JP2018180097A - 電子写真用部材および電子写真画像形成装置 - Google Patents

電子写真用部材および電子写真画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】直流電圧の印加によっても体積抵抗率が変動し難い弾性層を有する電子写真用部材、および画像形成装置を提供する。
【解決手段】基材と、該基材上の導電性の弾性層と、を有する電子写真用部材であって、該弾性層は、シリコーンゴム、イオン導電剤およびポリグリセリン変性シリコーンオイルを含むことを特徴とする電子写真用部材。
【選択図】図2

Description

本発明は、電子写真用部材、および電子写真画像形成装置に関する。
特許文献1には、液状またはミラブルシリコーンゴムと架橋剤と電子導電剤とイオン液体とを含むシリコーンゴム組成物の架橋体から形成されたゴム弾性層を有し、該イオン液体が分子構造中にアルコキシシリル基を有するものである電子写真機器用導電性部材が開示されている。かかる電子写真機器用導電性部材によれば、電子導電剤とイオン液体とを併用するため、抵抗均一性および電気的応答性が向上することが記載されている。また、アルコキシシリル基を有するイオン液体がシリコーンゴムとの相溶性に優れるため、イオン液体のブリード、ブルームが抑制され、かつ、抵抗バラツキがより小さくなることが記載されている。
特開2013−200324号公報
本発明者らが、特許文献1に係る電子写真機器用導電性部材について検討したところ、当該ゴム弾性層の厚み方向に直流電圧を印加した場合に、当該ゴム弾性層の体積抵抗率が、変動することがあった。
本発明の一態様は、直流電圧の印加によっても体積抵抗率が変動し難い弾性層を基材上に設けた電子写真用部材の提供に向けたものである。
また、本発明の一態様は、高品位な電子写真画像を安定して形成し得る電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
本発明の一態様によれば、基材と、該基材上の導電性の弾性層とを有する電子写真用部材であって、該弾性層は、シリコーンゴム、イオン導電剤およびポリグリセリン変性シリコーンオイルを含む電子写真用部材が提供される。
また、本発明の他の態様によれば、上記の電子写真用部材を具備している電子写真画像形成装置が提供される。
本発明の一態様によれば、直流電圧の印加によっても体積抵抗率の変動が小さい弾性層を有する電子写真用部材を得ることができる。
また、本発明の他の態様によれば、高品位な電子写真画像を安定して形成し得る電子写真画像形成装置を得ることができる。
本発明の一態様に係る電子写真画像形成装置の断面図である。 本発明の一態様に係る弾性層における、ポリグリセリン変性シリコーンオイルの水素結合およびイオン導電剤との相互作用の説明図である。
以下、本発明の一態様について詳細に説明する。
本発明の一態様に係る電子写真用部材は、基材と、該基材上の導電性の弾性層とを有する。該弾性層は、シリコーンゴム、イオン導電剤およびポリグリセリン変性シリコーンオイルを含む。
本発明者らの検討によれば、弾性層が、シリコーンゴム、イオン導電剤およびポリグリセリン変性シリコーンオイルを含むことにより、弾性層に対して直流電圧が一定時間印加された後であっても当該弾性層の体積抵抗率が変動しにくいことを見出した。
本発明の一態様に係る弾性層が、直流電圧の印加によっても体積抵抗率が変動し難い理由を本発明者らは以下のように考えている。すなわち、イオン導電剤は、ポリグリセリン変性シリコーンオイルのグリセリン部分に存在しているエーテル構造や水酸基と相互作用した状態でシリコーンゴム中に存在していると考えられる。ここで相互作用とは、例えば、配位結合の如き直接的な結合や、極性の近さに起因して近傍に位置することを含む。
また、ポリグリセリン変性シリコーンオイルは、グリセリン部分の水酸基によって、分子内または分子間で水素結合を形成し、擬似的な架橋構造を構成し、イオン導電剤由来のカチオンの動きを阻害していると考えられる。そのため、弾性層への直流電圧印加時における体積抵抗率の変動が抑制されると考えられる。
なお、上記したポリグリセリン変性シリコーンオイルの分子内または分子間の水素結合による擬似的な架橋構造は、イオン導電剤由来のアニオンの動きをも抑制するとも思われた。しかし、体積抵抗を、1.0×10Ω・cm〜1.0×1014Ω・cmといった電子写真用部材に求められる、所謂、半導電領域に制御する上では、ポリグリセリン変性シリコーンオイルの含有は、何ら問題ないことを本発明者らは確認している。
以下、上記作用を、図2を用いて具体的に説明する。
図2は、シリコーンゴム中に、ポリグリセリン変性シリコーンオイル21と、イオン導電剤としてのカリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(以下、「K−TFSI」とも言う。)が存在してる導電性の弾性層中における作用を模式的に示したものである。なお、図2中、シリコーンゴムは図示していない。
弾性層中においてK−TFSI由来のカリウムカチオンは、ポリグリセリン変性シリコーンオイル21のグリセリン部分22のエーテル構造と配位結合を形成しているものと考えられる。また、一般に有機塩のカチオンは高極性であり、シリコーンゴムよりもポリグリセリン変性シリコーンオイル21との親和性が高い。そのため、有機塩のカチオンはポリグリセリン変性シリコーンオイル21のグリセリン部分22の近傍に存在し易いと考えられる。
さらに、ポリグリセリン変性シリコーンオイル21のグリセリン部分22の水酸基によって、ポリグリセリン変性シリコーンの分子内または分子間で水素結合を形成している。すなわち、ポリグリセリン変性シリコーンに配位結合したカリウムカチオンは、その動きが抑制されている。また、配位結合していないものの、グリセリン部分22の近傍に存在しているカリウムカチオンは、ポリグリセリン変性シリコーンの、分子内または分子間での水素結合によって、弾性層内での動きが阻害される。
