JP2018181474A - 四重極型質量分析方法及び四重極型質量分析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】検出値に対する演算処理によって精度や分解能が高い質量値を算出する。【解決手段】スペクトル真値演算部71は、所定のm/zであるイオンについての検出器5による検出値を、マシューの安定領域図のa軸及びq軸に直交するようにイオン強度軸を定めたときの3次元的な安定領域を走査線を含みa−q平面に直交する平面で切断した断面の高さと、該イオンの真のマススペクトルとの積を質量について積分した関数で以て表現し、該関数を畳み込み定理を適用可能な形式に変形したうえで畳み込み定理を適用することで求められた、検出値、真のマススペクトル及び前記断面の高さにそれぞれ対応するフーリエ変換後の関数の関係を示す演算式を用いて、目的イオンの検出値から該目的イオンの真のスペクトルを計算する。これにより、走査線が安定領域の頂点付近を通過しない動作条件であっても、目的イオンの真のマススペクトルを精度良く求めることができる。【選択図】図1
Description
本発明は、特定の質量電荷比m/zを有するイオンを選択する四重極マスフィルタを用いた四重極型質量分析装置及び四重極型質量分析装置を用いた質量分析方法に関する。なお、ここでいう四重極型質量分析装置は、唯一の質量分離器として四重極マスフィルタを用いる一般的なシングル四重極型質量分析装置のみならず、MS/MS分析を行うために二段の四重極マスフィルタを備えた三連四重極型質量分析装置や四重極マスフィルタで選択したイオンを解離したあとに飛行時間型質量分離器で質量電荷比に応じて分離して検出するQ−TOF型質量分析装置を含むものとする。
一般的な四重極型質量分析装置では、試料から生成された各種イオンを四重極マスフィルタに導入して特定の質量電荷比を有するイオンのみを選択的に通過させ、通過したイオンを検出器で検出してイオンの量に応じた強度信号を取得する。
四重極マスフィルタは一般に、直線状であるイオン光軸を取り囲むように互いに平行に配置された4本のロッド電極から成る。そして、その4本のロッド電極に対し、直流電圧uと高周波電圧vcosωt(v:振動振幅、ω:角振動数、t:時間)を重畳した電圧を、対向する2本のロッド電極には同極性、周方向に隣接するロッド電極間では逆極性になるように印加する。その印加電圧によって4本のロッド電極で囲まれる空間には四重極電場が形成され、u、vに応じた特定の質量電荷比を有するイオンのみが適当に振動しつつ内部空間を通過し、それ以外のイオンは途中で発散してしまう。したがって、u及びvの値をそれぞれ適当に変化させることにより、四重極マスフィルタを通過するイオンの質量電荷比を走査し、その際に検出器により得られる信号に基づいてマススペクトルを作成することができる。
四重極マスフィルタを構成するロッド電極に印加される電圧によって該ロッド電極で囲まれる空間に形成される四重極電場中でのイオンの挙動やイオンが安定に通過する動作条件などについては、非特許文献1等に記載のように従来詳しく解析されている。
z軸方向に延伸するロッド電極で囲まれる空間に形成される理想的な四重極電場中を通過するイオンの運動は、マシュー(Mathiu)方程式と呼ばれる次の式で表される。
m(d2x/dt2)=−(2zex/r0 2)(u−vcosωt)
m(d2y/dt2)=+(2zey/r0 2)(u−vcosωt) …(1)
ここで、mはイオンの質量、r0はロッド電極の内接円半径、eは電荷量である。また、zはz軸上の位置、x、yはz軸に直交するx軸、y軸上の位置を示す。
m(d2x/dt2)=−(2zex/r0 2)(u−vcosωt)
m(d2y/dt2)=+(2zey/r0 2)(u−vcosωt) …(1)
ここで、mはイオンの質量、r0はロッド電極の内接円半径、eは電荷量である。また、zはz軸上の位置、x、yはz軸に直交するx軸、y軸上の位置を示す。
イオンが4本のロッド電極で囲まれる空間に収まりつつ安定して通過できる条件は、上記マシュー方程式を解くことで得られる次の二つのパラメータa、qを互いに直交する軸とした2次元空間上の領域として表すことができる。
a=4u/mr0 2 ω2
q=2v/mr0 2 ω2 …(2)
a=4u/mr0 2 ω2
q=2v/mr0 2 ω2 …(2)
図4(a)はマシュー方程式の解の安定条件を説明するためにしばしば利用される安定領域図である。図4(a)において、互いに直交するa軸、q軸により形成される2次元空間内で実線で囲まれた略三角形の領域が上記(2)式の方程式の安定解となる安定領域Rであり、その外側がイオンが発散してしまう不安定領域である。理論的には、或る質量を持つイオンについて安定領域R内に位置するように電圧等の条件を定めれば該イオンを安定的に通過させることは可能であるが、高い質量分解能を得るには安定領域Rの頂点Tに近い位置に動作条件を定めることが望ましい。そこで、四重極型質量分析装置では一般に、u/v=一定となる直線状の走査線Lを動作条件として定め、この走査線Lが頂点Tに近い安定領域Rを通過するようにu/vを決めるようにしている(特許文献1等参照)。
なお、質量分解能を上げるという観点からは走査線Lが頂点Tにできるだけ近い位置を通過する(つまりは安定領域Rを横切る走査線Lの長さができるだけ短い)ことが望ましいが、頂点Tに近いほど通過し得るイオンの量が少なくなるため感度が下がる。そのため、一般的には、質量分解能と感度との両方の兼ね合いを考えて、走査線Lが通過する位置が決められる。
