本発明の実施の形態(以下、本実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。
[概要]
図1に示すプラズマ処理装置100は、個々のワークWの表面に、プラズマを利用して化合物膜を形成する装置である。つまり、プラズマ処理装置100は、図1〜図3に示すように、回転体31が回転すると、保持部33に保持されたトレイ34上のワークWが円周の軌跡で移動して、成膜部40A、40B又は40Cに対向する位置を繰り返し通過する毎に、スパッタリングによりターゲット41A〜41Cの粒子をワークWの表面に付着させる。また、ワークWは膜処理部50A又は50Bに対向する位置を繰り返し通過する毎に、ワークWの表面に付着した粒子は、導入されたプロセスガスG2中の物質と化合して化合物膜となる。
[構成]
このようなプラズマ処理装置100は、図1〜図3に示すように、真空容器20、搬送部30、成膜部40A、40B、40C、膜処理部50A、50B、ロードロック部60、制御装置70を有する。
[真空容器]
真空容器20は、内部を真空とすることが可能な容器、所謂、チャンバである。真空容器20は、内部に真空室21が形成される。真空室21は、真空容器20の内部の天井20a、内底面20b及び内周面20cにより囲まれて形成される円柱形状の密閉空間である。真空室21は、気密性があり、減圧により真空とすることができる。なお、真空容器20の天井20aは、開閉可能に構成されている。
真空室21の内部の所定の領域には、反応ガスGが導入される。反応ガスGは、成膜用のスパッタガスG1、膜処理用のプロセスガスG2を含む(図4参照)。以下の説明では、スパッタガスG1、プロセスガスG2を区別しない場合には、反応ガスGと呼ぶ場合がある。スパッタガスG1は、電力の印加により生じるプラズマにより、発生するイオン等の活性種をターゲット41に衝突させて、ターゲット41材料をワークWの表面に堆積させるためのガスである。例えば、アルゴンガス等の不活性ガスを、スパッタガスG1として用いることができる。
プロセスガスG2は、誘導結合により生じるプラズマにより発生する活性種を、ワークWの表面に堆積された膜に浸透させて、化合物膜を形成するためのガスである。以下、このようなプラズマを利用した表面処理であって、ターゲット41を用いない処理を、逆スパッタと呼ぶ場合がある。プロセスガスG2は、処理の目的によって適宜変更可能である。例えば、膜の酸窒化を行う場合には、酸素O2と窒素N2の混合ガスを用いる。
真空容器20は、図3に示すように、排気口22、導入口24を有する。排気口22は、真空室21と外部との間で気体の流通を確保して、排気Eを行うための開口である。この排気口22は、例えば、真空容器20の底部に形成されている。排気口22には、排気部23が接続されている。排気部23は、配管及び図示しないポンプ、バルブ等を有する。この排気部23による排気処理により、真空室21内は減圧される。
導入口24は、各成膜部40A、40B、40CにスパッタガスG1を導入するための開口である。この導入口24は、例えば、真空容器20の上部に設けられている。この導入口24には、ガス供給部25が接続されている。ガス供給部25は、配管の他、図示しない反応ガスGのガス供給源、ポンプ、バルブ等を有する。このガス供給部25によって、導入口24から真空室21内にスパッタガスG1が導入される。なお、真空容器20の上部には、後述するように、膜処理部50A、50Bが挿入される開口21aが設けられている。
[搬送部]
搬送部30は、真空容器20内に設けられ、ワークWを搭載する回転体31を有し、回転体31を回転させることによりワークWを円周の搬送経路Tで循環搬送させる装置である。循環搬送は、ワークWを円周の軌跡で繰り返し周回移動させることをいう。搬送経路Tは、搬送部30によってトレイ34が移動する軌跡である。
回転体31は、円形の板状の回転テーブルである。回転体31は、例えば、ステンレス鋼の板状部材の表面に酸化アルミニウムを溶射したものとしても良い。以降、単に「周方向」という場合には、「回転体31の周方向」を意味し、単に「半径方向」という場合には、「回転体31の半径方向」を意味する。また、本実施形態では、ワークWの例として、平板状の基板を用いているが、プラズマ処理を行うワークWの種類、形状及び材料は特定のものに限定されない。例えば、中心に凹部あるいは凸部を有する湾曲した基板を用いても良い。また、金属、カーボン等の導電性材料を含むもの、ガラスやゴム等の絶縁物を含むもの、シリコン等の半導体を含むものを用いても良い。
搬送部30は、回転体31に加えて、モータ32、保持部33を有する。モータ32は、回転体31に駆動力を与え、円の中心を軸として回転させる駆動源である。保持部33は、搬送部30により搬送されるトレイ34を保持する構成部である。回転体31の表面、つまり天面に、複数の保持部33が円周等配位置に配設されている。例えば、各保持部33がトレイ34を保持する領域は、回転体31の周方向の円の接線に平行な向きで形成され、かつ、周方向において等間隔に設けられている。より具体的には、保持部33は、トレイ34を保持する溝、穴、突起、治具、ホルダ等であり、メカチャック、粘着チャック等によって構成することができる。
トレイ34は、方形状の平板の一方に、ワークWを搭載する平坦な載置面を有する部材である。トレイ34の材質としては、熱伝導性の高い材質、例えば、金属とすることが好ましい。本実施形態では、トレイ34の材質をSUSとする。なお、トレイ34の材質は、例えば、熱伝導性の良いセラミクスや樹脂、または、それらの複合材としてもよい。ワークWは、トレイ34の載置面に対して直接搭載されてもよいし、粘着シートを有するフレーム等を介して間接的に搭載されていてもよい。トレイ34毎に単数のワークWが搭載されてもよいし、複数のワークWが搭載されてもよい。