その結果、弾性層への直流電圧印加時においても、カリウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンとが逆方向に移動することによる、カチオン−アニオン間の距離の増大が抑制される。そのため、弾性層への電圧印加によっても、弾性層の体積抵抗率が変動し難くいものと考えられる。
一方、上記構成に係る弾性層においても、イオン導電剤起因の導電性は発現している。このことから、弾性層中の、K−TFSI由来のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン(不図示)は、弾性層への電圧印加時にもその動きが殆んど抑制されていないものと考えられる。
以下に、本発明の一態様に係る電子写真用部材の詳細を説明する。
電子写真用部材は、基材および該基材上の弾性層を少なくとも有する。
<弾性層>
弾性層は、シリコーンゴム、イオン導電剤およびポリグリセリン変性シリコーンオイルを含む。
(シリコーンゴム)
シリコーンゴムとしては、付加硬化型液状シリコーンゴムを硬化させたものが好ましい。
付加硬化型液状シリコーンゴムは、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン、ケイ素に結合した活性水素原子を有するオルガノポリシロキサン、および架橋反応のための触媒として白金化合物が含まれている。
不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンの例としては、以下のオルガノポリシロキサンを挙げることができる。
・分子両末端が(RSiO1/2で表され、中間単位が(RSiO2/2およびRSiO2/2で表される直鎖状オルガノポリシロキサン
・分子末端が(RSiO1/2で表され、中間単位にRSiO3/2またはSiO4/2が含まれる分岐状オルガノポリシロキサン
不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン中、RおよびRは、それぞれ異なってよく、上記SiOn/2は、n個の酸素原子がケイ素原子に、それぞれ片方の結合手で結合していることを表す。
上記不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン中、Rはケイ素原子に結合した、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換または置換炭化水素基である。Rの具体例としては、以下の基が挙げられる。
・アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)
・アリール基(フェニル基等)
・置換炭化水素基(例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−シアノプロピル基、3−メトキシプロピル基等)
特に、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンの合成や取扱いが容易で、優れた耐熱性が得られることから、Rの50%以上がメチル基であることが好ましく、すべてのRがメチル基であることが特に好ましい。
また、上記不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン中、Rはケイ素原子に結合した不飽和脂肪族基である。Rの具体例としては、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基が挙げられる。特に、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンの合成や取扱いが容易で、架橋反応も容易に行われることから、Rはビニル基が好ましい。
また、ケイ素に結合した活性水素原子を有するオルガノポリシロキサンは、白金化合物の触媒作用による硬化反応時に、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンの不飽和脂肪族基との反応によって架橋構造を形成する架橋剤である。
ケイ素に結合した活性水素原子を有するオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合した活性水素原子の数は、1分子中に平均3個を超える数である。
ケイ素に結合した活性水素原子を有するオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合した有機基は、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン中のRと同じ不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換または置換炭化水素基であり、それぞれ異なってよい。特に、ケイ素に結合した活性水素原子を有するオルガノポリシロキサンの合成および取扱いが容易なことから、有機基はメチル基が好ましい。
ケイ素に結合した活性水素原子を有するオルガノポリシロキサン中のシロキサン骨格は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでも差支えなく、これらの混合物を用いてもよい。特に合成の容易なことから、直鎖状のものが好ましい。活性水素原子は、分子中のどのケイ素原子上に存在してもよいが、少なくともその一部が、分子末端のシロキサン単位のケイ素原子上に存在することが好ましい。
不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンおよびケイ素に結合した活性水素原子を有するオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、それぞれ、好ましくは10mm/s以上100,000mm/s以下の範囲であり、さらに好ましくは15mm/s以上1,000mm/s以下の範囲である。粘度が上記範囲であると、保存中に揮発して所望の架橋度や成形品の物性が得られないということがなく、また合成や取扱いが容易で、付加硬化型液状シリコーンゴムの系に容易に均一に分散させることができる。
