JP2018174821A - 胃癌モデル動物の作製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】胃癌の病態をより正確に反映しており、作製が容易な胃癌モデル動物を提供することを課題とする。
【解決手段】胃癌細胞が生着している非ヒト動物の作製方法であって、免疫力が低下した非ヒト動物の胃の粘膜下層に細胞懸濁液を注入する工程を含む方法を提供する。本願はまた、作製された非ヒト動物を用いる、胃癌の転移を抑制する薬物のスクリーニング方法も提供する。
【選択図】図3

Description

本発明は、胃癌モデル動物の作製方法、及びそれにより得られた胃癌モデル動物とその利用に関する。
抗癌剤としての薬物のスクリーニングや、多剤併用等の療法の開発において、癌モデル動物による評価結果は極めて重要な情報を提供する。そのため種々の癌モデル動物が開発されてきている。
同所移植モデルに関し、例えば、特許文献1は、動物の大腸に炎症を誘導する処理を施した後、当該動物の大腸内に大腸癌細胞を移植することを特徴とする大腸癌細胞移植動物の製造方法を提案する。また特許文献2は、同所移植肺癌モデル動物を作製するための簡便でかつ再現性のある技法として、免疫力が低下した非ヒト動物を用意する工程、非ヒト動物の気管を露出する工程、及び肺癌細胞を気管内へ注入する工程を含む、肺癌細胞が生着している非ヒト動物を作製する方法、並びにこの方法で作製された肺癌細胞が生着した非ヒト動物を提案する。さらに特許文献3は、従来の方法に比べて、より臨床病態を反映した評価が可能な抗癌剤候補物質の評価に際して、免疫不全もしくは免疫無防備状態であるラットにヒト由来の癌細胞を同所移植することにより得た担癌モデルラットを用いることを提案する。
一方、同所移植における同所とは、単に癌細胞が由来する臓器と同じ臓器(例えば胃癌細胞に対して、胃)を指すことが多い。胃壁は4つの層(粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜)から構成されるが、従来、同所としての胃では、癌細胞を含む注入液の膨隆が肉眼でも確認しやすい手技的簡便さから、組織学的層を明らかにしないままの胃壁への細胞注入(非特許文献1)、漿膜下層への移植(非特許文献2)、固有筋層と漿膜の間への移植(非特許文献3)、胃粘膜下層への移植(非特許文献4)が行われてきた。他には、胃壁を漿膜面から切開し、細胞を固形(腫瘍)のまま配置して逢着するという方法がある(非特許文献5)。また、ウサギを用いた粘膜下層へのウサギ癌細胞の移植が報告されている(非特許文献6)。
特開2002−34387号公報 特開2007−274950号公報 特開2011−22002号公報
Yanagihara et al, Cancer Sci, 2004; Sumida et al, Int J Cancer, 2010 Furukawa et al, Cancer Res, 1993; Wang et al, Oncology Rep, 2015 金沢大学十全医学界雑誌 第103巻 第2号 357-368(1994) 第116回日本外科学会定期学術集会 [OP-045] 2016年4月15日 Hotz B, et al, Gastric Cancer. 2012 Jul;15(3):252-64 Mei et al, BMC Cancer 2010, 10:124
ヒトモデル動物において、ヒトの癌の発生・進展方向を模していることは治療のタイミングや抗癌剤の効果を評価する上で重要である。そのため、癌細胞の移植に際しては、臓器レベルの胃よりも組織学的発生母地に注目すべきである。
また、上記の胃壁を漿膜面から切開して細胞を固形のまま配置する方法では、肉眼的には細胞の移植層は粘膜下層であるが、層の機械的剥離による挫滅が不可避であり、かつ層の同定が不確定となる。さらに胃壁の切開・縫合手技が必要となるため、移植手術が複雑であり、長時間に及び、多数例を試行することは困難であると考えられる。
本願は、胃癌細胞を移植した胃癌モデル動物の作製において、「同所」のみならず「同組織」を想定し、また胃壁の挫滅なく、短時間で試行であるため、多数例の試行が可能な、比較的簡便な手技を提供するものである。具体的には以下を提供する。
[1] 胃癌細胞が生着している非ヒト動物の作製方法であって、
免疫力が低下した非ヒト動物 の胃の粘膜下層に細胞懸濁液を注入する 工程
を含む方法。
[2] 非ヒト動物が免疫不全状態である、1に記載の方法。
[3] 非ヒト動物がヌードマウスである、1又は2に記載の方法。
[4] 胃の粘膜下層に細胞懸濁液を注入する工程が、粘膜と粘膜下層との間に細胞懸濁液を注入することにより行われる、1〜3のいずれか1項に記載の方法。
[5] 1匹当たり1.0×105〜1.0×107個の胃癌細胞を注入する、1〜4のいずれか1項に記載の方法。
[6] 胃癌細胞がヒト由来 である、1〜5のいずれか1項に記載の方法。
[7] 胃癌細胞が薬物耐性株である、1〜6のいずれか1項に記載の方法。
[8] 胃癌細胞がフルオロウラシル耐性株である、1〜7のいずれか1項に記載の方法。
[9] 1〜8のいずれか1項に記載の方法で作製された非ヒト動物を準備する工程;及び
作製された非ヒト動物に、候補薬物を投与する工程
を含む、胃癌の転移を抑制する薬物のスクリーニング方法。
本発明により、進行胃癌の病態をより正確に反映する胃癌モデル動物が提供される。本発明により得られるモデル動物における腫瘍は、組織学的にヒト癌の発生・浸潤過程を極めてよく模倣していると考えられる。
進行胃癌の病態をより正確に反映する胃癌モデル動物を、容易に作製することができる。
進行胃癌の病態をより正確に反映する胃癌モデル動物を、安定的に供給することができる。
MKN45及びMKN45/5FU細胞は、同様の形態及び増殖特性を共有する。(a)MKN45及びMKN45/5FU細胞株の形態、GI50及びCoI50値。(b)3つの異なる薬物による増殖におけるGI50値。(c)3つの異なる薬物による増殖におけるCoI50値。(d)ヌードマウスにおけるMKN45及びMKN45/5FU皮下異種移植。 MKN45及びMKN45/5FU細胞から明らかになったDTPのプロテオミクス特性。(a)コロニー溶解物アッセイは、所与の薬物の存在下でDTPを増殖させることを含む。直径1mmの円形コロニーをピペットチップで個々に採取し、溶解のために各々のチューブに移した。次いで、各DTP溶解物を、384ウェルのV底マイクロタイタープレートの各々のウェルに移した。(b)CoLAの代表的な画像。各ドットは、指示された薬物濃度の存在下で生き残った単一のコロニーからの溶解物を表す。黒い三角は薬物濃度の増加を示す。(c)CoLAによる各々のDTPのタンパク質レベルの定量的モニタリング。横軸は、増加する濃度(下、黒三角)における各薬物(上)を示す。縦軸は、細胞及びタンパク質によって標準化された任意の単位(a.u.)でスキャンされた濃度に基づくタンパク質レベルを示す。プロット中の細線(カラーの図面では赤色の線)は、20複製されたコロニー溶解物セットの平均値を示す。(d)薬物濃度の関数としての、p-PI3K及びp-AKTについての各々のDTPにおけるタンパク質レベルの変化。 OXにおけるMKN45及びMKN45/5FUの増殖。(a)IVISによるマウスの胃におけるOXの検出。バーは、ルシフェリンからの電荷結合素子(CCD)カウントを示す。ほとんどのCCDカウントはノイズレベル(600)を超え、CCD飽和(60,000)をはるかに下回った。(b)MKN45細胞(上)及びMKN45/5FU細胞(下)のOXの6週間後。矢印は:1、胃の腫瘍;2、幽門部リンパ節転移;3、内臓腹膜におけるリンパ節転移;及び4、壁腹膜への播種。(c)OXにおけるMKN45及びMKN45/5FU腫瘍原性の比較。粘膜下層と筋層の間の層に細胞(1.0×106)を注入した。細胞注射の6週間後、マウス器官を病理学的に検査した。(d)粘膜下層と適切な筋層の間のMKN45/5FU OXのルーペ観察及び部分拡大。