図4(a)から明らかであるように、走査線Lは所定幅で安定領域Rを横切るため、質量走査中の或る時点で四重極マスフィルタを通過し得るイオンの質量電荷比は或る一つの値ではなく、原理的に走査線Lの点G1〜G2の長さに相当する所定の質量電荷比幅を有することになる。図4(c)ではこの質量電荷比幅はm1〜m2である。図4(c)中に実線で示すように、この質量電荷比幅内に二つのピークが含まれていても、或いは該図中に太点線で示すように、一つのピークのみが含まれていても、従来の四重極型質量分析装置では区別することができない。即ち、検出器で得られた検出値から求まる質量電荷比値は必ずしも実際のイオンの質量電荷比を正確に反映しているとは限らず、場合によっては、かなりの誤差が生じてしまうことになる。
オースチン(Austin WE)ほか2名、「チャプター6 ザ・マス・フィルタ:デザイン・アンド・パフォーマンス クァドルポール・マス・スペクトロメトリー・アンド・イッツ・アプリケーションズ(CHAPTER VI-THE MASS FILTER: DESIGN AND PERFORMANCE, Quadrupole Mass Spectrometry and its Applications)」、エルゼビア(Elsevier)社、1976年
従来の四重極型質量分析装置では、上述した要因による質量分解能の制約があり、質量分解能を上げるには、感度をできるだけ下げないようにしつつ安定領域Rを横切る走査線Lの長さをできるだけ短くするような工夫が必要であった。多くの場合、四重極マスフィルタを構成するロッド電極の断面形状やその配置などを工夫することでそうした試みが行われているものの、そのためには高い精度の機械加工や組立が必要になり、コストが増大することが避けられないという問題がある。
本発明はこうした課題を解決するために成されたものであり、その主たる目的は、走査線Lが安定領域Rを通過する位置が頂点Tから離れている、つまりは安定領域Rを横切る走査線Lの長さが或る程度長い場合であっても、検出器で得られた検出値から精度の高い質量電荷比値を求めることができる、質量分解能の高い四重極型質量分析方法及び四重極型質量分析装置を提供することである。
上記課題を解決するためになされた本発明に係る四重極型質量分析方法は、試料由来のイオンのうちの特定の質量電荷比を有するイオンを選択的に通過させる四重極マスフィルタと、該四重極マスフィルタを通過したイオンを検出する検出器と、を具備し、前記四重極マスフィルタに印加される高周波電圧の振幅と直流電圧との関係を示す走査線がマシューの安定領域図上の安定領域を直線的に通過するように該四重極マスフィルタの動作条件が設定されてなる四重極型質量分析装置を用いた質量分析方法であって、
所定の質量電荷比を有するイオンについての前記検出器による検出値を、安定領域図のa軸及びq軸に直交するようにイオン強度軸を定めたときの3次元的な安定領域を前記走査線を含みa−q平面に直交する平面で切断した断面の高さと、該イオンの真のマススペクトルとの積を質量について積分した関数で以て表現し、該関数を畳み込み定理を適用可能な形式に変形したうえで畳み込み定理を適用することで求められた、検出値、真のマススペクトル及び前記断面の高さにそれぞれ対応するフーリエ変換後の関数の関係を示す演算式を用い、
質量電荷比が既知であるイオン又は質量電荷比についての強度分布が既知である試料を前記動作条件の下で実測して得られた検出値に基づいて求まる前記断面の高さに対応するフーリエ変換後の関数と、解析対象である目的イオンを前記動作条件の下で実測して得られた検出値に基づいて求まる該検出値に対応するフーリエ変換後の関数とを前記演算式に適用して、該目的イオンの真のスペクトルに対応するフーリエ変換後の関数を算出し、これを逆フーリエ変換することで該目的イオンの真のスペクトルを導出することを特徴としている。
所定の質量電荷比を有するイオンについての前記検出器による検出値を、安定領域図のa軸及びq軸に直交するようにイオン強度軸を定めたときの3次元的な安定領域を前記走査線を含みa−q平面に直交する平面で切断した断面の高さと、該イオンの真のマススペクトルとの積を質量について積分した関数で以て表現し、該関数を畳み込み定理を適用可能な形式に変形したうえで畳み込み定理を適用することで求められた、検出値、真のマススペクトル及び前記断面の高さにそれぞれ対応するフーリエ変換後の関数の関係を示す演算式を用い、
質量電荷比が既知であるイオン又は質量電荷比についての強度分布が既知である試料を前記動作条件の下で実測して得られた検出値に基づいて求まる前記断面の高さに対応するフーリエ変換後の関数と、解析対象である目的イオンを前記動作条件の下で実測して得られた検出値に基づいて求まる該検出値に対応するフーリエ変換後の関数とを前記演算式に適用して、該目的イオンの真のスペクトルに対応するフーリエ変換後の関数を算出し、これを逆フーリエ変換することで該目的イオンの真のスペクトルを導出することを特徴としている。
また上記課題を解決するためになされた本発明に係る四重極型質量分析装置の第1の態様は、試料由来のイオンのうちの特定の質量電荷比を有するイオンを選択的に通過させる四重極マスフィルタと、該四重極マスフィルタを通過したイオンを検出する検出器と、を具備し、前記四重極マスフィルタに印加される高周波電圧の振幅と直流電圧との関係を示す走査線がマシューの安定領域図上の安定領域を直線的に通過するように該四重極マスフィルタの動作条件が設定されてなる四重極型質量分析装置であって、
a)所定の質量電荷比を有するイオンについての前記検出器による検出値を、安定領域図のa軸及びq軸に直交するようにイオン強度軸を定めたときの3次元的な安定領域を前記走査線を含みa−q平面に直交する平面で切断した断面の高さと、該イオンの真のマススペクトルとの積を質量について積分した関数で以て表現し、該関数を畳み込み定理を適用可能な形式に変形したうえで畳み込み定理を適用することで求められた、検出値、真のマススペクトル及び前記断面の高さにそれぞれ対応するフーリエ変換後の関数の関係を示す演算式を表す情報を記憶する情報記憶部と、