付加硬化型液状シリコーンゴムとしては、不飽和脂肪族基の量が、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン中のケイ素原子1モルに対して0.1モル%以上2.0モル%以下である付加硬化型液状シリコーンゴムが好ましい。特には、0.2モル%以上1.0モル%以下である付加硬化型液状シリコーンゴムが好ましい。
(ポリグリセリン変性シリコーンオイル)
ポリグリセリン変性シリコーンオイルは、オルガノポリシロキサン成分とグリセリン成分が、シロキサン単位のケイ素原子上で共有結合したものである。
ポリグリセリン変性シリコーンオイルのグリセリン部分は式(1)で表される構造を有するものであり、グリセリンのオリゴマーもしくはポリマーである。式(1)中、nは、1以上の整数である。
Figure 2018180097
ポリグリセリン変性シリコーンオイルのオルガノポリシロキサンの例としては、以下のオルガノポリシロキサンを挙げることができる。
・分子両末端が(RSiO1/2で表され、中間単位が(RSiO2/2で表される直鎖状オルガノポリシロキサン
・分子末端が(RSiO1/2で表され、中間単位にRSiO3/2乃至SiO4/2が含まれる分岐状オルガノポリシロキサン
上記ポリグリセリン変性シリコーンオイルのオルガノポリシロキサン部分において、Rはケイ素原子に結合した、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換または置換炭化水素基であり、具体例としては、以下の基が挙げられる。
・アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)
・アリール基(フェニル基等)
・置換炭化水素基(例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−シアノプロピル基、3−メトキシプロピル基等)
特に、ポリグリセリン変性シリコーンオイルの合成や取扱いが容易で、優れた耐熱性が得られることから、Rの50%以上がメチル基であることが好ましく、すべてのRがメチル基であることが特に好ましい。
ポリグリセリン変性シリコーンオイルは、オルガノポリシロキサン部分が上記構造を有するため、弾性層中でシリコーンゴムと高い親和性を有する。そのため、一般にイオン導電剤は高極性でシリコーンゴムとはなじみにくいが、ポリグリセリン変性シリコーンオイルが分散剤としても機能するため、イオン導電剤をシリコーンゴム中に分散させることができる。
ポリグリセリン変性シリコーンオイルにおいて、グリセリン部分とオルガノポリシロキサン部分の結合様式としては、直鎖状、分岐状いずれでもよく、直鎖状の場合ブロック状、ランダム状いずれの結合様式であってもよい。その中でも、ポリグリセリン変性シリコーンオイルがイオン導電剤の分散剤としての機能も担いうるという観点から、オルガノポリシロキサン部分が主鎖構造を形成し、側鎖としてグリセリン部分が分岐状に結合したポリグリセリン変性シリコーンオイルが好ましい。
ポリグリセリン変性シリコーンオイルのHLB値は15以下であることが好ましく、さらに10以下であることが好ましい。HLB値が大きいと、ポリグリセリン変性シリコーンオイルがシリコーンゴムからブリードしやすくなるからである。
本発明においては、ポリグリセリン変性シリコーンオイルの水酸基価は20mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることが好ましく、さらに40mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましい。水酸基価が20mgKOH/gより小さいと通電による抵抗率の変動が起きやすくなる。また、水酸基価が150mgKOH/gより大きいとシリコーンゴムとの親和性が低下し、ポリグリセリン変性シリコーンオイルがシリコーンゴムからブリードしやすくなる。水酸基価はJIS K007に記載の電位差滴定法により測定することができる。
HLB値および水酸基価は、式(1)で表される構造のグリセリン部分の重合度nと、オルガノポリシロキサン部分の長さ、すなわちオルガノポリシロキサン成分とグリセリン部分の比より、制御することができる。なお、HLB値は、グリフィン法によって下記計算式(1)で定義される。
計算式(1)
HLB値=20×(親水部の式量の総和/分子量)
かかるポリグリセリン変性シリコーンオイルとしては、例えば、「KF6100」、「KF6104」、「KF6105」、「KF6106」(いずれも商品名、信越化学工業社製)の如き市販品を挙げることができる。
ポリグリセリン変性シリコーンオイルの添加量は、付加硬化型液状シリコーンゴム100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下である。添加量が少ないと本発明の効果が小さく、電子写真用部材の抵抗率の変動が起きやすくなり、添加量が多いと電子写真用部材の硬度が低下してしまう。
(イオン導電剤)
イオン導電剤は、ポリグリセリン変性シリコーンオイルと化学的相互作用しうるものであれば特に制限はなく、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機塩等が挙げられる。
アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ルビジウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩が挙げられる。
また有機塩としては、一般にイオン液体として用いられている有機塩が好ましく、アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ホスホニウム塩を挙げることができる。
また、上記アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、および有機塩における対アニオンの具体例を以下に挙げる。
AlCl 、AlCl 、NO 、BF 、PF 、CHCOO、CFCOO、CFSO 、(CFSO、AsF 、SbF 、F(HF)n、CFCFCFCFSO 、(CFCFSO、CFCFCFCOO、〔(CFSO〕。
