JP2018176428A - 立体造形装置 - Google Patents

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佑士 若林
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博一 宇佐美
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崇 加瀬
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Abstract

【課題】衝撃強度に優れた立体造形物を短い時間で作製可能な技術を提供する。【解決手段】複数の材料層を積層することにより造形物を作製する造形装置であって、材料層を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段により形成される材料層を加熱しながら積層する積層手段と、制御手段と、を有し、作製中の造形物の上に材料層を溶着するために必要な温度を目標温度、材料層の温度が前記目標温度に到達するために必要な加熱時間を第1時間、とよぶ場合に、前記積層手段は、加熱時間が前記第1時間よりも短い第1モードと、加熱時間が前記第1時間よりも長い第2モードを含む、複数のモードを有しており、前記制御手段は、造形物を構成する複数の材料層のうちの一部の材料層を前記第1モードで積層し、残りの材料層のうちの少なくとも一部の材料層を前記第2モードで積層するように、前記積層手段を制御する。【選択図】図5

Description

本発明は、立体造形技術に関し、特にシート積層タイプの立体造形技術に関する。
近年、アディティブマニファクチャリング(AM)、3次元プリンタ、ラピッドプロトタイピング(RP)等で呼称される、立体造形技術が注目を集めている(本明細書ではこれらの技術を総称してAM技術と呼ぶ)。AM技術は、立体物の3次元形状データをスライスして複数のスライス形状データを生成し、その各スライス形状データを基に造形材料により各レイヤーを形成し、造形材料のレイヤーを順次積層し固着することで、立体物を造形する技術である。
AM技術は、部分的に材料を積層していく方法であることから、生産性という観点でみると、同一形状のものを大量に生産するという従来の方式に比べて一つの立体造形物を作製するのに時間が長くかかるということが知られている。
また、これらのAM技術では、用いることが可能な材料の種類が限られることから、積層造形物の機械的強度、耐熱性、質感に関して所望の特性を得るために必要な材料を自由に用いることができないということも知られている。
特許文献1には、シート積層タイプの立体造形装置が提案されている。
特表平8−511217号公報
特許文献1では、中間担持体(転写ベルト)とステージとを材料層を介して間接的に接触させ、ステージを中間担持体及び温度制御装置(対向部材)に押し当てることで材料層と立体造形物に熱と圧を加えて積層固着を行う。この装置において造形物の衝撃強度を向上させようとする場合、各層毎に熱を加えて層同士の結びつきを強くする必要がある。しかし、加熱時間を長くすると積層に時間がかかってしまい、好ましくない。そのため、造形物の強度を保ちつつ積層時間を短くすることが求められている。なお、特許文献1には具体的な積層時の加熱条件(温度・圧力・時間)は記載されていない。
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、衝撃強度に優れた立体造形物を短い時間で作製可能な技術を提供することを目的とする。
本発明の第一側面は、複数の材料層を積層することにより造形物を作製する造形装置であって、材料層を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段により形成される材料層を加熱しながら積層する積層手段と、制御手段と、を有し、作製中の造形物の上に材料層を溶着するために必要な温度を目標温度、材料層の温度が前記目標温度に到達するために必要な加熱時間を第1時間、とよぶ場合に、前記積層手段は、加熱時間が前記第1時間よりも短い第1モードと、加熱時間が前記第1時間よりも長い第2モードを含む、複数のモードを有しており、前記制御手段は、造形物を構成する複数の材料層のうちの一部の材料層を前記第1モードで積層し、残りの材料層のうちの少なくとも一部の材料層を前記第2モードで積層するように、前記積層手段を制御することを特徴とする造形装置を提供する。
本発明の第二側面は、複数の材料層を積層することにより造形物を作製する造形装置の
制御方法であって、画像形成部により材料層を形成するステップと、積層部により材料層を加熱しながら積層するステップと、を有し、作製中の造形物の上に材料層を溶着するために必要な温度を目標温度、材料層の温度が前記目標温度に到達するために必要な加熱時間を第1時間、とよぶ場合に、前記積層部は、加熱時間が前記第1時間よりも短い第1モードと、加熱時間が前記第1時間よりも長い第2モードを含む、複数のモードを有しており、前記積層するステップは、造形物を構成する複数の材料層のうちの一部の材料層を前記第1モードで積層するステップと、残りの材料層のうちの少なくとも一部の材料層を前記第2モードで積層するステップとを含むことを特徴とする造形装置の制御方法を提供する。
本発明によれば、衝撃強度に優れた立体造形物を短い時間で作製することができる。
第1実施形態に係る立体造形装置の全体構成を模式的に示す図。 材料層形成部及び現像装置の構成を示す図。 温度制御装置の構成例を示す図。 立体造形装置の動作シーケンスを示すフローチャート。 第1実施形態に係る積層シーケンスを示すフローチャート。 本実施形態の積層シーケンスの場合の温度プロファイルを示す図。 比較形態の積層シーケンスの場合の温度プロファイルを示す図。 材料層及び立体造形物の上面の温度と時間の関係を示す図。 実施例及び比較例で作製した立体造形物の形状を示す図。 実施例と比較例の実験結果を示す表。 加熱時間と接着強度との関係を示す図。 第2実施形態の積層ユニットと造形物の内部温度を示す図。 加熱時間と接着強度との関係を示す図。 第2実施形態に係る積層シーケンスを示すフローチャート。 造形物の内部温度変化と接着強度を示す図。
