期間印加し、急速に電流を低下させることで、開弁完了タイミングでの駆動電流を小さくし、ピーク電流Ipeakの条件での磁界と磁束密度の傾きに比べて、磁界と磁束密度の傾きを大きくできる。この結果、開弁完了タイミングでの電流の変化が大きくなるため、開弁完了タイミングでの可動子202の加速度の変化を電圧VL2の2階微分値の最大値としてより顕著に検出し易くできる。同様に、弁体214が変位を開始して可動子202と固定コア107の磁気ギャップが縮小することによる磁気抵抗の変化を誘導起電力の変化として電流で検出し易くできる効果がある。また、電圧遮断期間T2以降に印加する電圧は0Vとしても良い。電圧遮断期間T2終了後にスイッチング素子805、807をOFFとし、スイッチング素子806をONとすることで、ソレノイド205には0Vの電圧が印加される。この場合、電圧遮断期間T2終了後の電流は緩やかに減少するが、バッテリ電圧VBを印加する条件と同じ原理で開弁完了タイミングを検知できる。また、運転中にバッテリ電圧に接続されている機器の電源をON・OFFするような場合、バッテリ電圧VBが瞬間的に変動する場合がある。このような場合、バッテリ電圧VBをCPU801またはIC802でモニタリングしておき、バッテリ電圧VBの変動が小さい条件で各気筒の燃料噴射装置の開弁完了タイミングを検知するとよい。また、電圧遮断期間T2終了後に0Vを印加する条件では、バッテリ電圧VBの変動の影響を受けないため、開弁完了タイミングを安定的に検知できる。
以上で説明した開弁完了タイミングを検知する手段を、開弁完了検知手段とし、ECU104にその機能を持たせると良い。
また、開弁開始タイミングと開弁完了タイミングは、弁体214および可動子202に作用するスプリング210による荷重と燃料圧力による力および磁気吸引力の個体差の影響を強く受ける。開弁方向に作用する磁気吸引力が、閉弁方向に作用するスプリング210による荷重と燃料圧力による力の和を超えたタイミングで弁体214が開弁を開始し、開弁を開始した後も開弁完了タイミングに至るまで各力の個体差の影響をうける。つまり、開弁開始タイミングが遅い個体は、開弁完了タイミングが遅くなり、開弁開始タイミングが早い個体は、開弁完了タイミングが早くなるため、開弁完了タイミングと開弁開始タイミングには強い相関が成り立つ。したがって、ECU104が備える開弁完了検知手段で検知した各個体の開弁完了タイミングにECU104のレジスタに予め設定しておく補正係数を乗じて、各個体の開弁開始タイミングを推定することができる。また、燃圧が増加すると、弁体214に作用する燃料圧力による力が大きくなるため、開弁開始タイミングが遅くなる。燃圧と開弁開始タイミングの関係は、予めECU104のレジスタに設定しておくことで、燃料圧力が変化した場合であっても開弁完了の検知情報から開弁開始タイミングを推定することができる。また、燃料圧力が変化したときに弁体214に作用する燃料圧力による力が個体差の影響を受ける場合、開弁完了タイミングに乗じる補正係数の値を、燃料圧力のMAPとしてECUのレジスタに設定すると良い。燃圧ごとに補正係数を変えることで、開弁開始タイミングの推定精度を向上できる。
上記で説明した開弁開始推定手段によれば、弁体214が最大開度に到達する弁動作が安定し、かつ噴射量の個体ばらつきが燃焼に寄与する混合気に与える影響が小さい条件で噴射量を推定するために必要な燃料噴射装置の各個体の開弁開始タイミングを推定できるため、燃焼安定性と噴射量の推定精度を両立することができる。
また、開弁完了タイミングの検知は、弁体214と可動子202が一体となった可動弁の構成においても、弁体214と可動子202の別体構造で説明した開弁完了タイミングの検知を同様の原理で検出することができる。