b)質量電荷比が既知であるイオンを前記動作条件の下で実測して検出値を取得する既知試料分析実行部と、
c)解析対象である目的イオンを前記動作条件の下で実測して検出値を取得する目的試料分析実行部と、
d)前記既知試料分析実行部により得られた検出値に基づいて前記断面の高さに対応する前記演算式におけるフーリエ変換後の関数を算出するとともに、前記目的試料分析実行部により得られた検出値に基づいて該検出値に対応する前記演算式におけるフーリエ変換後の関数を算出し、それらを前記演算式に適用して、前記目的イオンの真のスペクトルに対応するフーリエ変換後の関数を算出し、これを逆フーリエ変換することで該目的イオンの真のスペクトルを導出する演算実行部と、
を備えることを特徴としている。
a)所定の質量電荷比を有するイオンについての前記検出器による検出値を、安定領域図のa軸及びq軸に直交するようにイオン強度軸を定めたときの3次元的な安定領域を前記走査線を含みa−q平面に直交する平面で切断した断面の高さと、該イオンの真のマススペクトルとの積を質量について積分した関数で以て表現し、該関数を畳み込み定理を適用可能な形式に変形したうえで畳み込み定理を適用することで求められた、検出値、真のマススペクトル及び前記断面の高さにそれぞれ対応するフーリエ変換後の関数の関係を示す演算式を表す情報を記憶する情報記憶部と、
b)質量電荷比が既知であるイオンを前記動作条件の下で実測して検出値を取得する既知試料分析実行部と、
c)解析対象である目的イオンを前記動作条件の下で実測して検出値を取得する目的試料分析実行部と、
d)前記既知試料分析実行部により得られた検出値に基づいて前記断面の高さに対応する前記演算式におけるフーリエ変換後の関数を算出するとともに、前記目的試料分析実行部により得られた検出値に基づいて該検出値に対応する前記演算式におけるフーリエ変換後の関数を算出し、それらを前記演算式に適用して、前記目的イオンの真のスペクトルに対応するフーリエ変換後の関数を算出し、これを逆フーリエ変換することで該目的イオンの真のスペクトルを導出する演算実行部と、
を備えることを特徴としている。
また上記課題を解決するためになされた本発明に係る四重極型質量分析装置の第2の態様は、試料由来のイオンのうちの特定の質量電荷比を有するイオンを選択的に通過させる四重極マスフィルタと、該四重極マスフィルタを通過したイオンを検出する検出器と、を具備し、前記四重極マスフィルタに印加される高周波電圧の振幅と直流電圧との関係を示す走査線がマシューの安定領域図上の安定領域を直線的に通過するように該四重極マスフィルタの動作条件が設定されてなる四重極型質量分析装置であって、
a)所定の質量電荷比を有するイオンについての前記検出器による検出値を、安定領域図のa軸及びq軸に直交するようにイオン強度軸を定めたときの3次元的な安定領域を前記走査線を含みa−q平面に直交する平面で切断した断面の高さと、該イオンの真のマススペクトルとの積を質量について積分した関数で以て表現し、該関数を畳み込み定理を適用可能な形式に変形したうえで畳み込み定理を適用することで求められた、検出値、真のマススペクトル及び前記断面の高さにそれぞれ対応するフーリエ変換後の関数の関係を示す演算式を表す情報を記憶する情報記憶部と、
b)質量電荷比についての強度分布が既知である試料を前記動作条件の下で実測して検出値を取得する既知試料分析実行部と、
c)解析対象である目的イオンを前記動作条件の下で実測して検出値を取得する目的試料分析実行部と、
d)前記既知試料分析実行部により得られた検出値に基づいて前記断面の高さに対応する前記演算式におけるフーリエ変換後の関数を算出するとともに、前記目的試料分析実行部により得られた検出値に基づいて該検出値に対応する前記演算式におけるフーリエ変換後の関数を算出し、それらを前記演算式に適用して、前記目的イオンの真のスペクトルに対応するフーリエ変換後の関数を算出し、これを逆フーリエ変換することで該目的イオンの真のスペクトルを導出する演算実行部と、
を備えることを特徴としている。
a)所定の質量電荷比を有するイオンについての前記検出器による検出値を、安定領域図のa軸及びq軸に直交するようにイオン強度軸を定めたときの3次元的な安定領域を前記走査線を含みa−q平面に直交する平面で切断した断面の高さと、該イオンの真のマススペクトルとの積を質量について積分した関数で以て表現し、該関数を畳み込み定理を適用可能な形式に変形したうえで畳み込み定理を適用することで求められた、検出値、真のマススペクトル及び前記断面の高さにそれぞれ対応するフーリエ変換後の関数の関係を示す演算式を表す情報を記憶する情報記憶部と、
b)質量電荷比についての強度分布が既知である試料を前記動作条件の下で実測して検出値を取得する既知試料分析実行部と、
c)解析対象である目的イオンを前記動作条件の下で実測して検出値を取得する目的試料分析実行部と、
d)前記既知試料分析実行部により得られた検出値に基づいて前記断面の高さに対応する前記演算式におけるフーリエ変換後の関数を算出するとともに、前記目的試料分析実行部により得られた検出値に基づいて該検出値に対応する前記演算式におけるフーリエ変換後の関数を算出し、それらを前記演算式に適用して、前記目的イオンの真のスペクトルに対応するフーリエ変換後の関数を算出し、これを逆フーリエ変換することで該目的イオンの真のスペクトルを導出する演算実行部と、
を備えることを特徴としている。