本発明は、複数の材料層(造形材料によって形成された像。材料画像、粒子像、粉体像などとも呼ばれる。)を積層することにより造形物を作製する造形装置に関し、より詳しくは、材料層を加熱しながら順次積層するタイプの造形装置に関する。この種の造形装置においては、作製中の造形物の上に新たな材料層を確実に溶着し必要な衝撃強度を得るためには、当該材料層を所定の目標温度まで十分に加熱する必要がある。しかし、造形物を構成するすべての層の積層プロセスにおいて、目標温度に到達させるために必要な加熱時間(第1時間と呼ぶ)を確保すると、造形に要する時間が長大となり好ましくない。
そこで以下に述べる実施形態では、積層プロセスのモードとして、加熱時間が第1時間よりも短い第1モード(仮接着モードと呼ぶ)と、加熱時間が第1時間よりも長い第2モード(本接着モードと呼ぶ)を含む複数のモードを用意する。そして、制御ユニットが、造形物を構成する複数の材料層のうちの一部の材料層を第1モードで積層し、残りの材料層のうちの少なくとも一部の材料層を第2モードで積層するように、積層ユニットを制御する。これにより、すべての材料層について第1時間以上の加熱を行う従来装置に比べ、加熱時間の合計を同じか減らしつつも、衝撃強度のより強い造形物を作製することができる(詳しくは後述する)。
以下、この発明を実施するための形態を図面を参照して例示的に説明する。第1実施形態は、所定の数の材料層を第1モードで積層した後、次の材料層を第2モードで積層する
、というシーケンスを繰り返し実行する例である。また第2実施形態は、所定の数の材料層まで第1モードで積層した後、残りの材料層を第2モードで積層する、というシーケンスを実行する例である。ただし、以下の実施形態に記載されている各部材の寸法、材質、形状、その相対配置など、各種制御の手順、制御パラメータ、目標値などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
<第1実施形態>
[立体造形装置の全体構成]
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る立体造形装置の全体構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る立体造形装置の全体構成を模式的に示す図である。
本実施形態の立体造形装置は、粒子材料を2次元に配置した材料層を積層することによって立体造形物を生成する方式のAM(Additive Manufacturing)システムである。この装置は、3Dプリンタ、RP(Rapid Prototyping)システムなどとも呼ばれる。
図1に示すように、立体造形装置は、概略、制御部(制御ユニットとも称する)U1、画像形成部(画像形成ユニット)U2、積層部(積層ユニット)U3を有して構成される。制御ユニットU1は、造形対象物の3次元形状データから複数層のスライスデータ(断面データ)を生成する処理、立体造形装置の各部の制御などを担うユニットである。画像形成ユニットU2は、電子写真プロセスを利用して粒子材料からなる材料層を形成するユニットである。そして、積層ユニットU3は、画像形成ユニットU2で形成された複数層の材料層を順に積層し固着することによって、立体造形物を形成するユニットである。
これらのユニットU1〜U3は、互いに異なる筐体を有していてもよいし、1つの筐体の中に収められていてもよい。ユニットU1〜U3を別筐体にする構成は、立体造形装置の用途、要求性能、使用したい材料、設置スペース、故障などに応じて、ユニットの組み合わせや交換などを容易に行うことができ、装置構成の自由度及び利便性を向上できるという利点がある。一方、全てのユニットを1つの筐体内に収める構成は、装置全体の小型化、コストダウンなどの利点がある。なお、図1のユニット構成はあくまでも一例であり、他の構成を採用しても構わない。
[制御ユニット]
制御ユニットU1の構成を説明する。図1に示すように、制御ユニットU1は、その機能として、3次元形状データ入力部U10、スライスデータ計算部U11、画像形成ユニット制御部U12、積層ユニット制御部U13などを有する。
3次元形状データ入力部U10は、外部装置(例えばパソコンなど)から造形対象物の3次元形状データを受け付ける機能である。3次元形状データとして、3次元CAD、3次元モデラー、3次元スキャナなどで作成・出力されたデータを用いることができる。そのファイル形式は問わないが、例えば、STL(StereoLithography)ファイル形式を好ましく用いることができる。
スライスデータ計算部U11は、3次元形状データで表現された造形対象物を所定のピッチでスライスして各層の断面形状を計算し、その断面形状を基に画像形成ユニットU2で像形成に用いる画像データ(スライスデータと呼ぶ)を生成する機能である。さらに、スライスデータ計算部U11は、3次元形状データ又は上下層のスライスデータを解析して、オーバーハング部(宙に浮く部分)の有無を判断し、必要に応じてスライスデータにサポート材料用の像を追加する。
画像形成ユニット制御部U12は、スライスデータ計算部U11で生成されたスライス
データを基に、画像形成ユニットU2における材料層形成プロセスを制御する機能である。また、積層ユニット制御部U13は、積層ユニットU3における積層プロセスを制御する機能である。各ユニットでの具体的な制御内容については後述する。
[画像形成ユニット]
次に、画像形成ユニットU2の構成を説明する。画像形成ユニットU2は、電子写真プロセスを利用して粒子材料からなる材料層を形成するユニットである。電子写真プロセスとは、感光体を帯電し、露光によって潜像を形成し、現像剤粒子を付着させて現像剤像を形成するという一連のプロセスによって、所望の像を形成する手法である。電子写真プロセスの原理は複写機等の2Dプリンタで用いられているものと共通するが、立体造形装置では現像剤として材料の特性がトナー材料とは異なるものを用いるため、2Dプリンタにおけるプロセス制御や部材構造をそのまま利用できない場合も多い。