弾性層に含まれるイオン導電剤の量としては、シリコーンゴム100重量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、さらに0.05質量部以上5質量部以下であることが好ましい。0.01質量部より少ないと、所望の抵抗に調整することが難しく、10質量部より大きいと高湿度下における抵抗率の環境変動が大きくなる。
上記イオン導電剤は単独で用いても良いし、2種類以上を併用してもよい。
(添加剤)
弾性層は、本発明の効果を損なわない範囲で電子導電剤を含んでいてもよい。電子導電剤としては、アセチレンブラックやケッチェンブラックのような導電性カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボン繊維、カーボンナノチューブ、また銀、銅、ニッケル等の金属粉、導電性亜鉛華、導電性炭酸カルシウム、導電性酸化チタン、導電性酸化錫、導電性マイカ等が挙げられる。そのうち、抵抗率の制御が容易という観点から導電性カーボンブラックが好ましい。
弾性層中の電子導電剤の含有量は、機械強度の観点から、シリコーンゴム100重量部に対して電子導電剤が35重量部以下であることが好ましく、さらに25重量部以下であることが好ましい。これにより本発明の電子写真用部材の基材層に、中間転写ベルト、転写定着ベルト等として本発明の電子写真用部材を用いる場合に適した、安定した導電性が付与される。
また本発明の電子写真用部材の弾性層は、充填剤、架橋促進剤、架橋遅延剤、架橋助剤、スコーチ防止剤、老化防止剤、軟化剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、防錆剤等の添加剤を含んでいてもよい。
特に充填剤としては、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、湿式シリカ、ヒュームド酸化チタン等の補強性充填剤が挙げられる。補強性充填剤は、シリコーンゴム中への分散を容易にするという観点から、オルガノアルコキシシラン、オルガノハロシラン、オルガノシラザン、分子鎖両末端がシラノール基で封鎖されたジオルガノシロキサンオリゴマー、環状オルガノシロキサン等の有機ケイ素化合物により表面改質されていても良い。
(表面層)
電子写真用部材は、さらに表面層を有していてもよい。表面層はトナーを紙に転写、離型するための層であり、低付着性である必要がある。表面層の材料としては、低付着性の樹脂であれば特に制限はないが、フッ素樹脂、含フッ素ウレタン樹脂、フッ素ゴム等のフッ素樹脂化合物、シロキサン変性ポリイミド等が挙げられる。このうち、弾性層の弾性機能を損なわないという観点から、含フッ素ウレタン樹脂が好適に用いられる。
表面層の厚さは2μm以上50μm以下が好ましく、さらに5μm以上30μm以下が好ましい。表面層の厚さが2μm未満であると、摩耗により表面層が消失しやすく、50μmより厚いと、弾性層の弾性機能を阻害してしまう。
表面層は必要に応じ、上記導電剤を含んでいてもよい。導電剤の含有量としては付着性や機械強度の観点から表面層の総重量に対して30質量%以下であることが好ましい。
また、必要に応じて、弾性層と表面層の間にプライマー層を設けても良い。プライマー層の厚みは弾性層の弾性機能を阻害しないという観点から、0.5μm以上15μm以下、さらに1μm以上10μm以下であることが好ましい。
<基材>
基材としては、例えば、ローラ形状やエンドレスベルト形状のものを用い得る。材質としては、耐熱性、機械的強度に優れる材質ならば特に制限はない。例えば、ローラ形状の基材の材質としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、ニッケルの如き金属、ステンレス、真鍮の如き合金、アルミナ、炭化珪素の如きセラミックスが挙げられる。
エンドレスベルト状の基材の材質としては、上記ローラ形状の基材の材質に挙げたものの他、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイドの如き樹脂が挙げられる。
樹脂には金属粉末、導電性酸化物粉末、導電性カーボン等の導電性粉体を添加して導電性を付与しておいても良い。本発明のベルト状の電子写真用部材の基材としては、機械強度および導電性の観点からカーボンブラックを添加したポリイミドのフィルムが特に好ましい。
ローラ形状の基材の場合においては、その内径は、5mm以上100mm以下であることが好ましく、特には5mm以上40mm以下が好ましい。厚みとしては、基材としての剛性を維持する観点から、0.1mm以上2.0mm以下であることが好ましく、特には、0.2mm以上1.0mm以下が好ましい。
エンドレスベルト形状の基材の場合、その幅は10mm以上600mm以下であることが好ましく、特には100mm以上500mm以下であることが好ましい。また、厚みは、基材の柔軟性を維持する観点から、10μm以上500μm以下であることが好ましく、特には30μm以上150μm以下が好ましい。
(電子写真用部材)
電子写真用部材の用途としては、帯電部材、現像部材、転写部材、中間転写部材、トナー供給部材、クリーニング部材等が挙げられるが、特に中間転写部材として好ましく用いられる。
電子写真用部材の抵抗値は、体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下が好ましく、さらに1.0×10Ω・cm以上1.0×1013Ω・cm以下であることが好ましい。また、表面層側から測定した表面抵抗率は、1.0×10Ω/□以上1.0×1014Ω/□以下が好ましく、さらに1.0×10Ω/□以上1.0×1013Ω/□以下であることが好ましい。電子写真用部材の電気抵抗を、上記の半導電領域の範囲内に設定することによって、電子写真用部材を中間転写部材として用いた場合に、電子写真感光体上に形成された未定着のトナー像の中間転写体への1次転写、および中間転写体上に転写されたトナー像の記録媒体への2次転写を安定して行うことができる。