本発明に係る四重極型質量分析方法及び四重極型質量分析装置においては、解析対象である目的イオンを所定の動作条件の下で実測することで得られた検出値に対し所定の演算処理を行うことで、その目的イオンの真のスペクトルを推算する。即ち、上記(2)式の関係から、高周波電圧の振動振幅vが決まればq値と質量mは一対一に対応することが分かる。そこで、図4(a)に示したような安定領域図のa軸及びq軸に直交するようにイオン強度軸を定めた3次元的な安定領域を考えると、走査線Lを含みa−q平面に直交する平面でその安定領域を切断した断面の面積は特定の質量mを持つイオンの総量(又は透過率)を与えることになる。そのため、或る高周波電圧の振動振幅vについて検出器で得られる検出値は、質量mを持つイオンの真のマススペクトルと走査線Lによる安定領域の断面における高さとの積をイオンの質量について積分した関数となる。この積分関数において、検出値は振動振幅vを変数とする関数、真のマススペクトルは質量mを変数とする関数、安定領域の断面の高さはq値を変数とする関数である。
この積分関数における変数を適宜に変換し、各関数を適宜に書き換えると、上記積分関数は畳み込み積分で表すことができる。そこで、そうして変換した積分関数に畳み込み定理を適用することにより、検出値、真のマススペクトル及び前記断面の高さにそれぞれ対応するフーリエ変換後の関数の関係を示す演算式を求めることができる。本発明に係る四重極型質量分析装置では、この演算式を表す情報を情報記憶部に記憶しておく。
質量が未知である成分由来の目的イオンの真のマススペクトルを知りたい場合、該目的イオンを実測すれば検出値は既知である。一方、安定領域における断面の高さは未知であるから、これについては質量電荷比が既知である単独のイオン又は質量電荷比についての強度分布が既知である試料を実測した結果に基づいて算出する。なお、質量電荷比が既知である単独のイオンを実測した場合には、該イオンの真のマススペクトルがデルタ関数(インパルス関数)であるとみなすことで、検出値から断面の高さを求めることができる。一方、質量電荷比についての強度分布が既知である試料を実測した場合には、強度分布が真のマススペクトルであるとみなして検出値と真のマススペクトルとから断面の高さを求めることができる。
こうして目的イオンの実測による検出値と既知の試料を実測した結果から求まる断面の高さとについて、それぞれ演算式の導出時と同様の変数の変換等を行ったうえでフーリエ変換後の関数を求める。そして、それらを演算式に適用することで、目的イオンの真のスペクトルに対応するフーリエ変換後の関数を算出する。これを逆フーリエ変換し、必要に応じてさらに変数についての逆変換を行うことで目的イオンの真のスペクトルを導出することができる。
本発明に係る四重極型質量分析方法及び四重極型質量分析装置によれば、検出器で得られる目的イオンの検出値に対する演算処理によって、該目的イオンの真のマススペクトルを算出することができる。それによって、従来よりも高い精度で以て目的イオンの質量電荷比値を取得することができ、例えば質量電荷比を利用して未知物質を同定する際にその同定精度の向上にも繋がる。また、質量分解能を高めるために四重極マスフィルタを構成するロッド電極の形状や配置を特殊なものとする必要がないので、ロッド電極の加工精度や組立精度を緩くすることができコスト削減に繋がる。
また、本発明に係る四重極型質量分析方法及び四重極型質量分析装置によれば、液体クロマトグラフ質量分析装置やガスクロマトグラフ質量分析装置として使用する場合に、ターゲットとするイオンの質量電荷比におけるクロマトグラム上のピーク面積の精度が向上するので、該ピーク面積に基づく定量性も向上する。
以下、本発明の一実施例である四重極型質量分析装置について、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例の四重極型質量分析装置の概略構成図である。
本実施例の四重極型質量分析装置は、図示しない真空ポンプにより真空排気されるチャンバ1の内部に、イオン源2、レンズ電極3、四重極マスフィルタ4、及び検出器5、を備える。イオン源2は例えば電子イオン化(EI)法により試料ガス中の化合物をイオン化する。四重極マスフィルタ4は直線状のイオン光軸Cの周りに該光軸Cに平行に配置された4本のロッド電極を含む。この4本のロッド電極には、制御部8により制御される四重極駆動電圧印加部6からそれぞれ、直流電圧に高周波電圧を重畳した所定の電圧が印加される。また検出器5による検出信号はデータ処理部7に入力され、スペクトル真値演算部71により後述する演算処理が実行される。
図1は本実施例の四重極型質量分析装置の概略構成図である。
本実施例の四重極型質量分析装置は、図示しない真空ポンプにより真空排気されるチャンバ1の内部に、イオン源2、レンズ電極3、四重極マスフィルタ4、及び検出器5、を備える。イオン源2は例えば電子イオン化(EI)法により試料ガス中の化合物をイオン化する。四重極マスフィルタ4は直線状のイオン光軸Cの周りに該光軸Cに平行に配置された4本のロッド電極を含む。この4本のロッド電極には、制御部8により制御される四重極駆動電圧印加部6からそれぞれ、直流電圧に高周波電圧を重畳した所定の電圧が印加される。また検出器5による検出信号はデータ処理部7に入力され、スペクトル真値演算部71により後述する演算処理が実行される。
本実施例の四重極型質量分析装置における基本的な質量分析の動作は次のとおりである。
試料ガス中の化合物はイオン源2でイオン化され、生成されたイオンは図1中に白抜き矢印で示すように引き出され、レンズ電極3により収束されて四重極マスフィルタ4に導入される。四重極マスフィルタ4に導入されたイオンのうち、ロッド電極に印加されている高周波電圧と直流電圧とにより形成される電場の作用によって、特定の質量電荷比を有するイオンのみがイオン光軸C付近を振動しながら通り抜け、他のイオンは途中で発散する。四重極マスフィルタ4を通り抜けたイオンは検出器5に到達し、検出器5は到達したイオンの量に応じた検出信号を生成してデータ処理部7へと送る。