本実施形態では、保持部33は6つ設けられているため、回転体31上には60°間隔で6つのトレイ34が保持される。但し、保持部33は、一つであっても、複数であってもよい。回転体31は、ワークWを搭載したトレイ34を循環搬送して成膜部40、膜処理部50に対向する位置を繰り返し通過させる。
[成膜部]
成膜部40A、40B、40Cは、搬送経路Tを循環搬送されるワークWに対向する位置に設けられ、スパッタリングによりワークWに成膜材料を堆積させて膜を形成する処理部である。以下、複数の成膜部40A、40B、40Cを区別しない場合には、成膜部40として説明する。成膜部40は、図3に示すように、スパッタ源4、区切部44、電源部6を有する。
(スパッタ源)
スパッタ源4は、電子部品10にスパッタリングにより成膜材料を堆積させて成膜する成膜材料の供給源である。スパッタ源4は、図2及び図3に示すように、ターゲット41A、41B、41C、バッキングプレート42、電極43を有する。ターゲット41A、41B、41Cは、ワークWに堆積されて膜となる成膜材料によって形成され、搬送経路Tに離隔して対向する位置に配置されている。
本実施形態では、3つのターゲット41A、41B、41Cが、平面視で三角形の頂点上に並ぶ位置に設けられている。回転体31の回転中心に近い方から外周に向かって、ターゲット41A、41B、41Cの順で配置されている。以下、ターゲット41A、41B、41Cを区別しない場合には、ターゲット41として説明する。ターゲット41の表面、つまり底面側は、搬送部30により移動するワークWに、離隔して対向する。なお、3つのターゲット41A、41B、41Cによって、成膜材料を付着させることができる領域は、回転体31の径方向におけるトレイ34の大きさよりも大きい。このように、成膜部40で成膜させる領域に対応し、搬送経路Tに沿った円環状の領域を成膜領域F(図2の点線で示す)とする。半径方向における成膜領域Fの幅は、半径方向におけるトレイ34の幅よりも長い。
成膜材料としては、例えば、ニオブ、シリコンなどを使用する。但し、スパッタリングにより成膜される材料であれば、種々の材料を適用可能である。また、ターゲット41は、例えば、円柱形状である。但し、長円柱形状、角柱形状等、他の形状であってもよい。
バッキングプレート42は、各ターゲット41A、41B、41Cを個別に保持する部材である。電極43は、真空容器20の外部から各ターゲット41A、41B、41Cに個別に電力を印加するための導電性の部材である。各ターゲット41A、41B、41Cに印加する電力は、個別に変えることができる。なお、スパッタ源4には、必要に応じてマグネット、冷却機構などが適宜具備されている。
(区切部)
区切部44は、スパッタ源4によりワークWが成膜される成膜ポジションM2、M4、M5、膜処理を行う膜処理ポジションM1、M3を仕切る部材である。区切部44は、図2に示すように、搬送部30の回転体31の回転中心から、放射状に配設された方形の壁板である。区切部44は、例えば、図1に示すように、真空室21の天井20aの膜処理部50A、成膜部40A、膜処理部50B、成膜部40B、成膜部40Cの間に設けられている。区切部44の下端は、ワークWが通過する隙間を空けて、回転体31に対向している。この区切部44があることによって、成膜ポジションM2、M4、M5の反応ガスG及び成膜材料が真空室21に拡散することを抑制できる。
成膜ポジションM2、M4、M5の水平方向の範囲は、一対の区切部44によって区切られた領域となる。なお、回転体31により循環搬送されるワークWが、成膜ポジションM2、M4、M5のターゲット41に対向する位置を繰り返し通過することにより、ワークWの表面に成膜材料が膜として堆積する。この成膜ポジションM2、M4、M5は、成膜の大半が行われる領域であるが、この領域から外れる領域であっても成膜材料の漏れはあるため、全く膜の堆積がないわけではない。つまり、成膜が行われる領域は、各成膜ポジションM2、M4、M5よりもやや広い領域となる。
(電源部)
電源部6は、ターゲット41に電力を印加する構成部である。この電源部6によってターゲット41に電力を印加することにより、スパッタガスG1をプラズマ化させ、成膜材料を、ワークWに堆積させることができる。各ターゲット41A、41B、41Cに印加する電力は、個別に変えることができる。本実施形態においては、電源部6は、例えば、高電圧を印加するDC電源である。なお、高周波スパッタを行う装置の場合には、RF電源とすることもできる。回転体31は、接地された真空容器20と同電位であり、ターゲット41側に高電圧を印加することにより、電位差を発生させている。これにより、可動の回転体31をマイナス電位とするために電源部6と接続する困難さを回避している。
このような成膜部40は、複数の成膜部40A、40B、40Cに同じ成膜材料を用いて同時に成膜することにより、一定時間内における成膜量つまり、成膜レートを上げることができる。また、複数の成膜部40A、40B、40Cに互いに異なる種類の成膜材料を用いて同時或いは順々に成膜することにより、複数の成膜材料の層から成る膜を形成することもできる。