図1に示すように、画像形成ユニットU2は、第1の材料層形成部10a、第2の材料層形成部10b、中間担持搬送ベルト11(以下、第1ベルト11と呼ぶ)、ベルトクリーニング装置12、画像検知センサー13を備えている。第1の材料層形成部10aは、第1の粒子材料Maを用いて材料層を形成するための材料層形成手段であり、像担持体100a、帯電装置101a、露光装置102a、現像装置103a、転写装置104a、クリーニング装置105aを有する。また、第2の材料層形成部10bは、第2の粒子材料Mbを用いて材料層を形成するための材料層形成手段であり、像担持体100b、帯電装置101b、露光装置102b、現像装置103b、転写装置104b、クリーニング装置105bを有する。
本実施形態では、第1の粒子材料Maとして、熱可塑性の樹脂などからなる構造材料を用い、第2の粒子材料Mbとして、熱可塑性及び水溶性を有するサポート材料を用いる。構造材料としては例えばPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、ABS、PS(ポリスチレン)などを用いることができる。サポート材料としては例えば糖質、ポリ乳酸(PLA)、PVA(ポリビニルアルコール)、PEG(ポリエチレングリコール)などを用いることができる。各材料の粒子の直径は5μm以上50μm以下が好ましく、本実施形態では約20μmのものを用いる。
以下、画像形成ユニットU2の各部の構成について詳しく説明する。ただし、材料層形成部10a〜10dに共通する説明の中では、構成部材の参照符号の添え字a〜dを省略し、材料層形成部10、像担持体100などと記載する。
(像担持体)
図2Aは、材料層形成部10の構成を示す図であり、図2Bは、現像装置103の詳細構成を示す図である。
像担持体100は、静電潜像を担持するための部材である。ここでは、アルミニウムなどの金属製シリンダーの外周面に光導電性を有する感光体層が形成された感光体ドラムが用いられる。感光体としては、有機感光体(OPC)、アモルファスシリコン感光体、セレン感光体などを用いることができ、立体造形装置の用途や要求性能に応じて感光体の種類を適宜選択すればよい。像担持体100は、不図示の枠体に回転自在に支持されており、像形成時には不図示のモーターによって図中の時計周りに一定速度で回転する。
(帯電装置)
帯電装置101は、像担持体100の表面を一様に帯電させるための帯電手段である。本実施形態ではコロナ放電による非接触帯電方式を用いるが、帯電ローラーを像担持体100の表面に接触させるローラー帯電方式など他の帯電方式を用いても構わない。
(露光装置)
露光装置102は、画像情報(スライスデータ)に従って像担持体100を露光し、像担持体100の表面上に静電潜像を形成する露光手段である。露光装置102は、例えば、半導体レーザや発光ダイオードなどの光源と、高速回転するポリゴンミラーからなる走査機構と、結像レンズなどの光学部材とを有して構成される。
(現像装置)
現像装置103は、現像剤(ここでは、構造材料又はサポート材料の粒子)を像担持体100に供給することで、静電潜像を可視化する現像手段である(本明細書では、現像剤によって可視化された像を材料層と称す。)。
現像装置103は、いわゆる現像カートリッジの構造をとり、画像形成ユニットU2に対し着脱自在に設けられているとよい。カートリッジの交換により現像剤(構造材料、サポート材料)の補充・変更が容易にできるからである。あるいは、像担持体100、現像装置103、クリーニング装置105などを一体のカートリッジとし(いわゆるプロセスカートリッジ)、像担持体自体の交換を可能にしてもよい。構造材料やサポート材料の種類、固さ、粒径により像担持体100の摩耗や寿命が特に問題となる場合には、プロセスカートリッジ構成の方が実用性・利便性に優れる。
(転写装置)
転写装置104は、像担持体100上の材料層を第1ベルト11の表面上へと転写させる転写手段である。転写装置104は、第1ベルト11を挟んで像担持体100の反対側に配置されており、像担持体100上の材料層と逆極性の電圧を印加することで、静電的に材料層を第1ベルト11側へと転写させる。像担持体100から第1ベルト11への転写を1次転写とも称す。なお、本実施形態ではコロナ放電を利用した転写方式を用いるが、ローラー転写方式や、静電転写方式以外の転写方式を用いても構わない。
(クリーニング装置)
クリーニング装置105は、転写されずに像担持体100上に残った現像剤粒子を回収し、像担持体100の表面を清浄する手段である。本実施形態では、像担持体100に対しカウンター方向に当接させたクリーニングブレードによって現像剤粒子を掻き落とすブレード方式のクリーニング装置105を採用するが、ブラシ方式や静電吸着方式のクリーニング装置を用いてもよい。
(第1ベルト)
第1ベルト11は、各材料層形成部10で形成された材料層が転写される担持体である。上流側の材料層形成部10aから構造材料の材料層が転写された後、それと位置を合せて、下流側の材料層形成部10bからサポート材料の材料層が転写されることで、第1ベルト11の表面上に1枚の材料層が形成される。
第1ベルト11は、樹脂、ポリイミドなどの材料からなる無端ベルトであり、図1に示すように、複数のローラー110、111に張架されている。なお、ローラー110、111の他にテンションローラーを設け、第1ベルト11のテンションを調整できるようにしてもよい。ローラー110、111のうち少なくとも一方は駆動ローラーであり、像形成時には不図示のモーターの駆動力によって第1ベルト11を図中反時計周りに回転させる。また、ローラー110は、積層ユニットU3の2次転写ローラー31との間で2次転写部を形成するローラーである。
(ベルトクリーニング装置)
ベルトクリーニング装置12は、第1ベルト11の表面に付着した材料をクリーニングする手段である。本実施形態では、第1ベルト11に対しカウンター方向に当接させたクリーニングブレードによって材料を掻き落とすブレード方式のクリーニング装置を採用す
るが、ブラシ方式や静電吸着方式のクリーニング装置を用いてもよい。
(画像検知センサー)
画像検知センサー13は、第1ベルト11の表面に担持された材料層を読み取る検知手段である。画像検知センサー13の検知結果は、材料層の位置合わせ、後段の積層ユニットU3とのタイミング制御、材料層の異常検知(所望の像でない、像が無い、厚みのばらつきが大きい、像の位置ずれが大きいなど)などに利用される。