試料ガス中の化合物はイオン源2でイオン化され、生成されたイオンは図1中に白抜き矢印で示すように引き出され、レンズ電極3により収束されて四重極マスフィルタ4に導入される。四重極マスフィルタ4に導入されたイオンのうち、ロッド電極に印加されている高周波電圧と直流電圧とにより形成される電場の作用によって、特定の質量電荷比を有するイオンのみがイオン光軸C付近を振動しながら通り抜け、他のイオンは途中で発散する。四重極マスフィルタ4を通り抜けたイオンは検出器5に到達し、検出器5は到達したイオンの量に応じた検出信号を生成してデータ処理部7へと送る。
例えばマススペクトルを取得したい場合、制御部8による制御の下で四重極駆動電圧印加部6は、四重極マスフィルタ4のロッド電極に印加する直流電圧uと高周波電圧の振動振幅vを所定の関係を保ちつつそれぞれ変化させる。すると、四重極マスフィルタ4を通り抜け得るイオンの質量電荷比が時間経過に伴って変化する。データ処理部7では、それにより検出器5で得られた検出信号に基づいて、質量電荷比とイオン強度との関係を示すマススペクトルを作成する。
従来の四重極型質量分析装置では、上述したような四重極マスフィルタ4への印加電圧の変化による質量走査時に検出器5で得られたデータに基づいて作成されるプロファイルスペクトル上で観測されるピークのピークトップの位置から質量電荷比を求めたり、そのピーク波形をセントロイド処理してピーク波形の重心位置を質量電荷比としたりしている。それに対し、本実施例の四重極型質量分析装置では、検出器5で得られたデータについて後述するような特徴的な演算処理を行うことで、より精度の高いピーク情報を算出する。
この演算処理の原理及び基本的手法について説明する。
この演算処理の原理及び基本的手法について説明する。
[真のマススペクトルの算出原理]
上述したマシュー方程式の解を表す(2)式の関係から、四重極マスフィルタ4に印加される高周波電圧の振動振幅vが決まればq値と選択されるイオンの質量mとは一対一に対応することが分かる。ここで、マシューの安定領域図においてa軸、q軸にともに直交する軸をイオン強度(又はイオン量)を示す軸とした3次元空間を考える。すると、2次元的な安定領域R上の各位置におけるイオン強度を示す3次元的な安定領域が得られるから、この3次元的な安定領域を走査線Lを含みa−q面に直交する平面で切断した断面の面積は特定の質量mを持つイオンの総イオン量又は透過率を与えることになる。したがって、或る一つの高周波電圧の振動振幅vについて検出器5で得られる或るイオンの検出値は、次の(3)式で示すように、該イオンの真のマススペクトル(i(m))と走査線Lを含む平面による3次元的な安定領域の断面における高さ(p(q))との積をイオンの質量について積分した積分関数となる。
x(v)=∫"m1−m2"i(m)p(q)dm …(3)
なお、「∫"m1−m2"〜dm」はm1からm2までのmについての積分を表す。
(3)式において、検出値xは振動振幅vを変数とする関数、真のマススペクトルiはイオンの質量mを変数とする関数、断面の高さpはq値を変数とする関数である。
上述したマシュー方程式の解を表す(2)式の関係から、四重極マスフィルタ4に印加される高周波電圧の振動振幅vが決まればq値と選択されるイオンの質量mとは一対一に対応することが分かる。ここで、マシューの安定領域図においてa軸、q軸にともに直交する軸をイオン強度(又はイオン量)を示す軸とした3次元空間を考える。すると、2次元的な安定領域R上の各位置におけるイオン強度を示す3次元的な安定領域が得られるから、この3次元的な安定領域を走査線Lを含みa−q面に直交する平面で切断した断面の面積は特定の質量mを持つイオンの総イオン量又は透過率を与えることになる。したがって、或る一つの高周波電圧の振動振幅vについて検出器5で得られる或るイオンの検出値は、次の(3)式で示すように、該イオンの真のマススペクトル(i(m))と走査線Lを含む平面による3次元的な安定領域の断面における高さ(p(q))との積をイオンの質量について積分した積分関数となる。
x(v)=∫"m1−m2"i(m)p(q)dm …(3)
なお、「∫"m1−m2"〜dm」はm1からm2までのmについての積分を表す。
(3)式において、検出値xは振動振幅vを変数とする関数、真のマススペクトルiはイオンの質量mを変数とする関数、断面の高さpはq値を変数とする関数である。
(3)式を以下のようにしてq値についての積分関数に書き換える。即ち、(2)式から、
m=2v/qω2r0 2
となるから、
dm=(−2v/ω2r0 2)dq/q2
m(q/v)=2/{(q/v)ω2r0 2}
が得られる。これを(3)式に代入することで、m1<m2であるm1、m2をq2<q1であるq1、q2に書き換えた(4)式が求まる。
x(v)=(2v/ω2r0 2)∫"q2−q1"{i(m(q/v))p(q)}/q2dq …(4)
m=2v/qω2r0 2
となるから、
dm=(−2v/ω2r0 2)dq/q2
m(q/v)=2/{(q/v)ω2r0 2}
が得られる。これを(3)式に代入することで、m1<m2であるm1、m2をq2<q1であるq1、q2に書き換えた(4)式が求まる。
x(v)=(2v/ω2r0 2)∫"q2−q1"{i(m(q/v))p(q)}/q2dq …(4)
さらに、q≡e-Q、つまりはdq=−e-QdQ、及びv=e-Vを用いることで、(4)式における変数q、vをそれぞれQ及びVに変換すると次の(5)式が得られる。
x(e-V)=∫"Q1−Q2"{i(m(eV-Q))/eV-Q}×{2p(e-Q)/ω2r0 2}dQ …(5)
x(e-V)=∫"Q1−Q2"{i(m(eV-Q))/eV-Q}×{2p(e-Q)/ω2r0 2}dQ …(5)
さらに次の三つの定義を用いて(5)式における関数をそれぞれ書き換えると(6)式が得られる。
X(x)≡x(e-x)
I(x)≡i(m(ex))/ex
P(x)≡2p(e-x)/ω2r0 2
X(V)=∫"Q1−Q2"I(V−Q)×P(Q)dQ …(6)
