JP2018177733A - 抗原虫作用を持つ生薬由来化合物と生薬エキス - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、副作用が少なく且つ既存薬に対して耐性を有する原虫にたいしても有効な治療剤を提供することを目的とするものである。【解決手段】生薬由来の化合物であるバイカレイン、ルテオリン、塩化コプチシン、塩化ベルベリン、硝酸デヒドロコリダリン、塩化パルマチンあるいは生薬エキスのオウゴン、マンケイシ、オウバク、オウレンの少なくとも一つから選ばれる原虫の治療及び/又は予防のための薬剤に関する。本発明の医薬は、トキソプラズマ原虫あるいはマラリア原虫の感染又は感染により引き起こされる症状の治癒、寛解、改善、予防のために恒温動物に投与することで使用される。【選択図】なし
Description
本発明は、原虫感染症(トキソプラズマ症、マラリア)の治療・予防に有効な生薬由来化合物ならびに生薬エキスに関する。
トキソプラズマ症は,トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)が潜伏感染した家畜を加熱調理などが不十分な状態で食べることや、終宿主である猫に感染した原虫が猫の糞便中に形成する虫卵の経口摂取で引き起こされる原虫感染症である。全世界人口の約3割が潜伏感染状態と推定され、妊娠中に初めて感染したことによって引き起こされる胎児の脳発育不全や失明リスクが問題である。また、感染した原虫は潜伏感染に至り、宿主免疫系から逃れることで終生患者に感染し続ける。そのため、免疫不全状態に陥った際に、再活性化を引き起こすことで起こるトキソプラズマ脳炎や肺炎はAIDS発症患者の死因の一つであり、問題となっている(非特許文献1、2)。
一方、熱帯熱マラリアは熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)を媒介するハマダラカ(Anopheles)に吸血されることで引き起こされる原虫感染症である。本症は熱帯・亜熱帯に属するアジア、アフリカ地域の開発途上国を中心に流行しており、2015年の統計では年間約2億人が感染し、約47万人が死亡していると推定されている。妊婦や乳幼児、免疫不全患者などがリスクグループとされ、重症化した際に引き起こされる脳マラリアによる死亡や、胎盤マラリアによる流産は大きな問題となっている。
Louis M.Weiss、Kami Kim.Toxoplasma gondii:The Model Apicomplexan−Perspectives and Methods,2nd Edition. Academic Press.
厚生労働科学研究費補助金・医療技術実用化総合研究事業 熱帯病治療薬研究班「寄生虫症薬物治療の手引き 改訂第9.0版」
現行のトキソプラズマ治療薬には葉酸代謝経路を標的とするサルファ剤およびピリメサミンの合剤や、タンパク質合成系を標的とするスピラマイシンなどが知られている。しかしながら、妊娠時の胎児への影響や副作用の観点からそれぞれ使用する場面が限られているという問題があった。
現在の熱帯熱マラリア治療はアルテミシニンをベースとして複数の薬剤を組み合わせるACTs(Artemisinin-based combination therapies)がWHOによって推奨・実施されており、一定の成果を上げている。しかしながら、近年ではアルテミシニン耐性熱帯熱マラリア原虫が出現しており、さらに他の薬剤に耐性を持つ例も報告されている。長期間にわたり少数の種類の薬剤に依存する治療は耐性原虫の出現リスクを高め、将来的なマラリアコントロールに深刻な問題を与える可能性がある。
以上より副作用が少なく、従来の薬剤に対して耐性をもつ株に対しても有効な抗トキソプラズマ薬や抗マラリア薬の開発が望まれているところである。
本発明者らは、生薬エキスもしくは生薬由来の化合物が上記の課題を解決できることを見出したことにより、本発明を完成させた。