[積層ユニット]
次に、積層ユニットU3の構成を説明する。積層ユニットU3は、画像形成ユニットU2で形成された材料層を第1ベルト11から受け取り、これを順に積層し固着することによって、立体造形物を形成するユニットである。
図1に示すように、積層ユニットU3は、第2の中間担持搬送ベルト30(以下、第2ベルト30と呼ぶ)、2次転写ローラー31、画像検知センサー32、温度制御装置(対向部材)33、ステージ34を備えている。以下、積層ユニットU3の各部の構成について詳しく説明する。
(第2ベルト)
第2ベルト30は、画像形成ユニットU2で形成された材料層を第1ベルト11から受け取り、その材料層を積層位置まで担持搬送する第2の担持体である。積層位置とは、材料層の積層(生成中の立体造形物への積み上げ)が行われる位置であり、図1の構成では、第2ベルト30が温度制御装置33とステージ34とで挟まれる部分が積層位置に該当する。
第2ベルト30は、樹脂、ポリイミド、金属などの材料からなる無端ベルトであり、図1に示すように、2次転写ローラー31、及び、複数のローラー301、302、303、304に張架されている。ローラー31、301、302のうち少なくともいずれかが駆動ローラーであり、不図示のモーターの駆動力によって第2ベルト30を図中時計周りに回転させる。ローラー303、304は、第2ベルト30のテンションの調整と、積層位置を通過する第2ベルト30(つまり積層時の材料層)を平らに保つ役割を担うローラー対である。
ここで、積層位置における第2ベルト30の搬送方向をX方向とし、搬送方向に垂直な方向を幅方向(Y方向)、立体造形物37が積層されていく方向を積層方向(Z方向)とする。
(2次転写ローラー)
2次転写ローラー31は、画像形成ユニットU2の第1ベルト11から、積層ユニットU3の第2ベルト30へと、材料層を転写させるための転写手段である。2次転写ローラー31は、画像形成ユニットU2の対向ローラー110との間で第1ベルト11及び第2ベルト30を挟み込むことで、両者のベルト間に2次転写ニップを形成する。そして、不図示の電源により2次転写ローラー31に材料層とは逆極性のバイアスを印加することで、材料層を第2ベルト30側へと転写させる。
(画像検知センサー)
画像検知センサー32は、第2ベルト30の表面に担持された材料層を読み取る検知手段である。画像検知センサー32の検知結果は、材料層の位置合わせ、積層位置への搬送タイミング制御などに利用される。
(温度制御装置)
温度制御装置33は、積層位置に搬送された第2ベルト30上の材料層36にステージ
34又は立体造形物37を当接させた際に、材料層36の温度を制御する温度制御手段である。温度制御装置33は、立体造形物37と材料層36に圧力を加えるための対向部材としての役割も兼ね備えている。温度制御装置33は、第2ベルト30を挟んでステージ34と対向する位置に配置され、下面(ベルト側の面)は平面となっており、不図示の駆動手段によって第2ベルト30と当接・離間することができる。温度制御装置33は、第2ベルト30が回転しているときには離間し、積層固着時には第2ベルト30と当接することで、第2ベルト30の摩耗を防ぐとともに、スムーズな熱の受け渡しが可能になる。
温度制御装置33はシーズヒータ、セラミックヒータ、ハロゲンヒータなどを用いることができる。また、加熱だけでなく、チラーなどを用いて放熱ないし冷却により材料層36の温度を積極的に低下させる構成を設けてもよい。また、図3のように、温度制御装置33を加熱部331、冷却部332に分けて、加熱時と冷却時にスライドさせることで、それぞれを使い分ける構成にしても良い。
(ステージ)
ステージ34は、立体造形物が積層される平面台である。ステージ34は、不図示のアクチュエータによって上下方向(積層位置のベルト面に垂直な方向)に移動可能である。積層位置まで担持搬送された材料層を温度制御装置33との間で挟み込み、加圧、加熱(必要に応じて放熱ないし冷却)を行うことで、第2ベルト30側からステージ34側へと材料層を転写させる。1層目の材料層はステージ34の上に直接転写され、2層目以降の材料層はステージ34上の立体造形物(作成中のもの)の上に積み上げられていく。このように本実施形態では、温度制御装置33とステージ34によって、材料層を積層する積層手段が構成される。
[立体造形装置の動作]
次に、上記構成を有する立体造形装置の動作について説明する。ここでは既に制御ユニットU1によるスライスデータの生成処理は完了しているものとして、各層の材料層を形成するプロセスと、材料層を積層するプロセスを順に説明する。図4は、本実施形態の立体造形装置の動作シーケンスを示すフローチャートである。
(材料層形成プロセス)
まず、制御ユニットU1は、各材料層形成部10の像担持体100、第1ベルト11、及び、第2ベルト30が同じ外周速度(プロセス速度)で同期して回転するよう、モーター等の駆動源を制御する。
回転速度が安定した後、最上流の材料層形成部10aの像形成を開始する(ステップS501)。すなわち、制御ユニットU1は、帯電装置101aを制御し、像担持体100aの表面全域を所定の極性でかつ所定の帯電電位でほぼ均一に帯電させる。続いて制御ユニットU1は、帯電した像担持体100aの表面を露光装置102aによって露光する。ここでは、露光によって電荷を除去することにより、露光部と非露光部との間に電位差を形成する。この電位差による像が静電潜像である。一方、制御ユニットU1は、現像装置103aを駆動して、像担持体100a上の潜像に構造材料の粒子を付着させ、構造材料の画像を形成する。この材料画像は、転写装置104aによって第1ベルト11上へと1次転写される。
また、制御ユニットU1は、材料層形成部10aでの像形成開始から所定の時間差で下流側の材料層形成部10bの像形成を開始する(ステップS502)。材料層形成部10bにおける像形成も材料層形成部10aにおける像形成と同様の手順で行われる。ここで、像形成開始の時間差は、上流側の材料層形成部10aにおける1次転写ニップから下流側の材料層形成部10bにおける1次転写ニップまでの距離をプロセス速度で割った値に