また、電子写真用部材は、直流電圧の印加によっても、体積抵抗率の変動を抑制できることが特徴である。具体的には、後述する条件で電子写真用部材に電圧印加した時に、電子写真用部材の初期体積抵抗率R1と通電後の体積抵抗率R2の関係が|(R2−R1)|/R1<0.5となることが好ましい。
電圧印加は以下のステップ(i)〜(iv)で行う。
ステップ(i)電子写真用部材から切り出した短冊形状の試験片を準備するステップ
ステップ(ii)短冊形状の試験片を金属ローラに絶縁テープを用いて巻きつけて第1のローラを作製するステップ
ステップ(iii)第1のローラを2.5kgfの荷重で、円形形状の金属芯および金属芯の周面に形成されたカーボンブラックおよびニトリルブタジエンゴムを含有する表面層を有し、かつ体積抵抗率が1.0×10Ω・cmである第2のローラに接触させるステップ
ステップ(iv)第1のローラと第2のローラの間に6.5kVの直流電圧を印加した状態で、第1のローラを周速90rpmの速度で6時間回転させるステップ
電子写真用部材を中間転写ベルトとして用いた場合、直流電圧印加時においても体積抵抗率の変動、特に上昇が抑制される。そのため、体積抵抗率の上昇に起因する感光ドラムからの異常放電等に起因する転写システム不良による画像ムラの発生を抑制することができる。
続いて、電子写真用部材の製造方法の一例として、エンドレスベルト形状の電子写真用ベルトの製造方法を以下に示す。
電子写真用ベルトの弾性層は、表面処理を施した基材上に積層することが好ましい。表面処理は基材と弾性層との接着性をあげるものであれば制限は無く、例として、紫外線照射、エキシマーレーザー照射、エキシマUV照射、酸素プラズマ処理といった方法が挙げられる。
弾性層は、以下の方法により基材の外周面に積層する。まず、付加硬化型液状シリコーンゴム、イオン導電剤、ポリグリセリン変性シリコーンオイル、およびその他の添加剤を所定量添加した混合液を、遊星式万能混合機等を用いて、十分に混合・脱泡し、弾性層用塗布液を調製する。混合液を調製する際には、イオン導電剤とポリグリセリン変性シリコーンオイルを事前混合した状態のものを、その他の添加剤が混合された付加硬化型液状シリコーンゴムに添加してもよい。弾性層用塗布液を注型成形法、ブレードコート法、ノズルコート法、リングコート法等の公知の方法により基材上に塗布し、弾性層用塗布液の塗膜を形成することができる。塗膜の厚さは混和物の粘度、供給速度等によって適宜制御することができ、ノズルコート法により弾性層用塗布液の塗膜を形成することが、制御性の観点から好ましい。
弾性層用塗布液の塗膜を基材上に形成した後、塗膜を電気炉等の加熱手段によって一定時間加熱し、付加硬化型液状シリコーンゴムを架橋反応により硬化することで、弾性層を基材上に積層することができる。
硬化後のシリコーンゴムの硬さはタイプA硬さで20度以上80度以下であることが好ましく、さらに45度以上80度以下であることが好ましい。
また、硬化後のシリコーンゴムの厚さが本発明の電子写真用部材の弾性層の厚さである。弾性層の機械的強度と柔軟性を考慮して、シリコーンゴムの厚さは50μm以上500μm以下であることが好ましく、さらに100μm以上400μm以下であることが好ましい。
さらに弾性層上に表面層を設ける場合には、熱硬化性の含フッ素水系ポリウレタン塗料等を塗布することが好ましい。例えばPTFE粒子があらかじめ分散されている塗料であるヘンケルジャパン社製の「Emralon T−345」、「Emralon T−861」(いずれも商品名)等をスプレー法やリングコート法等を用いて、弾性層上に塗布し、塗膜を加熱することにより表面層を成形することで、含フッ素ウレタン樹脂を含む表面層を設けることができる。この際、弾性層と表面層の間にプライマー層を形成してもよい。
(画像形成装置)
電子写真用部材を中間転写ベルトとして用いた画像形成装置の例について図1で説明する。なお、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
図1の電子写真画像形成装置100は、カラー電子写真画像形成装置(カラーレーザープリンタ)である。この電子写真画像形成装置100には、中間転写部材である中間転写ベルト7の平坦部分に沿って、その移動方向に順にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成ユニットPy、Pm、Pc、Pkが配設されている。ここで、1Y、1M、1C、1Kはそれぞれ電子写真感光体、2Y、2M、2C、2Kはそれぞれ帯電ローラ、3Y、3M、3C、3Kはそれぞれレーザー露光装置、4Y、4M、4C、4Kはそれぞれ現像器、5Y、5M、5C、5Kはそれぞれ1次転写ローラを示す。各画像形成ユニットPy、Pm、Pc、Pkの基本的な構成は同一であるので、画像形成ユニットの詳細については、イエロー画像形成ユニットPyについてのみ説明する。
イエロー画像形成ユニットPyは、像担持体としてドラム型の電子写真感光体(以下、「感光ドラム」または「第1の画像担持体」とも称する)1Yを有する。感光ドラム1Yは、アルミニウム製のシリンダを基体として、その上に電荷発生層、電荷輸送層および表面保護層を順に積層して形成したものである。
また、イエロー画像形成ユニットPyは、帯電手段としての帯電ローラ2Yを備えている。帯電ローラ2Yに帯電バイアスを印加することで、感光ドラム1Yの表面は一様に帯電される。
感光ドラム1Yの上方には、画像露光手段としてのレーザー露光装置3Yが配設されている。レーザー露光装置3Yは、一様に帯電された感光ドラム1Yの表面を画像情報に応じて走査露光して、イエロー色成分の静電潜像をその感光ドラム1Yの表面に形成する。
感光ドラム1Yに形成された静電潜像は、現像手段としての現像器4Yによって現像剤であるトナーによって現像される。つまり、現像器4Yは、現像剤担持体である現像ローラ4Ya、現像剤量規制部材である規制ブレード4Ybを備えており、また現像剤であるイエロートナーを収容している。イエロートナーが供給された現像ローラ4Yaは、現像部において感光ドラム1Yと軽圧接されており、感光ドラム1Yと順方向に速度差を持って回転される。現像ローラ4Yaによって現像部に搬送されたイエロートナーは、現像ローラ4Yaに現像バイアスを印加することで、感光ドラム1Yに形成された静電潜像に付着する。これにより、感光ドラム1Yに可視像(イエロートナー画像)が形成される。