(1)生薬由来の化合物であるバイカレイン、ルテオリン、塩化コプチシン、塩化ベルベリン、硝酸デヒドロコリダリン、塩化パルマチンあるいは生薬エキスのオウゴン、マンケイシ、オウバク、オウレンの少なくとも一つから選ばれる原虫の治療及び/又は予防のための薬剤。
(2)バイカレイン、ルテオリン、塩化コプチシン、オウゴン、マンケイシ、オウバクあるいはオウレンの少なくとも一つから選ばれ、かつ原虫がトキソプラズマ原虫である、(1)に記載の治療及び/又は予防のための薬剤。
(3)塩化コプチシン、塩化ベルベリン、硝酸デヒドロコリダリン、塩化パルマチン、オウバクあるいはオウレンの少なくとも一つから選ばれ、かつ原虫がマラリア原虫である、(1)に記載の治療及び/又は予防のための薬剤。
(4)(2)に記載の抗トキソプラズマ剤を含む、トキソプラズマ症の治療及び/又は予防のための医薬。
(5)(3)に記載の抗マラリア剤を含む、マラリア症の治療及び/又は予防のための医薬。
(2)バイカレイン、ルテオリン、塩化コプチシン、オウゴン、マンケイシ、オウバクあるいはオウレンの少なくとも一つから選ばれ、かつ原虫がトキソプラズマ原虫である、(1)に記載の治療及び/又は予防のための薬剤。
(3)塩化コプチシン、塩化ベルベリン、硝酸デヒドロコリダリン、塩化パルマチン、オウバクあるいはオウレンの少なくとも一つから選ばれ、かつ原虫がマラリア原虫である、(1)に記載の治療及び/又は予防のための薬剤。
(4)(2)に記載の抗トキソプラズマ剤を含む、トキソプラズマ症の治療及び/又は予防のための医薬。
(5)(3)に記載の抗マラリア剤を含む、マラリア症の治療及び/又は予防のための医薬。
新規の抗トキソプラズマ活性を持つ化合物を同定することで、既存薬が副作用やアレルギーにより使用できなかった患者に対して治療の選択肢を広げる新薬の開発につながる可能性がある。また、副作用の緩やかな生薬は西洋医学の治療薬と併用される例もあり、既存の薬と組み合わせることで、今後より効率よくトキソプラズマ症を治療する方法を開発していく足がかりに成り得る。
赤血球内で発育するマラリア原虫に効果のある抗熱帯熱マラリア原虫作用を持つ化合物は、既存薬に耐性を獲得した熱帯熱マラリアの治療法開発の一歩となる。また既存薬と併用することにより、新たな薬剤耐性原虫の出現リスクを低減させる可能性がある。
生薬は、植物など天然の材料から抽出された複数の成分を含んでおり、その組み合わせによって副作用を軽減しながら主作用を強める効果が期待できる。また、生理活性が詳細に研究されていない成分も含まれており、既存の用途以外にも適用できる可能性が秘められている。以上の観点から、将来的にトキソプラズマ症、マラリアの治療薬/予防薬となる可能性を持つ新たな物質を、生薬由来化合物及び生薬エキスのライブラリーから同定した。
(1)抗トキソプラズマ原虫活性を持つ生薬由来化合物および生薬エキスの選抜
トキソプラズマ症を治療するには、生体内での原虫の増殖を抑制する必要があるため、抗トキソプラズマ増殖活性を持つ生薬由来化合物及び生薬エキスを、βガラクトシダーゼ発現原虫を用いた評価系でスクリーニングした。その後、抗トキソプラズマ増殖活性を持つと考えられた生薬由来化合物及び生薬エキスについて、宿主細胞に対する毒性を調べ、原虫に対する選択的薬剤の高い化合物を選抜した。
トキソプラズマ症を治療するには、生体内での原虫の増殖を抑制する必要があるため、抗トキソプラズマ増殖活性を持つ生薬由来化合物及び生薬エキスを、βガラクトシダーゼ発現原虫を用いた評価系でスクリーニングした。その後、抗トキソプラズマ増殖活性を持つと考えられた生薬由来化合物及び生薬エキスについて、宿主細胞に対する毒性を調べ、原虫に対する選択的薬剤の高い化合物を選抜した。