次に、図13を用いて2つ目の開弁開始推定手段について説明する。ECU104もしくは駆動回路103は、中間開度の条件で可動子202の動作に伴って生じる誘導起電圧の変化を、ソレノイド205の端子間電圧の変化として検出することで、閉弁完了タイミングを検知する閉弁完了検知手段を備え、閉弁完了検知の検知情報から開弁開始タイミングを推定する開弁開始推定手段を備える。
図13を用いて閉弁完了検知手段で行う閉弁完了タイミングを検知する原理とその検知方法について説明する。図13は、弁体214が中間開度で駆動される条件において、燃料噴射装置840の寸法公差のばらつきによって弁体214の閉弁動作が異なる3つの個体1、2、3の弁体114の変位量とソレノイド205の端子間電圧Vinjおよび端子間電圧Vinjの2階微分値の関係を示した図である。また、図14は可動子202と固定コア207間の磁気ギャップxと可動子202の固定コア207との間の吸引面を通過する磁束φおよびソレノイド205の端子電圧の対応関係を示した図である。
図13より、噴射パルス幅TiがOFFになると、可動子202に発生していた磁気吸引力が低下し、磁気吸引力が弁体214と可動子202に作用する閉弁方向の力を下回ったタイミングで可動子202とともに弁体214が閉弁を開始する。磁気回路の磁気抵抗の大きさは、各経路での磁路断面積と透磁率に反比例し、磁束が通る磁路長さに比例する。可動子202と固定コア207との間のギャップの透磁率は真空の透磁率μ0=4π×10−7[H/m]であり、磁性材の透磁率に比べて非常に小さいため、磁気抵抗が大きくなる。磁性材の透磁率μは、B=μHの関係により、磁性材の磁化曲線の特性によって決まり、磁気回路の内部磁場の大きさによって変化する。一般的に低い磁場では、低い透磁率となり、磁場の増加に伴って透磁率が増加し、ある磁場を越えた時点で透磁率が減少するプロファイルとなる。弁体214が中間開度の最大変位から閉弁を開始すると、可動子202と固定コア207の間の磁気ギャップxが大きくなり、磁気回路の磁気抵抗が増加する。その結果、磁気回路に発生可能な磁束が減少し、可動子202と固定コア207の間を通過する磁束も減少する。ソレノイド205の磁気回路内部に発生している磁束が変化すると、レンツの法則による誘導起電力が発生する。一般的に、磁気回路における誘導起電力の大きさは、磁気回路に流れる磁束の変化率(磁束の1階微分値)に比例する。ソレノイド205の巻き数をN、磁気回路に発生している磁束をφとすると、燃料噴射装置の端子間電圧Vは、式(1)に示すように、 誘導起電力の項−Ndφ/dtとオームの法則によって生じるソレノイド205の抵抗Rとソレノイド205に流れる電流iの積との和で示される。
Figure 2018184963
弁体214が弁座218と接触すると、可動子202は弁体114から離間するが、これまで弁体214を介して可動子202に作用していたスプリング210による荷重と弁体214に働く燃料圧力による力の閉弁方向の力が作用しなくなり、可動子202は、開弁方向の力であるゼロ位置ばね212の荷重を受ける。
可動子202と固定コア207の間に生じる磁気ギャップxと、吸引面を通過する磁束φの関係は、微小時間においては、1次近似の関係とみなすことができる。磁気ギャップxが大きくなると、可動子202と固定コア207の距離が大きくなり、磁気抵抗が増加して、可動子202の固定コア207側端面を通過可能な磁束が減少し、磁気吸引力も低下する。可動子202に働く吸引力は、一般的に式(2)で導出することができる。式(2)より、可動子202に働く吸引力は、可動子202の吸引面の磁束密度Bの二乗に比例し、可動子202の吸引面積Sに比例する。
Figure 2018184963