本実施形態では、図1及び図2に示すように、搬送経路Tの搬送方向に、膜処理部50A、50Bとの間に、3つの成膜部40A、40B、40Cが配設されている。3つの成膜部40A、40B、40Cに、成膜ポジションM2、M4、M5が対応している。2つの膜処理部50A、50Bに、膜処理ポジションM1、M3が対応している。
[膜処理部]
膜処理部50A、50Bは、搬送部30により搬送されるワークWに堆積した材料に対して膜処理を行う処理部である。この膜処理は、ターゲット41を用いない逆スパッタである。膜処理部50は、処理ユニット5を有する。この処理ユニット5の構成例を図3〜図6を参照して説明する。
処理ユニット5は、図3及び図4に示すように、筒部H、窓部材52、供給部53、調節部54(図9参照)、アンテナ55、冷却部56、分散部57を有する。筒部Hは、一端の開口Hoが、真空容器20の内部の搬送経路Tに向かう方向に延在した構成部である。筒部Hは、筒状体51、冷却部56、分散部57を有する。これらの筒部Hを構成する部材のうち、まず、筒状体51について説明し、冷却部56、分散部57については後述する。筒状体51は、水平断面が角丸長方形状の筒である。ここでいう角丸長方形状とは、陸上競技におけるトラック形状であり、一対の部分円を凸側を相反する方向として離隔して対向させ、それぞれの両端を互いに並行な直線で結んだ形状である。筒状体51は、回転体31と同様の材質とする。筒状体51は、開口51aが回転体31側に離隔して向かうように、真空容器20の天面に設けられた開口21aに挿入されている。これにより、筒状体51の側壁の大半は、真空室21内に収容されている。筒状体51は、その長径が回転体31の半径方向と平行となるように配置されている。なお、厳密な平行である必要はなく、多少の傾きがあってもよい。また、プラズマ処理、つまり膜処理される領域である処理領域は、筒状体51の開口51aと相似形状の角丸長方形状である。つまり、処理領域の回転方向の幅は、半径方向において同じである。
窓部材52は、図4に示すように、筒部Hに設けられ、真空容器20内のプロセスガスG2が導入されるガス空間Rと外部との間を仕切る部材である。本実施形態では、窓部材52は、筒部Hを構成する筒状体51に設けられている。ガス空間Rは、膜処理部50において、回転体31と筒部Hの内部との間に形成される空間であり、回転体31によって循環搬送されるワークWが繰り返し通過する。本実施形態では、窓部材52は、筒状体51の内部に収まり、筒状体51の水平断面と略相似形の石英等の誘電体の平板である(図8参照)。窓部材52は、上記のように配設された筒状体51の断面と略相似形の角丸長方形状の板である。つまり、図3、図4に示すように、窓部材52は、搬送経路Tに沿う方向の長さSよりも、搬送経路Tに交差する方向の長さLが長い(図7、図8参照)。なお、窓部材52は、アルミナ等の誘電体であってもよいし、シリコン等の半導体であってもよい。
筒部Hには、図5に示すように、窓部材52を支持する支持部510が設けられている。本実施形態では、支持部510は、筒部Hを構成する筒状体51に設けられている。支持部510と筒状体51との間に、ガス空間Rと外部との間を封止するシール部材21bが設けられている。そして、図6(B)に示すように、真空室21が減圧されて大気圧により押圧された窓部材52と、支持部510におけるガス空間R側の部分、より具体的にはシール部材21bよりもガス空間R側の部分とが非接触となるように、支持部510と窓部材52との間隙D1が設けられている。間隙D1は、窓部材52の厚さに応じた反りの大きさ、シール部材21bの脱落防止等を考慮して、非接触となる大きさを決定する。例えば、0.05mm以上、1mm以下とすることが考えられる。
窓部材52と外部側の支持部510との間には、窓部材52及び支持部510に接触するシート513が設けられている。さらに、支持部510は、窓部材52の側面に対向する位置に、窓部材52の位置を規制する規制部510Sを有し、窓部材52の側面と規制部510Sとの間に、間隙D2が設けられている。規制部510Sは、筒状体51の内側の直立した面である。本実施形態では、後述する棚面510Aと棚面510Bとの間の垂直面である。間隙D2は、図6(A)、(B)に示すように、熱により伸縮した窓部材52と外部側の支持部510とが非接触となるように、設定されている。
以下、支持部510、窓部材52、シール部材21b、シート513の構成を、より具体的に説明する。支持部510は、図4及び図5に示すように、筒状体51の一端の内縁が、筒状体51の内側に突出した肉厚部である。この支持部510の最内縁が、筒状体51の断面と略相似形の角丸長方形の開口51aである。
支持部510は、筒状体51の内壁から開口51aに行くにしたがって低くなる棚面510A、510B、510Cを有することにより、階段状となっている。各棚面510A、510B、510Cは、回転体31の天面に平行である。
棚面510Bは、第1の対向面511a、第2の対向面511b及び溝511cを有している。第1の対向面511aは、棚面510Bの一部が全周に亘って窓部材52側に突出した部分の平坦な頭頂面である。第1の対向面511aは、棚面510B上においてガス空間Rの外部側に設けられ、窓部材52に対向する面である。第2の対向面511bは、棚面510B上においてガス空間R側に設けられ、窓部材52に対向する面である。第2の対向面511bは、第1の対向面511aの内側の全周に亘って窓部材52側に突出した部分の平坦な頭頂面である。溝511cは、第1の対向面511aと第2の対向面511bとの間に全周に亘って形成された窪み(あり溝)であり、無端状のシール部材21bが嵌め込まれている。シール部材21bは、例えば、Oリングである。このシール部材21bの上部は、溝511cから突出しており、窓部材52が載置されることにより、開口51aが気密に封止されている。