生薬由来化合物96種類のうち、原虫数を反映するβ-ガラクトシダーゼ活性を70%以上低下させた化合物は7種類であった(表1)。また、生薬エキス120種類の中で同様に70%以上低下させたものは6種類であった(表2)。これらのうち、同濃度で宿主細胞に対して50%以上の毒性を示したものは、原虫数の減少は宿主細胞の死滅によるものと考えられるため、チモサポニン A−IIIとゴウカンピについては、以降の検討からは除外した。その結果、6種類の生薬由来化合物および5種類の生薬エキスを抗トキソプラズマ原虫活性をもつヒット化合物として同定した。
(2)生薬由来化合物及び生薬エキスのトキソプラズマ原虫に対する選択性評価
6種類の生薬由来化合物のうち、50%原虫増殖阻害濃度/50%宿主増殖阻害濃度の値が10倍以上である化合物は4種類であった。シコニンは宿主に対しても比較的低い濃度でも毒性を示すが原虫に対する選択的阻害があることがわかった。また、バイカレイン、ルテオリン、塩化コプチシンは今回のアッセイで最高濃度の50μMでも宿主に対して毒性を示さなかったことから、原虫に対して高い選択的阻害を持つと考えられる(表2)。5種類の生薬エキスは、いずれも今回のアッセイで最高濃度である500μg/mlで宿主細胞毒性を示さなかった。中でもオウゴン、マンケイシ、オウバク、オウレンは原虫に対する50%阻害濃度が低く、原虫に対する選択的な毒性が強いことが分かった(表2)。
6種類の生薬由来化合物のうち、50%原虫増殖阻害濃度/50%宿主増殖阻害濃度の値が10倍以上である化合物は4種類であった。シコニンは宿主に対しても比較的低い濃度でも毒性を示すが原虫に対する選択的阻害があることがわかった。また、バイカレイン、ルテオリン、塩化コプチシンは今回のアッセイで最高濃度の50μMでも宿主に対して毒性を示さなかったことから、原虫に対して高い選択的阻害を持つと考えられる(表2)。5種類の生薬エキスは、いずれも今回のアッセイで最高濃度である500μg/mlで宿主細胞毒性を示さなかった。中でもオウゴン、マンケイシ、オウバク、オウレンは原虫に対する50%阻害濃度が低く、原虫に対する選択的な毒性が強いことが分かった(表2)。
以上の結果より、生薬由来化合物であるバイカレイン、ルテオリン、塩化コプチシンの4種および、生薬エキスであるオウゴン、マンケイシ、オウバク、オウレンの4種を新規の抗トキソプラズマ原虫活性をもち、今後薬剤として使用できる可能性のある物質として同定した。
(3)抗熱帯熱マラリア原虫活性および宿主細胞毒性の評価
マラリアの治療の選択肢を広げるためには、抗原虫作用を示す新規薬剤を発見することが必要である。この問題を解決するために抗熱帯熱マラリア原虫薬の候補として、1.赤血球内で発育するマラリア(赤内期)に対して発育阻害作用を持ち、2.宿主細胞への毒性が少ないことが必要である。赤内期において効果のある抗熱帯熱マラリア活性を保有する化合物をスクリーニングするために、大きく2つのスクリーニングを行なった。
マラリアの治療の選択肢を広げるためには、抗原虫作用を示す新規薬剤を発見することが必要である。この問題を解決するために抗熱帯熱マラリア原虫薬の候補として、1.赤血球内で発育するマラリア(赤内期)に対して発育阻害作用を持ち、2.宿主細胞への毒性が少ないことが必要である。赤内期において効果のある抗熱帯熱マラリア活性を保有する化合物をスクリーニングするために、大きく2つのスクリーニングを行なった。
96種の化合物(図1)および120種のエキス(図2)のスクリーニングを実施し、抗熱帯熱マラリア作用を示したもののうち90%以上の増殖阻害率を示した9化合物および19エキスが抗熱帯熱マラリア活性を示す化合物として選択された。
今回選抜された9化合物および19エキスについて、化合物については全9種類、エキスについては上位9種類を選抜し、以下の実験を進めた。9化合物および9エキスについて、低濃度(0.4μMおよび20μg/ml)での抗原虫作用を検討した。その結果低濃度においても80%以上の抗原虫作用を示す4化合物および4エキスを得た(図3)。
また、この4化合物および4エキスについて原虫に対するIC50を測定した(表3)。4化合物および4エキスについては宿主細胞への毒性を評価し、宿主細胞生存率の分布が得られた。薬剤濃度1μM以下および1μg/ml以下では、4化合物および4エキスのすべてで宿主細胞の生存率は70%以上であった。また4化合物および4エキスについて、宿主細胞に対するIC50を測定した(表3)。