式(1)より、ソレノイド205の端子間電圧Vinjと可動子202の吸引面を通過す
る磁束φの1階微分値には対応関係がある。また、磁気ギャップxが大きくなると、可動子202と固定コア207との間の空間の面積が増加するため、磁気回路の磁気抵抗が増加し、可動子202と固定コア207の間を通過可能な磁束が減少するため、微小時間においては磁気ギャップと磁束φが1次近似の関係にあると考えることができる。磁気ギャップxが小さい条件では、可動子202と固定コア207との間の空間の面積が小さいため、磁気回路の磁気抵抗が小さく、可動子202の吸引面を通過できる磁束が増える。一方で、磁気ギャップxが大きい条件では、可動子202と固定コア207との間の空間の面積が大きいため、磁気回路の磁気抵抗が大きく、可動子202の吸引面を通過可能な磁束が減少する。また、図14より、磁束の1階微分値は、ギャップxの1階微分値と対応関係にある。さらに、端子間電圧Vinjの1階微分値は、磁束φの2階微分値と対応し、磁束φの2階微分値は、ギャップxの2階微分値すなわち可動子202の加速度に相当する。したがって、可動子202の加速度の変化を検出するためには、端子間電圧Vinjの2階微分値を検出する必要がある。
噴射パルス幅TiをOFFにすると、ソレノイド205に負の方向の昇圧電圧VHが印加され、電流は1301のように急速に減少する。タイミングt13aで電流が0Aに達すると、負の方向の昇圧電圧VHの印加が停止されるが、磁気回路に残留する磁束の影響によって端子間電圧にテール電圧1302が生じる。
また、個体1、2、3での弁体214の閉弁完了タイミングをそれぞれt13b、t13c、t13dとする。弁体214が弁座218と接触した瞬間に可動子202が弁体214から離間することで可動子202に働く力の変化を加速度の変化として、端子間電圧Vinjの2階微分値で検出できる。中間開度の動作において、噴射パルス幅Tiが停止された後、弁体214と連動して可動子202が閉弁動作を開始し、端子間電圧Vinjは負の値から緩やかに0Vに漸近していく。弁体214が閉弁後に、可動子202が弁体214から離間すると、これまで弁体214を介して可動子202に働いていた閉弁方向の力すなわちスプリング210による荷重と燃料圧力による力が作用しなくなり、可動子202には、ゼロ位置ばね212の荷重が開弁方向の力として働く。弁体214が閉弁位置に到達して可動子202に作用する力の向きが閉弁方向から開弁方向へ変化すると、これまで緩やかに増加していた端子間電圧Vinjの2階微分値が減少に転ずる。この端子間電圧Vinjの2階微分値の最大値を検出する閉弁完了検知手段をECU104もしくは駆動回路103が有することで、弁体214の閉弁完了タイミングを精度よく検出できる。また、端子間電圧Vinjの2階微分値による閉弁完了タイミングの検知方法では、物理量として可動子202の加速度の変化を検出しているため、設計値や公差の変動および電流値等の環境条件の影響を受けず、精度良く閉弁完了タイミングを検出できる。なお、図13では中間開度で弁体214が駆動される場合について説明したが、弁体214が最大開度に到達してから閉弁する場合であっても図13の方法と同様に閉弁完了タイミングを検知することができる。閉弁完了タイミングから開弁開始タイミングを推定する場合、予めエンジンの運転条件が比較的安定しているアイドルの条件等で、検知情報を取得しておくと良い。
以上で説明した開弁完了検知手段と閉弁完了検知手段と開弁開始推定手段とを備えることで、燃料噴射装置の各個体ごとに開弁開始タイミングを推定でき、その開弁開始タイミングの情報に基づいて、圧力を適切なタイミングで検出することが可能となるため、噴射量の推定精度を向上できる。