中間転写ベルト7は、駆動ローラ71、テンションローラ72、従動ローラ73に張架されており、感光ドラム1Yと接触して図中矢印の方向に移動(回転駆動)される。
1次転写部Tyに到達した感光ドラム1Y上(第1の画像担持体上)に形成されたイエロートナー画像は、中間転写ベルト7を介して感光ドラム1Yに対向して配置されている1次転写体(1次転写ローラ5Y)によって中間転写ベルト7上に1次転写される。
同様に、以上の作像動作を、中間転写ベルト7の移動に伴ってマゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各画像形成ユニットPm、Pc、Pkにおいて行い、中間転写ベルト7上にイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色のトナー画像を積層する。4色のトナー層は中間転写ベルト7の移動に従って搬送され、2次転写部T’において、2次転写手段としての2次転写ローラ8により、所定のタイミングで搬送されてくる転写材S(以下、「第2の画像担持体」とも称する)上に一括転写される。このような2次転写においては通常十分な転写率を確保するために数kVの転写電圧を印加するが、その際に転写ニップ近傍において放電が発生することがある。なお、この放電が中間転写体の表面特性の低下の一因となっている。
転写材Sは、転写材Sが収納されているカセット12から、ピックアップローラ13によって搬送路に供給される。搬送路に供給された転写材Sは、搬送ローラ対14およびレジストローラ対15によって中間転写ベルト7に転写された4色のトナー画像と同期をとられて2次転写部T’まで搬送される。
転写材Sに転写されたトナー画像は、定着器9によって定着されて、例えばフルカラーの画像となる。定着器9は、加熱手段を備えた定着ローラ91と加圧ローラ92とを有し、転写材S上の未定着トナー画像を加熱、加圧することで定着する。その後、転写材Sは搬送ローラ対16、排出ローラ対17等によって機外に排出される。
中間転写ベルト7のクリーニング手段であるクリーニングブレード11が、中間転写ベルト7の駆動方向の2次転写部T’の下流に配設されており、2次転写部T’において転写材Sに転写されずに中間転写ベルト7に残った転写残トナーを除去する。
以上説明したように感光体1から中間転写ベルト7、中間転写ベルト7から転写材Sへトナー画像の電気的転写プロセスが繰り返し行われる。また、多数の転写材Sへ記録を繰り返すことで電気的転写プロセスがさらに繰り返し行われることになる。
上記電子写真画像形成装置における中間転写ベルト7として、本発明の電子写真用部材を用いることにより、異常放電等による1次転写不良を抑制し、長時間の使用においても画像ムラのない良好な転写システムを実現することができる。
以下、本発明を実施例と比較例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
(基材の調製)
ポリイミド前駆体であるポリアミック酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液(商品名:UワニスA、宇部興産社製)に導電性カーボンブラック(商品名:デンカブラック、電気化学工業社製)を添加した。この際、導電性カーボンブラックがポリアミック酸と導電性カーボンブラック重量の合計に対して19質量%になるように添加し、混合した。得られた混合液を、ブラスト処理を表面に施した、外径330mm、長さ300mmのステンレス鋼(SUS304)製の円筒支持体の外周面に塗布した。次いで、該円筒支持体を、加熱炉内で、温度220℃で30分加熱し、次いで、温度350℃で30分加熱して、円筒状支持体の外周面に塗布したポリイミド前駆体を重合させて、ポリイミドフィルムを形成した。冷却後、ポリイミドフィルムを円筒支持体から外すことで、厚さが70μmのエンドレスベルト形状の基材を得た。該基材の外周表面に、エキシマUV照射を行い親水処理を行った後、プライマー液(商品名:DY39−067、東レ・ダウコーニング社製)を塗布した。
(弾性層の調製)
イオン導電剤としてカリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(商品名:EF−N112、三菱マテリアル電子化成社製)を用いた。該イオン導電剤とポリグリセリン変性シリコーンオイル(商品名:KF−6105、信越化学工業社製、水酸基価25mgKOH/g)を、混合液中における該イオン導電剤の重量が5重量%になるように混合、撹拌することで混合液を調製した。続いて、付加硬化型液状シリコーンゴム(商品名:TSE3450 A/B、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)100重量部に対し、混合液を3質量部の割合で添加し、遊星撹拌脱泡装置(商品名:HM−500、キーエンス社製)で撹拌、脱泡し、弾性層用塗布液を調製した。
続いて、上記で調製した基材を円筒形の中子に取り付け、さらに中子と同軸上にゴム吐出用のリングノズルを取り付けた。送液ポンプを用いて液状シリコーンゴム混合液をリングノズルに供給し、スリットから吐出することで、基材上に弾性層用塗布液を塗布した。この際、硬化後のシリコーンゴム層が280μmの厚さになるように相対移動速度および送液ポンプ吐出量を調整し、塗膜を形成した。中子に取り付けた状態で加熱炉に入れ、130℃で15分、さらに180℃で60分加熱し、塗膜の硬化を行った。冷却後、ベルトを中子から取外し、弾性層が積層されたベルトを得た。得られたベルトの抵抗率を以下に示す方法で測定した。表面抵抗率は、5.34×1011Ω/□、体積抵抗率は3.65×1011Ω・cmであり、抵抗変化率は0.24であった。
(表面層の形成)