設定される。これにより、それぞれの材料層形成部10a、10bで形成された2つの材料画像が第1ベルト11上で位置合わせして配置され、構造材料とサポート材料からなる1層分の材料層が形成される(ステップS503)。なお、オーバーハング部がなくサポート部分が必要無い断面の場合には、材料層形成部10bの像形成は行われない。その場合、構造材料の材料層のみで材料層が形成されることとなる。その後、材料層は第1ベルト11によって積層ユニットU3へと搬送される。
(積層プロセス)
上記のように材料層の形成動作が行われている間、積層ユニットU3の第2ベルト30は第1ベルト11に接触した状態で、同じ外周速度(プロセス速度)で同期回転している。そして、第1ベルト11上の材料層の前端が2次転写ニップに到達するタイミングに合わせて、制御ユニットU1が2次転写ローラー31に所定の転写バイアスを印加し、材料層を第2ベルト30へ転写させる(ステップS504)。
第2ベルト30は同じプロセス速度のまま回転を続け、材料層を図1の矢印方向に搬送する。そして、画像検知センサー32によってベルト上の材料層の位置を検知すると、制御ユニットU1はその検知結果を基に材料層を所定の積層位置まで搬送する(ステップS505)。材料層が積層位置に到達するタイミングで制御ユニットU1は第2ベルト30を停止し、材料層を積層位置に位置決めする(ステップS506)。
その後、制御ユニットU1は不図示の駆動手段によって温度制御装置33を第2ベルトと当接する位置まで下降させてから、ステージ34を上昇させる(ベルト面に近づける)。ステージ面(1層目の場合)又はステージ面上に形成された立体造形物の上面(2層目以降の場合)を第2ベルト30上の材料層に接触させ、温度制御装置33との間で挟み込むことで立体造形物と材料層を加圧する(ステップS507)。この状態のまま、制御ユニットU1は、所定の温度制御条件にしたがって、温度制御装置33の温度を制御する。具体的には、最初に、材料層と立体造形物上面が第1の目標温度になるように温度制御装置33を加熱する加熱モードを所定時間行って、材料層の粒子材料を熱溶融させる(ステップS508)。これにより材料層が軟化し、シート状の材料層とステージ面又は立体造形物上面とが密着する。このときの温度をより高温にし、より長い時間加熱することで立体造形物の衝撃強度が向上する。その後、立体造形物の上面が第1の目標温度よりも低い第2の目標温度となるように、温度制御装置33を制御する冷却モードを所定時間行い、軟化した材料層を固化する(ステップS509)。このとき、温度制御装置33を上昇させ第2ベルトから離間し冷却しても良いし、図3に示すように温度制御装置33を加熱部331と冷却部332に分けておき、スライドさせることで加熱・冷却を切り替えてもよい。また、材料層が第2ベルト30から自然と離型する場合は、冷却モードを設けなくても良い。冷却モード終了後、制御ユニットU1はステージ34を下降させる(ステップS510)。
ここで、温度制御シーケンス、目標温度、加熱時間などは、材料層形成に用いられる構造材料及びサポート材料の特性に応じて設定される。例えば、加熱モードにおける第1の目標温度は、材料層形成に用いられる各材料の融点もしくはガラス転移点のうち最も高い温度よりも高い値に設定される。一方、冷却モードにおける第2の目標温度は、材料層形成に用いられる各材料の結晶化温度もしくは非晶質材のガラス転移点のうち最も低い温度よりも低い値に設定される。このような温度制御を行うことにより、異なる熱溶融特性をもつ複数種類の粒子材料が混在した材料層の全体を共通の溶融温度領域で熱可塑化(軟化)させた後、共通の固化温度領域で材料層全体を固化させることができる。したがって、複数種類の粒子材料が混在した材料層の溶融・固着を安定して行うことが可能になる。
材料層全体が第2ベルト30の表面から剥がれて材料層の積層が完了したら、次層の材
料層形成プロセスの実行が開始される(ステップS501〜)。以上述べた材料層形成プロセスと積層プロセスを必要回数繰り返すことで、ステージ34上に所望の立体造形物が形成される。最後に、ステージ34から立体造形物を取り外し、温水などで水溶性のサポート材料を除去することで、最終造形物(物品)を製造することができる。なお、サポート材料を除去した後、更に、所定の処理(例えば、クリーニング、組立等)を立体造形物に対して行うことで、最終造形物(物品)を製造してもよい。
(2層目以降の積層シーケンス)
2層目以降の積層シーケンスについて、図5のフローチャートを参照して説明する。ここでは、ステージ34上に少なくとも1層分の積層が終わっており、次の材料層が第2ベルト30上に形成されているものとする。
まず、制御ユニットU1は、第2ベルト30上に形成された材料層を積層位置まで搬送する(ステップS1)。次に制御ユニットU1は、搬送された材料層が何層目か(積層枚数X)を判断し、積層枚数Xの値に応じてその後の積層条件(本接着モード又は仮接着モード)を変更する(ステップS2)。
(1)本接着モードでの積層
X=na(aは予め設定されるパラメータであり、nは整数である)のとき、制御ユニットU1は本接着(長時間)モードを選択し、本接着モードの積層条件(加熱時間T1及び冷却時間T2)に設定する(ステップS31)。その後、制御ユニットU1は、温度制御装置33を下降し第2ベルト30に当接させ(ステップS41)、ステージ34を第2ベルト30に押し当て、材料層と立体造形物の加熱を開始する。その状態を維持したまま、T1秒間加熱することで材料層と立体造形物を溶着する(ステップS51)。その後、制御ユニットU1は温度制御装置33を上昇し、冷却を開始し、材料層と立体造形物が固着するようにT2秒間その状態を保持する(ステップS61)。その後ステージ34を下降することで材料層が第2ベルト30から剥離し、立体造形物の上に1層分積層される(ステップS7)。
(2)仮接着モードでの積層
X≠na(nは整数)のとき、制御ユニットU1は仮接着(短時間)モードを選択し、仮接着モードの積層条件(加熱時間T3及び冷却時間T4)に設定する(ステップS32)。その後、制御ユニットU1は、温度制御装置33を下降し第2ベルト30に当接させ(ステップS42)、ステージ34を第2ベルト30に押し当て、材料層と立体造形物の加熱を開始する。その状態を維持したまま、T3秒間加熱することで材料層と立体造形物を溶着する(ステップS52)。その後、制御ユニットU1は温度制御装置33を上昇し、冷却を開始し、材料層と立体造形物が固着するようにT4秒間その状態を保持する(ステップS62)。その後ステージ34を下降することで材料層が第2ベルト30から剥離し、立体造形物の上に1層分積層される(ステップS7)。