なお、噴射量ばらつき補正部で行う各気筒の燃料噴射装置の噴射量の補正については、実施例1の図10で説明した方法を用いると良い。噴射量の推定精度を向上させることで、噴射量ばらつき補正部で行う噴射量の補正を高精度に行うことができ、各個体の噴射量ばらつきを低減し、正確な噴射量制御が可能となる。
次に、図15を用いて開弁開始推定手段で推定した各個体の開弁開始タイミングと、閉弁完了検知手段で検知した開弁完了タイミングと、圧力信号取得手段と、噴射期間補正手段、と噴射量補正部の構成において噴射量ばらつきを推定する方法について説明する。図15は、噴射パルスTiを用いて各個体ごとに開弁開始タイミングを揃えた場合の噴射パルス、弁体変位量、圧力と時間の関係を示した図である。噴射期間推定手段は、CPU801上で実行されるソフトウェアの一部である。また、噴射期間推定手段は、閉弁完了検知手段と開弁完了検知手段を用いて検知または推定した噴射パルスがONとなってから閉弁完了タイミングまでの時間から噴射パルスがONとなってから開弁開始タイミングまでの時間を引いた弁体214が開弁している期間(以降、噴射期間と称する)を燃料噴射装置の各個体ごとに求める機能を有する。また、圧力信号取得手段は、噴射期間推定手段で得られた各個体の噴射期間の情報を元に圧力を取得する機能を備える。噴射量推定部は、CPU801上で実行されるソフトウェアの一部である。また、噴射量推定部は、噴射期間の情報を用いて取得した噴射期間の情報を元に各個体の噴射量を推定する機能を有する。
弁体214が開弁している噴射期間は、噴射パルスがONになってから弁体214の閉弁完了タイミングまでの時間から噴射パルスがONになってから開弁開始タイミングまでの時間を引いて求められる。圧力検出手段である圧力センサで検出した圧力の時系列プロファイルは、弁体214の変位の時系列プロファイルと対応関係にあり、弁体214の開弁開始に伴う燃料噴射によって燃料噴射装置840の内部およびレール配管105内の圧力が降下し、時間遅れを伴って燃圧の変化として現れる。したがって、弁体214の噴射期間を駆動装置150で検出できれば、噴射量を推定する圧力の検出タイミングを適切に決定できる。圧力を検知するタイミングは、開弁開始推定手段を用いて推定した開弁開始タイミングと閉弁完了手段を用いて検知した閉弁完了タイミングの情報から検出する噴射期間を用いて決定すると良い。
また、圧力を検知するタイミングは、開弁開始推定手段で検出した開弁開始タイミングを起点として、噴射期間の半分の時間とECU104のレジスタに予め設定する遅れ時間で設定すると良い。開弁開始タイミングを起点とし、時間が個体1501、個体1502、個体1503の噴射期間の半分の時間経過後のタイミングをそれぞれt15c、t15d、t15eとする。
閉弁完了手段、開弁完了検知手段、開弁開始推定手段、噴射期間推定手段および圧力信号取得手段を備えることで、各個体の開弁開始タイミングを起点として各個体の噴射期間の半分の時間が経過したタイミングt15f、t15g、t15h以降の圧力を検出できる。その結果、各個体それぞれで燃料噴射に伴って生じる圧力降下が最も大きいタイミング、すなわち圧力が最も小さくなるタイミング近傍での圧力を検出できる。また、噴射量と圧力は相関関係にあるため、噴射量が大きい条件では圧力降下が大きくなり、圧力降下が最も大きいタイミング近傍での圧力には、噴射量の個体差の影響が現れやすい。したがって、圧力降下が最も大きくなるタイミング近傍での圧力を検出することで、弁体214の変位量およびノズル寸法の個体差による噴射量ばらつきを検出し易くなる。また、噴射量推定部を備えることによって、圧力降下が最も大きくなるタイミング近傍での圧力をA/D変換器を介してECU104で検出し、その検出値に予めECU104のレジスタに与えておく補正定数を乗じることで各個体の噴射量を高精度に推定できる。