シート513は、第1の対向面511aと窓部材52との間に設けられている。シート513は、円環状の薄板であり、低摩擦且つ形状復元性を有する高熱伝導材料によって形成されている。この材料は、例えば、カーボン、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂である。形状復元性とは、外力が加わって変形しても、その外力から解放されると元の形状に戻る性質を言う。そして、第2の対向面511bは、第1の対向面511aよりも、窓部材52から離隔した位置に設けられている。つまり、大気圧により押圧された窓部材52と第2の対向面511bとが非接触となるように、間隙D1が設けられている。また、棚面510Cは、窓部材52との間隔が、間隙D1以上となっている。
支持部510には、図7及び図8に示すように、供給口512が形成されている。以下、供給口512は、図4及び図5に示すように、プロセスガスG2をガス空間R内に供給する穴である。供給口512は、図5に示すように、L字形となるように棚面510Aから開口51aまで貫通している。供給口512は、搬送経路Tの下流側と上流側の対向する位置に設けられている。
さらに、図4に示すように、筒状体51の開口51aと反対端には、垂直断面が逆L字形となるように、周縁が全周に亘って外方へ張り出した外フランジ51bが形成されている。外フランジ51bの下面と真空容器20の天面との間には、全周に亘るOリングが配設され、開口21aが気密に封止されている。
供給部53は、図7及び図9に示すように、ガス空間RにプロセスガスG2を供給する装置である。供給部53は、図示しないボンベ等のプロセスガスG2の供給源とこれに接続された配管53a、53b、53cを有している。プロセスガスG2は、例えば、酸素及び窒素である。配管53aは、それぞれのプロセスガスG2の供給源からの一対の経路である。配管53bは、一対の経路である配管53aが収束した一つの経路である。配管53bは、一方の供給口512に接続されている。配管53cは、配管53bから分岐して、他方の供給口512に接続されている(図9参照)。
調節部54は、図9に示すように、供給口512から導入するプロセスガスG2の供給量を調整する。つまり、調節部54は、供給部53の単位時間当たりのプロセスガスG2の供給量を、個別に調節する。調節部54は、配管53aにそれぞれ設けられたマスフローコントローラ(MFC)54aを有する。MFC54aは、流体の流量を計測する質量流量計と流量を制御する電磁弁を有する部材である。
アンテナ55は、図8及び図10に示すように、ガス空間Rの外部であって窓部材52の近傍に配置され、電力が印加されることにより、ガス空間RのプロセスガスG2に、搬送経路Tを通過するワークWを処理するための誘導結合プラズマを発生させる部材である。アンテナ55の形状により発生する誘導結合プラズマの分布形状を変えることができる。本実施形態においては、アンテナ55を以下に示す形状とすることにより、ガス空間Rの断面と略相似する形状の誘導結合プラズマを発生させることができる。
アンテナ55は、複数の導体551a〜551d及びコンデンサ552を有する。複数の導体551は、それぞれ帯状の導電性部材であり、互いにコンデンサ552を介して接続されることにより、平面方向から見て角丸長方形の電路を形成する。このアンテナ55の外形は、開口51a以下の大きさである。
各コンデンサ552は、略円柱形状であり、導体551a、551b、551c、551dの間に直列に接続されている。アンテナ55を導体のみで構成すると、電圧振幅が電源側の端部で過大となってしまい、窓部材52が局所的に削られてしまうため、導体を分割してコンデンサ552を接続することにより、各導体551a、551b、551c、551dの端部で小さな振幅が生じるようにして、窓部材52の削れを抑えている。
但し、コンデンサ552部分では導体551a、551b、551c、551dの連続性が断たれて、プラズマ密度が低下する。このため、窓部材52に対向する導体551a、551b、551c、551dの端部は、互いに平面方向に重なりを生じさせて、コンデンサ552を軸方向から挟むように構成されている。より具体的には、コンデンサ552に対する導体551a、551b、551c、551dの接続端は、断面が逆L字形となるように屈曲されている。隣接する導体551a、551bの端部の水平面は、コンデンサ552を軸方向から挟持する間隙が設けられている。同様に、導体551b、551cの端部の水平面、導体551c、551dの端部の水平面には、それぞれコンデンサ552を上下から挟持する間隙が設けられている。
アンテナ55には、高周波電力を印加するためのRF電源55aが接続されている。RF電源55aの出力側には整合回路であるマッチングボックス55bが直列に接続されている。例えば、導体551aの一端と、導体551dの一端との間に、RF電源55aが接続されている。この例では、導体551aが接地側である。RF電源55aと導体551dの一端のとの間には、マッチングボックス55bが接続されている。マッチングボックス55bは、入力側及び出力側のインピーダンスを整合させることで、プラズマの放電を安定化させる。