1層分の積層が終わると、ステップS1に戻って次層の積層が行われる。このように本実施形態の積層シーケンスでは、積層枚数に応じて積層条件(具体的には加熱時間と冷却時間)を異ならせながら、各層の積層プロセス(ステップS1〜S7)を実施する。ここで、本接着モードの加熱時間T1と仮接着モードの加熱時間T3は、T1>T3となるように設定される。a枚ごとに加熱時間の長い本接着モードに設定し、高温で積層を行う。なお、冷却時間に関しても、仮接着モードよりも本接着モードの方が長い時間(T2>T4)に設定される。
本接着モードを何層毎に行うかを決めるパラメータであるaは任意に設定できる。また、パラメータaは1つだけでなく、a1、a2、・・・axなどのように複数設け、それ
ぞれに対応する加熱時間を設定してもよい。そして、制御ユニットU1は、複数のパラメータa1〜axを組み合わせたり、積層数に応じてパラメータを使い分けながら、本接着モード及び仮接着モードの加熱時間の変更を行ってもよい。
本実施形態のようにa層ごとに加熱時間を長くとることにより、全ての層を同条件(等しい加熱時間)で積層する従来のシーケンス(以下、比較形態という)に比べて、立体造形物をより高い温度に維持することが可能となり、立体造形物の衝撃強度が向上する。このとき、仮接着モードの加熱時間を比較形態の加熱時間よりも短く設定しておけば、1層あたりの平均加熱時間を従来のシーケンスと同等かそれよりも短くできる。つまり、本実施形態の積層シーケンスによると、所望の強度をもつ立体造形物を、比較形態と同等かそれよりも短時間で作製することができる。
パラメータaの値は材料の種類や1層あたりの厚み、温度制御装置33の温度、目標とする強度によって適宜決めることができる。ただし、あまりにaが大きすぎると下の層まで熱が伝わらなくなってしまうため、例えば1層あたりの厚みが5〜50μmのABSを積層する場合、2≦a<100程度とするのが望ましい。
本実施形態の積層シーケンスを用いることで立体造形物の衝撃強度が向上する理由を、材料層及び立体造形物上面の温度プロファイルをもとに説明する。具体的には、実施形態と比較形態での加熱合計時間が同じ場合に、材料層及び立体造形物上面がある温度(目標温度とよぶ)以上になる時間を比較する。各形態において、ヒータ温度、材料層及び立体造形物上面が目標温度に到達するまでに必要な時間Ts、5層分の加熱合計時間T秒は同じとして考える。
まず、本実施形態の積層シーケンスの場合に、材料層及び立体造形物上面が目標温度以上になる時間Teを考える。本接着モードの加熱時間をT1(>>Ts)秒、仮接着モードの加熱時間をT2(<Ts)秒、何層に一回加熱時間を変えるかのパラメータa=5として、その時の材料層及び立体造形物上面の温度プロファイルを横軸:時間、縦軸:温度として図6に示す。
図6より目標温度以上となる時間を求める。初めの4層は積層は可能であるが、目標温度に到達する前に温度制御装置33(ヒータ)が離間して温度上昇が止まってしまうため(T2<Ts)、目標温度以上の時間は0秒となる。5層目はTs秒よりも長いT1秒間加熱するので、目標温度以上の時間はT1−Ts秒となる。よって、5枚の材料層を積層する間に材料層及び立体造形物上面が目標温度以上になる時間Teは、Te=T1−Ts秒となる。
次に、比較形態の積層シーケンスの場合に、材料層及び立体造形物上面が目標温度以上になる時間Tcを考える。比較形態の加熱時間をT0(>Ts)とした場合の、材料層及び立体造形物上面の温度プロファイルを横軸:時間、縦軸:温度として図7に示す。
図7より目標温度以上となる時間を求める。目標温度以上となる時間は1層あたりT0−Ts秒なので、5枚の材料層を積層する間に材料層及び立体造形物上面が目標温度以上になる時間Tcは、Tc=5×(T0−Ts)秒となる。
次に上で示した、TeとTcの大小関係を考える。どちらの実施形態においても5層分の加熱時間の合計は同じなので、以下の関係が成り立つ。
T1+4×T2=5×T0
この関係をもとに、Tcを整理すると、
Tc=4×(T2−Ts)+(T1−Ts)
となる。これと
Te=T1−Ts
の大小関係を比べる。今、本実施形態の仮接着モードの加熱時間T2は、目標温度まで到達するのに必要な時間Tsよりも短い、つまりT2<Tsの場合を考えているので、T2−Ts<0となる。よって、
Tc<(T1−Ts)=Te
となり、同じ加熱時間でも実施形態のほうが、比較形態よりも材料層及び立体造形物上面が目標温度以上となる時間が長いことが分かる。
図8に、図6及び図7に示した温度プロファイルをもとに、横軸:材料層及び立体造形物の上面の温度、縦軸:目標温度以上となっている時間として表したグラフを示す。これにより、加熱時に材料層及び立体造形物の上面が、どのくらいの時間だけ目標温度以上になっているのかを、実施形態と比較形態とで比べる。図8より、本実施形態のほうが、より長い時間より高温の状態を維持していることが分かる。
以上より、立体造形物の強度向上にはより長い時間、より高温の状態を保つ必要があるので、同じ温度で積層した場合に、より長い時間高温状態を維持できる本実施形態の方が、立体造形物の衝撃強度が向上すると考えられる。
[実施例]
本実施形態及び比較形態それぞれの積層シーケンスを用いてABS樹脂シートの積層を行い、立体造形物の衝撃強度を比較し、本実施形態の効果を確認した。立体造形物の形状は、図9に示すような縦10mm×横50mm×厚さ4mmの短冊状とした。積層後に立体造形物にノッチを入れてアイゾット衝撃試験(JIS K 7110)を行うことで、実施形態と比較形態それぞれの立体造形物の衝撃強度を測定した。ヒータ温度210℃、ステージをヒータに押し当てる際の押圧力75gf/cmで一定とした。その他の積層条件については以下に記載する。
(実施例1)
本実施形態の積層シーケンスを用いて、1層あたりの平均加熱時間が10秒となるように、5層に1回積層条件を変えながら、上記した形状の立体造形物を積層した。本接着モードの積層条件と仮接着モードの積層条件は以下の通りである。