(6)式において被積分関数はQ<Q1又はQ>Q2においてP(Q)=0であるので、(6)式における積分範囲は±無限大に広げることができ、その結果、(7)式が得られる。
X(V)=∫"-∞−+∞"I(V−Q)×P(Q)dQ …(7)
この(7)式の右辺はいわゆる畳み込み積分の形式になっていることが分かる。したがって、(7)式には畳み込みの定理を適用することができ、それにより次の(8)式の関係が求まる。なお、[X]は関数xをフーリエ変換した関数を表す。
[X]=[I]×[P] …(8)
X(x)≡x(e-x)
I(x)≡i(m(ex))/ex
P(x)≡2p(e-x)/ω2r0 2
X(V)=∫"Q1−Q2"I(V−Q)×P(Q)dQ …(6)
(6)式において被積分関数はQ<Q1又はQ>Q2においてP(Q)=0であるので、(6)式における積分範囲は±無限大に広げることができ、その結果、(7)式が得られる。
X(V)=∫"-∞−+∞"I(V−Q)×P(Q)dQ …(7)
この(7)式の右辺はいわゆる畳み込み積分の形式になっていることが分かる。したがって、(7)式には畳み込みの定理を適用することができ、それにより次の(8)式の関係が求まる。なお、[X]は関数xをフーリエ変換した関数を表す。
[X]=[I]×[P] …(8)
(8)式における[X]は、解析対象である目的イオンを実測することで得られた検出値x(v)から計算可能である。一方、[P]は走査線Lを含む平面による3次元的な安定領域の断面の高さp(q)から計算可能であり、このp(q)は後述するように例えば質量電荷比が既知である特定のイオンのみを実測して得られた検出値に基づいて算出可能である。したがって、[X]、[P]ともに既知の値である。そこで、目的イオンの真のマススペクトルi(m)を変形した関数のフーリエ変換である[I]は、次の(9)式により算出することができる。
[I]=[X]/[P] …(9)
この(9)式により求まった[I]を逆フーリエ変換することで、関数Iを計算することができる。さらに、上記関数の書き換えの定義を利用し、関数Iの逆関数として真のマススペクトルi(m)を取得することができる。
上述したような原理によって、図4(a)に示した安定領域図において安定領域Rを横切る走査線Lの長さに相当する質量電荷比の拡がりを有する目的イオンの検出値x(v)から、その目的イオンの真のマススペクトルi(m)を算出することができる。
[I]=[X]/[P] …(9)
この(9)式により求まった[I]を逆フーリエ変換することで、関数Iを計算することができる。さらに、上記関数の書き換えの定義を利用し、関数Iの逆関数として真のマススペクトルi(m)を取得することができる。
上述したような原理によって、図4(a)に示した安定領域図において安定領域Rを横切る走査線Lの長さに相当する質量電荷比の拡がりを有する目的イオンの検出値x(v)から、その目的イオンの真のマススペクトルi(m)を算出することができる。
[上記原理に基づく真のマススペクトルの算出手順]
(3)式における真のマススペクトルi(m)と検出値x(v)との関係は、図4(a)に示した安定領域図において設定される走査線Lの位置に依存する。走査線Lつまりは高周波電圧の振動振幅vと直流電圧uとの関係が装置において一意に決まっている場合には走査線Lも一意に決まるが、通常、質量分解能などを変更するために高周波電圧の振動振幅vと直流電圧uとの関係は装置において一意に決められない。そこで、例えば質量電荷比値が既知である標準物質などを事前に実測し、その結果を利用して(3)式における真のマススペクトルi(m)と検出値x(v)との関係を求め、その関係を未知のイオンの真のマススペクトルの演算に利用するとよい。
(3)式における真のマススペクトルi(m)と検出値x(v)との関係は、図4(a)に示した安定領域図において設定される走査線Lの位置に依存する。走査線Lつまりは高周波電圧の振動振幅vと直流電圧uとの関係が装置において一意に決まっている場合には走査線Lも一意に決まるが、通常、質量分解能などを変更するために高周波電圧の振動振幅vと直流電圧uとの関係は装置において一意に決められない。そこで、例えば質量電荷比値が既知である標準物質などを事前に実測し、その結果を利用して(3)式における真のマススペクトルi(m)と検出値x(v)との関係を求め、その関係を未知のイオンの真のマススペクトルの演算に利用するとよい。
図2は、本実施例の四重極型質量分析装置において、上記原理に従って目的イオンの真のマススペクトルを算出する際の処理手順の一例を示すフローチャートである。
まず本実施例の四重極型質量分析装置を用い、質量電荷比が既知である特定のイオンのみを、解析対象である目的イオンを実測するときと同じ動作条件(つまりは同じ走査線L)で以て実測する。このときに検出器5で得られた検出値x(v)はデータ処理部7に取り込まれる(ステップS1)。
まず本実施例の四重極型質量分析装置を用い、質量電荷比が既知である特定のイオンのみを、解析対象である目的イオンを実測するときと同じ動作条件(つまりは同じ走査線L)で以て実測する。このときに検出器5で得られた検出値x(v)はデータ処理部7に取り込まれる(ステップS1)。
このとき、実測される試料には特定のイオンのみしか存在しないか、又は、少なくとも該特定イオンの質量電荷比の近傍に質量電荷比を有するイオンは存在しないものとする。この場合、(3)式において真のスペクトルi(m)はデルタ関数であるとみなすことができる。したがって、(3)式はx(v)=p(q)となり、実測で求まった検出値x(v)は安定領域の断面の高さp(q)であるとみなすことができる(ステップS2)。
引き続き、本実施例の四重極型質量分析装置を用い、解析対象である物質を含む試料を質量分析して、該物質由来の目的イオンの検出値x(v)を求める(ステップS3)。このときの四重極マスフィルタ4の動作条件はステップS1と同じである。