冷却部56は、図4、図5及び図7に示すように、筒状体51と同じ外形を有する角丸長方形状の筒形部材であり、その上面が筒状体51の底面に接して合致する位置に設けられている。冷却部56の内部には、図示はしないが、冷却水が流通するキャビティが設けられている。キャビティには、冷却水を循環供給する冷却水循環装置であるチラーに接続された供給口と排水口が連通している。このチラーにより冷却された冷却水が供給口から供給され、キャビティ内を流通して排水口から排出されることを繰り返すことにより、冷却部56が冷却され、筒状体51及び分散部57の加熱が抑制される。
分散部57は、筒状体51、冷却部56と同じ外形を有する角丸長方形状の筒形部材であり、その上面が冷却部56の底面に接して合致する位置に設けられ、その底面に筒部Hの開口Hоが設けられている。分散部57には、分散板57aが設けられている。分散板57aは、供給口512に対向する位置に間隔を空けて配置され、供給口512から導入されるプロセスガスG2を分散させて、ガス空間Rに流入させる。
より具体的には、分散板57aは、冷却部56の内縁から全周に亘って立ち上げられ、冷却部56を超え、且つ、筒状体51の支持部510の供給口512に離隔して対向する位置を超えて窓部材52の底面に近接する位置まで延設されている。分散板57aと供給口512との間のプロセスガスG2の流路は、図5に示すように、回転体31側が閉塞されるとともに、窓部材52側がガス空間Rに連通している。つまり、支持部510と分散板57aとの間は、上方が窓部材52の下方のガス空間Rに連通した環状の隙間を形成している。
なお、分散部57の底面と回転体31の表面との垂直方向の間隔は、搬送経路TにおけるワークWが通過可能な長さを有する。また、分散板57aは、筒状体51内のガス空間Rに入り込むため、ガス空間Rにおけるプラズマの発生領域は、分散板57aの内側の空間となる。
供給部53から供給口512を介して、分散板57a内のガス空間RにプロセスガスG2を導入し、RF電源55aからアンテナ55に高周波電圧を印加すると、窓部材52を介して、ガス空間Rに電界がかかり、プラズマが発生する。すると、プロセスガスG2がプラズマ化され、電子、イオン及びラジカル等の活性種が発生する。
[ロードロック部]
ロードロック部60は、真空室21の真空を維持した状態で、図示しない搬送手段によって、外部から未処理のワークWを搭載したトレイ34を、真空室21に搬入し、処理済みのワークWを搭載したトレイ34を真空室21の外部へ搬出する装置である。このロードロック部60は、周知の構造のものを適用することができるため、説明を省略する。
[制御装置]
制御装置70は、プラズマ処理装置100の各部を制御する装置である。この制御装置70は、例えば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって構成できる。つまり、真空室21へのスパッタガスG1及びプロセスガスG2の導入および排気に関する制御、電源部6、RF電源55aの制御、回転体31の回転の制御などに関しては、その制御内容がプログラムされており、PLCやCPUなどの処理装置により実行されるものであり、多種多様なプラズマ処理の仕様に対応可能である。
具体的に制御される対象としては、モータ32の回転速度、プラズマ処理装置100の初期排気圧力、スパッタ源4の選択、ターゲット41及びアンテナ55への印加電力、スパッタガスG1及びプロセスガスG2の流量、種類、導入時間及び排気時間、成膜及び膜処理の時間などが挙げられる。
特に、本実施形態では、制御装置70は、成膜部40のターゲット41への電力の印加、ガス供給部25からのスパッタガスG1の供給量を制御することにより、成膜レートを制御するとともに、アンテナ55への電力の印加、供給部53からのプロセスガスG2の供給量を制御することにより、膜処理レートを制御する。
上記のように各部の動作を実行させるための制御装置70の構成を、仮想的な機能ブロック図である図11を参照して説明する。すなわち、制御装置70は、機構制御部71、電源制御部72、ガス制御部73、記憶部74、設定部75、入出力制御部76を有する。
機構制御部71は、排気部23、ガス供給部25、供給部53、調節部54、モータ32、ロードロック部60等の駆動源、電磁弁、スイッチ、電源等を制御する処理部である。電源制御部72は、電源部6、RF電源55aを制御する処理部である。例えば、電源制御部72は、ターゲット41A、41B、41Cに印加する電力を、個別に制御する。成膜レートをワークWの全体で均一にしたい場合には、上記の内周と外周の速度差を考慮して、ターゲット41A<ターゲット41B<ターゲット41Cというように、順次電力を高くする。つまり、内周と外周の速度に比例させて、電力を決定すればよい。但し、比例させる制御は一例であって、速度が大きくなるほど電力を高くし、処理レートが均一になるように設定すればよい。また、ワークWに形成する膜厚を厚くしたい箇所については、ターゲット41への印加電力を高くして、膜厚を薄くしたい箇所については、ターゲット41への印加電力を低くすればよい。
ガス制御部73は、調節部54によるプロセスガスG2の導入量を制御する処理部である。記憶部74は、本実施形態の制御に必要な情報を記憶する構成部である。記憶部74に記憶される情報としては、排気部23の排気量、各ターゲット41へ印加する電力、スパッタガスG1の供給量、アンテナ55へ印加する電力、供給口512のプロセスガスG2の供給量を含む。設定部75は、外部から入力された情報を、記憶部74に設定する処理部である。