上位2つのパネル、H&E;下の2つのパネル、α-SMAのIHC。ルーペ観察中の四角は、以下に示す拡大領域を示す。ルーペと拡大図のスケールバーは、それぞれ1mmと20μmである。 in vivo及びin vitroにおけるPI3K経路タンパク質の発現。(a)MKN45/5FU OXの5-FU送達の概略タイムライン。最初の接種後5日間、5-FU(30mg/kg/日)を毎日尾静脈に注射した。(b)5-FUの存在下及び非存在下でのMKN45/5FU OXによる腫瘍形成。(c)PI3K/Akt/mTOR/PTENシグナル伝達に関与するタンパク質を、MKN45/5FU細胞増殖(スケールバー、10μm)の各段階で染色した。(d)各染色の陽性画分を示す(エラーバーは、5つの視野の平均の標準誤差を示す)。 5-FU及びPI3K阻害剤によるOX腫瘍の抑制。(a)第3染色体上に位置するPIK3CAの地図及び第22染色体上の6.8kbセグメントに及ぶ相同性の高い偽遺伝子。コドン707はエクソン14内に存在し、偽遺伝子とオーバーラップしているため、変異対立遺伝子G>AをdPCR情報のみに基づいて偽遺伝子から区別できない。(b)示された条件下でのMKN45/5FU細胞における変異コドン707の有病率。dPCRを用いて、各ゲノムDNAサンプル中の突然変異対立遺伝子の正確な数を明らかにした。平均値はパーセンテージで表示され、誤差バーは平均値の標準誤差と3回の実験の範囲を示す。dPCRは3回行った。(c)MKN45細胞の細胞遺伝学的状態の模式図、及び細胞間における可能な変異型対立遺伝子頻度。 5-FU/GDC-0941同時投与の腫瘍抑制効果。(a)5-FU及びPI3K阻害剤の複合効果を評価するためのコロニー形成アッセイ。(b)薬物投与スケジュールの模式図。GDC-0941単独、5-FU単独、又はGDC-0941/5-FUを1PODから投与した。マウスをOX後47日間観察した。(c)腫瘍形成性は5-FU又はDGC-0941のいずれかによってある程度抑制されるが、一部の転移病変はなお観察される。5-FU/GDC-0941の同時投与は、目に見える副作用なしにより効果的に腫瘍形成を抑制した。(d)GDC-0941で処理したOX腫瘍を、胃の残りの腫瘍及び肝臓転移部位からの組織におけるPI3K経路タンパク質に対する抗体で免疫染色した。右のパネルに各染色の陽性画分を示す(エラーバーは、5つの視野の平均の標準誤差を示す)。スケールバー、20μm。 5-FU及びGDC-0941の共投与は、5-FU耐性細胞株におけるS6キナーゼリン酸化を抑制した。2対の5-FU耐性/親細胞株におけるPI3K経路タンパク質のイムノブロット。それぞれの親細胞についてGI50濃度を用いて、示された薬物で細胞を処理した。グリセロアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)及びPonceau染色をローディングコントロールとして使用した。
本発明は、胃癌細胞が生着している非ヒト動物の作製方法、及びそれにより作製された胃癌モデル動物を提供する。本発明の方法は、下記の工程を含む:
免疫力が低下した非ヒト動物の胃の粘膜下層に細胞懸濁液を注入する工程。
[胃癌細胞が移植される非ヒト動物]
本発明の方法には、免疫力が低下した非ヒト動物を用いる。非ヒト動物であって、免疫力を低下させることができ、癌細胞の移植のために全身麻酔が可能であれば、限定されず、マウス、ラット、モルモット等の種々の非ヒト動物を用いることができる。多数個体で実験できることから、マウスを用いることが好ましい。以下では、マウスを用いる場合を例に本発明やその実施態様を説明することがあるが、当業者であれば、その説明を他の非ヒト動物を用いる場合にも適宜当てはめて理解することができる。
用いる非ヒト動物は、胃癌細胞が生着可能な程度に免疫力が低下しているとよく、免疫不全状態であるとよい。免疫不全非ヒト動物の好適な例の一つはヌードマウスであるが、先天性の重度免疫不全を呈するSCID(severe combined immunodeficiency)マウス、Rag-1欠損マウス、NOD/Shi-scid-IL2Rγnullマウス(NOGマウス)、Rag2null/IL2Rγnullマウス等を用いることができる。免疫力を低下させるために、非ヒト動物にX線などの放射線を照射してもよい。
用いる非ヒト動物は、成体であるとよい。マウスの場合には、7〜9週令であるとよく、ラットの場合には、8〜10週令であるとよい。非ヒト動物は、免疫力低下の度合いに応じて、感染を防御した環境下で飼育されるとよい。感染防御の目的で、非ヒト動物に抗生剤を投与してもよい。
[胃癌細胞]
非ヒト動物に移植される胃癌細胞は、移植される非ヒト動物と同種の動物由来のものであっても、異種由来であってもよい。ヒトの胃癌のモデルとするためには、ヒトの胃癌由来のものを用いることが好ましい。用いることのできる胃癌細胞の例は、一般に入手可能な、例えば理化学研究所バイオリソースセンター(BRC)等から入手できる、MKN1(日本人胃癌細胞株で腺上皮、扁平上皮の両方向へ分化することがある株。Regan型アルカリフォスファターゼを産生するという。)、MKN45(日本人胃癌細胞株で低分化型充実型腺癌由来。CEA高産生株。)、MKN7(日本人胃癌細胞株でc-erbB-2高発現株。Regan型アルカリフォスファターゼを産生するという。高分化型管状腺癌由来。)、MKN74(日本人胃癌細胞株で中分化型管状腺癌由来。Hypodiploid株だったもの)、NCC-StC-K140(ヒト胃癌由来細胞株。)、NUGC-4(ヒト胃がん由来細胞株。Signet ring cell carcinoma由来。)、ECC10(胃癌由来の小細胞癌。Creatine kinase-BB活性が高い。肺由来の小細胞癌とはやや性質が異なる。この株はc-mycの発現がある。)、ECC12(胃癌由来の小細胞癌。Creatine kinase-BB活性が高い。この株はaromatic L-amino-acid decarboxilase活性も高い。)、GCIY(胃癌(Borrmann IV型)。ムチン産生性。CA19-9, CEA, alphafetoprotein陽性。)、GSS(ヒト胃癌由来細胞株。肝臓転移巣から樹立。)、GSU(ヒト胃癌由来細胞株。腹水中の細胞より樹立。)、H-111-TC(ヒト胃癌由来細胞株。 TKG0411 (東北大学医用細胞資源センターからの寄託)。)、HGC-27(ムチン産生性胃癌細胞で、ヌードマウス可移植性である。)、HuG1-N(胃癌だがNagao型アルカリフォスファターゼを産生。CEA、CA19-9も検出されるという。増殖は浮遊性。HuG1-PIとは同一患者。)、HuG1-PI(胃癌だが、アルカリファオスファターゼ(腸型と胎盤型のヘテロダイマー)産生。HuG1-Nとは同一患者。)、KE-39(ヒト胃癌由来細胞株)、KE-97(ヒト胃癌の腹腔内(腸間膜)転移巣に由来する細胞株)、Kato III(ヒト胃癌由来細胞株。Signet ring carcinoma. TKG0213 (東北大学医用細胞資源センターからの寄託)。)、LMSU(ヒト胃癌由来細胞株。リンパ節転移巣由来。)、TKG0449 (東北大学医用細胞資源センターからの寄託)等が挙げられる。用いる胃癌細胞は、株化されたものに限られず、動物の腫瘍から採取したものであっても、それを継代培養したものであってもよい。あるいはまた、継代培養した胃癌細胞を皮下移植した動物から腫瘍を採取し、それを再度継代培養したものでもよい。