なお、噴射量ばらつき補正部で行う噴射量の補正については、実施例1の図10で説明した方法を用いると良い。噴射量を高精度に推定することで、噴射量ばらつき補正部で行う噴射量の補正を高精度に行うことができるため、各個体の噴射量ばらつきを低減し、正確な噴射量制御が可能となる。
図9、図16、図17を用いて、本発明の第3実施例における噴射量の推定方法について説明する。なお、図16における燃料噴射装置840、ECU104、駆動装置103は実施例1と同等の構成とする。また、図16における閉弁完了検知手段、開弁完了検知手段、開弁開始推定手段、噴射期間推定手段および圧力信号取得手段は、実施例2と同等の構成とする。噴射期間補正手段および噴射量ばらつき補正部は、CPU801上で実行されるソフトウェアの一部である。また、噴射期間補正手段は、噴射期間推定手段で取得した噴射期間が各個体ごとに一致するように噴射パルスTi、高電圧印加時間Tpまたは
ピーク電流IPeakの何れかを個体ごとに調整する機能を備える。噴射量ばらつき補正部は、また、噴射量ばらつき補正部は、圧力信号取得手段の検出値に基づいて各個体の噴射量ばらつきが小さくなるように噴射パルスTi、高電圧印加時間Tpまたはピーク電流IPeakの何れかを個体ごとに調整する機能を有する。
図16は、第3実施例における弁体214の開弁時間を各燃料噴射装置の個体1601、1602、1603ごとに揃えた場合の噴射パルス、駆動電流、弁体変位量、圧力センサで検出した圧力と時間の関係を示した図である。
中間開度で弁体214を駆動する条件での噴射量ばらつきは、弁体214の変位量の時系列プロファイルの個体差と、噴孔径等のノズル寸法公差に起因する個体差の2つの要因で決まる。第3実施例では、第1ステップとして、弁体214の変位量の時系列プロファイルの個体差による噴射量ばらつきを補正し、第2ステップとしてノズル寸法公差に起因する個体差によって生じる噴射量ばらつきの補正することで、各個体の噴射量ばらつきを低減する2段回補正を行う。
最初に、弁体214の変位量の時系列プロファイルの個体差によって生じる噴射量ばらつきの補正方法について説明する。弁体214の変位量の時系列プロファイルの個体差は、各個体1601、1602、1603の閉弁完了タイミングから開弁開始タイミングを減じた噴射期間のばらつきで求められる。閉弁完了タイミングは、閉弁完了検知手段で検知し、開弁開始タイミングは、閉弁完了検知手段または開弁完了検知手段から推定する。
実施例1の図9に示す通り、噴射量ばらつきを有する燃料噴射装置の各個体に同一の噴射パルス幅Tiを供給した場合、噴射量が多い個体901は噴射期間が長くなり、噴射量が小さい個体903は噴射期間が短くなる。ECUで検知した閉弁完了タイミングと、開弁開始タイミングの推定値の情報に基づいて、各個体901、902、903の噴射期間が一致するように、噴射パルス幅Ti、高電圧印加時間Tpまたはピーク電流Ipeakの何れか一方を個体ごとに調整すると良い。エンジンの高回転の条件や、1燃焼サイクル中の噴射を複数回に分割する条件では、ソレノイド205を高周波で駆動するため、ソレノイド205が発熱してソレノイド205の抵抗値が増加する場合がある。抵抗値が増加すると、ソレノイド205に流れられる電流が小さくなる。噴射期間を個体ごとに調整する手段としてピーク電流Ipeakを用いる場合、その消費電力は、ピーク電流IPeakの電流値に依存して決まるため、開弁動作時に安定した磁気吸引力を与えるには、ピーク電流IPeakを用いると良い。また、ピーク電流Ipeakの設定分解能は、電流検出用の抵抗808、813の精度で決まるため、駆動回路103で設定出来るIpeakの分解能の最小値は、駆動装置の抵抗の制約を受ける。