ポリウレタンディスパージョンにポリテトラフルオロエチレンが分散した含フッ素ポリウレタン樹脂液(商品名:Emralon T−861、ヘンケルジャパン社製)を用意した。上記で調製したベルトの弾性層の表面をエキシマUV照射により親水処理し、中子に嵌め合わせ、200rpmで回転させながら、スプレーガン(商品名:W−101、アネスト岩田社製)を用いて含フッ素ポリウレタン樹脂液を塗布した。塗布後、130℃の加熱炉に入れ、30分間放置した。冷却後、中間転写ベルトを得た。表面層調製後の中間転写ベルトの抵抗率を以下に示す方法で測定した。表面抵抗率は5.28×1011Ω/□、体積抵抗率は3.62×1011Ω・cmであり、表面層の有無で抵抗率に有意差はなかった。
[抵抗率測定]
中間転写ベルトの作製において弾性層まで調製した状態のベルトおよび中間転写ベルトの体積抵抗率および表面抵抗率は、二重電極法(商品名:ハイレスタMCP−HT450、三菱化学アナリテック社製)を用いて測定した。体積抵抗率および表面抵抗率は、ベルトを3箇所において、500V/10秒印加時の値を測定し、その平均値を用いた。
[通電耐久評価]
中間転写ベルトの作製において弾性層まで調製した状態のベルトを短冊形状に切り出し、弾性層が表面になるようにアルミ製金属ローラに、リーク防止用絶縁テープを用いて巻き付けた。サンプルが巻き付けられた金属ローラを、対向ローラであるNBR製スポンジローラに、軸受(絶縁)に取り付けられた加圧バネ(2.5kgf)、および、軸受(導電)に取り付けられた加圧バネ(2.5kgf)を用いて接触させた。この状態で駆動モータを用いて回転速度90rpmで回転させ、高圧電源(商品名:MODEL 610E、トレック社製)により6.5kVの電圧を6時間印加した。その後、ベルトの体積抵抗率を測定し、通電前後での抵抗率変化を測定した。抵抗率変化は初期体積抵抗率をR1、通電後の体積抵抗率をR2とし、|(R2−R1)|/R1の値で評価した。
評価基準:
ランクA:0≦|(R2−R1)|/R1<0.20
ランクB:0.20≦|(R2−R1)|/R1<0.50
ランクC:0.50≦|(R2−R1)|/R1<1.0
ランクD:1.0≦|(R2−R1)|/R1
[ブリードの有無の評価]
作製したベルトの一部をシート状に切り出し、温度50℃、95%RHの環境で7日間放置した。その後、マイクロスコープで外表面を観察し、下記の基準に基づき評価した。
評価基準
ランクA:オイル状物が確認できない
ランクB:観察領域の一部にオイル状物が軽微に確認できる
ランクC:観察領域の半分以上にオイル状物を確認できる 以上の評価結果について表1に記載した。
なお、中間転写ベルトの抵抗率については、表面層の有無で表面抵抗率および体積抵抗率の値に有意差はなかったため、表1には弾性層まで調製したベルトの抵抗率の値を記載した。以下、実施例2〜8および比較例1〜4についても同様とした。
[実施例2]
実施例1における弾性層の調製において、ポリグリセリン変性シリコーンオイルとしてKF6106(信越化学工業社製、水酸基価71mgKOH/g)を用いた以外は、実施例1と同様にして中間転写ベルトを作製し評価した。
[実施例3]
実施例1における弾性層の調製において、ポリグリセリン変性シリコーンオイルとしてKF6100(信越化学工業社製、水酸基価143mgKOH/g)を用いた以外は、実施例1と同様にして中間転写ベルトを作製し、評価した。
[実施例4]
実施例2における弾性層の調製において、さらに導電性カーボンブラック(商品名:デンカブラック、電気化学工業社製)を付加硬化型液状シリコーンゴム100重量部に対し、10質量部の割合で加えた以外は、実施例2と同様にして中間転写ベルトを作製し、評価した。
[実施例5]
実施例2における弾性層の調製において、イオン導電剤としてリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(商品名:EF−N115、三菱マテリアル電子化成社製)を用いた以外は実施例2と同様にして中間転写ベルトを作製し、評価した。
[実施例6]
実施例4における弾性層の調製において、イオン導電剤としてリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(商品名:EF−N115、三菱マテリアル電子化成社製)を用いた以外は実施例4と同様にして中間転写ベルトを作製し、評価した。
[実施例7]
実施例2における弾性層の調製において、イオン導電剤として(トリ−n−ブチルメチルアンモニウム)−ビストリフルオロメタンスルホンイミド(商品名:FC−4400、スリーエム社製)を用いた以外は実施例2と同様にして中間転写ベルトを作製し、評価した。
[実施例8]
実施例4における弾性層の調製において、イオン導電剤として(トリ−n−ブチルメチルアンモニウム)−ビストリフルオロメタンスルホンイミド(商品名:FC−4400、スリーエム社製)を用いた以外は実施例4と同様にして中間転写ベルトを作製し、評価した。
[比較例1]
実施例2の弾性層の調製において、イオン導電剤を添加せず、ポリグリセリン変性シリコーンオイルだけを付加硬化型液状シリコーンゴム100質量部に対して2.85質量部の割合で添加した。それら以外は実施例2と同様にして中間転写ベルトを作製し、評価した。弾性層を調製した段階でのベルトにおける抵抗率は高く、体積抵抗率、表面抵抗率共に1.0×1014より大きく、絶縁性であった。そのため、通電耐久評価は行わなかった。
[比較例2]
実施例1の弾性層の調製において、ポリグリセリン変性シリコーンオイルを添加せずに、イオン導電剤だけを付加硬化型液状シリコーンゴム100質量部に対して0.15質量部の割合で添加した。それら以外は実施例1と同様にして中間転写ベルト作製を試みた。しかし、イオン導電剤のシリコーンゴムに対する親和性が低く、固形のままシリコーンゴムから分離したため、作製を断念した。
[比較例3]
実施例1の弾性層の調製において、ポリグリセリン変性シリコーンオイルの代わりにポリエーテル変性シリコーンオイルとしてFz2207(東レ・ダウコーニング社製、水酸基価:測定下限以下で算出不可)を用いた以外は実施例1と同様にして中間転写ベルトを作製し、評価した。
[比較例4]