本接着モードの積層条件:加熱時間T1=30秒、冷却時間T2=30秒
仮接着モードの積層条件:加熱時間T3=5秒、冷却時間T4=5秒
何層で接着モードを変えるかのパラメータ:a=5
実施例1の条件で積層した立体造形物のアイゾット衝撃強度は13kJ/mであった。
(比較例1)
比較形態の積層シーケンスを用いて、1層あたりの加熱時間を実施例1と同じ10秒として、上記した形状の立体造形物を積層した。
比較例1の積層条件:加熱時間T1=10秒、冷却時間T2=10秒
比較例1の条件で積層した立体造形物のアイゾット衝撃強度は10kJ/mであった。
(比較例2)
比較形態の積層シーケンスを用いて、1層あたりの加熱時間を実施例1より長い20秒として、上記した形状の立体造形物を積層した。
比較例2の積層条件:加熱時間T1=20秒、冷却時間T2=20秒
比較例2の条件で積層した立体造形物のアイゾット衝撃強度は13kJ/mであった
以上の結果をまとめた表を図10に示す。実施例1と比較例1の結果より、1層あたりの平均加熱時間は10秒と同じであっても、実施例1のほうが比較例1よりも30%以上衝撃強度が向上していることが分かる。また、実施例1と比較例2の結果より、実施例1は1層あたりの平均加熱時間が比較例2の半分にもかかわらず、比較例2と同等の衝撃強度を得られていることが分かる。
これらの結果より、本実施形態の積層シーケンスを用いて本接着モードと仮接着モードを使い分けながら積層することで、立体造形物の衝撃強度を向上させることが可能である。
[本実施形態の利点]
以上述べた本実施形態の立体造形装置によれば、本接着モードと仮接着モードのように加熱時間の異なるモードを使い分け、何層かおきに立体造形物を長時間加熱する。それによって立体造形物がより高温の状態を、より長い時間維持することが可能となるため、より短い時間でより衝撃強度の向上した立体造形物の積層が可能となる。
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態について説明する。装置構成は第1実施形態のもの(図1〜図3)と同様であるため説明を割愛し、以下では本実施形態の特徴部分を中心に説明を行う。
(比較形態の積層シーケンス)
まず、従来の積層シーケンス(以下、比較形態と呼ぶ)について説明する。比較形態の積層シーケンスでは、上述した図4の積層シーケンスに従って、すべての材料層に対して同じ積層条件で積層を行う。具体的には、加熱時間及び冷却時間が一定のまま、最初の層から最後の層まで積層する積層シーケンスである。
図11はABS樹脂1層を加熱温度225℃にて加熱した時の加熱時間と接着強度σ/
σ0との関係を測定した結果である(σは接着強度、σ0は飽和接着強度)。強度測定は引っ張り衝撃試験ASTM・D1822に準拠し、TYPE−L型にて行った。
加熱時間を10秒以上とすれば1層毎の接着強度を飽和接着強度とすることができるため、10秒以上の加熱によって立体造形物37を積層すれば全体が均一な強度となる。造形にかかる時間は、
(加熱時間+冷却時間)×積層回数
となる。
(実施形態の積層シーケンス)
図12Aは、図1の積層ユニットU3の詳細を示す図であり、図12Bは、立体造形物の高さ方向における内部温度を示す図である。材料層37(1)〜37(5)の5層を順に積層した状態において、立体造形物37内の材料層37(1)〜37(5)の温度はそれぞれ図12Bに示すように表層に近いほど高い温度となる。
図13BのT37(1)〜T37(5)は、材料層37(1)〜37(5)のそれぞれの温度における加熱時間と接着強度の関係を示す。立体造形物37は材料層36を繰り返し加熱して積層することによる内部の蓄熱によってt3(5)〜t3(1)にて図示するように徐々に接着強度が増して目標の接着強度を得ることが可能となる。
しかしながら最初の層から最後の層まで一定の加熱条件にて積層する積層シーケンスでは最終積層付近における接着強度が不足する。このため最終積層を図13AのT1にて示
すように一回の加熱によって目標の接着強度が得られる加熱時間とするとよい。これにより、立体造形物37全体を目標強度以上の接着強度とすることができる。
本実施形態の積層シーケンスについて、図14のフローチャートを参照して説明する。ここでは、ステージ34上に少なくとも1層分の積層が終わっており、次の材料層が第2ベルト30上に形成されているものとする。
まず、制御ユニットU1は、第2ベルト30上に形成された材料層を積層位置まで搬送する(ステップS11)。次に制御ユニットU1は、搬送された材料層が何層目か(積層枚数X)を判断し、積層枚数Xの値に応じてその後の積層条件(本接着モード又は仮接着モード)を変更する(ステップS12)。
(1)仮接着モードでの積層
X≦x−b(bは予め設定されるパラメータであり、xは造形に必要な総積層数である)のとき、制御ユニットU1は仮接着(短時間)モードを選択し、仮接着モードの積層条件(加熱時間T3及び冷却時間T4)に設定する(ステップS132)。その後、制御ユニットU1は、温度制御装置33を下降し第2ベルト30に当接させ(ステップS142)、ステージ34を第2ベルト30に押し当て、材料層と立体造形物の加熱を開始する。その状態を維持したまま、T3秒間加熱することで材料層と立体造形物を溶着する(ステップS152)。その後、制御ユニットU1は温度制御装置33を上昇し、冷却を開始し、材料層と立体造形物が固着するようにT4秒間その状態を保持する(ステップS162)。その後ステージ34を下降することで材料層が第2ベルト30から剥離し、立体造形物の上に1層分積層される(ステップS17)。
(2)本接着モードでの積層
X>x−bのとき、制御ユニットU1は本接着(長時間)モードを選択し、本接着モードの積層条件(加熱時間T1及び冷却時間T2)に設定する(ステップS131)。その後、制御ユニットU1は温度制御装置33を下降し第2ベルト30に当接させ(ステップS141)、ステージ34を第2ベルト30に押し当て、材料層と立体造形物の加熱を開始する。その状態を維持したまま、T1秒間加熱することで材料層と立体造形物を溶着する(ステップS151)。その後、制御ユニットU1は温度制御装置33を上昇し、冷却を開始し、材料層と立体造形物が固着するようにT2秒間その状態を保持する(ステップS161)。その後、制御ユニットU1はステージ34を下降することで材料層が第2ベルト30から剥離し、立体造形物の上に1層分積層される(ステップS17)。