これに対して、高電圧印加時間Tpおよび噴射パルス幅Tiでソレノイド105への通電停止タイミングを制御する場合、高電圧印加時間Tpおよび噴射パルス幅Tiの設定分解能は、駆動装置の抵抗の制約を受けず、CPU801のクロック周波数に応じて設定することができるため、ピーク電流Ipeakで設定する場合に比べて、時間分解能を小さくできる。その結果、高精度にソレノイド205の通電停止タイミングを決定することができ、各気筒の燃料噴射装置の噴射期間および噴射量の補正精度を高めることが可能となる。また、噴射期間と噴射量の関係および噴射期間と噴射パルス幅の関係を関数として予めECUのレジスタに設定しておくことで、目標の噴射量の要求値から各個体ごとに噴射期間および噴射パルス幅Tiを決定できる。
図16は、噴射パルス幅Tiを用いて、各個体1601、1602、1603の噴射期間が1605となるように個体ごとに調整し、開弁開始タイミングが各個体で一致するように噴射パルスTiがONとなるタイミングを各個体ごとに調整した場合の噴射パルス幅、駆動電流、弁体変位量と圧力の関係を示した図である。また、図17は噴射パルスTi、高電圧印加時間Tpもしくはピーク電流IPeakの何れかの手段を用いて各個体ごとに噴射期間を変化させた場合の噴射期間と噴射量の関係を示した図である。なお、図17で示す各個体は、図16と同等として同じ記号を用いる。
開弁完了検知手段と、閉弁完了検知手段と、開弁開始推定手段と、噴射期間検知手段によって、各個体の噴射期間が一致するように、噴射パルスTi、高電圧印加時間Tpもしくはピーク電流IPeakの何れかを個体ごとに調整することで、噴射期間の個体差を低減し、弁体214の変位量の個体差に起因する噴射量ばらつきを低減できる。また、噴射期間を各個体ごとに調整する手段として高電圧印加時間Tpまたはピーク電流Ipeakを用いる場合、高電圧印加時間Tp終了後およびピーク電流Ipeak到達後は、ソレノイド205に負の方向の昇圧電圧VHもしくは0Vを印加して、保持電流に移行させると良い。高電圧印加時間Tpもしくはピーク電流IPeakを用いて噴射期間を個体ごとに調整することによって、弁体214または可動子202に作用する磁気吸引力、スプリング210による荷重と燃料圧力による力等が個体ごとに変動することで生じる弁体214の変位量の個体差を低減できる。また、噴射期間を個体ごとに調整することで、弁体214または可動子202に作用する力の個体差が弁体214の変位量に与える影響を小さくすることができるため、噴射パルスがONとなるタイミングを起点としてピーク電流IPeakに到達するまでの時間または高電圧印加時間Tpの時間よりも噴射パルス幅が長い条件で各個体に同等の通電時間を設定した場合であっても噴射期間のばらつきを抑制できる。この結果、弁体214の変位量の個体差に起因する噴射量ばらつきを低減できる効果がある。
一方で、噴射期間が各個体で一致したとしても、噴孔径等のノズル寸法公差に起因する個体差を有する場合、噴射期間の個体ごとの調整では補正ができない噴射量ばらつきが残る。噴射期間を一致させた後の圧力の時系列プロファイルは、開弁開始タイミングt16aが一致しているため、圧力が減少するタイミングt16bは各個体でほぼ一致する。しかしながら、噴孔径等のノズル寸法公差に起因する噴射量ばらつきの影響により、タイミングt16b以降の圧力の時系列プロファイルは、各個体ごとにばらつきを有する。図17に示す噴射期間と噴射量の関係より、噴射期間1703が図16における噴射期間1605に対応する。噴射期間を揃えた後に残る噴射量ばらつき1703がノズル寸法公差に起因する噴射量ばらつきに相当する。