好ましい態様においては、移植に用いる胃癌細胞は、薬物耐性株である。本発明者らの検討によると、MKN45細胞及びMKN45から得たフルオロウラシル(5−フルオロウラシル、又は5-FUということもある。)に耐性を有する細胞(MKN45/5FU)は、本明細書の実施例の項に示した条件では、in vitroやヌードマウスへの皮下移植では同様の増殖特性を有していたが(図1)、胃粘膜下層に移植すると、MKN45の場合は検出可能な腫瘍を示さず、MKN45/5FUの場合は、著しく大きな腫瘍を形成した。このことから、フルオロウラシル等の抗癌作用を有する薬物への抵抗性を獲得することが、生着のために好ましい条件の一つであると考えられる。また、フルオロウラシル以外の、アクラルビシン、イリノテカン、エピルビシン、オキサリプラチン、オクトレオチド、カペシタビン、シクロホスファミド、シスプラチン、シタラビン、テガフール、テガフール・ウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、ドキソルビシン、ドセタキセル、トラスツズマブ、ニムスチン、パクリタキセル、ピラルビシン、マイトマイシンC、及びメトトレキサート等からなる群より選択されるいずれかの薬物への耐性を有する胃癌細胞が、同様に胃粘膜下層への生着がよい可能性がある。
当業者であれば、胃粘膜下層への生着率を高めるため、例えば、移植する細胞の前処理、細胞の数、細胞を懸濁する液の組成等の、種々の条件を検討しうる。なお、特許文献2には、細胞懸濁液に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を添加することにより、移植された非ヒト動物における肺癌細胞の生着率が上昇すると述べている。この場合のEDTAの濃度として、0.01〜0.02 M、好ましくは、0.01 Mが推奨されている。
[移植場所、移植方法]
本発明の方法においては、非ヒト動物の胃の粘膜下層に、胃癌細胞の細胞懸濁液が注入される。従来、ヒト胃癌細胞株を免疫不全マウスに投与し生体内での癌細胞の動態を観察することは古くから行われているが、その際には、手技的簡便性からマウス皮下への投与が多く行われてきた。しかしながら、血流やリンパ流に依存する転移の状態や、ドラッグデリバリーを想定した場合、由来組織に準じた部位に癌細胞を移植することが有用である。
本発明の方法においては、胃壁を構成する4つの層(粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜)のうち、粘膜下層に選択的に癌細胞を移植する。粘膜下層は毛細血管やリンパ管に富むため、粘膜層から発生する癌が粘膜下層まで浸潤すると、転移率が大きく上昇する。
粘膜下層への細胞懸濁液の注入は、胃癌細胞が結果として粘膜下層に移植されれば、どのような方法でもよいが、粘膜と粘膜下層との間に注入することにより行うことができる。これは、注入された液体が、結合が比較的疎な部分に流入する性質を利用するものである。具体的には、胃壁の漿膜側から針を寝かせて(胃壁面になるべく平行に刺入距離を長く取る)刺入し、シリンジに一定の圧力をかけると、最も組織間結合の弱い部分に液体が移動するが、このスペースが粘膜下層である。この方法であれば粘膜下層にのみ細胞が移植されることが、組織学的にも確認されている。また、生着した細胞が筋層方向へ浸潤することも確認されている。このような手法は、胃壁の厚さが1mm足らずであり、その中の4層を肉眼的に区別することは難しいマウス等の小動物において、特に有用である。なお、知られている類似の手技としては、胃壁を漿膜面から切開し細胞を固形のまま配置し逢着するものがある(前掲非特許文献4)。この場合、細胞が移植される層は肉眼的には粘膜下層ではあるが、層の機械的剥離による挫滅が不可避であり、かつ層の同定が不確定となる。また、胃壁の切開・縫合手技が必要であるため、移植のための手術が長時間に及び、多数のモデル動物を作製することは困難であると考えられる。
胃癌細胞の移植に際しては、適切な細胞密度の胃癌細胞の細胞懸濁液を、適切な量、準備する。懸濁のための溶媒は、等張液であることが好ましく、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline;PBS)、トリス緩衝生理食塩水(Tris Buffered Saline;TBS)、HEPES緩衝生理食塩水(HEPES Buffered Saline)、生理食得水、リンゲル液(乳酸リンゲル液、 酢酸リンゲル液 、重炭酸リンゲル液等)、5%グルコース水溶液のほか、緩衝効果のある、動物細胞培養用基礎培地(DMEM、EMEM、RPMI−1640、α−MEM、F−12、F−10、M−199等)等を用いることができる。
胃癌細胞の懸濁液を胃の粘膜下層に注入する場合には、注射器を用いるとよい。注入される胃癌細胞の数は、適宜とすることができるが、マウスに注入する場合は、1匹当たり1.0×105個以上とすることができ、好ましくは、2.0×105個以上である。注入される細胞の上限値は、粘膜下層のスペースによって定まる場合があり、マウスの場合は、1匹当たり1.0×108個以下であり、好ましくは1.0×107個以下である。また注入される胃癌細胞の懸濁液の容量は、マウスに注入する場合、胃の粘膜下層のスペースの容量から200μl以下であるとよく、好ましくは50μl〜150μlである。他の非ヒト動物に注入する場合には、動物の体重に基づいて、マウスに関する上記の値から算出することができる。上記の1匹当たりの細胞数及び容量から、注入される細胞懸濁液における細胞密度が算出できる。細胞懸濁液の細胞密度はまた、注射器を用いて注入する場合は、注射針を通過可能かどうかも考慮するとよい。注入に用いる胃癌細胞の懸濁液は、胃癌細胞の生存率が90%以上のものであることが好ましく、95%を超えるものであることがより好ましい。胃癌細胞の生存率は、Trypan blue dye exclusionにより、測定することができる。
マウスへの注入は、次のようにして行うことができる:
麻酔した仰臥位のマウスに対し、適切な位置で水平切開を行い、胃を静かに引き出す。次に、適切な細胞密度で必要量準備した胃癌細胞の懸濁液を粘膜下層に注入する。粘膜下層に注入されているか否かは、粘膜下層が比較的疎な組織であるため、注入する際に、プランジャ圧力の放出を感じることによって同定することができる。注入後、胃壁の注入部位に圧力を加えて、注入された懸濁液の漏れがないことを確認することができる。
胃癌細胞の懸濁液を注入することにより、胃癌細胞が移植されたマウスは、適当な期間飼育した後、胃癌細胞の生着を確認することができる。移植された胃癌細胞は、主に粘膜下層と筋層との間で増殖する。また比較的大きな腫瘍(25〜100mm3)を形成し得る。腫瘍はさらにリンパ節及び肝臓に転移し得るものであり、また腹膜腫瘍を形成し得るものでもある。腫瘍の有無は、肉眼、H&E染色、及び免疫染色により確認することができる。
[モデル動物]
このようにして得られたモデル動物は、胃癌の組織学的位置を正確に模倣するものである。従来の多くの研究では、胃癌細胞又は移植片は、部位を詳細には特定しない胃壁か、又は腹膜播種を達成するために漿膜層の近くに移植されてきた。漿膜下層(固有筋層と漿膜との間の層)への移植(前掲非特許文献2)では、粘膜への生着又は進展は起きにくい。固有筋層を超えて内向きには浸潤しにくいからである。また、漿膜下層には粘膜下層のような脈管がほとんどないため、転移が起こるとすれば、脈管を介して生じているものと考えられる。また漿膜下層への移植では、癌性腹膜炎が早期に起こり、転移成立の前に死亡する割合が上がると考えられる。本発明の方法により得られたモデル動物において腫瘍転移が生じやすいのは、粘膜下層の血管が移植された腫瘍細胞に曝される可能性が高いためであると考えられる。このような機能的な差異があることから、本発明の方法により得られたモデル動物と、従来の漿膜層付近に胃癌細胞を移植することにより得られたモデル動物は、作製方法が異なるのみならず、得られたモデル動物自体に差異があるといえる。
本発明の方法により作製されたモデル動物により、脈管を介した、血行性転移、及びリンパ行性転移の忠実な再現がなされ得る。進行性の胃癌の発達を、より正確に観察することができる。また、モデル動物においては血管を介して抗癌剤が粘膜下層に運ばれるため、ドラッグデリバリーの忠実な再現がなされ得る。また、モデル動物により、固有筋層より深い(外側)の層への浸潤形態の組織学的確認を行うことができ、簡便な手術手技による多数個体での検証を行うことができる。
[薬物のスクリーニング方法]
