JP2018171616A - 地下水浄化方法および地下構造物 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、有機塩素系化合物で汚染された土壌および地下水を浄化する方法として、特許文献1に記載の方法がある。特許文献1に記載の方法では、炭素数が6以上の直鎖状飽和モノカルボン酸を主成分とした固体成形品の栄養塩と、栄養塩を充填するために土壌及び帯水層を掘って形成した浄化壁とを用いる。浄化壁は、土壌及び地下水の汚染部/その拡散域を縦断する地下水の下流側に遮蔽するように設置され、浄化壁の前記栄養塩によって嫌気性微生物を増殖かつ活性化させ、汚染部および拡散域の揮発性有機化合物を分解処理する工法が記載されている。
また、本発明は、上記地下水浄化方法に用いる地下構造物を提供することを課題とする。
その結果、硫黄成分を含む溶出成分を地下水中に溶出する充填材が充填された複数の構造物を、汚染領域に点在させればよいことを見出し、本発明を想到した。
すなわち、本発明は以下の事項に関する。
各構造物と接触する地下水中に前記充填材から溶出した前記溶出成分によって、前記地下滞水層に生息し、前記溶出成分を利用して前記地下水中から硝酸性窒素を除去する微生物の代謝を活性化する浄化工程とを有することを特徴とする地下水浄化方法。
[3]前記溶出成分が、有機物を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の地下水浄化方法。
[5]前記溶出成分が、有機物を含むことを特徴とする[4]に記載の地下構造物。
「地下構造物」
図1は、本実施形態の地下構造物の一例を説明するための平面模式図である。図1において矢印は、地下水の流れの方向を示す。
本実施形態の地下構造物10は、地下水を生物学的に浄化するものである。図1に示す地下構造物10は、複数の柱状構造物(構造物)1a、1b、1c、1d、1e、1f、1gからなる。各柱状構造物1a、1b、1c、1d、1e、1f、1gは、地下滞水層に互いに離間させて不連続に配置されている。
例えば、図1に示すように、平面視で地下水の流れの方向と交差する方向に所定のピッチで離間させて複数の柱状構造物1a、1b、1c、1d、1e、1f、1gを一列または複数列(図1では2列)並べて配置してもよい。複数の柱状構造物を2列以上配置する場合には、図1に示すように、隣接する列を形成している柱状構造物が千鳥状に配置されることが好ましい。
また、図1に示すように、複数の柱状構造物1a、1b、1c、1d、1e、1f、1gの全てが同形の円柱状であって等間隔に2列以上(図1では2列)並べて配置されている場合、列を形成している複数の柱状構造物(例えば、1a、1b、1c、1d)の中心を繋ぐ線と、隣接する他の列を形成している複数の柱状構造物(例えば、1e、1f、1g)の中心を繋ぐ線とが、各柱状構造物の外形の100%〜500%の寸法で一定の間隔で離間していることが好ましい。具体的には、列を形成している複数の柱状構造物の中心を繋ぐ線と、隣接する他の列を形成している複数の柱状構造物の中心を繋ぐ線とは、10m程度離間していてもよい。
溶出成分に含まれる硫黄成分としては、例えば、単体硫黄などが挙げられる。充填材中の溶出成分の濃度は、溶出成分がS(硫黄)である場合、1〜50mg/Lであることが好ましく、1〜10mg/Lであることがより好ましい。充填材中のS(硫黄)成分の濃度が1mg/L以上であると、地下滞水層における各柱状構造物よりも下流域の広い領域内での微生物の代謝がより一層促進される。また、充填材中のS(硫黄)成分の濃度が50mg/L以下であると、溶出成分が地下滞水層を汚染することを防止できる。
溶出成分に含まれる有機物としては、糖類、アルコール類、有機酸等が挙げられる。
次に、本実施形態の地下水浄化方法について例を挙げて説明する。
本実施形態の地下水浄化方法では、まず、地下滞水層に複数の空間を、互いに離間させて形成する。空間の形成方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法により形成でき、空間の大きさや、数、空間を形成する場所の条件などに応じて適宜決定できる。
次に、空間内にそれぞれ、硫黄成分を含む溶出成分を地下水中に溶出する充填材2を充填する。このことにより、複数の柱状構造物1a、1b、1c、1d、1e、1f、1gを互いに離間させて配置する(構造物形成工程)。
各柱状構造物1a、1b、1c、1d、1e、1f、1gが透水性を有する場合、地下水と各柱状構造物とは、地下水が各柱状構造物内を通過するとともに各柱状構造物の表面に接して移動することにより接触する。各柱状構造物が透水性を有さない場合、地下水と各柱状構造物とは、地下水が各柱状構造物の表面に接して移動することにより接触する。
充填材2から溶出した硫酸等の化合物は、地下水によって各柱状構造物1a、1b、1c、1d、1e、1f、1gの下流域へと流れていく。各柱状構造物1a、1b、1c、1d、1e、1f、1gの下流域では、地下水の還元状態が継続する。このため、各柱状構造物の下流域では、当該地域にもともと生息する硫黄還元菌によって、硫酸等の化合物から酸素が除去され、還元性硫黄化合物(S2−、チオ硫酸、亜硫酸等)に還元される。
生成した還元性硫黄化合物は、再び硫黄酸化脱窒細菌による地下水中からの硝酸性窒素の除去に利用される。
浄化領域は、各柱状構造物1a、1b、1c、1d、1e、1f、1gのうちの一つ(例えば、1a)を起点として、地下水の流れの方向の下流に扇形状に広がっていることが好ましい。浄化領域が扇形状に広がることにより、より広範囲にわたって地下水中の硝酸性窒素を除去できる。