スペクトル真値演算部71は上記関数の書き換えの定義を用いて、ステップS3で得られた検出値x(v)及びステップS2で得られた安定領域の断面の高さp(q)からそれぞれ関数X(V)及びP(Q)を算出する(ステップS4)。さらに、この関数X(V)及びP(Q)をそれぞれフーリエ変換することで[X]及び[P]を算出する(ステップS5)。こうして
算出した[X]及び[P]を(9)式に適用して[I]を計算し、これを逆フーリエ変換することで関数Iを求める(ステップS6)。そして、上記関数の書き換えの定義を利用し、この関数Iの逆関数を求めることで、目的イオンの真のマススペクトルi(m)を算出する(ステップS7)。
こうして得られた真のマススペクトルi(m)が求まったならば、例えばそのi(m)から目的イオンの質量電荷比値を算出すればよい。
算出した[X]及び[P]を(9)式に適用して[I]を計算し、これを逆フーリエ変換することで関数Iを求める(ステップS6)。そして、上記関数の書き換えの定義を利用し、この関数Iの逆関数を求めることで、目的イオンの真のマススペクトルi(m)を算出する(ステップS7)。
こうして得られた真のマススペクトルi(m)が求まったならば、例えばそのi(m)から目的イオンの質量電荷比値を算出すればよい。
図3は、本実施例の四重極型質量分析装置において、上記原理に従って目的イオンの真のマススペクトルを算出する際の処理手順の別の例を示すフローチャートである。
この例では、質量電荷比値が既知であるイオンではなく、真のマススペクトル(質量電荷比に対する強度分布)が既知である試料を実測する。したがって、測定対象の物質は同位体が存在する物質等、真のマススペクトルがデルタ関数であるとみなせないものであっても構わない。
この例では、質量電荷比値が既知であるイオンではなく、真のマススペクトル(質量電荷比に対する強度分布)が既知である試料を実測する。したがって、測定対象の物質は同位体が存在する物質等、真のマススペクトルがデルタ関数であるとみなせないものであっても構わない。
本実施例の四重極型質量分析装置を用い、質量電荷比に対する強度分布が既知である試料を、解析対象である目的イオンを実測するときと同じ動作条件で以て実測する。このときに検出器5で得られた検出値x(v)はデータ処理部7に取り込まれる(ステップS11)。スペクトル真値演算部71は上記関数の書き換えの定義を用いると共にフーリエ変換を行い、ステップS11で得られた検出値x(v)と既知の強度分布とから(8)式における[X]、[I]を計算し、その[X]、[I]から[P]を求める。この[P]を内部に一旦記憶しておく(ステップS12)。
引き続き、本実施例の四重極型質量分析装置を用い、解析対象である物質を含む試料を質量分析して、該物質由来の目的イオンの検出値x(v)を求める(ステップS13)。このときの四重極マスフィルタ4の動作条件はステップS11と同じである。
スペクトル真値演算部71は上記関数の書き換えの定義を用いて、ステップS13で得られた検出値x(v)から関数X(V)を算出し、この関数X(V)をフーリエ変換することで[X]を算出する(ステップS14)。そして、ステップS14で算出した[X]と、ステップS12において記憶しておいた[P]を(9)式に適用して[I]を計算し、これを逆フーリエ変換することで関数Iを求める(ステップS15)。そして、上記関数の書き換えの定義を利用し、この関数Iの逆関数を求めることで、目的イオンの真のマススペクトルi(m)を算出する(ステップS16)。
こうして得られた真のマススペクトルi(m)が求まったならば、例えばそのi(m)から目的イオンの質量電荷比値を算出すればよい。
こうして得られた真のマススペクトルi(m)が求まったならば、例えばそのi(m)から目的イオンの質量電荷比値を算出すればよい。
なお、上記実施例は本発明をいわゆるシングルタイプの四重極型質量分析装置に適用したものであるが、トリプル四重極型質量分析装置など、四重極マスフィルタを利用してイオンを選択する機能を有する、様々な四重極型質量分析装置に本発明を適用可能であることは明らかである。
また、上記実施例は本発明の一例に過ぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変更や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…チャンバ
2…イオン源
3…レンズ電極
4…四重極マスフィルタ
5…検出器
6…四重極駆動電圧印加部
7…データ処理部
71…スペクトル真値演算部
8…制御部
C…イオン光軸
2…イオン源
3…レンズ電極
4…四重極マスフィルタ
5…検出器
6…四重極駆動電圧印加部
7…データ処理部
71…スペクトル真値演算部
8…制御部
C…イオン光軸
Claims (3)
- 試料由来のイオンのうちの特定の質量電荷比を有するイオンを選択的に通過させる四重極マスフィルタと、該四重極マスフィルタを通過したイオンを検出する検出器と、を具備し、前記四重極マスフィルタに印加される高周波電圧の振幅と直流電圧との関係を示す走査線がマシューの安定領域図上の安定領域を直線的に通過するように該四重極マスフィルタの動作条件が設定されてなる四重極型質量分析装置を用いた質量分析方法であって、
所定の質量電荷比を有するイオンについての前記検出器による検出値を、安定領域図のa軸及びq軸に直交するようにイオン強度軸を定めたときの3次元的な安定領域を前記走査線を含みa−q平面に直交する平面で切断した断面の高さと、該イオンの真のマススペクトルとの積を質量について積分した関数で以て表現し、該関数を畳み込み定理を適用可能な形式に変形したうえで畳み込み定理を適用することで求められた、検出値、真のマススペクトル及び前記断面の高さにそれぞれ対応するフーリエ変換後の関数の関係を示す演算式を用い、