本発明の方法により作製された、胃癌細胞が生着している非ヒト動物を用いることにより、薬物のスクリーニングを行うことができる。好ましい態様においては、スクリーニングは、胃癌の転移を抑制する薬物のスクリーニングであり、より特定すると、胃癌の発生・進展過程におけるリンパ節・多臓器への転移を選択的に抑制する薬物のスクリーニングである。スクリーニングは通常、次の工程を含む:
作製された非ヒト動物を準備する工程;及び
作製された非ヒト動物に、候補薬物を投与する工程。
本発明の非ヒト動物を用いて評価され、スクリーニングされる抗癌剤候補薬物には、抗癌作用が期待されるあらゆる物質が含まれる。化学合成によるものでも、ペプチド、抗体、RNAなどの生物製剤であってもよい。また、投与の方法は特に限定されず、例えば、経口、静脈注射などであってもよい。
投与した候補薬物は、評価に供される。評価は、例えば、目視、X−線撮影、PET(ポジトロン放出断層撮影)、CT、MRIなどによる腫瘍の縮小効果の観察や、分子腫瘍マーカーの血中濃度の増減の測定など、あるいはそれらの組み合わせにより行うことができる。
標的病変における客観的腫瘍縮小効果の判定基準として、例えば、WHOハンドブックの基準及びそれを踏襲した固形癌の治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)に準拠してもよい。これにおいては、すべての標的病変の消失を完全奏功(complete response; CR)とし、ベースライン長径和と比較し標的病変の最長径の和が30%以上減少した場合を部分奏功(partial response; PR)とし、治療開始以降に記録された最小の最長径の和と比較し標的病変の最長径の和が20%以上増加した場合を進行(progressive desease; PD)とし、PRとするには腫瘍の縮小が不十分で、かつPDとするには治療開始以降の最小の最長径の和に比して腫瘍の増大が不十分な場合を安定(stable disease; SD)と定義する。また、癌転移に対する候補薬物の評価に際しては有効率のみならず、延命効果を評価指標とすることが可能である。
本発明の非ヒト動物は、薬物動態、薬力学試験、毒性試験のためにも用いることができる。また、候補物質の非臨床試験に入る前の早期評価において用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.方法
[細胞株及び薬物]
ヒト胃癌細胞株MKN45及びMKN74は理化学研究所細胞バンクから入手した。細胞を、10%ウシ胎仔血清及び5%CO2、湿度80%を補充したRPMI1640培地中、37℃で培養した。続いて、連続(3-5日)5-FU曝露の存在下で細胞を培養した後、約1年間、5-FU濃度を増加させた。経路のタイミング及び薬物濃度は、成長速度に基づいて調整された。ここで、MKN45及びMKN74細胞は、それぞれ5-FU耐性株MKN45/5FU及びMKN74/5FUとして確立された12。下記のコロニープロファイリング及びウェスタンブロットを除いて、我々はその後のすべての研究にMKN45/5FU細胞を使用した。増殖抑制及びコロニー形成アッセイを行って、以前に記載されているように細胞株の特性を確認した9。5-FUに加えて、CIS、DTX、ソラフェニブ及びゲフィチニブを、交差耐性を排除するためにアッセイに使用した。
[増殖阻害及びコロニー形成アッセイ]
増殖阻害アッセイのために、細胞を96ウェルマイクロタイタープレート中、10,000細胞/ウェルの密度で培養した。24時間インキュベートした後、薬物を希釈系列の各ウェルに添加した。4時間後、WST溶液を先に記載したように各ウェルに加えた(Dojindo)16,49,50。コロニー形成は、10倍段階希釈で薬物の非存在下又は存在下のいずれかで、6ウェルプレートの100細胞/ウェルの密度で行った。次いで、細胞を10-14日間インキュベートして、コロニー形成を可能にした。薬物を含まないウェル中のコロニー形成を確認した後、-20℃でメタノールでコロニーを固定し、続いてクリスタルバイオレット染色した。染色されたコロニーを300dpiでCanonフラットベッド光学スキャナー(Canon)でスキャンし、得られた画像を目視検査のために印刷した。1ミリメートル以上の直径を有するコロニーを計数した。すべての実験を少なくとも3回独立して繰り返した。
[コロニー溶解物アレイ]
各々の薬物条件下で細胞を100細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに散布した。大きさが1ミリメートルを超えるコロニーを手で採取し、PBSで洗浄し、200μLの微量遠心チューブ中のPinkBuffer51,5210μlで溶解した。細胞破片を遠心分離によって除去し、上清(細胞溶解物)を384ウェルマイクロタイタープレートの各々のウェルに移した。各ライセートをニトロセルローススライド(GraceBioLabs)が搭載されたガラススライド上に転写することができるように、プレートをRPPAマイクロアレイヤー(AushonBioSystems)に装填した。ライセートの量は他のRPPAアプリケーションの場合よりもはるかに低く、したがってライセートよりも希釈されているため、膜中のより多くのタンパク質種を捕捉するために5回のプリンタ「ピンヒット」を使用した9。その後の免疫染色及びスキャニングは、以前に記載されたプロトコル9,18に従って実施した。
[同所異種移植]
MKN45及びMKN45/5FU細胞懸濁液を、1.0×106細胞/100μL PBSの密度で個別に調製した。マウスを仰臥位に2%イソフルランガスで麻酔した。次いで、中央の線の約5mmから左側の肋骨弓の尾側の3mmから12mmの水平切開を行った。胃を静かに引き出し、左の人差し指で支えた。次に、癌細胞懸濁液を粘膜下層に注入した。粘膜層は、懸濁液を粗い組織結合層(すなわち、粘膜下層)に注入する際に、プランジャ圧力の放出を感じることによって同定された。注射後、胃壁の注射部位に圧力を加えて、注射された懸濁液の漏れがないことを確認した。開腹術後の癒着を防ぐために、各切開部を層々に縫合した。
[PI3K阻害剤]
LY294002(Sigma-Aldrich)53,54、ケルセチン(Abcam)55、ウォートマンニン(CellSignalingTechnology)56、GNE493(SYNキナーゼ)29及びGDC-0941(Abcam)33を含むPI3K活性を阻害することが知られている5つの化合物を、コロニー形成アッセイにおける最初のin vitroスクリーニング。GDC-0941を経口投与したOXモデルにおける腫瘍抑制アッセイのために選択した。
[同所性異種移植のための薬物治療]
薬物をOXモデルマウスに静脈内(5-FU、Kyowa-HakkoBio)又は経口(GDC-0941、LCLaboratories)のいずれかで投与した。尾静脈から5-FU溶液(200μl、25mg/kg)を注入した。0.5%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業)及び0.2%(v/v)Tween-80(Sigma-Aldrich)に溶解したGDC-0941を150mg/kgの濃度で、28日間1日1回経口投与した57
[癌関連遺伝子のDNA配列決定]
各腫瘍由来のDNAをQiagenDNAミニキット(Qiagen)を用いて抽出した。ゲノムDNAライブラリーは、IonPGM(ThermoFisherScientific)上のIonAmpliSeqCancerPanel(190個の領域について49個の遺伝子)から製造業者のプロトコルに従って構築した。標的遺伝子のリストは、http://www.lifetechnologies.com/order/catalog/prodct/4471262で入手できる。ゲノムビューア及びigvソフトウェアを備えたTorrentVariantCaller(バージョン4)を用いて、単一ヌクレオチド変異体を評価した。
[動物実験]