浄化領域が扇形状に広がっている場合、扇形の半径(柱状構造物の中心から下流側の浄化領域までの距離)は、例えば、10m以上が好ましく、50m以上がより好ましい。扇形の半径が上記下限値以上であると、より広範囲にわたって地下水中の硝酸性窒素を除去しやすい。加えて、配置する柱状構造物の数を低減しやすい。扇形の半径の上限値は、大きいほど好ましいが、実質的には100m以下である。
扇形の半径は、地下水の流速、地下水中の硝酸性窒素量、充填材2の種類、充填材2から溶出される硫黄成分の濃度等により調整できる。
なお、扇形の半径は、10m未満であってもよく、マイナスであってもよい。ここで、扇形の半径がマイナスであるとは、柱状構造物よりも地下水の流れの方向の上流側にも浄化領域が広がっていることを意味する。扇形の半径がマイナスの一例として、例えば、−5mが挙げられる。
扇形の中心角は、柱状構造物の種類、形状等により調整できる。
本実施形態の地下水浄化方法では、地下滞水層における各柱状構造物1a、1b、1c、1d、1e、1f、1gよりも下流域の広い領域内において、地下水の酸化還元電位が−150〜−400mVの嫌気条件となることが好ましい。
図2は、A市の地下滞水層に配置された柱状構造物1とその周囲の領域を示した平面図である。図2に示す柱状構造物1は、以下に示す方法により形成した。
バチルロックは、硫黄とカルシウム成分とを等量ずつ混合して固化させたものである。
バチルロックを充填した柱状構造物1の近傍では、カルシウム成分から溶出したカルシウムイオン濃度、炭酸水素イオン濃度が高まる傾向がある。
図2に示すように、柱状構造物1よりも下流域の広い領域内で、柱状構造物1の上流域と比較して、地下水中の硝酸性窒素濃度が低くなった。
仮想線P1は、観測井戸A2と、柱状構造物1の中心とを結ぶ地下水流向下流側に向かう直線である。観測井戸A2、A4、B、C2、C4は、仮想線P1上に位置している。観測井戸C1は、柱状構造物1の中心から+X方向20m、+Y方向50mに位置している。観測井戸C3は、柱状構造物1の中心から+X方向90m、+Y方向50mに位置している。観測井戸C6は、柱状構造物1の中心から+X方向90m、−Y方向100mに位置している。
仮想線Q1は、観測井戸C3と柱状構造物1の+Y方向寄りの外縁とを結ぶ接線である。
仮想線Q2は、観測井戸C5と柱状構造物1の−Y方向寄りの外縁とを結ぶ接線である。
図3における浄化領域を表す扇形の中心角は、58°であった。
柱状構造物1よりも地下水流向の上流域(観測井戸A1、A2、A3)では、硝酸性窒素濃度が2.0mg/Lよりも高かった。加えて、柱状構造物1よりも地下水流向の上流域では、硫酸イオン濃度が5.0mg/L以下だった。このことは、硫黄酸化脱窒細菌による硫黄成分の酸化反応が進行していないことを意味する。
観測井戸A4では、硫酸イオン濃度、カルシウムイオン濃度、炭酸水素イオン濃度が高かった。このことは、柱状構造物1の近傍では、充填材からの溶出成分の影響を受けやすいことを意味する。
観測井戸C2、C4、C5では、前記上流域よりも硝酸性窒素濃度が低かった。このことは、柱状構造物1よりも地下水流向の下流域では、浄化反応が進行していることを意味する。加えて、観測井戸C2、C4、C5では、前記上流域よりも硫酸イオン濃度が高かった。このことは、硫黄酸化脱窒細菌による硫黄成分の酸化反応が進行していることを意味する。
観測井戸C6では、前記上流域よりも硝酸性窒素濃度が高かった。このことは、観測井戸C6では、柱状構造物1による硝酸性窒素の除去の効果が得られていないことを意味する。
なお、観測井戸C1とC3で、前記上流域よりも硝酸性窒素濃度が高いのは、観測井戸C1とC3の上流で、硝酸性窒素含有肥料が散布されていた影響によるものと考えられる。
加えて、柱状構造物1よりも下流域の広い領域内で、柱状構造物1の上流域と比較して、地下水中の硫酸イオン濃度が高くなった。
これらの結果から、柱状構造物1によれば、汚染領域が広範囲であっても、地下水中の硝酸性窒素を容易に除去できることが分かった。
充填材、10・・・地下構造物、A1、A2、A3、A4、B、C1、C2、C3、C4、C5、C6・・・観測井戸、P1、Q1、Q2・・・仮想線。
Claims (5)
- 地下滞水層に複数の空間を互いに離間させて形成し、前記空間内にそれぞれ、硫黄成分を含む溶出成分を地下水中に溶出する充填材を充填し、複数の構造物を互いに離間させて配置する構造物形成工程と、
各構造物と接触する地下水中に前記充填材から溶出した前記溶出成分によって、前記地下滞水層に生息し、前記溶出成分を利用して前記地下水中から硝酸性窒素を除去する微生物の代謝を活性化する浄化工程とを有することを特徴とする地下水浄化方法。 - 前記構造物と接触する地下水中の硝酸性窒素濃度が、1〜100mg/Lであることを特徴とする請求項1に記載の地下水浄化方法。
- 前記溶出成分が、有機物を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の地下水浄化方法。
- 地下滞水層に互いに離間させて配置され、硫黄成分を含む溶出成分を地下水中に溶出する充填材が充填された複数の構造物からなることを特徴とする地下構造物。
- 前記溶出成分が、有機物を含むことを特徴とする請求項4に記載の地下構造物。
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