以上の結果より、4化合物および4エキスの原虫への選択性指標(宿主細胞生存50%阻害濃度/原虫増殖50%阻害濃度)を計算した(表3)。選択性指標が10倍以上である化合物は4種類、エキスは2種類であった。
以上の結果より、生薬由来化合物である塩化ベルベリン、塩化コプチシン、硝酸デヒドロコリダリン、塩化パルマチンの4種および、生薬エキスであるオウバク、オウレンの2種を新規の抗マラリア原虫活性をもち、今後薬剤として使用できる可能性のある物質として同定した。
選抜した生薬エキスを以下に示す。
・オウゴン(黄):シソ科コガネバナの根の周皮を除き、乾燥したものであり、抗菌作用、解熱、利尿、抗アレルギー、解毒作用、肝機能の活性化などに用いられる。
・マンケイシ(蔓荊子):クマツヅラ科のハマゴウまたはミツバハマゴウの果実を乾燥したものであり、感冒、頭痛、関節痛、眼の充血、かすみ目などに用いられる。
・オウバク(黄柏):ミカン科のキハダまたはシナキハダの樹皮を乾燥したものであり、下痢、腹痛、黄疸、湿疹、腫れ物などに用いられる。
・オウレン(黄連):キンポウゲ科のセリバオウレンなどの根茎を乾燥したものであり、食欲不振、腹痛、下痢、意識障害、不眠、鼻血などに用いられる。
・オウゴン(黄):シソ科コガネバナの根の周皮を除き、乾燥したものであり、抗菌作用、解熱、利尿、抗アレルギー、解毒作用、肝機能の活性化などに用いられる。
・マンケイシ(蔓荊子):クマツヅラ科のハマゴウまたはミツバハマゴウの果実を乾燥したものであり、感冒、頭痛、関節痛、眼の充血、かすみ目などに用いられる。
・オウバク(黄柏):ミカン科のキハダまたはシナキハダの樹皮を乾燥したものであり、下痢、腹痛、黄疸、湿疹、腫れ物などに用いられる。
・オウレン(黄連):キンポウゲ科のセリバオウレンなどの根茎を乾燥したものであり、食欲不振、腹痛、下痢、意識障害、不眠、鼻血などに用いられる。
化(1)から化(6)で表される化合物は、そのまま抗トキソプラズマ剤あるいは抗マラリア剤として利用してもよく、さらに賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、固結・付着防止剤、滑沢剤、吸収・吸着担体、溶剤、増量剤、等張化剤、溶解補助剤、乳化剤、懸濁化剤、増粘剤、被覆剤、吸収促進剤、ゲル化・凝固促進剤、光安定化剤、保存剤、防湿剤、乳化・懸濁・分散安定化剤、着色防止剤、脱酸素・酸化防止剤、矯味・矯臭剤、着色剤、起泡剤、消泡剤、無痛化剤、帯電防止剤、緩衝・pH調節剤などの各種添加物を配合して抗トキソプラズマ剤若しくは抗マラリア剤、又はこれを含む医薬若しくは医薬組成物として利用してもよい。
本発明の第二の態様は、第一の態様の抗トキソプラズマ剤あるいは抗マラリア剤を含む、トキソプラズマ症あるいはマラリアの治療及び/又は予防のための医薬に関する。
本発明との関連でトキソプラズマ症あるいはマラリア症とは、トキソプラズマ原虫あるいはマラリア原虫の感染、又は感染により引き起こされるあらゆる症状若しくは状態をいう。本発明の医薬は、かかる感染若しくはこれに伴う症状若しくは状態の治癒、寛解、改善、予防のために恒温動物に投与することで使用される。
本発明の医薬の剤形としては、経口剤(錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤など)、注射剤、坐剤、外用剤(軟膏剤、貼付剤など)、エアゾ−ル剤などを挙げることができる。