全ての実験は、岩手医科大学動物実験学会倫理委員会(24週齢)のガイドライン承認に従って行われた。この実験では、6週齢-8週齢のヌードマウス(BALB/cAjcl-nu/nu)029)。
[IVISイメージングシステム]
MKN45/5FU細胞をVECTOR-Luc4でトランスフェクトし、生物学的特性を親MKN45細胞と比較した。in vivo腫瘍成長は、IVISイメージングシステム(PerkinElmer)を用いてMKN45/5FU-Luc4でOXの画像を撮ることによって測定した。マウスに150mg/kgのD-ルシフェリンを注射し、次いで2%イソフルランガスで麻酔した。D-ルシフェリン注射の15分後、マウスをIVISイメージングシステムの撮影台に置いた。特に複数の病変が存在する場合に信号飽和を防止するために、実験に応じてスキャン時間を5-10分とした。
[免疫組織化学]
一次抗体を指示された希釈比率でインキュベートした:Phospho-PI3キナーゼp85(Tyr458)/p55(Tyr199)、1:100;ホスホ-AKT(Ser473)、1:75;ホスホ-mTOR(Ser2448)(49F9)、1:75;及びPTEN(138G6)、1:450(CellSignalingTechnology、Danvers、MA)。抗原回収(95℃で30分間のEDTA緩衝液pH9)の後、サンプルを一次抗体と共に室温で60分間インキュベートした。次いで、ペルオキシダーゼ標識抗ウサギ二次抗体(Histofine(登録商標)SimpleStainMAXPO、NichireiBiosciences、Inc.)を室温で30分間適用した。比色検出にはジアミノベンジジン(DAB)を用いた。抗p-AKT抗体が一次抗体である場合、抗原回収後の試料を4℃で一晩インキュベートし、続いて室温でペルオキシダーゼ標識抗ウサギ二次抗体との15分間のインキュベーションを行った。比色検出は、DAKOの触媒シグナル増幅(CSA)IIビオチンフリーチラミドシグナル増幅システム(AgilentTechnologies)を用いて行った。癌細胞の5%以上が染色された場合、試料を陽性染色と判定した。
[デジタルPCR]
MKN45及びMKN45/5FU細胞の試料ならびに周囲のマウス組織(>5mm)と巨視的かつ明確に区別される肝臓及び転移性OX腫瘍の原発性OX腫瘍を分析のために選択した。細胞ペレット又はWAXFREE(TrimGen)処理エタノール固定パラフィン包埋OX腫瘍材料からの鋳型DNAをQIADNAMiniキット(Qiagen)で抽出した。マウス組織による汚染を最小限に抑えるために、OX腫瘍を顕微鏡下で細切した。ゲノムコピー数を各サンプルについて約20,000に調整したQuantStudio3Dシステム(ThermoFisherScientific)でDNAをデジタルPCR反応に付した。特定の点突然変異は、コドン707突然変異(G>A)に特異的なTaqManMGBプローブで検出された。全ての手順は製造業者のプロトコルに厳密に従った。
コドン707のプライマー及びプローブ配列は、
PIK3CA-コドン707F(フォワードプライマー)、GGGATGTATTTGAAGCACCTGAAT(SEQ ID NO:1)、PIK3CA-コドン707R(リバースプライマー)、CTGCAGTGAAAAGAGTCTCAAACAC(SEQ ID NO:2)。
TaqManMBGプローブ(アンチセンスプローブ):
PIK3CA-G-プローブ(野生型)、FAM-ATTGCCTCGACTTGC(SEQ ID NO:3);及び
PIK3CA-A-プローブ(突然変異型)、VIC-CATTGCCTTGACTTGC(SEQ ID NO:4)。
[アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション]
ゲノムDNA(1μg)をQiagenQiampDNAマイクロキットを用いてMKN45及びMKN45/5FU細胞から抽出した。AgilentGenomicDNAEnzymaticLabelingKit(Cy3-dUTP)を用いてMKN45から抽出したDNAを標識し、MKN45/5FUのDNAをCy5-dUTPで標識した。標識されたDNAを、AgilentHumanGenomeCGHマイクロアレイキット244Kにハイブリダイズさせ、製造者のプロトコルに従って処理した。蛍光アレイ画像は、AgilentDNAマイクロアレイスキャナー(AgilentTechnologies)を用いて取得した。log2比は、ゲノムGC含量について1Mbp距離 GC含量波効果について補正した。異常値を平滑化し、正規化されたlog2比を、PartekGenomicsSuitev6.4(PartekInc.)における循環バイナリセグメンテーション分析を用いてセグメント化した。3つの基準を満たすセグメントを見つけるために用いられるゲノムセグメンテーションアルゴリズムは以下の通り:1)最適な統計的有意性を与えるためにブレークポイント(領域境界)を選択(P<0.001)。2)領域は最低10個のプローブをにより検出。3)「Gain」や「Loss」などのCNステータスを生成するために、相対コピー数が2.3以上1.7未満のセグメント。マイクロアレイデータセット全体は、データシリーズ受託番号GSE89191の下でhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/info/linking.htmlから入手可能である。
[統計分析]
JMP(SASInstitute、Inc.)又はGraphPadPrism(GraphPadSoftware、Inc.)ソフトウェアのいずれかを用いて統計解析を行った。群平均比較のために、スチューデントt検定又はマンホイットニーU検定のいずれかを使用した。0.05未満のp値は統計的に有意であると考えられた。
[ウェスタンブロッティング]
細胞を、5-FU及びGDC-0941の存在下で、単独又は一緒に、又はPI3K/mTOR阻害剤の存在下で、通常のインキュベーターにて、37℃で24時間、70%コンフルエンスまで増殖させた。薬物濃度は、増殖抑制アッセイから得られた48時間のGI50値に基づいて最適化した。本研究では、24時間薬物曝露に、各薬物の親細胞48時間でのおよそのGI75値を使用した。タンパク質を分子量に従って分離し、セミドライフォーマット装置(iBlot、Invitrogen)を用いてニトロセルロース膜に転写した。次いで、ニトロセルロース膜を特定の一次抗体とインキュベートし、続いてルシフェラーゼと結合した種特異的二次抗体をインキュベートした。その後、バンドを、製造者のプロトコルに従って、ルシフェリン基質を用いて可視化した。
2.結果
[5-FU耐性癌細胞株の細胞増殖]
培養培地中の濃度が連続的に上昇する5-FUの存在下で親胃癌細胞株MKN45を1年間培養した後、いくつかの細胞は薬物の存在下で増殖を続けた12。この観察は、親細胞が薬物耐性細胞特性を誘導し得ること、又は集団が異なる薬物感受性を有し得ることを示唆する。得られた5-FU耐性細胞株MKN45/5FUはMKN45細胞と同様の形態を有し、MKN45とMKN45/5FUとは(GI50)とコロニー形成(CoI50)との間の50%阻害濃度において同様の傾向を示した(図1a)。5-FUに対するMKN45/5FUの特異的かつ高い耐性は、GI50(図1b)及びCoI50(図1c)値の差によって示された。シスプラチン(CIS)及びドセタキセル(DTX)に対するMKN45/5FU交差耐性の試験は、5-FUに対する選択的耐性の存在を示した(図1b及びc)。MKN45及びMKN45/5FU異種移植片の皮下移植は、腫瘍原性に有意差を示さなかった(図1d)。
[薬物耐性の獲得における遺伝子異常の限定された効果]