入出力制御部76は、制御対象となる各部との間での信号の変換や入出力を制御するインタフェースである。さらに、制御装置70には、入力装置77、出力装置78が接続されている。入力装置77は、オペレータが、制御装置70を介してプラズマ処理装置100を操作するためのスイッチ、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力手段である。例えば、使用する成膜部40、膜処理部50の選択、所望の膜厚、各ターゲット41A〜41Cの印加電力、供給口512からのプロセスガスG2の供給量等を入力手段により入力することができる。
出力装置78は、装置の状態を確認するための情報を、オペレータが視認可能な状態とするディスプレイ、ランプ、メータ等の出力手段である。例えば、出力装置78は、入力装置77からの情報の入力画面を表示することができる。この場合、ターゲット41A、41B、41Cを模式図で表示させて、それぞれの位置を選択して数値を入力できるようにしてもよい。さらに、ターゲット41A、41B、41Cを模式図で表示させて、それぞれに設定された値を数値で表示してもよい。
[動作]
以上のような本実施形態の動作を、上記の図1〜図11を参照して以下に説明する。なお、図示はしないが、プラズマ処理装置100には、コンベア、ロボットアーム等の搬送手段によって、ワークWを搭載したトレイ34の搬入、搬送、搬出が行われる。
複数のトレイ34は、ロードロック部60の搬送手段により、真空容器20内に順次搬入される。回転体31は、空の保持部33を、順次、ロードロック部60からの搬入箇所に移動させる。保持部33は、搬送手段により搬入されたトレイ34を、それぞれ個別に保持する。このようにして、図2及び図3に示すように、成膜対象となるワークWを搭載したトレイ34が、回転体31上に全て載置される。
以上のようにプラズマ処理装置100に導入されたワークWに対する膜を形成するは、以下のように行われる。なお、以下の動作は、成膜部40A、膜処理部50Aのみといったように、成膜部40、膜処理部50のいずれか一つずつを稼働させて成膜及び膜処理を行う例である。但し、複数組の成膜部40、膜処理部50を稼働させて処理レートを高めてもよい。また、成膜部40及び膜処理部50による成膜及び膜処理の例は、ワークWに原子レベルでシリコンを付着させる毎に、酸素イオン及び窒素イオンを浸透させる処理を、ワークWを循環搬送させながら繰り返し行うことにより、酸窒化シリコンの膜を形成する処理である。
まず、真空室21は、排気部23によって常に排気され減圧されている。そして、真空室21が所定の圧力に到達すると、図2及び図3に示すように、回転体31が回転して、保持部33に保持されたワークWは、搬送経路T上を円を描く軌跡で移動し、成膜部40A、40B、40C、膜処理部50A、50Bの下を通過する。回転体31が所定の回転速度に達すると、次に、成膜部40のガス供給部25は、スパッタガスG1を、ターゲット41の周囲に供給する。このとき、膜処理部50の供給部53も、プロセスガスG2をガス空間Rに供給する。窓部材52は、図6(B)に示すように、大気圧で押圧されてガス空間R側に突出するように湾曲している。このため、窓部材52のガス空間R側の面、つまり伸張する側の面に引張応力が働く。
成膜部40では、電源部6が各ターゲット41A、41B、41Cに電力を印加する。これにより、スパッタガスG1がプラズマ化する。スパッタ源4において、プラズマにより発生したイオン等の活性種は、ターゲット41に衝突して成膜材料の粒子を飛ばす。このため、成膜部40を通過するワークWの表面には、その通過毎に成膜材料の粒子が堆積されて、膜が生成される。この例では、シリコンの層が形成される。
電源部6により各ターゲット41A、41B、41Cに印加する電力は、回転体31の内周側から外周側に行くに従って順次大きくなるように記憶部74に設定されている。電源制御部72は、この記憶部74に設定された電力に従って、電源部6が各ターゲット41に印加する電力を制御するように指示を出力する。このため、スパッタリングによる単位時間当たりの成膜量は、内周側から外周側に行くほど多くなるが、内周側から外周側に行くほど通過速度が速くなるため、ワークWの全体の膜厚は均一となる。
なお、ワークWは、稼働していない成膜部40、例えば成膜ポジションM4、M5、稼働していない膜処理部50、例えば、膜処理ポジションM3を通過しても、処理は行われず、加熱されない。このように、加熱されない領域において、ワークWは熱を放出する。
一方、成膜されたワークWは、処理ユニット5における筒部51の開口Hоに対向する位置を通過する。処理ユニット5では、図8に示すように、供給部53から供給口512を介して、ガス空間R内にプロセスガスG2である酸素及び窒素が供給され、RF電源55aからアンテナ55に高周波電圧が印加される。高周波電圧の印加によって、窓部材52を介して、ガス空間Rに電界がかかり、プラズマが生成される。生成されたプラズマによって発生した酸素イオン及び窒素イオンが、成膜されたワークWの表面に衝突することにより、膜材料に浸透する。
アンテナ55に印加される放電電力を上昇させても、支持部510は冷却部56によって冷却されるので、温度上昇が抑えられる。そして、支持部510の第1の対向面511aと窓部材52との間には、熱伝導性の高い材料のシート513が接触して介在しているので、窓部材52の温度上昇も抑えられる。但し、窓部材52に湾曲が発生しても、間隙D1により、窓部材52が支持部510と直接接触しないため、支持部510との接触による傷の発生や、窓部材52の引張応力が働く面に真空室21内の減圧された圧力と大気圧との差圧による応力が集中するといったことがなく、実効強度が維持されて、割れの発生が防止される。また、窓部材52に減圧された圧力と大気圧との差圧による変形及び熱による膨張が発生しても、間隙D2により側面が支持部510と接触しないため、傷の発生や割れを防止できる。なお、窓部材52と支持部510との間のシート513は、低摩擦且つ形状復元性を有するため、熱による窓部材52の伸縮に対しては接触部分が滑り、大気圧による押圧および窓部材52の自重による加圧に対しては圧縮及び復元することにより、窓部材52に加わる力が緩和される。