錠剤、散剤、顆粒剤などの経口用固形製剤は、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロ−ス、無水第二リン酸カルシウム、部分アルファ化デンプン、コ−ンスタ−チ及びアルギン酸などの賦形剤;単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、ポリビニルアルコ−ル、ポリビニルエ−テル、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロ−ス、セラック、メチルセルロ−ス、エチルセルロ−ス、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、ヒドロキシプロピルセルロ−ス、水及びエタノ−ルなどの結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸、寒天末、デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロ−スナトリウム、カルボキシメチルセルロ−スカルシウム及びデンプングリコ−ル酸ナトリウムなどの崩壊剤;ステアリルアルコ−ル、ステアリン酸、カカオバタ−及び水素添加油などの崩壊抑制剤;ケイ酸アルミニウム、リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、タルク、無水ケイ酸などの固結防止・付着防止剤;カルナバロウ、軽質無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、硬化油、硬化植物油誘導体、胡麻油、サラシミツロウ、酸化チタン、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、リン酸水素カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びポリエチレングリコ−ルなどの滑沢剤;第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、尿素及び酵素などの吸収促進剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びコロイド状ケイ酸などの吸収・吸着担体といった固形製剤化医薬用添加物を用い、常法に従い調製すればよい。
さらに錠剤は、必要に応じ、通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、胃溶性被覆錠、腸溶性被覆錠及び水溶性フィルムコ−ティング錠とすることができる。
カプセル剤は、上記で例示した各種の医薬を、硬質ゼラチンカプセル及び軟質カプセルなどに充填して調製される。
また、溶剤、増量剤、等張化剤、溶解補助剤、乳化剤、懸濁化剤、増粘剤などの上記した各種の液体製剤化用添加物を用い、常法に従い調製して、水性又は油性の懸濁液、溶液、シロップ及びエリキシル剤とすることもできる。
注射剤は、例えば、水、エチルアルコ−ル、マクロゴ−ル、プロピレングリコ−ル、クエン酸、酢酸、リン酸、乳酸、乳酸ナトリウム、硫酸及び水酸化ナトリウムなどの希釈剤;クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及びリン酸ナトリウムなどのpH調整剤及び緩衝剤;ピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、チオグリコ−ル酸及びチオ乳酸などの安定化剤;食塩、ブドウ糖、マンニト−ル又はグリセリンなどの等張化剤;カルボキシメチルセルロ−スナトリウム、プロピレングリコ−ル、安息香酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、ウレタン、エタノ−ルアミン、グリセリンなどの溶解補助剤;グルコン酸カルシウム、クロロブタノ−ル、ブドウ糖、ベンジルアルコ−ルなどの無痛化剤;及び局所麻酔剤などの液体製剤化用の医薬品添加物を用い、常法に従い調製すればよい
本発明の医薬の投与方法は特に限定されないが、製剤の形態に応じて適宜決定される。例えば、非経口製剤である場合は、血管内投与(好ましくは静脈内投与)、腹腔内投与、腸管内投与、皮下投与などを挙げることができる。好ましい実施形態の一つにおいて、本発明の抗トキソプラズマ剤は、経口投与、静脈内投与により生体に投与される。