次に、MKN45/5FU細胞が薬物耐性細胞集団の選択中に遺伝子異常を獲得したかどうかを調べた。46種の癌関連遺伝子からの191個の標的領域における遺伝子異常を、半導体型次世代シーケンサー(NGS、IonPGM、LifeTechnologies、この研究で使用されたIonAmpliSeqCancerPanelのaccession番号はDRA005227である)を用いて配列を決定した。これらの46個の遺伝子のうち、7個がMKN45及びMKN45/5FU細胞の両方で異常が確認された。標的遺伝子変異は、しばしば薬物耐性を促進するが13、我々の遺伝子型解析は、MKN45/5FU細胞の薬物耐性表現型が遺伝子突然変異に起因するのではなく、代わりに5-FUによって選択された圧力に起因することを示唆しているようである。「選択された」集団は、本質的に内因性薬物耐性集団14から生じると考えられるが、関連する分子経路を活性化する適応応答もまた、癌細胞が薬物の存在下で生存し、増殖することを可能にする7, 11。実際、遺伝子異常が限定された効果を有するならば、再発性腫瘍の急速な出現は容易に説明することができる。化学療法後の再発は、遺伝子突然変異の発生の可能性に比べてしばしば短時間で起こる5,15。実際、肝転移又は腹膜播種は化学療法によって一時的に抑制することができるが、高度進行胃癌患者のほとんどは数カ月以内に再発するため、薬物耐性集団が化学療法開始時に既に存在していて、化学療法期間中に生存し続けていることを示唆する16。これらの所見により、我々は、化学療法薬の存在下で出現するコロニーとして単離することができる薬物耐性細胞亜集団のプロテオームプロファイルを検討することとした。
[MKN45/5FU細胞のプロテオーム解析は、5-FU用量依存性タンパク質発現誘導を同定する]
この研究では、異なる薬物投与条件、すなわちDTPに曝露した後、直径1mm未満の二次元の円形コロニーにおいて接着して増殖する細胞の集団を明らかにした(図2a)。各々のDTPのタンパク質発現を定量的に測定するために、我々は、逆相タンパク質アレイ(RPPA)技術に基づいて様々な薬物条件に曝露された細胞から各々のコロニーを選択することにより、コロニー溶解産物アレイ(CoLA)を開発した17, 18。これらの1mmコロニーは一般に3,000-10,000個の細胞しか含まないので、セルソーターのような技術ではタンパク質種の定量的タンパク質測定には適さない。CoLAを使用すると、単一のコロニーからのライセートを含む数百から数千の各々のドットをニトロセルロース表面に集積することができ、抗体セットを用いた同時及び定量検出が可能になる(図2b)。
各々のDTPコロニー及びタンパク質レベルのクラスター分析は、コロニーの軸に2つの主要なクラスターを示した。しかし、これらのクラスターは、特定の薬物又は細胞型との有意な関連を示さず、DTPのタンパク質発現が薬物又は細胞起源によって厳密に制御されないことを示唆している。さらに、同じ薬物条件で処理された各々のDTPのプロテオミクスプロファイルは非常に多様であり、これはまた、DTP間の本質的な異種性を意味し得る。
我々は次に、MKN45及びMKN45/5FUのDTP中の50のタンパク質のレベルが薬物投与条件に関連しているかどうかを評価し、特に薬物濃度に焦点を当てた(図2c)。50個のタンパク質の中で、リン酸化されたホスファチジルイノシトイド3-キナーゼ(p-PI3K)及びp-Aktが、MKN45及びMKN45/5FU細胞における5-FU特異的用量反応性タンパク質として同定された(図2d)。p-PI3Kタンパク質は、増殖及びグルコース代謝を含む多様な細胞機能を有することが知られている。特に、PI3Kのp110αサブユニットをコードする領域のPIK3CAコドン707における点突然変異は、MKN45及びMKN45/5FU細胞の両方で見出されている。この突然変異は、構成的PI3K活性化を引き起こし得る触媒ドメインに位置する19。これらの知見に基づいて、本発明者らは次に、p-PI3Kレベルの上昇が薬物耐性又は悪性表現型とin vivoで関連するかどうか、及びコドン707点突然変異が構成的なPI3Kの活性化に直接関連するかどうかを決定した。
[MKN45/5FUのOXモデルは、悪性表現型の獲得を明らかにする]
MKN45及びMKN45 / 5FU細胞の皮下異種移植細胞は、同様の程度の腫瘍原性を示したが(図1d)、CoLAアッセイは、MKN45 / 5FU細胞におけるPI3K/AKT/ラパマイシン経路活性化の機構的な標的(mTOR)が増殖上の利点を与えることを示唆している(図2d)。この仮説を確認するために、MKN45及びMKN45/5FU細胞を、組織の連結性が緩やかな粘膜下層と適切な筋層との間の「液体注入による層剥離」によって注入した(実験手順を参照)。移植から6週間後、MKN45 OXマウスは検出可能な腫瘍を示さなかったが、MKN45/5FU OXマウスは胃で著しく大きな腫瘍(25-100mm3)を有していた(図3a)。胃のMKN45/5FU細胞由来のOX腫瘍は、リンパ節及び肝臓に転移するだけでなく、腹膜腫瘍を形成し得る(図3b及びc)。α平滑筋抗原(α-SMA)によるH&E染色及び免疫組織化学は、胃のOX腫瘍が主に粘膜下層と筋肉層との間で増殖することを示した(図3d)。「組織レベル」及び「器官レベル」OXモデルは、前者が微環境に関連する組織学的位置を正確に模倣する点で異なる。これまでの多くの研究では、腹膜播種を達成するために異種移植片を漿膜層の近く又は胃の壁に注入した20。したがって、この研究における腫瘍転移の頻度は、粘膜下層の血管が移植された腫瘍細胞に曝される可能性が高いためであろう。本明細書で使用される層特異的注入法により、進行した胃癌発達をより正確に観察することができる。総合すると、MKN45/5FU細胞によって示される攻撃的腫瘍原性は、5-FUによる選択がin vivoで高度に悪性の可能性を獲得することを示唆している。
[5-FU処置は、OXモデルにおけるPI3K経路活性化細胞集団を強化する]
次に、薬物選択と環境選択プロセスに従って、癌細胞と腫瘍免疫表現型を調べた。MKN45/5FUOXマウスに、術後1日目(POD)から5日間毎日5-FUを投与した(図4a)。5-FU処置は、サイズ及び転移能をある程度まで減少させ、薬物感受性細胞の間に薬物感受性集団が残っていることを示唆した(図4b)。5-FUの存在下で形成されたコロニーに由来する「薬物耐性」集団、培養細胞及びOX組織がp-PI3Kに対する抗体で染色されたという仮説に基づいて、CoLAアッセイが薬物耐性マーカーとして同定された(図4c)。予想どおり、免疫組織化学染色は、p-AKT、p-mTOR、及びホスファターゼ及びテンシン相同体(PTEN)タンパク質を含むPI3K経路成分に対して陽性であった細胞の比率は、腫瘍発生の間に実質的に変化したことを示した(図4d)。さらに、MKN45/5FU細胞では、p-PI3K陽性細胞の比率はMKN45と比較して有意に増加し、ほとんどすべての各々のMKN45/5FU細胞は、その後のOX及び転移部位において陽性染色傾向を示した。さらに、p-AKT及びp-mTORは、p-PI3Kに対して逆パターンを示し、PI3K/Akt/mTORフィードバックループの活性化がAKT及びmTORの活性化21を低下させる可能性があることを示唆している21。PTENの発現はOXにおいてほとんど検出されなかった。これは、減少したPTENレベルが微小環境因子によってさらに調節されることを示している22。全体的に、これらの知見は、PI3K/AKT/mTOR経路を介した増殖シグナルが、原発性5-FU化学療法後に強く生存する腫瘍細胞の治療標的であり得ることを示唆する。
[コドン707でのPIK3CA体細胞突然変異は、悪性表現型獲得の主な原因であるとは考えにくい]