1層分の積層が終わると、ステップS11に戻って次層の積層が行われる。このように本実施形態の積層シーケンスでは、積層枚数に応じて積層条件(具体的には加熱時間と冷却時間)を異ならせながら、各層の積層プロセス(ステップS11〜S17)を実施する。ここで、本接着モードの加熱時間T1と仮接着モードの加熱時間T3は、T1>T3となるように設定される。冷却時間に関しても、仮接着モードよりも本接着モードの方が長い時間(T2>T4)に設定される。
比較形態のように毎回同じ加熱時間で積層するのではなく、本実施形態のように本接着モードと仮接着モードを使い分けることによって、造形物の全体の接着強度を保ちつつ、1層あたりの平均加熱時間を比較形態より短くすることができる。なお、仮接着モードと本接着モードとの切り替えを制御するパラメータであるbは任意に設定できる。
(実施例)
本実施形態の積層シーケンスを用いてABS樹脂シートの積層を以下に記載する条件にて行った。仮接着モードでの積層条件は、材料層36と材料層37(5)との接触する面
の温度を225℃とし、加熱時間(T3)は2秒、冷却時間(T4)は30秒とし、冷却後の温度は115℃とした。図11にて示すように仮接着条件における接着強度σ/σ0
は約0.8である。
図15は仮接着モードで連続積層した時の立体造形物37における内部温度変化と接着強度とを示す。内部温度は積層面へ熱電対を取り付けて積層を繰り返すことによって測定した。また接着強度は引っ張り衝撃試験ASTM・D1822によって加熱時間2秒で積層したサンプルと、加熱時間10秒で積層したサンプルとの強度比較を数水準の積層回数にて比較することによって得た。
実施例においては約30回の積層によって接着強度は1.0となることを実験的に確認した。
本接着モードでの積層条件は加熱温度225℃、加熱時間(T1)10秒、冷却時間(T2)30秒とした。図11にて示すように本接着条件における接着強度σ/σ0はほぼ
1.0である。
図14の積層シーケンスにおいてパラメータb=30、x=1000に設定し、仮接着モードでの積層を970層行い、積層造形の最後の30層を本接着モードにて積層した。その結果、上記比較形態に対して約80%の造形時間で積層造形することができた。
本実施例においては本接着モードを30層としたがこれに限定するものではない。また仮接着モードにおける加熱時間の平均値が本接着モードの加熱時間の平均値よりも少なければ造形時間短縮効果が得られるため、例えば仮接着モード中に散発的に本接着モードと同等以上の加熱時間によって積層造形しても良い。
本実施例の方法にて積層した立体造形物と、上記比較形態の方法にて積層した立体造形物とをアイゾット衝撃強度試験にて比較したところ同等の強度であることを確認した。
以上述べた各実施形態及び各実施例は、本発明の好適な形態の一例にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。例えば上記実施形態では電子写真プロセスにより材料層を形成したが、インクジェットなど他の方式で材料層を形成するタイプの造形装置にも本発明を適用することができる。
U1:制御ユニット
U2:画像形成ユニット
U3:積層ユニット

Claims (6)

  1. 複数の材料層を積層することにより造形物を作製する造形装置であって、
    材料層を形成する画像形成手段と、
    前記画像形成手段により形成される材料層を加熱しながら積層する積層手段と、
    制御手段と、
    を有し、
    作製中の造形物の上に材料層を溶着するために必要な温度を目標温度、材料層の温度が前記目標温度に到達するために必要な加熱時間を第1時間、とよぶ場合に、
    前記積層手段は、加熱時間が前記第1時間よりも短い第1モードと、加熱時間が前記第1時間よりも長い第2モードを含む、複数のモードを有しており、
    前記制御手段は、造形物を構成する複数の材料層のうちの一部の材料層を前記第1モードで積層し、残りの材料層のうちの少なくとも一部の材料層を前記第2モードで積層するように、前記積層手段を制御する
    ことを特徴とする造形装置。
  2. 前記制御手段は、材料層の積層数に応じて、前記第1モードと前記第2モードを切り替える
    ことを特徴とする請求項1に記載の造形装置。
  3. 前記制御手段は、所定の数の材料層を前記第1モードで積層した後、次の材料層を前記第2モードで積層する、というシーケンスを繰り返し実行する
    ことを特徴とする請求項2に記載の造形装置。
  4. 前記制御手段は、造形物を構成する複数の材料層のうち、所定の数の材料層まで前記第1モードで積層した後、残りの材料層を前記第2モードで積層する、というシーケンスを実行する
    ことを特徴とする請求項2に記載の造形装置。
  5. 前記目標温度は、材料層の形成に用いられる材料の融点もしくはガラス転移点よりも高い温度に設定される
    ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の造形装置。
  6. 複数の材料層を積層することにより造形物を作製する造形装置の制御方法であって、
    画像形成部により材料層を形成するステップと、
    積層部により材料層を加熱しながら積層するステップと、
    を有し、
    作製中の造形物の上に材料層を溶着するために必要な温度を目標温度、材料層の温度が前記目標温度に到達するために必要な加熱時間を第1時間、とよぶ場合に、
    前記積層部は、加熱時間が前記第1時間よりも短い第1モードと、加熱時間が前記第1時間よりも長い第2モードを含む、複数のモードを有しており、
    前記積層するステップは、造形物を構成する複数の材料層のうちの一部の材料層を前記第1モードで積層するステップと、残りの材料層のうちの少なくとも一部の材料層を前記第2モードで積層するステップとを含む
    ことを特徴とする造形装置の制御方法。
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