本発明の医薬の投与量は、投与された対象において治療及び/又は予防効果を奏する量、すなわち有効量であればよい。有効量は対象となる動物の種類、症状の程度、ヒトにあっては患者の年齢、性別、疾患の形態その他の条件などに応じて適宜選択されるが、通常成人に対して体重1kgあたり10μg〜2000μg、好ましくは50μg〜1000μg、より好ましくは100μg〜500μgであり、これを1日に1回若しくは複数回に分けて、又は間歇的に投与することができる。
本発明の第三の態様は、第二の態様の医薬の有効量を対象に投与することを含む、トキソプラズマ症あるいはマラリアを治療及び/又は予防する方法に関するものである。
以下に本発明の具体的な実施例を示すが、これに限定されるものではない。
本発明に用いた生薬由来化合物および生薬エキスは和漢医薬学総合研究所から分与された和漢薬ライブラリーを使用して行った。
(1)抗トキソプラズマ原虫活性を持つ生薬の選抜
(方法1)抗トキソプラズマ原虫活性の評価
バクテリア型β-ガラクトシダーゼを発現した原虫株であるRH_2F株RH(ATCC:50839)をヒト初代繊維芽細胞であるHFF細胞に感染させ、生薬由来化合物10μMまたは生薬エキス100μg /ml存在下で48時間培養し、溶媒対照であるDMSO群と比較した際のβ-ガラクトシダーゼ活性の減少を、生薬による原虫増殖阻害効果として測定した。
(方法1)抗トキソプラズマ原虫活性の評価
バクテリア型β-ガラクトシダーゼを発現した原虫株であるRH_2F株RH(ATCC:50839)をヒト初代繊維芽細胞であるHFF細胞に感染させ、生薬由来化合物10μMまたは生薬エキス100μg /ml存在下で48時間培養し、溶媒対照であるDMSO群と比較した際のβ-ガラクトシダーゼ活性の減少を、生薬による原虫増殖阻害効果として測定した。
(方法2)宿主細胞に対する毒性の評価
HFF細胞を方法1同じ濃度の生薬由来化合物および生薬エキス存在下で48時間培養し、宿主細胞数(HFF細胞数)を測定した。
HFF細胞を方法1同じ濃度の生薬由来化合物および生薬エキス存在下で48時間培養し、宿主細胞数(HFF細胞数)を測定した。
(2)生薬由来化合物及び生薬エキスのトキソプラズマ原虫に対する選択性評価
(1)と同様の原虫株および宿主細胞に対する生薬の50%増殖阻害濃度をそれぞれ算出し、比較した。50%原虫増殖阻害濃度/50%宿主細胞増殖阻害濃度の値が10以上である化合物を新規薬剤候補とした。
(1)と同様の原虫株および宿主細胞に対する生薬の50%増殖阻害濃度をそれぞれ算出し、比較した。50%原虫増殖阻害濃度/50%宿主細胞増殖阻害濃度の値が10以上である化合物を新規薬剤候補とした。
(3)抗熱帯熱マラリア原虫活性および宿主細胞に対する毒性の評価
(方法1)抗原虫作用の測定
一次スクリーニングとしてD-ソルビトール処理により初期トロホゾイトに同調させた熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum 3D7を0.3%パラシテミア(全赤血球におけるマラリア原虫感染赤血球の割合)、1%ヘマトクリットに調製し、化合物110μM または エキス100μg/mlとなるように候補薬剤を添加した培養液150μLを用いて37℃、5%O2、5%CO2の条件で96時間培養した。途中48時間で培養液を50μL加えた。96時間後に回収して塗抹を作製し、検鏡によってパラシテミアを測定し、薬剤添加群とコントロール群と比較することで抗原虫作用を評価した。陽性コントロールにはピリメタミン、陰性コントロールには滅菌水を用いた。
(方法1)抗原虫作用の測定