次に、第2ステップのノズル寸法公差に起因する噴射量ばらつきの補正方法について説明する。各個体で噴射期間を一致させた後、各個体ごとに圧力検出手段を用いて所定のタイミングt16fでの圧力を検出する。なお、圧力を検出するタイミングの決定方法は、図9、図11、図15で説明した方法を用いると良い。噴射期間を個体ごとに調整した条件で検出する圧力の個体差は、ノズル寸法公差に起因する噴射量の個体差を検出することに相当し、圧力と噴射量の相関が強い。したがって、噴射期間を揃えた後、所定のタイミングでの圧力を検出し、ECU104のレジスタに予め設定する補正定数を乗ずることで各個体の噴射量を高精度に推定できる。また、噴射量の推定は、噴射パルス幅が異なる2つ以上の条件で行うと良い。1つ目は、噴射期間を個体ごとに調整した条件である。また、2つ目は、噴射期間を個体ごとに調整した条件よりも噴射パルス幅が大きい条件である。噴射パルス幅が異なる2つの条件で噴射量の推定を行うことで、予めECU104のレジスタに設定しておく噴射期間と噴射量の推定値との関係式の係数を各個体ごとに求めることができる。この結果、噴射パルスTiが変化して各個体ごとに噴射期間が変化する場合であっても噴射量を精度よく推定することができる。
次に、噴射量ばらつき補正部で行う噴射量の補正方法について説明する。各個体ごとに噴射期間を揃えた後、各個体ごとの圧力もしくは噴射量の推定値が一致するように噴射パルスTi、高電圧印加時間Tpもしくはピーク電流IPeakの何れかを個体ごとに調整すると良い。閉弁完了検知手段、開弁完了検知手段、開弁開始推定手段、噴射期間推定手段、圧力信号取得手段、噴射期間推定手段、噴射期間補正手段および噴射量ばらつき補正部を備えることによって、各個体の噴射量を高精度に補正でき、正確に微少な噴射量を制御することができる。
101A、101B、101C、101D 燃料噴射装置
102 圧力センサ
103 駆動回路
104 ECU(エンジンコントロールユニット)
105 レール配管
106 燃料ポンプ
107 燃焼室
150 駆動装置
201 ノズルホルダ
202 可動子
203 ハウジング
204 ボビン
205 ソレノイド
207 固定コア
210 スプリング
211 磁気絞り
212 戻しばね
215 ロッドガイド
214 弁体
216 オリフィスカップ
218 弁座
219 燃料噴射孔
224 バネ押さえ
301 空隙
202 端面
210 接触面
840 燃料噴射装置
801 中央演算処理装置(CPU)
802 IC
830 ソレノイド
815 接地電位(GND)
841 ソレノイドの接地電位(GND)側の端子
Ti 噴射パルス幅(開弁信号時間)
p 高圧電圧印加時間(Tp)
2 電圧遮断時間(T2)
VH 昇圧電圧
VB バッテリ電圧
Peak ピーク電流
Ih 保持電流値

Claims (2)

  1. 燃料流路の開閉を行う複数の燃料噴射装置のそれぞれのソレノイドに対して設定された通電時間、又は通電電流を制御することで当該燃料噴射装置の弁体を駆動する可動子を駆動する燃料噴射装置の駆動装置において、
    前記可動子を駆動させる開弁信号がオンとなってから所定のタイミングにおいて前記複数の燃料噴射装置の上流側の燃料配管又は前記複数の燃料噴射装置のいずれかに取り付けられた圧力センサの圧力検出値と、前記開弁信号がオンとなる以前における前記圧力検出値との差分に基づいて、前記設定された通電時間、又は通電電流を補正し、
    前記所定のタイミングは、当該駆動装置で検出しているセンサ情報を用いて設定されることを特徴とする駆動装置。
  2. 請求項1に記載の駆動装置において、
    前記駆動装置検出しているセンサ情報は、クランク角センサで検出したクランク角の情報であることを特徴とする駆動装置。
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