供給口512から導入されるプロセスガスG2の単位時間当たりの流量は、記憶部74に設定されている。ガス制御部73は、この記憶部74に設定された流量に従って、調節部54が各配管53aを流通するプロセスガスG2の流量を制御するように指示を出力する。
また、酸窒化処理のように、二種類以上のプロセスガスG2を使って膜処理を行う場合、成膜部40で成膜された膜を回転体が1回転する間に、完全に化合物膜にすると同時に、膜の組成も成膜面全体で均一にする必要がある。本実施形態は、二種類以上のプロセスガスG2を使って、膜処理を行うプラズマ処理装置100に適している。例えば、酸窒化シリコン(SiOxNy)のxとyの比を1:1とした膜が欲しいとする。すると、成膜された膜が十分に化合物膜となる活性種の量と、その活性種中に含まれる酸素と窒素の割合の両方をコントロールする必要がある。本実施形態では、プロセスガスG2の供給量を、プロセスガスG2の種類毎に調節することができるので、量と割合の両方をコントロールしやすい。
また、図5に示すように、供給口512から供給されるプロセスガスG2は、分散板57aに衝突することによって分散板57aの垂直面に沿って水平に広がるとともに、分散板57aの上縁からガス空間Rに流入する。このように、プロセスガスG2が分散するので、供給口512の近傍のプロセスガスG2の流量のみが、極端に増大することがない。
以上のような膜を形成する処理の間、回転体31は回転を継続しワークWを搭載したトレイ34を循環搬送し続ける。このように、ワークWを循環させて成膜と膜処理を繰り返すことにより、ワークWの表面に化合物膜として酸窒化シリコンの膜が形成される。
酸窒化シリコンの膜が所望の膜厚となる所定の処理時間が経過したら、成膜部40及び膜処理部50を停止する。つまり、電源部6によるターゲット41への電力の印加、供給口512からのプロセスガスG2の供給、RF電源55aによる電圧の印加等を停止する。
このように、膜を形成する処理が完了した後、ワークWを搭載したトレイ34は、回転体31の回転により、順次、ロードロック部60に位置決めされ、搬送手段により、外部へ搬出される。
[作用効果]
(1)本実施形態は、内部を真空とすることが可能な真空容器20と、真空容器20内に設けられ、ワークWを搭載して回転する回転体31を有し、回転体31を回転させることによりワークWを円周の搬送経路で循環搬送させる搬送部30と、一端の開口が、真空容器20の内部の搬送経路Tに向かう方向に延在した筒部Hと、筒部Hに設けられ、筒部Hの内部と回転体31との間のプロセスガスG2が導入されるガス空間Rとガス空間Rの外部との間を仕切る窓部材52と、ガス空間Rの外部であって窓部材52の近傍に配置され、電力が印加されることにより、ガス空間Rのプロセスガスに、搬送経路Tを通過するワークWをプラズマ処理するための誘導結合プラズマを発生させるアンテナ55と、を有する。
そして、筒部Hには、窓部材52を支持する支持部510が設けられ、支持部510と窓部材52との間に、ガス空間Rと外部との間を封止するシール部材21bが設けられ、真空容器20内が減圧されることにより、大気圧により押圧された窓部材52と前記支持部におけるガス空間R側の部分とが非接触となるように、当該ガス空間R側の部分と窓部材52との間に間隙D1が設けられている。
このため、プラズマの発生により高温となるガス空間R側で、支持部510と窓部材52とが接触することによる傷の発生を防ぐことができる。また、大気圧により、窓部材52のガス空間R側の面に引張応力が働いても応力が集中するようなことがなく、割れの発生が防止される。このため、窓部材52の耐久性が向上して、高価な部材の交換頻度を少なくすることができるので、ランニングコストを低減できる。
例えば、図12(A)に示すように、支持部510におけるガス空間R側の部分とガス空間Rの外部側の部分との高さが同等である場合には、外部側の部分と窓部材52との間にシート511dを挟むことにより、ガス空間R側の部分と窓部材52との間にシート511dと同等の間隙dsが形成される。しかし、この場合、薄いシート511dの厚み程度の間隙dsしか生じないため、図12(B)に示すように、窓部材52が大気圧によって湾曲した場合には、支持部510のガス空間R側が窓部材52に接触することにより傷が発生し、傷への応力集中による割れが生じる可能性がある。本実施形態では、このような接触が回避できる間隙D1が設けられているため、傷や割れの発生が防止できる。
(2)支持部510は、窓部材52の側面に対向する位置に、窓部材52の位置を規制する規制部510Sを有し、窓部材52の側面と、規制部510Sとの間に、間隙D2が設けられている。このため、窓部材52の側面が支持部510に接触することによる窓部材52の傷や割れの発生を防止できる。例えば、図12(A)に示すように、窓部材52と支持部510との間に緩衝用又は熱伝導用のシートCを挟むと、図12(B)に示すように、窓部材52の変形及び熱による伸びが生じたときに、シートCの収縮によっても変形や伸びを吸収しきれない場合には、窓部材52に応力が生じ、歪みや割れにつながる。本実施形態では、間隙D2によりこのような歪や割れを防止できる。つまり、間隙D2は、ワークWを膜処理する際に生じる窓部材52の変形や伸びを吸収できる大きさに設定される。また、本実施形態は、高周波電力による誘導結合プラズマを発生させるプラズマ処理装置であるため、絶縁のために窓部材52と支持部510との間に絶縁性の部材を挟む必要もない。