PIK3CAホットスポット突然変異は、強い発癌性を引き起こすために酵素活性を増加させると考えられている19。事実、異所性のホットスポット変異は、アポトーシス活性を低下させ、腫瘍浸潤の可能性を高めることができる23。PIK3CAをコードするエクソンにおける突然変異は、幅広い頻度の様々な腫瘍において報告されている19。増大した配列決定の深さ及び長さの適用範囲は、潜在的に発癌性の非ホットスポット突然変異の同定を可能にした24。ここで、PIK3CA突然変異は、キナーゼ様ドメインをコードする領域にあるコドン707(すなわち、E707K)で検出された。E707K突然変異は、耳下腺25及び乳房26から生じる癌腫において報告されており、PIK3CA突然変異を用いて、薬物耐性癌細胞及び悪性表現型を有する細胞集団の選択中の集団濃縮を追跡することができる。in vitroでのコドン707 G>A変異の変異対立遺伝子頻度(VAF)のNGS評価は、それぞれMKN45及びMKN45/5FU細胞について31.2及び30.8%であった。これらの配列決定結果を検証し、細胞培養及びOX中のVAFの濃縮を調べるために、rs3729687を標的とする特定のプローブを有するデジタルPCR(dPCR)のための一対のプライマーを設計した(図5a)。MKN45、MKN45/5FU、MKN45/5FUの腹部腫瘍及びMKN45/5FU肝転移では、変異型アレルの平均VAFはそれぞれ39.7,40.5,32.5及び32.2%であった(図5b)。
PIK3CAエクソン14の突然変異領域は、第22染色体の約7.0kbpの領域と高い(>99%)相同性を共有する27(図5a)。以前のMKN45核型解析では、第3染色体の長腕が保持されていたのに対し、染色体22対の一方は欠失していた28。我々のアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)はまた、このPIK3CA領域(3q26.32-3q26.33、ヌクレオチド178,932,477-178,939,690,7,214bpを含む)のコピー数がMKN45及びMKN45/5FU細胞型の両方で保持され、染色体22(ヌクレオチド17,049,390-17,056,254,6,865bp)の相同領域のコピー数は、細胞株の樹立中に染色体喪失が起こり得ることを示唆した(aCGHのGEOアクセッション番号はGEO:GSE89191;補足データ)。これらの細胞遺伝学的所見は、dPCRによるコドン707突然変異の定量的測定の結果解釈に有用である。理論的には、第3染色体上のコドン707の最高VAFは、全ての細胞が変異を有する場合、33.3%以下であるべきである(図5c)。この推定に基づいて、dPCRの結果は、PIK3CAコドン707突然変異を有する細胞が、任意の腫瘍段階の間に優勢であることを示唆する。p-PI3K陽性細胞の有病率はMKN45及びMKN45/5FU細胞の悪性表現型と一致していたため、PIK3CA突然変異はMKN45/5FU細胞の場合に腫瘍悪性腫瘍の獲得の主な原因であるとは考えにくい。実際に、我々は、別の親/耐性細胞系統MKN74及びMKN74/5FUにコドン707突然変異を見出さなかった。
[PI3K活性化の阻害は、MKN45/5FU細胞の悪性電位を低下させる。]
遺伝子異常が腫瘍悪性腫瘍の獲得に限定された効果を有するという知見から、次にタンパク質レベルで活性化されたPI3K経路の阻害効果を調べた。PI3K阻害剤が5-FU処置後に持続性増殖を伴う腫瘍を抑制できるかどうかを決定するために、PI3K阻害剤LY294002、ケルセチン、ウォートマンニン、GNE493、及びGDC0941についてコロニー形成アッセイを行った29-32。5-FU又はPI3K阻害剤単独の投与は、適度なコロニー抑制と関連していたが、5-FU及び試験したPI3K阻害剤の同時投与は併用効果を有していた(図6a)。5-FUとGDC-0941の同時投与はコロニー形成を有意に抑制したので、OXモデルにおけるGDC-0941の腫瘍抑制効果を調べた33。MKN45/5FUOXを有するマウスを、静脈内5-FUで処置し、続いて経口投与したGDC-0941で処置した(図6b)。治療無しで、OXマウスの100%(9/9)が胃で局所腫瘍増殖を示し、9匹のマウスのうち5及び4匹が肝転移及び腹膜播種を示した(図3d及び図4b)。5-FU処置では、82%(9/11)のOXマウスが局所腫瘍増殖を有し、27%(3/11)は転移を有した(図4b及び6c)。OXマウスの33%(2/6)及び17%(1/6)が肝転移及び腹膜炎を有していたのに対して、PI3K阻害剤GDC-0941単独を与えたマウスのうち、OXマウスの67%(4/6)(図6c)。5-FUとGDC-0941の組み合わせは、顕著な腫瘍抑制を示し、OXマウスのわずか17%(1/6)が目に見える腫瘍を有し、転移の証拠はなかった(図6b及び6c)。興味深いことに、増殖抑制アッセイは、5-FU耐性細胞株MKN45/5FU及びMKN74/5FUが、GDC-0941に対する感受性が、それぞれの親細胞のものよりも3.2倍及び2.4倍高かったことを示した。さらに、処置後に残った腫瘍の免疫組織化学的結果は、GDC-0941が5-FUによって活性化されたものとは異なる経路活性化を誘導したことを示した。ここで、p-PI3K陽性細胞の有意な減少が明らかであったが、PTEN陽性細胞は、胃のGDC-0941処置腫瘍において時折見出された(図6d)。PTEN陽性細胞の数は、レベルが親MKN45細胞株のレベルにほぼ等しい肝臓転移でさらに増加した(図4c)。p-PI3K陽性細胞は5-FU耐性と関連するようであるので、GDC-0941処置後に見られるp-PI3K陽性細胞の数の減少は、5-FUの有効性の増加を示し得る。全体的に、これらの結果は、PI3K阻害活性化処置が、PI3K経路活性化を伴う5-FU処置濃縮細胞でより有効であることを示唆する。
[GDC-0941は、5-FU耐性細胞におけるリボソームS6キナーゼのリン酸化を選択的に阻害する。]
CoLAプロファイリングは、5-FU寛容性の派生者が5-FU濃度で増加したp-PI3Kレベルを有する傾向があることを示唆した。OX腫瘍免疫組織化学は、p-PI3K発現5-FU耐性細胞が胃微小環境において濃縮されるという仮説を支持した。ウェスタンブロットでのバルク細胞溶解物レベルでは、同時の5-FU/GDC-0941処置は、5-FU耐性細胞におけるp-PI3Kレベルの低下を示した(図7)。薬物処理によって誘発されたPTENレベルの低下は、5-FU耐性細胞においてのみ生じた。しかし、PTEN削減のレベルは、OXで見られたほど顕著ではなかった。したがって、完全なPTEN発現の喪失は、胃の微小環境に起因する可能性がある。親株及び耐性細胞株における同時の5-FU/GDC-0941処置において、p-AKTの阻害が見られた。重要なことに、GDC-0941によるPI3K経路活性化の阻害は、特に5-FU耐性細胞におけるリボソームp70S6キナーゼ(S6キナーゼ)リン酸化(p-S6キナーゼ、Ser235/236及びSer240/244)の減少により明らかに示された。これらの結果は、mTORサロゲートマーカーとしてのS6キナーゼが、5-FU耐性サブ集団の増殖抑制のためのGDC-0941の重要な標的でもあることを示唆している34。しかしながら、薬物耐性の胞子とは対照的に、培養細胞は依然として相当量の薬物感受性細胞を含有している可能性がある。ウェスタンブロットは、S6キナーゼを除いて評価されたPI3K経路タンパク質の大部分において穏やかな変化を示した。これは、p-S6キナーゼ阻害が培養細胞の大部分において比較的迅速に起こり得ることを示唆する。事実、mTORの減少は、GDC-0941処置マウスのOX腫瘍において明らかではなかった。この結果は、ウェスタンブロッティングが培養細胞による分子レベルでの実際の薬物応答を示すのに対し、OX腫瘍の免疫組織化学は、治療後も生存可能な腫瘍細胞のみを表すためであり得る。
PI3K経路は5-FU耐性の残基において活性化されるようであるが、Akt及びS6キナーゼ活性化は必ずしも付随的に誘発されない34。しかしながら、S6キナーゼのリン酸化は、PI3K経路阻害の主要な標的であると考えられている33,35。我々がDTPで観察したように、5-FU処置では、持続者におけるp-PI3Kレベルが徐々に増加した。GDC-0941は、p-S6キナーゼを抑制することによって5-FU耐性p-PI3K陽性細胞を減少させた。これらの結果は、GDC-0941処置が5-FUにより富化された薬物耐性サブ集団に対して有効であることを示唆している。
3.考察