質量電荷比が既知であるイオン又は質量電荷比についての強度分布が既知である試料を前記動作条件の下で実測して得られた検出値に基づいて求まる前記断面の高さに対応するフーリエ変換後の関数と、解析対象である目的イオンを前記動作条件の下で実測して得られた検出値に基づいて求まる該検出値に対応するフーリエ変換後の関数とを前記演算式に適用して、該目的イオンの真のスペクトルに対応するフーリエ変換後の関数を算出し、これを逆フーリエ変換することで該目的イオンの真のスペクトルを導出することを特徴とする四重極型質量分析方法。 - 試料由来のイオンのうちの特定の質量電荷比を有するイオンを選択的に通過させる四重極マスフィルタと、該四重極マスフィルタを通過したイオンを検出する検出器と、を具備し、前記四重極マスフィルタに印加される高周波電圧の振幅と直流電圧との関係を示す走査線がマシューの安定領域図上の安定領域を直線的に通過するように該四重極マスフィルタの動作条件が設定されてなる四重極型質量分析装置であって、
a)所定の質量電荷比を有するイオンについての前記検出器による検出値を、安定領域図のa軸及びq軸に直交するようにイオン強度軸を定めたときの3次元的な安定領域を前記走査線を含みa−q平面に直交する平面で切断した断面の高さと、該イオンの真のマススペクトルとの積を質量について積分した関数で以て表現し、該関数を畳み込み定理を適用可能な形式に変形したうえで畳み込み定理を適用することで求められた、検出値、真のマススペクトル及び前記断面の高さにそれぞれ対応するフーリエ変換後の関数の関係を示す演算式を表す情報を記憶する情報記憶部と、
b)質量電荷比が既知であるイオンを前記動作条件の下で実測して検出値を取得する既知試料分析実行部と、
c)解析対象である目的イオンを前記動作条件の下で実測して検出値を取得する目的試料分析実行部と、
d)前記既知試料分析実行部により得られた検出値に基づいて前記断面の高さに対応する前記演算式におけるフーリエ変換後の関数を算出するとともに、前記目的試料分析実行部により得られた検出値に基づいて該検出値に対応する前記演算式におけるフーリエ変換後の関数を算出し、それらを前記演算式に適用して、前記目的イオンの真のスペクトルに対応するフーリエ変換後の関数を算出し、これを逆フーリエ変換することで該目的イオンの真のスペクトルを導出する演算実行部と、
を備えることを特徴とする四重極型質量分析装置。 - 試料由来のイオンのうちの特定の質量電荷比を有するイオンを選択的に通過させる四重極マスフィルタと、該四重極マスフィルタを通過したイオンを検出する検出器と、を具備し、前記四重極マスフィルタに印加される高周波電圧の振幅と直流電圧との関係を示す走査線がマシューの安定領域図上の安定領域を直線的に通過するように該四重極マスフィルタの動作条件が設定されてなる四重極型質量分析装置であって、
a)所定の質量電荷比を有するイオンについての前記検出器による検出値を、安定領域図のa軸及びq軸に直交するようにイオン強度軸を定めたときの3次元的な安定領域を前記走査線を含みa−q平面に直交する平面で切断した断面の高さと、該イオンの真のマススペクトルとの積を質量について積分した関数で以て表現し、該関数を畳み込み定理を適用可能な形式に変形したうえで畳み込み定理を適用することで求められた、検出値、真のマススペクトル及び前記断面の高さにそれぞれ対応するフーリエ変換後の関数の関係を示す演算式を表す情報を記憶する情報記憶部と、
b)質量電荷比についての強度分布が既知である試料を前記動作条件の下で実測して検出値を取得する既知試料分析実行部と、
c)解析対象である目的イオンを前記動作条件の下で実測して検出値を取得する目的試料分析実行部と、
d)前記既知試料分析実行部により得られた検出値に基づいて前記断面の高さに対応する前記演算式におけるフーリエ変換後の関数を算出するとともに、前記目的試料分析実行部により得られた検出値に基づいて該検出値に対応する前記演算式におけるフーリエ変換後の関数を算出し、それらを前記演算式に適用して、前記目的イオンの真のスペクトルに対応するフーリエ変換後の関数を算出し、これを逆フーリエ変換することで該目的イオンの真のスペクトルを導出する演算実行部と、
を備えることを特徴とする四重極型質量分析装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017075636A JP2018181474A (ja) | 2017-04-06 | 2017-04-06 | 四重極型質量分析方法及び四重極型質量分析装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017075636A JP2018181474A (ja) | 2017-04-06 | 2017-04-06 | 四重極型質量分析方法及び四重極型質量分析装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018181474A true JP2018181474A (ja) | 2018-11-15 |
Family
ID=64275824
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2017075636A Pending JP2018181474A (ja) | 2017-04-06 | 2017-04-06 | 四重極型質量分析方法及び四重極型質量分析装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2018181474A (ja) |
-
2017
- 2017-04-06 JP JP2017075636A patent/JP2018181474A/ja active Pending
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