(3)窓部材52と外部側の支持部510との間に、窓部材52及び支持部510に接触するシート513が設けられている。このため、大気圧がかかった窓部材52が、シート513を介して支持部510によって支えられるとともに、窓部材52の熱がシート513を介して支持部510に伝達されるので、窓部材52の加熱が抑制される。
(4)支持部510におけるガス空間Rの外部側に、窓部材52に対向する第1の対向面511aを有し、支持部510におけるガス空間R側に、窓部材52に対向する第2の対向面511bを有し、第1の対向面511aと第2の対向面511bとの間に、シール部材21bが嵌め込まれた溝511cを有し、第2の対向面511bが、第1の対向面511aよりも窓部材52から離隔した位置に設けられている。
このため、ガス空間R内において、支持部510と窓部材52とが直接接触する部分を無くし、支持部510の一部である第1の対向面511aによって、外部側の窓部材52を支持することにより、ガス空間R内での窓部材52の傷の発生を防止できる。また、第1の対向面511aと窓部材52との間にシート513を接触して介在させることにより、第1の対向面511aと窓部材52との接触面積が増えるので、熱伝導性がよくなり、窓部材52の放熱による加熱防止を図ることもできる。なお、シート513を熱伝導性の高い材料とすることで、加熱防止効果をより向上させることができる。
(5)窓部材52は、搬送経路Tに沿う方向の長さSよりも、搬送経路Tに交差する方向の長さLが長い。このため、ワークWを回転体31により循環搬送させながらプラズマ処理を行う装置の場合であっても、S≧Lである円形等の場合と、回転体31の回転面における周方向の所要スペースが少なくても、同等の処理領域を確保することができる。例えば、角丸長方形の場合の長さLと円形の長さLが等しい場合であっても、角丸長方形の場合のSは、円形のSよりも短くなるため、周方向の所要スペースは少なくて済む。そして、本実施形態の窓部材52の場合、円形等の場合に比べてSが短いため、大気圧による湾曲等が生じやすいが、その場合にも、上記のように、支持部510に間隙D1が設けられているため、支持部510との接触による傷や割れを防止することができる。これは、例えば、窓部材52が800mm以上のように、プラズマ処理装置100が大型の装置の場合に、より有効である。
[他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様も含む。
(1)支持部510の形状については、少なくとも、ガス空間R側の支持部510が、大気圧により押圧された窓部材52が非接触となる形状であればよい。このため、図13(A)、(B)に示すように、棚面510B、棚面510Cを省略して、窓部材52に対して、外部側の第1の対向面511aよりも、ガス空間R側の第2の対向面511bが離隔している形状としてもよい。これにより、角部の低減による電界集中の緩和となる。また、ガス空間R側の支持部510の角部に丸みを形成することにより、窓部材52との距離を確保して、接触を防止してもよい。
(2)成膜材料については、スパッタリングにより成膜可能な種々の材料を適用可能である。化合物とするための材料についても、種々の材料を適用可能である。
(3)成膜部におけるターゲットの数は、3つには限定されない。ターゲットを1つとしても、2つとしても、4つ以上としてもよい。ターゲットの数を多くして、印加電力を調節することによって、より細かい膜厚の制御が可能となる。また、成膜部を1つとしても、2つとしても、4つ以上としてもよい。成膜部の数を多くして、成膜レートを向上させることができる。これに応じて、膜処理部の数も多くして、膜処理レートを向上させることができる。
(4)成膜部による成膜は必ずしも行わなくてもよく、成膜部を有していなくてもよい。つまり、本発明は、膜処理を行うプラズマ処理装置には限定されず、プラズマによって発生させた活性種を利用して、処理対象に処理を行うプラズマ処理装置に適用できる。例えば、処理ユニットにおいて、ガス空間内にプラズマを発生させて、エッチング、アッシング等の表面改質、クリーニング等を行うプラズマ処理装置として構成してもよい。この場合、例えば、アルゴン等の不活性ガスをプロセスガスとすることが考えられる。
(5)筒状体、窓部材、アンテナの形状も、上記の実施形態で例示したものには限定されない。水平断面が方形、円形、楕円形であってもよい。但し、上記のように、搬送経路に沿う方向の径よりも、搬送経路に交差する方向の径が長い形状の場合のように、大気圧による変形が生じやすい形状に適している。
(6)搬送部により同時搬送されるトレイ、ワークの数、これを保持する保持部の数は、少なくとも1つであればよく、上記の実施形態で例示した数には限定されない。つまり、1つのワークWが循環搬送される態様でもよく、2つ以上のワークWが循環搬送される態様でもよい。
(7)上記の実施形態では、回転体を回転テーブルとしているが、回転体はテーブル形状には限定されない。回転中心から放射状に延びたアームにトレイやワークを保持して回転する回転体であってもよい。
(8)以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。