実施例4の弾性層の調製において、ポリグリセリン変性シリコーンオイルの代わりにポリエーテル変性シリコーンオイルとしてFz2207(東レ・ダウコーニング社製、水酸基価:測定下限以下で算出不可)を用いた。それ以外は実施例4と同様にして中間転写ベルトを作製し、評価した。
実施例1〜8および比較例1〜4の評価結果を表1に示す。
Figure 2018180097
[画像評価]
中間転写ベルトに起因する電子写真画像上のムラの有無を評価するために、フルカラー電子写真画像形成装置(商品名:imagePRESS C800、キヤノン社製)に装着されている中間転写ベルトに代えて、実施例4、6、8および比較例4の中間転写ベルトを装着した。そして、A4サイズの普通紙(商品名:CS814、キヤノン社製)上に、青色のベタ画像を50,000枚出力した。なお、画像の形成には、上記電子写真画像形成装置のプリントカートリッジに搭載されているシアン現像剤およびマゼンタ現像剤を用いた。また、画像の出力は、常温常湿(温度25℃、相対湿度55%)環境下で行った。
50,000枚目のベタ画像をスキャナー(商品名:CanoScan 9000F、キヤノン社製)を用い、読み取り解像度600dpi、画像補正処理OFFで画像を読み込み、2,550×2,550ピクセル(およそ10.8×10.8cm)の範囲でトリミングを行った。得られた画像を表示倍率200%で目視により観察し、縞状の画像ムラが見られるか否かを下記の基準により評価した。
評価基準:
ランクA:画像ムラなし
ランクB:一部に軽微な画像ムラあり
ランクC:半分程度の領域に画像ムラあり
ランクD:全面に亘って画像ムラあり
結果を表2に示す。
Figure 2018180097
上記結果より以下のことが分かった。
本発明に係る電子写真用部材は、シリコーンゴム、イオン導電剤およびポリグリセリン変性シリコーンオイルを含む弾性層を有していることにより、通電前後での体積抵抗率の変動が抑制された。その結果、本発明の電子写真用部材を中間転写部材(中間転写ベルト)として用いることで、画像ムラのない良好な転写を実現することができた。比較として、ポリグリセリン変性シリコーンオイルに代えて、イオン導電剤と同様の相互作用が可能なポリエーテル変性シリコーンオイルを含む中間転写ベルトを作成した。この中間転写ベルトと本発明の電子写真用部材である中間転写ベルトとを比べると、本発明の電子写真用部材である中間転写ベルトの抵抗率の変動の抑制の効果が顕著であることが分かった。このことから、ポリグリセリン変性シリコーンオイルのグリセリン部分の水酸基が、本発明の電子写真用部材の抵抗率の変動の抑制効果に大きく寄与していることが分かる。
1C,1K,1M,1Y 電子写真感光体
2C,2K,2M,2Y 帯電ローラ
3C,3K,3M,3Y レーザー露光装置
4C,4K,4M,4Y 現像器
4Ya 現像ローラ
4Yb 規制ブレード
5C,5K,5M,5Y 1次転写ローラ
7 中間転写ベルト
8 2次転写ローラ
9 定着器
11 クリーニングブレード
12 カセット
13 ピックアップローラ
14 搬送ローラ対
15 レジストローラ対
16 搬送ローラ対
17 排出ローラ対
71 駆動ローラ
72 テンションローラ
73 従動ローラ
91 定着ローラ
92 加圧ローラ
Pc,Pk,Pm,Py 画像形成ユニット
S 転写材
Tc,Tk,Tm,Ty 1次転写部
T’ 2次転写部

Claims (8)

  1. 基材と、該基材上の導電性の弾性層と、を有する電子写真用部材であって、
    該弾性層は、シリコーンゴム、イオン導電剤およびポリグリセリン変性シリコーンオイルを含むことを特徴とする電子写真用部材。
  2. 前記基材がエンドレスベルト形状であり、かつ、該基材の外周面に前記弾性層を有する、請求項1に記載の電子写真用部材。
  3. 前記電子写真用部材の体積抵抗率R1が1.0×10Ω・cm以上1.0×1013Ω・cm以下の範囲にあり、
    かつ、
    該電子写真用部材の初期体積抵抗率R1と、下記ステップ(i)〜(iv)によって直流電圧を印加したときの該電子写真用部材の体積抵抗率R2との関係が、
    |(R2−R1)|/R1<0.5
    を満たす請求項1または2に記載の電子写真用部材。
    (i)該電子写真用部材から切り出した短冊形状の試験片を準備するステップ
    (ii)該短冊形状の試験片を金属ローラに絶縁テープを用いて巻きつけて第1のローラを作製するステップ
    (iii)該第1のローラを2.5kgfの荷重で、円形形状の金属芯および該金属芯の周面に形成されたカーボンブラックおよびニトリルブタジエンゴムを含有する表面層を有し、かつ体積抵抗率が1.0×10Ω・cmである第2のローラに接触させるステップ
    (iv)該第1のローラと該第2のローラの間に6.5kVの電圧を印加した状態で、該第1のローラを周速90rpmの速度で6時間回転させるステップ
  4. 前記ポリグリセリン変性シリコーンオイルの水酸基価が20mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真用部材。
  5. 前記弾性層が、導電性カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボン繊維、カーボンナノチューブからなる群から選ばれる少なくとも1つをさらに含む請求項1〜4いずれか1項に記載の電子写真用部材。
  6. 表面層をさらに有し、該表面層がフッ素樹脂化合物を含む請求項1〜5いずれか1項に記載の電子写真用部材。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子写真用部材を具備している電子写真画像形成装置。
  8. 電子写真感光体と、
    該電子写真感光体上に形成された未定着のトナー像が1次転写される中間転写体と、
    該中間転写体上に転写されたトナー像を記録媒体に2次転写させるための2次転写手段と、を備えている電子写真画像形成装置であって、該中間転写体が前記電子写真用部材である請求項7に記載の電子写真画像形成装置。
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