ここでは、一次化学療法剤5-FUに対する耐性を獲得した癌細胞の増殖を抑制する効果的なアプローチを実証した。各々のDTPによって表されるこれらの5-FU耐性サブ集団は、5-FU濃度が増加するにつれてp-PI3Kのレベルが増加する。高いp-PI3Kレベルを有するより多くのDTPが、MKN45/5FU細胞においてMKN45細胞よりも観察され、MKN45/5FU細胞が親株MKN45よりも5-FUの存在下でより高い生存率を有することを示唆している。興味深いことに、MKN45細胞は、5-FU耐性だけでなく、ヌードマウスの胃における非常に悪性の表現型も示した。p-PI3K陽性細胞のパーセンテージは5-FU耐性及び悪性表現型と並行して増加したが、これらの細胞は明らかな遺伝子異常を有さず、細胞シグナル伝達レベルでの適応が表現型の獲得にとって重要であることを示唆した。従って、5-FU処置後に再発を予防することは、PI3Kシグナル伝達を阻害して、5-FU処置に濃縮されたp-PI3K陽性細胞亜集団を減少させることによって達成することができた。この仮説と一致して、PI3K阻害剤GDC-0941はin vivoでの5-FU耐性及び悪性細胞の増殖を効果的に抑制した。化学療法薬の中で、5-FUは長い間、広範な種類の癌の選択肢として好まれていた36。したがって、化学療法後の再発を経験した患者集団に対する本研究の影響は、他の化学療法薬よりも大きいはずである。
実際に、胃切除術と組み合わせた5-FUベースの化学療法は、胃癌治療のために広く使用されているレジメンである。ここに提示される治療経路は、5-FUに適応した細胞への分子療法を標的化する戦略である7,11。我々が観察した適応応答は、薬物耐性の獲得が薬物投与に応答して速やかに起こりうるように、標的ドライバー遺伝子突然変異を必要としなかった。実際に、再発性胃癌に対する化学療法は、腫瘍負荷の軽減においてしばしばいくらかの反応を示す。短期間にかなりの数の応答する腫瘍が再発する37,38。我々の以前の研究は、化学療法後の再発腫瘍が、以前の治療に使用された薬物にしばしば耐性を示すことを実証し、この知見はin vitro細胞ベースの化学感受性アッセイによって確認された16。これらの所見は、薬物耐性表現型は、様々な環境変化に応答するための準備が整った“crouching”状態から生じることができることを示唆している。そのような適応応答は、比較的短時間で達成することができる。
ここでは、特定のタンパク質のレベルの急激な変化を用量依存的に同定した。PI3Kタンパク質レベルは、5-FU濃度が増加するにつれてDTPにおいて徐々に増加したが、AKTは、MKN45及びMKN45/5FU細胞の両方において明確な反対の傾向を示した。OXモデルでは、PI3Kの負のレギュレーターであるPTENが大幅に抑制され、PTENの発現は微小環境因子によって調節され、胃の腫瘍成長に影響を与える可能性がある22,39。これらの所見は、PI3K/Akt/mTOR経路活性が5-FU及びユニークな胃環境によって変化して、5-FU耐性及び悪性細胞集団の濃縮を促進することを示している。したがって、我々はPI3K阻害が5-FU化学療法後に生存した胃腫瘍の大きさを効果的に減少させるはずであるとの仮説を立てた。予想通り、OXモデルマウスにおけるGDC-0941の経口投与は、5-FU投与と同時に腫瘍抑制を明確にした。
GDC-0941は、発癌活性化を獲得した野生型及び変異型(E545K及びH1047R)を含む、様々な形態のp110αを標的とする非常に選択的で強力なクラスIPI3K阻害剤である40,41。しかしながら、胃癌におけるPIK3CAの変異率は他の癌と比較して低い19,42,43。PIK3CA突然変異と構成的PI3K活性化との関連、又はこれらの変化の予後の影響は、依然として議論の余地がある。本研究で見出されたPIK3CA突然変異E707Kは、第3染色体上にコードされた触媒ドメインに位置し、胃癌における潜在的に新規な腫瘍形成突然変異を示唆している42,47。VAFは、ほとんど全てのMKN45/5FU細胞がE707K突然変異を有することを示したが、p-PI3K陽性細胞の有病率は、in vitro及びin vivoで30-90%の範囲であった。これらの結果は、E707K突然変異がPI3K活性化の主な原因であるとは考えにくいことを示唆している。5-FU耐性はp-PI3Kの増加に関連するので、E707K突然変異とp-PI3K状態との間の関連性の欠如は、後天性薬物耐性のための適応メカニズムを支持し得る7,11
実際に、耐性細胞におけるp-PI3Kの一定の活性化は、胃癌におけるPIK3CA突然変異状態とは無関係にPI3K阻害剤が治療的適用を有する可能性を依然として示唆する。GDC-0941は、in vitro及びin vivoにおけるmTOR経路エフェクターであるp-S6キナーゼを標的とすると考えられている33,35,48。本発明者らは、5-FU投与単独でp-S6キナーゼが持続することを見出したが、GDC-0941の添加は、異なるPIK3CAバックグラウンドであっても5-FU耐性/親対におけるp-S6キナーゼを実質的に減少させた。これらの結果は、5-FUベースの化学療法とその後のGDC-0941投与が、5-FUで治療された多くの胃癌患者、特にアジュバント設定で治療された患者にとって合理的な選択肢であることを示唆している。
[実施例中で引用した文献]
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本発明により提供されるモデル動物により、よりヒト癌に近い組織学的発生形態が得られる。そのため、本発明は、胃癌の発生・進展過程におけるリンパ節・多臓器への転移を選択的に抑制する薬物のスクリーニングへの使用が期待される。本発明により、モデル動物の安定供給が可能となれば、様々な多剤併用療法を試行することが可能となる。また、モデル動物を治療法により群分けすれば、統計学的デザインに基づいた疑似臨床試験を行うこともできるため、前臨床段階に求められる極めて有用な情報が得られると期待できる。
SEQ ID NO:1 PIK 3 CA - codon 707 F (forward primer)
SEQ ID NO:2 PIK 3 CA - codon 707 R (reverse primer)
SEQ ID NO:3 PIK3 CA-G probe (wild type)
SEQ ID NO:4 PIK 3 CA-A probe (mutant type)

Claims (9)

  1. 胃癌細胞が生着している非ヒト動物の作製方法であって、
    免疫力が低下した非ヒト動物の胃の粘膜下層に細胞懸濁液を注入する工程
    を含む方法。
  2. 非ヒト動物が免疫不全状態である、請求項1に記載の方法。
  3. 非ヒト動物がヌードマウスである、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 胃の粘膜下層に細胞懸濁液を注入する工程が、粘膜と粘膜下層との間に細胞懸濁液を注入することにより行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 1匹当たり1.0×105〜1.0×107個の胃癌細胞を注入する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 胃癌細胞がヒト由来である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 胃癌細胞が薬物耐性株である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 胃癌細胞がフルオロウラシル耐性株である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法で作製された非ヒト動物を準備する工程;及び
    作製された非ヒト動物に、候補薬物を投与する工程
    を含む、胃癌の転移を抑制する薬物のスクリーニング方法。
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