一次スクリーニングとしてD-ソルビトール処理により初期トロホゾイトに同調させた熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum 3D7を0.3%パラシテミア(全赤血球におけるマラリア原虫感染赤血球の割合)、1%ヘマトクリットに調製し、化合物110μM または エキス100μg/mlとなるように候補薬剤を添加した培養液150μLを用いて37℃、5%O2、5%CO2の条件で96時間培養した。途中48時間で培養液を50μL加えた。96時間後に回収して塗抹を作製し、検鏡によってパラシテミアを測定し、薬剤添加群とコントロール群と比較することで抗原虫作用を評価した。陽性コントロールにはピリメタミン、陰性コントロールには滅菌水を用いた。
一次スクリーニングで抗原虫作用を示した化合物について、より低濃度での抗原虫作用を評価するため、薬剤濃度を複数段階(化合物:50、10、2、0.4μM / エキス:100、20、4、0.8μg/ml)にふった培養液を用意し、一次スクリーニングと同様の実験を二次スクリーニングとして行なった。二次スクリーニングにおいて低濃度で抗原虫作用を示した化合物およびエキスについてはIC50(50%阻害濃度)を測定した。
(方法2)宿主細胞生存率の評価
熱帯熱マラリア原虫の宿主であるヒトの細胞のうち、ヒト胎児腎臓上皮由来293T細胞に薬剤を添加した10%FBS含DMEM培地で37℃、5%O2、5%CO2の条件で48時間培養し、溶媒対照群と比べた際の細胞数の変化を宿主細胞生存率として測定した。
熱帯熱マラリア原虫の宿主であるヒトの細胞のうち、ヒト胎児腎臓上皮由来293T細胞に薬剤を添加した10%FBS含DMEM培地で37℃、5%O2、5%CO2の条件で48時間培養し、溶媒対照群と比べた際の細胞数の変化を宿主細胞生存率として測定した。
Claims (5)
- 生薬由来の化合物であるバイカレイン、ルテオリン、塩化コプチシン、塩化ベルベリン、硝酸デヒドロコリダリン、塩化パルマチンあるいは生薬エキスのオウゴン、マンケイシ、オウバク、オウレンの少なくとも一つから選ばれる原虫の治療及び/又は予防のための薬剤。
- バイカレイン、ルテオリン、塩化コプチシン、オウゴン、マンケイシ、オウバクあるいはオウレンの少なくとも一つから選ばれ、かつ原虫がトキソプラズマ原虫である、請求項1に記載の治療及び/又は予防のための薬剤。
- 塩化コプチシン、塩化ベルベリン、硝酸デヒドロコリダリン、塩化パルマチン、オウバクあるいはオウレンの少なくとも一つから選ばれ、かつ原虫がマラリア原虫である、請求項1に記載の治療及び/又は予防のための薬剤。
- 請求項2に記載の抗トキソプラズマ剤を含む、トキソプラズマ症の治療及び/又は予防のための医薬。
- 請求項3に記載の抗マラリア剤を含む、マラリア症の治療及び/又は予防のための医薬。
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JP2017083202A Pending JP2018177733A (ja) | 2017-04-19 | 2017-04-19 | 抗原虫作用を持つ生薬由来化合物と生薬エキス |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2018177733A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022196614A1 (ja) * | 2021-03-17 | 2022-09-22 | 国立大学法人 長崎大学 | シャーガス病治療又は予防剤 |
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2017
- 2017-04-19 JP JP2017083202A patent/JP2018177733A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2022196614A1 (ja) * | 2021-03-17 | 2022-09-22 | 国立大学法人 長崎大学 | シャーガス病治療又は予防剤 |
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